【SS】真姫 「歌に捧ぐ、私の未来」 【世奇妙】

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真姫-アイキャッチ36
1: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:22:54.68 ID:qDuoKaAL.net
・世奇妙風SS

過去作リンク
ことり 「私の来世!?」
http://itest.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1456235970/l50

千歌 「私目覚めたんだ…超能力に!!」
http://itest.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1468601018

穂乃果 「もし世界から、ラブライブ!が消えたら」
http://itest.2ch.net//test/read.cgi/lovelive/1470579663/l50

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元スレ: 【SS】真姫 「歌に捧ぐ、私の未来」 【世奇妙】

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2: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:23:24.52 ID:qDuoKaAL.net
〜真姫の部屋〜


目が覚めた。

季節は夏。蝉の声が部屋の中にまで響く。

前に“見舞い”に来た海未が、「涼しくなりますよ」 と言ってつけてくれた風鈴が、蝉の声に呼応するかのように鳴る。


真姫 「………。」


海未 「真姫ー? 入りますよ?」


ドアを2回ノックし、声をかけた海未は、私の返事を待つことなく部屋に入ってくる。

…まぁ、今の私には返事ができないから、当然のことだ。
4: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:23:53.82 ID:qDuoKaAL.net
海未 「真姫が好きそうなアイスを買ってきました。一緒に食べましょう。」


海未がコンビニのレジ袋から取り出したアイスのパッケージには、『ナポリタン味』と書かれている。
私は露骨に嫌そうな顔を

しようとするが、できない。

私は“あの頃”から、ずっと無表情のままだ。
本当は、いろんな顔をしたい。いろんな話をしたい。


だが、それはもう、叶わない。
5: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:24:24.93 ID:qDuoKaAL.net
海未 「…あまり美味しくありませんでしたね。」

真姫 「………。」


そうね。…と言いたい。


海未 「表情が変わらなくても、分かりますよ。真姫も美味しくないと思ったのでしょう?」

真姫 「………。」

海未 「真姫は分かりやすいですね。…人のことを言える身ではありませんが。」


海未 「……真姫、ひとつ聞いてもいいですか?」


海未は私の顔を見て、そのまま話を続けた。
7: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:24:56.97 ID:qDuoKaAL.net
海未 「真姫がこうなってしまったのは真姫の決意の結果です。」

海未 「真姫が μ'sに全てを捧げることを決めて…こうなることも覚悟した上での決意だったと、私たちもわかっています。」

海未 「私達は真姫の意思を尊重して、真姫の作った曲を歌い、踊り、学校を廃校から救っただけでなく、ラブライブ優勝も成し遂げることが出来ました。」


海未は一呼吸置いて、続けた。


海未 「真姫は、これでよかったのですか?」

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8: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:25:30.43 ID:qDuoKaAL.net
私には、ある “能力” があった。

未来から、感情を借りることが出来るのだ

これだけ言っても、理解に苦しむだろうから、例を出して説明しようと思う


私は主にこの力を、曲作りに使っていた。
将来、私が感じる怒りや哀しみ、喜びや感動を借り、曲の中に込めるのだ。

勿論借りるわけだから、曲に込めた分、私は将来感じる感情を失う。
曲に怒りを込めれば、その分将来私が感じる怒りが無くなるわけだ。

この力を使って出来た曲は、それは大きな反響を呼んだ。感情を直接込めているので、聴いた人もその感情を直に受け取ることが出来るからだ。
9: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:26:03.21 ID:qDuoKaAL.net
しかしこの力にも欠点がある。
この力には、限度があった。

お小遣いを前借りするようなものだから、上限があるのは当然だ。もし上限いっぱいにこの力を使ってしまえば、私はすべての感情を失ってしまう。そうすれば、今のような普通の生活はできなくなるだろう。

だから私は中学の時、この力を封印した。
人を感動させる曲、哀しくさせる曲…いろいろ作ってきたが、それももうおしまい。


私の音楽は、終わったのだった。
10: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:26:41.47 ID:qDuoKaAL.net
だけど、私は音楽を諦めきれなかった。
度々音楽室に足を運び、過去に作った曲を弾いていた。
ある日、その姿を1人の少女に見られた。


穂乃果 「すごい! ピアノ上手だねぇ!」


…どうも彼女は、最近スクールアイドルというものを始めたらしく、曲を作って欲しいと頼んできた。
最初は断った。曲を作ったりするのは、もう辞めたから。

だが、気付けば私は、五線譜の描かれた紙とペンをとり、ピアノの前にいた。


真姫 「…やるなら、全力で…。」
11: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:27:25.10 ID:qDuoKaAL.net
私は将来の私の希望…それを少し、曲の中に込めた。
この曲を歌う彼女達が、希望を持ってこの先頑張っていけるように。


…ライブは、成功だった。
観客こそ、1人2人しかいなかったものの、歌っていた3人の顔は、希望に満ち溢れていた。

これで終わり…かと思えば、そうではなかった。私はなんだかんだで、μ'sに入ることになった。
そして私はμ'sの曲作り担当になった。

9人が揃った時の喜び…
観客と一体になって楽しめる興奮…
感動、希望、夢……

私は、将来の感情を、出来る限り曲に注いだ。
12: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:28:02.11 ID:qDuoKaAL.net
海未 「真姫の曲は、すごいですね。」


合宿先で、深夜一緒に作詞作曲をしていた時、海未はこんなことを言ってきた。


海未 「真姫の曲は、人の感情が直に感じ取れると言いますか…」

真姫 「何よそれ…。」

海未 「いえ、本当のことです。真姫の曲を歌っていると、ほかの曲では感じられない感覚に浸ることが出来るのです。」

真姫 「ふぅん…。」


嬉しいような、嬉しくないような、複雑な感じがした。
そんな曲を作れるのも、すべて私の能力のおかげだ。だから、私が褒められるようなことじゃないのに…。
13: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:28:38.06 ID:qDuoKaAL.net
真姫 「…私、いつの間にか穂乃果に相当影響されていたのね。」

海未 「と言いますと?」

真姫 「この力を使うのは、もう最後だって思っていたのに…。あの人に影響されてか、わからないけど…」

真姫 「今を全力で楽しみたいと思った。今できることを、全力でやろうと思った。」


海未 「真姫…?」


真姫 「だから私は…μ'sにすべてを捧げるって誓ったの。将来のことは今はどうだっていい。」

真姫 「この力で、最高の曲を作って、最高のライブがしたい…。」
14: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:29:19.06 ID:qDuoKaAL.net
いつの間にか私は、自分の力のことを、海未に話していた。
どうして話してしまったのかは、今でもわからない。今まで誰にも話したことは無かった。両親にさえも。


海未 「…真姫がそんな嘘をつく人とは思えませんし、本当のことなのでしょう。」

真姫 「あら、意外にあっさり信じるのね。」

海未 「真姫の言うことですから。私は信じますよ。」

真姫 「なっ…何ソレ!」

海未 「意味わかんない…ですか?」

真姫 「も、もう…っ! 真面目な話してるのにっ!」


海未は笑っていた。私も、気付けば一緒になって笑っていた。
15: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:29:51.66 ID:qDuoKaAL.net
海未は先に寝てしまったことりに毛布をかけ、真剣な表情で話を続けた。


海未 「ですが、そうなると真姫は、未来の自分を犠牲にして曲を作っているということですか…?」

真姫 「まぁ…そういうことになるわね。」

海未 「で…ですがしかし!」

真姫 「いいの。私の曲のせいで、予選に落ちた…なんてことになるのが嫌なの。」

海未 「そんなこと…真姫の曲は、そんな力に頼らずとも…」

真姫 「ふふっ、ありがとう。でもね海未…」


真姫 「私は“今”を、全力でやりきりたいの。」


海未 「真姫…。」
16: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:30:27.81 ID:qDuoKaAL.net
海未は私の決意を、受け容れてくれた。
私の力のことも、二人の秘密にすると約束してくれた。


海未 「…それで、今回はどんなものを込めたんですか?」

真姫 「…夢。この曲を聴いた人が、新しい夢に向かって突き進むことが出来るような、そんな曲にしてみたの。」


私は音符を書き連ねた楽譜を、海未の書いた歌詞と一緒に渡した。
17: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:31:23.58 ID:qDuoKaAL.net
真姫 「ユメノトビラ…。いい歌詞ね。」

海未 「ありがとうございます。…よかったら、一緒に歌ってみませんか?」

真姫 「いいわよ。練習もかねて、ね。」


ことりを起こさないよう、私達は静かに歌った。…曲に込めた意思を、海未と確かめ合うように。


ユメノトビラ ずっと探し続けて
君と僕とで旅立ったあの季節

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18: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:32:05.35 ID:qDuoKaAL.net
μ'sの快進撃は、とどまることを知らなかった。最終予選も突破し、いよいよ本戦を明日に控えた。
…穂乃果のアイデアで、急遽学校に泊まることになった。みんなでお泊まりをするのも、大分慣れてきた。

…皆が寝静まった頃、私はこっそり海未に話しかけた。


真姫 「……最近、不安なの。」

海未 「何がですか?」

真姫 「…段々、自分の意識が薄れていくのを感じるの。嬉しいと感じてるはずなのに、それが素直に、表に出ないの。」

海未 「真姫…。それは、やはり…」

真姫 「あの力の…せいでしょうね。」
19: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:32:34.80 ID:qDuoKaAL.net
こうなることも分かっていた。
あれだけ、自分のありったけの感情を注ぎ込んだのだ。

−−でも、早すぎる。

もっと、みんなと感情を共有したい。
嬉しいときは喜んで、可笑しい時は笑って、悔しい時は泣いて…
それが、難しくなっていく。


海未 「…真姫。」


海未は、いつの間にか零れてしまった私の涙を、そっと拭ってくれた。
20: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:33:07.50 ID:qDuoKaAL.net
海未 「大丈夫です。私がついてますから。」

真姫 「海未…。」

海未 「もし真姫が感情を失ってしまっても、私がその分笑ったり泣いたりします。だから、今はそんなこと考えないでください。」

真姫 「でも…!」


海未は私の唇に人差し指を当て、私の言葉を遮った。…そしてそのまま、私の体を抱き寄せた。
21: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:33:37.23 ID:qDuoKaAL.net
海未 「…明日のライブ、精一杯 “楽しむ”。」

海未 「それは、できそうですか…?」

真姫 「当たり前じゃない…。そのためにここまで、頑張ってきたんだから…!」

海未 「なら、大丈夫です。一緒に…9人で、最高のライブにしましょう。」

真姫 「うん……うん…っ!」


海未の胸の中で、私は声を押し殺して、泣いた。海未はそんな私の頭を、優しく撫でてくれていた。

…よかった。
この感情はまだ、残ってた。

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22: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:34:02.27 ID:qDuoKaAL.net
…ラブライブ決勝戦、私は最高に楽しむことが出来た。沢山の光に囲まれ、私達は最高に幸せだった。

…だけど、これで終わりじゃない。
μ'sのために…いや、私自身のためにも、やらなくてはいけないことがある。

μ'sの最期の曲を、つくりあげる。

海外でのライブが決まり、みんなで練習を重ねている時も、私は持てるすべての感情を使って、最高の曲を作り上げていた。
23: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:34:36.10 ID:qDuoKaAL.net
ホテルの部屋でシャワーを浴びて出ると、部屋に置きっぱなしにしていた楽譜を、希が見ていた。
慌てて取り上げようとするも…その“焦り”が出なかった。


真姫 「なに勝手に見てるのよ。」

希 「ご、ごめん…。」


つい、キツイ言い方をしてしまった。


希 「真姫ちゃん…それ…」

真姫 「いいの。私が勝手にやってることだから。…気にしないで。」


…そう、これは私が勝手にやってることだ。
この曲を完成させて、私の曲作り…人生は、終わる。

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24: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:35:09.56 ID:qDuoKaAL.net
〜音楽室〜


海未 「真姫…本当に大丈夫なんですか…?」

真姫 「えぇ…。平気…よ。」


結局この“μ'sの最期の曲” は、ドーム大会のオープニングセレモニーで披露することになった。
…それならやることは一つだ。

喜び、哀しみ、興奮、感動、愛、夢、希望…

そのすべてを、この曲に注ぎ込んだ。
25: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:35:38.49 ID:qDuoKaAL.net
真姫 「……。ねぇ、海未。」

海未 「…なんですか?」

真姫 「前に、言ってくれたわよね。私が感情を失っても、代わりに私の分まで喜んだり、してくれるって。」

海未 「…はい。」

真姫 「それ…本当にお願いできる…?」

海未 「真姫……。」


海未の瞳から、涙が溢れ出る。
私がそれを拭おうとした時、音楽室の扉が、勢いよく開かれた。


希 「…そういう、ことやったんやね。」

真姫 「希……みんな…?」
26: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:36:06.16 ID:qDuoKaAL.net
音楽室にやってきたのは、μ'sのみんなだった。


海未 「…ごめんなさい。やはり、伝えるべきだと思ったのです…。」

真姫 「海未……。」


穂乃果 「真姫ちゃん…どうして、こんなこと…。」

真姫 「…私が勝手にやってることよ。」

凛 「真姫ちゃん…それは違うよ。」

真姫 「違う…? 何が?」

穂乃果 「私達は、みんなでここまでやってきたんだよ? 誰かひとりが犠牲になんて、そんなの間違ってるに決まってる!」
27: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:36:41.41 ID:qDuoKaAL.net
真姫 「でも…μ'sの曲は、私にしか作れない! 今ここで作るのをやめたら…」

穂乃果 「うん。…だから、作るのをやめてなんて言わない。」

海未 「穂乃果?」


穂乃果 「私たちも、曲作り手伝う!」


真姫 「…手伝う?」

穂乃果 「一緒に作ろうよ。…本来、そうするべきだったんだよね。真姫ちゃんだけに任せちゃって…本当、ごめんね。」

真姫 「私は…別に。」
28: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:37:10.52 ID:qDuoKaAL.net
穂乃果 「真姫ちゃんみたいな曲は作れないかもだけど…。私たちの感情も、曲に込めたいんだ。」

真姫 「穂乃果…。」

穂乃果 「みんな、気持ちは同じだよ。みんな、曲を通して、自分の感情を伝えたいんだよ。だから…お願い。」


8人の顔を見た。
みんな、笑顔で私のことを見ていた。

…私はなんて幸せなんだろう。
幸せすぎて、涙が止まらない。私の手を握ってくれるその手が、暖かくて、落ち着く。

−−この気持ちだ。
この気持ちを、歌にしよう。
それが私の 最期 の役目だから。

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29: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:37:44.60 ID:qDuoKaAL.net
…最期のライブは、最高のものだった。
この感動を、大勢の観客と、μ'sのみんなと共有できた。
みんな…勿論私も、笑顔でステージを去った。


本当に良かった。この9人で。

この9人のためにやってきて、良かった。

今、この瞬間が本当に……

…し……あわ……せ…だ………


海未 「真姫?」

穂乃果 「真姫ちゃん…?」

にこ 「真姫……真姫…ッ!」

希 「真姫ちゃんっ! 真姫ちゃんっ!」

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30: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:38:15.03 ID:qDuoKaAL.net
私は殆どの感情を失った。
μ'sの曲に、殆どを使い切った。私は、ほぼ無気力のような感じになっていた。

音楽室でピアノの前に座る。傍らには、いつものように海未がいる。


海未 「真姫…。これが、あなたの望んだ結果なのですか…? 私は納得できませんっ!」

真姫 「………そう。」

海未 「どうして…どうして……っ。」

真姫 「……本当はわかってるでしょ。どうしてこうなるまで、私が曲を作り続けたか。」

海未 「うぅっ……ひぐっ……。」


あの海未が、床に膝をつき、泣いている。
私はそんな海未に、最後のお願いをした。
31: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:38:46.23 ID:qDuoKaAL.net
真姫 「…ねぇ、海未。」

海未 「…なん…ですか…?」

真姫 「私の最後の曲作りに、付き合って欲しいの。」

海未 「…! まだ…なにか作るつもりなのですか!? そんなことしたら…っ!」

真姫 「いいの。…これは、あなたに贈る曲だから。」

海未 「私に…?」

真姫 「そう。残った私の感情を、すべて注ぐ曲。あなたのためだけに、作る曲。」
32: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:39:12.98 ID:qDuoKaAL.net
真姫 「実はもう、ほとんど出来てるの。あとは最後の部分だけ。」

真姫 「…もし、この曲が完成したら、この楽譜は音楽室の棚にしまっておいて。しばらく見つからなさそうな、奥の方に。」

海未 「真姫……。」


海未は瞳にたまった涙を拭い、決意したように、目を尖らせ、傍らにあった何に腰掛けた。


海未 「聴かせてください。…その曲。」

真姫 「……うん。じゃあ、聴いて。」


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33: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:39:41.70 ID:qDuoKaAL.net
…曲を引き終わると、海未は静かに拍手を送ってくれた。表情は俯いてるせいで、よく見えない。

…それでも、よかった。
−−この曲を、聴かせることが出来て。


海未 「…素晴らしい、曲でした。真姫…あなたは本当に…」


真姫 「…………。」


海未 「……真姫? 真姫、嘘…ですよね?」

海未 「真姫……っ! うぐっ…うぅっ…!!」


海未 「真姫ぃぃぃっっっ!!!!!」

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34: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:40:12.25 ID:qDuoKaAL.net
〜5年後〜


海未 「…なぜ私は、あの時止めなかったのでしょうね。…多分、純粋に真姫の曲が聴きたかったんだと思います。」

真姫 「………。」

海未 「…そうですね。この話はもうやめましょう。アイスも溶けてしまいました。」


海未は溶けて完全に水になったナポリタン味のアイスを、レジ袋の中に戻した。

…そのときだった。家の階段をかけ登るかのような音が聞こえてきた。


穂乃果 「真姫ちゃんっ! 海未ちゃんっ!」

海未 「穂乃果…? どうしたのですかそんなに慌てて…」

穂乃果 「これを見てよっ!」


穂乃果は海未の言葉を待たず、パンフレットのようなものを、海未に押し付けた。
表紙には、ピアノの絵らしきものが描かれていた。
なにかの、発表会のパンフレットだろうか?

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35: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:40:42.85 ID:qDuoKaAL.net
〜ピアノコンクール 会場〜


海未 「ふぅ…なんとか間に合いました。」

真姫 「………。」

海未 「驚きました? 御両親に無理を言って、外出の許可をもらったんです。」

海未 「一緒に外に出るのも、久しぶりですね。」


どうして、急にこんなところへ?


海未 「連れてきた理由は、すぐに分かりますよ。…ほら、発表が始まりますよ。」


司会 「続きまして、エントリーナンバー9」

司会 「浦の星女学院 2年 桜内 梨子」

司会 『海に還るもの』


真姫 「………!」
36: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:41:09.63 ID:qDuoKaAL.net
彼女が弾いた曲は、間違いなくあの時作った曲だった。
所々アレンジはされているが、元となっているのは、私の曲で間違いない。

…しかし、どうして?


穂乃果 「あの人、音ノ木坂から転校した娘なんだって。」

海未 「だから、あの曲を…。」

真姫 「………。」


……違う。
あの曲からは、私の込めていないはずの感情が伝わってくる。

“迷い”だ。


真姫 「………。」
38: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:41:39.53 ID:qDuoKaAL.net
…曲が、終わった。
しかし彼女は、ピアノから離れようとしない。観客が拍手をしようか迷っていると、彼女は、ある曲を弾き始めた。

そして、あろうことか彼女は、弾き歌いをし始めた。


穂乃果 「…海未ちゃん、この曲って…。」

海未 「はい……間違いありません…!」


ユメノトビラ ずっと探し続けて
君と僕とで旅立ったあの季節
39: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:42:09.43 ID:qDuoKaAL.net
穂乃果 「ユメノトビラ…!」


会場が一気にざわつく。
だが、演奏者の彼女に一切の迷いはなかった。楽しそうに、歌っていた。


真姫 「………。」


頬に、熱いものが伝っていくのを感じた。
今の私に…流れるはずのないものが、流れた


海未 「真姫……? 真姫…っ!」

穂乃果 「真姫ちゃん…!」

真姫 「しーっ。…彼女の歌、しっかり聴いてあげましょ。」

海未 「真姫…っ! ……はいっ!」
40: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:42:41.45 ID:qDuoKaAL.net
ユメノトビラを歌い終えると、彼女は立ち上がり、拍手を待たず走り去っていった。


海未 「今の娘は…何だったのでしょう…。」

穂乃果 「海未ちゃん、真姫ちゃん、コレ見て!」

真姫 「……?」


穂乃果の携帯には、とあるスクールアイドルの写真が表示されていた。

…今話題の、『aqours』というグループらしい。その中には、ピアノを弾いていた、彼女の姿もあった。


海未 「そういえば今日…ラブライブ予選の日でしたね…。」

海未 「……真姫。」

真姫 「どうしたの、海未?」
41: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:43:05.62 ID:qDuoKaAL.net
海未 「真姫の歌…聴いた人に、ちゃんと届いていましたね。」

真姫 「…当然でしょ。あの曲には、私の夢を、詰め込んであったから。」


私は海未の手を両手で包み込んだ。
海未はもう片方の手を、私の手の上に重ねた。


真姫 「海未……ありがとう。本当に。」

海未 「…はい。これからも、ずっと一緒ですよ。真姫。」


ざわつく会場の中、私たちは、ただ静かに、涙を流しながら、抱き合っていた。


〜終わり〜
43: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/ 2016/09/10(土) 01:44:55.36 ID:qDuoKaAL.net
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
ライブコレクションを見ていたら思いついたアイデアを、そのまま形にしてみました

改めて、ありがとうございました
今後の参考とさせていただきますので、よろしければ感想等よろしくお願いします
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