【SS】穂乃果「腕立て伏せ? できらぁ!」

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穂乃果-アイキャッチ63
1: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 15:28:18.17 ID:gjFYgBJQ.net
降り注ぐ雨。

ぐちゃぐちゃの地面に寝ていた。


穂乃果「いたっ、たたた……」

穂乃果「っく、あれ、起き上がれない……」

穂乃果「ていうか、どこ?」

穂乃果「森……?」


木を支えに立ち上がる。

全身が濡れていた。


穂乃果「なんで穂乃果、こんなところにいるんだろ」

穂乃果「っツ!」

穂乃果「…頭、いたい」

元スレ: 【SS】穂乃果「腕立て伏せ? できらぁ!」

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2: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 15:30:36.18 ID:gjFYgBJQ.net
穂乃果「誰か! 誰かいませんかー!?」

穂乃果「誰かーーー!」


ザ------ッ


穂乃果「なんだろ、ここ……」

穂乃果「すごく嫌な感じ」

穂乃果「……歩こう」

ーーーーー

穂乃果「井戸…?」

穂乃果「なんで森の中に井戸なんて…」

穂乃果「すごく足元ぬるぬるするし、危ないなぁ……」

穂乃果「中は……」
4: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 15:32:55.27 ID:gjFYgBJQ.net
石の囲いから身を乗り出す。


穂乃果「うわ、深いなぁ」

穂乃果「水面が見えないくらいだよ」

穂乃果「もし落ちたりしたら……」






ガサッ


穂乃果「っ!?」


穂乃果「今のなに…?」

穂乃果「動物? それか雨とか?」
5: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 15:35:17.82 ID:gjFYgBJQ.net
穂乃果「なんかここ怖いよ……」


穂乃果「雨、鬱陶しいなぁ……」

穂乃果「寒いし」

穂乃果「どこか雨しのげるとこないかな…」

ーーーーー

穂乃果「……病院?」

穂乃果「すごいボロボロ……」

穂乃果「人、いないのかな……?」


妙な立地だった。

森の中、周りになにもない場所にポツンとたった廃病院。
6: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 15:36:57.05 ID:gjFYgBJQ.net
穂乃果「……っ。耳鳴りがする……」

穂乃果「頭も痛いし」


ゴロゴロゴロッッ! バ----ン!!


穂乃果「雷まで……」

穂乃果「すみませーん! 誰かいませんかー!?」

穂乃果「すみませーーーーん!!!」


ザ--------


穂乃果「……ドアは……、開かない」

穂乃果「どこかから入れないかな…?」
7: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 15:39:47.75 ID:gjFYgBJQ.net
穂乃果「あ、窓開いてる」

穂乃果「入れるかな……?」


一階の窓が開いていた。

入るのは難しくなさそうだ。


穂乃果「なにか足場になるもの…」

穂乃果「お、イス見っけ」

穂乃果「これをこうして……」

穂乃果「ほっ、……ぐぬっ、ていっ」

穂乃果「ぐっ、ぐっ……、わっ!?」
9: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 15:42:07.72 ID:gjFYgBJQ.net
穂乃果「い、イタタタタ……」


背中から地面に落ちた。

ーー病院の中に。


穂乃果「痛い、けど、まあ入れたから結果オーライかな」


ザ--------ッッ


穂乃果「……それにしても荒れてるなぁ」

穂乃果「まさに廃病院て感じで」

穂乃果「暗いし埃っぽい……」





カツ------ン


穂乃果「っっ!?」
10: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 15:44:43.16 ID:gjFYgBJQ.net
穂乃果「……今、音したよね?」

穂乃果「やっぱり誰かいるの?」


壁を背に立ち上がる。

散らばったガラスを踏まないように気をつけながら。



キィイイ----

穂乃果「ひっ」


その時、扉がゆっくりと開いていった。


穂乃果「なにも触れてないのに……」
11: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 15:47:10.56 ID:gjFYgBJQ.net
穂乃果「蝶番が壊れてる……?」

穂乃果「風で開いたってこと?」

穂乃果「……だよね?」


それ以上は考えなかった。

足音を忍ばせ、穂乃果はゆっくりと部屋を出た。


穂乃果「頭ずきずきする」

穂乃果「服乾かしたいなぁ……」

ーー
ーーーー
ーーーーーーーー
12: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 15:48:18.09 ID:gjFYgBJQ.net
ことり『穂乃果ちゃんがいなくなった?』

海未「はい! そうなんです! それでっ……」

ことり『海未ちゃん、落ち着いて』

海未「……はい」

ことり『穂乃果ちゃんから連絡来たら電話するから。みんなにも伝えとくね?』

海未「はい、お願いします…」

ピッ


希「ことりちゃん、なんやって?」

海未「なにか分かったら連絡すると…」

希「そっか」
13: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 15:50:41.06 ID:gjFYgBJQ.net
海未「すみません、私が不注意だったばかりに」

希「やめたって。ぼんやりしてたのはウチも同じだし。今は穂乃果ちゃん探すのが大優先やろ?」

海未「はい…」

希「一緒に探そう? なんかこの辺り……」




希「すごく、嫌な気配がするから……」

ーーーーー

海未「……墓石?」

希「な、なにこれ……」ゾクッ

海未「希? どうしたんですか?」
14: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 15:56:38.09 ID:gjFYgBJQ.net
希「なんかこれ、やばい……。こんなの見たことない……」

海未「? それにしても古そうな墓石でーー」

希「やめて! 触らんで!」

海未「……っ」ピタッ

希「本当に危ないから! ……行こう? ここは近づかないほうがーー」

海未「希、ちょっと待ってください。これは」



希「リボン?」

海未「……穂乃果の髪留めと同じものです」

希「そんなっ!?」
15: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 16:00:29.44 ID:gjFYgBJQ.net
海未「…………っ」

希「ちょっとまって海未ちゃん!」

海未「希、止めないでください! 穂乃果が近くにいるんです! 探しに行かないと!」

希「分かったから! ウチも行く! だからちょっと待って!」

海未「なんですか」

希「これ、持っといて」

海未「人形ですか?」

希「お守りみたいなもん。効果は絶対やないけど、ないよりマシだと思うから」

海未「これは……」

希「肌身離さず持っといて。もしかしたら、守ってくれるかもしれん」
16: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 16:04:24.44 ID:gjFYgBJQ.net
海未「希は?」

希「ウチももう一つ持っとるから」

海未「分かりました。……それでは」

希「うん、行こか」


希「絶対、なにが起きても冷静にね?」

海未「……はい」

ーーーーー

ゴロゴロゴロッッ! バ----ン!!


海未「…………」

海未「雨?」
17: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 16:09:20.49 ID:gjFYgBJQ.net
希「海未ちゃん、無事?」

海未「はい。少し気を失っていたようですが」

希「ウチも。気がついてたらここに倒れとった。……ははっ、泥でぐちゃぐちゃや」

海未「怪我はありませんか?」

希「うん。どっかで打ったのか両肩が痛いけど、大丈夫そう」

海未「私も少し。……ととっ」





希「雨、やね」

海未「さっきまでは雲ひとつない日照りでしたね」

希「うん」
19: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 16:12:13.18 ID:gjFYgBJQ.net
海未「携帯はどうですか?」

希「圏外…」

海未「私のもです」

希「そっか…」

海未「……行きましょう」

希「気をつけてこうね」

ーー
ーーーー
ーーーーーーーー
20: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 16:15:21.50 ID:gjFYgBJQ.net
穂乃果「すみませーん。誰かいませんかー?」


ザ-----ッッ


穂乃果「うーん。誰もいない」

穂乃果「すみませーーーん」


ガラガラガラッッ!! ピシャッ!!


穂乃果「まあ、誰もいるわけないよね……」

穂乃果「すっごいボロいし。ドアどこも壊れてるのかな?」


キィイイ-----


穂乃果「こんにちはー」


穂乃果「ーーーーーひっ」
22: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 16:21:00.50 ID:gjFYgBJQ.net
何気なく覗き込んだ一室に、穂乃果はそれを見た。


穂乃果「……血?」

穂乃果「血、じゃないよね……?」


血だ。

暗い病室だったがすぐわかる。泥のように塗りたくられた黒々の血液。


穂乃果「血、なの……?」

穂乃果「固まってる?」


穂乃果「それにこれ、……メス?」
23: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 16:35:06.27 ID:gjFYgBJQ.net
穂乃果「なにこれ……」


穂乃果「机の上に色々と置いてある」

穂乃果「なにかの記事かな?」

穂乃果「◯◯病院? ……田……容疑者…………捕。…………若い……断………。……右…………恨み……………。文字が滲んで読めないーー」



ガン!!!

穂乃果「っ!?」

穂乃果「隣の病室から……?」

穂乃果「い、今の………」


穂乃果「壁を叩かれた音……?」


ガンガンガンガンガンガンガンガンガン!!!!!!

穂乃果「ひっっ!!!」
28: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 18:28:06.37 ID:1SpuSHH0.net
カツ---ン! カツ---ン!


穂乃果「なにこれ!? なにこれ!?」

穂乃果「近づいてきてっ!」


カツ----------ン


穂乃果「〜〜〜〜〜っっ」


カツ--------------ン

カツ---------ン

カツ----ン.........


穂乃果「…………」

穂乃果「行った?」
29: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 18:43:49.10 ID:1SpuSHH0.net
穂乃果「なに今の……」


キィィイイイ-----


穂乃果「誰もいない…?」

穂乃果「なにかの勘違いだよね?」

穂乃果「こんなとこ、誰もいるわけないよね……?」


穂乃果「頭痛い……」

穂乃果「どこかに頭痛薬とかないかな?」

穂乃果「なんか寒くなってきた……」

ーーーーー
30: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 18:46:34.66 ID:1SpuSHH0.net
穂乃果「ここにも血の跡……」

穂乃果「メス、はさみ、……ノコギリ?」

穂乃果「この病院、おかしいよ……」


穂乃果「頭痛薬…」


カツ-----ン


穂乃果「頭いたい…」

カツ-----ン

ーー
ーーーー
ーーーーーーーー
33: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 19:14:09.83 ID:1SpuSHH0.net
海未「井戸ですね」

希「うん」

海未「どうですか? 嫌な気配とかはしますか?」

希「いやここは特にしない。……こっちに来てからずっと感じてる、が正解かな」

海未「そうですか…」


希「井戸で思い出したけど、海未ちゃん」

海未「はい?」

希「覚えといて。『こっち』にあるものを飲んだり、食べたりしたら絶対あかん」

海未「そうなのですか?」

希「うん。下手すると、現世に戻れなくなるかもしれへんから」
34: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 19:18:30.13 ID:1SpuSHH0.net
希「なんとなく分かるやろ? 異世界のものを体内に取り入れる怖さ」

海未「…はい」

希「水はダメ。食べ物もダメ。……できれば、雨水も口に入らないようにして」

海未「分かりました」


希「あと、何か変な声が聴こえても、絶対応えたらあかん。無視すること」

希「異変があったらすぐ逃げ出すこと」

希「そして、気を強く持つこと」

ーー
ーーーー
ーーーーーーーー
35: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 19:58:36.63 ID:BuPbtkNf.net
穂乃果「あった、頭痛薬」


とある一室で、穂乃果は蹲っていた。頭が割れるように痛いのだ。


穂乃果「頭ガンガンしてる……」

穂乃果「早く、早く……」

穂乃果「くっ! 開かない……。なんでっ! なんでっ!?」


パリ---ン

遠くでガラスの割れた音がする。穂乃果はふと我に返った。


穂乃果「…………ああ」

穂乃果「そっか。ガラス瓶なんだから割ればいいんだ」
37: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 20:10:26.88 ID:BuPbtkNf.net
錠剤のつまった瓶が蹴り飛ばされる。

壁に当たり、砕ける。

百を超える錠剤がガラス片と共に床へ散らばる。


穂乃果「ああよかった。最初からこうすればよかったんだ」

穂乃果「頭痛いなぁ……」

穂乃果「薬……」


穂乃果「……っツ!」

穂乃果「いったぁ……っ」


舌から血が滴る。

薬と一緒にガラス片を口に含んでしまったのだ。口の中に血の味が広がる。
39: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 21:01:37.65 ID:BuPbtkNf.net
カリッ コリッ


穂乃果「苦いなぁ…」

穂乃果「美味しくないなぁ…」

カリッ コリッ


穂乃果「水飲みたい……」

穂乃果「水……」

穂乃果「トイレにあるかな?」

ーーーーー

カツ-----ン カツ-----ン


穂乃果「ああ、あったあった」

穂乃果「水出るかな?」


汚れた洗面台。錆びた蛇口。曇りとひび割れに覆われた鏡。

トイレからは異臭がしていたが、穂乃果は気にした様子もない。
40: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 21:20:15.96 ID:BuPbtkNf.net
穂乃果「この蛇口固い……」

穂乃果「開かないなぁ……。んっ! んっ! くそぉ……」

穂乃果「不便すぎるよ……」

穂乃果「んーーーーっ!!」


キュッ

ピチャン


穂乃果「お、ようやく…」


ドバババババババババババ

穂乃果「ひっっ!!?」






蛇口から大量の『血液』が噴き出した。
41: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 21:23:45.99 ID:BuPbtkNf.net
穂乃果「……なんだ、血かぁ」

穂乃果「急に出てくるからびっくりしたよ」





ゴク ゴク ゴク


穂乃果「……ふぅ」

穂乃果「頭痛いのも治まってきたかな」

ーー
ーーーー
ーーーーーーーー
45: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 21:58:00.60 ID:BuPbtkNf.net
海未「これは病院でしょうか?」

希「多分ね」


その頃、海未たちも病院へとたどり着いていた。


海未「希、ここは……」

希「うん。ここが一番やばい。嫌な臭いがぷんぷんする」

海未「じゃあ……」

希「多分、穂乃果ちゃんもここにいる」


希「ねえ海未ちゃん。お守りまだ持ってるよね?」

海未「はい?」

希「出してみて」


海未「…………っっ!? これは!?」

希「ははっ。凄いやろ?」
46: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 22:13:07.68 ID:BuPbtkNf.net
人形を模したそのお守り。

だがーー。


海未「黒ずんでる……?」

希「こんなんウチも初めて見たわ」


ボロボロだった。つい数十分前は新品同然だったお守りが、だ。

カラダ全体が黒く汚れ、両腕に至っては今にも崩れ落ちそうなほど繊維が崩れている。


海未「これは……」

希「身代わりになってくれてるんよ」

海未「身代わり?」

希「藁人形の逆バージョンやね。
同じ人形でも、想いが変われば力も変わるって、そういうこと」
51: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 23:37:58.13 ID:BuPbtkNf.net
海未「身代わり……。どれだけ代わればこんなボロボロになるんですか……」

希「これなかったら、今頃やばかったかもね」


希「…とにかく、中に入る道を探そっか。こんなとこで止まっててもしゃーないし」

海未「はい」

ーーーーー

海未「窓が開いている……?」

希「それに、イス。こっから入ったってこと?」

海未「……っ! 希、行きましょう!」

希「……ちょっと待って? なにか、おかしいことあらへん?」
52: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/18(日) 23:49:10.36 ID:BuPbtkNf.net
海未「おかしい?」

希「……なんでイス使ってるん? そんなに高くないやろ? この窓」

海未「……別に使ってもいいじゃないですか?」

希「それに、なんでこんなとこにイスが放置されてーー」

海未「……希。少し疑心暗鬼になりすぎじゃないですか?」

希「…………」

海未「この中が危険なのは分かってます。ーーですが、早くしないと穂乃果が……」

希「……うん。ちょっと怯えすぎてたかも」
54: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/19(月) 00:01:25.33 ID:9COxN8DO.net
海未「私が先に入ります。続いて入ってきてください」

希「うん。気をつけて」

ーーーーー

海未「こほっ、げほっ。……凄まじく埃っぽいですね」

希「それに、……嫌な気配も増してる」

海未「しかし今のところは……」

希「うん。なんにもなさそう。……でも気をつけて進もう」
60: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/19(月) 12:17:58.72 ID:g1etX10B.net
数分ほど探索して、海未がこう言った。


海未「……おかしくありませんか?」

希「なにが?」

海未「…うまく言えないのですが、違和感があって」

希「……なんとなく分かるよ。それって多分ーー」


希「『なにもなさ過ぎる』からじゃない?」

海未「……ああ、それですね。ここには何もない」


そう、と希が頷く。
61: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/19(月) 12:35:17.47 ID:g1etX10B.net
希「いかにもホラーな建物なのに、なんにもない。
鼻を突く異臭、謎の人影、不吉な物音、凄惨な血の跡。そういう怖いモノがここにはないんよ。
ーーその癖、嫌な空気だけはぷんぷんする」


パリ-----ン


希「ーーって言ったそばから」

海未「不吉な物音、というやつですね。お待ちかねの」

希「どうする? 見に行く?」

海未「行きましょう」

ーーーーー

希「薬……?」

海未「それに砕けたガラスですね。おそらく先ほどの音はこの瓶が割れた音でしょう」
63: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/19(月) 15:15:08.84 ID:k4q4qmhe.net
希「可能性1、なんか幽霊みたいなのが割った」

海未「こちらにきてまだ幽霊の類には出くわしてませんけど」

希「可能性2、穂乃果ちゃんが割った」

海未「なんのためにですか?」

希「可能性3、ただのポルターガイスト」

海未「ただのポルターガイスト、という言葉はなかなかレアですね。希はどれだと思います?」

希「うーん。なんやろ?」


希「分からんけど、このあたりに重要な何かがありそうな、そんな予感はしてる」

海未「そうですね…」


海未は部屋を見回す。

物がたくさん詰め込まれた部屋。
これが脱出ゲームならアイテムの4個や5個はゲットできそうだった。


海未「少し探してみましょうか」

希「うん」

ーーーーー
64: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/19(月) 16:14:12.57 ID:k4q4qmhe.net
それを見つけるのに大した時間はかからなかった。


希「海未ちゃん、これ」

海未「なにかの記事でしょうか」

希「みたいやね。すごく汚れてるけど読めないほどではない。……◯◯病院。サイコキラー?」

海未「◯◯病院……。もしかしてここのことでしょうか?」

希「多分ね」


読み進めていく。

ところどころ虫食いの跡があるが、読める。
65: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/19(月) 16:14:58.47 ID:k4q4qmhe.net
希「サイコキラーか!? ◯田容疑者逮捕」

海未「◯◯病院の患者である◯田容疑者は…………。…………。同病院の患者……。若い少女の。……両腕を」

希「切断……?」

海未「余罪多数。取り調べに対し支離滅裂な供述を……」


パサリ、と。

記事の裏から数枚の写真がひらりと剥がれ落ちる。

モノクロの古い写真。


海未「ぐっ、うげっっ、おえ!」

希「な、なんやこれ……。っぐっ!」


女の死体だった。
66: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/19(月) 16:29:10.93 ID:k4q4qmhe.net
希「ぐっ、やばいやばいやばいやばい! この写真はマズイ! 海未ちゃん一旦でよ!」

海未「は、はい……」


モノクロでよかった。

カラーだったらへたり込んでそのまま吐いていたかもしれない。


希「大丈夫?」

海未「……はい、すみません」

希「ちょっと休憩しとこか」

海未「……いえ。大丈夫です。穂乃果を探しましょう」

希「……うん。そやね」

海未「早くしないと危ない気がするんです。穂乃果が、危ない……」

ーー
ーーーー
ーーーーーーーー
70: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/19(月) 17:30:54.38 ID:rj4LkuTd.net
カツ-----ン カツ-----ン


穂乃果「なにすればいいんだっけ……」

穂乃果「薬飲んで、頭痛も治まって。……次はなにをすれば……」


カツ-----ン

カツ-----ン

パリ-----ン

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!!!


穂乃果「うるさいよ……」
71: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/19(月) 17:31:50.52 ID:rj4LkuTd.net
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン!!!!

『……ぃ。足りない。足りない足りない足りない足りない足りない!!』

『私の腕! 腕! 腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕!!!』


カツ-----ン カツ-----ン


『返せ……』


穂乃果「そうだ。自分の身を守らないと……」

穂乃果「ここには怖い人がいるから。戦わないと……」

穂乃果「なにか武器を……」
72: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/19(月) 18:11:36.70 ID:rj4LkuTd.net
穂乃果「メス、ハサミ、包丁?」

穂乃果「ノコギリ、ノコギリ、ノコギリ……? 鉄パイプ、ガラス片……」

穂乃果「こんなのダメだよ……」

穂乃果「なにか、どこかに穂乃果でも使えるような……」


カツ----------ン

カツ----------ン

カツ-------ン

カツ-----ン


穂乃果「ひっ!?」

穂乃果「近づいてきてる……!」
76: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/19(月) 18:56:00.27 ID:rj4LkuTd.net
穂乃果「どこかに隠れないと! どこ、どこ……っ!?」

穂乃果「……っ! ロッカー!」


バタンッ


半開きになっていたのを幸いに、穂乃果は隙間に足を差し込んで開けはなつ。





中には女の生首があった。

眼球は零れ落ち、舌もだらしなく伸びている。生気はなく、虚ろだった。


『腕、私の腕……』

穂乃果「ひっ」
77: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/19(月) 18:57:20.26 ID:rj4LkuTd.net
カツ----ン
カツ---ン


穂乃果「早くしないと……っ」

穂乃果「ベッドの下……!」


ーー臓物がぶちまけられていた。

匣をなくした臓器はとても柔らかそうな形をしていた。

カツ--ン
カツ-ン


穂乃果「…………っっ!」


穂乃果は飛び込む。


穂乃果「ひっ」


柔らかい。温かい。柔らかい。気持ち悪い。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い柔らかい気持ち悪い気持ち悪い。





カツン

カツン
78: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/19(月) 20:47:10.42 ID:rj4LkuTd.net
穂乃果「…………っっ」

穂乃果「やだ……っ」


カツン

カツン


穂乃果「足が近づいてきてる……」

穂乃果「お願い……。どっか行ってよ……っ!」


カツン

カツ


『どこぉ〜〜?』


穂乃果「…………っ」

穂乃果「ぁ……」カタカタカタ
79: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/19(月) 20:50:38.48 ID:rj4LkuTd.net
『あなたはどこぉ〜〜?』


穂乃果「…………ひっ」


『お腹すいたよ〜〜』


カツ-ン

カツ---ン

カツ-----ン


穂乃果「…………」

穂乃果「……もう、行った?」




カツン

『みぃ〜つけた』


穂乃果「ひっ!? いやーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
80: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/19(月) 20:51:34.08 ID:rj4LkuTd.net
『ハハハハハハハハハハハハひひひひひひハッッッ! ぎぃはははひひひひひひひひひひひ!』

穂乃果「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいやめて下さいお願いします嫌だ切らないでいやだ!ふざけんなテメェ死ね死ね死ね死ね死ね嫌だごめんなさいなんでこんなことするの!?嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!」


『……るぇ』


穂乃果「ヒヒッ! ヒハハハハハハハッッッ!」


『ヒハハハハっ! 狂え……』


穂乃果「あ、あ、ぁあ…………」


『狂え!!!』




海未「穂乃果っっっ!!」
81: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/19(月) 21:33:38.88 ID:rj4LkuTd.net
穂乃果「…………ぇ?」

海未「大丈夫ですか!?」

希「……穂乃果ちゃん」

穂乃果「あ……。海未ちゃん、希ちゃん……」

海未「そうです。海未です。……もう、いつも心配かけて穂乃果は!」

穂乃果「…………」

海未「どれだけ心配したと思ってるんですか!? なんで、なんでっーー」


穂乃果「……来ないで!」

海未「ーーえ?」
82: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/19(月) 21:34:25.62 ID:rj4LkuTd.net
穂乃果「ダメだよ海未ちゃん。危ないよ? 近くに怖い人がいるんだよ。早く、逃げないと……」

海未「……なにを言ってるんですか。いませんよ、そんな人」

穂乃果「それに、穂乃果いっぱい汚れちゃったし。血で。ほら、臓器がこんなに」

海未「なにを、言ってるんですか……?」

穂乃果「それにさっきから、監視されちゃってるの。ほら、ロッカーにさ、見えるでしょ? 生首」

海未「ほ、穂乃果……? そんなもの、私には見えませんよ……?」

希「…………穂乃果ちゃん」


穂乃果「それに私、こんなカラダだし」

海未「……………………え?」
83: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/19(月) 21:41:24.01 ID:rj4LkuTd.net
海未「なんで、穂乃果? なんで、こんな、なんで……?」


 


   


    


     



海未「腕、どこですか?」
100: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/20(火) 21:58:03.35 ID:JiGq9VsI.net
海未「な、なに言ってるはこっちのセリフでしょう……? 穂乃果、なんで両腕とも、それ……」

希「海未ちゃん、落ち着いて」

海未「は、はい……」

穂乃果「そうだよ。腕なんてないのが当たり前でしょ? ねえ希ちゃん」

希「…………」

海未「希、どうすれば……」

希「落ち着いて。……多分、まだ穂乃果ちゃんを助けられるかもしれん」

海未「!! 本当ですか!?」

希「うん。でも…………」


その時、穂乃果の眼に不思議な色が宿った。

何かに操られるかのようにゆらりと立ち上がる。
102: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/20(火) 22:22:10.34 ID:JiGq9VsI.net
穂乃果「ていうか、おかしいのは二人の方だよね?」

海未「ほ、穂乃果……?」

穂乃果「腕があるなんて、ダメなんだよ? ここはそういう場所なんだから」

希「海未ちゃん下がって!」

穂乃果「なんで二人とも、腕あるの? おかしいよね? なんで? なんで腕とれてないの? なんで? なんでなんでなんでなんでなんで!? なんで私だけ!? ふざけないでよ!」

海未「ひっ」

希「逃げるよ!」

海未「しかし、穂乃果が!」

希「いいから!」

穂乃果「返せえええええええ!!!!」
120: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/22(木) 22:19:14.14 ID:q48QIuLD.net
希「走って!」

海未「くっ……!」

希「入ってきた部屋まで!」

海未「分かりました!」


穂乃果「私何にもないんだよ!? いいじゃんみんな二本ずつあるんだからさぁ! 私にも一本くらいさぁ!」

希「ちょっとスピード落として! 穂乃果ちゃんが追いついてない!」

海未「大丈夫なんですか!?」

希「ギリギリまで引きつける! はぐれちゃったら穂乃果ちゃんを助けられないから!」

海未「難儀なものですね……!」
121: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/22(木) 22:19:59.75 ID:q48QIuLD.net
タッタッタッタッタッ

ガチャッ!

希「ドア押さえて!」

海未「はい!」

穂乃果「頂戴よ! 腕! あなたの腕ぇぇえええええええ!!!」

ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ!


希「よく聴いて海未ちゃん! 今から穂乃果ちゃんを中に入れる」

海未「はい!」

希「ウチも出来るだけのことはしてみる。穂乃果ちゃんを助けるために」

海未「私はどうすれば」

ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ!

希「穂乃果ちゃんが暴れないよう抑えてて。寝技でも締め技でも。……ぶん殴って気絶させてでもいい」

海未「……はい」
122: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/22(木) 22:20:34.92 ID:q48QIuLD.net
希「人形だしてくれる?」

海未「はい」

希「……うっわぁ。凄いことになっとるね。まあでも、まだ使えるかな?」


これがなかったらどうなっていただろう、と海未は思う。


穂乃果のように狂っていたかもしれない。

腕がなくなっていたかもしれない。


希「入れていいよ」

海未「はい!」

ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ!

ガチャッ
156: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 13:44:08.29 ID:Zkucrlil.net
穂乃果「がぁぁあああああああああっっ!!!」

希「海未ちゃんお願い!」

海未「はい!」


暴れる穂乃果を組み伏せる。


軽い体だった。

当然だった。両腕がないのだから。


穂乃果「離せ! 離せぇぇぇぇえええええ!」

希「海未ちゃん! 大丈夫そう!?」

海未「想像していたよりは! 希! ここからどうするんですか!?」
157: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 13:45:09.33 ID:Zkucrlil.net
希「吐かせる!」

海未「はい!?」

希「海未ちゃんはそのまま抑えといて!」


希は膝を曲げ、穂乃果の目を覗き込んだ。


希「ごめんね穂乃果ちゃん。噛まんでとは言わんけど、できるだけ優しくしてな?」

海未「希!? 吐かせるってーー」


その瞬間、穂乃果の喉奥に指が突き入れられた。


穂乃果「っぅぐ!?」

希「大丈夫やでー。安心して全部吐いちゃってなー」
158: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 13:47:54.99 ID:Zkucrlil.net
穂乃果「んがっ! がふっ、ぐっ」


ガリッ!


希「っツ」

海未「希!? 指から血が!」

希「いいから抑えてて!」

海未「っ、は、はい!」

穂乃果「がっ、んぐっ! ん"がっ」


ガリッ! ギリリリリッ!


希「大丈夫やでー? ウチらが絶対助けてあげるから」
159: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 15:47:02.08 ID:B6W6Gftx.net
海未「希……」

希「だから、あとはウチらに全部任せて?」


喉奥のぬるりとした粘液をこすりあげる。

穂乃果のカラダがぴくりと動いた。


穂乃果「ぐぶっ、げぇええええぇぇ」

希「っと」


黄色い胃液が吐き出される。


希「目に見える大きさのものは食べてないみたいやね」

穂乃果「っ……」

海未「穂乃果!?」

希「大丈夫。気ぃ失ってるだけやと思う」
161: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 16:06:38.56 ID:B6W6Gftx.net
海未「そうですか……。……って希!? 血がたくさん……っ」

希「はは、穂乃果ちゃん歯ぁ丈夫やね。めっちゃ痛い」

海未「冗談言ってる場合じゃないです! ああ、ええと、どうすればっ」

希「まあ、このくらいなら大丈夫。それより、この人形二つとも穂乃果ちゃんのポケット入れてくれる?」

海未「はい」


穂乃果を仰向けにして、口元の汚れを拭う。

人形をポケットに入れる。


ーーその時。
162: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 16:07:13.46 ID:B6W6Gftx.net
カツ------ン

カツ------ン


海未「……足音?」

希「……いまの、海未ちゃんも聴こえた?」

海未「はい」

希「ウチにも聴こえた。でもこれ……、多分幻聴やと思う」

海未「幻聴?」

希「詳しい説明は後。早くここから出よう」

海未「分かりました」
167: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 19:38:26.25 ID:SqezoZRT.net
ザ------


海未「……穂乃果はもう少しダイエットするべきですね」

希「あはは、そんな重いなら代わろっか?」

海未「いえ、大丈夫です。……私、さっきからなにもできてないので、これくらいは」


穂乃果を背負って雨の中を歩く。

衣服が水に濡れて重い。

頭が痛い。


希「辛くなったら言ってね? できれば、急いでこの異界から出たいから」

海未「もしかして時間制限なんてあるんですか」

希「うん。人形、穂乃果ちゃんに渡しちゃったやん?」

海未「はい」
168: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 19:39:11.36 ID:SqezoZRT.net
希「もう、ウチと海未ちゃんを守るものがないってこと」

海未「なるほど……」

希「だから、早くしないと……」

海未「出られる場所は、わかってるんですか?」

希「うん。心当たりはある。ーーそれより海未ちゃん」

海未「はい?」


希は困ったように眉を寄せて言った。


希「頭、すっごいズキズキするんやけど」

海未「……私もです」
170: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 20:01:42.98 ID:SqezoZRT.net
海未「井戸……?」

希「うん」

海未「…………飛び降りろと?」


往路で通った道だ。

中を覗きこむと、奥深くまで真っ黒な闇で満たされていた。


海未「現世への道というよりは、あの世の入り口といった風情ですが」

希「石、投げ入れてみてくれる?」

海未「はい?」

希「音がしたらハズレ。ただの井戸。音がしなければ当たり」

海未「の、希……?」

希「ていうか、頭痛い……」
171: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 20:04:55.24 ID:SqezoZRT.net
言いたいことは分かる。

石を投げ入れることはできる。


海未「希、大丈夫ですか……?」

希「うん。…………あ?」


しかし、自分は穂乃果を背負っているのだ。

何故、石を投げ入れるなんて簡単なことを、希は自分でしない……?


その疑問に希も気づいた。


希「……あれ? なんで、ウチ。なんで、……え?」
174: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 20:10:16.87 ID:SqezoZRT.net
ミス
ーーーーー

希「……おかしいよね? ウチ、大丈夫だよね? これは、違うよね?」

海未「希? 落ち着いてください!」


 


   


    


希「ウチの腕、どこ?」
175: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 20:18:31.14 ID:SqezoZRT.net
海未「なっ!?」

希「大丈夫。大丈夫やから。大丈夫。大丈夫大丈夫大丈夫」

海未「希!? 聴こえますか!?」

希「うん…」

海未「落ち着いてください! ちゃんと腕はあります!」

希「……そっか」


嘘ではない。海未の目にはちゃんと、希の腕が見えている。


少なくとも、海未にはそう見える。

少なくとも、今のところは、まだ。


希「ウチは、本当は腕あるよね?」

腕「はい!」

希「うん、ありがとう……」
176: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 21:21:20.68 ID:SqezoZRT.net
海未「希、これはどういうことですか?」

希「多分、幻覚なんやと思う」

海未「幻覚?」

希「うん。穂乃果ちゃん見つけたときも、なんかよくわかんないこと言ってたやん?」

海未「ああ。内臓だとか生首だとか」

希「穂乃果ちゃんの眼には、そういう何かが見えてたんだと思う」

海未「では、腕がないのもただの幻覚で、『そういう風に見えるだけ』ということですか?」

希「うん。……でも」


でも、という言葉に頬が強張る。
177: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 21:21:57.34 ID:SqezoZRT.net
希「向こうに帰れても、後遺症くらいは残るかもしれん」

海未「………そうですか」

希「とにかく、海未ちゃんお願い」

海未「っ、はい!」


穂乃果を丁寧に地面に寝かせる。

手頃な石を拾い上げーー。


眩暈。


海未「ーーっツ」

希「海未ちゃん?」

海未「……大丈夫です」
178: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 21:22:46.11 ID:SqezoZRT.net
腕はまだある。

井戸を覗き込み、石を落とした。

音はーー。


海未「しませんね」

希「……もう一回」

海未「はい」


石を拾い上げる。


そして、再び襲い来る頭痛と眩暈。

遠近感が一瞬で狂った。霞んだ視界の中で腕が肘までの長さに縮んで見えた。
179: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 21:25:14.42 ID:SqezoZRT.net
海未「……っぐ」

希「海未ちゃん?」

海未「……大丈夫、です」


もう一度石を落とすが、やはり音はしない。


希「しなかったよね?」

海未「……はい」

希「じゃあ行こう。ウチもうそろそろ限界……」

海未「私も、……あ」


穂乃果を起こそうとした時、ついに、海未の眼にもそれが起きた。


 


   


    

海未「うでが、…………な、い?」
180: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 21:52:42.41 ID:SqezoZRT.net
希「落ち着いて。ウチには、まだあるように見えるから」

海未「…はい」

希「でも、穂乃果ちゃんどうしよ。マズイやん」


すでに希の腕は、海未の眼からもないように見えた。

少しずつ症状が悪化していくのかもしれない。


海未「希の眼にはまだ、私の腕はあるんですよね?」
182: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 21:54:16.48 ID:SqezoZRT.net
希「うん。でも」

海未「なら、大丈夫です」

希「…………え?」


ググッ


海未「まったく、本当に、帰ったら穂乃果のダイエットメニューを考えないといけませんね」

希「……海未ちゃん、それどうやって持ち上げてるん……?」

海未「愛の力です」

希「…………すごいね」

海未「お腹の中からの幼馴染ですから」
183: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 22:10:35.35 ID:SqezoZRT.net
希「じゃあ行こうか」

海未「はい。……底があったら恨みますからね」

希「化けて出たらまた会えるね」

海未「……冗談はやめてください」

希「ごめんごめん。じゃあ、いっせーのーせで」

海未「はい」


希「元の世界に」

海未「帰りましょう」


ーー
ーーーー
ーーーーーーーー
184: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 22:48:52.31 ID:SqezoZRT.net
ことり「はい、あーん」

穂乃果「あーん!」


もぐもぐもぐ。


穂乃果「んー! ひょうもはんがうまひ!」

海未「……穂乃果」

穂乃果「ひえっ!?」


ごっくん。


穂乃果「海未ちゃん、いつからそこに!?」

海未「最初からです! 穂乃果、ダイエットはどうしたんですか!?」
185: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 22:49:28.82 ID:SqezoZRT.net
穂乃果「むー!? でも穂乃果、お医者さんからご飯はいっぱい食べろって言われてるもん!」

海未「限度があるでしょう! さっきからもぐもぐごっくんもぐもぐごっくん!」

穂乃果「海未ちゃんはリハビリの辛さを知らないからそんなこと言えるんだよー! あれすごい疲れるんだよ!?」

海未「ぐぬぬぬぬぬ!」

穂乃果「ぐぬぬぬぬぬ!」

ことり「あ、あはは……。二人とも、病院だから静かにしよ?」


希「おはよー!」

真姫「元気ねアンタたち」

凛「お見舞いにきたよー!」
186: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 22:49:58.64 ID:SqezoZRT.net
穂乃果「三人ともおはよー!」

真姫「あとの三人はもう少しかかるって。これお見舞いに果物」

穂乃果「おー、ありがと真姫ちゃん! ことりちゃんリンゴむいてー!」

ことり「うんっ」

海未「リハビリがてら自分で剥いてみたらどうですか?」

穂乃果「むむ、甘く見ないでほしいね。手が動く動かないに関わらず、穂乃果は元からリンゴ剥けないもん」

海未「なに誇らしげに言ってるんですか……」
187: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 22:50:44.65 ID:SqezoZRT.net
穂乃果「ええ!? アイドル活動休止ぃ!?」

真姫「仕方ないでしょ?」

穂乃果「そんなぁ〜〜〜! ぅう……、みんなごめんね?」

凛「でも、海未ちゃんと希ちゃんは大丈夫なの? 結構危ない目にあったって聞いたにゃ」

海未「私は大丈夫ですが」

希「ウチも」

穂乃果「ええ!?」

海未「鍛えが違いますから」

希「スピリチュアルやから」

穂乃果「なんかすごいボヤッとした理由! いや、二人が無事なのは良かったけど! 良かったけどぉ!」
188: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 22:51:37.87 ID:SqezoZRT.net
真姫「ま、穂乃果が治ったら再開するわよ」

凛「腕立て伏せができるくらいになったら良しって絵里ちゃんが言ってたにゃ」

穂乃果「腕立て伏せ? できらぁ!」

ことり「わーーー!? しなくていいよ穂乃果ちゃん! 安静に!」

穂乃果「むむむ、じゃあ、これくらいならできるもん!」


ピ ピ ピ


希「穂乃果ちゃん?」

穂乃果「はい、海未ちゃん希ちゃん!」

海未「はい?」
189: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 22:52:19.46 ID:SqezoZRT.net
差し出されたスマホ。

メモ帳に記された、五文字。


あ り が と う


穂乃果「えへへ」

海未「……もう」

希「ふふっ」


穂乃果「よーし、リハビリ頑張るぞー! さっそく腕立て伏せを!」

海未「しなくていいですから!」
190: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/09/29(木) 22:53:49.09 ID:SqezoZRT.net


なんとか書き上げることができました

保守してくださった方々。最後までお読みくださった方々。ありがとうございました
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『【SS】穂乃果「腕立て伏せ? できらぁ!」』へのコメント

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