穂乃果「愛するものが死んだときには」

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穂乃果-アイキャッチ48
1: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/05/06(水) 22:55:09.40 ID:0IH/YnS/.net
 自殺しなけあなりません。

 愛するものが死んだときには、

 それより他に、方法がない。

元スレ: 穂乃果「愛するものが死んだときには」

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2: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/05/06(水) 22:55:44.97 ID:0IH/YnS/.net
※地の分あり 短い
3: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/05/06(水) 22:56:22.66 ID:0IH/YnS/.net
 ゴールデンウィーク最終日。明日から始まる仕事にウンザリしながらテレビを見ていると、ふとお姉ちゃんがやってきた。

「ちょっと散歩行くけど、雪穂も来る?」
「んー……」

 少しばかり迷って、着いていくことにした。暇だというのもあったし、久しぶりにお姉ちゃんと二人で話したいという思いもあった。
 財布とケータイだけもって、お姉ちゃんの後に続く。お母さんに一声かけて、サンダルで玄関を出る。
 夏というには弱く、春というには強い日差しが突き刺さる。じんわりと、汗が浮き出てくるようだった。

「じゃ、いこっか」
4: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/05/06(水) 22:57:07.21 ID:0IH/YnS/.net
「雪穂は最近どう?」
「普通だよ、普通。仕事にも慣れてきたし」

 三年も勤めれば、慣れるというもの。業務だけでなく、同僚との軋轢や上司からのセクハラを回避する方法も、それなりに上手くなった。
 かつて、スクールアイドルとして得た栄光はすでに忘れ去られている。ラブライブに出場することはあっても、ついぞ優勝することはできなかったから当然か。
 本当のアイドルをやらないかとスカウトされたこともあったけれど。結局受けずに、それなりの大学を出てそれなりのところに就職した。
 山もなければ、谷もない。恋人ができる気配も、感じられない。

「そっちはどう? 繁盛してる?」
「まあまあかな」

 お姉ちゃんは高校を出た後、専門学校へ行った。栄養管理とか、調理師とか、そっち方面の資格を取って、今は穂むらで働いている。
 まだ、正式に継いだわけではない。お父さんもお母さんもまだまだ元気だし、それにお姉ちゃんもまだまだ未熟だという。
 傍から見ている分には十分だと思ったけれど。まぁ、和菓子屋というのも案外大変で、お姉ちゃん一人でできるというわけではないのだろう。
 そのせいかどうかは分からないけれど、お父さんは弟子を取った。寡黙で口下手な、いってしまえばお父さんに似た人だった。
 お姉ちゃんとも、それなりに仲がよさそうだった。
5: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/05/06(水) 22:57:40.74 ID:0IH/YnS/.net
「ほのかおねーちゃんだ!」

 保育園のそばを通ると、そんな声が聞こえた。見れば、幼い子供が大きく手を振っている。
 それに対してお姉ちゃんも小さく手を振り返している。その所作に随分と大人になったものだと感心する。
 学生の頃であれば、というものの働き始めて五年も経っているのだから、当然といえば当然である。

「またねー!」

 しかし、ゴールデンウィークも働き詰め、という人もやっぱりいるみたいだ。これもまた、当然といえば当然なんだけれども。

「知り合いだったの?」
「うん、たまに保育園でピアノ弾いたりするから」

 ピアノ。音楽。
 お姉ちゃんは、働き始めてからいろんなことをやっている。今言ったピアノだったり、ギターだったり。
 後は、剣道や裁縫も始めたとかなんとか。仕事は大変だけど、時間は余っているとはお姉ちゃんの弁。

「最近はボランティアとかもやってるよ。暇なときにだけだけど」

 お姉ちゃんはそういって、どこか寂しそうに笑った。
6: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/05/06(水) 22:58:12.06 ID:0IH/YnS/.net
 ぶらぶらと歩いていると、ふと共同墓地が目に止まった。同時に、お姉ちゃんの足も止まる。

「……ちょっと、挨拶してきていい?」
「……うん」
7: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/05/06(水) 22:58:55.21 ID:0IH/YnS/.net
 共同墓地の墓石の一つ。その下に、かつてお姉ちゃんの恋人だった人が眠っている。
 元μ'sのメンバーで、お姉ちゃんが愛していた人。
 事故、だったらしい。詳しいことは聞いていないけれど、お姉ちゃんの目の前で、どうにもならない傷を負ったそうだ。
 お姉ちゃんが変わったのは、きっとこれが原因なのだろう。
 あれだけ夢中になっていたアイドルを辞めて、穂むらを継ぐことにして。また、いろんなことを始めて。
 どれだけ経っても、お姉ちゃんはこの人のことを引きずり続けている。
8: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/05/06(水) 22:59:26.36 ID:0IH/YnS/.net
「お姉ちゃんはさぁ、結婚とかしないの」
「どうしたの、いきなり」
「いやー、お姉ちゃんも結構いい歳じゃない。身を落ち着ける気はないのかなって」

 散歩の帰り道。そんな風に尋ねてみた。

「ほら、お父さんの御弟子さんとかどうなの? お父さんに似てるし、結構格好いいし」
「んー……。結婚は、しなくていいかな」

 半ば、予想していた通りの言葉。お姉ちゃんの心の中には、ずっとあの人がいる。

「やっぱり、今でも大好きだから」
「……辛くないの?」
「死んでしまおうと思ったこともあるけど、やっぱりそれはね。私が死んでどうにかなることでもなかったし、それに」
「それに?」
「あの人のために、なにかできることがあると思ったから」
9: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/05/06(水) 22:59:58.56 ID:0IH/YnS/.net
「それじゃあ、また。暇ができたら」

 夜。私が穂むらを離れる時間となった。といっても、来ようと思えばすぐに来れる場所。特に感慨はなかった。

「あ、雪穂。これあげる」

 最後にお姉ちゃんは、そういって一冊の本をこちらに渡した。結構な厚さがある。
 中身をぱらぱらと見てみると、どうやら詩集のようだった。

「お姉ちゃん、こんなの読んでたんだ」
「私だって少しくらいはね」

 まぁ、たまの暇つぶしくらいにはなるんじゃないだろうか。
10: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/05/06(水) 23:00:44.92 ID:0IH/YnS/.net
 帰りの電車の中、詩集を流し読みしていると、ふと栞が挟まっていることに気づく。
 お姉ちゃんの読み途中だったのか、それとも読み返せるようにか。おもむろに居住まいを正して、読む体勢を整える。
 愛するものが死んだときには。そんな序文で始まる詩。読み進めていくと、不意にお姉ちゃんの行動の意図が分かったような気がした。
 奉仕の気持ちに、ならなけあいけない。つまりはそういうことなんだろう。
 お姉ちゃんはずっと、あの人のために生きている。私の解釈が正しいかどうかは分からないけれど。
 きっと、これからもそうだろう。あの人のためにお姉ちゃんは生きるのだろう。死んでしまうその日まで。
 少しだけ、羨ましいと感じてしまう。お姉ちゃんにそこまで思われているあの人が。そこまであの人を愛せるお姉ちゃんが。

「まぁでも、そんな恋愛はしたくないなぁ……」

 それはそれは、とても辛く悲しいことだろうから。
11: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/05/06(水) 23:01:40.58 ID:0IH/YnS/.net
おわり
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