穂乃果「パン屋再襲撃」

シェアする

穂乃果-アイキャッチ8
1: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/04(金) 00:43:11.47 ID:9R64IC3x.net
1:00 A.M.


絵里「いい?店に入ったら、穂乃果は客をホールドアップして。
私は店員を制圧するから」

穂乃果「う、うん」

絵里「この作戦は、速やかに行なうこと。ちんたらしてると警察を呼ばれるわ」

穂乃果「大丈夫かな?穂乃果、怖いんだけど…」

絵里「心配ないわ。あなたならできる」

穂乃果「………」


私はこの『パン屋再襲撃』から、一体何を得るのだろうか?

元スレ: 穂乃果「パン屋再襲撃」

スポンサーリンク
2: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/04(金) 00:44:06.08 ID:9R64IC3x.net
11:00 P.M.(襲撃2時間前)


この日は、とにかくお腹が空いていた。

冷蔵庫の中には、食べ物と呼べるものは何も残ってなかった。

お腹を空かせた私は、誰かがどこかに食べ物を隠していないもの
かと家中を徘徊していた。


穂乃果「あ、見て。歯磨き粉だ。これ結構おいしいんだよね」


私はお腹が空きすぎて、うまく思考が働かない状態にあった。


絵里「あなた、人としてのプライドは無いの?そんなものを
食べるのは、ホームレスかゴキブリぐらいよ」

穂乃果「………」


ホームレスとゴキブリが歯磨き粉を食べているのかなんて、
正直どうでもいいことだった。


穂乃果「お腹空いたよ…」
3: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/04(金) 00:48:27.79 ID:9R64IC3x.net
雪穂の部屋にあったビスコが、我が家にある最後の食べ物だった。

私は3枚食べ、彼女は2枚食べた。

私の頭は、ようやく働き出した。


穂乃果「思ったんだけどさ、どうして我が家には、食べ物が一つとして残されていないんだろう?」

絵里「あなた、今日はずっと家にいたんでしょう?あなたがそのことを把握していないのはおかしいわ」

穂乃果「絵里が家に来るまで、私はずっと寝てたんだもん。
まさか寝てる間に、冷蔵庫から食べ物が姿を消すとは思わないよ」

穂乃果「それにさ。冷蔵庫の中には食べ物はおろか、味付けに使うであろうソースの類すらも残されてないんだ」


びっくりしたよ。冷蔵庫を買い換えたのかと思った。

しかし、買い換えたにしては、傷物で、ボロかった。


穂乃果「台所も調味料だけ綺麗に無くなってるし、まるで食材たちが私を避けてるみたいだよ」


私は、ビスコの袋に残っていたカスを口の中に流し込んだ。
4: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/04(金) 00:49:40.01 ID:9R64IC3x.net
私と彼女は椅子に座り、机に突っ伏すように倒れこんだ。

この時私は、自分がまだ小学生だった頃を思い出していた。


穂乃果「お腹空いたー」


無意識のうちに言葉が口から出てくるが、それは空腹を満たしてはくれなかった。


絵里「ねえ、ここは和菓子屋を営んでいるんでしょう?それなら、
和菓子の一つや二つくらいあるわよね?」

穂乃果「…和菓子は、ダメだよ」

絵里「歯磨き粉はいいのに、どうして和菓子はダメなの?」

穂乃果「…」


私は訴えかけるような目で彼女を見た。

彼女はそれ以上聞いてくることはなかった。


絵里「でも、このままだと低血糖で倒れるわね」

穂乃果「うん…」


この時もまた、無意識のうちに、考えていたことを口にしていた
5: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/04(金) 00:51:11.72 ID:9R64IC3x.net
絵里「…今、『パン屋襲撃』って言ったの?」

穂乃果「え?私、そんなこと言った?」

絵里「ねえ、『パン屋襲撃』って何かしら?詳しく教えてちょうだい」


何事にも関心を持たない彼女が、珍しく興味を惹かれたらしい。


穂乃果「たいして面白い話じゃないよ」

絵里「別に構わないわ。話して」


なんとなく、彼女には話しておかなければならない気がした。
7: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/04(金) 00:52:42.37 ID:9R64IC3x.net
穂乃果「私がパンに魅せられているのは、絵里も知ってるよね?」

絵里「ええ。ずっとおやつが和菓子だったから、パンや洋菓子を好むようになったんでしょ」

穂乃果「うん。昔から両親によって、パンを規制されてたんだ。
だけどある日、どうしてもパンが食べたくなって、パン屋を襲撃
することにしたんだ。だけど、それは失敗に終わった」

絵里「失敗?つまり、パンは手に入れられなかったってこと?」

穂乃果「ううん。パンは手に入れられたよ。ただ、襲撃という点においては、失敗だったんだ」


私は息を吐き、肺の空気を入れ替える。


穂乃果「私は近所のパン屋を襲うことにしたんだけど、パン屋の
おじさんは、私の襲撃を知ってたみたいに、準備してた袋の中に
パンを詰めて、それを私に渡してきたの」

穂乃果「私はそれを、ただ受け取るしかなくて、結局そのまま
持って帰ったんだ。両親はそのパンの山を見て、呆然としてたよ。
まさか、娘がパン屋襲撃なんて考えてたとは思わないだろうしね」

絵里「…それが、『パン屋襲撃』なのね?」


確かに、大して面白い話ではなかったわね。彼女はそう言った。


穂乃果「本当は、こんな話するつもりなかったんだけどね」
8: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/04(金) 00:53:51.66 ID:9R64IC3x.net
空腹を紛らわすために寝ようと試みたが、眠気は来なかった。

おそらく、食欲が満たされるまで睡眠欲は訪れないのだろう。


穂乃果「…絵里。お金持ってる?」

絵里「持ってないわ。急に呼び出されたんだもの」

穂乃果「そう、お腹空いた…」


お腹空いた。が私の口癖になりつつあった。


『パンがないなら、お菓子を食べればいいじゃない』

かつて、マリーアントワネットはこう言ったそうな。

しかし今の私には、パンもなければ食べ物もない。そもそも、
外に出る気力すら残っていない。

目を閉じて、何も考えず、意識を沈めることで、空腹を堪えた。
9: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/04(金) 00:55:11.46 ID:9R64IC3x.net
絵里「ねえ、もう一度、襲撃をしてみたくない?」

穂乃果「え?何を言ってるの」


さっきまでずっと目を閉じていたせいで、部屋の光が眩しかった。


絵里「リベンジよ。あなたはパン屋を、もう一度襲撃するの」


彼女が何を言ってるのか、さっぱり理解できなかった。

私はたまに、彼女のことがわからなくなる。


絵里「今度こそ成功させて、過去の呪縛から解き放たれるのよ」


彼女の言葉は、ずっと前から計画を練っていたみたいに自信たっぷりだった。
10: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/04(金) 00:56:36.91 ID:9R64IC3x.net
家を出て、彼女の車に乗り、私たちはパン屋再襲撃に向かった。

車の中は、終始無言だった。


絵里「…中々見つからないものね」

穂乃果「そりゃそうだよ。パン屋はこんな夜中までやってないよ」


それからしばらく車を走らせ、こんな時間まで開いている、
『物珍しいパン屋』を探した。

何十分か走った後、彼女は路肩に車を停めた。


絵里「あなたの言う通りね。こんな時間にパン屋は開いてない」


彼女はようやくパン屋探しを諦めた。

私は胸を撫で下ろした。
11: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/04(金) 00:57:30.16 ID:9R64IC3x.net
絵里「…ねえ、あそこにある看板、見える?」

穂乃果「看板?」


私は彼女の指差す方を見る。

街灯や車のライトが溢れる夜の道路に、燦々と輝く看板があった。

その看板は、赤と黄のツーカラーで、『M』の文字を飾っていた。

相変わらず趣味の悪い看板だと思った。


絵里「パン屋がないなら、マクドナルドで妥協しましょう。
ハンバーガー屋なら、パン屋と呼べなくもないわ」

穂乃果「え」


彼女が何を言ってるのか、私にはさっぱりわからなかった。

私はよく、彼女のことがわからなくなる。
12: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/04(金) 00:58:44.27 ID:9R64IC3x.net
車をマクドナルドの店舗前に停め、彼女は後部座席に置いてあった
リュックを抱えて車を降りた。私はその後から付いていく。

まさか、マクドナルドで強盗をすることになるとは、小学生の私は
思いもしなかっただろう。

店の近くに来たところで、彼女はリュックから散弾銃を取り出し、
それを私に渡してきた。

彼女はお金を持っていないのに、なぜか散弾銃は持って来ていた。

散弾銃は、今までこのリュックに入っていたとは思えないくらいにでかく、そして重たかった。


穂乃果「…血は見たくないな」

絵里「そんなことにはならないわ。まあ、相手の出方次第だけど」


私はどでかい銃を胸に抱きながら、ゆらゆらと進んでいく。

空腹は、人を狂わせる。
13: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/04(金) 00:59:51.26 ID:9R64IC3x.net
1:00 A.M.


絵里「いい?店に入ったら、あなたは客をホールドアップして。
私は店員を制圧するから」

穂乃果「う、うん」

絵里「この作戦は、速やかに行なうこと。ちんたらしてると警察を呼ばれるわ」

穂乃果「…」


私の中で、色々な不安が湧き起こっていた。

しかし、もう既に、来るとこまで来てしまっている。

私は覚悟を決めた。


絵里「いくわよ」

穂乃果「うん」


もしこの襲撃で、私が何かを失ったりしても、それは私の勝手だ。

誰にも文句なんて言わせない。
14: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/04(金) 01:00:58.73 ID:9R64IC3x.net
店に入ると、大学生のアルバイトが、『いらっしゃいませ』と、
マニュアル通りの笑顔で言った。

まさか、今から強盗をしようとしている人間に笑顔を振りまいて
いるとは夢にも思わないだろう。


絵里「動かないで」


彼女は店員を睨みつけながら、そう呟いた。

背筋が凍るほどの威圧感があった。

私はその間に、抱いていた散弾銃を構え、銃口を客席に向けた。

だが、客はカップル一組だけで、しかも机に伏せて爆睡していた。

拍子抜けした私は、銃を持て余していたので、とりあえず大学生のアルバイトに銃口を向けた。


私がおろおろしている間にも、彼女は店を完全に制圧していた。

レジには、アルバイト二人と店長一人が、手を挙げて並んでいた。


絵里「…これで全員?」


全員です。店長は震える声で答えた。

店長は、『訳がわからない』といったような顔をしていた。

この店長も、まさかマックに強盗に入る物好きがいるとは、夢にも
思わなかっただろう。
15: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/04(金) 01:02:11.30 ID:9R64IC3x.net
絵里「チーズバーガーを25個。それと、コカコーラを二つ」


彼女は店員に注文した。

いや、要求をした。


店長と二人のアルバイトは、すぐに作業に取り掛かった。

一人が肉を鉄板で焼き、一人がチーズとピクルスをバンズに挟み、一人がハンバーガーを箱に詰めてレジに置いた。

大学生のアルバイトは、こちらにチラチラと視線を送っていた。

私が構えている散弾銃がゆらゆらと揺れていたからだ。

銃口が厨房に向く度に、ビクッと身体を緊張させていた。

私は客席の方に目をやった。

カップルはまだ爆睡している。日本は平和な国だ。
16: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/04(金) 01:03:07.45 ID:9R64IC3x.net
銃を持つ腕が疲れて、地面に置いてやろうかと思い始めた頃、
注文の品が揃った。

25個のチーズバーガーは、3つの袋に収まっていた。

彼女は袋を持ち、私はジュースを受け取って、店を出た。


車に乗り込むとすぐに発進し、数百メートル離れた駐車場に入り、車を停めた。

私たちは車の中で、チーズバーガーを食べた。

私は3つ食べた。彼女は2つ食べた。

こうして、私のパン屋再襲撃は終わった。

私は深い眠りについた。
17: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/04(金) 01:03:56.95 ID:9R64IC3x.net
あの日以来、私が家に帰ることはなかった。
スポンサーリンク

シェアする

フォローする

『穂乃果「パン屋再襲撃」』へのコメント

コメントの投稿には初回のみDisqusへのアカウント登録が必要です。Disqusの登録、利用方法を参考に登録をお願いします。
表示の不具合、カテゴリーに関する事等はSS!ラブライブ!Disqusチャンネルにてご報告下さい。