海未「穂乃果、ことり。愛してますよ」

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海未-アイキャッチ57
海未(…ん、朝ですね)

見慣れた自分の部屋の中。海未は手で布団を強く握っていた。

海未(何か悪い夢を見ていたようですが…思い出せません)

海未「……ん?」

眼前に膨れ上がった何かが見える。布団をかぶっているから、それが何かがわからない。

海未(何か布団の中に挟んで寝てしまったのでしょうか…?)メクリ

海未「え」

布団をめくると、その盛り上がった突起が海未自身の股の間から出ていることが明らかになった。

海未「ま、まさか…」ズボンメクリ

そのまさかだった。
――海未の股間に、男性のそれが付着していた。

海未「い…」

海未「いやーーーーーーーっ!!!!!」

pixiv: 海未「穂乃果、ことり。愛してますよ」 by j252521

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 ◆



海未(私は学校を休んで、医師の精密検査を受けました)

海未(その結果、健康上の問題はないとのことでした。ひとまず安心です)

海未(予想以上にすぐに検査が終わってしまいました。家にいてもやることがないですね)

海未(母は用事で夜まで出かけてしまってますし…夜まで一人で時間を潰さなければなりません)

海未(体調が悪いわけでもないので、布団でずっと寝ているというのも変ですし)

海未(こんなとき穂乃果とことりがいれば、退屈しないのですが)

ピンポ-ン

「海未ちゃ〜〜ん!」

海未「…この声は」

ことり「お見舞いにきたよ♪」

海未「ことり。来てくれたのですね。あの、」

ことり「穂乃果ちゃんはいないよ? 今日は家の手伝いがあるって」

海未「え、なぜ穂乃果のことだと」

ことり「付き合い長いんだし、わかるよ」

ことり(…海未ちゃん、穂乃果ちゃん大好きだもんね)

海未「…そう、ですか」シュン

海未(三人で一緒に過ごしたかったのに)

ことり(ことりだってそう。μ'sを結成してから、穂乃果ちゃんのことばかり見てた。リーダーとしてみんなを引っ張っていく穂乃果ちゃんがまぶしかったから)

ことり「う〜みちゃんっ」ギュッ

海未「こ、ことり何を」

海未(三年生になってから、ことりの接触が多くなった気がします…穂乃果にはそれ以前もよく抱きついてましたが、私にもことあるごとに抱きつくようになってきて)

ことり(でも、もうμ'sは解散して、またいつもの日々が戻ってきた。だから、ことりたちも昔と同じように、三人みんなで仲良くしないとね♪)

ことり(というわけで、穂乃果ちゃんに注いでた友情と同じぐらいの大きな友情を、ことりは海未ちゃんに注ぎ続けてるのです!)

ことり「今日はことりが看病しちゃいます♪ 風邪だったんでしょ?」

海未「いえ、もう体調はすっかり良くなりましたし、うつすといけないので離れてください」

海未(母は風邪だと学校に連絡したんですね)

ことり「だ〜めっ! こういうのは油断したらまたぶり返すんだから」ギュッギュ-

海未「も、もう…まったくことりは…」ピクッ

海未「!」ムクムク

ことり「…あれ? 何か当たってる?」

海未(ど、どうして今大きく!?)

ことり「海未ちゃんのお腹あたりに何かついてる…?」

海未はことりの肩を掴んで強引に引き剥がす。

海未「こ、ことり! 私お腹が減ってしまいました。お菓子か何かをいただけますか? バッグに入っているんでしょう」

ことり「あ、うん。持ってきたよ?」

海未(話題をそらせました)

ことり「ことり特性マカロンです!」

ことり(本当は穂むらまんじゅう買っていこうと思ったけど、それだと海未ちゃん穂乃果ちゃんのこと考えちゃうもんね)

海未「ありがとうございます。ことりのお菓子はおいしいですからね」

海未(穂乃果がこの場にいたら、ほむまんを持ってきてくれていたのでしょうか…)

ことり「海未ちゃん?」ギュッ

海未「ん…あっ、何を//」

ことり「また穂乃果ちゃんのこと考えてたでしょー? ことりと一緒にいるのに、海未ちゃんは浮気者です!」

海未「う、浮気って// 私たちはそういう関係じゃないでしょう//」

ことり(照れてる海未ちゃん可愛い♪)

ことり「海未ちゃんは、ことりとそういう関係になるの、いや?」ウルウル

海未「う…」ムクッ

海未「い、いけませんことり!」

海未は再びことりを引き離す。

ことり「あはは、冗談だよ海未ちゃん〜」

海未「もう、ことりは冗談が過ぎるのです」

ことり「でも海未ちゃんが大切なのは本当だよ。海未ちゃんも、穂乃果ちゃんも、ことりの大切な友達」

ことり「そんな友達と一緒に大学に通えるのが心から嬉しいの」

海未「それは私も同じですよ。二人と一緒なら、退屈しない大学生活になるでしょうし」

ことり「ことりたち、ずっと友達でいようね。社会人になっても、結婚しても、子どもができても」

海未「……」

ことり「海未ちゃん?」

海未「ええ。もちろんです」ニッコリ

ことり「ことりの愛情は意中の男性に捧げても、友情はずっと海未ちゃんと穂乃果ちゃんのものです♪」

海未「!」ズキッ

海未「…………ええ」

ことり「…海未ちゃん? また具合悪くなった?」ナデナデ

海未「そうみたいです。すいませんが、一眠りしたいので今日はこの辺にしておいてもらえますか?」

ことり「うんっ♪ マカロンは置いてくから、後でゆっくり食べてね」

海未「ありがとうございます。明日には学校に行けると思います」



海未(ことりが帰って、また静かになりました)

海未(それにしても…先ほど感じた胸の痛みはなんでしょうか。ことりが結婚の話題に触れたときだと思いますが)

海未(いえ…自分をごまかすのはやめましょう)

海未(薄々気づいていましたが、私はことりを友人以上の存在として見ている)

海未(だから辛いのでしょう。ことりはずっと一緒だと言ってくれましたが、それは私の『一緒』とは意味が違う)

海未(いずれ二人とも結婚して私から離れていってしまう)

海未(それは…辛いですね)

海未(ネガティブになってもいけません。今はみんな女子高の学生。卒業するまではそういうことは起こらないでしょう)

海未(それならば今二人と共にいられる時間を大切にすべきです)

海未(あまり眠くはないですが、ことりに言ったとおり寝てしまいましょう)



 ◆



翌朝、登校前

海未(いつもの待ち合わせ場所につきました)

海未(穂乃果はやはりまだ来ていませんね)

ことり「海未ちゃ〜ん、おはようっ♪」ダキッ

海未「こ、ことり! いつも抱きつくのをやめてください!」

ことり「海未ちゃんと穂乃果ちゃんに抱きつかないと一日が始まらないよ〜」

海未「意味がわかりません!」ムクムク

海未(うっ)

海未「…とにかく、離れてください」グイッ

ことり(あ、あれ…? 今までは海未ちゃん、ここまで嫌がることなかったのに)

ことり(昨日は体調悪かったからわかるけど、元気そうな今日も…?)

海未(前貼りが剥がれてしまうところでした)

ことり「海未ちゃん、ご機嫌斜めなの?」シュン

海未「? そんなことありませんが」

ことり「じゃあなんで「おっはよ〜二人とも!」

海未「おはようございます。今日は早いですね、穂乃果」

穂乃果「えっへん!」ドヤァ

海未「集合時間は過ぎてますけどね。あくまで、普段より来るのが早いだけで、間に合ってはいませんよ?」

穂乃果「明日こそはちゃんと間に合うよ!」

海未「そのセリフを聞くのも、何度目でしょうか」ハァ

穂乃果「ことりちゃんもおはよう!」

ことり「あっ、おはよう」

穂乃果「じゃあ行こうか!」

海未「走ると危ないですよ」

ことり(聞きそびれちゃった…)



園田家、夜

海未(学校での時間は、一言で言うと地獄でした。生殺しとでも言うのでしょうか)

海未(同級生の何気ない行動に、あれが反応してしまう)

海未(今日が金曜で良かったです。土日でゆっくり対策を練ることにしましょう)

ロンリ-マイラ-ブロンリ-マイハ-ト

海未(ことりからメール?)

『海未ちゃん、日曜日あいてる? 穂乃果ちゃんが商店街の福引で映画のチケット当てたみたいで、ちょうどいいから三人でいこうって話になって』

海未(嬉しい誘いですが…この状況では無理ですね。断りをいれましょう)

『すみません、日曜日は家の用事があるので、穂乃果と二人で行ってください』

海未(来週あたりに埋め合わせできるといいですが)

ヤサシサニアコ-ガ-レ-ヤサシサニキズ-ツイテ-

海未(電話?)

ことり『海未ちゃん、夜遅くにごめんね』

海未「いいんですよ。日曜日、行けなくてすいません。土曜日なら良かったんですが」

ことり『ううん、お家の用事なら仕方ないよ。それより土曜日あいてるなら、ことりの家に来ない?』

ことり『穂乃果ちゃんは用事あるから来られないみたいだから、土曜日は海未ちゃんと二人っきりで過ごしたいなと思って』

海未(う…やってしまいました。土曜日なら良かったといった手前、断れません)

海未「…いいですよ。お昼を食べてからでいいですか」

ことり『うん、じゃあ2時はどう? 一緒にお菓子作りしようよ♪ それで二人でお茶会しよう』

海未「いいですね。少し多めに作って、日曜日に穂乃果にわけてあげたらどうですか」

ことり『そのつもりだよっ♪ 考える事は二人とも同じだね〜。あ、もちろん穂乃果ちゃんが太らないようにお砂糖は少なめにしておくよ?』

海未「先に言われてしまいましたね」クスッ

ことり『じゃあ明日、楽しみにしてるね』

海未「ええ、私も。おやすみなさい」

ことり『おやすみ〜』プツッ

海未(さて、どうしましょう)

海未(とりあえず接触は最低限にすべきですが…風邪を理由に使い続けるのは限界がありますね)

海未(なんとか大きくならないようにできないでしょうか)

保健体育で習った知識と、友人から聞いた知識を総動員して考える。

海未(確か男性のあれは…定期的に出すと落ち着くと)

海未(…出すためにはいじる必要が)

そうっと股間のあれに手をのばす。指が触れた瞬間、ビクンと大きく反応する。

海未「ふぁっ」

変な声が出たのに気が付き、思わず口を塞ぐ。

海未(なっ、なんですか今の声は! 破廉恥過ぎます!)

海未(駄目です…この方法は無しです)

海未(う…本当に眠くなってきました)ウトウト

海未(集まりは2時からですし、明日になってから考えることにしましょう…)



 ◆



ことり「海未ちゃんいらっしゃ〜い」ガチャ

海未(結局何も思い浮かびませんでした)ドヨ-ン

ことり「今日はいっぱいお話しようね♪」

海未「そうしましょう」



海未(夕方までは普段通り乗り切れました。しかし最大の危機は夜に待っていたのです)

海未「駄目です!! 破廉恥です!!!」

ことり「え〜お風呂なんて何回も一緒に入ってるじゃん」

ことり(最近の海未ちゃん、恥ずかしがり屋さんすぎるよぉ)

海未「もうお互いそんな歳ではないでしょう」

ことり「一ヶ月前のお泊まり会で穂乃果ちゃんと海未ちゃんと一緒に入ったけど?」

海未「とっ、とにかく!! 駄目なものは駄目です」

ことり「ぶ〜」プク-

海未「膨れても駄目です」

ことり「わかったよ。じゃあことりが先に入るから、海未ちゃんはその後ね?」

海未「はい、ごゆっくり」



ことり「海未ちゃんあったか〜い♡」ギュゥゥ

海未「ってなんで一緒のベッドなんですか!」

ことり「お客さん用の布団破けちゃって、まだ買い直してないからって言ったよ?」

ことり(ほんとは海未ちゃんと一緒に寝たかったからだけど)

ことり(海未ちゃんはことりに何か隠してる。だからベッドの中で聞き出しちゃうのです)

海未(落ち着くのです私。グラハム数を数えて落ち着くのです…)ギンギン

ことり「でも海未ちゃん自身はカチコチだね」

海未「なっ!?」

ことり「さっきから同じ姿勢でずっと固まってる」

海未(ああ、姿勢のことですか)

ことり「…どうしたの、本当に? もう風邪は治ってるよね? やっぱり最近海未ちゃんおかしいよ?」

海未「……すいません。色々思うことがあって…」

ことり「ことりは心配だよ? ことりにできることがあったら、なんでもするから話してほしい」

海未(ことりは本当に優しいですね)

海未はことりの方を振り向き、手を握る。

海未「ありがとうございます。でもこれは私の問題ですから」ギュッ

ことり「海未ちゃん…」

海未「もう遅いですし、寝てしまいましょう」

海未(ことりの顔を見てると胸が高鳴ってきました。これ以上見ていられません)

海未「で、ではおやすみなさい」プイッ

ことり「あっ」

ことり(海未ちゃん…)

ことり(いままでなんでも話してきたのに。なんでも三人で協力して解決してきたのに)

ことり(留学のことだってそう。海未ちゃんが話を聞いてくれて、穂乃果ちゃんが引き止めてくれたからことりは残れた)

ことり(…本当は海未ちゃんにも止めてほしかったけど)

ことり(ことりは海未ちゃんに正直に打ち明けてよかったと思ってる)

ことり(でも今の海未ちゃんはそうじゃない)

ことり(…大人になるってそういうことかもしれない)

ことり(だんだん、それぞれの道に進むようになって、色んな人との時間が増えてきて、話せないことも増えていくのかも)

ことり(海未ちゃんも大学関係で何かあったのかもしれない)

ことり(それとも、お家のことかも…明日用事があるって言ってたのは、それなのかな)

ことり(…でも海未ちゃん、今はまだ三人とも高校生なんだよ…?)

ことり(せめて今だけは、なんでも打ち明けられる仲良しさんじゃいられないの…?)

ことり「海未ちゃん…」ギュッ

海未「ひぅっ!?」ムクムク

海未(ことりが後ろから抱きついてきた!? 思わず変な声が出てしまいました)

海未(ああ、やわらかいですことり…いけません、こんな)

ことり「ことり、さびしいよ」ギュウ

海未「ど、どうしたのですか」ギンギン

ことり「海未ちゃん…今はことりは海未ちゃんのものだよ?」

ことり(そう。ことりはいつだって、海未ちゃんの特別な友達だよ)

海未「!?」ギンギンギン

海未(い、いけません、ことりの甘い声で頭がぼうっとして来ました)

ことり「ことりの気持ち…わかるよね?」

ことり(だから、なんでも話して。隠し事しないで。ことりの世界一大切な友達さん)

海未は理解していた。今ここで振り向いたら、もう理性では止めることができなくなる。
――しかし、ゆっくりとことりの方を振りかえる自身の動きを理解しながら、海未の脳はそれに反抗する命令を出せなかった。

ことり「えへへ、やっとこっち向いてくれた」

海未(ことり。ことりことりことりことりことりことりことりことりことりことり)

海未はことりの肩に手をかける。

ことり「海未ちゃん」

そして、

ことり「おねがい。海未ちゃんの悩み、聞かせて?」

海未「ことりっ!」

勢いを付けて起き上がり、ことりに馬乗りになる。

ことり「う、海未ちゃん? 顔がこわーーんむっ!?」

ことりの唇を塞ぐ。ことりの言葉はもう海未の耳には届いていない。

ことり「う、海未ちゃん…? どうして」

海未「ことりも私と同じ気持ちだったんですね。…思えば、お泊りに誘った時点でそういうことですよね。鈍感ですみません」

ことり「海未ちゃん? 変なこと言ってるよ…? ことりたち、女の子同士で、友達同士だよ?」

ことり(海未ちゃん、ことりの両腕すごく強い力で握ってて、身動きがとれない!)

海未はもう一度ことりの唇を塞ぐ。

ことり「う、うみひゃ…や、やめてっ! ことり、そんなつもりじゃなかったの!」

海未「ことり。可愛いですよ。愛してます」

ことり「やめて、やめて、やめてやめてやめてぇっ!!」ボロボロ

海未(ああ…気持ちいい。最高です。脳みそがとろけそうです)

海未(ことりが何か言っていますね…きっと喜びのことばでしょう。よろこびのあまり泣いているのでしょう)

海未(せっかくこころがむすばれたのだから、からだもせいいっぱいよくしてあげないといけませんね)

ことり「いやだぁ、やめてぇ!! 怖いよぉ!」

海未「ことり」

海未「愛してますよ」

ことり「いやあああああああ!!! あああ、あああ…ああああああ!!!!!!」



 ◆



海未(……ん。ここは)

海未は周囲の様子をきょろきょろとうかがい、記憶を辿る。

海未(ああそうでした。ことりの家にお泊りしていたのでした)

海未(ことりと一緒のベッドにいて、いくつかお話をして…いつの間にか寝てしまっていたようですね)

海未(まだ暗いですね…今何時でしょうか)

ヒグ…ヒック

海未(…泣き声?)

海未がかすかな泣き声をする方に顔を向けると、毛布に顔をうずめたことりの頭があった。

海未「……ことり?」

ことり「!」ビクッ

海未(怯えている…?)

ここ数日、のぼせてぼうっとすることが多かった海未の頭だが、今は非常にすっきりしていた。

海未「ことり」

だから、目の前にいる大切な親友に対して、慰める為に抱きしめるというのは極めて自然な行動だった。

海未(おおかた、怖い夢でも見たのでしょう)

海未「私はここにいますよ。大丈夫ですよ」ギュッ

ことり「ひっ! やめて!! もう酷いことしないで!!!」

それは海未自身に対する抵抗だった。しかし海未はそれを理解せず、安心させるためにますます力強くことりを抱きしめる。

海未「大丈夫です。大丈夫ですよ」

ことりは海未を引き剥がそうと、必死で海未の肩をつかむ。ことりの爪が海未の肩に食い込む。

海未「っ!」ビクッ

海未は痛みを殺して、変わらずことりを抱きしめ続ける。

海未「ことり。ことりは一人じゃありません。ここに私がいます」

ことり「…!」

そして。

海未「ずっと一緒ですよ。世界一大切な友達ですから」ニコッ

ことり(あ…)

『大切な友達』。ことりが、聞きたくてやまなかったこと。凛とした声で、優しく抱きしめながらことりにささやく。

ことり「……海未ちゃん。落ち着いたから、離して。痛いよ」

海未「あ、ああすいません」バッ

ことりを離した際に、海未はあることに気がつく。

海未(ことり…裸……? なぜ)

ことり「ねえ海未ちゃん、海未ちゃんはことりのことが大切?」

海未は自身の記憶の中に、黒い影を見つけた。

海未「ことり…? もちろんですよ」

その影はじわじわと広がり、海未の記憶を覆い尽くしていく。

ことり「なら、教えて?」

海未「あ…」

影が記憶を覆い尽くした瞬間、それは鮮明な像となって再現される。





ことり「どうしてことりに乱暴したの?」





海未「あ、あ…そんな。ことり、違うんです」

ことり「ことり、やめてっていったよ? そんなつもりじゃないっていったよ?」

海未「それ、は」

『聞こえなかったのです』といえるはずもなく、海未は次の言葉に窮する。

ことり「すごく痛かった。怖かった。でも海未ちゃんは、ことりを離してくれなかったよね」

海未「こ、と、り」

ことり「何度も言ったのに。何度も何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も」

ことり「……………結局、三時間もことりのこともてあそんだよね。ことり、時計を見ることぐらいしかできなかったから、はっきり覚えてるよ? 私達がベッドに入ったのが十時ぐらい、海未ちゃんが疲れて寝ちゃったのが一時五分」

ことり「それから今までことりはずっと泣いてたよ。……泣いてたんだよ。ことりが何が一番悲しかったか、海未ちゃんわかる?」

海未「それは…私が…」

ことり「ことりはね。海未ちゃんが海未ちゃんじゃなくなっちゃったことが悲しかった。私の気持ちも聞かないで、自分がしたいままに乱暴して、海未ちゃんがそう変わっちゃって、今までの関係じゃいられなくなっちゃったことが、一番悲しかった」

ことり「でもそれならそれで良かったの。海未ちゃんが自分勝手にことりの大切なものを奪うような最低の人間だってわかったから、海未ちゃんのことを嫌いになって、心から憎んでやろうって思って。だからさっき泣いてたのは、悔し涙だよ。こんな最低の人間に、ことりの大事なはじめてを全部奪われたことへの悔し涙」

ことり「起きたらきっと海未ちゃんは、またしたいようにことりをもてあそぶ。そうされればされるほど、ことりの中の海未ちゃんへの憎しみは大きくなって、海未ちゃんをどんどん嫌いになれる。今まで一緒に過ごしてきて積み重なった、高い高い海未ちゃんへの大好きがどんどん崩れて、最後には海未ちゃんのことを大嫌いになって、海未ちゃんから離れられる」

ことり「そしたら海未ちゃんに乱暴されたことを、みんなに言いふらすの。海未ちゃんは周りの人みんなに軽蔑されて、一人ぼっちになる。ことりは海未ちゃんに復讐できる」

海未「ことり、私は」

ことり「なのにっ!!」

ことり「……どうして、そんなに、やさしくするの?」ポロポロ

ことり「どうして、いつもの、優しい声で、素敵な笑顔で、私を慰めようとするの? ことりを滅茶苦茶にしたのは海未ちゃんなんだよ?」

海未「ことり」

ことり「ことり、もう自分自身がわからない。海未ちゃんを殺してやりたいぐらい憎んでて、でも同時に海未ちゃんが大好きで、もっと大切にされたくて。わからない。わからないよ! わからないよぉおおおお!!! あああああああああ!!!!」

ことりはパニックになり、近くにあるものを片っ端から投げ始める。投げつけられた携帯電話が窓ガラスに直撃し、ガラスの破片が降り注ぐ。

海未「ことりっ!」

海未はとっさにことりに覆いかぶさる。破片がいくつか、海未の背中に刺さる。

海未「うぐっ」

肩に刺さった破片から血がしたたり落ち、ことりの頬に落ちる。

ことり「う、海未ちゃん…ガラスが」

海未「私は平気です。ことりに刺さってはいませんか」

ことり「わ、私は大丈夫」

平静に戻ったことりが海未の身体を見渡す。ガラスが刺さったのは一箇所や二箇所ではない。

ことり「う、海未ちゃん、いっぱい刺さって」

海未「大したことはありません。……ことりはもっと痛かった」

海未(私は、許されないことをしました。あろうことか一番大切な人に)

ことり「!」

海未「……言い訳はしません。許してもらえるとも思ってません。ただ、一生かけて償います。償わせてください」

海未(私がうろたえていてはいけない。ことりのために、やれることをやらなければ)

ガラスが刺さった傷口から、次々に血がしたたり落ちる。

ことり「海未ちゃん、わかった、わかったから! 手当させて!」



傷は肩と背中に集中していた。幸い深く刺さっている箇所はなく、家にある治療用具で応急処置は事足りそうだった。海未が座ってことりに背中を向け、ことりが傷口を綿棒で消毒している。

ことり「後でちゃんと病院に行ってね? 万が一ガラスの破片が身体に入ってたらいけないから」ピトピト

海未「はい、お気遣いありがとうございます。…ことり」

ことり「なに?」

海未「私をどうしたいですか?」

ことり「…」

ことりは手に持った綿棒をぎゅう、と握りしめる。

海未「どんな内容でも従います」

ことり「死んでって言ったら死ぬ?」

海未「はい。可能な限り苦痛が大きい方法で自殺します」

ことり「……」

海未「大丈夫です。ことりとは関係ないように見せますので」

ことり「海未ちゃん。さっき一生かけて償うって言ったよね?」

海未「はい」

ことり「一生ってことは、すごく長い時間ってことだよ?」

ことり「死んでそれをすぐに終わらせようとするなんて、ずるいんじゃない?」

海未「それは…」

ことり「死ななくていいから、ことりのお願い聞いてくれる?」

海未「はい。どのようなものでも」

ことり「……」

ことりはうつむいて考える。

ことり(……海未ちゃんにされたことは、きっとずっと許せない。それに、許したとしても、もう昔の関係には戻れない。…それなら)

海未「ことり? どこか痛むのですか…?」クルリ

心配した海未がことりの方を振り向く。

ことり「ねえ海未ちゃん」

海未「ことーーんっ」

名前を呼びかけた海未の唇を、ことりが塞ぐ。

海未「ことり…」

ことり「ことりの恋人になって?」

海未「私には…その資格が」

ことり「あははっ、やっぱり海未ちゃんってそっちの人だったんだね」

海未「!」

ことり「ずっと私のこと、そういう目で見てたんだよね? すごく気持ちわるいなあ」

海未「…はい、私は気持ち悪くて、最低の人間です。そんな私がことりと付き合う資格なんてありません」

ことり「駄目だよ。ことりは海未ちゃんを逃してあげない」ストン

ことりは海未に抱きつき、そのまま床に押し倒す。

ことり「海未ちゃんは、女の子を好きになっちゃう変態さん」

ことり「ううん、女の子ですらない。だって女の子にはあんなもの生えてないから」

ことり「人間ですらないよ。人間には理性があるから、嫌だって言ってる人を無理やり乱暴したりしない。海未ちゃんは人間以下の獣さんだよ」スッ

ことりは海未の頬を撫でる。

ことり「こんなにきれいな顔をしてて、勉強も運動もできて、優しくてみんなに好かれる海未ちゃん。そんな海未ちゃんが実は醜い獣さんだなんて、ことりしか知らない」

ことり「……そして、その獣さんに、ことりもたっぷり汚されちゃいました」

ことり「良かったね、海未ちゃん。私達、二人だけの特別な関係だよ?」

ことり「ことりはちっとも海未ちゃんのことぜんぜん愛してないけど」

ことり「お互い心も身体も汚れきっていて、とっても醜くて、それを私達しか知らないんだから」

ことり「だから、海未ちゃんはことりから離れちゃ駄目なの。ことりに一番近い場所にいて、ことりにキスして、ことりを抱いて」

ことり「ことりが海未ちゃんへの憎しみと、海未ちゃんを大好きな気持ちのはざまでぐちゃぐちゃにこわれていくのを見て」

ことり「海未ちゃんは四六時中ことりのことを考えて、苦しみ続けないといけないの」

海未「……ことり」

海未(ああ、私は)

ことり「それがことりの復讐なの♡」

海未「…ことりがそれを望むなら」

海未(もう、戻れないところまで来てしまった――)



 ◆



一週間後、朝、登校の待ち合わせ場所近く

海未(穂乃果から『明日登校前に話したいことがあるから、十分早めに待ち合わせ場所に来て』というメールがありました)

海未(私はいつも十分前行動なので普段通りにいけば問題ありませんが…あのお寝坊さんの穂乃果が時間の十分前に来られるとは思えません)

海未(まあ、どうせ遅れるでしょうし、用件も大した内容ではないでしょう)

海未(後で改めて時間を設けて聞くとしましょう)

海未(それにしても、今日はことりが私の家まで迎えに来てませんでしたね)

海未(お付き合いするようになってから、毎日欠かさず来ていたのに)

海未(体調でも崩したのでしょうか。心配です)

「うーみちゃーん!!」

聞き慣れた声が、慣れない時間帯に聞こえる。

海未「…穂乃果。貴女がまさか遅刻せずに来るとは」

穂乃果「おはよう! 今日は穂乃果が一番乗りだね!」

海未「そうみたいですね。それで、話したいこととは?」

穂乃果「ことりちゃん来ちゃうといけないから、すぐに済ませるね」テクテク

海未「穂乃果…? そんなに近づかなくても」

バシ---ンッ!

海未「へ…?」

頬に感じる鈍い痛みで、自分が平手打ちをされたことにようやく海未は気がつく。

穂乃果「全部聞いたよ。ことりちゃんから」

先程まで明るかった穂乃果の声が嘘であるかのような低い声で、穂乃果は海未に語りかける。

海未「……そうですか」

穂乃果「海未ちゃん。今日の夜、穂乃果の家に泊まりに来て」

穂乃果「今日はお父さんとお母さんは温泉旅行に行ってて、雪穂は亜里沙ちゃんの家にお泊りでいないから」

穂乃果「二人で色々と話そう」

海未「駄目です。放課後はことりと過ごします」

穂乃果「ことりちゃんにまた乱暴するの?」

海未「…っ、ふざけないでください! そんなこと、死んでもやりません」

海未はその言葉が自身の本当の気持ちであると同時に、虚偽の事実であることも知っていた。最初にことりに乱暴したのは紛れもなく海未自身であることを、海未はいたく認識していた。

穂乃果「ふぅん。でもどちらにせよ駄目だよ。別に約束してるわけじゃないんでしょう? 誘われても今日は断って」

海未「それはことりが決めることです。ことりに誘われたら私はことりの元に行きます」

穂乃果「……海未ちゃん、ことりちゃんがどれだけ不安定かわかってる?」

穂乃果「昨日も海未ちゃんの話題が出ただけで暴れそうになって、なだめるの大変だったんだよ」

穂乃果「このまま毎日二人っきりで会い続けてると、きっとことりちゃんはおかしくなる」

海未「…」

穂乃果「…ねえ、穂乃果は海未ちゃんが憎いわけじゃないの」

穂乃果「傷ついたことりちゃんが心配で、なんとかしてあげたいの」

穂乃果「そのためには海未ちゃんと一度話をする必要があるって思ったの」

穂乃果「……それに、海未ちゃんも見えないだけできっと傷ついてるだろうから」

海未(穂乃果はこんな私のことも心配してくれるのですね)

海未「…わかりました」

海未(先週一週間、平日は全てことりの家にお泊りでしたからね)

海未(流石にこれ以上行くと変に思われます。ことりのために日を空けるべきでしょう)

穂乃果「うん。それともう一つ」

海未「なんでしょう」

穂乃果「今後絶対、ことりちゃんを傷つけるようなことはしないで」

穂乃果「…でないと穂乃果、海未ちゃんと友達でいられなくなる」

海未(穂乃果…)

穂乃果は厳しい声でそう言い放ったが、海未はそこに穂乃果の大きな優しさを感じ取っていた。

海未(貴女はこんな私を、まだ友達だと思ってくれている。ことりだけでなく、私のことも考えてくれている)

海未(ことりのことだけで手一杯だった私とは大違いです)

穂乃果「海未ちゃん、答えて」

海未「誓います。命に代えても」

ウミチャ-ンホノカチャ-ン

二人が振り向くと、遠くでことりが手を振りながら走ってくるのが見えた。

穂乃果「よしっ!」パシン

穂乃果が自分の両頬を叩く。

海未「穂乃果?」

穂乃果「堅苦しい話は終わり! いつもの私たちに戻ろっ!」

穂乃果はことりのもとに駆けていく。

穂乃果「ことりちゃーんおはよーっ!」

海未「……穂乃果、走ると危ないですよ」クスリ

海未(私の罪は消えない。……でも、今だけは、この三人で)



 ◆



夜、高坂家

穂乃果「海未ちゃんの炒飯おいしかったー!」

海未「穂乃果も少しは料理を覚えてください」

穂乃果「洗い物頑張ったもん!」

海未「それぐらい誰でもできます!」

穂乃果「あ〜お腹いっぱいになったらなんだか眠くなってきた…」ウトウト

海未「……穂乃果。もうその辺でいいですよ」

穂乃果はゆっくりと起き上がる。先程までとはうって変わって、真剣な面持ちをしている。

穂乃果「もう少し、こんな風にいつもの感じで行きたかったんだけどな」

海未「すみません…全て私のせいです」

穂乃果「海未ちゃん、あのさ。お股に男の人のあれがあるって、本当?」

海未「はい、本当です」

穂乃果「そっか…」

海未「誰にも言わないでほしいです。私のためではなく、ことりのために」

穂乃果「言わないよ。…海未ちゃん、どうして」

海未「一緒に布団の中で寝ているときに、ことりが私に抱き寄って、優しい言葉を投げかけてくれました」

海未「あとになってわかったのですが、私の様子がここ最近おかしかったので心配してくれていたそうです」

海未「私はそれがわからず、自分に体を許してくれていると都合のいい解釈をして、欲望の任せるままにそのまま押し倒しました」

穂乃果「…」

海未「私は最低のクズです。生きている価値がないと思ったので、死のうとも考えました」

穂乃果「そんな、駄目!」ガタッ

海未「……ですが、それでは解決にならないと思い、一生ことりの側で、傷ついたことりを支えることを決意しました」

穂乃果「海未ちゃんは…ことりちゃんのこと、愛してるの?」

海未(これを誰かに聞かれるのは二回目ですね)

海未「はい。世界一愛してます」

穂乃果「…」モヤモヤ

穂乃果「それは、こういうことがあったから?」

海未「ずっと前からです。気がついたのは最近ですが」

穂乃果「そっか…」

海未「穂乃果」スッ

海未は正座をしたまま、穂乃果の方を向き直す。

穂乃果「海未ちゃん?」

海未「私の愚かな行為のせいで、穂乃果にまで迷惑をかけてしまい、本当に申し訳ありません」

そのまま海未は深々と穂乃果に頭を下げる。

穂乃果「……海未ちゃん、頭をあげて」

海未「どうか、私とともにことりを支えてください。私だけでは力不足なのです」

穂乃果「うん、任せて。これまで穂乃果がたくさん海未ちゃんに迷惑かけてきたんだし」

穂乃果「今度は穂乃果が海未ちゃんを助けるよ」

海未「穂乃果…ありがとうございます。貴女のような友達を持ててよかった」

『友達』。その言葉が、穂乃果の心に嫌なものを落とす。

穂乃果(海未ちゃんは…私のこと…)

穂乃果「…ねえ、海未ちゃん?」

海未「はい?」

穂乃果「以前絵里ちゃんに聞いたんだけど…海未ちゃんって、穂乃果のことも好きだったりする?」

海未「なっ」

海未(恨みますよ、絵里)

海未「…絵里も冗談が好きですね」

穂乃果「穂乃果には冗談に聞こえなかったなあ」

海未「でしたら絵里の勘違いですね。私はことり一筋です」

穂乃果「そっかあ。穂乃果は結構悪くないなと思ったよ?」ズイッ

海未「!」

穂乃果は海未との距離を近づけ、じっと海未を見つめる。海未は目をそらしていたが、そのうち耐えかねて穂乃果の方を向く。

海未(穂乃果の真っ直ぐな瞳…吸い込まれそうです)

海未「…いけません、穂乃果。冗談はやめてください」

穂乃果「穂乃果もね、最近までわからなかったの」ズイッ

穂乃果は更に海未のもとに近づく。

海未「穂乃果」

穂乃果「実を言うと今でもよくわからないんだ。海未ちゃんをほしいと思ってるのか、二人がくっついて置いてかれちゃったみたいで焦ってるのか」

穂乃果の顔が海未に近づく。海未は身体を反らして穂乃果から離れようとする。

穂乃果「でも、一つだけわかったことがあるの」ストン

これ以上身体が反らせなくなり、海未はその場に仰向けに倒れてしまう。穂乃果は倒れた海未の両脇に手をついて、海未を逃げられなくする。

海未「…いけません、穂乃果」

穂乃果「海未ちゃんは穂乃果のこと、たまらないほど好きだってこと。……だって、穂乃果に見つめられただけで、身動きできなくなっちゃうぐらいだから」

そのまま顔を落とし、二人の唇が触れる。



 ◆



海未「私は…最低です」ドヨ-ン

穂乃果「ま、まあ…今回は穂乃果も同意してたんだしさ」アハハ

海未「ことりと付き合っていながら穂乃果に手を出してしまった…いやそもそも二人を好きという時点で不順です…破廉恥です…」ブツブツ

穂乃果「ほ、穂乃果はとっても気持ちよかったよ!」

海未「そういう問題ではありませんっ!!」クワッ

穂乃果「海未ちゃん落ち着いて!」

海未「だいたい穂乃果は破廉恥すぎるんです! 純血をあんな風に簡単に散らして! 私のだって指でや、破きましたし!!」

穂乃果「むー海未ちゃんがそれ言う!? 確かに最初やったのは穂乃果だけど、それ以降はずっと海未ちゃんが穂乃果の上で腰降ってたじゃん!!」

海未「そ、それは」

穂乃果「穂乃果がもうダメって言っても、『ほにょかあ、ほにょかあ』とかマヌケな声出しておサルさんみたいに腰をヘコヘコ振り続けてたのはどこの誰さ!! おかげで脚が引きつって痛いよ! 絶対明日、筋肉痛とお股の痛みでがに股になってるよ!!」

海未「わ、わかりました。私が悪かったです、穂乃果」

穂乃果「わかればよろしーい。…でもさ」ストン

穂乃果は海未の肩に自分の頭をのせる。

穂乃果「しちゃったね、穂乃果たち」

海未「…はい// …あの、」

穂乃果「なに?」

海未「穂乃果が私のことをどういう意味で好きか、わかりましたか?」

海未(こうなってしまったからには、はっきりと答えが知りたいです)

穂乃果「うーん。どっちでもいいかなあ」

海未「あんなに気にしてたのに?」

穂乃果「うん。というより、どっちにもなる! って言ったほうが正しいかな」

穂乃果「穂乃果は海未ちゃんが穂乃果のことをいっぱい愛してくれてたときには、穂乃果も海未ちゃんのことがすっごく愛しくなったし」

穂乃果「普段穂乃果と勉強とか部活とか生徒会とかやってるときは、頼れるパートナーな親友だって思うし」

海未「穂乃果…」

穂乃果「私の海未ちゃんへの『好き』は、恋にも愛にも友情にもなる、ハイブリットな『好き』だってことが判明したよ!」ギュウ-

穂乃果に抱きつかれ、海未も抱きしめ返す。

海未「穂乃果はすごいですね。私はそんなに器用にできてませんから、一種類の『好き』しか扱うことができません」ギュッギュ-

穂乃果「海未ちゃんのそういう一途なところ、穂乃果好きだよ」

海未「穂乃果//」

穂乃果「…ことりちゃんも、海未ちゃんのそういうところが好きなんだと思う」

海未「……ことり」

穂乃果「ことりちゃんに、なんて言おうか?」

海未「とても思い浮かびません…一生守ると言っておきながら、一週間で他の女性に手を出したなんて、どう言いつくろってもことりにショックを与えてしまいます」

穂乃果「穂乃果だって、昨日ことりちゃんに『穂乃果はいつでもことりちゃんの味方だよ』って言ったばっかりだよぉ」

海未「さっそく裏切ってますね」

穂乃果「裏切ってないもん! ちょっと味見しただけだもん」プンスコ

海未「スナック感覚で私をなぶらないでください…」

穂乃果「なぶってたのはほとんど海未ちゃんだよ? スナックどころかガッツリ食べ放題な感じで」

海未「……猛省しております」

穂乃果「冗談はいいとしてさ、きちんと話せばことりちゃん怒らないと思うよ?」

海未「そんなわけ…」

穂乃果「ことりちゃんに言われたんだ。海未ちゃんへの気持ちをちゃんと伝えてほしいって」

海未「そんな…」

穂乃果「それでね、穂乃果、ことりちゃんに言ったよ。どんな結果になっても、また三人で笑い合えるようにするって」

穂乃果「それで今日海未ちゃんに来てもらったの」

海未「そうだったのですか…」

穂乃果「だから、今度一緒にことりちゃんに話そうよ。また三人で仲良くできる方法を」

海未「…そんなもの、あるとは思えませんが」

穂乃果「ある!」

海未「どうしてそう思うのですか?」

穂乃果「穂乃果と海未ちゃんとことりちゃんが三人で頑張って見つけられないものなんてないもん!」

穂乃果「ほら、三人寄ればもんじゅが廃炉って言うし!」

海未「文殊の知恵です。廃炉にしてどうするのですか」クスッ

海未(もうどうしようもないところまで来てしまったというのに…穂乃果がいれば、なんとかなってしまいそうです)

海未(まるで魔法みたい。本当に貴女は不思議な人です)

海未「そうですね、また三人で一緒に」

ピンポ-ン

穂乃果「ん? もう十時なのに、こんな時間に誰だろう」

海未「…!!」ゾクッ

海未の背中に大きな悪寒が走る。

海未(なぜでしょう。とても嫌な予感がします)

ピンポ-ン

穂乃果「はーい、今行きますよー」

穂乃果は服を着ながら玄関に向かう。

海未(来るはずのない誰かが来てしまったような)

ピンポピンポピンポ-ン

海未「…! 穂乃果、待って――」

ガラッ

穂乃果「あっことりちゃん! ちょうどよかった――ってえっ?」



穂乃果が玄関を開けるや否や、ことりは靴のまま素早く穂乃果の部屋まであがりこんできた。中には半裸の海未。ことりは、ああやっぱりか、とでも言わんばかりに冷たい視線を海未に向ける。

ことり「お母さんに無理言って夕飯を早めに切り上げてきて正解だったなあ…」

穂乃果「あ、あのねことりちゃん? 穂乃果もやっぱり海未ちゃんのことが好きだったんだってわかって、そのまま流れでこうなっちゃって…」

ことり「わかってるよ、穂乃果ちゃん」ニッコリ

海未「ことり、私の話を「海未ちゃんは黙ってて」

ことりが海未をにらみつける。

海未「ことり、話を「黙れっていってるの!!」」

海未「うっ…」

ことりは胸に手を当てながらすぅ、と大きく息を吸い自らをなだめる。

ことり「ことりね、わかってたんだ。海未ちゃんと穂乃果ちゃんが、お互いのこと大好きだって」

ことり「ことりの入り込むすきまなんてないんだって」

穂乃果「穂乃果はことりちゃんのことだってすごく大事だよ! 海未ちゃんへの気持ちがどうであろうと、それは変わらない!」

ことり「穂乃果ちゃんはことりを大切にしてくれるんだね」ニコッ

ことり「海未ちゃんとは大違いだよ」キッ

海未「…」

ことり「もとはと言えば海未ちゃんが悪いんだよ? ことりの心も体も汚し尽くしたのは海未ちゃんだもんね」

ことり「でもね、ことりは穂乃果ちゃんのことが大好きなの」

ことり「だから、海未ちゃんは大嫌いだけど、穂乃果ちゃんが海未ちゃんのことを好きだって気づいた以上、ことりはもう海未ちゃんに何もできないの」

ことり「海未ちゃんを憎んでも、愛しても、穂乃果ちゃんを傷つけちゃうから」

ことり「でもことりは海未ちゃんを許せない」

ことり「このまま海未ちゃんがことりを捨てて、海未ちゃんだけ幸せになるなんて絶対に許せない」

ことり「だからね?」シャキン

海未「こ、ことり、何を」

ことりはポケットから衣装作り用の大きな布切バサミを取り出し。

ことり「ことりが死ぬことにしたの」スッ

それを首元に近づける。

穂乃果「ことりちゃんっ!!」

ことり「動くと首に突き刺すよ!!」

ことりは自分の首にハサミの先端を少しだけ食い込ませる。じわり、と首筋から小さく出血する。

穂乃果「っ! 動かないよ! 動かないから、やめて!!」

ことりに向かって駆け出そうとしていた穂乃果は、大きく後ずさって近づく意思がないことを示す。

海未(どうしたら…どうしたら!!)

ことり「ことり、わかってたよ? ことりが二人と並んで歩けるはずないって」

ことり「穂乃果ちゃんみたいにみんなを引っ張っていくこともできないし、海未ちゃんみたいにしっかりもしてない」

ことり「ことりはいつも、二人の影に隠れちゃってたんだよ?」

穂乃果「そんことないって、前言ったじゃない! ことりちゃんには歌もダンスも上手だし!」

海未「衣装だってあんなに素敵なものを作ってくれたじゃないですか!」

ことり「…っ! そんなの誰だってできるよ!」

海未「そんなっ…!」

海未(…何を言っても…今のことりには…)

ことり「アイドルとして歌って踊って、衣装も作って、みんなで輝いて…これ以上ない日々だった」

ことり「ラブライブを通じてたくさん成長できたって感じてる」

ことり「…でも、でもね、二人はもっと輝いてて、眩しくて。どんなにことりが努力しても、二人に追いつくことなんてできなかった」

ことり「ことりにはついていくことだけしかできなかった。おいていかれないことだけで精一杯だった」

ことり「そんなことりを、海未ちゃんが愛してくれた」

ことり「二人には追いつけなかったけど、海未ちゃんが振り返ってことりに手を差し伸べてくれた」

ことり「どんなにいびつで、汚れてて、醜い愛でも、ことりはそれにすがるしかなかったの」

ことり「…だから、お願いだから邪魔しないで穂乃果ちゃん。ことりはこうでもしないと、海未ちゃんの心の中に残れないから」

ことり「ことりが海未ちゃんの目の前で死ねば、優しい海未ちゃんは一生ことりに対する罪悪感で苦しんでくれる」

ことり「そうすればね、海未ちゃんを苦しめ続けたいっていうことりの憎しみと、海未ちゃんに想われ続けたいっていうことりの愛情が、どっちも満たせるの」

ことり「穂乃果ちゃんの幸せを邪魔せずに、ことりは幸せになれるんだよ♡」

穂乃果「ことりちゃんが死んで穂乃果が幸せだなんてないよ!! おねがい、穂乃果の為に生きて!」

海未(今のことりに理屈は通じない。『私の目の前で死ぬ』という結論ありきで、その為に全ての話を作っているのだから)

ことり「穂乃果ちゃんなら大丈夫だよ。穂乃果ちゃんは強い子だから、ことりのことも時間が経てば忘れられる」

ことり「ことりを忘れた後は、海未ちゃんと幸せな日々を過ごしてね♡」ニッコリ

穂乃果「違う違う違う違う!! ことりちゃん、穂乃果の言うことを聞いて!!」

海未(全ては私の愚行から始まったこと…だから私にはことりをなんとしてでも救う義務が…)

ことり「お葬式のときには、穂乃果ちゃんが一番ことりに似合うμ’sのライブ衣装を選んで着せてね」スゥ

ことりはいったん首につけたハサミを離す。まるでその後勢いをつけて突き刺そうとしているかのように。

穂乃果「やめて、やめてえっ!!」

海未(…いや、違う! 私はことりを愛しているから! 私がことりに生きていてほしいと思うから! …だからっ!)

海未「ことりっ!!!」

ことり「!」

ことりは海未の方を見る。その手にはシャープペンシルが握られている。

海未「穂乃果は私たちがまた三人で笑い合えるようにすると言いました。私も同じ気持ちです」

ことり「いまさらなに? そんなの無理に決まってるじゃん」

海未「いいえ、できます。死後の世界なら」

穂乃果「死後…?」

海未「もし貴女がここで死ねば、私は穂乃果を殺し、その後自殺します。そうすれば向こうでまた三人一緒です」

海未(あり得ない行動をしようとしている人間への対処法は、それ以上にあり得ないことを自分がやること! うまくいくかどうか…賭けます!)

穂乃果「海未、ちゃん…? なにを」

ことり「ふふっ。何かと思ったら。そんなこと言えば、ことりがひるむとでも思った?」

海未「…信じていないようですね」

ことり「時間稼ぎだってわかるよ。でも、そんなことさせない」スゥ…

ことりが首元に手に持ったハサミの狙いを定めて――

穂乃果「ことりちゃんっ!!!」

海未(いけない!)

海未「ハアッ!」ドスッ

ことり「え…」

穂乃果「海未…ちゃん…?」

海未は、テーブルの上に手のひらを置き、シャープペンシルで勢い良く突き刺した。

海未「ぐっ…」ズボッ

シャープペンシルを引き抜くと、どぷりと手のひらに開いた穴から血が吹き出す。

穂乃果「海未ちゃんっっ!!!」ガバッ

穂乃果は海未に駆け寄り、乱暴にテーブルの上のティッシュ箱からティッシュを取り出し、海未の手のひらの傷口を押さえつけ止血を試みる。

海未「来ましたね、穂乃果」ガバッ

海未は素早く穂乃果の後ろに回り込み、穂乃果を羽交い締めにして、首元にシャープペンシルを突きつける。

穂乃果「海未ちゃん、血が! 血が! 早く止めないと、離して!!!」

穂乃果は自分の危険には意も介さず、しきりに海未を心配する言葉を投げかける。

海未「ことり、私は本気です。貴女が自分の首を刺せば、私は貴女の大好きな穂乃果を同じように殺します」

ことり「っ…! 卑怯者っ!!」

海未「なんとでも言いなさい。貴女が死ぬのなら、私が生きている意味もないのです」

海未「生きている意味がないのなら、なんだってできます」

ことり「どうしてこんなことするの!?」

海未「貴女を世界一愛しているからです。私の元にずっと置いておきたいからです」

ことり「嘘…」

海未「本当です」

ことり「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だっ!!!!」

ことり「だって、だって海未ちゃんは、穂乃果ちゃんのことが」ポロポロ

海未「二人とも愛してるんです!! どちらが上も下もありません!」

ことり(あ…)

(ことり「二人とも大切だったの。上とか下とかないの」)

海未「ずっと昔から、二人とも同じようにお慕いして来ました」

(ことり「海未ちゃんと穂乃果ちゃん、二人とも同じように大好きだった」)

ことり(海未ちゃん、そうなんだね。『好き』の意味が違うだけで、海未ちゃんもことりと同じだったんだね)

海未「私はずっとその気持ちをごまかし続け、その結果こうなってしまいました」

海未「私から何もしなくても、穂乃果やことりは私を友達として好きでいてくれる」

海未「私のあるべき方向を二人で示してくれる。私はそれに甘え、流されていたのです」

海未「思えば私はいつもそうでした」

海未「親に、教師に、友人に、穂乃果にことりに流され、流された場所でしっかりした様を見せて、真面目だ、頑張り屋だ、優秀だと言われて満足する」

海未「自分では何も決めず、他人の決めたレールをただ走っているにすぎないというのに」

海未「……学校の勉強はそれでよかったのでしょう。スクールアイドルの活動も、穂乃果に引っ張ってもらえばよかった」

海未「生徒会だって、絵里達から引き継いだ通りにやればよかった」

海未「これは私の性のようなものです。しきたりや決まりごとが多い私の家の環境を考えると、それに順応したといえます」

海未「それに苦痛を感じたことはありませんし、これからも変わらないだろうなと思います」

海未「……でも私は、私が愛する人とどうなるかぐらいは、自分で決めたいのです」

海未「たとえそれがわがままでも、身勝手でも、普通ではないとしても」

海未「これは私の意地です。決められた運命への、周りから見ればささやかで、でも私から見れば大きな反抗です」

海未「だから、私は決めました。ことり」

ことり「…海未ちゃん」

海未「愛しています」スッ

海未はシャープペンシルをテーブルに置き、穂乃果を解放する。傷は存外浅く、海未の手の平の出血は既にわずかなものとなっていた。

ことり「海未、ちゃん」カラン

ことりの手の平から力が抜け、ハサミが床に落ちる。

海未「私と共に、生きてください」

ことり「海未ちゃんっ!!」ガバッ

ことりは海未に飛びつく。

ことり「海未ちゃん、海未ちゃん海未ちゃん海未ちゃん!!」ギュウウ

海未「もう二度と離しません」ギュッ

ことり「こんな、私で、いいの? 海未ちゃんのことを愛してるかどうか、まだわからないんだよ?」ポロポロ

海未「関係ありません。私がこれから惚れさせるので」ナデナデ

ことり「一生愛せないかもしれないよ?」グスッ

海未「私が一生かけて愛すので問題ありません」ニコッ

ことり「ふふっ…なにそれ…何の解決にもなってないよ…」

穂乃果「てやーーーっ!!」ガバッ

海未「ほ、穂乃果! 急に抱きつかないでください!」

穂乃果「知るかーーっ! 穂乃果を放置して二人で盛り上がってずるいよ! 海未ちゃんの浮気もんっ!」

海未はことりから片腕を離し、穂乃果をその腕で抱き寄せる。

海未「二人とも愛しているので気は浮ついてません。したがって浮気ではありません」ギュウ

穂乃果「屁理屈だーっ!」

海未「真実であり、ゆえに正論です」ギュウ

穂乃果「むむむ…」

海未「何がむむむですか」

ことり「海未ちゃん、止血するね?」

海未が振り向くと、ことりが救急箱からガーゼと包帯を取り出しているところだった。

穂乃果「あっ忘れてた。救急箱の場所よく覚えてたね」

ことり「昔はよく怪我した二人をここで手当してたから」

海未「主に穂乃果の無茶に巻き込まれたせいですけどね」

穂乃果「あはは、なんのことデショ-」メソラシ

海未「まったく穂乃果は…」

ことり「はい、手当て終わりっ! しばらく重いものは持たないでね」

海未「ありがとうございます。…それでは改めて」コホン

海未「穂乃果、ことり」

穂乃果ことり「はい」

海未「――二人とも愛してます。幸せにします」ギュウ

ことり「海未ちゃん!」チュッ

ことりが素早く海未の唇を奪う。

ことり「ことり特製バードキスだよ♪」

穂乃果「ことりちゃんずるーい! 穂乃果だって、ん、むっ」チュウウウ

海未「ちょ、ほの、長っ」

ことり「フレンチキスは反則だよ!!」

海未「ぷはっ、二人とも落ち着いて」

穂乃果「ねえことりちゃん?」ボソボソ

ことり「…うん、いいよ、穂乃果ちゃんとなら」

海未「なんですか、隠し事は無しですよ…って、なんで私を二人で見るんですか」

潤んだ四つの瞳が海未に向けられる。

穂乃果「ねえ海未ちゃん」

ことり「三人で――しよ?」

海未「なっ、そんな破廉恥な!」

穂乃果「ねぇ海未ちゃん…」クネクネ

ことり「んみちゃああん♡」クネクネ

海未(あ、これは)

穂乃果ことり「おねがぁい♡」キュルン

海未「はっ、はいっ…」トロ-ン

海未(二人ともずるいです…)

海未「穂乃果、ことり。愛してますよ」







ちんちん生えてるイケメン園田がいたっていいじゃない
ラブライブだもの そのだ

やっぱりこと→うみ←ほのなんだよちゅんなあ…(・8・)
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『海未「穂乃果、ことり。愛してますよ」』へのコメント

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