亜里沙「ねぇ、雪穂知ってる?夜の音楽室にね」

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ゆきあり-アイキャッチ4
亜里沙「ねぇ、雪穂知ってる?夜の音楽室にね」


亜里沙「自殺した生徒の霊がでるんだって!」

pixiv: 亜里沙「ねぇ、雪穂知ってる?夜の音楽室にね」 by みうみ

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雪穂「亜里沙ってば、どこでそんな情報仕入れてくるの……滅多なこと言うもんじゃないよ?」

亜里沙「パン買いに行った時に、前に並んでた1年生が言ってた!」

雪穂「噂話かいっ!とにかく、そんなのデタラメだから言いふらしちゃダメだよ?人によっては本気にしちゃうかもだから」

亜里沙「ハラショー。ところで雪穂。」

亜里沙「滅多なことって何?滅多刺しにすること?」

雪穂「ん?んん〜なんだろう?言われてみれば分からないかも……ってああ!次移動!!亜里沙、急いで!わたしの今日までの皆勤が無駄になってしまう!」

亜里沙「ゆ、雪穂まって〜はやいよぉ……」






それから約874日後、深夜

梨子(ついに、ついにやってしまったわ……!)

梨子(深夜の学校への侵入…一度やってみたかったのよね。)

梨子(もし見つかったとしても、もうすぐ転校するし、転入先の学校も決まってるから、生活態度面でマイナスになっても大丈夫。)

梨子(お父さんとお母さんにはすごい怒られるでしょうけど……今夜は夫婦で会社の送別会らしいから、きっと午前様ね。気づかないでしょう、多分。)

梨子(どこに行こうかな。今いる一階の非常階段から一番近いのは、第二音楽室かしら。一曲弾いてやりましょう。)

夜の学校は、昼間の生徒達の喧騒が嘘のように静かだった。

靴下が床に触れる音と、月明かりだけが、夜の校舎を彩る。

梨子は音ノ木坂にあまり思い入れがなかった。

入学して1年しか経たないというのもあるが、何よりも音ノ木坂の生徒や教師になじめなかった。

音楽と勉強の両立ができ、学費も安く、家からも近いという理由で選んだ学校なので、あまり充実した学生生活は望んでいなかった。

最初はそれで構わなかった。ピアノがあれば寂しくなかった。梨子は音楽入試で入学したため、クラスメイトもそういう態度をとる梨子を不思議に思っていなかった。

だが、ピアノコンクールで全てが一転した。入賞間違いなし、といわれていた大会だったのに、弾けなかった。


その大会は、音楽利用で入学した音ノ木坂生が多く出る大会だった。同級生や、先輩、先生もたくさん見に来ていた。

新学期、学校に梨子の居場所はなかった。いじめられたわけではないが、居心地の悪い空間で梨子は毎日を過ごした。

それから、梨子はピアノの練習が思うようにできなくなってしまった。弾くことはできる。だが、上達しようという向上心が抜け落ちてしまった。

梨子「わたしって情けないなぁ……なんだかんだいって音楽室の前まで来ちゃったし」

音楽室の扉の小窓から中の様子をうかがうと、目に月光に照らされたピアノが飛び込んできた。

梨子「綺麗……」

扉をあけ、ピアノの前の椅子に座る。

梨子「よいしょっと」

音が響かないように、屋根は閉じたままで、ソスヌートペダルに足をかける。

こんな夜には、あの曲があうかな。

鍵盤に指を置くと、自然と指が動き出す。



演奏が終わると、また静寂が戻ってくる……はずだったのだが。


パチパチパチパチ……

梨子「だっ、誰!?」

???「ここですよー」

梨子「なっ、なんでここに私以外の生徒が」

???「ピアノを弾いてたよね?気になっちゃって。」

梨子「はい……でもどうして?全然気づかなかった」

???「それはね」

???「わたしは壁をすり抜けられるからなのだ」

梨子「……へ?」

???「だってわたし、幽霊だから。自己紹介させて!」

???「はじめまして。わたしは端岡真弓。音楽室の地縛霊。よろしく!」

梨子「え、えええ!?」



真弓「落ち着いた?」

梨子「なんとか……」

真弓「びっくりしちゃったよね、ごめんね」

梨子「いえ、大丈夫です」

真弓「桜内梨子ちゃんだよね?よくここで練習してたから知ってるんだ」

梨子「そうなんですか」

真弓「ピアノ、上手だねー!感動しちゃったよ」

梨子「……ありがとう、ございます」

真弓「いーえー」

梨子「……」

真弓「……」

真弓「桜内さんてさ」

梨子「はい」

真弓「どっちかというと内向的な人?」

梨子「そうですね……あまり人と話すの、得意じゃなくて」

真弓「でも、話す時は結構話すよね?」

真弓「それで話し終わってウザがられてないか気にしちゃう」

梨子「あっ、わかります。」

真弓「授業で当てられて、発言しただけで顔が赤くなったり」

梨子「はい」

真弓「自分の方を見て話してる子たちが、自分の悪口を言っているんじゃないかって思って耳をそばだてたり」

梨子「……」

真弓「お弁当を食べる相手がいないのが辛くて、早弁で食べきって音楽室でピアノ弾いてたりね」

梨子「……やめてください」

真弓「分かるんだ。わたしも、桜内さんみたいに居場所を見つけられなくて」

真弓「親の離婚とか失恋とか、人間関係とか。いろいろ重なって、気づいたらここで死んでた」

真弓「自殺してから数日はみんな悲しんでくれてさ、ハブってた連中も青ざめててザマミロって思った」

真弓「でもね、少し経ったらわたしは過去の存在になったの。クラスメイトは新しいマンガや俳優のはなしをして楽しそうに笑ってたんだ」

真弓「それでね、わたし今後悔してる。死ななければよかったなって。生きてたらまあなんとかなったかもって。だから」

真弓「死んじゃダメだよぉ、桜内さん……」ボロボロ

梨子「……」

梨子「え?」

梨子「そんなつもり、ないですけど……」

真弓「嘘だぁ!深夜の学校に侵入してピアノ弾く女子生徒とかもれなく自殺死亡者でしょ!?」

梨子「いやいやいや!どうしてそうなるんですか!私ただ学校とお別れしにきただけですよ!?」

真弓「お別れ!?じゃあ死ぬんじゃん!学校じゃないところで!」

梨子「死なない!転校するだけなの!」

真弓「あ、やっと普通に話してくれた!梨子ちゃんって呼んでいい?」

梨子「え、い、いいです、よ?」

真弓「戻しちゃうの?」

梨子「い、いいよ!」

真弓「やったぁ!」

梨子(なんなのこの状況……)

真弓「梨子ちゃん、転校するんだね。お家の事情?」

梨子「半々……かな」

梨子「お父さんの仕事の都合なんだけど、本当は単身赴任の予定だったの。私を転校させちゃうのは悪いからって。でも、転校したかったからついて行くことにしたの」

真弓「羨ましいな。わたしも転校してたら、うまくやれてたのかも……転校先はどこ?」

梨子「静岡県の内浦ってところ」

真弓「どこだろ」

梨子「かなり田舎みたい」

真弓「ふーん……」

梨子「……」

梨子「真弓さ、ちゃんはいつもはどうしてるの?幽霊……なんだよね?」

真弓「生徒と一緒に授業受けたり校内ブラブラしてるよ。みんなわたしのこと見えてないみたいだけど。なんで梨子ちゃんには見えるんだろう?音楽室だからかな」

梨子「音楽室だからって?」

真弓「ほら、わたしって音楽で死んだから。音楽室が拠点というか」

真弓「たまに見える子がいるんだけど、大体音楽室。ここ以外でも見える子はいるみたいだけど」

真弓「多分わたしが本気出せば短い間なら誰にでも見えると思うんだけどなーまあ必要もないから。わたしはまだ本気出してないだけ」

梨子「もしかして、音楽室に出る幽霊って真弓ちゃん?」

真弓「……自己紹介でそう言わなかったっけ?」

梨子「そうだったかも。真弓ちゃんは今の子みたいな喋り方するのね。」

真弓「梨子ちゃんは今の子じゃないわけ?……わたしは、在校生の会話を聞くのが唯一のたのしみだからね。聞いてるうちに喋り方がうつっちゃったみたい」

真弓「流行もわかってるつもり!雑誌とか持ち込む子もいるし、いまはスマホがあるからどこでもインターネット出来るもんね」

梨子「スマホも雑誌も、没収されるんじゃ……」

真弓「チッチッチ…… 梨子ちゃんは真面目だなあ。先生に見つからなければいいんだよ。部室とかトイレなら基本来ないからね」

真弓「深夜の学校に侵入するぐらいの度胸はあるのに、そういうのは気にするんだね」

梨子「反省文は嫌だし……今日はどうせ転校するからちょっとくらいいいかなって」

真弓「梨子ちゃんって面白いね」

梨子「そうかな」

真弓「うん」

真弓「梨子ちゃんに友達がいなかったのが不思議なくらい」

梨子「私、浮いてたし地味だから。クラスの子と趣味もあわないし話すこともないかなって」

真弓「クラスの子は梨子ちゃんのこと気にしてたよ?」

真弓「いつもピアノがんばっててすごい、とか美人すぎるとか話してるの聞いたよ」

梨子「本当?……もっとあるでしょ、ほかに」

真弓「……まぁ、話しかけ辛いとも言われてはいたけど」

梨子「やっぱり」

真弓「そう見えちゃうだけなんだよ、きっと。本当は友達欲しいでしょ?」

梨子「……いらない」

真弓「本当?いるって言ったら作り方、教えてあげるのにな」

梨子「真弓ちゃんこそ友達いたの?」

真弓「いたし!放課後遊びに行くような友達いたし!」

梨子「そ、そっか」

真弓「……まあその子と揉めて仲悪くなってさ、辛くなって結果幽霊になっちゃったんだけど」

梨子「……」

真弓「そんな顔しないで。もう昔のことだし、気にしてない。でも、梨子ちゃんには幸せになって欲しいの。その第一歩として!」

梨子「……教えて。友達の作り方。」

真弓「おっ!きたきた。」

真弓「まずね、笑顔だよ。口角下げてたら不機嫌だと思われちゃうからね。特に梨子ちゃんは口が笑ってないと怖くなると思う。」

梨子「……わたし、怖い?」

真弓「目が少し。でも、そこが梨子ちゃんの魅力だよ。かっこいいと思うな。」

真弓「次に相手の話しを目を見てちゃんと聞くこと。これは梨子ちゃん出来てるけど」

真弓「最後に……ギャップを持つこと」

梨子「ギャップ?」

真弓「うん。梨子ちゃんって高嶺の花ってかんじがするから、実は庶民的!とかぽんこつ!とか」

梨子「高嶺の花でぽんこつって矛盾してないの?」

真弓「何年か前の生徒会長がそんなかんじで人気あったよ」

梨子「その人こそ面白い人なんじゃないかしら」

真弓「そうだね。梨子ちゃんは話してみてわかったけど、結構スレてるよね。いい意味で。それがギャップなんじゃないかな」

梨子「自分ではよく分からないなあ……」

真弓「あとは思い切った行動をしてみるとか」

梨子「例えば?」

真弓「うーん、海に突然入るとか」

梨子「それいいわね」

真弓「冗談で言ったんだけど……暖かくなってからにしてね。冷たい海に入って死ぬとか、死んでも死にきれないと思うよ。わたしが言えたことじゃないけど」

梨子「わ、分かってるって」

真弓「えー、なんか本当にやりそうで怖いな……ねぇ、梨子ちゃん」

梨子「なあに?」

真弓「友達出来たら報告しに来てよ」

梨子「いつこっちに戻ってくるかわからないよ」

真弓「いつでもいいよ。わたし、待ってるから。友達が出来たとかじゃなくて、またピアノが思うように弾けたとか、就職したとかでもいい」

梨子「学校には生徒じゃないと入れないんじゃ……」

真弓「梨子ちゃんが来てくれたら校門まで行くよ。校門なら行けるからね」

梨子「善処するね」

真弓「約束だよ?いい報告が聞けたら成仏できるかも」

梨子「成仏とか自分で分かるものなの?」

真弓「そんな気がするんだよね。本当はさっさとここから去ろうと思ったんだけど、面倒になっちゃって」

真弓「音ノ木坂もどんどん変わっていくしね。廃校になりかけた時、わたしも消えるしかないのかと思った」

梨子「あ、それ聞いたことある。回避されたんだよね。」

真弓「うん。なんとかなったんだけどね。生徒も前より増えたし。設備もよくなった」

真弓「このピアノもね、もうすぐ新しいのが来るから音ノ木からなくなっちゃうの」

真弓「わたしが入学した時にはもうあって……わたしはここの地縛霊だから、相棒みたいなものかな」

真弓「梨子ちゃん、1曲弾いて欲しいな」

梨子「いいよ。リクエスト、ある?」

真弓「さっき弾いてたのもう一度聞きたいな」

梨子「わかった」


再びピアノの音が音楽室に響き渡る。

ドビュッシーの『月光』────決して難易度は高い曲でない。そのぶん、弾き手の表現力が問われる曲。

ピアノを照らす月明かりをスポットライトにして、梨子の指は鍵盤をはじく。

真弓(すごい、梨子ちゃん綺麗。まるで映画のワンシーンみたい……)

真弓(眠いわけじゃないけど、あたまがふわってなるなぁ)



梨子「……真弓ちゃん?」

真弓「はっ!?」

梨子「終わったよ。もしかして寝ちゃってた?」

真弓「聴いてたって!良すぎて放心状態になっちゃっただけ!」

梨子「ええー」

梨子「ま、そういうことにしてあげる♪」

真弓「……ありがとね。弾いてくれて。相棒も喜んでると思う」

梨子「うん……音ノ木なんか好きじゃないって思ってたけど、このピアノを弾くことはもうないんだって思うと寂しくなっちゃった」

真弓「いい学校だよね、音ノ木は。わたしはうまくやれなかったけど……もし成仏して、生まれ変わったら通いたいな」

真弓「その為にも!絶対にまたわたしに会いに来て。」

梨子「はいはい」

真弓「なんならお友達も連れてきちゃってもいいんだよ?」

梨子「難易度高くない?それ」

真弓「案外来たがるかもよ?ここ聖地って言われてるしさ」

梨子「聖地?何の?」

真弓「えっ梨子ちゃん知らないの……んー、秘密!」

梨子「気になるから教えて!」

真弓「そのうち分かるよ」

真弓「分からなかったらわたしからも教えてあげるしさ」

梨子「むー……」

真弓「ところで梨子ちゃん」

真弓「あと1時間くらいで夜明けだけど帰らなくて大丈夫なの?」

梨子「はっ!?もうそんな時間!?」

真弓「気づいてなかったの?……気をつけて帰りなよ」

梨子「はーい」

真弓「じゃあ、また会おうね。いつでも、待ってるから」

真弓「あ、梨子ちゃん外みて!星がきれい!」

梨子「ほんとだ。夜の学校からこんなに見えるなんて……」

真弓「約束わすれないでねー」

梨子「はーい……っていなくなってる……!?」

梨子「かえろ」


その後、私はダンボールだらけの家でぐっすり眠った。

幸か不幸か、親は私の深夜徘徊に気が付かなかったみたい。昼になっても起きてこないのに怪しんではいたけれど……

真弓ちゃんと会ったのは夢だったんじゃないかと思ってしまうことがある。

でも、夜の校舎の冷たさや、古いピアノの鍵盤の感触ははっきり覚えてるから、夢じゃない……たぶん。

内浦に引っ越す前に、もう一度音ノ木坂に行こうと思ったけど、結局は行かなかった。

めんどくさいというのが建前で、本音は真弓ちゃんに勝手にがっかりされるのが嫌だったから。だってなんか悔しいじゃない!死んだ相手にアドバイスもらっといて何もしないままでまた会うなんて!

内浦へ向かう新幹線こだまの中で、私は浦女では友達を作ることを誓った。





そして数ヶ月後 東京 鳳鳴館にて

千歌「音ノ木坂、この近くなんだって!」

千歌「今から行ってみない?みんなで!一回行ってみたいと思ってたんだー!」

梨子「……ごめん、わたしはいい。先寝てるから、みんなで行ってきて?」

梨子(真弓ちゃん……私友達出来たよ。でも、まだピアノは怖い。だから、今は行けない。ごめんね)

曜「やっぱ、寝よっか」

梨子(気を使わせちゃってる……だめだな、私)

梨子(結局寝ることになっちゃったし、後輩にもかんじ悪かったよね)

梨子(……眠れない)

千歌「眠れないの?」

梨子「千歌ちゃんも?」

梨子「ごめんね、なんか空気悪くしちゃって」

千歌「ううん、こっちこそごめん」

梨子「わたしね、音ノ木坂でかくかくしかじかで。」

千歌「期待されるってどういう気持ちなんだろうね……みんなが見送りに来てくれて嬉しかったけど、実はちょっぴり怖かった」

千歌「期待に応えなきゃって……失敗できないぞって……」

梨子「寝よ、明日のために」

千歌「うん!」

梨子(千歌ちゃん、そんな風に思ってたんだ。全然気付かなかった。こんな時、真弓ちゃんならどうしてたかな……)

梨子(ううんっ、こんなこと考えてちゃだめ!寝なきゃ!)





2ヶ月後くらい

梨子(また……戻ってきたのね)

梨子(去年、私は弾けなかった。それ以来ピアノが怖くなって……でも今は違う)

梨子(Aqoursに入って大切な人達が出来たし、自信もついた。みんなの協力があってここに戻ってこれたんだもの……優勝を目指すわ)

「エントリーNo.17、桜内梨子さん。曲は『海に還るもの』」

梨子(私は……やるわ!)





数日後 UTXの前にて

梨子「ねえ、音ノ木坂に行ってみない?」

果南「いいんじゃない?見れば、何か思うこともあるかもしれないし」

ルビィ「音ノ木坂!?」

ダイヤ「μ‘sの母校!?」

梨子「あ!」

ダイヤ「どうしたんですの!?」

梨子「あっ、ううん大したことじゃないの」

梨子(聖地ってμ‘sの聖地ってことね!もったいぶらずに教えてくれてれば千歌ちゃんに「知らないの!?」ってびっくりされることもなかったのに!)

梨子(真弓ちゃん、びっくりするだろうな。わたしがスクールアイドルって……)

千歌「梨子ちゃん、どうしたの?表情がコロコロ変わってるけど……」

梨子「だ、大丈夫よ!さっ、行きましょ」


千歌「この階段の上が音ノ木坂……」

ルビィ「どうしよう!μ‘sの人がいたりしたら!」

ダイヤ「へ、平気ですわ!その時は写真と……サインと……」

梨子(ここに来るのは久しぶりね……)

千歌「ここが……μ‘sのいた……」

梨子(千歌ちゃんが感動して何か言ってるけど耳に入らないわ)

梨子(友達出来て……Aqoursは友達っていうより仲間だけど……ピアノのコンクールも優勝して、ラブライブ予選も突破したことも言わなきゃ)

???「あの!何か……」

梨子(この声は!)

善子「私の姿を検知している!?」

花丸「やめるずら」ニッコリ

真弓「もしかして、スクールアイドルの方ですか?」

千歌「はい、μ‘sのことを知りたくて来たんですけど」

梨子(えっなんで分かったの?そして私はスルーなのね?)

真弓「残念ですけど……ここには何も残ってなくて……」

梨子(私の時と話し方が全然ちがーう!あなた本当に真弓ちゃん?)

真弓「μ‘sの人、何も残していかなかったらしいです」

真弓「自分たちのものも、優勝の記念品も、記録も」

真弓「物なんかなくても、心は繋がっているからって」

梨子(真弓ちゃん……)

謎の女性「走ると転ぶわよ!」

謎の幼女「へへ、大丈夫ー!」テスリスッー

謎の幼女「(*^^)v」


Aqours「ありがとうございました!」


千歌「じゃ、駅に向かおっか!」

梨子「少しここに残ってもいいかな?すぐ追いつくから」

千歌「そうなの?わかった、合流するときに電話してね!」

曜「梨子ちゃんが別行動になるなら、コスプレショップに寄りたいなぁ……なんて」

善子「ヨハネも、かつて赴いた禁忌のラーデンに向かわなければならないという使命を思い出したわ!」

千歌「曜ちゃんはすぐ終わらないでしょ!?もう!善子ちゃん何言ってるのか分からないしさ!」

善子「リリー、ずるいわ!」

梨子「よっちゃんごめんね……」

鞠莉「まあまあ、slowlyに歩いてましょ♪さっ、行くわよ」


梨子「……真弓ちゃん?」

真弓「久しぶりだね」

梨子「よかった!さっき急に消えたから成仏したのかと……」

真弓「うん、でももうすぐ出来そうだよ」

梨子「わたしね……友達出来た」

真弓「うん」

梨子「ピアノもまた弾けるようになって、コンクールで賞とったの」

梨子「スクールアイドルにもなって……ラブライブ予選通過したよ。」

真弓「そう……」

真弓「よかった」

真弓「階段の下から梨子ちゃんの声がして、もしやと思って来たんだけど、最初見た時梨子ちゃんだって分からなかった」

真弓「だって梨子ちゃんすごい変わってて……顔つきも全然ちがう。自信に満ちあふれてる。わたし、梨子ちゃんのこんな姿が見れて本当に嬉しい」グスッ

真弓「スクールアイドルになったのはびっくりしたけど、確かに梨子ちゃんかわいいしぴったりだよね」

梨子「へへ、それほどでも……」

真弓「前の梨子ちゃんだったら全力で否定してそうなのに変わったよね」

真弓「梨子ちゃん。私そろそろいかなきゃ」

真弓「音ノ木の子達を見守るのも飽きたし、梨子ちゃんは約束を果たしてくれたし、もうこの世に思い残すことはないよ」

梨子「そっか……」

真弓「地縛霊が成仏したらどうなるのか分からないけど、梨子ちゃんのこと応援してるよ。ラブライブ優勝出来るといいね。」

梨子「私ね、真弓ちゃんに会えてよかったよ」

真弓「何さ……突然」

梨子「友達も真弓ちゃんのおかげで出来たし、あの夜学校に侵入してなかったら今の私はなかったと思うから、真弓ちゃんは恩人なの」

梨子「本当にありがとう」

真弓「……」

真弓「もう行く。これ以上梨子ちゃんの顔見てるとヤバイから……」

梨子「あ、最後にひとつ聞きたいんだけど!」

梨子「なんでμ‘sのこと教えてくれなかったの?」

真弓「ここでそれ聞くー?梨子ちゃんはしょうがないな」

真弓「梨子ちゃんにμ‘sを身近な存在に感じて欲しかったからだよ」

真弓「わたしが話しても、ふーんで終わるでしょ?わたしはμ‘sを全て見てきた。だからちゃんと知って欲しかったの。離れてから、有名人と接点があるって分かったら気になるでしょう」

真弓「……分かった?」

梨子「そうだったんだ……真弓ちゃんなりの理由があったのね」

真弓「はやくみんなところに行きなよ。……消えるところ、見られたくないから。」

梨子「うん。ばいばい。……真弓ちゃんのこと忘れないよ」

真弓(そう言って梨子ちゃんは階段を駆け下りてゆきました。)

真弓(梨子ちゃんにμ‘sのことを言わなかったのは、実はもうひとつ理由があって。)

真弓(μ‘sがきっかけで友達ができたらいいなっていうわたしの希望的観測。)

真弓(成功したかな?してたらいいな。だってここに来るくらいだもの、してるよね?)

真弓(さて……)

背伸びをして空を仰ぐと、雲一つない快晴とまではいかないけれど、きれいな青空。

あの空の向こうはどうなっているのかな?ちょっぴり怖いな。

目を瞑って心をまっさらにして。

深呼吸して……天にのぼってゆく。

……

真弓「はあっ」

真弓「梨子ちゃん、行った?行った……よね」

真弓「危なかった……いつばれるか分からなかったもん」

真弓「なんで成仏してないかって?」

真弓「だってわたし、死 ん で な ん か な い も の 」

そう、わたしはあの夜……

自殺するつもりだった。

夜の学校の音楽室で自殺したら、周りの人たちを後悔させてやれるって本気で思ってた。

でも、気持ち良さそうにピアノを弾く梨子ちゃんを見て思いとどまった。

過去の話しとして語ったことは、あの時においての現在。

今からみると、大過去。こう言うと、英語っぽくて嫌だなあ……。

それにしても、梨子ちゃんが音楽室に入ってきて一曲引き終わるまでの間に、幽霊のふりをしてやりすごすなんて上手く考えたと思う。

高一のとき、デタラメな作り話を友達と語り合って、盛り上がっていて、音楽室の幽霊はそのひとつだった。急に思い出したのだ。

音ノ木坂の生徒がいくら増えたっていったって、学院生はだいたい顔見知りだから、梨子ちゃんがわたしのことを知ってても全然おかしくなかった。

幽霊を信じない可能性も十分にあった。

それでも梨子ちゃんは信じたみたいだったから運がいいとしか言いようがない。

でも、友達が出来たら会いに来てとか、わけわからないことを口から出任せで言ってしまったからトントンかも。

梨子ちゃんのことは、委員会の後輩が話していて、それでわたしと同じような人間なんじゃないかってピンときた。

自殺をとめたのは、死体がふたつあると事件性を疑われそうだし、わたしの死よりも梨子ちゃんの死の方が悲しまれるんじゃないかっていう最低な理由だ。

梨子ちゃんはわたしに救われたなんて言ってたけれど、本当はわたしが救われた側。

梨子ちゃんがスクールアイドルになったのはもちろん知っていた。

定期的にスクールアイドルランキングを覗いていて、そこから見つけた。急上昇1位を見落とすはずがない。

東京に来るのが分かったのは、事前にAqoursメンバーのTwitterをフォローしておいたからだ。

そして音ノ木坂にスタンバイしていたらAqoursがやってきた、というわけだ。

ちなみにお辞儀をしている間には花壇の裏に隠れた。3分くらいお辞儀してたし余裕だった。



真弓「梨子ちゃん……」

真弓「わたし、がんばるね。もう死んだりしようとなんかしない」

真弓「なやみを、ふっとばすようなーイメージもってたーたかいましょー」

真弓「梨子ちゃんがこんな曲つくるなんてね。ひとってわからないなあ」

真弓「そんなわーたしたちだよだよ~」

真弓「ふふっ」



おわり


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