希「大好き!」

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希-アイキャッチ20



恋は片想いしてる時が一番楽しいらしい。
あの人は今何してるんかな、何を考えてるんかな。
自分のこと少しは考えてくれてるんかな。
そうこう考えて悶々としてる時間が一番楽しい。
…って、ネットかどこかで見た気がする。

そんなことを朝から考えるウチ、東條希。高校3年生。
ただいま恋をしています。

pixiv: 希「大好き!」 by タケノコ

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お相手は絢瀬絵里っていう、ウチに初めてできたまともな友達。
今は一緒にスクールアイドルをやってるん。
生徒会長をやってるせいか「真面目そう」とか「怖そう」とかいうイメージを持たれてるみたいやけど、ほんとはちょっと抜けたところがあって可愛いんよ。

で、気づいたらそのえりちに恋をしてたん。



ガララッ


希「おっ、えりちおはよー」


絵里「…」


希「えりちー?」


絵里「……あっ、希…。おはよう」


希「浮かない顔してー。どうしたん?」

絵里「なんでもないわ。ちょっと考え事してただけ」

希「ん、何かあったん?」

絵里「大したことじゃないわよ」

希「ほんまにー?」

絵里「ええ」

希「むー…」



好きな人が悩んどるのに力になれないのももどかしいもんなんやね。
えりちって結構抱え込むところあるし、しょうがないけど。
でも、本当に大したことないんかな?

…ううん、気になるけど、言いたくない悩みもあるやんな。
ウチだってそこまでおせっかいじゃない。
えりちの言うことを信じよう。



希「ならええけど、何かあったらウチにゆうてな?」

絵里「ありがとう。何かあったら、ね」


絵里「………はぁ」

希「…!」



えりちがため息をついた時、ウチには何かビビッと来るもんがあった。

今のえりちの表情、めっちゃいい。
可愛い。


パシャ


絵里「ちょっ、希!?」

希「ふふ~。そんな表情してるからやで~」

絵里「…もうっ」クスッ



うん。
でもやっぱり笑顔も可愛い。

好き。
ウチはえりちの笑顔が、一番好き。





放課後

部室


にこ「ふー…。疲れた…」ヌギヌギ

希「最近海未ちゃん、張り切っとるもんなあ」キガエキガエ


絵里「…」チラッ


にこ「帰ってチビたちにご飯作らなきゃ…。今日は何にしようかしら」

希「あ、ウチもついてっていい?冷蔵庫の中からっぽなんよ」

にこ「いいわよ。とりあえず早く着替えましょ。今からならタイムセールに間に合うかも」


絵里「…」ジー


にこ「…絵里、あんまりこっち見ないでよ。着替えにくいじゃない」


絵里「へっ!?」ビクッ


にこ「まさか、希の胸元でも見てたんじゃないでしょうね」

希「えー?えりちやらしー」ニヤニヤ

絵里「ち、違うのっ!!」アセアセ

にこ「…」


にこ「…なに、何か言いたいことでもあるの?」


希「? そうなん?」


にこ「私に?それとも希に?」


絵里「あ、えっと、その…」



にこ「………はぁ」

希「?」



にこ「もういい。行くわよ、希」

希「え?ええの?」

にこ「いいのよ。早く行かないと帰るころには暗くなっちゃうじゃない」

希「そ、そう、やね…」

希「…?」





スーパー


にこ「昨日は魚だったから、今日は…」

希「にこっち、ほんまお母さんみたいやなあ」

にこ「しょうがないでしょ。マ…お母さん、忙しいんだから」

希「にこっちならいいお嫁さんになれそうやね」

にこ「…お嫁さん、ねえ」


にこ「…はぁ」


希「…??」



おかしい。
こんなに静かなんて、いつものにこっちらしくない。
こういう時は、わしわし………も、やめとこ。逆効果かもしれんし。
話題、話題…。



希「…あ、アイドルは恋愛禁止やったっけ?」

にこ「!」

希「だからお嫁さんどころか彼女さんでも難しい、かなあ?あはは」

希「勿体ないなあ。なんならウチがにこっちもらいたいぐらいやのに」

にこ「…」


にこ「…あんたに」

希「?」


にこ「…いや、なんでもないわ」


にこ「ほら、買い物続けましょ」

希「え?あ、うん」


希「…???」



ウチ、もしかして失敗した?
何か琴線に触れるようなことしたやろか…。

…恋愛禁止のとこ?
いやいや、まさかそんな…。





明朝

屋上


ガチャッ


希「おはよー」

にこ「おはよう。ねえ、絵里は?」

希「えりち?まだ来とらんの?」

にこ「そうなのよ。もう来ててもいい時間だと思うんだけど…」

希「おかしいなあ。何かあったんかな」



まさか、何か事件に巻き込まれて…。
いやいや、まさかそんな。
きっと寝坊か何かやろ。
いやいやいや、えりちに限ってそれはない。
じゃあ、えっと…。



希「とりあえず、電話かけてみる?」

にこ「…そうね」


ガチャッ


絵里「ごっ、ごめんなさいっ!!遅れたわ!!」ハァハァ

希「えりち!!」



良かった…。
何かに巻き込まれたとかじゃなくて…。



希「今朝はどうしたん?」

絵里「ちょっと、寝坊しちゃって…」

希「えりちが寝坊?珍しいやん」

絵里「昨日なかなか寝れなくて、ね…」

希「ウチも海未ちゃんたちみたく毎朝起こしにいく必要あるかなー?」ニヤニヤ

絵里「そ、そんなの必要ないわよ…」


にこ「…絵里、来たなら早く準備体操して、練習に加わってよ」

絵里「あ…。え、ええ…」



にこっち、昨日からちょっとえりちに冷たくない…?
気のせいやろか…。



希「…ちょっと、空気悪い?」



結局その空気の原因は掴めないまま、放課後になった。
昨日買い物はしたから、今日はえりちと帰る。
意識し始めた時はだいぶ緊張したけど、今はもう慣れちゃってるなあ…。



希「…おおっ?」

絵里「? どうかしたの?」

希「いや、車道挟んで向こうの歩道の子ら…。道から出てくるまで手繋いでたなあって」

絵里「!」

希「微笑ましいなあ。人通りのあるとこじゃ恥ずかしいもんなあ」

絵里「…の、希?」

希「んー?」

絵里「あの…その、おかしいとか、思わないの?」

希「へ?」

絵里「いや、だってあの子たち、女の子同士じゃない?」

希「…んー」

希「愛のかたちって、人それぞれやと思うよ?」



ウチからしたらうらやましい限りやし。



絵里「そ、そう…」



なんだか、どこかホッとしたような顔。
でもなんでやろ?
えりちって、そんな人の事情まで気にする人やったかな?

…この際、聞いてみようかな。



希「…あのさ、えりち」

絵里「?」

希「お、女の子同士の恋愛って…例えば、アイドル的には、アリ、かな…?」



聞いちゃった。
ウチからしたら『彼氏とかいる?』ぐらいの、とびきりの爆弾。



絵里「………」

希「………」


絵里「…ナシ、ね」

絵里「アイドルは男性ファンだけじゃない。女性ファンだっているのよ」

絵里「対象が同性であっても、ファンを裏切ることに変わりは無いわ」

絵里「それに、発覚したらスキャンダルよ。それこそ、1人の問題じゃなくなる」

希「…」



…見事に、自爆。



希「…はは、そりゃ、そうやなあ…」

絵里「じゃあ、また明日ね」

希「うん。ほなな」


希「ナシ、かぁ…」



えりちの言ってることは正しい。
そもそもがおかしいことなのに、それを仮にもアイドルであるウチが。
きっとにこっちに聞いても同じような答えが返ってくるんやろなあ。



希「…しんどいなあ」



恋路っていうのは、スクールアイドルで輝くより厳しい道のりなんやろな。
なんて、これもにこっちが聞いたら怒るかも。
聞かなきゃ良かった。そう思って、ウチは帰路を急いだ。





それから3日、ナシと言い切られてしまったウチはあんまり元気が出なくて。
ずーっと、えりちとどうやったら恋人関係になれるのかを必死に考えて。
結局、現状維持が一番良いって結論に至ったん。
下手にアタックして今の関係が崩れるのは、絶対に嫌やったから。


そう決意した次の日。
放課後練が終わったけど、えりちは少し先生に用があるとかで残るらしい。
しょうがないから真っすぐ帰ろ…



希「…あっ、宿題のプリント忘れた」



決意してもまだぼーっとしてるみたいで。
校門からとんぼ帰りして、ついでにえりちと合流しようかな、なんて考えてたら



希「…にこっち?」



廊下の奥の方にいたにこっちが、部室に入っていった。
なんやろ、にこっちも忘れ物?声かけてこうかな?



「―――!」



部室の前まで来て、中で何か話声がするのに気付いた。
にこっちと、あともう一人。
ウチが、一番よく知ってる声。



希「…えりち?」



なんやろ。入っちゃいけない気がする。
ドアの向こうからでも伝わる重い空気。
とりあえず、聞き耳を立ててみる。



絵里「……」

にこ「呼び出しといて、何よその態度」

絵里「……その…」

にこ「………」

絵里「…」

にこ「…用が無いなら、帰るわ」

絵里「ま、待って!!」ガシッ

にこ「…痛いんだけど」

絵里「あ、ご、ごめんなさい…」パッ

にこ「…」



希「…」



なんなん。
なんなんやろ、これ。
ただの喧嘩ってわけじゃなさそう。
なんだか、この場から離れた方が良い気がする。
でも怖い物見たさっていうのかな。
離れられない。



絵里「…」

にこ「止めにしようって、言ったでしょうが」

絵里「でも…」

にこ「言いたいことも言えないの?」

絵里「…」


にこ「…はぁ」

にこ「…覚悟ぐらい、決めてから呼び出しなさいよ」

絵里「…!」


絵里「でも、私、私…っ!」ポロポロ

にこ「…」

絵里「…っ」グシグシ


絵里「何度も何度も考えたの、絶対に駄目、許されないって…」

絵里「でも、そう考えるたびに、思いが強くなって…」

絵里「…っ」ポロッ


絵里「…私っ」

絵里「にこのこと、諦めきれないっ…!」



絵里「私はっ、にこのことが、大好きだからっ…!!!」





希「…!!?」



え?

何これ?

ウチは今、何を聞いた?


待て待て待て待て。
一旦、落ち着いて、状況を整理せんと。

ウチは部室に忘れ物をしたから取りに帰った。

そこで部室に入っていく帰ったはずのにこっちを見た。

聞き耳を立てると、すごい深刻なムードが伝わってきた。

えりちは泣き出してしまったが、言葉をひねり出し始めた。



えりちはにこっちに告白した。



希「~~~っ!!???」ウプッ



お腹の中から何かが込みあがってくる。
必死にこらえる。
戻っていくのを感じる。

口の奥がすっぱい。

まだ、まだ決まったわけじゃない。
まだにこっちが返事を出してない。
ドアを少しだけ開けて中を覗き見ると



にこ「…ほんと、臆病なんだから」ギュッ

絵里「にこっ………ううぅっ………」ギュッ

にこ「…まぁ、臆病なのはお互い様ね」ポンポン



二つの影が重なって、一つになっていた。



希「っっっっ!!!!!!」ダッ



こらえきれないものを吐き出すためにすぐそこのトイレへ走る。
間に合った。吐き出す。
波が引いていく。
1分前の光景がよみがえる。
波が津波になって襲い来る。
流される。
口から、目から、体中から拒否反応が出る。
必死に抗う。虚しく流される。
繰り返す。



希「はぁーっ………。はぁーっ………」ポタポタ



繰り返す。



希「んんんっ!!!!」バッ



目に焼き付いて離れない。



希「…うぅっ…ひっぐ、うぇっ………」グズグズ



今滴ってるのは涙か、汗か、吐いたものか。
わからない。どうでもいい。
何も考えたくない。

帰ろう。
これはきっと悪い夢。
寝て起きたらきっとまたいつも通りの日常。
いつも通りのウチ。えりち。にこっち。
きっとそうに違いない。
そうに違いない。





翌朝


チチチチ…


希「………」パチリ

希「………」


希「…夢かあ」


希「………」



希「…さすがに、夢オチはないなあ……」



昨日のことは、残念ながらちゃんと記憶に残ってる。
ウチの頭、もっと融通効かせてくれてもいいのに。



希「…もっかい寝ようかな」



正直、学校に行きたくない。
このまま家でじっとしていたいって、ウチの心が叫んでる。
でも学校を休んだらきっと、優しいえりちは心配して家まで来ちゃう。
もしかしたらにこっちも連れて。



希「…いや、支度せんと」



体調が悪いわけではないし、学校は行っとかんとね。
朝練で体を動かせば気も紛れるかもしれんし。
着替えて、いつもより目元に少しだけ濃い化粧をして、荷物を確認して…。



希「………」



昨日あんなものを見てしまって、二人にどういう顔をして会えばいいのかがわからない。
さっきからずっとその考えが頭を巡ってる。



希「…スマイルの練習でもしておこうかな?」



鏡の前に立って、笑顔を作ってみる。
あれ、この仕草なんだかアイドルっぽい?
なんて考えて、気持ちをそらして、3、2、1…。



希「………にぃっ」ニコッ


希「…おおっ?」



…案外、いつも通り?





屋上


ガチャッ


希「おっはよー」

にこ「おはよう、希」

絵里「あら、希。早いじゃない」



まだ屋上にはウチら以外だれも来てないみたい。
まあ集合30分前やし…って
えりちとにこっち、いつからいたんやろ。
まさか昨日あのまま…

…本当に気分悪くなりそうやから、考えるのやめとこ。




希「えー?えりちとにこっちの方が早いやん!一番やって思ったのにー」

絵里「それは残念ね。いつもこのくらいには来てくれると助かるんだけど…」

希「それは言わんといて!」

にこ「さて、じゃあみんな来るまで…柔軟でもしてる?」

希「おっ、にこっち、珍しくやる気やん!」

にこ「うるっさいわね!にこはいつだって本気よ!」

絵里「こらこら、喧嘩しないの」

希「えへへ…」



ウチ、いつも通り振る舞えてるかな?
二人は演技上手いなあ。
付き合ってる…のかはわからんけど、全くそういう様子が見えん。
…別に、認めたくないのとは違うんよ?



絵里「…もうっ」クスッ



………あ。
あー。

あかんね。泣きそう。
なんでやろ。えりちの笑顔かな。
ウチはね、その笑顔が好きなんよ。
いつもキリッとしてるえりちが見せてくれる笑顔が。


…例えばここでウチが泣き出すとする。
えりちもにこっちも驚くやろなあ。
何かあったのかって聞いてきたら、ウチはきっと思いのままに事のあらましを発表する。
そしたら…。


えりちの顔は、絶対に曇る。
昨日の涙は、そういうことなんやろ?
自分が社会常識的に少しズレた気持ちを諦めきれなくて。
それでもにこっちを愛するって決めて。
にこっちにもそれを受け入れられて…。


…うらやましいなあ。
ウチもそんな風に思ってもらいたかった。

でももう、届かないんやね。
どう足掻いても、どうもがいても。



希「…ねえ、えりち、にこっち」


絵里「?」

にこ「なによ?」




希「大好き!」ニッ




にこ「…はぁ?」


絵里「…ふふっ。いきなり何よ」クスッ

にこ「…もう」クスッ


希「言ってみたくなっただけ!笑うんはひどいよー?」



ならウチは、何もすべきじゃないよね。

えりちの横にいるのはウチじゃないけど。
もう眺める事しかできないけど。

だからって横入りするような事はせんよ。
えりちの…二人の幸せを願ってるよ。



ウチは、えりちの笑顔が大好きだから。



ウチ、東條希。高校3年生。
ただいま初めて失恋をしました。
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