真姫「ピアノの音…?あんまり上手じゃないけど誰かしら」

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真姫-アイキャッチ20
17: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/11/18(金) 14:45:36.51 ID:wxqcnRIg.net
ザァアアアア……

真姫「もうすぐ冬なのに、6月みたいな雨ね」

真姫「じっとりして、イヤな感じ」

真姫「ラブライブも近いから、もっと練習したいのに……」

♪~

真姫「あら、何かしら」

真姫「……ピアノの音?」

元スレ: 真姫「ピアノの音…?あんまり上手じゃないけど誰かしら」

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18: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/11/18(金) 14:54:15.71 ID:wxqcnRIg.net
真姫「放課後なのに、誰かしら」

真姫「……あんまり上手じゃないわね」

雨の日の放課後。

私は少し、意地悪くなっていました。

だって、その音楽室は。

私にとって、かけがえのない居場所の一つだったから。


真姫「誰だか知らないけど、顔を拝んであげるわ」

真姫「ついでに、ちょっとおどかしてみようかしら」

真姫「……って、これじゃあ凛かにこちゃんじゃない!」
19: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/11/18(金) 15:01:21.05 ID:wxqcnRIg.net
♪~

真姫「まったく……」

♪~

真姫「ああほら、遅れてるわよ」

♪~

真姫「スタッカートもぎこちないし……」

♪~

真姫「ダメダメね。楽譜を読むところからレクチャーしてあげないと」

……♪


真姫「……あら?」

真姫「音が、止まった」

真姫「気づかれたのかしら」
20: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/11/18(金) 15:08:28.71 ID:wxqcnRIg.net
ガラッ――と少し勢いよく戸を開けた時には。

ピアノを弾いていた誰かは、すでにいなくなっていました。

その時、視界の隅をさっと何かが横切って。

慌てて周りをキョロキョロ見回しても、もちろん誰もいなくって。

でも、あれは確かに髪の長い女の子だったわ。

それにこの、ほのかに残る甘いにおい――。



真姫「……あら?」
22: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/11/18(金) 15:13:41.43 ID:wxqcnRIg.net
真姫「……なによ、これ?」

真姫「……ユリの花?」


音楽室の床に落ちていた、白い花弁。

それは、紛れもなく、ユリの花でした。

おかしな気がしました。

だって、今はもう11月。

ユリの花には、寒すぎるもの。


真姫「あら?廊下にも落ちてるわ」

真姫「あそこにも……」
23: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/11/18(金) 15:24:30.69 ID:wxqcnRIg.net
廊下に転々と落ちている、ユリの花弁を拾いながら。

私は、小さい頃にママが読んでくれた絵本を思い出していました。

大好きなヘンゼルとグレーテル。

意地悪な継母に追い出された兄妹が、こっそり撒いた白い小石を道しるべに、パパの待つおうちに帰るの。

それにしても、白い花でよかったわ。

これがもしも、赤いバラの花弁だったなら、

それはきっと、手負いの獣が流す血のようで――。




真姫「」ゾクッ

真姫「……どこに導こうとしてるのよ」
25: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/11/18(金) 15:28:48.07 ID:wxqcnRIg.net
真姫「……まただわ」ヒョイ

真姫「静かね」

真姫「……」

真姫「……放課後の学校って、こんなに静かだったかしら」

真姫「それに、雨の音は?」

真姫「……あら、あそこにも」

真姫「……」



真姫「一本の花に、どうしてこんなに花弁がついているのよ」
26: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/11/18(金) 15:35:18.41 ID:wxqcnRIg.net
♪~

真姫「!!」ビクッ


その時、かすかに。

ピアノの音が聞こえてきました。

誰もいなかったはずの音楽室。

ふと、希の声が脳内によみがえってきた。

夜の音楽室に現れる、ピアノを弾く女の子。

その音色に引き寄せられ、目が合うと――。


真姫「……き」

真姫「キャアアアアア!!」
27: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/11/18(金) 15:56:35.48 ID:wxqcnRIg.net
こんな大声で叫んだのに、どうして誰も顔を見せないんだろうとか、

スマホで助けを求めた方がいいんじゃないかとか、

そんなことをのんびり考える余裕なんて、私にはもう残っていなくて。

ただ夢中で、ユリの花弁を頼りに、

ひたすらに叫びながら走りました。

薄暗い校舎の中。

その白い花弁は、まるで光を放っているかのように、不思議にはっきりと見えたの。

階段を転げるように降りて、

普段は絶対に走らない廊下を駆け抜けて、

気がついたら、私は。

講堂にいました――。
28: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/11/18(金) 16:00:39.70 ID:wxqcnRIg.net
真姫「……はぁっ、はぁっ……」

「……」

真姫「……け、けほけほけほっ」

「……お待ちしていましたよ、真姫」

真姫「……」ヘタヘタ

「廊下を走ってきたのですか?いけない人ですね」

真姫「……あ」

真姫「あなただったの?」


真姫「海未?」

「はい」
29: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/11/18(金) 16:13:20.86 ID:wxqcnRIg.net
真姫「な、なんのつもりよ!」

「なんのつもり、とは?」

真姫「とぼけないで!」

真姫「意味ありげに花弁なんて撒いたり、下手なピアノなんて弾いたり!」

「下手ですか、私?」

真姫「私に言わせれば、ダメダメよ!」

「――やれやれ」



「もっと練習しないと、あなたにはなれませんね」
30: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/11/18(金) 16:24:58.86 ID:wxqcnRIg.net
真姫「どういうこと?私になるって……」

真姫「いや、そんなことより!あなたの後でピアノを弾いたのは誰なの!?他に誰と共謀してるの!?」

「――真姫は、アルター・エゴって知っていますか?」

真姫「は、はぁ!?」

「別人格、あるいはもう一人の自分。それがアルター・エゴです」

「文学のモチーフにもなっているので、機会があれば是非調べてほしいですね」

真姫「……何が言いたいのよ」

「私達って」

「不思議と、似通っていませんか?」
33: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/11/18(金) 16:52:40.86 ID:wxqcnRIg.net
真姫「……あまり考えたことはないわね」

「似ていますよ」

「共に跡取り娘で、進む道を親から与えられていて」

真姫「……」

「こうあったかも知れない私、こうあってほしかった私。あるいはこうなるかもしれない私」

「そうした無数の“可能性としての私”を控除した結果が、今そこに存在しているあなたです」

「そして控除された“可能性としての私”のことを、哲学では他我、つまりアルター・エゴと言います」

真姫「……もしかして、海未は」

真姫「自分をもう一人の私、もう一人の西木野真姫だと思っているわけ?」

「ちょっと惜しいですね」

「私が西木野真姫であると同時に、あなたは園田海未でもあるのですよ」

「いえ、ここにいる私達だけではありません」

「穂乃果も、ことりも、花陽も凛も。にこや絵里や希だってそうです。皆アルター・エゴ、つまり“可能性としてあり得たもう一人の私”なのですよ」
34: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/11/18(金) 16:58:47.40 ID:wxqcnRIg.net
真姫「……ついていけないわね」

「馬鹿げていますか?」

真姫「ええ、バカバカしいわ」

真姫「大方、何かろくでもない本でも読んだんでしょ」

「そうですか。あなたも薄々感づいていると思っていたのですが」

「秘密の作曲ノート。μ'sのための曲」

真姫「!?」

「公開する予定のない、その曲の名は――」

真姫「ち、ちょっと!」

真姫「どうしてあなたが、それを知っているのよ!」

「だから、言っているではありませんか」

グイッ

真姫「!!」
43: >>35手直し(庭)@\(^o^)/ 2016/11/18(金) 19:04:09.06 ID:/F1+o188.net
>>35
肝心なところでミスってるよ畜生


真姫「ち、近――///」

真姫(違う、海未じゃない)

真姫(私の知っている海未は、こんなに気安く顔を寄せる子じゃない!)

「私は真姫であり――」

真姫「やっ……来ないで……」

「――あなたは海未なのですよ」

真姫「……ダメッ////」


「ひとつになりましょう――真姫♡」



チュッ……
37: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/11/18(金) 17:14:33.27 ID:wxqcnRIg.net
翌日――

穂乃果「海未ちゃんと真姫ちゃん、今日は遅いね」

絵里「珍しいわね、あの二人が遅刻だなんて」

穂乃果「真姫ちゃんが教室で何してたか、凛ちゃんと花陽ちゃんは知ってる?」

花陽「それが、いくら声をかけても上の空というか……なんだか違う世界を見ているようで」

凛「正直、今日の真姫ちゃんは何か怖いにゃ……」

ことり「そういえば、お昼休みに二人が一緒だったよ」

ことり「何かしきりにクスクス笑いあってて……いつもと様子が違うみたいだった」

希「聞き捨てならないなぁ。ね、にこっち?」

にこ「ぬゎんでそこで私を見るのよ!」

絵里「ともかく、ちょっと迎えに行ってくるわね」
39: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/11/18(金) 17:19:48.71 ID:wxqcnRIg.net
絵里「あら、何かしらこれ」ヒョイ

絵里「花弁……ユリじゃない」

絵里「なんでこれが、こんな季節に落ちているのよ?」

絵里「あら、こっちにも」

♪~

絵里「ピアノの音?……真姫かしら」

絵里「あ、いたいた」

絵里「そこの二人、遅刻よ?」

絵里「……え?」

――僕たちはひとつの光



おしまい
40: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/11/18(金) 17:25:58.52 ID:wxqcnRIg.net
スレタイからイメージを膨らませた結果、こんなことになりました。
いつかホラーを書いてみたかったので、機会を与えてくれた>>1には感謝してます。


ちなみにアルター・エゴの説明に関しては、内田樹の著書数冊から拝借しました。
あと、花弁を追いかけるシーンはもろに恩田陸の模倣ですね。
でも一番参考にしたのは、言うまでもなく真姫ちゃんのSIDです。
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