- 始まりはダイヤの、何気得ない一言だった。
「いい子にしてないと、サンタさんが来てくれませんよ?」
次のライブの打ち合わせをしようとメンバー全員が集まった部室
部屋の空気が一気に変わり皆、思い思いの表情をしている
千歌、梨子、花丸は目を丸く見開いて信じられないものを見たという表情。
曜、善子はどう誤魔化したものか……苦い顔をしている。
果南は『何がおかしいの?』とでも言いたげな顔、鞠莉とルビィは笑顔だ
最も、ニヤニヤとニコニコだが。
数秒の沈黙を破ったのは千歌だった。
「あ、あの…ダイヤさん…サンタさんは……」
「ストップ千歌ちゃん!その先はダメ!」
「そうよ!その先を言うのは重罪よ!」
「ンー!ンー!」
千歌の凶行を他の二年生が止める。
「なんですの……さっきから騒々しい…」
「と、とにかく!今日中に曲の方向性と衣装のイメージだけ決めないと!さ、集中、集中!」
この場は曜の発言で強引に締められ、その後話を蒸し返す者はいなかった。
日が落ち、あたりも暗くなってきたころで作業もひと段落し、皆で帰路につく。
帰り道の途中、千歌は皆の半歩後ろを歩くダイヤに歩幅を合わせ、こっそりと聞いた
「あの……ダイヤさん、ホントに、ホントにサンタさんは居ると思いますか?」
千歌はどうしても気になってしまった、冷静で、どこまでもリアリストな先輩が、よりにもよって小学生のような夢見る少女だなんて、とても思えなかった。
帰ってきた答えは意外なものだった。
「……まさか、わたくしが信じてると?」
「え?」
思わず聞き返す。
「ルビィじゃなくて……よりによってわたくしがそんな純に見えまして?」
「えぇ……ダイヤさんならありえるかな~…なんて」
「まったく……」
「じゃあなんであんなことを?……あ、やっぱり信じてたりして!」
「違いますわ!」
軽いやりとりを交わした後、ダイヤが話し始める。
「……千歌さんは正射必中って言葉を知っていて?」
「せーしゃひっちゅう?」
「そう、正射必中……弓道の言葉ですわ」
「どんな意味なんですか?」
「『正しい姿で射れば自ずと的に当たる』という意味ですわ、外れる要素が無くなるくらい完璧な姿勢を追求しなさい、とも言えますわね」
「なるほど~!……なんで今その話をしたんですか……」
いまいち要領を得ない千歌に、ダイヤは穏やかな声色で語る。
「……ずっと正しい行いをした人の元には、必ずサンタさんがくるのですわ」
「……」
「……千歌さんには難しい話だったようですわね」
「あ!馬鹿にしましたね!?これでも今色々考えてたんです!」
抗議の色を見せる千歌を見てダイヤは優しく、微笑んでみせた
「ふふっ……ではここで、千歌さんまた明日」
「あっ……さようなら…」
ルビィと共に家に入っていくダイヤを千歌は暫く見つめてた。
ダイヤさんの言葉はあまりよくわからなかった
夕ご飯の時も、お風呂の時も、寝る前も、ずっと考えても分からなかった。
もし、私がもっと質問したらダイヤさんはなんて続けただろうか。
『だからわたくしは正しく生きるのですわ』なんて、続けただろうか。
だとしたら誰がダイヤさんにプレゼントをあげられるんだろう、誰がサンタになってあげられるんだろう。
背を向けたダイヤさんの、背筋の通った後姿だけが、妙に頭に焼き付いて離れなかった。
pixiv: サンタクロースを信じてる by やまたたーん
スポンサーリンク
『サンタクロースを信じてる』へのコメント
当サイトはコメントシステムとしてDisqusを使用しています。
コメントの投稿にはDisqusへのアカウント登録が必要です。詳しくはDisqusの登録、利用方法をご覧下さい。
表示の不具合、カテゴリーに関する事等はSS!ラブライブ!Disqusチャンネルにてご報告下さい。