希「失った記憶と繋がる心。」

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1: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/14(木) 00:19:48.69 ID:fEmQmvNQ.net
その人を、その人と定義付けるもの

それは一体、何だろう?


容姿? 性格? 言動?

記憶? 思考? 経験?


…それとも、魂?


あるいは、その全てなのか


ひとつでも違えば、それは

その人とは言えないのだろうか


もし、それが違ったら…

もう、元には戻れないのだろうか

元スレ: 希「失った記憶と繋がる心。」

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2: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/14(木) 00:21:34.35 ID:fEmQmvNQ.net
-----


「おはよう、にこっち♪」


「…おはよ、希。」

「今日も朝から元気ねえ…」


「…ウチは、それが取り柄やからね♪」


下駄箱前で、にこっちと会って

2人一緒に、教室まで

いつも通りの、ウチの毎日



「…それにしても。」


「…?」


「アンタ、変わったわね。」
3: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/14(木) 00:22:16.70 ID:fEmQmvNQ.net
「1年で出会ったばかりの頃は。」

「ずっと、回りばっか気にして。」

「すごく、奥手だったじゃない。」


「それが、今や…」


「今や?」


「こんなに、面倒な性格に。」


「…酷いなあ、にこっち。」


「ま、希らしいけどね。」


「ふふっ、ありがと♪」


「…別に、褒めてないんだけど?」
4: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/14(木) 00:23:11.79 ID:fEmQmvNQ.net
「それじゃ、また後でな、にこっち。」


「じゃあね。」


にこっちと別れて、ウチのクラスへ

見知った顔に、挨拶する


「…おはよう、希。」


「おはよ、えりち。」

「今日は早かったんやね?」


「少し、先生に頼まれ事があったから。」

「生徒会はもう、終わったのにね。」


「それだけ、頼りにされてるんよ♪」


「…じゃあ、希にも手伝ってもらおうかしら?」


「おっと、授業の準備が…」


「…もう。」
6: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/14(木) 00:23:39.96 ID:fEmQmvNQ.net
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「それでね、その時にこが…」


「…そうなん?にこっち。」


「ちょっ…言うなって言ったでしょ!?」


午前の授業を終えて、お昼休み

今日は天気がいいから、屋上で


誘ったら、にこっちも来てくれたから

今日は珍しく、3人でのご飯



「…でも、もうすぐ終わりなのよね。」


ぽつりと、えりちが呟く


「「…」」
7: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/14(木) 00:24:07.04 ID:fEmQmvNQ.net
「…考えたってどうしようも無いでしょ?」

「今は、頑張るしかないんだから。」


「…そうやね。」


年が明けて

ラブライブ本戦は、もう目の前に迫ってた

一日が、すごく短く感じて

ウチらの頭は、終わりを意識し始めてた



「ラブライブまで、後少し。」

「最後まで、ウチららしく頑張ろ?」


「…そうね。」


少し落ち込むえりちに、声をかける
8: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/14(木) 00:24:36.06 ID:fEmQmvNQ.net
「…優勝、するわよ。」


「うん♪」

「ええ、勿論よ。」


今まで、このために頑張って来た

うぬぼれる訳じゃないけど

このメンバーなら、絶対優勝できる


…なぜだか、そう確信が持てる



「それじゃ、そろそろいこっか♪」


予鈴の音に合わせて、そう告げる

荷物を片付けて、午後の授業へ


…練習が、待ち遠しい
9: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/14(木) 00:25:21.99 ID:fEmQmvNQ.net
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「…ふう。」

「それでは、今日はここまでにしましょう。」


海未ちゃんの一言で、みんなの糸が切れる


「疲れたーっ…」


「お疲れさま、穂乃果ちゃん♪」


「かよちん、帰ろー?」


「あっ、ちょっと待って凛ちゃん!」


いつも通りの、練習おわり

疲れてても、みんな笑顔でいられる

…そんな、居場所



「…さ、私達も帰りましょうか。」

「そうやね。」
10: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/14(木) 00:25:57.48 ID:fEmQmvNQ.net
ドリンクとタオルを手に持って

屋内に繋がる扉に向かう


「穂乃果ちゃん達も、一緒にラーメン食べにいかない?」


「おっ、いいね!」

「いくいく!」


「真姫ちゃんも行くにゃーっ!」


「私は別に…」


「いいじゃん、いいじゃん。」

「いこうよっ!」


「いいでしょ?真姫ちゃん!」


穂乃果ちゃん達に詰め寄られる真姫ちゃん

この光景も、いつも通り


きっと、押しに負けて行くんやろうなあ…
11: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/14(木) 00:26:25.44 ID:fEmQmvNQ.net
「…ああもう、分かったわよ!」

「行けばいいんでしょ?行けば。」


真姫ちゃんが振り向いて、投げやりに言う

…ほら、やっぱり負けた♪


「さっすが真姫ちゃん!」


「まったく…」

そう言って、階段に足をかける


いつも通り、こうして部室に帰って

いつも通り、帰り道を歩いて


そう、思ってた


…でも


ひとつだけ、いつもとは違った
12: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/14(木) 00:27:00.00 ID:fEmQmvNQ.net
「な…ッ!?」


振り向いて答えたからなのか

それとも、疲れていたからなのか


真姫ちゃんが、バランスを崩す

重力に逆らえず落ちていこうとするその体に

凛ちゃんが手を伸ばした時には、もう遅くて





…どうして、動けたのかも分からない

ただ、ウチも手を伸ばした

凛ちゃんより4センチ背が高かったからか

その手に、手が届く


「…ッ!」
13: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/14(木) 00:27:44.28 ID:fEmQmvNQ.net
それでも、飛び出したウチの体も

真姫ちゃんを支えきれずに落ちていく


全てがスローモーションに見える中

腕を引いて、引き寄せる


運動しといてよかったなあ…とか

スタントマンみたいやね…とか


どこか他人事のような考えが、頭を流れる


打ち付けられた体に痛みを感じる事も無く

…ただ、自分の体を下に出来てよかったと思った



「よかった…」


真姫ちゃんに、怪我がなくて

声は出なかったけど、そう呟いた




---そこで記憶は途切れた
14: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/14(木) 00:28:18.43 ID:fEmQmvNQ.net
-----




…声が聞こえる


名前を呼ぶ、声が



そっと目を開けると

白い景色が、広がっていた


---ここは?


「…!」

声が、出ない


一面真っ白の、世界

足下には、百合の花が咲いてる


…ああ、死んじゃったのかな、なんて

そう考えてはみるものの

なんだか、釈然としない


…そもそも



---私は何を、していたんだろう?
15: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/14(木) 00:28:55.13 ID:fEmQmvNQ.net
-----


「…!」

目の前に、唐突にそれは現れた



---私?


何かを、叫んでる


「     」


---聞こえないよ?


「     」


どこか、焦っているように

目の前の『私』の顔が、険しくなる


---なんて言ったの?


口を開けてみても

やっぱり、声は出ない
16: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/14(木) 00:30:08.11 ID:fEmQmvNQ.net
…すると、目の前の『私』は

諦めたように、下を向いた



自分は、こんな顔して泣くんだ


そんな事を考えながら

目の前の『私』を見つめる、私



「…!」


また、どこからか声が聞こえる

何だか、呼ばれているような気がする


「……み!」

だんだん近付いてくる、その声



それと同時に、目の前の『私』が離れていく


---待って!

---まだ、聞きたい事が…!




「…希!!」
17: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/14(木) 00:30:37.12 ID:fEmQmvNQ.net
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目を開けると、真っ白な天井


なにか、夢を見ていたような気がする



…思い出せない


でも、それよりも…



「希!」

「希ちゃん!」


「大丈夫!?」


口々に投げかけられる、その言葉

どうやら、心配させてしまっていたみたい



「えっ…と…」
18: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/14(木) 00:31:19.94 ID:fEmQmvNQ.net
「分かる?希。」

「貴女、屋上の階段から落ちたのよ。」


「真姫をかばって、下敷きに。」

「…覚えてる?」


「希…」


泣きはらした顔と、目が合う

…なんだか、申し訳なくなった


「奇跡的に、大きな怪我はしていないそうです。」

「多少の擦り傷と、打ち身がある程度で…」


「心配…したんだよ…?」


「でも、目を覚ましてよかった…」
19: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/14(木) 00:32:15.35 ID:fEmQmvNQ.net
だんだんとクリアになる頭で

状況を整理してみた


どうやら、ここは病院で

階段から落ちた後

意識を失って、運ばれて来たみたい


…でも、それよりも

気になっている、事があって


「えっと…」


「どうしたの?希ちゃん。」

「何か、ほしいものある?」


心配そうに覗き込むみんなを見て

こう、呟いた






「貴女達は…誰ですか?」
49: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/14(木) 08:18:24.87 ID:fEmQmvNQ.net
「ちょっと希…」

「こんな時に、冗談なんて…」


金髪の女の子が、声を震わせる


「あの…」


「これって…」

「もしかして…」


何となく、空気を察した

周りにいる子達の、顔が暗くなる


…ああ、なりほど


きっと私は、私でない誰かで


そして


彼女達のともだちを---奪ってしまったのか
50: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/14(木) 08:19:08.14 ID:fEmQmvNQ.net
「記憶喪失…ですか。」

大和撫子みたいなその子が、ぽつりと告げる


…記憶喪失


でも、そうするとひとつ疑問が出てくる


私の名前は、東條希

…それは、覚えている


もし、間違っていなければ、だけど


心にかかったもやを理解できずにいると

ひとりの女の子が、声を発した



…そこで、理解する

今の私の、現状を
52: 名無しで叶える物語(プーアル茶)@\(^o^)/ 2015/05/14(木) 08:20:07.76 ID:fEmQmvNQ.net
「…ちょっと真姫、どういう事!?」


「分から…ない…」


「分からないじゃなくて!!」


金髪の女の子が、赤い髪の…

真姫、と呼ばれていた子に掴み掛かった


「あ、あの…!」


声を、絞り出す

なぜだか、胸が痛くなった




「やめなさい!!」


大きく響いた声に

その場にいた全員が、体を硬直させる

目に入ったのは、ピンクのカーディガン
53: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/14(木) 08:20:49.25 ID:fEmQmvNQ.net
「…目の前で、不安を煽ってどうすんのよ。」

「落ち着きなさい。」


「でも、にこ…」


「アンタが取り乱したって、仕方ないでしょ?絵里。」


「…」


「えっと…」


「…ごめんね、希。」

「何か覚えている事、ある?」


そう言って、顔を覗き込まれる


…ああ

これは、覚えてる


いつだって、こうして

気にかけていてくれたから…



「にこ…ちゃん?」
54: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/14(木) 08:21:24.26 ID:fEmQmvNQ.net
「希…?」


「…やっぱり、にこちゃんだ。」


そっと、胸をなで下ろした

知っている顔が、いた


大丈夫

全部忘れたわけじゃない


これなら、きっとすぐにでも…




そんな私の想いは

すぐに、打ち砕かれる事になった



「もしかして…」
55: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/14(木) 08:22:02.02 ID:fEmQmvNQ.net
「…ねえ、希。」


「…何?にこちゃん。」


「…」

何かを言おうと、開いた口から

言葉が出てこずに、また閉じる


…何を、言いたいんだろう?


「…正直に答えて。」

「今、希は…」


「何年生?」


何年生?

そんなの、言わなくてもわかるんじゃ…



「1年生、だよ?」




何かが壊れる---音がした
69: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/15(金) 01:17:01.70 ID:3wX1jYv/.net
-----



「…疲れて、寝ちゃったみたい。」


「…そうですか。」

「では、状況を整理しましょう。」


「…にこ、先ほどの話を、もう少し詳しくお願いできますか?」


「…いいわ。」

「恐らく希は、ここ2年間の記憶を失ってる。」


「…2年間も?」


「高校生活、ほとんどじゃ…」


「…花陽の言う通りよ。」

「理由としては、私を覚えていた事。」

「…そして、絵里の事を知らなかった事。」


「…」
70: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/15(金) 01:17:34.17 ID:3wX1jYv/.net
「私が入学した時。」

「希は、同じクラスだった。」


「いつも、周りを気にしてる希を見て。」

「…なんだか、放っておけなくて。」

「声をかけたのが、始まり。」



「…希があの喋り方になったのは。」

「2年に、進級した時。」

「いつまでも私と一緒にいちゃ駄目だ、って。」

「自分を変えたい、って希は決めた。」



「…その時ね。」

「絵里と、出会ったのは。」



「…ええ。」
71: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/15(金) 01:18:05.41 ID:3wX1jYv/.net
「…いつも、そうだった。」

「私の後ろを、ずっと着いて来て。」


「…にこちゃん、って。」


「そう…呼んでたの。」


「「…」」



「じゃあ、今の希ちゃんはその時に…」

「って事は、穂乃果達の事…!」


「忘れている…いえ。」

「知らない、と言った方が正しいのかもしれません。」


「そんな…」


「…ッ。」


「…真姫?」
72: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/15(金) 01:18:35.78 ID:3wX1jYv/.net
「…のせい。」

「私が…こけなかったら…」

「あの時…」


「…思い詰めてはいけません、真姫。」

「希は、真姫を助けようとした。」

「それだけです。」


「…それが、希の性格なんですから。」


「…違う。」

「違うの!!」


「私が悪いの!!」

「私のせいよ!!」


「そう言えば良いじゃない!!」

「希があんな風になったのは、私の…!」



パンッ…
73: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/15(金) 01:19:20.99 ID:3wX1jYv/.net
「え…?」


「絵里…ちゃん…?」


「…罵ってほしいなら、いくらでもしてあげるわ。」

「それで、希の記憶が戻るならね。」

「…でも、そうじゃないでしょう?」


「…」


「泣いてる暇なんて無い。」

「後悔してる暇なんて無い。」


「…探さなきゃ。」

「希の記憶が戻る、方法を。」


「…そうでしょ?」


「…」



「…うん。」
74: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/15(金) 01:20:03.04 ID:3wX1jYv/.net
「…ごめんなさい。」


「私こそ、ごめんなさい。」


「…ううん。」

「もう、大丈夫。」

「…ありがと、絵里。」



「真姫ちゃん…」


「…大丈夫だよ、かよちん。」

「真姫ちゃんなら、きっと。」



「…では、話を戻しましょう。」

「今の希の、状態についてですが。」


「真姫のお父様に聞いた所。」

「記憶喪失と言うよりは、記憶障害というらしいです。」
75: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/15(金) 01:20:49.24 ID:3wX1jYv/.net
「症状としては、逆向性健忘という名前で。」

「主に、昔の記憶…思い出を忘れている状態だそうです。」


「思い出…」


「治療法は確立されておらず。」

「…しかし、早ければ24時間ほどで元に戻る場合もあるようです。」


「…ほんと!?」


「…ええ。」

「ですが記憶障害自体、謎の部分が多く。」

「なにがきっかけとなって思い出すのかは分かりません。」


「そんな…」


「…ただ。」

「真姫のお父様に、こう言われました。」
76: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/15(金) 01:21:14.67 ID:3wX1jYv/.net
「思い出は、その人の人生そのものだ、と。」

「悲しい事も、楽しい事も。」

「感じた事は全て、その人の心に宿っていて。」

「密接に絡み合い、決して消える物ではない。」


「…そう、おっしゃっていました。」


「…つまり?」


「つまり。」

「私達と過ごして来た時間が、決して無くなった訳じゃない。」

「思い出せないだけで、希の心には必ずある、って事。」

「…そうでしょ?」


「…にこの言う通りです。」


「じゃあ、どうすれば…」
77: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/15(金) 01:21:48.18 ID:3wX1jYv/.net
「…教えてあげればいい。」

「私達と過ごした、時間を。」


「真姫ちゃん…」


「私達との思い出が希の中にあるのなら。」

「私達が、それを伝えれば良い。」

「楽しかった事も、苦しかった事も。」

「全部一緒に乗り越えた仲間が、私達なんだ、って。」


「…思い出すまで、何度も。」



「…うん、そうだよ。」

「真姫ちゃんの言う通りだよ!!」


「今まで、ずっと9人でやって来たんだもん。」

「忘れるなんて出来ない、そんな時間を過ごしてきたんだから。」
78: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/15(金) 01:22:16.70 ID:3wX1jYv/.net
「…きっと希ちゃんの事だから。」

「すぐに思い出して、またからかってくるに決まってるにゃ!」


「ふふっ…希ちゃんらしいね。」



「「…」」



「悩んでたって、しょうがないよ。」

「この9人で、夢を叶えるんだから。」


「…みんなで、叶えるんだよ。」



「そうよ。」

「ラブライブまで時間もないんだから。」


「…それに。」

「面倒くさくない純粋な希なんて。」

「つまらないじゃない?」


「…一刻も早く、希の記憶を取り戻すわよ!」


「「おーっ!!」」
79: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/15(金) 01:22:57.37 ID:3wX1jYv/.net
-----



「ん…」


どうやら、寝ちゃってたみたい

そっと、ベッドから足を下ろす


幸い、記憶が無い事以外は

…とは言っても、記憶が無い事自体分からないんだけど

体は問題ないみたいで

明日にでも、退院できるみたい


「のど…乾いたな…」


けほっと小さく咳をして、ゆっくり立ち上がる


少しだけ、ふらつくけれど

頭は、はっきりと冴えている


「えっと…たしか、自販機が下に…」


病室の時計を見ると

針は、夜10時を回ってた
80: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/15(金) 01:23:31.75 ID:3wX1jYv/.net
-----


こつ…こつ…と

私の足音が、響く


夜の病院って怖いなあ…


そう考えながら歩いていると

自販機の明かりが見えて来た


ブーン…と怪しい音を立てている

自販機の前に立つ


「…あ。」

…しまった


病室に、財布を忘れて来ちゃった

自販機の所に来るって、分かってたはずなのに…


「…仕方ない、か。」

諦めて病室に帰ろうとした時

後ろから、声が聞こえた


「…希?」
91: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 01:57:47.49 ID:ldnI5HhC.net
振り返ると、そこには

赤い、くせ毛の女の子


確か、この子は…


「えっと…」


「…真姫よ。」


「…そっか、ごめんね。」


「…ううん。」


「「…」」


「ま、真姫ちゃんは、どうしてここに?」


「…病院。」

「うちの、病院なの。」


「えっ…!?」
92: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 01:58:30.30 ID:ldnI5HhC.net
どうやら、真姫ちゃんは

世間で言うお嬢様らしく

この病院の、先生のお子さんみたい


…でも、ひとつの疑問が生まれた

どうして、そんな子と私は知り合いなんだろう?


「…ねえ、真姫ちゃん?」

「ひとつ、聞いても良い?」


「…なに?希。」


「今日、いた子達も…だけどさ。」

「どうして、私はみんなと仲良くなれたのかな。」


「…!」


「みんな、私が3年生になってから、知り合ったんだよね。」

「…だから、覚えてない、って。」


「それが…知りたいの。」
93: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 01:59:06.91 ID:ldnI5HhC.net
「…」


一瞬、顔が曇ったけど

すぐに、さっきまでの表情が戻る


「…?」


財布を取り出した真姫ちゃんは、紅茶を買って

ひとつ、私にくれた


「わ、悪いよ…お金持って無いし…」


「…そんな事だと思った。」

「いいから、飲んで。」



「…少し、長くなると思うから。」



「…うん。」

「ありがとう。」
94: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 01:59:55.52 ID:ldnI5HhC.net
それから、ぽつぽつと

真姫ちゃんは、話してくれた


今、私達が何をしているのか

…何を、目指しているのか



「スクールアイドル…μ's…」


「希は、その最後のメンバーなの。」


「…まさか。」

嘲笑気味に、声を漏らす

引っ込み思案な私が

どうして、そんな事が出来るのか


…一体、私に何があったんだろう?
95: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 02:00:28.53 ID:ldnI5HhC.net
「…信じれないのも、分かる。」

「今の希は、私の知ってる希とは到底結びつかないもの。」


「…」


「でも、だから何?って感じ。」


「え…?」


「μ'sの事を忘れていても。」

「希は、希でしょ?」


「…それに。」

「きっとすぐに、思い出すわ。」

「ううん、思い出させてみせる。」


「…約束する。」


「…どうして?」


どうしてそこまで、してくれるんだろう

真姫ちゃんも、他のみんなも
96: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 02:01:31.64 ID:ldnI5HhC.net
「…私を、救ってくれたから。」

そっと、そう告げる真姫ちゃん


「でも、それは咄嗟にそうなっただけで…」


「違うわ。」

「今回の事も、確かにそうだけど。」


「…私を救ってくれたのは、もっと前から。」

「初めて会ったときから、今日まで。」


「…私は、何度も貴女に救われてきた。」


「それって…」


「…今度は、私の番。」

「希が私に、してくれたように。」


「…希を、救いたいの。」


真姫ちゃんの瞳から溢れたそれから

私は、目を離せなくなっていた
97: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 02:02:51.10 ID:ldnI5HhC.net
「…」


どれくらい経ったのか

不意に、真姫ちゃんが口を開く


「…私ね、昔希に、面倒な人って言われた事があるの。」


「ええっ…!?」

「それは…えっと…」

「ごめんなさい。」


「ふふっ、いいのよ。」

「私も、そう思ってるから。」


「…希が、同じぐらい面倒だって。」


「それって…」


「…」
98: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 02:03:19.42 ID:ldnI5HhC.net
「希が記憶を失くした、って知って。」

「正直辛かった。」

「私のせいだって、後悔もした。」


「…でも。」

「こんな事言ったら、不謹慎なのかもしれないけど。」


「希と話して、どこかほっとしてるの。」


「…え?」


「なんとなく、なんだけど。」

「もしかしたら…」


「…ううん。」


「一番辛いのは、やっぱり希だから。」

「こんな話して、ごめんなさい。」


「真姫ちゃん…」
99: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 02:03:49.49 ID:ldnI5HhC.net
「…あのね、真姫ちゃん。」


「こんな事言ったら不謹慎かもしれないけど…」

「私も、ほっとしてるんだ。」


「…え?」


「私の記憶…1年生の頃はね。」

「ともだちって言える人、にこちゃんぐらいだったから。」


「あ…」


「だから…なんて言うのかな?」

「今、ここでこうして、真姫ちゃんと話せてる事。」

「私を心配してくれた、みんながいた事。」


「…心の中で、喜んじゃってる私がいるの。」


「…」
100: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 02:21:38.46 ID:ldnI5HhC.net
「だからね、真姫ちゃん。」

「きっとこうなったのは、私自身が望んだ事で。」

「真姫ちゃんが気にする必要は、ないと思うんだ。」


「…きっと、みんなの知ってる私も。」

「今の私も、同じ事をしたと思うから。」


「希…」


「だって、もし大事なともだちが、そうなってたらって思うと。」

「そんなの、手を伸ばしちゃうに決まってるから。」

「真姫ちゃんも、そうでしょ?」


「…うん。」


「だから、私としては。」

「真姫ちゃんが無事で、よかった。」


「…ただ、それだけなんだよ。」
101: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 02:22:16.26 ID:ldnI5HhC.net
「のぞ…み…」


必死に涙をこらえる真姫ちゃんを見て

自然に、その華奢な体に手を伸ばした


…そうしなきゃ、って思った


腕の中で小さくなる真姫ちゃんを

優しく、抱きしめる


「…私ね、嬉しいんだ。」

「こんな風に、私を想ってくれる人がいて。」

「私のために、泣いてくれる人がいる。」

「…悲しくなんか、ないんだよ?」


「私の事、みんなが覚えててくれたなら。」

「それだけで十分、私は幸せだよ。」



「…私とともだちになってくれて。」

「ありがとう、真姫ちゃん。」
102: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 02:23:55.58 ID:ldnI5HhC.net
「…ッ。」

「そんなの…」

「そんなの、私だって…!」


「…真姫ちゃんの話を聞いてると。」

「こんな事、きっと言わなかったと思う。」

「でも、今の私なら、言えるから。」



「…私も。」

「私こそ…」


「ありがとう、希。」

「また…私は、救われたの。」


「…絶対、思い出させてみせるから。」

「だから、今は…」


「今だけは…素直になっていい…?」


止まらない涙を拭って

もう少しだけと、目を閉じる


…今は、私達だけだから
103: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 02:35:50.85 ID:ldnI5HhC.net
-----



「これで、よしっと…」

お世話になった…と言っても、2日だけだけど

使ったベッドを綺麗にして、受付へ


午前中に、お母さんがわざわざ来てくれて

このおかげ…って訳じゃないけど

久しぶりに、会えた気がする


記憶が無いだけで、家の場所とか

自分の事は覚えているから

特に治療が必要ないので、自宅療養になったみたい


定期的に検診は必要だけど

日常生活に戻る事で

また、何か思い出せるかも…


そんな理由で、退院することになった
104: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 02:36:36.12 ID:ldnI5HhC.net
「希ちゃーん!!」


「あ、えっと…」


受付で諸々の手続きを終えて

帰る用意をしていると、その子が来た


「…そっか、覚えてないもんね。」

「穂乃果だよ、希ちゃん!」

そう言って…穂乃果ちゃんは笑う


「ふふっ…もう覚えたから、大丈夫♪」


「ホント!?」

「じゃあ、間違えたら罰ゲームね♪」


せめて、みんなを不安にさせないように

笑顔でいよう、って決めたけど…

この子の前では、自然と笑顔になれちゃうみたい
105: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 02:37:02.76 ID:ldnI5HhC.net
「…それで、穂乃果ちゃん。」

「今日は一体、どうしたの?」


「あ、そうだった!」

「希ちゃん、体調は平気?」


「…?」

「うん、大丈夫だよ?」


「なら、来てほしい所があるの。」

「きっと来れば、すぐに思い出せるよ!!」


そう言って、私の手を取って、走り出そうとする穂乃果ちゃん


「…あ!」

何かに気付いたように、ピタッと止まる


「…ごめんね、希ちゃん。」

「いつも通り、走り出しちゃう所だったよ。」


…止まってられない性格なんだね
106: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 02:37:31.69 ID:ldnI5HhC.net
-----



「…ここだよ。」


穂乃果ちゃんに連れて来られて

学校の中へ

たどり着いたのは、アイドル研究部の部室


…そう言えば、前に一度

にこちゃんに連れられて、入った事があったっけ?


今は、穂乃果ちゃん達も使ってるんだね


「ではでは、どうぞ!」


ぐいっと背中を穂乃果ちゃんに押されて

扉を開けて、部室の中へ



「…!」


目に入ったのは

たくさんのアイドルグッズと

私を待っててくれた、7人のともだち
107: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 02:38:04.61 ID:ldnI5HhC.net
穂乃果ちゃんが、前に回って来て

上に向けて、クラッカーを鳴らす


「えっ…ええっ!?」

驚く私を、みんなが迎え入れる


「…希ちゃん。」

「おかえりなさい。」


「…!」


「本当の意味の、おかえりじゃないのかもしれないけど。」

「それでも、やっぱり私達は、この9人だから。」


「…」


ただいまと、言って良いのかな

…だって


みんなが待っていたのは

私じゃない…『私』だから
108: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 02:38:37.58 ID:ldnI5HhC.net
「…ほら、さっさと入りなさいよ。」

「今日は、みんなの事思い出すまで、帰さないからね。」


「にこちゃん…」


目の前に、みんなが並ぶ


「…改めて、高坂穂乃果だよ。」

「一応、μ'sのリーダーやってるんだ。」

「2年生で、希ちゃんの一個下だよ♪」



「えっと…南ことりです♪」

「穂乃果ちゃんと同じ2年生で。」

「μ'sの衣装を作ってるよ。」

「…あ、お菓子作って来たから、あとで食べてね♪」



「…同じく、2年の園田海未です。」

「μ'sでは、作詞を担当しています。」

「あと、メニューも私が作っていますので。」

「辛かったりしたら、言って下さい。」
109: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 02:39:39.95 ID:ldnI5HhC.net
「1年生の元気代表、星空凛だよ!」

「好きな物はラーメンで…」

「えっと…すっごく元気にゃーっ!!」



「り、凛ちゃん…」

「…あ、えっと、小泉花陽です。」

「凛ちゃんと同じ1年生で…」

「ご、ご飯が大好きですっ!」



「ちょっと2人とも…」

「好きな物答えてどうするのよ。」


「…昨日も話したけど、西木野真姫よ。」

「μ'sでは、作曲を担当しているわ。」
110: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 02:40:19.87 ID:ldnI5HhC.net
「もう知ってると思うけど、改めて。」

「アイドル研究部、部長の矢澤にこよ。」

「希は私の事、にこっちって呼んでたわ。」

「もしかしたら、思い出すきっかけになるかもしれないから。」



「…最後は、私ね。」

「絢瀬絵里よ。」

「希とは、2年の頃から一緒に生徒会をやっていたわ。」

「私のことも、えりち、って呼んでたから。」

「そう呼んでもらえると、私も嬉しいわ。」



「…と、言う訳で。」

「μ'sのメンバー紹介でした!」


「忘れちゃ駄目だよ?希ちゃん。」



「みんな…」
111: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 02:41:13.29 ID:ldnI5HhC.net
なんて言っていいのか、分からずに

その場に、立ち尽くす


嬉しいような、申し訳ないような


言い悩んでいると、にこちゃんが、口を開く


「…なに、遠慮してるのよ。」


「ここは、アンタのもうひとつの家で。」

「にこ達は、家族みたいな物よ。」


「例え記憶が無くたって。」

「誰も、アンタをよそ者みたいに扱ったりしない。」


「…だから、言うべき事はひとつ。」

「そうでしょ?」


「…」


「…みんな、ただいま。」



「「おかえりなさいっ!!」」
119: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 22:26:35.15 ID:ldnI5HhC.net
「さあさあ、希ちゃん!」

「まずは、これを見てもらわないと!」


そう言って穂乃果ちゃんは、パソコンの電源を入れる

動画再生サイトを立ち上げて

ある動画をクリックする


「…さあ、始まるよ。」


流れて来た音楽は

…どこか、懐かしい感じがした


「これ…」


そこには、とても楽しそうに踊っているみんなと



…『私』がいた
120: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 22:27:15.41 ID:ldnI5HhC.net
「…ほら。」

「言ってた事、本当だったでしょ?」


真姫ちゃんが、後ろから声をかける


流れる曲に合わせて

ステップを踏んで、ターンして

笑顔で踊る、『私』がいた


「…すごい。」


素直に、口からそう出た


「とっても…楽しそう。」


私は、こうして笑う事も出来るんだ

…こうして、みんなと一緒に
121: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 22:27:49.89 ID:ldnI5HhC.net
「…真姫から聞いたそうですが。」

「希は、こうして私達と一緒にスクールアイドルをやっていました。」


「希ちゃん、すっごく上手だったんだよ?」

「練習したら、すぐに出来ちゃって。」

「…よく、教えてもらってたの。」


優しそうな顔の…花陽ちゃんが、そう告げる


「私が…?」


とてもじゃないけど、信じられなくて

だって、記憶にある私は

運動は嫌いじゃないけど

そんなに得意ってほどじゃなかったし…


何より、人に教えられるようになるなんて
122: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 22:29:26.61 ID:ldnI5HhC.net
「…どう?」

「何か思い出した?」


にこちゃんが、聞いてくる


「…ううん。」

申し訳ないけど

嘘をつく訳にもいかなくて

…素直に、そう答える


「ま、そんなに簡単に思い出せたら、苦労しないわね。」


「…うん。」

「でもね?」

「なんて言うのかな…」


「…懐かしい、感じはしたよ?」
123: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 22:30:03.53 ID:ldnI5HhC.net
「本当?希。」

顔が明るくなった…絵里ちゃん


「うん。」

「なんだか…私も、やってみたいって思ったの。」

「…教えてくれる?」


「…ええ、勿論よ♪」

「と言っても、体が覚えてると思うけど。」


「ありがとう、絵里ちゃん。」

「あ…」


「…良いのよ。」

「慣れてからで、構わないから。」


そう言う絵里ちゃんの顔は

さっきよりも、少しだけ曇ってた
124: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 22:30:34.14 ID:ldnI5HhC.net
「…でも、この調子なら。」

「もしかしたら、すぐ戻るかも♪」


えっと…ことりちゃんが、そう言ってくれる



「そんなに心配しなくても、大丈夫!」

凛ちゃんも、フォローしてくれた


「では、今日は解散して。」

「明日から、希の体調を見ながら練習しましょうか。」

「ラブライブまで、時間もないですしね。」


「えっと…その…」

「よろしくお願いします!」


…できる事を、しよう

今の私には、それしか出来ないから
125: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 22:31:11.96 ID:ldnI5HhC.net
-----


「ここが、希の家ね。」

「…とは言っても、それは覚えてるか。」


みんなと解散した後

にこちゃんと絵里ちゃんが、家まで着いて来てくれた


「ありがとう、2人とも。」


鞄から鍵を出して、鍵穴に差し込む

がちゃり、と音を立てて、鍵が開いた


「えっと…どうぞ?」


「…なんで、疑問系なのよ。」


「な、なんとなく…」


なんだか、自分の家じゃないみたいだから
126: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 22:31:57.10 ID:ldnI5HhC.net
「これは…」


中に入って、驚いた

だって…これは…



「す、すぐ片付けるね!」


まるで、男の子の部屋みたいに

片付いていない、女の子の部屋


「…そう言えば、希ってこんな性格だったっけ。」


「…忘れてたわ。」


「ええっ!?」


呆れた感じの2人の言葉に、驚いた

私、こんな性格なの?


「…なんだか、こっちの希の方が。」

「しっかりしてる気がするのは、気のせいかしら?」
127: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 22:32:30.48 ID:ldnI5HhC.net
呆れながらも、絵里ちゃんは笑ってくれた

…すこし、ほっとする


「それじゃ、まずは片付けないとね。」


「そんな、悪いよ…」


「いいのよ。」

「晩ご飯はにこに任せて。」

「私達は、こっちをやりましょう?」


「それじゃ、台所借りるわね。」


私以上に、私の家でテキパキ動く、2人


もしかして、常習犯だったのかな…
128: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 22:46:40.76 ID:ldnI5HhC.net
-----


「…だいたい、こんなものかしら。」


絵里ちゃんの手伝いもあって

意外と早く、片付いた私の部屋

片付けながら、気付いたのは

…私の知らないものが、沢山増えていた事


「あ、これ…」


目に入った、一枚の写真立て

学校の講堂で、笑顔でポーズをとる、9人の写真


「…懐かしいわね。」


そう言って、絵里ちゃんがその写真に触れる


「…夏の終わりにね。」

「ちょっとした、問題が起きて。」

「私達、解散するかもって事があったの。」


「え…?」
129: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 22:47:30.16 ID:ldnI5HhC.net
「…結局、それは解決して。」

「私達は、またラブライブを目指す事になった。」

「また、夢に向かって走り出そう、って。」

「…その時の、写真なの。」


「…そうなんだ。」


あんなに、みんな仲良さそうだったのに

そんな事が、あったなんて


「それからも、色々あったのよ?」

「泣いたり笑ったり、忙しかった。」


「何度も壁にぶつかって。」

「…決して、毎日が楽しいと言える日々じゃなかった。」


「それでも、ここまで来れたのは。」

「…みんながいて、希がいたから。」
130: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 22:48:24.59 ID:ldnI5HhC.net
「…私もね。」

「μ'sに入るまでは、変な意地を張って。」

「生徒会長って立場を利用して。」

「穂乃果達の活動を、諦めさせようとしていた事があったの。」


「…」


「その時に、希が。」

「…私を、救ってくれたの。」

「自分の殻に閉じこもって、周りを見ようともしていなかった。」

「思い通りにならない現実に、辟易してた私に。」


「…貴女が、希望を見せてくれたの。」


「絵里ちゃん…」


そう語る絵里ちゃんの顔は、はっきりと見えなかった

でも、どこか、悲しそうで…
131: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 22:48:54.42 ID:ldnI5HhC.net
「…ご飯、出来たわよ。」


にこちゃんに呼ばれて、はっと気付いた

さっきまでの空気は無くなって

部室で感じた、あたたかな雰囲気に変わっていた


「…さ、ご飯にしましょう?」


「うん。」


絵里ちゃんに促されて、リビングへ

にこちゃんが用意してくれた料理は

…とても、美味しそうで


「いいにおい…!」


「ほら、冷めるから早く座りなさい。」

目の前に並んだ料理から

にこちゃんも、私が元気になった事を

喜んでくれている、気がした
132: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 22:49:25.87 ID:ldnI5HhC.net
-----



「…それじゃ、また明日ね。」


「うん。」

「2人とも、遅くまでありがとう。」



夜は9時を回ったあたり

2人にお礼を言って、玄関に鍵をかける


美味しいにこちゃんのご飯を頂いて

今までにあった思い出話を聞いて


まだ、何も思い出せてはいないけど

とても、楽しい時間だった


…少なくとも、私はそう感じた



「…ふう。」


部屋に戻って、ソファに座る
133: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 22:50:20.55 ID:ldnI5HhC.net
「…なんだか、知らない部屋みたい。」


場所も、荷物も

自分のものではある


…当たり前の事だけど


それでも、どこか手を出しにくくて

結局、タンスの奥にあった

ここに来た当初に着ていたパジャマを、引っ張りだす


「下着は…仕方ない、か。」


流石に、昔の物は残ってないみたい

「安物だったからかなあ…?」


手に取ったそれを見ていると

大きくなっていた事に気がついた


「…なるほど。」


つまり、入らなくて捨てたんだ
134: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 22:50:46.27 ID:ldnI5HhC.net
-----



「…」


お風呂に浸かって、天井を見上げる

思ったよりも、体は疲れていたみたい


…それもそうか

いくら、友達だからとは言え

私は、覚えていないのだから


向けられた好意に、疲労を感じてしまう


それも、仕方の無い事だけれど

どうしても、申し訳なくなる


「変わらないとなあ…」


そう呟いて、気付く


変わる必要があるのだろうか


…思い出さないといけないのに
135: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 22:51:11.92 ID:ldnI5HhC.net
-----



「…おやすみなさい。」


豆電球を残して、ライトを消す

…なんだか、真っ暗は怖いから


もぞもぞと布団に入って

今日の事を思い出す


「みんな…優しかったなあ…」


何も分からない私のために

みんな、動いてくれて


とても、嬉しかった


「明日から、頑張らないと。」


記憶の事もそうだけど

部活の事で、迷惑はかけられない
136: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 22:51:54.02 ID:ldnI5HhC.net
「でも、私がダンスなんて…」

何度考えても、納得できない


でも、にこちゃんが言ってたように

私が、2年になった時に変わったのなら


…本当に、変われたのかな

ううん、変わってないとおかしい


だって、そうでもなきゃ、説明できないくらいに

現在の『私』の周りには

私の欲しかった物が、溢れていたから


「もう…限界…」

眠気がピークに達して、考えがまとまらなくなってきた

目を閉じて、意識が途切れる直前


ある、ひとつの懸念が頭をよぎる

だけどそれを脳が自覚するよりも前に


…私は、意識を手放した
138: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 23:07:41.96 ID:ldnI5HhC.net
-----




「…これで、いいのかな?」


次の日

昨日、にこちゃん達に言われた荷物をまとめる

今日は土曜日だから、学校は無くて

代わりに、お昼から一日、ダンスの練習みたい


「本当に、踊れるのかなあ…?」


そんな不安を振り切るように

首を横に振ってごまかす


「…やらないと。」


そうじゃないと

また、みんなに迷惑をかけるから



「…行こう。」

一人でいると、考え込んでしまいそうで

背中に迫る暗い何かから

逃げるように、家を後にした
139: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 23:08:37.90 ID:ldnI5HhC.net
-----



「うう…」


寒い風が、足下を通り過ぎる

年が明けたとは言え

まだまだ、冬が残ってるみたい


…なにより

最後の記憶では、まだ夏だったから

季節が急に逆転したみたい


それでも、通学路の街路樹には

春に咲くための準備をしている、桜の木が


「卒業…か。」

実感がまるで無い

そもそも、こんな状態で卒業して、大丈夫なのかな


…悩みは、尽きる事はなさそう
140: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 23:09:12.28 ID:ldnI5HhC.net
「おーい、希ちゃーん!」


並木道を進んでいると

後ろから、声がかかった


この、元気な声は…


「おはよ、希ちゃん。」


「おはよう、凛ちゃん。」


やっぱり、凛ちゃんだ

後から遅れて、花陽ちゃんも走ってくる


「はあ…はあ…」

「凛ちゃん、急に走り出したら危ないよ…」



「…はあ。」

「おはよう、希ちゃん。」


息を整えた、花陽ちゃんと挨拶する
141: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 23:09:49.73 ID:ldnI5HhC.net
「2人とも、仲いいんだね。」


「もちろんにゃ!」

「だって凛達、幼なじみだもん。」

「かよちんの事なら、何でも知ってるよ?」



「ふふっ…そっか。」

「何だか、羨ましいね。」


そう言うと、凛ちゃんは不思議そうな顔をする


「希ちゃんも、そうだよ?」

「にこちゃんと絵里ちゃんと、すっごく仲良しだったから。」


「…そっか。」


花陽ちゃんに言われたけど

やっぱり、何も覚えてはいなくて…
142: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 23:10:14.96 ID:ldnI5HhC.net
「…でも、なんだか不思議な感じだね。」


「凛ちゃん…?」


「希ちゃん、いつもと喋り方が違うから。」


「喋り方…?」


「いつもはね、なんて言うか…」

「関西弁?っぽい喋り方なんだよ?」


「関西弁…」


「それと、自分の事も私じゃなくて、ウチって言ってたよ。」


「…」


関西弁…


ウチ…?


なんだろう…この感じ

なにか、忘れちゃいけないような…
143: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 23:10:53.95 ID:ldnI5HhC.net
「…希ちゃん?」


「…!」

「ああ、ごめんね。」


「何か、思い出したの?」


「…ごめん、花陽ちゃん。」

「まだ、何とも。」


「あ、その…急かしてる訳じゃ、ないから。」

「…無理は、しないでね?」


「…うん、ありがと。」

「でも大丈夫。」



「なんだか…」

「2人の話聞いてて。」

「なにか、思い出せそうな気がしたから。」
144: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/16(土) 23:11:25.03 ID:ldnI5HhC.net
「ほんと!?」


凛ちゃんが、すごく嬉しそうな顔をする


「うん、ほんと。」

「まだ、はっきりとはだけど…」



「ううん、よかったにゃ!!」

「きっと、すぐ思い出すよ!」


「…うん、そうだと思う。」


花陽ちゃんも、そう言ってくれる


「ありがとう、2人とも。」

「それじゃ、早速いこっか♪」

2人と学校に向かいながら

さっきの事を、思い出そうとする



…関西弁、か
149: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 06:57:49.62 ID:tpk/GxcD.net
-----



「…っと。」


演奏が終わって

みんなの方を見る


「どう…かな?」


「ハラショー…」


「す、凄いよ希ちゃん!」


「ほんと!」

「一回見せただけだったのに…」



「…うん。」

「私も…不思議な感じ。」


「考えずに動けたっていうか…」

「…覚えてた?」
150: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 06:58:17.72 ID:tpk/GxcD.net
「…やはり、予想通りでしたね。」

「ずっとみんなとやって来たんですから。」

「思い出せなくても、体に染み付いているんでしょう。」



「体に…」


学校について、練習儀に着替えて

海未ちゃん達の説明を受けながら、踊ってみた


説明を聞いてるだけだと

難しすぎて、無理だと思っていた事が

曲を流してみると、すんなり踊れて


…まるで、自分の体じゃないみたいに


私の足は、ステップを踏んで

指先まで、意識が届く



「…楽しい。」
151: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 06:58:41.04 ID:tpk/GxcD.net
「うんうん♪」

「これなら、問題なさそうだね。」


「…みたいね。」

「ダンスすら覚えてなかったら、どうしようかと思ったわ。」


「あ…そっか…」

それすら出来ないと、私…


「気にしなくていいの。」


「真姫ちゃん…」


「実際、こうして踊れたんだから。」

「歌も、きっと大丈夫。」

「…それに。」


「体が覚えてるんだもの。」

「心も、すぐに思い出すわ。」


「…うん。」


そうだと…いいな
152: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 06:59:26.29 ID:tpk/GxcD.net
「でも、無理はしちゃだめだよ?」

「体壊しちゃ、意味ないからさ!」


「穂乃果が、それを言いますか…」


「ほ、穂乃果はもう大丈夫だもん!」


「…?」


「ああ、いえ。」

「とにかく、無理はしないように。」

「何かあったら、言って下さいね?」


「…ありがと、海未ちゃん。」



「…よしっ。」

「それじゃ、今度は発声練習を…」


穂乃果ちゃんが、プレーヤーを持ってくる


「…あ。」
153: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 06:59:49.29 ID:tpk/GxcD.net
~♪


「…!」

プレーヤーから、流れるメロディに

体が、ピクッと反応する


「…ごめんごめん。」

「間違えて、再生しちゃっ…」


「待って!!」


「…希ちゃん?」


…聞いた事がある曲調に

何かが、頭をよぎった


「…」


「届けて…切なさ…には…」

「名前を…つけようか。」

「スノーハレーション…」
154: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 07:00:20.10 ID:tpk/GxcD.net
「希…?」


「これ…知ってる…」

「何でか、分からないけど…」


頭に浮かぶ、歌詞をなぞる

どうしてかは分からないけど

言葉に出さなきゃいけない


…そんな気がした



「希…貴女…」


「…なんでかな。」

「体が…熱くなるの。」


もっと、踊りたい

もっと、歌いたい…って



「好き…?」
155: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 07:01:00.36 ID:tpk/GxcD.net
「なにか思い出したの!?」


穂乃果ちゃんの言葉に、はっと気がつく


「え…?」


「あの日の事、思い出したの?」


「あの日…?」


「…その様子だと、まだみたいね。」


「…ごめん。」


「いいのよ。」

「少しでも、何か思い出すきっかけに、なったのなら。」


「…うん。」

「頑張って、思い出すから。」


「…お願いね。」
156: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 07:01:32.06 ID:tpk/GxcD.net
-----


あれから数日経って

ダンスは、何度か教えてもらいながら

ほぼ完璧に、踊れるようになった


歌も、プレーヤーで何度も聞き返して

歌詞を暗記した

歌う事自体は、思ったよりもすぐに出来て

みんなに、喜んでもらえた


…それでも

ふと口ずさむのは、あの歌


---Snow halation


…一体、私は

この歌に、どんな思い入れがあるんだろう

絵里ちゃんの言ってた、『あの日』


…そこに、何かがある気がする
157: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 07:02:08.74 ID:tpk/GxcD.net
「…ごめんね、練習終わりに。」


「別に、気にしないで。」

「希の記憶を戻すためなら、何だってする。」

「…約束したでしょ?」


「…うん。」

「ありがとう、真姫ちゃん。」


「…それで?」

「何が聞きたいの?」


「…前に、絵里ちゃんが言ってた、『あの日』の事。」

「もし知ってるなら、教えてほしいの。」


「…分かった。」


「あれは、去年の終わり頃。」

「初めて希が、想いを口にしてくれた日…」
161: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 21:43:22.52 ID:tpk/GxcD.net
-----


「…そんな事があったんだね。」


「あの日、初めて希は私達に夢を話してくれた。」

「みんなと出会った事。」

「ここまで来れた想いを、形にしたい。」

「そんな希の想いを…みんなの想いを、ひとつにしたのが。」

「…この曲だったの。」


「…そっか。」

「やっぱり…私じゃないみたい。」


「希…」


「ありがとう、真姫ちゃん。」

「私には、知らない事が多すぎるから。」

「…みんなに、迷惑はかけたくないの。」
162: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 21:44:15.17 ID:tpk/GxcD.net
「…ほんとはね。」

「早く、思い出したい。」

「みんなの知ってる私を、早く返してあげたい。」


「…そうは思っているんだけど。」

「思い出せないのが、歯がゆくて。」


「みんな、記憶を失くした私にも、とても良くしてくれてる。」

「それは、今まで『私』として過ごして来たからかも知れないけど。」


「それでも…やっぱり、嬉しいんだ。」



「…ねえ、希。」


「何?真姫ちゃん。」



「今は…幸せ?」
163: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 21:45:08.36 ID:tpk/GxcD.net
「幸せ…かあ…」

「うん、そうだね。」


「友達と、こうしてお話しして、過ごせた事は今まで無かったから。」

「…多分、幸せなんだと思う。」



「…そう。」


「あ、でも、このままが良いとかじゃなくてね?」

「ちゃんと、思い出したいんだよ?」

「みんなに、迷惑かけちゃってるし…」


「…」

「…でも。」

「それでも…」


「憧れてた、毎日だから。」



「…そうね。」
164: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 21:45:54.55 ID:tpk/GxcD.net
-----



「…で、次は私の所に来たわけ?」


「うん。」

「にこちゃんとは、話しやすいから。」


「…ま、唯一知ってたのがにこだしね。」

「それで、何が聞きたいの?」


「私の…話し方。」

「どんな風に話してたとか、言葉使いとか。」

「…思い出すきっかけに、なるかもしれないから。」


数日前、真姫ちゃんと話して

やっぱり、思い出すためには知る事が必要だと思った


待ってるだけじゃ、きっと思い出せないから

思い出すために、何かしないと


「…どうせ、みんなの為に、とか考えてるんでしょ?」


「…え?」
165: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 21:46:40.68 ID:tpk/GxcD.net
「記憶を失ったままじゃ、みんなに迷惑をかける。」

「そんな事、思ってたんでしょ?」


「…すごいね、にこちゃん。」


「そういう所は、変わらないみたいね。」

「真姫から、あの日の事聞いたんでしょ?」

「希は、それまでずっと誰かのために動いてたから。」

「…自分の事なんて、二の次で。」


「きっと、忘れているとしても。」

「そこだけは、変わらないみたいね。」


「そう…なのかな。」


そう言ってもらえるのは、嬉しいけど

…きっと、そんな高尚なものじゃないんだよ


だって、私は…
166: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 21:47:09.38 ID:tpk/GxcD.net
「…で、希の話し方だけど。」


「あ、うん。」


「基本的には、意味深な感じね。」

「あと、エセ関西弁。」


「…具体的には?」


「そうね、例えば…」



にこちゃんに言われた、自分の特徴

それを手帳に書きとめる


自分の事を他人に聞くのは変な気分だけど

少しでも何か思い出せれば

そんな思いで、ペンを走らせる


「…こんな所かしら。」


「…難しいね。」
167: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 21:47:38.45 ID:tpk/GxcD.net
書きとめたそれを見返す度に

なんだか、私じゃないように感じる


…どうして、私は

こんな風になったのかな?


「…なにか、質問ある?」


「うーん…」


「そう言えば。」

「よく希は、みんなの様子をビデオに撮ってたから。」

「探せば、希の声が入ってるのもあるんじゃないかしら?」


「ビデオ?」


「ひとつの、趣味みたいな物よ。」

「他にも、写真を撮るのも好きって言ってたわね。」

「確か、お父さんにもらったカメラがあるとか…」
168: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 21:48:17.48 ID:tpk/GxcD.net
「生徒会の活動で、部活紹介のビデオを撮った事もあったから。」

「そんなのに関しては、生徒会室にあるんじゃないかしら。」


「私は流石に、関係者じゃ無いから入れないけど。」

「元生徒会役員のアンタなら、大丈夫でしょ。」


…そっか

映像が残っていれば、知る事が出来るし

なにより、思い出せるかもしれない


「ありがと、にこちゃん。」

「早速、調べてみるね。」


にこちゃんにそう告げて、席を立つ


「…ねえ、希。」


「…?」


「記憶…早く、取り戻したい?」
169: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 21:48:49.10 ID:tpk/GxcD.net
「…?」

「うん、もちろん。」

「早く記憶を戻して。」

「みんなの事、思い出したい。」


「今までの私にはいなかった、ともだちだから」



「…無理するんじゃないわよ?」


「…うん、ありがとう。」

「それじゃ、行くね?」


にこちゃんと別れて、学校に向かう

この時間なら、まだ開いてるはず



記憶を戻す手がかりを見つけた私は、走り出した

気付かなければいけなかった現実に、背を向けて
170: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 22:00:05.68 ID:tpk/GxcD.net
-----



「…」


家に帰って、見つけたそれを再生する

ハンディカムに映る、μ'sのみんなと

それを撮っている、私


「これが…私?」


聞こえてくる声は、確かに私の声

でも、例えば口調であったり

話し方であったり、態度であったり


そのどれもが、私じゃない『誰か』


真姫ちゃんの言ってた事が、分かる気がする

この『私』は、気持ちを隠してる


…そんな、話し方


「やっぱり…私じゃないみたい。」
171: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 22:00:55.45 ID:tpk/GxcD.net
…変な話

自分が喋っているのに

それを聞いた自分が、自分じゃないと感じるなんて


「…一体、私に何があったんだろう。」


にこちゃんの話だと、私は2年に上がる時に変わって

その後は、お互い色々あってほとんど話せなくて


改めてちゃんと話した時には、もう…


「…そっか。」


それを知ってるのは

変わってから、みんなと出会うまでの私を、知ってるのは…



…絵里ちゃん




「でも…」
172: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 22:01:40.70 ID:tpk/GxcD.net
記憶を失くして、1週間とちょっと経った

最初の頃は、私を気にかけてくれた絵里ちゃんだったけど


日が経つに連れて、どこか…

遠くを見る機会が、増えた気がする


それに何より、ここ2・3日


…私は、ほとんど会話をしていなかった


「いつから…?」


凛ちゃんと花陽ちゃんが、言っていたのが本当なら

私が一番仲良かったのは、にこちゃんと絵里ちゃん


特に絵里ちゃんとは、2年間一緒に生徒会にいた

…なら、一番仲がいいと言っても間違いは無いと思う


それこそ、目を覚ましたときは

あんなに心配してくれていたのだから
173: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 22:02:09.32 ID:tpk/GxcD.net
「何か…おかしい。」


でも、何がおかしいのか分からない


私が、何も思い出せていないから?


「どうしたらいいんだろ…」


どうして私は、思い出せないのか

何度病院に通っても、答えは同じで


もしかしたら、ずっと戻らないかも、なんて


「戻らなかったら…」


私は、どうすればいいんだろう?

何も思い出せない私は

彼女達の目にどう映っているんだろう


希ちゃん、と呼んでくれたみんな

笑顔を見せてくれているのは

私になのか

それとも---『私』になのか
174: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 22:18:19.84 ID:tpk/GxcD.net
-----



「…おまたせ、にこちゃん。」

「希は?」


「帰ったわ。」

「いきなり呼び出して、ごめんね。」


「…希の事?」


「…そうよ。」

「…」

「真姫ちゃんから見て…」

「希は、記憶が戻ると思う?」


「…!」

「何言って…」


「もちろん、戻ってほしい。」

「それは、全員が思ってるはずよ。」


「だったら…」
175: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 22:18:50.18 ID:tpk/GxcD.net
「…私は。」

「今の希に、記憶が戻るとは思えない。」


「…!」


「恐らく、今のあの子は…希だけど希じゃない。」

「私は目を覚ました希を見て、昔に戻ったと言ったけれど。」

「そうじゃなかった。」


「…ううん。」

「実際、戻ってたんだと思う。」

「覚えていた事は、当時のままだったから。」


「…でも、厳密には違う。」

「戻った記憶に、今の記憶が継ぎ足されてる。」


「それって…」


「…おかしいと思ったのよ。」
176: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 22:19:33.91 ID:tpk/GxcD.net
「希は確かに、1年生の頃に戻った。」

「多分だけど、私が思っていた時期よりも。」

「数週間のズレがある。」


「…ここからは、憶測だけど。」

「過去に、希が変わるきっかけを作ったのは。」

「きっとこの、ズレた期間の中だったんだと思う。」


「変わらないといけない。」

「いつまでも、私といる訳にはいかない。」

「あの子がそう感じて、決意したのは、きっとこの間。」


「…もし、私の言う通りの事が起こってたとしたら。」


「…真姫ちゃんなら、分かるでしょ?」



「でも、それは…!」


「…」
177: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 22:20:10.67 ID:tpk/GxcD.net
「…だって。」

「もし、そうだとしたら…」


「…真姫ちゃんの、考えてる通りよ。」


「そんな…」


「もしそれが事実なら、私達は考えなきゃいけない。」

「…私達の、これからの事を。」


「それに…」

「ひとつ、気になる事もあるしね。」


「…真姫ちゃんも、感じてるでしょ?」


「…」


「希…」
178: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 22:20:41.62 ID:tpk/GxcD.net
-----




…声が聞こえる

…私を呼ぶ、声が


目を開けると

いつか見た、あの世界


…ああ、またこの夢か

そう思って、辺りを見渡す


…いた



数メートル離れた所に

同じ姿をした、『私』


「…あの。」


口を開いて、気付いた


声が、出る


「あの、貴女は…」


目の前の『私』に、声をかける


「貴女は…『私』?」
179: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 22:21:27.14 ID:tpk/GxcD.net
手を伸ばそうとして、知った


「…壁?」


ぴた、と手のひらをそれに当ててみる

透明な、ガラスの壁のような物が

私と、目の前の『私』の間にあった


「…ねえ、聞こえる?」


私の声が聞こえたのか

『私』は、こちらを見る


「     」


口を開いて、何かを言おうとする

…でも、やっぱり聞こえなくて


「貴女は、やっぱり私なの?」

「私は、どうしたらいいの?」


「何か…」

「…ッ。」

「何か教えてよ!!」


目の前の壁を、叩いた
180: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 22:22:16.77 ID:tpk/GxcD.net
けれど、それが届いたそぶりを見せずに

『私』は、地面に腰を下ろす


「私に…記憶は戻らないの?」

「みんなの事…思い出してあげられないの?」


「     」


「聞こえないよ…!」


何度声をかけても、答えは聞こえず、静寂だけ


「…」


膝から、崩れ落ちる

…私は、ここでも一人なのか



『私』が、壁に近付いてくる

そっと伸ばした手に、私の手を重ねる


「     」



「…え?」
181: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/17(日) 22:23:27.82 ID:tpk/GxcD.net
-----



「ん…」

「あれ?」

「寝ちゃってた?」


携帯の画面に目を凝らすと

ビデオを見始めてから、1時間ほど


…どうやら、うたた寝をしてたみたい


「お腹すいた…」


そう言えば、にこちゃんと別れてから

何も食べてなかったなあ…


ひとまず顔を洗いに、洗面台へ


「…あれ?」


鏡に映った私の顔には

一筋の、涙の痕があった
184: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/18(月) 07:07:28.49 ID:2QpkYo94.net
-----



あれから、また数日

部活紹介のビデオや

今までに撮り溜めていた映像

ケータイに残ってたメールのやりとりなんかから

…なんとなく

自分がどういう性格で、どんな話し方をしていたのか

少しずつ、理解し始めていた


…それでも、一向に記憶は戻らない


今までにあった事を

知識として、頭に詰め込む毎日



そして今日も、午前の授業が終わって、お昼休み

ご飯を食べた後、時間を持て余した私は、屋上に
185: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/18(月) 07:08:03.81 ID:2QpkYo94.net
「…で?」

「話って何かしら?」


「…分かってるんでしょ?」


屋上に出る扉の向こうから、声が聞こえる

風通しのためか、開け放している扉

その奥から、聞き慣れた声が聞こえた


…盗み聞きなんていけないと思いつつ

その声の主を知っているからこそ


そこに…足を踏み出す勇気が、無かった。



「…何の事?にこ。」


「絵里…」

「アンタの、希に対する態度についてよ。」
186: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/18(月) 07:08:35.03 ID:2QpkYo94.net
「…」


「知らないとは、言わせないわよ。」

「ここ最近、ずっと希の事避けてるじゃない。」

「…どういうつもり?」


「むしろ、私が聞きたいわね。」

「にこ達こそ、どういうつもり?」

「どうして、彼女とそんなに仲良くできるの?」


「…は?」


絵里…ちゃん?



「当たり前でしょ?」

「希は、μ'sの…私達の仲間よ。」

「記憶を失くしてたって、今まで一緒に過ごして来た、ともだちでしょ!?」
187: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/18(月) 07:09:14.30 ID:2QpkYo94.net
「…本当に?」

「本当に…ともだちだと、思ってるの?」


「アンタ、何言って…」


「今の希は、私達の知ってる希じゃない。」

「それは、にこも感じている事のはずよ?」


「だからそれは、記憶が…!」


「嘘。」

「本当は、もう分かってるはず。」


「…彼女は、私達のともだちだった希じゃ無いって事を。」


「…」


「だから、記憶が戻れば…」


「…本当に、戻ると思う?」


「…!」
188: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/18(月) 07:09:44.15 ID:2QpkYo94.net
「あの日から、1週間もたってる。」

「私だって、希の記憶が戻れば、なんて思ってた。」

「記憶が無くても、希は希だって。」

「そう…思いたかった。」


「…」


「でも、実際は。」

「日に日に、彼女は希じゃない『誰か』になっていった。」

「…それは、にこも気付いてるんでしょう?」

「なにより…」


「記憶が戻る事。」

「…彼女は、望んでるの?」


「それは…」


「…昔ね。」

「本で読んだ事があるの。」
189: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/18(月) 07:10:39.04 ID:2QpkYo94.net
「思い出は、その人の人生だって。」

「記憶が、その人をその人たらしめると。」

「それらが繋いだのが、人であって。」

「人との繋がりが、その人の性格を現す、って。」

「なら…」


「記憶の無い希は。」

「一体誰と、繋がっているのかしら?」


「絵里、アンタ…」



「正直、自分がこんな考えを持ってるなんて思わなかった。」

「希がいてくれればいい。」

「記憶が戻らなくても、それでも。」

「いつか、いつかきっと…って。」


「…でも、そうは思えなかった。」

「だって…」


「あれは、希じゃないもの。」
190: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/18(月) 07:11:13.41 ID:2QpkYo94.net
-----



「…うっ。」

「おぇ…っ。」



思わず、トイレに駆け込んだ

さっきまでお腹の中にあった物を

全て吐き出す


「…げほっ。」

「はあ…」


出る物が無くなっても

吐き気は、止まらなかった

ただただ、胃液だけを吐いた


「はあ…はあ…」


空っぽになったお腹をさすって

顔を洗うために、外に出る
191: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/18(月) 07:11:44.60 ID:2QpkYo94.net
…気持ち悪い


口を濯いで、顔を洗う

顔を上げると

青白い顔の『私』と目が合った


「私は…一体、だれ?」


『貴女は、東條希。』

聞こえるはずの無い、声が聞こえる


『貴女は、μ'sの東條希。』

『それ以外に、居場所は無い。』


「…じゃあ、どうしたらいいの!?」


私が、『私』であるためには…



「…」


…そっか
192: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/18(月) 07:12:26.19 ID:2QpkYo94.net
「…なんだ。」


簡単な事だった

いつまで経っても、記憶が戻らないなら



…演じればいい



私じゃない、『私』として


変われないなら、無理にでも変えれば良い


やっと出来た居場所

ようやく手に入れた、友達

記憶が無くても、それを手に入れたのは、『私』だから


「…」


失う訳には、いかない

もうひとりには、なりたくないから


「ふふっ。」

「…よろしくな、『ウチ』。」


答えるはずのない鏡の中の『私』に

…そっと、笑顔を向けた
200: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 00:10:07.61 ID:+F/NSPz4.net
-----


それから『ウチ』は

少しずつ…少しずつ

理想を現実にあてがっていく


誰にも気付かれちゃいけない

今まで戻らなかった物が

すぐに戻ってもおかしい


ただひたすら、薄氷の上を歩くように

みんなと接する自分を、塗り替えていく



「…おはよ、穂乃果ちゃん。」

「おはよう、希ちゃん。」


「今日は、遅刻しなかったね?」


「だ、大丈夫だもん…!」

「…あれ?」
201: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 00:10:47.24 ID:+F/NSPz4.net
「希ちゃん、覚えてるの?」


「…なんだか、そうだった気がして。」

「思い出して…きたのかな。」


「うう…」

「そんな事は思い出さなくていいんだよう…」


「ふふっ、ごめんね?」




ほんの小さな事を

言葉の端々に織り込む

感づかれないように

ただただ、慎重に


…相手を、見極めて
202: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 00:11:16.62 ID:+F/NSPz4.net
「それでね、その時真姫ちゃんが…」


「…そうやったっけ?」


「あれ?希ちゃん、今…」


「何か、変な事言った?花陽ちゃん。」


「少し…前みたいな、言葉使いがでたから。」


「そっか…ありがと♪」

「少しずつ、思い出せてたらいいなあ…」


「きっと、大丈夫だよ。」

「…少しずつで、いいんだから。」


「…うん♪」



顔色を、変えずに話す癖がついた

あくまで自然に、さりげなく
203: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 00:11:55.44 ID:+F/NSPz4.net
「…ねえ、ことりちゃん。」

「この、ウチの衣装なんだけど…」


「え?」

「希ちゃん今、自分の事…」


「…あ、そういえば。」

「ウチ…って、言ってたんだっけ?」


「…思い出したの?」


「…何となく、口から出たみたい。」

「ウチ…か。」

「変じゃ無いかな?」


「…うんっ♪」



眠れない日が続いた

みんなの曲を聴く事で、夜を明かした


目の下に出来た隈は、コンシーラーで隠した
204: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 00:12:37.73 ID:+F/NSPz4.net
「…希。」

「最近、記憶が戻り始めているらしいですね。」

「穂乃果達が、喜んでましたよ?」


「…ほんと?」

「嬉しいなあ。」


「でも、まだ全部じゃなくて。」

「話し方とかも、咄嗟にそれが出る、って言うか…」


「それでも、嬉しい事ですよ。」

「以前と比べて、だいぶ落ち着いて来たように感じます。」


「…何となく、雰囲気がそれらしくなって来ましたね。」


「海未ちゃんに言われると、なんだか自信つくなあ。」

「頑張って、全部思い出せるようにするからね?」


「…はい!」


何となく、意味深に

何となく、曖昧に


この話し方にも、慣れて来た
205: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 00:13:04.54 ID:+F/NSPz4.net
「…にこっち♪」


「…なに?希。」


「今日、帰りにクレープ食べて帰らん?」


「クレープぅ…?」


「バイト代入ったし、ウチがおごるよ♪」


「…そっか。」

「バイト先にも、顔出すようになったのね。」


「うん。」

「何となく、断片的にだけど。」

「思い出せてきたから、バイトも再開したん。」


「そうね…」

「それじゃ、付き合うわ。」


「ありがと、にこっち。」
206: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 00:13:44.19 ID:+F/NSPz4.net
「それで、どこまで思い出したの?」


「どこまでって言っても…」

「ほんとに、断片的で。」

「話し方なんかは、喋ってるうちにいつのまにか…」


「そう…」


「…あ、でも。」

「にこっちが学園祭で、講堂の抽選を外したのは、思い出したよ♪」


「…!」

「もっと思い出すなら、他にあるでしょ!?」


「…いやあ。」

「ウチにとっては、忘れられない記憶なのかもね♪」


「…ったく。」

「ほら、いくわよ。」

「はーいっ!」


時にふざけて、時に真面目に

のらりくらりと、その場を流して


踏み外す事の出来ない、綱渡りを続ける
207: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 00:14:18.07 ID:+F/NSPz4.net
「…!」


にこっちとの帰り際、えりちと目が合う


「~♪」


陽気に、手を振ってみた

悟られる事の無いように

何か、思い出したと伝えるように


「…っ。」


ぎこちなくも、えりちも手を振ってくれた


…もう少し、時間がかかりそうだね


「…あと、少し。」


自分を戒めるように

小さな、小さな声で呟いた
208: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 00:22:27.44 ID:+F/NSPz4.net
「希…」


「あ、真姫ちゃん。」


「…大丈夫?」


「…なにが?」


「記憶…戻って来たんでしょ?」


「…うん。」

「真姫ちゃんの、おかげでな♪」


「茶化さないで。」

「その…大丈夫なの?」


「あんまり、無理したり…」


…そっと、真姫ちゃんの手を取る


「希…?」
209: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 00:23:00.70 ID:+F/NSPz4.net
「…ウチな、真姫ちゃん。」

「真姫ちゃんが、記憶が無くても。」

「ウチはウチ、って言ってくれたのが、嬉しかったん。」


「…!」


「記憶が戻るためなら、何だってするって言ってくれた。」

「その言葉通り、いつだってウチの事を気にかけてくれた。」


「今までの事、色々教えてくれたり。」

「話、聞いてくれたり。」

「…すごく、感謝してるんよ。」


「まだ、全部が思い出せた訳じゃないけど…」

「それでも、真姫ちゃんがこうしてウチのそばにいてくれたから。」


「ウチは…こうして、思い出す事が出来るようになったんやと思う。」


「希…」
210: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 00:23:24.93 ID:+F/NSPz4.net
「…正直な話。」


「このまま、記憶が戻らなくてもいいかな。」

「…そう、考えた事もあった。」


「…!」


「でも、それは違うって気付いたん。」

「きっと記憶が無くても、みんなは優しくしてくれる。」

「…それに、甘えてたんやと思う。」


「でも、今は違うよ。」

「ちゃんと、自分の記憶取り戻して。」

「みんなと、ラブライブに出たい。」

「優勝したいって、思ってる。」


「…そう思えたのは、真姫ちゃんのおかげ。」

「いつでも、ウチを支えてくれたから。」


「…ッ。」


「本当に…面倒なんだから…」
211: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 00:23:57.85 ID:+F/NSPz4.net
「ありがとう、真姫ちゃん。」


震えるその手を握りしめて


…自分には、演技の才能があるんじゃないかと思ってしまう


嘘に嘘を重ねて

顔色ひとつ変えずに、こうして歩み寄る



…酷い事をしてるのは、分かってる

きっとバレたら、嫌われると思う


でも、こうするしかない


『ウチ』としてここに存在するためには

『私』は、ここに必要ないから



あとは…
212: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 00:25:02.48 ID:+F/NSPz4.net
「…えりち。」


「…!」

「…なに?」


「あの…さ…」


「…また、パフェ食べて帰らない?」


「希…貴女…!」


「…また、ああして話したいんよ。」

「一緒に、生徒会の事や。」

「μ'sの事を、話してたみたいに。」


「…えりちと、また笑いたい。」



「思い…出したの?」


「全部…とは、いかないけど。」

「でも、えりちと過ごした事は…」


「ウチにとって、大切な記憶だから。」
213: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 00:25:27.85 ID:+F/NSPz4.net
「希…」


「…遅くなって、ごめんな?」

「でも…」


「…いいのよ。」

「私の方こそ…ごめんなさい。」


「…ううん。」

「思い出せなかったのは、事実だから。」

「えりちが、そんなウチの事。」

「認められなかったのも、分かるから…」


「気付いて…!?」


「でも…」

「でも、ウチは。」


「また、一緒に笑いたい。」

「えりちと、今まで過ごして来たみたいに。」


「駄目…かな?」
214: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 00:25:54.74 ID:+F/NSPz4.net
「…!」


えりちに、抱きしめられる


「…駄目なんかじゃない。」

「ごめんなさい、希。」

「ごめんなさい…」



役に入りきる、というのは

こういう事なのだろうか


いつから、涙を流せるようになったんだろう

自由に、必要な時に



「えりち…じゃあ…」


「…ええ。」

「行きましょ、希。」


「…うんっ♪」
215: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 00:26:36.79 ID:+F/NSPz4.net
-----



「う…っ。」

「んぐっ…。」


喉を焼尽すように上がってくる胃液を

無理矢理、飲み込む


ご飯は、以前と変わらず食べた

相変わらず襲ってくる吐き気を

水を飲み込んで、ごまかす


見た目が、変わってはいけない

心配させてはいけない


…気を使わせては、いけない


「…はあ。」



「これで…」


これで、きっと大丈夫

みんなとも、ある程度打ち解けられたはず


…あとは、会話を記録して、記憶するだけ


ラブライブまで、残り1ヶ月を切っていた
216: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 00:27:20.07 ID:+F/NSPz4.net
みんなとの距離が近付くにつれて

昔の事なんかも、気軽に話せるようになった


会話の中で、頭にその話をインプットする

ふられても、冷静に受け流す

あくまでふざけるように、核心には触れずに



…失くしていた間の記憶も

ほとんどがケータイと手帳の記録で補えた

詳しい事は、みんなが喋ってくれる


…そこに、少し話を誘導するだけで



『そんな事をしても、変われる訳がないのに。』


「…うるさい。」


鏡の中のそれと、話す事なんか無い

上手く、いってる


…あと、少し
217: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 00:27:48.82 ID:+F/NSPz4.net
-----



「…あれ?」

「まだ、凛ちゃんだけ?」


「あ、希ちゃん。」

「まだ、凛だけだよ?」


放課後に、部室に顔を出す

まだみんなは、来てないみたい


「そっか…」

「ねえ、凛ちゃん。」


「なあに?希ちゃん。」


凛ちゃんには悪いけど

一番、鈍そうだったから


「ウチ…何か、変な事言ったりしてない?」


「…変な事?」


「うん。」

「どこかおかしい所とか、ないかな?」
218: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 00:29:38.51 ID:+F/NSPz4.net
「う~ん…」

「今の質問とか、かな?」

「なんだか、希ちゃんらしくないっていうか…」


「…あはは、ごめん。」

「思い出したって言っても、まだ全部じゃないから。」

「何となく、気になっただけなんよ♪」


「そっか♪」

「あ、でも、それなら…」


「…ん?」


「どうして、そんなに頑張ってるの?」


「どういう事?」


「うーん…凛、ずっと気になってたんだよね!」


「何が?」


「凛、知ってるよ?」









「…記憶、ひとつも戻ってないよね?」
232: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 23:14:43.58 ID:+F/NSPz4.net
「…」


凛ちゃんのその言葉に

何も、反応が出来なかった


いつばれた?


何で?



他のみんなは…騙されてるのに



「なーんちゃってっ♪」

「冗談だよ、冗談♪」


「…凛ちゃん?」


本当に?

でも、さっきの目は…


とにかく、なにか口に出さないと

そう思って口を開いた時


部室のドアが開いた
233: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 23:15:24.43 ID:+F/NSPz4.net
「おっはよーっ!」


「おはよー!穂乃果ちゃん!」


「あれ?2人だけ?」


「もうすぐ、みんな来ると思うよ?」


「そっか♪」

「ねえねえ、2人で何話してたの?」


「今ね、希ちゃんの記憶、戻って来てよかったね、って。」

「凛達の事、思い出してくれて嬉しかったな、って話してたんだ。」


「うんうん、確かに!」

「一時は、本当に心配したから…」


「ありがと、希ちゃん♪」


「あ、ううん…」

「穂乃果ちゃん達の、おかげだよ。」
234: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 23:15:53.68 ID:+F/NSPz4.net
「それにしても、穂乃果の寝坊とか。」

「そういうのは忘れたままでよかったのにー…」


「それは流石に失礼にゃ。」

「それに、きっとすぐに寝坊して、バレてたよ?」


「凛ちゃんひどいよっ!?」



目の前には、いつもの光景

いつでも可愛い、元気な2人


…でも、それが怖い


さっきの凛ちゃんの目

あれは、冗談なんかで言ってる目じゃ…



「…希ちゃん?」


「…!?」


「一緒に、屋上行こっ?」


「…そうやね。」
235: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 23:16:25.68 ID:+F/NSPz4.net
-----



「どうしたのよ。」


「…何が?」


「昨日から、どこか暗いわよ?」

「何かあった?」


「いややなあ、にこっち。」

「ウチは、いつでも元気やで♪」


「…そう。」

「何かあったら、言いなさいよね。」


「アンタは、自分の中に溜め込んじゃうタイプなんだから。」


「…うん。」


昨日、凛ちゃんに言われてから

みんなが、少し怖くなった

騙せてると思ってるのは自分だけで

もしかしたら…


みんな、分かってるのかもしれない
236: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 23:18:38.04 ID:+F/NSPz4.net
「分かりにくいのよ、アンタは。」

「今は…大丈夫だと、思うけど。」


「…はは。」

「まあ、もうみんなに心配はかけたくないから。」

「何かあったら、ちゃんと言うよ?」


「それでいいわ。」

「じゃないと、また昔みたいに…」


「…昔?」


「ほら昔、希と一緒にいた時…」



「…」


「希?」


「あ、ううん!」

「懐かしいなあ…って、ちょっと思い出してた。」


「…やっぱり、分かりにくいわね。」

「それに、遠くを見るほど昔の話じゃないでしょうに。」


「それもそうやね♪」
237: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 23:19:34.12 ID:+F/NSPz4.net
「ねえ、希。」

「良かったら、今日…」



「あ、ごめん、にこっち。」

「今日はちょっと、家でやる事あって…」


「…そうなの?」

「なら、仕方ないか。」


「うん、ごめんな?」


「別にいいわよ。」

「また今度、どこか寄り道して帰りましょ。」


「うん、ありがと。」

「流石、ウチの親友やね♪」


「…調子いいんだから。」


精一杯の笑顔でごまかして

足早に、家に帰って来た
238: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 23:20:18.41 ID:+F/NSPz4.net
-----



「…」

「なんで…」



「…ッ。」


頭を冷やすように

洗面台で、顔を洗う


「…」


水が流れる音が

唯一、自分が目を覚ましている事を証明してくれた



「昔…」


にこっちの言っていた、昔の事

あれは、いつの時の事を言ってたんだろうか


…思い出せない
239: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/19(火) 23:20:51.40 ID:+F/NSPz4.net
「…」


鏡に映った自分の顔が

あざ笑っているようにすら感じる


「…ッ。」


「あれは…」

「あの、記憶は…」





「『ウチ』の記憶なん?」


「それとも、『私』の…?」



「昔…」


「昔って、いつ…?」


思い出せる、最初の記憶は


…えりちと、出会った日の事だった
246: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/20(水) 23:32:23.07 ID:kNejN/6K.net
-----



「んっ…」


服を脱いで、お風呂場に入る

冷たい水を、頭から流して


もう一度冷静に、考えてみる


「…」


「やっぱり、おかしい…」


「なんで…?」

「なんでなんよ…?」


何度思い浮かべても

頭の中にある、最初の記憶は

えりちと出会った、あの教室で



それより昔の記憶が

ウチの記憶には一切ない


「…寒い。」
247: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/20(水) 23:32:49.87 ID:kNejN/6K.net
-----



冷たい水に冷やされた体を拭きながら

部屋の中に入る


「あ…」


ベッドの上に置いてある携帯に、ランプが灯ってる


「真姫ちゃん…」



From: 真姫ちゃん
title: 明日
=============

良かったら、少し話さない?


=============


「明日…」


そうだ、真姫ちゃんに相談してみたら

何か、分かるかもしれない

返事を打って、ベッドに倒れ込む


…今は、何も考えたくない
248: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/20(水) 23:33:18.68 ID:kNejN/6K.net
-----


「すごい…」


真姫ちゃんに呼ばれて、真姫ちゃんのお家に


…のはずが

目の前にあるのは豪邸で


「やっぱり、お医者様ってすごいんやね…」


そんな言葉しか、出てこない


「…希?」


お家を眺めていると

門の向こう側から、声がした


「もう、来たなら呼び鈴鳴らしてよね。」


「ああ、ごめんな。」

「ちょっと、考え事してた。」
249: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/20(水) 23:34:07.54 ID:kNejN/6K.net
-----


「…そういえば。」

「希が家に来るのって、初めてだっけ?」


「…うん。」

「大きさに、ビックリしてた。」


リビングに通されて、少し話をする

真姫ちゃんが、紅茶を持って来てくれた


「でも、別荘と大して変わらないんじゃない?」


「いやいや、確かに別荘もすごかったけど。」

「自宅はそれ以上やん?」


「…そんなものかしら。」


そう言って、正面に座る真姫ちゃん

ご両親は、お仕事でいないみたい
250: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/20(水) 23:34:32.81 ID:kNejN/6K.net
「今日は、和木さんもいないから。」

「ゆっくりしていって。」


「和木さん?」


「…ああ、お手伝いさん。」

「そう言えば、花陽たちしか知らなかったっけ。」


「お手伝いさんまでいるんやね。」


まさに、お金持ちってイメージ

それでこの性格やと、確かに近寄りがたい気はするなあ…


「それで、今日はどうしたん?」


「…別に、たいした用じゃないの。」

「にこちゃんから、少し様子が変だ、って聞いたから。」


「なにか、力になれないかと思って。」
251: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/20(水) 23:35:01.93 ID:kNejN/6K.net
「あ…」

「そうやったんやね。」


これは…話が早い

けど、どう言ったらいいんかな


まさか、最初から説明するわけにも…


どう言おうか迷っていると

真姫ちゃんから、声がかかる


「…別に、無理して話さなくていいから。」

「言いたくなったら、言って?」


「あ…うん。」


「それに、希とこうしてちゃんと話す事って、あんまりなかったから。」

「その口実に、呼んだだけ。」


そう言って真姫ちゃんは、紅茶に口をつける
252: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/20(水) 23:35:36.81 ID:kNejN/6K.net
それから、2人で色々と話した

真姫ちゃんの別荘に行った時の事

9人でのファーストライブの事や

学園祭であった事なんかも


真姫ちゃんの話に合わせて

すらすらと出てくる言葉

…なにも、問題は無いように思えた


ちゃんと、覚えてる


「…あれ?」


「どうしたの?希。」


「…!」

「ううん、何でもないんよ?」


「そう…」


…なんやろ?

この---違和感
253: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/20(水) 23:36:21.52 ID:kNejN/6K.net
「…そう言えば。」

「まだ、ちゃんとお礼を言えて無かったわね。」


「…何のお礼?」


「…改めて言うのも、照れるんだけど。」

「ほら、希が目を覚ました時、病院で…」


「…」


「…希?」


「…ああ、うん。それで?」


「…あの時、希はいいって言ったけど。」

「やっぱり、助けてもらったのも、事実だから。」


「…私を、助けてくれてありがとう。」

「私に怪我が無かったのは、希のおかげよ。」


「…ずっと、言いたかった。」
254: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/20(水) 23:36:58.69 ID:kNejN/6K.net
「…」


「あの時、もう駄目だ、って思った。」

「凛の手も、届かなかったし…」


「でも、希が手を伸ばしてくれた。」

「私の事、ちゃんと掴んでくれた。」

「…それは、覚えてる。」


「本当に、ありがとう。」


そう言って、笑顔になる真姫ちゃん


「…ちょっと。」

「せっかく言えたんだから、何か反応してよ。」

そう言って

少し照れくさそうに、髪の毛をいじる



「病院…?」


「希…?」
255: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/20(水) 23:37:32.00 ID:kNejN/6K.net
…そう

確かにあの時、手を伸ばして

真姫ちゃんを掴んで、引き寄せた


…そう

それで、きっと頭を打って

気付いたら、病院にいて


…それで

目が覚めたら、みんながいて

話しかけられて…



「…ッ。」


「希?」


頭が、痛い


それで…えっと

みんながウチを覗き込んで





あの時、何を話したっけ?
256: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/20(水) 23:37:57.65 ID:kNejN/6K.net
「ねえ、希!」


気付いたら、真姫ちゃんが隣に来ていた


「ねえ、一体どうしたの?」


心配そうにウチを見つめる、真姫ちゃん

確か、あの時もこうして…





あの時?


あの時って…いつだっけ?


「希!」

「ねえ、希ってば!!」


治まらない頭痛に襲われた体は

意識を手放す事で、逃れようとする


「まき…ちゃ…」



目の前が、暗闇で覆われた
259: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/21(木) 00:27:02.69 ID:22TTHPWL.net
-----


…声が聞こえる

ウチを呼ぶ、声が



「…」


目を開けると

真っ白な世界が広がっていた


「また…か。」


何度来ても、やっぱり現実では覚えていなくて

それでも、ここに来ると思い出す


ウチの…夢の、世界


「…」


今度は、真後ろにいた


ウチと同じ姿の、『ウチ』


「…もう、慣れた物やね。」
260: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/21(木) 00:27:45.51 ID:22TTHPWL.net
その目は、向こうを向いている


遠くを見つめるその姿の後ろで

背中を見るように立つ、ウチ


「…どうせ。」

「また、何も聞こえないんやろ?」


その背中に、言葉を投げかける

…いつもそうだ

ここにいる『ウチ』は、答えをくれない

まるで、鏡の中にいる、それと同じように




『…聞こえてる。』



だからこそ、驚かずにはいられなかった

目の前で同じ声を発する


---その存在に
261: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/21(木) 00:28:15.41 ID:22TTHPWL.net
「なんで…」


『今までも、声は聞こえてた。』

『ちゃんと、答えたつもりだった。』


「嘘!」

「声なんて、聞こえなかった!」


『…嘘じゃないよ。』

『それに、聞こえなかったんじゃない。』


そう言って、こちらを振り返る


『ただ、聞こうとしなかっただけ。』

『…自分で、耳を塞いでたん。』


『…そうやろ?「ウチ」。』


「な…」


『…ようやく、話せた。』

『そっちの「ウチ」のお陰やね。』
262: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/21(木) 00:28:48.18 ID:22TTHPWL.net
「なんで…」

「なんで、今になって…」


『…それは、自分が一番よく分かってると思うけど?』


「ウチが…?」


『そうじゃなきゃ、きっとまだウチの声は聞こえてない。』

『…疑問を、感じたんやろ?』


「疑問?」


「…!」


「まさか…」


『…おっと。』

『最初に断っておくけど。』

『これは、ウチのせいじゃないよ?』

『自分で勝手に、そうしたんやから』


「何言って…」
263: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/21(木) 00:29:12.95 ID:22TTHPWL.net
『…記憶。』

『無くなってるんと違う?』


「…!」


『でもそれは、自分が望んだ結果なんよ?』


「…意味が分からない。」


『そうやね…』

『どこから話せば良いかな。』


そう言って、目の前の『ウチ』は語りだした

今、ウチに起こっている事と

なぜ、そうなったのかを



『…そうやね。』

『まず…』



『記憶を、失った訳じゃないんよ。』
264: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/21(木) 00:29:55.67 ID:22TTHPWL.net
『海未ちゃんが説明してくれたように。』

『真姫ちゃんのお父さんが言ってる事は正しい。』


『正確には、忘れたんじゃなくて。』

『記憶の奥底に、しまい込んでしまっただけなんよ。』


『…とは言っても、多分覚えてないと思うけど。』


「何、言って…」


『簡単に説明すると。』

『ここにいるウチは、バックアップみたいな存在なん。』


「バックアップ…?」



『…少し、お勉強しよっか♪』


そう言って、『ウチ』は軽く笑った
265: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/21(木) 00:31:11.20 ID:22TTHPWL.net
『詳しく分かってる事ではないけど。』

『脳っていうのは、色んな情報を処理してるのは、知ってるよね。』

『特に、海馬では、記憶の処理が行われてるんよ。』


『その時得た情報…』

『それらを集めて、処理してるのが、脳の海馬っていう組織で。』

『そこで処理された情報が、バックアップをとる為に、記憶野へと運ばれる。』

『これが、記憶する事の簡単な手順やね。』


『多少アバウトに言ってるから、詳しくはちょっと違うんやけど…』


『とにかく、それらを処理して、記憶させるのが海馬で。』

『そこに何か障害が起こると、記憶に障害が出る。』



『…事故の時みたいにね。』


「…」
266: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/21(木) 00:31:48.84 ID:22TTHPWL.net
『だから、現実には忘れてるんじゃ無くて。』

『思い出す事が出来ないだけで。』

『こうして、ウチみたいに記憶と言うデータは残ってる。』


『もちろん、他の病気みたいに。』

『記憶そのものが無くなるケースもあるけれど。』


「…じゃあ、貴女がウチの中のバックアップで。」

「ウチの記憶を、保管してる、って事?」


『…話が早くて助かるよ。』

『とは言っても、ウチも同じ「ウチ」やから。』

『分かってくれるとは思ってたけど。』


『…ところで。』

『夢って、何で見るか知ってる?』



「…え?」
267: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/21(木) 00:32:20.38 ID:22TTHPWL.net
『夢の中で非常事態に備えてる、とか。』

『現実じゃ叶えられない願望を体験してる、とか。』

『脳の機能を回復させている、とか。』


『色々説はあるけど、ウチが思うのは。』

『脳で、記憶の処理が行われている、という説。』


「記憶の…処理?」


『今日あった出来事や、古い記憶。』

『覚えとかないといけない事や、忘れたいような記憶。』

『それらを取捨選択して、記憶してる間に、見るのが夢。』

『言わば、記憶の断片のような物。』

『…ウチは、そう思ってる。』


「断片…」
268: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/21(木) 00:33:47.00 ID:22TTHPWL.net
『夢を覚えてないって言うのは。』

『単に、それが処理をしていただけで。』

『特に意味のある物じゃないからやと、ウチは思うんよ。』


『だから、こうして会った事も現実では忘れてる。』

『単なる、処理を視覚的に感じてるだけだから。』


『…必要な記憶を残して。』

『いらない物は、バックアップだけとって、現実では忘れる。』

『それが、記憶と夢との関係やと思う。』


「それが、今のウチと何か関わりがあるん…?」


『…言ったやろ?』

『必要な物を残して、いらない物は捨てる、って。』


『凛ちゃんに、言われて焦ったんやろ?』

『思い出してない事が、バレた、って。』


「…!」
269: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/21(木) 00:34:10.82 ID:22TTHPWL.net
『あの時に、「ウチ」の記憶に変化が起こった。』

『このままじゃ、みんなにバレてしまう。』

『もっと、ウチになりきらないと。』

『記憶の戻ったフリをしないと。』


『…違う?』


「…」


『そう意識をした「ウチ」の脳は。』

『このまま「私」の記憶を持っていたら、邪魔になると判断した。』

『…だから、自ら忘れたんよ。』


『「ウチ」として、あり続けるために。』



「…!」
270: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/21(木) 00:34:47.33 ID:22TTHPWL.net
『…だけど、そこでひとつ問題が起こった。』

『病室で目が覚めた時、「ウチ」には1年の頃の記憶があった。』

『そこに、目が覚めてからの記憶が付け加えられた。』


『目が覚めてからの「ウチ」は。』

『今までの「ウチ」では、無かったん。』

『…言わば、「他の人格」とでも言うべき存在やったんよ。』


「他の人格…?」


『まあ、考えてみれば当たり前の事やけど。』

『今の「ウチ」なら分かってるとは思うけど。』

『「ウチ」が変われたのは、1年の終わり頃。』

『もちろん、「ウチ」はその時の記憶を持っていなかった。』
271: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/21(木) 00:35:56.35 ID:22TTHPWL.net
『だからこそ、急に与えられた立場…』

『μ'sという、居場所や。』

『友達がいたからこそ。』


『「ウチ」として、変わる必要が無くなってしまった。』

『変わらなくても、目が覚めた時そこにあったから。』



『ずっと欲しかった物が、向こうから現れた事で。』

『「ウチ」の、変わると言う選択肢が消えたんよ。』

『その必要がなかったから。』



『…だから、こう思った。』


『変わる必要があるのか、って。』


「あ…」


『言ってしまえば、そこが分かれ道やったんよ。』

『記憶を取り戻すか、そうでないかの。』
272: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/21(木) 00:36:57.40 ID:22TTHPWL.net
『そして、「ウチ」は選んだ。』

『変わらない事を。』


『記憶が無くても、このみんなとなら。』

『あの時、確かにそう思ったはず。』

『その内、記憶は戻るだろうから、って。』


『思い出さないと、っていう想いに。』

『自ら、ふたをした。』


「…」


『ところが、そう上手くはいかなかった。』

『えりちやにこっちみたいに、疑う人が現れた。』


『そこでまた、「ウチ」は考えた。』


『思い出せなくても、なりきればいい。』


『みんなの知ってる、「ウチ」として。』

『自分で、今の自分の人格を否定した。』
273: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/21(木) 00:37:28.38 ID:22TTHPWL.net
『脳はその考えに則って。』

『人格よりも、新たな記憶を優先した。』


『そんな時に、凛ちゃんを騙しきれてなかった事を知って。』

『「ウチ」は、酷く動揺した。』

『もっと、なりきらないと。』


『そのためには、それまでの「私」は必要ないと。』


『結果、自分で自分を否定した事に寄って。』

『脳はこの記憶を「いらない物」として判断した。』


『だから、忘れた。』

『今の「ウチ」に、必要なかったから。』


「そん、な…」


『絶望しても、仕方ないよ。』

『自分で、選んだんだから。』
274: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/21(木) 00:38:00.39 ID:22TTHPWL.net
『…目覚めた時。』

『自分で選んで、記憶を取り戻したいと思った。』

『でも、事故のせいで上手く思い出す事が出来なかった。』


『だから、「ウチ」は新しい人格と呼べる物を作った。』


「…やめて。」


『そして、思い出さない事を選んだ。』


『その上、みんなに打ち明ける事はせずに。』

『騙していく、と言う事を選んだ。』


「やめて…」


『…その結果が、今。』

『全てに中途半端な、「ウチ」が出来た。』


「やめてって言ってるやん!!」


『…』




「…返して。」
275: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/21(木) 00:38:25.86 ID:22TTHPWL.net
『…』


「…言ったよね、バックアップって。」

「って事は、その人格の記憶を持ってるんやろ?」


『…これの事?』


手に現れたのは、キャンパスノート


『…まあ、夢の中だから。』

『形は、何でもいいんやけど…』


「…返して。」


『確かに、返したら。』

『「ウチ」は、思い出すと思う。』

『もうひとつの人格の、「ウチ」として。』

『みんなから聞いた、記憶を受け継いで。』



「…分かってるなら、返して。」
276: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/21(木) 00:39:23.50 ID:22TTHPWL.net
『…本当に、いいん?』


「…何が?」


『この記憶は、本当の「ウチ」じゃないよ。』

『たまたま出来た人格に。』

『事故の時の記憶と、「ウチ」が集めた記憶が繋がってるだけ。』


『本当の意味での、記憶が戻った事にはならないんよ?』



「…それでも。」

「それでも、今ここにいるのはウチ。」

「その記憶を失くしたまま、えりち達と一緒にいられる訳がない。」

「…独りになるのは、もうたくさん。」


「…あの頃に、戻りたくない。」


『…』



「…返して。」
277: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/21(木) 00:39:50.94 ID:22TTHPWL.net
『…そうやって。』

『また、選ぶんやね。』



差し出された手から、ノートを受け取る

それは光となって、ウチの中に入った



「…そっか。」

「真姫ちゃん、あの時…」


ようやく、思い出せた

あの、病院での事


『…覚えておいて。』

『その記憶が戻ったという事は。』


『今の「ウチ」にとって、いらない情報が戻ったのと一緒。』

『気を抜くと、すぐにバレるよ。』


「…」
278: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/21(木) 00:40:42.62 ID:22TTHPWL.net
「大丈夫。」

「後は、凛ちゃんだけやから。」


「…この「私」の記憶があっても。」

「今まで以上に、なりきってみせる。」


『…分かった。』

『また、目が覚めたらここでの事は忘れてると思う。』


『でも、覚えておいてほしい。』

『例え何が起こっても。』


『…それは、自分が選んだと言う事。』


「…分かってる。」



悲しそうなその顔を、視界から外して

夢から、覚めようとする


…きっと、真姫ちゃんが呼んでるから


また、あの黒い世界へ
279: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/21(木) 00:41:17.21 ID:22TTHPWL.net
『…』


『行っちゃった…か。』


『まあ、ウチは単なるバックアップやし。』

『本人が、元々の記憶を取り戻そうとしない限り。』

『動く事は出来ないんやけど…』


『…』


『多分、気付いてるんやろ?』

『だからあんなに、元の記憶が戻る事を嫌った。』



『…元々のウチじゃない、もう一人の「私」。』


『元の記憶が戻るという事は…』

『「私」として過ごした時間が、無くなるから。』

『手に入った何もかもが、ゼロになるから。』



『…でも、気付いてほしい。』

『例えその記憶がなくなったとしても。』


『今、「ウチ」が過ごしてる日々は。』

『…いずれ訪れる未来の、自分の姿だって事。』
280: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/21(木) 00:42:08.04 ID:22TTHPWL.net
-----


…声が聞こえる

名前を呼ぶ、声が



「…希!」


「真姫…ちゃん?」


あれ?

どうして…


あ、そっか

確か、倒れて…

…!


「ご、ごめん、真姫ちゃん!」

「私、いきなり倒れ…て…」


言葉に出して、気付いた

でも、それを口に戻す事は、出来るはずもなく



「希…まさか…」


…やめて

…それ以上、口にしないで



「記憶、戻ってないの…?」
289: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/23(土) 01:47:32.52 ID:CGPipAx4.net
「…あ。」

「そ、そんな事ないよ?」


「…」


「ちょっと、気が動転しちゃってただけで…」

「ちゃんと…思い出してるよ。」


「…本当?」


あまりにも、苦しい言い訳

完全に、油断してた

まさかここで間違えるなんて


「希…」


さっきまで、あんなに話せてたのに

あんなに、騙せてたのに


…なんで?
290: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/23(土) 01:48:14.44 ID:CGPipAx4.net
「…」


一体どうすれば…

また、騙せるのだろうか


頭の中を、その言葉が埋め尽くす


…騙す?

騙して…


騙し続けて、どうしたらいいんかな


これは

この記憶は


自分が勝手に---作り上げた物なのに


何より、どうしていきなり

あの時の記憶が戻ったのか

ついさっきまで、忘れてたのに
291: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/23(土) 01:48:58.98 ID:CGPipAx4.net
思い出せなかった記憶

あの時の、病院での事

…みんなと、話した事


思い出せた事は嬉しいのに

思い出せた事で


…嘘が綻び始めるなんて


「…」


何を言って良いのかが分からない

とにかく、何か口に出さなきゃ


…無言は、肯定ととられてしまう


「あ、あのな、真姫ちゃん。」

「ほんとに、間違えちゃっただけで…」


なんとか、絞り出した言葉

でも、真姫ちゃんの顔を見て

その言葉が意味の無い物だと悟る
292: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/23(土) 01:49:27.55 ID:CGPipAx4.net
「…真姫ちゃん。」


「どうして…」


「…」


「どうして…黙ってたの?」


これ以上の言葉は

ただ、真姫ちゃんを傷つけるだけだろう

…これ以上、辛い思いをさせてしまって良いのかな


「…」


…ううん、きっと違う

そうやって騙して来たのはウチだから

真姫ちゃんは、すでに傷ついているのだから


「…答えて、希。」


…ああ

どこで間違えたんかな
293: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/23(土) 01:50:03.06 ID:CGPipAx4.net
「…ごめん。」


ただ、それしか言えなかった

傷つけた事へのごめんなのか

騙してた事へのごめんなのか


…口に出したウチにも、分からなかった


ただ、謝らなければいけないと思った

悪さをして怒られる、子供のように


「…それは、何に対してのごめん?」


「…」


真姫ちゃんも、気付いてたみたい


…それもそうか

今まで作り上げたもの


それが全部…嘘だったのだから


「…ごめんなさい。」
294: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/23(土) 01:50:28.41 ID:CGPipAx4.net
真姫ちゃんの顔を見る事が出来ずに

ただ、頭を下げた


見られたくなかったのもある

どんな顔で向き合えばいいか、分からなかったから


…きっと、幻滅される

嫌われると思う


…もう


ここに、私の居場所は…




無くなってしまった





「…頭を上げて、希。」
295: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/23(土) 01:50:54.18 ID:CGPipAx4.net
「…」


「…こっちを向いて。」


「…」


出来れば、上げたくなかった

見たくない

見られたくない


…でも

そうしなければ、いけないと思った


「…」


ゆっくりと、顔を上げる

きっと、怒っているだろう

きっと、蔑んでいるだろう


きっと…きっと、嫌われただろう



そんな思いを打ち消すように

真姫ちゃんの瞳には、涙が溢れていた
296: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/23(土) 01:51:47.90 ID:CGPipAx4.net
「真姫…ちゃん…」


…ああ、そうか

騙して、傷つけて


そして…泣かせてしまったのか


なんて最低な…私


「…ごめんなさい。」

「ごめんなさい…」


謝る事しか、出来なかった

謝っても、変わる事の無い結果なのに


「…違うの、希。」

「謝って…欲しい訳じゃない。」


「…」





「気付いてあげられなくて…」

「ごめんなさい。」
297: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/23(土) 01:52:09.29 ID:CGPipAx4.net
「…!?」


「なん…で…」


どうして、謝られているんだろう

真姫ちゃんは、何も悪くないのに


…どうして



「…私、知ってたの。」

「絵里が…希を、受け入れてない事に。」

「その事で、希を避けている事に。」


「知ってて…」

「何も、しなかった。」


「希の記憶が戻れば。」

「きっと…」

「きっと、元通りになる。」


「そう…思ってた。」
298: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/23(土) 01:52:35.54 ID:CGPipAx4.net
「…私がそう思って、すぐ。」

「希の記憶が、少しずつ戻りだした。」

「本当に…自然に。」

「…私には、そう感じた。」


「…」


「それで思ったの。」

「これで、全部上手くいく…って。」


「絵里が、これ以上疑う事も無い。」

「みんなが、ようやくまとまれる。」


「そう…思ってた。」

「…ううん。」

「思いたかった。」



「…あの時に、気付くべきだった。」
299: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/23(土) 01:53:09.59 ID:CGPipAx4.net
「…これは、多分だけど。」

「にこちゃんが、絵里と屋上で話した時。」

「…聞いていたんでしょ?」


「…!」


「…やっぱり。」

「今更、それに気付くなんて…」


「…タイミングが、良すぎるもの。」

「あれから、今まで以上に昔の事を聞くようになった。」

「みんなで話すときも、過去の話が多くなった。」


「…それに、気付く事が出来なかった。」



「…希。」

「もう…」



「泣かなくて、いいから。」
300: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/23(土) 01:53:41.24 ID:CGPipAx4.net
「…え?」


ウチは、泣いてなんか…


「…ずっと、苦しかったんでしょ。」

「嘘をついてた事。」

「みんなを、騙してた事。」


「…本音を、言えなかった事。」


「もういいの。」

「…泣かなくて、いいから。」



「泣いてなんか…」


みんなを傷つけたのは、ウチなのに



「…それも、嘘。」

「ずっと…泣いてた。」



「…ここで。」


真姫ちゃんが、ウチの胸に手を当てる
301: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/23(土) 01:55:49.55 ID:CGPipAx4.net
「気付いてあげられなくて、ごめんなさい。」

「ずっと…辛かったと思う。」


「絵里が疑ってる事を知って…」

「みんなに、受け入れてもらえないかもって思って。」


「…そんなの。」

「一人で、抱え込める訳ないじゃない。」



「…もういいの。」

「これ以上耐えられないなら、みんなに話せばいい。」

「私も、みんなに話すから。」


「続けるなら…せめて、私の事は信じて。」

「私は…例え記憶が無くても。」

「希は希だって…親友だって、思ってる。」

「絶対に貴女を、裏切ったりなんてしない。」


「…まだ、返せてないの。」

「今度は、私が貴女を救うわ。」


「…約束する。」



真姫ちゃんの言葉に答えるように

ウチの目にも、それが溢れ出した



手に落ちたそれは

ほのかに---あたたかかった
308: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 00:08:49.17 ID:qAlNl/ka.net
-----



「おじゃましまーす!」


「…いらっしゃい、凛。」


「ねえねえ、真姫ちゃん。」

「いきなり、家に来てって…どうしたの?」


「…後で話すわ。」

「それより、中に入って?」


「…はーい!」




「…さ、中で待ってて?」

「お茶、入れてくるから。」


「うんっ♪」
309: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 00:09:16.99 ID:qAlNl/ka.net
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真姫ちゃんが出て行って、数分経った

そろそろ…


そう考えた時

リビングの扉が開いた


「…え?」


「…こんにちは、凛ちゃん。」


「希ちゃん…」


「また…騙したみたいで、ごめん。」

「話したい事が、あるんだ…」


ちゃんと、向き合おう

ちゃんと謝って


…それで、嫌われてもいい


ただ、この2人にもう、嘘はつかない

今だけは…自分の言葉で
310: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 00:09:40.11 ID:qAlNl/ka.net
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「…そっか。」

「やっぱり…戻ってなかったんだね。」


「凛は…どうして、気付いたの?」

「正直、私には分からなかった。」


「…凛も。」

「凛も、絶対そうだ、って思ったんじゃないんだよ?」

「ただ、なんとなく…」


「…だから、あの日に確認したくて。」


「凛ちゃん…」


「…凛にも、良く分からないんだ。」

「今までの希ちゃんみたいに、優しくて…」

「お姉ちゃんみたいな、感じで…」



「…でもね。」



「雰囲気が…違ったの。」
311: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 00:10:07.38 ID:qAlNl/ka.net
「雰囲気…?」


「うーん…」

「何かを、必死に隠してるみたいな…」

「どこか、遠くを見てる気がしたの。」


「あ、そう言えば…!」


「何?凛…」


「凛達ね、この希ちゃんになってから…」

「一度も、わしわしされてないんだよ?」


「わしわし…?」


「…!」

「ああ…忘れてた…」


「えっと…そのわしわし、って?」


「そ、それは…///」


何故か、赤くなる真姫ちゃん

なにか、変な事言ったっけ…?
312: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 00:11:07.38 ID:qAlNl/ka.net
「わしわしって言うのはね…」

「希ちゃんが、みんなの胸を揉みしだく事にゃ!」



「胸を…」


「…」


「…ええっ!?」


む、胸を揉むって…私が!?


「もうちょっと、オブラートに包みなさいよ…///」


「え?合ってるでしょ?」


「それは…そうだけど。」



「えっ?えっ?」

「そんな事…してたの?」


「そうだよー?」

「こんな風に…」


凛ちゃんが両手を広げて近付いて来る
313: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 00:11:33.56 ID:qAlNl/ka.net
「…はい、そこまで。」


胸に手が届くか届かないかの所で

真姫ちゃんに、止められた凛ちゃん


「あははっ!」

「希ちゃん、顔真っ赤~♪」


「…///」


こんな恥ずかしい事を

みんなに、してたなんて…



「…凛は、こっちの希ちゃんも好きだよ?」


「…!」


「記憶があるとか、無いとかじゃなくて…」

「希ちゃんは、希ちゃんだもん。」


「記憶が無かったときも。」

「希ちゃん…みんなに心配かけないように。」


「頑張ってたから。」
314: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 00:12:05.30 ID:qAlNl/ka.net
「凛ちゃん…」


「…凛の言う通りよ。」

「私も、賛成。」


「私達は、記憶が無いからって他人だとは思わない。」

「どんな形でも。」

「…一緒に過ごして来た、私達なんだから。」


「そうそう!」

「凛なんか、一昨日の晩ご飯ですら忘れちゃってるんだよ?」

「真姫ちゃんに借りたCDも、借りた事忘れててもう1ヶ月だし…」


「ちょっ…」

「それは返しなさいよ!!」


「えへへー。」


「…と、とにかく。」

「もう…嘘、つき続けなくてもいいんじゃない?」
315: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 00:12:55.07 ID:qAlNl/ka.net
「…」


「きっと、みんなも受け入れてくれるわよ。」

「絵里だって、きっと。」

「私達で、説明すれば…」


「真姫ちゃんの言う通りにゃ!」

「凛達が、ちゃんとフォローするから。」

「だから、もう…」





「…ごめん、2人とも。」



「え…?」


「正直、2人にそう言ってもらえて嬉しい。」

「きっと、嫌われるだろうな、って思ってた。」


「それなのに…2人は、受け入れてくれた。」

「…嬉しかった。」
316: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 00:13:27.73 ID:qAlNl/ka.net
「なんで…?」

「凛達じゃ、不安なの?」


「…そうじゃないよ。」

「2人がいてくれる事は嬉しい。」


「だったら…!」



「でも。」

「きっと今この話を言ってしまったら。」

「絵里ちゃんも…きっとμ'sも、ぎくしゃくすると思う。」

「騙してたから…なおさらね。」


「それは、私達が…」


「…大丈夫。」


「私は…」


「ウチは、大丈夫やから。」
317: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 00:14:33.18 ID:qAlNl/ka.net
「希ちゃん…」


「2人の事が、信じれないとかじゃないんよ。」

「むしろ2人には、感謝しかない。」


「…でも。」

「だからこそ。」


「…今、打ち明けるべきじゃないんよ。」


「ウチは…このウチとして、これまでやって来た。」

「時間は短かったかもしれないけど…」


「それでも、今はこれが『ウチ』だから。」

「このまま、続けるよ。」


「でも、それじゃ…」


「…心配せんでも、大丈夫。」

「2人が、こうして打ち明けられなかった秘密を知ってくれてる。」

「こんなウチの事を、支えてくれるって、言ってくれた。」


「それだけで、十分。」

「それだけで…ウチは、頑張れるから。」
318: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 00:15:39.44 ID:qAlNl/ka.net
-----



「希ちゃん…行っちゃったね。」

「やっぱり、怖いのかな?」


「…」


「真姫ちゃん?」


「…そう。」

「きっと希は…怖いのよ。」


「みんなに本音を知られてしまう事が。」

「それに…ただ、逃げてるだけ。」


「逃げてる…?」


「…前に、にこちゃんと話してたの。」

「あれは…きっと、希じゃない、『誰か』だって。」


「…『誰か』?」
319: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 00:16:12.59 ID:qAlNl/ka.net
「きっとあれは…希に出来た、もうひとつの人格。」

「『心』…と、言うべき物。」


「…心?」


「過去の記憶に、目が覚めてからの記憶が繋がった。」

「…言わば、もうひとりの希。」


「…ねえ、真姫ちゃん。」

「それって、もしかして…」


「…きっと、打ち明けてしまったら。」

「みんなの反応がどうであれ、今の希を縛るものは無くなる。」


「もしかしたら、全部思い出せるきっかけになるかもしれない…」


「でも、それじゃあ…」


「…ええ。」

「今の、希の『心』は。」

「恐らく…。」




「消えてしまうから。」
324: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 23:34:41.72 ID:qAlNl/ka.net
-----



「…はあ。」


とすん、とソファに座って

ごろん、とそのまま横になる



「…裏切っちゃったよね。」


あんなに、私の事考えてくれてたのに


「…でも。」


それでも、私は続けると決めた

…自分で、選んだから


「頑張ろう。」


そして、何よりも…



自分が自分で無くなってしまう事


…それが


何よりも---怖いから
325: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 23:35:21.24 ID:qAlNl/ka.net
「…うん。」


今更悩んだって、仕方ない

だってもう…2週間もない


来週の週末には、もうラブライブが待ってる

みんなに迷惑をかける訳にはいかないから


「…大丈夫。」


私なら…やれる


例え記憶が無くたって

学んで来た事がある

みんなの気持ちも、性格も

全部…


全部、覚えたんだから


「絶対に、ミスはしない。」

「せっかく…手に入ったんだから。」


天井に伸ばした手を

ただ、強く握りしめた
326: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 23:35:52.60 ID:qAlNl/ka.net
-----




『…今日は、来ないか。』

『まあ…今度は、ちゃんと決めたみたいやし。』


『でも…』


『ううん。』

『それも、「私」が決める事だから。』


『ウチは、ここでこうして、見てるだけ。』



『…今は、ウチは動けない。』

『「私」が、そう決めた。』


『バックアップという存在として作り上げたのも、「私」。』


『だから…きっと、まだ気付けない。』


『…気付かないかもしれない。』



『だって…「私」は、ウチだから。』
327: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 23:36:21.93 ID:qAlNl/ka.net
-----



後悔先に立たず、なんて言葉がある

その言葉の通り

後で悔やむ事は、先に知る事ができない訳で


…だって、知ってたら回避しようとするもんね

誰だって、後悔なんてしたくないから



だからあの時、私は決めたのに

どうして、今、後悔してるんだろう?

…いや


どうして、後悔してしまうんだろう?

自分で、そう決めたのに

…これは、『私』なのに



…でも、もしかしたら

例え未来の事が分かったとしても

私は…この道を選んだのかな?



---自分が消えてしまわないように
328: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 23:37:15.96 ID:qAlNl/ka.net
-----




「そういえば…」

「亜里沙ちゃんと雪穂ちゃん、合格したんでしょ?」



「…うん!」

「2人とも…春から音ノ木坂の新入生。」


「亜里沙ちゃん、ずっと前からμ'sに入りたい、って言ってたもんね♪」



ある日の練習前

真姫ちゃんの言葉から、みんながその話題を口にする


「じゃあ、もしかして新メンバー?」

「ついに10人目誕生!?」


「…!」


「ちょっと、そういう話は…」


みんなの顔が、曇ってくる

えっと…こんな時、『ウチ』なら…


「…ふふっ。」


「どーやろ?」


そう言って、にこっちに視線を向ける
329: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 23:37:56.62 ID:qAlNl/ka.net
「にこっちは卒業できるかどうか…」


「するわよっ!!」


『ウチ』らしく、取り繕ってはみたものの

みんなの空気は、相変わらず


…でも、いつか卒業という行事は来る訳で

それに伴って、μ'sのあり方も変わる

それは、仕方が無い事で…



少し前に、えりち達とこの話をした

ラブライブが終わるまで、この話はしない


余計な事を考えないように

ただ、ラブライブに集中できるように


…でも、やっぱり雰囲気は暗いままで

練習が始まっても…

どこか、不穏な空気が流れてた
330: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 23:38:28.44 ID:qAlNl/ka.net
-----


今日はグラウンドで

体をならすトレーニングを中心に

今は、ランニングをしている


先頭に立って走っていると…

後ろから、穂乃果ちゃん達の声が聞こえてくる



「…私も同じです。」

「3人が抜けたμ'sを、μ'sと言っていいものなのか…」


「…そうだよね。」



「なんで卒業なんてあるんだろう…?」


やっぱり、みんなさっきの事を気にしてる

気にしたって…仕方ないやん?


そんな事を考えてると、にこっちが話に割り込んだ


「続けなさいよ…!」
331: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 23:38:57.42 ID:qAlNl/ka.net
「メンバーの卒業や脱退があっても。」

「名前は変えずに続けていく。」

「…それがアイドルよ。」


「アイドル…」


「…そ。」

「そう言って名前を残していってもらう方が。」

「卒業していく私達だって、嬉しいの。」


「だから…っぷ!?」


えりちと目を見合わせて

にこっちを、止めた


「その話はラブライブが終わるまでしない約束よ?」


「分かってるわよ…」


みんなで、そう決めたんだから
332: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 23:39:27.41 ID:qAlNl/ka.net
「…本当に、それでいいのかなあ?」

「…!」


「花陽…」


「だって…」

「亜里沙ちゃんも雪穂ちゃんも、μ'sに入るつもりでいるんでしょう?」

「ちゃんと…答えてあげなくて、いいのかな?」


「…」


「もし…私が同じ立場なら、辛いと思う。」


「かよちんは…どう思ってるの?」

「…!」


凛ちゃんが、そう告げる


「μ's…続けていきたいの?」


「それは…」
333: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 23:39:55.40 ID:qAlNl/ka.net
「何遠慮してるのよ!」

「続けなさいよ…?」


「メンバー全員入れ替わるんならともかく。」

「貴女達6人は残るんだから。」



「…遠慮してる訳じゃないよ?」

「ただ…私にとってのμ'sって。」

「この、9人で…」


「一人欠けても、違うんじゃないか、って。」


「…私も、花陽と同じ。」

真姫ちゃんが続ける


「でも…にこちゃんの言う事も分かる。」


「μ'sという名前を消すのは辛い。」

「だったら…続けていった方がいいんじゃないか、って。」


「…でしょ?それでいいのよ。」
334: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 23:41:16.34 ID:qAlNl/ka.net
「…希は。」

「希は…どう思ってるのよ。」


「ウチは…」


…ウチは、どうしたいんかな?

いや、『ウチ』なら、どうするのか


「…決められない。」

「それを決めるのは…穂乃果達だと思う。」


「…!」

えりちが、話に加わる


「私達は、必ず卒業するの。」

「スクールアイドルを続ける事はできない。」

「だから…その後の事を言ってはいけない。」

「私は、そう思ってる。」


「決めるのは、穂乃果達。」

「それが私の考え。」



「絵里…」


にこっちの頭に、手を置く

「…!」


「…そうかもしれないね。」
335: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 23:41:55.22 ID:qAlNl/ka.net
-----



「まったく…」

「絵里ってば、意地張って…」


「別に、意地を張ったんじゃないわ。」

「言った事は、本心よ。」


「…本気?」

「本気で…そう思うの?」


「ええ…勿論。」


練習が終わって…結局

みんなで、その事について考える事になった

そこで、ウチら3人はカフェへ


まったりとした空気の中

2人の表情は、真剣で


…聞いてるこっちも、顔に力が入る


「…で。」

「希の意見は?」
336: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 23:44:08.00 ID:qAlNl/ka.net
「ウチは…」


「こういう事に関して消極的なのは、いつもの事だけど。」

「私達のこれからにも関係してるんだから、ちゃんと言いなさいよ?」


「そうね…」

「希の意見も、聞いてみたい所ね。」


「…うん。」


μ'sは…このグループは

『ウチ』が、名付けたもの

…そして、ずっと見守ってきたもの

3人で始まったときから、ずっと


なら、それだけ思い入れがある

それだけ、大切に思ってきた


だったら…




「ウチは…μ's、続けてほしいな。」
347: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/26(火) 20:54:29.16 ID:DAf6izzQ.net
「え…?」


「ほら、やっぱり希もそう思うでしょ!?」


「ちょ、ちょっと待って…」

「本当に、それで良いの?希。」


「どういう事?えりち。」


「だって、貴女…」

「あんなに…」


「えりち…?」


なんで、そんなに悲しそうな顔をするん?

自分が名前をつけて、見守って来たんだから

それが続いてくって、嬉しい事なんじゃないん?


「…そう。」

「分かったわ。」


「…それが、貴女の答えなのね。」
348: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/26(火) 20:55:00.08 ID:DAf6izzQ.net
「ちょっと絵里、そんな言い方…!」


「…いいえ。」

「怒ってる訳じゃないの。」

「ただ、意外だったから…」


「…意外?」


「昔の希なら…」


「…!」


「…ごめんなさい。」

「とにかく、私は反対よ。」


「それにみんなに言った通り。」

「穂乃果達が、決めるべきだと思うから。」


昔の希、という言葉に

少し、ドキッとした


…大丈夫

バレては…いない
349: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/26(火) 20:55:56.77 ID:DAf6izzQ.net
「…それに関しては、ウチも賛成よ?」

「続けていくのは、あの子達だから。」


「それでも…!」


「…にこっち。」


「…!」


「今まで…ずっと、頑張って来たんだから。」

「これからは…あの子達に、任せるべきと違う?」


「それは…」


「…そうね。」

「私達の想いを繋いでくれる事は嬉しい事だけど。」

「これから頑張るのは、彼女達なんだから。」


「…」


「それじゃあ、何のためにここにいるのよ…?」


「それはほら…ね?」
350: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/26(火) 20:56:50.38 ID:DAf6izzQ.net
「…まあいいわ。」

「絵里の考えも、希の考えも分かる。」

「でも、私もこれは譲れない。」


「だったら、あの子達に任せるしか無いって事も。」


「…そうやね。」


「でも…私も、ちょっと意外だった。」


「え?」


「だって、普段なら…」

「…いや、もう関係ないわね。」


「…とにかく。」

「みんなの答えを、待ちましょう。」


「それまでは、私達らしく。」


「…分かってる。」


「…うん。」
351: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/26(火) 20:57:22.60 ID:DAf6izzQ.net
-----



「…」


『昔の希なら…』


「…」


『だって、普段なら…』



「…」


どこか、おかしかったんかな

昔のウチ?

普段の…ウチ?


でも、こうして経験して来て

考え方は、分かってるつもり

現に、2人とも気付いてない…はず



「…はあ。」



「…ため息つくと、幸せが逃げるわよ?」
352: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/26(火) 20:57:59.59 ID:DAf6izzQ.net
「…!」


公園のベンチに座っていると

後ろから、声をかけられた


「…真姫ちゃん。」


「話し合い…終わったの?」


「え…?」


「してたんでしょ?」

「これから、どうするか…」


「…ああ、うん。」


「…決まった?」


「…一応。」


「ウチらは…」

「みんなが決めるべき、って事になった。」


「そう…」
353: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/26(火) 20:58:24.42 ID:DAf6izzQ.net
「真姫ちゃん達も?」


「…そうね。」

「さっきまで、話してたわ。」

「そう簡単に…決まる物ではないけれど。」



「…それもそうやね。」


「…希は?」


「…へ?」


「どうした方がいいと思うの?」


「だから、みんなに任せるって…」


「それは、3年生の意見でしょ?」

「希自身は、どうなの?」


「ウチは…」


「μ's、続けてほしいな…って。」
354: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/26(火) 21:00:08.90 ID:DAf6izzQ.net
「…」


「…真姫ちゃん?」


「…そう。」


「…意外?」


「…どうして、そう思うの?」


「えりちも…にこっちも。」

「今の真姫ちゃんと、同じ反応したから。」


「…」

「…そうね。」


「意外かと聞かれたら…意外ね。」


「…なんで?」


「希らしく…ないから。」


ウチ…らしく?
355: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/26(火) 21:00:37.37 ID:DAf6izzQ.net
「よかったら…聞かせてもらえない?」

「どうして…希が、そう思ったのか。」



それから…ぽつぽつと

ウチは、真姫ちゃんに想いを吐き出した


「…そう。」


「自分が名前をつけて…見守って来た。」

「今まで、そうやって来たんやから…」


「無くなってほしくないと、思うのが普通じゃない?」

「自分の想いを込めた居場所が。」

「ずっと…続いてほしい。」


「そう思うのは…間違いなんかな。」


真姫ちゃんは、ちゃんと目を見て聞いてくれた

真剣に、話を聞いてくれてるのが分かる


だからこそ…知りたい
356: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/26(火) 21:01:01.63 ID:DAf6izzQ.net
「私は…」


「やっぱり、意外って感じるわ。」

「でもそれは、仕方ない事。」


「きっと…その想いが、違うのよ。」


「想いが…?」


「昔の希が、μ'sに込めた想い。」

「今の希が、μ'sに込める想い。」


「…そこが、にこちゃん達が意外に感じる理由だと思う。」


「込めた…想い。」


「でもね、希。」

「私は、今の希の考えでも良いと思う。」


「…え?」
357: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/26(火) 21:01:30.22 ID:DAf6izzQ.net
「私は、希の気持ちを否定したりなんてしない。」

「だからこそ…言えるのは。」


「今の希の気持ちを、大事にしてほしい。」


「今の希が、このまま続ける事にしたんだから。」

「その考えは、貴女自身の物。」


「今までみたいに、誰かの様子に振り回される必要はない。」

「今は、貴女が東條希なんだから。」


「真姫ちゃん…」


「希は、希よ。」

「今の自分が、一番いいと思う物を、選べば良い。」

「例えそれが間違っていたとしても…」


「それが、希の選んだ答えなんだから。」


「…」
358: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/26(火) 21:01:56.32 ID:DAf6izzQ.net
「…私は、嫌いじゃないわよ。」

「希の、その考え。」


「…え?」


「誰かのためにずっと動き続けてきた、前の希も。」

「みんなと一緒に、自分も幸せになりたいと思ってる、今の希も。」


「どちらも、同じ希だから。」



「…きっと、正解はないのよ。」

「μ'sを続けるにしても、辞めるにしても。」

「その結果に反対する人は、必ずいる。」


「絵里と…にこちゃんのように。」


「だったら…自分の想いに、任せちゃえばいいのよ。」

「自分が、こうしたいと思う事。」



「…何のために、決めるのか。」
359: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/26(火) 21:02:23.23 ID:DAf6izzQ.net
「何のため…」


「…そう言えば。」

「昔…初めて、合宿をした時。」

「希に言われたわ。」


『…ウチな、μ'sのメンバーの事が大好きなん。』

『ウチはμ'sの誰にも欠けてほしくないの。』

『確かに、μ'sを作ったんは穂乃果ちゃん達だったけど。』

『ウチもずっと見て来た。』

『…それだけ、思い入れがある。』


「…って。」


「ウチが…?」


「ええ。」

「朝に海辺で、希は確かにこう言った。」


「そっか…」
360: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/26(火) 21:02:51.03 ID:DAf6izzQ.net
「さっきも言った通り。」

「今の気持ちを、一番大事にするべきだと思う。」


「それでも…私が思うのは。」

「かつて、希がそう言ってくれた事も。」

「今、希が、考えている事も。」


「…どちらも、同じだと思う。」


「同じ…?」


「どちらも、何のために…」

「誰のための、言葉なのか。」


「希は…分かってるでしょ?」


「…」

…ああ、そうか

答えは、目の前にあったんだ


「あのね、真姫ちゃん…」
361: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/26(火) 21:03:17.09 ID:DAf6izzQ.net
-----


「…」


ベッドに、倒れ込む


「誰のため…か。」


そんなの、決まってる

…ううん


ずっと…そうだった

そのために、頑張って来た


だから…


今度も、そのために


「…すぅ。」


大きく息を吸って…吐く


「…決めよう。」

「今度こそ…」




…一番大事なもののために
362: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/26(火) 21:03:42.93 ID:DAf6izzQ.net
-----


…声が聞こえる

名前を呼ぶ、声が


この、声は---




『…おかえり。』


『いや、この場合は…』

『いらっしゃい、の方がいいんかな?』


「…」


『また、迷ってるん?』


「…違う、決めたの。」


『…』



「…話があるの。」
367: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 21:38:21.43 ID:vFXhb/CQ.net
-----



「よ~しっ!!」

「遊ぶぞ~!!」


週末、穂乃果ちゃん達に呼ばれて

ウチらは、集まった


「…遊ぶ?」


「いきなり日曜に呼び出して来たから。」

「何かと思えば…」


にこっちとえりちも、驚いてる


「休養するんじゃなかったん…?」


「それはそうだけど…」

「気分転換も必要でしょ?」


「楽しい、って気持ちを沢山持って。」

「ステージに立った方がいいし♪」
368: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 21:38:53.93 ID:vFXhb/CQ.net
「そ、そうですよ…!!」

「今日、あったかいし♪」


「遊ぶのは、精神的な休養だって、本で読んだ事あるし…!」


「そうそう!」

「家に籠っててもしょうがないでしょ?」


「にゃーっ!!」


穂乃果ちゃんの話に、皆がすんなり同意する

海未ちゃんなんかは、何か言いそうやのに…



「なによ…」

「今日はやけに強引ね。」


にこっちも、勘ぐってる



「…ほら、それに。」
369: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 21:39:30.58 ID:vFXhb/CQ.net
「μ's結成してからみんな揃って遊んだ事ってないでしょ?」

「一度くらい、いいかな?って♪」


「でも…」

「遊ぶって、何するつもり?」



「遊園地行くにゃ!」


「子供ね…」

「私は美術館。」


「えっと、私はまずアイドルショップに…!」


「バラバラじゃない!!」

にこっちがツッコむと、穂乃果ちゃんは…




「う~ん…」


「じゃあ、全部!」



「「はああ!?」」


「行きたい所、全部行こう?」
370: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 21:40:16.97 ID:vFXhb/CQ.net
「…本気!?」


「うん!」

「みんな行きたい所を1個ずつ挙げて。」

「全部遊びに行こう!!」


「いいでしょ!?」


すっごく笑顔で、答える穂乃果ちゃん



「…しょうがないわね~。」


みんなの顔も、笑顔になる

やっぱり、μ'sで何かをするって事は

みんな、楽しみなんやね



穂乃果ちゃんが、飛び出す


「しゅっぱーつっ!!」



「「おーっ!!」」
371: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 21:41:01.71 ID:vFXhb/CQ.net
-----


それから、μ'sのみんなで

アイドルショップを回ったり

ゲームセンターで勝負したり


動物園で、動物と戯れたり

緑地公園で、いわゆるスワンボートに乗ったり


他にも浅草や、遊園地なんか

みんなの思い思いの場所に、立ち寄る



…やっぱり、誰かと

この、みんなといられる事


それが、何よりも楽しい


初めて出来た、ともだち

初めて出来た、居場所


終わってほしくない

ずっとこのともだちと


…そんな気持ちをかき消すように

日は、どんどんと傾いていった
372: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 21:41:58.23 ID:vFXhb/CQ.net
「それで後は…穂乃果が遊びに行きたい所だけど。」

「私は…」


「海に行きたい。」


「海?」


「うん。」


「誰もいない海に行って。」

「9人しかいない場所で。」

「9人だけの、景色が見たい。」


「…ダメかな?」


穂乃果ちゃんの言葉に

若干戸惑いを見せつつも


誰も、反対はしなかった


…せめて、日が落ちきるまでに

目的地へと、足を速めた
373: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 21:42:28.84 ID:vFXhb/CQ.net
-----



電車に揺られて、数十分

落ちてくる日が、オレンジ色に変わる頃


ウチらは、海岸沿いの駅に着いた


なんとなく、薄暗くなった雰囲気がウチらを包んで

あんまり言葉を交わす事も無く


浜辺に足を運ぶ


潮の香りが立ちこめる中

荷物を濡れない所に置いて


…いざ、波打ち際まで




「「…わあ~っ!!」」


ちょうど、水平線に沈み始める

紅く染まった夕日を見る事が出来た
374: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 21:42:57.82 ID:vFXhb/CQ.net
日が沈むまでの、ほんの少しだけの時間

みんなが思い思いに、海を楽しんだ



みんなで、顔を合わせて

海に向かって、そっと手を繋ぐ


影を帯びて来た茜空の下

静かに、海を眺めてた




「…合宿の時も。」

「こうして、朝日見たわね。」


えりちがふと、口を開いた


「…そうやね。」


眺める夕焼けが、仄暗くなり始める

時間が来た、と言わんばかりに

穂乃果ちゃんが、口を開いた



「…あのね。」
375: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 21:43:33.12 ID:vFXhb/CQ.net
「…あのね。」

「私達、話したの。」



「あれから6人で集まって…」

「これからどうして行くか。」



「希ちゃんと、にこちゃんと、絵里ちゃんが卒業したら。」

「μ'sを、どうするか…」



「穂乃果…」



空気が、ひんやりと冷気を帯びる

まるで、これからの事を予期してたみたいに


…でも、不思議と怖くはなかった


だって…
376: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 21:44:05.39 ID:vFXhb/CQ.net
「…ひとりひとりで、答えをだした。」

「…そしたらね?」


「全員一緒だった…!」



「…みんな同じ答えだった。」


「だから…」


「だから、決めたの。」

「…そうしよう、って。」


「…」



「言うよ?」

「せーっ…」


「…」


「ごめん。」

「言うよ…」







「せーのっ…!!」
377: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 21:44:37.24 ID:vFXhb/CQ.net
「「大会が終わったら…」」


「「μ'sは…」」











「「おしまいにします…!!」」
378: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 21:45:04.95 ID:vFXhb/CQ.net
「…やっぱり、この9人なんだよ。」

「この9人が、μ'sなんだよ。」



「…誰かが抜けて、誰かが入って。」

「それが普通なのは、分かっています。」



「…でも、私達はそうじゃない。」



「μ'sはこの9人…」



「…誰かが欠けるなんて、考えられない。」



「1人でも欠けたら、μ'sじゃないの…!」




「…」



「…そう。」


「絵里…!!」
379: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 21:46:33.76 ID:vFXhb/CQ.net
「私は、穂乃果達が決めた答えが、ベストだと思う。」

「だって…私達は、卒業するのだから。」


「…ッ!」

「希は…!?」


ウチは…


うん、決めたから

あの時ちゃんと、自分の、心の中で



「…ウチも賛成だよ?」


「…!」

「アンタ、続けてほしいって…」


「…」

「…思い出したんよ。」


「え…?」


「μ'sに込めた…想いを。」
380: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 21:47:06.84 ID:vFXhb/CQ.net
-----


「…話があるの。」


『話…?』


「…そう。」


『てっきり…また、迷ってるんかと。』


「…迷うのは、もう辞めた。」

「迷う必要なんて、なかった。」


「…一番、大事な物が、そこにあるから。」


『…』


『…で、話ってなに?』


「その前に…聞かせてほしい。」


『何を?』


「貴女にとってのμ'sって…何?」


『…』
381: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 21:47:35.57 ID:vFXhb/CQ.net
『…えっと。』

『「ウチ」の記憶によると…』


「…そうじゃない。」

「ウチは、貴女に聞いてる。」


『…え?』


「貴女は…どう思うの?」


『…』


「…答えて。」


『…』



『μ'sは…』







『ウチの、夢。』
382: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 21:48:20.17 ID:vFXhb/CQ.net
『…ともだちが、欲しいと願った。』

『大切なものが、欲しいと願った。』


『誰かの役に、立ちたいと願った。』

『叶えたいと思える、夢を願った。』


『その願いを、叶えてくれた場所。』

『ウチに、夢を見せてくれたんよ。』


『沢山の願いが詰まった、居場所。』

『願った夢を…叶えてくれる、夢。』



『それが…ウチにとっての、μ's。』

『一番大事な…8人の、ともだち。』



「…」


『答えに、なったかな?』


「…やっぱり。」


『…え?』






「…嘘つき。」
383: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 21:48:59.63 ID:vFXhb/CQ.net
『…何の事?』


「分かってるくせに…」

「…ずるいよ。」


『…』


「…」


「…最初から?」


『…最初からやね。』


「…どうして?」


『「ウチ」が、そう決めたから。』


「…そっか。」

「ずっと…見てたんだね。」







「本当の…『私』。」
384: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 21:56:20.74 ID:vFXhb/CQ.net
『…』

『まさか、気付くとは思わんかったよ。』


「私も…まさか、って思った。」

「なにより…ここでの事は、覚えてなかったし。」


『なら…なんで?』



「バックアップ…」


『…』


「貴女は自分の事を、バックアップだと言った。」

「ただ、記憶の処理をしているだけの存在だと。」


「なら…」

「どうして、私に選ばせたの?」


『…』
385: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 21:56:55.92 ID:vFXhb/CQ.net
「その後も…助言したり、忠告したり。」

「ただのバックアップにしては、貴女には意思があった。」


『そんなの、勝手に「ウチ」が作り上げた物かもしれんよ?』


「…思い出したの。」

「2回目に…貴女と出会った時。」

「目を覚ます、直前…」


「貴女は、言った。」



『どうか…間違えないで。』



「…今なら、分かる。」

「貴女は、ずっと隠してた。」

「自分の想いを…気持ちを。」


「…そうでしょ?」



『…』
386: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 21:57:34.87 ID:vFXhb/CQ.net
「どうして…」

「どうして、教えてくれなかったの?」


「自分が、本人だって…」


「どうして、戻りたいと願わなかったの?」

「私は、勝手に生まれた存在なのに。」


『…』


「また…答えてくれないの?」


『…』



『…幸せに、なってほしかった。』


「え…?」


『あの頃の…昔の、「ウチ」を。』


『応援したかったんよ。』
387: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 21:57:55.97 ID:vFXhb/CQ.net
『…貴女が、今までの「ウチ」の事を別人だと思ったように。』

『ウチも、そう思ってた。』


『自分じゃない、誰か。』

『それでも、そこには存在してて。』


『…急に、欲しかった物が手に入って。』

『悩みながらも、みんなになるべく心配させないように動いて。』


『ウチみたいに、気持ちを隠してた頃とは違う。』

『素直な…貴女が、羨ましいと思った。』


「…」


『見た目は、確かにウチだけど。』

『性格も、考え方も違う「ウチ」。』


『ウチが、みんなの幸せを願うように。』

『貴女も…その内の、一人だった。』


「え…」
388: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 21:59:19.67 ID:vFXhb/CQ.net
『だから…って言うのも、あるんやと思う。』

『せめて、貴女が望むまでは…』


『ウチは、望まないように。』

『貴女が…幸せに、なれるように。』


『そう、選んだ。』


「でも…でも、私は…」

「少なくとも貴女のイマを奪ったんだよ?」


『…別に、いいよ。』

『同じ、「ウチ」だから。』


『それに…』


『真姫ちゃんや、凛ちゃんが…』

『あんな風に思って、言葉にしてくれたのは。』


『貴女の、お陰だと思うから。』


「…」
389: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 21:59:50.96 ID:vFXhb/CQ.net
『ウチじゃ…きっと、本音なんて話せなかったし。』

『2人が、本音でぶつかってくれたのも。』

『きっと、それが貴女だったから…』


「…ああもう、めんどくさい!!」


『…へ?』


「ほんと、真姫ちゃんから聞いてた通り、面倒な人!」

「なんでそんなに、ネガティブなのか…」

「…いや、確かに私もそうなんだけど。」


「真姫ちゃんも凛ちゃんも、確かに私を希として見てくれた!」

「それは、私だったからかも知れない!」


「でも、そんな私でも希と認めてくれて、支えてくれたのは…」

「貴女が、今まで希としてみんなの願いを叶えて来たからでしょ!?」
390: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 22:00:46.21 ID:vFXhb/CQ.net
『でも…』


「記憶が無い時、みんなに話を聞いた!」

「『私』は、どんな人間だったのか、って!」


「…全員が答えた!」

「かつて…貴女に、救われたって!!」


「直接関わってないにせよ…」

「貴女が過ごして来た日々は、確かにあったの!」

「貴女を大切に想う人が、たくさんいるの!」


「そんな人達に、支えられてきたんでしょ!?」

「そんな人達と、夢を叶えたいんでしょ!?」


「だから…」

「だから、その想いをμ'sに込めたんでしょ!?」


「…思い出して!」

「今度は、貴女が思い出す番だよ!?」
391: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 22:01:12.71 ID:vFXhb/CQ.net
『…』


「はあ…はあ…」


『でも…』

「でも禁止!」


『…』


「…貴女は、どうしたいの?」

「貴女自身の手で、叶えたいの?」


『ウチは…』


「本気で私の幸せを願って。」

「自分は、見てるだけでいいなんて言うなら。」


「…この体、私がもらうから。」


『…!』


「選んで。」




「…私が、選んだように。」
392: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 22:01:28.87 ID:vFXhb/CQ.net
『ウチは…』


「…」


『ウチは…』









『…みんなと、幸せになりたい。』









「…本当に、面倒な人。」
393: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 22:02:06.26 ID:vFXhb/CQ.net
『でも、そうなったら…』


「…分かってる。」


『それでいいん?』


「良いも何も…元々、貴女の体でしょ?」


『それは…』


「これからどうするのかを考えた時、思った。」

「確かに、私は『私』だったけど。」

「それでも、本当の『私』じゃなかった。」


「ラブライブっていう目標に向かって。」

「…みんな、本気で努力してた。」

「それは、今まで乗り越えて来た物があるから。」

「みんな…お互いの事を、信頼してた。」



「でも…」

「私には、その記憶がないから。」
394: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 22:02:36.11 ID:vFXhb/CQ.net
「確かに、記憶が戻ったフリをしてたら。」

「みんな、優しかったよ?」


「みんなで笑って、遊んで、頑張って。」

「…とにかく、充実してた毎日だった。」


「でも…」

「どこかで、本気になれない自分がいた。」


「それはやっぱり、μ'sに込めた想いが違ったから。」

「私は、今が楽しかった。」

「楽しい日が、ずっと続けば、って思ってた。」


「…でも、違った。」

「楽しい日は、いつか必ず終わる。」

「終わった時、後悔がないように、今をみんな頑張ってる。」


「とてもじゃないけど…」

「私には、そんな考えなんて無かった。」


『…』
395: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 22:03:33.93 ID:vFXhb/CQ.net
「私は、何よりも自分が幸せになりたかった。」

「欲しかった物が手に入って。」

「望んでた幸せを、手に入れる事ができた。」


「ただの…仮初めの、幸せを。」


『…』


「それで、分かったの。」

「やっぱり…どう頑張っても、私は『私』じゃないんだと。」


「…知ってると思うけど。」

「真姫ちゃんに、何のために、って言われて。」

「…気付いちゃった。」



「みんなのために。」


「そのために頑張るのが。」

「そのためにいるのが、私だったんだ、って。」
396: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 22:04:07.19 ID:vFXhb/CQ.net
「そしたらね…なんだか、自分がすごく小さく思えたの。」

「記憶が無い事を隠して、生活して。」

「みんなには嘘をついて、2人には心配させて。」


「私…なにやってるんだろう、って。」


「みんなのために、記憶が戻ったフリをしたのに。」

「いつのまにか、自分のためになってた。」


「…自分でも、呆れた。」

「みんなの事を考えないで…どうして、私はここにいるんだろう、って。」


「そんな気持ちで、優勝なんて出来る訳ない。」

「だって…」


「全部、自分で手に入れた物じゃないから。」


「ともだちも、居場所も…全部、貴女から与えられたもの。」

「変わろう、って気持ちが、無くなっちゃうくらい。」


「居心地が…よかったから。」
397: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 22:04:38.92 ID:vFXhb/CQ.net
「だから…もう、いいんだ。」

「もう…十分、楽しんだから。」


『でも…でも…ッ!』


「…手、出して。」


『…』


「…あったかいね。」


「今度は、全部自分で手に入れてみせる。」

「私の、最後の記憶。」

「あの日に戻って…また一から、やり直す。」


「そして、必ず手に入れてみせる。」

「この…最高の、ともだちを。」



「…約束する。」
398: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 22:05:16.71 ID:vFXhb/CQ.net
『…ッ。』


「…ほら、泣かないで?」

「同じ「私」なら、分かるでしょ?」


「みんなに、本当に必要な存在は…誰なのか。」

「みんなが、貴女を待ってる。」

「貴女と夢を叶えたいと、思ってる。」


「…そんな貴女が、私は誇らしいから。」


『…』


「貴女が、私を覚えていてくれるなら。」

「私は、決していなくなる訳じゃないから。」

「だから…笑って、お別れしよう?」


『…分かった。』

『絶対…叶えて、みせるから。』



「…ありがとう。」



「…ばいばい、『私』。」


『ばいばい、『ウチ』。』
399: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 22:21:53.58 ID:vFXhb/CQ.net
-----


「…希?」


「思い出したんよ…」

「この9人で、叶えてきた夢があって。」

「この9人じゃなきゃ、叶えられない夢がある事。」


「初めて、みんなと出会ってから…」

「ウチが、どんな想いで見て来たか。」


「…名前をつけたか。」


「9人しかいないんよ…!」


「ウチにとって…」



「μ'sはこの9人だけ。」


「…ッ。」

「そんなの…。」

「そんなの、分かってるわよ…っ。」


「…私だってそう思ってるわよ。」

「でも…」


「でも、だって…!」



「にこちゃん…」
400: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 22:22:22.21 ID:vFXhb/CQ.net
「私が、どんな想いでスクールアイドルをやってきたか。」


「…分かるでしょ?」



「3年生になって諦めかけてて。」

「それがこんな奇跡に巡り会えたのよ!?」



「こんなすばらしいアイドルに…」

「仲間に巡り会えたのよ!?」


「終わっちゃったらもう、2度と…」

「だからアイドルは続けるわよ!!」


「絶対約束する!!」

「何があっても続けるわよ…!!」


「真姫…」


「でも…μ'sは私達だけの物にしたい!!」

「にこちゃんたちのいないμ'sなんて嫌なの…」


「私が嫌なの!!」
401: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 22:23:13.36 ID:vFXhb/CQ.net
「…かよちん。」

「泣かない約束なのに…」

「凛、頑張ってるんだよ…?」

「なのに…もう…」




「あーっ!!」


「「!?」」



「時間!!」

「早くしないと、帰りの電車なくなっちゃう!!」


「えっ?」

「穂乃果ちゃん…!?」



「と、とりあえず追いかけるわよ!」

「みんな、荷物もって…」



「…希?」


「…ううん、すぐ行く!」
402: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 22:23:39.93 ID:vFXhb/CQ.net
…これで、良かったんやと思う

みんな、ウチの記憶は戻ってると思ってる

今更、みんなに伝えた所で

…混乱させたり、悩ませるだけだから


だから…ひとつだけ、誓うよ

絶対に、このみんなと夢を叶えてみせる


手を取って、約束したように

ただ…『ウチ』に、胸を張れるように



…でも、やっぱり

伝えないといけない、人がいるから


「…真姫ちゃん、凛ちゃん。」


「「…?」」


「…ありがとう。」
403: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 22:24:07.75 ID:vFXhb/CQ.net
「貴女、やっぱり…」


「記憶、戻ってたの!?」


「しーっ…」


「…!!」

凛ちゃんが、慌てて口を押さえる


「…今まで、ありがとう。」

「ウチの記憶が戻ったのも…」

「これまで、支えてくれた2人のお陰。」


「もう…大丈夫なの?」


「うん♪」


「…そう。」


「そっかー…」

「でも凛、あの希ちゃんも好きだったなー。」


「わしわししないし…」
404: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 22:24:41.03 ID:vFXhb/CQ.net
「…ほう?」

「それは…これの事かーっ!!」

両手を上げて、凛ちゃんに飛びつく


「け、結構にゃーっ!!」


そう言って、みんなの方へ走っていく


「…はあ。」

「凛の言う通り…」


「面倒な希に、戻ったのね。」


「…ま、そういう事やね。」


「…」


「…笑ってた?」


「…うん。」

「最期まで…」


「…そっか。」
405: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 22:25:07.52 ID:vFXhb/CQ.net
「…あのな、真姫ちゃん。」


「…?」


「…ひとつだけ、頼まれた事があるんよ。」


「…何?」


「真姫ちゃんに、伝えといてほしい、って。」

「あの日…」


「真姫ちゃんに、伝えて無かった事。」


「あの日…?」



「…ああ。」

「そう言えば…」
406: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 22:25:39.21 ID:vFXhb/CQ.net
-----



「あのね、真姫ちゃん…」


「…?」


「…」



「…やっぱり、辞めとく。」

「また決めたら、伝えるから。」


「…分かった。」



「…ありがと、真姫ちゃん。」


「…?」


「えへへ…なんでもないよ。」
407: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 22:28:30.55 ID:vFXhb/CQ.net
-----



「それで…なんて?」


「『ウチ』から、真姫ちゃんへの伝言。」


『最期に私を救ってくれて、ありがとう。』


「…ッ。」

「…」


「…そうね。」

「少しは…返せたのかしら。」


「…うん、きっと。」


「例え時間が短くても、一緒に過ごしたのは事実だから…」

「あの希が笑っていたのなら。」

「私が泣く訳には…いかないわね。」


「真姫ちゃん…」


「希ちゃーん!真姫ちゃーん!」


「…あれ、凛ちゃんどうしたん?」

「えへへ…言わなきゃいけないの、すっかり忘れてた!」


「…?」


「…そうね。」


「せーのっ…」


「「おかえりなさい!!」」




「…ただいま。」
408: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/27(水) 22:31:05.32 ID:vFXhb/CQ.net
これにて完結です
お付き合い、ありがとうございました

こういった感じのを書いたのは初めてなので
分かりにくい所もあったと思いますが
読んで頂きありがとうございました!

何か質問などあれば、お答えします
426: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/28(木) 02:09:50.84 ID:I2U5Sa88.net
-> Bad End


>>218より



「…ど、どういう意味?凛ちゃん。」


「…別に、そのままの意味だよ?」

「希ちゃん、記憶戻ってないよね、って。」


「そんな訳ないやん…?」


「ほら、みんなで合宿行った事も。」

「ハロウィンで、踊った事も。」


「凛ちゃんが、ウェディングドレスの衣装着たのだって…」

「ちゃんと、覚えてるよ?」



「…本当に?」


「勿論!」


急速回転する頭を、冷やす

まさか、凛ちゃんがこんなに鋭いなんて思わなかった


どうする…?
427: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/28(木) 02:10:28.07 ID:I2U5Sa88.net
「そっか…」

「本当に、覚えてるんだね。」


「…もう、凛ちゃんってばいきなり酷いなあ。」


なんとか笑顔で、ごまかそうとする

大丈夫のはず

今までだって、ごまかせて来た…



「…じゃあ、ひとつ質問しても良い?」


「…ん?なに?」


大丈夫


今までみんなとやって来た事は

頭にちゃんと入ってる


…大丈夫、問題ない
428: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/28(木) 02:12:17.72 ID:I2U5Sa88.net
「…新曲作りのために、真姫ちゃんの別荘に行って。」

「もちろん、覚えてるよね?」


「うん。」


確か、行き道で穂乃果ちゃんが寝坊して…

3人がスランプに陥って

みんなで、ユニットに別れたんよね


…大丈夫


「希ちゃんが、食べられる草とか教えてくれてね?」

「みんなで、テントに入って夜空を見上げて。」


「…そう言えば、希ちゃん。」

「好きな星の話、してくれたよね。」


「…そうやね。」


「南十字星…今でも、覚えてるよ。」


…そう

あの時確かに、その話をした

海未ちゃんから、その話も聞いた

本当に南極で見たのかって、追求されたから
429: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/28(木) 02:12:58.57 ID:I2U5Sa88.net
「本当に、覚えてたんだ!」

「ごめんね?疑ったりして…」


「あ…ううん。」

「変な質問して、困らせたのはウチやし…」


…切り抜けたんかな?


少なくとも、凛ちゃんは笑顔になった


「えへへっ。」

「やっぱり、いつもの希ちゃんだったみたい♪」

「あの時も、お姉ちゃんみたいに、優しくて…」


「…流れ星を見つけたのも、希ちゃんだったね。」


「ふふっ…綺麗やったね。」



「…ねえ、希ちゃん。」


「…ん?」



「あの時、流れ星なんて無かったよ?」
430: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/28(木) 02:17:35.90 ID:I2U5Sa88.net
「え…」



「確かに、希ちゃんは流れ星を見つけたけど。」

「あれ…冗談だったよね。」


「海未ちゃんも…確認してたよ?」

「希ちゃんが、凛達を元気づけようとしてくれた、って。」


「…」


「…ねえ、どういう事かな?」


「…ッ。」


血の気が引くのが、分かる

完全に、油断してた

開いた口が渇いて、水分を求める


とにかく、切り抜けないと

でも、どうやって…?


声が出せないでいると

部室の、ドアが開いた
431: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/28(木) 02:20:31.98 ID:I2U5Sa88.net
「今の話、本当ですか?」

「…希。」



「海未…ちゃん…」


「あ、海未ちゃんおはよー!」


「ええ、おはようございます、凛。」

「それで…教えて頂けますか?」


「…」


ウチに、言える事はひとつもなかった

ここから、巻き返せる訳が無い

これがきっと、ことりちゃんとか

他のメンバーなら、大丈夫やったかもしれない


…でも、この3人で行動してたからこそ

必ず、ボロが出る



ほつれた糸口は

もう…戻す事は出来なかった
432: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/28(木) 02:24:24.13 ID:I2U5Sa88.net
バッドエンドは、こんな感じで進める予定でした

少しずつボロが出始めて
追い込まれていく感じで書こうと思ってましたが
凛ちゃんがキレ者過ぎるのと、救いが無さ過ぎたので没にしました

後、パターンとしては凛ちゃんをごまかして
真姫ちゃんと2人に支えてもらうけど
結局、記憶は戻らないパターンも用意してましたが
今回の内容で書き上げた次第です

後味悪く感じてしまったら、すみません
433: 口直しに、どうぞ(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/28(木) 02:42:09.23 ID:I2U5Sa88.net
-> Epilogue

-----



「のーぞみっ。」

「…どうしたの?」


「…あ、にこちゃん。」


「ぽけっと口開けて、何してるのよ?」


「うーん…」

「夢を、見てたの。」


「…夢?」


「うん。」

「なんだか、すっごく楽しかった。」

「わくわくして、どきどきして。」


「…そんな、夢。」



「夢、ねえ…」
434: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/28(木) 02:43:33.61 ID:I2U5Sa88.net
「…ねえ、にこちゃん。」


「…何?」


「正夢って…信じる?」


「んー…そうね。」

「私も、アイドルになった時の姿とか、夢で見るし。」

「正夢になってほしいな、ぐらいの気持ちはあるわよ?」


「…そっか♪」


「何か、良い夢でも見たの?」


「…あんまり、覚えてないんだけどね?」

「でも…すっごく、幸せだった。」


「幸せ…ねえ。」

「そりゃ、こんないい天気の日に屋上で寝てたら。」

「幸せな夢のひとつも見るでしょうよ。」


「…確かに。」
435: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/28(木) 02:44:19.13 ID:I2U5Sa88.net
「…それで、どんな夢なの?」


「え…?」


「何?話してくれるんじゃないの?」


「まさか、そんな事言われるとは…」


「話す努力をしなさいよ。」

「誰でもにこみたいに、聞いてくれる訳じゃないんだし。」


「…そうだね。」

「でも、本当にあんまり覚えてないんだよ…?」


「別に、いいわよ。」


「…なんだか、あたたかかった。」


「…?」


「誰かとね?」

「手を…繋いだ気がするんだ。」


「手を…?」


「…うん。」
436: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/28(木) 02:45:02.51 ID:I2U5Sa88.net
「優しい両手に、包まれて。」

「元気な手に、引っ張ってもらって。」


「…最後に、握手をした。」


「…」


「…にこちゃん、私ね?」

「ともだち…作ろうと、思うんだ。」


「…へ?」


「なんだか、今なら何でも出来る気がするの。」

「いつまでも、にこちゃんに頼ってばかりじゃ駄目だから。」


「…どうしたのよ、いきなり。」


「…勇気を、もらったの。」

「顔も覚えてないけど…」


「確かに、この手で受け取った。」



「…やるよ、私。」

「変わって、みせる。」




見ててね


いつか--きっと
437: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/05/28(木) 02:47:42.57 ID:I2U5Sa88.net
ありがとうございました
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『希「失った記憶と繋がる心。」』へのコメント

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