善子「一週間の命」

シェアする

善子-アイキャッチ28
1: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:06:48.12 ID:srcZDy/r0
ラブライブ!サンシャイン!!SS

※残酷描写ありなので苦手な方は注意してください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1495318007

※ 同作者さんによるSSはこちらのトリップ検索から閲覧出来ます(管理人)

元スレ: 善子「一週間の命」

スポンサーリンク
2: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:08:25.60 ID:srcZDy/ro
――汝、如何様にして彼の者を寵愛す?

……解せぬ……。しかし……その言葉……その祈り……その覚悟が本物であると言うのならば、よかろう。

人の業故、無に帰すことは出来ずとも此方彼方にて因業の天秤の重しを交換するならば真の理に大きく干渉することもなかろう。

――汝の清き心に……祝福あれ――





    *    *    *



3: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:09:18.29 ID:srcZDy/ro


2学期も始まって、本日は9月9日金曜日――

Aqoursの練習が終わって、後片付けをしていると……


善子「リリー、今週の日曜日ちょっと付き合って」


よっちゃんが私のところに来て、唐突にそう切り出してきた。


梨子「今週の日曜日?どこに行くの?」

善子「沼津で一緒にショッピングしましょう」


二人でお出かけのお誘い……よっちゃんと一緒に過ごすのは楽しいし、嬉しいんだけど……


梨子「ごめん……もうその日はすでに千歌ちゃんと遊びに行く約束してて……」

善子「……じゃあ、千歌には悪いけど、その約束断ってもらえるかしら」

梨子「え?」
4: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:09:46.01 ID:srcZDy/ro

私はよっちゃんの言葉に目を丸くした。


善子「――だから、その日は千歌との約束を断って。それで、私と買い物に行きましょう」

梨子「よ、よっちゃん……?」


――よっちゃんらしからぬその物言いに私は動揺した。

よっちゃんは自由な性格に見えて、思いやりのある常識人だ。

百歩譲って、私がダブルブッキングをしてしまった……とかならまだしも、そもそも千歌ちゃんの先約があるのにそれを断ってまで、自分の用事を優先しろと言われるとは思わなかった。


梨子「え、でも……千歌ちゃんに悪いよ……」

善子「いいから、いくのよ」
5: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:10:13.50 ID:srcZDy/ro


なんだか、よっちゃんの目が据わっている気がした。


梨子「ら、来週じゃダメ……?さすがにいきなり言われても……」

善子「次の日曜じゃないとダメよ。」


遠まわしに断っても、なんだか今日はぐいぐい来る。

よっちゃんの普段とは違うベクトルで強引さだ。

私はそれに動揺と同時に軽い苛立ちを覚えた。
6: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:10:40.24 ID:srcZDy/ro


梨子「だから、その日はもう千歌ちゃんと約束してるから……っ」

善子「――そんなのいいからっ!!」

梨子「!?」


よっちゃんの大きな声に私の体がビクリと跳ねる。

もはやそれは叫びに近かった。


善子「え、あ……ご、ごめん……」

梨子「え……いや……その……」


よっちゃん自身も想像以上に大きな声を出してしまったことに驚いたのか、私同様うろたえていた。
7: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:11:06.41 ID:srcZDy/ro


鞠莉「なにー?リリー、ヨハネ……Trouble?ケンカ?」

梨子「あ、いえ……ええっと……」


声を聞きつけて近くで片づけをしていた鞠莉さんが近付いてくる。


善子「リリーごめん……私なんかおかしくなってるみたいだから……帰るね」

梨子「え……よ、よっちゃん……」

善子「……ばいばい」

梨子「……」


よっちゃんは身を翻して、その場を去ってしまった。

8: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:11:32.53 ID:srcZDy/ro

鞠莉「あらら……?ホントにケンカだったの?」

梨子「ケンカ……ではなかったと思うんだけど……」

鞠莉「そう……まあ、善子も女の子だし、機嫌悪い日もあるってことにしておきましょ。うるさそうなダイヤとかは、わたしが適当に誤魔化しとくから」

梨子「う、うん……」


私は鞠莉さんの言葉に頷きながらも……

……よっちゃんの明らかに普段とは違う様子になんだか不安な気持ちになっていた。

9: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:12:06.46 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





――その日の夜。私はスマホのLINEで千歌ちゃんにメッセージを送る。


リコ:ごめん、千歌ちゃん。急用が入ったから、日曜日の約束今度でいい?


程なくして、手元のスマホがピロンと音を立てる。


チカ:えーざんねーん・・・
   貸し一つだよー?

リコ:本当にごめんね・・・
   お詫びに今度ケーキでも奢るよ

チカ:ホント!?
   じゃあ、ゆるす!!

10: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:12:32.88 ID:srcZDy/ro


梨子「千歌ちゃんごめんね……」


そのまま、千歌ちゃんとのトーク画面を閉じてもう一人の連絡相手の画面に飛び――

少し迷ってから、私はチャットではなく、通話ボタンを押した。

アプリ特有の発信音の後――通話が繋がった。


梨子「……もしもし、よっちゃん?」

善子『……リリー……』


電話口の向こう側でよっちゃんが弱々しい声で私の名前を呼ぶ

11: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:12:59.47 ID:srcZDy/ro


梨子「……今日はごめんね。……その、よくわからないんだけど……今週の日曜じゃないとダメな理由があったんだよね?」

善子『…………』

梨子「千歌ちゃんとの約束はさっき断ったから……日曜日は一緒におでかけしよ?」

善子『……リリー……あの……』

梨子「ん……何……?」

善子『…………』


よっちゃんは再び言葉を詰まらる。


梨子「言いづらいことなら無理に言わなくても大丈夫だよ?」

善子『……ごめん……。……今回……今回だけだから……』

梨子「……?……うん、わかった。それじゃ日曜日……お昼に沼津駅でいい?」

善子『ええ……それで、大丈夫。ありがと、リリー……』
12: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:13:26.10 ID:srcZDy/ro


お礼の言葉とともにプツっと通話が切られる。

……よっちゃん……大丈夫かな……

……とにもかくにも日曜日になれば、なにかしらわかるよね――

そう自分に言い聞かせて、私は布団に潜った。





    *    *    *


13: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:13:54.44 ID:srcZDy/ro


9月11日、日曜日。集合時間の少し前に沼津の駅前に着いた私は、沼津の駅では一際目立つゴスロリ系の服を着た女の子を見つけた


梨子「よっちゃん、おはよ」

善子「リリー、遅いわよ。全くリトルデーモンの分際でこのヨハネ様を待たせるなんて……」


……よ、よかった、いつものよっちゃんだ……。……たぶん。


梨子「それより、どこ行く?」

善子「え、スルー?……そうね、まず軽くどこかでお昼を食べてから堕天使ショップを回りたいわ」

梨子「……いつも通りだね」

14: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:14:20.95 ID:srcZDy/ro


……あの様子からして、どこか特別な場所に連れて行かれるのかなって身構えていたんだけど……


善子「……いつも通りが一番よ」

梨子「……え?」

善子「なんでもないわ。……とりあえず、どこかお店に入りましょう」

梨子「う、うん……」


やっぱり、少しだけ変だなって思ったけど――とりあえずは元気そうでよかった……のかな。





    *    *    *
15: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:14:47.81 ID:srcZDy/ro


その後も注意深くよっちゃんを観察しながら二人でお出かけを楽しんだんだけど……

正直なところ、良くも悪くもいつものよっちゃんで……


善子「リリー?どうしたの?私の顔じろじろ見つめて……」


鞠莉さんの言うとおり……たまたまあの日は虫の居所が悪かっただけなのかな……


善子「リリー?……っは、もしかして!リトルデーモンの立場でありながら、この堕天使ヨハネに惚れてしまったの……!?」


……でも、それでも千歌ちゃんとの約束に強引に割って入ったりまでするかな……やっぱり、何かあったんじゃ……

16: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:15:13.77 ID:srcZDy/ro


善子「って、リリー!!さっきから聞いてるの!?」

梨子「わっ!?……え、なに?ごめん聞いてなかった……」

善子「全く、ぼーっとしないでよ……せっかく、この堕天使ヨハネが直々に……」

梨子「はいはい……ごめんね」

善子「喰い気味で流さないでよ!?」

梨子「……はいはい」


やっぱり……考えすぎかな……?





    *    *    *

17: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:15:40.13 ID:srcZDy/ro


日も傾いてきて、空がだんだん暗くなってきた。

時刻は大体18時前……一通りよっちゃんの行きたがっていた場所も行き終えて……沼津の駅前に戻ってきた

結局よっちゃんからは特に何も相談事とかはないまま……そろそろ解散かなって言う頃合。


善子「ねえ、リリー」


突然、よっちゃんが空を仰いだまま、私に話しかけてきた。


梨子「何?」

善子「今日は……綺麗な夕焼けね」

18: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:16:07.34 ID:srcZDy/ro


空を仰ぐ顔をそのままゆっくりと動かして沼津の空を見回してから、よっちゃんは一人前に歩み出て


善子「――こういう時間って……なんて言うか知ってる?」


そう問いかけてきた。……なんて言うか、か。

宵闇迫る……とか。茜色の空……とか。うーん……表現は色々ある気がするけど……。

よっちゃんっぽい言葉のチョイスだと――闇と光の決別の瞬間【とき】……とか。

自分で考えていて、ああそういえば、日本にはそういう時間を指す言葉があったことを思い出す。


梨子「……逢魔が刻?」


日が暮れて闇夜が訪れる時間帯を意味する言葉……。
19: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:16:33.80 ID:srcZDy/ro


善子「正解」


よっちゃんが私を振り返る。


善子「……死者と生者を別つ時間……」

梨子「よっちゃん……?」


少しよっちゃんの声のトーンが低くなる。……いつもの堕天使モード……だと思う。

でも、何故か……よっちゃんから漂ってくる空気に少し肌がぴりぴりとする気がした。


善子「……リリー今日はありがとね。楽しかった。」

梨子「あ、うん、どういたしまして……私も楽しかったよ」

善子「ホント?よかった……」

20: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:16:59.94 ID:srcZDy/ro

よっちゃんは心底ホッとしたようなそんな声で……小さく漏らすのがはっきりと耳に届く。

――どうして、そんな声で……?

ただの友達としてのやり取り、誰がどう見てもそうだろう

なのに、何故か、頭の中で何かが警鐘を鳴らしている。酷く違和感を感じる。


善子「もう一度ね、リリーといつも通り過ごしたかったなって思ったのよ。」

梨子「よっちゃん……?……まるで最後みたいに言わないでよ、また一緒にこうやって遊びに来よう?ね?」


私は自然と早口になる。


善子「……そうね。そうなれば嬉しいな。」

21: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:17:27.83 ID:srcZDy/ro

よっちゃんの口から僅かに漏れる小さな声……。

それは本当に小さな呟きだった。

……そこで私は気付いた。

ここは駅前だ。東京に比べればもちろん小さいがそれでも大きな駅だ。

……なのに、どうして――よっちゃんが呟く言葉がここまではっきり聞き取れるのだろうか?

――そこには、人のざわめきがなかった――


梨子「……人が……いない……」


――何故か、駅前には通行人が一人もいなかった。

道路を見ると、辛うじて車は走っているが……

……とは言え、深夜でもない……こんな時間から、この駅前に歩行者が誰もいないなんて有り得るだろうか?

頭の中の警鐘がさらに大きく鳴り響く。
22: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:18:05.96 ID:srcZDy/ro

善子「……今回はそういう感じなのかな?」


よっちゃんが呟いた。その眼は――2日前に屋上で見たあの眼。


梨子「よっちゃん……っ!!」

善子「リリー、動かないで」

梨子「!?」


よっちゃんに駆け寄ろうとしたら、それを静止された。


善子「動いちゃダメよ。こっち側になっちゃうかもしれないから」

梨子「な、何言って……」
23: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:18:32.81 ID:srcZDy/ro


ドクンドクンと心臓が激しく脈打つ。

異様な状況に光景に、そしてよっちゃんの異様な雰囲気に体が強張る。

よっちゃんは駅の時計を一瞥した。

――ちょうど時計の時針と分針が一直線になる刻を示していた。


善子「……ばいばい、リリー」


その言葉と共に――よっちゃんの身体が宙を舞った。


梨子「……!?」


――まるで……糸で引っ張ったかのように、不自然な挙動で突っ込んできた自動車に――


梨子「う……そ……」


さっきまで視界の端で、車道上で、正常に流れていたはずの自動車のうちの一台が……こちらに突っ込んできて、よっちゃんを跳ね飛ばしていた。


梨子「……!!……よっちゃん!?」
24: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:18:59.83 ID:srcZDy/ro


自体が飲み込めない頭のまま、跳ねられたよっちゃんを目で追う。


梨子「よっ……ちゃ……」


――追った視界の先にはぐったりとして赤い……赤い何かに塗れた、何かが転がっていた。

頭が理解を拒んでいる。

私はふらふらと近付いて――


梨子「よっ……ちゃん……」


さっきまで津島善子だった……モノに触れる。

生暖かい血が……私の手に触れる。

生々しい感触がリアルな血の臭いが私の脳に告げてくる。


梨子「あ……あぁ……あぁぁぁ……っ」
25: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:19:36.65 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





――津島善子は死んだのだと。


梨子「イヤアアアアアアアア!!!」


――私は叫んだ。


梨子「よっちゃん!!よっちゃん!!!!?」


気付いたら、よっちゃんが居なかった。

バタバタと誰かが掛け寄ってきて、私の肩を揺するのがわかった。
26: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:20:03.56 ID:srcZDy/ro

「――子、梨子!?」

梨子「――え……?」


泣きながら半狂乱でよっちゃん!よっちゃん!と叫ぶ私を我に戻したのは――自分の母親だった。


桜内母「梨子!?どうしたの、大丈夫!?」

梨子「だ、大丈夫じゃないよ!?よっちゃんが……よっちゃんがぁ……っ!!」


と、どこに行ったのがわからないよっちゃんを探す視線の先には――ピアノがあった。


梨子「え……」

桜内母「梨子……?よっちゃんって……いつも一緒にいる同じグループの後輩の子……よね……?」

梨子「私の……部屋……?」

27: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:20:33.85 ID:srcZDy/ro

私は部屋にいた。自分の部屋に。


梨子「ゆ……め……?」


――あれが……夢……?

私の言葉を聞いて、お母さんは安堵したようで


桜内母「……よっぽど怖い夢だったのね……急に二階で梨子の叫び声が聞こえたからびっくりしちゃったわ……」

梨子「……え……あ……ごめんなさい……」

桜内母「もう、あんまり心配かけないでね……」

梨子「あ……うん……」

桜内母「落ち着いたらでいいから……顔洗って降りて来るのよ」

28: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:21:00.64 ID:srcZDy/ro

朝ごはんもう出来てるからと付け加えてお母さんは部屋を出て行った。

部屋を出て行くお母さんが「でも、心配だし……通学は千歌ちゃんと一緒に……」などとぼそぼそ言っていたような気がした。

――でも、私の頭の中はそれどころではなかった。

私は自分の手を見る。

今でも鮮明に思い出せる。

あふれ出す真っ赤な血の温度を感触を……臭いを……。


梨子「……ぅ……っ……」


思い出して気持ち悪くなり、私は咄嗟に口を押さえた。

嘔吐こそしなかったものの酷く気分が悪い……。
29: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:21:27.24 ID:srcZDy/ro

どうしても、あのリアルに感じていたものが夢だったとは思えない。

……いや、夢であってくれるなら、それに越したことは無いんだけれど……。

だけど――私の脳が……あの感触が、質感が、夢であるはずがないと私に突きつけてくるようだった。

――そもそも夢なんだとしたら、どこまでが夢だったのか……


梨子「……そういえば、お母さん……学校は千歌ちゃんと……とか言ってたっけ……」


――ということは今日はそもそも平日らしい。

……とりあえず、日付を確認したい。


梨子「スマホ……」

30: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:21:53.30 ID:srcZDy/ro

のそのそとベッドを抜け出して、机の上に置かれているスマホに手を伸ばした。

スマホの画面を付けると


――9月5日月曜日――


と表示されていた。





    *    *    *


31: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:22:21.89 ID:srcZDy/ro


通学バスに揺られる。


千歌「梨子ちゃん……大丈夫?」

梨子「……うん」


――結局、状況が飲み込めないままだったけど……

このままよっちゃんが死んだと言い続けてたら、それこそ病院にでも連れて行かれるかなと思ったので、おとなしく千歌ちゃんと一緒に通学している。

正直、酷く気分が悪かったし、休んじゃおうかなとも思ったのだけれど……

もし、よっちゃんの安否を確認するなら学校に行くのが一番だと判断して、私は制服に袖を通したのだった。

……ちなみにあの後よっちゃんに電話をしてみたのだけれど、電源が切れていたのか繋がらなかった。

32: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:22:48.39 ID:srcZDy/ro

千歌「ねえ、梨子ちゃん」

梨子「……ん……何?」

千歌「今日、調子悪そうなのって……朝聞こえてきた悲鳴と関係ある?」

梨子「…………」


お母さんもさすがに私の気持ちを考慮してか「怖い夢を見たらしく、娘の調子が悪いから」とは言っていないらしい。

そうなると、まあ……正直よく覚えてないんだけれど、お母さんが血相変えて部屋に入ってくるくらいには叫んでいたみたいだから……

お隣の千歌ちゃんも聞いているというのは別におかしなことではなくって……


千歌「なにかあったの……?」

梨子「……怖い夢を見ただけだよ」

千歌「夢……?……それってどんな夢……?」
33: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:23:14.84 ID:srcZDy/ro

千歌ちゃんは気になる様子で――まあ、悲鳴を聞いてるしね――それを見て、一瞬言おうか悩んだけど……

どっちにしろ、気分も悪く、長く会話を続ける気にもならなかったので


梨子「……ごめん、あんまり話したくないんだ……」


この場はとりあえず、適当に誤魔化すことにした。


千歌「あ、ご、ごめん……。……そうだよね、悲鳴あげるくらい怖い夢だったんだもんね……」

梨子「うぅん……私の方こそごめん……。この年になって怖い夢見たくらいで付き添い登校なんてさせちゃって……」

千歌「それはいいんだけど……」
34: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:23:41.62 ID:srcZDy/ro

千歌ちゃんに気を遣わせてしまって申し訳ないと思いはしたが、正直私の精神はいっぱいいっぱいだった。

それ以降、千歌ちゃんはそわそわとしていたものの、私が口を開く気がなさそうだと思ったのか無言でバスに揺られて二人で通学するのだった、

とにかく……今は早く学校に着いて少しでも情報が欲しかった。





    *    *    *





曜「あ、千歌ちゃん、梨子ちゃん、おっはよーそろ……って梨子ちゃん大丈夫!?」
35: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:24:08.72 ID:srcZDy/ro

元々体調が悪かったのもあったためか、学校に着く頃には酷くバスに酔ってしまい……

教室まで千歌ちゃんに肩を借りて歩いてきた。曜ちゃんの驚きようを見る限り恐らく顔色も相当酷いのだろう。

こんなことならバスの中で少しでも会話していた方が気も紛れて酔わなかったかもしれない。


千歌「梨子ちゃん朝から調子悪くて……通学途中のバスで酔っちゃったみたいで……」

曜「そうなの……?大丈夫……?昨日はあんなに元気だったのに……」

梨子「……昨日……?」


恐らく、このとき私は真っ青な顔色に拍車を掛けるようにすごく怪訝な顔をしていたのだろう。

曜ちゃんが少しびくっとした。


曜「え、えっと……昨日、千歌ちゃんと梨子ちゃんと3人で一緒に遊んだでしょ?」
36: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:24:34.95 ID:srcZDy/ro


――曜ちゃんの言う昨日……それは即ち9月4日の日曜日のことだろう。

確かに先週の日曜日は三人で遊んだ記憶がある。

ただ――ただ、日曜日は私はよっちゃんと一緒に過ごした。せいぜい私はそう記憶している。

その意識のズレがまた一つ如実になって、より一層頭が痛くなる


梨子「うん……そう……だね……」

曜「り、梨子ちゃん、本当に顔真っ青だよ……!!保健室行こう!!」


曜ちゃんに言われ、保健室に行くという発想が頭からすっぽぬけていたなと思う。


梨子「うん……」
37: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:25:01.47 ID:srcZDy/ro

とてもじゃないが、授業を受けられるような状態じゃなかった。

……どちらにしろ授業を受けていたら、情報収集なんか出来ないし。


千歌「保健室行くならチカも付き添うよ!!」

梨子「うぅん……大丈夫、一人でいけるから……」

千歌「で、でも……」

梨子「……大丈夫だからっ」

千歌「わ、わかった……」


気持ち強めに言うと千歌ちゃんは引き下がった。

体調不良の苛立ちもあったんだと思うけど……何より、今はひとまず一人になりたかった。

周りとの感覚のズレがどんどん自分の精神を磨耗させていくのを実感していたので、これ以上誰かと一緒にいるのは不味いと思い、やや強引に付き添いの申し出を断って一人保健室に向かうことにした。

38: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:25:29.18 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





保健室の引き戸を開けると、中に保険医は不在で一個だけベッドの周りのカーテンが閉まっている状態だった。

……うーん、しまったな。……一人になりたかったんだけど、先客がいるようだ。

まあ、別に保健室に来て体調不良で寝てる人と話をする理由もない。

私は静かに戸を閉めて、空いているベッドへと腰掛けた。

僅かに軋むベッドの音。

――そのときだった。カーテンが視界を塞ぐもう一個のベッドにいる生徒がその音に驚いたのか、バサっと……勢い良く布団を跳ね除けたようだった。

……いや、驚いたとしても普通、布団跳ね除けるかな……?
39: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:25:55.72 ID:srcZDy/ro

梨子「ご、ごめんなさい……驚かせるつもりはなかったんだけど……。私も気分が悪くて休んでるだけだから、気にしないで……」


放って置くのもなんだか気が引けたので、軽く声を掛けた。


「――うそ……」


そしたら、カーテン越しに生徒の声が聞こえ――え……この声……?


「こんなこと……今まで一度も……」


そんな呟やきが僅かに聞こえたが、それどころじゃない

私はお構いなしにベッド周りのカーテンを開け放った。

件のベッドの上にいたのは――
40: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:26:21.94 ID:srcZDy/ro

梨子「――よっちゃん……」

善子「……リリー」


探して止まない、津島善子――その人であった。


善子「ど、どうしたの?リリー……体調悪いの?」

梨子「よっちゃん……」

善子「あ、私……?私はただの貧血で……」

梨子「よっちゃん……っ……よっちゃん……っ……!!」

善子「!?」


気付いたら――私はよっちゃんを抱きしめていた。
41: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:26:48.10 ID:srcZDy/ro

善子「ちょ、ちょっと、リリー!?」

梨子「よっちゃん……っ……!!……よっちゃん……よかった……生きてた……っ……生きてたよぉ……っ……」

善子「え……」


私はよっちゃんを抱きしめながらやっと安堵する……。

とてつもなくリアルな夢だったけど……あれはやっぱりただの悪い夢だったんだ……やっと夢から醒めた思いだった。

その証拠に今目の前にいるよっちゃんはしっかりと生きている……よかった……。

――しかし


善子「……リリー、もしかしてあなた……あの日曜日のこと……覚えてるの……?」

梨子「……え……?」


当の本人の言葉によって、事態は思わぬ方向へと舵を切り始めたのだった。

42: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:27:48.84 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





梨子「……ど、どういうこと……?」


よっちゃんは確かに『あの日曜日』を『覚えているか』と尋ねて来た。

私はその言葉で再び思考が混乱し始める。

当のよっちゃんは――


善子「…………」


私の様子を見て、考え込んでいた。
43: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:28:17.44 ID:srcZDy/ro

……たぶん、これ以上この話をするか……しないか……だと思う。


梨子「…………」


私は一旦軽くかぶりを振って……『あの日曜日』とそれまでのことを思い返してみる。

金曜日に見た、よっちゃんのいつもと違う態度。

『今回』や『いつも通り』と言った言葉を何度か漏らしていたこと。

……そして、その後よっちゃんは悟ったように――

…………。

今思い返してみたら……あの日のよっちゃんは……まるで、"そうなる"ことを知っていたようだった。

44: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:28:43.87 ID:srcZDy/ro

梨子「……よっちゃん」

善子「……なに?」

梨子「よっちゃんは……これから、どうなるの……?」

善子「…………。……しまったなぁ……」


よっちゃんは私の目の前で顔に手を当てた。


梨子「……?」

善子「……本当に前回だけのつもりだったのに……」

梨子「……」

善子「……リリー、さっきの言葉聞かなかったことには」

梨子「出来ません」

善子「……ですよねー」
45: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:29:10.59 ID:srcZDy/ro

信じられないけど――信じられないようなことが起こっているようだった。

……信じたくもないのだけど……知ってしまった以上、気付いてしまった以上、放って置くことなんて……

――出来るわけがない


梨子「……よっちゃん……話して……」

善子「……はぁ……」


心底失敗した……という顔をしてから、私の顔を真っ直ぐ見つめて


善子「……次の日曜日――9月11日の午後6時に……」


よっちゃんは


善子「――私は死ぬわ」


――そう言った。
46: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:29:47.56 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





結局、1時限目2時限目は保健室でサボり――まあ、実際さっきまで体調も悪かったし――そこそこ気分もよくなってきたので戻ってきた教室で3時限目の板書を取りながら

私は先ほど保健室でよっちゃんから聞いたことを整理していた。



――――――――
――――――
――――
――



善子「正確にはそのタイミングで死んで――何故か記憶を引き継いだまま、9月5日の朝に戻るの」

梨子「……何故かって……」
47: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:30:15.15 ID:srcZDy/ro

自分のことなのに随分いい加減だなと思う。


善子「……そんな顔してないでよ。何でかはわからないんだから……」

梨子「……何かきっかけとか……そういうのがあったんじゃないの……?」


あまりに超常的過ぎて、何が原因でそうなるのか想像も出来ないけど……


善子「……あー……たぶん、いろいろやってる儀式のうち1個くらいマジモンのがあったのかもしれないわ――あ、もちろんどの儀式も堕天使ヨハネはホンキでやってるからね!?」

梨子「ええ……」


突っ込む気力すら起きないとはこういう状況なのかもしれない……。

でも、たまーによっちゃんの儀式配信とかで見たことはあるけれど、確かに儀式そのものは結構本格的なものが多かった気がする。

超常的なことが起こっている以上、その要因がオカルト的なところから来ているというのには妙な説得力があった。
48: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:30:41.65 ID:srcZDy/ro

善子「……と、言うわけで今流行りのタイムリープ!!死に戻り!!堕天使転生!!を体験してるのよ」


そこは異世界転生じゃないんだ……。


梨子「……なんか、やけに落ち着いてるね」


自分が死ぬのがわかっているというのに随分と楽しげに喋るよっちゃんに今度は違うベクトルで不安になる。


善子「まぁ……ピークは3回目だったかな……。その回はもう、毎日ずっと泣いて過ごしてたから、皆にすごい心配されたわ」

梨子「――ちょ、ちょっと待って!」


――今、さらっととんでもない発言をしたよね!?
49: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:31:08.15 ID:srcZDy/ro

梨子「3回目って……それ以上、よっちゃんはその……死んじゃってるの……?」

善子「……まあ、死ぬのは今回のが5回目ね。……ちょっと今のフレーズかっこよくない?」

梨子「……そ、そんな……」


あの血みどろの惨劇が……5回も……?

私の顔が真っ青になる。それに気付いたのかよっちゃんは


善子「……あ、でも……あそこまで痛い感じの死に方は初めてだったわよ」

梨子「……え?」


これまた予想外の言葉だった。
50: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:31:34.78 ID:srcZDy/ro

善子「死に方は特に決まってないみたいで……それこそ、1回目は石に躓いて転んで頭を打って――たまたま、打ち所が悪くってそのまま……」

梨子「……」

善子「2回目は、まだ状況が把握できてなくて……場所は違うけど、そのときも転んだ拍子に頭を打ったんだったかな」

梨子「……3回目は?」

善子「……溺死」

梨子「……溺死?」

善子「さっき、3回目は泣きながら過ごしてたって言ったじゃない?」

梨子「う、うん……」

善子「皆、心配こそしてくれてたんだけど……いつものかどうか結局判別がつかなかったみたいで……」


いつものって――ああ、ヨハネモードのことか……。
51: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:32:57.18 ID:srcZDy/ro

善子「それで、最終的な部分まで踏み込んで来てくれなくて……ふてくされて、当日何も聞こえない海の中でその瞬間、目瞑ってれば耳も塞げばどうにかなるんじゃないかと思って……」

梨子「……いや、どう考えてもその流れは溺れるでしょ」

善子「……結局、直前で私もそう思って、海の前で踏みとどまったのよ」

梨子「それじゃ、溺れなくない……?」

善子「……ちょうどそのときたまたま突風が吹いてきて、それで海に落ちて、ちょうどよく両脚を攣って、そのまま溺れ死んだわ。」

梨子「…………」


……いや、なんというか……


善子「あ、でもねリリー、これは途中まではリトルデーモン的にはよくあることなのよ」

梨子「……?どういうこと?」

善子「石に躓いて転んだり、急な突風とか何かの拍子で川とか海に落ちたりとか……風で飛んできたものにぶつかったりとかね」
52: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:33:24.21 ID:srcZDy/ro

……4回目は風で飛んできた看板がぶつかってきたんだろうなぁ……


善子「でも、そのあとがリトルデーモン的じゃないのよ」

梨子「リトルデーモン的……?」

善子「恐ろしく打ち所が悪かったり、タイミング悪く脚を攣ったり……きっかけ自体はちょっとした不幸なのよ、でもその不幸が最悪の結果を生んでるのがいつもと違うところなの」

梨子「……それって、きっかけそのものを注意すればいいんじゃないの?」

善子「だと思うでしょ?だから、私も4回目以降は危ないところに近付かないようになったし、歩くときも足元をよく確認しながら歩くようになったわ。――これって悪魔的成長じゃないかしら……」

梨子「う、うん……そうかもね……」

善子「……でも、突然の強風で飛んできた店の看板とか避けられなくない?」


……なるほど。
53: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:34:13.89 ID:srcZDy/ro

梨子「気をつけていても、きっかけの大小が変わっただけで……その……死んじゃうことには変わりなかったってことだね……」

善子「そういうことね。……まあ、まさか突然操縦不能になった自動車が意味不明な挙動で突っ込んでくるとまでは思わなかったけど。」


すごいとんでもなことを言っているけれど……。あの自動車の挙動は確かにおかしかったなと思う。


梨子「何か……大きな何かに殺されて、また戻されてを繰り返してるってこと……だよね」

善子「そうね。」


かなり、理不尽な話ではあるけれど……。不用意に儀式をやったことが原因だと言われるとなんとも言いがたい。


善子「でも……いろいろ試してるうちに変わったことが一つあるわ」

梨子「……?……ああ、私か……」

善子「うん。今回は何故かリリーも前回の記憶がある。」
54: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:34:40.88 ID:srcZDy/ro

なるほど……。何もかもが悪転し続けてるわけじゃないから、少し余裕があるように見えたんだ……。


善子「ただ、その……」


よっちゃんがここで言葉を詰まらせる。


梨子「……どうしたの?」

善子「ごめんね、リリー」


突然謝られた。


善子「すごい、怖い思い……させたよね……。今日、体調悪いのも……そのせいよね……。」

梨子「……」
55: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:35:07.72 ID:srcZDy/ro

怖い思い……か……。確かに……それはそうだけど……

こんなときでも、そんな言葉が出てくるなんて……よっちゃんは優しすぎだよ……。


善子「ホントにごめん……」

梨子「よっちゃん」

善子「な、なに……?」

梨子「……ずっとよっちゃんは一人で怖い思いをしてたんでしょ?」

善子「……ま、まあ……堕天使的には死はウェルカム的なところがあるし……?……そこまででも――」

梨子「……ここからは私も一緒に考えるから……何が出来るのかわからないけど……一人で思い悩むよりいいと思う」

善子「リ、リリー……うん」



――
――――
――――――
――――――――
56: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:35:34.70 ID:srcZDy/ro


巻き戻りは約1週間――5回目と言うことは単純計算で約35日……。

あの場でこそ、軽く言っていたけれど――もしかしたら、私が思いつめないように努めて軽い感じで話していたのかもしれない――死の恐怖に脅えながら1ヶ月以上一人で過ごすなんて……考えただけでもぞっとする。


「――桜内さん。今開いてる教科書のここの問題答えられますか?」


『今回だけ』……あの言葉はある種のヤケだったんだろうな。


千歌「り、梨子ちゃーん……」


どうせ、また一人でループする。なら1回くらいむちゃくちゃな我侭を言ってもいいだろうと――


先生「桜内さん?」

梨子「え?」
57: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:36:01.71 ID:srcZDy/ro

気付いたら、先生に指されていた。

考え事をしていたせいで全く気付いていなかった。


梨子「え、えーと……」

千歌「せ、せんせー!!今日梨子ちゃん体調悪いんで、許してあげて!!」

先生「あら、そう……なら高海さん代わりに答えて?」

千歌「え、ええーとー……わかりませんっ!!」

先生「まあ、わかってはいたけど……もうちょっと、考えてくれると先生嬉しいんだけどなぁ……」


クラスが笑いに包まれる。


先生「えーと……ここの問題は――」
58: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:36:28.14 ID:srcZDy/ro

うまく場が流れたのを確認して、ノートの端をちぎってメモを書いて後ろに渡す。


『ごめん、千歌ちゃん(゜゜;)』


すぐに後ろからメモが渡される。


『私はだいじょぶー\(^^)/ リコちゃんも無理しないでねっ』


……ひとまずは授業を真面目に受けようかな。

異常事態が発生しているのは事実だけど、変に周りに迷惑をかけるとそれはそれであとあと動きづらくなるかもしれないし……





    *    *    *
59: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:36:54.41 ID:srcZDy/ro

午前の授業が終わり、お昼休みになると千歌ちゃんが話しかけてきた。


千歌「梨子ちゃん大丈夫?」

梨子「うん、まだちょっとぼーっとしちゃってて……さっきはごめんね千歌ちゃん」

千歌「うぅん、無理しないでね」

梨子「うん、ありがと」


とりあえず、今はよっちゃんのところに行こう。

聞きたいこともまだあるし……

ひとまずよっちゃんのところにいくための準備をしていると――


曜「千歌ちゃん?どうかしたの?」

千歌「え、あ、いやえーと……」
60: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:37:20.99 ID:srcZDy/ro

後ろの席で曜ちゃんと千歌ちゃんが話してるのに気付き、私は再び振り返る。

千歌ちゃんと目が合った。


梨子「……?えっと……?」

曜「なんか、千歌ちゃんそわそわしてたから……」

千歌「あ、いやえっとね……。……週末の日曜日、梨子ちゃんと一緒に出かけたかったんだけど……体調悪そうだから誘おうかどうか迷ってて……」


……思い返してみると、先週――いや、ややこしいな……前回もこの日に千歌ちゃんと日曜日に出かける約束をしたことを思い出す。

場所は通学のバスだったけれど……

なるほど……些細な状況は変わっても、なんとなくのイベントは恙無く発生するということみたいだ。

いよいよもってタイムリープをしていることを自覚する。
61: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:37:47.36 ID:srcZDy/ro

梨子「あ、えっと……考えておくね……」


そう返したけれど、今週の日曜は確実によっちゃんと過ごすから、あとでどうにか断ろうと思う。


曜「あれ?梨子ちゃん、お昼食べないの?」

梨子「あ、うん……あんま食欲ないから……保健室行こうかなって」

千歌「一人でダイジョブ……?」

梨子「うん……ちょっと横になるだけだから」

曜「私たちといると騒がしいから疲れちゃうかもだしね。ゆっくり休んでね」

千歌「そ、そんなことない……と思うけど……。……あんまり無理しないでね」

梨子「うん、ありがと。千歌ちゃん、曜ちゃん。」

62: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:38:14.01 ID:srcZDy/ro

二人にお礼を言って私は保健室へと向かった。





    *    *    *





善子「……きたわね」


よっちゃんは朝同様、保健室で待っていた。


梨子「この学校、養護教諭っていないの……?」
63: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:38:40.28 ID:srcZDy/ro

朝から昼まで保健室に先生がいないのは大丈夫なのだろうか。


善子「途中何度か来てたけど……お昼はちょっと、一人になりたいなってお願いしたら、席を外してくれたわ」

梨子「……あ、もしかして午前中の授業……」

善子「ええ、全部サボったわ」

梨子「…………」

善子「だって、もう全部内容知ってるし」


まあ、5回も繰り返してたら内容も覚えるか。……よっちゃん、数学の成績はともかくとして、記憶力は結構いいし。――出席日数的にまずい気はしなくもないけど。


梨子「それにしても、保険の先生ってそう言えば席外してくれるもんなんだね……?」

善子「まあ、顔馴染み?みたいなもんだし。……あ、何かあった生徒に応急処置くらい出来るしね。まあ、言うなれば保健室の主よ」
64: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:39:07.00 ID:srcZDy/ro

……保健室の主……?……つまり保健室の常連ってことかな……まるで、クラスに馴染めない生徒みたい――そういえば、よっちゃん1学期の頭は不登校だったんだっけ……。


善子「ちょ、ちょっと!可哀想な人を見る目で見ないでよ!!ただ、些細な怪我が多くて、保健室で手当することが多いだけだから!!引きこもりの心のケアとかで保健室通いしてる生徒とかじゃないから!?」

梨子「ああ……そっちか。よかった。」

善子「踏み込んだ話は学校終わってからの方がいいかもだけど……どっちにしろ、人があんまり来ない場所の方がいいでしょ?……この学校生徒数少ないし、昼休みに保健室に来る人もそんなにいないから」


確かに学校内だとどこかしら人の目がある。……別に聞かれて困るわけでもないんだけど、たぶん頭がおかしい人だと思われかねないし。


善子「……まあ、とりあえず、放課後の練習は休むってことをルビィづてでダイヤに伝えてもらったわ」

梨子「そっか……。じゃあ、私も今日の練習は休もうかな。その方が早く動けるだろうし……」


体調不良で通してるから、言い訳も効きそうだしね。
65: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:39:33.65 ID:srcZDy/ro

善子「そうしてくれるなら、助かる……かな。……あ、そうだ」

梨子「?」

善子「日曜日、千歌と遊ぶ約束してるんでしょ?……それ、断っておいて欲しいんだけど……」


……そっか、いつもこのタイミングにはもう千歌ちゃんと約束してるから……


梨子「……えっと……まだ約束はしてないよ。誘われはしたけど……」

善子「え、そうなの?」

梨子「うん。前回――というか、いつも……なのかな?……通学中のバスの中で誘われてたんだけど、今朝はそれどころじゃなかったから……」

善子「……?」


よっちゃんは何故か私の言葉を聞いて不思議そうな顔をしていた。
66: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:40:00.72 ID:srcZDy/ro

梨子「どうかしたの……?」

善子「あ、ううん……。なんでもない。もうすでに空けてくれてるなら問題なしね」


……?なんだろ……。……まあ、いっか。


梨子「とりあえず、放課後になったらどうするつもりなの?」

善子「そうね……。……とりあえず、カフェとかで作戦会議……がいいかな?」

梨子「外でするの?」

善子「家だと……まあ、その……親に心配される。……たぶん……リリーも同じような感じじゃないかなーって思うんだけど」

梨子「……」


……確かに。
67: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:40:27.76 ID:srcZDy/ro

善子「……死に戻りの瞬間だけは慣れなくって。戻ってきた朝は……どうしてもね。」

梨子「……そりゃそうだよ」


見てただけだった私でさえもあれだけ取り乱したのだ。何度も経験しているとは言え、死を経験した直後に冷静でいられるわけがない……たぶん。


善子「カフェとかなら、知り合いがいないかだけ注意すれば、普通の人はアニメの話かなーくらいに思うでしょ」

梨子「ん……まあ、そうなのかな……?」


……まあ、確かに大真面目にタイムリープしているなんてことを聞いてもそれが本当だと思う人はいない気はする。


善子「じゃあ、続きは放課後ね」

梨子「うん」


程なくして、予鈴と共に私は教室に戻った。
68: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:40:56.30 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





千歌「梨子ちゃん、大丈夫?」

梨子「あ、うん……一応、授業は受けられるけど……放課後の練習は休もうかなって」

曜「それがいいよ。無理しても、いいことないからね」

梨子「うん……」


状況が状況とは言え嘘を吐くと多少、良心が痛む……。

まあ、それこそ異常事態も異常事態なのだから授業はサボってよっちゃんと作戦会議に時間を回してしまってもいいのだけれど……。

千歌ちゃんと曜ちゃん……特に千歌ちゃんにはあまり心配を掛けすぎると、お母さんに連絡が行ってしまうだろうし

今後一週間はうまく理由をつけて時間を作らないといけないことを考えると、必要以上に日常生活を曲げるのはよくないと思った。
69: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:41:23.11 ID:srcZDy/ro

千歌「家まで送っていかなくて大丈夫……?」


すでに千歌ちゃんには結構な心配を掛けてしまっているし……。


梨子「あはは、千歌ちゃんも練習あるでしょ?普通に帰るくらい大丈夫だから……」

千歌「そっか……」


……まあ、家には帰らないんだけれど……うぅ……良心が痛い……

顔を合わせてる時間が長いほど、嘘を吐かなくちゃいけないというのは精神衛生上よくないと思い知らされる。

早く放課後にならないかな……。





    *    *    *
70: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:41:50.28 ID:srcZDy/ro


善子「……リリー、随分お疲れみたいね」

梨子「嘘吐くのって、こんなに体力がいることだと思わなかった……」


放課後、『やば珈琲』の奥の方の席で私はうな垂れる。


善子「……なんか、申し訳ないわ……」

梨子「まあ……ある程度はしょうがないし……。それより、話始めよ?」


Aqoursの練習は大体終バスの時間くらいまでだと言うことを考えると終バスが終わる前には私も家に帰っていた方がいい。

そうなると、思ったより時間はない。


善子「とは言っても……自分のことながら、どうしたもんかしら……」

梨子「……とりあえず、状況の整理をしよっか」
71: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:42:17.94 ID:srcZDy/ro

私はノートとペンを取り出して、状況を箇条書きにする。


『・9月11日の日曜日。午後6時ちょうどに死んで、9月5日の月曜日の朝に戻る。
 ・死因は周回によって、変わるらしい。
 ・このループの原因はなんかしらの儀式によるものと推測される。
 ・なんらかの条件で一緒にいる人も一緒に記憶がタイムリープする。』


善子「……なんか、随分ふわふわしてるわね」

梨子「自分で書いててもそう思ったけど……でも、実際わかってることが少ないから……。他に何か気になることとかってある……?」

善子「気になること……ねぇ……」

梨子「それこそ、今までの4回と……前回で違ったこととか」

善子「それこそ、リリーがいたことかしら」

梨子「……うん、そうだね」
72: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:42:44.91 ID:srcZDy/ro

善子「……あ、そういえば……」

梨子「そういえば……?」

善子「死に戻りの直前に誰か知り合いが周りにいたこと自体が初めてだったかもしれないわ」

梨子「じゃあ、死に戻り直前に近くにいる知人……ってことかな……?」

善子「そうね」


私は4つ目の項目に(仮)と前置いて『近くにいる知人限定?』と書き足す。


梨子「こんな感じで起こってること一つ一つに解決策を考えていくのがいいのかな……」


こういうことはダイヤさんや鞠莉さんなら得意そうだけど……

言っても信じてもらえないだろうし、私とよっちゃんでどうにかするしかない。
73: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:43:11.81 ID:srcZDy/ro

善子「じゃあ、まず1つ目?でも、これってただの状況確認だし……」

梨子「確かに……じゃあ2つ目……いや、これも状況確認かな」

善子「……いや、でもこっちから能動的に状況を変えられるのはここじゃないかしら」

梨子「確かに……」


……件の時間には何故か周りから人気がなくなるようだけれど……自分から呼び出した人間だったり、その時間まで一緒にいた人間まで姿を消すわけではないらしい。


善子「じゃあ、死に方をいろいろ調節してみる……?」

梨子「死に方の調節って……死なない方向で考えない?」

善子「でも、死なないようにするとするほど凄惨な死に方になってる気がするんだけど」

梨子「うーん……」
74: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:43:39.27 ID:srcZDy/ro

……まあ、これまでの傾向からしたらそうなのかもしれない

2つ目の項目に『死を避けようとすればするほど、凄惨な死に方になる。』と書き足す。


善子「字面で見ると理不尽極まりないわね……」

梨子「そ、そうだね……」

善子「あとは3つ目……儀式の話ね」


よっちゃんが眉を顰める。


梨子「どの儀式かさえわかれば……もしかしたら、解決方法があるかも……?」

善子「一応、配信上でやったやつなら……タイムシフトとかあるけど……」


ということは配信外でやってたのもあるってことかな……
75: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:44:05.88 ID:srcZDy/ro

梨子「とりあえず、思い出せるものは思い出してみて」

善子「了解」


さて……一通り問題に目を通したけれど……。


善子「なんかどの解決策も具体性に欠けるわね……」

梨子「そうだね……」


とりあえず、具体的に出来そうなこと……


梨子「うーん……それこそ、死ななければいいんじゃないかな……」

善子「もっと堅牢に死から身を守れってこと?その分痛いのは嫌なんだけど……」
76: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:44:32.50 ID:srcZDy/ro

梨子「それはそうかもしれないけど……。ただ、黙って待ってるわけにもいかないでしょ……?」

善子「まあ……それはそうね」

梨子「あとは……儀式について調べるくらいしか出来ることはないかな……」

善子「とりあえず、私は自分のやった儀式を思い出せばいいのね」

梨子「うん。私は図書館とかでそういう類の儀式とか……調べてみるね」


……いまいち、掴みどころのないまま、作戦会議が終わる。

……次のXデーまでには何かしら、わかるといいけど……。





    *    *    *

77: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:44:59.49 ID:srcZDy/ro


9月6日、火曜日。

お昼休みに私は図書室にやってきた。


梨子「図書館に行くって言っても……平日は終バスの時間くらいまでは練習があるし……土日しかいけるタイミングないもんね……」


蔵書量で言えば、学校の図書室では正直心許ない……。

でも、何もしないよりはマシかなと思う。


花丸「あれ?梨子ちゃん?」

梨子「あ、花丸ちゃん」


図書室の受付には花丸ちゃんが座って読書をしていた。
78: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:45:26.20 ID:srcZDy/ro

花丸「お昼の図書室にお客さんとは珍しいずら」

梨子「花丸ちゃん……いつもお昼は図書室にいるの……?」

花丸「毎日ではないけど……結構頻繁に来てるかな。……オラには図書委員の仕事もあるし。」


そういう花丸ちゃん。


花丸「梨子ちゃんは図書室に何か本でも借りにきたずら?」

梨子「ああうん……えっと……」


一応そのつもりで来たのだけれど……なんて、答えるか迷う。

ワードとしては『儀式』とか『呪い』とか、そういう類のもので探そうと思っていたのだけれど

あんまり、オカルティックなワードを並べると訝しげに思われるかもしれない。

……ええっと……。……あ、そうだ。
79: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:45:56.38 ID:srcZDy/ro

梨子「タイムリープモノの本が読みたくって……何かオススメとかない?」

花丸「SFずらか……。それなら……早川の文庫かなぁ……」


受付の席を立って、とてとてと棚の方へ歩いていく。

ぱっとあれかなというのが出てくる辺りは流石、花丸ちゃんだなぁ……。


花丸「タイムリープって言っても、いろいろタイプがあるけど……どういうのが好みずら?」

梨子「どうって言われると……うーん……えっと、最近流行りの死に戻りとか……?」

花丸「……んーそれだとティーンズ文庫になるのかな……」

梨子「てぃーんず文庫……?」


微妙に聞きなれない単語が出てくる。
80: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:46:23.93 ID:srcZDy/ro

花丸「あ、ライトノベルって言うほうがいいのかな?」

梨子「ああ、なるほど」

花丸「うーん、でもライトノベルだとちょっと図書室には置いてないからなぁ……」

梨子「そ、そうだよね……」

花丸「梨子ちゃんの力には成れなさそうで申し訳ないずら……」

梨子「いやそんな、気にしないで!」


……まあ、それこそ呪いや儀式と言ったサブカル寄りの本がそれほどあるとは思えなかったし、それなら文学の世界からヒントを得る方が現状の検索範囲だといいかなと思ったんだけど……。


梨子「でも、意外だな。花丸ちゃんSFも読むんだね。」

花丸「SFも好きずら。というか、本ならなんでもかなぁ」

梨子「じゃあ、ライトノベルも読むの?」

花丸「うん。ライトノベルも結構読むよ……ただ、マルは文字がぎっしり詰まった純文学の方が好みだけど……」
81: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:47:00.01 ID:srcZDy/ro

……ふと、どうせ物語からヒントを得るなら物語をたくさん読んでる人から聞いた方がいいのではと思う。


梨子「ねえ、花丸ちゃん」

花丸「ずら?」

梨子「タイムリープにもタイプがあるって言ったけど……どういうタイプのものがあるの?」

花丸「えーと……戻るモノ、戻る条件、戻る期間とかで括りがわかれるとマルは勝手に思ってるんだけど……」

梨子「……例えば?」

花丸「まず『戻るモノ』……これは一番多いのは自分の記憶とかかな。それを引き継いで戻る。……肉体そのものが戻ったり、脳の状態だけ戻ったり、自分以外の人や自分が触っていたモノ、身に付けていたモノ、舞台全体が戻る場合もあるずら。逆に記憶すら戻らないってものもあるけど。」


この中だと一番近いのは自分の記憶が戻るって言う一番多いタイプ……かな?……あ、でも私の記憶も戻ってるから微妙に違うな……。
82: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:47:31.10 ID:srcZDy/ro

梨子「戻る条件って言うのは?」

花丸「『戻る条件』……これはタイムリープのトリガーのことずら。最近、流行りなのは死に戻り……死ぬことがトリガーになってるものだね。あとは能動的に戻る能力があったり……ただ、基本的にはいつでもどこでも使えるってことはほぼないかな。ほぼ確実に制約があるずら。」

梨子「制約?」

花丸「これは残りの『戻る期間』とも関係してくるんだけど……自分で時間を指定できなかったり、指定できても自分が一度決めた場所にしか戻れなかったり……。」

梨子「……なるほど」


こっちの括りだと、よっちゃんの場合はトリガーは死……で期間はそのタイミングから先週の月曜日の朝にしか戻れないってところかな。


花丸「ただ、ほぼ全てのタイムリープモノに共通することがあるずら」

梨子「……というと?」

花丸「制約や条件を知って、その上で繰り返していくことによって、目の前の問題を打開することに物語の軸があるずら」

梨子「問題の打開……」

花丸「強い敵を倒すとか、誰かを死なせないとか――そういう、個人的な理由から……歴史や世界を変える――みたいな大きな理由まで……いろいろあるけどね。……その上で基本的には、何か大いなる存在にその命を背負わされたりして巻き込まれるパターンが多いけど。」
83: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:47:57.74 ID:srcZDy/ro

なるほど……。


梨子「あのさ、参考までに聞きたいんだけど……」

花丸「なんずら?」

梨子「たまたま、自分のやったことでタイムリープに巻き込まれちゃって、そこから脱出しようとするってパターンってある?」

花丸「……」


花丸ちゃんは少し難しそうな顔をして


花丸「……普通、自分の力でタイムリープに陥ることが出来るなら、脱出することも自分で出来ると思うけど……」


と言った。
84: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:48:24.98 ID:srcZDy/ro

梨子「た、確かに……」

花丸「自分でやったことって……うーん、例えば神様を怒らせたとか……?」

梨子「あ、そうそう。そんな感じ」


たぶん、今花丸ちゃんが挙げた例がよっちゃんのパターンには近いと思った。


花丸「でも、そういう話の場合、因果応報を教訓にしてるものが多そうだね。話の軸というよりは話のオチとして、繰り返す世界に閉じ込められちゃうみたいな……」

梨子「そ、そっか……」


それだと、よっちゃんはすでにオチの中にいるということだろうか……。


花丸「もしそういう話だとして、ループの世界から脱出することが目的だったら……神様に許してもらうっていうのが目的になるのかな……?」

梨子「許してもらう……神様に会えるのかな?」

花丸「それは話によると思うけど……例えば、仏教だったらお地蔵さんとか?人間が神様に触れられないように、神様も簡単には人間とコミュニケーションが取れないから、何かしら媒介が用意されてると思うずら」
85: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:48:51.68 ID:srcZDy/ro

媒介……それが儀式なのかな……?


梨子「……なるほど」

花丸「ねえ、梨子ちゃん」

梨子「ん、何……?」

花丸「話聞いてて思ったんだけど……もしかして梨子ちゃん――」

梨子「……も、もしかして……?」


花丸ちゃんの言葉に少し身構える。……タイムリープの真っ只中にいることがバレた……?……いや、バレてもいいんだけど……


花丸「――小説でも書こうと思ってるずら!?」

梨子「……え?」

花丸「こんなに熱心にお話の作りのこと聞くなんて、そういうことなのかなって思って!」
86: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:49:18.83 ID:srcZDy/ro

花丸ちゃんが目をキラキラさせて聞いてくる。


梨子「あ、いや、えーと……そ、そんな感じかな……?」

花丸「ホントずら!?是非是非、完成したらオラにも読ませて欲しいずら!」

梨子「う、うん――出来たらね……」


――良心が痛い……。


花丸「じゃあじゃあ、せっかくだし小説を書くに当たって、是非マルからオススメしたい選書1000冊を……」

梨子「1000!?あ、あーそろそろお昼休み終わっちゃうね!?……そ、それは今度の機会に……!!」

花丸「え、あ、そんなー!!」
87: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:49:45.76 ID:srcZDy/ro

私は興奮気味の花丸ちゃんを尻目に図書室から脱出を図る。


花丸「出来たら絶対読ませてねー!!」


――ごめんね、花丸ちゃん。……たぶん、その機会はなさそう。

背中越しに掛けられる花丸ちゃんの声に心の中で謝罪しながら、私は図書室を後にした。





    *    *    *



88: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:50:53.54 ID:srcZDy/ro


9月7日、水曜日。お昼休み、保健室にて――


梨子「……ということで神様に謝る……のがいいと思う」


花丸ちゃんから聞いたことをざっくりと説明して、出した結論をよっちゃんに伝える


善子「……フォーリンエンジェル、堕天使ヨハネが神に頭を下げるなんて……」

梨子「そんなこと言ってる場合!?」

善子「わわっ!?」


思わず、よっちゃんの肩を掴んで前後に揺する。
89: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:51:20.58 ID:srcZDy/ro

善子「タ、タンマ……!!私が悪かったから……!!」

梨子「……もう」

善子「でも、それもあくまで物語の話でしょ?神様が原因かはまだわからないじゃない。現実は小説よりも奇なりって言うじゃない。」


……全くだ。生きてる間に自分がタイムリープするなんて思いもしなかったよ……


梨子「でも、神様ないし……もっと超常的って言うのかな?……そういうことじゃないとしたら、どうすればこうなるの?」

善子「大いなる力――そう、それは罪深いほどの愛……」

梨子「……帰っていい?」

善子「ごめん、ごめんって!!……でも、仮に原因が神なんだとしても、神がどういう理由で死に戻りさせてるかがわからないじゃない。それこそ、謝ってどうこうなる問題じゃないかもしれないし……」

梨子「それは……まあ、そうかもしれないけど……」

善子「そもそもどうやって謝るの?」

梨子「うん、だからよっちゃんに聞きたいのはずばりそこなんだけど」

善子「ん……?どゆこと……?」
90: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:51:47.09 ID:srcZDy/ro

神と人の媒介――儀式について


梨子「どの儀式が原因か……わかった?」

善子「……ああ、そういうことか……」


よっちゃんが調べていた儀式についてわかったことを聞く。


善子「……まあ、正直どれかって言われてもって感じね……怪しいのは不老不死の黒魔術とか、時間逆行のまじないとか……そういうものがこの状況を引き起こす原因には近いかなとは思うんだけど……」

梨子「うん」

善子「リリーの言う神様と話すみたいな儀式は余り身に覚えがないわね……」

梨子「そっか……」

善子「神頼みくらいは私もすることはあるけどね……。それこそ、直接神様とコンタクトを取るってなると狐狗狸さんとかが有名なんじゃないかしら……最近はやった覚えがないけど」
91: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:52:14.68 ID:srcZDy/ro

昔ならあるんだ……いや、よっちゃんならあるか……。


梨子「じゃあ、偶然罰当たりなことをしちゃったとか……?……よっちゃんなら日常的にやってそう……」

善子「リリーは私のことなんだと思ってるのよ?……まあ、仮に神がいるんだとしたら、この美しき堕天使ヨハネが現世に降臨していること自体が……」

梨子「…………。」

善子「……えっと、まあ……相互間での取決めじゃなくって一方的に罰を食らってるわけじゃない?」

梨子「……?……どういうこと?」

善子「もし、神様を怒らせたのが原因だったんだとしても、神側がただ怒ってるだけでこっちからコンタクトを取る方法がないんじゃないかってこと」

梨子「……うーん、花丸ちゃんの話だと……神様側からもそこまで簡単に人間に一方的な干渉はできないって話だったけど……」

善子「ホントかしら……?……ギリシャ神話だと、ゼウスとかヘラとか結構人間に好き勝手干渉してきてた気がするけど?」
92: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:52:40.79 ID:srcZDy/ro

……ギリシャ神話を例に出されると確かにと思ってしまう。……でも、結局のところは人間の姿になってコミュニケーションは取ってた気がするけど……


善子「どちらにしろ、大いなるものがあるんだとしても、それとコンタクトを取る方法を見つけないことにはどうしようもないってことはわかったわ。」

梨子「そうだね……」


……となると、次大きく動けるのは土曜に図書館に行くことだろう……


善子「なんかごめん、リリー……途方もないことにつき合わせて……」

梨子「もう、そんなに何度も謝らないで?逆の立場だったら、きっとよっちゃんもこうしてくれたと思うから……ね?」

善子「……。……そうね……ありがとう……」


――程なくして、ウェンストミンスターの鐘の音がお昼休みの終わりを告げたのだった。

93: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:56:26.45 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





さて、案の定進展がないまま、9月9日金曜日の放課後になった。

練習に行こうとカバンに教科書をしまっているところで――


千歌「梨子ちゃん」


――千歌ちゃんが声を掛けてきた


梨子「千歌ちゃん?なに?」

千歌「えっと……日曜日のことなんだけど……」

梨子「……あ」
94: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:56:53.58 ID:srcZDy/ro

完全に返事するのを忘れていた。


梨子「えっと……ごめん、その日はちょっと予定が入っちゃってて……」

千歌「えぇ……そっかぁ……」


千歌ちゃんがシュンとする。


梨子「あ、えっと、ご、ごめん……返事するのが遅くなって……」

千歌「うぅん、チカも突然だったからダイジョブ。じゃーその日はよーちゃんと遊ぼうかなぁ……よーちゃーん」

曜「ん、何ー?」

千歌「日曜日なんだけどね~――」
95: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:57:20.48 ID:srcZDy/ro

千歌ちゃんはとててと曜ちゃんのところへ行ってしまった。

どうやら、遊び相手が欲しかっただけみたいだ。

大事な用事とかじゃなくてよかった……

まあ、前回の日曜日に断っても、普通に許してくれたので重要案件でないことはなんとなくわかってはいたけれど。

――どっちにしろ、今は断らざるを得ないしね……。

そのとき、スカートのポケットの中でスマホが震える。

LINEだ。……相手はよっちゃんからだった。


堕天使ヨハネ:そういえば、今日から親が出張で日曜まで誰もいないんだけど……
       なんならリリー今日、うちに泊まれない?


なるほど、それなら都合がいい
96: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 07:57:46.68 ID:srcZDy/ro

リコ:たぶん、大丈夫だと思う


私は簡潔に返事を送信して、練習へ向かった。





    *    *    *





その日の晩

よっちゃんの部屋で私は分厚い、ハードカバーの本を端から斜め読みしていた。


善子「それなら、私もチェックしたわよ?」
97: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:00:31.66 ID:srcZDy/ro

紅茶を淹れていたよっちゃんが、部屋に戻ってくる。


梨子「もしかしたら、何か重要なことを見落としてるかもしれないし……」

善子「……まあ、気持ちはありがたいけど……うちにある本は擦り切れるほど読んでるしなぁ……」


実際、何冊か手にとってみたけれど、所謂サブカル系に属するハードカバー本は確かにカバーがヨレたりしていた。

他の本棚にある漫画本とかは綺麗に保管されているんだけど……。

それこそ、よっちゃんにとって、この手の本は実用書なのだろう。


善子「とりあえず……明日は図書館の会館前には家を出るから……。……たぶんうちにあるもの読むよりいいと思うし。」

梨子「うん……。適当なところで休むよ……」

善子「……そう」

梨子「よっちゃんこそ……寝坊しないでよ?」
98: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:01:09.49 ID:srcZDy/ro

よっちゃんは夜型のイメージが強いし、朝ちゃんと起きてくれるのか不安である。


善子「どっちかというとリリーの方が朝弱いと思うわよ?……私は夜更かしが多いだけで朝起きるのが苦手なわけじゃないし。」

梨子「そう……?……じゃあ、私が起きられなかったら起こしてね」

善子「はいはいりょうかーい」


そう言って、私は本を読み進めていく。

……まあ、しかし、よっちゃんの言うとおり特に重要な情報は見つけられなかった。

そのとき……後ろから何かが私を包み込んできた。


梨子「……よっちゃん?」
99: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:01:36.04 ID:srcZDy/ro

――まあ、よっちゃんしかいないけどね。

よっちゃんが私を後ろから抱きしめていた。


梨子「……どうしたの……?」


よっちゃんの手に自分の手を重ねる。


善子「…………」


よっちゃんは何も言わなかったが――震えていた。


梨子「…………」
100: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:02:02.27 ID:srcZDy/ro

そこで今日のお泊り会の真意に気付く。どうして、よっちゃんが泊まって欲しいと言ったのか。


梨子「……ごめん、よっちゃん……」

善子「……うぅん……」

梨子「……今日は一緒に寝よっか」

善子「…………うん」


……よっちゃんは2日後にはまた死ぬかもしれないのだ。

誰もいない家で……死を待つ恐怖……。

それを5回も繰り返して……やっと、話を理解してくれる人間が現れたのだ。

一緒に情報収集がしたかったんじゃなくて……単純に寂しかったんだ。

……私はよっちゃんの震えが止まるまで……ただ、手を握っていた。
101: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:02:33.09 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





9月10日、土曜日。

図書館で二人で調べ物をしたが……


善子「ぜんっぜん、ダメそうね……」

梨子「そうだね……」


午前中が終わった時点で成果はほぼ無しだった。

それこそ、神降ろしなんかも調べたけど……

所謂大いなるモノの正体がわからない状態でいい加減にコンタクトを取っても、状況が悪化する可能性もある――神が降ろせるとも限らないし……。
102: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:03:01.31 ID:srcZDy/ro

梨子「やっぱり、どの儀式がトリガーなのかがわからないとどうしようもないかもね……」

善子「……まあ、そうなるわよね」


考えてみればよっちゃんがこの5回の間に一回も儀式について洗いなおしてないわけもなく……


梨子「このアプローチだと、ここが限界かもね……」

善子「……となると、死なない……側のこと考えないといけない感じかしら」

梨子「……そうなるね」


よっちゃんは少しうーっと唸ってから


善子「……まあ、しょうがないか」
103: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:03:27.50 ID:srcZDy/ro

そう言う。

……まあ、この方法は失敗すればより痛い思いをするのはよっちゃんだ。

私としても、出来れば原因を取り除く側でどうにかしたいけど……

それが見つかりそうもない以上、発生する物理的問題の対処をするしかない。

……そこでふと思い出す。


梨子「ねえ、よっちゃん」

善子「何?」

梨子「4回目のときって……どこにいたの?」

善子「4回目?看板のとき?」

梨子「うん」

善子「普通に沼津の商店街にいたけど……」

梨子「……」

善子「……?それがどうかしたの……?」
104: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:03:53.88 ID:srcZDy/ro

つまり1回目、2回目はそこらへんで転んだと言っていた。

3回目は溺れてるから海沿い、4回目が商店街で5回目が私と一緒にいた沼津駅前……ということは


梨子「よっちゃん……当日自室に閉じこもるってことは試してないんだね」

善子「……言われてみれば……」

梨子「一番最初に試しそうなもんだけど……」

善子「いや、なんていうか……家に閉じこもって陰鬱としてるのと本当に気分が落ち込むかなーって……思ってた気がする。」


「まあ、結果落ち込むどころか死んでるけど――」という笑えない冗談を添えて、よっちゃんはため息を吐いた。


梨子「とりあえず、当日――明日はよっちゃんの家で過ごそう。私ももう一泊してくから」

善子「……わかったわ」
105: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:04:20.41 ID:srcZDy/ro

その後、二人で調べ物を続けたが成果が出ることはなかった。

強いて言うなら、私が少しオカルトに詳しくなったくらいかな……。





    *    *    *





9月11日、日曜日。2回目である。


梨子「……当日だね……」

善子「とは言っても……午後6時まで随分時間があるわね。」

梨子「……まあ、そうだけど」

善子「……ゲームでもやる?」

梨子「えぇ……」
106: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:07:08.85 ID:srcZDy/ro

まだ、午前中とは言え、今日死ぬかもしれない人が言う言葉とは思えなかった。


梨子「……何やるの?」

善子「マリオ」

梨子「え……一人用ゲームやるの?」

善子「いやいや、最近のマリオは複数人で出来るのよ」

梨子「……へー」


慣れた手つきでぽちぽちとゲームを起動していく。

私はあまりゲームはやらない。千歌ちゃんの家ではたまーにやることがある程度だ
107: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:07:52.39 ID:srcZDy/ro

善子「そこでダッシュジャンプして……」

梨子「……え、ジャンプしながら……えっと、ダッシュってどのボタンだっけ……あ、落ちちゃった」

善子「……えー……リリーゲーム下手ね……」

梨子「しょうがないじゃん……あんまりゲームやらないし……」

善子「……そう……」

梨子「……大体なんでマリオなの?もっと、アクション要素の少ないゲームの方が……」

善子「ん……なんていうか、今はマリオが羨ましいなって思ったのよ」

梨子「え……?」


やられてから復活してシャボン玉に包まれたままふわふわとマリオの近くに飛んでいく私のプレイキャラを見てよっちゃんがぼやく
108: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:08:18.54 ID:srcZDy/ro

善子「……オーノー……なんて言ってるけど、そんなに痛そうじゃないじゃない?……トゲが刺さっても血も出ない、溶岩に落ちてもコロって音がして落ちていくだけ……」

梨子「…………」

善子「……昔はこういう、何度死んでも大丈夫な人生にあこがれたもんだけどね……。実際なってみるとロクなもんじゃないわ。……これは痛みが伴わなくて初めて成立するものなのよ。」

梨子「……そうだね……」

善子「…………。……ごめん……こういう話をしたかったんじゃなかったんだけどな……」

梨子「……いや、いいよ……それより進もうか」


私はコントローラーを強く握る。

よっちゃんはマリオを見て何を思ったのか。

ただ、全然敵に当たらない洗練されたゲーマーのソレは……ただの羨望というよりも何度死んでも大丈夫という地獄からマリオを救ってあげたい気持ちなのではないかと思えてきて……
109: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:08:45.61 ID:srcZDy/ro

梨子「……せめて、マリオはここから出してあげよう……」

善子「……そう」


ただ、時間が来るまでコントローラーを握り続けた。





    *    *    *





午後6時……10分前。
110: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:12:29.26 ID:srcZDy/ro

梨子「結局クリアできなかったね……」

善子「まあ、初心者が1日でクリアするようなもんじゃないわ」

梨子「……そっか」

善子「……だから、また……やりましょ」

梨子「うん……」


また……が未来なのか……過去なのか……わからないけれど……。

部屋の真ん中で二人座って刻を待つ……。


善子「リリー……ごめんね……」

梨子「もう……いいって……」

善子「それでも、ごめん……きっと、また辛い思いさせる……」

梨子「……そう、ならないために部屋にいるんでしょ?」

善子「……そうだけど……」
111: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:12:56.52 ID:srcZDy/ro

窓もドアも閉め切って……。

念のため、刃物の類も他の部屋に移した。

死の要素さえなくなれば、死ぬことはない……はずだ。


善子「……」

梨子「……よっちゃん……」


よっちゃんの手をぎゅっと握り締めて……。

間もなく――時針と分針が一直線になる時間になろうとしていた……。


梨子「…………」

善子「…………」

梨子「…………?」
112: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:13:31.25 ID:srcZDy/ro

僅かに違和感を覚えた。

でも……この違和感は……知っている。

日本に住んでいれば多くの人が経験したことがあるだろう――


善子「……地震……?」


僅かに部屋が揺れていた。

そこで私はハッとする。理科の授業でも散々やったことだ


梨子「――初期微動っ!!」


私がよっちゃんを守るために抱すくめようとした瞬間激しく部屋が揺さぶられた
113: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:13:57.80 ID:srcZDy/ro

善子「っ!!?」

梨子「よっちゃ!!?」


――ゆらりと頭上に影が射した。――私の頭上に。


梨子「……え……?」


激しい揺れで室内にある、有りとあらゆる家具が私に襲い掛かろうとしていた……

……神様は悪食だなぁと思いつつ……何故、自分は安全だと思い込んでいたのかと痛感する。

――その刹那


梨子「!?」
114: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:14:25.33 ID:srcZDy/ro

私の身体が何かに突き飛ばされた。

部屋のドア側にガンと背中を打つ。

――何が起こったか、理解した瞬間には


梨子「――よっちゃん!!!」

善子「……リリー、ばいばい」


よっちゃんは崩れ落ちる家具の山に消えた。

――ぐちゃりという嫌な音がした……。


梨子「……っ……」


私は目の端に涙を浮かべながら、虚空を睨みつけた。
115: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:14:52.22 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





テレッテ,テレテテー

ゲームのピコピコした音が聞こえる。

見たことがないステージではあるが、さっきよっちゃんと一緒にやったマリオであることはわかった。


「……あと、ちょっとでノーミスクリアなんだけど……」


声がした。聞き覚えのある声。


「……はぁ……このままじゃワールドレコードとかそのうち取っちゃうかもね……」


暗転が戻りステージを選択すると――再びマリオが走り出した。
116: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:15:18.65 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





梨子「……よっちゃんが私を助けることまで計算づくなの?」


唇を噛み締めながら、自室のピアノを視認する。


梨子「偉そうに、死ななければいいなんて言っておいて……なんで私だけ……」


ふぅ……と一回息を吐いてから……

机の上のスマホを確認した。


――9月5日月曜日――


と表示されていた。
117: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:19:24.80 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





朝の通学バスに揺られる。


千歌「ねねね、梨子ちゃん」

梨子「……何?」

千歌「次の日曜って空いてる?」

梨子「ごめん、千歌ちゃん……その日はもう予定が入ってるんだ」

千歌「え、そ、そっかぁ……残念……」

梨子「ごめんね」

千歌「うぅん、いーよー。……り、梨子ちゃんっ!?」

梨子「……?」

千歌「だ、大丈夫……?」

梨子「…………」
118: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:19:50.81 ID:srcZDy/ro

なんのことかなって思ったけど……

すぐに気付いた。

――私は泣いていた。


梨子「ごめん、昨日見たドラマのこと思い出しちゃって」

千歌「そ、そう……?……そんなに泣ける話だったの……?」

梨子「……うん……すごい理不尽で……やるせない……そんなドラマだった……」

千歌「そ、そっか……」


――悔しい……。今ここで千歌ちゃんとこのやりとりをしていることが……たまらなく悔しかった。





    *    *    *
119: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:24:23.31 ID:srcZDy/ro

ガラガラと少し乱暴に保健室の引き戸を開ける。


善子「保健室のドアに当たらないであげてよ」

梨子「……ごめん」

善子「……リリー、ごめんね」

梨子「…………っ」


よっちゃんは落ち着いていた。


善子「朝から保健室直行してきたら、千歌たちに怪しまれるわよ。教室戻って」

梨子「よっちゃん……っ!!」

善子「……リリーがいてくれるなら……まだ私は大丈夫だから……」
120: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:25:00.90 ID:srcZDy/ro

梨子「…………っ…………今度は守るから…………」

善子「……うん」


私は保健室を後にした。





    *    *    *





その日のお昼休み。


梨子「よっちゃん……このこと、皆に言おう」
121: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:29:33.40 ID:srcZDy/ro

私はそう切り出した。


善子「え……?」


よっちゃんの顔が蔭る。


善子「いやいや、だから言っても信じないんだって」

梨子「それはよっちゃんが一人で言ってたからだよ、よっちゃんが言うとアレだけど……私も一緒に言えば信憑性も増すよ。……たぶん」

善子「……何気に刺さること言わないでくれないかしら」

梨子「どっちにしろ、私たち二人じゃ打開策が出せない……。……そしたら、またよっちゃんを死なせることになる」

善子「…………ダメよ」

梨子「どうして?」

善子「どうしてって……リリーあなたちょっと休んだ方がいいわよ……。このままじゃ、リリーまでおかしくなったって思われるだけよ……」
122: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:29:59.85 ID:srcZDy/ro

梨子「そのときはそのときだよ……」

善子「…………」

梨子「何があっても……終わらせる……っ」


頭の隅で自分らしくない強引なやり方に反旗を翻す声があがっていたのが聞こえたが

目の前であんな風に……よっちゃんにあんな死に方をさせたことへの償いをしなくてはならない。

私は自分の思考をうまくクールダウン出来ないのを自覚しながらも、自分へ感じる止め処ない怒りを治めることができなかった。

よっちゃんはそれ以上は何も言い返してこなかった。





    *    *    *
123: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:30:35.39 ID:srcZDy/ro

ダイヤ「それで……なんですの、相談事って」

果南「Aqours全員集めて……なんて、結構大事?」


放課後、Aqoursの揃った部室をぐるりと見回す。


梨子「はい、大事です。」

ルビィ「……梨子ちゃん……?」


ルビィちゃんが私の声音に少しビクリとした。


梨子「……9月11日、日曜日の午後6時……よっちゃんが死にます。」

曜「……え?」
124: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:31:44.01 ID:srcZDy/ro

梨子「……信じられないかもしれないけれど……本当のことなの。……9月11日によっちゃんが死んだあと、今日9月5日の朝に戻ってくるの。」

果南「ちょっと……梨子ちゃん……変な話しないでよ」

梨子「もう一度言います。……このままじゃよっちゃんが死にます。」

鞠莉「…………」

善子「リリー……」


Aqoursの面々は各々真剣に聞く者、動揺する者様々だが……

ガタ……っと一人が立ち上がって、ツカツカと前に歩いてきた。


千歌「……そういうタチの悪い冗談はちょっとチカでも笑えないかな」


――千歌ちゃんだった。
125: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:32:17.40 ID:srcZDy/ro

梨子「信じられなくて当然だと思う……けど――」

千歌「理由はともかく……メンバーが死ぬなんて軽々しく口にしちゃダメだよ」

善子「ち、千歌……リリーが言ってることは本当で……」

千歌「……ごめん、今……梨子ちゃんと話してるんだ」

善子「……っ!」


千歌ちゃんの剣幕に今度はよっちゃんがびくりとした。


果南「ちょ、ちょっとタンマ……千歌も梨子ちゃんも落ち着いて……」

梨子「私は落ち着いてます」

千歌「落ち着き払って、そんな悪質な言葉が出てくるの?」

果南「ちょ、ちょっと千歌!」
126: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:32:44.32 ID:srcZDy/ro

果南ちゃんが仲裁に入ってくる。


果南「り、梨子ちゃん……そういう冗談よそう……?……千歌も怒っても解決しないって――」

梨子「――なんで冗談だって言い切れるんですか」

果南「え、いや……」

梨子「よっちゃんが死んでからじゃ……全部遅いんです……だから死なないように……」

ダイヤ「――いい加減になさいっ!!」


バンと机を叩きながら今度はダイヤさんが立ち上がった。


ダイヤ「梨子さん。……どういうわけかは存じ上げませんが、今回は貴方の言っていることの方がおかしいですわ。」

梨子「理由ならさっき述べた通りです。私たちはタイムリープして戻ってきたから、そうなることを知ってるだけです。」
127: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:33:15.29 ID:srcZDy/ro

ダイヤ「そういう設定の話をするのも結構ですけど……流石に人の生き死にを軽々しく口にするのはいただけませんわ」

善子「リ、リリー……ダイヤ……」

ダイヤ「善子さんも……これが貴方の意図したものなのか、梨子さんが意図したものに付き合わされてるのかは知りませんが……わたくし正直こういう冗談は好みませんの」

果南「ダ、ダイヤ……」

千歌「梨子ちゃん……今なら聞かなかったことにするから……」

梨子「――ふざけないでっ!!」

千歌「…………」

梨子「なかったことにして欲しくないから、今言ってるんだよ!!」


声を張り上げる。

――パァン

乾いた音がした。
128: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:34:43.86 ID:srcZDy/ro

千歌「――最低だよ……梨子ちゃん……」


千歌ちゃんに頬をはたかれた音だった。


果南「ち、千歌っ!!」

梨子「……私が冗談言ってるように見える?」

千歌「……梨子ちゃんがホンキで善子ちゃんが死ぬって言ってるのがわかるから許せないんだけど」

梨子「なにそれ……っ」

千歌「……タイムリープとかよくわかんないけど……冗談でも言って欲しくないようなこと、ホンキで言ってるから怒ってるって言ってるんだよ?」

ルビィ「ね、ねぇ……!!」


静寂の中、さっきまで脅えた様子だったルビィちゃんが声を上げた
129: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:35:51.01 ID:srcZDy/ro

ルビィ「よ、善子ちゃん……し、死んじゃうの……?」


ルビィちゃんは涙目でそう言った。さっきよりもずっとずっと脅えた顔をしていた。

そんなルビィちゃんをダイヤさんが抱き寄せて……


ダイヤ「……もう一度言いますわ。貴方の言っていることはおかしいですわ。……全く筋が通っていない、今のルビィのように……いたずらにメンバーを脅えさせ、貶める、悪質な言葉ですわ。」

梨子「……このままじゃよっちゃんが死んじゃうんです。話を聞いてください。」

ダイヤ「……お話になりませんわ……ルビィ、こんな人の話を聞く必要はありませんわ」

ルビィ「お、おねえちゃ……」


ダイヤさんがルビィちゃんを引っ張って部室から出て行く。


果南「ちょ、ちょっとダイヤ……!!」
130: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:36:58.01 ID:srcZDy/ro

果南ちゃんがダイヤさんを追いかけて部室から出て行く。


梨子「…………」

曜「え、えっと……」

千歌「言葉……取り消さないんだね」

梨子「……取り消すわけにいかないの」

千歌「……そっか」


――そして、千歌ちゃんが出て行った。


梨子「……ふぅ……」
131: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:37:39.92 ID:srcZDy/ro

私は椅子に腰を降ろした


善子「リ、リリー……」

梨子「うーん……ダイヤさんはある程度予想通り……だったんだけど……。千歌ちゃんにああいう風に言われるとちょっと凹むなぁ……」


むしろ、千歌ちゃんの一声で場の空気が変わった気がした。これが読めなかった……もっとうまい伝え方をすれば千歌ちゃんには伝わったと思ったのに……。


曜「梨子ちゃん……」

梨子「……曜ちゃんは……どう思った?」

曜「……嘘を吐いてるとは思えないけど……。とてもじゃないけど、信じられないし……千歌ちゃんやダイヤさんが怒るのもわかる……って感じかな……。」

梨子「そっか……」
132: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:38:06.96 ID:srcZDy/ro

私は曜ちゃんの言葉を聞いて、失敗したのかなと思い俯いた。


鞠莉「――とりあえず、曜」


ずっと黙っていた鞠莉さんが初めて口を開く。


曜「な、なに?」

鞠莉「とりあえず、梨子のほっぺ……冷やすために保健室から保冷剤貰ってきてくれない?」

曜「りょ、了解であります!!」


その言葉と共に曜ちゃんが飛び出していった。

そして、鞠莉さんが私に近付いてきて、嗜めるように言ってきた。
133: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:38:34.29 ID:srcZDy/ro

鞠莉「……全く……あんな言い方じゃ、誰も信用しないし、善子の悪口を言ってるって思われても仕方ないヨ?」

梨子「……でも……!!」

鞠莉「……それくらい切羽詰った状態だってのはわかった。」

梨子「…………」

鞠莉「でも、ダイヤが聞いたら怒ることだし、ルビィが聞いたら脅えることだってのはわかってたんでしょう?」

梨子「……それは」

鞠莉「千歌に関してはわたしもちょっと意外だと思ったけど……。あまりBetterなやり方じゃなかったわ。」

善子「ま、マリー……」

鞠莉「……なんで全員集めていきなり全員に話しちゃうかなぁ……普段Coolな梨子らしくないよ?……その判断力が鈍るくらいヨハネの死がShockだったってことだろうけど」

梨子「……え……?」


私は目を見開いた。
134: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:39:37.26 ID:srcZDy/ro

梨子「信じて……くれるの……?」

鞠莉「……まあ、私は同じユニットだし……梨子と善子がどれだけ仲いいかよく知ってるからね。……梨子が善子のことをホンキで助けたいと思ってるから、ホンキで善子が死ぬって言ってるんだなって思ったかな」

梨子「……そっか」


よかった……誰からも信じられないという最悪の状況だけは回避できたようだ……


善子「ところでずら丸……さっきから何も言わないあんたはどう思ってるのよ……」

花丸「ずら?」


よっちゃんに話を振られて花丸ちゃんが反応する。


花丸「マルは……世界にはいろんな物語があるから、こういうことが実際にあってもおかしくはないかなー……くらいに思ったかな」

善子「あんた……大物になるわよ……」


よっちゃんは呆れながら花丸ちゃんにそう言った。
135: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:43:36.86 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





曜「はい、梨子ちゃん……冷やして」


曜ちゃんからタオルに包まれた保冷剤を手渡される。


梨子「……ありがと」

曜「それで、えっと……」


曜ちゃんは自分の立ち位置に困っている。


鞠莉「……とりあえず、善子話してもらっていい?曜もとりあえず座って。」

曜「あ、はーい……」


曜ちゃんが鞠莉さんに促されて腰を降ろした。
136: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:44:03.59 ID:srcZDy/ro

善子「えっと……私は今死に戻りの呪いにかかってる……みたいに思ってくれればいいわ。……リリーの言ったとおり9月11日の午後6時に死んで、そのときの記憶を引き継いだまま9月5日の朝に戻るループを繰り返してるの」

花丸「原因は?」

善子「……いろいろやった儀式の中にマジなやつがあったって仮定してるけど……」

鞠莉「……どちらにしろ、Occultの領域を出てないから、他の人はともかく、どうやってもダイヤの説得は無理だね」

梨子「そうですね……」


そもそもダイヤさんがこっちに傾倒してきたら、それはそれでAqoursとしては困る。


曜「……あのー……なんでそれを梨子ちゃんが皆に説明してたの?」

梨子「実際見てきたから……」

曜「…………」

善子「……どうやら、私が死ぬ場面に居合わせた人は一緒にタイムリープするみたいなのよ……」

花丸「……まあ、タイムリープモノではよくある設定ずら」
137: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:44:32.10 ID:srcZDy/ro

花丸ちゃんは本当に動じないなと思う。


梨子「だから、皆実際に見てもらえれば、わかるはずだから1回だけでも……!!」

鞠莉「梨子、落ち着きなさい」

花丸「……確かにその理屈は穴が多すぎるずら」

梨子「え……?」


二人に指摘され、私は思わずぽかんとしてしまう。


梨子「穴……?」

花丸「まず、実際に目の前で人が死ぬ光景を見て、誰もが正常で居られるわけじゃないずら」

梨子「あ……」
138: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:44:58.38 ID:srcZDy/ro

自分が最初のときどれだけ取り乱したかを思い出す。


鞠莉「まあ、まずルビィは耐えられないと思うわ。……正直、ダイヤも怪しいわね。」

花丸「あともう一つはそのループの信憑性ずら」

善子「え、信じてくれたんじゃなかったの?」

鞠莉「そうじゃなくてね……。……あなたたち何を根拠にまた次死んでも生き返れるって言ってるの?」

梨子「……あ!?」


ループの中で完全に失念していた。次の保証がどこにあるのだろうか。


曜「あ、あぁ……なるほど……だからか」


曜ちゃんがその言葉を聞いて納得したように呟いた。
139: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:45:25.10 ID:srcZDy/ro

曜「……それが千歌ちゃんが怒った理由かも」

梨子「え……?」

鞠莉「なるほど……。……まあ、千歌っち自身も自分の感情をうまく説明できないだろうけど……傍から見ていて、梨子が善子が死ぬという事実を完全に肯定してることが許せなかったというところかしら……」

梨子「あ……」


私……さっきから、ほぼ感嘆詞しか喋っていない。

完全に冷静さを欠いていた……。


花丸「善子ちゃんも……梨子ちゃんも……辛かったのは二人を見ればわかるずら。……だけど、それでも人が生きる世界に捨て回なんてものはないんだよ。」

善子「……」

花丸「だから、この一回を犠牲にすれば誰かがわかってくれるなんて考え方じゃ人を納得させる理由足り得ないんだとマルは思うな。」

梨子「……はい……。……ごめんなさい……」
140: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:45:52.04 ID:srcZDy/ro

花丸ちゃんの説法に思わず謝ってしまう。

私は知らず知らずのうちによっちゃんが死ぬということを仕組みとして受け入れ掛けていたのかもしれない……。


鞠莉「とは言っても……現実的にどうするかを考えるべきね……」

花丸「タイムリープについて、もうちょっと詳しい情報が欲しいずら」

梨子「あ、それならメモが……」


ガサゴソとバッグを漁ってみてから……あれはループ前だと思い出す。


梨子「……今、書き出します」


そう言って私はノートとペンを取り出した。

141: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:47:37.34 ID:srcZDy/ro

『・9月11日の日曜日。午後6時ちょうどに死んで、9月5日の月曜日の朝に戻る。
 ・死因は周回によって、変わるらしい。
   死を避けようとすればするほど、凄惨な死に方になる。
 ・このループの原因はなんかしらの儀式によるものと推測される。
 ・なんらかの条件で一緒にいる人も一緒に記憶がタイムリープする。
   (仮)近くにいる知人限定?』


たぶん私たちが書き出したのはこんな感じだったかな……。


鞠莉「とりあえず一つずつ確認していこっか」

花丸「……ループ期間は朝の9月5日の明朝から9月11日の午後6時……」

曜「一週間ってこと?」

梨子「正確には一週間じゃない……かな……午後6時で終わっちゃうから」

曜「あ、そっか」

花丸「ねえ、善子ちゃん」

善子「なに?」

花丸「これ、朝って何時から始まるの?」

善子「え?えーっと……4時過ぎくらいかな?」

梨子「……え?」
142: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:48:05.52 ID:srcZDy/ro

花丸ちゃんの質問で早速新情報が出てきた。


梨子「ちょ、ちょっと待って!?なんで、そんな詳しい時間がわかるの?」

善子「え……時計を見たから……?」

梨子「そ、そうじゃなくて……!!」

鞠莉「死ぬ瞬間は午後6時きっかりに固定されてるのに、戻ってくる先は明朝ってのは確かに違和感があるものね」

花丸「1週間丁度じゃないってことは、他のタイムリープのルールがあるって考えた方がいいかなって」

曜「他のルール……?」

花丸「マルが言うのは物語の中のルールだから、必ずしも適用されるとは限らないけど……。例えばきっかり1週間だって言うならしっくりくるよね。」

梨子「……うん」

花丸「でもそうじゃないってことは……他のルールがある。例えば6日でループしてるとか……でも、これも違うよね。じゃあ12時間区切りでループしてる可能性はないかって。」
143: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:48:36.01 ID:srcZDy/ro

鞠莉「でもループ先が4時頃だって言うなら、それも違うわね」

花丸「……なら、これは1週間とか何日、何時間って言う区切りじゃないって考えた方がいいかなって」

梨子「……?どういうこと……?」

花丸「つまり……死をトリガーに時間逆行が始まるのと同時に、その時間逆行が止まるポイントは別の理由でブックマークされてるんだよ。……例えば、それを発動した儀式そのものをしていた時間とかね」

曜「あ……だから、梨子ちゃんが寝てる時間で正確に把握できてなくても、儀式をやってたはずの当事者の善子ちゃんは起きてたってことだから時間を正確に覚えてるってことだね」

花丸「そういうことずら。……まあ、聞くまでは山勘だったけど。これがもし朝6時だったら特定するのは困難だったずら」


すごい……花丸ちゃんはこの情報からそれだけのことを引き出せたんだ……


鞠莉「ここがわかると3つ目の『このループの原因はなんかしらの儀式によるものと推測される。』のなんかしらが推定できるわね。善子はこの時間何してたの?」

善子「え……えーと……随分前だからなぁ……」

花丸「体感で約40日くらいだから……まあ、覚えてないのもしょうがないかな」
144: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:49:34.62 ID:srcZDy/ro

善子「ただ、この時間特に儀式をしてた記憶はないのよね……」

鞠莉「じゃあ、とりあえずこれは保留ね……2つ目を見てみましょう。」


『死因は周回によって、変わるらしい。
   死を避けようとすればするほど、凄惨な死に方になる。』


花丸「具体的にはどうなるの?」

善子「えーっと……」


花丸ちゃんに促されてよっちゃんが死因を書き足す。


『・1回目 転倒して頭部強打
 ・2回目 転倒して頭部強打
 ・3回目 強風で誤って海に転落した後、両脚をつって溺死
 ・4回目 強風で飛んできた看板に直撃して死亡
 ・5回目 突然操縦不能になった自動車が突っ込んできて轢死
 ・6回目 室内で地震に合い、家具の下敷きになって圧死』

145: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:50:01.65 ID:srcZDy/ro

梨子「あ、ちょっと待って……最後の6回目はよっちゃんは私のことを庇って死んじゃったの……」

鞠莉「Hmm...?えーと梨子が一緒にいたのはどこから?」

梨子「えっと……5回目から」

鞠莉「そのときは巻き込まれなかったの?」

梨子「……よっちゃんに近付くなって言われて……そしたら、自動車が突っ込んできたので……」

鞠莉「なるほど、それで無傷だったわけね」


鞠莉さんが少し考え込む


花丸「これ4つ目はどういう基準で考えてるの?」


花丸ちゃんが『なんらかの条件で一緒にいる人も一緒に記憶がタイムリープする。』指して言う。
146: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:50:36.79 ID:srcZDy/ro

梨子「え、えーと……周りに私たち以外、他に誰もいなくなってて……だから、近くにいる人は一緒にタイムリープするのかなって」

花丸「それってつまり、タイムリープの瞬間は知人以外の人たちが何故か人払いされるってことだよね」

善子「たぶんそうだけど……」

鞠莉「ふーん……なんだか、大いなる意思的なものがあるんだとしたら少しチグハグな感じがするわね」

曜「どういうこと??」

鞠莉「人払いするってことは当人以外に目撃されたくないか、当人以外を巻き込みたくないかどっちかだと思うのよ」

花丸「逆に言うなら……なんで知人は人払いの対象にならないのか……が問題ずら」

鞠莉「そう、そこに矛盾があるのよ」


言われてみれば……
147: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:51:03.17 ID:srcZDy/ro

花丸「ここから、思いつく可能性は2つ。1つは大いなる意思側が知人はタイムリープするってことを知らなかった。もう1つは知人は人払いの対象にならないと知らなかったから。」

鞠莉「どっちにしろ、大いなる意思的なものは完璧じゃないってことだね」

曜「つまり……どういうこと……?」

鞠莉「つまり……」


鞠莉ちゃんは私を見つめて


鞠莉「梨子のタイムリープは大いなる意思側からしても、完全に誤算だったってことだよ」


そう言った。





    *    *    *
148: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:51:41.39 ID:srcZDy/ro

あの後、私たちは一旦、理事長室に移動していた。


善子「ねえ、マリー」

鞠莉「何?」

善子「本当にずら丸を帰しちゃってよかったの?」


あの後、花丸ちゃんと曜ちゃんには先に帰ってもらうことにしたのだけれど……その提案は当の花丸ちゃんからだった。



――――――――
――――――
――――
――



花丸「これ……6回目は下手したら梨子ちゃんを狙ってるって可能性まであるよね。」
149: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:53:31.19 ID:srcZDy/ro

鞠莉「それだとまるで、誤算を見つけたから、それを消そうとしたようにすら見える……」

善子「そ、それじゃリリーは私と一緒にいたら危ないじゃない!!」

花丸「それはそうなんだけど……でも、逆に言うなら相手が万能じゃないってことの証明だと思うずら」

梨子「どういうこと……?」

花丸「地震雷火事親父まで操れるのに、ちょっとした誤算が出た程度でそこまで焦って梨子ちゃんを狙うのかってことずら」

鞠莉「つまり、そこまでして対処をしておかないと、梨子の行動が把握できないからじゃないかしら……?」

梨子「あ、それって……花丸ちゃんが言ってた神様と人間の媒介がないから……」

花丸「ずら?」

梨子「あ、えっと……前の回で花丸ちゃんに人間が神と対話するにはお地蔵様みたいな媒介が必要なのと同じように、神側から人間とコンタクトを取るには何かしらの媒介が必要なんじゃないかって話を聞いて……」

花丸「なるほど……。善子ちゃんの場合はそれが発動儀式そのものだったけど、梨子ちゃんにはそれがないずら……そうなると」

鞠莉「Hmm...梨子用の媒介がなにかしらあるって考えるのが自然よね」
150: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:54:15.14 ID:srcZDy/ro

花丸「……なら、ここから先は鞠莉さんにお任せするずら」

梨子「え?」

鞠莉「Why?――何故?」

花丸「もし、マルが神側だったとしたら……媒介は人間の形……それも、梨子ちゃんに近しい人間……それこそAqoursの誰かに成りすますと思うずら。」

善子「……なっ」

曜「Aqours内にスパイがいるかもってこと……?」

花丸「それがマルの可能性もあるし、曜ちゃんの可能性もある……」

鞠莉「それなら、私の可能性もあるわよ?」

花丸「それはそうなんだけど……でも、Aqours内にそういう人がいるなら、誰に成りすましてたんだとしても、向こう側には梨子ちゃんがタイムリープしてることはバレちゃったから」

梨子「あ……」
151: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:54:42.90 ID:srcZDy/ro

私が全員の前で言っちゃったからだ……


曜「そうなると確率を少しでも下げるために少数で話を進めた方がいいってことだね……」

善子「私とリリーだけじゃ、これ以上の推理は出来ないし……」

曜「私じゃほとんど役に立たないから……花丸ちゃんか鞠莉ちゃんになるけど……」

花丸「関係あるかはわからないけど……マルはお寺の子だから、もし仏様が監視してるんだったら依り代にされやすいだろうし……」

鞠莉「なるほど……」

花丸「それこそ、依り代になってる人は自覚がない可能性もあるからね。それだとそういう『大いなるもの』側に成り得る存在に近い人間は避けた方がいいと思うずら」

鞠莉「そうなると、残ったのはわたしってことね」

花丸「だから、鞠莉さんにお願いするずら」

鞠莉「Yes!そういうことなら、任せなさーい♪」



――
――――
――――――
――――――――
152: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:55:42.06 ID:srcZDy/ro

梨子「正直なところ……鞠莉さんはどう思ってるんですか……?」

鞠莉「What?」

梨子「……その神様……というか大いなるもの……って言うんでしょうか」

善子「……ややこしいわね。とりあえず神か仏か悪魔かもわからないから『大いなるモノ』で統一しましょ」

梨子「じゃあ、えっと……大いなるモノのスパイが誰なのか……」

鞠莉「……うーん。……まあ、誰もが成り得る可能性があるから……。それこそ、わたしもその候補だし……。」


鞠莉さんは軽く苦笑しながらそういう。


善子「でも、協力的な姿勢だったずら丸は除外していいんじゃない?」

鞠莉「……どうかな。……それこそ、マルが言うとおり自覚がないって可能性もあるし」

梨子「あ、それなんですけど……よくわからなかったというか……」

鞠莉「ん……そうね。ちょっと言葉足らずだったわね。……もし大いなるモノ側からの刺客がいるんだとして、Aqoursの誰かに紛れてるんだったら、その紛れ方でぱっと思いつくのは3種類あるの」
153: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:56:10.54 ID:srcZDy/ro

3種類……?どういうことだろ……?


鞠莉「1つ目は完全にAqoursの誰かとその姿をした大いなるモノが摩り替わってる可能性。」

善子「完全に大いなるモノが化けてるってことね」

鞠莉「そうね。……ただ、どの程度の精度で出来ることなのかわからないから、確証はないけど……それだとたぶんどこかでボロが出るんじゃないかなーって思う」

梨子「成りすましてるだけで別人だからってことですか……?」

鞠莉「そうそう♪それこそアルセーヌ・リュパン並の名変装だったら見破れない可能性もあるけどね。……ただ、簡単にそのリスクを減らせる方法が2つ目。依り代――まあ、つまり取り憑いて紛れ込むってことね」

善子「憑依ってこと?」

鞠莉「そうね。」


でも、それって1つ目とそんなに違うのかな……?
154: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:56:43.44 ID:srcZDy/ro

鞠莉「ふふ、梨子。1つ目と何が違うのかって顔してるわね。」

梨子「え、あ……まあ……はい」

鞠莉「まあ、確かに憑依の場合も精度の問題だから、見分け方としてはあんまり変わらないけど……。記憶の共有とかがしやすいとかあるだろうし、それこそ対応の範囲が変わってくるわ」

善子「対応の範囲……?」

鞠莉「依り代の場合は直接攻撃したら、完全に摩り替わってる場合と違って本人もダメージを受けちゃうじゃない?まあ、そういうことするかは別として」


なるほど……


梨子「それじゃ3つ目は?」

鞠莉「3つ目がさっき言った自覚がない場合……。対象者の視覚ないし……五感情報だけHackされてる場合よ。」

善子「あー……使い魔の見たものがそのまま主にはわかるみたいなことかしら」

鞠莉「まあ、ヨハネ的に言うなら大体そんな感じかな?……ただ、この場合だと特定は困難ね。本人にも自覚がないんだから。それこそ、きっかけになる場所に近付いただけで対象される可能性もある。」

梨子「あぁ……花丸ちゃんが言ってたのはそういうことか……」
155: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:57:10.26 ID:srcZDy/ro

大いなるモノに成り得る存在……それこそ神仏や悪魔と言った類のもの。

寺暮らしだと、どうやっても身近にそういうものがあるだろう。


鞠莉「だから、誰でもその対象の可能性があるってことよ」

梨子「…………」


そう言われると我ながら迂闊だったなと思う


鞠莉「まあ、でもどっちにしろ、私たちギルキスだけで動くって指針が決まっただけでもよかったじゃない」

梨子「それは……まあ……」

鞠莉「Bestは一番にマリーに相談してくれればよかったんだけど……まあ、Don't mind! やっちゃったものは仕方ない!進展はしてるんだしDon't worryよ!」

善子「……ねえ、マリー」
156: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:57:37.83 ID:srcZDy/ro

鞠莉「ん?」

善子「その上で……鞠莉は正直、誰が一番怪しいんだと思ってる?……一応ここにいる3人は例外として……」

鞠莉「あら?善子ったら犯人探し?悪い子ね」

善子「そ、そうじゃなくって……いや、そうかもだけど……」


よっちゃんは私の方をちらりと見る


梨子「……?」

善子「私だけの問題だと思ってたけど……リリーが巻き込まれてるとなると話が別じゃない……」

梨子「よっちゃん……」

鞠莉「Hmm...まあ、確かにそう言われるとある程度アタリを付けておくのは悪いことじゃないかもしれないわね」
157: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:58:23.46 ID:srcZDy/ro

鞠莉さんは少し悩んでから


鞠莉「まあ、ぶっちゃけ怪しいのは曜か千歌だと思うかな」

梨子「曜ちゃんか千歌ちゃん?」

鞠莉「同じ学年で梨子と関わる時間も長いだろうしね。監視役には最適だと思うわ。」

善子「でも、曜は最後まで好意的じゃなかった?敵とは思えないけど……」

鞠莉「まあ、敵かはともかく……あの場に居座る選択をしたこと自体がもしかしたら情報収集のためだった可能性もあるでしょ?……わざわざ情報収集に媒介が必要なら、目の前で直接見るなり聞くなりする必要があると考える方が自然でしょ?」


なるほど……そう言う意味でも花丸ちゃんは曜ちゃんも一緒に帰るように言ったのかもしれない。


鞠莉「逆に……なさそうなのは果南とルビィかな……。これは勘だから保証は出来ないけど……。――あ、3つ目の五感Hackはそもそも可能性から除外しての場合だけどね。」

善子「その心は?」

鞠莉「あの場で果南は話をやめるように促してたし……ルビィは脅えて情報を得ることを避けちゃう傾向があるでしょ?……果南がそうなら目的と行動が合致してないし、ルビィの場合は詮索しようとしたときに違和感に繋がりやすいって意味でなさそうかなって」

梨子「その理屈だと千歌ちゃんとダイヤさんも行動と目的が一致してないような……」
158: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:58:59.93 ID:srcZDy/ro

あの場で真っ先に私と対立して、場を去ってしまった二人も果南ちゃんと同じなんじゃ……


鞠莉「あの二人の場合、果南とは違って能動的に話を止めろって言ってるのよ」

善子「……?……それなんか違いがあるの?」

鞠莉「あるよ。この場合は目的が情報収集じゃないのよ」

梨子「違う目的があるってこと……?」

鞠莉「あなたたちの話を無理やりぶった切ることで出来るだけ協力者を増やさせないことが出来るでしょ?」

梨子「……なるほど」

善子「リリーの監視だけでも大変なのに、これ以上協力者が増えるのは向こう側も困るって考えると……話を無理やり止めてきた、千歌とダイヤも候補ってことね」

鞠莉「つまり、まとめると摩り替わりか憑依の場合は千歌、曜が一番怪しくて、次点でダイヤ。……五感Hackだと……私たちの場合練習で淡島神社やら弁天島に行ってるし……きっかけがいくらでもありそうだからキリがないけど……強いて言うなら花丸が一番怪しいって感じかな」

梨子「うーん……とりあえず、千歌ちゃん、曜ちゃん、ダイヤさん……あと一応花丸ちゃんの前では気をつけた方がいいってこと……かな?」

鞠莉「まあ、そうなるけど……幸い……って言うのは心苦しいけど……状況的に千歌とダイヤからは当分距離を置かれるだろうし、花丸は本人がその可能性を言って来るくらいだからその話題は避けると思うわ。だから、強いて気をつけるなら曜くらいかな」
159: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 08:59:39.60 ID:srcZDy/ro

距離を置かれる……まあ、確かにそりゃそうだよね……


鞠莉「仲直りは……きついかもしれないけど、Xデーを突破した後にした方がいいかもしれないわね……」

梨子「……うん、これは自業自得だから……」

善子「リリー……なんかごめん……」

梨子「うぅん……よっちゃんは止めてくれたけど、聞かずに行動しちゃったのは私だから……」


さて、問題は……


梨子「……どうXデーを突破するか……だね……」

鞠莉「そうねぇ……」


鞠莉さんは呟きながらよっちゃんに目を配らせる。
160: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 09:00:11.91 ID:srcZDy/ro

鞠莉「それこそ、善子が儀式の内容を思い出すのが一番手っ取り早いんだけど……」

善子「……申し訳ないんだけど……ホントに覚えてないのよね」

鞠莉「Hmm...困ったわね……。……あ、そういえば、タイムリープの戻るときと戻ってきたときってどんな感じなの?」

梨子「えぇっと……気付いたらベッドの上でうなされてて、起きると部屋に戻ってる……感じかな。……戻ってくる瞬間は寝てるみたいだから、私よりよっちゃんの方が詳しいんじゃないかな……」

善子「そうね……戻る瞬間は死んで意識が飛んでから……」

梨子「……」

善子「戻ってきたときは気付いたら部屋にいるって感じかしら……」

鞠莉「そのとき、周りに儀式に使ったような道具の痕跡とかは?」

善子「……特にないわね……いつも通りの散らかった部屋よ」

鞠莉「……部屋が片付いててくれると助かったんだけど……。……まあとなると、特別大掛かりな道具を使う必要のない簡素な儀式がトリガーになってる可能性が高いかしら……」

善子「それだと、キリなくない……?」

鞠莉「…………。……まあ、そうね」
161: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 09:00:48.73 ID:srcZDy/ro

鞠莉さんは顔を顰める。


梨子「でも、前よりは多少具体性が出てきたかも……。これからはそれを軸に調べていこっか」

鞠莉「幸か不幸か、Aqoursの練習も当分は出来ないだろうしね。その分放課後は情報収集に回しましょ」

梨子「……そうですね」


……こうして、鞠莉さんを新たなに仲間に加えた私たちはGuilty Kissの3人で調査を続行することになった。





    *    *    *
162: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 09:02:25.61 ID:srcZDy/ro

9月6日、火曜日。

朝は少し早めのバスに乗って登校して、千歌ちゃんと顔を合わせるのは避けたけど……

どうやっても教室に行ったら千歌ちゃんと顔を合わせざるを得ない。


曜「あ、梨子ちゃん、おはよーそろー」


教室に入ると曜ちゃんが挨拶をしてきた


梨子「おはよう、曜ちゃん」


曜ちゃんの隣の席には……予想外なことにすでに千歌ちゃんが登校していた。

結構早めに来たつもりだったんだけどな……
163: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 09:02:53.04 ID:srcZDy/ro

梨子「……千歌ちゃん、おはよう」


一応……ケンカ中だけど、挨拶をする。


千歌「……おはよ」


軽く挨拶を返して千歌ちゃんはぷいっと顔を背けてしまった。

……まあ、しょうがないか。私は千歌ちゃんの前の席に腰を降ろす。


千歌「……梨子ちゃん……」


と、思ったら後ろから千歌ちゃんが話しかけてきた。
164: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 09:03:19.17 ID:srcZDy/ro

梨子「!?……な、なに?」

千歌「その……ぶったのは……ごめん……チカが悪かったと思う」

梨子「え、あ……いや……あのあとすぐ冷やしたから大丈夫……」

千歌「……そ。……でも、昨日のこと許したつもりはないから」

梨子「…………そう。」

曜「千歌ちゃん……梨子ちゃん……」


曜ちゃんが横で少しやきもきしているのがわかった。

ただ、その後は千歌ちゃんとはお互い会話もなく……おとなしく、していたので

そわそわしながらも曜ちゃんは席に戻っていった。

千歌ちゃんとケンカしっぱなしなのは……歯がゆいけど、現状はこのまま維持した方がいいかな……。

ごめん、千歌ちゃん……。胸中で千歌ちゃんに謝罪しながら、私は状況維持に努めるのだった。
165: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 09:03:56.68 ID:srcZDy/ro


    *    *    *





9月10日、土曜日。今は鞠莉さんと二人。


鞠莉「うーん……これというものが全然見つからないわね……」


図書館の外のレストルームで鞠莉さんはくたびれたように言う。

私も集中力が切れてきていたので休憩していた。よっちゃんは未だに図書館内で調査中だ。


梨子「やっぱり、条件がふわっとしすぎてて……」

鞠莉「善子がもうちょっと、詳しい状況を覚えててくれれば助かるんだけど……」

梨子「そろそろ最初のループから49日くらいですから……」

鞠莉「しじゅーくにち?」

梨子「あ、えっと……日本だと――というか仏教かな……だと亡くなってから49日後にも供養をするんです……あ!いや、よっちゃんまだ生きてるけど……」
166: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 09:04:31.60 ID:srcZDy/ro

自分で言ってて、不謹慎だなと思ってしまった。

たまたまよっちゃんが居合わせていなくてよかったなと思う。


鞠莉「んー?……梨子、計算間違ってるよ?」

梨子「え?」

鞠莉「今、7周目なんだったらざっくり1周を7日と計算しても、今日で40日目だよ」

梨子「え、だって7×7で49……当日の2日前だから47じゃあ……」

鞠莉「Non-Non. 一回目の死は周回の最後の日になるんだから、一周目の7日分は引かないと……。……あ、儀式の日からだったらそれであってるけど」

梨子「あ、そっか……」


勘違いしていた……でも、そこまで大きく関係のあることとは思わないけど……
167: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 09:05:29.06 ID:srcZDy/ro

鞠莉「あー……でも、ちょっと話ズレるけど……そのことについても考えておかないとね……」


……と思ったけど、鞠莉さんはこれにも気になることがあるようだった。


梨子「そのことって、どのことですか?」

鞠莉「ループ回数のLimitについてよ」

梨子「え……」


でも、その話は……


鞠莉「……まあ、花丸の言うとおり死んでもいいみたいに思うのはよくないってのは同意だけど……実際問題当日になって、慌てるのを繰り返すのは上策とは言えないでしょ?」

梨子「……それは、はい」

鞠莉「……現状、ループは善子の儀式が原因だと仮定してるけど……それが無制限のループなのか、Time limitや回数のLimitが存在するものなのか……もしくはもうループはしないのか。それは考えて備えておく必要があるわ」
168: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 09:06:05.43 ID:srcZDy/ro

……鞠莉さんは私たちが気付かない問題にも、一個一個ちゃんと気付いている……。

……普段がおちゃらけてるから忘れがちだけれど……

やっぱり、学生の身でありながら、理事長までこなす人だけあって、相当頭がいいのだろう。


鞠莉「……繰り返しになるけど、死んでもいいとは思わない……だけど、次のループがある程度保証されてれば多少は気の持ちようが変わるでしょ?」

梨子「確かに……でも、その保証もよっちゃんの儀式が何かわからないとどうしようもないんじゃ……」

鞠莉「んー……そうなのよねぇ……。ただ、もしLogicがあるならその法則だけでもわかればLimitを測ることは出来るかもしれないわ」

梨子「ロジック……かぁ……」


……鞠莉さんを見習って私も少しは考えなくちゃ……


梨子「……花丸ちゃんがループ期間について話してたときみたいに、死に戻りにも回数があるのかな……。マリオみたいに……」

鞠莉「Mario?」
169: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 09:06:32.23 ID:srcZDy/ro

よっちゃんと一緒にやったマリオを思い出して、ふと口に出していた。


鞠莉「Video gameの?……まあ、確かにあれみたいにわかりやすく残機が出てくれればいいんだけど……」

梨子「回数なのか……時間なのか……」

鞠莉「それこそ、毎回たまたまループ条件を満たしてるだけって可能性もあるしね。それに一番気をつけなくちゃいけないのはあなたなのよ?」

梨子「え?私?」


言われてキョトンとする。


鞠莉「……あのね、あなたが狙われてるかもしれないって話したでしょ?あなたはそれこそ儀式もしてないし、ヨハネの死に戻りに巻き込まれる形でタイムリープしてるんだから、梨子こそ死んだらそこで終わりの可能性が高いのよ?」

梨子「あ……そっか」

鞠莉「……これらのことを考慮すると、もしこのまま日曜日になった場合は梨子は自分の身の安全を優先して……出来るだけ、ヨハネはいつも通り過ごして貰った方いいのかしらね……」
170: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 09:07:00.02 ID:srcZDy/ro

厳重に守ると大きな規模の干渉が襲い掛かってくるということは、それだけ巻き込まれるリスクもあがるってことだもんね……


鞠莉「……それこそ、どんなレベルの干渉が起こっても大丈夫な状況に置いてあげるってのも手なのかもしれないけど……」

梨子「そんなこと出来るんですか?」

鞠莉「……わからないけど……あちら側は周りの人間を巻き込まないって条件を守らないといけないんだとしたら、地震でも相当ギリギリでしょ?……もしかしたら、善子のマンションから住人がたまたま出払ってたのかもしれないけど……」


確かにあの地震で家具が倒れてくるのも結構不自然な動きだったとは言え、他の部屋にも被害がなかったかといわれる正直微妙だ


梨子「人払いはマンション全域くらいならまかなえるってことなのかな……?」

鞠莉「かもしれない……もしかしたら、もっと大きな規模でも。……ただ、さすがに地球規模での災害じゃないと善子が死なないってなったら、そこまでの干渉は出来ないと思うのよ」

善子「――それこそ、地球が割れるとか、そういうレベルかしら?」

梨子「あ、よっちゃん」
171: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 09:07:27.69 ID:srcZDy/ro

よっちゃんが図書館での調べ物を終えてレストスペースに歩いてきた。


善子「でも、そんな場所あるの?」

鞠莉「……そうねぇ……なくはないけど……。……ただこれも結局憶測だから、それこそ地球が真っ二つになる可能性もあるわけだし……」

梨子「えぇ……」


……というかなくはないんだ……そんな場所


鞠莉「それはともかく……なんか収穫あった?」

善子「……全然よ。参ったわ……」

梨子「……とりあえず、今日はよっちゃんの家に泊まったほうがいいのかな?」

鞠莉「……まあ、それが無難かしらね。一応、善子の部屋からなら場所的なタイムリープに関しては一応保証されてるから、変に場所を変えるよりはいいと思うわ」


……結局その後も特に収穫は得られず、三人でよっちゃんの家へと向かうのだった。
173: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 14:32:39.96 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





9月11日、日曜日。


鞠莉「Good morning...って……なんで二人して朝からVideo gameしてるの?」

善子「いや、もう昼よ」


時刻は正午を指していた。


鞠莉「だって、誰も起こしてくれないんだもん」

善子「起こしたわよ。マリーがあと3日って言って起きなかったのよ」

鞠莉「Oh...sorry. わたし朝は弱いのよ……」
174: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 14:33:23.33 ID:srcZDy/ro

鞠莉さんがふぁぁとあくびをする。


鞠莉「それで、なんでVideo game?……これMario?」

善子「まあ、マリー起きなかったし……退屈だからその間ゲームしようって、リリーが」

梨子「今回はどうにか……クリアしようと思って」

鞠莉「はぁ……これから死ぬかもしれないって言うのに呑気なものね……。まあ、呑気なのはわたしも人のこと言えないか」


どちらにしろあと6時間……前回同様に過ごすのがいいと思う。


鞠莉「……それじゃあ、マリーもまーぜて♪」


鞠莉さんも私たちの意図を汲んだのか、一緒に遊んで過ごすことにするようだ。
175: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 14:39:05.26 ID:srcZDy/ro

梨子「あ、でもこういうのって3人で遊べるの……?」

善子「最近のマリオは4人で出来るのよ?」

梨子「そうなんだ……あ、でもコントローラーあるの?」

善子「あるわよ。……4人まで同時に出来るようにちゃんと買い揃えてるわ。……やったことないけど」

梨子「…………」

善子「リリー……可哀想な人を見る目で見ないで……お願いだから」

鞠莉「じゃ、わたしMario使うわ~♪」

善子「ちょっと!?普通こういう場合マリオはゲームの持ち主でしょ!?」

鞠莉「えーでもマリーとマリオってなんか似てるじゃない?」

善子「そういう問題じゃないでしょ!!」

梨子「いいから早くやろうよ……」
176: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 14:41:42.93 ID:srcZDy/ro

ホントにこうやって遊んでいるだけだと、これから今際の際に立つことになるなんて想像も出来ない……。

ここで時間が止まってくれればいいのになぁ……

そんなことをぼーっと考えていたら、コロッと音立てて私のプレイキャラが死んでしまっていた。





    *    *    *





午後6時、10分前。

……結局今回もマリオはクリアできませんでした。
177: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 14:44:41.11 ID:srcZDy/ro

鞠莉「さて、じゃあ打ち合わせした通り……梨子は部屋の隅っこにいてね」

梨子「はーい」

鞠莉「善子は普通にしてて」

善子「普通にしててって言われても困るわね……」

鞠莉「そう?普通に会話してればいいと思うけど……それにしてもマリオ難しかったわね」

善子「マリーが脚引っ張るから全然進めなかったんじゃない。なんで近くにいくとすぐに私たちのキャラ持ち上げて投げるのよ」

鞠莉「えー?うーん……癖?子供の頃から果南やダイヤとVideo gameやるときは大体ダイヤの邪魔するのがマリー流だったのよ」

善子「……ダイヤが怒りっぽいのってマリーのせいなんじゃないの……?」

鞠莉「え、そうかな?」
178: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 14:46:32.79 ID:srcZDy/ro

時間まで談笑をして過ごすと10分はあっという間だった。

間もなく、時針と分針が真っ直ぐになりそうだった。

――だが変化はない。

前回はこのタイミングで地震の初期微動が始まっていたけれど……


善子「もしかして……助かった……!?」


よっちゃんが勢い良く立ち上がって――その拍子に床に置いてあるゲーム機につまづいて


善子「え!?」


バランスを崩して
179: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 14:47:19.86 ID:srcZDy/ro

善子「ガッ!?」


机の角に頭を強打した……


梨子「…………」

鞠莉「…………」





    *    *    *

180: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 14:48:25.57 ID:srcZDy/ro

「返して……っ……返してよぉ……っ……」


少女が泣いていた。聞き覚えのある声。


「……お願い……っ……私に出来ることならなんでもするから……っ……お願いだから……っ……」


ぎゅっとその手のひらにロザリオを握り締めて、少女は悲痛に叫ぶ


「お願いだから……っ……返して……リ――」





    *    *    *
181: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 14:49:30.65 ID:srcZDy/ro

梨子「…………」


布団からのそのそと這い出て、机の上のスマホを確認する。


――9月5日月曜日――


と表示されていた。





    *    *    *
182: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 14:50:50.19 ID:srcZDy/ro

朝の通学バスに揺られる。


千歌「ねねね、梨子ちゃん」

梨子「何?」

千歌「次の日曜って空いてる?」

梨子「ごめん、千歌ちゃん……その日はもう予定が入ってるんだ」

千歌「え、そ、そっかぁ……残念……」

梨子「ごめんね」

千歌「うぅん、いーよー」





    *    *    *
183: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 14:51:24.96 ID:srcZDy/ro

登校してからすぐお手洗いに行くと千歌ちゃんを誤魔化して

私は保健室に直行した。

保健室の引き戸を開けると……


鞠莉「……まさか、あそこまで間抜けな死に方が……」

善子「…………」


鞠莉さんがよっちゃんをからかっていた


梨子「もう、鞠莉さん!」

鞠莉「あ Good morning 梨子」

梨子「笑い事じゃないんですよ!」
184: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 14:53:02.67 ID:srcZDy/ro

善子「いや、まあ……あそこまで無様だと笑ってくれた方がまだ……」

鞠莉「って言うから」

梨子「……。……なにはともあれ、鞠莉さんも無事タイムリープできたみたいですね……」

鞠莉「ええ、そうみたいね。」

善子「とりあえず、朝のホームルーム始まっちゃうから……お昼にまた保健室で――」

鞠莉「あ、それなんだけど……次からは理事長室集合にしない?」


あ、確かに……人目を避けるなら保健室よりも適してるかも


鞠莉「もう、朝から善子を探してわたしはへとへとだよ……」


……そういえば、月曜の朝は保健室にいることを伝えるのを忘れていた。
185: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 14:55:13.51 ID:srcZDy/ro

善子「わかったわ……。じゃあ、お昼に理事長室で」

鞠莉「あと、善子」

善子「何?」

鞠莉「あなたも授業は出なさい」

善子「え!?べ、別に何度も受けた授業だし……」

鞠莉「あなたは1学期の出席日数もただでさえカツカツなんだから……何かあったときに進級に響くわよ」

善子「う……で、でも……」

鞠莉「いつ、ループが終わっても大丈夫なように備えて」

梨子「……私たちもそのために全力を尽くすから」

善子「……。……わ、わかったわよ……」
186: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 14:55:44.78 ID:srcZDy/ro

よっちゃんはのそのそと保健室のベッドから這い出て教室へ向かっていった。


梨子「さて……私たちも……」

鞠莉「OK.また後でね」


……私にとっての4回目……よっちゃんにとっての8回目の9月5日が始まった。





    *    *    *

187: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 14:56:21.75 ID:srcZDy/ro

お昼、理事長室に着くとすでによっちゃんと鞠莉さんが待っていた。


善子「リリー遅いわよ」

梨子「ご、ごめん」

鞠莉「さて、それじゃ、作戦会議を始めますか」

善子「……って言っても、どうするの?」

鞠莉「そうね……まず、前回と前々回との違いがあるわね」


鞠莉さんが言う。


梨子「……私が標的にはなっていなかった」

鞠莉「前回は梨子自身が自分のタイムリープを大いなるモノ側に伝えてしまった可能性が高かったのにね」
188: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 14:56:56.37 ID:srcZDy/ro

善子「……そうね」

鞠莉「つまり、考えられる可能性は2つかな?梨子は標的としての優先度は低いか、善子のかなり近くにいないと巻き込まれることはない。」

梨子「あともう一つ……」

鞠莉「One more?」

梨子「私とよっちゃん以外の人もタイムリープできることがわかりました。」

鞠莉「Oh, yes! 確かにその通りだね!」


正直、これが懸案事項の一つだった。

もし、鞠莉さんがタイムリープの対象外だったら、また仲間集めからやり直しだったし……


善子「……とは言っても、あんまり状況は前回の周と変わらない気がするんだけど……」

梨子「……それなんだけど……儀式のこと少しわかったかもしれない」

善子「……え!?」

鞠莉「じゃあ、梨子も見たってことかな?」

梨子「……!!」
189: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 14:57:22.96 ID:srcZDy/ro

鞠莉さんの言葉で一気に自分の理論に自信が出てくる。


梨子「タイムリープの直前かな……夢みたいな光景で見たんだけど……ロザリオを握り締めて何かに祈ってる女の子が出てきたんだけど……」

鞠莉「……きっと、それが儀式のときの善子の記憶よね。善子の死に戻りに巻き込まれる形で戻ってるから、何かの拍子で善子の記憶が流れ込んできても、それはそれで納得が出来るわ」


ロザリオを使っただけの簡素な儀式。……というか、祈り。条件は合っているし、今までよっちゃんと調べたものの中にはなかったものだ。

つまり、これがよっちゃんが忘れていた儀式。

二人で確認しあってから、よっちゃんの顔を見ると


善子「…………」


よっちゃんは顔を顰めていた
190: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 14:57:49.27 ID:srcZDy/ro

梨子「……よっちゃん?」

善子「え、ああ……ちょっと、そのときの記憶を辿ってただけよ」

梨子「そ、そう……?」

善子「とりあえず、そのときのことを私が思い出せればこの死に戻り問題は解決するってことよね」

鞠莉「……まあ、Equal解決かはわかんないけど……大いなるモノ側とのContactを取る手段には成り得るって考えていいと思うわ。」

善子「そうね……ちょっと、思い出してみるわ。」


やっと、解決の糸口が見えてきた……暗中模索がずっと続いていたため、状況の好転に私は心底安堵した。

……でも――


善子「…………」
191: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 14:58:30.16 ID:srcZDy/ro

難しい顔をして記憶を掘り返す、よっちゃんの姿からは……

いつか感じた、嫌な違和感を覚えた……。





    *    *    *





9月7日、水曜日。お昼休み。


梨子「え、ホントに!?」

鞠莉「儀式、思い出せたの?」

善子「えぇ……二人の見た光景をもとに……改めて調べなおしたら、やりかたがわかったわ」
192: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 14:58:58.13 ID:srcZDy/ro

よっちゃんの報告に場が沸き立つ。


善子「……儀式って言うには簡単すぎてね。灯台下暮らしだったわ。……ロザリオを胸に神に祈るだけよ」

梨子「え、そんな簡単なの……?」

鞠莉「……へえ……神に祈るってのはこれまた随分Simpleね」

善子「それで、やるタイミングなんだけど……11日の午後6時がいいとおもうんだけど」

梨子「え……?」


それって死に戻りの時間じゃ……


鞠莉「……随分Riskyな提案だね?何か理由でも?」

善子「……これだけ簡単な儀式で大いなるモノに干渉できたら、もっと世の中いろんな人が神と対話してると思うのよ」
193: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:01:00.99 ID:srcZDy/ro

梨子「……まあ、それは確かに……」

善子「……つまり、大いなるモノに近づける時間があるんじゃないかって思うのよ」

鞠莉「なるほど……だから死に戻りの瞬間……大いなるモノ側から干渉してくる瞬間が対話の瞬間だと思うってことね」

善子「ええ、それに調べがついたときに家でもう試してみたけど、特に接触は出来なかったし」

鞠莉「……まあ、一応理には適ってるかな……」

善子「……じゃ、あとは当日ね。土日は空けて置いてね」


それだけ言って、よっちゃんは私たちに背を向けて理事長室を出て行こうとする。


梨子「え、よっちゃんどこいくの……?」

善子「どこって……食堂行こうかなって」

鞠莉「……あら、もう解決気分なの?」

善子「どっちにしろ、これ以上進展しようもないし……あとは当日を待つだけよ」
194: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:04:26.71 ID:srcZDy/ro

そう言って、よっちゃんは出て行ってしまった。


梨子「……」

鞠莉「……どう思う?」

梨子「……明らかに何かを隠してる……」

鞠莉「……そうよねぇ……」


どう見ても不自然だ……


鞠莉「……ねえ、梨子……言うか迷ってたんだけど……」

梨子「……?」


鞠莉さんは一瞬ためらったが……
195: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:06:56.34 ID:srcZDy/ro

鞠莉「……前々から思ってたんだけど……善子、この問題の解決に対して、なんだか随分消極的じゃない……?」

梨子「…………」


思い返してみると、よっちゃんの言葉には「できるの?」「どうしようもなくない?」と言ったニュアンスのモノが最初から多かった気がする。


鞠莉「自分のことなのに非協力的というか……善子はタイムリープから脱出する気が本当にあるのかしら……」

梨子「……でも、死にたがってはいないと思う……」

鞠莉「まあ、それは……」


ふと……一緒にマリオをやったときのことを思い出す。


善子『……昔はこういう、何度死んでも大丈夫な人生にあこがれたもんだけどね……。実際なってみるとロクなもんじゃないわ。……これは痛みが伴わなくて初めて成立するものなのよ。』


……この言葉が嘘だとは思えない。
196: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:07:26.95 ID:srcZDy/ro

鞠莉「まあ、それはいいわ……。あともう一つ」

梨子「もう一つ……?」

鞠莉「……これは梨子も気付いてるんじゃない?」

梨子「…………儀式のことですか?」

鞠莉「Yes. ……普通ロザリオ握り締めて祈るだけの儀式――忘れたりする?」

梨子「……」

鞠莉「……ちょっと、わたしは今の善子の行動や言動は信用できないんだけど……もしかして――」

梨子「――鞠莉さん」


私は鞠莉さんの言葉を遮った
197: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:07:53.53 ID:srcZDy/ro

鞠莉「…………」

梨子「今は……今はよっちゃんを信じませんか……?」

鞠莉「……梨子はそれでいいの?」

梨子「……危なくなったら、自分の身は自分で守ります……。」

鞠莉「……わかったわ」


鞠莉さんはそれ以上は何も言わなかった

――よっちゃん……よっちゃんは……本当はどうしたいの……?





    *    *    *
198: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:08:23.35 ID:srcZDy/ro

9月11日、日曜日。

前回同様、土曜からよっちゃんの家に泊まって


鞠莉「Good morning...」

善子「……もう昼よ」

鞠莉「……んー……また、Marioやってるの?」

梨子「まあ、なんかもうお決まりというか……そういう感じかなって」

鞠莉「……そ。じゃあ、善子……Mario交代して」

善子「え、何でマリーはさも当然のようにマリオをプレイキャラとしてヨハネから横取りしようとしてるの?」

鞠莉「だって、マリーとマリオって……」

善子「いや、それ前聞いたし……」
199: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:08:51.33 ID:srcZDy/ro

鞠莉「いーからー!!マリーはマリオじゃないと嫌なのー!!」

善子「あーもう!!うっさい!!わかった、わかったわよ!!」


こうして一緒に遊んでるときはよっちゃんは自然なのに……

どうして……





    *    *    *
200: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:09:20.46 ID:srcZDy/ro


午後6時……10分前。

マリオは今回もクリアできませんでした……。今回は最終ステージまでは行ったのに……。


梨子「次こそはクリアできるかな……」

善子「……そうね」


よっちゃんは部屋のベランダへの窓を開け放つ。


鞠莉「窓開けるの?」

善子「ええ……調べた手順だとこうするの」

鞠莉「……そう」
201: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:09:48.38 ID:srcZDy/ro

開け放った窓から風が室内に吹き込んでくる。

今日は……風が強い……。

窓際の立つよっちゃんの髪が風になびく……


善子「ねぇ……リリー……マリー……」

梨子「……なに?」

鞠莉「…………」

善子「……また、3人で一緒にマリオをやりましょう」


よっちゃんはこっちを振り返りながら、そう言った。

202: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:10:16.27 ID:srcZDy/ro

梨子「……?……う、うん」

鞠莉「……次はループ脱出した先でね」

善子「……うまくいけばね」

鞠莉「……儀式はわかったんでしょ?」


珍しく鞠莉さんの声が少しイラついてるのがわかった。


善子「ええ……ちゃんと覚えてるわ……」

梨子「…………」


よっちゃんは私たちの方を向いて、部屋の真ん中に膝立ちになる。

手にはロザリオを握り締め……祈りを捧げるように両の手をくっつけた。
203: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:10:53.47 ID:srcZDy/ro

鞠莉「……梨子」

梨子「……はい」


鞠莉さんに促されて、二人で部屋の隅に寄る。


善子「……それじゃ、始めるわよ」

よっちゃんはそのまま、目を瞑った


――時刻は時針と短針が一直線になろうとしていた。


よっちゃんが祈りを捧げて――すぐに目を開けた
204: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:13:04.60 ID:srcZDy/ro

善子「……やっぱ、これじゃダメね」

梨子「……!?」

善子「……ちょっと、事情が変わった」


よっちゃんはすっと立ち上がり、私を見つめた。


鞠莉「……!!」


鞠莉さんがすかさず、私をよっちゃんの間に割って入る。


鞠莉「善子やっぱり……あなた……!!」

善子「…………ふふふ」

鞠莉「あっち側なのね……!!」
205: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:13:30.87 ID:srcZDy/ro

鞠莉さんがあのとき、言いかけた言葉をよっちゃんに向かって発した。

……私は――

――よっちゃんの目を見ていた。


梨子「……違う……」

鞠莉「……え?」


次の瞬間――よっちゃんが身を翻した。窓に向かって。


梨子「待って!!」

鞠莉「梨子ダメよ!!」


鞠莉さんに止められる
206: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:15:48.34 ID:srcZDy/ro

梨子「違う!!鞠莉さん!!違うの!!」

鞠莉「り、梨子……なに言って……!!」

善子「リリーッ!!!」


善子ちゃんの声が響き渡った。


善子「……ばいばい……生きてね」


よっちゃんがその言葉と共に走り出した――ベランダに向かって


梨子「よっちゃん、ダメ!!待って!!」

鞠莉「!?」
207: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:16:20.42 ID:srcZDy/ro

私は鞠莉さんを振りほどいてよっちゃんに手を伸ばす。

よっちゃんは――飛んでいた。

ベランダの外に向かって――


梨子「よっちゃんっ!!」

鞠莉「え……うそ……」


私は急いでベランダの――よっちゃんが飛び出した先に顔を出し、下を見た。

そこには…………。

よっちゃんとの距離が――遠すぎる……。……これじゃ、タイムリープが……。

――私は叫んだ。


梨子「よっちゃん!!絶対!!!絶対!!!助けるから!!!私、また気付くから!!よっちゃ――」
208: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:17:08.53 ID:srcZDy/ro


    *    *    *





梨子「……んぅ……」


目覚ましが鳴り響く。……うるさい。

ペシっと目覚ましを止めて、ベッドの上でぼんやりとする。

なんだか……悪い夢を見ていた気がする。

机の上のスマホを開く……



――9月5日月曜日――


と表示されていた。
209: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:17:58.32 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





朝の通学バスに揺られる。


千歌「ねねね、梨子ちゃん」

梨子「何?」

千歌「次の日曜って空いてる?」

梨子「空いてるけど……」

千歌「じゃあ、その日一緒に遊ぼっ」

梨子「いいけど……それなら、昨日も一緒に遊んだんだから、そのときに誘えばいいのに……」

千歌「えーだって、朝思いついたんだもん」

梨子「もう……行き当たりばったりなんだから……」

千歌「えへへ……」
210: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:18:29.01 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





――放課後。部室に行くと。


ルビィ「善子ちゃん……大丈夫……?」

善子「……ごめん、ちょっとあっち行ってて……」

ルビィ「ぅゅっ……ご、ごめん……」

梨子「どうかしたの……?」

花丸「……ああ、梨子ちゃん……善子ちゃんが体調悪いみたいで……」


私の声に気付いたよっちゃんが顔をあげた。


梨子「……?」


その顔は……どこか虚空を見つめていた気がした……。
211: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:19:04.34 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





梨子「ねぇ、よっちゃん……」

善子「…………」

梨子「よっちゃん、待ってよ……!!」

善子「ついて来ないで……」

梨子「……どうして……?」

善子「……もう放って置いてよ……」

梨子「……え……?」

善子「なんで放っておいてくれないのよ……っ!!」
212: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:19:31.92 ID:srcZDy/ro

梨子「そ、そりゃ心配するよ……」

善子「なんで、なんで……」

梨子「よっちゃん……?」

善子「……私……もうあなたたちに迷惑掛けたくないの……」

梨子「……え……?」

善子「…………ごめん、もう放っておいて……」

梨子「…………」





    *    *    *
213: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:20:22.33 ID:srcZDy/ro

9月6日、火曜日。


梨子「……え?今日よっちゃん学校来てないの?」

ルビィ「うん……。昨日体調悪そうだったし……梨子ちゃん?」

梨子「…………」


昨日の様子……よっちゃん少しおかしかった……。私は不安になる。


梨子「……私お見舞いに行こうかな……」

鞠莉「……それなら、今日はユニット練習にしない?」

梨子「鞠莉さん……?」


鞠莉さんが私の呟きを聞いて、そう提案した。
214: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:21:30.34 ID:srcZDy/ro

ダイヤ「別に構いませんが……Guilty Kissはどうするのですか?」

鞠莉「ふっふーん。……リリーと一緒にヨハネのお見舞いに行って来るわ!」

梨子「鞠莉さん……?」

果南「ま、それでいいんじゃない?じゃあ、マルこっちおいで」

花丸「はーい。……じゃあ、梨子ちゃん、善子ちゃんのことお願いね」

梨子「う、うん……」

曜「じゃあ、CYaRon!も練習始めるよー」

ルビィ「はーい」

千歌「よーし、やるぞー」

鞠莉「それじゃ、梨子。行きましょ。」

梨子「あ、はい……」
215: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:22:40.61 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





バスに揺られて、鞠莉さんと二人で沼津に向かう。


鞠莉「ねぇ、梨子……」

梨子「なんですか?」

鞠莉「変な話……していい?」

梨子「……いいですよ」

鞠莉「昨日から善子のこと見てるとすごい不安になるの……」

梨子「…………」
216: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:23:06.93 ID:srcZDy/ro

鞠莉「昨日からなのに……ずっと前から善子のこと見てると不安だった気がするの……」

梨子「……鞠莉さん」

鞠莉「……ごめん……変なこと言ったね……」

梨子「……たぶん、私も同じこと思ってます……」

鞠莉「……え……」

梨子「……昨日からよっちゃんを見ると……ずっと前からよっちゃんのことが心配で心配で……堪らなかった気がするんです……。」

鞠莉「……そう」

梨子「……私……なんでかわからないけど、今よっちゃんを一人にしちゃいけない気がします……」

鞠莉「…………」





    *    *    *
217: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:23:50.59 ID:srcZDy/ro

――ピンポーン

よっちゃんの家のインターホンを鳴らす。

程なくして、繋がる。


善子『……帰って』


よっちゃんの声だった。


梨子「よっちゃん大丈夫……?お見舞いに……」

善子『……帰ってっ!!……リリーもマリーもっ!!』


ガチャリとそこでインターホンの通話が切れた。


梨子「…………」

鞠莉「…………」
218: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:26:39.90 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





梨子「……鞠莉さん」

鞠莉「……何?」

梨子「……よっちゃん、どうして鞠莉さんが一緒にいることわかったんですかね」

鞠莉「……うーん、雰囲気?」

梨子「……まさか」

鞠莉「……なんらかの方法で私が梨子と一緒にお見舞いに来ることを知ってたとか?」

梨子「……ルビィちゃんがLINEでも送ってたのかな」
219: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:27:06.69 ID:srcZDy/ro

鞠莉「あーありそう……でも、インターホン取って開口一番に帰ってなんて言うかしら?カメラとかあった?」

梨子「……たぶん、なかったかな……」

鞠莉「…………」

梨子「…………」





    *    *    *





9月9日、金曜日。
220: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:27:45.79 ID:srcZDy/ro

鞠莉「梨子……また来てたのね」

梨子「鞠莉さんも」

鞠莉「まあ……なんかざわざわするのよ」

梨子「……わかります」

鞠莉「善子……家から出てきた?」

梨子「……出てきませんね……今放課後だから……お昼から出かけてたらわからないけれど……」

鞠莉「……そうね」

梨子「……今日も終バスの時間まで出てこないかな……」

鞠莉「……じゃあ、明日明後日は休みだから一日見張ってみる?」

梨子「……まるでストーカーですね」

鞠莉「Stalkingだったら慣れてるつもりよ」

梨子「そんなことで胸を張らないでください……」
221: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:28:12.98 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





9月10日、土曜日


梨子「……私たち何してるんだろう」

鞠莉「……さぁ……?」

梨子「…………」

鞠莉「…………」

梨子「……よっちゃんが出てきたらどうします?」

鞠莉「……捕まえる?」
222: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:28:54.44 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





9月11日、日曜日


鞠莉「……あ……」

梨子「……よっちゃんだ……」

鞠莉「……なんか今にも死にそうな顔してるわね」

梨子「……あ、どこか行こうとしてる……」

鞠莉「追いかけよう」

梨子「はい」
223: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:30:13.67 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





梨子「……海」

鞠莉「……沼津港に何の用かしらね」

善子「……リリー、マリー……出てきて」

梨子「……」

鞠莉「……」

梨子「……いつから気付いてたの?」

善子「……前世から」

鞠莉「……Witに富んでるわね」
224: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:31:02.29 ID:srcZDy/ro

善子「…………もう放っておいてよ」

梨子「…………」

鞠莉「…………」

善子「……何度やっても……何度繰り返しても……なんで気付くのよ……
   
   何度逃げても、何度変えても、何度断っても、何度も何度も何度も何度も……
   
   なんで……なんでそんなに……私のこと大切に思ってくれるのよ……。」

梨子「……なんのことか……わからないけど……きっと、何度でも気付くよ……」

鞠莉「……そうね……なんのことかわからないけど……私しつこさには自信あるから」

善子「……わかった。……今回は私の根負けってことにしてあげる……。
   
   もう一度……もう一度だけ……私の我侭に付き合って……」
225: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:31:51.64 ID:srcZDy/ro

よっちゃんのわき腹の辺りが紅く染まる。

ナイフか何かで自分を刺したんだと思った。

時刻は――時針と分針が直線になろうとしていた。





    *    *    *
226: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:32:18.48 ID:srcZDy/ro

「ねぇ、よっちゃん?これお店で見つけたんだ……」


ここ……どこだろう……この声……どこかで聞いたことがあるような……ないような……

目の前で後ろ髪をバレッタで止めた少女が話しかけてくる。


「……これ……ロザリオ……?」

「うん!よっちゃんこういうの好きかなって……」

「……真ん中に宝石がついてる……高かったんじゃないの……?」

「あはは……宝石なんて……ただの水晶玉だよ……」

「そうなの?……でも綺麗……ありがとう……リリー」


そのとき、視線の先――手にあるロザリオから水晶玉がポロリと取れた
227: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:32:44.91 ID:srcZDy/ro

「あっ!?」


コロコロと水晶玉が転がっていく


「ちょっと、いくらリトルデーモンからの贈り物だからってこういうプチ不運いらないから!!」


視線は夢中で水晶玉を追いかける。


「――よっちゃん!!」


水晶玉が……コロコロと――道路に転がって


「!?」
228: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:33:11.39 ID:srcZDy/ro

声がしたと思ったら――ドンと背中を押された。

キキイィィィィと激しいブレーキ音が耳を劈く。

視線がその音の方向を追う。

そこには……赤い何かに塗れた……何かが転がっていた……

水晶玉は……車に潰されて砕けてしまっていた――





    *    *    *
229: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:33:40.87 ID:srcZDy/ro


目を開ける――自室のピアノを確認する。


梨子「……そっか……そういうことだったんだ……」


全てを思い出した……。

そして、全てが繋がった……。


梨子「――あの日、死んだのは――本当は……私だったんだ――」


習慣のように開いたスマホには


――9月5日月曜日――


と表示されていた。

230: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:34:12.80 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





日付を確認した、瞬間。

プルルルルと携帯が着信を告げた。

名前を見なくても誰からの着信かはわかった。

通話ボタンを押して耳に当てる。


梨子「……鞠莉さん」

鞠莉『……そっちに車回すわ』

梨子「……見ました?」

鞠莉『……見たわ、大丈夫?』

梨子「……大丈夫です……」
231: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:34:39.87 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





私は人生初めての黒塗りの送迎の車に乗り込んで


鞠莉「Good morning. 梨子」

梨子「おはようございます、鞠莉さん」

鞠莉「出してもらっていい?全速力で……浦の星女学院まで」


鞠莉さんがそう言うと、車が走り出した。


鞠莉「……梨子……」

梨子「……はい」
232: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:35:17.09 ID:srcZDy/ro

鞠莉「……わたし……善子を信じてあげられなかった……」

梨子「…………鞠莉さんは私を守ろうとしてくれました」

鞠莉「…………」

梨子「……よっちゃんも……ずっと私を守ろうとしてくれていました……」

鞠莉「……ええ……」

梨子「……今……鞠莉さんはどうしたいですか……」

鞠莉「……善子を助けたい……」

梨子「……私もです……想いは……同じです……」


朝の内浦の海岸沿いを――浦の星女学院に向けて車が走り抜けていった。

233: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:35:51.16 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





私と鞠莉さんは浦女に付くと、迷いなく一直線に――向かって

理事長室のドアを開いた。


善子「……遅いわよ……リリー、マリー」

梨子「……ごめん……本当にお待たせ」

鞠莉「……善子……ごめん」

善子「…………たぶんなんだけど、この周回で……全部知っちゃった感じ……?」


よっちゃんは私の目を真っ直ぐ見据えて、そう言った。
234: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:37:05.08 ID:srcZDy/ro

梨子「……うん」

善子「そっか……。……じゃあ、もう……ここまでね……最後に話せて……気付いてくれて、嬉しかった……」

鞠莉「…………」


私は――


善子「リリー……」


――よっちゃんを抱きしめていた。


善子「……あなたは優しすぎるのよ……あとは全部は私が引き受けるから……」

梨子「――ダメだよ、そんなの……っ!!」
235: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:37:32.46 ID:srcZDy/ro

善子「…………」

梨子「私の代わりによっちゃんが死ぬなんて……絶対ダメ……そんなの許さない……」

善子「……そんなんじゃないわよ……あんなの私の不注意で私が死んだみたいなもんじゃない……むしろ、助けられたのは私の方なのよ?」

梨子「……でも、それでも……その業は私の業だよ……私がよっちゃんを助けたいって思ったから……助けたんだもん……私の気持ちを勝手に盗らないで……」

善子「……じゃあ、リリーは自分が死んでもいいの……?」

梨子「そうじゃない……そうじゃないけど……よっちゃんが一人で死ぬなんて間違ってるよ……っ!!」

善子「……そうね……そんなことわかってるわ……。……でも、どうにもならないのよ……」

梨子「よっちゃん……」

善子「何度繰り返しても、解決策なんて出てこない……だって、この物語は……誰かが死ぬことから始まってるから――」

梨子「……それは違う……っ」

善子「え……?」
236: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:39:15.39 ID:srcZDy/ro

いつかの花丸ちゃんの言葉を思い出す


花丸『制約や条件を知って、その上で繰り返していくことによって、目の前の問題を打開することに物語の軸があるずら』


梨子「困難があるなら、それを皆で……知恵と勇気で……問題を打開することが物語だよ……っ!!」

善子「……っ!」

梨子「自分の解釈で勝手に完結しないでよっ!!"私たち"の物語を勝手に終わらせないでよっ!!」

善子「そんなこと言ったって、どうしようもないじゃない……!!……私は……これでいいのよ……リリーさえ生きていてくれれば……」

梨子「よっちゃんっ!!」

鞠莉「……善子」

善子「……何?マリーまでリリーみたいに甘いこと言うつもり?」
237: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:39:52.70 ID:srcZDy/ro

鞠莉「……もう嘘吐かなくて良いから……」

善子「……は……?」

鞠莉「……そんな優しい嘘……吐き続けなくていいから……」


鞠莉さんが私とよっちゃんを包み込むように抱きしめた


善子「何言ってるの……私は自分の意思でリリーを守ろうと……だから私が身代わりになってそれで終わりで……!!」

鞠莉「じゃあ、なんであなたは……学校に――ここに来たの?」

善子「……!?」

鞠莉「……ずっと怖かったんだよね。……ずっと助けて欲しかったんだよね。……でも梨子が死ぬことも怖くて。……梨子に言ったらそんなの許してくれないこともわかってて」

善子「……わ、わたしは……」
238: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:40:45.65 ID:srcZDy/ro

鞠莉「学校に来なければ、それで誰にも気付かれずに終われるはずなのに……ここに来たのは、そういうことじゃない?」

善子「……ち、ちが……っ……」

梨子「よっちゃん……」

鞠莉「善子……」

善子「……ぁ……っ……」

梨子「……もう、嘘吐かなくて……いいんだよ……」

善子「……ぁ……ぅ……ぁぁ……っ……」

鞠莉「……死ぬのが怖くない人なんて、この世にいないよ……。それがいくら大切な人の身代わりだったんだとしても……」

善子「……う……ぐす……っ……うぅ……っ……」

梨子「……よっちゃん……本当の気持ち……教えて……?」

善子「……怖いよ……」
239: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:41:13.34 ID:srcZDy/ro

善子「……怖い……っ……もう……っ……死にたくない……っ……死にたくない……っ……死にたくないよぉ……っ……!!
   
   生きていたい……っ……リリーと……マリーと……皆と……っ……痛いのも……っ……辛いのも……っ……怖いのも……っ……悲しいのも……っ……
   
   もう嫌だよぉ……っ……リリー……っ……!!……マリー……っ……!!」


善子「――助けて……っ……!!」

梨子「……うん」
鞠莉「……ええ」


より強くよっちゃんを抱きしめて……私たちはよっちゃんが泣き止むまでぎゅっと……ぎゅっと抱きしめていた。





    *    *    *
240: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:42:38.41 ID:srcZDy/ro

鞠莉さんは一旦連絡したいところがあるらしく外に出て行った。


梨子「よっちゃん……落ち着いた?」

善子「……うん……ありがと、リリー」


よっちゃんの手をぎゅっと握る。


梨子「……一緒に生きよう……皆で……」

善子「……うん……」


程なくして、鞠莉さんが戻ってくる。
241: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:44:05.24 ID:srcZDy/ro

鞠莉「……善子を守る準備が出来たわ」

善子「……どういうこと……?」

鞠莉「前に言ったじゃない……どんな状況からも善子を守れる状況を作ればいいって……」

梨子「あ、そういえば……そういう場所があるって……」

鞠莉「ええ……もしかしたら、これで地球が滅ぶくらいのことが起こるかもしれなけど……まあ、そんときはそんときってことで……今、使用許可貰ったから」

善子「使用許可……?」

鞠莉「ええ」


鞠莉さんは胸を張って――


鞠莉「小原家の所有する地下核シェルターよ」


――そう言った。
242: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:44:36.49 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





9月11日、日曜日。


善子「核シェルターってこうなってるんだ……初めて入ったかも」

梨子「わ、私もだよ……」

鞠莉「何二人ともびくびくしてるの?今からここが私たちを守る家なのよ?」


核シェルターって言うから中はだだっ広い空間が広がってて、それを頑強な壁が守ってくれてる施設だと思っていたのだけれど……

中は案外普通で――テレビまで置いてある。
243: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:45:03.88 ID:srcZDy/ro

善子「というか、こんな施設持ってるって……小原家恐るべし……」

梨子「……あはは」

鞠莉「……それなりに許可貰うのは大変だったんだけどね。」


……さて、時計を確認すると……現在は丁度正午を指す時間だった。


鞠莉「……時間までなにする?」

善子「……まあ……そんなの」

梨子「……決まってるよね」

善子・梨子・鞠莉「「「マリオ!!」」」


三人の声が揃う。なんだか、おかしくて笑ってしまう。
244: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:45:33.50 ID:srcZDy/ro

善子「核シェルターでマリオって……どうかしてるんじゃないの」

梨子「一生できない経験かもね……」

鞠莉「……さすがのわたしでもこの経験は今回限りかもしれないわ」

梨子「とりあえず、はじめよっ」

善子「お、やる気ね?リリー」

梨子「今回はクリアするんだからっ!!」

鞠莉「はい、Mario取ったー!」

善子「って、勝手に始めてるし!?マリオはヨハネに譲りなさいよ!!」

梨子「また、その問答やるのー?いいから始めるよ!」


三人で馬鹿みたいにゲームをやって、笑って……私たちはこうして生きて行きたい……これまでも……これからも……
245: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:46:18.60 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





善子「あ、ちょっとマリー!!そこ邪魔!!」

鞠莉「What!?ちょ、ヨハネ突っ込んでこないでって!!」


ラスボスのクッパにぶつかって、よっちゃんと鞠莉さんのプレイキャラが同時にコロッと言う音ともにドロップアウトする。


善子「ちょっともう残機ないじゃない!!マリーがここまでやられすぎなのよ!?」

鞠莉「いやいや、そこは上級者の力でうまくエスコートしてくれないと……」

善子「全く反省していないっ!?……っく、あとはリリー……任せたわよ……!!」

梨子「う、うんっ!!」
246: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:49:06.62 ID:srcZDy/ro

最後の1機……クッパとの一騎打ち……

炎が飛んでくる。


梨子「あ」


言葉とは裏腹に飛んできた炎に一直線にぶつかって、コロッと言う音と共に私のプレイキャラがドロップアウトし

画面に『GAME OVER』の文字が映し出される


善子「…………」

鞠莉「…………」

梨子「…………」

善子「……普通ここは倒す場面でしょ」
247: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:49:33.59 ID:srcZDy/ro

梨子「ご、ごめん…………」

鞠莉「ま……しょうがないわね……今何時?」


時計を見ると午後6時……10分前を指していた。


善子「……地球消滅をマリオやりながら迎えるかもしれなかったわ」

梨子「あはは、夢中でやりこんじゃったね……」

鞠莉「さて……じゃあ、部屋の真ん中に行きましょうか」


三人でシェルターの真ん中に移動する。
248: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:50:00.39 ID:srcZDy/ro

善子「離れてなくていいの……?」

鞠莉「……まあ、ここが壊れるようなことが起こったら、ほぼ確実に皆死ぬから」

梨子「……それにもう一人にはしないから……ね?」

善子「……リリー……マリー……うん」


ぎゅっと三人で抱き合う……


間もなく時計は――時針と分針が一直線になろうとしていた。

……………………


善子「……ぅっ……」


よっちゃんから軽くうめき声があがる
249: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:51:13.71 ID:srcZDy/ro

鞠莉「……善子……?」

善子「……っっ……!!!?……っっ……!!!!」

梨子「よっちゃん!?」


よっちゃんが突然苦しみ始めた


梨子「な、なに!?」

善子「……!!!!!」


周りには何も異常はない。よっちゃんにだけ何かが起こっている。

助けなきゃ……!!何か不慮の何かが起こってるんだ……!!……集中して頭をフル回転させる……!!


梨子「……心臓発作!!」
250: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:52:19.06 ID:srcZDy/ro

その言葉が私の口を飛び出した――そのまま、すぐによっちゃんを寝かせ、心臓マッサージの体勢に移る。

やり方なんて、学校で受けた救命講習程度のものしかわからないけど、とにかく助けなきゃ。


善子「――――」


よっちゃんはもうすでにほぼ意識がなかった。

胸に手を当てる――やっぱり、心臓の脈拍が酷く弱くなっている……


梨子「よっちゃん……!!」


胸をぎゅっぎゅっと押して心臓マッサージをする。


梨子「よっちゃん……っ!!」
251: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:53:56.08 ID:srcZDy/ro

涙が出てくる……守るっていったのに……っ……また苦しい思いを……っ……怖い思いを……っ……

人口呼吸をして、心臓マッサージをして……繰り返して……でも、戻らない……


鞠莉「……梨子!!……AED取ってきたわ!!」

梨子「どうすればいいですか!?」

鞠莉「とりあえず、上脱がして……ああいや、ハサミで切って!!」

梨子「はい!!」


ハサミを服に当てる


梨子「ごめんね、よっちゃん!」


服をばっさり切って、上を脱がす。
252: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:56:48.40 ID:srcZDy/ro

鞠莉「AEDやるわよ!!」

梨子「はい!!」


鞠莉さんがAEDを取り付けて、電気ショックボタンを押す。


梨子「よっちゃん……っ!!」

鞠莉「ダメ、意識戻ってない!!」

梨子「心臓マッサージ続けます!!」


よっちゃんの心臓は鼓動どんどん弱くなっていく……


梨子「よっちゃん……っ!!!」


梨子「よっちゃん……っ!!!!」



――そして、無常にも――
253: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:57:21.55 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





「これでもない……いや、これも試す!!全部試す!!」

「善子……もう……」

「……っ……マリー……!!……うるさいっ……!!」

「梨子のお通夜……行かなくてよかったの……?」

「……リリーが死んだなんて……信じない……」

「…………千歌もそう言ってたわ。……棺桶にすがりついてずっと泣いて……」

「……もうあっちいって!!!!」

「……ごめんね……」
254: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:58:27.12 ID:srcZDy/ro

私の怒声にマリーが部屋を出て行った。

涙が止まらない。


「次、この儀式」


部屋中ひっくり返して、ありとあらゆる本やら、儀式の道具を使って


「何よこの不良品!!」


自分はなんのために日夜研究していたのだ


「大切な人、一人助けられないで……っ!!」

「次……!!」
255: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:58:56.51 ID:srcZDy/ro

「……次っ……!!!!」

「……うう……っ……」

「なんで何も起きないのよっ!!!!」


ガンと机を叩いた。痛い。

その拍子に机の上から――何かが落ちた。

……ロザリオだ……リリーから貰った……水晶玉のなくなった……ロザリオ……


「リリー……っ……リリー……っ……」


私はそのロザリオをぎゅっと握り締めた。
256: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:59:24.87 ID:srcZDy/ro

「ねぇ……もし神様がいるなら……っ……」

「返して……っ……返してよぉ……っ……」

「……お願い……っ……私に出来ることならなんでもするから……っ……お願いだから……っ……」

「お願いだから……っ……返して……リリーを……リリーを返してっ!!!!」


そのとき――ドクンと心臓が脈打った

「!?」


『――汝、如何様にして彼の者を寵愛す?』


頭の中に声が響く、誰かはわからないけど
257: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 15:59:58.30 ID:srcZDy/ro

「大切な人なの……!!でも、私の命を助ける代わりに死んでしまって……!!……もし、貴方が神様なら、お願い……なんでもするから……リリーを助けて……」


ただ祈る。


『……解せぬ……。』


理解してくれなくてもいい……お願い……お願い……リリーを……助けて……


『しかし……その言葉……その祈り……その覚悟が本物であると言うのならば、よかろう。』

『人の業故、無に帰すことは出来ずとも此方彼方にて因業の天秤の重しを交換するならば真の理に大きく干渉することもなかろう。』

『――汝の清き心に……祝福あれ――』


そして、世界が光に包まれた……
258: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:00:24.43 ID:srcZDy/ro

「な……に……?」

「なにが……起きたの……?マリー……?」


部屋の外にいたはずのマリーに声をかける。


「――え」


そこにはマリーはいなかった。

そして直感的に理解して、机の上のスマホを確認する。


9月5日……リリーが命を落とした、9月11日より前に戻っていた――





    *    *    *
259: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:00:52.52 ID:srcZDy/ro

目が覚める……部屋を見回すとピアノがあった。


梨子「…………っ」


また……守れなかった……。

唇をぎゅっと噛み締める。

そしたら、机の上のスマホに着信が来た。

手に取って通話ボタンを押す


梨子「……鞠莉さん……」

鞠莉「…………車を出すわ」

梨子「……家には来なくていいです」
260: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:01:24.89 ID:srcZDy/ro

鞠莉「...Why?――何故?」

梨子「今から走って向かうので……途中で拾ってください」

鞠莉「...OK」


少しでも早く――よっちゃんのところへ……行かなきゃ――

通話を終えて、ちらりと見たスマホの画面には


――9月5日月曜日――


と表示されていた。





    *    *    *
261: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:01:58.62 ID:srcZDy/ro

梨子「はぁ……はぁ……」


途中、鞠莉さんに拾われた車の中で息を切らす。


鞠莉「梨子、はいお水……」

梨子「す、すいません……」

鞠莉「……梨子、いち早く善子のところに行きたい気持ちはあなたと同じなんだけど……」

梨子「……?」

鞠莉「話しておかなくちゃいけないことがあるわ……」

梨子「な、なんですか……?」

鞠莉「善子の記憶……見たわよね……?」
262: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:03:31.31 ID:srcZDy/ro

梨子「は、はい……」

鞠莉「たぶんなんだけどね……梨子を救ってもらうために、祈ったから……神様が気まぐれで奇跡を起こしてくれたんだと思うの……」

梨子「……」

鞠莉「ただ、死んだ人は生き返らない……その業を覆すことは出来ない……だから――」

梨子「私とよっちゃんの生死の因業を入れ替えた……」

鞠莉「そうよ……」

梨子「そんな……そんなこと私は許可してない……」

鞠莉「…………」


勝手なことしないでよ……神だかなんだか知らないけど……。

――あれ?

そこでふと……私はおかしなことに気付いた。
263: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:05:04.38 ID:srcZDy/ro

梨子「……なんでよっちゃんは『死ぬ』んじゃなくて『死に戻り』してるの……?」

鞠莉「それが……あの記憶の中で言っていた『此方彼方にて因業の天秤の重しを交換する』ってことなんだと思うわ」

梨子「……ど、どういうこと……?」

鞠莉「……さっきダイヤを電話で叩き起こして、翻訳してもらったから間違いないと思う……よく聞いて――」


私は鞠莉さんの言葉を聞いて――目を見開いた。





    *    *    *
264: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:05:31.85 ID:srcZDy/ro

善子「リリー、マリー遅いわ――」

梨子「よっちゃん!!」

善子「わわっ!!」


私はよっちゃんが言い終える前に抱きついていた。


善子「ちょ、ちょっとリリー!!」

梨子「よっちゃん……ごめんね……」

善子「もう……いいから……こうして戻ってくることは出来たんだから……また、皆で考えましょう……」

鞠莉「それなんだけど……善子聞いていいかしら」

善子「……?……何?」
265: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:06:01.87 ID:srcZDy/ro

鞠莉「今、何回目のタイムリープ……?」

善子「え……えーと……。……詳しい数は覚えてないけど……。たぶん50弱くらい……?」

梨子「ご、ごじゅう……」


いろんな意味で自分の血の気が引いていくのがわかる。


鞠莉「……そうなると不味いわね……」

善子「え、なに?どういうこと?」

鞠莉「タイムリミットが近いってことよ」

善子「……え、うそ……」

梨子「死に戻りにも回数制限があるんだよ……」

鞠莉「それがもう近い……たぶんあと1回か2回が限界だと思う……」
266: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:06:28.72 ID:srcZDy/ro

善子「そ、そんな……せっかく、皆で生きようって……思えるようになったのに……」


今度はよっちゃんが青ざめる。


鞠莉「……だから、賭けをしようと思うの」

善子「……賭け……?」

鞠莉「――神様と直接取り引きするわ。」





    *    *    *
267: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:06:56.44 ID:srcZDy/ro

9月11日、日曜日。


ダイヤ「……今度は一体なんなんですの!!?」

果南「まあまあ、ダイヤ落ち着いて……」

ダイヤ「落ち着けるわけないでしょう!!?」

曜「まあ、突然Aqours全員鞠莉ちゃんに拉致られて……ここどこ……?日本?」

千歌「うわ、見たことないナマコいるよ!よーちゃーんみてみてー!」

曜「千歌ちゃん順応能力高すぎだよ……」

鞠莉「ちなみに一応日本よ……場所はTop secretだけどね♪」

ダイヤ「鞠莉さんっ!!」


鞠莉さんの姿を認めるとダイヤさんが掴みかかる。
268: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:09:30.92 ID:srcZDy/ro

ダイヤ「これはどういうこ・と・で・す・か~?」

鞠莉「Oh.ダイヤどうどうー」

ダイヤ「うっさい!!ですわ!!」

鞠莉「今からちょっとしたゲームをしようと思いまーす♪」

ダイヤ「は?」

ルビィ「げーむ……?」

花丸「ずら……?」

鞠莉「だけど、残念なことに今回はVideo gameじゃないのデース!!」

千歌「ほえ?どういうこと?」

鞠莉「はーい、これなーんだ♪」
269: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:10:12.15 ID:srcZDy/ro

鞠莉さんが足元に置いたカバンから粘土のような何かを取り出して見せる。


ルビィ「粘土……?」

鞠莉「いいえ、違いまーす。もっと危険なものです!」

果南「危険なもの……?」

花丸「粘土状の危険なもの……。……もしかして、C4爆弾――起爆粘土とか?」

ダイヤ「まさか……そんなわけ……」

鞠莉「その通り正解でーす!!」

ダイヤ「……は?」

鞠莉「ここにあるのは本物のC4爆弾だヨ♪」


Guilty Kiss以外のメンバー全員がざざざっと後ずさる。
270: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:10:39.31 ID:srcZDy/ro

鞠莉「あはは、それくらい離れたくらいじゃどっちにしろ木っ端微塵だから~♪」

ダイヤ「じゃ、じゃあ早くしまってください!!」

曜「しまっても関係ないような……」

鞠莉「まあ、本題はここからだから、ヨハネ、リリー」

善子「…………」


長めの上着を羽織った、よっちゃんがぶるぶる震えながら前に出る。

私はよっちゃんの身体を支えながらゆっくりと歩かせる。


果南「な、なに……?」


私はゆっくりとよっちゃんの着ている上着を捲った
271: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:11:06.71 ID:srcZDy/ro

ダイヤ「なぁっ!!!!?」


ダイヤさんが驚きの声をあげた


ダイヤ「な、なんで――」

ルビィ「善子ちゃん全身爆弾だらけなの!?」


よっちゃんの全身には先ほど鞠莉さんが見せたC4爆弾がいっぱいに括りつけられていた。


ダイヤ「こ、これはなんの冗談ですかっ!!」

梨子「実はよっちゃんが……今、ある人に脅されていて……」

花丸「脅されてる……?」

梨子「この爆弾は午後6時になると爆発するんです……身体から離す事も許されていません。」
272: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:11:48.83 ID:srcZDy/ro

鞠莉「でも、Guilty Kissは仲間の窮地を救わんと、立ち上がったのです」

梨子「……私たちは今この後ろにある……小原家の核シェルターの中でよっちゃんと一緒に時間まで過ごします」

千歌「え、それじゃ梨子ちゃんも鞠莉ちゃんも善子ちゃんも死んじゃうんじゃ……」

鞠莉「Yes!そういうことね!」

ダイヤ「……いい加減になさい!!」


ダイヤさんが案の定怒鳴り声を上げる


ダイヤ「いくらなんでも冗談が過ぎますわ!!」

鞠莉「ちなみに向こうのちょっと離れたところに同じ爆弾を仕掛けた岩があるんだけど……こっちは後10秒くらいで爆発しまーす」

ダイヤ「……貴方いい加減に――!!」
273: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:12:28.82 ID:srcZDy/ro

――ドッォオオオオオオオン

……と派手な音と共に高く高く水柱が上がった。


ダイヤ「…………」

ルビィ「…………」

果南「…………」

曜「…………」

花丸「未来ずらー……」

千歌「すごーい……」

ダイヤ「……今何時ですか?」


時刻は――午後6時……20分前を示していた。
274: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:12:57.38 ID:srcZDy/ro

鞠莉「というわけで……いくらギルキスの問題とは言え、Aqoursの他のメンバーに断りもなしに死ぬのはよくないと思ってお別れを言おうと思うわ、チャオ~♪」


そう言って鞠莉さんはシェルターに入っていく


梨子「よっちゃん、いこっか」

善子「――――」


よっちゃんがコクコクと首を振る。

そうして、Aqoursの面々が見守る中……私たちは3人はシェルターに入っていく。


鞠莉「あ、そうそう」


鞠莉さんが首だけ出して


鞠莉「核シェルターの鍵はここに置いておくね♪もし一緒に心中してくれる優しい~人がいるなら……マリーちゃん嬉しいな♪」


そう付け加えて中に入っていった。
275: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:14:14.21 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





時刻は午後6時……10分前。


鞠莉「さて……善子……外したわよ……」

善子「い、生きた心地がしなかったんだけど……」

鞠莉「まあ、ここはホンキでビビって貰わないと困るからね……それに、本当に生きた心地がしないのはここからだから」

梨子「……あはは」

善子「この炸薬量だと……シェルター内では生き残ることは不可能とか言ってたっけ」

鞠莉「まあ、どこ行っても木っ端微塵だろうね」

善子「いいの?」

梨子「……今更?」

善子「だってこれ……本当に死ぬわよ……」

鞠莉「……もう、一人になんてさせてあげないんだから」


――ぎゅっと、私と鞠莉さんでよっちゃんを抱きしめる。
276: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:15:07.26 ID:srcZDy/ro

善子「…………ありがと」

鞠莉「……ふふ、ここでお礼言えるくらいには善子も成長したんだね」

善子「善子じゃなくて、ヨハネ!!」

鞠莉「はいはい、ヨハネ」

梨子「……よっちゃん」

善子「リリー……」

梨子「……これが最後のチャンスだと思う……」

善子「……そうね」

梨子「絶対皆で帰ろう……帰って……そうだな……」

善子・梨子・鞠莉「「「マリオをやろう!」」」
277: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:16:10.04 ID:srcZDy/ro

梨子「次は絶対クッパ倒すから……」

鞠莉「ま、次もマリオは私だけどね~」

善子「はぁ……もうマリオは譲るわよ……」

梨子「ふふ……」

善子「もう……」

鞠莉「さて……」


ぎゅっと抱き合って、三人顔を見合わせる


鞠莉「Last battleだね♪私たちのクッパ戦」

梨子「……これは負けられないね」

善子「さぁ……行くわよ……!!」


三人一緒に目を瞑る……

間もなく時計は――時針と分針が一直線になろうとしていた――
278: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:22:19.23 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





――静かだった。


梨子「…………」

善子「…………」

鞠莉「…………」


目を開ける……。

時計に目を向けると時針と短針が一直線になっていた。……いや、それだけじゃない
279: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:23:05.10 ID:srcZDy/ro

善子「……秒針が……止まってる……」

鞠莉「第一Phaseはどうにか突破かな?」

梨子「……じゃあ、ここから交渉を始めようか――」


ガチャンと……音を立ててシェルターの鉄扉が開く――

……私だけ丁度扉に背を向けた状態だったけれど……

……私は背中越しにその人に声をかけた――


梨子「――千歌ちゃん――」

千歌「……やぁ」

――そこには千歌ちゃんが立っていた。

280: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:23:41.81 ID:srcZDy/ro

    *    *    *





千歌「……いつから気付いてたの?」

梨子「……疑ってはいたけど……正直、確信したのは最後のループかな」

千歌「ありゃりゃ……これで清算完了だと思ったんだけどなぁ」

善子「ところで一応確認していい?」

千歌「ん、どーぞ」

善子「貴方は何者?」


善子ちゃんが千歌ちゃんを見て言う
281: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:24:08.19 ID:srcZDy/ro

千歌「ふふ、身体は高海千歌ちゃんそのもの……精神はしばらく借りてる状態かな?」


つまり、媒介のタイプは候補その2……依り代、ということだ。


鞠莉「じゃあ、こっから取り引きと行きましょう」

千歌「あ、待って待って」

鞠莉「What?」

千歌「ゲームって言ったのはそっちでしょ?でも、これじゃゲームじゃなくてただの脅しだよね?」

鞠莉「あら……この場に引きずり出せただけでも、大したものだと褒めてくれると思ってたわ……」

千歌「あははっ それはそうかも!……どうやら私が神だってわかってたのはさっきの梨子ちゃんの言葉を聞く限り本当だと思うけど……Aqoursメンバー全員連れてきたのは保険なんでしょ?……それはちょっとずるいなぁって思うから――答え合わせをしようかなって思って」

善子「答え合わせ……?」

千歌「そ。どうやって神様がチカだって特定したのか……その知恵を見せてよ」
282: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:24:44.94 ID:srcZDy/ro

千歌ちゃんがニヤリと不適に笑う。


千歌「それが出来たら神との交渉する権利があると認めるよ」

善子「最後の最後まで足元見てくるのね……」

千歌「神の前で無理心中図ろうとしてるんだもん。そんな大罪人を許す器の大きさを褒めて欲しいくらいなんだけどな」

梨子「わかった……。」


私は条件を飲んで、話し始める。


梨子「じゃあ、まず……月曜日の千歌ちゃんの行動かな」

千歌「月曜?」

梨子「千歌ちゃんが朝から遊ぶ約束を取り付けてきたこと」

千歌「……」

梨子「前日に遊んでたところなのに、不自然だなって思ってたんだけど……まあ、いつもの千歌ちゃんのきまぐれかなって思ってたんだけど……。これには意味があったんだよね。」
283: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:25:28.74 ID:srcZDy/ro

千歌ちゃんを真っ直ぐ見据えて


梨子「――貴方は……最初から私を監視していた。」

千歌「……ふふ、正解」

梨子「そもそも、死の業は元々私にあった……それが私からよっちゃんに業が移ったって時点でかなり特例措置だったんじゃないかな。……だから、神側から見張り役を置いておきたかった。
   
   そこで最も早い段階で私に会える千歌ちゃんを選んだ……。依り代にしたのはお通夜のときかな?私の身体を媒介にしたのか、葬式の道具を媒介にしたのかはちょっとわからないんだけど……」

千歌「あ、それは前者かな。でも、すごいね。依り代にしたタイミングまで当ててくるとは……」

梨子「そして、最速で私とXデーの約束を取り付けて、タイムリープの瞬間よっちゃんとの接触のリスクを減らしたんだよね」

千歌「うんうん。」

鞠莉「……ただ、貴方は高を括っていた」

千歌「あちゃー、耳が痛いね」
284: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:27:56.23 ID:srcZDy/ro

鞠莉「そうは言っても、梨子がヨハネと一緒にいるだけで一緒にタイムリープするとは思ってなかった。」

梨子「それがわかってるなら、千歌ちゃんこそ強引に私と一緒に過ごす約束を取り付けるはずだもんね」

千歌「……これね、人払いって結構強い結界なんだよ?それをさも当たり前のようにすり抜けてくる人なんて今まで見たことなくってさー……だから、一緒にいる人も巻き込んじゃうなんて知らなかったんだよね」

善子「だから、貴方は焦って、1回だけリリーに標的をずらした……リリーの業だから、それで片をつけてしまえばそれで終わりだと思ったから」

千歌「あはは、正確にはちょっと違うけどね。まあ、概ね正解かな?」

鞠莉「その正確には違う理由もあとで説明するわ」

千歌「んーわかった。」

梨子「……でも、逆にそれが原因で私が強引に仲間集めに走ったことに貴方は焦った。……だから、Aqours皆に相談した、あの場で私が悪者になるように真っ先に口火を切ったんだよね」

千歌「この子のカリスマ性は結構目を見張るところがあったからね~……人間って割と流される生き物だから、この子が最初の言い出したら、そっちにほとんどの人は流れるだろうって思ったんだけど……結果、こっちの意見に引っ張れたのは半分以下だったのはちょっと誤算だったかな。」

善子「貴方……私の可愛いリトルデーモン達を舐めすぎよ?」

千歌「あはは、それは申し訳ない……確かにダイヤさんもルビィちゃんも果南ちゃんも結果としてこっちに来たとは言え、別に私の意見に流されてくれたわけじゃないしね。皆を見くびってたって言うのは全くその通りだよ」
285: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:29:51.16 ID:srcZDy/ro

千歌ちゃんはころころと笑って


千歌「……結果、Aqoursの中で私だけが予想外の行動を取っちゃったところもよくなかったね」


ふぅ……と千歌ちゃんは一息ついて……


千歌「じゃ、特定出来た理由は概ね納得できた……それじゃ、さっき鞠莉ちゃんが言ってたことも含めて……このタイムリープはなんだったのか……わかったかな?」

梨子「――因業の清算だよね」

千歌「……もっと具体的には?」

鞠莉「寿命の清算よね」

千歌「……ふむ、続けて」

鞠莉「そもそも、梨子と善子の死の因果を入れ替えただけだったら善子がタイムリープする理由にはならない……じゃあ、なんでタイムリープさせたか……?善子の因業が足りなかったからでしょ?」
286: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:31:26.30 ID:srcZDy/ro

善子「罪深き堕天使ヨハネが因業不足なんて……」

梨子「よっちゃん、黙って」

善子「……はい」

鞠莉「正確に言うなら、梨子よりも1歳年下のヨハネはその1年分は生き残ってくれないと因業の清算が出来なかった」

梨子「もっと正確に言うなら、私の誕生日も含めて433日間……よっちゃんはループの猶予を貰っていた」

千歌「……最後のは山勘?……たぶん提示されてる条件でそれを特定するのはほぼ無理だと思うんだけど」

鞠莉「……まあ、確かにこれは推測ね。筋が通った理由を考えるならこの数字が適当かなって思ったのは確かだけど……ちなみにループ回数って何回だったか聞いてもいいかしら?」

千歌「あぁうん、今回がきっかり50回目だよ」

鞠莉「ということはざっくり一周7日として約350日……」

善子「え、まだ余裕あるじゃない?」

梨子「いや……私たちの分があるから」

善子「え?」
287: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:32:55.04 ID:srcZDy/ro

千歌「あはは、それにも気付いてたんだ♪」

梨子「一緒にループした人も実質寿命が延びてるから……その分もよっちゃんの寿命から差し引かれてたんだよ」

善子「……マジ?」

千歌「マジマジ♪だから、タイムリープの途中で梨子ちゃんに死なれるとそれはそれでよくなかったんだよね。まあ、これ以上誤差を大きくされる可能性があったからどっちがリスクが高いかで悩んで、梨子ちゃんを狙ってみたんだけど……結果として善子ちゃんに庇われちゃったから~」


千歌ちゃんはケラケラ笑いながら


千歌「んで一緒にタイムリープの件だけど……5回目の自動車事故で+1人目、6回目の大地震で+2人目、7回目の室内転倒からは鞠莉ちゃんもいるから+4人目、その後8回目、48回目、49回目……そして、この50回目で+12人分」

善子「えーと、じゃあ62×7……だから……」

鞠莉「434日ね」

善子「……え、さっきリリー433日って言わなかった?」
288: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:33:28.33 ID:srcZDy/ro

梨子「うん、でも日曜日の18時~月曜日の4時まで10時間の浮くから……」

鞠莉「1週間168時間から10時間引いて158時間――これが1回分のループ分だから、これをループ回数62で掛けて9796時間。日に換算すると408.2日くらいだね」

善子「あれ?結構余裕あるじゃない……」

梨子「いや3人いると1ループ辺り約20日増えるから……」

鞠莉「猶予はあと1回だけだったってことね」

善子「……だそうよ!」

千歌「あはは、すごいすごーい♪」

鞠莉「まあ、正直これに関しては善子の回数が曖昧だったし……私たちの分が加算されてるって言うのも寿命そのものが全員Equalで交換されてるって前提だけどね」

千歌「こっちからしたら君たち人間の業なんて、よほどの偉人でもない限り齢の数で等価だよ」

鞠莉「……それはいい参考意見を聞けたわ」

千歌「そうかい?」
289: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:37:53.13 ID:srcZDy/ro

梨子「これで解答には満足してもらえたかな?」

千歌「うんうん♪合格だよ、合格~♪取り引きの権利を与えるよ♪」


千歌ちゃんは楽しそうにそう言った。


千歌「あ、こっからはそっちからも質問してもいいよ。さっきも言ったけど提示条件で全てを知るのはほぼ不可能だったからね。まあ、気になるならだけど……」

善子「……じゃあ、死に戻りのタイミングはなんであの時間――9月11日の午後6時だったの?」

千歌「うーんまあ、正直気まぐれなんだけど……9月11日の日の入の時間が丁度午後6時だからだよ。逢魔が刻のタイミングが一番生き死にに干渉しやすいって理由だから、日の入の時間ならいつでもよかったっちゃよかったんだけどね。

   ……儀式の日の近くにきっかり時計の針が一直線になる時間が逢魔が刻になる日があったからかな。だから、この日に設定させてもらったよ。見栄えよかったでしょ?」

善子「いらぬ気遣いね……」

千歌「そう?一週間きっかりだったら今頃、善子ちゃん死んでるんだけど……」

善子「その悪魔的センス、褒める以外にないわね!」

千歌「あはは♪」
290: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:42:11.51 ID:srcZDy/ro

鞠莉「ループの始点は……9月12日の午前4時に善子が儀式をしてちょうど1週間前ってことでいいのかしら?」

千歌「そうだね。こっちに関しては善子ちゃんの儀式が発動のトリガーになってて、その強制力が強かったから、きっかり1週間前になってるよ」

鞠莉「あとはそうね……一応、人払いに私や梨子が引っかからなかった見解を聞こうかしら」

千歌「ま、これに関してはこちら側としても例外だったからね……有体に言えば君たちが"絆"って呼ぶものなんじゃないかな?」

鞠莉「OK.大体予想とあってたからもう大丈夫かな」

千歌「さて……概ね質問も終わりかな?……じゃあ」


千歌ちゃんは私たちをぐるりと見回して――


千歌「私……神とどんな取り引きをしようって言うんだい?」


――そう言った。





    *    *    *
291: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:42:41.94 ID:srcZDy/ro

梨子「因業の再分配は出来ませんか」

千歌「ふむ?」

梨子「私があとちょっとで17歳になるところで死んだというなら……その業を背負ったよっちゃんはそこまでの因業の命ってことになるよね」

千歌「確かに」


私が鞠莉さんの方を見ると……鞠莉さんはニッコリと笑ってこう続けた


鞠莉「なら、私と梨子と善子の因業3つを足して均等に3人に振り分けてもらえないかしら?」

善子「……!?ちょ、ちょっと聞いてないわよ!?」

梨子「……いいから」

千歌「……出来なくはないけど、いいのかい?その分二人は早く死ぬことになるってことだけど……」

善子「そ、そうよ!!」
292: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:43:22.76 ID:srcZDy/ro

梨子「私はそもそも死んでるのを助けられた側だし、文句はないかな……鞠莉さんは……」

鞠莉「可愛い後輩二人を放っておけるはずないでしょ!」

善子「ま、マリー……っ……」

梨子「それに約束したでしょ……?3人揃って帰るんだって……」

善子「リリー……うん…………」

鞠莉「……じゃあ、3人合わせて217年……3で割ったら70年超よ」

千歌「あ、二人は100年生きるんだね……」

鞠莉「生きられないの?」

千歌「それは答えられないかな……」

鞠莉「じゃあ、いいでしょ……ついでに言うなら……」

千歌「……?」
293: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:44:04.66 ID:srcZDy/ro

鞠莉「私たちAqoursは歴史に残る偉人になることが確定しているから、一人20年ずつくらいプラスして平均90年超よ」

千歌「……ぷ。」


千歌ちゃんが噴出した


千歌「あはははははは♪そりゃいいね♪」


千歌ちゃんは上機嫌そうにそう言った。


千歌「――汝等の願い聞き届けたぞ」

梨子「ありがとうございます……」


私に続いて二人も頭を下げた。
294: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:46:56.12 ID:srcZDy/ro

千歌「じゃ、これで私は御役御免かな……この借りてた身体は本来の千歌ちゃんに返すから安心してね。――あ、そうそう……この周回に関してはどうやっても死亡確定な状況だから、このタイミングでリセットを掛けさせて貰うね?だから寿命が3人合わせて20日ほど減るけど許してね」

善子「うわ、マジでギリギリだった……」

千歌「――それじゃリセット♪」

梨子「え、いきなり!?」

鞠莉「ま、もうすることもないし、いいんじゃない?」

善子「……やっと元に戻るのね……」


世界が白く包まれて

元へと戻っていく……

『光の愛し子達よ。美しき絆見せて貰った……。』

『我に出来ることは世の理の調停迄……我が助力出来るのは此処迄……。』

『然し、流麗なる清き心の汝等――その人生に祝福有らんことを切に願おうぞ……。』





    *    *    *
295: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:48:02.80 ID:srcZDy/ro

梨子「……んぅ……」


目が覚める。


梨子「ん……」


自室を見回すと――ピアノがあった。

のそのそと布団から這い出て……

机の上のスマホを確認すると……


――9月5日月曜日――


と表示されていた。





    *    *    *
296: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:48:40.29 ID:srcZDy/ro

朝の通学バスに揺られる。


梨子「ねえ、千歌ちゃん」

千歌「ん、なになに?」

梨子「今日練習終わったら、千歌ちゃんち遊びに行っていい?」

千歌「いいけど……なにするの?」

梨子「……マリオ」

千歌「マリオ?ゲームやるの?……いーけど……どうして?」

梨子「日曜によっちゃんちでGuilty Kissで集まってゲーム大会するの。そのための練習」

千歌「え、いーなー!チカも行きたい!」

梨子「ふふ、これはギルキス会だから千歌ちゃんダメよ♪ゲーム大会は今度皆でやりましょ?」

千歌「え、そっかぁ……残念……」

梨子「うふふ……」





    *    *    *
297: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:49:15.46 ID:srcZDy/ro

9月11日、日曜日。


善子「だぁー!!!だから、突っ込んでこないでよマリー!!」

鞠莉「Sorry.ヨハネのお陰で助かったわ」


鞠莉さんのキャラに押されてよっちゃんのプレイキャラがコロッと音を立ててドロップアウトする。


鞠莉「ふっふっふ……やっぱり、最後はMarioが決めるんだってソーバが決まってるんだよっ」


コロッ マリオがクッパの吐いた火球に当たってドロップアウトする。


鞠莉「…………」

善子「……因果応報よ」

鞠莉「ぬ、ぬあー……」
298: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:51:34.17 ID:srcZDy/ro

後は私一人……


善子「リリー頑張って!」

梨子「うん!今度こそ……」


飛んでくる火球を避ける。


鞠莉「Oh!梨子Nice!」


そしてジャンプしたクッパの下をすり抜けて……


梨子「これで……!!」
299: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:52:02.35 ID:srcZDy/ro

クッパの後ろに辿り着いて、斧が振り下ろされた。

クッパが溶岩に落ちていった。


善子「やった、クリアよ!!……って、リリー!?」

梨子「…………っ……」


――私は感極まって思わず泣いていた


梨子「――ご、ごめ……その……マリオもこの繰り返しの世界をやっと抜け出せたのかなって……私達の力で……」

鞠莉「ふふ……きっとそうだと思うわ」

善子「……そうね……マリオもきっと喜んでるわよ」

鞠莉「どうせまたすぐ、ピーチ姫さらわれるだろうけどね」

善子「ちょっと、マリーいい話なんだから台無しになること言うんじゃないわよっ」

梨子「あはは……」


ふと時計を見ると――時針と分針が一直線になる時間を5分ほど過ぎていた。
300: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:54:26.71 ID:srcZDy/ro

梨子「ねぇ……」

善子「ん、何?」

梨子「あのタイムリープって……なんだったのかな……」

鞠莉「……神様の気まぐれ……だったんだとは思うけど……」

梨子「あれって……本当にあったことだったのかな……実は3人一緒に見た白昼夢だったとか……」

鞠莉「……それはなんとも言えないわね……今となっては、もう実際あったのかを証明する術もないし」

善子「そうね……でも、普通は人がいつまで生きて死ぬかなんて、わからないんだから……そんなものがあったのか、なかったのか、証明する術なんてなくていいんじゃない?」

梨子「そうかもね……」


――私たちは何気なく……窓の外の空を仰いだ。
301: ◆tdNJrUZxQg 2017/05/21(日) 16:55:19.94 ID:srcZDy/ro

鞠莉「さて……じゃあ、Marioも無事クリアしたし、たまには後輩の勉強でも見てあげようかしらねぇ……善子の数学のやばさもよくわかったことだし」

善子「……げ……!!……べ、別に勉強とかよくないー……?」

鞠莉「何言ってるの?みんな偉人になって貰わないと寿命が減っちゃうでしょ?せっかくだから、School idolの偉人としてだけじゃなくて、他の分野でも偉人になってもらわないと」

善子「ひ、ひえぇー……簡便してよもぉ~……」

梨子「ふふふ……」


今日もGuilty Kissは賑やかだ。

こういう幸せな日常がこれからも続いていくのかな……。そうであって欲しい

――ふと、よっちゃんの机の上を見ると。新しく買ってあげた、水晶玉のはまったロザリオがキラリと輝いていた。

あの気まぐれで優しい神様が私達を見て優しく微笑んでくれているんじゃないか――そんな気がしました。




<終>

SS速報VIPに投稿されたスレッドの紹介です
善子「一週間の命」
スポンサーリンク

シェアする

フォローする

『善子「一週間の命」』へのコメント

当サイトはコメントシステムとしてDisqusを使用しています。
ゲストでの投稿も可能ですがアカウントの登録を推奨しています。詳しくはDisqusの登録、利用方法をご覧下さい。
表示の不具合、カテゴリーに関する事等はSS!ラブライブ!Disqusチャンネルにてご報告下さい。