愛「気になるあの娘」

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1: 名無しで叶える物語 2017/05/27(土) 21:35:46.93 ID:RM/2POgA.net
 最近、気になる人が出来た。

 あらかじめ言っておくと恋愛感情は含まれていない。

 それは純粋に好奇心だけの気になる、だ。

璃奈「……」

 天王寺璃奈さん。歩夢に誘われて入ったPDPのメンバーの一人。

 特徴は一言では済まないくらいにはある。

 目に付く赤ピンクのくせ毛に小学生と間違いそうになるその身長。

 少し暑くなって来たにも関わらず冬服にカーディガン。萌え袖ぶかぶか。

愛(そして何より……)

愛「璃奈」

璃奈「!」

 そう、璃奈は人と話す時に顔を見せない。

 必ず顔文字のような絵が描かれた紙で顔を隠して話す。

元スレ: 愛「気になるあの娘」

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2: 名無しで叶える物語 2017/05/27(土) 21:45:53.93 ID:RM/2POgA.net
 初対面の時の印象は今と大して変わらない。

 良く言えば個性的な……正直に言えばすごく変な子だった。

璃奈「な、なんですか……?」

愛「大丈夫? 私で良ければ手伝うよ?」

璃奈「だ、大丈夫です。一人で出来ますので」

愛「でもその高さにある物を取るのは流石にキツいんじゃないかな」

璃奈「が、頑張ります……」

愛「頑張っちゃうかー」

愛(せめてその不安定なイスに乗るのをやめてくれればまだ見守れるんだけど……)

璃奈「わ、わわっ」

愛(まあこうなるよね)

 ぐらついたタイミングでさっと歩み寄る。
 
 バランスを崩しイスから落ちそうになった璃奈を両手で支える。

璃奈「っ……」

愛「怪我するよ。私がやるから」
4: 名無しで叶える物語 2017/05/27(土) 21:51:17.83 ID:RM/2POgA.net
璃奈「……」

愛「こういう時は頑張るんじゃなくて頼るのが正解だよ?」

愛「私が目の前にいるんだし、高いところにあるなら無理せず言ってほしいな」

璃奈「ご、ごめんなさい……」

愛(まあ、こんな見た目してるヤツに話しかけろって言われても難しいか……)

愛「はい、どうぞ」

璃奈「……」

璃奈「……あ、ありがとうございますっ」

愛「顔隠したまま走ると危ないよー」

愛(……また逃げられたか)

 璃奈と初めて二人で話したのは

 そう。

 今みたいに璃奈が困っているときだった。

 それ以来なんとなく気になって話しかけるものの、毎回脱兎の如く逃げられる。

愛(髪、黒に戻そうかな……)
5: 名無しで叶える物語 2017/05/27(土) 21:57:49.36 ID:RM/2POgA.net
せつ菜「意味ないと思うけどなー」

愛「でも何もしないよりはマシじゃない?」

せつ菜「人の印象なんてそう簡単には変わらないって」

歩夢「私もそう思う……それに愛ちゃんの髪すごく綺麗だからこのままがいいです……」

愛「そう言われると弱るなぁ……」

せつ菜「しかしご熱心だねー。小学校の時から金髪ギャルの愛が髪の色戻すか迷うなんて」

愛「別にそこまでこだわりあるわけでもないしね。金にしたのもママの趣味だし」

歩夢「黒髪の愛ちゃんなんてダメだよぉ……PDPの見栄えが……」

愛「そこか」

せつ菜「愛がそこまで気に入るなんて。流石璃奈ちゃん、私が見込んだだけあるねー」

愛「気に入るというか気になるというか……」

歩夢「あ……あれって……」

せつ菜「お、噂をすればだねー」


璃奈「……」


愛「……」
6: 名無しで叶える物語 2017/05/27(土) 22:05:00.82 ID:RM/2POgA.net
 また一人で分不相応の物を運んでいた。

 恥ずかしがり屋な彼女だ。

 人に物を頼まれて断られている姿はあまりイメージ出来ない。

愛「……トイレ行ってくる」

歩夢「ふふ、行ってらっしゃい」

せつ菜「私も行こっかなー?」

愛「付いてくんな」

 生温かい視線を背に階段を下りる。

 よたよたとした足取りの璃奈をすぐに見つけると、彼女が抱えていた段ボールを一つ手に取った。

璃奈「え?」

愛「持つよ」

璃奈「!?!?」
7: 名無しで叶える物語 2017/05/27(土) 22:12:52.78 ID:RM/2POgA.net
 私を認識すると途端にあたふたし出した。

 たぶんいつもの紙で顔を隠そうとしているんだろう。

 でも荷物のせいで両手が塞がっている、紙を取り出せない。

 どうしよう、どうしよう。

 顔、見られてる。恥ずかしい。

 どうしよう、どうしよう。

愛「ふふっ……」

 そんな璃奈の様子がおかしくて、どうしようもなく可愛くて。

 思わず笑ってしまう。

 笑われたことに気付いた璃奈はみるみるうちに顔を赤く染めると。

璃奈「うぅ……」

 持っていた段ボールに顔をうつ伏せてしまった。

愛「あ……ごめん。いきなり来て、笑ったりして」

愛「璃奈が可愛すぎたから、つい」

璃奈「っ~~!!」
  
愛(しまった、これ逆効果だ)
8: 名無しで叶える物語 2017/05/27(土) 22:21:36.33 ID:RM/2POgA.net
愛「そ、それも持つよ」

璃奈「っ……」

 たぶん、こうするのが一番。

 持っていた残りの荷物も預かる。

 予想通り、璃奈はすぐにポケットから取り出した紙で顔を隠した。

愛(あー、そっか。こうしちゃうと璃奈の顔が見れなくなっちゃうんだ)

愛(勿体ないことしちゃったかも)

 一生に一度見れるか見れないかの表情だったと思う。

 打算的に動けないのは性分なのか、璃奈がそうさせるのか。

璃奈「あ、あのっ」

愛「どこまで持って行けばいい?」

璃奈「自分で、持てます……」

愛「前、見えてなさそうだったけど」

璃奈「うぅ……ごめん、なさい……」

愛「勝手にやってることだから」

愛「私こそごめんね、璃奈の仕事取っちゃって」

璃奈「……」
9: 名無しで叶える物語 2017/05/27(土) 22:25:12.67 ID:RM/2POgA.net
愛「よっと」

愛「ここでいい?」

璃奈「あ、ありがとうございましたっ」

 ぺこりと頭を下げると、璃奈はたたた、と走り去ってしまう。

愛(また逃げられちゃった)

 見返りを求めたことなんて無い。

 ただ、放っておけない。

 それだけのはずなのに。

愛「……はぁ」

愛(やっぱり嫌われてるのかな……)

 その時までの私はそう思っていた。

 次の日の昼休み、この光景を目にするまでは。
10: 名無しで叶える物語 2017/05/27(土) 22:36:48.12 ID:RM/2POgA.net
愛「なにこれ……」

せつ菜「なにと言われればパンだね」

歩夢「パンですね」

せつ菜「しかもこれ買えないで有名な購買の個数限定のヤツだよ」

歩夢「愛ちゃんの好きなレモンティーまである……」

愛「一体誰が……」


璃奈「……」


愛「璃奈……?」

歩夢「めちゃくちゃこっち見てるね」

せつ菜「くふふ……」

愛「ちょっと行ってくるね……」

 教室の外からこちらの様子を伺っている璃奈に近づく。

 ことは出来なかった。

 私の視線に気付いたのだろう

 いつものように逃げられてしまった。
11: 名無しで叶える物語 2017/05/27(土) 22:42:31.29 ID:RM/2POgA.net
せつ菜「あらら」

歩夢「逃げちゃったね」

愛「まあ慣れてるけど……」

歩夢「それにしても璃奈ちゃんがこんなことするなんて……」

せつ菜「ついに攻略しちゃった?」

愛「ばか」

 軽口を叩きながらパンに手にかけたせつ菜にでこぴん。

 攻略という言葉の響きがちょっと気に入らない。

 でも、もし璃奈が少しでも心を開いてくれたなら……

歩夢「嬉しそうだね」

愛「っ」

せつ菜「羨ましいなー。私も璃奈ちゃんにアタックしよー」

 さっきよりも強めにてこぴんした。
12: 名無しで叶える物語 2017/05/27(土) 22:50:35.39 ID:RM/2POgA.net
 それからと言うものの。

 そんなことがほぼ毎日続いた

 課題をしようと思えば筆記用具が。

 練習終わりには水とタオルが。

 小腹が空けば菓子パンが。

 申し訳ない気持ちはあったけど、やめるようには言わなかった。

 それはきっと、璃奈なりの精一杯の恩返しだから。

 贈り物を貰った日は必ず、璃奈の下駄箱に代金と手紙を入れた。

 璃奈の贈り物の話は有名になってきたが、私からの手紙は璃奈しか知らない。

 私と璃奈だけの秘密の関係。

 少しずつ璃奈との距離が縮まってるような気がした。
13: 名無しで叶える物語 2017/05/27(土) 22:57:51.36 ID:RM/2POgA.net
愛「あ、傘忘れた……」


璃奈「……」


愛「……璃奈」

璃奈「っ」

愛「傘、持ってたりする?」

璃奈「……持ってます」

 遠巻きにこちらの様子を伺っていた璃奈に訊いてみたけど、どうやら正解だったみたい。

 おずおずと傘を差し出してきた。

 天気予報には無かった雨。二本目はないはず。

愛「一緒に帰ろっか」

璃奈「えっ」
15: 名無しで叶える物語 2017/05/27(土) 23:07:06.19 ID:RM/2POgA.net
 次の行動は予想が付く。

 だから先に手を打っておく。

 璃奈の身体をぎゅっと抱きしめた。

璃奈「!?」

愛「ね、いいよね?」

璃奈「は、はは、離してくださいっ……!?」

愛「だめ。璃奈すぐ逃げるから」

 ぎゅぅ

璃奈「っ~~!!」

愛「パン、いつもありがとうね」

愛「筆記用具も水もタオルも。他にも色々」

璃奈「……」
16: 名無しで叶える物語 2017/05/27(土) 23:18:49.41 ID:RM/2POgA.net
愛「私、璃奈に嫌われてると思ってた」

璃奈「え……?」

愛「ほら、こんな見た目だし。いつも逃げられるし」

愛「だからビックリしたんだよ? どうしてこんなことしてくれるんだろうって」

璃奈「……嫌いだったことなんて、一度もないです」

愛「ホントに?」

璃奈「あ、の……えっと、その……」

璃奈「いつも、優しくしてくれて」

璃奈「璃奈のこと、助けてくれて」

璃奈「それが、すごく、すごく嬉しくて……」

愛「……」

璃奈「だから、その。逃げたのは……」

璃奈「情けないところ見られて、恥ずかしかったから……です」

愛「……そっか」
17: 名無しで叶える物語 2017/05/27(土) 23:27:08.37 ID:RM/2POgA.net
愛「はぁ……良かった……嫌われてたんじゃなかったんだ」

璃奈「嫌いになんて、なるわけないです」

璃奈「むしろ……」

愛「?」

璃奈「な、なんでもないですっ」

愛「ふふ、好きになってくれたり?」

璃奈「な……」

 可愛い顔してるんだろうな。
 
 見れないのが残念だ。

愛「なーんてね。でも私は璃奈のこと大好きだよ?」

璃奈「!?」

愛「こうやって直接伝えられて良かった……いつも逃げられちゃうから」

璃奈「……」

愛「もう逃げないでね。逃げられると……寂しいから」

璃奈「……はい」
18: 名無しで叶える物語 2017/05/27(土) 23:36:22.50 ID:RM/2POgA.net
愛「さ、話も済んだしそろそろ帰ろっか」

璃奈「あ……」

 逃げられることもないので璃奈の身体を離す。

 小さくて温かい子供のような身体だった。

 もう少し抱きしめていたかったけど……理由もないのに拘束するわけにもいかない。

愛「相傘になっちゃうけどいい?」

璃奈「先輩がいいなら、璃奈は」

愛「傘、私が持つね」

璃奈「あ、あのっ」

愛「?」

璃奈「……もう少しだけ」

愛(もう少しだけ?)

璃奈「じゃなくて、あの、そのっ」
19: 名無しで叶える物語 2017/05/27(土) 23:40:50.55 ID:RM/2POgA.net
璃奈「雨、弱まるまで……待ちませんか……?」

 雨はまだ降り続いている。
 
 きっとこれからも降り続く。

 でも、急がなくていい。

 そう思った。

 まだまだ時間はあるのだから。



 おわり
20: 名無しで叶える物語 2017/05/27(土) 23:41:27.13 ID:RM/2POgA.net
りなあいを信じろ
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