雪穂「誕生日だけど」

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雪穂-アイキャッチ5
1: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/08/03(月) 22:49:41.17 ID:3RJ3bkTo.net
今日はお姉ちゃんの誕生日です。

だけど、その主役は――家にはいません。



私が起きるより早く学校に行ったお姉ちゃん。

今日も、午前はμ'sの練習だそうです。

この暑い中、毎日毎日練習をしていて――本当に頑張ってるんだなぁって思います。

元スレ: 雪穂「誕生日だけど」

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2: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/08/03(月) 22:52:01.42 ID:3RJ3bkTo.net
――なに?今日は遅くまで家にいない?なんだぁそれ!

お父さんの怒声が、店番している私の耳まど届きます。

きっとお母さんが言ったんです。お姉ちゃんが午後は友達の家でパーティしてくるってこと。



――それじゃあ、あいつ、オレの菓子はいらねぇってことか!

まだまだ吠えてます。ああもう、お姉ちゃんてばこんなに怒らせて。

お姉ちゃんは気づいてないかもしれないけど、お父さん毎年楽しみにしてたんだよ。

私たちの誕生日に、お菓子を作って食べてもらうこと。
3: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/08/03(月) 22:54:43.25 ID:3RJ3bkTo.net
誕生日に作ってくれるお菓子は、いつもとちょっと違います。

生クリームとか、いちごとか。そういうものを使ったおまんじゅうなんです。

きっと、少しでもケーキっぽくしようという工夫なんだと思います。

形も可愛らしい花の形だったり、私の時は雪ウサギの形のこともありました。

そうそう。ピンクの生地のいちご形もあったっけ。



お姉ちゃんも私も小さいころから、この誕生日まんじゅうを楽しみにしていました。

いつもおやつがおまんじゅうや、おもちで飽き飽きしていても、これだけは特別。

今度はどんなおまんじゅうだろうねと、ワクワクしながらお店の手伝いをして。

そして、お店を閉めたあとに、お父さんが作る様子をニコニコ顔で眺めるんです。



だけど、今年はそれもないんだね。
4: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/08/03(月) 22:57:18.14 ID:3RJ3bkTo.net
――もう知らねえ。あいつには穂むらは継がせない!

ああ、お父さん、また言ってる。

ここ半年で何度も耳にしているセリフです。

その言葉のホントの意味は、別にあって――

俺を寂しがらせるんじゃない、ってことなんです。

まあ、お姉ちゃんはそのまま受け取って、泣いて海未ちゃん家に逃げ込んだことがありましたけど。



もう、お姉ちゃん。お父さんを悲しませたらダメよ。

お父さん、普段はあんまり何も言わないけど、本当にさびしがり屋なんだから。
5: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/08/03(月) 22:59:53.21 ID:3RJ3bkTo.net
毎年、お姉ちゃんの誕生日は晴れるんです。

きっとお天道様も祝福してくれてるんだ、っておばあちゃんが言ってました。

今年も雲一つない快晴。外はじりじりとしています。

店番をしている私にとって、お日様サンサンはありがた迷惑です。

空調の効いた自室に戻りたくなります。



去年も同じように、お姉ちゃんの誕生日は店番をしてました。

その時もやっぱり、刺すような暑さ。

だけど、その時は不思議と暑さを感じなかったんです。

なんでだろう。今との違いは――――ああ、横にお姉ちゃんがいないんだ。
8: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/08/03(月) 23:02:01.93 ID:3RJ3bkTo.net
去年までは私が一番最初でした。

朝起きて、いのいちばんに言ってました。誕生日おめでとうって。

今年は誰なのかな。海未ちゃんかな。ことりちゃんかな。

誰にしたって、私ではないのは確かです。



最近、お姉ちゃんといる時間が、だんだんと減っているのを感じます。

昨年まではお姉ちゃんは夕方帰りでした。だけど今では七時半帰り。

帰った後も歌詞を覚えなきゃ、フリを覚えなきゃって。

この町のために頑張ってくれているのはわかってます。

わかっているけど、なんだか――――
10: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/08/03(月) 23:05:19.49 ID:3RJ3bkTo.net
夕飯の時間。食卓にいるのは四人です。



――穂乃果は友達の家で食べてくるそうですよ。

孫の姿を探すおばあちゃんに、そう説明するのはお母さん。

そうです。お姉ちゃんはまだ帰ってきていないんです。



毎年、誕生日は手巻き寿司でした。

いっつもごはんが多すぎて、のりを上手く巻けないお姉ちゃん。

そんなんじゃ、まんじゅうにもアンコつめらんないぞ。とお父さんが悪態をつくまでがセットです。

だけど、目の前の夕飯は焼いたホッケに、ホウレンソウの胡麻和え。

赤だしのお味噌汁に――つまるところ、いつもの夕飯です。

だって、お姉ちゃんがいないもの。
12: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/08/03(月) 23:09:38.57 ID:3RJ3bkTo.net
――ただいま!

お姉ちゃんの声。八時過ぎ、ちょうどお父さんたちが店じまいをしている時でした。

ドタドタという足音が、店番を終え一階の居間でくつろぐ私の耳にまで届きます。



もう帰ってこないかと思った。帰って早々こう言うのはお父さん。

帰ってきてくれてうれしいんだね。

それに対して、そんなわけないでしょとバッサリ返すお姉ちゃん。

それはお父さん寂しかったぞの意味なんだから。

もっと構ってあげないと。



――あ、ユッキー!ただいまー!

満面の笑みを浮かべて居間に入ってきました。

練習着入れに、紙箱、それに加えて大きな手提げ袋を持っています。

手提げの中にちらりと見える、包装紙。きっと誕生日プレゼントです。
13: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/08/03(月) 23:12:17.24 ID:3RJ3bkTo.net
今日はね、あのね――――

大きな身振り手振りを交えて、今日の練習、パーティの様子を話しだします。

とっても楽しかった。そういう気持ちがどんどんと伝わってきて。

なんだかこっちも、まるでパーティに参加したかのような気分になります。



だけどね。それを聞いていると、なんでかな、苦しいんです。

なんでだろう。
14: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/08/03(月) 23:15:25.75 ID:3RJ3bkTo.net
――それでね、余ったケーキもらってきちゃった。ユキちゃんにあげるね!

白色の持ち手がついた紙箱。

側面にはぐにゃぐにゃの文字で、店名でしょうか何か書いてあります。

はいっと言いながら、元気よく差し出されたケーキ箱。

ありがとうと言って、その箱を受け取ったところでハッとしました。

帰ってきたらすぐに言おうと思ってたのに、まだおめでとうって言えてないなって。



――お姉ちゃん、楽しんできたみたいね。

ちがうよ私、それじゃない。ああもう、どうして。

笑顔で誕生日おめでとうって。なんで言えないんだろう。



うん!ユキちゃんも連れていきたかったな。

ああ、プレゼント自分の部屋に置いて来なきゃ。そのケーキも、冷蔵庫入れとくね。

お姉ちゃんはそう答えて、パタパタと居間から出ていきます。
15: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/08/03(月) 23:18:23.49 ID:3RJ3bkTo.net
店じまいを終えたお父さんが、居間に入ってきます。

頭につけた和帽子を脱いでいる時に、目があって。その目は――

やっぱりさみしそうなんです。



視線をさっとそらしたお父さん。その横顔をじいっと見つめて、ああ、気づきました。

私、お父さんと一緒なんだって。

お姉ちゃんがいないと寂しい。

だけど、そのことを素直に口に出せなくて。

ほら、そっくりです。親子なんだから、似るのも当然かもしれません。
16: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/08/03(月) 23:21:24.74 ID:3RJ3bkTo.net
素直に言えばいいのに。

お誕生日おめでとうお姉ちゃん。

でももっと早く帰ってきてほしかったな。

家族みんなでお祝いしたかったかのよ。

いっつもμ'sのみんなといるんだから、誕生日くらい家にいてよ。

妹の私にたくさん祝わせてよ。

そう、駄々っ子みたいに、言えればいいのに。



――ユキちゃん。

背後からお姉ちゃんの声。いつの間に戻ってきたんでしょうか。



――雪穂。ごめんね。
17: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/08/03(月) 23:25:03.81 ID:3RJ3bkTo.net
どうしてごめんね――なの、お姉ちゃん。

心の中で唱えてからもう一度。今度は口に出して。

どうしてごめんね――なの、お姉ちゃん。

頭を垂らし、三角すわりのまま、振り返らずに私が言います。



穂乃果がね、今日の話をしていた時。

雪穂、ちらりと悲しそうな顔見せてたから――

そんな顔してたのかな、私。



それでね、思ったの。毎年、穂乃果の誕生日ってずっと雪穂と一緒だった。

誕生日っていうだけでワクワクして。雪穂も一緒にその気持ちを楽しんでくれたなって。

だけど今年は全然家にいなかったから。それで雪穂、少しさみしかったのかなって――



穂乃果ね、二人に分身できればって思うの。

家族との誕生日も、μ'sのみんなとの誕生日も両方できたらいいのに。 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)
18: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/08/03(月) 23:28:07.31 ID:3RJ3bkTo.net
――そうだよ。さみしかった。

いつのまにかにぽつりと出ていました。



毎年一緒にお祝いしてたのに。今年はもう、そうじゃないんだって。

そう思うと、すごくさみしかった。

うん。というお姉ちゃんの声。とてもやさしい声色です。


お姉ちゃん、最近ずっと練習に行っちゃうんだもん

だから誕生日こそは――って思ってて。

だけど、だけど――
19: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/08/03(月) 23:31:29.81 ID:3RJ3bkTo.net
不意に後ろから、ぎゅうっと抱き着かれました。

そしてもう一度、ごめんねって。



お姉ちゃんは私のことをクールとか、大人だって言ってくれるけど

でも、自分ではわかります。とっても単純で子供なんです。

だって、お姉ちゃんが近くにいないだけで、さみしくて、すぐむくれて。

こうやって、お姉ちゃんにぎゅってされるだけで――

すぐに、そのさみしい気持ちが飛んでいっちゃうんだもの。
20: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/08/03(月) 23:33:40.06 ID:3RJ3bkTo.net
しばらく、抱き着かれたまま何も言えなくて。



――――お姉ちゃん、誕生日おめでとう。

やっと言えました。八月三日は残りあとわずかだったけど、間に合いました。

後ろを向いたままだけど。今度は笑顔で言うからね。

プレゼントだってあるんだから。



えへへ、ありがとうね雪穂!と嬉しそうに返してくれるお姉ちゃん。

顔を少しあげて、潤む瞳に飛び込んできたのは――

和帽子をかぶり居間から調理場に戻る、お父さんの姿です。


おわり
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