絵里「さて、今日も生徒会の目安箱を開けてみましょうか」

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絵里-アイキャッチ42
音ノ木坂の生徒会には、目安箱というものがある。

生徒が名前を伏せて、生徒会への要望や意見を投書するのだ。

実際には、学校生活の上でのちょっとした悩みや、愚痴が書かれるのだが。

そんなことを希に言うと、

「皆、えりちに悩みを相談したいんやない?
美人で頼れる生徒会長って評判やもんなぁ」

などと返して、へらへらと笑っている。

「もう、茶化さないの。希」

いつもの様に他愛もない会話をしながら、目安箱を開く。

pixiv: 絵里「さて、今日も生徒会の目安箱を開けてみましょうか」 by Cupola

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わたしの高校生活に、目標が見つかりません。

海未ちゃんは弓道、ことりちゃんは裁縫をやりたいって言ってるけど、わたしには何もありません。

どうしたらいいでしょうか?

あと、廃校になるって本当ですか?

by あんこ飽きた




確かに、この音ノ木坂学院は廃校の危機に瀕している。

もちろん、その情報は生徒会も把握していて、ただの荒唐無稽な噂ではない。

しかし、そんなことには絶対にさせない。

学校を存続させるために生徒会は活動しているのだ。


To あんこ飽きた 様

ご安心ください。

我々生徒会が全力を尽くし、廃校を阻止します。

貴方はまず、やりたいことをやってみることから始めてはいかがかしら?

例えば、部活動とか。

目標は後からついてくると思うわ。

by エリーチカ



生徒会からの回答は、質問とともに生徒会室前の掲示板に貼り出される。

解決したら、1ハラショー。

こうして、学校中にハラショーを貯めていくのだ。

これは私が始めたことだけれど、直接生徒の助けになっているようで、結構楽しいのよ?


さて、今日も書類整理をしないと。なかなか忙しいわね。

希、手伝ってね。



--------



「今日は投書があるかしら」

もはや日課となった目安箱の確認を行う。



私の友人がスクールアイドルを始めると言って聞きません。

やらないと言っているのに私を誘ってきて困っています。

あんな可愛い衣装を着て、踊った後は決めポーズ……なんて、破廉恥です!

by ラブ☆アロー



最近、世間ではスクールアイドルというのが流行っているらしい。

高校の部活動で、アイドルのように歌って踊るらしい。

人気のスクールアイドルがいる高校は、志願者が増えている、という調査もあるようだ。


……私には素人にしか見えないけれど。


To ラブ☆アロー 様

貴方が本当に嫌なのなら、はっきりと何度も断る、というのが大事ね。

その子が友達なら、ちゃんと分かってくれると思うわ。

……勝手なことを言うけれど、貴方は本当にスクールアイドルは嫌なのかしら?

私には、貴方が"やりたい"と思っているように感じたわ。

よく、考えてみることね。

by エリーチカ



投書への回答も終え、生徒会室を出る。

すると、掲示板に貼った前回の回答に赤く書き込みがあった。


ありがとうございました!スクールアイドル部、始めてみようと思います!


私はスタンプを取り出し、印を押す。


\ハラショー/



--------



今日は、生徒から陳情のあった水道の故障について調べている。

実際に問題が確認されたら、学校側に意見を提出し、業者を呼んで直してもらう。

こうした生徒の立場に立った実地検証も、私たち生徒会の仕事だ。

書類整理ばかりではないのよ?


「いった〜い!お尻打った〜!」


ふと目を遣ると、裏庭でダンスの練習をしている生徒がいる。

甚だ未熟、素人にしか見えないが、子供の頃を思い出す。

私も、昔はよく失敗し、転んだものだ。

しかし、その度何度でも起き上がり、絶対に上手くなってやる!と張り切っていた。

今の私は、起き上がることができるだろうか?


水道の確認を終え、生徒会室に戻ると、前回の回答に新たな書き込みがあった。


スクールアイドルをやってみます。でも、恥ずかしいです……


私はまた、スタンプを取り出した。


\ハラショー/



--------



今日は、大した仕事もなく、久々の休息となる。

そんなとき、私にとって、生徒会室は非常に心地よい場所だ。

校内でも貴重な冷暖房完備、ソファーやティーセットもあるこの部屋で、私は生徒会のメンバーと談笑していた。


希が話しかけてくる。

「えりち、最近はハラショーが沢山出てるようやね」

目安箱の投書のことだろう。

「そうだったかしら」


それは、良いことだ。

それだけ生徒の悩みが解決されているということなんだから。

「噂になっとるで」

「10ハラショー貯めると、"本当の願い"が叶うって」


いくらなんでも、1人で10回も投稿した人はまだいないと思うけど。

「ま、うちも10ハラショー貯めた人はまだいないと思うけどね〜」


休憩も終えて、今日も投書を確認する。



私の友人はいつも私の手を引いていってくれます。

私はいつもそれに甘えてきました。

友人は私を知らない世界に連れていってくれますが、私には何もできません。

なにか私が友人にしてあげられることはないでしょうか?

by ちゅん(・8・)ちゅん



私は回答する。


To ちゅん(・8・)ちゅん 様

貴方が、友人に助けてもらっている、と思っているように、その友人もまた、同じように思っていることでしょう。

きっと、貴方は友人の助けになっているわ。

それでも、何かしてあげたいと思うなら、貴方の得意なことを考えてみては如何かしら。

貴方が得意なことはなんですか?

by エリーチカ



--------



今日は、講堂を使いたいという生徒の対応をした。

生徒は自由に講堂を使用できる。

もちろん、ダブルブッキングしたときは、生徒会で対処する。

しかし、今回は問題なかったので、断る理由は無い。

講堂利用申請を書いてもらっている間、ちょっとした会話をした。


「どうして講堂を使おうと?」

「スクールアイドルを始めたので、ライブをしようと思いまして」

「何故スクールアイドルを?」

「廃校を阻止するためです!」


廃校を阻止?それは私達の仕事。

ぽっと出の貴方達の出番はないわね。


「廃校を阻止するのは私達生徒会よ。貴方達が気にする必要はないわ」


申請を受け取り、訪れた子たちを帰すと、私は目安箱を開ける。

なんと、今回は3通もの相談があった。



私、アイドルが好きなんです。

この学校で、スクールアイドルをやっている人たちを見て、やってみたいと思いました。

でも、私は運動音痴だし、歌も下手だし……

私はどうしたら良いのでしょうか?

by お米大好き



高校に入って、私もオシャレをしてみたいと思いました。

私も可愛い服を着てみたいです。

でも、私には可愛い服は似合いません。

どうしたらいいですか?

by 勇気凛々



クラスで友達ができません。

折角話し掛けて貰えても、素直になれず壁を作ってしまいます。

最近はクラスの子と話すことも少なくなりました。

どうしたら素直になれますか?

by 高嶺のマッキー



当然、私は全てに一つ一つ回答する。

折角投書してもらっているのだから、此方も丁寧に返事をすることを心がけている。


To お米大好き 様

勇気を出して、一歩踏み出してみて。

やりたいことは、やってみる。

後は、努力でどうにかなるわ。

私は貴方のはじめの一歩を応援しているわ。

頑張って。

by エリーチカ



To 勇気凛々 様

自分では似合わないと思っていても、案外似合う、なんてことはあるものよ。

信頼できる友達に相談してはどうかしら?

きっと貴方に似合う可愛い服を探してくれるわ。

by エリーチカ



To 高嶺のマッキー 様

無理せず、自分が話せる相手を探してみると良いかもしれないわね。

自然と話せる相手がいれば、きっと仲良くなれるし、貴方に協力してくれるはずよ。

そうすれば、クラスの皆にも貴方の可愛いところ、分かってもらえるわ。

素直に相談してくれた貴方は、とっても可愛いもの。

by エリーチカ



--------



授業が終わり、生徒会室へ向かう。

掲示板には、現在、4通の未解決な投書がある。

……いや、3通ね。

見ると、1通にはお礼の言葉が書かれていた。


ありがとうございました!衣装作りを提案したら、喜んで貰えました♪(・8・)


この、鳥?のような顔文字はなんなのかしら?

流行りっていうのはよく分からないわね。

ともかく、恒例のスタンプを押す。



\ハラショー/



--------



今、私達はオープンキャンパスに向けて準備をしている。

音ノ木坂の廃校を阻止する上で、ターニングポイントと成り得るこの行事。

我々も理事長に掛け合い、生徒会にステージを使用する許可をいただいた。

私も、自然と気合いが入る。


「オープンキャンパスに向けて、意見のある者は?」


少々の間。

そして手を挙げた一人を指名する。


「スクールアイドルって、今人気ですよね」

「うちの学校にもできたって聞きました」

「その子達にライブをしてもらうというのはいかがでしょうか?」


スクールアイドル?あんな新参の、素人にしか見えない子達が廃校を阻止できるなら、私たちがとうに達成している。


「他に意見は?」


今日の会議は、他に大した提案もなく終了した。


休憩がてら、外に出る。

ふと掲示板の方を見ると、問題解決を示す短文が書き込まれていた。


友達の協力もあって、スクールアイドル部に入部できました!ありがとうございました!


なんと、凛がスクールアイドルになりました!凛も可愛い服を着て踊りたいにゃ〜♪


2人の友達と同じ部活動を始めました。ありがとうございました。


今日は3つも解決したお便りがある。

私も少し気分が晴れる。



\ハラショー/ \ハラショー/ \ハラショー/



最近は目安箱への投書が多い。

新学期が始まったからだろうか。

1年生はもちろん、2、3年生も環境が変わり、悩みを持つ生徒が増える。

今日も2通の投稿があった。



最近、スクールアイドルを名乗る輩がこの学校にもあらわれたようね。

どうせ軽い気持ちで始めただけの、ただの甘ちゃんよ。

どうにかして辞めさせてもらえない?

スクールアイドルはそんなに甘いもんじゃない。

あの子達に、私と同じ思いをして欲しくないの。

by 大銀河宇宙No.1アイドル



私、UTXでスクールアイドルをやっているんだけど、貴方の噂を聞いて、来ちゃった☆

手紙を書けば、願いが叶うのでしょう?

なら、貴方達の学校のスクールアイドル、μ's。

彼女達を、私たちと同じ高みへ。

連れてきてくれないかしら?

応援してるわ。負けるつもりはないけどね。

by μ'sのファン キラ☆ウィング



誰も彼も、スクールアイドルの話ばかり。

人気があるのは、間違いないみたいね。

でも、あんな子供のお遊戯みたいな踊りで、本気で廃校を阻止できると思っているのかしら?

私なら、もっと踊れたはずなのに……


「お、UTXの子から手紙?えりちは人気者やね」

突然、希に話しかけられる。

って、UTX!?他校じゃない!

「とうとうえりちの噂は、校外にまで広がったようやね」

希は意地の悪い笑顔を浮かべている。

「私、そんな大層なものじゃないわよ……」

「スピリチュアルやね」


今回の投書への返事は、少し時間がかかった。


To 大銀河宇宙No.1アイドル 様

貴方、そのスクールアイドルの子達とちゃんと話した?

その子達にも、きっとその子達なりの、考えや思いがあるはず。

それを聞いてから、貴方からその子達にアドバイスしてあげたら良いんじゃないかしら?

同じスクールアイドル同士、分かり合える部分があると思うわ。

by エリーチカ



To μ'sのファン キラ☆ウィング 様

UTXからお手紙ありがとう。

私たちができるのは、生徒を支援することだけ。

あとは、あの子達の努力次第。

貴方達を満足させる結果になるかは分からない。

けれど、一生懸命な生徒を応援することが、私たちの役目よ。

by エリーチカ



--------



理事長室。

私は、理事長にとある許可を貰いに来たのだが。


「何故、生徒会の独自活動を認めてくれないのですか!」

「分からない?簡単なことよ」

「廃校のことなんて、貴方が気負うことじゃないわ」

「貴方は、残された高校生活を楽しむこと、それだけを考えなさい」

「じゃあ、どうすればいいって言うんですか!」

「えりち」

希が制止する。


若干の間。


「どうすればいいか、本当は、貴方はよく分かっているんじゃない?」

「……!失礼しました」


廃校決定まで、残された時間は短い。

だから、生徒会は独自に廃校阻止のため、活動することにした。

しかし、理事長は私たちの廃校阻止活動を認めてくれない。

……何故?どうして?私は母校が廃校になるなんて嫌なのに。


「……えりち、理事長も意地悪であんなこと言ったんとちゃうと思うで」

希が声をかけてくる。

私だってそう思う。

理事長はそんな人ではない。

それは私がよく知っている。


「とりあえず、ちょっと休もうや。最近のえりち、疲れてるよ」

私たちは、理事長室を背に、生徒会室へ向かった。

生徒会室前の掲示板には、2通の赤字での書き込みがあった。


しょーがないから、この私が、直々に指導してやることにしたわ!


お返事ありがとう。でも、まだ足りないの。μ'sが高みへ登るには。何かが足りないわ。


1通、まだ解決してないようにも見えるけど、とりあえずスタンプを押す。



\ハラショー/ \ハラショー/



--------



「私は、どうしたらいいの?」

ふと声を漏らす。

音ノ木坂の廃校決定は、もう目の前に迫っている。

だが、現状生徒会に有効な手立てはない。


「……何も、えりちが辛い思いをすることはないんよ」

そう言う希は、悲しそうな顔をして、俯いている。


ふふっ、悩んでいるのは私なのに、希が泣きそうになってるじゃない。

「そんな心配そうな顔をしないで。私は大丈夫だから」

そう言って、しょぼくれた希の頭を撫でる。


---- どうすればいいか、本当は、貴方はよく分かっているんじゃない? ----


ふと理事長のことばが頭に蘇る。

「分からないわよ……どうしたらいいか、なんて」


突然、生徒会室の扉が開かれる音がした。

「やりたいことをやってみる。それで良いじゃないですか」


そこには、7人の生徒が立っていた。

「……誰?貴方達は?」


「私たち、スクールアイドルのμ'sです!」

「生徒会長、私たちの仲間に、入ってくれませんか?」


μ's。そういえば最近、そんなグループができたようね。私には関係ないけれど。

「何を言っているの?私にはそんな暇ないの。他をあたってくれる?」


「私には、貴方が、"やりたい"と思っているように感じますよ」

メンバーの一人、緑の黒髪とも言うべき、美しい長髪を靡かせた女生徒が話しかけてくる。

「生徒会長って、ダンスが得意でしたよね?是非、私たちを助けていただけませんか♪」

もう一人、こちらはやたらと可愛らしい、まるで小鳥のような声の女生徒だ。


すると、堰を切ったように後ろのメンバーが声をかけてくる。

「初めの一歩、踏み出してみませんか?」

「素直になりなさいよ」


「凛知ってるよ。悩んでるときは友達に相談するといいって」


私はふと希の方を見る。

「えりち、本当はやりたいんやろ?ダンス」

私は……


「ちゃんと話してみなさい、全部。アンタの思ってること、やりたいこと」


「私は……この学校を守りたい。大好きなこの学校が、廃校になるなんて嫌なの」

不思議だけど、何故かこの子達の前では、素直になれる。そんな気がする。


「私たちも同じです!」

「だから、生徒会長と一緒に楽しみたい」

「一生懸命な生徒会長を、応援したい」



私も、昔はよく失敗し、転んだものだ。

しかし、その度何度でも起き上がり、絶対に上手くなってやる!と張り切っていた。

何故か?楽しかったからだ。

いつの日か、私は楽しむことを忘れ、起き上がることができなくなった。

今の私は、もう一度起き上がれる?


「私、楽しんでもいいの?」

「はい!よろしくお願いします!」


「……わかったわ。私も、貴方達と一緒に踊りたい」

「じゃあ、これでμ'sは……」

「9人や、ウチを入れて」


えっ、とこの場の全員が希の方を向く。

「当然じゃない。やりたかったんでしょ?」


だって、この子達に、私がダンスをやってたこと、教えたのは貴方でしょう?

そして、この子達をけしかけて、ちゃっかり自分も加入する。

全て貴方の筋書き通り、というわけね。


「それはどうやろね」

「うちは、えりちと一緒ならそれでいいんよ」


「もう、素直じゃないのね」

私は、希の額にスタンプを押した。




\ハラショー/




リーダーの子が身を乗り出してくる。

「あっ、それ、ハラショースタンプ!」

「10コ集めたら、"本当の願い"が叶うって」


「……そんなことはないわ」

私は、自分の手の甲にも、スタンプを押す。



\ハラショー/



だって、このスタンプは、10コ集めた人じゃなくて、押した人の"本当の願い"が叶うんだもの。


「さて、やると決まったからには厳しくいくわよ。貴方達は素人にしか見えないレベルなのだから」

私は立ち上がり、屋上へ向かった。



--終わり--


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