偶像に紅を

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にこ-アイキャッチ43
顔の表面をメイクブラシが何度も行き交う
何十、何百もの種類のあるあるパウダー、チーク
その内からこの日、この時に合った最良のものを選び、取り出す
パールベージュのファンデーションを一つ、撫でる様に上瞼に広げる
パッチリとした目に線を引くように、ダークカラーで丁寧に両瞼をなぞりあげる
筆が、ハケが、頬をたどるたび顔が一つ一つ、確かな色を持つ

pixiv: 偶像に紅を by やまたたーん

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「ことり、水飲みたい」
「はい、いいよ」
にこの一言でことりは作業を中断する
ストローの刺さったペットボトルをの水を一口、喉に流し込む

「なんか今日、いつもより長くない…?」
「今日はにこちゃんの大事な日だから…念入りに、ね?」
「……そう」
ことりの返事を別段気に留めることもなく短く返す
水を置き、にこは元の地蔵のような体勢に戻る


「はい、後は軽くパウダーだけだよ」
「……分かったわ」
「にこちゃんまだまだお化粧薄くても大丈夫だから、羨ましいなあ」
「あんたも大概じゃない」
パフを軽く頬に当て、少量のラメが入ったパウダーを馴染むように撫でやかに広げる
一つ一つの動作に迷いがなく、全ての所作を見通して行っている
「そうでもないよぉ……はい、できた!」
髪を固定していたバンスクリップを外し、完成を告げる


「どう、今日もバッチリ?」
「……ええ、紛れもなく宇宙一のアイドルよ」
「えへへ、嬉しい」
真剣な表情で自分の顔をチェックするにこと、にっこり微笑みながらそれを見守ることり
いつものような自分の容姿への自信たっぷりな言葉は信頼の証だった


「じゃ、そろそろスタンバイするから」
「そっか、がんばってね」
立ち上がり、姿見で軽く髪形を整えるとにこは出口へと向かう
その後ろ姿にことりは思い出したかのように声をかける
「あ、この前も言ったけど…終わった後みんなでパーティ開くから…」
「打ち上げを適当な所で切り上げて行くわ」
「うん……」


「あ、あと……」
歯切れ悪くことりが続ける
「何……?」
「バースデーライブ、頑張ってね」
「……さっきも聞いたわ」
言葉のそっけなさとは裏腹に、柔らかい表情でにこは言葉を返す
本日、7月22日
25歳になった矢澤にこ
職業は……アイドル。
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