にこ(24)「雨の日の太陽」

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にこ-アイキャッチ27
6月某日、コンクリートで覆われた街にジメジメと雨が降り続いている。

にこ「はぁ…今日も雨…いつまで続くんだか…」

鬱蒼とした空模様に私の心も暗くなる。

???「あれ?にこちゃん?にこちゃんじゃん!おーい!」

雨の中、懐かしい明るい声がパシャパシャとかけてきた。

pixiv: にこ(24)「雨の日の太陽」 by ガーリック

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にこ「穂乃果!?」

穂乃果「にこちゃん久しぶり!高校以来だねー!今何やってるの?やっぱりアイドル?」

穂乃果の嬉々とした声に笑顔になるのも束の間。穂乃果にとっては何気ない質問のつもりだろうが売れない地下アイドルを経て解散、フリーターをしてる今の私には一番聞かれたくない質問だ。

にこ「…えぇ、もちろんよ!なんたって宇宙No.1アイドルの矢澤にこにーなんだから!」

一瞬間置いてこう答えてしまう自分が嫌だ。

にこ「穂乃果はどう?ちゃんと働けんの?」

穂乃果「む、失礼だねにこちゃん!穂乃果はこー見えてもね!…ジャーン!名刺だよ!って言っても2年目になるんだけどまだまだ先輩に怒られてばっかりで…」

にこ「へー、流石の穂乃果も一応働いてるのね」

にこちゃんひどいよー、と言いつつも照れくさそうな笑顔。

穂乃果「でもにこちゃんはやっぱりすごいなー、プロのアイドルになっちゃうなんて!」

にこ「あったりまえよ!」

違う。私はすごくなんかない。そんな輝いた目で私を見ないで。あの頃と変わらない太陽のような笑顔が私には眩しすぎる。

ザザーッ

ほのにこ「うわっ!?」

穂乃果「すごい降ってきた!今年の梅雨すごすぎるよー!」

にこ「風邪引いちゃまずいしこれは解散ね」

穂乃果「むむむ…仕方ないか…じゃ、また今度ゆっくり話そうね!」タタタッ

うひゃー!濡れるー!と穂乃果は騒がしく去っていった。

変わらないのが羨ましい、と思った。

ーーーーーーーーーーー

家に着き、ドアを開けて家族には常に笑顔。弱気なお姉ちゃんじゃダメだからね。この子達が私の生きがい。絶対にこの子たちに不安を感じさせちゃダメ。

アイドルではやっていけない。だから夢を諦めて働く。

何も間違ってないよね?

なんて答えの出ない問いを自分に問いかける。

雨、いつまで続くのかな…

ーーーーーーーーーーー

もうすぐ7月というのに雨が多い。今年の梅雨は梅雨っぽいな…思いつつ今日も仕事を終える。

お疲れ様でしたー、と店から出たところで数週間前に見た顔と再び目が合う。

…まずい

穂乃果「にこちゃん…?」

ダッ

穂乃果「にこちゃん!待ってよ!待ってってば!」

なんで逃げたのかは分からない。怖かったからなのかもしれない。


家に戻ってからふと考える。逃げて何になる?逃げたところで…



私は何から逃げてるの?穂乃果?それともこの現状?



分かってる。今から逃げたいために穂乃果を引き合いに出してるだけだって。

だからってどうしたらいいかもわからない。

自分の質問に押しつぶされそうになる。

♪トードーケーマホオーエガオノマホー

穂乃果だ。

穂乃果には悪いけども今は出る気にならない。

全てを見透かされてそうで。

自分への閉塞感と穂乃果への罪悪感にさいなまれつつ寝床についた。

到底寝られるような精神状態じゃなかったけど。

ーーーーーーーーーーー

逃げ出したのを見られたから心配されたのだろう。それから穂乃果からの連絡が時たま来るようになった。

無視した。

そのうち毎日来るようになった。

それでも無視した。

申し訳ないとは思ってる。ありがたいとも思ってる。

でも電話に出てしまったら私が崩れてしまいそうで怖かった。

今の私が惨めな生き方をしていると自覚させられてしまいそうで怖かった。

7月に入った。梅雨は明けない。今日はゲリラ豪雨だろうか、先程から雨が轟音を立てている。

平日のシフトない日の虚無感は異常だわ…

ピーンポーン

宅配便でーす!

にこ「こんな天気でも外に出なきゃならないって大変な仕事よね…」ガチャ

穂乃果「残念!穂乃果でした!」バーン

にこ「」スッ

穂乃果「ちょ!なんで閉めようとするのさ!」

にこ「そりゃこんな大雨の中家に来たら怖いでしょ!こっちは宅配便だと思って開けたんだから!しかも何よそのテンション!バカなの!?」

穂乃果「あぅ…うぅ…にこちゃん…」ウルウル

にこ「え…あ、そのごめん、バカは言いすぎた!」アセアセ

穂乃果「違うの…」ズズッ

にこ「え?」

穂乃果「だって…にこちゃんが全然電話出てくれないから心配で心配で…そしたらいつものにこちゃんだー、って思って…」グズッ

にこ「ごめん…ま、ここじゃなんだから…入りなさいよ、他に誰もいないし…」

後輩に泣かれるほど心配させて…ダメな先輩だわ、私…

温かい飲み物を出して座らせた。

にこ「ひ、久しぶり…って程でもない…わね…」

ほのにこ「………」

ほのにこ「ごめんなさい!!」

にこ「え?」

穂乃果「え?」

にこ「いや、何であんたが謝んのよ、私があんたの心配を無下にしてたんだから」

穂乃果「迷惑だったんじゃないの…?しかも今日も突然押しかけちゃったし…」

にこ「あのねぇ…可愛い後輩が心配して電話かけてくれるなんて嬉しいに決まってんでしょ!」

穂乃果「よかったぁ〜」ホッ

穂乃果「え?でもじゃあどうして…」

にこ「ほかの人に知られたくなかったのよ…今の私を…」

ほかの人には絶対話したくなかったことを不思議と吐き出す。穂乃果だからかな…?

にこ「アイドル目指したけど鳴かず飛ばずで解散。ま、人気商売だからね。やるだけお金がなくなるアイドル業じゃうちは生活出来ない。解散してから事務所辞めてバイトで食いつないでるけど…かなり厳しいところ。」

穂乃果は黙って聞いている。

にこ「他の人…特にµ’sの皆には絶対知られたくなかったんだけどね…」

穂乃果「………でよ」

にこ「え?」


穂乃果「ふざけないでよ!!」バン!

声を荒らげる穂乃果。

穂乃果「何!?にこちゃんにとってµ’sは他人なの!?私達が9人で辛い思いも楽しい思いも沢山してラブライブ優勝したことってにこちゃんにとってそんな事だったの!?」

あまりの迫力に気圧される。

穂乃果「誰かが辛かったら皆が助けるんだよ!どうしてもっと頼ってくれないの!?」

にこ「だって分からないでしょ…!?」

にこ「あんたには私にとってアイドルを諦めるってことがどれだけ苦渋の決断だったか分からな」

穂乃果「分からないよ」

遮るように呟く。その綺麗な瞳には涙が浮かんでいた。

穂乃果「にこちゃんは…にこちゃんはµ’sで一番アイドルにこだわりがあって!いつもおちゃらけてるように見えて実は一番しっかりしてて!そのくせに一番意地っ張りで!…………本当に尊敬できる人。」

穂乃果「にこちゃんがアイドルじゃなくなるのは私には計り知れないほど大変な決断だったと思う。だけどにこちゃんがすごい辛い思いをしてるのくらい…穂乃果でも分かるよ…」

ギュウッ

穂乃果「だから…一人で抱え込まないで頼ってよ…」ポロポロ

温かい。これじゃあどっちが励まされてんだかね。

にこ「はぁ…そうね。私が間違ってたわ。」

穂乃果「にこちゃん…」

にこ「迷惑かけないように連絡しなかったのにそれが余計な迷惑になっちゃったみたいね。それにしてもそれを穂乃果に分からされるなんてね…ははは…」

この期に及んでカッコつけて笑って返した

つもりだったけど私の目には涙が浮かんでいたらしい。

穂乃果「…こんな時くらい泣いてもいいんだよ?」ナデナデ

にこ「ゔぅ……穂乃果あぁぁ…」ポロポロ

穂乃果「今まで溜め込んでたもの…全部吐き出しなよ…」

にこ「アイドルがダメで…惨めな生活になって…逃げちゃいたいくらいだったのに誰にも言い出せなくて…ほんとに…苦しかったあぁ…」ポロポロ

穂乃果「大変だったね…もう何も背負い込まなくていいからね…」



どのくらい泣いただろうか。

穂乃果は抱きしめ続けてくれた。

ずっと心の中にとどまっていた厚い厚い雲が取り払われた気がした。

その日は私が落ち着いたところで穂乃果は私はいつでもにこちゃんの味方だよ!と言い残して帰っていった。

結局何も変わってないって言われたらそうなんだけどね。やっぱり自分の気持ちを受け止めてくれる人がいるだけで心が軽くなる。

外を見ると豪雨はいつの間にやら去ったようだ。青い空がどこまでも広がり、太陽の光が部屋に射し込んでいた。

ーーーーーーーーーーー

それから穂乃果と連絡をよく取るようになった。そんなある日、穂乃果に呼び出された。

にこ「どうしたのよ突然会いたい、だなんて」

穂乃果「にこちゃん…今日って…何の日かわかる?」

? 穂乃果…なんかたどたどしいわね…

にこ「7月22日ね…なんだったかしら…」

穂乃果「誕生日だよ!にこちゃんの!」

にこ「あー、チビ達のことしか考えてなかったし最近誕生日だからって何も無かったし忘れてたわ…」

穂乃果「誕生日忘れることなんて穂乃果は絶対ないなぁ〜…ってそんなことはどうでもいいの!今日はね〜プレゼント!買ってきたんだ!」

そう言って穂乃果がバッグから差し出す。

にこ「誕生日だから何か貰うって懐かしい感じね…」

穂乃果「ねぇねぇ、開けてみてよ!」

にこ「何であんたの方がテンション高いのよ…」ガサゴソ

にこ「これ…チケット?」

穂乃果「そう!多分にこちゃんアイドルとか見れてないんじゃないかなーって思って!」

にこ「…はははははっ!」

穂乃果「もー、なんで笑うのさー!」ムスー

にこ「アイドル辞めて絶望してた人間にアイドルのライブチケットとかあんた鬼なの?」

穂乃果「あうっ…た、確かに…」アセアセ

家に来た時は少し大人になったなー、とか思ってたけど穂乃果は穂乃果ね。

にこ「冗談よ。ありがたく貰っとくわ。で、いつなのこのライブは…?8月3日か」

にこ「え?8月3日って穂乃果の誕生日じゃなかった?」

穂乃果は顔を赤らめながらバッグからもう一枚のチケットを取り出した。

穂乃果「う、うん…出来ればその〜、ね?にこちゃんと二人っきりで誕生日を過ごしたいな〜って…ダメ?かな…」カァァ

にこ「そ、それって…」

すうっと穂乃果の肩が深呼吸で揺れる。

穂乃果「私高坂穂乃果は!にこちゃんのことが……大好きです!」

にこ「え…ええっと…一応確認するわよ?穂乃果のその大好きは…LIKE?」

穂乃果「えと…LOVE…です//」

思い返せば穂乃果だったから心を開けたんだ…そう思った。

あぁ…ずるいってその表情…

にこ「わ、私も…好き…です//」

穂乃果「やったあ!よかったぁ〜勇気出して…」

肩をなでおろす穂乃果。もはや何しても可愛いわね。

穂乃果「じゃあそのライブ…その後も…一緒に2人でいてくれますか?//」

にこ「こちらこそ…よろしくお願いします//」

ーーーーーーーーーーー

8月3日

穂乃果「ごめーんにこちゃん!…待った?」

にこ「初デートで遅刻とは…流石にいい度胸してるわね…」

穂乃果「あぅぅ…返す言葉もございません…」

にこ「ま、誕生日だし許してあげるわ!じゃあ時間も遅れてるし…行きましょ?」

グイッ

しおらしく私の袖を掴む。

穂乃果「あの…にこちゃん…手、繋いで欲しいなー、なんてね…//」

あぁ、愛くるしい。

にこ「ほ、ほら!さっさと行くわよ!//」ギュッ

穂乃果「えへへ…ありがとっ!にこちゃん!」ニコッ

今日は快晴。8月の太陽は眩しいほどに私達を照らす。

にこ「あっそうだ穂乃果!」

穂乃果「なーに?にこちゃん?」

でも…私にとってはそんなことはどうでもいいの。

にこ「誕生日プレゼントは持ってきてるんだけど…その前にもう一つプレゼントしたいものがあるの」

穂乃果「なになにー?」

にこ「少し目を瞑っててくれる?」

穂乃果「分かった!」

世界で一番輝いてる太陽が私の隣で笑っていてくれるから。

チュッ



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