【SS】千歌「かげおくり」

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千歌ママ-アイキャッチ1
1: 名無しで叶える物語 2017/08/01(火) 17:30:06.15 ID:miYYo6gm.net
私にその遊びを教えてくれたのは、母だった。


千歳「この遊びはね、かげおくりっていうのよ」

ちか「かげおくり…?」

千歳「そうよ。今日みたいにお日様がさんさんと輝いている日に、自分の影をじっと見つめるの」

ちか「ジィー…」

千歳「うふふ。そんなに目を凝らして見つめなくてもいいのに。
さあ。影を十秒ほど見つめたら、今度はお空を見上げて」

ちか「おそらを…?」


私は母の言うとおり、空を見上げた。

そこには、薄い黒をした、"かげ"が映っていた。

元スレ: 【SS】千歌「かげおくり」

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2: 名無しで叶える物語 2017/08/01(火) 17:32:22.08 ID:miYYo6gm.net
ちか「うわぁ!?おそらに黒いのがいるよ!」

千歳「それはね、千歌の"かげ"よ」

ちか「わたしの…」


私は空から目を離さなかった。

空を漂う黒のかげはゆらゆらと揺れ、今にも白い雲に流されてしまいそうだった。

すると、私よりもほんの少しだけ大きいかげが現れ、私のかげをそっと支えた。


ちか「おかあさんのかげだ!おかあさんがちかのとなりにいるよ!」

千歳「ふふ、そうね。一人ぼっちじゃ、寂しいものね」


母は悲しそうな表情を浮かべ、そう呟いた。
3: 名無しで叶える物語 2017/08/01(火) 17:33:02.52 ID:miYYo6gm.net
千歳「……ごめんね、千歌。お母さん、お仕事の都合で、東京に行かなくちゃいけないの」

ちか「え、なんで?おかあさんいなくなっちゃうの?」

千歳「ごめんね…。でも、千歌にはお姉ちゃん達がいる。独りじゃないわ」

ちか「いやだいやだ!おかあさんとはなれたくない!ずっとちかのそばにいて!」

千歳「……千歌…」


母は私と同じ目線の高さにしゃがみ込み、優しく微笑み、暖かな手を私の頭にぽん、と置いた。


千歳「私のかげを残していくわ。それなら、千歌は寂しくないでしょ?」


私は空を見上げた。

空に並ぶ二つのかげは、手を繋ぎ合い、仲良く笑っているように見えた。


ちか「うん…。おかあさん、いってらっしゃい」


母は笑顔で応えた。


千歳「うん。行ってきます」
4: 名無しで叶える物語 2017/08/01(火) 17:33:39.56 ID:miYYo6gm.net
私はそれから、二人の姉とかげおくりで遊ぶようになった。


千歌「十秒だよ。自分のかげを見つめて、十秒。
そしたら、一気にグワン!って、お空を見上げるの」

美渡「はいはい。判ってるって」


姉達は少し呆れながらも、私に付き合ってくれた。

見上げた空。

そこには、三つのかげが手を取り合い、ゆらゆらと靡いていた。
5: 名無しで叶える物語 2017/08/01(火) 17:34:11.87 ID:miYYo6gm.net
千歌「大きい雲に乗ってるかげ。あれ、ちかのかげだよ!」

美渡「ああ、あの一番チビすけのことか」

千歌「なにをー!
あ、あの意地悪そうなかげ!あれ絶対みと姉のかげだ!」

美渡「言ったな!この、この!」

千歌「いたぁい!しま姉、みと姉がいじめてくるよー!」

志満「よしよし、大丈夫よ。もうお姉ちゃんバリアを張ったから、バリアの中に美渡は入ってこれないわ」

美渡「くそ、千歌の奴、志満姉を巧く取り込んだな…」

千歌「あ!あの一番大きくて、一番優しそうなかげは、しま姉のだよ!」

志満「ふふふ。ありがと、千歌」


私たち三人は空を見上げ、そこに漂うかげに、それぞれの想いを馳せた。

母がいなくなって、もう数年。

空にはもう、母のかげは残っていない。

私は母のいない間に、身も心も大きく育った。

そして、母のいない生活にもすっかり慣れ、いつからか、母と過ごした記憶も段々と思い出せなくなっていた。
8: 名無しで叶える物語 2017/08/01(火) 17:34:58.21 ID:NI+51Ych.net
その日は、太陽がさんさんと降る、とある夏の日だった。

窓から差し込む西日に、私は目を覚ました。

目が光に慣れるまで、私はベッドに腰を掛けた。

私がぼんやりしていると、何処からか、声が聴こえてきた。


千歌「お母、さん…?」


朧げな記憶の中で、私は、それが母の声色であることに気が付いた。

すぐに部屋を飛び出し、階段を駆け下り、外へと降り立った。

私は家の庭から、空を見上げた。

夕陽に照らされた空は赤く染まり、今日という日の終わりが近付いていることを教えてくれた。
9: 名無しで叶える物語 2017/08/01(火) 17:35:44.30 ID:miYYo6gm.net
「………八、九、十。」


何処かから、数を数える声が聴こえた。

私は上を見た。

すると、赤い空に、黒く焦げついたようなかげが、ぽつりと浮かんでいた。


「………八、九、十。」

「………八、九、十。」


また、声が聞こえた。

見上げると、赤のキャンバスに黒く染みたかげが三つ。

三つのかげは、私を見ていた。

私は俯き、自分の影に視線を落とした。


千歌「………一、二、三、四、五、六、七、八、九、十。」


私は数え上げ、空を見上げた。

黒く焼け焦げたそれは四つに数を増やし、赤に染まる夕空に揺蕩った。



「なんだ…。みんな、そこに居たんだね」 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)
10: 名無しで叶える物語 2017/08/01(火) 17:36:29.01 ID:miYYo6gm.net
千歌ちゃん誕生日おめでとう
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