曜「吸血鬼」

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曜-アイキャッチ20



曜(補導されてもおかしくない時間帯、私は一人街にいた)

曜(本当ならこんな時間に一人で外にいちゃいけないんだけど、これには深い理由があった)

曜(月光に煌く白い犬歯、闇夜に紛れる黒い影)

曜(そう、私は気づいたら吸血鬼になっていたのだ)

曜「はあ……」

曜(一人歩きしてる女の人を狙って襲うって、完全に犯罪じゃん)

曜(吸われた人は前後の記憶が曖昧になるみたいだから何とかバレずにやってきたけど)

曜(どうしてこんなことになっちゃったんだろ)

pixiv: 曜「吸血鬼」 by あめのあいまに。

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曜「想い人を待ち続けて死んでいった内浦の亡霊のせいや! って通りすがりの占い師の人には言われたけど」

曜「そんなことってあるのかなあ。でも実際吸血鬼になってるわけだし」

曜「好きな人の血を吸えば、元に戻るとも言ってたっけ」

曜(好きな人……千歌ちゃんの、血)ゴクリ

曜「って無理無理! 千歌ちゃんにそんなこと、できないよ」

曜「それに占い師の人が言ったことが嘘かもしれないし、そんな不確かな情報を信じて千歌ちゃんを傷つけられない」

曜(でも、どうしたら良いんだろう)

曜(知らない人から少しずつ、生活に支障をきたさない程度に拝借してるけど)

曜(なんだか日に日に吸血衝動が強くなってる気がする)

曜(学生の身じゃ行動範囲も限られてるし、そのうち限界がやってきそう)

曜「もし血を吸いすぎて殺しちゃったりしたら……」ガクガク

曜「……」グゥ

曜「まあ今日のところは吸うけどね……あ、あの子かわいい。今日はあの子にしヨーソロー」



千歌「梨子ちゃんパス、パス!」

曜(最近、やっぱり吸血衝動が強くなってる気がする)

曜(最初は週に一回くらいだったのが、今は三日に一回くらい?)

梨子「あわわ、囲まれちゃった」

曜(もし毎日なんてことになったら、今のやり方じゃ限界があるよね)

曜(かと言ってあんまり我慢してると、夢遊病みたいに体が勝手に動いちゃうし)

千歌「梨子ちゃん、こういう時は思いきりが大事だよ!」

曜(でも、こんな話、いったい誰にすれば)

梨子「えいっ」ポイー

千歌「ああっ、曜ちゃん危ない!」

曜「え? ……へぶっ」

千歌「曜ちゃんがスクールアイドルにあるまじき声を!」

梨子「ご、ごめん曜ちゃん! 大丈夫?」

曜「うん、平気平気。体育の時間にボーっとしてた私が悪いから」

梨子「うぅ、本当にごめんね。痛かったよね」

千歌「よーちゃん体調悪いの?」

曜「いや……うーん。そうだね、ちょっと悪いかも。私保健室で休んでくるね」

梨子「付き添おうか?」

曜「良いって良いって。じゃ、保健室へ向かって、ヨーソロー!」

千歌「実は元気だよね?」



曜(体育、休んじゃった)

曜(でも、仕方ないよね。なんだか集中力もないし、頭もぼんやりしてるし)

曜(これもやっぱ……これのせいだよね)

曜(牙、というほど目立ちはしないけど、明らかにかつてより鋭さを増した私の犬歯)

曜(皮を破り、血を啜るためだけに成長した、なんともおぞましい器官)

曜(気持ち悪い……できることなら抜いてしまいたい)

曜(でも歯医者に行くわけにも行かないし、ペンチで砕こうかとまで考えたこともあるけど、怖くてできなかった)

曜(それにもしこれがなくなって吸血衝動に駆られたとき、一体私は何を使って人の血を吸おうとするのだろう)

曜(もし無意識にナイフみたいな刃物を使うようになったりしたら、そっちの方が危ない)

曜「うう、考えてたらまた吸いたくなってきた。こないだ吸ったばかりなのになあ」

ガララ

梨子「曜ちゃん、いる?」

曜「わわっ」

曜「梨子ちゃん……どうしたの?」

梨子「様子を見に来たの。千歌ちゃんも来るって言ったんだけど、宿題出してなくて途中で先生に捕まっちゃって」

曜「あ、もう休憩時間だったんだ」

曜(全然気付かなかった。また今夜辺り吸わないと、夢遊病状態になりそうだなあ)

梨子「ねえ、曜ちゃん。何か悩みでもあるの?」

曜「え?」

梨子「なんだか最近、溜め息をついてることが多い気がして」

曜「ええ、そんなことないよー」

曜(気をつけないと、余計な心配かけちゃうなあ)

梨子「私、曜ちゃんの力になりたいの!」ズイ

曜「梨子ちゃん!? ち、近いよ」

曜(梨子ちゃん、良い匂い……顔立ちも整って綺麗だし)

梨子「もし私にできることがあれば、なんでも相談して」

曜(なにより、木漏れ日に照らされた透き通る肌に浮かぶ青白い血管が)ドクン

曜(あ、やばっ)

曜「梨子ちゃん」ダキッ

梨子「ひゃっ。よ、曜ちゃん?」

曜「一つだけ、お願い聞いてほしいの」

梨子「うん……言って」

曜「梨子ちゃんの、血を頂戴」カプッ

梨子「え? ……んんっ」

梨子「ちょ。曜ちゃ、ぁ……」

曜(気付いたら、私は梨子ちゃんの首筋に噛みついていた)

曜(保健室には私が血を啜る音と、梨子ちゃんの呻きだけが響いた)

曜(ひどく常軌を逸した光景なのに、私はそれがとても甘美なものに思えた)

曜「ご、ごめん!」

曜(体の自由が利くようになると私は急いで梨子ちゃんから離れた)

曜(梨子ちゃんは意味が分からないという顔をしながら涙目になっていた)

曜(そりゃそうだよね。いきなり友達に文字通り噛みつかれて血を吸われて)

梨子「ねえ、曜ちゃん。今のは、曜ちゃんの悩みに関係があるの?」

曜(普通なら、叫んだり逃げ出したりしてもおかしくない。でも梨子ちゃんはそうしなかった)

曜(ただ静かに、私にそう問いかけた。どう考えたって、怖いはずなのに)

曜「うん……信じてくれるか分からないけど」

曜(だから私も、話すことにした)

曜(誰が聞いても荒唐無稽な、私の奇行を誤魔化すための与太話としか思えない、そんな本当のことを)

曜「――というわけなんだ。こんな話、信じてくれなくて良いけど」

梨子「ううん、信じるよ。信じる」

曜「本当に?」

梨子「うん。だって曜ちゃん、こんな時に嘘をつくような人じゃないもの」

曜「梨子ちゃん……」

曜(こんな、自分でも信じられないような話を、梨子ちゃんは信じてくれるんだ)

梨子「この話、千歌ちゃんにはしたの?」

曜「ううん。できないよ。言っても困らせるだけだろうし。梨子ちゃんにも、誰にも言うつもりなかったんだ」

梨子「ふふっ、それじゃあ二人だけの秘密だね」

曜「ごめんね、変なことに巻き込んじゃって」

曜(梨子ちゃんは、なぜか嬉しそうに微笑んでいた)

曜(その笑顔に、胸が少しドキッとした)



曜「おはヨーソロー!」

千歌「おはよう」

梨子「おはよう、曜ちゃん」

曜「千歌ちゃん、宿題やってきた?」

千歌「えっ、宿題なんか出てたっけ?」

曜「出てたよ。私もさっき思い出したんだけど……ということで梨子ちゃん、見せてください!」

千歌「あ、千歌も千歌も!」

梨子「はあ……」

梨子「二人とも、宿題は自分でやるから意味があるのよ?」

曜「そこをなんとか」

梨子「ふーん。ねえねえ曜ちゃん」

曜「なぁに?」

梨子「その代わり、今日曜ちゃんの家に行っても良い?」

曜「良いよ!」

千歌「どうして千歌の家じゃなくて真っ先に曜ちゃんの家なの?」

梨子「千歌ちゃんちは飽きるほど見てるし……」

千歌「ええ、梨子ちゃん千歌に飽きちゃったの!?」

梨子「あわわ。違うよ、千歌ちゃんじゃなくて千歌ちゃんの家に」

千歌「あはは、冗談だって。でも、そうだよねー。なんたってお隣さんだし」

梨子「千歌ちゃんも今日どう?」

千歌「行きたいけど、今日はちょっと用事が……」

梨子「そっか。じゃあ千歌ちゃんはまた今度だね」

千歌「うん……なんか最近曜ちゃんと梨子ちゃん仲良いよね」

曜「え、そんなことないと思うけど」

梨子「そうそう、いつも通りだから安心して?」

千歌「そうかなあ」

曜「あ、梨子ちゃん。そう言えば新しく喫茶店が出来たんだけど、せっかくだから行かない?」

梨子「行く行く! どんなお店?」

曜「えっとねえ――」

千歌「……」ジー

千歌(やっぱり、最近曜ちゃんと梨子ちゃんの距離が近い気がする)

千歌(なんだろう、二人が仲良くなるのは嬉しいはずなのに……)

千歌(それに何か隠し事でもしてるみたいで……うー、モヤモヤするー)



梨子「ねえ、曜ちゃん。そろそろじゃない?」

曜「う、うん。よく分かったね」

梨子「わかるよ。曜ちゃんのことだもん」

曜(最近、梨子ちゃんは私の吸血衝動がきたのが分かるみたい)

曜(よっぽど顔に出てるのかな)

曜(まあでも、梨子ちゃんに一番近づくのはそういう時なわけで、こう何度もやってたら分かるようにもなるのかな)

曜(それにしても……)

曜「ねえ梨子ちゃん。やっぱり他の人からも」

梨子「だめ……」

曜(梨子ちゃんは私が他の人から血を吸うとすると嫌がる)

曜(私のことを考えてかもしれないけど、以前一度他の人から吸ったのがバレたときは物凄く悲しまれてしまった)

曜(それから、こうやって何度も聞いてみてるけど、やっぱり駄目みたい)

曜「でも梨子ちゃん、大丈夫なの?」

梨子「大丈夫だよ」

曜「だって……」

曜(色白で透き通るようだった肌は、もはや行き過ぎて不健康なくらい真っ白で)

曜(最近は貧血を起こすことも多くなったし、やっぱり心配だよ)

曜(ってげんいんは紛れもなく私なんだから、マッチポンプも甚だしいけど)

梨子「もう、曜ちゃんは大袈裟だよ。頻繁に抜かれるっていってもあんなちょっとの血、大したことないよ」

曜「う、うん」

曜(本当はそんなの嘘だって分かってる。でも、この体は気付けば梨子ちゃんへと噛みついている)

曜(心もそれに合わせて、本人が平気だよって言ってるんだから問題ないって、欺瞞に満ちた誤魔化しで塗り固められていく)

曜「ごめんね……ごめんね、梨子ちゃん」

梨子「もう、謝らないでよ。曜ちゃんは好きでこうなったわけじゃないでしょ」

梨子「それに、私だって曜ちゃんに頼ってもらえて嬉しいんだからね」

曜(どうして梨子ちゃんはこんなに強いんだろうか。私には、その心は一生分かる気がしなかった)



千歌「曜ちゃんたち、まだ駅にいるかなあ」

千歌(最近十千万や海の家の手伝いでなかなか遊べなかったけど、今日は久々に早く終わった)

千歌(連絡しないで、ドッキリさせてやるのだ。最近なんだかモヤモヤしてたし、それくらい良いよね?)

千歌(ふふふ、ふつう怪獣ちかちーのちょっぴり普通じゃない逆襲が始まるよ)

千歌「と言っても、どこにいるのやら。こっちかな」

千歌(なんて、闇雲に歩いても見つかるはずないよね……って、いた!)

千歌(千歌ってば冴えてるよー。これは運命も私を応援してるね)

千歌(あれ? 二人で路地裏になんか入ってどうしたんだろ)

千歌(まさか隠れ家的喫茶店でも!? ちょっと後つけてみよ)

千歌(うーん、お店どころか人っ子一人いないよ。どこに向かってるのかな)

千歌(えっ……!)

千歌(あれって梨子ちゃんが好きなやつだよね。壁丼? 壁喰? もしかして梨子ちゃんの趣味に付き合ってあげてるのかな)

千歌(それにしてもなんだか近づきすぎだよ。あのままじゃ顔がくっついちゃう……ええっ!?)

千歌(曜ちゃんが、千歌ちゃんに噛みついてる……?)

千歌(なに、なにしてるの……二人とも)

千歌(あ……に、逃げなきゃ!)

千歌「はあ、はあ」

千歌「あんなの、絶対おかしいよね」

千歌「梨子ちゃんの様子も、変だったし。それに……」

千歌「梨子ちゃんに噛みついてるときの曜ちゃん、血みたいに真っ赤な目をしてた」



善子「なるほど。それで私を頼りにきたってわけね」

千歌「うん……」

善子「正解よ!」

千歌「信じてくれるの?」

善子「もちろん。きっと曜さんは悪い魔物に取り憑かれてるのね」

千歌「魔物?」

善子「そうよ。リリーが最近不調気味だったのも、きっと生気を吸われるか何かしてたの」

千歌「それなら、どうして梨子ちゃんは私たちに助けを求めないの?」

善子「きっと、魅了の魔術か何かかけられてるんだわ」

善子「それに曜さんの立場が危うくなるのを危惧してるのかも。事が公になればきっと騒がれるもの」

千歌「そっか。ねえ、どうしたら梨子ちゃんを、曜ちゃんを助けられるかな?」

善子「この堕天使ヨハネに任せなさい。低級悪魔の一匹や二匹、まとめてぶっ飛ばしてあげるんだから!」

千歌「ありがとう! 善子ちゃん」

善子「だからヨハネよ!」

善子(とは言ったものの、どうしようかしら。とりあえず黒魔術の本でも買ってみる?)



梨子「こんなところに呼び出してなんだろう?」

曜「千歌ちゃんのことだから、かくれんぼでもしようとか言い出すんじゃないかな」

梨子「えぇ……」

善子「来たわね!」

曜「あれ、善子ちゃん? 千歌ちゃんは? 本当にかくれんぼだったり?」

善子「のんきなことを言っていられるのも今のうちよ! あなたたちのこと、ヨハネは全部お見通しなんだから!」

曜(嘘っ、バレてるの? でもいつものごっこ遊びかもしれないし)

曜「なんのことかな?」

千歌「誤魔化しても無駄だよ」

曜「千歌ちゃん……」

千歌「千歌、見ちゃったんだ。曜ちゃんが路地裏で梨子ちゃんに噛みついてるとこ」

善子「曜さん、ずばりあなたは悪魔に取り憑かれてるのよ!」

曜(惜しい! 近いけど惜しいよ善子ちゃん)

曜(そっか。でも見られちゃったんだ……)

曜(千歌ちゃんにだけは、バレたくなかったのになあ)

善子「曜さん。悪魔に取り憑かれたあなたはリリーから生気を吸い取り、人間界を恐怖に陥れるための力を溜め込んでるんでしょ」

梨子「よっちゃん、それは違うよ。曜ちゃんには事情があって、それで私の方からお願いして」

千歌「嘘だっ!」

梨子「」ビクッ

千歌「梨子ちゃんは騙されてるんだよ!」

曜「千歌ちゃ」

善子「曜さんの相手は私よ! 解き放て、堕天に集いし黒き影よ!」

曜「うわっ」ガクン

善子「嘘、成功した!?」

曜(なんだろう。急に体が、重く。まさか善子ちゃんの術のせい?)

善子「さあ、観念しなさい曜さん」

曜「そうはいかないよ!」

善子「きゃっ」

曜(果南ちゃんほどじゃないけど、私だって鍛えてるんだから。魔術だかなんだか知らないけどそうそう負けないよ)

善子「もう、黙ってやられなさいよ!」

善子(まずい、思ったより効いてないみたい。このままじゃ……)

曜「捕まえたよ、善子ちゃん」

善子「や、離して!」ジタバタ

曜「うわっ、暴れないでよ」

曜(このままじゃ危ない。大人しくさせるには……血を吸うしか)ドクン

曜(仕方ないよね。これは緊急避難ってやつだよ)

梨子『だめ……』

曜(くっ、どうしてこんな時に梨子ちゃんのこと)

善子「はーなーせー」ドカッ

曜「うっ」

善子「あ、嘘? ちょっと曜さん大丈夫!?」



梨子「千歌ちゃんは酷いよ。曜ちゃんはこんなに優しいのに、それなのにこんな仕打ち」

千歌「梨子ちゃんは曜ちゃんにミリョーされてるからそう感じるだけなんだよ」

千歌「優しい人はね、女の子に噛みついたりしないんだよ」

梨子「だからそれは誤解なの」

梨子「信じてくれないかもしれないけど、曜ちゃんは呪いで吸血鬼になっちゃったの」

梨子「でも心は曜ちゃんのままで、とっても苦しんで、それでも抑え難い衝動のために仕方なく血を吸ってたの」

梨子「曜ちゃんが私の血を吸ってたのも私から頼んだの」

梨子「偶然曜ちゃんの呪いのことを知って、曜ちゃんの負担とか、他の人に見つかったりする危険を減らせたらって思って……」

梨子「それに、曜ちゃんはずっと千歌ちゃんのこと気にかけてたよ。だから千歌ちゃん、もうこんなことやめて」

千歌「嫌だ、梨子ちゃんの言うことなんて信じない……」

梨子「なんで、どうしてそんなこと言うの。千歌ちゃんなんて何も知らないくせに!」

千歌「知るわけないじゃん! だって曜ちゃん千歌に何も話してくれないんだもん!」

梨子「だから、それは」

千歌「大切に思ってるからって? 何それむかつく! 曜ちゃんは私の何なの? 保護者?」

千歌「いつも私よりなんでもできて、私はずっと近づけないのかなって不安だったよ」

千歌「少しでも近づきたくて、一緒にAqoursも始めて、頑張って頑張って少しは近づけたかなって思ってたけど、そう思ってたのは千歌だけだったのかな」

千歌「大切なんていらない、困らせてほしかったの。曜ちゃんから直接聞きたかったな……。私に相談して、私の血を吸ってほしかったよ……」

梨子「千歌ちゃん……」



曜(千歌ちゃん、そんな風に思ってたなんて)

曜(私、全然千歌ちゃんのこと考えられてなかったんだなあ)

曜(千歌ちゃんのためって言いながら、自分が傷つきたくなかっただけだ)スクッ

善子「ちょ、まだ動けるの!? というか私が言うのもなんだけど、安静にしてた方が」

曜「ありがとう善子ちゃん。善子ちゃんは優しいね」

善子「や、優しくないから。あとヨハネ!」

曜「ふふっ。そうだったね」

善子「……まあ、行くんなら行けば。話は大体聞こえてたし。あんな面倒くさいの、さっさと終わらせなさいよ」

曜「やっぱり善子ちゃんは優しいね」

善子「だからヨハネよ!」

曜(私、千歌ちゃんの近くにいるつもりで、全然向き合えてなかったね。今日、ようやくそれがわかったよ)

曜(そういう意味では、この呪いにも感謝なのかな。皆にいっぱい迷惑かけちゃったけど……)

曜「千歌ちゃん!」

千歌「曜ちゃん……」

曜「ごめん、ごめんね」

千歌「謝ったって許さないよ」

曜「私、吸血鬼になっちゃったんだって……意味わかんないよね」

曜「ねえ、千歌ちゃん。私怖いよ。だんだん血を吸う回数が増えていくの。一生このままなんじゃないかって不安で仕方がないよ」

千歌「……遅いよ、バカ曜。もっと頼ってよ」

千歌「そして私もバカ千歌だ。曜ちゃんがこんなに苦しんでるのに、気付いてあげられなかった。ごめんね……」

曜「ううん。それは私が隠してたから。幼馴染の目を欺くなんて、私なかなか演技力あるのかな」

千歌「もう、曜ちゃんったら」

曜「ねえ、千歌ちゃん。良いかな?」

曜(何を、とは言わなかった。でもそれはちゃんと伝わって、千歌ちゃんは無言で頷いた)

曜(私は千歌ちゃんの首筋に、ゆっくりと歯を立てた)

千歌「ん……」

曜(苦しげな、でもどこか甘い吐息が漏れる)

曜(一口、それを飲み干した直後、私の体は憑き物が落ちたかのように軽くなった)

曜(歯も……戻ってる!)

曜「こんなに、簡単なことだったんだ」

曜(占い師の人の言ってたことは本当だったんだね。いつかまた会えたら、お礼をしなくちゃ)







千歌「曜ちゃん」

曜「ん? ……んんっ!」

千歌「ぷはっ……ファーストキスは血の味だね」

曜「ちちち千歌ちゃん!?」

曜(えええ、どうして千歌ちゃん、なんで? 何が起こったの!?)

千歌「もう、曜ちゃんったら慌てすぎ。どう考えても曜ちゃんのしてたことの方が凄かったからね」

曜「いや、だってそれは不可抗力と言いますか呪いのせいで」

千歌「言い訳は聞きませーん」

梨子「ちょっと、二人だけで勝手に盛り上がらないでよ」

梨子「千歌ちゃんがいたって関係ない。私は曜ちゃんを諦めないから!」

梨子「私だって、その……曜ちゃんに初めてを奪われてキズモノにされたんだから」

曜「梨子ちゃん、言い方言い方」

梨子「うるさい!」

曜「……!! んーっ、んー!」

梨子「っはあ、はあ。どう、私の気持ち伝わった?」

千歌「あー、梨子ちゃんずるい! 曜ちゃんは私のものだよ! 曜ちゃん成分を返せ」

梨子「ちょっ、ぁ……」

千歌「んぅ、ちゅっ……」

千歌「ふふん、梨子ちゃんに曜ちゃんは十年早いよ」

曜(えぇ、どうしてこうなっちゃうの)

曜(巻き込まれないうちに、逃げよう)ソローリ

千歌「あ、曜ちゃんどこ行くの?」

梨子「逃がさないんだから!」

千歌「梨子ちゃん、一時休戦だね」

梨子「うん、まずは曜ちゃんを逃げられないように足腰立たなくしちゃわないとね」

千歌「それじゃ、とりあえず部室まで運んじゃおうっか」

梨子「曜ちゃん、今夜は寝かせないから」

千歌「今までの分も含めて、千歌が満足いくまでとことん付き合ってもらうからね」

曜「よ、よーそろー……」

善子(はっ、なにこれ……)

善子「えっろ」

おしまい
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