千歌「まくら返し」

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千歌-アイキャッチ29



果南「はい、じゃあ今日の練習は終わり」

千歌「つかれたー」

曜「お疲れ様、千歌ちゃん」

梨子「お疲れ様」

千歌「今日も全然だったよー」

曜「そんなことないよ! 千歌ちゃんだって初めの頃と比べたらすごく良くなってるって」

千歌「うう、そうは言ってもスタートラインが後ろ過ぎて」

千歌「曜ちゃんみたいに格好良く踊ったり、梨子ちゃんみたいに綺麗な曲を作ったりできないし」

梨子「そんな……千歌ちゃんだって素敵な歌詞を書いてるじゃない。それに私は千歌ちゃんの歌もダンスも好きだよ」

曜「私も私も! 千歌ちゃんはもっと自信を持つべきだよ」

千歌「うーん。そうかなあ」

千歌(とはいっても、周りの皆が凄すぎてなかなか難しいよ)

pixiv: 千歌「まくら返し」 by あめのあいまに。

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曜「あ、バスが来たみたい。それじゃ、また明日。ヨーソロー!」

千歌「うん。ばいばーい」

梨子「ばいばい」

千歌「私たちも帰ろっか」

梨子「うん」

千歌「はあ」

梨子「どうしたの?」

千歌「梨子ちゃんは美人だなあって」

梨子「ええっ、そんなことないよ。私なんて地味で。千歌ちゃんの方がよっぽど可愛いよ」

千歌「いやいや。梨子ちゃんが地味は無理があるよ。東京なら知らないけど、少なくとも内浦では」

千歌(ダイヤさんは多芸で安定感があるし、鞠莉ちゃんや善子ちゃんは華がある)

千歌(果南ちゃんや曜ちゃんみたいなパワフルさ、梨子ちゃんみたいな繊細さ、ルビィちゃ花丸ちゃんみたいな可愛らしさ、皆私にはないもん)

千歌(千歌も、自信を持てるように変わりたいなあ)

千歌「それじゃ、また明日ねー」

梨子「うん。また明日」

千歌(はあ、今日は速く寝よう。なんだか気持ちが下がり気味だし)



チュンチュン

千歌「はっ」

千歌「なんだか長い夢を見ていたような……げっ、もうこんな時間!?」

千歌「おかーさん、どうして起こしてくれなかったの?」ドタバタ

千歌母「えー、まだ時間あるわよー」

千歌「そんなことないよ! 学校遅れちゃうよ……あれ? お母さん老けた?」

千歌母「千歌ったら失礼なんだからー」

美渡「というかなんで学校行こうとしてんだ。寝ぼけてんの?」

千歌「うわっ、美渡姉がオバンになってる!」

美渡「は? ふざけたこと言ってないで顔でも洗ってこい!」

千歌「うわー」



千歌「ふう」バシャバシャ

千歌「あれ、私の顔ってこんなんだったっけ?」キュッキュッ

千歌「なんか少し大人っぽくなってる気が」

千歌「んん……あ、思い出した! 千歌もう就職してるじゃん」

千歌「なんで忘れてたんだろ。美渡姉の言うとおり寝ぼけてたみたい」

千歌(三年生の卒業に合わせてAqoursも解散。それからは夢から覚めたみたいに普通の日常に戻った)

千歌(普通に受験して、普通に進学して、普通に卒業して、普通に就職して)

千歌(皆ともだんだんバラバラになっちゃった。今でも何人かとは遊ぶけどさ)

志満「千歌―。テレビにお友達出てるよ」

千歌「えっ、本当?」

千歌「あ、花丸ちゃんとルビィちゃんだ」

美渡「今やいろんな番組に引っ張りだこでしょ。内浦出身でこんな人気アイドルが出るなんて、世の中わからないね」

志満「千歌たちと一緒にスクールアイドルしてたんでしょ。凄いわねえ」

美渡「千歌はこんなフツーの人生歩んでるのにね」

千歌「余計なお世話だよ!」

千歌(花丸ちゃんとルビィちゃん。二人は大学在学中にアイドルユニットはなまルビィとしてデビューした)

千歌(その小動物ちっくな外見と本格的なパフォーマンスが話題になって一躍大人気になったんだよね)

千歌(大人しかった二人がこんなに頑張ってるんだって思うと、私も頑張らなきゃって思える)

千歌「さっ、私もそろそろ仕事に行かなきゃ」



イラッシャッセー

千歌「コンビニでお茶と……サンドイッチでも買っておこう」

千歌「iDでお願いします」

ダイヤ「タントンとなるまでタッチお願いします」

千歌「はーい……ってダイヤさん!?」

ダイヤ「あら、千歌さんではないですか」

千歌「どうしてこんなところにいるんですか?」

ダイヤ「どうしてって……リニアモーターカーに対抗する形で値下げした新幹線が改装に伴い駅を三島から沼津へ移し都内へ安く速く移動できるようになったところ、東京一極集中を解消するための地方創生特措法の影響で移転を検討した首都圏の企業がそこに目を付け、結果引き起こされた急激な人口増加に対応するため高層マンション建設ラッシュになり、山を崩し海を埋め立て、内浦湾も漏れなく埋め立てられて我が家も廃業したからですわ」

千歌「う、うん。説明ありがとう」

ダイヤ「というか、千歌さんも知ってることでしょう」

千歌「あはは。今日は寝ぼけてるみたいで、記憶が曖昧なんだよね」

ダイヤ「それ、笑って済ませられる話ですの? まあ良いですが」

千歌「でも、わざわざバイトなんてしなくても、ルビィちゃんが十分稼いでるんじゃない?」

ダイヤ「確かに。ですが、姉として妹の稼ぎに頼りっぱなしというわけにもいきません」

ダイヤ「自分の分くらいは自分で稼ぐというのが、せめてもの意地ですわ」

千歌(姉として、フリーターなのは問題ないのかな)

千歌「じゃ、じゃあ。私はこれで。お仕事頑張ってください」

ダイヤ「ええ。千歌さんも頑張ってくださいね」



千歌「ふう、なんだか朝から疲れちゃったなあ」

千歌「それにしても、ダイヤさんがねえ。高校の頃には想像もできなかったよ」

千歌「……やっぱり、人って時間とともに変わっちゃうものなんだねえ」

千歌「さっ、私も急がなきゃ。遅刻しちゃう」



千歌「おはようございまーす」

オハヨー

千歌「ふぅ、パソコンつけて」ポチットナ

鞠莉「高海さーん、随分余裕じゃなーい?」

千歌「げっ、ま……小原さん」

千歌(鞠莉ちゃんは会社の上司なんだよね)

千歌(昔はおふざけキャラだったのに、今はとっても厳しい社会人になっちゃった)

千歌(こうして私のところに来るときは、だいたい怒ってるとき。昔みたいに、また楽しくおしゃべりしたいのになあ)

鞠莉「げっ、じゃないわ。今朝は八時からMTGがあるから遅れないようにって言ってたでしょ!」

鞠莉「出席者にも事前にコンセンサスを得るように言ってたのにやってないし」

鞠莉「おかげでギリギリ過半数しかアグリー取れなくて危なかったわよ」

千歌「す、すみません!」

千歌(うう、コンセント刺す? あぐりって農業? 何言ってるか分からないよー)

鞠莉「まあ過ぎたことは仕方ないわ。次から気を付けて。午後から話し合うイシューについてプレゼン資料を作ってちょうだい。雛形はあるからこれを元にして、一枚目にアジェンダも入れておいて。ASAPでね!」

千歌「は、はい!」



千歌「うー、こんな感じかなー」

鞠莉「高海さん。もうお昼だけど資料はできたの?」

千歌「は、はい。いちおう」

鞠莉「どれどれ。……ねえ、これはなに?」

鞠莉「こんなんで良いわけないでしょ。アジェンダもないし」

千歌「あ……ご、ごめんなさい。ちょっと、わからなくて」

鞠莉「はあー。分からないなら聞きに来なさい。あなたがこうして無駄な時間を過ごしてる間もお給料は発生してるのよ?」

千歌「すみませんでした。鞠莉ちゃん」

鞠莉「鞠莉ちゃん?」

千歌「あ……」

鞠莉「高海さん。あなた学生気分が抜けてないみたいねー。一度高校生からやり直した方が良いんじゃない?」

千歌「うぅ。すみませんでした。資料も作り直しますから」

鞠莉「もう結構。あなたに頼んだ私が馬鹿だったわ。あなたはシュレッダーでもかけてなさい。それくらいならできるでしょ」

クスクス

千歌(うう、鞠莉ちゃんに失望されちゃった……)

千歌(はあ、オフィス居づらいな。ちょうどお昼だし今日は外に食べに行こ)



千歌(あ、そういえばサンドイッチ買ったんだった。無駄になっちゃうな)

千歌(後で食べよう。今はとにかくヤケ食いしたい気分だよ)

千歌「ラーメンかあ」

千歌(普段だったら絶対食べないけど、今日の千歌は突撃しちゃうのだ)

ヘイラッシャイ

千歌「ラーメン一つ、大盛りで」

果南「はいよー。ラーメン大一丁!」

千歌「うんうん、豚骨とかん水の香るこの感じ。まさに男のラーメン屋だね」

千歌「麺も太目で食べごたえありそうだし、今の千歌にピッタリ」

果南「へいお待ち。ラーメン大ね」

千歌「わーい……って果南ちゃん!?」

千歌「どうしてこんなところに? 思わずワンパな反応しちゃったよ!」

果南「? なんでって、うちのお店だからだよ。内浦の埋め立てで海も大分変わっちゃって、ダイビングショップも閉店したからさ。お父さんの夢だったラーメン屋を家族で手伝ってるんだ」

千歌「へー……意外なような、そうでないような」

果南「ささっ、冷めないうちに食べてよ。うちのラーメンは熱いうちが一番おいしいんだから」

千歌「まあラーメンは大抵そうだと思うけどね? じゃあ、いただきまーす」チュル

千歌「っ! おいしい!」ズルルッ

千歌「パンチの効いた豚骨と、それに負けないくらいガツンとくる醤油。主張の強すぎる二つの味をバターのように優しく包むこれは、鶏油だね?」

千歌「それだけじゃない。仄かに混ざるこのスッとした風味。隠し味に使われているのはショウガだ! どうしても重たくなりがちなとんこつ醤油を、ショウガの爽やかさで見事に軽くしている!」

千歌「さらにはこの麺! 中太の縮れ麺にしっかりとスープが絡んで、しかも麺自体の味も強すぎず弱すぎず、完璧な調和が取れてるよ」

千歌「卓上にはお酢、にんにく、コショウ、豆板醤などなど調味料も豊富で、味変しながら最後の一口まで飽きることなく食べ尽くせる!」

千歌「果南ちゃん! すごい、凄すぎるよ! まさにラーメン界の奇跡だよー!」

果南「あ、ありがとう。でももうちょっと静かにしてくれると嬉しいかなん」

千歌「あ、ごめんね……」

果南「それにしても千歌がラーメンなんて珍しいね」

千歌「うん。実は仕事で嫌なことがあって。でも、果南ちゃんのラーメン食べたら元気になったよ! ありがとう」

果南「ふふっ、こちらこそ。そんな風に言ってもらえて嬉しいよ」

果南「そういえば千歌。最近善子のところには行ってる?」

千歌「善子ちゃん? 行ってない、と思う」

果南「そっか。まあ、そうだよね。でもたまには顔出してあげなよ。場所分からないなら住所メモしてあげるから」

千歌「うん。ありがと」

千歌「ふう、ごちそうさまでした」

果南「お粗末さまでした」

マタノゴライテンヲー

千歌「よし、午後の仕事も頑張るぞー!」



千歌「はあ、疲れたー」

千歌「結局午後もあんまり上手くいかなかったけど、とりあえずシュレッダー係にはならなくて済みそう」

千歌「はあ」

千歌(私、何やってるんだろう。もっと輝いて、そして皆を元気にできるような、そんなことがしたかったはずなのに)

千歌(やっぱり、普通な私なんかじゃそんなの無理だったのかな)

チカチャーン

千歌「え?」

曜「やっぱり千歌ちゃんだ!」

梨子「久しぶりだね」

千歌「曜ちゃん! 梨子ちゃん!」

梨子「元気だった」

千歌「うん! 二人は?」

曜「私たちも元気だよー」

梨子「ねー?」

梨子「千歌ちゃんは仕事帰り?」

千歌「うん。二人は?」

曜「私たちはデートしてたの!」

梨子「ちょ、曜ちゃん」

曜「もう、照れなくたって良いのにー」

千歌「そっかー……って、ええ!?」

曜「え、そんな驚かなくても。千歌ちゃんも知ってたでしょ?」

梨子「千歌ちゃんが背中を押してくれたから、私たち付き合えたの。千歌ちゃんにはとっても感謝してるわ」

曜「今度結婚式をするからさ、その時は千歌ちゃんスピーチよろしくね!」

千歌「え……う、嘘」

曜「ちょっと。いくら千歌ちゃんでもそういうこと言うのは」

千歌「あ、ごめんね……」

千歌「私ちょっと気分が」ダッ

千歌(わけがわからない。なんで二人が付き合ってるの?)

千歌(というか、やっぱりこの世界おかしいよ! 昨日までの記憶もあるけど全然現実感がないし)

千歌(何かが起きてるんだ……そうだ、善子ちゃん)

千歌(善子ちゃんならオカルトとか好きだし、何かわかるかも。確か果南ちゃんにメモを)

千歌「ここって……」



千歌(メモのとおりの場所に来たけど)

千歌「やっぱり、病院だよね」

千歌「善子ちゃん、骨でも折ったのかな……えー、240号室津島っと」

千歌「失礼しまーす」

善子「ふっ、来たわね」

千歌「善子ちゃん!? どうしてそんなボロボロなの」

千歌(体中酷い傷だらけで……チューブで機械に繋がれてるし)

千歌「ね、ねえ! 何があったの? 善子ちゃんは大丈夫なの?」

善子「……ヨハネ、よ」

花丸「千歌ちゃん、静かにしよ。ここは病院だよ」

ルビィ「お久しぶりです」

千歌「花丸ちゃん、ルビィちゃん……」

花丸「善子ちゃんはね、魔力を使い過ぎちゃったの」

善子「だからヨハネよ」

ルビィ「善子ちゃんが行った黒魔術の儀式で天界・魔界とのゲートが開いちゃって、その結果地球で勃発した天魔大戦。善子ちゃんは責任を感じて力を奪われた堕天使の身でありながら全力を、ううん、全力以上を出した結果」

善子「ヨハネだってば」

花丸「体の方が耐え切れず、魔力が尽きたせいで回復もできず、この通り。可哀想な善子ちゃん」

善子「お願い、聞いて」

千歌「そんな……」

千歌(シリアスに呟いてみたけど、全く話についていけないよお。というか善子ちゃん見た目のわりに元気そうじゃない?)

善子「千歌、あなたは取り憑かれてるの」

千歌「えっ?」

善子「今の世界に違和感を感じたり、自分の記憶に実感を持てなかったり、そういうことはなかった?」

千歌「! あった!」

善子「やはりね。千歌、こっちに来なさい」

千歌「?」

善子「妖怪まくら返し。こいつのせいよ」ガシッ

ギャアアアア

千歌「ひっ、なにこれ」

善子「人はね、寝ている間魂が肉体を抜けて夢の世界へ行っていると言われているわ。こいつはね、悩んでる人が寝ている間に枕をひっくり返して、夢の世界へ閉じ込めてしまう妖怪なの」

花丸「ちょ、善子ちゃん。力を使ったら駄目だよ!」

ルビィ「そんなことしたら、善子ちゃんが死んじゃう!」

善子「私は平気よ……それより」

善子「私のリトルデーモンに手を出すなんて良い度胸ね。地獄で後悔なさい!」

グワァァァァ

千歌(気持ち悪い子鬼みたいなのが、消えて……)

千歌「あれ、ルビィちゃんと花丸ちゃんは? それに善子ちゃんもなんか透けてる!?」

善子「ふふっ、ここは夢の世界だもの。まくら返しも倒したし、朝が来たら無くなるのは道理よ」

千歌「そんな! 善子ちゃんも消えちゃうの?」

千歌「うぅ、助けてもらったのに、なんのお返しもできないままさよならなんて嫌だよお」

善子「泣かないの。私は所詮あなたの夢の産物だもの。あとヨハネよ」

善子「じゃあね、お寝坊さん。あっちの世界でも私によろしくね」

千歌「善子ちゃん……善子ちゃーん!」







チュンチュン

千歌「はっ、なんだか長い夢を見ていたような……あれ?」

千歌「涙……怖い夢だったのかな。寝てる間に泣いちゃうなんて」

千歌「げっ、もうこんな時間! 遅刻しちゃう」ドタバタ



千歌「おはよー」

曜「おはヨーソロー!」

梨子「おはよう。今日は寝坊でもしたの?」

千歌「そうなんだよー。梨子ちゃんも呼びに来てくれれば良かったのに」

梨子「嫌よ。千歌ちゃんに付き合ったら私まで遅刻しちゃうでしょ」

千歌「ほら、遅刻してないから!」

梨子「でも朝から汗だくじゃない」

千歌「うわっ、本当だ」

善子「あなたたち、朝から元気ね」

梨子「おはよう」

曜「よーしこー!」

善子「ヨハネよ!」

千歌「あっ、善子ちゃんおはよー」ダキッ

善子「ちょ、千歌さんなんなの」

善子「というか冷たっ。あなた汗かいてるじゃない。離れなさいよ!」

曜「あっ、ずるい。私も私も」ギュー

千歌「ほら、梨子ちゃんも」

梨子「う、うん」ギュー

善子「ぎゃー。はーなーれーてー」

千歌「ふふん。やーだよ!」

おしまい
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