ようちか「「だぶる」」

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ようちか-アイキャッチ13
~渡辺家~

曜「それでねー、これが千歌ちゃんとピクニックに行った時の写真!」

千歌「あーなつかしー! よーちゃんよくこんなにいっぱい写真持ってるねー!」

曜「写真は大事な思い出だからね!」

梨子「2人はどこに行くにも一緒だったのね」

千歌「よーちゃんが付いてきちゃうからね~」

曜「いつも一緒であります!」

梨子「2人ってなんだか双子みたいよね」

ようちか「「ふたご?」」

梨子「ふふっ、そういうとこよ♪」

pixiv: ようちか「「だぶる」」 by アブソブ

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千歌「よーちゃんと双子か~、だったら千歌がおねーちゃんだね!」

曜「え~? 千歌ちゃんの方が妹っぽいと思うけどな~」

梨子「双子にどっちが上とかないんじゃない?」

千歌「あるの! タッチとか見たことない?」

梨子「あー、タッチだと確かに曜ちゃんが和也だね」

千歌「でしょー?」

曜「千歌ちゃん達也で嬉しいんだ……」

千歌「千歌が達也でよーちゃんが和也なら梨子ちゃんは……」

梨子「え? もしかして、みなみ……」

ようちか「「松平」」

梨子「ええ!? 私マンホールに五百円玉落としそうに見える!?」

曜「松平のマニアックエピソードが……」

梨子「でも大概の双子って兄や姉の方が優秀って感じしない? テニプリの木更津兄弟とか」

千歌「きさらづ?」

梨子「あ、でもおお振りの鈴木兄弟は弟の方が冷静だったり……」

曜「梨子ちゃん、ごめん知らないや」

梨子「あっ……」

千歌「なになにー? 何のアニメ?」

梨子「ま、まあそれはいいじゃない! とにかく2人はいつも一緒だったのねってこと!」

曜「それはそうだね! 一緒じゃないときが想像できないであります!」


梨子「あっ、ほら見てよあのコルクボード!」

曜「え? あ、ちょっと!」

梨子「小さい頃の二人の写真でいっぱいじゃない」

千歌「おおー! こんなに大事にしてくれてるなんて!」

曜「は、恥ずかしいであります……」

千歌「ちょうど千歌たちが出会ったころの写真だねー」

梨子「出会ってすぐの2人かあ、きっとすぐに仲良くなったんでしょうね」

曜「うん! 千歌ちゃんとはすぐに仲良くなったんだ!」

梨子「へえ、2人がはじめましての時のお話、聞いてみたいな」

曜「うん! えっと……あれ?」

梨子「どうしたの?」

千歌「あー! 見て見て! この写真のよーちゃんめちゃくちゃ可愛いよ!」

曜「もう千歌ちゃ~ん!」

梨子「……?」

千歌「いやー思い出だね~」

梨子「にしてもすごいわね。千歌ちゃんだけの写真もあるなんて」

ようちか「「へっ?」」

梨子「え? いや、このお花畑の写真とか……」

曜「あーしまったー! 千歌ちゃんの写真飾ってるのが千歌ちゃんにばれたー!」

千歌「もー! よーちゃんってば千歌のコト好きすぎ!」

曜「あはは……しまったなー」

梨子「曜ちゃんにとって千歌ちゃんは特別なのね」

曜「もちろん! 初めてのともだちだからね!」

梨子「初めての……」

ピリリ!ピリリ!

千歌「あ、みと姉からだ。はい……」

アンタイツマデアソンデンノサー!!!!

千歌「へ……あ、もうこんな時間! ごめんなさい! すぐ帰るから!」ピッ

曜「千歌ちゃん?」

千歌「ごめん2人とも! 今日旅館の手伝いしなきゃいけないのすっかり忘れてたよ! 悪いけどもう帰るね?」

曜「了解であります!」

梨子「そうなんだ。じゃあ私は……」

千歌「梨子ちゃんも帰ろ?」

梨子「あ、うん。そうさせてもらうね」

千歌「よーちゃん! じゃあまた明日!」

梨子「また明日ね」

曜「ヨーソロー!」

~翌日、部室~

果南「ふーん、それで昨日は曜ちゃんの家に集まって3人でミーティングしてたんだ」

梨子「といってもほとんど女子会みたいなものですけど……」

果南「女3人寄ればどこでも女子会ってこと? 女子高生だなー」

梨子「果南さんも女子高生なんじゃ……」

果南「それにしても曜ちゃんの家か、ちょっと遠くない?」

梨子「最初は千歌ちゃんと曜ちゃんの2人だけで行くところだったんですけど、私も混ぜてもらって」

果南「そうだったんだ。いいな~、私も曜ちゃんの家には行ったことないや」

梨子「ちょっとこの辺から離れてますもんね」

果南「曜ちゃんの家はお父さんが海に出てて忙しそうってのもあるんだけどね」

梨子「あ、私そういうの全然気にしてなかった……」

果南「まあ曜ちゃんもそういうことは気にしてないと思うよ?」

梨子「そうだといいですけど……あ、そういえば」

果南「どうしたの?」

梨子「果南さんって、曜ちゃんのコトちゃん付けで呼んでるんですね」



果南「……なに? 変かな?」

梨子「いや、変ってわけじゃないんですけど」

果南「けど?」

梨子「千歌ちゃん鞠莉さんダイヤさんは呼び捨てなのに同じ幼馴染の曜ちゃんだけちゃん付けなのが気になるっていうか……」

梨子「あ! 別に2人の仲が悪いとかそう思ってるわけじゃなくて! その……」

果南「ふふっ、梨子ちゃんって案外思ったことが口に出るタイプなんだね」

千歌「そーそー! 案外梨子ちゃんは直情型? なんだよ!」

曜「そうであります!」

梨子「千歌ちゃん曜ちゃん!?」

果南「あ、千歌! 昨日梨子ちゃんと曜ちゃんの3人で女子会したらしいね」

千歌「女子会!? 都会の人はあれを女子会って表現するんだ……」

曜「集まって喋ったら女子会! 都会って最先端だね!」

梨子「なんだか都会をバカにしてない?」

果南「都会のガーリーな女子は毎日女子会を開いて大量のグミを食べるって噂だよ!」

梨子「果南さんまで!?」

ようちかなん「「「やばーい!」」」

梨子「ヤバくないです!」

ダイヤ「あなたたち! いつまでぺちゃくちゃと喋っているのです! 練習の準備は出来ているのですか?」

千歌「もっちろん!」

ダイヤ「よろしい、では本日は体力づくりの日ですから……ランニングにいきますわよ!」

千歌「あ、準備できてないかも」

ダイヤ「千歌さん!」

曜「千歌ちゃん、頑張ろ?」

千歌「よーちゃぁん……よーちゃんはいいよね、水泳で体力バッチリだもん」

曜「こう見えても高飛び込み全国区だからね~」ヨーソロー!

梨子「……」

果南「どうしたの? 梨子ちゃんもランニングいや?」

梨子「いや、得意ではないですけど、やるからには頑張ります!」

果南「うん、その意気その意気!」

千歌「千歌もよーちゃんくらい走れたらな~」
――――――
――――
――
千歌「あー疲れたー!」

梨子「果南さん達がいるとどうしてもペースが上がるのよね……」

曜「お疲れ様~、千歌ちゃん自己ベスト更新じゃない?」

千歌「え、ほんとー!?」

梨子「曜ちゃん、千歌ちゃんの記録把握してるんだ……」

曜「うん! 私が帰って来てから4分だから1分更新!」

梨子「ものすごく主観的な覚え方! でも、それって曜ちゃんのペースにもよるんじゃないの?」

ダイヤ「それはありませんわ。曜さんは毎回同じ時間でゴールしていますから」

梨子「毎回!?」

曜「ペースは大事だからね~」

千歌「さっすが曜ちゃん! やっぱりすごいな~」

果南「じゃあ今回の千歌のペースアップは純粋に千歌が頑張ったんだね!」

千歌「果南ちゃんの言い方だと千歌の頑張りを信じてなかったみたい……」

果南「そんなことないけど?」

千歌「けど、なに?」

果南「んーん。ほんと、頑張ってるね。……頑張りすぎてない?」

千歌「果南ちゃんがしま姉みたいなこと言うー!」

梨子「でも千歌ちゃんホント頑張ってるよ。アイドルの練習だけじゃなく歌詞にメンバー集めに、千歌ちゃんを頑張ってないなんて言う人いないよ」

ダイヤ「ええ、千歌さんの頑張りは私も認めるところですわ」

千歌「もー! みんなしてお姉ちゃんみたいなことをー! 千歌が末っ子だからってお姉ちゃんにならないでよ!」

曜「ヨーソロー! 千歌ちゃん、妹なら私がいるよ!」

梨子「双子のね♪」

千歌「よーちゃーん! 千歌の双子の妹よー!」ムギュッ

曜「ああ、双子のお姉ちゃん!」ムギュー

梨子「身長もスリーサイズもほとんど同じだし、ホントそっくりね2人は」

花丸「なんでスリーサイズ把握してるずら?」

梨子「きゃあああああああああ!!!!」

花丸「驚きすぎずら」

ルビィ「千歌ちゃん! ルビィも千歌ちゃんの妹になれない?」

千歌「ルビィちゃん……」

ダイヤ「いけませんわ! ルビィは私だけの妹です!」

梨子「ダイヤさん……」

千歌「いいもんいいもん! 千歌には他にも花丸ちゃんがいるし!」 ムギュー

花丸「ずらっ?」

善子「ち、千歌さん! ヨハネは……」

千歌「妹が堕天使はしんどいかな~」

善子「なんでよー! で、でも堕天使って認めてくれてる!?」

花丸「善子ちゃんはぽじてぃぶずら~」

ダイヤ「では、続いてのメニューに移りますわよ!」

鞠莉「平和ね~」

梨子「本当ですね」

千歌「よーし! じゃあ次のメニューも自己ベスト更新だよ!」

――このときは思ってませんでした。この後、千歌ちゃんが倒れるだなんて

千歌「みんな! 屋上までれっつ……あっ……」バターン

梨子「千歌ちゃんっ!? 大丈夫!?」

千歌「う……」

ダイヤ「誰か! 千歌さんを保健室に……」

果南「私が連れてくよ」ダキッ

ダイヤ「果南さん……」

梨子(きゃーーー! お姫様抱っこーーー!)

ダイヤ「よろしくお願いします」

果南「任せといて」

梨子(……あれ? 曜ちゃんは? こんなとき真っ先に動きそうなのに……)キョロキョロ

果南「……梨子ちゃんも来てくれる?」

梨子「へっ……私もですか?」

果南「うん、保険の先生この時間職員室だから先回りして鍵をもらってきてほしいんだ」

ダイヤ「そういうことでしたら私が……」

果南「梨子ちゃんお願い」

梨子「わ、分かりました……」

ダイヤ「……梨子さん、お願いしますね」

――曜ちゃんが……いない?
~保健室前~

果南「梨子ちゃん待ってたよ」

梨子「あ、果南さん! 保健室の先生今手が離せないみたいで鍵だけ預かってきました」

果南「ありがとう、じゃあ入ろうか」ガチャッ ガラガラ

梨子「あ、えっと……じゃあ私はこれで」

果南「一緒に入ってよ」

梨子「へっ?」

果南「話があるんだ」

梨子「保健室で美人の先輩と2人っきりでお話!? それってまさか……」

果南「直情型だな~」

梨子「あ、いや! これは……」

果南「思ったことが口に出る、気になったことから目が離せないんだね」

梨子「果南さん……」

果南「はいろっか」

果南「よいしょっと。千歌は疲れが溜まってただけだと思うから、多分こうして寝かせておけば大丈夫だよ」

梨子「よかった~」

果南「じゃあ、本題に入ろうか」

梨子「本題? 千歌ちゃんを寝かせにきたんじゃ……」

果南「もちろんそれが一番大事だけど、梨子ちゃんを呼んだ目的をね」

梨子「……」ゴクリ

果南「千歌と曜ちゃんこと。いや、曜ちゃんのだね。どこまで疑ってる?」

梨子「いや、そんな疑ってなんか……」

果南「ほんとに?」

梨子「……やっぱり、なにかあるんですね」

果南「どの辺りで?」

梨子「それは……」
――曜ちゃんのアルバムに千歌ちゃんだけの写真があること
――遠くに住んでる2人があんなに仲良くなれたこと
――社交性に富んでいそうな曜ちゃんの「初めての」友達が千歌ちゃんだってこと
――曜ちゃんがあまりに水泳部に顔を出さないこと
――曜ちゃんの家に飛び込みのトロフィーがなかったこと

果南「あはは、気づかない方がおかしいか。家まで行ったんだもんね」

梨子「曜ちゃんは、なんなんですか?」

果南「昔の話からしてあげよっか」

――
――――
――――――
ちか「かなんちゃーん!」

かなん「ちかー! どうしたのー? なんだかうれしそうだね!」

ちか「えっへっへ~ちかはなんと! スイミングスクールにいくことにしたのだ!」

かなん「おおっ! こんどはスイミングか~」

ちか「こんどはってなにさ!」

かなん「ごめんごめん、じゃあまえの習い事は……」

ちか「いいの! いまはスイミングなの!」

かなん「あきっぽなちかに続けられるかなー?」

ちか「つづくもん!」
――――――
――――
――

梨子「千歌ちゃんスイミングスクールに通ってたんですね」

果南「うん、千歌はいろいろ習い事してたね」

――
――――
――――――
ちか「かなんちゃ~ん……」

かなん「どうしたのちか。スイミング楽しくないの?」

ちか「ううん、およぐのはたのしいんだけどね、ちかがやりたかったのは『あそこの足場まで5本!』とかそんなんじ
ゃないような……」

かなん「あはは、まあさいしょはそんなものだよね」

ちか「おかあさんにはつづけられるって言ったけど、つづけていけるかな?」

かなん「う~ん、そうだね。もくひょうとか、友だちができたら続くと思うよ?」

ちか「ともだち?」

かなん「そ、小学校のそとでのお友だち。ちかにはまだいないでしょ? きっとできたら楽しいよ?」

ちか「そっか~、ともだちか~」

かなん「友だちができたらさ、わたしにもしょうかいしてよ! ちかの友だちならきっとわたしもなかよくなれると思うな!」

ちか「うん! ちか、ともだちつくる!」
――――――
――――
――

梨子「友達……、もしかしてそのスイミングスクールで曜ちゃんと?」

果南「そうだね」

梨子「あれ、でも2人の小学校って同じなんじゃ……」

――
――――
――――――
かなん「ちかー、どうしたの? そんなとこでぼーっとして」

ちか「……あっ! かなんちゃん! ともだち! ともだちできたよ!」

かなん「ほんと? どんな子?」

ちか「えっと……えっとねー」

かなん「ん?」

ちか「とにかくね! すごい子なの!」

かなん「すごい?」

ちか「しょうとか! しょうとかとってるの!」

かなん「賞? すごいじゃん!」

ちか「えへへ~」

かなん「そういえば、ちかの通ってるスイミングスクールって飛び込みとかもやってるよね」

ちか「そうなの! あ、その子はとびこみの子なの!」

かなん「とびこみの?」

ちか「うん! すっごくてね~、ちかとはいちばんのともだちなの!」

かなん「ふーん、その子の名前は?」

ちか「え、あ……ど…しよ……」

かなん「よ?」

ちか「あ、そう! よ、よ、」

かなん「よ?」

ちか「よ、よーちゃん! その子はよーちゃんってゆうの!」

かなん「よーちゃんか~。なんだかわたしもよーちゃんに会いたくなっちゃったな」

ちか「えっ!?」

かなん「どうしたのちか。わたしにしょうかいしてくれるって言ってたじゃん」

ちか「あ……あした! あしたよーちゃんつれてくるから!」

かなん「あした? そんなに急いでないけど?」

ちか「つれてくるの!」

かなん「そう? じゃあおねがい」

ちか「うん!」
――――――
――――
――

梨子「やっぱり千歌ちゃんと曜ちゃんはすぐに仲良くなったんですね」

果南「まあ、ね」

梨子「……?」

果南「次の日約束通り曜ちゃんが家に来たんだ。でも……」

梨子「でも?」

――
――――
――――――
「かーなんちゃーん!」

かなん「はーい、ってあなたは……」

「はじめまして! よーちゃんです!」
――――――
――――
――

果南「そこにいたのは、水泳帽をかぶった……千歌だった」

果南「その時の私は深く考えもせず、千歌の曜ちゃんごっこに付き合ってあげることにしたんだ」

――
――――
――――――
かなん「えっと、あなたが、よーちゃん?」

よう「うん! わたしがよーちゃんなのです!」

かなん「うーんと……ちかは?」

よう「ちかちゃんはね、今日はこないのです!」

かなん「そうなんだ、よくうちが分かったね」

よう「えっと、それは、ちかちゃんにいっぱいきいてたからです! であります!」

かなん「ぷふっ、なにそのしゃべりかた。船長さんみたい」

よう「え? そ、そう? へん?」

かなん「へんといえば、へんかな?」

よう「えっとね、それはね、あの、あ、そうだ! うちのパパがせんちょうさんだからで……」

かなん「ぷっ、くくっ……」

よう「どうしてわらうのー!」

かなん「ごめんごめん。まあうちにはいりなよ。おさしみがあるんだ」

よう「おさしみ!? たべた……」

かなん「そーいえば、ちかもおさしみだいすきだったなー。もしかしてよーちゃんはちかなんじゃない?」

よう「たべた……くない! おさしみ、きらいなの! ごめんなさい! ……うぅ~」

かなん「くくくっ」
――――――
――――
――

果南「そこからは千歌や曜ちゃんと代わる代わる遊んだんだ」
――
――――
――――――
ちか「ねー! よーちゃんはちゃんとちかのともだちでしょー?」

かなん「うんうん、そうだね」ニヤニヤ

ちか「なんでにやにやしてるのさー!」
――――――
かなん「よーちゃん、いえの中でくらいぼうしとりなよ」

よう「えっ、でもこれをとっちゃうと……」

かなん「よーちゃんの髪の毛見たいな~。友だちなんだし」

よう「う~ん、と、とるであります!」ガバッ

かなん「ふふふっ、これは……ぼさぼさだね」

よう「ぼさぼさ? ちかちゃんみたいじゃない!?」

かなん「まあ、こんなあたまのちかは見たことないかな」

よう「そりゃあそうであります! わたしはよーちゃんなんだから!」
――――――
ちか「それでね、よーちゃんはね……」モグモグ

かなん「あー、そういえばよーちゃんもみかんおいしそうに食べてたなー」

ちか「いいもん! すきなたべものがおんなじだからっておんなじひとってわけじゃないもん!」

かなん「さすがにもうひっかからないか……」

ちか「なあに?」

かなん「んーん、なんでも」
――――――
――――
――

果南「千歌と曜ちゃんは私だけじゃない、近所の同じくらいの子供たちともたまに遊んだんだ。もちろん代わりばんこに」

果南「不思議と他の子たちには千歌と曜ちゃんは別の人に見えたみたいなんだよね」
――
――――
――――――
女子A「たぁっ!」ポーン

よう「えいっ!」パシーン

女子B「きゃっ! よーちゃんのボールはやーい!」

よう「えへへ~」
――――――
果南「千歌はもともとボール遊びが得意だからね。曜ちゃんも当然上手だった」
――――――
かなん「さーて、つぎはわたしのばんだね!」

女子B「やった! かなんちゃんとならかてる!」

女子A「ふーんだ! よーちゃんだってすごいもん! よーちゃんがかつもん!」

よう「ほんとに? わたしかなんちゃんに」

女子A「うん! ちかちゃんだったらむりかもだけど、よーちゃんならかてるよ!」

よう「えっ……」

女子A「よーちゃんはすごいもん! ちかちゃんとちがって!」
――――――
――――
――
果南「ここだったのかな、ここで気づくべきだったのかな」

梨子「……」

果南「そのころの私は、千歌の通ってるスイミングスクールに本物の曜ちゃんがいて、千歌はその子の真似をしてると思ってたの。でもある日……」
――
――――
――――――
~海~
かなん「それっ!」 ピョーン ザブーン

よう「かなんちゃぁん……」

かなん「よーちゃーん! ここまでおいでよー!」プカプカ

よう「でも、こんなたかいところからなんて……」

かなん「でもさー、よーちゃんはとびこみのせんしゅなんでしょー?」

よう「そう、であります、けど……」

かなん「ふーん、やっぱりちかなんじゃない?」
――――――
果南「ちょっと千歌の曜ちゃんごっこに飽きてたんだよね。あんまりしつこいから」
――――――
よう「うぅぅぅぅ……」

かなん「うーん……」

よう「……」

かなん「……ごめんねちか! からかっちゃって! でもちかもわたしにウソ……」

よう「たあっ!」ピョーン

かなん「ちか!?」

よう「……」クルッ……チャポーン

かなん「ちか! ちょっと! ちか! だいじょうぶ!?」

よう「なにいってるのかなんちゃん」

かなん「ちか?」

よう「わたしは……」

よう「よーちゃんだよ」


果南「怖くなっちゃってさ。考えたの。本物の曜ちゃんがその日は代わりに来てたんじゃないかって」

果南「だから千歌のスイミングスクールに行ってみようと思ったの。千歌には内緒で」
――
――――
――――――
千歌ママ「千歌のスイミングスクールの場所? 果南ちゃんも始めたいの? 千歌はずいぶん前にやめちゃったからねー」

かなん「やめてるの?」
――――――
果南「千歌はとっくにスイミングやめてたんだ。私に最初に曜ちゃんの話をしてくれたときにはもうね」
――――――
かなん「はっ、はっ、はっ、はっ」タッタッタッタッ

かなん「ごめんください!」
――――――
果南「とにかくスイミングスクールまで走ったの。千歌のお母さんが車出してくれるって言ったくれたんだけど断って」
――――――
かなん「うわぁ、トロフィーや賞状がいっぱい」

かなん「で、よーちゃんのは……」
――――――
果南「確かに高飛び込みのトロフィーはあったよ。高校2年生のがひとつ」

梨子「なっ……!」

果南「それにね……」
――――――
かなん「えぇっ!?」

受付「うーん、うちには飛び込みやってる小学校低学年の子はいないなー」

かなん「え、あの、かみがくしゃくしゃな女の子なんだけど……」

受付「そもそもうちでの飛び込みは高学年からだからね」
――――――
果南「……ってさ」

梨子「じゃあ、曜ちゃんは……」

果南「うん、いなかったんだ」

果南「千歌のお母さんから私がスイミングスクールのこと聞いたのが伝わったのか、その日から数日曜ちゃんは来なくてさ」
――
――――
――――――
ちか「かなんちゃーん、きょうはなにしてあそぶー?」

かなん「う~ん」

ちか「かなんちゃん?」

かなん「ちかー、よーちゃんはもうこないの?」

ちか「えっとねー、あの、れんしゅう? がいそがしいみたいなの」

かなん「ふーん、わたしはよーちゃんにあいたいけどな」
――――――
果南「軽はずみだったよね。私はこの言葉と、それを聞いた千歌の顔を今でも夢に見るよ」
――――――
――――
――





ちか「……かなんちゃんも、ちかよりよーちゃんのほうがいいの?」



果南「千歌の顔と、曜ちゃんの顔が……だぶって見えたの」
――
――――
――――――
かなん「いや、ちか! そんなつもりじゃ……」

ちか「そうだよね、よーちゃんはすごくてかっこいいもんね。ちかはふつうだもんね」

かなん「ちか?」

ちか「えっと、あと、もうすこしまって! よーちゃんはね、いま、その、がいこく? でね」

かなん「べつにいいよちか! そんなの……」

ちか「いいから! あー! よーちゃんはやくかえってこないかなー!」

かなん「ちか!」

ちか「あ! よーちゃんもうかえってるかも! ちょっとまっててね! むかえにいくから! だからね……」

かなん「ちか!」



ちか「ばいばい」

かなん「ちか! まって!」

ちか「かなんちゃん……」

かなん「ちか、わたし、ちかのこと、その……」

かなん「だいすきだよ!」

ちか「うっ……うぅ……」

かなん「ちか!?」

ちか「かなんちゃん……ありがと」バターン

かなん「ちか!?」
――――――
果南「千歌はさっきと同じように倒れたの」

梨子「……っ!」

果南「そして次の日」
――――――
ちか「かなんちゃーん! あーそーぼ!」

かなん「ちか! よかった、げんきに……」

よう「いっしょにあそぶであります!」
――――――
果南「千歌と曜ちゃんが、一緒に来たんだ」


果南「そこからはもう驚くしかなかったよ。曜ちゃんがいるんだもん」

果南「小学校には最初から曜ちゃんがいたことになっててさ、千歌に何度か曜ちゃんの家に誘われたりもしたけど怖くて……曜ちゃんの親に会ったことある?」

梨子「いえ、お父さんは航海に行っていて、お母さんは……あれ?」

果南「家を空けている、って設定は都合がよかったんだろうね。たぶん、曜ちゃんの家には千歌と一緒じゃなきゃ入れない」

梨子「そんな……」

果南「千歌と曜ちゃんは同じように成長していった。でも……」

梨子「千歌ちゃんは普通で、曜ちゃんは特別」

果南「そう。千歌がかわいそうでさ、何度も曜ちゃんのこと聞こうと思った。でもまた千歌が倒れるんじゃないかって思ったら……」

梨子「そんな……」

果南「そこからはもう今まで、Aqoursを始めるまでずっと同じようなもんだよ」

梨子「…………」

果南「信じられない?」

梨子「い、いえ、でも、そんな……千歌ちゃんから、曜ちゃんが産まれた!?」

果南「私はそう思うよ」

梨子「そっくりな、もう1人の自分? こういうの、ドッペルゲンガーとか、ダブルっていうんだっけ!?」

果南「そっくりならね。確かに見た目は似てるけど、2人は真逆だ」

梨子「普通と、特別」

果南「うん」

梨子「想像の友達……? イマジナリーフレンド?」

果南「小さい子にはたまにいるみたいだね」

梨子「でも! どういうこと!? 身長も髪の長さもスリーサイズまでそっくりなんて!」

果南「スリーサイズは知らないけど……千歌と同じじゃないと具現化するほどイメージできないのかな」

梨子「……荒唐無稽すぎて仮説も立てられない」

千歌「ん、んん……」

果南「千歌!」

梨子「千歌ちゃん!?」

千歌「果南ちゃん、梨子ちゃん。ここは……保健室?」

梨子「千歌ちゃん、さっき千歌ちゃんは練習中に気絶して……」

ガラガラ!

曜「千歌ちゃん!」

千歌「……よーちゃん」

曜「……千歌ちゃん、ひぐっ、よかった。うっ、よかったよぉ……」

千歌「泣かないで、よーちゃん。よーちゃんはかっこいいんだから」

曜「千歌ちゃあん……」ギュッ

千歌「甘えんぼさんだなぁ、よーちゃんはすごいのに」

曜「だって、しんぱいで、しんぱいで……」

千歌「もー。よーちゃんってば泣き虫さんだなぁ。よーちゃんは、よーちゃんは特別なのに!」

梨子「もうやめて!!!」

果南「梨子ちゃん!?」

千歌「ほらぁ、梨子ちゃんもよーちゃんの泣き虫に呆れちゃってるよ」

梨子「違うわ。千歌ちゃん、もう、曜ちゃんを褒めるのをやめて……」

千歌「梨子ちゃん?」

梨子「だって、曜ちゃんを褒めた後、わたしには聞こえるの。千歌ちゃんの……『千歌と違って』って声が!」

曜「梨子ちゃん……」

梨子「そんなの! もう、聞いてられないよ!」

千歌「梨子ちゃん……」

梨子「曜ちゃんもそうなんでしょ! だって、曜ちゃんは……」

果南「ちょっと梨子ちゃん!」


梨子「千歌ちゃんの分身なんだから!」


千歌「梨子ちゃん……? なに言ってるの?」

曜「そ、そうだよ! そんなの、ありえないじゃん!」

梨子「やっぱり無自覚なのね。……それともそう強く思い込んでるだけかしら」

果南「ちょっと梨子ちゃん! 私はそんなことしてほしくて話したんじゃないよ!」

梨子「仕方ないんです! だって、私、思ったことは口に出ちゃうから」

果南「でも、今の2人にこんなこと言ったって!」

梨子「どうするんですか! 千歌ちゃんは、今日急に倒れました。昔、2人に増えた時のように。でも、なんのきっかけもなく」

果南「それは……」

梨子「あくまで私の仮説ですけど、中学時代は放課後2人は別の活動をしてました。 千歌ちゃんと一緒じゃないときの曜ちゃんは、多分消えてたんだと思うんです。」

果南「あっ……」

梨子「あの日以降、千歌ちゃん抜きで曜ちゃんと果南さんだけでの用事ってありましたか?」

果南「それは……なかった。曜ちゃんが私と会うときはいつも一緒だった」

「……めて」

梨子「放課後、曜ちゃんを消してる分、中学時代の千歌ちゃんは今より曜ちゃんを出す体力を使わずにいられたんだと思います」

「……めてよ」

梨子「でも今は違う、放課後もAqoursの活動でずっと一緒、千歌ちゃんと曜ちゃんそれぞれが求められている」

果南「その分体力を消費して……」

梨子「今日、限界がきて倒れたんです」

「やめてってば!」

梨子「そうでしょ? 曜ちゃん」

曜「もうやめて、千歌ちゃんにそんなこと聞かせないで!」

果南「曜ちゃん……」

千歌「どうしたの? 怖い顔してるよ、よーちゃん、みんな」

梨子「千歌ちゃん、自分を信じて? 千歌ちゃんは、特別だよ?」

千歌「え……でも、特別なのは、よーちゃんの方で」

梨子「千歌ちゃん!」

曜「そうだよ千歌ちゃん! 私は特別! 千歌ちゃん、私が必要だよね!」

千歌「うん、よーちゃんはこれからも、千歌と一緒に……」

梨子「千歌ちゃん! もっと自分を見てよ! 千歌ちゃんが、Aqoursでどれだけ特別なことを成し遂げてきのか思い出してよ!」

千歌「それは……」

梨子「そしてそれを! 一番近くで見てきたのは……曜ちゃんでしょ」

曜「あっ……」

千歌「よーちゃん……」

曜「そうだよね、千歌ちゃんは、もうずっと前から私だけじゃない。みんなにとっての特別になってたよね」

千歌「よーちゃん……」

曜「ホントは気づいてたんだ。私が、私の存在が、千歌ちゃんの負担になってるって。『特別』を2人分、そんなの1人じゃ無理だよ」

果南「曜ちゃんやめて!」

曜「私が特別なんかじゃなければ! 千歌ちゃんはもっと早く特別になれてたはずなんだ! 私が、私さえいなければ……」

千歌「よーちゃん……」

果南「やめて! そんなこと言ったら、私が、『よーちゃんにあいたい』なんて言わなければ、千歌はこんな目に……!」

千歌「違うよ果南ちゃん」

果南「千歌……」

千歌「あのときね、果南ちゃんが『だいすきだよ』って言ってくれたから、千歌はここにいるんだよ」

果南「千歌……」

梨子「果南さんの『だいすき』で千歌ちゃんは存在できた。自分を求める人がいるから。もしそれがなかったら……」

千歌「果南ちゃんの言葉が、千歌の心をつないでくれたんだよ」

果南「私は……私はっ……!」

千歌「泣かないで果南ちゃん」



曜「……うん、千歌ちゃんを求める人はちゃんといる。そんな人のため、なにより千歌ちゃんのため、私は消えなきゃだ」

千歌「ちょ、ちょっと待ってよ! よーちゃん! 消えるって何!?」

曜「分かってるんでしょ? 今日千歌ちゃんが倒れたのは、私が千歌ちゃんといるせいなの!」

千歌「よーちゃん!」

曜「もう私は、特別になった千歌ちゃんの隣にはいられない。だからね……」

果南「っ……!」ダッ

梨子「果南さん!? どこに行くんですか!?」

曜「だから、もう、お別れだね」

千歌「待ってよ! ずっと一緒にいるって言ったじゃん! 千歌のとなりにいてよ!」

曜「無理だよ。そんなことしたらまた今日みたいに倒れちゃう。私はもう特別な千歌ちゃんのとなりにはいられない」

千歌「じゃあいい! もう特別になんてならなくていいよ! よーちゃんと一緒にいたいよ!」

曜「だめだよ! ずっと特別になりたかったんでしょ!?」

千歌「いいよ、よーちゃんとお別れするくらいならもういい……」

梨子「千歌ちゃん!」

千歌「梨子ちゃん……」

梨子「千歌ちゃんは、特別だよ? 誰が何と言おうと、千歌ちゃんが何と言おうと! 特別だよ……!」

曜「うん! そのとーり! じゃあ、千歌ちゃん……」

千歌「よーちゃん……」


曜「ばいばい」

――そうして曜ちゃんは、光の中に消えていきました

千歌「ああああああ! よーちゃん、よーちゃん……!」

梨子「……」

千歌「梨子ちゃん、よーちゃんが!」

梨子「分かってる……」

千歌「かっこいいよーちゃんが!」

梨子「分かってる」

千歌「みんなの憧れのよーちゃんが!」

梨子「分かってる!」

千歌「特別なよーちゃんが!」

梨子「分かってるわよ! 曜ちゃんがかっこいいのもみんなの憧れなのも特別なのも! ……千歌ちゃんのことが大好きなのも全部!」


梨子「……千歌ちゃんと同じくらいわかってる!」
――――――
~部室~

ガラガラ

果南「はぁっ、はぁっ、みんな!」

鞠莉「果南? どうかした? 千歌っちの様子はもういいの?」

果南「それより! みんな、曜ちゃんの……ううん、曜のこと、どう思ってる?」

ダイヤ「果南さん……?」

果南「いいから!」

ダイヤ「それは……活発で……」

鞠莉「案外乙女で♪」

善子「リア充で……」グヌヌ

花丸「友達思いで?」

ルビィ「なんでもできちゃう……」

5人「「「「「そんな人でしょ?」」」」」

果南「うん! 私もそう思う! よかった。みんな分かってるよね」

ダイヤ「ええ、そんなこと私たち全員……」


6人「「「「「「千歌と同じくらい分かってる!」」」」」」

千歌「うぅ……よーちゃん、よーちゃん……」

梨子「千歌ちゃん……」

ガラガラ

梨子「すいません今は……」

「もー、どうしたの? そんなに泣いちゃって」

梨子「……そんな」

千歌「え……なんで?」

「ねえ、私たち、まだ言ってないことってない?」

千歌「へ……それは……」

「分かるでしょ?」

千歌「……うん!」

「はじめまして! 千歌ちゃん!」

千歌「うん! はじめまして! よーちゃん!」
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『ようちか「「だぶる」」』へのコメント

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