下戸の宝石荒らし

シェアする

ダイヤ-アイキャッチ12
千歌「だいやさぁーん!!」


わたくしが千歌さんの部屋に足を踏み入れるや否や、千歌さんがわたくしの胸に飛び込んでくる


ダイヤ「え、なに? 千歌さん、どうしたんですの?」

千歌「だいやさん、おそーぃー! ちかずぅーっとまってたろにぃー……」


今さっき千歌さんからの電話で『志満姉からお土産でおいしそうなチョコ貰ったんだ! 一緒に食べよう!』

そう連絡を受けて、すぐにここに来たのでそんなに遅いということはないと思うのですが……。

というか、千歌さんの様子が少し……いえ、かなりおかしい。

顔は赤いし、目はぼんやりとしているし、なにより喋り方がおかしい。


ダイヤ「千歌さん、大丈夫ですか? ちょっと変ですわよ?」

千歌「へん? ……チカへんなんだ……。……うっ……へんじゃないろにぃ……っ。」

ダイヤ「え、ええ!? ちょ、ちょっと泣かないで……!?」


今度は突然泣き出す始末。


pixiv: 下戸の宝石荒らし by 如月rey

スポンサーリンク
ダイヤ「えっと、変というのは千歌さんがおかしいとか、えぇっと……つまり狂ってるとか、そう言う意味で言ってるのではなく。……えっと、どこか体調が悪いのかと心配をしていただけで……」


わたわたとしながら、とりあえず千歌さんを座らせて、しどろもどろフォローをする。


千歌「ほんとぉ……? ちか、へんじゃない? きらいにならない?」

ダイヤ「な、なるはずないでしょう? むしろ、大好きよ」

千歌「そっかぁ……そっかぁ……えへへ、だいすきー、わらひもだいしゅきー、だいやさんしゅきぃ~♪」


千歌さんは今泣いた烏がもう笑う、とでも言わんばかりに、今度は打って変わってわたくしの胸の中でころころと笑い出す。

一体どうしたと言うの……?

ふにゃふにゃして、呂律の回っていない、千歌さんの頭を撫でながら、部屋の中を見回す。

キョロキョロと辺りを見回すわたくしの視線があるものを見つけて、ピタリと止まる。


ダイヤ「あれって……」


わたくしが目を留めたのは箱だった。割としっかりとした創りの箱に、恐らく何かが入っていたであろう、くぼみが敷き詰められたプラスチックのシート。

……恐らく、先ほど言っていた件のチョコの入れ物。


ダイヤ「えっと、千歌さん」

千歌「なぁにぃ?」


相変わらず呂律の回ってない彼女に


ダイヤ「……もしかして、チョコを食べましたか?」


変に刺激をしないように、単刀直入に尋ねる。


千歌「ぁ、ぅん♪ あのね、ちょっとにがい? とぃうかあつぃ? みたぃなへんなあじがしたけど~おいしかったんだぁ~♪」


苦い……熱い……それって


ダイヤ「ちょっと、いいですか?」


件の箱を確認しようと千歌さんを一時的に引き離そうとする。


千歌「やっ、 だいやさんいっちゃ、やっ!」


すぐに反抗される。


ダイヤ「えっと……少し確認するだけなので」

千歌「やっ!! ……もしかして……ゃっぱりちかのこと……きらぃなんだ……っ」


また目が潤み始める。


ダイヤ「あ、えっと、違うの! えっと、ああもう……」


今この瞬間、わたくしはいかなる理由があろうと千歌さんから離れることは適わないと悟り、仕方がないので、彼女を抱きしめたまま、ずりずりと箱ににじり寄る。

その様相は非常に、はしたないのですが、緊急事態なので致し方なしですわ。


千歌「んぅー……だいやさぁん……」

ダイヤ「えっとね、大丈夫よ……ちゃんと、好きですから、ね?」

千歌「んー……わらひもしゅきぃ……♪」


どうにか、機嫌を損なうことは回避できたようで一安心する。

そのまま、ゆっくりと移動して、箱が届く場所までようやく辿り着く。

その箱の近くに散らばっていた、乱暴に剥がされた包装用紙を見ると。

予想通りの御菓子であることがわかった。


ダイヤ「ウイスキーボンボン……」


つまり千歌さんはウイスキーボンボンを食べて、酔ってしまった……ということでしょう。

……え、えっと……酔っ払いの対処ってどうすればいいんでしょうか。

……とりあえず、お水を飲ませるといいのでしたっけ。

でも、今動けないし……。


千歌「だいやさんっ!」

ダイヤ「ピギャッ!? 」


今度は突然、千歌さんがすぐ傍で大声を上げたので驚いて軽く飛び跳ねてしまう。


ダイヤ「な、なんですのっ!?」

千歌「つまんなぃ」

ダイヤ「え」

千歌「つまんないつまんなぃっ だいやさんぜんぜんぉはなししてくれにゃぃし、ちかつまんなぃぃ~」


何もアクションを起こさなくても、退屈だとそれはそれで機嫌が悪くなるのですね。……完全に酔っ払い。

ウイスキーボンボン程度でここまで酔っ払うのか、少し疑問なのですが、一行に酔いが醒める気配もない。

とにかく、落ち着かせないと……。そう考えていたら、突然千歌さんがピタリと止まって、こっちを見つめてきた。全く先の行動が読めない。


ダイヤ「もう、今度は何……?」

千歌「ちゅーして」

ダイヤ「……はい?」

千歌「ちゅー」

ダイヤ「……はいぃ!?///」


突然のキスのおねだりに赤面して、声をあげてしまう。


千歌「ぃゃなの……?」


千歌さんはわたくしの様子を見てそう言いながら、上目遣いでわたくしを見つめてくる。


ダイヤ「い、嫌とかはないですが……///……突然、そんなこと言われても///」

千歌「とつぜんじゃなぃもん……いっつも、だいやさんがちかのことぎゅってしてから、ちゅーしてくれるもん……」


頬を紅くして、潤んだ瞳で見つめながら、そんなこと言ってくる。


ダイヤ「……///」


普段はひたすら元気なイメージの強い千歌さんが、急に艶っぽい仕草を見せたせいか、わたくしも釣られて顔が熱くなる。


ダイヤ「え、えっと……///」

千歌「ん……だぃゃさん……」


千歌さんのとろけるような甘え声が脳を痺れさせる。

先程までとにかく状況を打開することばかりに行っていた思考が、それを皮切りに千歌さんの温度を、千歌さんの質量を、千歌さんの存在を意識し始める。


ダイヤ「その……///」

千歌「ちゅー……」


ドクンドクンと心臓が早鐘を打つ。

──いや、キスしてしまえばいいじゃない。

頭の中で本能部分のわたくしが囁く声が聞こえた気がした。


ダイヤ「……千歌さん……///」

千歌「……ぇへへ……」


顔が近付く、千歌さんの吐息を感じる、熱い吐息。

ふわりと香る、シャンプーの匂いが鼻腔をくすぐり、それが拍車を掛けるように思考を痺れさせる。


ダイヤ「千歌さ──」


もう寸前で唇がくっつく、ところで──わたくしは気付く。

いつもは爛々と輝く太陽のような彼女の目が、今は熱に浮かされてぼんやりと曖昧にわたくしを捉えている事に。

それに気付いて──


ダイヤ「……こんなのダメよ」


──スッと冷静になる。


千歌「ぇ……」


今、千歌さんは完全に本能で動いている。別にそれが本意ではないとは言わない、だけれど──

わたくしは顔を離して自分の胸に抱き寄せる。


ダイヤ「酔った勢いでなんて……ダメよ……。」

千歌「なんで……なんでぇ……!!」


腕の中で千歌さんがじたばたと暴れ始める。


千歌「だいやさんやっぱちかのこときらぃなんだぁ……ぅぅ……っ……ぅぇぇん……っ……」

ダイヤ「嫌いじゃないわ」

千歌「ぅぅ……っ……ぐすっ」

ダイヤ「大好きだから、こういうのは嫌なの」


ぐずる彼女の頭を優しく撫でながら、そう囁く。


ダイヤ「……お酒の力なんて、借りなくてもお互い大好きなんだから……」

千歌「……?」


わたくしが言ってることはよくわかってない様子でしたが、だんだんと大人しくなる。


ダイヤ「大丈夫だから、ね」

千歌「……ぅん」

ダイヤ「今、千歌さんは熱に浮かされてるの」

千歌「……そーなの……?」

ダイヤ「ええ、そうなのよ」

千歌「……ぅーん……?」


千歌さんは不思議そうな顔をしたあと、ぐりぐりと頭をわたくしの胸に押し付けてくる。


千歌「……はふっ……」


そして、軽く欠伸をした。

アルコールが回ってきて、眠くなってきたのかもしれない。


ダイヤ「少し、横になりましょう?」


そういって、千歌さんの頭を再び軽く撫でる。


千歌「……んー……」


千歌さんはぼんやりと返事をするが今度は暴れないし、大丈夫そうだ。


ダイヤ「さ、こっち」


ふらふらと覚束ない足取りの千歌さんの身体を支えながら、ベッドに向かう。


千歌「……ゅ……」


言葉にならない言葉を呟きながらも大人しくわたくしに身体を任せてくる。


ダイヤ「そう、いい子ね……」

千歌「………………にゅ……」


もごもごと意味を持たない、言葉のようなものを発しながら、ぽてぽてと歩く彼女を連れたまま、ベッドの前まで辿り着き


ダイヤ「がんばったわね。もう、後は横になるだけだから……」


そう言って頭を撫でる。


千歌「ぇへへ、だいやさん……♪」


千歌さんは幸せそうに笑う。よかった、これで一見落着。

そう思った、刹那──

──視界が傾いた。

一瞬何が起こったのかわからなかった。


千歌「ぇへへ…… だぃゃさん……♪」


視界の先に千歌さんと天井が見える。

そして気付く──千歌さんにベッドに押し倒されたのだと


ダイヤ「……ち、千歌さん?……横になるのは貴女だけでいいのよ?」


なるべく、優しい言葉で彼女にそう告げる。


千歌「……♪」


彼女はわたくしの言葉に返すように、艶やかに笑みを浮かべた。


ダイヤ「ち、千歌さん?いい子だから、やめて?ね?」

千歌「んー……♪」


わたくしの言葉も虚しく、千歌さんが覆いかぶさってくる。

逃げようにも、腕を押さえつけられていて、逃げられない。

千歌さんは華奢ですが、わたくしに比べたら力が強い。

こうして上から押さえつけられたら、ほとんど動くことすら適わない。


千歌「だぃゃ……さん……♪」

ダイヤ「ち、ちかさ──」


コツンとおでこがぶつかる。

視界全てが千歌さんで埋まる。

先程感じたモノと同じ熱い吐息を感じる。

赤らんだ頬に、潤んだ瞳、長い睫毛が目に入る。

追い討ちを掛けるように、ベッドと千歌さんと上下両方からシトラスのような……みかんのような香りが再び鼻腔を擽った。さっきよりも強い刺激をもって。


ダイヤ「────っ///」


千歌さんが正気じゃなくても──正直、自分の理性もいい加減、限界ギリギリ。

これが酔った勢いだとわかっていても、もう反抗する手立てもない。

もう……ダメだ。


千歌「……だいや……さん……」


わたくしは千歌さんの声を聞きながら、観念して目を瞑った。


ダイヤ「…………っ///」


身体が強張る。千歌さんの存在が近付いてくるのがわかる。

きっとあと数ミリ──と思った瞬間。

──ぽふっ。わたくしのすぐ横でそんな音がした。


ダイヤ「…………?」


恐る恐る目を開けると──


千歌「…………すぅ…………すぅ…………」


わたくしの横で千歌さんは可愛らしく寝息を立てていた。


ダイヤ「…………………………」


長い沈黙の後


ダイヤ「…………っ!///」


急に恥ずかしくなってきた。

わたくし、今受け入れようとしていた? 酔った勢いで押し倒されて、唇を奪われそうになっていたことを……?


ダイヤ「もう……今日は散々ですわ……///」


酔っ払いに終始振り回されて、随分と辱められた気分でいっぱいだった。

そして、とても疲れた。


千歌「……すぅ……すぅ……」


すぐ横で気持ち良さそうに寝息を立てる千歌さんを見ていたら……なんだか、わたくしも眠くなって来てしまいましたわ。

わたくしも寝てしまいましょうか……寝たら少しはこの恥ずかしい気持ちも忘れられる……かもしれないし。


ダイヤ「……起きたら覚悟してくださいませね」


そう言ってから、わたくしは千歌さんに軽く頭突きをした。


千歌「…………むにゃ……」


千歌さんは軽く呻き声を挙げたけど、起きることはなく。またすぐに可愛らしい寝息を立て始めた。

今度こそ、本当に眠ってしまったんだと確認出来て安堵したところで、わたくしも彼女に習うように目を瞑った。

千歌さんと抱き合ったまま、堕ちて行く意識の中で──


「……………………だぃゃさん…………しゅきぃ……♪」


──そんな、彼女の寝言が聞こえたような気がしました。
スポンサーリンク

シェアする

フォローする

『下戸の宝石荒らし』へのコメント

当サイトはコメントシステムとしてDisqusを使用しています。
ゲストでの投稿も可能ですがアカウントの登録を推奨しています。詳しくはDisqusの登録、利用方法をご覧下さい。
表示の不具合、カテゴリーに関する事等はSS!ラブライブ!Disqusチャンネルにてご報告下さい。