果南「みかん」

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果南-アイキャッチ21
千歌「………んぎゃっ!」

ひとつ、またひとつと増えていく傷。砂浜に付けられた足跡からも千歌の努力を感じられる。でも、経験した私からすれば、千歌の身体能力と残された時間を考えても『奇跡』でも起きない限り出来ないだろうと見て取れた。
 
正直見てられない。これ以上、大切な幼馴染みが傷付いていく姿を見ていられなかった。千歌はまだ…弱い。もし、仮に怪我をしてAqoursのみんなに迷惑をかけてしまったなら、あの子はどうなってしまうのだろう。きっと東京で味わった時よりも強く自分を責めるだろう。はやる気持ちは自然と言葉として出ていた。

pixiv: 果南「みかん」 by 鷹南。

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果南「じゃ、二人で止めたら?私が言うより二人が言った方が千歌、聞くと思うよ?」

ようりこ「うん……」

果南「嫌なの?」

梨子「言ったじゃない。気持ちは分かるって」

曜「うん」

気持ちは分かる…か。

梨子「千歌ちゃん、普通怪獣だったんです」

果南「怪獣…?」

梨子「普通怪獣ちかちー…」

梨子「なんでも普通で。いつもキラキラ輝いている光を遠くから眺めてて。本当はすごい力があるのに…」

曜「自分は普通だって、いつも一歩引いて」

梨子「だから自分の力でなんとかしたいって思ってる。ただ見ているんじゃなくて、自分の手で…!」

夕日に手を伸ばす千歌を見ながら、少し考える。二人の言いたいことも分かった。どんなに傷付いても立ち上がるあの子を応援したくなるということも。

けど、私はやっぱり二人ほどあの子に期待は出来なかった。だから、これが私が今出せる最大限の譲歩。私は千歌に歩み寄り口を開いた。

果南「千歌…」

千歌「果南ちゃん…?」

果南「千歌、約束して。明日の朝までに出来なかったら諦めるって。よくやったよ、千歌。もう限界でしょ?」

千歌「果南ちゃん…」

そう言うと、千歌は下唇を噛みながら私を見つめた。私はふりかえり歩き出す。背中に千歌の視線を感じながらも、その場を後にした。

これは『期待』と言うより『賭け』と言うべきだろう。私たちが成し遂げられなかった挑戦を千歌に無理矢理押し付けた。鞠莉やダイヤは託すと言っていたが、その先にあるのはすべて光であるとは限らないんだから。

でも、一言くらい言えば良かったかな。

果南「がんばれ、千歌…」

少し歩いた場所から千歌たちがいる方にふりかえりつぶやく。届くはずのないその声は通り過ぎて行く車の音にかき消された。




果南「…」

果南「今日は星がよく見えないな…」

家に帰ってから趣味である天体観測をしていたが、夜空は雲に覆われ月も見え隠れしていて星はほとんど見ることが出来なかった。

ふと昔の事を思い出した。確か、あれは小学生の時だったかな…

─────────

かなん『千歌はほんとみかんが好きだね』

ちか『うん!甘くて美味しいし!いっぱい食べられるよ!』

かなん『そっか~』

ちか『でもこの前、緑色のみかん食べちゃってね…』

かなん『緑色って…まだ出来てないやつじゃん!大丈夫だったの?』

ちか『すんごい酸っぱかった…』

かなん『あちゃー』

ちか『…でもね!』

かなん『うん?』

ちか『その時みかんのことがもっともっと好きになったの!』

かなん『どうして?』

ちか『だってさ!始めはあんなに酸っぱいみかんもいっぱいい~っぱい頑張って甘くなってくんだよ?すごいと思わない?』

かなん『おお…!なんかすごいね!』

ちか『でしょ!みかんが緑色からみかん色になるのは努力の証なのだ~!』

かなん『そうだね!…って、みかん色って。オレンジ色じゃダメなの?』

ちか『ダメ!みかん色なの!』

かなん『じゃあ、ゆうやけ色?』

ちか『だーかーらー!』


『だって分かりづらいじゃーん』

『みかん色はみかん色なの!みかん色ー!』


─────────

果南「みかんの色は努力の証…か」

そんな千歌の言葉を思い返しながら、空を見つめるも雲は晴れることはなかった。まるで、私の心をそのまま写しているみたいだ。

天体観測を諦め、家に戻ろうとすると…

???「うりゃ~♪」

果南「ひゃっ//」

???「やっぱり果南のここは安心…」

果南「どうりゃあああああ///」

鞠莉「……デジャブ」

果南「え?」

ダイヤ「鞠莉さん何を……ちょっと!?」

ダイまり「きゃあ!」

果南「わわっ!ふ、二人とも!大丈夫?」

鞠莉「んもーう!怪我させる気!?」

ダイヤ「あたた…。まったく、あなたは何をしたんですか?」

鞠莉「Why!私を責めるの!?」

ダイヤ「いつもの事でしょう!」

果南「よ、良かったぁ。いったいどうしたの?こんな夜遅くに…」

鞠莉「果南?」

果南「…なによ?」

鞠莉「あなた、ちかっちに条件出したみたいね?明日の朝までに出来なきゃ諦めろって!」

果南「なんでそれを…?」

ダイヤ「ルビィから連絡が来ましてね。曜さんが教えてくれたそうですわ」

果南「そっか…」

鞠莉「また勝手に決めて!」

果南「だってしょうがないでしょ!託すとか押し付けるとか関係ない!目の前で誰かが傷付いていく姿を見るのはもう嫌なんだよ!」

果南「もう十分千歌は頑張ったんだよ…。リスクを背負ってやるよりも堅実に練習して挑んだ方が良いに決まってる」

果南「それがもし、結果を残せなかったとしても…」

ダイまり「…」

果南「だから…いだだだだだだっ!?」

鞠莉「あなた、本当にちかっちの幼馴染みなんでーすか?」

果南「いはい!いはいから!はいや、はふけてぇ~!…って、ふうううっ!?」

ダイヤ「ぶっぶー!ですわ。ほんとです。まだわたくしたちの方が千歌さんを理解しているのでは?」

果南「…っと、いたたた。もう!二人して頬っぺた引っ張ることはないでしょ!」

鞠莉「ちかっち、絶対諦めないよ?」

果南「え…?」

ダイヤ「あなたに発破をかけられたのでしょう?ならば、千歌さんは今も練習し続けているはずです!」

果南「そ、そうかもしれないけど!見てたら分かるでしょ!あの状態じゃ『奇跡』でも起こらない限り出来るはずないよ!」

鞠莉「奇跡は起きるわ!いえ!ちかっちなら起こすわ、絶対に!」

果南「なんでそんな無責任なこと言えるのさ!どうして?どうしてそんなことが言えるの?」

ダイヤ「それは…」

ダイヤ「わたくしたちが、三人でまたいるから。そして…」

鞠莉「私たちのスタート地点であり帰る場所、Aqoursを残してくれていたから♪」

果南「…………あっ」

二人に言われて気付いた。今ある当たり前がどうしてあるのかを。

ダイヤ「あれだけすれ違っていたわたくしたちが今こうして三人で再び笑っていられるのは誰のおかげですか?」

果南「そうだったね…!バカだったのは私だ。あはは…」

鞠莉「Miracle は起こるものじゃありません!起こすものでーす!……そう。ちかっちは強く思わせてくれるの。そうでしょ?」

果南「うん、うん…!」

私はいてもたってもいられなかった。

果南「私、千歌のところに行って…」

鞠莉「ストップ!」

果南「ちょっ!今のは行かせてくれる流れでしょ!?」

鞠莉「行ってもいいけど今からどうやって行くの?船も出せないし、使えないでしょ?」

果南「お、泳いで…」

ダイヤ「あなたがリスクを背負ってどうするのですか!」

果南「じゃあどうするのさ~!」

ダイヤ「わたくしたちにはわたくしたちのすべきことがあるでしょう?」

果南「私たちのすべきこと?」

鞠莉「花丸たち、今、練習してるみたいよ?」

果南「え?なんで…?」

ダイヤ「リーダーである千歌さんがあれだけ傷だらけになりながら頑張っているのです。何かせずにはいられないでしょう?」

鞠莉「そーれーにっ!三年生である私たちが後輩より努力してないってのはカッコ悪いでしょ!」

鞠莉「だから練習しましょ、三人で!」

果南「ダイヤ…!鞠莉…!」

ダイヤ「さあ、始めますわよ!早く練習着に着替えて!」

鞠莉「Oh!ダイヤがテンションMAXなんて珍しいでーす!」

ダイヤ「善は急げと言うでしょう!あと、深夜テンションというやつですよ!ほら、果南さんも行きますわよ!」

鞠莉「果南~!Hurry up!」

果南「…」

果南「そうだよね、千歌…忘れてた。千歌のことをさ」

千歌が弱いと思っていたのは私の欺瞞。そうだろうと勝手に決め付けてたんだ。本当に弱かったのは私の方かもしれない。

でも、もう大丈夫だよ。お姉さんである私が千歌に負けちゃカッコ悪いもんね。それに千歌に言わなきゃいけないこともできたし。

「果南さ~ん?」

「早く~!」

果南「待ってってばー!」

私は家に駆け込み練習着を持って追いかけた。




確かに、千歌は普通の女の子なのかもしれない。けれど、私に持ってないものをたくさん持ってる。

それは私がどれだけ頑張っても手に入れられないような素敵な力。


果南「千歌!時間だよ!」


奇跡を起こしてくれる。そう思わせてくれる不思議な力。


果南「準備はいい?」


千歌「……っ!」


みかんの色は努力の色

まだ青く、未熟だった私たちの夢は

バラバラになってしまったけど

あなたという奇跡の波にまとめてさらわれて

まだ見ぬ未来に向けて色付いていく


だから………


果南「ありがとう…!千歌っ……!」


千歌「たぁっ!」


みんなの千歌を呼ぶ声が響く。

千歌の努力は───実を結んだ。


千歌「…出来たっ!できた…よ、かなんちゃ」

果南「おっと…」

寝ずに練習し続けたのだから当然か。千歌がよろめいて倒れそうになったのを抱きとめる。ほんと、千歌には敵わないや。

千歌「あはは、ありがとう。果南ちゃん…」

果南「こちらこそだよ」


だから………


果南「がんばったね、千歌…!」

千歌「うんっ!」


だから………


これからも導いてね?


みかんのみらいをさ…!


おしまい

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