照れ屋な天使と自重しない堕天使

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善子-アイキャッチ11
梨子「~♪」

静かな室内に響く音は、揺れる肩に合わせてリズムを変える。
細く白い指が鍵盤の上を滑るように往復している。
その姿を見ているだけで、胸の奥に湧き上がる衝動はどんどんと大きく、強くなっていく。
そして───

善子「…」

pixiv: 照れ屋な天使と自重しない堕天使 by しずく饅頭

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もにゅん

両手に伝わる温かで柔らかな感触。
ここ最近暑くなってきたおかげで今の彼女はやや薄着。
部屋着であるワンピースの上から羽織ったカーディガンを避け、邪魔者が最も少ないルートでそれを揉む。

梨子「…へ?」

彼女がピアノを弾く手を止め、自分の胸元を見下ろした。
この瞬間からカウントダウンのスタートだ。
あと数秒後にはわたしの頬に衝撃が奔り、床に転がることになるだろう。
それまでにあと何回この手を動かせるだろうか。

…やれる。

堕天使ヨハネの名は伊達じゃない。
この感触を身体に覚えこませるまで揉み続けて見せ…

梨子「いやー!」

バッチーン!!!

善子「へぶちっ」

思った以上に早かった。
まさかリリーの反応速度がここまでとは…
完全に想定外。

梨子「なにするのよっちゃん!///」

自らの胸を隠すように腕を抱くその姿はむしろ興奮する要素だということをわかっていないらしい。
顔がみるみる真っ赤になっていくのも高ポイントね。

善子「なにって…我慢できなくなったのよ!」

梨子「それが意味分からないんだけど!」

善子「リリーがえっちぃのが悪い」

梨子「え、えっちって…///」

まただ。
こうしてすぐに顔を赤くする。
それがたまらなく愛おしいんだけど。

善子「遊びに来たのにずっとお預け食らってたのよ?爆発もするわ」

梨子「なんの話?そもそも、今日よっちゃんが突然家に来たんでしょ?」

善子「リリーに会いたくなったんだもん…」

梨子「そ、それは…嬉しいけど///」

そう言いながら頬は染めつつ口元は緩む。
ああ、好かれている。
これは間違いなく脈ありだ。
ならば遠慮する必要はない。

善子「じゃあ、付き合って!」

梨子「うーん…それはちょっと」

善子「がーん!」

脈ありだと思ったのに…
けど、このくらいじゃ堕天使ヨハネは挫けない。

───
──


果南「ワン、ツー、スリー、フォー…」パンパンパン

善子「はっはっはっ…」タンタンタン

今日も今日とてスクールアイドルの練習。
徐々に気温の上がってきたこの時期は日陰のない屋上でのダンス練習は結構きつい。
まあ、動力源さえあれば動けるのは機械でも人間でも同じなのだけど。
って、わたしは堕天使よ!

梨子「はっはっはっ…」タンタンタン

光る汗。
練習着から伸びる健康的な肌。
汗で頬に貼り付く髪の毛に言い表せないエロスを感じる。
その姿こそがわたしの動力源。
心なしかさっきよりもさらに体温が上がった気がする。

梨子「ふっ…はっ…きゃっ!」ズルッ

善子「!」

果南「危ない!」

ドサッ

梨子「痛た…くない…?」

善子「よはぁ…」ベチャー

梨子「きゃー!よっちゃん!」

内浦の日射しによって温められたコンクリートが布越しにその熱を伝えてくる。
ただでさえ上がっていた体温はさらに上昇する。
しかし、体温の上昇は決してコンクリだけのせいではない。
時間にしてわずか数秒。
わたしの背中にリリーのおしりが乗っていたのだ。
全神経を集中させて堪能したその柔らかさがこの上ない興奮を与えてくれた。
いまのわたしなら阿修羅すら凌駕することができるだろう。

梨子「よっちゃんごめんね!大丈夫!?」

善子「これくらい平気よ…なにせわたしは堕天使ヨハネなんだから…」

リリーに抱きかかえられている。
汗のにおいに混じって揮発したリリーの体臭を嗅ぎ取る。
いい匂い。
やばい、意識が。

善子「我が人生に一片の悔い無し…」ガクッ

梨子「よっちゃあああああん!」

───
──


梨子「よっちゃん…なにしてるの?」

善子「」

まずい。
まさかこんなタイミングで部室に戻ってくるなんて。
落ち着くのよ堕天使ヨハネ。
今最優先にすべきことは、リリーのロッカーを開けて中に入ってた制服を顔に押し当てているという状況に納得のいく説明を考えることよ。

梨子「それ、わたしの制服…」

善子「違うのよ」

梨子「いや、でもそこわたしのロッカー…」

善子「違うの」

残された時間は少ない。
早く、なんとかして巧い言い訳を…

梨子「わ、わたしの制服でなにしてたの…?///」カアア

なるほど。

善子「」クンカクンカスーハースーハー

梨子「きゃあああああ///やめてえええ!」

まだ10回くらいしか呼吸していないのにリリーに制服をぶんどられた。
頭がくらくらする。
目の前にチカチカと火花が散っているかのようだ。
これがリリーの匂い。
たいした変化もない現実を彩るスパイス。
決して酸素不足による症状とかではない。

梨子「なにしてるの!?ありえない!」プンスカ

善子「つい…魔が差したのよ…」

ジト目のリリーに睨み付けられるのは何度目だろうか。
何度経験しても興奮する。

梨子「どうして魔が差したら人の制服の匂いを嗅ぐのかな?」

善子「堕天使さえも魅了してやまないリリーが日常的に身に纏っているものよ。これを嗅がずして何が堕天使か」

梨子「よっちゃんにとっての堕天使ってどんなものなのかますます分からなくなったよ」

善子「欲望に忠実であるのが堕天使よ」

梨子「うん、これ以上変態じみた行為を続けるようならわたしもよっちゃんとの付き合い方を考えなきゃいけなくなるよ」

善子「付き合ったあとのことまですでに考えてるのね!」

梨子「なんでそういう捉え方できるかなぁ」

善子「リリー!付き合ってください!」

梨子「ごめんなさい」

善子「なんで!?」

梨子「いいから練習に戻ろう?」

善子「ぐぬぬ…」スタスタ

梨子「まったくもう…」

梨子「…」クンクン

梨子「もう…あんなに押し当てるからよっちゃんの匂いがついちゃってる…」ボソ

───
──


善子「リリー!」

梨子「いらっしゃい。どうしたのよっちゃん」

善子「プール行かない?」

梨子「最近暑いからちょうどいいね」

善子「じゃあ準備して行きましょ」

梨子「うん、ちょっと待っててね」

善子「ふふ…」

よっしゃあ!
リリーの水着姿拝み放題タイム確定!
ああ、興奮する…
って、いけないいけない。
今からがっついてはダメよ。
リリーに感づかれたらおしまいよ。

梨子「お待たせ」

善子「じゃあ早速…」

梨子「その前に、その首からかけた一眼レフを何に使うのかだけ聞いてもいい?」

善子「え」

梨子「…」

善子「そんなのリリーの水着姿をいつでも堪能できるようにするために決まってるじゃない」

梨子「やっぱり行かない」

閉じられる扉
鍵の音
遠ざかる足音

やっべ

善子「待って!お願い!じゃあ一眼レフはやめる!スマホ!スマホならセーフよね?ね!?」ドンドン

梨子『写真に収めるのがアウトなの!///』

善子「じゃあ網膜!網膜に焼き付けるだけにするから!」

梨子『それもなんかやだ!///』

善子「じゃあどうすればリリーの水着姿を楽しめるって言うのよ!」

梨子『逆ギレ!?』

善子「最近はリリーの水着姿を見ることだけが生き甲斐だったのに!」

そのために数万円するカメラまで買ったのに!
更にはその美しさを最大限写真に収めきれるようそれなりに有名な写真家さんとメールのやり取りまでしたのに!

梨子『うん、もっと自分の人生に意味を見出だそう?』

善子「リリーのいない世界なんてなんの輝きもないわ!」

梨子『う…///』

善子「だから…だからお願い!」

ガチャ…

梨子「そ、そこまで言うなら…///」

善子「わたしに新鮮なえっちすけっち桜内を提供して!」

梨子「またね」

バタン

善子「リリぃぃぃぃ!」

───
──


善子「最近リリーが冷たい…」

梨子「よっちゃんのせいだよね?」

善子「わたしはこんなにもリリーを愛してるっていうのに」

梨子「…///」カアア

善子「どうして寝込みを襲っただけでこうなるの?」ブラーン

梨子「うん、寝込みを襲ってきたからだよ?」

善子「お願いだからほどいて…」

梨子「ごめんねよっちゃん。今日はそこで寝てね」

善子「さすがに無理よ!これじゃてるてる坊主じゃない!」

今わたしは布団のシーツでくるまれ、天井からロープで吊るされている。
もちろんリリーにそんな腕力があるわけがなく…

果南「反省したら下ろしてあげるよ」

曜「明日も早いからもう寝よっか」

善子「ぐぬぬ…」

千歌「眠…」ウツラウツラ

今日は新曲の打ち合わせのために曜、千歌、果南とわたしがリリーの家に泊まりに来ている。
みんなが寝静まった頃合いを見計らってリリーの布団に潜り込んだと思ったら捕まっていた。
こんなはずじゃなかったのに。

善子「下ろしてよー!」

梨子「じゃあ、おやすみなさい」

パチッ

善子「暗い!吊られてる上に暗いのやだ!せめてオレンジのにして!」

梨子「仕方無いなぁ…」

善子「じゃないとリリーの寝顔拝めないじゃない!」

梨子「おやすみなさい」

善子「やーだー!」ブラブラ

果南「善子うるさいよー」

善子「ヨハネよ!」

曜「ふわぁ…元気そうだから大丈夫だね…」

善子「うぅ…ひどい…」

梨子「…」

~~~

果南「んぅ…いるかさん…まって…」ムニャムニャ

千歌「よーちゃん…」ギュウウウウ

曜「うーん…うーん…」

気持ち良さそうにぐっすり寝ちゃって…
なんか一人うなされてる気もするけど。
本当に人を吊ったままにするなんて信じられない。
さすがに苦しいし、寝れたもんじゃないわ。

果南「えへへ…んぐぅっ!?」

善子「!?」ビクッ

「ご、ごめんなさい…」

果南「うぅ…どいてよ鞠莉ぃ…」スヤスヤ

善子「な、なによ今の声…?」

「んしょ…」シュルシュル

善子「ん…?きゃっ!」ドサッ

善子「いたた…あれ?縄がほどけた…?」

梨子「よっちゃん、大丈夫?」

善子「この匂いは…リリー…!」

梨子「声で判断してほしかったかなぁ」

今日はみんな同じシャンプー使ったはずなのにどうしてこうリリーの香りだけえっろいのかしら。
フェロモン的ななにかをばらまいてるに違いないわ。

梨子「さすがにやりすぎちゃったかなって思って…」

善子「リリー…」ウルウル

梨子「でも、もうあんなことしちゃダメだからね?」

善子「うん!約束する!」

梨子「じゃあ、おやすみなさい」

善子「ええ、おやすみ」

ふふっ…
なんだかんだ言いながらもリリーってばわたしのこと大好きなのね!
なんだ、みんなが起きてるときに冷たかったのは単なる照れ隠しね。
そうとわかれば…

善子「照れ屋なリリーのために、わたしから添い寝してあげなくちゃ♪」

えっと、リリーのベッドはそっちに…

むぎゅ

果南「ぐえっ!」

あ、誰か踏んじゃった。

ガシッ

善子「ひぃっ!?」

果南「よ~し~こ~?」ゴゴゴゴゴゴ

善子「あわわわわ…」

果南「さっきから踏んづけてたのは善子だったんだね?人の安眠妨害するばかりかまた梨子を襲おうとして!」

善子「誤解よ!いや、今踏んだのは本当だけど違くて…!」

果南「もっかい吊るしてやるー!」

善子「いやー!」

果南の寝起き機嫌悪すぎじゃない!?
助けてリリー!

梨子「…」

梨子(ひとり言の声大きすぎだよ…添い寝くらいなら…とか思ってないもん)

善子「あー!」ブラーン

───
──


善子「はぁ…」

千歌「元気ないね」ゴソゴソ

善子「リリーとの関係が進展しなくて…」

千歌「端から見てる感じでは梨子ちゃんも満更でもなさそうだけど…」ペタリ

善子「そうよね!絶対照れ隠しよね!」

千歌「7割くらい本気で拒否してるようにも見えるけどね」ペロペロ

善子「…ところで、さっきからなにしてるの?」

千歌「え?教室で拾った曜ちゃんの髪の毛をアルバムに張り付けて曜ちゃんの使用済みストローで曜ちゃん成分を補給してただけだよ?」

善子「そう…」

これだけ愛が重いと曜も苦労しそうね。
ていうかそういうのは隠れてやりなさいよ。
自重って言葉しらないのかしら?

千歌「はぁ…いつになったら曜ちゃんは告白してくれるのかなぁ」

善子「その行為がバレてないうちは可能性あるでしょうね」

千歌「えへへ、やっぱり?曜ちゃんはわたしのこと好きだと思うんだよねぇ」テレテレ

あ、ダメだこの人。
都合の悪い部分聞いてないわ。

善子「やれやれね」ゴクゴク

千歌「善子ちゃん、それなに飲んでるの?」

善子「ヨハネ。別に変わったものじゃないわ。朝練のときにくすねたリリーが飲みかけだったジュースよ」

───
──


善子「リリー!迎えに来たわよ!」

梨子「…」

善子「お祭りいきましょ!」

梨子「えっと、待ち合わせしてた時間って何時だっけ?」

善子「6時!」

梨子「今何時?」

善子「1時!楽しみすぎて来ちゃった!」

梨子「それは別にいいけど…」ジロジロ

善子「どうしたの?そんなに見つめて…付き合う?」

梨子「それはちょっと」

渾身の告白がさらりと流された。
つらい。

梨子「今日はカメラ持ってないんだね」

善子「お祭りに行くんだもん。おっきいのは邪魔になっちゃうでしょ?」

梨子「うん、よっちゃんがまともな反応を返してきてちょっと驚いてるよ」

善子「それほどでも」

梨子「これから準備しなきゃいけないから、上がって?」

善子「はーい。お邪魔しまーす」

梨子ママ「あら、いらっしゃい善子ちゃん。浴衣可愛いわね~」

善子「えへへ…ありがとうございますお義母さん」

梨子「それやめて」

梨子ママ「ふふっ…うちの子でよければいつでも貰ってあげてね?」

善子「はい、喜んで!」

梨子「お母さん!///」

~~~

梨子「じゃあそろそろ行こうか?」

善子「…」ポカーン

梨子「よっちゃん?」

善子「綺麗…」

梨子「…へ!?///」ボッ

浴衣を着たリリーの姿の美しいことといったら。
白地に淡い桜が散らされた浴衣との相乗効果で普段の数倍の色気をかもし出している。
更に普段はあまり髪型を変えないリリーが髪を結って上げている!
それにより覗く白いうなじがわたしに激しく劣情を抱かせる。
そしてなによりも浴衣といえば下着を着けないと聞く!
つまり、今のリリーを剥けばそこには生まれたままの姿のリリーが!
ちなみにわたしはつけてない。

梨子「恥ずかしいからそういうこと真顔で言うのやめて///」

天使かな?
あ、リリーだったわ。

善子「なんだか最高にテンション上がってきたわ。さ、いきましょ!」

梨子「あ、もう!ひっぱらないで!浴衣で歩くの慣れてないから!」

善子「へ?そうなの?リリーはこういうの結構経験あるものだと思ってた」

梨子「だって、東京にいた頃は浴衣着てお出かけなんてやったことなくて…」

善子「…てことは浴衣デートはこれが初めて?」

梨子「デートって…///」

善子「リリーの初めてをわたしがもらったってことでいいの?」

梨子「言い方にひっかかるところがあるけど、まあ…」

善子「…」

リリーの初めてをわたしがもらった。
つまりリリーはわたしに初めてを捧げてもいいと思ったってことよね。
実はさっき手を握ってからというもの、すべすべで柔らかい手にムラムラしてるのよね。
つまり、今なら大丈夫。

善子「リリー!愛してるわ!」ガバッ

梨子「いやっ!なにするの!」パシーンッ


~~~


善子「…」ヒリヒリ

ダメだったか…
いや、でも今日はお祭り。
このあと暗くなってきたら誰も来なさそうな木陰で…
ぐふふ

梨子「みてみてよっちゃん!本物の射的初めて見たよ!」キャッキャッ

善子「くそっ!可愛いなぁこの先輩!」

梨子「い、いきなり何!?」

「ん?ほんとだ、可愛い」
「あら、美味しそうね」
「美少女万歳」
「よしりこなんだよなぁ」

ザワザワ

梨子「~っ///」カアア

善子「こんなの好きになるに決まって…むぐぅっ」

梨子「もう!人の多いところでそういうこと言わないで!///」

善子「だって本当のことなんだもん…」

梨子「うぅ…あ、あっちにいこっ!」グイッ

善子「え、ちょっと、リリー慣れてないんじゃ…」

梨子「あっ!」コケッ

善子「危なっ…!」ガシッ

梨子「あ…///」

善子「もう、びっくりさせないでよ」

梨子「ありがと…///」

あれ?
おやおやおや?
咄嗟のことだったから意識してなかったけど、気がつけばリリーがわたしの腕に抱かれている?
わたしの腕の中で顔を赤らめているリリー。
これいっちゃっていいよね。

善子「リリー…」ンー

梨子「ちょっ!?」

「「「あら^~」」」

梨子「こらぁー!///」パシーンッ

善子「二発目っ!?」


~~~


梨子「…」ムスッ

善子「ごめんなさい…」シュン

梨子「もう帰っちゃおうかな…」

善子「えっ!」

梨子「だって、よっちゃんすぐに手出してくるし…わたしは普通にお祭りを楽しみたいのに…」

善子「あ…」

そっか…
リリー、東京ではこうして浴衣で出かけることなかったって言ってた。
てことは、今日はリリーにとって初めてのことだらけのはずで。
いつも適当にあしらわれるけど、ちゃんと楽しみにしてくれてたんだ。

善子「…っ!」

梨子「折角、今日のために浴衣まで買ったのに…」

善子「リリー!」

梨子「え?」

善子「待ってて!」ダッ

梨子「え、よっちゃん?」

今日はもう自分のために行動するのはやめる!
今からでも遅くない。
リリーにお祭りを楽しんでもらわなくちゃ!


~~~


善子「お待たせ!」

梨子「どこいってたの?わたしをほったらかしにして…」プクー

ふくれっつらのリリー可っっっっ愛い…!
って、そうじゃないそうじゃない。

善子「はいこれ、一緒に食べましょ!」

梨子「わ…よく見たら食べ物がいっぱい…」

善子「お祭りに来たんだから、それらしいもの食べて、一緒に出店回りましょ?」

梨子「よっちゃん…ありがとう」ニコッ

はぅあぁっ!?
なによその笑顔!
反則にも程があるわよ!

善子「じゃあ、まずはこれ!お祭りといえばこれよね」

梨子「チョコバナナ?そういえば食べたこと無いかも」

善子「チョコはどんな果物とあわせても美味しいけど、お祭りで食べるチョコバナナは格別よ!」

梨子「へぇ…」ゴクリ

善子「はい、リリーあーんして?」

梨子「え?じ、自分で食べるよ///」

善子「まあまあ、いいじゃない。ほらほら」プラプラ

梨子「じゃあ…あーん」

善子「…」ジー

梨子「あー…?よっちゃん?」

善子「あ、ごめんなさい。はい、どうぞ」

梨子「あむっ…」

善子「…」スッ

リリーがそれを口に含んだ瞬間、歯を立てる前にやや奥へと押し込む。

梨子「んむっ!もう、いきなり動かさないでよ…」ケホケホ

善子「えへへ、リリーに食べさせてあげるのが嬉しくて手元が狂っちゃった」

梨子「またすぐにそういうこと言う…///」

善子「改めて、はいあーん」

梨子「あ…んっ…」モグモグ

善子「じゃあわたしも!はむっ…おいひー!」

梨子「ほんとにね。こんなにおいしいなんて思わなかったよ」

善子「じゃあ甘いものの次はしょっぱいもの!じゃーん!ジャンボフランク!」

梨子「結構がっつり系だね」

善子「目の前通ったらいい匂いしてたから買っちゃった」

梨子「ふふっそれ分かるなぁ。わたしも鶏皮餃子とかついつい買っちゃうタイプだもん」

善子「じゃああーん」

梨子「ま、また?うぅ…///あーん///」

善子「…」ジー

梨子「かぷっ…ひゃっ!肉汁が溢れちゃった…」

リリーがジャンボフランクをひとかじりした瞬間、皮の下で熱され液体となった脂が溢れる。
それが伝ってわたしの手を汚さないようにと、リリーはフランクを下から上へと舐めあげる。
舌で脂を掬いとるように、ねっとりと。
また、髪がかからないようにとそっとかきあげていることで白い耳が露になっていた。

善子「ご馳走様」

梨子「へ?よっちゃん食べてないよ?」

善子「なんかリリー見てるだけでおなかいっぱいになった」

梨子「そ、そう?」モグモグ


~~~


善子「さてと、それじゃ出店回りね!いきましょ!」

梨子「うん」

善子「…ん」

梨子「?」

善子「…手つないでほしい」

梨子「もう…今日だけだからね///」ギュッ

善子「えへへ…」

やっぱり優しいわね。
だから好きなの。

梨子「いろいろあるね」キョロキョロ

善子「そういえば射的、初めて見たって言ってたわよね?」

梨子「うん」

善子「やってみましょ!」

梨子「やったぁ!」

くうぅ!
無邪気にはしゃぐリリーが幾分か幼く見える!
守ってあげたい!
何があっても守り抜きたいこの笑顔。

善子「射的二人!」

「はーい…あれ?善子と梨子じゃん」

屋台の人にお金を渡そうとしたら、そこにいたのは見慣れた人物。

梨子「果南さん!」

善子「な、なんでここに?」

果南「毎年何かしらの出店やってるんだけど、今年は鞠莉がいいものくれてさ。景品もあるし丁度いいかなって」

善子「それで射的なのね。大当たりは何があるの?」

果南「あのちっちゃい的に当てれば国産黒毛和牛のしゃぶしゃぶセットだよ。こっちは自腹で奮発したんだ」フフン

善子「おお、誰がもらってもけっこう嬉しいやつね…」

果南「で、こっちのおっきいやつを倒せば遊園地のペアチケットで、こっちのが一万円相当のペアリング。なかなか倒れないけどね」

梨子「簡単に倒れたら困りますもんね」

果南「んーそうでもないかな。鞠莉が景品用意した時点で元とらなくていいし、気楽なもんだよ」

梨子「い、いいのかな…?」

善子「ふふふ…腕がなるわね!」

果南「あ、やるんだったよね?じゃあはい、これ使ってね」

善子「見ててリリー!大当たり撃ち抜いて見せるわ!」

梨子「頑張ってね!」

ここでいいところ見せればリリーも惚れるしいいもの貰えるし一石二鳥よ!
なにより、リリーの応援があれば負ける気がしないわ…!

善子「おりゃ!」パンッ

果南「はずれ~」

善子「なるほど…今ので軌道修正は完璧よ。次!」パンッ

果南「はずれ~」ケラケラ

ぐっ…
あの楽しそうな顔が今だけは腹立つ…!

善子「ま、まだよ!最後の1発、こいつに全てをかけるわ!」パンッ

ポコッ

果南「あはは!大当たりの一段下の駄菓子ゲットだ!はいどうぞ!」

善子「こんなはずじゃ…」

梨子「んー…」

パンッ

パシーンッ

果南「…ええっ!?大当たり!?」

善子「え…」

梨子「…」パンッ

パシーンッ

果南「ぺ、ペアリング…!」

梨子「…そこ」パンッ

バッターン!

果南「遊園地のペアチケット!?」

善子「」

梨子「やった!全部当たったよ!」ピョンピョン

善子「さ、さすがリリーね」アセアセ

果南「目玉商品無くなっちゃった…」ショボン

梨子「あ、ご、ごめんなさい!」

果南「いいよ、ルールはルールだし。はいこれ」

梨子「よっちゃん、射的って楽しいね!」

善子「そうね…」

リリーには銃を持たせてはいけない。
獲物を狙うその眼光から感じた威圧感を思いだし、心からそう思った夏の日だった。


・・・幕間・・・


~一週間前~

鞠莉『果南~♪』

果南『どうしたの?』

鞠莉『これ!』

果南『なに?くれるの?』

鞠莉『ふふっ…使い方は自分で考えてね?待ってるから♪』

果南『?』

───
──


善子「リリー!」

梨子「いらっしゃいよっちゃん。わたしに急ぎの用事って?」

善子「あのね…すっごく大事な話なの…」

梨子「う、うん…」ゴクリ

善子「わたし…わたしね…」

梨子「…///」ドキドキ

善子「宿題終わってないの!」

梨子「え?」

善子「お願い、手伝って!」

梨子「…あ、うん」

さすがのリリーもがっかりしてるわね。
そりゃ、宿題なんてやりたくないはずだもの。
悪い気はするけど、今はそうも言っていられない。
どうしてもやらなきゃいけないことだから!

善子「これとこれとこれなんだけどね…」ドサッ

梨子「えっと、読書感想文と数学の冊子と…なにこれ?」

善子「え?えーと…自由研究?」

梨子「なんでそんなものがあるの!?」

善子「えと、あれよ。田舎だから」

梨子「高校生で自由研究…?浦の星ってやっぱりちょっと変わってるね…?」

善子「そうよね」

なんとか誤魔化せたわね。
リリーは純粋で騙されやすいから心配になっちゃうわ。
わたしが傍にいないとね。

善子「というわけで、一番面倒なものから片付けたくて」

梨子「自由研究…だね」

善子「そうなのよ」

梨子「わたしも小学校以来だよ…」

リリーの小学生時代…
ぜ、絶対可愛い!
目の前に現れたら間違いなく理性持たないわね。

梨子「テーマとか決めないといけないよね」

善子「あ、テーマは決めてあるの。それにリリーの手伝いが必要で…」

梨子「どんなテーマ?」

善子「人の瞬きの回数と気温と湿度の関係よ」

梨子「あ、それなりに真面目なテーマなんだ」

善子「なんだと思ったのよ」

梨子「てっきり悪魔とか堕天使とかそういう研究かなって」

善子「それでもよかったんだけどね」

梨子「よかったんだ…」

でも、このテーマにしたのにはちゃんとした訳があるのよ。
悪いけど付き合ってもらうわねリリー♪

善子「じゃあ早速温度計と湿度計を置いて…今からエアコンを切って窓を開けて、上昇していく気温と湿度と、一定時間内の人の瞬きの回数を記録するわ」

梨子「わたしはなにしたらいい?」

善子「ただなにも意識せずにいてくれればいいわ。リリーの瞬きの回数を数えてるから」

梨子「うん、わかったよ」

善子「じゃあ記録開始するわね」カキカキ

梨子「…」

善子「…」ジー

梨子「…」パチクリ

善子「…」メモメモ

梨子「えと…」

善子「…」ジー

梨子「…///」カアア

善子「どうしたの?顔が赤いけど」

梨子「な、なんでもない///」

善子「そう」

ひゃっほぉう!
作戦大成功ね!
大義名分の下リリーの顔をガン見する!
これならどんなに見つめても文句言われないわ!

善子「…」ニヤニヤ

梨子「///」ソワソワ

問題は自由研究っていうのが嘘ってばれたときよね。
ま、それはそのとき考えればいいか。

善子「…リリーって睫毛長いのね」

梨子「ふぇ///」

善子「肌もきめ細かくて…お手入れしてるんだ」

梨子「あ、あの、よっちゃん…?」

善子「可愛い…すごく…」

梨子「う…えと、近…///」

ふふふ…
照れてる照れてる。
これこのままキスできるんじゃない?
やってみましょうか。

善子「リリー、目閉じて…?」

梨子「う…あ…///」

善子「…」スッ

梨子「っ!」ドンッ

善子「ぐふっ」ドサッ

梨子「あっ…ご、ごめんね!」

善子「へ、平気よこれくらい」

梨子「は、恥ずかしくて…つい///」

お?
嫌とは言ってないわよね?
これつまりもう一押しでいけるんじゃない?

善子「ねえリリー」

梨子「?」

善子「わたし、やっぱりあなたが好き」

梨子「…っ!?///」

善子「だからお願い。わたしと付き合ってください!」

梨子「ごめんなさい!」

善子「嘘ぉ!?」

梨子「いや、だって…」

善子「なーんーでー!自由研究なんて嘘までついていい雰囲気作ったのにー!」

梨子「…ん?」

善子「今のは普通オッケーする流れじゃ…」

梨子「待って?自由研究、嘘なの?」

善子「ハッ!」

梨子「よっちゃん…?」ジロッ

はあぁん♡
そのジト目堪らない!

善子「や、その…」

梨子「帰って!」

善子「ごめんなさーい!」

───
──


善子「リリー!お待たせ!」

梨子「ううん、全然待ってないよ。わたしも今来たところ」

善子「えへへ…」

梨子「?」

善子「なんだか今の恋人みたいね」

梨子「!?///」ボンッ

善子「リリーと遊園地デートなんて、わたし嬉しすぎて昨日は眠れなかったんだから」

お陰で朝早くから待ち合わせ場所で隠れてたから、待ち合わせ時間の30分前から来てチラチラ時計確認してたリリーをじっくり堪能できたけどね。
辺りを見渡したり手鏡を取り出して髪型とか確認したり…
何度可愛すぎて襲いそうになったか。

梨子「えぇ…楽しみにしててくれたのはいいけど、ちゃんと寝ないと体に悪いよ?」

善子「大丈夫よ。大好きなリリーと一緒なら疲れなんて感じないわ」

梨子「またそういうこと言う…///」ボソッ

善子「さ、いきましょ!」

梨子「う、うん」


~~~


善子「到着!」

梨子「こんなところに遊園地なんてあったんだね。チケットもらうまで知らなかったよ」

善子「設備とか新しいわりには人が少ないのね?なんでかしら」

見ると、カップルももちろんいるけど家族連れのほうが多い印象をうける。
それでも、休日なのにこれだけしかいないというのも謎だ。

善子「ま、考えても仕方ないわね」

梨子「あ、折角だから写真撮ろうよ」

善子「リリーったら大はしゃぎね」

梨子「そ、そんなことないもん///」

善子「可愛いからオッケーよ!」

梨子「じゃあ撮るね?はい、チー…」

善子「ズッ♡」ギュッ

梨子「ひゃわぁ!?」

パシャッ

善子「ね、わたしにも送って送って!」

梨子「いきなり抱きつかないで!」

善子「そこにリリーがいたからね。衝動には抗えないのよ」

梨子「もう…///」

善子「さ、それじゃあ入りましょ!」ウキウキ

梨子「うん!」

善子「で、何から乗る?」

梨子「うーん…よっちゃんは?」

善子「わたしはね…あれ!」ビシッ

梨子「…え」

指差した先にあるのは、不気味な装飾が施された建物。
いわゆるお化け屋敷。

梨子「ほ、ほんとに?」

善子「もちろん!今日も暑いし、早速涼しくなりたいでしょ?」

梨子「うぅ…でもぉ…」フルフル

うっきゃああああああ!
肩を奮わせるリリー可愛いかよ!
それが見たかったのよ!

善子「仕方ないわね…じゃああれにしましょ」

梨子「う、うん!お化け屋敷じゃないならなんでもいいよ」ホッ

善子「決まりね」ニヤ


~~~


カラカラカラカラカラ…

梨子「あ、上がっていくよ…!」

善子「も、もうすぐ頂上ね…」

カタン…

よしりこ『あっ…!』

ゴオオオオオオオオオオオオ!!!

梨子「きゃあー♪」

善子「ぎゃああああああああああああああああああ!!」


~~~


善子「」チーン

梨子「よっちゃーん?大丈夫ー?」パタパタ

善子「こ、このヨハネにここまでダメージを与えるとは…人間も力をつけたということ…か…」

梨子「なんで絶叫マシーン苦手なのに乗りたいなんて言ったの?」

善子「そ、それは…」

正直ここまでとは思わなかったし、グロッキーになったリリーを看病と称して好き放題できるかもしれないって考えてた…
まさか妄想と立場が逆転するなんてね。

梨子「さっきよりはましになったみたいだけど…平気?」

善子「ええ、リリーのおかげでね」

今日のリリーは珍しく少し短めのスカート。
今はわたしをひざ枕してくれているから、首をうまく動かせば素肌に頬ずりすることもできる。
ふとももの感触最高ね。
生足パラダイス。

梨子「こらっ」ポカッ

善子「いたい!」

梨子「くすぐったいからやめて。よくなったのなら次いこ?」

善子「はーい…」

もうちょっとだけ堪能したかったなぁ。
リリー優しいから、きっともっかい同じことになったらひざ枕してくれるわよね。
でももう乗りたくないなぁ…

梨子「もう…よっちゃんはすぐセクハラばっかり…」

善子「リリーが魅力的すぎるのがいけないのよ」

梨子「うぅ…///」

善子「そうやってすぐ照れるところとかね!」

梨子「…知らないっ」プイッ

可愛い…

善子「待ってよリリー!」


~~~


梨子「それにしてもすごくたくさんアトラクションあるね、ここ」

善子「そうよね。なのにどうして今までここにあること知らなかったのかしら?」

梨子「CMとかでも見たこと無いよね?」

善子「ねえ、もう一回チケット見せて?」

梨子「え?うん…」ピラッ

善子「…あ」

梨子「?」

善子「ほら、ここ」

梨子「えっと…小原グループ…あっ」

善子「なるほど…そういえばマリーからもらったって言ってたわね」

梨子「わたしの想像を超えるお金持ちなんだね…」

善子「深く考えるだけ無駄よ。今は素直に楽しみましょう」

梨子「うん、そうだね」

その後園内レストランではタダで最高級フルコースを食べ、空中浮遊とかいうアトラクションに乗ったかと思えば遥か上空で無重力を体験し、驚きと興奮冷めやらないままに遊園地を後にした。
本当は観覧車で夜景を見ながらひと夏のアバンチュールとしゃれ込みたかったけど、そんな余裕は残っておらず。
金持ちという人種のすごさを改めて思い知らされた夏の日だった。

───
──


善子「…」ゴクリ

やるのか…?
やっちゃうのか堕天使ヨハネ?
今日は無理やり押しかけてリリーの家にお泊り。
もうバスはないから追い出されたら野宿しかない。

善子「でも、ここでやらなければ堕天使が廃る…!」

梨子『~♪』シャワー

扉一枚隔てた向こうに全裸のリリーが!
ここまで来て…
やらいでかー!

善子「ハァハァ…!せ、せなっ背中流しにきたわ!」ガラッ

梨子「ふんっ」ポイッ

善子「ふぎゃっ!?」カコーン

梨子「絶対来ると思った…」

善子「いたた…あ、あれ?水着!?なんで!?」

意地でも局部を目に焼き付けて見せようと意気込んでの突入だったのに。
でもまあこれはこれで太ももとか胸元とか腋とか鎖骨とか見放題なわけだけど。
なんてこった、天国じゃない。
堕天使であるわたしを天国に辿り着かせてしまうだなんて…
リリーってばどこまで罪深いの!

善子「…」ジー

梨子「よっちゃんが覗きに来ると思ってあらかじめ水着を着てたの。覗くだけに留まらず入ってくるとは思わなかったけど…」

善子「えっろ」

梨子「っ///」カアア

善子「あ、しまった口に出て…」

梨子「よっちゃんのえっち!///」バッシーン

善子「はふん!」ドサッ

口は災いの元とはよく言ったものね。
次は心のなかだけで言おう。

梨子「まったくもう、よっちゃんってばそうやってすぐに…」

カサカサ

梨子「へ?」

🐛「やあ梨子ちゃん」

梨子「きゃああああああぁぁぁぁぁ!!!」

善子「わああああ!?何事!?」

梨子「む、む、虫…!」ガタガタ

🐛「僕こう見えて益虫なんだけど…」

善子「このっ!よ、よくもリリーを怖がらせたわね!えいっ!堕天流蒼天撃!」バシッ

🐛「あんまりだ…」チーン

善子「はぁ…はぁ…リリーはわたしが守る!」

梨子「よ、よっちゃん///」

善子「大丈夫?」

梨子「うん、ありが…」

善子「お礼に裸見せて」

梨子「最っ低!」バチコーン

善子「はぶちゅっ!」ドサッ


~~~


善子「ねえリリー」

梨子「なに?」

善子「一緒のベッドで寝ましょ?」

梨子「やだ」

善子「なんでよ」

梨子「胸に手を置いて考えてみて?」

善子「どれどれ」モニュン

梨子「わたしのじゃないよ!///」パシーン

善子「ありがとうございます!」

梨子「はぁ…はぁ…こんなに人にビンタする日が来るなんて思ってもなかったよ」

善子「どう?わたしがいたからこそ体験できたことよ?」ドヤァ

梨子「一生体験できなくても悔いはなかったと思うよ」

リリーのビンタって痛すぎず弱すぎずでなんか癖になるのよね。
拒絶の奥にある思いやりを感じる。

善子「仕方ないわね…じゃあこっちの布団で寝るとするわ」

梨子「うん、そのために運んできたからね」

善子「でもこの布団リリーの匂いがしない」

梨子「まあ、お客さん用だし…」

善子「だからその掛け布団だけでも!」

梨子「ダメ」

善子「そんな…」

梨子「明日も学校なんだよ?はやく寝ないと」

善子「はーい…おやすみなさい」

梨子「おやすみ、よっちゃん」

善子「おやすみのキスは?」

梨子「ありません!///」


~~~


善子「…」

リリー寝たかしら。
そろそろベッドに潜り込んでもいいような気がするけど。

善子「…」

梨子「…」

ザアアアアア

外は大雨。
寝る前くらいから振りだした雨は勢いを弱める気配はない。
夏の雨もこれくらい降ってくれたら涼しくていいわね。
でも、リリーの寝息を聞き取れないから堕天使的にはノーサンキューよ。

善子「そろそろいいかしら」

梨子「なにが?」

善子「あ、リリー起きてたの?」

梨子「雨がうるさくてなかなか眠れなくて」

善子「そうね…かなり降ってるものね」

おのれ雨。
どこまでも邪魔を…
こうなったらいっそのこと…

善子「ねぇリリー」

梨子「なに?」

善子「…そっちいってもいい?」

梨子「…」

うーん案の定無反応。
ワンチャンあると思ったんだけどな。
ていうかなにも無視しなくてもいいじゃない。
わたしだって少しは傷つくんだからね。

梨子「いいよ」

善子「え?」

梨子「ほら、おいで」パサッ

善子「え、ほんとに?」

梨子「よっちゃんがきてもいい?って聞いたんでしょ?こないならいいよ」

善子「いきます!そっちいくから!」

梨子「…」

善子「お邪魔します…」ゴソゴソ

ちょ、ちょっと待って?
どういう風の吹き回しよ。
だって、寝る前に一緒に寝たいって言ったら拒否されたうえにひっぱたかれたわよ?

善子「…」ドキドキ

梨子「狭いね…」

善子「さ、さすがに二人はね」

梨子「よっちゃん落ちそうだよ?」

善子「へ?あ、いや、その…」

梨子「ほら、もっとこっち寄って」グイッ

善子「ひぁっ」

どわああああああ!
リリーが近い!
目の前!
いつもと違う!
なんかめちゃくちゃ緊張する!

梨子「…」

善子「…」ドキドキ

ど、どうしよう…
本来なら願ってもないチャンスなのにやけに緊張してる。
自分からアプローチ仕掛けてるときはこんなにドキドキしないのに。

梨子「うるさい…」

善子「へぇ!?ご、ごめんなさい!声に出てた!?」

梨子「…」ギュッ

善子「あひっ!?」

梨子「寝られないから静かにしてて」

善子「う、うん」バックンバックン

梨子「…ねえよっちゃん」

善子「あ、な、なに?」

梨子「好きだよ」ボソッ

善子「え?」

梨子「///」ドンッ

善子「ちょ!落ち…ぐへっ!」ゴチーン

ベッドから押し出され床に頭を打ち付ける。
夜も遅いし変に緊張して精神がすり減らされていたこともあり、意識が遠退く。
だから、最後にリリーが呟いた言葉がなんだったのか、わたしは知るよしもなかった。

梨子「やっぱムリだよぉ…鼓動がうるさくて眠れない///」


~~~


善子「…ん?」パチクリ

チュンチュン

目が覚めると布団のなか。
昨日布団に入ったときと同じ位置。
つまり。

善子「…不幸だわ」

最近リリーといて幸せすぎたから忘れかけてたけど、わたしって本当に運が悪いんだったわ。
ここにきてそんなベタな展開ある?

梨子「よっちゃん?いつまで寝てるの。はやく起きないと遅刻するよ?」

善子「はーい…」ゴソゴソ

あ、パジャマからリリーの匂いがする。
一生嗅いでいられるほど好きな香り。
なるほど…
だからあんな抱き締められる夢みたのね。
ある意味お泊まりしたかいがあったわ。

梨子「パジャマ洗濯しとくから、今日の帰りに持ってかえってね?」

善子「えー今日もお泊まり…」

梨子「だーめ」

今の言い方反則。
ボイスレコーダーほしい。
買おう。

梨子「また、今度ね」ボソッ

───
──


梨子「ねえよっちゃん」

善子「なーに?」

梨子「今度の土曜日って、予定空いてるかな?」

善子「なにも予定ないけど…まさかデートのお誘い!?」

梨子「ち、違うよ///」

なんだ、違うのか。
ま、そんなことだろうとは思ったけど。

梨子「曜ちゃんと一緒に映画観に行こうって話してたんだけど、曜ちゃんってば千歌ちゃんとの約束を忘れてたみたいで。千歌ちゃんが先約だからって断られちゃったの」

善子「それで?」

梨子「チケット余っちゃうから一緒に行かない?」

善子「やっぱりデートじゃないの(歓喜)」

ヨハネにしては超ラッキー!
それにしても、曜でも千歌との約束を忘れることもあるのね。

…あの曜が?
千歌との約束を?

梨子「だ、だからデートとかそういうつもりで誘ったんじゃ…///」モジモジ

善子「ねえ?」

梨子「ん?」

善子「曜が千歌との約束忘れてたって、それ本人から聞いたの?」

梨子「ううん。千歌ちゃんから聞いたよ?そういうことだからって」

善子「あっ…」

まあ、わたしとしても嬉しい結果だし…
黙っとこう。

梨子「とにかく、一緒に行ってくれるなら予定空けておいてね」

善子「もちろんよ!」

リリーからのお誘いなんていつぶりかしら?
Waku-Wakuが止まらないわ!


~~~


~当日~

善子「流石に早く来すぎたかしら」

現在待ち合わせ時間の一時間前。
さすがにリリーの姿は見えない。

善子「映画館デートなんてリア充の象徴みたいなものよね。ついにこのわたしも…ふふふ」

この待ち時間もなんだかリア充してるって感じがして実にいい。
ひとつだけ不満があるとするなら、待ってる人がまだ恋人じゃないってことくらいかしらね。

梨子「あれ?よっちゃん?」

善子「リリー!」

梨子「早いね…もしかして結構長い時間ここにいた?」

善子「精々10分くらいよ。悠久の時を生きる堕天使にとってこの程度須臾に等しいわ」

梨子「ふふっ…」

善子「な、なによ」

もしかしてバカにされたのかな…
いやいや、リリーはそんな人じゃないし。

梨子「なんだか、ずいぶん久しぶりに堕天使モードのよっちゃんを見たなって」

善子「そう…かしら」

言われてみれば…
ここしばらくはリリーの前でそういう発言をしてなかったような気がする。

梨子「だから、なんだか嬉しくて」ニコッ

善子「あ、そ、そう///」

梨子「よっちゃん?顔赤いよ?」

善子「あ、暑いからね!熱中症とか怖いしはやく行きましょ!」タッ

梨子「あ、もう!待ってよー」

あれ?
なんでこんなにドキドキしてるの?
いつも積極的にボディタッチしにいってるはずなのに…
なんか悔しいわね。


~~~


善子「あ、これって…」

梨子「なに?映画のポスター?」

劇場の入り口に大きく張り出されたポスターに書かれたタイトルを読み上げてみる。

善子「『くまのがっこう&ふうせんいぬティニー』?」

梨子「へぇ…可愛いね」

善子「これ、絵本で読んだことあるわ」

梨子「わたしもあるよ。結構有名な絵本だからね」

善子「家族連れでも、絵本を読んだことある大人でも、幅広い年齢層で楽しめそうな作品ね」

梨子「うん。しかも人気声優である逢田梨香子さんや東山奈央さんらによる声の演出にも期待だって」

善子「2017年8月25日から全国の映画館で公開中なのね。これは観に行かなきゃ!」

梨子「そうだね。次に映画を観に来るときはこれを観ようね?」

善子「それに、見逃したとしても2018年2月23日にはBD&DVDが発売なんだって!」

梨子「そっか…家でも楽しめるなら、いつか見ようね!」

善子「ええ、もちろん!」

梨子「ふふっ楽しみだね」


~~~


映画が始まってしばらく経った。
内容は恋愛映画。
日本の映画ってこういうのばっかりであまり観なかったけど、案外面白いのね。
リリーは…

梨子「…」

すごく真剣に観てる…
暗闇に紛れてあちこち触りにいこうかと思ったけど…


梨子『なんだか嬉しくて』ニコッ


善子「///」

触ろう。
なんか、このままじゃ負けた気がするもの。
よーし、触るわよ。
どこがいいかしら?
やっぱメジャーなところで胸を…

ぎゅっ

善子「っ!?」ビクッ

何処を触ろうか悩んで肘置きの付近でうろうろさせていた手を、逆にリリーに掴まれた。
ヤバイわね。
これはバレた?

善子「…」チラ

梨子「…///」

あれ?気のせいかしら?
なんか、リリーの顔赤い?
ていうか、その…

善子「///」

わたしの顔も、絶対赤い…


~~~


梨子「映画、すごくよかったね」

善子「え、ええ」

いやいやいや…
そんなもん後半からひとっつも頭に入ってきませんでしたけど!?
クライマックスがどんな展開だったのか何一つ記憶にないわよ!

梨子「悲しい結末になるとばかり思ってたけど、まさかあんな展開になるなんて…」

善子「そうね」

わたしが覚えてるのは、エンディングで主人公とヒロインが指輪を贈りあってたシーンだけよ!

梨子「えへへ、今思い出してもちょっと涙が出ちゃう」

善子「まったく、リリーってばそういうの弱いのね」

梨子「うん。しかもすぐに影響受けちゃうタイプなんだよね」

へえ…
恋愛映画観て影響受けたリリーがどうなるのか楽しみではあるわね。

梨子「だから、作曲とかするときもこういった曲が作りたいってときに似た系統の曲を聴いてみたりとかよくするんだけどね」

梨子「ついつい聴いた曲に引っ張られちゃったりして大変なの」

善子「作曲者ならではの悩みってやつね」

梨子「うん」

善子「さてと…これからの予定ってなにか決めてたりするの?」

リリーが沼津まで来たんだから、わたしの家に連れ込むのもアリね…
幸い今日はお母さんもいないことだし。
リリーとふたりっきりになれるチャンス!

梨子「あ、実は行きたいところがあって…」

善子「そうなのね。ならそこへ行きましょう?」

梨子「ありがとうよっちゃん」

善子「わたしはリリーと一緒ならどこへ行っても楽しいわよ」ニコッ

梨子「う…///」カアッ

これよこれ!
そうよこれがいつものわたしよ!
まったくもう…
可愛さ余ってこっちのリズムを崩してくるだなんてリリーったら罪な女なんだから♪

梨子「じ、じゃあいこ!」キュッ

善子「え」

あれ?
手、繋いできた?
リリーから?

善子「っ///」ボンッ

もぉー!
なんでこれくらいで照れてるのよわたしー!


~~~


梨子「ついた…」

善子「電車に乗るっていうから何処へ行くのかと思ったけど」

梨子「うん…ここに来たかったんだ」

ここって、あれよね。

梨子「…恋人岬に」

こ、こここ恋人岬!?
なに?
一体どういうこと!?

善子「ど、どうしてここに?」

梨子「なんでかな…?なんだか、今日はいつものわたしじゃないみたい」

善子「えぁ!?そ、そうかしら?わたしにはいつものリリーに見えるけど…」メソラシ

梨子「ねぇ、よっちゃん」

善子「なに…」

フッ

逸らしていた顔をリリーに向けたその一瞬。
彼女の顔はこんなにも近くにあって、潤んだ瞳に写っているのは、わたしだ。
妙に緊張していたはずなのに、わたしの唇は湿っていた。

梨子「よっちゃん。大好きだよ」

そんなの知ってたわよ。
そう言おうとしたのに、口は開いたままで声を出さない。
制御不能に陥った体の中で唯一、目だけが彼女を捉えて離さない。

梨子「…」

朱に染まる頬と、柔らかな眼差し。
後ろ手に組んだ状態でわたしの顔を覗き込むように上体を曲げたままで、リリーはなにかを期待するかのように無言を貫く。

夕焼け空の下、潮の香りを含んだ風がわたしたちを包み込み、まるでそれが魔法を解く鍵だったかのように、わたしは言葉を口にした。

善子「わ、わたしも!ずっとリリーが好き!大好き!」

梨子「…うん」

善子「だ、だから、えっと…」

言葉がまとまらない。
どうしてだろう。
こんなにも、彼女が愛おしいのに。

梨子「よっちゃん」

善子「リリー…」

梨子「わたしと、お付き合いしてください」

善子「は、はい!」

こうして、わたしたちは晴れて恋人同士になったのだ。
きっと、今日このタイミングじゃないとダメだったんだろう。
お互いの好きが、本当の好きに変わった後のこのタイミングじゃないと。



おわり
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『照れ屋な天使と自重しない堕天使』へのコメント

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