ルビィ「イルミネーションより眩しいの」

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クリスマスツリー-アイキャッチ
普段は見ているだけで嬉しくなれるクリスマスのイルミネーションが──今は、今だけは消えてて欲しいなって思っちゃった。
 顔に出やすいルビィのことだから、きっと耳たぶまで、トナカイさんのお鼻より真っ赤になってるんだろうから。

「……ちか、ちゃ……だめっ、見ちゃ……」

「ルビィちゃん……」

 手で顔を覆っても、指の隙間から電飾の光と、その光よりもキラキラ輝いてる赤い瞳とがまっすぐ、ルビィのことを照らしてくる。

──やっぱり、まぶしいよ。千歌ちゃん。

pixiv: ルビィ「イルミネーションより眩しいの」 by アルフォート

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 ちっちゃなきっかけ。ルビィの心みたいに、本当に小さくて、些細な出来事。雑誌の特集。テレビのCM。友達との雑談。すれ違う人達の話してる話題に……千歌ちゃんとの会話。一つ一つを取れば、大したことない──すぐに頭の棚の中に、奥底にしまわれちゃう様なことがゆっくり、でも確実に積み重なっていった。小さい頃一回だけ内浦で見れた雪みたいに、しんしんと降り積もっていった。私の気持ち……。

 今じゃもう、溢れだしそうなくらい、胸がいっぱい。伝えられなかった──伝えたい気持ちで爆発寸前だ。
 じっとしていると本当に爆発しちゃうのかも……意味も無くそわそわして。うずうずして。なんだか苦しい。喉の奥から心臓の辺りが、ものが詰まってるみたいな感じがして、少しだけ、辛いんだ。


 誰かを好きになるって、こんなに難しかったんだって。爆発寸前になってようやく気付いたルビィは。

──今日、思い切って千歌ちゃんに告白します。


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 冬。朝。海風に、たまに通り過ぎる車のエンジンの音。気持ちばかりはやるルビィをバカにするみたいに、ちくちくと冷たい針で突き刺してくる……平気だもん。防寒対策は、コートにマフラーに手袋。それに、お姉ちゃんが出る前にくれた貼らないカイロもあるんだ。全然寒くなんて──

「……くしゅん、うぅっ……」

 寒くなんて……ないもん。
 スマホを取り出して、時間を確認すると、九時四十一分。待ち合わせの時間まで後二十分くらい……長いなぁ。もう何時間もこうしてる気がする。
 六時に目が覚めちゃって、緊張して朝ごはんも全然食べられないまま、結局八時くらいに家を出て……バス停で千歌ちゃんを待ってる。時々心臓が口から飛び出してきそうな感じがして、それもまた辛いけど、これが『恋』なんだって分かってるから──今は嬉しい。

 こっそり待ち受けにしてる千歌ちゃんの顔をじっと見つめる。いつも元気いっぱいで……でも、いざという時はかっこいい言葉で皆の背中を押してくれる。たまに出てくる照れた顔も可愛くて……

「おはよう、ルビィちゃん♪ 」

「……可愛いなぁ」

「ん、ルビィちゃん? 何見て──」

でも……やっぱり一番可愛いのは、にこっと笑ったこの顔──

「う──わぁああああっ!? 」

「えっ!? ど、どうしたのっ!? 」

「み、見ないでっ!! お願いだからっ!! 」

「う、うん。おはよう、ルビィちゃん。遅くなっちゃってごめんね……その、寝癖が酷くってさ……結局髪下ろして来ちゃったよ〜……」

「──あっ」

「えっ、こ、今度は何? 」

「へ? な、何でも無いよっ、おはよ、千歌ちゃん♪ 」

 予想外のこと。
 その一。待ち合わせの時間ピッタリか遅れて来ることがほとんどの千歌ちゃんが──九時四十五分、十五分も早く来たこと。
 その二。髪を下ろしてる、こと……
 三つ編みにしてるのも、勿論すっごく可愛いけど、それを編まないで下ろしてると──何だか大人っぽくて、ドキドキ。もうこれ以上早く動かないって思ってた心臓が、もっとペースアップして……しんどい、かも。

 そして、その三。
 ルビィが作ったマフラーをつけてきてくれたこと。

──クリスマスプレゼントにしては早すぎたかなって渡してから気付いて、心配だったけど……嬉しい。使ってくれて。ほんの少しでも、ルビィのことを意識してくれてるんだって思うと、すっごく嬉しくって……また心臓がキュンって跳ねちゃった。

 沢山の予想外に、いきなり戸惑ってヘンな返事になっちゃったけど……今日はいつものルビィとは違うんだ。

「いやぁ、ルビィちゃんに全部任せっきりにしちゃったけど、当日までのお楽しみって……もしかして、何かサプライズでもあったりするの? 」

「そ、そうだよっ! 最後の方で千歌ちゃんをあっと驚かせる様な……な、何かがあるから、楽しみにねっ! 」

「へ〜、楽しみにしてるよ♪ 」

 一日の計画を立てて、その通りに夕方まで過ごして──暗くなったところで、仲見世通りのイルミネーションの前に誘導して……そこで想いを伝える──って、自分で考えた訳じゃなくって、お姉ちゃんと梨子ちゃんが教えてくれたんだけど……大丈夫かな?
 練習した時も、『これで落ちない相手は居ないわ! 』とか『わたくしが千歌さんだったら間違いなく良い返事を返しますわ……! 』なんて言ってくれたけど……。

……やっぱり、少し心配。上手くいくかな。デートも、告白も──最も、『デート』って思ってるのは私だけだろうけど。

 『楽しみ』って言ってくれるだけで、もう充分過ぎるくらい嬉しくって、本当に告白するべきなのかなって思ったり──もし告白が失敗して、今の丁度いい関係が崩れたら……どうしよう、とか。

 こんなことを考えちゃうこと自体、臆病で。失敗した後のことを考えちゃうずるい自分が嫌で。
 誘わない方が良かったかもって──

「──ルビィちゃん、バス来たよ? ほらっ、乗ろ? 」

「あっ、う、うんっ」

……良かったかもって思ったのに、こうして手を出されると何ともなかった風に振舞っちゃう自分は──やっぱり嫌いだ。


────


 ずっとずっと、自分が嫌だった。
 お稽古から逃げ出した自分も。いつも花丸ちゃんに頼っての自分も。それでいいと言ってくれる周りの人に甘えてばかりの自分も。

 ルビィは仕方ない。ルビィちゃんは頑張ってるから。ルビィはそういう所あるから。ルビィちゃんは愛され系だから……

 そうやって許される──許されてしまう自分も、嫌だった。
 まるで、初めから失敗することが当たり前みたいに決めつけられてるみたいで。確かに、私はずば抜けて得意なことも無いし、寧ろ苦手なこと、ものの方が多いくらいだけど……でも、失敗に慣れてる訳じゃないのに──失敗したら、当たり前に悔しいって思うのに……。

「楽しかったね、今日は」

「……どうして」

 沢山失敗した。あんなに何度も確認したにも関わらず。何度も頭の中でシミュレーションしたにも関わらず。あっさり失敗して──一回ペースが乱れると焦って、戸惑って、何にも上手くいかない。いつものルビィと一緒。

 バスの中で二人で寝過ごしちゃって、運転手さんに起こされちゃうなんて恥ずかしい思いをした。
 手芸のワークショップのコース選択を間違えて、耳あてじゃなくてぬいぐるみを作る羽目になった。
 お昼ご飯を食べようと決めていたお店が臨時休業だった。
 二人でお洋服を見て、お気に入りのものを千歌ちゃんに買ってあげるつもりだったのに、一万円札と五千円札を間違えて持ってきてて、何も買ってあげられなかった。

 イルミネーションは、一つも灯っていなかった──

「だって、ルビィちゃんと一緒だったから」

「……へ? 」

「楽しかったよ。本当に。だってルビィちゃんがわざわざチカの為に考えてきてくれたプランだったんだよ? 楽しくないわけ、嬉しくないわけないよ」

「……千歌ちゃんは、優しいね」

 その優しさに、私はまた甘えそうになる。でもそれじゃ、駄目なんだ。今までの弱虫ルビィと変わらない。

 千歌ちゃんを見て、思ったから。真っ直ぐ前を見つめる目を。皆と同じ様に悩んで、それでも前に進む姿を目の当たりにして、決心したから。小心者で、卑怯な自分を変えるんだって。

「でも、駄目だよ。失敗。今日の為に色々考えた。準備した。千歌ちゃんに喜んで欲しくて……それでも、結局一個も上手くいってない。こんなんじゃ……ルビィが誘った意味、無いよ」

「ほんとにそうかな」

「……えっ? 」

「ほんとに全部──失敗だったと思う? 」

 そんな、何がって言おうとした瞬間に。

 一斉に光が灯る。赤、緑、白……クリスマスをイメージさせる鮮やかな色が、とっくに暗くなっていた周囲を明るく照らす。

「え、えっ……えっ? 」

「ね? 失敗だけじゃない。大成功じゃん♪ 」

「あ、で、でも……何で? 」

「イルミネーションの点灯時間、六時からなんだよ♪ うわ〜っ♪ なんか去年よりずっとグレードアップしてるよ〜♡ これってもしかして、今Aqoursが地元で頑張ってるおかげなのかな? 」

「そ、そんなこと──」

 ──ある、みたい。
 商店街の両脇を彩るクリスマス系のイルミネーションより、ずっと目立つ、入口のど真ん中にあった。

『がんばれ Aqours!! 』

 青い電飾で文字を型どっていて、その周りに九色──私達それぞれのイメージカラーの電飾が散りばめられていて、凄い存在感を放っている。

「はぁ……嬉しいよね。こういうのって」

「……うん」

「一人じゃ絶対出来なかった。Aqoursの内誰かが──ううん。今私に関わってくれてる人の内、一人でも誰か欠けてたら、ここまで来られなかった……つくづく思わされるよ。こんな──一年前は想像も出来なかったことが次々起こっちゃうとさ♪ 」

 世界中の誰よりも幸せそうな顔で、綺麗な瞳をもっとキラキラ輝かせながら話す千歌ちゃん。
 本当に素敵で──綺麗だな。

 いつからかとか。どうしてだとか。理屈なんて一切抜きに、千歌ちゃんのことが好きになっていて──ずっとずっと前から、好きだったんじゃないかってくらい、気持ちが惹かれていって。
 多分、ルビィの瞳には千歌ちゃんばっかりが映っていたんだと思う。

 だけど、千歌ちゃんは違う。その瞳には、ルビィなんかよりずっと多くのものが映っていて。ルビィはその内の一人に過ぎない。

 そう分かっていても、伝えたいんだ。
 今日も全然駄目駄目だったけど……これだけは、今日伝えないと、一生後悔しそうだから。

「千歌ちゃん……つ、伝えたいことが、あるの」

 二人並んでいた肩が離れて、向かい合う。正面からその赤い瞳を見ると──やっぱり、恥ずかしくて、目を逸らしちゃう。

「あ、あ、あのねっ……る、ルビィ、ルビィは……」

 これまで経験したことない、心臓のドキドキ。これ以上言葉を発したら、爆発する。それくらい、鼓動が早くて。苦しくて──切ない。切ないよ……。

「ち、ちかちゃん、が……ちかちゃんのことが……」

 いつの間にか足が震えてて、全然上手く喋れるなくなってる。駄目なのに、こんなんじゃ……駄目なのに……

「ルビィちゃん、頑張ってっ。ゆっくりで良いから──ちゃんと聞いてるからっ」

──ほんとに、優しい。千歌ちゃん。

 それに、ちらりと目に入ったAqoursのイルミネーションが、ルビィを応援してくれてるみたいで……


 うん。やっぱりルビィ、大好きなんだ。
すんでのところで止まっていた、ちっちゃなルビィの心の爆発が──

「千歌ちゃんのことが──好き、です……♡ 」

 その一言を発した瞬間に始まっちゃったんだ。


────


「ルビィちゃん……なんで顔、隠すの? 」

「だって……」

 嬉しくて。嬉しすぎて──泣いちゃったんだもん。見せられないよ……こんなの──

「あ、μ'sの花陽さんだ」

「え、ホント!? 」


「ちゅっ」

「んっ!? ん……んぅ……んっ…………」

「…………」

 これ……ファーストキス? 初めて──しかも大好きな人と、キスしてる……キス……しちゃったんだ、ルビィ……。


「……ふうっ、えへへ♪ 」

「い、あっ……えっと、い、まの……」

「へへっ♪ しちゃったね、キス♡ 」

「あ、あぁ……う、うん……」

「もう……ルビィちゃん凄い顔だよ? 」

「そ、そんなこと言われたってぇ……ぐずっ、止まらないんだもん……うぅっ……」

「……ほんとに、ありがとね。今日は」

 ぎゅっと抱きしめて、優しく頭を撫でてくれる。お姉ちゃんがそうするのと違って、安心だけじゃなくて──暖かくなるの。どんどん暖かくなって……幸せな気持ちになってくるの。

「ルビィちゃんのね、可愛いところも、たまに小悪魔なところも──強いところも、チカは好きだよ」

「……ルビィ、強いのかなぁ」

「強いよ。自覚が無いだけで、すっごく強いんだよ。ルビィちゃんは」

「そうかなぁ……? 」

「そうだよ! 私が保証する♪ 」

 根拠も何も無いのに、本当にそんな気がしてくる。本当に──心の底から、嬉しくなってくる。

 誰かに甘えてる自分が嫌で。弱い自分が嫌で。何より弱いのを許される自分が一番嫌だったけど……
 そんなルビィの全部を受け入れてくれる千歌ちゃんのお陰で、自分のことも少しだけ好きになれそうです……♪

「千歌ちゃん、大好きっ♡ 」

 眩しいイルミネーションに負けないくらいの精一杯の笑顔と気持ちを──もっともっと、眩しい赤色の瞳に映して欲しいって、強く強く、思いました。



Fin♡
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