【SS】果南 「恋にオちる」 千歌 「それは“悪夢”だよ」

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果南-アイキャッチ3
1: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:02:48.78 ID:TZ6m4sDQ
花丸 「夜空が満点の輝きに満ちるころ、素敵な物語をあなたと」

花丸 「みなさんこんばんはっ、国木田花丸です」


花丸 「さて…みんなはこんな“怖い噂”を聞いたことがあるずらか?」

花丸 「夜、“落ちる夢”を見た時、すぐに眠りから目覚めなければ…」

花丸 「そのまま実際に死んでしまう…」


花丸 「聞いたことない…? 記憶の片隅に残しておくくらいでいいずら」

花丸 「さて、どうしてこんな話をしたかというと。今日はみんなに紹介したいお話があるずら」

元スレ: 【SS】果南 「恋にオちる」 千歌 「それは“悪夢”だよ」

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2: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:03:20.40 ID:TZ6m4sDQ
花丸 「今日紹介するこのお話は、異色の“恋愛ホラー”作品」

花丸 「ある“呪い”に取り憑かれた一人の女性の、恐怖の一週間を体験してもらうずら」


花丸 「物語の主人公は、松浦果南ちゃん。27才」


花丸 「果南ちゃんのことはみんな知ってるよね? …果南ちゃん、ある日恐ろしい悪夢を見始めちゃうんだ」

花丸 「そして現実世界では、甘ぁい誘惑が果南ちゃんを襲い続けるずら」

花丸 「…はぁ、思い出せば出すほど、節操なしにも程があるずら」
3: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:03:42.11 ID:TZ6m4sDQ
花丸 「果たして果南ちゃんは、人生の“山場”を超えられるのか…」

花丸 「…この作品、すべての結末は、マルのお話を聞いてる“あなた達次第“」


花丸 「…さ、前置きはこれくらいに、そろそろお話をはじめるずら」

花丸 「それではみなさん、また後でお会いしましょう」

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4: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:04:40.20 ID:TZ6m4sDQ
愛は、お互いを見つめ合うことではなく、

ともに同じ方向を見つめることである。

―サン=テグジュぺリ
5: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:05:13.56 ID:TZ6m4sDQ
千歌(26) 「――から―――ね? ―――で―」

千歌 「――でさ――だから―」


千歌 「…ねぇ、聞いてる?」

果南(27) 「……あっ……うん」

千歌 「疲れてる? なんかさっきらずぅっとぼーっとしちゃって」

果南 「大丈夫大丈夫。仕事が最近忙しかったからつい…」

千歌 「そっか。…喫茶店で居眠りとかやめてね?」

果南 「うん、ごめん」
6: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:05:42.90 ID:TZ6m4sDQ
千歌 「…疲れてるなら、私のアパートいつでも来ていいんだよ? いっぱい慰めてあげるから」

果南 「…ありがと、千歌」


果南 (……言えないよなぁ、千歌にだけは。あんな夢のこと…)

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7: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:06:54.39 ID:TZ6m4sDQ
~前日 深夜~


気付けば闇の中にいた。

自分の手すら見えるか見えないか怪しいほどに暗い空間。私はその中に一人ぼっちだった。

突然、バタンッ!と扉が閉まるような音がした。同時に暗闇が晴れ、自分が今どういった状況なのか、やっと目に見てわかるようになった。


果南 「な…なにこれ…! どこっ!?」


無数に乱雑に積まれた立方体の大きなブロック
私はその中の一つの上に立っていた。

ブロックは所によっては階段のように、あるいは壁のように連なっており、どうやら遥か上の方まで続いているらしかった。
8: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:07:32.37 ID:TZ6m4sDQ
果南 「なに…これ…登れってこと?」


その時、下の方から地響きのような音が聞こえた。
上の方とは違い、下は暗闇でよく見えないが、一瞬だけ、大きな手のようなものが見えた。


果南 「な…何…!? なにか来る…!!」


怯えていると、どこからともなく荒々しい男の声が聞こえてきた。


『早く登ってこい!!』

果南 「…っ! 誰っ!?」
9: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:08:20.39 ID:TZ6m4sDQ
『説明はあとだ! とにかく早く登ってこい! 落ちて死ぬぞ!!』

果南 「お、落ちる!?」

『そのブロックは、だんだん下の方から崩れていく。モタモタしてるとブロック諸共真っ逆さまだ!』

果南 「そんなこと言っても…!」

『そのブロックは、押したり引いたりできる。パズルみたいな感覚で動かして、階段を作れ!』


試しにブロックを一つ引き出す。
すると壁のように連なってたブロックが階段のようになり、辛うじて登れるようになった。


果南 「こ、こういうこと…? って、早く登らなきゃ!!」

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10: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:08:52.15 ID:TZ6m4sDQ
…急いで登っているうちに、鐘の音が聞こえてきた。


『鐘の音が聞こえたか? その音がしたら、もうすぐゴールってことだ』

果南 「ゴール?」

『この世界から出られるってことだ! じゃ、お互い生きてたら、またどこかで会おう!』

果南 「えっ、ちょっと!」

果南 「…声が消えた。どうなってるの…もう!」


やがて、上の方に出口と思わしき扉が見えた。
扉の前にたどり着き、ドアノブに手をかけた瞬間、また地響きのような音がなった。


果南 「うわぁっ…!?」
11: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:09:23.99 ID:TZ6m4sDQ
下に目をやると、さっきよりもはっきりと、大きな手のようなものが見えた。その手には巨大なナイフが携えられていた。


果南 「ひっ…ひぃっ!!」


手が自分の元へとたどり着く前に、扉の奥へと逃げ込んだ。
白い光が扉の奥から溢れだし、私はその光に包まれた。

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13: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:11:47.95 ID:TZ6m4sDQ
1ST-DAY 果南の部屋 7:32


果南 「…………ッッ!!」


目が覚めた。
いつもと変わらない天井が、まず目に飛び込んできた。


果南 (……なんだろう、よく覚えてないけど、すっごい怖い夢を見た気がする)


荒くなっていた動悸を抑えようと再び目を閉じると、携帯の着信音が鳴り響いた。


果南 「…はい。あっ、お疲れ様です」
14: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:12:29.89 ID:TZ6m4sDQ
果南 「いえ、寝起きなんてそんな…。もう出る準備出来てます」

果南 「……あぁいや、この間の遅刻の件は本当、すいませんでした」

果南 「……はい、はい……。あの、すいません…」


上司との電話を終え、すぐに着替えを始める。
いつの間にか動悸は治まっていたが、胃が痛いのは変わらなかった。


果南 (……会社、行きたくないなぁ)

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15: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:13:22.28 ID:TZ6m4sDQ
1ST-DAY 喫茶店 17:27


千歌 「…今日は流石に早く仕事終わったんだね」

果南 「土曜日だしね。…もともと出勤の予定じゃなかったのに」

千歌 「この間遅刻したんだっけ? 埋め合わせとはいえ、休日出勤なんてしなくても…」

果南 「仕方ないんだよ。…自業自得だし」

千歌 「あまり思い詰めないようにね?」


果南 「……ねぇ、千歌」
16: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:13:58.21 ID:TZ6m4sDQ
果南 「死ぬ夢って見たことある?」

千歌 「えぇっ? いやぁ…特には」

果南 「そっか…」

千歌 「なに? 怖い夢見たの?」

果南 「うん、まぁ…そんなとこ」

千歌 「仕事で追い詰められすぎて…とかじゃない?」

果南 「いや…どうだろ」
17: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:14:29.53 ID:TZ6m4sDQ
千歌 「だから一緒に住もうって、前から言ってるのに! 仕事で疲れても、私が癒してあげるよ!?」

果南 「いや、千歌に迷惑だからいいって」

千歌 「そりゃ私だって仕事があるけど、今はもう一人暮らしだし、果南ちゃんより仕事早く終わるし、負担なんて何も…」

果南 「大丈夫だって。さっきも言ったでしょ、自業自得だって」

千歌 「はぁ……もう」
18: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:15:12.11 ID:TZ6m4sDQ



千歌 「私達、付き合って何年目だと思ってるの?」


19: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:15:52.04 ID:TZ6m4sDQ
果南 「……今年で10年」

千歌 「そうだよっ! 今更迷惑も何も無いって!」

果南 「そうだよね…でも、本当大丈夫だから」

千歌 「…気が向いたらいつでも言ってね?」

果南 「うん、ありがと」


千歌 「…最近さ、お母さんとか美渡姉とか、しつこく電話してくるの」

千歌 「果南ちゃんとはどうなんだ…って」
20: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:16:33.16 ID:TZ6m4sDQ
果南 「そ、そうなん…だ…」

千歌 「もう20後半だし、心配されてるみたい。美渡姉はまず自分の心配すればいいのに」

果南 「あはは…」

千歌 「私は別に今のままでも十分だけど…なんか、ここまで心配されるとね…」

果南 「まぁほら、お互い今の関係で十分楽なんだし…楽なのが一番でしょ」

千歌 「……うん、私もそう思う…よ…」

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21: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:17:08.24 ID:TZ6m4sDQ
1ST-DAY 都内のバー 21:05


都内にある、バーというには少しだけ規模の大きい店。私の行きつけだ。

6つほどのカウンター席と、テーブル席が4つ。
ダイヤと鞠莉、そして曜と私の4人でテーブルを囲み、気の済むまで飲むのが私たちの日課だった。


果南 「…千歌のお母さんとかが、最近よく電話してくるんだって。私と上手くいってるのか、とか」

曜 「私にもよく話してくるよ、千歌ちゃん」

果南 「やっぱり? …本人は気にしてないって言ってるんだけどさ」

ダイヤ 「……話を聞く限り、結婚してほしい、と言ってるようにしか聞こえませんが」
22: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:17:50.99 ID:TZ6m4sDQ
果南 「やっぱりそうかぁ…」

鞠莉 「ついに果南も結婚かぁ」

果南 「待ってって! …まだ決めてないし」

ダイヤ 「嫌なんですの?」

果南 「嫌…ってわけじゃ」

鞠莉 「じゃあ決まりじゃない! 式場の手配は任せて! ホテルオハラの全面バックアップのもと…」

果南 「だから早いって! …ほら、結婚はまだいいんじゃないのっていうか」

曜 「10年でしょ?」

果南 「…はい」
23: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:18:32.00 ID:TZ6m4sDQ
曜 「十分でしょ。しかも幼馴染なんだから」

果南 「そうだけど、今のままが楽っていうか…」

ダイヤ 「まさか、女性同士というのを気にしているとか?」

果南 「いや、それは別に…」

鞠莉 「2年前に法が改正されて増えたもんね、同性カップル。曜とルビィみたいに」

曜 「えへへ…なんかまだ照れるな」

ダイヤ 「本当、いつの間に…」

曜 「ダイヤさん達が卒業してから、衣装とか一緒に作る機会が多くなって…」

鞠莉 「その惚気話、もう聞き飽きた」
24: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:19:10.99 ID:TZ6m4sDQ
曜 「鞠莉ちゃんの用意してくれた式場、すっごく良かったよ? こんだけの環境があって、結婚しないなんてもったいないよ」

果南 「むぅー…分かってるけど…。あと、指輪ちらつかせるのやめて」

曜 「羨ましいんだ?」

果南 「違うっ!」


ダイヤ 「…そういえば、聞きましたか?」

果南 「何を?」

ダイヤ 「よしみさん、覚えてますか?」
25: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:19:42.99 ID:TZ6m4sDQ
果南 「あぁ、スクールアイドル時代、よく手伝ってくれたよね」


ダイヤ 「亡くなったそうですわ」


果南 「えぇっ!?」
鞠莉 「What's!?」

ダイヤ 「…曜さんは知っていたようですわね」

曜 「千歌ちゃんから聞いたんだ。ダイヤさんもでしょ?」

ダイヤ 「えぇ。突然のことでしたから、驚きました」
26: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:20:12.78 ID:TZ6m4sDQ
果南 「なんで突然…事故とか?」

曜 「朝、部屋で亡くなってたんだって。それを身内が見つけて…」

果南 「朝…っ? それって…」


ダイヤ 「流石の果南さんも知ってましたか、最近多発している、“原因不明の衰弱死“」

果南 「私だってニュースくらい見るよ」

曜 「朝、昨日まで元気だった人が、突然衰弱した状態で発見される…」

鞠莉 「本当、どこもそのニュースばっかで嫌になっちゃう」
27: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:20:48.58 ID:TZ6m4sDQ
果南 「よしみちゃん、元気だったんでしょ?」

ダイヤ 「えぇ。…ですが話によると、いつきさんとむつさんと、上手くいってなかったようです」

鞠莉 「Wow、あんなに仲のよかった3人が?」

曜 「風の噂だけど、色恋沙汰で揉めたとか…」


果南 「…その話、梨子には伝えたの?」


梨子の名前を出した途端、みんな静まり返った。誰も、梨子と連絡が取れないからだ。


曜 「…一応、千歌ちゃんがメールは送ったって。返信はもちろんないけど」
28: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:21:14.04 ID:TZ6m4sDQ
鞠莉 「卒業してからだっけ? 急に連絡取れなくなったの」

曜 「うん、進学したって大学に行ってみても、名簿に名前がなかった」

ダイヤ 「……心配ですわね、昨今の事件のこともありますし」

果南 「どっかで衰弱死とか…シャレになんないからね、梨子…」

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29: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:21:40.74 ID:TZ6m4sDQ
1ST-DAY 都内のバー 22:43


ダイヤ 「さて…もうこんな時間ですか」

曜 「本当だ、私もそろそろ…」

果南 「えぇっ!? みんな帰っちゃうの? もう少しいてよ…」

鞠莉 「千歌っちに電話すれば?」

果南 「いや、それはなんか…」

ダイヤ 「申し訳ありません、私明日早いので…」

曜 「私もごめんね、また明日」

鞠莉 「Ciao~!」


果南 「……はぁ」
30: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/06(水) 23:22:29.69 ID:TZ6m4sDQ
果南 (……とは言ったけど、こんな時間か)

果南 (私もそろそろ…)


?? 「あの~」

果南 「ん?」

?? 「隣、いいですか?」

果南 「ん、あぁ…どうぞ」


視界がぼやけている。
目を擦り、突然話しかけてきたその女性の顔を見た瞬間、つい大声を出して立ち上がってしまった。


果南 「り、梨子っ!!?」

梨子 「ふふっ、お久しぶりです、果南さん」

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42: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/07(木) 22:14:57.48 ID:+Re2MPj/
2ND-DAY 『???』 0:42


気付けばまた、私は“そこ”にいた。
いや、乱雑に積まれたブロックなどは同じだが、厳密に言えば周りの雰囲気が少し違う。


果南 「また、ここ…あれっ、なんで…」

果南 「私バーで飲んでて、梨子が突然来てそれで…」


果南 「…って、ブロックが崩れてる! は、はやく登らなきゃ!!」


昨日と同じようにブロックを動かし、階段を作る。上へ上へと登り、やっとのことで辿りついたのは出口ではなく、聖堂のような場所だった。
43: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/07(木) 22:15:27.44 ID:+Re2MPj/
?? 「…どうやら、生き延びたらしいな」

果南 「ひぇぇっ!!?」


聖堂に辿り着き、突然話しかけられた私は悲鳴をあげた。

話しかけてきたのは人間ではなく、二足歩行をする“羊”だったのだ。


果南 「羊!?」

?? 「羊…? そうか、俺がそう見えるか。俺にはあんたが羊に見える」


辺りを見回すと、羊はその人だけではなかった。頭を抱え悶え苦しんでいる者、ベンチに腰掛け涙を流す者…みんな羊の姿をしていた。
44: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/07(木) 22:16:09.59 ID:+Re2MPj/
?? 「ここでは、自分以外の人間の姿は羊に見えるらしい」

果南 「…ってその声、昨日私に登り方を教えてくれた!」

?? 「あぁ、そうだ。…名乗っておかないと、他と区別がつかないか。俺のことは高野と呼べ」

果南 「た、高野…さん? こ、ここはどこなんですか!?」

高野 「夢…だよ。お前の、そして俺のな」

果南 「夢…?」
45: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/07(木) 22:16:55.76 ID:+Re2MPj/
高野 「ここを1度でも見たが最後、毎晩のようにここに来ることになる」

高野 「ここにいる全員が同じ運命だ。…死にたくなければ、登るしかない」

果南 「し、死ぬ!?」

高野 「あぁ。途中で落ちていく羊を見たか? あいつらはみんな死んだんだ。もし落ちれば、俺たちだって同じだ」

果南 「な、なんでこんなこと…」

高野 「さぁな、こっちが聞きたい」
46: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/07(木) 22:17:41.38 ID:+Re2MPj/
高野 「…とにかく、死にたくなければ登り続けるしかない」

果南 「またあんなのを登るの!? …ここにずっといるんじゃダメなの?」

高野 「たしかにここは休憩所のようなものだが、ここにいると、その間は何があっても夢から覚めない。この世界から抜け出すには、とにかく上を目指すしかない」

果南 「そんな…」

高野 「準備が出来たら、奥の聖堂に行け。そうすれば次のステージに案内される」

果南 「上に行けば、助かるんですか!?」

高野 「確証はないが、それしか希望がない。今はただ、信じて上を目指すしかないんだ」
47: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/07(木) 22:18:19.63 ID:+Re2MPj/
高野 「…じゃ、俺は先に行くからな!」

果南 「そ、そんな…! もっと色々教えてよ!」

高野 「生きてたら、またどこかで会おう!」

果南 「そ、そんな…!」


果南 「……私も、上に行かなきゃいけないの?」
48: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/07(木) 22:19:04.54 ID:+Re2MPj/
恐る恐る、奥へと進む。
聖堂のような建物の中に入ると、人ひとりがやっと入れるような空間に、椅子がひとつだけ置かれていた。

椅子に腰掛けると、どこからともなく少年のような声が聞こえてきた。


少年 『…ようこそ、告解の部屋へ。また新しい子羊が来たみたいだね』

果南 「だ、誰っ!?」

少年 『管理者…といったところかな。この“悪夢の世界”のね』

少年 『あんた達は選ばれたんだ。近々皆、死ぬことになる』

果南 「はぁっ!?」

少年 『でも殺す前に、あんたの命の価値を確かめたい。だから質問に答えてもらうよ』
49: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/07(木) 22:20:04.90 ID:+Re2MPj/
【第1問】です。

結婚とは人生の始まりですか?
それとも、終わりですか?

1.始まり
2.終わり

安価
>>51
51: 名無しで叶える物語(庭) 2017/12/07(木) 22:26:25.99 ID:YIU5eNb5
1かな
52: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/07(木) 22:30:34.00 ID:+Re2MPj/
果南 「こっち…かな」


【結婚は人生の始まりだ】


少年 『なるほど、そっちを選ぶんだ』

果南 「なんの意味があるのさ、これ」

少年 『さっきも言ったろ? あんたの命の価値を確かめているのさ』


少年 『……さぁ、そろそろ行こうか』

果南 「ま、待って! まだ心の準備が!」

少年 『あとがつっかえるだろ。さ、行くよ』


部屋全体が揺れる。
信じられないことだが、今私がいる部屋自体がロケットのように飛び、次のステージに案内されているらしい。


果南 (こんなの…耐えらんないよっ…!)

ーーーーーー
ーーーー
ーー
53: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/07(木) 22:31:13.47 ID:+Re2MPj/
果南 (着いた…)


ブロックの上に進んだ時、また地響きのような音が下から聞こえた。

現れたのは、昨日と同じ手。しかし、以前よりも確実に私に迫ってきていた。


果南 「うわぁっ!!? は、早く逃げないと!」

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ーー
54: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/07(木) 22:33:15.91 ID:+Re2MPj/
果南 「はぁっ…はぁっ…! と、扉だ!」


やっとの思いで扉にたどり着き、ドアノブに手をかける。

途端、私を追いかけ続けていた手が突然伸び、私の目の前まで迫ってきた。


果南 「うっ、うわぁぁっ!!」


扉を急いで開くと、奥から昨日と同じように、白い光が溢れ出す。
その光に照らされた巨大な手は徐々に石化し、バラバラに砕け散って言った。


果南 「た、助かったって…こと? やった!」


扉の奥に逃げ込み、二度と来たくないという思いを込めて、力強く扉を閉めた。

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55: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/07(木) 22:34:50.38 ID:+Re2MPj/
【第2階層】

Great escape!!

You survived.
56: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/07(木) 22:35:32.66 ID:+Re2MPj/
2ND-DAY 果南の部屋 9:17


果南 「…………はっ!!」


…まただ。布団の上で全身に汗をかいている。

何か、すごい悪夢を見ていた気がするが、何も覚えていない。


果南 (…あれ、なんで私、裸で寝てるんだ?)


服を着ようと起き上がると、左腕がなにかに引っかかった。…いや、なにかに“掴まれて”いる。
57: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/07(木) 22:36:21.76 ID:+Re2MPj/
果南 (えっ…隣に誰か…いる?)


布団をめくって現れたその人物に、心臓が口から飛び出るような感覚を覚えた。

…自分と同じく全裸になった梨子が、静かに寝息を立てていた。


果南 (……嘘でしょ……)

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ーー
58: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/07(木) 22:37:11.87 ID:+Re2MPj/
1ST-DAY 都内のバー 23:00


果南 「今までどこで何してたの!? 心配したんだよ!?」

梨子 「ごめんなさい…しばらく忙しくて連絡取れなくて。なんか、こんだけ年数が経ってから改まって連絡するのも…」

果南 「そんなの気にしなくていいのに…。ほら、座って座って」

梨子 「はい。失礼します」


既にカクテル・グラスを持っていた梨子を向かいに座らせる。
約10年ぶりに再開する梨子は、あの頃よりも随分大人びて見えた。


果南 「あっ、みんなも呼ぼうか。みんな喜ぶよ」

梨子 「あっ…待って!」ガシッ!


携帯を持った手を、梨子に強く握られる。
お酒が回っているからなのか、梨子の手がとても冷たく感じた。
59: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/07(木) 22:38:14.41 ID:+Re2MPj/
果南 「梨子…?」

梨子 「今日ここに来たのは、果南さんとお話がしたくて…」

果南 「私と?」

梨子 「はい。…再開するなら、果南さんと一番最初に会うって決めてたんです」

果南 「な、なんで私と? 曜とか千歌の方が…」

梨子 「いえ…。果南さんがいいんです」


梨子は顔を火照らせ、俯く。
梨子の手は、私の腕から離そうとしなかった。


果南 (…綺麗な手……。爪の形も、すごく…)
60: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/07(木) 22:39:08.26 ID:+Re2MPj/
梨子 「…隣、座ってもいいですか」

果南 「……えっ、あぁ、うん、もちろん!」

果南 (ダメダメ、何考えてんの私は。私には千歌が…)

梨子 「…なんだか疲れてます? さっきも机にひとり突っ伏してましたし」

果南 「あぁ…ううん、大丈夫。ちょっと仕事が忙しくてね」

梨子 「そっか…果南さんもすっかり大人になっちゃったんですね」

果南 「そんな、梨子だって十分大人っぽく…」

梨子 「私なんてまだ子供です。果南さんに比べれば」
61: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/07(木) 22:39:59.50 ID:+Re2MPj/
梨子 「…果南さんの唇、すごく綺麗」

果南 「な、何言い出すのさ急に」

梨子 「果南さんは大人だから、私が知らないことも、いっぱい知ってるんですよね」

梨子 「私が経験したことないことも、果南さんならいっぱい経験してるんですよね」

果南 「わ、私はそんな……むぅっ!?」


突然、唇が塞がれた。梨子の唇に。

梨子のイメージカラーと同じピンク色をしたカクテルに濡らされた梨子の唇が、私の唇に、歯に、舌に触れる。

時々漏れる梨子の吐息が口の中に流れ込み、私の心臓に直接届くような感覚を覚えた。


梨子 「……ぷはっ」

果南 「な、何を急に…!」
62: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/07(木) 22:41:10.35 ID:+Re2MPj/
梨子 「私、ずぅっと果南さんとこうしたかったんです」

果南 「り、梨子…」

梨子 「やっと、二人きりになれましたね」

果南 「いや、ほら、周りに他のお客さんとかいるし……むぅっ!?」

梨子 「……んっ………はぁっ…。私には、果南さんしか見えませんけど?」

果南 「な、何言って…!」


梨子が唇についた私の唾液の味を確かめるように、舌で自分の唇を舐める。

その仕草に、私はただ、釘付けになっていた。

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ーー
63: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/07(木) 22:42:12.01 ID:+Re2MPj/
2ND-DAY 果南の部屋 9:18


果南 「あの後、確かしばらく飲んで……」

果南 「だめだ、覚えてない…」


梨子 「ふぁ……おはようございます、果南さん」

果南 「…ッ!! り、梨子…!」

梨子 「…ふふっ、昨日は暗くてよく見えなかったですけど、やっぱり果南さんの肌、綺麗ですね」

果南 「き、昨日…暗くて……!?」

梨子 「…覚えてないんですか? 昨夜のこと」

果南 「いや…曖昧というか…なんというか…」
64: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/07(木) 22:43:18.60 ID:+Re2MPj/
梨子 「ふふっ、慌ててる果南さん、可愛い」

果南 「か、可愛い…っ!?」

梨子 「…って、あぁ…もうこんな時間。行かないと」


梨子 「ごめんなさい、急に押しかけたのに。予定があるんで、今日は失礼しますね」

果南 「あっ、うん…」

梨子 「…じゃ、また今夜」


私の言葉を待たず、梨子は私の家をあとにした。残された私はというと、ただベッドの上で千歌の絶望し泣きじゃくる姿を思い浮かべては冷や汗を流していた。


果南 「事故…だよね。そうだよ、これは事故…事故なんだから…!! 落ち着け松浦果南!!」

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65: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/07(木) 22:44:30.64 ID:+Re2MPj/
戸惑えば戸惑うほど、

それは愛してるということなの。

―アリス・ウォーカー
76: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 00:41:03.26 ID:Q7bBp/Jj
2ND-DAY レストラン 12:30


ルビィ 「やっちゃいましたねぇ…」
果南 「やっちゃったよー…」


ルビィは私の顔色を伺いながら、バーニャカウダを美味しそうにつまむ。
野菜をとる時、いちいち薬指にはまっている銀の指輪に光が反射し、いっそう輝いているように見えた。


ルビィ 「にしても梨子ちゃんですか。音信不通になったと思ったらふらっと現れて…」

果南 「そんで私を誘惑するなんて…。なんてたちの悪い」

ルビィ 「受身な言い方ですね。…果南ちゃんも実は乗り気だったとか」

果南 「そんなわけないっ!!」ガシャンッ!

ルビィ 「ひぃっ!?」


果南 「……ごめん」
77: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 00:41:34.22 ID:Q7bBp/Jj
ルビィ 「まぁ10年も付き合ってれば、1度くらいそんな過ちがあっても仕方ないかも知れませんけど」

ルビィ 「よりによって、結婚の話が出た時にするなんて」

果南 「…曜から聞いたの?」

ルビィ 「えぇ。…やっぱり結婚、嫌なんですか?」

果南 「嫌っていうか…新しい関係になるのが怖くて」

ルビィ 「千歌ちゃんと付き合い始める前にも、同じようなこと言ってましたね」

果南 「昔の話はやめてって…」
78: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 00:42:03.68 ID:Q7bBp/Jj
ルビィ 「じゃあいっそ、乗り換えるっていうのは?」

果南 「へ?」

ルビィ 「結婚迫られるの嫌なんですよね? それに10年も付き合ってれば、マンネリ化だって…」

果南 「ルビィ、すごいこと言うね…」

ルビィ 「あくまで一つの意見ですよ。果南ちゃんならそんな選択はしないって信じてます」

果南 「ルビィ…」

ルビィ 「でも、梨子ちゃんの気持ちはどうなるんですかね?」

果南 「うっ…それなんだよね…」
79: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 00:42:35.90 ID:Q7bBp/Jj
ルビィ 「千歌ちゃんと付き合ってるのは、梨子ちゃん知ってるんですよね」

果南 「うん。もしかしたら、その頃からずっと我慢してたのかも…」

ルビィ 「罪な人ですねぇ…果南ちゃん」

果南 「ルビィ、あんた本当変わったよね…」


「ねぇ、この話知ってる? “落ちる夢”の噂」
「えっ? 知らないけど…」


果南 (……落ちる夢、か)
80: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 00:43:05.80 ID:Q7bBp/Jj
「夢の中で落ちると、現実でも死んじゃうんだって!! 怖くない!?」
「なんだそれ、信じられっかよ…」


果南 (悪夢…昨日のことも…。ダメだ、思い出せない…)

ルビィ 「…果南ちゃん、大丈夫ですか? 顔色悪いですよ?」

果南 「いや、大丈夫…。昨日全然寝れなかったからさ」

ルビィ 「梨子ちゃんを“寝かせなかった”の間違いではなく?」

果南 「違うよっ!!」

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ーー
81: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 00:44:01.66 ID:Q7bBp/Jj
2ND-DAY 都内のバー 20:12


ダイヤ 「それにしても梨子さんがここに…。全く気付きませんでしたわ」

果南 「やっぱり、会ってなかったんだ」

曜 「大人びてたとはいえ、あまり変わりなかったんでしょ? なら私達もすれ違いでもすればすぐ気づくはずなんだけどなぁ」

鞠莉 「まだ近くにいるかもね…。今度会ったら、絶対電話してよね?」

果南 「うん、覚えとくよ…」


善子 「…はい、ご注文のラムコークです」
82: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 00:45:03.81 ID:Q7bBp/Jj
鞠莉 「あっ、善子! 今日は出勤してるんだ」

善子 「風邪ひいちゃったから、3日ほどお休みもらってたの。今日からまた怒涛の連勤よ」

曜 「勿体無いなぁ。昨日いれば、すごいものが見れたのに」

善子 「すごいもの?」

ダイヤ 「果南さんの浮気現場ですわ」

果南 「ちょっ…!!」

善子 「えっ…果南浮気してんの!!? 千歌と結婚の話も出てたんじゃ…」

果南 「こ、声が大きいって!! 誰が聞いてるかわかんないでしょ!」
83: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 00:45:51.47 ID:Q7bBp/Jj
鞠莉 「しかも浮気相手は、長年音信不通だった梨子って言うんだから、驚きも2倍よね」

善子 「えっ、てことはリリーと会ったの!? いつどこで!?」

ダイヤ 「昨日ここで…らしいですわよ」

善子 「しまった…昨日来ればよかった」

曜 「やっぱり風邪って嘘だったんでしょ」

善子 「マスターに聞こえるでしょ…やめてよ」


善子 「浮気といえば…こんな噂話知ってる?」

善子 「“女の呪い”の話」
84: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 00:46:50.09 ID:Q7bBp/Jj
ダイヤ 「はぁ…善子さんの好きそうな話ですわね」

善子 「聞きなさいよ!! …なんでも、遊んでばっかいる浮気者を呪い殺すとか殺さないとか」

果南 「な、何それ…女の呪い!?」

善子 「はぁ…ビビるくらいなら最初からしなければいいのに」

果南 「本当最悪だよ……バレたら死ぬ」

鞠莉 「千歌っちはそんなことしないと思うけど」

果南 「違うよ。想像してみなよ、浮気を知った時の千歌の絶望する顔」

曜 「あぁー…それは死にたくなるね」
85: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 00:47:39.86 ID:Q7bBp/Jj
善子 「それにしても浮気ねぇ。ほんっと最低」

曜 「モットモヒクイ」
果南 「最も低いって言わないで!」

果南 「それに、浮気はもう終わったの。一晩の過ちに過ぎないんだから」


善子 「そういえば知ってる? あのマスターも、昔遊びすぎて、いろんな女の恨み買ったって話」

善子 「ほらあのダサいグラサン。あれで顔隠してるんだって」

果南 「えぇ…あのオジサンが? 嘘でしょ」
86: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 00:48:25.44 ID:Q7bBp/Jj
鞠莉 「果南もかけといたらー? グラサン」

果南 「かけないよ! …ほら善子、他の客に呼ばれてるよ」

善子 「えっ…あ、はーい!」


曜 「はぁ…こういうとこは気が回るのに」

果南 「う、うるさいっ!」

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87: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 00:49:10.32 ID:Q7bBp/Jj
恋をし、同時に賢くあることは不可能なり。

―シルス
88: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 00:50:16.66 ID:Q7bBp/Jj
2ND-DAY 都内のバー 22:39


ダイヤ 「もうこんな時間ですか。私はそろそろ帰りますがみなさんは…」

果南 「私はまだいいや。明日会社遅いし」

曜 「まぁなんというか、あんまり思い詰めすぎないようにね。それじゃ」

鞠莉 「Ciao!」


果南 (…なんか今、完全にひとりになるのはダメになる気がするんだよな)


カランカラーン

マスター 「いらっしゃいませお嬢さん」

「こんばんはー」


果南 「…っ! こ、この声まさか…!」
89: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 00:50:58.11 ID:Q7bBp/Jj
梨子 「あっ、やっぱりいましたね。果南さん」

果南 「な、何でここに…っ!」

梨子 「ふふっ、この時間に来れば会えるんですね」

果南 「な、何言って…」

梨子 「心配して来たんですよ? 今日も昨日みたいに、暗い顔してないかなって」

果南 「ご、ごめん。昨日の記憶、あんまり無くてさ」

梨子 「あっ…じゃあ明日、朝ごはん作ってあげますよ! きっと元気になれますよ」

果南 「だ、ダメッ!!」ガシャンッ!

梨子 「えっ…だ、だめ…ですか?」
90: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 00:52:02.00 ID:Q7bBp/Jj
果南 「だ、ダメっていうかなんというか…!」

果南 「と、とにかくダメだからっ!」

梨子 「ふふっ、照れることないのに」

果南 「て、照れてるとかじゃ…」

果南 (ダメだ…これ以上一緒にいたらまずい!)


梨子 「…あれっ、帰っちゃうんですか?」

果南 「ごめん、明日早いんだ」

梨子 「そう、なんですか…。分かりました、また明日」

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91: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 00:52:39.74 ID:Q7bBp/Jj
3RD-DAY 果南の部屋 00:21


果南 (浮気…。はぁ、なんでこんなことに)

果南 (こんなんじゃ千歌に顔向けできないよ…。とにかく、もう梨子にはあまり関わらないようにしなきゃ)


果南 (……はぁ、寝よ………)

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92: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 00:53:23.62 ID:Q7bBp/Jj
3RD-DAY 『???』 00:53


果南 「まただ……またここに…っ!!」

果南 「もう…! 何回登ればいいのさっ!!」


また崩れゆくブロックを登り続ける。

途中、何匹もの二足歩行する羊が落ちていくのが見えた。一歩間違えれば、私もああなるのだろうか?

そう思うと恐怖でいっぱいになった。いや、もともと恐怖は感じていたが、それ以上に。

私はまだ、死にたくないから。

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ーー
93: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 00:53:52.98 ID:Q7bBp/Jj
少年 『やぁ、随分な登りっぷりじゃないか』


なんとか休憩地点…聖堂まで再びたどり着いた私は、次のエリアに進むために入った部屋で、少年のような声と対話していた。

隣の部屋にいるのはわかるが、ぼんやりとシルエットになっていて、顔は見えない。


果南 「いつまでやらされるのさ、こんなこと!」

少年 『君が死ぬまで…かな』

果南 「はぁっ!?」

少年 『現実の世界に、君が死んでしまえばいいと思っている人がいるのさ。ここはそう願われた人物が訪れる場所なのさ』

果南 「そんな…私が誰かに恨まれてるって…。まさか、嘘だよね…」

少年 『さ、次は僕の質問に答えてもらうよ』
94: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 00:54:18.45 ID:Q7bBp/Jj
【第2問】です。

暗く静かな部屋と、明るく賑やかな部屋。
心が安まるのはどっちですか?

1.暗く静かな部屋
2.明るく賑やかな部屋

安価
>>96
96: 名無しで叶える物語(庭) 2017/12/09(土) 01:17:26.43 ID:bOFae8sG
2
97: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 01:18:58.06 ID:Q7bBp/Jj
果南 「こっち…かな」


【明るく賑やかな部屋】


少年 『ふぅん、なるほどね』


少年 『じゃあ今回は、もう少しだけ哀れな子羊にこの場所について教えてあげよう』

少年 『ここは全体が巨大な聖堂なのさ。全部で“8つの階層”がある』

少年 『今君は三日目だから、まだたったの第3階層だ』

果南 「そ、それってつまりゴールがあるってこと!?」

少年 『あまり夢を見ない方がいいよ。頂上なんてそうそうたどり着けるものじゃない』


少年 『それより、ほら。行く手から、恐ろしいモノの声が聞こえるよ』
98: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 01:19:28.81 ID:Q7bBp/Jj
果南 「もしかして、この前みたいな化け物!? あれは一体なんなの!?」

少年 『ここはアンタの夢の中だから、何が出てくるかもアンタ次第さ』

少年 『あと、ここでの記憶は現実には持ち帰らせないからね。…じゃ、準備はいいかい?』

果南 「ちょ、ちょっと待って…!!」


言葉を待たず、部屋はまたロケットのように飛び始める。私はまた、死のゲームのステージに運ばれていった。

ーーーーー
ーーー
ーー
99: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 01:19:54.57 ID:Q7bBp/Jj
現れたのは昨日までと違う化け物だった。

全裸の女性のような姿をした巨大な化け物。
艶めかしさなどまるで感じないほど、皮膚の所々がまるで古い土器のように乾いてはがれ落ちており、瞳からは狂気を感じる。


化け物から必死で逃げ、ようやく扉にたどり着く。扉を開けると昨日と同じように白い光が溢れ出し、化け物はその光に照らされてバラバラに砕け散った。


果南 「ざ、ざまーみろ!!」

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100: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 01:20:22.34 ID:Q7bBp/Jj
【第3階層】

Great escape!!

You survived.
101: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 01:21:12.12 ID:Q7bBp/Jj
3RD-DAY 果南の部屋 08:21


梨子 「おはようございます、果南さん」

果南 「なんでまたいるのさぁぁっ!!!?」


また悪夢を見ていたような気がする。
いや、今見てるこれも悪夢か?

全裸の梨子が、そこにいる。いや、確かに昨日私はひとりで帰ってきて、ひとりで寝た。

じゃあ…なんで?


果南 「な、なんで梨子がここに?」

梨子 「覚えてない…ですか? 昨日私、無理言って押しかけちゃって…」

果南 「押しかけた…?」

梨子 「果南さん、寂しいかなって…。いや、私が寂しかったんです」
102: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 01:21:39.87 ID:Q7bBp/Jj
梨子 「でも、今は全然寂しくないです。……昨日、あんなに激しくされたら…」

果南 「は、激しく…!? 私、何かしたっけ?」

梨子 「言わせる気ですか…? もう、果南さんったら…」


そう言って梨子は目を閉じて顔を私に近づける。


果南 「わっ…ちょっ…! ま、待って待って!」


……あぁ…………これは……

マジで、ヤバい。

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ーーーー
ーー
103: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 01:22:49.89 ID:Q7bBp/Jj
3RD-DAY 喫茶店 12:12


千歌 「……ねぇ」

果南 「な、…何?」

千歌 「ふざけてるの? そのグラサン」

果南 「いや、イメチェンというか…」

千歌 「似合わない。やめて」

果南 「……ごめん」


果南 「…で、話って何?」

千歌 「いや…今日果南ちゃん、一日空いてたよね?」
104: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 01:24:17.75 ID:Q7bBp/Jj
果南 「うん、空いてるけど」

千歌 「…久々に、デートしない? 夜まで」

果南 「なんだ、それならそうって言えばいいのに」

千歌 「だって果南ちゃん、夜までデートって言うと、たまに嫌そうにするし」

果南 「そ、そうだっけ…?」

千歌 「まぁ…大事な話、もあるんだけど。まずはここらへん散歩でもしよ?」

果南 「うん、分かっ…」


ピリリリリ!!!
105: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 01:24:57.66 ID:Q7bBp/Jj
千歌 「…? 電話鳴ってるよ?」

果南 「あ、ごめん。出てもいい?」

千歌 「うん、いいよ」


果南 「……はい、もしもし?」


梨子 『もしもし? 果南さん?』

果南 「ぶっふぉぁっ!!?」
106: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 01:25:45.43 ID:Q7bBp/Jj
梨子 『よかったぁ、出てくれた』

果南 「な、なんで…?」

果南 (おかしいな…梨子って私の新しい連絡先知ってたっけ…?)


千歌 「果南ちゃん、誰から?」

果南 「えっ…あぁ、ちょっと(ま、まずい…)」


梨子 『今近くに来てるんですけど、会えませんか?』

果南 (近く!? …てことは、この辺りに?)
107: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 01:26:36.41 ID:Q7bBp/Jj
果南 「あ、あのっ! 申し訳ありません、その件は今少々厳しいと言いますか…」

梨子 『…ダメ、ってことですか?』

果南 「も、申し訳ありません! し、失礼しまーす!」


千歌 「……大丈夫?」

果南 「あっ、うん! 会社から。突然出勤しろっていうから、断ったよ」

千歌 「本当!? なんかここ最近果南ちゃん、仕事優先って感じだったから、嬉しい」

果南 「当たり前だよ…私にとっても千歌は特別なんだ」

千歌 「えへへぇ…」
108: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 01:27:09.88 ID:Q7bBp/Jj
千歌 「じゃ、行こっか」

果南 「あっ、待って! 近くもいいけど、今日は少し遠出してみない?」

千歌 「えっ…なんで?」

果南 「いや、せっかく一日休みなんだからさ! 遠出しないともったいないかなって…」

千歌 「……たしかに。じゃあそうしよ!」

果南 「ふぅ…じゃあ行こうか」


果南 (今この近くにい続けるのはまずいよね…)

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ーーーー
ーー
109: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 01:27:37.53 ID:Q7bBp/Jj
3RD-DAY 観光スポット 19:27


千歌 「今日は楽しかったねぇ、果南ちゃん」

果南 「うん、私もだよ。千歌」

千歌 「……ねぇ、果南ちゃん」


千歌 「私たち、もう付き合って10年経つんだよね」

果南 「そうだね。…あれから長いよね」

千歌 「私も、回りくどかったのかなって。…本当はもっと早く、自分の言葉で言うべきだったんだよね」

果南 「回りくどい? 何が?」


千歌が自分の鞄を漁り始める。
そして丁寧に、ゆっくりと、小さな箱を取り出した。
110: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 01:27:57.68 ID:Q7bBp/Jj
千歌 「お母さんがとか美渡姉が、とか…。そんなの関係なかった」

千歌 「私は私の本心で、果南ちゃんと新しい関係になりたい」

千歌 「……だから、受け取って?」

果南 「…………千歌」
111: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/09(土) 01:28:45.18 ID:Q7bBp/Jj



千歌 「私と、結婚してください!!」


119: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 00:14:39.90 ID:pOOgnkZB
時間が止まったような感覚がした。
差し出された指輪を、私はただ見つめていた。

宝石も何もついてないシンプルな指輪だが、宝石があるよりも輝いて見えた。


果南 「千歌、私は……」


抱きしめたい。
ここで千歌のことを抱きしめて、結婚を承諾すれば、全て上手くいく。

だが、ふと、梨子の顔が頭に浮かんだ。

…あれ? そもそも、私はこの状況を素直に喜べていないんじゃないか?
120: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 00:15:22.85 ID:pOOgnkZB
果南 (なんで…すぐにOKの言葉が出ないのさ、私は)

千歌 「果南…ちゃん? 大丈夫…?」

果南 「千歌、私は…」


梨子 「あれっ、果南さん、千歌ちゃん?」
果南 「ッッ!!?!!??」
121: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 00:16:02.23 ID:pOOgnkZB
千歌 「り、梨子ちゃん!?」


千歌は咄嗟に指輪をしまう。
そして瞳を潤わせ、梨子に飛びついた。


梨子 「久しぶり、千歌ちゃん」

千歌 「今までどこに行ってたの!? 本っ当に心配したんだからね!?」

梨子 「ごめんね、本当。色々あって…」

千歌 「でも、無事でよかった。梨子ちゃんにお話したいこと、いっぱいあるんだよ?」

梨子 「うん。私も千歌ちゃんとお話したいこといっぱいあるし、どっかでお食事でも…」


果南 「な、ならさっ!」
122: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 00:16:46.18 ID:pOOgnkZB
果南 「わ、私は先に帰ってるね」

千歌 「え? な、なんで…?」

果南 「へっ!? い、いやぁ、梨子も千歌と2人っきりの方がいいかなぁって…」

梨子 「うーん…たしかにそれもいいですね。果南さんとはこの間、いっぱいお話しましたし」

果南 「梨子っ!」

千歌 「えっ…てことは果南ちゃん、梨子ちゃんととっくに再会してたの!?」

果南 「ち、千歌には言ってなかったね。ごめん…」

千歌 「ひどいよ果南ちゃん! そういうのは早く言ってくれないと!」

果南 「ご、ごめん…」

千歌 「はぁ…まぁこうして再会出来たんだし、いいよ」
123: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 00:17:47.33 ID:pOOgnkZB
梨子 「じゃあ千歌ちゃん、行こっか」

千歌 「うん! …あ、ちょっと待ってて」


千歌 「……返事、待ってるからね」ボソッ

果南 「……っ! う、うん」

千歌 「えへへ、じゃあ、ごめんね。じゃーね」

果南 「うん、ばいばい」


駆け出す千歌と梨子の背中をただ見つめる。
この光景は高校時代にも何回かあったような気がしたが、今はその時とは全く違う感情が、私の中を巡っていた。

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ーーーー
ーー
124: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 00:18:23.94 ID:pOOgnkZB
結婚は邪悪なるも必要なる邪悪なり。

―メナンドロス
125: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 00:19:35.57 ID:pOOgnkZB
3RD-DAY 都内のバー 20:54


『連続怪死事件の続報をお伝えいたします。今朝遺体となって発見されたのは、――さん 〇〇歳。――さん △△歳』

『以上です。続報が入り次第、追ってお伝えいたします』


鞠莉 「Happy marriage!! 果南!」

果南 「ちょっと鞠莉! まだ決まったわけじゃないから…」

曜 「それにしても千歌ちゃんもやるねぇ」

ダイヤ 「えぇ。てっきりプロポーズなら果南さんからかと思っていましたわ」

果南 「はぁ…もうどうしよう…」


善子 「そんなの、OKに決まってるじゃない」
126: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 00:20:24.88 ID:pOOgnkZB
果南 「簡単に言うよ…」

善子 「だって簡単な事じゃない。10年も付き合って、やっと千歌が勇気を出してプロポーズしてくれたんでしょ?」

ダイヤ 「えぇ。断る理由が見当たりませんわ」

曜 「…もしかして、梨子ちゃんのことまだ気にかけてるの?」

果南 「だって……ねぇ…」

鞠莉 「梨子との関わりは一時の過ちじゃなかったの?」

果南 「そうだけど…もうそれじゃ済まないくらいになってるって言うか…」
127: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 00:21:09.37 ID:pOOgnkZB
善子 「何よそれ…」

果南 「だって今朝、言われたんだよ」


梨子 『もしかして果南さん、私のこと嫌いになりました? ……だとしたら私、自分に存在価値を見いだせません』


ダイヤ 「重い……ですわね」

曜 「ていうかいつの間に付き合ってることになってるのさ」

果南 「私が聞きたいよ…」
128: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 00:21:54.06 ID:pOOgnkZB
善子 「はぁ、もうこれは立派な二股ね」

果南 「二股って言わないで! 故意でやってるみたいじゃん!」

ダイヤ 「どちらにせよ、けじめはつけなくてはいけませんよ」

果南 「分かってる…分かってるけどさぁ…」

善子 「…もう1杯、飲んでく?」

果南 「いや、今日はもう帰るよ」

ダイヤ 「あら、珍しいですわね」
129: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 00:22:40.25 ID:pOOgnkZB
果南 「なんか今日は、ひとりでゆっくり考えたくてさ」

果南 (それにここにいたら、また梨子が来ちゃいそうだし…)

曜 「じゃあ私も帰ろうかな。果南ちゃん、送らなくて大丈夫?」

果南 「大丈夫だよ、ありがと」


果南 (結婚…かぁ…。今のままじゃダメなのかな…)

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130: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 00:23:32.36 ID:pOOgnkZB
4TH-DAY 果南の部屋 00:24


千歌 『私と、結婚してください!!』
梨子 『私、その人か自分のこと殺しちゃいます…』

果南 (はぁ…どうしてこんなことに…)


千歌の差し出した婚約指輪が、ずっと頭から離れなかった。本来喜ぶべきなのに、私は素直に喜べなかった。

こんな私と結婚などして、千歌は幸せなんだろうか。

私は、本当に……

千歌のことを、愛しているんだろうか……

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131: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 00:24:31.91 ID:pOOgnkZB
4TH-DAY 『???』 00:57


少年 『また来たね』

果南 「また来たねって…あんたが一方的にここに呼んでるんじゃないか」

少年 『仕方ないさ、あんたが先に“ヒトの未来を奪おうとした”んだから』

果南 「ヒトの…未来?」

少年 『あぁ。心当たり、あるだろ?』

果南 「……。」

少年 『さ、今日も質問に答えてもらうよ』
132: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 00:24:59.05 ID:pOOgnkZB
【第3問】です。

実際問題、愛は、お金で買えますか?

1.買える
2.買えない

安価
>>133
133: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2017/12/10(日) 00:25:46.39 ID:FzSeNKLv
1
134: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 00:31:15.76 ID:pOOgnkZB
【愛はお金で買える】


少年 『ふぅん、なるほどね。だんだん君のことがわかってきたよ』

果南 「こんなこと繰り返して、一体何をさせたいのさ!」

少年 『前も言っただろ。…君がここで落ちて死ねばいいと思っている人がいるのさ』


少年 『…さて、次が第四階層のラストだ。恐ろしいモノの声が聞こえるが、ここを抜ければ半分を過ぎることになる』

少年 『せいぜい頑張りなよ』


少年の声に続いて、指を鳴らしたような音が聞こえる。
そして部屋はまた、ロケットのように飛び始めた。

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135: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 00:31:59.40 ID:pOOgnkZB
現れたのは巨大な道化師。

すべての指に大きなリングを携え、必死に逃げ惑う私を煽るかのようにくるくると回している。

…そのリングに、見覚えがあった。


果南 「私の夢…だからか。それより、早く逃げなきゃ…!」


必死で逃げていると、途中でとある羊を見かけた。私と同じで逃げ惑っているが、どうやらまだこの登山になれていないらしく、動きはぎこちない。


ショートヘアーの羊 「た、助けて…! 死にたくない…死にたくない…!」
136: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 00:32:38.87 ID:pOOgnkZB
今までも登っている途中にほかの羊と遭遇したことはあったが、無視してきた。

自分には関係ないから。自分の命を守るだけで精一杯だから。

……だがその羊だけは、何故か放っておけなかった。


果南 「はやく! こっちだよ!」

羊 「あ、あなたは…!? 羊…!?」

果南 「いいから! 早く登って!」


扉にたどり着いた。
ひと一人分荷物を抱えた状態だったので、道化師はすぐそこまで迫っていた。
137: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 00:33:38.79 ID:pOOgnkZB
羊 「う、うわぁっ!!? だめだぁ、死ぬっ!」

果南 「大丈夫! 扉を開ければ…!」


扉の奥から白い光が溢れ出す。
道化師の体はみるみる石化していき、遂にはバラバラに砕け散った。


羊 「た、助かったの…? やった!」

果南 「ほら、早く行くよ!」

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138: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 00:34:21.29 ID:pOOgnkZB
【第4階層】

Great escape!!

You survived.
139: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 00:35:23.78 ID:pOOgnkZB
4TH-DAY 果南の部屋 09:24


果南 「……っ!!」

梨子 「…大丈夫ですか? うなされてましたけど」

果南 「梨子っ…! なんで…昨日は千歌と一緒にいたんじゃ…」

梨子 「果南さんが呼んだんじゃないですか。忘れちゃったんですか?」

果南 「そんな…私が? 嘘でしょ…?」


果南 「と、とりあえず梨子は服を着て…」


その時、家の呼び鈴が鳴った。
この時間…宅配便でもない。考えられるのは…


果南 (千歌…っ!! まずいっ!)
140: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 00:36:26.00 ID:pOOgnkZB
梨子 「……どうしたんですか?」

果南 「梨子っ! ……ちょっと、トイレ入っててくれない?」

梨子 「えっ…なんで…」
果南 「いいから早くッ!」


梨子がしぶしぶトイレに入るのを見届け、玄関へと向かう。
相変わらず、呼び鈴は鳴らされ続けている。


果南 「……なるようにしか、ならないよね…」

ガチャッ

千歌 「遅いっ!!」
果南 「ひぃっ!?」
141: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 00:37:08.62 ID:pOOgnkZB
千歌 「もぅ…もう少し早く出てよ。寒いんだから」

果南 「ご、ごめん」

千歌 「ほらこれ。朝ごはん」

果南 「あ、朝ごはん?」

千歌 「なんか最近、顔色悪かったから。ちゃんと食べてるのか心配で」

果南 「あぁ……ありがと」

千歌 「ううん、いいの。これからは毎日作んなきゃだから、練習も兼ねて…ね」

果南 「ま、毎日…」

千歌 「……意味、分かるよね?」
142: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 00:40:41.56 ID:pOOgnkZB
千歌 「あと、昨日はごめんね。せっかくのデートだったのに」

果南 「ううん。折角の再会だったんだから、いいよ」

千歌 「なんか誰かに呼ばれたとかで、あまり長くは一緒にいられなかったけど、楽しかった。ありがとね果南ちゃん、気遣ってくれて」


千歌 「……そういうとこも、大好きだよ」


果南 「あ、ありがと…」

千歌 「じゃ、私帰るね。ばいばい」

果南 「うん。ばいばい」

千歌 「……返事、いつでもいいからね」
143: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 00:41:19.79 ID:pOOgnkZB
玄関の扉は、重い音を立てて閉められた。

渡された弁当箱を見る。
こんな朝早くだというのに、品目も多く、バランスもよく考えられていた。

トイレの中からしきりに、「まだですかー」と梨子の声がする。

……弁当箱を握る手が震え出す。


結局お弁当は、半分も食べられなかった。

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149: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:00:19.73 ID:pOOgnkZB
猫は9つの命を持ち、女は9匹の猫の命を持つ。

―フラー
150: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:01:01.19 ID:pOOgnkZB
それからも、悪夢は毎晩続いた。

相変わらず内容は覚えてない…それは梨子のことも同じだ。

私は梨子との時間を思い出せない。


こんな日々、いつまで……

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151: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:02:23.20 ID:pOOgnkZB
7TH-DAY 『???』 00:45


高野 「久しぶり…だな」

果南 「高野さん! よかった、まだ生きてたんですね」

高野 「あぁ。ここも含めて、あと2階層だ」

果南 「私たちならできます。…絶対に」

高野 「あぁ、じゃあ行こうか」
152: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:02:48.09 ID:pOOgnkZB
少年 『…友達が出来たみたいだね。哀れな子羊も、群れることを覚えているみたいだ』

果南 「うるさい! …私たちはここまで来たんだ。もう哀れな子羊なんかじゃ…」

少年 『…でも君は、現実での迷いを捨てきれていないだろ? だから毎晩、ここに来るんだ』


少年 『プロポーズの返事、いつ出すんだい?』

果南 「…っ! あんた、どこまで知って…」

少年 『……さ、質問に答えてもらうよ』
153: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:03:09.82 ID:pOOgnkZB
【第4問】です。

男女関係なんて、所詮はオスとメスの関係?

1.人はケモノとは違う
2.所詮はケモノだ

安価
>>154
154: 名無しで叶える物語(笑) 2017/12/10(日) 22:07:50.29 ID:h/pCCpSR
2
156: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:15:01.67 ID:pOOgnkZB
【所詮はケモノだ】

少年 『……なるほど』

少年 『次のステージには、また恐ろしいモノがいる。だけど安心しなよ、君のお友達も一緒だ』

果南 「…! 高野さん…」

少年 『…さ、行くよ』

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157: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:15:58.12 ID:pOOgnkZB
現れたのは影。

いつも一緒にいるけど、決して意識することは無いモノ。

自分の、見たくないモノ。

いつも逃げている、モノ。


果南 「……大丈夫。私なら…」
158: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:16:39.93 ID:pOOgnkZB
いつもの要領で逃げる。

奈落を挟んでもう一つ向こうのブロックの山には、高野さんの姿が見える。


果南 「よし、よし!」


影の猛攻に耐え抜き、遂に扉にたどり着いた。
扉を開け、影を撃退しようとしたその時だった。

……影は、もう一つのブロックの山にいる高野さんの元へと向かっていった。


果南 「…っ!! ダメっ!!」

高野 「えっ…う、うわぁぁっ!!?」

果南 「にげて、逃げてぇっ!!」

高野 「嫌だ…死にたくない…死にたく…うわぁぁぁぁぁっ!!!!」
159: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:17:58.03 ID:pOOgnkZB
……気付けば私は、扉の向こうにいた。

あれ以上、高野さんのことを見続ける自信がなかった。

救えなかった。あの人も私と同じ境遇だったのに。


果南 「あっ…あぁぁ……うわぁぁぁぁぁっ!!!!」


夢から覚めようとする中、私はただひたすら、空に向かって叫び続けていた。

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160: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:19:16.06 ID:pOOgnkZB
7TH-DAY レストラン 13:14


曜 「ふぁぁ…ダメだ。最近寝不足なんだよね。悪夢ばっか見ちゃってさ」

果南 「曜も? …私もなんだ。今日のは特に酷かったはずなんだけど、何も覚えてなくて…」


果南 「…ねぇ、曜。おかしいと思わない? こんだけ悪夢を見てるっていうのに、毎回覚えてないなんて」

曜 「まぁ…たしかに。脳が覚えてたら危ない! とか言って、無理やり忘れさせてるとか?」


『……このところ増えている、連続怪死事件の続報です』
161: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:19:57.44 ID:pOOgnkZB
『今日また新たに遺体となって発見されたのは、高野 圭吾さん 29歳』


果南 「……ッ!? 高…野……さん?」


突然頭に、羊の姿がフラッシュバックする。
これは…いつの記憶だ?

羊…高野さん…。影に追われて、助けられなくて…私は…


果南 「おもい…だした」
162: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:20:57.02 ID:pOOgnkZB
曜 「思い出した? 何を?」

果南 「今の人だよ! 高野さん! 夢の中で死んだんだ!」

曜 「…ははっ、何言ってるの果南ちゃん。高野さんって今のニュースの人?」

果南 「そう! …その人、前言ってたんだ。この悪夢は“呪い”だって。裏切られたって」

曜 「なにそれ…“夢で殺された”ってこと?」


果南 「……もし本当に呪いなら、私は誰に…」

曜 「私は誰も裏切ってないよ…全部でたらめだよ!」

果南 「……そう、だよね」
164: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:22:08.24 ID:pOOgnkZB
曜 「……変な噂に流されすぎないようにね。ただでさえ果南ちゃん、今大変なんだから」

果南 「うん…ごめん」

曜 「梨子ちゃんとはどうなったの? 別れたの?」

果南 「実はこのあと会うんだ。…今度こそ、終わりにしようって言おうと思って」

曜 「……そっか」

果南 「きっちり別れて、千歌と結婚する。…プロポーズされる側になっちゃったけど」

曜 「…応援してるよ、果南ちゃん」

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165: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:23:07.80 ID:pOOgnkZB
7TH-DAY 都内のバー 19:34


曜 「……果南ちゃんのあれ、大丈夫なの?」

ダイヤ 「ああいうのは放っておくのが一番です。…そもそも関わりづらいでしょう」

曜 「まぁ、確かに」

ダイヤ 「それにしても曜さん、顔色が最近優れないようですが、大丈夫ですか?」

曜 「うん…最近悪夢ばっか見ちゃって。内容は全然覚えてないんですけど」

ダイヤ 「はぁ…果南さんといい、いい加減にして欲しいものですわ。こっちまで元気が失われます」

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166: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:24:10.12 ID:pOOgnkZB
果南 「…………。」

梨子 「…なんとか言ってください」

果南 「……ごめん。私、千歌と結婚することにしたんだ」

梨子 「結婚には消極的だったじゃないですか。…私と一緒にいる時の方が、果南さん、燃え上がっているように見えましたけど」

果南 「ずっと迷ってたんだ。…私は本当に千歌のことを愛しているのか、不安になっちゃって」

果南 「そんな時、梨子と再会して…。つい、楽な方に逃げちゃったというか…」

梨子 「…私は単なる、“逃げ道”だったってことですか」

果南 「本当にごめん。…梨子の気持ちを踏みにじったことは自覚してる。謝って済むことじゃないってことも分かってる」

梨子 「私といるほうが楽なんでしょう? …楽なことに越したことはないじゃないですか」
167: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:25:06.88 ID:pOOgnkZB
果南 「私もずっとそう思ってた。…いや、今もそう思ってるけど」

果南 「でも、楽な道を選ぶことだけが正解じゃないって気づいたんだ。…私には、守らなきゃいけない大事な人がいる」

梨子 「……千歌ちゃんの、ことですか?」

果南 「……ごめん」

梨子 「そっか……。そうなんですね」


ピンク色のカクテルを飲み干し、梨子は再び私の目を見つめる。
そして、ふふっと、小悪魔のように微笑んだ。


梨子 「ま、私はそれでもいいですよ」

果南 「それでもいい…?」
168: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:25:36.35 ID:pOOgnkZB
梨子 「千歌ちゃんが1番で、私は2番。たとえそれでも、果南さんと愛し合えるならそれでいいです」

果南 「い、いや! 梨子がよくても、私が良くないというか…千歌のことだってあるし…!」

梨子 「でも私は、果南さんの彼女でいたいだけで…!」

果南 「ダメだよ…。私にはそんなこと出来ない。これ以上、千歌を不安にさせたくないんだ」
169: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:26:06.27 ID:pOOgnkZB



果南 「もう全部、おしまいにしよう」


170: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:26:53.80 ID:pOOgnkZB
……その時、梨子の瞳から、1粒の涙が静かに流れ落ちた。
先導者についていくように、涙はどんどん溢れだし、梨子はついに顔を手で覆ってしまった。


果南 (……泣いてる。あの梨子が)

果南 (梨子、そんなに私のことを想ってくれていたんだ。彼女がいるって知りながらも、ただひたすら、一途に)

果南 (私は…なんてことを。でも、それ以上に私には、守らなきゃいけないものがある)


たとえ嫌われても。
もう梨子と、会えないことになったとしても。
171: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:27:23.36 ID:pOOgnkZB
果南 「梨子は綺麗だし、もっといい人が見つかるよ。こんな最低な女じゃなくてさ」

梨子 「………さい」

果南 「えっ…?」

梨子 「甘く見ないでくださいっ!! 私が果南さんを思う気持ちを、甘く見ないでくださいっ!」


梨子 「……私、前言いましたよね。果南さんに嫌われたら、もう自分に存在価値を見いだせないって」

果南 「べ、別に嫌ってるわけじゃ…!」


梨子 「……私、死んでやりますから」

果南 「えっ…ちょっ…!!」
172: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:27:56.37 ID:pOOgnkZB
トイレに逃げ込んだ梨子を追って、密室の中に二人きりになる。
梨子は目に涙を浮かべながら、こちらを睨んでいる。


梨子 「なんで…なんで私から離れようとするんですか!? 私はこんなに、果南さんのこと愛しているのに!」

果南 「ごめん…本当に…うぐっ!?」


謝り終える前に、梨子に平手打ちを食らう。

痛い…。恋愛沙汰で受ける暴力って、こんなに痛いものなのか。
173: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:28:39.30 ID:pOOgnkZB
果南 『ごめん…! 本当にごめん!』

梨子 『どうして…っ! どうしてどうしてどうしてぇっ!!』


曜 「……この声、果南ちゃんだよね?」

ダイヤ 「大丈夫なのですか…? 何にせよ、ますます関わりたくなくなってきましたわ…」

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174: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:29:24.02 ID:pOOgnkZB
7TH-DAY 都内のバー 21:15


果南 「…………。」グターッ

曜 「だ、大丈夫…?」

ダイヤ 「私たち、そろそろ帰りますが…。送っていきますか?」

果南 「大丈夫。…今は少し、ひとりで反省してたい」

ダイヤ 「反省…?」

果南 「たぶらかされたとか、翻弄されてたとか…全部自分勝手な言い訳だった。覚えてないけど、きっと私も乗り気で…梨子だって私に迷惑かけられてたんだ」

曜 「果南ちゃん…」
175: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:30:27.36 ID:pOOgnkZB
善子 「……果南、今日はもう帰ったら?」

曜 「善子ちゃん」

善子 「酷い顔よ…? さっきマスターがタクシー呼んでくれたから、それで帰んなさい」

果南 「みんなごめん…。本来私、こんなに優しくされていい立場じゃないのに」

善子 「今更後悔したって遅いでしょ。もう二度としないって、教訓にすればいいのよ」

果南 「……いつか、ちゃんと謝らなきゃ。このままうやむやにしていいことじゃないよね」


ダイヤ 「……曜さん、行きますよ」

曜 「えっ…う、うん…」
176: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:31:12.12 ID:pOOgnkZB
果南 「……ごめん、最後にもう一杯」

善子 「うん。……まぁ、あまり思い詰めすぎないようにね」

果南 「ありがと。…善子は優しいね」

善子 「私だけじゃないわよ。みんなそう思ってる」

果南 「……。」

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177: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:32:18.22 ID:pOOgnkZB
8TH-DAY 果南の部屋 09:27


果南 「……ッ!!」


目が覚めた。それと同時に、自分の隣に人がいないか確認する。

…梨子の姿はない。家の中のどこにも、梨子はいなかった。


果南 「……はぁ。なんか今日はよく眠れた気がするなぁ。こんな気分、いつぶりだろ」

果南 「……あれっ、そういえば」
178: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:32:53.88 ID:pOOgnkZB
果南 「今日私…あの悪夢を見てない!?」

果南 「つまり…助かった、ってこと!?」


ベッドの上に横たわりながら、ガッツポーズをする。

助かった…! 私は登りきったんだ!


ピンポーン

果南 「…? 千歌かな?」
179: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:33:29.02 ID:pOOgnkZB
ピンポーン ピンポーン


果南 「はいはい、今出るよ」ガチャッ

千歌 「あっ、よかった。果南ちゃん起きてた」

果南 「ごめん、出るの遅くなって。どうしたこさ、こんな朝早くに」

千歌 「…ちょっと、話したいことがあって」

果南 「そうなんだ、とりあえず上がってよ」


千歌を部屋に招き入れようと振り返る。

……この時、やっと私は気づいた。
私はまだ、“悪夢”から覚めてなかったんだ。
180: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:33:51.85 ID:pOOgnkZB



梨子 「千歌ちゃん、いらっしゃい」


181: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:34:22.43 ID:pOOgnkZB
下着姿の梨子が、そこに立っていた。

なんで、なんで?
さっきまでここにはいなかったはずだ。


果南 「な、なんで梨子が…っ」

千歌 「…………梨子、ちゃん……?」

梨子 「おはよ、千歌ちゃん。どうぞ、あがって上がって。お茶いれるね」


驚き固まる私をよそに、梨子は鼻歌を歌いながら上機嫌でキッチンへ向かう。

千歌の冷たい視線が、私の背中に突き刺さる。


千歌 「……どういうことか、詳しく聞かせてね」
182: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/10(日) 22:34:43.28 ID:pOOgnkZB
愛する人に本当のことを言われるよりも、

だまされているほうがまだ幸せなときがある。

―ラ・ロシュフコー
198: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/11(月) 23:44:04.01 ID:3aHkzzMz
千歌 「ねぇ、これって…梨子ちゃんと浮気してたってことでいいの?」

果南 「いやぁ、その……」

千歌 「……人とお話する時は、目を見るって教わらなかった?」

果南 「ご、ごめんなさいっ!!」


果南 (怒ってる…すっごい怒ってる…!)


千歌 「そっか、そりゃあ私より先に再会だってしてるはずだよね。こんなことしてたんだもん」
199: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/11(月) 23:44:33.12 ID:3aHkzzMz
果南 「ち、違う!」
千歌 「何が違うのっ!!?」

千歌 「……最近様子がおかしいと思ったら。すっごく心配したんだよ? なのにこんなの、酷いよ…!」

果南 「本当に違うんだよ! 色々とおかしくて、今朝だって本当は…」


梨子 「はい、お茶はいりましたよ」コトッ

千歌 「梨子ちゃん、どうして…」

梨子 「……どうして果南さんと、って?」
200: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/11(月) 23:45:08.48 ID:3aHkzzMz
梨子は千歌に軽く微笑みかけ、千歌と向かい合っていた私の横に座る。

膝と膝がくっつきそうになるほどの距離で座る梨子のその態度は、明らかに千歌を挑発するものだった。


梨子 「果南さんの口から言ったらどうですか? 正直千歌ちゃん、重荷なんでしょう?」

千歌 「……っ!!」

果南 「梨子っ! 私はそんなこと一度も…!」

梨子 「言ってたじゃないですか。千歌ちゃんのことで悩んでは、毎晩私の体で誤魔化して」

千歌 「勝手なことばっか言わないでよッ!!」
201: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/11(月) 23:46:10.85 ID:3aHkzzMz
果南 「千歌……」

千歌 「果南ちゃんはそんな人じゃないもん…。私のこと重荷だなんて、そんなこと…!」

梨子 「プロポーズは?」

千歌 「へ…?」


梨子 「あの時…千歌ちゃんがプロポーズしてた時のこと。覚えてる?」

千歌 「……知ってたんだ」

梨子 「あの時果南さん、喜んでた?」

千歌 「…ッ!」
202: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/11(月) 23:47:05.23 ID:3aHkzzMz
果南 「千歌、私は本当に嬉しかっ…」

梨子 「果南さん、そろそろ本当の言葉で話したらどうですか?」

千歌 「果南ちゃん…」

果南 「梨子…千歌……。私は…」

梨子 「欲しいものは何でも手に入れたい。ごく普通の人間の欲求じゃないですか。果南さんはなにも気にすることないんですよ」

果南 「私はそんな…そんな……」

梨子 「果南さんは私みたいな人がタイプなんですよね? …ひょっとして、千歌ちゃんにはもう欲情出来なかったり?」

千歌 「梨子ちゃん、なんでそんなこと言うの…?」
203: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/11(月) 23:47:49.34 ID:3aHkzzMz
梨子 「……諦めてほしいから」

千歌 「…っ! 本気、なんだね」

梨子 「果南さんは私を必要としてるの。そして私も果南さんを必要としてる」


梨子 「千歌ちゃんは、果南さんにもう必要とされてないの」


千歌 「…………うぅ…………ぐすっ……」

果南 「千歌…」
204: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/11(月) 23:48:31.18 ID:3aHkzzMz
千歌 「おかしいよ…。二人ともおかしいよっ! 私の知ってる梨子ちゃんは、こんなこと言わない!」

千歌 「私の知ってる果南ちゃんは、こんな最低なことしないっ!!」

千歌 「ねぇ………答えてよ」

千歌 「ちゃんと果南ちゃんの言葉で、教えてよ…。じゃないと私…私っ!」

果南 「私は……私の本当の気持ちは…」


果南 (……なんとか、なんとか誤魔化せないのかな、この状況。でも…)
205: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/11(月) 23:49:12.21 ID:3aHkzzMz
果南 「千歌、そのこれは……あー…じゃなくて、その、間違い……でもなくて、えっと……」

果南 「……あの………うっ……うぅ…」


果南 「……ごめんなさいっ! 許して!」

千歌 「…ッ!! 許せるわけないじゃん! 果南ちゃん、自分が何をしたか、本当に分かってる?」

果南 「分かってる! でも聞いて! 私の話を聞いて!!」

千歌 「絶ッッッッッ対にっ!!!」

千歌 「許さないからぁぁぁぁっ!!」


梨子 「…………あーあ、うるさい」
206: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/11(月) 23:50:04.54 ID:3aHkzzMz
果南 「梨子っ! あんたもいい加減に…!」


千歌 「ふざけないで…ふざけないでよっ!! 梨子ちゃん、本当に最低だよっ!!?」

梨子 「千歌ちゃんになんと言われても、私は果南さんのそばを離れるつもりはないから。それは果南さんも同じはずよ?」

千歌 「梨子ちゃんに私の何がわかるのっ!!?」


果南 「やめて……」


梨子 「全部わかるよ。果南さんのことも、私の方がよくわかってる。幼なじみだからって、全部わかったつもりになってる千歌ちゃん、見てて本当に面白いよ」
207: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/11(月) 23:51:11.81 ID:3aHkzzMz
千歌 「私と果南ちゃんの関係をそんなふうに言わないでっ!!」

梨子 「現に裏切られてるのに?」


果南 「やめて……やめてよ……」


千歌 「私は、結婚する覚悟だって…!」

梨子 「そういうのが重荷だって言ってるの!!」


果南 「もうやめてッッ!!!!」
208: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/11(月) 23:52:24.85 ID:3aHkzzMz
千歌 「……果南ちゃん」
梨子 「……果南さん」


果南 「……もう、やめてよ。私が全部悪いんだ。だから2人が争うのは、もう…」

千歌 「……もういいよ、果南ちゃん」

梨子 「あら、やっと諦めたの?」

千歌 「…諦めるわけないじゃん。私がこの手で終わらせるんだよ」


千歌 「……全部」


千歌の手には、いつの間にかカッターナイフが携えられていた。
カチカチと音を立て、ジリジリと梨子の元へと歩み寄る。
209: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/11(月) 23:53:36.17 ID:3aHkzzMz
果南 「千歌ッ!! お願い聞いて! もう梨子とは別れてるんだ! だからそんなことしなくても…!」


千歌 「梨子ちゃんの……あんたのせいで果南ちゃんがっ!!!」

梨子 「千歌ちゃん…」


ドンッと、千歌と梨子の体がぶつかる。
カッターが握られていた千歌の手から、ポタポタと赤い液体が流れ落ちる。

それはカッターの刺さった梨子の腹部から流れ出る血で、間違いなかった。


千歌 「はぁっ……はぁっ……!」

果南 「千歌…! 梨子ッ!!」


梨子 「…………ふふっ」
210: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/11(月) 23:53:57.30 ID:3aHkzzMz



梨子 「これで全部“おしまい”だね、千歌ちゃん」


211: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/11(月) 23:55:14.36 ID:3aHkzzMz
再びふふっ、と微笑んだのを最後に、梨子は目を閉じたまま動かなくなった。

千歌の手からカッターがぽとりと落ちる。力が抜けたようにその場に千歌は膝をつき、静かに涙を流した。


千歌 「なんで…………なんでぇ……」

千歌 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」


果南 「……最悪だ」


とにかく、この状況で放置するのはまずい。
…なんとしても、千歌だけは守らないと。
212: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/11(月) 23:56:06.05 ID:3aHkzzMz
果南 「千歌っ! 早く外に!」

千歌 「果南ちゃん…」

果南 「あとは私がなんとかする! だから早く逃げてっ!」

千歌 「でもわたし体が…」

果南 「ほら、手を取って! 早く!!」


千歌の手を引き、玄関から外へ出る。

……出る、はずだった。


千歌 「……なに、これ」
213: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/11(月) 23:56:36.76 ID:3aHkzzMz
玄関の外に待ち受けていたのは、外の景色なんかではなく、見覚えのあるブロックの山。

…毎晩私が登っていたブロック、そのものだった。

1歩ブロックの上に足を踏み入れた時、先程までいた自分の家はみるみるうちに黒い液体のようなものとなって溶けていった。

そしてついに、私と千歌の2人は、悪夢の空間に取り残された。


果南 「なんで…! なんでまたここにっ!?」
214: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/11(月) 23:57:21.15 ID:3aHkzzMz
『……“おしまい”だって、言ったでしょ?』


果南 「こ、この声…!」


悪夢の世界に声が響く。
そしてその声の主は、間もなく姿を現した。

――巨大な化け物となって。


千歌 「こ、これ…梨子ちゃん!?」

果南 「は、はやく逃げようっ!!」


梨子 『アハはハッ!! 逃ガさないヨ…!?』
215: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/11(月) 23:58:14.33 ID:3aHkzzMz
千歌の手を引きながら、ブロックの山を登る。


果南 (大丈夫…人ひとり連れながらの登山なら、前に1度、“経験済み”だ!)

千歌 「果南ちゃん、ここはどこなの…?」

果南 「…“悪夢”だよ。私の」

千歌 「悪夢?」

果南 「思えば私は…ここ最近ずっと、悪夢を見てた。夢の中でも、現実でも」
216: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/11(月) 23:58:48.56 ID:3aHkzzMz
果南 「でも、そんな中だから気付けたこともある。…身勝手だって、思うかもだけど」

千歌 「……果南ちゃん」


梨子 『あはハハっ!! 待っテよぉッ!』


果南 「…話は後だね。とにかく逃げよう!」

ーーーーーー
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ーー
217: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/11(月) 23:59:13.07 ID:3aHkzzMz
果南 「つ、着いた…っ!」


ようやく扉の前に来た。…ゴールだ。


果南 「千歌、こっから戻れる!」

千歌 「戻る…? 無理だよ。こんなんで戻っても、私どうしたらいいか分からないっ…!」

果南 「大丈夫! 私が何とかして見せる! 私、この悪夢の中で気付けたんだ! 新しい世界に足を踏み入れることを恐れてばかりじゃ、何も変われないって!!」

千歌 「果南ちゃん…」
218: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/11(月) 23:59:50.13 ID:3aHkzzMz
果南 「千歌のプロポーズはきっかけだった! 私を、新しい世界に導いてくれた!」

果南 「身勝手なのはわかってる! でもお願い、これからも私の手を引いてほしい!」

千歌 「私が、果南ちゃんの手を…?」

果南 「今になってやっとわかったんだ、千歌の大切さ。お願い、もう1度…!!」


千歌 「……ありがとう。でも、もう…信じられない」


千歌は徐々に、自分の体を後ろに倒していく。

下からは、梨子“だったモノ”が迫ってきている
219: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 00:00:25.46 ID:xWjiZwZ4
果南 「千歌っ!! ダメっ!!」


すかさず千歌の手を引く。
あとすこしで闇の中に消えていくところだった千歌の体は、私の胸の中に戻ってきた。


果南 「今すぐじゃなくてもいい。…いつか信じてもらえる日まで、私はずっと待ってる」

果南 「だからこんなとこで…死なせたくない」

千歌 「……果南、ちゃん…」

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ーーーー
ーー
220: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 00:00:48.35 ID:xWjiZwZ4
【最終階層】

Great escape!!

You survived.
221: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 00:15:41.33 ID:xWjiZwZ4
8TH-DAY 果南の部屋 09:27


果南 「……っ!!」

果南 「ここ、私の部屋…?」


千歌 「ちょっと…大丈夫?」


果南 「っ!? 千歌…どうなってんの? 」

果南 「さっき千歌が家に来て、それで…」

果南 「……! 梨子は!? 梨子はどこ!?」

千歌 「りこ……?」
222: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 00:16:07.27 ID:xWjiZwZ4
辺りを見回す。
…どこにも、梨子の姿はなかった。


果南 「血の跡もない。梨子っ…梨子っ!!?」

千歌 「……ふぅん。やっぱりそうだったんだ」

果南 「ねぇ千歌! 梨子見なかった!?」

千歌 「……さぁ。今日は居ないんじゃない?」


千歌 「……ねぇ、ちょっといい?」
223: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 00:16:50.92 ID:xWjiZwZ4
千歌 「果南ちゃん、浮気してるでしょ」


果南 「えっ…いや、それは認める…っていうか認めたっていうか! でも大丈夫だから!」

果南 「さっきも言ったでしょ? 私は…」

千歌 「何言ってるの? ……本当、軽蔑する」

果南 「えっ……?」

千歌 「まだ寝ぼけてるの? いい加減目、覚ましなよ」
224: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 00:17:22.06 ID:xWjiZwZ4
千歌 「果南ちゃんが電話に出ないから、合鍵使って様子見に来たんだよ」

千歌 「そしたら果南ちゃん、ベッドの上でもがいてたんだよ」

果南 「ひ、ひとりで…?」

千歌 「うん。ずっとひとりで、じたばた…ね」

果南 「てことは…さっきまでのは、夢?」


果南 「…………はぁぁぁぁぁ」
225: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 00:18:09.82 ID:xWjiZwZ4
果南 「よかった、本当に」

千歌 「……はぁ」

果南 「私決めた。絶対に千歌を幸せにするから」

千歌 「……そのことなんだけど」


千歌はカバンの中から、小さな箱を取り出す。

…見覚えのある箱だった。中身は、婚約指輪。


果南 「改まってみると、緊張するね。でも今回は大丈夫。ちゃんと返事…」

千歌 「ちがうよ」
226: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 00:18:45.29 ID:xWjiZwZ4
果南 「えっ…違う?」

千歌 「これ、いらないから果南ちゃんに渡しに来たの。自分で持ってたくないから」

果南 「いらない…? 持ってたくない?」


千歌 「……もう全部おしまい。別れよ?」


果南 「…………………………え?」
227: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 00:19:27.10 ID:xWjiZwZ4
千歌 「その、梨子さんって人と浮気してたんでしょ?」

果南 「ちょっ、ちょっと待って! 色々と起こりすぎて頭こんがらがってるっていうか!」

果南 「梨子とはもう終わってるの! もうキッパリと諦めてもらったし、千歌にも謝ろうと思ってた! だから…」

千歌 「許してくれ…とでも言うつもり?」


千歌 「……そういう段階じゃないんだよ、もう」
228: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 00:19:53.30 ID:xWjiZwZ4
千歌 「何年一緒にいると思ってるの? 気付いてないとでも思った?」

果南 「……ッ!!」

千歌 「本当はずっと前に気付いてた。…でも、言えなかった。それは私も悪いね」

果南 「だから私はっ! もう覚悟も決めてて、夢の中でも千歌にそれを伝えて…!」

千歌 「……あのさ、果南ちゃんもこんなに長く一緒にいるんだから、そろそろ察してよ」


千歌 「私、別れるためにここに来たんだよ」
229: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 00:20:31.42 ID:xWjiZwZ4
果南 「………………そんな……」


千歌 「プロポーズ、喜んでくれると思った」

千歌 「結局うやむやにされて…プロポーズしたあと、凄くぎこちなくって…」

果南 「だ、だって! それはあの後梨子が…」

千歌 「……もういいよ。聞きたくない」


千歌 「……指輪、置いてくから。売ればそれなりになるんじゃない? 名前も彫ってないし」
230: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 00:21:00.15 ID:xWjiZwZ4
婚約指輪の入った箱を机の上に置く。
私は千歌の一挙一動を、ただ眺めることしか出来なかった。


千歌 「……それじゃ、本当にお別れ」

千歌 「今まで、小さい頃からずっと、楽しかった。本当に楽しかった」

果南 「千歌…」
231: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 00:21:44.32 ID:xWjiZwZ4



千歌 「……さよなら」


232: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 00:22:22.23 ID:xWjiZwZ4
頭から足の先まで、凍えるような寒さだった。

まるで凍ったかのように、体は棒立ちのまま動かない。ただひたすら、悪夢の中のこと…そして今起こったことを必死に理解しようとした。

そして全てを理解した時、すべてを吐き出すように叫んだ。ただひたすらに叫んだ。

……しょっぱい。
大きく開いた口に、涙が入り込んだ。

ベッドに倒れ、血の跡があったはずの場所を撫でる。そのまま私は、この悪夢から逃れようと、また瞳を閉じた。


……きっと逃げた先も、悪夢だというのに。

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ーーーー
ーー
233: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 00:23:39.73 ID:xWjiZwZ4
恋はその始まりがいつも美しすぎる。

結末が決して良くないのも無理からぬことだ。

―ドーマ
243: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 22:00:05.98 ID:xWjiZwZ4
8TH-DAY レストラン 16:41


曜 「…なんて言えばいいかわからないけど、とにかく元気出して? 本当に死にそうだよ?」

果南 「……ねぇ、私今、夢の中にいたりしない? 今ここで曜と話してるのも、“悪夢”の一貫だったり…」

曜 「悪夢なら、私も今朝覚めたばかりだよ。ここは現実だよ、紛れもなく」

果南 「そっか…現実か…」

曜 「…千歌ちゃん、本気なの?」
244: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 22:00:43.93 ID:xWjiZwZ4
果南 「電話も出ないし、メールも返信こない。…あれだけ長く一緒にいたんだもん。本気かどうかぐらい分かるよ」

曜 「私の携帯からかけてみる?」

果南 「……いいよ。多分、今は声を聞いただけで切られそう」

曜 「そういえば、梨子さんの方から連絡はないの?」

果南 「さぁ…。梨子とは夢の中で会ったっきりだよ。“あれ”が夢とは、到底思えないんだけど。なんか、感覚もリアルだったし」
245: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 22:01:17.26 ID:xWjiZwZ4
曜 「夢じゃなきゃ大惨事でしょ。千歌ちゃんが梨子さんを刺しちゃったんでしょ?」

果南 「まぁね…。結果的に、あれは夢でよかったよ。千歌を殺人犯にせずに済んだし」

曜 「…やっぱり、果南ちゃんは優しいね」

果南 「そんなことないよ。…でもそっか、梨子からの連絡、確認してなかった」


携帯を開き、メール欄を確認する。
…当然、千歌からのメールはなかった。それに、梨子からも。

ふと電話帳を開いた時、違和感に気付いた。
246: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 22:02:13.34 ID:xWjiZwZ4
果南 「……あれっ、無い?」

曜 「メール?」

果南 「違う…そもそも、梨子の連絡先がない…! 消えてるんだ」

曜 「千歌ちゃんが怒って消したとか?」

果南 「いや、千歌はそんなことしないよ。それに連絡先だけじゃない。前に梨子からかかってきた電話の履歴も、メールも全部綺麗に消えてる…!」

曜 「梨子さんからのだけ消えてるってこと? 誰かがやったにしても、手が込んでるね…」

果南 「なんで…なんでなんで…っ!?」


メールの受信欄を辿る。
しかし梨子の名前は出ることなく、梨子と初めて再会した日より前の日付にたどり着いてしまった。
247: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 22:03:39.53 ID:xWjiZwZ4
果南 「着信、履歴…アドレス…全部がない…!」

曜 「どういうこと…それ?」

果南 「分かんないよっ! こっちが聞きたいよ! さっきから訳の分からないことばかりで…!」


果南 「………………ん? そういえば…」


曜 「…? どうかしたの?」

果南 「曜、あんたさっき、梨子のことなんて呼んだ?」

曜 「えっ、なにさ急に」
248: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 22:04:49.16 ID:xWjiZwZ4
果南 「いいからっ! なんて呼んだ!?」

曜 「いや、だから“梨子さん”だよ?」

果南 「な、なんで“さん”付け?」

曜 「そりゃあ…“一度も会ったことない人”をいきなり呼び捨てとか、ちゃん付けで呼んだりしないよ」

果南 「一度も会ったことない…? 何言ってんの曜」

曜 「いや会ったことないよ! 果南ちゃんだって合わせてくれなかったじゃん」
249: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 22:05:47.18 ID:xWjiZwZ4
果南 「いや、今じゃなくても! 高校時代はずっと一緒だったでしょ!」

曜 「…え? 何言ってるの? 浦の星に、梨子さんなんて人いなかったけど…」

果南 「……は?」

曜 「…うん。今思い出してみたけど、やっぱり私の知り合いに、“梨子”なんて名前の人いないよ。果南ちゃんから初めて聞いたよ」

果南 「そんな…そんなはず…」


果南 (…………そういえば)
250: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 22:06:37.47 ID:xWjiZwZ4
そうだ、千歌が今朝私を起こしに来た時、千歌も同じようなことを言っていた。


千歌 『その、“梨子さんって人”と浮気してたんでしょ?』


果南 「まさか……いや、そんなはず…!」

曜 「寝不足のせいで混乱してるんだよきっと。今日は飲まずに家で…」

果南 「うるさいっ! …そんなはずないんだ。絶対に…!」
251: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 22:08:10.73 ID:xWjiZwZ4
果南 「…そうだ! あの時は!?」

曜 「あの時って?」

果南 「昨日の夜だよ! 梨子に別れようって伝えた日。あのとき曜もバーにいたでしょ!?」

曜 「昨日の夜ならいたけど…」

果南 「別れを切り出して、その後散々で…。曜達、私を励ましに来てくれたじゃん!」

曜 「…いや、私が見たのはひとりで塞ぎ込んでる果南ちゃんだけだよ?」

果南 「…嘘、でしょ」
252: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 22:09:25.31 ID:xWjiZwZ4
曜 「ダイヤさんも鞠莉ちゃんも、誰もその梨子さんって人に会ったことないよ? てっきり、千歌ちゃんにバレないようにわざとそうしてるのかと」

果南 「そんなことない…っ! そんなこと!」

曜 「とにかく、昨日の夜は絶対に見てない。店に入ったら果南ちゃん、頭抱えて塞ぎ込んでるし、話しかけても気付かないし、とにかく酷かったんだから」

果南 「やめてよ…自信、なくなるじゃん…」


曜 「…全部、“妄想”だったりして」


果南 「……ッ!!」
253: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 22:10:08.84 ID:xWjiZwZ4
曜 「ちょ…ちょっと、冗談だよ? 本気にしないでよ」

果南 「でもこの状況…妄想だったら全部辻褄が合うんだよ…! 全部私の勘違いで…」

曜 「…果南ちゃん、本当に大丈夫? どう考えても普通じゃないよ」

果南 「…違うッ!! 私はおかしくなんかない! おかしいのはみんなだよ! 梨子を知らないなんて、そんなことあるわけないッ!!」

曜 「……果南ちゃん」

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ーーーー
ーー
254: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 22:13:51.94 ID:xWjiZwZ4
8TH-DAY 都内のバー 19:10


ダイヤ 「……本当に、千歌さんと別れてしまったのですか?」

果南 「……うん」

鞠莉 「果南、あまり自分を責めちゃダメだよ?」

果南 「いいんだよ。…それより、昨日の話だよ」

善子 「いや、だから昨日の夜は果南1人だったって」

果南 「嘘でしょ…?」

ダイヤ 「従業員の善子さんが仰っているのですから、疑いようがありませんわ」
255: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 22:14:39.31 ID:xWjiZwZ4
善子 「流石に記憶違いなんてしないわよ。一人で来て、一人で帰ってって…。飲んでる時もずっと一人だったわよ」

鞠莉 「曜の言うとおり、寝不足で頭がこんがらがってるのよ」

ダイヤ 「えぇ。昨日の果南さんは特に酷かったですわ」

果南 「私はおかしくなんてない…! もしそうなら、私はここでずっと夢を見てたことになるんだよ!?」

曜 「果南ちゃん、取り敢えず落ち着いて…」

果南 「毎晩の悪夢だけでも散々だっていうのにっ! …っていうか、どっからが夢なのか、自分でもわからなくて…!」
256: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 22:15:22.44 ID:xWjiZwZ4
鞠莉 「それにその…“梨子”だっけ。果南の浮気相手」

曜 「そうそう。なんでも、Aqoursはその娘を含めた9人で活動してたって言い出して…」

果南 「絶対そうだよっ! これだけは絶対に間違いない! だって、私達は9人で…」

ダイヤ 「Aqoursのメンバーは8人でしたわ。梨子なんて名前のメンバーはいませんでしたわ」

果南 「そんな…。…そうだ、写真! Aqoursの集合写真とかないの!?」

鞠莉 「あるけど…結構前だし、ちょっと待ってね。探すから」
257: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 22:16:28.46 ID:xWjiZwZ4
鞠莉 「……あった。もう10年くらい前のフォルダなんて、久しぶりに見たよ」

果南 「…っ! 見せて!」


Aqoursの写真を確認する。

…間違いない。ライブ後の集合写真、練習風景、合宿の記念写真…全てに“梨子は写っていなかった”。


Aqoursは、『8人』だったんだ。


果南 「そんな馬鹿なこと…嘘だよ、嘘だ嘘だ嘘だっ…!」
258: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 22:17:11.42 ID:xWjiZwZ4
ダイヤ 「本当に大丈夫ですか? いくら寝不足とはいえ、流石にそこまで昔の記憶まで捏造してしまうなんて」

果南 「捏造なんかじゃないっ! 私は確かに9人のAqoursの世界を生きてたんだ! みんなの記憶が間違ってるだっ!!」

鞠莉 「……とは言ってもね」

曜 「現に果南ちゃん以外の全員が知らないって言ってるんだもん。流石に信じようにも…」

果南 「嘘……なんかじゃない。私は絶対に梨子を知ってる。本当なんだ…」


あまりの頭痛に耐えきれず、机の上に突っ伏す。…自分でも、なにがなんだかわからない。


善子 「ちょっ…ちょっと、大丈夫!?」
259: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 22:18:30.21 ID:xWjiZwZ4
ダイヤ 「そういえば曜さん、まだ例の悪夢は見続けているのですか?」

曜 「そうなんだよ。昨晩も相変わらずで…」

ダイヤ 「実は私もなのです。…なんというか、何かから必死に逃げるような夢で」

鞠莉 「What's!? ダイヤもなの?」

曜 「私の夢もそんな感じ。逃げるというか、なかなか進めない感じなんだよね」

ダイヤ 「思ったのですが、私たちの見ている夢、全員同じもののような気がするのですが」

善子 「同じ悪夢を見せられてるってこと?」

曜 「……まさか、そんなのありえないよ」
260: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 22:19:32.43 ID:xWjiZwZ4
ダイヤ 「そもそも始まりは、果南さんの浮気でしたわね」

曜 「あれから一週間か。長いような短いような…ねぇ、果南ちゃん」

果南 「あぁ…………うん……」

鞠莉 「これはそうとうHeavyだね…」


ダイヤ 「はぁ…なんだか私まで頭が痛くなってきましたわ。今日はお先に失礼します」

曜 「私も鞠莉ちゃんも明日早いんだよね」

鞠莉 「そうね。…今日はもう帰るけど、果南、大丈夫?」
261: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 22:20:14.37 ID:xWjiZwZ4
果南 「……私はおかしくなんかない。梨子は確かにいたんだ」

鞠莉 「誰にだって記憶違いはあるものよ。今は混乱してるんだから、しばらく休みなさい」

果南 「……もうみんなには聞かない」

善子 「はぁ…相変わらずね。あとは私に任せて、みんなは帰りなよ」

曜 「ごめんね善子ちゃん、大丈夫?」


果南 「……なんで、誰も分かってくれないの…」

ーーーーーー
ーーーー
ーー
262: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 22:21:16.25 ID:xWjiZwZ4
8TH-DAY 都内のバー 19:48


果南 「……一週間、なんだね。あの日から」

善子 「その梨子って人と会ってから?」

果南 「うん…。たった一週間で人生がこんなに変わるなんて、信じらんないよ…」

善子 「悪夢ばっかで、最近よく眠れてないんでしょ? そのせいもあるかも…」

果南 「まさか、善子まで梨子のこと幻とでも言うつもり!?」


果南 「……もうなにがなんだか。本当に私が間違ってるのかな…」
263: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 22:21:54.36 ID:xWjiZwZ4
善子 「…ごめん、呼ばれたからそっち行くね」

果南 「……うん。ごめん」


果南 「そっか…。確か、あの日もこんな感じだったな」

果南 「みんなが先に帰って、ここでひとりで飲んでたら、梨子がやってきて…」

果南 「それなのに、みんな梨子のこと見たことないばかりか、覚えてすらいないなんて…!」


果南 「…………ん? そういえばっ…!」
264: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 22:22:32.93 ID:xWjiZwZ4
2日目…梨子が店にやってきた時。

確かに、梨子のことを“認知している”人物がいたはずだ。だって……


『いらっしゃいませお嬢さん』

梨子 『こんばんはー』


“いらっしゃいませ”…。

つまりこの声の主は、梨子を認知していたことになる。そしてその声の主は…


マスター 「……はい? 何か用でしょうか?」

果南 「…………。」
265: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/12(火) 22:23:02.46 ID:xWjiZwZ4
夢とは、それをいくら信じたいと思っても

消えてしまうものの事である。

―トーマス・マトン
274: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:28:04.71 ID:LxtgLqB0
果南 「お願い…答えてよっ!」

マスター 「えぇっ!? い、今なんと…?」

果南 「だから梨子のことだよ! あんたには見えてたんでしょ!?」


静まり返った店内に、私の声だけが響く。
他の客はとっくに帰っており、店には私とマスター、そして善子だけだった。


マスター 「見えてた…? いやぁその…」

果南 「誤魔化さないでッ! いいから早く質問に答えてよっ!」

善子 「ちょっ…果南!?」
275: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:28:32.08 ID:LxtgLqB0
果南 「他のみんなも…従業員の善子でさえも見てないって言うんだ。なら、マスターにだけ見えたのはおかしいんだよッ!」

善子 「果南、あんたいい加減に…」

果南 「あんたが鍵なんだ! 間違いない!」

善子 「いつまで言ってるの!? いい加減自分が間違ってるって認めなさいよ!」


果南 「……なんで、そんなこと言うのさ…」
276: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:29:10.23 ID:LxtgLqB0
果南 「ねぇ…お願いだよ。見えたって言ってよ。それだけで私は、救われるんだ…」

マスター 「わ、分かりましたって…! はぁ、そこまで仰るなら仕方ないですな」


マスター 「えぇ。私には“見えて”おりました」


善子 「……嘘」

マスター 「えぇ見えておりましたとも。ほのかに桜色がかった長髪に、ミニスカートなんて挑発的な格好…」

果南 「そう…それだよっ! 昨日もいたでしょ!」
277: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:29:52.66 ID:LxtgLqB0
マスター 「えぇ、あなたと大事なお話をしていたようで。…あなた、お好みなんでしょうな、ああいうのが」

果南 「見えてたのか…よかったぁ。ほら、やっぱり見えてたじゃんか!」

善子 「マスター……本当なんですか?」

マスター 「しかし、あなたには驚かされるばかりですな。長く生き残っただけでく、私のことにまで見破るとは」

善子 「ん?」

果南 「いやぁ別に、見破ったってほどじゃ…」
278: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:30:22.83 ID:LxtgLqB0
果南 「…ごめんねマスター。イライラしてて、つい攻撃的になっちゃって」

果南 「まったく…見えない、覚えてないなんてありえないんだよ、善子」

マスター 「そりゃあ覚えてないでしょうし、見えないでしょうな。“普通の人には見えない”訳ですから」

果南 「本当だよ、あははは…」

マスター 「はっはっは……」


果南 「……………………は?」
279: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:30:58.91 ID:LxtgLqB0
マスター 「当然でしょう。彼女はこっちの存在じゃない訳ですから」

善子 「何…言ってるの?」

マスター 「第一あり得んですしな。これだけこの場所に訪れておきながら、かつての仲間たちに一回も姿を見られていないなんて」

マスター 「ま、もうあなたには関係の無いこと。貴方に悪夢を見せるのはもう諦めました」

果南 「“悪夢を見せる”…?」
280: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:31:37.40 ID:LxtgLqB0
マスター 「いやぁ、本当に大した逃げっぷりでしたな」

果南 「……何の話?」

マスター 「……あれ?」


果南 「……私はただ、梨子があんたには見えてたのかって聞きたかっただけなんだけど」

マスター 「えっ、あぁ…そ、そうでしたか。これは失礼」

果南 「…ねぇ」

マスター 「あぁ、お酒ですか? ラムコークですよね。今お持ちいたします…」
281: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:32:06.51 ID:LxtgLqB0
果南 「……ちょっと待ちなよ」


逃げるようにカウンターを後にしようとしたマスターを引き止める。
後ろ姿でもわかるほど、マスターは冷や汗をかいていた。


果南 「…いくつか、聞きたいことあるんだけど」

マスター 「い、いやぁ…どどどうでしょう…」

果南 「あの“悪夢”…自分で勝手に見るもんだと思ってたんだけど…」

果南 「やっぱり、誰かが“見せる”ってこともあるの?」

マスター 「いやぁ、私にはなんとも…」
282: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:32:49.71 ID:LxtgLqB0
果南 「どうなのっ!?」

マスター 「い、いやぁ…どうでしょうねぇ…」

果南 「どうでしょうねぇじゃないよ! …真剣に聞いてるんだよ、こっちは」


果南 「…マスターさっき、色んな事言ってたね」

マスター 「そ、そうでしたっけぇ?」

果南 「言ってたよね?」
善子 「言ってた」
284: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:33:33.72 ID:LxtgLqB0
果南 「……正直に答えて。さっきのは何だったの?」

マスター 「い、いやぁ、何だったんでしょうね」


果南 「…長く生き残ったっていうのは?」

マスター 「言ってないですぅ」

果南 「悪夢を見せるのを諦めたっていうのは?」

マスター 「言ってないですってばぁ」


果南 「ふざけんなッッ!!!」
285: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:34:52.61 ID:LxtgLqB0
果南 「なにか隠してるでしょ絶対。正直に答えろッ!!」

マスター 「い、いや、ですから…」

果南 「なんで私ばっかこんな目に遭わなきゃいけないわけ!?」

マスター 「いや別に、あなただけではないと言いますか…」

果南 「うるさいっ! それに何、そのグラサン!? こっちは真剣なんだ、外しなよッ!」


マスターからグラサンを奪い取る。
…その奥にあった瞳が、初めて私たちの前に晒される。“ソレ”を見て、善子はすかさず悲鳴をあげた。
286: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:35:37.34 ID:LxtgLqB0
善子 「き、きゃぁぁぁぁぁぁっ!!!?」

果南 「あんた…何、その瞳!?」


マスターの瞳は、とても人間のものとは思えないほど、真っ赤に染まっていた。
…私は、その瞳に見覚えがあった。夢の中で私を襲い続けた、化け物の目とそっくりだった。


マスター 「み、見ないでください…っ!」

果南 「あんた、何者!? ここ最近のゴタゴタも、全部あんたの仕業!?」

果南 「答えろ、化け物ッ!!」
287: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:36:32.88 ID:LxtgLqB0
マスター 「……自己紹介致します。私、“トーマス・マトン”と申します」

果南 「トーマス・マトン…?」


マスター 「古来より私は、人類の繁栄のために切磋琢磨しておりました」

マスター 「特に人類の繁栄の障害となるのは、皮肉にも人類そのものでした」

果南 「……何の話?」

マスター 「たとえば、異性の方と煮えきらず、長々付き合ってるカップルがいたとしましょう」
288: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:37:17.59 ID:LxtgLqB0
マスター 「そうした関係が続いてる以上、結婚願望の強い女性の時間を無駄にしてしまうと言いますか」

マスター 「子どもも出来ないわけで、人類繁栄の妨げになる訳です、ハイ」

マスター 「なので女性の貴重な時間を奪い取る殿方には、“アレ”に登っていただいておりまして」

善子 「それって、例の“悪夢”のこと…? マスターがそれを見せてたってこと?」

果南 「でも、私は女じゃんか。どうして」
289: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:38:06.52 ID:LxtgLqB0
マスター 「…健全な思考を持つ女性の時間を浪費させるだけの関係は、未来にとって大きな妨げなんです」

マスター 「それは、同性カップルも同じなわけです」

果南 「同性同士だと、子供ができないから…そう言いたいわけ?」

マスター 「2年前の法改正で、ますます同性カップルは増えましたからな。なにか手を打たんと、少子化はさらに加速するわけです、ハイ」

マスター 「ですから、煮え切らない男性や同性カップルは一旦切り離し、結婚願望の強い異性に再配分するわけです」
290: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:39:01.20 ID:LxtgLqB0
果南 「てことは、結婚する気がない人とか、同性カップルは、人類繁栄の邪魔だから殺してるって訳?」

マスター 「まぁ…乱暴に言えば」

果南 「そんなの信じられるわけないでしょ!?」

マスター 「安心してください。あなたの浮気相手も、もう現れませんから」

果南 「はぁっ!? り、梨子が!?」


マスター 「……彼女は、“夢魔”」
291: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:39:35.05 ID:LxtgLqB0
マスター 「気まぐれに現れては、呪いを受けた人物を次々と誘惑しているわけです。その者の、“理想の姿”でね」

果南 「梨子の姿は、私の理想の女性像ってこと…?」

マスター 「ほら、お相手と別れるのなら、浮気とかでサッパリ切れた方が、次に移りやすいでしょう?」


マスター 「……ま、ここまでが例の悪夢と浮気相手の説明なわけですが、ご理解いただけましたか?」


果南 「……うん。よく分かったよ」
292: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:40:38.76 ID:LxtgLqB0
果南 「…で? 私は何をしたの?」

マスター 「はぁ…?」

果南 「梨子は幻だった訳でしょ!? なら浮気じゃないじゃんか!」

マスター 「えぇぇっ!!? 現実に存在しなくても、気持ちが動いた以上浮気でしょう?」

果南 「勝手にこんなことして…許されるとでも!?」

マスター 「いやぁ、この仕事は人類にとって本当に意味のあるものでして。…あなたが生まれたのだって、お母様を惑わせた男性を私が間引いたからで…」

果南 「はぁっ!?」
293: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:41:45.46 ID:LxtgLqB0
マスター 「まぁ、信じないのでしたらそれでもいいです。ただこの仕事が必要なことであるとご理解いただければそれで…」

マスター 「失恋は辛いでしょうが、ここまで生き残った生存本能の強いあなたなら、すぐに次の幸せを掴めますとも」


果南 「……御託はいい。つまり、結局全部あんたのせいってことだよね!?」

マスター 「あら全くご理解出来てないご様子」

果南 「うるさいっ! どうしてくれるのさ!」

マスター 「事実浮気したのは自分でしょう? そこまで私のせいにされても…」
294: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:42:50.62 ID:LxtgLqB0
果南 「あんたのせいみたいなもんでしょうがッ! それに、私はとっくに結婚の覚悟も決めてた! 同性だとしても、私はあんたが間引いてきた男とは違うんだッ!!」

マスター 「いや覚悟ってそれ、浮気のせいでようやくでしょ?」

果南 「そんなことないッ!!」


マスター 「……はぁ。どうしても諦めないおつもりなら、今晩ちょいと、“本気”をみせなきゃならなくなりますが…」

果南 「はぁ…? 臨むところだよっ!」

マスター 「ですがあなた、間違いなく“死ぬ”と思いますが、宜しいですかな?」
295: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:43:34.17 ID:LxtgLqB0
果南 「……へぇ、死ぬ? なら、先にあんたをここで殺してやろうかっ…!?」


傍にあったアイスピックをマスターの喉元に突きつける。善子がすかさず止めに入ったが、この手をどけるつもりはなかった。


マスター 「や、やめなさいったら…!!」

善子 「果南、いい加減に…!」


カランカラーン


善子 「……客?」
296: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:44:35.06 ID:LxtgLqB0
鞠莉 「カナーン、調子はどう?」

ダイヤ 「はぁ…結局戻ってきましたわ。あんな調子で帰っても、気になって寝れるわけがありませんもの」

曜 「そうそう。さ、果南ちゃん、飲み直そ!」


果南 「……みんな」


ダイヤ 「…何してますの? 喧嘩ですか?」

善子 「みんな聞いて! マスターが…」
果南 「善子ッ!! ……いいの、黙ってて」
297: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:45:26.58 ID:LxtgLqB0
善子 「でも…」
果南 「いいから。…お願い」

果南 「……ごめんみんな。マスターとの話、終わってないから。先に飲んで待ってて」

鞠莉 「それはいいけど…あまり暴れないようにね」

果南 「ありがと、鞠莉」


果南 「……ここであんたを殺しても、なんの解決にもなんないか。今日は勘弁しとくよ」
298: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:46:05.47 ID:LxtgLqB0
果南 「その代わり、もし私が明日生きてたら、私の望み聞いてよね」

マスター 「望み…?」

果南 「もしあんたが本当にアレを見せてるなら、今夜で最後にしてよね」

マスター 「勝っても負けてもどのみち最後ですって」

果南 「私だけじゃないッ!! …曜やダイヤ、他のみんなも全員だよ」
299: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:46:44.14 ID:LxtgLqB0
果南 「それともう一つ……」

マスター 「もう一つ?」

果南 「……耳、かして」


ゴニョゴニョ


マスター 「……む、無茶ですって!!」

果南 「あんた神様みたいなもんでしょ、そんぐらいやってよ!!」

マスター 「わ、分かりましたってば…」
300: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:47:27.40 ID:LxtgLqB0
善子 「ねぇ果南、大丈夫なの!? マスター、今夜絶対死ぬって…」

果南 「安心しなよ。…こんな茶番、一週間も付き合えば十分でしょ」

善子 「果南…」

果南 「それに、ケリつけたいんだ。マスターとじゃなくて、今までの自分と。……じゃ」


善子 「……カッコつけるなら、私じゃなくて千歌の前でにしなさいよ、バカ…」

善子 「それより店長、さっきの話……あれ?」

善子 「き、消えた…? 店長ー…!?」

ーーーーーー
ーーーー
ーー
301: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 22:47:54.91 ID:LxtgLqB0
恋愛は、チャンスではないと思う。

私はそれを意志だと思う。

―太宰治
303: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 23:00:35.81 ID:LxtgLqB0
8TH-DAY 都内のバー 22:45


ダイヤ 「…珍しい、今日はもう帰るのですか?」

果南 「うん。今日はやらなくちゃいけないことがあるんだ」

鞠莉 「さっきのマスターとの喧嘩…もそうだけど、何かあったら私たちにすぐ言いなよ」

曜 「そうそう、ひとりで抱え込むの、果南ちゃんの悪い癖だからね」

果南 「あはは…ごめん」

ダイヤ 「私たちに関しては、小さい頃からそうだったでしょう。どんな些細なことでも、みんなで団結して解決してきたではないですか」
304: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 23:01:06.99 ID:LxtgLqB0
果南 「ダイヤ…」

曜 「今はAqoursのみんなだっている。…千歌ちゃんだって、果南ちゃんの味方だよ」

鞠莉 「全く、いつまでも果南は世話が焼けるなぁ」

果南 「…みんな、ありがとう。私、絶対に明日もここに来るから」

善子 「…とびっきりいいお酒、用意しとくから」


善子 「絶対、生きて帰ってきて」
305: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 23:01:53.48 ID:LxtgLqB0
果南 「…勿論だよ、善子」


曜 「はぁ…。帰ったらまたあの悪夢見るのかな」

果南 「大丈夫、それも今日で最後だよ」

ダイヤ 「どういうことですの?」

果南 「……ううん、こっちの話」


果南 「じゃあ、また明日」

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ーーーー
ーー
306: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 23:03:07.92 ID:LxtgLqB0
9TH-DAY 『???』 00:41


少年 『アンタ、本当に面白いよ。まさかまた会えるとはね』

果南 「うん、私ももう終わりだと思ったんだけどね」

少年 『ここは“カテドラル”よりも更なる高み…“天上”』

果南 「ここを超えれば、真の自由が手に入る…間違いないね?」

少年 『あぁ。…ずっと探してたんだ、君みたいな、見どころある人間』
307: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 23:04:04.32 ID:LxtgLqB0
少年 『滅多に見られない伝説への挑戦に立ち会えて、実に嬉しいよ。まずは、ここまで生きた健闘を称えよう』

果南 「ありがとう…って言っていいのかな、これ」

少年 『僕には君がわからない。なんだって君は、そこまで真剣になれるんだい?』

果南 「どういうこと?」

少年 『君は、なんのためにここまで来たの?』

果南 「決まってるでしょ。…失ったモノを、取り戻すためだよ」
308: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 23:04:32.85 ID:LxtgLqB0
少年 『…やっぱり人間は面白いね。いつどんな者が現れるか、予測がつかない』

少年 『一つ昔話をしよう。…その昔、アンタと同じように、“伝説”に挑んだ男がいた』

果南 「…っ!?」

少年 『彼の名は、“トーマス・マトン”。…そう、この先に待ちかまえている者さ』

果南 「マスター、元はちゃんと人間だったの?」

少年 『伝説に挑んだ後、彼は我々の同胞となり、“ドゥムジ”と呼ばれるようになった』


少年 『ま、今の君には、こんな話関係ないか』
309: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 23:05:03.67 ID:LxtgLqB0
少年 『この場所で、アンタと沢山の言葉を交わしてきたが、まだアンタの命の価値を確定するには足りない』

少年 『だからここで…“最後の審判”とでもいこうか』

果南 「最後の審判…?」

少年 『雰囲気で言ってみただけさ。ここの回答だけで、今後の人生が変わるわけではないよ』


少年 『……さぁ、問おうか』
310: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 23:05:35.07 ID:LxtgLqB0
【第5問】です。


嘘をつく事と、つかれる事、どっちが辛い?

1.嘘をつく事
2.嘘をつかれる事

>>311
311: 名無しで叶える物語(笑) 2017/12/13(水) 23:08:59.66 ID:3ZPVC2Xb
2
312: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 23:13:06.62 ID:LxtgLqB0
【嘘をつかれること】


果南 「……なんか、最後の審判なんていう割には、今までと特に変わらないね」

少年 『いや、今のは前座みたいなものさ。最後の審判に必要な、段階なんだ』

果南 「段階?」

少年 『次が、正真正銘最後の質問だ』


どこからともなく、『最終問題です』という声が聞こえてくる。
いつも通りロープが二本垂らされ、どちらかを選べと催促する。
313: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 23:13:40.86 ID:LxtgLqB0
【最終問題】です。

奔放な生き方と堅実な生き方。
あなたが望むのは、どっちですか?

1.奔放な生き方
2.堅実な生き方
314: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 23:14:07.34 ID:LxtgLqB0
果南 「……私はもう、迷わないよ」


片方のロープに手をかけ、迷わず引く。
その答えに納得したかのように、少年の軽く笑う声が聞こえた。


少年 『ふふっ、アンタならそっちを選ぶと思ったよ』

少年 『これは、決まった答えなど存在しない、経験と直感でしか生き残れない死のゲーム』

少年 『アンタは常に自分の“力”で、明日を掴み続けてきた』
315: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 23:14:49.36 ID:LxtgLqB0
少年 『…僕の役目はここまでだ。アンタはここまでの洗礼に、見事耐え抜いてきた』

少年 『次が本当に最後の試練だ。…本当に、これが最後の戦いになる』

少年 『僕はいつでも傍に居る。…さぁ、上だけ見て進むんだ!!』


果南 「…話長いっての全く。でもありがと」

果南 「私はここで、“答え”を見つけられた気がする。…自分なりのね」
316: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 23:15:32.75 ID:LxtgLqB0
果南 「…さぁ、行こうか」


部屋は音を立て、ロケットのように飛び立つ。
マスターの…マトンの元へ私を連れ出す。

大丈夫、私なら。
だってここは、“私の夢”なんだから。

ーーーーーー
ーーーー
ーー
317: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 23:16:19.27 ID:LxtgLqB0
マトン 「ついに現れましたなぁ」

果南 「こっちのセリフだっての。こんなのに毎晩付き合わせて…今度こそケリつけるからね!」

マトン 「その威勢、いつまで持つか見ものですなぁ!!」


マトンは闇の中に消えていく。
そして再び闇の中から現れた時、姿は一変していた。

巨大な顔のみの姿。目は相変わらずだが、もはやその髪の1片まで、殺意に満ちている。


マトン 「覚悟せいやぁぁぁぁッ!!!」

果南 「本当に最後ってことか…。今更怖気付いてたまるもんか!!」
318: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 23:17:01.23 ID:LxtgLqB0
マトンの攻撃に耐え抜きながら、ブロックの山を登り続ける。


マトン 「はぁっ…はぁっ…! 眺めていた時よりも、実際の方が逃げ足の早い浮気者ですなぁっ!」

果南 「今まで何回登らされたと思ってるの! これくらい、どうってこと…!」

マトン 「なぜそこまでしてッ! 貴様ぁぁぁッッ!!!」


…必死に登り、登り、登って…
どこまで続くかもわからない山を登り続けた。

鐘の音が聞こえる、その時まで。
319: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 23:18:14.76 ID:LxtgLqB0
果南 「……つ、着いた……っ!!」


ついに扉にたどり着いた。
今までのように、上へ続くような扉ではない。

ここは天上…。これより上はない。つまりここは、本当の“出口”だ。


果南 「この扉を開ければ、出られる…!」


扉に手をかけた時、背後から猛烈な殺気を感じた。……トーマス・マトンがそこにいた。
320: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 23:19:18.22 ID:LxtgLqB0
マトン 「はぁっ…はぁっ……ぜぇっ……」

果南 「私の勝ちだよ、マトン!!」

マトン 「許さん…ちゅうか、許されんぞ貴様ァッ!!」

果南 「……あのさ、誰かに許されるとか、許されないとかの話じゃないんだよ。これは」


果南 「私達は…確かに同性同士では、子供は出来ない。人類繁栄の助けにはなれない」

マトン 「ならばッッ!!」

果南 「だからって! …私の気持ちは、誰かが否定できるものじゃないんだ」
321: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 23:19:54.77 ID:LxtgLqB0
マトン 「か、勝手なことをッ!!」

果南 「私は人類繁栄のために生まれたわけじゃない。…それは他のみんなだって同じ」

果南 「決められた責任を、生まれながらに背負うなんて、そんなことがあっていいはずが無い」


果南 「私はただ、ひたすらにッ! “自分のために”!」

果南 「そして、“大切な人のために”生きる!」


マトン 「に、人間風情がッ…!!」
322: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 23:20:26.71 ID:LxtgLqB0
果南 「とにかく、今回は私の勝ち! こっから先は、私の好きにやらせてもらうからねっ!!」


両手で重い扉を力強く押し開く。
今までとは比にならないほどの白い光が溢れだし、私とマトンを照らした。

マトンの体はみるみる石化し、塵とも灰とも分からないものとなり、その姿は光の中に溶けていった。


マトン 「ばぁぁぁかぁぁぁなぁぁぁぁッッ!!」

ーーーーーー
ーーーー
ーー
323: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 23:21:02.81 ID:LxtgLqB0
【最終階層】

Great escape!!

You survived.
324: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 23:21:36.06 ID:LxtgLqB0
9TH-DAY 果南の部屋 08:10


果南 「…………んぅ……ふぁぁ……」


大きなあくびをし、目をこする。
やはり、朝はこのくらい気持ちよくなくてはやってられない。

部屋を見回し、自身の体に触れる。…改めて、生還したことを実感した。


果南 「……よっしゃぁぁっ!!」
325: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 23:22:10.02 ID:LxtgLqB0
…ふと、マスターとの約束を思い出した。
昨日、私はマスターとある約束を交わした。

もし私が生還したら、“彼女”にもう一度会える場所をセッティングして欲しいというものだった。

今から“その時が来る”と思うと、不安で仕方なかった。

いや、今の私ならできる。
あの夢の中で、私が見つけた“答え”を、『彼女』にぶつけるだけなんだから。


果南 「……さぁ、行こうか!」

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ーー
326: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/13(水) 23:23:39.50 ID:LxtgLqB0
第1問:【結婚は人生の始まりだ】+

第2問:【明るく賑やかな部屋】+

第3問:【愛はお金で買える】-

第4問:【所詮はケモノだ】-

第5問:【嘘をつかれる事】-


最終問題:【奔放な生き方】


【エンディング-B に分岐します】
338: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:00:52.53 ID:XCyikXlY
【エンディング-B】

9TH-DAY 都内のバー 12:31


マスター 「しかしまたどうして急に…。こんな無茶な願いを」

果南 「生還したら、会わせてもらえる約束でしょ。…私は真剣なんだよ」

マスター 「ですが彼女は…」

果南 「幻だ…なんて言われても納得出来ないよ。私は確かに、梨子との時間を覚えてる」

マスター 「まぁたしかに、幻というのはこちらの世界での話ですが」
340: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:01:28.09 ID:XCyikXlY
マスター 「まぁ約束は守る主義です。…会わせぬわけにもいきませんな」

マスター 「ただし、もう1度お伝えしておきます。…彼女は“現実”の住人ではない。古より、夢を行き来し、人に悪さを働く…」

マスター 「まぁつまり、これ以上関わるというのなら、身の安全は保証できませんが…」

果南 「脅しはもうたくさんだよ。…早く呼んで」
341: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:02:11.72 ID:XCyikXlY
マスター 「もう、そこに来てますよ。私の役目はここまで。それでは」


果南 「…っ!?」

梨子 「……こんばんは」

果南 「梨子…」


気付けば梨子は、既に私の隣に座っていた。
突然呼ばれたことに驚きながらも平静を装い、ピンク色のカクテルの入ったグラスを指で撫でている。
342: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:02:52.02 ID:XCyikXlY
果南 「…やっと、会えた」

梨子 「今まで何人もの人間を虜にしてきたけど、こんな風に呼ばれたのは初めてです」

果南 「ごめんね、急に呼び出したりなんてして」

梨子 「…話があるんですよね、私に。私のことはマスターから聞いてますよね?」

果南 「うん。…梨子が悪魔だってことも全部」
343: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:03:30.66 ID:XCyikXlY
梨子 「怖くないんですか? 果南さん、相当怖がりだったような気がしましたけど」

果南 「…昔の話でしょ」

梨子 「…果南さん、一度私を拒んだの、覚えてます?」

果南 「覚えてるよ、もちろん」

梨子 「そんなこと聞いてるんじゃないんです。一度拒んでおきながら、なんでこうして呼び出したのかって…。復讐なら、私じゃなくてあのマスターに…」


果南 「話したいことがあるんだ」
344: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:04:35.79 ID:XCyikXlY
梨子 「…謝罪なら、別にいいですよ」

果南 「いや、謝罪のために呼んだんじゃないんだ。…謝りたい気持ちもあるけど」

梨子 「じゃあ何のために? …一応聞きますけど」


果南 「…覚悟、決めたんだ」

梨子 「覚悟?」

果南 「私、梨子と再会して、色々なことに気付けた。世界の誰が敷いたかも分からないレールに気を取られてばっかで、今まで周りが見えてなかった」
345: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:05:14.72 ID:XCyikXlY
梨子 「私のおかげで…?」

果南 「そう。…私はそのレールから外れたくない一心で、自分を押し殺してた」

果南 「それはきっと私だけじゃない。この世界に生きる人みんな、そのレールに縛られてる」

梨子 「レール…ですか」

果南 「でも私、そんな生活は嫌だ。たとえ1人で“群れ”から外されることになっても、自由に生きたいんだ」

梨子 「……自由に?」
346: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:05:51.73 ID:XCyikXlY
果南 「もう、レールの上を走るだけの人生を送るつもりは無い。…はみ出しものははみ出しものらしく、自由に生きることにしたんだ」

梨子 「な、なるほど…。それで、私を呼び出したのとなんの関係が?」


果南 「……結婚しよう、梨子」


梨子 「……………………えっ」

果南 「ダメかな」

梨子 「いや、えっ…ちょっと待ってっていうか…その!」
347: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:06:37.40 ID:XCyikXlY
梨子 「…なんて言いました?」

果南 「結婚しよう」

梨子 「結婚…!? 人間と人間が、永遠に一緒に暮らしていく契約のこと…!?」

果南 「その言い方、悪魔らしいなぁ。うん、それで間違いないよ」

梨子 「で、でも、私と結婚するってことはつまり…」

果南 「人間やめることになる? …ならそれでもいい」
348: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:07:22.21 ID:XCyikXlY
梨子 「……本気ですか?」

果南 「覚悟はもう決まってる。…さっきも言ったでしょ?」

梨子 「でも、結婚は愛し合っている人同士がするものでしょう?」

果南 「……私のこと、嫌いなの?」

梨子 「いや、嫌いじゃないですけど…」


果南 「……一つ、確認したいことがあるんだ」
349: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:08:02.58 ID:XCyikXlY
梨子 「確認?」

果南 「なんで高校時代に、私の前に現れたの?」

梨子 「……っ!!」

果南 「私を惑わすためなら、今現れるだけでもよかったはずなんだ。…なんで、そんな昔から私と関わりを持とうとしたの?」

梨子 「それは……その時暇だったっていうか…」


果南 「……梨子、目閉じて」
350: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:09:07.63 ID:XCyikXlY
梨子 「えっ、どうして……むぅっ…!?」


じれったい。
目を閉じる前に、強引にキスをした。

離れようとする梨子を、手で、体で、押さえつける。梨子の飲んでいたカクテルの味が分かるほど、舌で口の中を掻き回す。


梨子 「……ぷはっ…! はぁっ……ふぁ…」

果南 「……本当のこと、聞かせて欲しい」

梨子 「か、果南さん……」
351: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:09:54.86 ID:XCyikXlY
梨子 「…気になってたんです、果南さんのこと」

果南 「…………。」ニヤニヤ

梨子 「わーっ!! そんな顔しないでくださいっ!!」

果南 「いいから。続けて続けて」

梨子 「……暇な時、人間界を眺めてるんです。そしたらたまたま、果南さんを見つけて」
352: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:10:41.68 ID:XCyikXlY
梨子 「……禁忌とは知りながらも、会いに行っちゃいました。結局2年間も人間界に住んじゃうことになって…」

梨子 「卒業の日、果南さんに想いを伝えて、消えるつもりでした。でも果南さんは…」

果南 「…千歌と付き合い始めた」

梨子 「悔しかったです。…その場で、すぐに消えてしまった方がよかったはずなんです」


梨子 「…でも、それが出来なかった。千歌ちゃんや曜ちゃん、Aqoursのみんなとの時間を、もう少しだけ楽しみたくなったんです」
353: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:11:21.57 ID:XCyikXlY
果南 「……そっか」

梨子 「呪いを受ける人物に果南さんが選ばれた時、運命だと思いました。…大変だったんですよ? 果南さんと過ごす時間ばかり多くなっちゃって」

果南 「ほかの仕事に影響が出たとか?」

梨子 「影響なんてもんじゃありませんよ」


果南 「……でもよかった。分かってもらえて」
354: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:12:04.86 ID:XCyikXlY
梨子 「ちょ、ちょっと! いつの間にオーケーしたことになってるんですか!?」

果南 「一緒にいてくれるだけでもいい。…全部、梨子の好きにしてくれても構わない」

梨子 「でも私人間じゃないんですよ? 色々と問題が…」

果南 「例えば?」

梨子 「例えばってそれは…その、色々ですよ」
355: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:13:01.23 ID:XCyikXlY
果南 「なるほど、問題ないってことだね」

梨子 「どうしてそうなるんですか!?」

果南 「私も梨子が好きだから。…愛し合ってるなら、何の問題もないよ」

梨子 「あ、愛し合ってるからって……」

果南 「……そういえば」


果南 「つい、私“も”って言ったけど」
356: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:13:45.63 ID:XCyikXlY
果南 「私ちゃんと、梨子の気持ちを聞いてないや」

梨子 「えぇっ!?」

果南 「ねぇ聞かせてよ。私はこんだけ言ってるんだから」

梨子 「そんな急に…! えっと……」


果南 「仕方ないなぁ」
357: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:14:25.38 ID:XCyikXlY
梨子を優しく抱きしめる。
梨子の体温を、キスした時よりも感じやすい。


果南 「…ほら、これならいいでしょ」

梨子 「これなら、って……」

果南 「顔を見ながらは、まだ緊張するでしょ」

梨子 「…………分かりました。悪魔を魅了した責任、とってくださいよ?」


すぅっ…と静かに息を吸う音が、間近に聞こえる。軽く深呼吸をした梨子は、手を私の背中にまわし、ぎゅっと力を込めた。
358: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:14:59.22 ID:XCyikXlY
梨子 「私も大好きです。果南さん」

果南 「……大切にするよ。梨子」


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359: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:15:34.29 ID:XCyikXlY
花丸 「…如何でしたか? また会えたずらね」

花丸 「恐ろしい悪夢からの完全脱出! みなさんの力で、果南ちゃんを導くことが出来たずら」

花丸 「ところでこのお話…みなさんは読むだけではなく、途中でとある価値観を問われ続けていたことに気付きましたか?」

花丸 「秩序に従って、堅実な生き方を望むのか。逆に、刺激に満ちた奔放な生き方を望むのか」

花丸 「果南ちゃんを毎晩苦しませたあの悪夢はもしかすると…」

花丸 「果南ちゃんを本心に向き合わせるための、“大人への階段”だったのかも知れませんね」
360: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:16:32.09 ID:XCyikXlY
花丸 「そしてラスト! 意を決して復縁を迫ったのは、なんと悪魔だった梨子ちゃん!」

花丸 「しかも悪魔に“結婚して”なんて…。自由にも程があるずら…」

花丸 「でも梨子ちゃん、嬉しそうだったずら。…そういえば果南さん、こんなこと言ってたっけ」

花丸 「“はみ出しものははみ出しものらしく、自由に生きる”…って」

花丸 「それは紛れもなく、果南ちゃんが悪夢の中で見つけた、自分の答え。だからこそ梨子ちゃんも、それに応えてくれたのかもしれないずらね」
361: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:17:05.64 ID:XCyikXlY
花丸 「さぁ、みなさんはこの結末、どう感じたずら?」

花丸 「果南ちゃん、人間をやめてもいいって言ってたけど、大丈夫…かな?」

花丸 「みなさんも心配…だよね? じゃあ、もう少しだけ、お話の続きを見てみることにするずら!」

花丸 「…ふふっ、お話の世界って、本当にいいものずら。それじゃあ、また会いに来てくれる日まで、待ってるずら~」

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362: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:17:57.33 ID:XCyikXlY
~数週間後~


梨子 「……まさか、悪魔の世界にここまで適応するなんて、驚きです」

果南 「自分でもびっくりだよ。…さすが、悪魔を魅了しただけあるね」

梨子 「自分で言います? それ」


梨子 「…でも事実かも知れませんね。もうどんな悪魔でも、果南さんを認めてますし」
363: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:18:42.14 ID:XCyikXlY
果南 「…でも1番が梨子なのに変わりはないよ」

梨子 「んもぅ…果南さんったら…。あっ、そういえばコレ」

果南 「…? その箱…」

梨子 「こっちの世界に果南さんの家の荷物を運んだ時、見つけたんです」


梨子が取り出したのは小さな箱…。
千歌からいらないと言って渡された、婚約指輪だった。
364: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:19:36.22 ID:XCyikXlY
果南 「……千歌との婚約指輪、“だったもの”だよそれ」

梨子 「うーん…婚約指輪、ですか」

果南 「どうしたのさ、梨子」

梨子 「いや、箱はたしかに立派なんですけど、肝心の指輪が、安っぽすぎるような…?」

果南 「…そんなの今はどうだっていいでしょ」


果南 「今の私には梨子がいるんだ。これ以上望むものなんてないよ」
365: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:20:27.75 ID:XCyikXlY
梨子 「じゃあこれ、捨てときますね」


梨子は指輪を投げ捨てる。
指輪は何回も壁にぶつかりながら、奈落の底へと落ちていく。

微かに光っていた指輪も、ついに闇の中に完全に消えた。


果南 「…………安っぽい、か」

梨子 「別に千歌ちゃんに悪口を言ったわけじゃないですよ? ただ本当にそう感じて…」
366: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:21:04.96 ID:XCyikXlY
果南 「…いいんだよ。どのみち私にはもう必要ないものだから」

梨子 「まぁ千歌ちゃんもそう思ってるでしょうね。どうやら新しい相手も出来そうですし」

果南 「そうなの…?」

梨子 「えぇ。…だから果南さんは、何も気にしなくていいんですよ」

果南 「別に私は気にしてなんか…」
367: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:21:57.33 ID:XCyikXlY
梨子 「優しいんですね、果南さん」

果南 「……お互い様だよ」


梨子の体を包み込むように、抱きしめる。

梨子の体は温かく、とても悪魔の体とは思えない。まるで、まだ悪魔になりきれてない自分に、「焦らなくてもいい」と言ってくれているように感じた。


私は自由だ。だけど、孤独じゃない。

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ーー
368: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/14(木) 20:22:21.26 ID:XCyikXlY
【エンディング-B】『恋に落ち闇に堕ちる』

Fin.
378: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:03:45.27 ID:5AIgmbNJ
第1問:【結婚は人生の始まりだ】+

第2問:【明るく賑やかな部屋】+

第3問:【愛はお金で買えない】+

第4問:【人はケモノとは違う】+

第5問:【嘘をつく事】+


最終問題:【堅実な生き方】


【エンディング-A に分岐します】
379: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:04:13.48 ID:5AIgmbNJ
【エンディング-A】

9TH-DAY 都内のバー 12:31


千歌 「……ねぇ、これってどういうこと?」

果南 「…元気そうでよかった、千歌」

千歌 「そういうことじゃなくて」


千歌 「ここのマスターから連絡があったんだよ? “曜ちゃんが大変だから今すぐ来て”って」

果南 「ごめん、嘘なんだそれ」

千歌 「まぁ見ればわかるよ。…よくマスター、浮気者の手伝いなんてしたね」

果南 「うぐっ…」
380: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:04:47.65 ID:5AIgmbNJ
千歌 「…で? 曜ちゃんもいないし、私は帰るけど」

果南 「待って! …話があるんだ」

千歌 「私にはないよ」

果南 「お願い。……これだけは、聞いてほしい」

千歌 「……はぁ。その真剣な顔、あの時に見せて欲しかったよ」


千歌 「……で、何?」
381: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:05:20.81 ID:5AIgmbNJ
果南 「全部、幻だったんだ」
千歌 「へ?」

果南 「浮気相手なんて、いなかったんだよ! 浮気そのものが、幻だったんだ」

千歌 「な、何言い出したのいきなり!?」

果南 「信じられなくて当然だと思う。…だけど本当なんだ。混乱してて、浮気したと思い込んでたっていうか」

千歌 「今更そんな言い訳…」

果南 「本当のことなんだよ! …全部私の幻覚だって、マスターとかダイヤ達が教えてくれたんだ」
382: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:05:42.40 ID:5AIgmbNJ
千歌 「し、信じられるわけないじゃん…」

果南 「分かってる。でも誤解されたまま終わらせたくなかったんだ」

千歌 「……絶対嘘だよ、そんな…」


曜 「嘘じゃないよ、千歌ちゃん」


千歌 「…! 曜ちゃん。それに、ダイヤさんに鞠莉ちゃんも…どうして」
383: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:06:43.75 ID:5AIgmbNJ
果南 「曜…ダイヤ、鞠莉。ごめん」

鞠莉 「ノンノン、今更水臭いよ果南」

ダイヤ 「本当に世話が焼けますわ」

曜 「まぁ、誰だってこんな話、最初は信じられないよね。まして、語り部が果南ちゃんだもん」

千歌 「ちょっと、どういうこと…!?」

ダイヤ 「果南さんの夢物語の裏付け役…といったところでしょうか」
384: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:07:11.00 ID:5AIgmbNJ
千歌 「まさか、果南ちゃんの言ってることは本当だって言いたいの?」

曜 「そうだよ」

千歌 「…幾ら積まれたの?」
果南 「賄賂とかしてないって!」

鞠莉 「いくら幼馴染だからって、浮気の手伝いなんてしません」

曜 「そうそう。私たちが協力するってことは、果南ちゃんが潔白ってことだよ」


マスター 「あのー…」
385: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:07:41.78 ID:5AIgmbNJ
千歌 「マスター!? どうしたんですか、その顔の傷…」

マスター 「い、いやぁ…昨晩ちょいとね。それより、“幻”の話ですが、私からも説明しなくてはいけないことがいくつかありまして…」

千歌 「ど、どういうこと?」

ダイヤ 「実はですね…」

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ーーーー
ーー
386: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:08:09.46 ID:5AIgmbNJ
果南 「……全部事実なんだ。信じてくれる?」

千歌 「…………うぅ……ひぐっ……」


曜 「千歌ちゃん…だいじょ…」
ダイヤ 「曜さん、行きましょう」

曜 「で、でも…!」

鞠莉 「私たちの役目はここまで、でしょ?」

曜 「……うん」
387: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:08:35.57 ID:5AIgmbNJ
果南 「でも妄想とはいえ、気持ちは浮気してたのは事実。本当にごめん」

果南 「千歌を不安にさせて、本当にごめん」

千歌 「…本当だよ。本当に怖かったんだよ…」


果南 「もう、千歌は私のことを信用してないって思った。もう二度と、私を信じてもらうことは出来ないって思ってた」

果南 「……でも、“コレ”を見て、それは違うって気付いたんだ」


鞄から、小さな箱を取り出す。
千歌から渡された、婚約指輪だ。
388: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:09:10.32 ID:5AIgmbNJ
千歌 「これ、私が要らないって言った指輪…」

果南 「…偽物でしょ、これ」

千歌 「……。」

果南 「取り出した時、やけに軽いなって思った。これ、よくリサイクルショップとかにある安物だよね」

千歌 「……気付いたんだ」

果南 「箱は紛れもなく本物だけど、中身は偽物。これを私に渡したってことはつまり…」


果南 「まだ私を、信じてくれてるってこと」
389: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:09:39.03 ID:5AIgmbNJ
果南 「…まだ持ってるんでしょ? 本物の指輪」


千歌は何も言わなかった。
何も答えず、鞄から別の箱に入った指輪を取り出した。

その指輪は、プロポーズの際に見た時より、いっそう輝いて見えた。

そして指輪には、しっかりと、私と千歌の名前が刻印されてあった。


果南 「…やっぱり。千歌は思い出を大切にする人だもん。せっかくの指輪に、刻印をしないなんて考えられなかったんだ」
390: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:10:10.38 ID:5AIgmbNJ
千歌 「……何さ。一度私を裏切ったくせに、分かったようなこと言わないでよ…」

果南 「ごめん。…本当にごめん」

千歌 「…そうだよ。私はずっと待ってた。おかしいよね、振ったのはこっちだっていうのに」

果南 「ううん。…千歌らしいよ」

千歌 「何それ…」
391: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:10:36.62 ID:5AIgmbNJ
果南 「……千歌。その指輪、私に預けてくれない?」

千歌 「へ…?」

果南 「私、ずっと悩んでた。敷かれたレールの上を走るだけの生き方は嫌だって思ってた」

果南 「でも違ったんだ。敷かれたレールの上だとしても、“どうやって進むか”は私の自由なんだって」

果南 「それを気付かせてくれたのは千歌なんだ。…私は、千歌から色々なものをもらった」


果南 「……だから、指輪は私が渡したい」
392: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:11:17.26 ID:5AIgmbNJ
千歌 「何…言ってるの。果南ちゃん、やっぱりバカだよ」

果南 「勝手なこと言ってるって分かってる。…でも、お願い」


千歌 「………………嫌だ」

果南 「千歌…」

千歌 「だって、指輪は私がはめたいんだもんっ!!」

果南 「……!」
393: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:11:52.69 ID:5AIgmbNJ
千歌はいつも通りの無邪気な笑顔を見せ、べーっと舌を出した。

思わず涙が溢れ出る。だが私も負けじと笑顔に戻し、指輪を奪い合う。


果南 「何をー! 年下のくせにっ!」

千歌 「嫌だ嫌だ! いっつも果南ちゃんばっかりカッコつけて! 私もたまにはそういうことやりたいんだもーんっ!!」
394: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:12:20.48 ID:5AIgmbNJ
曜 「……はぁ、心配して損した」

ダイヤ 「すっかり元通りですわね」

鞠莉 「ううん。…元より、ずっと輝いてる」

曜 「本当…相変わらずのバカップルだよね」


ダイヤ 「……お幸せに。果南さん、千歌さん」

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395: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:14:18.83 ID:5AIgmbNJ
花丸 「…如何でしたか? また会えたずらね」

花丸 「恐ろしい悪夢からの完全脱出! みなさんの力で、果南ちゃんを導くことが出来たずら」

花丸 「ところでこのお話…みなさんは読むだけではなく、途中でとある価値観を問われ続けていたことに気付きましたか?」

花丸 「秩序に従って、堅実な生き方を望むのか。逆に、刺激に満ちた奔放な生き方を望むのか」

花丸 「果南ちゃんを毎晩苦しませたあの悪夢はもしかすると…」

花丸 「果南ちゃんを本心に向き合わせるための、“大人への階段”だったのかも知れませんね」
396: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:14:48.48 ID:5AIgmbNJ
花丸 「そしてラスト! 意を決して千歌ちゃんに復縁を迫る果南ちゃん」

花丸 「こんな夢物語を、千歌ちゃんは信じるのか…。ドキドキしながら見たけど…」

花丸 「どうやら、心配はなさそうずら。いつも通りの千歌ちゃんと果南ちゃんの姿が、そこにはありました」

花丸 「こんなお話を信じるなんて、千歌ちゃん、ちょっと優しすぎるような気もするずら」


花丸 「でも果南ちゃんが言ってた、“敷かれたレールの上だとしても、どう進むかは自由”って言葉」

花丸 「あれは紛れもなく果南ちゃんが自分で見つけ出した答えで、それが千歌ちゃんに伝わったのかも」
397: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:15:18.34 ID:5AIgmbNJ
花丸 「さぁ、みなさんはこの結末、どう感じたずら?」

花丸 「2人とも、このままうまくいくといいんだけど…多分大丈夫だよね」

花丸 「きっとみなさんも気になる…よね? じゃあ、もう少しだけ、お話の続きを見てみることにするずら!」

花丸 「…ふふっ、お話の世界って、本当にいいものずら。それじゃあ、また会いに来てくれる日まで、待ってるずら~」

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398: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:15:53.45 ID:5AIgmbNJ
~数ヶ月後~


曜 「えー…それでは、新郎新婦のご入場です。みなさま、拍手でお出迎えください」


溢れんばかりの拍手と歓声に包まれ、式場に千歌と共に足を踏み入れる。

入場曲のピアノを弾いてくれているのは、梨子ではなく鞠莉。…一瞬、ピアノを弾く梨子の姿が鞠莉に重なる。

…もう二度と会えないその人物に、私はなにかつっかかるものを感じていた。


千歌 「……果南ちゃん」
399: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:16:29.01 ID:5AIgmbNJ
果南 「…? どうしたの、千歌」

千歌 「私今、すっごい幸せ。Aqoursのみんなも来てくれて、私、最高に幸せなんだ」

果南 「Aqoursのみんな……か」

千歌 「……? どうしたの?」

果南 「ううん、なんでもない。私も幸せだよ、千歌」

千歌 「…………うん」

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400: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:17:04.51 ID:5AIgmbNJ
お色直しのため、一度みんなの元を離れる。

スタイリストの方々は、手馴れた手つきでメイクを施す。私は目を閉じて、完成を待ちわびるだけだ。


梨子 『……果南さん、おめでとうございます』


果南 「…っ!? 梨子…!?」

スタイリスト 「すいません、今振り返らないでいただけますか?」

果南 「あっ……すいません」


梨子 『いいんですよ。…今の私に、果南さんと目を合わせて会話をする資格はありません』
401: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:17:57.80 ID:5AIgmbNJ
果南 「…なんでわざわざ来たの?」

梨子 『お祝い、どうしてもしたくて。…あーあ、果南さんの結婚式でピアノ弾きたかったな』

果南 「…ありがとう。今こうして千歌と結婚式を挙げられてるのも、梨子のおかげだと思う」

梨子 『…私は邪魔をしたんですよ?』

果南 「梨子がいなくても、結婚はしただろうけど…。こんなスッキリした気持ちで式は挙げられなかった」

梨子 『果南さん……』
402: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:18:24.54 ID:5AIgmbNJ
果南 「…そうだ、梨子」

梨子 『なんですか?』

果南 「出来るかどうかは分からないけど、やってみて欲しいことがあるんだ」

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403: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:18:54.88 ID:5AIgmbNJ
曜 「続きまして、新郎新婦の思い出を、スライドショーで振り返っていきたいと思います」


曜の合図で、鞠莉がプロジェクターを動かす。


ルビィ 「うわぁ、懐かしい! Aqoursだ!」

花丸 「青春ずら…もう戻らない日々ずら…」

善子 「そういうこと言うのやめなさいよ!」
404: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:19:38.86 ID:5AIgmbNJ
ダイヤ 「…やはりAqoursの“8人”で活動していたあの頃の日々は、忘れられませんわね」

ルビィ 「うん…。……あれ?」

善子 「どうしたのよ、ルビィ」

ルビィ 「いや、スライドショーの音楽、私が用意したものと違うような…」

花丸 「そういえば、ルビィちゃんの用意した音楽はオルゴールだったずら」

善子 「…………? どう考えてもピアノの音色じゃない、これ」

ダイヤ 「それにこれ、録音ではありませんね。生音のような気がするのですが…」
405: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:20:20.30 ID:5AIgmbNJ
果南 「……梨子、できたんだね」

千歌 「…なんだか、懐かしい曲だね」

果南 「千歌…この曲覚えてるの?」


『想いよひとつになれ』

…梨子が作曲した曲だ。だが私以外の誰も、この曲を覚えていない。梨子が存在しないこの世界では、この曲すらも存在していないことになっている。


千歌 「ううん。初めて聴くはずなんだけど…。なんだか、暖かい」
406: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:20:55.66 ID:5AIgmbNJ
果南 「…ある人が、私たちをお祝いするために作った曲なんだって」

千歌 「ある人…? 鞠莉ちゃんとか?」

果南 「ううん。…きっと、千歌は覚えてない人」

千歌 「……どういうこと?」

果南 「今はわからなくてもいい。…いつか思い出したら、私に教えてね」

千歌 「…分かった。覚えとく」
407: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:21:30.12 ID:5AIgmbNJ
曲が終わる頃は、スライドショーもちょうど最後の写真を表示し終えたところだった。

式場にある、ピアノの方に目をやる。

梨子は静かに立ち上がり、式場にいるみんな…そして私と千歌に向けて礼をする。


拍手は鳴り止まないが、おそらくその拍手はスライドショーに向けられたもので、梨子に向けられたものではない。

……梨子が見えているのは、私だけだから。
408: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:22:02.10 ID:5AIgmbNJ
私はただ一人、梨子に向けて拍手をする。

梨子はにっこりと笑い、徐々にその姿を薄くしていき、最後には完全に消えてしまった。


千歌 「……果南ちゃん?」

ーーーーーー
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ーー
409: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:22:36.89 ID:5AIgmbNJ
式が終わり、私と千歌は二次会に向かうためそれぞれ着替えをしていた。

華やかな衣装を脱いでも、自分が夢の中にいるような感覚は消えなかった。
この幸せな感覚は、いつまで残るのだろう。


「あの…少しいいですか?」

果南 「はいはい、どうしたんですか?」

「いえ、先ほど式場の片付けをしていたところ、ピアノの上に手紙が…」

千歌 「手紙?」
410: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:23:09.66 ID:5AIgmbNJ
千歌が手紙を受け取る。

名前が書いていなかったので差出人は不明だが、私にはそれが誰からのものか察しがついた。


果南 「……読みなよ、千歌」

千歌 「えっ、うん…」


手紙を広げ、千歌はじっくりと手紙を読み進める。…次第に千歌の瞳に涙が浮かび始め、ついに零れた。
411: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:23:57.10 ID:5AIgmbNJ
果南 「……千歌、誰から?」

千歌 「……分からない。分からないけど、なんだろう、この気持ち。すっごく嬉しいんだ」

果南 「……何が書いてあったの?」

千歌 「結婚、おめでとうって。この人が誰かっていうヒントは書かれてなかったけど、最初から最後まで、全部私たちを祝福する言葉だった」

果南 「……そっか」


突然、千歌が手紙を持ったまま抱きついてきた。微かに震える手を撫で、優しく抱きしめた。
412: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:24:26.81 ID:5AIgmbNJ
千歌 「私……凄く嬉しい。こんなにたくさんの人に祝福されて、すごく幸せ」

果南 「…それは私も同じ。千歌、私と結婚してくれて、ありがとう」

千歌 「私も、ありがとう。夢みたいな時間だった。…今もだけど」


顔をあげ、千歌は私の目を見つめる。
…何も言わず、瞳を閉じてキスをした。


千歌 「…………愛してるよ、果南ちゃん」
413: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:25:32.02 ID:5AIgmbNJ



果南 「私も愛してる…千歌」


414: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:26:03.63 ID:5AIgmbNJ
【エンディング-A】『祝福の音色』

Fin.
415: 名無しで叶える物語(ささかまぼこ) 2017/12/15(金) 19:29:10.24 ID:5AIgmbNJ
これにて完結となります
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます

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『【SS】果南 「恋にオちる」 千歌 「それは“悪夢”だよ」』へのコメント

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2018年5月26日
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