希「めんどくさい私たち」

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のぞまき-アイキャッチ1
「失礼します…」

 まったく~。えりちってばまた無茶しようとしてるんやから…。あの調子やと廃校を阻止するために孤立しちゃいそうやな~。ここはウチがしっかりクッションになってあげんとな♪

pixiv: 希「めんどくさい私たち」 by 鷹南。

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 …って、およ?音楽室からピアノの音?この時間はだいたい帰ってるはずやし、音楽部も今日は早上がりのはずやんな?もしかして、スピリチュアルな学校七不思議とか!?こっそり中覗いてみよか♪

「…♪」

 うわぁ…綺麗な子やな~。リボンの色からして1年生かな?ピアノも上手やし……お!またなんか弾くみたいやんな。

「ふぅ…」

「愛してる、ばんざ~い…♪」

 歌も上手いんやな~、ふーん。いきなり顔出すっていうのもあれやな。今日はここで聴いとこうかな。ふふん。特等席やん♪

 これがウチが初めて真姫ちゃんを知った日。



 あっ、ちなみに時間忘れて聞き入ってたからそのあとえりちに怒られました♪




 あの子、今日も音楽室おるかな?なんか習慣みたいになっちゃったな~。今のえりちはあんま見てられんし、落ち着きたくてな~……って、誰か他におるみたいやんな?

「すごーいッ!!」

「ヴェェ!!?」

 あれは…穂乃果ちゃん?穂乃果ちゃんもあの子の演奏に惹かれたんかな?

 アイドル?なんのことやろ。…って、あの子出てくるやん!と、とりあえず偶然通りかかった感じに…

「…」

「やっ!お疲れ様!」

「……ふんっ」

「おおふ…」

 なかなかにクールな子やね。これは一筋縄じゃいかんよ~。




 今日はっと…あっ、穂乃果ちゃんもおる。

「もし良かったら遊びに来てよ!」

「か、考えておきます…」

 話がついたみたいやな。とりあえず、お手伝いもあるし神社の方行こか。


 …って思ってたら、あれ西木野さんやんな?結局、穂乃果ちゃんたちのこと気にしてるってことはそういうことやん?ここは、希さんが後押ししたろうかな!

「きゃああああ!!?」

「ふふっ♪」

「んな、なっ、なにすんのよ!?//」

「まだ発展途上と言ったとこやんな」

「はあ?」

「でも、希望は捨てなくて大丈夫や。大きくなる可能性はある!」

「なんの話!?」

「恥ずかしいならこっそりっていう手もあると思うんや」

 …ウチみたいにね♪

「えっ、だから何…」

「分かるやろ?」

 これがウチと真姫ちゃんがまともに話した最初の出来事やったかな?




 何かと絡んでくる変な先輩。いきなり現れてはさらっと後押しをして、まるで先を知っているかのような行動。本当に意味わかんない。

 けれど、私たちμ'sが少しずつ強く、大きくなっていけるように、そして私たちが9人であれるように努力してくれた人。


「私以外お店の場所分からないでしょ?」

「じゃあ、ウチがお供する」

「え?」

「たまにはえーやろ?」

 初めての合宿の時、急にそんなこと言い出した変な先輩。

「こういう組み合わせも♪」

「うぅ…」

 なんとなくみんなとの距離を縮めるのが照れくさかった私は、この時ほどめんどくさいと思ったことはなかった。


「おおっ!綺麗な夕日やね!」

「どういうつもり?」

「別に~!真姫ちゃんは面倒なタイプやな~って!」

「うぅ」

 本当に勘が良いと言うか…

「本当はみんなと仲良くしたいのに、なかなか素直になれない」

「わ、私は普通にしてるだけで…」

「そ~うそう!」

「えっ?」

「そうやって素直になれないんよね?」

 また分かったように口聞いちゃって!

「ていうか、どうして私に絡むの!」

「んー…」

 睨み付けた私に、その先輩は少し困った表情を浮かべて私を見つめる。


「放っとけないのよ。よく知ってるから、あなたに似たタイプ」


「…なにそれ」

 突然の態度の変化に驚いたのも束の間。

「まっ!たまには無茶してみるのもいいと思うよ!合宿やし…!」

 私は近くのスーパーまで黙って後をついていった。


 朝起きると、希はいなかった。希……うん、もう大丈夫。昨日は本当にやられたわ。色んな意味でね…。みんなまだ寝てるし、ちょっと外に出ようかしら。

 外に出て、すぐに気づいた。朝日が上ろうとしている海岸線を見つめる希の姿に。

「おっ!」

 こちらに気づいて笑顔を浮かべる。

「早起きは三文の徳。お日様からたーっぷりパワー貰おうか!」

「…どういうつもり?」

 何回口にしたか分からない台詞。

「別に真姫ちゃんのためやないよ」

 そう言ってまた海を見つめる。

「海はいいよね。見ていると大きいと思っていた悩み事が小さく見える気がする…」

「ねぇ、真姫ちゃん?」

「ん?」

「ウチな?μ'sのメンバーの事が大好きなんよ。ウチはμ'sの誰にも欠けてほしくないの。確かにμ'sを作ったのは穂乃果ちゃんたちやけどウチもずっと見てきた。何かあるごとにアドバイスもしてきたつもり」

「それだけ思い入れがある」

 そう言って少し黙った希。すると、こっちを振り返りまた悪戯な笑顔を浮かべ…

「ちょっと話し過ぎちゃったかも。みんなには秘密ね♪」

 その想いに触れて、私は自然と笑顔になる。

「ふふっ…めんどくさい人ね、希」

「あはは、言われちゃった」

「真姫ちゃーん!希ちゃーん!!」

 振り返ると穂乃果たちがこちらに駆けてくる。静かな雰囲気は消え去り、騒がしくなる。

 もしかしたらこの時から、私は希に対してこの感情が芽生えていたのかもしれない。




 私の夢。μ'sのみんなで何かやりたい。これはこの9人が揃う前から思い描いていたもの。でも、現実はみんなを困らせることに…。

 私の中ではある程度踏ん切りがついていた…なんて嘘になっちゃうかな?また明日から練習を頑張ろう。そう思ってえりちと別れようとした時だった。

「待って!!!」

 振り返るとそこには…

「真姫ちゃん…」

「前に私に言ったわよね?めんどくさい人間だって!」

 咄嗟に誤魔化す私。

「そうやったっけ?」

 すると、真姫ちゃんは私を見据えながら…

「自分の方がよっぽどめんどくさいじゃない」

 あちゃー…。

「気が合うわね。同意見よ」

 すかさず合わせてきたえりちに私は白旗を振った。


 とりあえず、家まで案内して様子を見る…つもりだったのにえりちってば。真姫ちゃんに私の過去も全部知られちゃった。真姫ちゃんとはそんな運命でもあるのかな?

 だったら嬉しいな♪




 希の想いのすべてを知った。ラブソングにこだわってた訳じゃなく、私たちμ'sでやりたいってこと。

 そして、最初から私のことも見守ってくれていたこと。素直に嬉しかった。

「ウチの夢はとっくに…」

「一番の夢はとっくに。だからこの話はもうおしまい。それでえーやろ?」

 本当にめんどくさい人…

「…って希は言うんだけど、どう思う?」

 そんなの決まってるじゃない!

「ふふっ」

 お互いに笑ってスマホを取り出す。

「まさか、みんなを集めるの?」

「いいでしょ!一度くらいみんなを招待しても…」

 そう…

「友達…なんだから♪」

 友達。私にとっても、希にとっても大切で大好きな存在。

 でも、そう言った手前、私のなかで別の感情が渦巻いていることがわかった。




 みんなで作った曲で決勝に進めた!嬉しいな~。でも、決勝が近付くってことはみんなとのお別れも…。ううん!今は全力で決勝に臨まなきゃ!

 にしても、生徒会の仕事も穂乃果ちゃんたちに託してから、それなりに経ったんやな~。月日の流れるのは早いな。

 あれ?音楽室が明るい…。今日は練習無いし、もしかしたら…!

「真姫ちゃ~ん!……って、およ?」

 返事はない。しかし、中に入ってみると理由はすぐにわかった。

「すぅ…すぅ……」

「もう。こんなとこで寝たら風邪引くよ?」

 よく癖でくるくるしてる髪を撫でる。少し反応したけどまた寝息をたてた。

「かけるもんも無いしな~…そうや!」

 そう思って真姫ちゃんの隣に座る。ピアノの椅子って横に長いからいいやん。

「こうやって身体くっつけてたらそんなに冷えんやろ…」

「んぅ…ふふっ……」

「にししっ!ええ感じかな?」

 真姫ちゃんもすっかり丸くなったなぁ。最初はツンツンやったのに……ふわぁ。ウチも眠くなってきたな。少し一緒にお休みしよか。


 んぅ…?ここどこだっけ?ああ…そういえば少しピアノを弾きたくなって音楽室に来て……って、ヴェェ!?

「すぅ……」

「え、え、えぇ?//の、希!?//なんで…」

 本当に意味わかんないッ!なんで希が私に寄りかかって寝てるのよッ!

「ん、んぅ…」

「の、のぞ……」

 いや!起こすのはもったいない……じゃなくて、申し訳ないような!なら、もう少し様子を見た方が…

「んぅ~…ふわぁ~。あっ!真姫ちゃんごめん、寄りかかってもうて。重くなかった?」

「べ、別にッ!というか、なんで希がここにいるのよ!」

「ああ…真姫ちゃんが寒そうに見えたから身体で温めてあげようと…♪」

「なっ…!//」

「本格的な冬は越えたゆうても、まだまだ寒いからな~。しっかり管理せなアカンよ?」

 そう言って笑ってくる希。

 そんな希を見て、なぜか途端に顔が熱くなる。心臓も高鳴る。


 なにこれ?怖い…。


「ん?顔赤いやん…お熱さん出たんかな?」

「さ、触らないでッ!」

「きゃっ」

「あっ…」

 おでこに触ろうとした希の手を払いのけちゃった。ど、どうしよ…

「ご、ごめんな~。ちょっと馴れ馴れし過ぎたかな?」

 違う。私が見たいのはこんな困った笑顔じゃない。でも、なんて言えば…

「じ、じゃあそろそろ帰ろか…?」

 だ、ダメ…!このまま帰しちゃうと後悔する気がする!

「ま、待って!」

「え?」

「えっと…その……」

 何を、何を言えば…

「わ、私は…!」

「希といると調子が狂うのッ!優しくされるとなんかドキドキするし、見つめられてもドキドキするし、ほんと意味わかんないッ!」

「…」

「でも、嫌じゃないの!むしろ幸せな気持ちになるって言うか…って、ちがっ//だから…!」

「希は普通に笑っててよ!作り笑いなんかしないでよ!そんなあなたの顔は見たくないッ!」

 い、勢い任せで言っちゃった。希は…?

「………………ふふっ」

「真姫ちゃん…もしかして、ウチのこと好きなん?」

「…………へ?」

 私が希を好き…?好き…好き……好きッ!?

「ば、ばばば、バッカじゃないのッ!?//勝手なこと言わないでよ!//」

「さっきより顔赤くなってるよ?」

「なっ…///」

「そっか、そっか~!嬉しいな~!」

「だから…!//」

 
 初めて気付いた、希への想いは…


「でも…」


 喜ぶ暇も噛み締める暇も無く…


「ごめんね。私は真姫ちゃんを幸せにすることは出来ないの…」


 始まる前に崩れ去ってしまった…。


「堪忍な…?」


 いつもの口調に戻って見せたその笑顔は、私が見たくない笑顔だった。




 ラストライブを行い、μ'sは解散し。9人の歌の女神は普通の女の子に戻っていく。長いようで短かった1年間は幕を閉じた。

 大学に通い出すのも時間の問題。えりちやにこっちとたくさん遊んで、穂乃果ちゃんたちにエールを送り、私の時間もまた違う刻み方になっていく。

 そんなふわふわした気持ちで買い物を済ませた帰り道。見覚えのある緋色の髪が目に入る。

「…」

 に、仁王立ちしてる…

「ど、どしたん真姫ちゃん?こんなとこで…」

「…聞きたいことがあって」

 なんとなく予防線を張る。

「も~う!またあの時の話?言うたやろ?ウチは真姫ちゃんを幸せにはできんし…」

「好きよ」

「第一……はい?」

「好きよ、希のこと」

 ただ、まっすぐに。なんの躊躇いもなく。

「あっ、いや…だからな……」

「案外、気付いてしまえばこんなものなのね、恋って」

 駄目。答えちゃいけない。この想いは溢れさせてはいけない。

「じ、冗談うまいな~!もし、本気やったとしたらその態度はないんちゃうかな~?淡白過ぎるやろ~」

 これ以上……私は幸せになってはいけない。

「どれだけ他の事を考えてもやってても、脳裏に浮かぶのは希の笑顔なの。淡白なんてあり得ないわ」

「あなたがくれた優しさ、温もり、好きって気持ち。全部私のモノにしたい。それにあなたが私を幸せにするんじゃないの」

 幸せになっては…

「私があなたを幸せにするの。いつも自分の気持ちを隠してしまうあなたを…もう見落とさないように!」

「…」

 はぁ…

「…と、言う感じだけど文句あるッ!?//」


 確かに似た者同士だな、私たち。


「……あは」

「え?」

「あはは」

「の、希?」

「あははははは!」

「ち、ちょっと!何笑ってんのよ!こっちは真剣に考えて…!」


 本当に『めんどくさい』人。


「買い物袋持ったギリギリ女子高生のお姉さんを仁王立ちで待ち受けて、告白とか…!」

「な、なによ!文句あるわけ!?」

「もうちょいシチュエーションとか…にしし」

「あー、もうッ!笑いすぎよ、希!」

「ふふっ…」

「……真姫ちゃん?」

「なーに?」

「ウチ……私、めんどくさいよ?」

「知ってる」

「寂しがり屋だよ?」

「知ってる」

「イタズラいっぱいするよ?」

「知ってる」

「たぶんいっぱい、いっぱい迷惑かけるよ?」

「知ってる…ていうか、そっくりそのままお返しするわよ?」

「参ったなぁ…」

「でしょ?だから、こんなやり取りすらめんどくさいのよ」

「……そうやね」

 買い物袋を後ろに回し、深呼吸。

「早く返事……むっ!?//」

「んっ…」

 先手必勝ってね。最初のイタズラ達成。

「にしし。イタズラ成功やん?」

「なっ、なぁっ//」

 何が起こったのか把握できてない、可愛いこの子に言わなくちゃ。

「真姫ちゃん…」


「私を真姫ちゃんの恋人さんにしてください」


「…」

「えぇ、後悔はさせないわよ♪」

 そう自信ありげに言葉を発した真姫ちゃんの頬に流れた涙は、夕日の光に相まってとても綺麗に見えました。




真姫「ふぅ…」

希「~♪」

真姫「あのさー」

希「何、真姫ちゃん?久しぶりに高校まで突撃してきた恋人さんに対する態度なん?」

真姫「それは、嬉しいけど…//」

希「あらあら?素直やん、真姫ちゃん??」

真姫「うるっさいわね~?//」

希「ひゃー!怒ったー!こわーい!」

真姫「まったく…それで次は何がいいの?」

希「色々聴かせてもらったしな~。ん~…」

希「じゃあ、久しぶりに真姫ちゃんの歌聴きたいかな?」

真姫「う、歌うの?まだちらほら人いると思うんだけど…」

希「スクールアイドルが何を今さら…」

真姫「自分が今違うからってぇー!」

希「じゃあ…」

真姫「無視しないでッ!」

希「愛してるばんざーい!」

真姫「よ、よりにもよってそれ?なんか恥ずかしいんだけど…」

希「前に話したやろ?ウチが真姫ちゃんのファン第1号やったんやもん!穂乃果ちゃんより先に真姫ちゃんの歌とピアノ聴いてたんやから♪」

真姫「ヴェェ…」

希「なんなら一緒に歌う?」

真姫「…ふふっ」

真姫「しょうがないわね、歌ったげる♪」


 卒業前のあの日と同じ、真姫ちゃんに体重を少し預けながら。

 触れてる部分は熱を持ち、温かさを増していく。


真姫「あまり寄りかかり過ぎないでよ?演奏の邪魔になるから!」

希「そう言うて離れたら寂しがるクセに~」

真姫「~~~!!//とっとと準備ッ!//」

希「はーい♪」


 今、確かに感じてるこの温もりはあの日とはまた違う温かさ。

 幸せ…今は強くそれを感じてる。


「んじゃ、ウチ自分のパート歌うから真姫ちゃんはあと全部ね♪」

「ヴェェ!?…あ、愛してるばんざーい……」


おしまい

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