赤い髪のサンタクロース

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ルビりあ-アイキャッチ2
 クリスマス。
 それは親しい相手がいない人にとって、苦痛をもたらすことがあるイベント。

「はぁ」

 私、鹿角理亞はクリスマスが嫌いだった。
 今まで友達もいなかったし、クリスマスなんて姉と一緒にいてくれるぐらいで。

 だけど去年、初めて友達ができた。
 そしてその友達と一緒にクリスマスを過ごした。

「ルビィ……」

pixiv: 赤い髪のサンタクロース by わた

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 去年とは違い、今年は大好きなあの子が函館に来ていない。

 何度も誘おうとした。今年もまた函館に来ないかと。
 だけど人見知りの私とって、ただでさえ高いハードルが、東京と函館という物理的な距離によってさらに高くなり、動けずにいるのだ。

「馬鹿、臆病者」
 自分を罵倒する言葉にはキレがない。

 スマホを開き、メッセージアプリの画面を見る。
 黒澤ルビィの名前と、打ったけど送れずにいるメッセージ。

 姉さまが在学期間中なら一緒に東京へ行けた。だけど最近はそうもいかず、そもそもルビィに会うことすらできていない。

 アプリに表示された前回の会話の日付も、だいぶ前のもの。

 もしかしたら、ルビィは自分の事を忘れてしまったのではないか。
 そしてきっと花丸や善子と楽しくクリスマスを過ごしている。そんな風に考えると、涙が出てきてしまう。

「会いたい、ルビィに会いたい」

 普段は素直になれない私も、1人だったらこんなに感情を表に出せる。
 これを相手に伝えるだけでいいのに、何で出来ないんだろう。理亞はそんな自分が嫌になる。


『ピロン』


 頭を抱えているところで、突然なるメッセージの着信音。

 誰だろう、画面を見てみる。
 同じグループの仲間? 姉さま? 私に連絡をする人なんて限られている。

「あっ」

 私はそこに表示された名前を見て、一気に気分が明るくなる。

 送り主は黒澤ルビィ。内容は、クリスマスパーティのお誘いだった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 沼津の駅へ着くと、ルビィと花丸の姿。

「理亞ちゃん、久しぶり!」

 ルビィは私に気づくと、駆け寄って抱きついてくる。

「ルビィ、元気だった?」

「うん!」

 始めての一人旅。沼津の駅にたどり着くまでは不安で一杯だったけど、ルビィの顔を見た瞬間、その気持ちは吹っ飛んで、安心感に満たされた。

「理亞ちゃん、久しぶりずら」

「花丸、あなたも元気そうね」

 相変わらずほんわかした雰囲気の花丸、癒される。

 しかしもう一人、いつも一緒にいるイメージの人物の姿が見当たらない。

「そういえば、善子はどうしたの?」

「えっと、善子ちゃんは、ネットでのクリスマスミサ? で忙しいみたいで……」

「え、あの娘そんな真面目に信仰とかするタイプだったの?」

 そういえば浦の星はミッションスクールだったと聞いたことがある。

「えっと、そういうのじゃなくて……」

「説明に困るずら……」

 言葉に窮する2人。気になるけど、これ以上追及しない方がいいのだろう。

「あ、でもちゃんとパーティには合流できるみたいだから安心して」

「理亞ちゃんと善子ちゃん、仲良しだもんね」

「何でそうなるのよ」

「だってリトルデーモン10号でしょ?」

「なった覚えないわよ、そんなの」





「うわぁ、凄いわね」

 ルビィたちに連れられてやってきたのは黒澤家。
 大きく、趣のあるお屋敷。その存在感に、思わず圧倒されてしまう。

「ルビィのお家にくるの初めてだよね、理亞ちゃん」

「話には聞いていたけど、立派なお家ね」

「えへへ、そうかなぁ」

 家の中には、既にクリスマスの飾りつけが。

「昨日のうちにね、ルビィちゃんと済ませておいたんだよ」

「へぇ」

 少し一緒に準備したかったな、なんて思ってしまったのは内緒。

「去年もね、マルちゃんと一緒に準備したの。あとね、お姉ちゃんも一緒にいて」

「お姉さんは、今日は帰らないの?」

「うん、東京で綺麗な金髪のお姉さんと仲良くなって、一緒に過ごすんだって。羨ましいよねぇ」

「そ、そうなのね」

 金髪のお姉さんの部分にツッコんだら負けなのだろう、きっと。

「それで今年は寂しいなぁって思ってたの」

「ルビィ……」

 その気持ちはよく分かる。私も姉さまがいなくなって、寂しかったから。

「でもね、理亞ちゃんが来てくれたからむしろ嬉しくなっちゃったよ」

 そんなことを言われたら、嬉しいのは私の方だ。

「それ、お姉さんに言ったら泣かれるわよ」

 だけど素直になれないので、照れ隠しで少し嫌なことを言ってしまう。

「ルビィのお姉ちゃんはやさしいから、それぐらいじゃあ怒らないよ」

「それじゃあ私の姉さまがやさしくないみたいじゃない」

「そ、そんなこと言ってないよ」

「馬鹿にしないで、あんな『ぶっぶー』いうやつより、私の姉さまの方がよっぽどやさしいんだから!」

「そ、そんなことないもん」

 始まる姉自慢の言い争い。お互いに傍を離れても、お姉ちゃんを好きな気持ちは変わらない。

 花丸がニコニコ微笑みながら私たちの方を見ている。
 私たちも争いながらも、顔は笑顔だ。

「ヨハネ、降臨!」

 そんなふうに盛り上がってきたところで、ようやく善子が現れた。

「騒がしいのが来たずら……」

「久しぶりね、善子」

「ヨハネよ!」

 あれから年を重ねたというのに、まるで変わっていない。

 これが彼女の良さなのかもしれないけど、正直痛い、そろそろ誰か止めてあげればいいのに。

「クックック、よく来たわね。この聖なる夜の――」

「黙るずら」

「最後まで言わせなさいよ!」

 文句を言いながらも、素直に座る善子。

「じゃあみんな揃ったし、パーティを始めようか」

「そうだね、善子ちゃん以外で」

「何でそうなるのよ!」

「冗談だよ~」

 盛り上がる3人、この空気を見ていると、函館で一緒に曲を作った時の事を思い出す。

 楽しかった、私にとって宝石のように輝いている、大切な思い出。

 やっぱり私は大好きだった、ルビィたちと一緒に過ごす、この時間が。




「今日は楽しかったねぇ」

「うん」

 夜、ルビィの部屋。
 パーティではしゃぎ過ぎた花丸と善子は既に寝てしまい、私はルビィと一緒にお喋りをしていた。

 色々なことは話した。新しく始めたグループ、統廃合になった後の学校、友達との何気ない日常、東京に出た姉の近状、最近話題のアイドル……。

 話したいことはいくらでもあった、こうして直接会うことが、本当に久しぶりなのだから。

「ルビィね、理亞ちゃんが来てくれるって言ったときから、こうしてお話できるのがずっと楽しみだったんだ」

「私も楽しみだったわ、本当に」

「ふふ、今日の理亞ちゃんは素直だね」

「いつも素直よ――あなたの前だけは」

「そっかぁ、嬉しいなぁ」

 笑いながら、私に寄り添ってくるルビィ。

「来年もまた、一緒にパーティしようね」

「受験生でしょ、私たち」

「少しだけなら大丈夫だよ」

「……それもそうね」

 全国の受験生の皆さんに聞かれたら怒られてしまいそうだけど、私にはそれぐらい、ルビィと会える時間が大切だから。

「ルビィも、函館に遊びに来なさいよ。クリスマスとか関係なくても」

「うん、理亞ちゃんもね」

 笑いあう私たち。
 少し話せていないだけで、不安になっていた私が馬鹿みたいだった。

「じゃあそろそろ寝ようか。明日もまた、遊びたいもんね」

「そうね」

 電気を消し、それぞれの布団にもぐりこむと、すぐに寝息が聞こえてくる。

 眠かったのに、私と話すために起きててくれたのかな。

今日の出来事を思い返す。楽しかった、今までの生きてきた中で一番素敵なクリスマス。

「ありがとう、赤い髪のサンタさん」
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2018年5月26日
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