託された想い

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曜-アイキャッチ12



「じゃあ、明日はよろしくね。明後日には帰ってくるから。」

「大丈夫だよ。身体壊さないように、気を付けていってきなよ。」

「久々に会うんでしょ。ゆっくりしてきてね!」

同学年の仲間たちと、1日だけとはいえしばしの別れを告げ、
私はとある場所へ行くための準備をするために、今日の練習を切り上げた。

早く準備して、会いにいかなくちゃ・・・!


pixiv: 託された想い by アンティークライド

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私、渡辺曜は東京の大学に通う、20歳の大学2年生。

日本を代表する高飛び込みの選手を目指し、日々ここでトレーニングを積み重ねている。

もちろん狙うは、世界選手権優勝やオリンピックでの金メダル!

そう意気込んで、知り合いの全くいない東京の大学に乗り込んできた。

最初は私の実力でも通用するのかって、正直不安ばかりがつきまとっていたけれど、
監督やコーチ、先輩たちからのアドバイス、そして日頃からのトレーニングなどを経て、
ついに9月の日本選手権では、並み居る強豪を抑えて初優勝!

先月行われた国際大会派遣選手選考会でも、大技を決めてバッチリ優勝したよ!

厳しいトレーニングにも音を上げず、コツコツ頑張ってきた甲斐があったなあ・・・。



下宿先のアパートに戻り、待ち合わせの場所に行く準備を始める。

春先の、ちょっとした寒さが残る3月。

国際大会的には4月から行われるダイビンググランプリに向けて、
みんなが最後の調整に入っている時期なんだけど。

明日はどうしても外すことのできない大切な用事があって。

監督も、最低限のトレーニングだけは怠るなよ、と注意してきた上で、
大切な人のためなら行ってこい、って背中を押してくれた。

暦の上では、何の変哲もないただの1日である。

祝日でもないし、何か行事があるわけでもない。

けれど私にとっては、とても大事な日。

その日は、高校時代に出会った大切な人と再会する日なのだ。

沼津の高校を卒業したとき、その人とは別々の道を進むことになった。

別れるのは確かにつらかったけれど、その時に約束したのが、この日の再会。

この日は何があっても、必ず会いに来るから。

そう固く誓って。

多忙な日々を送っているうちに、あっという間に2年の月日は過ぎて。

私たちは、約束の日を迎えることになった。


簡単に荷物をまとめて、バスに乗って待ち合わせの場所へと向かう。

実は大学に入ってからというものの、ずっと練習に明け暮れてたこともあって、
車の免許とか全然取ってなかったんだよね。

そろそろ取りにいかないと、ママからも何か言われそうだなあ・・・。

でも、なんだかんだ言いながらでも、
大会に出る度に応援に来てくれるママには本当に感謝してる。

身内や友達が、現地で応援してくれていると知った時の心強さは相当なものだ。

地元開催の人が好成績を収めやすいっていうのも、最近わかる気がしてきた。

声援が力になるって、こういうことなんだな・・・って。

それがあるからこそ、こうしてトップクラスで戦っていくことができるんだって。

今度、あの人にも私の勇姿を見てもらいたい。

昔はとてもそう言えるレベルじゃなかったけれど、
今なら恥ずかしがることなく、自信をもって誘うことができる気がするんだ。



ゆらりゆらりと揺られて2時間ぐらい経ち、沼津に到着した。

バスを降りた先に見えるものは、見慣れた懐かしい光景。

昨年の同じ日は帰ってくることができなかったから、
これが2年ぶりの里帰りになる。

あ、もちろん、手ぶらで帰ってきているわけじゃないよ。

東京のメジャーなおみやげなんだけど、みんな喜んでくれるといいな。

Aqoursが活動しているときにも東京には何回か行ってるから、
もう飽きられちゃったかもね、エヘヘ。

でも、温かく優しいあの人は、たとえ苦手なものでも受け入れてくれるんだろうなあ。

そういえば高校のときも、
間違えて同じものをおみやげで持っていっちゃったこともあったっけ?

あのときの呆れたような表情は、今でも鮮明に覚えてる。

「またそれなの?この前も持ってきたじゃない。」

とか言われたけれど、それでもきちんと受け取ってくれて。

あの人のことを想うと、昔の懐かしい思い出が次々とよみがえってくる。

それを思い出す度、やっぱり楽しかったんだなあと思う。

早く会いたいな。けれどまずは、ママのところにいかなきゃ。

はやる気持ちを抑えながら、私は自分の家を目指して駆けていく。


「たっだいまー!」

家にたどり着いて早々、大きな声で到着を知らせる。

その声を聴き、1つの足音が家の中からこちらに来るのがわかった。

「おかえり、曜。」

そういってママは優しく出迎えてくれた。

国際大会の選考会の時にも見にきてくれてたけど、それでも1ヶ月ぶりだ。

久々の再会に、テンションが一気に跳ね上がる。

「うわーママ!久しぶりだねー!」

「こら、20歳にもなってはしゃぎすぎよ。
 まったく、そういうところは昔から変わってないわねー。」

「だって1ヶ月も会えなかったんだよ?寂しいに決まってるじゃん。」

「はいはい。いつまで経っても子供のままなんだから。」

「あー!また子供扱いしてー!」

「親からしてみれば、娘が何歳になっても、子供は子供のままなのよ。」

へえ、そういうものなんだね。

まだ親になったことがない私には、それを理解することは難しいんだろうけど。

ママって本当に、大変なんだなあ・・・。

「ほら、今日帰ってきたってことは、明日あそこに行くんでしょ?」

「う、うん。週明けからは強化合宿もあるし、長居はできないけど。」

「ってことは、明日の夕方には帰るってことね?」

「そうだね・・・せっかく帰ってきたのに、なんかゴメンね?」

申し訳なさから、つい謝ってしまう。

「何言ってるのよ。少なくとも、今日は泊まれるんでしょ?
 時間があるときぐらい、ゆっくりしていきなさいよ。」

「うん・・・ありがとう。」

改めて、ママという存在はこれ以上なく偉大なんだなと気付かされながら、
私は2年ぶりの実家を存分に懐かしむのであった。



翌朝。

朝食を済ませた私は、着替えて外出の準備をしていた。

服装の準備、よし。持ち物の準備、よし。

・・・心の準備、よし!

「曜ー、準備できたー?」

下からママの声が聞こえてくる。

「うん!準備できたよー!」

元気に答えて、階段を降りていく。

いよいよ今日は、あの人と再会をする日だ。

2年ぶりの再会だから、いざとなると本当にドキドキするなあ・・・。

玄関前で待ってくれていたママが、私を出迎えてくれる。

「それじゃあ、いこっか!」

「ええ、いきましょう。」

さあ、いこう。待ち合わせをした約束の場所へ。


その場所は、家からは少し遠い場所にあった。

なので、ママの運転でそこに向かう。

未だに免許を取っていない私に、もうちょっと愚痴を言ってくるのかと思ったけど、
ママなりに空気を読んでくれたのか、あえてそこには触れないでくれていた。

「曜、本当に大丈夫なの?」

代わりに、ママは私のことをかなり心配してくれているみたい。

平気だよと言いかけて、私は少し口をつぐんだ。

・・・知らず知らずのうちに、手が震えているのがわかった。

2年も会ってないのだから、相当緊張しているのかもしれない。

何とかそれを抑えようと、多少強引にでも元気に振る舞う。

「大丈夫だって。心配しなくても私は平気だよ!」

「そう?私の杞憂だったかしらね。」

ママはそういうと、それ以上詮索はしてこなくなった。



その場所は内浦のとある山だった。

山の入口近くに車を止め、私とママは歩いて奥の方へと向かう。

少し進んだ先に、その人がいる。

段々進んでいくにつれて、足取りが重くなっていくのが目に見えてわかった。

やはり、本当は会いたくないのかもしれない。

2年間も姿を見せることなく、自分のことだけに邁進していたのだから。

今更会おうとするなんて、そんな資格はないのかもしれない。

それでも、前にいかなきゃ。

「曜。」

ママが声をかけてきた。

「ここから先は、あなたたち2人の領域よ。行ってきなさい。」

そういって私の背中を押す。

つい止まりそうになっていた私は、その助けを得てその場所へと進んでいく。



そして・・・たどり着いた。

目の前に、その人がいる。

なんて言えばいいのだろう。

色んな想いが渦巻いて、言葉にすることができない。

2年ぶりの再会。それが、こんな形で実現するなんて。

わかっていたこととはいえ、その光景には、ただただ心を痛めるしかなかった。

胸に詰まったたくさんの想いを、一度心の奥にしまい込んで。

勇気を振り絞って一言、私はこう伝えた。

「2年ぶりだね・・・梨子ちゃん。」

目の前にいたのは、Aqoursのメンバーの1人にして、私が想いを寄せていた存在―――
桜内梨子ちゃん―――その存在を収めているお墓だった。


事態が発覚したのは、昨年の3月半ばのことだった。

ママからの電話を受けて、私はその事実を知った。

―――梨子ちゃんが、亡くなった。

事故とか事件に巻き込まれたわけではなかった。

原因は・・・衰弱死。

亡くなったとき、梨子ちゃんの身体は異常なまでの栄養失調に陥っていたらしい。

どうしてそうなったのか。

何故、そうなるまで誰も気付かなかったのか。

様々な想いが交錯する中、すぐにでも私は梨子ちゃんの下に駆けつけたかった。

だが、不運にも当時、飛び込みの強化指定選手として強化合宿に招待されていた私は、
それをキャンセルするかどうかの選択を迫られることになってしまった。

梨子ちゃんの下へといきたい。

けれどここで飛躍のきっかけを失えば、次はいつこのチャンスが来るかわからない。

悩みに悩んだ末、私が選んだのは―――飛び込みだった。

そしてそれは、梨子ちゃんの姿を見る機会を、永遠に失うことになってしまった。



そのときの私が選んだ行為は、当然非難を浴びることになって。

私が告別式などに駆けつけなかったことで、Aqoursのみんなとの亀裂も生じてしまった。

善子ちゃんからは、
「なんで告別式ぐらい来られないのよ!?その程度の仲だったってことなの!?
 曜さんにとって、梨子さんは飛び込みより価値のないものだったのね!?」
と電話越しに散々に罵倒されて。

ダイヤさんからも、
『あなたには失望いたしましたわ、曜さん。
 Aqoursの一員だった者として、これほどの屈辱を受けるとは思いませんでした。』
とメールで容赦ない非難を浴びせられた。

私だって、行きたくなくて行かなかったわけじゃなかったのに。

それらの言葉は、私を深く傷つけることになった。

だがそれ以上に厳しい現実を突きつけたのは、千歌ちゃんだった。

梨子ちゃんが亡くなった件以来、私と千歌ちゃんとの交流は『一度もない』。

電話やメールで何かメッセージを送ってくるのならともかく、
一言も口を利きたくないという、事実上の絶縁宣言を突きつけられたのだった。

他の人だったらともかく、昔から家族同然のように付き合ってきた千歌ちゃん。

大学に進学してからもこまめに連絡してきてくれていた千歌ちゃんからのこの行為は、
私の心にこれ以上ないダメージを与えることになった。

結果として、それは飛び込みにも大きく影響を及ぼし、
春先の大会では基本の技すらまともに成功することなく、あっけなく予選敗退。

その次の大会でもダメージが癒えることはなく、予選敗退の日々が長く続いた。

飛び込みをやめようかと思う時期もあった。

梨子ちゃんのいない世界で頑張っても、得られるものなんて何もない。

そう思うあまり、自らの命を絶とうとすることさえ考えたほどだった―――


そんなとき、私の心を救ってくれたのは、亡くなったはずの梨子ちゃんだった。

もちろん現実での話ではない。

とある日に見た、夢の中の話。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「―――ちゃん。曜ちゃん!」

「ん?・・・え・・・り、梨子ちゃん!?」

「そうだよ。久しぶりだね。」

「久しぶりって・・・梨子ちゃん、死んじゃったんじゃ・・・?」

「そう・・・ね。私、頑張ったつもりだったんだけど、耐えられなかった。」

「え・・・た、耐えられなかったって?どういうことなの?」

「そのままよ。曜ちゃんに会うために頑張ったけれど、メンタルが耐えられなかったの。」

「どうして?メンタルが耐えられなかったって・・・。」

「・・・私ね、世界中のピアニストが集まるピアノコンクールに招待されてたの。
 曜ちゃんと同じように、日本を代表するピアニストを目指す上で、
 最大のチャンスをもらえたの。
 もちろん嬉しかったわ。やっとスタートラインに立てるって。」

「すごいじゃん!・・・なのに、どうしてこんなことに?」

「・・・大舞台の重圧に、耐えられなくなったのよ。」

「大舞台の重圧・・・あ!」

「曜ちゃんなら、わかってくれるかな?
 私、昔ピアノコンクールで一音も弾けなかったって話はしたことあるよね?」

「うん。それがトラウマになって音ノ木坂を転校したって話だったよね?」

「そうよ。そして浦の星に来て曜ちゃんや千歌ちゃんたちに出会った。
 その中で徐々に自分の輝きを取り戻すことができて。
 次のピアノコンクールでは無事に弾くことも、成績を残すこともできた。
 ・・・でもね。」

「でも?」

「今回のは世界規模のコンクールで、昔の怖さがよみがえってきたの。
 それまでのコンクールは自分1人でもなんとかやっていくことができたんだけど。
 徐々に周りから受ける声援が、昔のようにプレッシャーに変わっていって・・・。」

「(声援がプレッシャーに・・・その気持ちは、嫌というほどよくわかる。
  私も昔、嫌というほどそれを感じさせられたから。)」

「曜ちゃん・・・ゴメンね。
 私どうしても、あのプレッシャーに打ち勝つことはできなかった。
 せっかく・・・せっかく、曜ちゃんと同じ目線に立てたのに・・・。」

「梨子ちゃん・・・栄養失調だったのは、もしかして・・・。」

「うん。まともにご飯も食べられないほどに、身体が弱っちゃって。
 追い打ちをかけるように大学が長期休暇中だったから、
 地元に帰省している知り合いに相談することもできなくて・・・。」

「・・・そんな状況だったのに、どうして?
 どうして、私に相談してくれなかったの!?
 お互い実績を残すまでは会わないって約束してたけど、死んだら元も子も」

「そんなの、できるわけないじゃない!!!」

「!?」

「できるわけ・・・ない、じゃない・・・。
 曜ちゃんの活躍・・・新聞で、見ていたんだから・・・。」

「梨子・・・ちゃん・・・。」

「だからお願い。曜ちゃんには、もっと輝いてほしい。
 そのためには、私のことを気にしているようじゃダメなの。
 きっと私のことで、ずっと悩んでいるって思っていたから。」

「・・・そりゃそうだよ。そうに決まってるじゃん!
 梨子ちゃんが亡くなったって聞いて、ショックじゃないわけがないでしょ!?
 お葬式にも行けなくて、告別式にも参列できなかった。
 善子ちゃんやダイヤさんたちからの言葉が、どれだけつらかったことか!!」

「・・・よかった。」

「え?」

「私ね、曜ちゃんに嫌われたのかなって思ってた。
 告別式にもこなかったから、手の届かない場所まで行っちゃったのかなって。
 でも、そうじゃなかった。
 曜ちゃんは、ちゃんと私のことを想ってくれていたんだね・・・!」

「・・・当然じゃん。梨子ちゃんのことを、一時たりとも忘れたことはないよ。
 厳しいトレーニングも、並み居る強豪を相手にした時も、決して怯みはしなかった。
 実績を残すことで、きちんと約束を果たして、梨子ちゃんに会いたかったんだよ!」

「曜ちゃん・・・ありがとう。
 その気持ちがわかっただけでも、すごく嬉しい。
 だから・・・。」

「梨子ちゃん、ダメ!それ以上言わないで!」

「ダメよ。最後まできちんと聞いて。
 ・・・だから、私のことは、忘れて?」

「・・・っ!いやだ!そんなのいやだよ!
 梨子ちゃんがいたからこそ、私はここまでやってこられたのに・・・!」

「だからこそ、だよ。
 一度私のことを忘れて、飛び込みで日本を代表する選手になれるように頑張ってほしい。
 そして無事に成績を残して、日本代表として世界に羽ばたいてほしいの。
 もし、そうなってからでも私のことを思い出せるというのなら・・・。
 ・・・私の命日に、お墓参りしてくれないかしら?」

「お墓・・・参り・・・?」

「うん。ちゃんとそこで待っているから。
 だから・・・頑張って・・・応援、しているから・・・。」

「梨子ちゃん?待って!梨子ちゃん、梨子ちゃん!
 いっちゃダメだよ、梨子ちゃん!!!―――」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「梨子ちゃん・・・梨子、ちゃん・・・ううっ・・・梨子ちゃあああん!!!」

それを見た当初は、たとえそれが夢だったのだとしても。

涙を流さない理由は、一切といっていいほどなかった。


あれから1年の月日を経て。

私は・・・梨子ちゃんとの約束どおり、日本代表の一員に名前を連ねることができた。

そして今日は、梨子ちゃんが亡くなってからちょうど1年の命日。

梨子ちゃんのお墓を前に、手を合わせる。

「約束したとおり、日本代表になったよ、梨子ちゃん。」

そう小さく呟くと、どこか遠くから、何かが聞こえる気がした。

「(―――頑張ったね。本当に、ここまでよく頑張ったね、曜ちゃん・・・!)」

紛れもなくそれは、私がいつも探し求めていた梨子ちゃんの声だった。

「(覚えてくれていたんだね。私も嬉しいよ、曜ちゃん。)」

もちろんだよ。どんなときでも、梨子ちゃんのことを忘れることはなかったんだから。

「(あれだけ言ったのに、競技中まで私のことを想っていたの?)」

違う違う!そういう意味じゃなくて!

「(ふふ、冗談よ。)」

まったくもう、梨子ちゃんが言うと冗談っぽく聞こえないから怖いんだってば・・・。

「(でも、来てくれてよかった。
  これで心置きなく、ここを離れることができるもの。)」

え?ど、どういうこと?

「(私ね、曜ちゃんのことが好きだったの。
  だから、死んじゃってからも成仏することができなくて。
  けれど、こうして曜ちゃんは来てくれた。
  これでもう・・・思い残すことはないわ。)」

ちょ、ちょっと待ってよ!

じゃあ梨子ちゃんは永遠に、この世からいなくなってしまうってことなの?

そんなのいやだよ!

やっとの思いで、梨子ちゃんに会うことができたのに・・・!

「(勘違いしないで、曜ちゃん。
  人は必ず死んでしまうものなの。
  でも、誰かがその人を想い続けている限り、その人の存在は生き続けている。
  曜ちゃんが私のことを想ってくれているのなら・・・。
  私はずっと、曜ちゃんの心の中にいるよ。)」

梨子ちゃんは、ずっと自分のことを待ってくれていたんだ。

そう思うと、今までの嬉しい想い、つらい想いが全て溢れ返ってきて。

気が付けば、自分でもみっともないと思うぐらいに、大量の涙がポロポロと流れていた。

涙を抑えることもままならず、いくつもの水滴が顔から零れ落ちていく。

「(じゃあね、曜ちゃん。
  その想いは、これからもずっと、曜ちゃんの心の中で、一緒に・・・。)」



それを最後に、梨子ちゃんの声は二度と聞こえることはなかった。

その代わり、心の中でずっとぽっかりと空いていた穴が、埋まるような気がした。

これが、梨子ちゃんが言っていた、『心の中にいる』ということなのだろうか。

心が満たされていく感覚を覚えながら、私はこう呟いた。

「ありがとう、梨子ちゃん。
 私の心の中で、ずっと・・・ずっと、生き続けてね。」




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