理亞「雪の結晶を探して」

シェアする

理亞-アイキャッチ3
姉様に違う雪の結晶を見せてあげるつもりだった。

姉様にも、みんなにも喜んでもらえるスクールアイドルグループになるつもりだった。

でも、私はまた失敗した。失敗したんだ…。

私、鹿角理亞は…スクールアイドルを辞めた。

pixiv: 理亞「雪の結晶を探して」 by ヅラ○

スポンサーリンク



姉様の卒業後、私はSaint Snowを解散すると正式に宣言した。

新たなグループでスタートを切るための、希望のある解散だった。

それに、私が自立することで姉様を少しでも安心させてあげたかった。

姉様が東京の大学に進学を決めていたからだ。

遠く離れる姉様に心配をかけたくなかったという思いがSaint Snowの解散に繋がったのだった。

しかし、人見知りである私が勧誘など簡単にできるはずがない。

そもそも予備予選まで半年程度しかない中、新メンバーと連携を取り、仲良くなることが出来るのだろうか?

不安が募ることで、夜も満足に眠れない日が続いた。

だが、不安の中迎えた始業式で私を待っていたのは、意外なものだった。

「理亞ちゃん、Saint Snowは解散したんだよね?これからどうするの?」

「私達サポートするから!声かけてねー!」

「あの、新しいグループって私ダンスが好きなんだけど…もし良ければ参加させてもらえないかな?」

「あ、私も!私も歌うのは好きなんだよね。理亞ちゃん、どうかな?」

私が勧誘するまでもなく、同級生や上級生からもたくさん話しかけられたのだ。

もっとも、私は驚きと人見知りなこともあり、「考えておく」と無難な回答しか出来なかったが。

でも、これで人見知りな私にも希望が見えた。

仲良くできるかは…自分次第、頑張るしかない。

明日にも学校で答えを伝えよう。

きっとこれが私の新しい雪の結晶なんだ。

そう思って、私は新しいメンバー二人と新たなグループで大きな一歩を踏み出した。



その後は何もかもが順調だった。

衣装作りや曲作りはメンバーだけでなく、ひいてはクラスメイトまでもが手伝ってくれたし、最初は慣れていなかったダンスも二人はみるみる上達していった。

人付き合いの下手な私とも仲良くしてくれるし、いい仲間と出会えたことが幸せだった。

「待ってて、姉様。私の成長した姿…見ててね」

練習から帰ってきて真っ先に倒れたベッドの上で一人呟く。

これならきっと大丈夫だ、姉様に新しい雪の結晶を見せてあげられる。

そう思っていた矢先の出来事だった。

予備予選の三日前の練習後の帰宅時に――私は階段で怪我をすることになる。

練習後の疲れもあってか、自分の不注意によって足を踏み外したのだ。

幸い酷い怪我にはならなかったが、一ヶ月は派手な動きは絶対に禁止だと言われた。

予備予選に間に合うかどうかは…明白であった。

私は悔しかった。

今の私なら、二人と一緒なら優勝だって夢じゃないと思っていた。

それにラブライブは遊びじゃない…周囲の期待だってある。

また今年も私が失敗したことで結果が出ないのは、姉様は勿論、手伝ってくれたクラスメイトやファンのみんなにとてもじゃないが顔向けが出来ない。

そして何よりも悔しいのは…去年見せて上げられなかった優勝旗を、絶対に姉様に見せることが出来なくなったことだ。

私はまた、失敗したんだ…。

頬に一筋の涙が流れる。

ダメだ、今泣いてしまっては…スマホに二人からこちらに向かうとの連絡が来ていたから。

こんな顔は…二人に見せたくない。

そんなことを考えていると、二人が私の元へ駆け寄ってきた。

二人は私の体のことを心配してくれていたし、優しくしてくれた。

そう、優しすぎるほどに。

二人が私を気遣うことで、さらに「私が失敗したから大会に出られない」ということを強く感じてしまう。

私は優しさに耐えることが出来なかった。

「私、もう…スクールアイドルは出来ない。ごめん、みんな…とにかく今日は帰って」

リーダーとしての不甲斐なさ、私自身の心の弱さから出た言葉だった。

「そんなこと言わないで?大丈夫、今回はダメだったけど来年があるよ」

「そうだよ、仕方ないよ。また来年頑張ろうよ、理亞ちゃん。やめるなんて言わないで」

二人の言葉は、私の無力感に溢れた心にはむしろ酷く、深く、痛く刺さる。

ついにかっとなって声を荒げてしまう。

「来年なんてない!いいから帰って!もう私には…出来ない」

言ってしまってはっと気づく。

私は謝る言葉を探していたが、うまく言葉に出来ずに俯いてしまった。

二人はとても悲しそうな顔をしていた。

「…わかった。帰るね、理亞ちゃん…」

「理亞ちゃん、忘れないで。私達は理亞ちゃんのことをずっと待ってるからね」

そう言い残して二人は帰っていった。

一人残された私は罪悪感に押しつぶされそうになる。

「ごめんなさい…ごめんなさい…」

空を切るだけの言葉は二人に届くはずもない。

その後二人からの連絡はなかった。



そして今日で…怪我が完治して二週間が経つ。

私は未だ練習に顔を出せていない。

最近は授業が終わると真っ先に学校から帰っている。

今日も二人から逃げるかのように急いで学校から出て帰宅している最中だ。

私は…どうしたいのだろうか。

このままずっと逃げるつもりなのだろうか。

言い放ったことへの罪悪感が私の体を蝕んで、二人のことを考えると胸が痛くなる。

しかし謝りに行こうと思っても、体がうまく指示を聞いてくれない。

…既に嫌われていて、声をかけても拒絶されてしまいそうで怖い。

せっかく出来た友達から嫌われるのが怖かった。

私は…私は…。

そんなことを考えながら歩いていると、気がつけば家の目の前まで着いていた。

吸い込まれるようにベッドに倒れこむと、また今日も何もせずに終わるのか…と、無力感が私を襲う。

その時ふと、スマホを覗いた。

思い出したのは…遠く離れた沼津に住むライバルであり友達の…ルビィの顔だった。

ルビィなら…この話を聞いてくれるだろうか。

何かにすがるようにルビィに電話をかける。

お願い…出て!

すると、数回のコールの後、懐かしい声が聞こえてきた。

「もしもし、久しぶりだね、理亞ちゃん!今日はどうしたの?」

ああ、ルビィだ…。

「久しぶりね、ルビィ。あのね、私、わたし、ね…」

私はルビィの声を聞くなり泣き崩れてしまった。



「理亞ちゃん、大変だったんだね。ラブライブの北海道予選に名前がなかったから、私も少し心配だったんだ。どうしたのかなって」

泣き崩れていた私を必死にルビィが宥めてくれた後、今までの全てを私は話した。

その全てをルビィはしっかりと、ひとつひとつ聞いてくれた。

「ルビィ、私は怖いんだ。せっかく出来た友達に…嫌われてしまったんじゃないかって。あんなこと言わなければ良かったってわかってるし、謝らなければいけないこともわかるの。でも最初から拒絶されるんじゃないかって…私は…逃げてるのかな」

私の言ったことにうーん…と少し悩んだような反応をした後、ルビィは話し始めた。

「ルビィね、難しいことはわからないかな。でも、理亞ちゃんの言ってる通りだよ。理亞ちゃんは、逃げてる」

さらにルビィは続ける。

「理亞ちゃん。友達ってね、そんなに難しく考えなくていいと思うんだ。その人といつ出合ったとか、どれくらいの時間を過ごしたとかっていうのは関係ないと思うの。悪いことをしたらごめんなさいして、楽しいことがあれば一緒に笑う。それが友達じゃないかな?」

最後に、まぁこれはお姉ちゃんに昔言われたことなんだけどね、と付け加えていた。

友達…か。

私は…自分のことばかり考えていた。目の前の友達はあんなにも私を心配して、私のことを第一に考えていてくれたのに。

去年失敗したことはもう忘れたと思っていたのに、まだ「失敗しない」ことに縛られていたなんて…。

とても愚かなことをしたと思う。

部屋の時計を見る。

十六時半…走ればまだ練習が終わる直前に学校に間に合う。

「ねえ、ルビィ。私は…二人に許してもらえると思う?」

「大丈夫だよ、理亞ちゃん。謝ったら許してくれるよ。だってそんなに二人のことを大切に思って悩んでるんだよ?きっと二人も同じように理亞ちゃんのことを大切に思ってるよ」

二人も同じように思ってる、か。

「ありがとうルビィ。迷惑かけたわね。また近いうちに連絡するわ。あと…冬休みにでも…そっちに遊びに行くわ。私は、今からやるべきことをやるから。くよくよしてる姿なんて姉様にも見せられないしね」

「ううん、大丈夫。冬休み、楽しみにしてるね!あ、あと…がんばるびぃ!だよ、理亞ちゃん!」

「ありがとう!頑張ってくるわ!」

勇気をくれてありがとう、ルビィ。

私は家から飛び出した。



「はぁ…はぁ…はぁ…いつも通りならきっと屋上で練習をしているはず…」

不安でまた胸に痛みが走る。

いや、そんなことは関係ない!私はもう逃げない。

階段を駆け上がって屋上へ向かう。

頑張るって決めたら、絶対負けないんだ。

出来ないなんて、やんなきゃわからない。

何を選ぶかは自分自身なんだ!

屋上への扉を勢いよく開くと、二人は帰宅する準備をしているところだった。

「あの時はごめんなさい!私、自分のことばかり考えてた…まだ二人とスクールアイドルが…やりたいの。二人ともごめんなさい!」

扉を開いた勢いのままに、私は深く頭を下げた。

二人は私を許してくれるだろうか?また涙が溢れそうになる。

そんな私を二人は…抱きしめてくれた。

「あの時、すぐ来年もあるから大丈夫だなんて言っちゃった私達も悪いと思ってたんだ。そんな簡単に諦めるようなことを言うのは、優勝に向けて一番努力をしてきた理亞ちゃんに失礼だったよね」

「私達は…理亞ちゃんのことをずっと待ってたよ。おかえり、理亞ちゃん。また…私達と一緒にスクールアイドルにならない?」

もう涙は止まることがなかった。

「でもっ、でも…病院で私があんなことを言ったあと、二人からの連絡もなくて…私の事を嫌いになったんじゃないかって思って」

「違うよ。私達が連絡をすれば理亞ちゃんはまた私達に気を使って無理をすると思ったの。大好きなスクールアイドルをやめるだなんて言うほど思いつめてたんだもの…だから理亞ちゃんが自分からここに来てくれるのを待ってたの」

「そうだよ。だから、ね?また……一緒にスクールアイドルをしませんか?理亞ちゃんっ…!」

そう、二人は言ったとおりにずっと待っていてくれたんだ。

私は…私はっ!

「ありがとう…ありがとう…わたし、二人と一緒にまたスクールアイドルがしたい!」

既に胸の痛みはなくなっていた。

私の言葉を聞くと二人はやっぱり泣きながら、でも嬉しそうに笑っていた。

「うん、やろう!ここから再出発しよう!三人で頑張っていこう!」

私が、いや、私達三人で失敗した今を成功した未来に変えたいと思う。

こうして私、鹿角理亞は…再びスクールアイドルになった。

三人の新しい雪の結晶を探しに行こう。

絶対に姉様にも見せてあげるから…待ってて。
スポンサーリンク

シェアする

フォローする

『理亞「雪の結晶を探して」』へのコメント

当サイトはコメントシステムとしてDisqusを使用しています。
コメントの投稿にはDisqusへのアカウント登録が必要です。詳しくはDisqusの登録、利用方法をご覧下さい。
表示の不具合、カテゴリーに関する事等はSS!ラブライブ!Disqusチャンネルにてご報告下さい。

2018年5月26日
Disqusによるクッキー、IP、メールアドレスの利用に同意を求めるダイアログが表示された場合は、内容を確認しチェックボックスにチェックを入れて同意頂ければと思います。
(海外のデータ取り扱いに関する法律が変わる事に対応する為の再確認の様です)