ツバサ「コトリンケージ」

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ツバサ-アイキャッチ3
強く風が吹いている。

少し身を屈め、いつものランニングコースを淡々と走る。

穂乃果「うぅ〜寒い!」

神田明神を起点とする、一周数kmの周回路。

高校時代は、絶望感を覚えるほど長く感じたルートだが、今となっては案外あっさりと走りきれる。

辛かったはずの朝練も、無いと手持ち無沙汰になるもので、辞める機会も無いまま、ずるずると続けている。


穂乃果「よーし、終わり!」


軽くジャンプして、両足で地面を踏みしめると、神社敷地内の茂みに隠した水筒を取りに行く。

水筒を手に取り、さて帰ろうかと顔を上げた瞬間、強い風が吹いた。


「きゃああああぁぁぁーーーー!!」

pixiv: ツバサ「コトリンケージ」 by Cupola

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ーーーーAnother viewーーーー



しまった、やらかした。

調子に乗って長距離飛行なんて始めたのはまずかった。

人の目に留まらず着地できる場所が、意外と見つからない。


だが、目立つのは避けたい。

今の私は、背中に羽根を生やし、丈の短いフリフリのワンピース姿。

勿論、背中をガッツリ露出し、何故か胸元まで開いている。

まるで、アニメの魔法少女のようだ。

羽根はしまえるが、それどうこう以前にこんな恥ずかしい格好を見られたくはない。


本来は、UTXにでも着地してやろうと思っていた。

しかし、今日は全校朝礼。

強制的に1限前に登校させられる。

それでも時間的には早いが、勿論部活の朝練は繰り上げられる訳で。

「少なくとも、私ならもう登校してるわ……」

少数の生徒ならまだ良いが、恐らく半数程度は既に登校していると思われる。

母校の勤勉実直な校風を今ばかりは恨みつつ、安寧を得られる場所を探す。


建物の屋上階?それは駄目だ。営業している店が少ないのだ。

室内を通って出られない。


そうこうしているうち、自らに限界が近いことを察する。

「あっ、やばっ……」

取り敢えず、神田明神の茂みに突っ込もう。

後は全力で誤魔化す!

ちょっと痛いのは我慢する!

目を瞑り、対ショック姿勢。


「んぅ……」

目を開けた先に居たのは、穂乃果さんだった。

ツバサ「きゃああああぁぁぁーーーー!!」



OP〜♪ Wonder zone 〜



ーーーーメイドカフェーーーー

BGM〜♪ 友情ノーチェンジ inst ver.〜



穂乃果「いやー、びっくりしました。まさかツバサさんと出会うなんて。」

高校時代、μ'sの最大のライバルであり、憧れであったA-RISE。

そのリーダーであるツバサさんは、もちろん私の憧れでもある。

高校卒業以来、会っていなかったので、およそ一、二年振りである。


穂乃果「お久し振りです。」

軽く頭を下げる。


ツバサ「ええ、お久し振り。」

ツバサさんも、軽く頭を下げる。

その振る舞いは、今でも貫禄を感じさせる。


穂乃果「でも、まさか……ツバサさんにコスプレの趣味があったなんて」

ツバサ「違うのおぉぉぉーーーー!」


慌てて必死に否定するツバサさん。

その迫真の形相は、まるで子供が駄々をこねるよう。

今は上着を着てコートを羽織っているが、前の服装を知っているとなおさらだ。

その様子が可愛らしくさえ見える。


穂乃果「いや、でも似合ってましたよ。年齢的にも着れるうちに着たいですよね。あっ、でもツバサさんなら……」

ツバサ「だから違うの!というか穂乃果さん、暗に私が子供っぽいって言ってない!?」

ツバサ「せめて穂乃果さん位、おっぱいがあれば……」


ちょっとからかい過ぎたかな。

機嫌を損ねないうちに本題に移ってもらおう。

穂乃果「今日のあの格好も、理由があるんですよね。何があったんですか?」


今日は偶然二人ともお昼の時間が空いていたので、一度解散し、昼食を一緒しに来たのだ。

これはツバサさんの提案で、つまり、そうしてでも話したいことがあるということだ。

ちなみに、このお店もツバサさんのチョイスである。


ツバサ「そうね、これは数日前のことなんだけれど……」



ーーーー 回想 ーーーー

BGM〜♪ Private Wars inst ver. 〜



高校時代、最後の大会であった第二回ラブライブ!。

私達A-RISEは、優勝候補として期待されていて、それなりに自信もあった。

しかし、現実はμ'sに敗れ、予選落ちという結末。

私達A-RISEは、そこで事実上の解散。


幸い私達は成績もそれなりだったので、全員希望の大学に進学することができた。

各々異なる大学を志望していたので、私達は離れ離れになった。

これからは、お互い自分の人生を歩もう、と仲間たちと挨拶を交わし、お互いの目標を語り合った。


あんじゅは服飾デザイナーを目指して、東京の大学へ。

英玲奈は理系の大学に進学。

ロボットの研究開発をしたいんだって。意外よね。……そうでもないか。


けれど、私は、ずっと最後の敗北を引きずっていた。

大学に入学した時も、期待に応えられなかったことで、非難されたり、軽蔑されたりすると思っていた。


しかし、世間は寛容であった。

むしろ、気にも留めていないようであった。

私のことを知っている人も、

「残念だったねー」

と、声をかける程度。

私の思う程、世の中はアイドルだけではなかったようだ。


大学に入学してもうじき2年になる。

私も大分大学生活に慣れてきた。

それと同時に、自分の中に大きく穴が開いたような気持ちを感じるようになってきた。

アイドルを目指してきた3年間は、私には大き過ぎたようだ。

この穴を埋められるものを、私は見つけられずにいた。


そんなときだった。

彼女に出会ったのは。


それが夢か現か、今はよく覚えていない。

「私に、貴女の人生を謳歌させてね♪」

覚えているのは、特徴的な声。


ツバサ「その声、μ'sのことりさんよね?」

ことり?「違うよ。私はことりじゃない。」

ツバサ「でも、見た目も声も、どう見てもことりさんじゃない。」


見紛うはずもない。

私が知るより、多少大人びてはいるが、確かにことりさんだ。

ベージュ寄りの薄い髪色、サラサラのロング、そして、謎のとさかの様なものをつけた髪型。

ふわふわ可愛らしい雰囲気まで、私の知ることりさんと相違ない。


ことり?「貴女は、私を楽しませてくれればいいの。」

意味が分からない。

ツバサ「どういうこと?一緒に遊びにでも行く?」


ことり?「そうじゃなくて!……まあいいや、説明するね?」

ことり?「私には、実体が無いの。だから、他の人と会話したり、触れたりってことができないの。もちろん見ることもできない。」


……待った待った。


ツバサ「私にははっきりと見えてるわよ?しかも話せるし、多分触れるわ。」

ことり?「今、私は貴方に乗り移っている状態なの。だから、貴方にだけは見えるし、話せるの。触れないけどね。」

ほら、と伸ばされた手を、私は握ろうとした。

しかし、その手は虚しく空を切った。


ことり?「ほらね。だから、私は他の人と関係を作れない。だけど、今は貴方に乗り移ることで感覚を共有しているの。」

ことり?「貴方が感じたことは、私も感じるってこと。だから、貴方は私を楽しませてね♪」

あっけらかんと笑う彼女に、私はただただ呆れるばかりであった。

ことり?「あっ、もちろんロハでとは言わないよ。私の能力を貸してあげる。」


狼狽える私に、ことりさん?は身体を重ねるように近づいてきた。

ツバサ「ちょっ、ちょっと……」

その瞬間、私の視界は光に包まれた。


ツバサ「何事?」

少しして、復活した私の視界には、いたく可愛らしい恰好をした私の姿が映った。

そして、背中には大きな羽根が生えていた。


ことり?「あっ、可愛い〜♪」

視界の中のものが、鏡に映る自分の姿と認識するまで、多分に時間が掛かっただろう。


ことり?「飛んでみて?」

ことり?「どこまでも高くジャンプするように。」

ことり?「ごくごく自然に、空を自由に歩くように。」


考える頭も放棄した私は、言われるがまま軽くジャンプする。

すると、普段ならすぐに訪れる、落下の感覚が来ることはなかった。


ツバサ「あっ、凄い、浮いてる!」

地上1〜2mで静止する自分の姿を確認し、上がるテンションのあまり、大きくバランスを崩した。

その結果、私は地面に墜落し、したたかに頭を打つことになった。


ことり?「あははっ、そのうち長距離でも自由に飛べるようになるよ。」


痛む頭をさすりつつ、ふと疑問をぶつける。

ツバサ「そういえば、何で私に乗り移ったの?誰でも良かったんじゃない?」

ことり?「うーん、それは私の勘です♪」

ぱっと見、一番楽しませてくれそうだったから、と彼女は言う。


ツバサ「あとさ、この服どうにかならない?結構恥ずかしいんだけど。」

ことり?「あっ、それは私の趣味だからダメです。」



ーーーー 回想終わり ーーーー

BGM〜♪ 友情ノーチェンジ inst ver.〜



ツバサ「と言うわけで、ここ数日、飛ぶ練習を続け、調子に乗って今に至る、というわけです。」

ツバサ「つまり、あの服は私の趣味じゃないってことを分かってもらえればいいわ。」

ツバサさんは、やりきったという表情で、紅茶に口をつける。


言いたいことは幾つかあるが、取り敢えず。

ツバサさんに会ったとき、ちらと見えた可愛らしい下着。

あれは多分……ツバサさんの趣味だ。



〜数分後〜



穂乃果「つまり、ツバサさんは、そのことりちゃんっぽい人を楽しませてあげたいわけですね」

ツバサ「そうね。せっかく頼ってもらえたのだから、力になってあげたい。」


そのためには、ツバサさんが楽しめばいいってことなのかな?


ツバサ「でも、どうしたらいいのか、よく分からなくて。」

ツバサ「私、高校時代はアイドルの特訓以外にやることがなかったから。」

ツバサ「楽しいことが何か、よく分からない。」

今度はちょっと悲しそうな顔をするツバサさん。

今まで見ることのなかった、表情豊かなツバサさんの様子に、可愛いなあと思いつつ、紅茶を啜る。


あ、そうだ。


穂乃果「ツバサさん、今度の休日、空いてますか?」

ツバサ「ええ、大丈夫だけれど。」

穂乃果「じゃあ、一緒に遊びに行きませんか?」

穂乃果「ツバサさんが楽しめば、ことりちゃんっぽい人も楽しいんでしょう?」

穂乃果「なら、私がツバサさんを楽しませてあげます!」

穂乃果「だから、一緒にデート、行きましょう?」


ぽかんとしてるツバサさん。

大丈夫かな?おーい。

あっ、我に返った。


ツバサ「はっ、ええ、いいわよ、行きましょう。楽しみにしてるわ。」

それじゃあ、また会いましょう、と挨拶を交わし、お店を出る。


代金は、ツバサさんが、年上の意地よ、と言って全額出してくれた。

とにかく、ツバサさんとのデート、しっかり考えておかなきゃ!

そうして私は、鼻歌交じりに帰路についた。



ーーーーAnother viewーーーー

BGM〜♪ sweet&sweet holiday inst ver.〜



ツバサ「あぁーーーー!恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!」


私は頭を抱えて、転げ回りたい衝動に駆られた。

よりにもよって穂乃果さんに!見られてしまった!

穂乃果さんの前では格好良い自分で居たかったのに。

あのときの穂乃果さんの目、完全に痛い人を見る目だった!

そんな目も素敵だったけど……


って、そうじゃなくて!

今度のデートは、しっかりしないと。

ことりさん?(面倒だから次からコトリと呼びましょう)を楽しませるためにも。



ーーーー ゲームセンター ーーーー

BGM〜♪ Shocking Party inst ver.〜



穂乃果「さあ、ツバサさん、あれやりましょ、あれ!」

ツバサさんを引っ張って、連れて行ったのは、ダンスゲームのコーナー。

画面内で降ってくる矢印に合わせて、床の矢印をリズムよく踏むゲームだ。

私、これ得意なんだよね。

ツバサさんもダンス好きだし、楽しんでくれると思う。


穂乃果「あっ、ツバサさんはそっちで。曲は私が選びますね。」

ツバサ「えっ、ええ。でも、私、このゲームやったことないわよ?」

穂乃果「大丈夫ですよ!やってみたら、きっと楽しいです!」


〜1クレ終了〜


穂乃果「うっそでしょ……」

ツバサ「このゲーム、結構楽しいわね!」


1プレイ目こそ、たどたどしさの残るプレイだった。

ゲームのノルマをなんとか達成できるくらい。

それでも、結構上手で驚いたくらいだ。


しかし、運命の2プレイ目。

ツバサさんが、同じ曲をやりたがったので、そのまま同じ曲を入れた。

すると、ツバサさんはダンスを全て覚え、完璧に踊ってみせたのだ。

穂乃果「フルコンボ……」

周りで見ていた人たちも感嘆の声をあげるほどのダンスのキレ。

穂乃果「流石A-RISE……」



〜ひとしきり遊んだ後〜



穂乃果「今日は楽しんでもらえましたか?」

ツバサさんの顔を覗き込む。


ツバサ「ええ、あの子も喜んでくれたと思うわ。ありがとう。」

穂乃果「そうじゃなくて!」

ツバサさんに詰め寄る。

ツバサさんの表情に少し狼狽の色が見える。


穂乃果「ツバサさんは、楽しかったですか?」

少しの間を置き、ツバサさんは微笑を浮かべる。

ツバサ「ええ、とっても楽しかったわ。」

穂乃果「良かったです!」


ツバサ「そうだ、穂乃果さん。」

穂乃果「?」

ツバサ「敬語はもう外してもらえないかしら?」

ツバサ「μ'sは先輩後輩禁止だったのでしょう?」

ツバサ「なら、私もそうして欲しいわ。」


ツバサさんがとっても優しい笑顔を浮かべていたので、私もなんだか嬉しくなった。

穂乃果「はい!じゃなかった、うん!ツバサちゃん!」

ツバサ「ええ、それでいいわ、穂乃果。」

こうして、初めてのデートは成功に終わった。



ーーーー 穂乃果宅 ーーーー

BGM〜♪ 永遠フレンズ inst ver.〜



初デートから、私とツバサちゃんはよく連絡を取るようになった。

時々一緒に買い物をしたり、お茶を飲んだり。

ツバサちゃんは、とっても楽しそうで、私も一緒にいると楽しくなる。

穂乃果「そういえば、コトリちゃんは満足できたのかな?」

ふと独りごちる。

私とツバサちゃんが仲良くなるきっかけを作ってくれたのは、コトリちゃんだ。

本当は、挨拶をして、お礼も言いたいんだけど、ツバサちゃん曰く、ツバサちゃんにしか見えないらしい。


穂乃果「どーにかならんかねぇ〜」



ーーーーAnother viewーーーー

BGM〜♪知らないLove*教えてLove inst ver.〜



ツバサ「どう?コトリ。少しは楽しめたかしら?」

穂乃果と遊ぶようになってから、私は信じられない程の喜びを覚えた。

高校時代、アイドルに熱中していた頃には想像できない程、この世の広さを知った。

私は、もう既に十分幸せだと感じている。


コトリ「うーん、まあ楽しいと思うよ?」


返ってきた言葉は、思ったよりも煮え切らない。

何か不満があるのだろうか?


コトリ「でも、私は人生を謳歌したい、と言ったの。」

コトリ「ただ楽しいだけが、人生じゃないでしょ?」

コトリ「だから、私はまだ、満足できないかな。」


……そうか。私にはまだ、知らないことがあるのか。

それが、良いことなのか、悪いことなのか、私には見当もつかない。

でも、今の幸せだけは、失いたくない。

そう思った。



ーーーーメイドカフェーーーー

BGM〜♪ 友情ノーチェンジ inst ver.〜



ツバサ「ねぇ、穂乃果。今日はどこに行こうかしら?」

見るからにウキウキといった様子のツバサちゃん。

ツバサちゃんはいつも楽しそうなので、私も元気をもらえる。

穂乃果「そうだねー、あっ、新しくできた洋服屋さん行ってみようか。」

良いねー、と笑顔で、ツバサちゃんはオレンジジュースのストローに口を付ける。


穂乃果「そういえば、ツバサちゃんってこのお店好きだよね。」

ツバサちゃんが最初に選んだのもこのお店だった。

それ以降も、このお店に入る頻度は結構高い。


ツバサ「そうなの。このお店のメイドさんで可愛い子がいて。ミナリンスキーっていうの。」

ツバサ「でも最近は来てないみたいね。」

穂乃果「ことりちゃん、今海外留学してるからねー。」


あっ、しまった。反省。

ツバサちゃんはミナリンスキー=ことりちゃんって知らないんだった。


ツバサちゃんは一瞬、えっ、という顔をして、またいつものアルカイックスマイルに戻る。

穂乃果「あれ、あんまり驚かないんだね。」

ツバサ「言われてみればね。声も見た目も雰囲気も、よく似てるわ。」


確かに。むしろあれでバレないと思っている方が不思議だ。

そういえば、最近はことりちゃんと連絡を取れていない。

国際電話は高くつくし、メールや手紙もそう頻繁には交換できない。

ことりちゃんも忙しそうだし。

前に話したときは元気そうだったし、大丈夫だと思う。

今度、ことりちゃんにメールでもしてみようかな。



ーーーーAnother viewーーーー



そっかー、ミナリンスキーって、ことりさんだったのね。

道理で可愛らしいわけだ。

コトリが私の前に現れてから、ことりさんに会っていないのは気になっていた。

コトリがどうしてことりさんの姿をしているのか?

その謎には、まるで手がかりがない。

ことりさんとコトリを会わせれば、何か解るかもと考えていたのだが。

ことりさんが留学中なんて、まるで狙ったようなタイミングだ。



BGM〜♪ NO EXIT ORION inst ver.〜



いや、どう考えても狙いすぎじゃないか?


だって、私とことりさんは、特別縁があるわけではない。

なのに、コトリは、ことりさんの姿で私の前に現れた。

しかも、ことりさんが留学中で、会うことができないタイミング。


コトリの目的は、人生を謳歌する。

とても意味深だ。

嫌な予感がする。


ツバサ「ねえ、穂乃果。」

ツバサ「最後にことりさんと連絡を取ったのはいつごろ?」

穂乃果「んー、2週間前くらいかな。」


2週間前。私がコトリと出会った頃とニアミスする。

さらに嫌な予感が増大する。


ツバサ「穂乃果、今、ことりさんと連絡は取れる?」

穂乃果「えぇー、今向こうは深夜じゃないかなぁ。」


仕方がない。


ツバサ「穂乃果、パスポートはある?今すぐことりさんのところまで……」

穂乃果の腕を取り、外へ連れ出そうとしたその時。


ことり「あっ、穂乃果ちゃ〜ん!」

穂乃果「え、ことりちゃん!?なんで!?」


お店に飛び込んで来たことりさんが、穂乃果に抱きついた。



ツバサ「……は?」



ーーーー 穂乃果宅 ーーーー

BGM〜♪ これからのSomeday inst ver.〜



ことり「というわけで、穂乃果ちゃんにサプライズをする為、事前連絡なしで帰ってまいりました♪」

穂乃果「もー、びっくりしたよー!」


満面の笑みでふわふわオーラを放つことりちゃん。

心なしか前より綺麗になった気がする。


ことり「忙しくてメール返せなくて、ごめんね?」

ことり「急にちょっと早く帰れることが決まって、どうせならサプライズにしようと思ったの。」


ことり「あっ、ツバサさんも、お久しぶりです。」

ツバサ「え、ええ、お久し振り。」

丁寧に向き直ってツバサちゃんに礼をすることりちゃんと、ちょっと狼狽えるツバサちゃん。

なんだか微笑ましい光景だ。



ことり「先にこっちに伺ったんだけど、お母さんに、穂乃果は出掛けてるよ、って言われたから、お店かなって思ったの。」

穂乃果「そっか。海未ちゃんには会った?」

ことり「ううん、まだ。この後で海未ちゃんの家に行くつもり。」

穂乃果「じゃあ、私も一緒に海未ちゃんの家に行こうかな。」


穂乃果「ツバサちゃんはどうする?」

ツバサ「私は遠慮しておくわ。積もる話もあるでしょうし。」

穂乃果「そっか、じゃあまたね!」


ツバサちゃんは後ろ手にひらひらと手を振って帰っていった。



ーーーーAnother viewーーーー

BGM〜♪ ラブノベルズ inst ver.〜



コトリ「だから初めに言ったでしょ。私はことりじゃないって」


危うく暴走するところだった。

ひどく空回りし、脱線した列車を止めたのは、結果としてはことりさんだ。

穂乃果とことりさん。幼馴染という固い絆で繋がれた彼女たちに、立ち入ることのできない信頼を見せつけられた。


ツバサ「……むぅ。」

コトリ「不機嫌そうだね。」


つくづく自分が嫌になる。

穂乃果の笑顔を喜んでいるのに、こんなにも穂乃果の全てを欲してしまう。


コトリ「まあ、いいんじゃないかな。楽しくなってきそうだし。」

コトリ「私は貴女の味方だからね。応援してるよ。」


ツバサ「うん、ありがと。」



ーーーーーーーーーーーー

BGM〜♪ Love marginal inst ver.〜



これから私は、一世一代の大舞台に立つことになる。

緊張感。まるで高校時代に戻ったかのよう。

「……ふぅ」

でも、この恐怖と不安は、今までに感じたことのないものだ。

拒絶されるのではないか、という恐怖。そして、自分は正常なんだろうか、という不安。

いや、最早正常ではないのだろう。


覚悟を決めて、私は一歩踏み出す。



ツバサ「……穂乃果」

穂乃果「……ツバサちゃん」



穂乃果「思えばここから始まったんだ。私たちの関係は。」

夜の神田明神。かろうじて電灯の明かりが入ってくるが、人の気配を感じない、神聖な空間。

ここで、私達は出会い、私の人生は変わった。

私の知らないたくさんの楽しみを、教えてくれた。

でも、今はそれだけじゃない。


ツバサ「穂乃果には、知らなかった楽しさを、たくさん教えてもらったわ。」

ツバサ「でも私、結構独占欲が強いみたい。」

ツバサ「今は、楽しさだけじゃ満足できないの。」

ツバサ「穂乃果の全てを、私にください。」


永遠とも思える、ひとときの間。


穂乃果「私も、言いたいことがあるの。」

穂乃果「私も、ツバサちゃんと居られることが楽しかった。それが幸せだった。」

穂乃果「でもね、それはコトリちゃんの為なんだって思ってた。」

穂乃果「コトリちゃんの願いが叶ったら、もうツバサちゃんとはこれ以上近づけないのかなって。」

穂乃果「でも、諦められなかった。」

穂乃果「私も、ツバサちゃんの全てが欲しい。」



ーーーーーーーーーーーー

ED〜♪ まほうつかいはじめました!〜



穂乃果「わわ、すごい!本当に飛んでる!」

ツバサ「あ、あんまり動かないで!」


私は今、ツバサちゃんに抱えられて、空を飛んでいます。


穂乃果「ねえ、コトリちゃん。」

コトリ「どうしたの?」

穂乃果「えへへ、楽しいなって。」

コトリ「そうだね。」


ツバサちゃんに通訳してもらって、私はコトリちゃんと話しています。


穂乃果「私、コトリちゃんにずっと言いたかったの。ツバサちゃんと出会わせてくれて、ありがとう。」

ツバサ「私からもお礼を言うわ。穂乃果と会わせてくれて、そして、ずっと味方でいてくれて、ありがとう。」


コトリ「そんなの、こちらこそだよ。」


ツバサ「コトリ、悪いけど、少しだけ目を瞑っててもらえるかしら?」

コトリ「ふふっ、いいよ。」


ツバサちゃんがこちらに顔を向ける。


ツバサ「これは証。貴女の全てが、私のものっていう証。」


そういうと、ツバサちゃんは、私の唇に、軽く口づけをした。

ツバサちゃんの顔がみるみる紅潮していく。

私も多分、顔が真っ赤であることだろう。


ツバサ「これ以上は後でね。じゃないと落ちちゃうから。」


そして、私達はその晩、長い空中遊泳を楽しんだのだった。





ーーーー 終わり ーーーー


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2018年5月26日
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