善子「特別」

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ようよし-アイキャッチ3


善子(今日は曜さんの家で衣装作りのお手伝い)

善子(先輩の家に、それも二人っきりでお邪魔するなんてこと早々ないから緊張するかと思ったけど)

善子(着いて早々製作モードに入った曜さんに付き合っていると、そんなことを考える余裕もなかった)

善子「曜さん、それ取ってくれる?」

曜「ねえ、善子ちゃん」

善子「なに? 手伝ってあげてるんだから早くしてよね」

曜「善子ちゃんって、私のこと嫌い?」

pixiv: 善子「特別」 by あめのあいまに。

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善子(え、どうして突然そんなこと言うわけ?)

善子(作業も一段落して気が抜けたから、ついつい生意気な口利いちゃったけど)

善子(でもでも、こんなの普段通りじゃない)

善子(それとも……もしかして普段からそういう風に思われてたのかしら)

善子「き、嫌いなわけないじゃない。曜さんだってヨハネの大切なリトルデーモンの一人なんだから」

善子「どうして唐突にそんなこと言い出したの」

曜「だって……」

善子「だって?」

曜「善子ちゃん、Aqoursのメンバーの名前呼んでみて」

善子「ちょっと、意味わかんないわよ。それより私の質問に」

曜「いいから」

善子(うっ、ちょっと怖い。怒ってる……わけではないんだろうけど)

善子(曜さんって結構目力強いから、真剣な眼差しで見つめられると思わずたじろいじゃうのよね)

善子(まあ、堕天使の沽券に関わるし、そんなこと口には出せないけど)

善子「ええっと、リリーでしょ。マリーでしょ」

善子「それにルビィ、ダイヤ、果南」

善子「ずら丸、千歌、曜さん。これで満足?」

曜「ほらあ。やっぱり嫌いなんだ。私は善子ちゃんに嫌われちゃってるんだー」

善子「ええ……意味分からないんだけど」

曜「だって、だってぇ」

善子「お願いだから、一から説明してもらえる?」

曜「うん……」





曜「――ということなんだよね」

善子「つまり、他の人は皆あだ名か呼び捨てで呼ばれてるのに、自分だけさん付けなのが納得いかないってこと?」

曜「その通り! 説明ご苦労であります」ヨーソロー

善子「殴るわよ? というかめちゃくちゃ元気じゃない。さっきまでの落ち込みようはなんだったわけ?」

曜「あはは、あれは善子ちゃんをちょっとからかってみようかなーって」

善子「……帰る」

曜「わー、待って待って! 私ももっと善子ちゃんと親しくなりたいって言うのは本当なの。ふざけたのは謝るからさ」

善子「そんな、心配しなくても私たちは仲良……永遠に解けない契約を交わした特別な関係でしょ」

曜「え? 今仲良しって言った? もう一回、もう一回言って!」

善子「言ってない! 言ってないから」

曜「なっかよし! なっかよし! 私と善子ちゃんは仲良し!」

善子「ええい、うるさい!」

善子(もう、なんなのこの先輩は。水泳してるときや踊ってるときは、まあ格好良くなくもないかなって思わなくもないけど)

善子(こういうときの曜さんは本当全てを台無しにする子供っぽさね)

曜「大体さー、おかしいと思わない?」

善子「……何がよ」

曜「だって同じユニットの鞠莉ちゃんや梨子ちゃんはともかくさ、果南ちゃんやダイヤさんのことも呼び捨てなのに」

善子「また振り出しに戻るわけ?」

曜「やっぱり、善子ちゃんは私のことなんて……」ウルウル

善子(これもどーせ嘘泣きなんでしょうけど。でも)

善子「分かったわよ。分かった」

善子「呼び方を変えるのは無理だけど、それ以外なら出来るだけ曜さんの望みを聞いてあげるから」

曜「ほんと!? それじゃあ」パアァ

善子(本当、敵わないわね。この先輩には)



善子(で、呼び方で親しみを感じるのが無理ならということで、結局休日に遊ぶことで親しさを実感することになったわけだけど)

善子(なんか釈然としないわね。普段はあんまり親しくないみたいじゃない。そりゃまあ、素っ気ない態度を取ることも多いけど)

善子(帰りだって一緒のことが多いし、親しくなかったら手伝いなんてしないのに)

善子(というか……来ないわね)

善子(ごめん遅れるって連絡がさっきあったから、事故とか病気ってわけじゃないんでしょうけど)

曜「おはヨーソロー!」

善子「遅い!」

曜「ごめん、ごめん。寒くてなかなか思うように動かなくてさ」

善子「そんな古い石油ストーブみたいなこと言っても駄目。その寒空の下で待たされる方は堪ったもんじゃないんだから」

曜「うう、そうだよね。ごめんね」

曜「お詫びにハグして温めてあげる!」ギュー

善子「ちょ、苦しいからやめなさい。というかキンキンに冷えた服で抱きつかれても温かくないから! むしろせっかく温めた服の中の空気が逃げて寒いから」

曜「あ……ごめんね。私、善子ちゃんとデートだって思ったら浮かれちゃって」

善子「デ……って、ただ遊びに行くだけでしょ。そんなに気合い入れなくても」

曜「いやいや、可愛い後輩と二人きりでお出かけ。気合いも自然と入っちゃうよ」

善子「その割には遅れてきたけどね」

曜「うっ……その点については面目次第もございません」

善子「嘘嘘。気にしてないから」クスクス

善子(なんだか曜さんってコロコロと表情が変わって飽きないわよね)

曜「あ、今善子ちゃん笑った」

善子「なに? 私が笑っちゃいけない? 鬼の目にも涙、堕天使の顔にも笑いよ」

曜「その喩えはよくわからないけど……笑った顔は可愛いなって」

善子「へ?」

曜「いやいや、もちろん普段の善子ちゃんも美人で大人びて素敵だけど、こう笑って少し張り詰めたものが崩れるというか隙ができた時がね、ああとっても可愛いなあって」

善子「な、なに言ってるのよ。そんなお世辞なんか並べたってこの堕天使の心をはまま惑わされたりしないんだから」

善子(~~! 突然何を言い出すの、この人は)

善子(はっ! 精神攻撃ね。そうやってヨハネにダメージを与えて優位に立とうってわけ?)

曜「まあまあ落ち着いてよ。可愛いのも美人なのも本当だから、自信持って。って私に言われても当てにならないかもしれないけど」

善子「ふ、ふん。自信なんて言われるまでもなく溢れんばかりに持ち合わせているわよ。なんたって私は神すら嫉妬する美貌のせいで地上へと堕とされた」

曜「堕天使さん、だもんね」

善子「台詞取らないでちょうだい」

曜「ごめんごめん。それじゃ行こっか……ふぁ~あ」

善子「……なんだか眠そうね」

曜「いやあ、善子ちゃんと出掛けるのが楽しみすぎて昨日なかなか寝つけなくて」

善子「なにそれ。それなら電車の中では寝てなさいよ。三十分ちょっとしかないけど、少しは違うでしょ」

曜「ええ、それは悪いよ。それに善子ちゃんと少しでも長く話していたいし」

善子「いいから」

曜「でも……」

善子「あのね、私とは今日一日ずっと一緒だし、これからも話す機会はいっぱいあるでしょ。それより無理されて出先で体調崩された方が迷惑なの。だから寝なさい」

曜「……はーい」

善子(まったく、変なところで頑固なんだから)





曜「んー」スヤスヤ

善子「なんだかんだ言っても眠かったのね。すぐ寝ちゃったわ」

善子「まあ、Aqoursの練習も人一倍頑張って、衣装作りに振り付けの案出しとか他の人のサポートまでやってるものね」

善子「……お疲れ様」ナデナデ

善子「っと。もうすぐ着くわね。ほら、起きなさい」

曜「ん? もう朝? あれ、どうして善子ちゃんが私の部屋に?」

善子「なにベタな寝ぼけ方してんのよ。駅に着いたの」

曜「駅? あ、そっか。もう着いたんだ。私、気づいたら寝てたんだね」

善子「それで良いのよ。少しは元気出た?」

曜「うん、もうばっちり。これなら明日の朝までだって遊び倒せるよ」

善子「それは私がもたないからやめてちょうだい」



善子「さて、あれからバスに乗り換えて、やっと着いたわけだけど。どうしてアウトレットモールなの」

曜「いやあ、私寒いの苦手じゃん? だから出来るだけ室内にいれるとこが良いかなって」

善子「……確かに建物はいっぱいあるけど、どちらかというと外を回る施設よね。ここ」

曜「あ……」

善子(大丈夫なのかしら、この先輩。なんだか心配になってくるわ)

曜「ま、まあ。来ちゃったものはしょうがないよ。せっかくだからここでめいっぱい楽しもう!」

善子「曜さんがそれで良いなら私は別にいいんだけど」

曜「うんうん。大丈夫だよ。善子ちゃんといれば寒さも気にならないだろうしさ」

善子「? どういうこと?」

曜「楽しくって幸せで、寒いなんて思ってる暇なんてないってことだよ」

善子「またそうやって、人の心をかき乱すようなことを言って」ボソ

曜「ん?」

善子「なんでもない! そうと決まればさっさと行くわよ。時間は待ってくれないんだから」

曜「おお、善子ちゃん乗り気だね」

善子「乗り気じゃないけど、来たからには全力で楽しむ……でしょ?」

曜「……善子ちゃん!」

善子「それとね、真の力を解放した今の私は善子じゃなくて」

善子「――ヨハネよ」

善子(決まった……)

善子「って、いないし!」ポツーン

曜「おーい、善子ちゃん。早くしないと追いてっちゃうよー?」

善子「ちょ、待ちなさいよー」





曜「見てみて、この鳥のオブジェ。磁器で出来てるんだって」

善子「うーん、なんだか間抜けな面ね」

曜「えー。善子ちゃんみたいで可愛いと思ったのに」

善子「ちょっと! 話の流れに悪意を感じるんだけど」

善子「それよりこのキャンドル立て。降魔の夜会で火を灯したら雰囲気でそうじゃない?」

曜「でもそれ可愛くないよ」

善子「可愛さは求めてないのよ」



曜「おー、この靴すっごく軽い。それに最先端の素材を使ったソールで足にも負担をかけないんだって」

曜「凄いよ! どこまでも走っていけちゃいそう」

善子「本当、曜さんって体力バカね」

善子「もっとお洒落な靴も買えば良いのに」

曜「ええ、だってそんなの私には似合わないし」

善子「そんなことないわよ。あのね、謙遜も行き過ぎると嫌味でしかないわよ」

曜「うぅ、とにかく私はこれが欲しいの。これ、買ってくるから!」

善子(ふふっ、ちょっと照れた曜さん。なかなかレアなものを見せてもらったわね)



善子「いーやー。着ーなーい」

曜「いやいや、着てもらうよ。これは絶対似合うから。ね、ちょっとだけで良いから」

善子「ちょっとも何も着るか着ないかの二択でしょ。それに絶対似合わないって」

曜「善子ちゃん」

善子「……なによ」

曜「謙遜も行き過ぎると嫌味でしかない、だよ」ドヤァ

善子「~~!!」

善子(何そのドヤ顔、むっかつく~!)



善子「はあ、なんだか疲れちゃったわ」

曜「休憩も兼ねてご飯でも食べよっか」

善子「異議なーし」

曜「じゃあとりあえずそこのマックにでも」

善子「は?」

曜「どうしたの?」

善子「いやいや、せっかくここまで来てマックはないでしょうよ」

曜「でも美味しいよ。ハンバーガー」

善子「いや、そりゃ私も好きだけど。こういう時はここならではのお店にするもんよ」

曜「なるほど」

善子「ということで、あっちの四川風激辛中華料理屋さんにしましょう」

曜「待って待って待って待って」

善子(結局、フードコートで食べることになったわ)





曜「いやあ、いろいろ回ったね」

善子「そうね」

曜「善子ちゃんは楽しめた?」

善子「まあ、それなりに……いえ、楽しかったわ。とっても」

曜「良かったー」

善子「曜さんこそ、どうだったの?」

曜「そりゃもう、楽しかったよ。善子ちゃんのおかげだね」

善子「私は何も、してないけど……」

善子「どうする? そろそろ帰る?」

曜「んー。あと一個だけ見ていって良い?」

善子「構わないわ」

善子(そうして連れてこられたのはファッション雑貨のお店)

善子(曜さんは店内へ消えると、しばらくして袋を二つ持って帰ってきた)

曜「はいこれ」

善子「これは?」

曜「えへへ、開けてみて」

善子(袋の中には、マフラーが入っていた)

曜「ほら、お揃いなんだ。せっかく来たんだし、何か証みたいのがほしくてさ」

善子「お代は……」

曜「良いって良いって。これは私からのプレゼント」

善子「でも……」

曜「もう、こんな時くらい先輩面させてよ。お年玉もたくさん貰ったし、気にしないで」

善子(こういうことしてるから、お年玉すぐになくなっちゃうんじゃ……)

善子「わかった。それじゃお言葉に甘えることにするわ。ありがとう」

曜「うんうん。まあ気に入らなかったら使わなくても良いから、記念品だと思って持っててくれると嬉しいな」

善子「使う、使うわよ。曜さんがせっかく選んでくれたんだもの」

曜「善子ちゃん……。うん、私も使うよ。冬休みが明けたら一緒につけてこようね」

善子「ペアルックってこと? それはちょっと……」

曜「あ……曜とお揃いじゃ、嫌だった?」

善子(もう、そんな顔しないでよ)

善子「わかった。つけてくるわ。あなたこそ、忘れてこないでよね」

曜「うん! あー、楽しみだなあ。早く明けないかな、冬休み」

善子「随分余裕ね。私なんてまだ宿題終わってないから、一秒でも長く続いててほしいのに」

曜「……あっ、宿題」

善子「まあ、なに。頑張りなさい」



善子(すっかり日が落ちた頃、私たちは帰りの電車で二人寄り添って座っていた)

善子(体を包む疲労感と、手に持った買い物袋の重さが、今日がどれだけ充実した一日だったかを教えてくれる)

曜「ねえ、善子ちゃん」

善子「なに?」

曜「どうして私だけ、さん付けなの?」

善子(曜さんが目を閉じたまま語りかけてくる)

善子(寝てたと思ったけど、起きてたのね)

善子「……それは、言えない」

曜「やっぱり今でも呼び方を変えるのは」

善子「……嫌よ」

曜「そっか」

善子(曜さんはそれだけ言うと、また黙ってしまう)

善子(しばらくすると、静かな寝息が聞こえてくる)

善子(その顔は幸せそうだったから、私が負い目を感じる必要はない、だろう。多分)

善子「どうして、か……」

善子(私が曜さんだけ呼び捨てにできない理由)

善子(私はAqoursを始める前から、浦の星に入る前から、曜さんのことは知っていた)

善子(まあ家も遠くはないし、曜さんは有名人だったから)

善子(交流はなかったけど、私が見る曜さんは、いつも眩しくて楽しそうで、まさに天から愛される光の子だった)

善子「昔から憧れてました」

善子(なんて言えるはずないけど)

善子(でも、そんな憧れの人と、こうやって同じ学校に通って同じことをして休みの日に遊んで)

善子(それはまるで奇跡みたい。私の身には余り過ぎるくらいの幸せな毎日を、この一年で経験した)

善子(でもね、堕天使ヨハネは強欲なの。一つ奇跡が起こったら、次の奇跡だって必ず起こしてみせる)

善子(いつかきっとあなたと同じくらい凄くなって輝いて……)

善子(そしたらその時は、“曜”って呼んでやるんだから!)

おしまい
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2018年5月26日
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