姉という生き物

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ダイヤ-アイキャッチ12
「みとねえのバカ!もう知らない!」

走った。学校のカバンを持って家を飛び出す。バスの時間も知らない。ただひたすらに走る。

pixiv: 姉という生き物 by バッツ

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いつも些細なことで喧嘩になる。でも今回は違うの。みとねえがあまりにも失礼だから怒っちゃった。姉より優れた妹はいないだなんて。確かにみとねえは昔からなんでもできた。その点千歌はなんでもすぐ辞めちゃう。でもそんな比べないでよ。私は私なのに。私は私なりの頑張りを見せる。今回のスクールアイドルだってそう。どうせすぐ辞めるんだろって。私は私の光を見つけたのに。それをバカにするようなことさすがの千歌も許せなかった。

息を切らしながら浦の星に向かう。途中の坂道もお構いなし。どんなに疲れてても知らない。今はそんな気分なの。

「はあ、はあ…あっ!?」

学校への坂道を走る。それは言ってみれば高みへの挑戦。危険はつきもの。バランスを崩し転ぶ。この坂も私を否定するの?

「いったああ…」

膝から流れ出る赤い血。マグマのように沸騰した熱いはずの血潮も今では冷め切っている。

「やっぱり無理なのかな、あはは…」

自嘲気味に笑う。今はまだ曜ちゃんと2人きり。梨子ちゃんはまだ入ってくれるかもわからない。そもそも部としても認められていない。果てしなく続く坂道は私を見下ろす。

「何をしているのですか?」

聞き覚えのある声がする。最近よく聞く声。こんなに朝早くに聞くなんて。

「生徒会長…ダイヤさん…」

「怪我をしているではありませんか…ほら」

そう言って背中を差し出す。頼りになる背中をしている。

「その足では登れませんでしょ?おぶって差し上げますから。保健室に急ぎましょう」

私は黙ってそれに従う。



「それにしても、こんなに朝早くにあなたを見るなんて思いませんでした」

「それはその…重くないですか」

「気になさらないでください。これも生徒会長の務めですので」

優しく微笑む。今までに見たことがないような優しさ。いや、これが本来のダイヤさんなのかもしれない。

「千歌さんとは最近なんだか縁がありますわね。もちろん譲る気はありませんが」

「もちろん、私も…」

その先が続かなかった。今日は自信を持って言えなくなっていた。みとねえとのことで整理がついていない。

「…どうしましたか?」

「いえ、なんでもないで…あっ」

知らぬ間に泣いていた。みとねえにあんなこと言われたけど、やっぱり諦めたくない。嫌なの。

「グス、お、ねえちゃん。千歌だって、頑張ってるのに…ヒッグ。どうして…」

「お姉様と何かあったのですね…」

黙って頷く。千歌の子どもっぽい部分が出ちゃう。

「千歌さん。何があったかは詳しくは聞きません。ですが1人の姉として言いますが、妹の成長を喜ばない姉はいまさんわよ」

「本当に?」

「ええ、でも同時に不安なのです。しっかりやり通せるのか、やり通せなかった時、どう受け入れてやればいいのか。不安は尽きません。成長と挫折は紙一重。それが心配なのかもしれません」

「…そういうものなんですか?」

「ええ、姉とは少々面倒な生き物なのかもしれません」

クスクスと笑うダイヤさん。私の不安が嘘みたいになくなった。まるでダイヤさんはもう1人の…

「ダイヤ…おね…えちゃん…」

疲れと不安からの解放で安心したのかそのまま眠ってしまった。

「ふふっ…お姉ちゃんですか」


目を覚ましたときには保健室で寝ていた。膝の治療はもう終わっていた。きっとダイヤさんがやってくれたんだ。ありがとうございます。でも今度からはまた争う相手になるんですね。私は諦めません。みとねえがもしダイヤさんの言った通りなら、私はやり通すだけです。スクールアイドルの輝きを目指して。


「ただいま!」

「…今日も遅かったね」

あの日からしばらく経つ。梨子ちゃんを迎え本格的に活動が始まった。帰りも随分遅くなった。足早に部屋に戻ろうとする。

「千歌!」

みとねえが呼び止める。その表情は穏やかで、優しい。

「その、頑張れよ」

それだけ言ってその場を去るのがみとねえらしい。結局は不器用なだけかも。ダイヤさんの言った通り。

お願い。千歌の成長を見守ってて。
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2018年5月26日
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