千歌「歩くような速さで」

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千歌-アイキャッチ43


千歌「ねえ、曜ちゃん。こんなとこに呼び出して用事って一体なに? 早く帰らないと暗くなっちゃうよ」

曜「ごめん。すぐ終わるからさ」

千歌「う、うん」

曜「……」スーハー

曜「千歌ちゃん。私、渡辺曜は高海千歌のことが大好きです」

千歌「え?」

曜「ちっちゃな頃からずっと一緒で、いつも一緒に遊んで」

曜「明るくて元気をくれた、大変な時に応援してくれた、そんな千歌ちゃんが好きです」

曜「ずっとずっと、そんな千歌ちゃんと一緒にいたいって思ってた」

曜「千歌ちゃんがくれたみたいに、私も千歌ちゃんに元気をあげたい、支えてあげたいって思ってたの」

千歌「曜ちゃん……」

pixiv: 千歌「歩くような速さで」 by あめのあいまに。

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曜「実は、この想いはずっと胸の中に閉まっておこうと思ってたの。千歌ちゃんの隣にいられれば、それだけで良いからって」

曜「でも、果南ちゃんたちが卒業を前にするのを見て、気づいたんだ」

曜「いつまでも一緒にいれるとは限らないって。だったら私、その時に後悔しないようにしたい!」

曜「だから、本当の気持ち伝えなきゃって」

曜「ねえ、千歌ちゃん。もう一度言うね。私は千歌ちゃんが大好きです」

曜「私と付き合ってください!」

千歌「……」ウルウル

曜「えっ!? 千歌ちゃん、泣いて……」

曜「そうだよね、女の子同士で、しかも私となんか、嫌だったよね……」

曜「ごめんね、いきなりこんなこと言って。聞かなかったことにしてくれて、良いから」

千歌「ち、違うの!」

千歌「曜ちゃんに告白してもらえて、嬉しかったり、夢なんじゃないかって不安だったり、いろんな気持ちが一気に溢れてきちゃって」

曜「そ、それじゃあ」

千歌「うん。千歌も曜ちゃんのことが好き。これから、よろしくお願いします」





梨子「なるほど。それで二人は付き合い始めたんだ」

千歌「えへへ、照れちゃうのだ」

梨子「惚気けたうえに何を……」

梨子「まあでも、良かった。千歌ちゃん、ずっと曜ちゃんと付き合うにはどうしたらって悩んでたもんね」

千歌「うう、その節はご迷惑おかけしました」

梨子「いえいえ。私が好きでお手伝いしてたことだから」

梨子「でも、まさか曜ちゃんの方から来るなんて。余計なお節介だったかな」

千歌「そんなことないよ! 梨子ちゃんが相談に乗ってくれたおかげで、とっても助かったよ」

梨子「そう? って、ほら。愛しの曜ちゃんが来たよ」

千歌「も、もう! 梨子ちゃんからかわないでよ」

千歌「曜ちゃん、おは」

曜「おはヨーソロー!」ダキッ

千歌「きゃっ」

曜「千歌ちゃん、会いたかったよー」ギュー

千歌「毎日会ってるでしょ。それより暑いって」

梨子「おはよう、朝からアツいね」

曜「おはよう、梨子ちゃん。そりゃもうアツアツだよ、冬の寒さも逃げ出すくらいだよ」

梨子「はいはい。幸せそうでなによりです」

千歌「もう、離れてよ」ガバッ

曜「ああっ、千歌ちゃーん……」

千歌「それより、早く準備しないともう授業始まっちゃうよ」

曜「はーい……」



キーンコーンカーンコーン

千歌「はあ、やっとお昼だ……」

梨子「お疲れ。大分ぐったりしてるね」

千歌「だって今日は数学二時間に化学でしょ。もう千歌の頭はパンクしそうだよ」

千歌「もうこれ以上一ミリたりとも知識は入らないよ。勉強しても無駄だから帰って良いかな?」

梨子「そんなの駄目だよ。というか、いつも頭に入ってないんじゃ……」

千歌「ん、なにか言った?」

梨子「べ、別に!? それより、ほら。午後は体育だよ」

千歌「そうだった! じゃあ全力で楽しむために、いっぱい食べて元気をつけなきゃね」パクパク

梨子「あはは……というか、曜ちゃん静かだね? 曜ちゃんも勉強疲れ?」

曜「ん? んー、千歌ちゃんに見惚れてた」

千歌「ぶふっ」

梨子「うわ……」

千歌「げほっ、げほ……ちょっと、曜ちゃん! いきなり何言うの」

曜「いやいや、本当のことだもん。大好きな千歌ちゃんのことだったら、いつまでだって見ていられるよ」

千歌「もう、やめてったら……皆見てるよ」

梨子(曜ちゃんってこんな感じだったっけ? 長年の気持ちが爆発して、ちょっぴり暴走してるのかな)

曜「千歌ちゃん、好き。ほらー、千歌ちゃんも言ってよー」

千歌「~! ばか!」





千歌「お疲れー」

梨子「お疲れ」

千歌「梨子ちゃん凄ーい。もう全然バテなくなったね」

梨子「そうかな? でも確かに、昔よりは体力ついたって実感することあるかも」

千歌「でしょでしょ」

梨子「さ、帰ろうか。暦の上ではもう春とはいえ、まだ寒いし、日が沈むのは早いし」

曜「千歌ちゃん、この後ちょっと残れる?」

千歌「え、うん? 何?」

曜「あはは、ちょっとね」

梨子「じゃあ私は先に帰ってるね」

千歌「うん。気をつけてねー」フリフリ

千歌「それで、話って?」

曜「うん、その……今日のことなんだけど」

曜「ごめん! 私、千歌ちゃんと恋人になれたんだって思ったらついつい浮かれちゃって、周りの目も気にせず……」

千歌「ううん、いいの。千歌も悪かったよ、にべもなく断っちゃって」アセアセ

曜「千歌ちゃん」ギュッ

千歌「わわっ、曜ちゃん?」

曜「ごめんね、ごめんね……」

千歌「もう、だから気にしてないって……」

曜「本当?」ジッ

千歌「う、うん」

千歌(どうしよう。曜ちゃんの顔、めっちゃ近いよ)ドキドキ

曜「それじゃ、仲直りに……しようよ」

千歌「うん?」

千歌(なんだろう、上手く聞き取れなかったけど)

曜「……」ドン

千歌「ふぇ」

千歌(これ、梨子ちゃんが好きな壁ドンってやつ!?)

千歌(私、曜ちゃんに追い詰められちゃった)

曜「千歌ちゃん、今なら良いよね? 誰もいないから」

千歌「よ、曜ちゃ……」

千歌(だんだん曜ちゃんの顔が近づいてきて……)

曜「千歌ちゃん……」

千歌「……っ」

千歌「やっぱり駄目!」バンッ

曜「わわわっ」

千歌「ごめん、曜ちゃん! また明日ね!」



梨子「で、逃げ出してきた、と」

千歌「うん……」

梨子「二人っきりで何か進展があったかと思ったら、千歌ちゃんは死んだ顔してるし曜ちゃんはお休みだし」

梨子「いったい何でそうなっちゃうの」

千歌「だって……」

千歌「私だって、もっと曜ちゃんと触れ合いたい、近くにいたいって思うよ」

千歌「でも、曜ちゃんのこと考えただけでドキドキして、曜ちゃんに近づくだけで心臓が口から飛び出そうで」

千歌「付き合う前なら普通にできたことも、全然できなくなっちゃった」

梨子「それで照れ隠しにつっけんどんな態度になってしまった、と」

千歌「まあ……」

梨子「はぁ」

千歌「そもそも、曜ちゃんも曜ちゃんだよ! あんな簡単に、皆の前でベタベタしてさ」

千歌「千歌のこと、なんとも思ってないから軽々しくそんなことできるんじゃないの?」

梨子「千歌ちゃん、それ本気で思ってる?」

千歌「……ううん」

梨子「だよね」

千歌「曜ちゃん、今日お休みなのもやっぱり昨日のことがショックで……」

梨子「まさか。風邪だと思うよ」

千歌「なんで分かるの?」

梨子「LINEきてたし。大方汗も拭かずに冷えたんじゃないかな」

千歌「ええ!? 千歌にはきてないのに……。やっぱり愛想を尽かされちゃったのかな」

梨子「昨日そんなことがあって気軽に連絡できるわけないと思うけど……」

梨子「でも、曜ちゃんとても辛そうだったよ。落ち込んでた」

千歌「曜ちゃん……」

梨子「私だって、千歌ちゃんの言いたいことも分かるけど」

梨子「曜ちゃんが千歌ちゃんのこと、好きじゃないはずないって、千歌ちゃんなら分かるでしょ」

千歌「うん。でも頭では分かってても不安なんだもん」

千歌「曜ちゃんみたいな人が、本当に? 今でも夢じゃないかって思う」

千歌「千歌がドキドキして何もできなくなる度に、曜ちゃんが自然に千歌と触れ合う度に、幸せと同時に怖くなるんだ」

梨子「じゃあ千歌ちゃんはずっとこのまま、そうやって曜ちゃんから逃げ続けるつもりなの?」

千歌「……」

梨子「きっと曜ちゃんは悲しむだろうなあ。きっとこの世の終わりみたいに」

梨子「そんな風に弱ってる時誰かに優しくされたら、もしかしたらコロッと靡いちゃうかも」

梨子「ふふっ、そうなったら私が貰っちゃおうかなぁ」

梨子「曜ちゃんって格好良いし、頼りになるし、でも内心凄く乙女で可愛いし」

梨子「付き合ったらきっと毎日楽しいだろうなあ」

千歌「それは駄目!」

梨子「でしょ? だったらどうすれば良いのか、わかるよね?」

千歌「……梨子ちゃん」

千歌「私、行ってくる」

梨子「わかった。先生には私から誤魔化しておくから」

千歌「梨子ちゃん……ありがとね?」

梨子「今日のこと? これくらい、二人がギクシャクしてたらこっちまで辛くなっちゃうもん」

千歌「それもだけど、前から相談に乗ってくれたでしょ」

千歌「とっても親身になってくれて、不安だったり怖かったりしても頑張ってこれたの、梨子ちゃんのおかげだよ」

梨子「まあ、千歌ちゃんは私にとってかけがえのない人だし」

千歌「千歌も! 出会ってからの時間は短いかもしれないけど、梨子ちゃんは一番の親友だよ!」

梨子「ありがと……さ、いってらっしゃい」

千歌「うん!」





梨子「あーあ、行っちゃった」

梨子「私も、つくづく損な役回りだなあ」

梨子「親友、か」

梨子(少し前なら、間違いなく曜ちゃんがその位置にいたよね)

梨子(どう、曜ちゃん? 千歌ちゃんの一番の親友ポジション、奪っちゃったよ……なんて)

梨子「はあ、今日は狐の嫁入りかな」

梨子(だって、こんなに空が青いのに)

梨子(頬を濡らす、雫が止まらない)



ピンポーン

曜「げほっ、宅配便かな?」

曜「はーい」ガチャ

千歌「……や、やぁ」

曜「千歌ちゃん!?」

曜「千歌ちゃん、どうしてここに? 学校は?」

千歌「えへへ、サボってきちゃった」

曜「きちゃったって、何してるの! ……あ」フラッ

千歌「曜ちゃん!」ガシッ

千歌「って、すごい熱……とりあえずお布団に連れてかなきゃ」





曜「……ん」

千歌「あ、起きた?」

曜「千歌ちゃん!? どうしてここに?」

千歌「あはは、それ二度目だよ?」

千歌「お見舞いに来たんだけど、曜ちゃん、突然倒れるからびっくりしちゃった」

曜「そっか、心配かけちゃったんだね。ごめんね」

曜「って、いやいやいや。学校は?」

千歌「それもさっきやったよ。サボったんだって」

曜「ええ……」

千歌「い、いいでしょ。その、曜ちゃんに会いたかったんだもん。看病したかったんだもん。彼女として」

曜「千歌ちゃん!」ガバッ

千歌「ほら、起き上がらないの。さっきまで火傷するくらい熱かったんだから」

曜「俺に触れると火傷するぜ、って?」

千歌「は?」

曜「なんでもありません……」

千歌「はあ、思ったより元気そうで良かったよ。何か要るものある?」

曜「……って」

千歌「ん?」

曜「千歌ちゃんが好きって言ってくれたら、元気出る気がする」

千歌「そんな簡単に言わないでよ……」

千歌「千歌の気も知らないで」

曜「千歌ちゃん……」

千歌(ああ、これじゃ駄目だ。今までと何も変わらない)

千歌「……」スーハー

千歌「ごめん、曜ちゃん。今のなし。本当のこと言わせて」

曜「え……」

千歌「私の、本当の気持ち」





曜「はあぁ……」

千歌「ちょっと、その溜め息は何?」

曜「いやいや、安心しただけだって。だってさ、あんな真剣な顔で何を言うのかと思ったら」

曜「てっきり私、フラレちゃうのかと思ったよ」

千歌「そんなこと! 私が曜ちゃんのことフるはずないよ! こんなに好きで、ドキドキして、死んじゃいそうなくらいなのに」

曜「死んじゃうのは困るなあ……」

曜「でもね、千歌ちゃん」グイッ

千歌「あ……」

千歌(私の手、曜ちゃんの胸に……)

曜「わかる? 凄いドキドキしてるでしょ?」

曜「私だって千歌ちゃんと同じ。怖かった! 緊張もした!」

曜「告白して、オーケーもらっても、勢いで頷いてくれただけなんじゃないかって、不安でいっぱいだった」

曜「付き合ったからって今までと変わったら、思ったのと違うって落胆されるんじゃないかって思った」

曜「付き合ったのに今までと変わらなかったら、付き合う必要なかったって呆れられるんじゃって思った」

千歌「曜ちゃん……」

曜「どうすれば良いのか分からなかったよ、頭の中ぐるぐるして」

曜「でも、千歌ちゃんと触れ合いたかったんだもん。もっと近づきたかったんだもん」

曜「だから勇気出して……空回りしてたかもだけど」

曜「それなのに千歌ちゃんったら告白してからつれない態度ばっかりで、やっぱり私のこと、好きじゃないのかなって」

千歌「曜ちゃん!」ギュッ

曜「わ、千歌ちゃん。風邪うつっちゃうよ」

千歌「いいの!」

曜「汗だらけだし、汚れちゃうよ」

千歌「いいの!」

千歌「ごめんね、曜ちゃん。私だって、分かってたよ。曜ちゃんが私のこと好きだって、私がこんな態度じゃ曜ちゃん悲しませちゃうって」

千歌「でも、私が弱いから、ずっと辛い思いさせちゃってた……本当にごめんね」

曜「いいんだよ、お互い様だもん。でも、良かった」

曜「やっと、千歌ちゃんから来てくれたね」

曜「これからはさ。お互い、ゆっくりと近づいていこうね」

曜「無理のないように、歩くような速さでさ」

曜「だって、私たち、ここまで来るのに十七年もかけたんだもん。十七年待てたんだもん」

曜「だったらさ、今更急ぐ必要ないよね」

千歌「曜ちゃん……うん!」

曜「はー、安心したら眠くなっちゃった」バタン

千歌「あはは、そういえば曜ちゃん体調はどう?」

曜「おかげさまで、大分……」

曜「でも、今は、おやすみなさい……」スゥ

千歌「おやすみ、曜ちゃん」

千歌(曜ちゃん、とっても気持ち良さそうに寝てる)

千歌(無邪気で、柔らかくて、さっきまでとは大違い)

千歌(やっぱり千歌が、不安にさせちゃってたんだよね……)

千歌「……」チュッ

千歌「今は、ここまで」カァァ

千歌(でも、ここから先は、全てが今まで見たことない世界だもん)

千歌(曜ちゃんが言うように、ゆっくり進んで行けば良いよね)

千歌(だって千歌の隣には曜ちゃんが、曜ちゃんの隣には千歌が、これからずっと一緒にいるんだから)

おしまい
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2018年5月26日
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