善子「ひな祭り」

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よしルビ-アイキャッチ2


ルビィ「おはよう、善子ちゃん」

善子「おはよう」

花丸「おはよう」

善子「はぁ。大分暖かくなったとはいえ、朝はちょっぴり冷えるわね」

ルビィ「開口一番言うことがそれ? 善子ちゃんって時々おばさんみたいなこと言うよね」

善子「誰がおばさんよ!」

花丸「もう三月で日の出も早くなったし、やっぱり一頃よりは気温も上がったと思うよ」

花丸「いつまでも冬眠モードじゃいられないずら」

花丸「それにもうすぐひな祭り! せっかくのおめでたい日なんだから、しゃきっとしないと」

善子「ひな祭り、ね……」

pixiv: 善子「ひな祭り」 by あめのあいまに。

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善子(ひな祭りは嫌いだった)

善子(上巳、桃の節句、女の子のお祝いの日)

善子(同い年の子たちは浮かれていたけれど、私はどうもこの日と相性が悪いみたいで)



よしこ「よしこがケーキはこぶ!」

善子母「あらあら、大丈夫?」

よしこ「へいきだもん! んしょ、んしょ……」

よしこ「っわぁ」ズテン

善子母「ちょっと、大丈夫!?」

よしこ「うぅ……」チラ

ケーキベチャー



よし子「ママおそいなー。でもそろそろだよね?」

よし子「お料理ならべてまってたら、ママほめてくれるかな」

prrr...

よし子「あ、電話だ!」ガチャ

よし子「もしもし、つ島ですけど」

善子母「あ、善子?」

よし子「ママ! うん、わたしよし子だよ!」

善子母「ごめん、今日なんだけど。どうしても仕事終わらなくて……」

よし子「ええ? じゃあママ帰ってこないの?」

善子母「ごめんね。夜中になっちゃうから、先に食べて寝てて。本当ごめん!」

よし子「ううん……お仕事なら仕方ないよね」



善子母「善子ー。今年もそろそろお雛様出すから手伝って頂戴」

善子「いらない……」

善子母「そんなこと言わないで。縁起が良いものなんだから、ね?」

善子「いらないって言ってるでしょ!! あ……」

善子母「善子……」

善子「ごめん。でも別に出さなくて良いから。私ちょっと外出てくる」バタン



善子(思い返すだけで憂鬱だけど、まあこんな感じ)

善子(私は堕天使なんだし、お祝い事の日と相性が悪くても仕方がないわよね)

善子(むしろ、こんな日でも不運に見舞われることこそが、私の力の強さを証明しているということよ)

善子(ふふふ、我ながら恐ろしいわね)

ルビィ「ん! 善子ちゃん!」

善子「ふぇ? なによ!?」

ルビィ「なによ、じゃないよー。さっきから呼んでるのに上の空で、大丈夫?」

善子「え、ええ。大丈夫。ちょっと魔界との定時交信をしていただけ」

花丸「どうせ夜更かししててウトウトしてたんじゃないの?」

善子「失礼ね! ウトウトなんてしてないわよ。で、何の話だっけ? 神に嫉妬され天から追放されたヨハネの下に千をも超す敬虔なリトルデーモンたちが集った時の話?」

ルビィ「これっぽっちも掠ってないよ……」

花丸「善子ちゃん、とうとう壊れちゃったずら」

善子「壊れてない! それにヨハネよ。まあ気を取り直してもう一回話してちょうだい」

花丸「それを善子ちゃんがいうの?」

ルビィ「まあいいよ。で、明日ルビィのお家に来ないかって話」

善子「ルビィの家に? 別に良いけど、どうして?」

ルビィ「えへへ。明日ってひな祭りでしょ? 親戚の人たちが私たちに挨拶に来るんだぁ」

善子「むしろそんな日にお邪魔しちゃって良いわけ?」

ルビィ「挨拶って言ってもちらっと顔を見せに来るだけだから、その後に来てもらおうかなって」

ルビィ「けっこう立派な雛壇を出すし、私も今年からお姉ちゃんと一緒に挨拶のためにお着物着せてもらうの」

ルビィ「せっかくだからそれを見てもらいたくて」

善子「なるほど、わかったわ。そういうことならリトルデーモンの晴れ姿、見せてもらうとしようじゃない」

花丸「もちろんマルも行くよ」

ルビィ「ほんと? やったぁ!」

善子「それにしてもルビィも変わったわね」

ルビィ「?」

善子「昔だったら恥ずかしがって見せようとは思わなかったでしょ、たぶん」

ルビィ「そうかな? 自分ではあんまり分からないんだけど」

花丸「確かにルビィちゃん、昔はとっても恥ずかしがり屋だったもんね。せっかく衣装とか作っても、なかなか自分で着て人前に出ようとはしなかったし」

ルビィ「もう、マルちゃんったら」

ルビィ「でも、変われたとしたら皆のおかげだよ。いろんなこと経験して、いろんなこと教えてもらって、それで昔より頑張れるようになったんだって、そう思う」

ルビィ「Aqoursの皆、善子ちゃん、マルちゃんのおかげだよ」

善子「ルビィ……」

花丸「ルビィちゃん……」

ルビィ「あはは、なんだか熱くなってきちゃった。ということだから、二人とも明日よろしくね!」



善子(着いたは良いけど、相変わらずデカい家ね)

善子(小柄でおとなしいルビィと重厚で厳かな建物とが、なんとなくミスマッチで不思議な気分)

善子(お客さんたちは……帰ったのかしら。特に誰もいなさそうね)

善子「ごめんくださーい」

ルビィ「はーい」ガララッ

ルビィ「あ、善子ちゃん! どうぞ中に入って」

善子(扉を開けて出てきたのは、まさに天使だった)

善子(振り袖や、ましてや十二単でもないけれど、鮮やかな赤と桃色を貴重とした生地に、金糸で様々な模様が描かれた豪華な着物)

善子(そんな大層な衣装を少しも負けずに着こなして佇んでいるルビィは、やっぱり良いところのお嬢様なんだなと実感する)

ルビィ「どうしたの?」

善子「え、ああ。それじゃお邪魔します」

善子(見惚れてた、なんて口が裂けても言えないけど。私は間違いなくルビィの姿に目も心も奪われていた)





ルビィ「じゃーん。これが我が家自慢の雛壇になります」

善子「お、おお……」

善子(ひい、ふう、みい。いったい何段あるのよ)

善子(多くの人形や飾りが所狭しと並ぶ雛壇は圧巻で、その細工の細かさには目を見張るものがある)

善子(うちにあるものとは比べ物にならないくらい高いんでしょうね。それになにより)

善子「格好良い……」

善子(可愛いとか綺麗とか、お雛様へのイメージってそういうものが強かったけど、これだけ壮大だと独特のオーラというか雰囲気があって、その部分だけまるで別世界のようだった)

ルビィ「気に入ってもらえたみたいで良かった」

善子「ええ、むしろこんな凄いものを見せてもらってこっちが感謝したいくらいよ」

ルビィ「そう言ってもらえると呼んだ甲斐があったよ」

善子「そういえばずら丸は?」

ルビィ「マルちゃんはお家の用事で少し遅れてくるって」

善子「ふぅん」

善子(あいつが見たら、びっくりするでしょうね。未来ずら~って言いそう。いえ、絶対言うわね)

善子「ふふっ」

ルビィ「どうしたの?」

善子「いえ、なんでも?」

善子(危ない危ない。変な人だと思われちゃう。余計なことは考えないようにしましょ)

ルビィ「ねえ、善子ちゃん?」

善子「何かしら?」

ルビィ「マルちゃんが来る前に、二人だけで内緒のこと、しない?」

善子(そう言ってルビィは、昔だったら絶対見せないような顔をして微笑んだ)






ルビィ「よいしょっと。はい、これで出来上がり」

善子(ルビィに背中をポンと叩かれて、姿見の前でくるりと回ってみる)

善子(そこに映ったのは、黒地の着物に身を包んだ絶世の美少女――ヨハネの姿だった)

善子(うん、我ながら見事。男装もいけるわね……じゃなくって)

ルビィ「やっぱり! 善子ちゃん凄く似合ってるよ!」

善子「そ、そう? まあ私にかかればどんな衣装も……じゃなくって」

善子(心の中と外で、思わず二回も同じツッコミしちゃったじゃない!)

善子「どうして私がこんな格好させられてるわけ?」

ルビィ「それは、ほら」ギュッ

善子「わわっ」

ルビィ「ほらほら。ルビィたち、お内裏様とお雛様みたいでしょ?」

善子(姿見に並んで映るその姿は確かに、雛壇の一番上に座る雛人形に見えなくもない)

善子(内緒……なんて言うから何をするかと思ったけど)

ルビィ「?」ニコニコ

善子(照れ隠しに文句の一つでも言おうと思ったけど、無邪気な笑顔にドキリとさせられて、結局何も言えなかった)

善子「はぁ」

ルビィ「昨日の、さ」

善子「?」

ルビィ「変われたって話」

善子「あぁ」

善子(何の気なしに言ったことだけど、今日だけでつくづくそれを実感させられたわ)

善子(あの頃の純粋なルビィをこんな小悪魔にしてしまった人、許さないんだから)

善子(ルビィの成長は素直に嬉しいけど、一挙手一投足に振り回されてこっちの身が持たないんだから)

ルビィ「私が変われた一番の理由は善子ちゃんだよ」

善子「え?」

ルビィ「私、昔からアイドルが大好きで、よくDVDを見たりお便りを書いたりしてたんだ」

ルビィ「イベントは、遠くだとなかなか行けないからあんまりだったけど、本当にアイドルに憧れてた」

善子「ええ、知ってるわ」

ルビィ「でもね、同時に自分じゃ無理なんだって、そう思ってた」

ルビィ「ルビィはスタイルも良くないし、運動神経も歌唱力も取り立ててある方じゃないし」

ルビィ「きっとそういうのは、ルビィとは違う、もっと特別な人がやるんだ、やるべきなんだって」

善子「ルビィ……」

ルビィ「だから、善子ちゃんを初めて見た時、まさにこの人だって感じたの」

ルビィ「美人さんで、スラッとしてて、それこそ画面の中のアイドルさんみたいだった」

ルビィ「ああ、こんな人本当にいるんだなって」

善子(ルビィが私のこと、そんな風に思ってたなんて)

ルビィ「それで、時々善子ちゃんのこと考えるようになった。最初はそれこそ、名前すら知らなかったけど」

ルビィ「でも、チカちゃんたちがスクールアイドルを始めて、ルビィも善子ちゃんと交流するようになって」

ルビィ「そうしているうちに、ああ私、この子と一緒にスクールアイドルがしたいなって思うようになったんだ」

ルビィ「それからは知っての通り。だから、私が変われた一番の理由は、善子ちゃんなの」

善子(ふう、と全て言い切って溜め息をついたルビィの顔は、真っ赤に染まっていた)

善子(恥ずかしいなら、言わなきゃ良いのに)

善子(でも、きっと彼女にとって、これを伝えることはとっても大切なことで)

善子(だったら私は、ルビィの勇気を讃えて、そしてそれに応えよう)

善子「ルビィ、ありがとう」ギューッ

ルビィ「あ……」

善子「私もね、ルビィと同じなのよ」

善子「最初、千歌たちがスクールアイドルをする時、絶対失敗するって思ったの」

善子「その後、諦めずに宣伝したり練習したりするのを見て、鬱陶しいとも思ったわ」

善子(あれ、全然同じじゃないわね。これじゃヨハネ悪者みたいじゃない。確かに堕天使ではあるけれど、堕天使だけど!)

善子「ま、まあ今のは言い過ぎかもしれないけど。とにかく上手くいくとは思ってなかったし、当然自分が協力するなんて考えもしなかった」

善子「でも、不思議よね。気づけば皆で一緒にスクールアイドルやってるんですもの」

善子「それはね、ルビィ。あなたがいたからなのよ」

善子「誰よりも純粋にアイドルが大好きで、純粋な笑顔を浮かべて、皆を笑顔にする。そんなルビィの姿が、私には眩しかった。温かかった」

善子「ヨハネは漆黒を好む堕天使だけど、この子となら少しくらい一緒に光の下を歩いても良いかなって、そう思った」

善子「だからね、ルビィ。あなたは私が変える前から、ちゃんとアイドルだったのよ」

善子「少なくとも、私にとってはね」

善子(言い切って、ルビィを抱く腕に力をこめる。絶対顔を見られるわけにはいかないから)

善子(ああ、きっと今の私はトマトみたいに真っ赤に違いない)

善子(姿見から必死に視界をそらすため、私は天を仰いだ)

善子(やっぱり相性が悪いわね。こんな恥ずかしい思いをするなんて。でも)

善子「ひな祭りも、悪くないかもね」

善子(ルビィとの距離がまた一歩近づいた日、私はそんなことを思った)

おしまい
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2018年5月26日
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