聖良『世間知らずな妹ですが』

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理亞-アイキャッチ3
1: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 16:56:46.59 ID:dnjAsJ7q
よろしくお願いします、とのメッセージ。

こちらこそ、と返信し終えるのを待っていたかのように。




『着いた』


淡白なメッセージ。

そっけないわけでも怒っているわけでもない、彼女の標準。

すっかり慣れたその淡白さは意にも介さない。


『出口のところのいすに座ってるよ』


スマートフォンをしまい、これからの時間につい頬が弛む。

やがて流れ始めた人の群れに目を凝らす。

ぴょこぴょこと揺れる二つ結びを発見して、腰を上げる。


「理亞ちゃん」

「あ、花丸!」


今日は理亞ちゃんとお出掛けです。

***

元スレ: 聖良『世間知らずな妹ですが』

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2: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 16:58:04.18 ID:dnjAsJ7q
***

ジッ


「どうしたの?」

「…私の、使えるのかな」


ピッ ピッ ピッ


「ああ、電車のカード? 理亞ちゃんも持ってるの?」

「持ってる」サッ


『ICAS nimoca』


「イカす名前だね」

「いかにも」

「まるは善子ちゃんが旅行のときに買ったやつを貰ったずら」サッ


『ICOCA』


「それじゃ行こうか」

「ずら」


ピッ ピッ

***
3: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 16:59:25.08 ID:dnjAsJ7q
***

ガタゴト


『次はーー』


ジッ


「理亞ちゃん、どうかした?」

「変わった駅名が多いなって」

「そうだね。この線の駅名には隠された物語があるって、善子ちゃんが熱弁してたずら」

「隠された物語?」

「なんでも、かつていた天使の世界へ帰る道のヒントだとか」

「どんなの?」

(天使の世界?)

「糀深く立ち込める谷を抜け、神の御御足たる大鳥居を潜り、稲荷神に頭を垂れると、天空に至る橋が架かり、やがて翼を授かり飛び立てるーーだったかな」

「…色々とすごい」

「まあ、善子ちゃんだから…」

「糀って谷に立ち込めるものなの? かびでしょ」

「まあ、善子ちゃんだから……」

***
4: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:00:21.34 ID:dnjAsJ7q
***

『ダアッ、シェイエスッ』


プシュー ガコン


「……ん? 大変花丸! この電車、逆戻りしてる!」

「このことだったずらね…」

「なにが?」

「善子ちゃんから聞かされてたずら。この電車に乗って10分くらいしたら異界に迷い込む、って」

「異界?」

「線路の形がひらがなの『て』みたいになってるから、Uターンするような動きを取るらしいずら。乗り慣れてないと、来た道を戻る感覚で進むのにびっくりしちゃうんだって」

「そういうこと…。でも、津島善子は変なこと言いながらもちゃんと解説してくれるんだね」

「ううん。これは一緒に聞いてたルビィちゃんが必死に調べて教えてくれたの」

「…………」

***
5: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:01:24.75 ID:dnjAsJ7q
***

『ーー、ーーです』

「おりるよ、理亞ちゃん」

「ここになにかあるの?」

「うん。軽くおやつ食べていこ」

「…意外」

「え?」

「花丸が東京に慣れてるとは思わなかった」

「えへへ…みんなで何回か来たときに色んなところ回ったからね。あと、これがあるから」スッ


『魔都歩きのしおり』


「…津島善子?」

「監修はね。でもAqoursのみんなと、千歌ちゃんのお姉さんたちも協力してくれたずら。泊まりにきたお客さんからお勧めを聞いてくれたりなんかして」

「そっか。みんな優しいね」

「うん! …あ、理亞ちゃん。改札を出るのにまたカードが必要だよ」サッ

「知ってる!」サッ

「こっちでも使えたから安心だね」


ポーン 「?!」

ポーン 「?!」

***
6: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:02:27.85 ID:dnjAsJ7q
***

「近いの?」テクテク

「うん。10分も歩かないって」テクテク

「地図も描いてあるんだ」

「目につきやすい目印しか描き込まれてないから、普通の地図より断然読みやすいずら。こっちに曲がるって」


テクテク…


「着いたずら!」

「和菓子屋?」

「そう。美味しいお汁粉が食べられるらしいずら~」ジュル

「へえ…私に和菓子で挑もうなんて、良い度胸ね」

(なんか変なスイッチ入った…って、)

「あ! 理亞ちゃんのとこ和菓子屋さん…」

「行こう、花丸。腕を確かめてやる」

(失敗だったかな…)
7: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:03:31.87 ID:dnjAsJ7q
ー風情のある和菓子屋ー


「たのもう!」ガラッ

「こ、こんにちは…」

「?? いらっしゃいませ…」

「腕を確かめにきました」

「あの、お汁粉を頂きにきました…」

「……ああ、はい。こちらに」ニコッ

(プロだ…)

「お汁粉しかメニューないの?」

「豆かんとおこわもあるみたいだね。お汁粉は粒あんとこしあんを選べるずら!」

「もちろんこしあん」

「まるは粒あんにしようかな」

「?! お汁粉といえばこしあんでしょ?!」ガタッ

「あわわわ…ほら、違うのを頼めば分けっこできるずら。ね?」
8: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:04:35.28 ID:dnjAsJ7q
「なるほど…それなら苦手なほうだったからって言い訳されずに済むね」

(なんでこんなに尊大なの…)

「すみません、粒あんのとこしあんの一つずつ下さい」

「かしこまりました。おこわはよろしいですか?」

「へえ。よっぽど自信があるのね」

「はい?」

「なんでもありません!」アワアワ

「そこまで言うのなら貰おう。ね、花丸」

「は、はあ…」

「ごめんなさいごめんなさい、おこわも一つずつお願いします」

「かしこまりました」ニコッ

(良い人でよかった…)
9: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:05:40.23 ID:dnjAsJ7q
「お待たせしました」

「わああ…お米がきらきら輝いてるずら!」

「お米はうるち米ともち米を使用しています」

「二種類も! 贅沢ずら~~」

「栗と豆類を一緒に炊き上げていますので、風味と食感もお楽しみいただけます」

「栗もお豆も大好きずら~~~♡」

(テンションが上がると『ずら』が頻出するんだ)

「お汁粉はもう少々お待ちください」


「いただきま~すっ」

「いただきます」


モグ…モグ…


「美味しいずら!」パアアッ

「…うん、まあまあ」

「お米がもちもちしてて、栗は甘くてお豆はさっぱりしてて、全然飽きないずら!」モチモチ モグモグ

「…………」モチモチ モグモグ

(黙々と食べてる。これは合格ってことかな?)
10: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:07:10.99 ID:dnjAsJ7q
「お待たせしました。こちらが粒し餡と、こちらが漉し餡です」

「お待ちかねずら!」

「こしあんに白玉…ふん、普通ね」

「奇抜なお汁粉を食べたくて来たんじゃないから…」

「いただきます」

「いっただっきま~~す!」


モチ…モチ…


「美味しいずら!!」パアアッ

「…悪くない」モチモチ…

「まるのほう食べる?」

「粒あんのお汁粉なんか飲まない」

「わざわざ二種類頼んだのはなんだったずら…」ズズ…

「お汁も美味しい! 小豆が大っきくて嬉しいずら♡」

「小豆が大きいって…わかるけど…」ズズ…


「…美味しい」

***
11: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:08:15.36 ID:dnjAsJ7q
***

ブゥゥン…

ジッ


「理亞ちゃん、バス好きなの?」

「別に。…関東には変な地名が多いなって」

「函館にも変わった地名くらいあるずら」

「ないよ」

「ほら、うーん…倶知安(くっちゃん)とか」

「倶知安は函館じゃない! 全然違う!」

「そうなの? でも北海道ずら」


キッ

ビクッ


「函館と北海道は、別」

「そ、そう…」

***
12: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:09:25.41 ID:dnjAsJ7q
***

「イタリアに寄っていくずら」

「イタリア?」

「しおりによると、近くにイタリアがあるんだって」

「…なに言ってるの?」

「だってしおりが…」シュン

「津島善子監修だからあてにならないね」スタスタ

(善子ちゃん、理亞ちゃんになにかしたのかな…)


ーイタリアのような町並みの場所ー


「ふわーーー! イタリアずら~~~!! ね、ね、理亞ちゃん。イタリアずら!」

「い、イタリアには行ったことないからよくわからない」ソワソワ

「見て回るずら!」ギュッ

「あ、ちょっと花丸…」//

「行こっ♡」

「…うん」

***
13: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:10:32.05 ID:dnjAsJ7q
***

「このへん一帯がイタリアみたいな町並みしてるんだね」

「なんで東京にイタリアを作ったんだろう」

「たまには歩いて海外旅行に行ってみたかったんだよ」

「そんなこと思ったことない」

「でも、歩いてこんなところに来られちゃうなんて素敵だね。絵本の世界に迷い混んだみたいずら」

「私、そもそもここに来るのに飛行機乗った」

「夢のないことを言わないで…」

「事実だし。…あ、テラス席でコーヒー飲んでる」

「しゃんぜりぜずら~」

「シャンゼリゼ通りはパリだよ」

「細かいことは気にしないずら」

「細かいかな…国が違うんだけど」

「どっちもヨーロッパずら!」

(おおらかな考え方だなあ)

「でも、楽しい。花丸と一緒だからかな」

「えへへ…まるも楽しいよ」

「遠かったけど、東京に来てよかった」

「あ、そういえばここ東京じゃないよ」しれっ

「?!」

***
14: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:11:34.91 ID:dnjAsJ7q
***

「途端に普通の道になったね」

「夢の終わりは儚いものずら」

(詩人だ…)

「これからどうするの?」

「また電車に乗って、次こそ東京に行くよ」

「駅あっちじゃないの?」

「ふふ…東京に向かう前に、次は中国を見ていくずら」

「へえ。中国もあるんだ」

「今度はあっさりしてるね」

「イタリアに行った後だし。花丸と一緒なら怖くもないし」

(中国は一人だと怖いってことかな?)

「ここから歩くの?」

「もう少しずら。もう見えてるけどね」

「えっ。どこ?」キョロキョロ

「ふふ…」
15: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:12:39.53 ID:dnjAsJ7q
ー中国のような景観の建物(の前)ー


「なに…これ…」

「かつて中国に存在したという伝説のスラム街を模した建物らしいずら…」

「なんか怖い」ギュ

「まるも」ギュ

「これ、入るの?」

「ううん、入るつもりはないよ。…というか、18歳未満は立入禁止なんだって」

「絶対やばい建物じゃん! 早く行こう」クイクイ

「…あ、誰か入っていくずら」


ヴィーーン…プシュウウウウウッッ!!


「ひっ?!」

「なんの音?!」

「ま、魔窟ずら…おいとましよっか」ソソクサ

「うん」コクコク


スタスタ…

***
16: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:13:42.77 ID:dnjAsJ7q
***

「花丸」

「ずら?」

「見て。猫がいる」

「うん、いるね」

「猫がいるんだ…」

「そりゃ猫くらいいるよ」

「ねこ…」

「そんなに珍しいものでもないずら。函館には猫っていないの?」

「ばかにしないで! 猫くらいいる。昨日も10匹見た」

「ええ……」


チラチラッ ソワソワ…


「もう少し見ていく?」

「うん!」

***
17: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:15:38.01 ID:dnjAsJ7q
***

「花丸、花丸」

「なに? 理亞ちゃん」

「これなに?」

「なにって、ガチャポンずら」

「なにそれ」

「理亞ちゃん、ガチャポン知らないずら?」

「うん。自動販売機?」

「似てるけど違うよ。やってみる?」

「やりたい!」

「100円玉をここに入れて、回すずら」


ガチャ ポン


「なんか出てきた」

「それが景品だよ」

「なに買うか選んでないんだけど」
18: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:16:49.96 ID:dnjAsJ7q
「ガチャポンはそういうものずら。ランダムなんだよ」

「くじなの?」

「そんな感じずら。開けてみて」


パカッ


「鳥のおもちゃだ!」

「可愛いね。まるもやってみよ」ガチャ ポン

「なんだった?」


パカッ


「猫ずら」

「猫…」

「いる?」

「いいの?! …でも悪いよ、それは花丸のやつだし」

「じゃあ代わりに理亞ちゃんの鳥さんちょうだい。交換っこずら」

「うん!」パアアッ

(可愛いなあ)

***
19: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:18:12.39 ID:dnjAsJ7q
***

「花丸」

「どうしたの?」

「この辺にはエイガってあるの?」

「エイガ? 映画館? あるよ」

「行ってみたい!」

「理亞ちゃん、映画 観たことないずら?」

「A-RISEのドキュメンタリーは映画に入る?」

「映画館で上映されたなら、たぶん…」

「姉さまと家で観たからよくわかんない」


チラッ


(時間は…別に予定が詰まってるわけでもないし平気かな)

「じゃあ観ていこっか」

「いいの?!」

「うん。理亞ちゃんのしたいことしよ」

「花丸だいすき!」

「だいすき頂きました」

***
20: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:19:57.28 ID:dnjAsJ7q
***

ー普通の映画館ー


「私、エイガに来たの初めてなんだけど…どうすればいい?」

「まずなにを観るか選ぶずら。あそこに貼ってあるやつで、気になるのある?」

「…………」ジ----ッ

(すごく真剣だ…)

「あれがいい。黒髪の人のやつ」

「『北の海まで』ずらね。まるも詳しくないけど、任侠ラブロマンスというジャンルらしいずら」

「任侠でラブロマンスなの?」

「任侠でラブロマンスずら」

「おもしろそう! 早く行こっ」ギュ

「わわわ、まだチケット買ってないよ~~~!」

***
21: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:21:26.29 ID:dnjAsJ7q
***

「ちょうどいい時間のがあってよかったね」

「うん」ソワソワ

「理亞ちゃん、お手洗いに行っておかなくて平気?」

「行っておいたほうがいいものなの?」

「まるは行くよ」

「じゃあ私も行く」


「なにか買う?」

「買ったほうがいいものなの?」

「それは好みずら」

「花丸は?」

「うーん…飲み物だけ買おうかな。まる、映画に集中しちゃってポップコーン食べ終われないから」

「ポップコーンとかあるんだ…えっ?! 花丸、やめたほうがいい! ここすごく高いよ! 詐欺だよこれ!」

「ちょっ理亞ちゃ…そういうもの! そういうものずら! しーっ! しーっ!!」

***
22: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:22:30.67 ID:dnjAsJ7q
***

ーーあにさん! 姐さんのことは、もう…

ーーじゃかあしいダボがあ!!

ーー堪忍して、あんた…うち、やっぱりまるさんのことが…

ーーほお~う、そうかい。二人揃って、ワシをこけにしとったんじゃのお!

ーーあにさん!


(う~ん…思ったより飽きちゃう展開ずら)

(有名なシリーズだから面白いかと思ったけど。理亞ちゃん退屈しちゃったかな)チラッ

「だめ…愛し合ってる二人を引き裂くのは、だめ…っ!」

(ものすごく感情移入してる?!)

「まるにい…」グヌヌ

(独自の呼び名まで付け始めた?!)

「まるにい…逃げて…早く…っ」

(…………)

(楽しんでくれてるみたいだし、まあいいか)

***
23: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:23:42.16 ID:dnjAsJ7q
***

「結構いい時間になったね」

「もうお昼過ぎなのに、まだ東京にいないなんて…」

(どういう考え方なんだろう)

「理亞ちゃん、お腹は?」

「まだ平気」

「おこわ食べたもんね。じゃあ移動してからお昼にしよっか」

「ついに東京に!」パアアッ

(東京に憧れてるだけか、これ)

「ここからだと行き方が二通りあるみたいずら。さっきと違う電車がいい?」

「別に、そこにそんなこだわりはないけど」

「せっかくだから違うほうの電車に乗るずら!」

(自分が乗りたかったやつだ、これ)

「もういっこの電車はあっちずら!」グイ

「はいはい、電車は逃げないよ」

***
24: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:25:19.75 ID:dnjAsJ7q
***

『ーー、ーーに到着です』

「おりるよ、理亞ちゃん」

「うん…」

「どうかした?」

「ここ知ってる。東京で一番おしゃれなとこだ…」

「そうなの?」

「知らずに来たの?! 失礼だよ!」

「し、失礼だったかな」

「こんなところ…このわたくしめが一体なんの用で…」ブツブツ

(また不思議なスイッチが入った)

「大丈夫、大丈夫。お昼ごはん食べにきただけなんだから。気にすることないずら」

「食べてるひまなんかないよ…気を抜いたら、食べ…食べられ…」

(東京のことなんだと思ってるんだろう)

***
25: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:26:46.32 ID:dnjAsJ7q
***

「ここでお昼にするずら!」

「お昼にはだいぶ遅めだけどね。…サラダ?」

「うん、サラダだよ」

「花丸。サラダはごはんにならない」

「まるもそう言ったんだけどね、千歌ちゃんとこのお客さんがすごくお勧めしてきたから」

「まあ、いいけど。足りなかったらカフェにでも行けばいいしね」

「ずら♡」
26: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:28:17.59 ID:dnjAsJ7q
ーとてもいい雰囲気のサラダの店ー


「………っ」

「………っ」

(は、花丸…)

(?! 脳内に直接…どうしたずら?!)

(ここ、なんか違う! 私がイメージしたサラダと違う!)

(奇遇ずら! まるも同じこと考えてる!)

(なによりまず、)

((ものすごくおしゃれ…!!))

(そして次に、)

((店員さんがみんな爽やか…!!))

「いらっしゃいませ。ご注文の方法はこちらに記載いたしております☆」

「材料をお選びいただくこともできますし、シグネチャーサラダをご注文いただくこともできます☆」

「すっきりした味がお好みでしたら、ドレッシングはレモンタヒニなどお勧めですよ☆」

(ま、眩しい…)

(しぐ…ねちゃ…?!)
27: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:29:30.44 ID:dnjAsJ7q
「ふう…注文するだけですごく緊張した」

「理亞ちゃん、レモネードは…」

「頼んだ」

「やっぱり」

「あんなに爽やかに勧められたら断りづらい…のもあったけど、レモネードがおかわり自由って聞いたことなくて、つい」

「まるもだいたい同じ感じずら。でも美味しいよ」チューッ

「うん、美味しい」チューッ

「じゃあ食べよっか」

「うん。いただきます」

「いただきます」

「それにしても、作ってもらってるときから薄々思ってたけど」

「ずら?」

「多いよね」

「…うん、多いね」

「これはお昼ごはんになるね」

「こんなにお野菜をたくさん食べること、滅多にないずら」

「すごく健康的なことしてる気持ちになるね」

***
28: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:31:06.56 ID:dnjAsJ7q
***

「美味しかったずら~」

「ほんとに多かった…」ウッ

「大丈夫?」

「大丈夫…」

「最後に三杯もレモネード飲むからだよ」

「うるさい! …だってせっかく飲み放題だったんだもん」

「理亞ちゃん、歩く元気はある?」

「そのくらいはあるけど」

「だったら、食後の運動がてら歩こう。小一時間も歩けばきっとすっきりするずら」

「それもしおりのアドバイス?」

「あ、バレた」

「ここのサラダどうなってるの…」

***
29: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:32:39.04 ID:dnjAsJ7q
***

「理亞ちゃんはお化け屋敷って平気?」

「姉さまと一緒なら平気」

「聖良さんそういうの強そうだもんね」

「ううん、逆。姉さまああいうの泣いて怖がるから」

「えっ」

「私も怖いけど、隣であそこまで怖がられたら怖いのなんか忘れて『私がしっかりしなきゃ』って思えるから」

「い、意外ずらあ…」

「大阪の遊園地に行ったときなんか、途中で歩けなくなって係の人に迎えにきてもらってスタッフ通路から外に出てたよ」

「そんなになるのに入ろうとはするんだね」

「毎回『これまでの私とは違いますから』って誇らしそうに入って、だいたい前回以上に怖がってる」

(理亞ちゃん、割と容赦なく聖良さんの醜態を言いふらすな…)
30: ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶) 2018/04/07(土) 17:33:42.23 ID:dnjAsJ7q
「なんでお化け屋敷の話?」

「東京にはたくさんお化け屋敷があるらしくて、」

「まさか行くつもり?!」

「時間があれば行ってみたいなって」

「やだ! 無理! 姉さまがいないのにお化け屋敷なんて!」

(犠牲陽極みたいな扱いされてる)

「たくさん情報収集したのに」

「なんでお化け屋敷の情報収集なんかに力を入れたの」

「『今日なにするの?』『お化け屋敷行ってくる』って、なかなか面白い会話だと思って」

「そんな小ネタのために…」

「中でも一番怖いってほとんど満場一致だったのは、殺人鬼とかくれんぼするやつだったよ」

「それはもはやお化け屋敷じゃない気がする」

「殺人鬼から隠れながら、閉じ込められた家からの脱出を試みるらしいずら」

「…………」

「楽しそうずら~」

「だから、絶対行かないからね」

***
33: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:01:20.18 ID:E1UJPjzP
***

キョロキョロ


「どうかした?」

「この辺、色んな家があるなあって」

「そうだね。東京一おしゃれって言われるのも頷けるずら」

「家って、建てるものなの? 買うものなの?」

「ずら?」

「例えばあの家って『注文住宅』ってやつでしょ」

「見た感じ、たぶん…」

「あっちの三つは『建て売り』ってやつでしょ」

「あれはまあ、そうだと思うずら」

「建て売りのほうは『買う』のにぴんと来るけど、注文住宅も『買う』っていうのが納得できない。『建てる』んでしょ」

「そんなこと言われても、そういうものだから…」

「…………」ジトッ

「な、なに?」
34: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:01:53.49 ID:E1UJPjzP
「納得できないことを『そういうものだから』で落とし込もうとされるの、好きじゃない」

「……っ!」ビクッ

「ハァ…」

「べ、別の例に置き換えて考えてみれば納得できるかもしれないずら!」

「別の例?」

「例えば、その…ハンバーガー! 最近は、具を一から選ぶことができるらしいずら」

「そういう店もあるらしいね」

「そうやって具を全部自分で選んだとしても、出来上がったハンバーガーを『買う』ことには間違いない…から…」チラッ

「…………」

「…………」ドキドキ

「なるほど。そうやって作られたものを買うもんね。注文して建てたあと『買う』んだから、それでいいんだ」

「な、納得できた?」

「できた。ありがとう、花丸」ニコッ

(よ…よかったあああああ……)

***
35: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:02:25.62 ID:E1UJPjzP
***

「まる、ずっと気になってることがあるんだ」

「なに?」

「ミューズとアライズって、どうしてあそこまで凄い存在になったのかなって」

「どういう意味?」

「うーん…まるたちとなにが違ったんだろう、というか…」

「μ's A-RISEと自分たちを比べるなんておこがましいよ」

「今すぐに肩を並べられる相手じゃないのはもちろんわかってるずら。でもスクールアイドルをやってる以上、目指すべきはやっぱりあの人たちなんだろうな…と思って」

「μ'sとA-RISEは別格なんだよ。はじめからそういうカリスマに導かれてたの」

「そういうものかなあ…」

「そういうものだよ」

「…………ん?」

***
36: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:03:32.84 ID:E1UJPjzP
***

「花丸」

「なに?」

「わがままボディってなんなの」

「わがままボディ」

「なにがわがままなの? わがままが許されるからわがままボディなの?」

「さ、さあ…」

「別に体型がどうだってわがままくらい言っていいでしょ」

「理亞ちゃん、なんか怒ってる?」

「それともわがままな人にそういう体型が多いってこと? へえ、逆転の発想だね」

「もはや一人で会話してるずら」

「姉さまは確かにスタイルいいけど、わがままボディとは違う気がする」

(もうそろそろ中間地点だなあ)

「でも花丸はわがままボディに該当する!」

「突如火の粉を飛ばすのやめてほしいずら」

「ルビィは似たようなもんなのに…」

(とりあえず放っておこう…)

***
37: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:04:09.09 ID:E1UJPjzP
***

ザワザワ ガヤガヤ


「……ん? あ、私ここ知ってる!」

「まるもテレビで見たことあるずら!」

「人が多い…」キョロキョロ

「はぐれないようにしないとね」ギュ


「花丸! あれ! 犬!」グイグイ

「あわわ」

「花丸! 大っきなスクリーンがある!」グイグイ

「あわわわ」

「花丸! ここよく通行止めになる交差点でしょ!」キャーッ

「理亞ちゃん理亞ちゃん、立ち止まったら迷惑ずら!」グイグイ


「すごかった~…テレビで見たことある場所ばっかりだったね」

「そ、そうずらね…」ゼエハア

(手を繋いでた分、余計に振り回された…)

***
38: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:05:11.03 ID:E1UJPjzP
***

「まだ歩くんだね」

「うん。さっきのところでちょうど半分くらいかな」

「てっきりあそこが目的地だと思った」

「しおりでは、あそこは危険地帯だから長居しちゃいけないことになってるずら」

「津島善子は苦手そうだもんね、あの人の多さ」

「そうだね。有名なだけあってお勧めスポットもいっぱい教えてもらったんだけど、頑なにしおりに入れてくれなかったずら…」シュン

「つ、次来たときに行けばいいじゃん」

「でもせっかく来たのに…」

「きっと津島善子も一緒に行きたかったんだよ。だから今回のしおりには書けなかったとか」

「そ、そっかあ! 善子ちゃんも可愛いところあるずら~」パアアッ

「………」イラッ

「…いや、やっぱり花丸には向いてないと思ったんだよ。私もそう思う」

「ずらあっ?!」

「私みたいなしっかりした人と一緒じゃなきゃだめだね。津島善子とかルビィじゃ頼りにならないから、だめ」プイッ

「……うん!」

(理亞ちゃん一人じゃ危なっかしいし、やっぱり理亞ちゃんと一緒に来たいかな)

***
39: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:06:17.35 ID:E1UJPjzP
***

「理亞ちゃん、蛇は好き?」

「好きかどうか考えたことない」

「嫌い?」

「……いや、嫌いじゃないかも」

「よかった!」

「え…なに? 蛇の動物園でも行くの?」タジ…

「ん~、着くまでの内緒ずら♪」

(絶対そうじゃん)

「蛇の動物園でしょ」

「内緒ずら」

「隠す意味ないから。どうせ行くんだし」

「先に言っちゃったらつまんないずら」

「一緒だよ。蛇の動物園でしょ」

(し、しつこい…)

***
40: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:07:19.35 ID:E1UJPjzP
***

「お腹はどう?」

「だいぶ普通に戻った」

「よかったずら。疲れてない?」

「ちょっと疲れた」

「たくさん歩いたもんね。着いたら座れるから」

「動物園で?」

「動物園とは言ってないずら」

「動物園じゃん!」

「導き出した結論に疑いがなさ過ぎる」

「蛇なんて動物園にしかいないんだから、当たり前でしょ」

「…………。あなたは今日、常識を覆されることになる…!」

「なにそれ」

「ずらあ…」

***
41: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:08:29.84 ID:E1UJPjzP
***

「ここみたいだね」

「ラーメン屋?」

「こっちのビルずら」

「…なんで蛇の話なんかしたの? ききたかっただけ?」

「それは今にわかるよ」

「いや、わかんないから」

「少しはまるのことを信じてくれてもいいずら…」

「花丸をっていうか、津島善子を信じてないんだよ」

(善子ちゃんほんとになにかしたのかな)

「とりあえず上がろう。えっと…8階だって」

「まあ、花丸と一緒ならなんでもいいけど」


ウイーーーン チン


「到着ずら!」

「こんな狭いビルでなにを………ん? スネー…ク?」
42: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:09:40.16 ID:E1UJPjzP
ーとあるスネークな天国ー


「…………!!」

「わああ~! すごい、ヘビさんがいっぱいずら!」

「な、なに、これ、なんでこんな、へびっ」

「ようこそ。初めてですか?」

「ずら!」

「こちらからお好きな子をアテンドとしてお席にお連れいただけますよ」

「へ~! 理亞ちゃん、どの子がいい?」

「せ、席に連れてってどうするの?!」

「一緒にお茶するんですよ」

「一緒にお茶ァ?!」

「みんな可愛くて迷っちゃうずら~…理亞ちゃんが決めないなら、まるが決めちゃうよ?」

「別にいいよ…」クラ

「途中で他の子と交代することもできるので、あまり悩まなくていいですよ」

「そっかあ。んー…じゃあこの子! 鼻がしゅっとして格好いいずら!」

「ではお席までお連れしますので、あちらへ」

「はーーい! 理亞ちゃん、行くよ」グイ

「 」ポケーッ
43: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:12:23.77 ID:E1UJPjzP
「お飲み物はなにになさいますか?」

「まるはりんごスカッシュを」

「私は…アイスコーヒー…」

「あとケーキの盛り合わせ一つ下さい」

「かしこまりました。ふれあいはされますか?」

「ふれあい?!♡」

「ふれあいィ?!」

「あっちの大きな子たちとふれあうことができますよ」

「やりたいやりたい! やるずら! 理亞ちゃんは」

「私はいい!!」

「ではお客様のみですね。少々お待ちください」

「楽しみずら~」
44: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:13:47.26 ID:E1UJPjzP
「見て見て理亞ちゃん、この子バロンくんって名前らしいよ」


クネクネ


「ずら~」


モゾモゾ


「ずら~~」


シャーーッ


「ずら~~~~♡」

「絶対おかしい!」ドン!

「ずら?!」ビクッ
45: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:15:11.98 ID:E1UJPjzP
「理亞ちゃん、蛇嫌いじゃないって言ったずら」

「好きとも言ってない」

「ずらあ…」

「だいたい、仮に好きだって答えたとして、蛇とお茶したり触れ合ったりするとか考えないから!」

「でも可愛いよ?」

「可愛いかどうかは別の問題!」

(あっ、可愛いとは思ってるっぽい)

「猫カフェならまだしも…」

「バロンくん隅っこ好きだね~~」

「聞いてないし!」

「蛇嫌いならわかるけど、そうじゃないなら、せっかく来たんだから楽しまないと損ずら。ねー」


シャーーッ


「……それもそうかも」
46: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:17:19.78 ID:E1UJPjzP
「お待たせしました。こちらりんごスカッシュとアイスコーヒーと、ケーキの盛り合わせです」

「わーい♡」

「ん? これ…」

「これは、当店名物のヘビスケットです」ニコッ

(自分で名物って言った)

「ごゆっくりどうぞ」


「いただきますずら!」

「いただきます」

「好きなケーキ食べていいからね」

「ありがとう」

「ヘビスケット…ほらバロンくん、お友達ずら~」

(やると思った)


シャーーッ


「えへへ…喜んでるみたいずら」ポリ

(目の前でお友達を食べられて喜んでるかな)ズズ…
47: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:18:32.76 ID:E1UJPjzP
「そろそろふれあいなさいますか?」

「! 待ってたずらっ」

「それではあっちのソファに」

「理亞ちゃんも行こっ」

「バロンは独りぼっちにしとくの?」

「ずらっ! うう…」

「じゃあ、寂しくないように一旦みんなのところに帰しておきましょうか」

「はい! よろしくお願いしますずら!」

「世話が焼ける蛇だね」ホッ

「これで心置きなくヘビさんと触れ合えるずら!」

「ふ! れ! あい! ふ~れあいっ!」


「………」ソワソワ
48: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:19:37.48 ID:E1UJPjzP
「どの子がいいですか?」

「うーん…迷うずら…」

「見て花丸、こいつ木の上にいる」

「ほんとだ…」

「その子と触れ合ってみますか?」

「あ…はい、そうするずら!」

「この子はジャガー、雄です。ではじっとしてくださいね」

「ジャガーって名前?」

「そうです。品種はジャングルカーペットパイソンといいますよ」

「なんだか格好いいずら」


ニョロニョロニョロ…


「わわわ、巻き付いてくるずら!」

「今日はご機嫌なようですね。機嫌が悪いと威嚇したりしちゃうんですよ」
49: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:21:10.79 ID:E1UJPjzP
スルスル…


「ジャガーくん?! どこ行くずら?!」

「頭の上に登っていってるよ」

「ジャガーは高いところが好きなので」


ススス…


「首に! 首にジャガーくんが!」

「花丸、蛇使いみたい」

「全然使えてないずら!!」


ジーーッ


「ジャガーくんが見詰めるずら…」

「あ。見て見て花丸、こいつ頭の模様がハートに見えるよ」

「目が…離せない…ずら…」
50: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:23:46.46 ID:E1UJPjzP
「お疲れ様でした」

「は~~~、楽しかったずら! ありがとね、ジャガーくん」

「花丸、振り回されっ放しだったね」

「自由な子だったずら…理亞ちゃんみたい」

「は?」

「な、なんでもないよ!」

「まったく… ………」ソワソワ

「理亞ちゃんはふれあいしないの?」

「ヴェェッ?!」

「いかがですか。この子なんか、おとなしめですし怖くありませんよ」

「ええ……んっと……」


「…触れ合いたいです」

***
51: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:25:35.31 ID:E1UJPjzP
***

「この後はどうするの?」

「8時前の電車に乗るから……まだもう少し時間あるね」

「しおりにはなんて?」

「時間の空き具合によってルートと行き先の候補が何通りか書いてあるずら」

「意外と有能だな…」

「どれか気になるのはある?」

「そうだな……………あ、これ可愛い。ここ行ってみたい」

「ずら。じゃあこのルートにしよっか!」

「うん」

「駅の入り口はっと…」

***
52: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:28:08.79 ID:E1UJPjzP
***

ガタゴト


「この電車も外は見えないんだね」

「地下を走ってるからね。まるも電車で外の景色を眺めるの好きだから、残念だな」

「……」

「? 理亞ちゃん、どうかした?」

「地下鉄って、どうやって地下に入れたの?」

「よくある質問ずら。それはね、」

「だって電車ってこんなに大きいんだよ! 姉さまの何倍も!」

(一旦言わせよう)

「姉さまが何人掛かりでも持てなさそうなくらい大きいのに、それを上から地下まで運ぶなんて…すごい力…」ワナワナ

(聖良さんは函館の筋肉超人かなにかかな?)

「待って!」ハッ

「そもそも…この大きさで、あの入り口をどうやって潜ったの…?!」

(そっちが先に思い浮かんだんじゃないんだ)

「昔は小さかったってこと…?」ピーン

(電車さんが成長することになってる理亞ちゃん可愛い)

***
53: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:30:47.87 ID:E1UJPjzP
***

「着いたずら~」

「もうすっかり夕方だね」

「そうだね。でもこの町並みは夕陽に映えるずら~」

「…確かに」

「下町っぽい雰囲気で落ち着くね」

「うん。特にこの商店街なんて、昔ながらって感じする」

「あ、ちなみに目的のお店はここにあるよ」

「そうなの?」

「雰囲気が噛み合わないと思った?」

「…思った」

「まるもそう思ったずら」

「…ふふっ」「えへへっ」

「さ、行こっか」

「うん!」

***
59: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:31:50.20 ID:E1UJPjzP
***

ー思ったより周りに馴染む可愛いカフェー


「ここみたいだね」

「結構狭いね」

「しっ! なんてこと言うずら! …こんばんは~」

「いらっしゃいませ~」

(ゆるい)

(ゆるい)

「メニューここです」トン

「わあ……!!」

「すごい…」

「みんな可愛いね! このカラフルなのなんずら?」

「カラースプレーだよ。お菓子を作るときに使うチョコ材」

「へ~! コーンにチョコつけてるんだ」

「そう言われるとなんか印象が…でもそういうこと」

「お嬢さん、お菓子とか作るの?」

「あ、はい、家でたまに、ねえ…お姉ちゃんと…はい…」モジ…

(人見知り発揮してる理亞ちゃん可愛い)
76: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:35:22.37 ID:E1UJPjzP
「まるはカフェラテの下さい」

「私は抹茶のにする」

「さっきコーヒー飲んだもんね」

「うん」

「できたらお呼びするので、座って待っててくださいね」

「は~い」


「見て、花丸。ノートが置いてある」

「なにが書いてあるの?」


ペラ


「ああ…ここに来た人たちが感想とか書いていってるみたい」

「ずら~! まるたちも書こ!」

「えっ?! い、いいよ」

「そんなこと言わずに、一緒に書くずら。はい!」

「え、ええ…」

「~~♪」サラサラ

(たまに強引だなあ。…嬉しいからいいけど)カキカキ
86: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:37:27.75 ID:E1UJPjzP
「お待たせしました、できましたよ」

「わ~い! はい、理亞ちゃんのこっち」

「ありがとう」

「見て見て理亞ちゃん! にこちゃんマークが書いてあるずら!」

(矢澤にこのマークだ…)

「これ、どうやって食べたらいいんですか?」

「先に中の飲み物を飲んでください。しばらくは持ちますけど、あまり時間が経つとさすがに溶けて染みちゃいますからね」

「コーンってコーヒー通さないずらね!」

「そんなわけないでしょ」

「ずら?」

「チョコレートでコーンの内側をコーティングしてあるみたい」

「その通りです。飲み物は甘みを抑えてるので、内側のチョコやカラースプレーを溶かしながら飲んでいただくといいですよ」

「んあっ! このコーヒー意外と苦いずらあっ!」ンギャーー

「花丸、話聞いてなかったでしょ」ズズ…
98: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:39:49.25 ID:E1UJPjzP
「チョコレートの味がしてコーンも美味しいずら」サクサク

「私、ソフトクリームってあんまり食べないんだけど」サク…

「ずら? どうして?」

「コーンがあんまり好きじゃないの」

「こ、ここでその話を始めた勇気には感服するずら…」

「ソフトクリームのコーンって、だいたい薄くて安っぽくて、しかも半分くらいからはソフトクリームも入ってなくて、ただの味がないしなしなしたものになるでしょ」

「散々言うずら」

「ここのコーンは…好き」サク

「……えへへ」

「なに?」

「一緒に来てよかったなあって」

「…うん」サクサク


『理亞ちゃんと東京デートで来ました♡ 楽しみ』

『花丸に連れられて来た』


『花丸と一緒に来た コーンも美味しかった』

***
108: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:41:55.16 ID:E1UJPjzP
***

ガタゴト


「結構いい時間になったね」

「いっぱい遊んだもんね~」

「電車の時間は大丈夫そう?」

「うん、次の次の駅で乗り換えて、20分くらいみたいだよ」

「そっか。今日だけで色んな電車に乗ったね」

「ずら! 赤いのと、黄色いのと、横のと、茶色のと、赤のと…とにかくいっぱい乗れたずら!」

(同じ表現のやつ出てきた)

「うん。あと、一生分の人を見た気がする」

「ずら…確かに、どこに行っても人が多くて疲れちゃった」

「ずっと案内してくれてありがとう、花丸」

「お、おらは別に…善子ちゃんのしおりが…」//

「それでも、実際に手を引いて案内してくれたのは花丸だから。それに、花丸と一緒だったからこんなに楽しかったんだよ」

「うう…えへへ……まるも、理亞ちゃんと一緒に来られて楽しかったよ」

「また来ようね」

「うん! 次は善子ちゃんたちも一緒に行くずら!」


ピキッ


「そ…っ」

「そ?」

「そうじゃないよ! 花丸のばか!!」

「ずらあっ?!」

***
111: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:42:40.08 ID:E1UJPjzP
***

「電車何分だっけ?」

「57分に、えっと…12番線の快速ずら」

「10分くらいあるね」

「あ! だったらお弁当買おう! 晩ごはんに」

「そうだね、ここから二時間くらいまた電車だもんね。でもそんなには時間ないからぱぱっと決めなきゃだめだよ…って、あれ? 花丸?!」

「あっちからいい匂いがするずら~~♡」フラフラ

「ちょっ! だから、待ってってば!」タタタ
122: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:44:27.25 ID:E1UJPjzP
「メンチカツ弁当に豚重弁当、わあ…おにぎりに天ぷらが刺さってるのもあるずら!」

「飲み物でも買っておいたほうがいいかな…」キョロキョロ

「む?! 沼津のお弁当がある…」

「あ、姉さまとルビィたちにお土産を…」ウロウロ

「オムライスとエビフライのお弁当! 豪華ずら~」


イマナンジー?

ンー、モウチョットデハチジニナルヨー


「……あああ! 電車の時間!! は、花丸!!!」バッ

「ずら? あ、そうだねお土産も」

「じゃなくて! 電車! 時間! 行くよ!!」グイッ

「あっまま待って、まるまだお弁当選んでるずら~」

「ずるい! 私だってお弁当選びたいのに!」

「理亞ちゃんにはこのシウマイ弁当なんかお勧めずら」

「あ、美味しそう…私それ好きかも……って、ああああああ!!!」

***
134: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:47:10.23 ID:E1UJPjzP
***

プシュー ガタゴト…


「な…なんとか…間に合った…」ゼエハアゼエハアゼエハア

「は…走ったから…お弁当…ぐちゃぐちゃかも…」ゼエハアゼエハアゼエハア

「は、花丸がいけないんだよ! 時間忘れてお弁当選びなんかに夢中になるから」

「理亞ちゃんだって楽しそうにお土産屋さんの中ふらふらしてたずら!」

「………ふふ」「………えへへ」

「最後ドタバタだったけど、私たちらしかったかもね」フゥーッ

「ずら。なんとか間に合ったのも含めてね」フゥーッ

「姉さまにたくさんお土産話できちゃった」

「明日は善子ちゃんたちと沼津でたくさん遊ぶずら」

「ふふ…姉さま、そんなにたくさんお話聞いてくれるかなあ」

「聞いてくれるずら。聖良さん優しいから」

「そうだよね」
142: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:48:33.56 ID:E1UJPjzP
ガタゴト… ガタゴト…


「ねえ、花丸」

「なに? 理亞ちゃん」

「楽しかったね」

「そうだね」

「また来たいね」

「必ず行くずら」

「違うんだよ。そうじゃなくて、ふたり…で…」

「理亞ちゃん? ……あ」
147: ぬし ◆z9ftktNqPQ (もんじゃ) 2018/04/07(土) 21:49:37.74 ID:E1UJPjzP
スゥ…スゥ…


「たくさん歩いたし、たくさんはしゃいだもんね」


ナデ…


「んん…花丸…」ムニャ

「はいはい、まるは隣にいるよ」

「んん…へへへ…」スヤ…

「まるも、着くまで寝ちゃおっかな」


瞳を閉じると、甦るのはたくさんの笑顔、笑顔、そして笑顔。

少しずつ、あなたとの距離が縮まっていっている気がする。

明日はきっと新しい笑顔に出会えると信じて。

そんな幸せな気持ちで、ゆらりゆらりと眠りの淵へ。

少しだけ、おやすみなさん。



終わり
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『聖良『世間知らずな妹ですが』』へのコメント

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