善子「大学デビュー」

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善子-アイキャッチ27


善子「ふぁ……よく寝た、っと」チラ

女「……んん」スースー

善子(私の隣では、昨日落とした女が眠っていた。名前は……聞いた気もするけど覚えてない)

善子「こうやって見ると、あんま可愛くないわね、こいつ。見かけたときはそこそこいけると思ったんだけど」

善子「不思議なもんよねー」カチッ、フー

善子(つまんないわね、人生って)

善子(大学に入って、今まで以上に世界が広がるって思ってたけど)

善子(むしろ逆。まるで魔法でも解けたみたいに私の世界は重く暗く色あせていって)

善子(何をしても全然楽しくなかった)

pixiv: 善子「大学デビュー」 by あめのあいまに。

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善子(半ば自暴自棄で、スリルを求めて始めたナンパだけど……)

善子(どいつもこいつも、ちょっと声かければ簡単になびいて、あまりにも思い通りにいき過ぎて余計に腹立たしかった)

善子(全く馬鹿にされてる気分だわ。天罰っていうものが本当にあるのなら、不幸や不運なんかより、今の方がよっぽどそれらしい)

女「あれ、善子ちゃん煙草なんて吸うんだ」

善子「あら、起きたの? まあね。嗜む程度に」

女「ふーん。体に悪いからやめた方が良いよ? 善子ちゃんせっかく美人なのに」

善子(余計なお世話よ)イラッ

善子「そういえば私お金なくなっちゃったんだけど、貸してくれない?」

女「えー。台無しだよー」

善子「楽しい思いさせてあげたんだから良いでしょ。ほら」

女「仕方ないなあ。幾ら必要なの?」

善子「んー、二万円くらい」

女「……今度会ったら返してよ。絶対だからね?」

善子「ありがと」

善子(私とあんたの間に、『今度』は来ないだろうけどね)

善子(ホテルを出た私は、受け取った諭吉をハンカチーフ代わりにひらひらと振って、名前も知らない女と別れた)

善子「そういえば、あの子……」

善子(どこか千歌と似ていた気がする。千歌は今どこで何をしているんだろうか。花丸や、ルビィも)

善子(もうずっと、連絡も取ってないわ)

善子「はぁ……」

善子(とりあえず、大学行きますか)

善子(まあ何も持ってないけど)





善子「げっ」

善子(大学に着いて早々、ダイヤと鉢合わせた)

ダイヤ「げっ、じゃないですわ。電話にも出ないで……散々探したんですよ」

ダイヤ「家にも帰らず、一体どこで何をしていたんですか」

善子「探してなんて頼んでないし。私が何してたって勝手でしょ」

ダイヤ「昨日はあなたの家で勉強会をすると話したでしょう」

善子「ダイヤが一方的に押し付けてきたんでしょ。私はするとは言ってないし、放っておいてよ」

ダイヤ「そうはいきませんわ! 私はあなたのお母様から『善子をお願いね』って託されているのですから」

善子「知らない!」

ダイヤ「もう、いつまでも聞き分けのない子供みたいなこと言ってないで……あっ、こら」

善子「ダイヤの馬鹿っ、阿呆っ、世話焼きババア!」ダッ

ダイヤ「なっ――善子さん!」

善子(私は小言を続けるダイヤに、小学生みたいな罵倒を浴びせてから脱兎のごとく逃げ出した)

善子(三年になって成績が伸びていた私は、担任の奨めるまま志望校のランクを上げた)

善子(候補はいくつかあったけど、別にやりたいことや行きたいとこも無かったし、適当に知り合いの通う大学を第一志望に選んだ)

善子(まさか受かるとも思ってなかったけど、そうして私はダイヤの後輩になった)

善子(いつの間にかママからダイヤに話がいってたみたいだけど、そのせいで毎日小姑につつかれる嫁みたいな気分よ、こっちは)

善子(もっとよく考えて選べば良かったかしらね)

善子「授業って気分でもなくなったし、どうしよ」チラッ

イマカラサービスタイムヲカイシシマース

善子「幸い軍資金は手に入ったし、打ってきますか」

善子(私はけたたましい喧噪に包まれるパチスロ店へと、吸い込まれるように入っていった)



善子「はあ、最悪。なんなのあのクソ台。おかげで素寒貧よ」

善子(最近物事が思い通りに進み過ぎて、自分が運に恵まれてないってこと完全に忘れてたわ)

善子「はー、次の仕送り日までどうしよ。マジで文無しなんだけど」

善子(ママは……前借りとかできないわよね。理由を聞かれたらアウトだし)

ダイヤ「……善子さん」

善子「しつこいわね、ダイヤも」

ダイヤ「善子さんのためを思ってのことです。今日だって講義をサボって……いい加減単位を落としても知りませんよ」

善子「いつも言ってるけど余計なお世話よ」テクテク

ダイヤ「そういうわけにはいかないといつも言っているでしょう」テクテク

善子(なに、もしてかしてついてくる気? だったら)

ダイヤ「だいたい善子さんは以前から――」クドクド

ダイヤ「あれ、いつもと違う道ですのね」

善子「ええ、気分を変えてみようと思ってね」

ダイヤ「それは良いですが、若い女性がこんな薄暗い路地など、無闇に入るものではありません」

善子(それはあんたもでしょうが)

善子「ねえ、ダイヤ」

ダイヤ「なんですか。言っておきますがまだお説教は終わって」

善子「いい加減やかましいのよ」ドンッ

ダイヤ「ひっ」

善子「静かにしないとその口、塞いじゃうわよ」スッ

ダイヤ「……っ」

善子(少し顔を近づけただけで目を強く閉じちゃって……私のことなんて放っておけば、怖い思いもしなくて済んだのに)

善子(それにしても壁ドンってやつ、結構使えるわね。昔、ギルキスの集まりで梨子から聞いといて正解だったわ)

善子(ま、当時はこんな風に実践するなんて思ってなかったけど)

善子(……はあ。昔のこと考えたら気分下がったわ。やめよ、やめ。もう帰りましょう)スタスタ

ダイヤ「」ヘナヘナ

善子「ここらへん物騒だから、ダイヤも襲われないうちに帰んなさいよー」ヒラヒラ

善子(よし、ついてきてないわね)

善子「はーあ、これからどうやって食いつないでいきましょうかね」

善子「それを考えると憂鬱だわ……ただいまー、っと」ガチャ

善子「誰もいないって分かってても、つい言っちゃうのよねー」

善子「あれ? なんか部屋が片付いてるんだけど。またダイヤったら勝手に入ったわね」

善子「ママも合鍵まで渡すことないのに。こっちにもプライバシーってもんがあんのよ」

善子「って、なにこれ。お鍋?」

善子(なになに……)

ダイヤ『作りすぎてしまったので差し入れですわ』

善子「地獄に仏とはこのことね。しかし、さっきのダイヤはこれを届けてくれた帰りだったってわけね」

善子「ちょっと悪いことしちゃったかしら……」

善子「いやいや、でも道端で出会い頭に説教始める方が悪いわよ。うん」

善子「……」シーン

善子「ちょっと様子見に行きましょう。別に心配とかじゃないけど」ガチャ

善子「まだ腰抜かしてたら笑ってやるんだから」

善子「……なんか騒がしいわね。これは良くないと私の堕天使アンテナがビンビンに告げているわ」

善子「覗いてみますか」チラッ

ダイヤ「や、やめてください」

「つれないこと言うなよー」

「こんな場所に君みたいな可愛い子がいたら危ないから安全な場所に避難させてあげよってんじゃん」

「そうそう。まあ気持ち程度の用心棒代はいただくけどね」

「いただくのは気持ちじゃなくて体だけどな」

「「ギャハハ」」

善子(うわあ……典型的な奴らね。見た目もギャグのセンスも最悪)

善子(ああいうのは大抵上京してきて調子乗ってるだけで根はビビリなのよ。つまり)

善子「お巡りさん、こっちでーす!!!」

「やべえ。サツが来るぞ」

「ちっ、余計な真似しやがって。逃げるぞ」

善子「ふっ、堕天幻影術の前には不良たちも無力ね」

善子「さて……」

善子「ほら、ダイヤ大丈夫?」

ダイヤ「……あ、善子さん」

ダイヤ「え、ええ。すみません。お見苦しいところを」

ダイヤ「それに助けていただいてありがとうございます」

善子「気にしないで」

善子(元はといえば私が悪いんだし)

善子「ここは危ないって言ったでしょ。今度こそすぐに帰りなさいよ」

ダイヤ「そうですね。そうしますわ」

善子「じゃ、今度こそばいばい」

ダイヤ「ええ、また」

善子「あ、それと」

ダイヤ「はい?」

善子「お鍋、ありがと。じゃね」ダッ

ダイヤ「あ、善子さん……ふふっ」

ダイヤ「変わったと思ってましたが、やっぱり善子さんは善子さんですわね」



翌日

善子「ダイヤー、この漫画の続きはー?」

ダイヤ「まだ買ってません」

善子「はあ、これだからダイヤは」

ダイヤ「というか善子さんはどうして私の家にいるんですか!」

善子「えっ、それは……」



善子『あー、お鍋美味しい。ダイヤの手料理を毎日食べる奴は幸せ者ね』

善子『……ダイヤ、ちゃんと帰れたかしら』

善子『昨日のあれを見たら、口やかましいおばさんみたいだったダイヤが、急にか弱い乙女に見えてきたわ』

善子『まあ、そうよね。ダイヤだって先輩とはいえ、まだまだ若い女の子なんだし』

善子『それにしても明日からどうやって生きていこうかしら』

善子『……そうだ!』

善子『次の仕送りが入るまでダイヤのところでお世話になれば良いじゃない!』

善子『そしたらダイヤは私に守ってもらえる、私は幸せ者になれる。Win-Winってやつね』

善子『そうと決まれば早速明日から厄介に……もとい、警備に行きましょう』



ダイヤ「善子さんはALS○Kか何かですか?」

善子「まあ似たようなもんだと思ってくれて良いわよ」

ダイヤ「結構です。間に合ってるのでお帰りください」

善子「お金がない私に帰る場所なんてないわ……」

ダイヤ「知りませんわ、そんなこと……と言いたいところですが」

ダイヤ「今の善子さんを放っておいたら何をやらかすか分かりませんから」

ダイヤ「お母様からお願いされた手前もありますし」

善子「助かるわー」スパー

ダイヤ「って、あなた何してるんですか!」

善子「タバコよ、タバコ。見て分かんないの?」

ダイヤ「人の部屋で勝手に吸わないでください! そもそも善子さんはまだ未成年でしょう!」バシッ

善子「あ……」

ダイヤ「これは没収です」

善子「そんな……」

ダイヤ「はあ、善子さんはやっぱり変わってしまったんでしょうか」

善子「何よ、急に」

ダイヤ「いえ、なんでも。それより大学に行きましょう。善子さんは今日二限からでしたよね」

善子「なんで知ってるの。怖いんだけど」

ダイヤ「ふふふ、黒澤家の力を甘くみないことですわ」

善子「えっ、嘘よね……?」

ダイヤ「さあ?」

善子(この家にいる間は、ダイヤの言う通りにしましょう)

善子(別にビビってないけどね? 泊まらせてもらう代わりってだけだからね?)





善子「久々の講義だったけど、案外ついていけるもんね」

善子「小テストがあるのは知らなかったけど。ダイヤがいなきゃ本当に落単してるところだったわ」

善子「昼は……学食は混んでるだろうし、って、そもそもお金ないんじゃん」

善子「このまま夜まで我慢かー」ピロリン

善子「ん?」

ダイヤ『学食に席を取っておきました。一番安いうどんですが今日は奢りますわ』

善子「やった! 持つべき者は黒澤ダイヤね。我ながら調子良いとは思うけど」スタスタ

善子「お待たせ!」

ダイヤ「善子さん、講義はどうでしたか?」

善子「いやあ、楽勝だったわよ。私にかかればこの程度の試練、なんとでもないわね」

ダイヤ「そうですか。それは何よりですわ」

善子「なによ、今日はお説教しないわけ。調子狂うわね」

ダイヤ「あれはしてる方もあまり気分が良いものじゃありませんので」

ダイヤ「今日の善子さんは夜遊びもせず講義も出席してるので、する理由もありません」

ダイヤ「それよりも、この調子でこれからも真面目にお願いしますわ」

ダイヤ「善子さんはポテンシャルはあるんですから、せっかくの持っているものを無駄にしないように」

善子「あー、はいはい。説教っぽくなってるわよ。まずはご飯をいただきましょう」

ダイヤ「それもそうですね。では」

「「いただきます」」

善子「うーん、染みるわ。ただのうどんがここまで美味しく感じられたのは初めてよ」

善子「ダイヤ、ありがとう! ごちそうになっちゃって悪いわね」

ダイヤ「いえ、構いません。栄養失調で倒れられる方が困りますし」

善子「そんなことは……あったかも」

ダイヤ「私がいなかったらどうやって飢えを凌ぐつもりだったのか」

善子「え、そりゃ私ほどの美人が手っ取り早くお金を稼ぐには」

ダイヤ「善子さん……?」ギロッ

善子「じょ、冗談よ。まあ仲良い人のところ回ってたと思うわ」

ダイヤ「なら良いですわ」

ダイヤ「ところで善子さんは最近ルビィたち、というより浦の星の面々とは連絡を取っているのですか?」

善子「え、なんでよ」

善子(嫌な話題ね……)

ダイヤ「この間ルビィが寂しそうにしていたので。元気にしてると伝えたら安心したようでしたが」

善子「……連絡は取ってないわ」

ダイヤ「そうでしたか」

善子「聞かないの、理由とか?」

ダイヤ「話したくないなら、無理に聞いたりはしないですわ」

善子「……そ」



善子(ダイヤとの共同生活は十日ばかり続いた)

善子(共同と言っても、一緒にご飯食べて寝て帰るだけだけど)

善子(あれだけ煩わしく思っていたダイヤだけど、いざ近くで過ごしてみるとやっぱり安心するものね)

善子(知らない土地で、知らない人に囲まれて、気づかないけど私ちょっぴり寂しかったみたい)

善子「き、きたー!」

善子(そしてついに、仕送り日が来たの)

善子(通帳を何度も見返して、私はルンルン気分でダイヤの家へ向かった)

善子「って、もうここに来る理由もないじゃない」ハッ

ダイヤ「善子さん、玄関の前で立ち止まられると邪魔なのですが」

善子「うわっ」

善子(ちょうど帰ってきたダイヤと鉢合わせた)

ダイヤ「人を見るなりその反応は失礼では?」

善子「ご、ごめんね。えっと、あの、仕送りが入ったのよ」

ダイヤ「そうですか。では今日はお鍋パーティーにしますか」

善子「え?」

ダイヤ「もう食材も二人分買ってしまいましたし、明日から元の生活に戻るとしても、今日くらいは付き合ってくれません?」

善子「ええ、もちろん!」

善子(ダイヤの方から頼む形にはなったけど、実質私の望みが叶う形になった)

善子(もしかしたら……ううん、多分ダイヤは分かってて、ああ言ってくれたんだろうな)

善子「ほんと、お節介なんだから」ボソ

ダイヤ「何か言いました?」

善子「何も! さあ、私も手伝うわよ。今日は何鍋? チゲ、ハバネロ、デスソース何でも来いよ!」

ダイヤ「お願いだから普通の鍋にしてください。それだと私が食べられないですわ」

善子(その日はまるで別れを惜しむかのように、遅くまでダイヤと語り合った)

善子(翌朝、帰り際にダイヤが言った)

ダイヤ「別に私と善子さんの間柄ですし、用がなくてもいつでも遊びに来てくださいね」

善子(その言葉がとても嬉しかった。久々に私の世界に色が戻った。そんな気がした)





善子「ねえダイヤ! 今日はゲームセンター行きましょう」

ダイヤ「ええ、私そういった所はあまり得意ではなくて。それに不健全なイメージがありますわ」

善子「ダイヤ、偏見で物事を語るのは良くないわよ。今は清潔感のあるお店も多いし、単にゲーム機が置いてあるだけよ」

善子「今日はダイヤにゲーセンの良さってものを徹底的に教えてあげるんだから」

ダイヤ「そ、そこまで言うのなら」



善子「ダイヤー、明日なんだけど」

ダイヤ「なんですか?」

善子「ダイヤってもともと午後空いてるでしょ? 私も臨時休講で暇になったのよ」

ダイヤ「それで?」

善子「チョコレートパフェが有名なお店があるんだけど、一緒に来てくれない?」

ダイヤ「別に構いませんが、一人で行っては?」

善子「人気店でめっちゃ並ぶし、あの女の子女の子したオーラに一人では耐えられそうにないわ」

ダイヤ「あなたも私も女の子ですが……」



善子「ダイヤ! 今度ここ行きましょう」

ダイヤ「遊園地、ですか」

善子「ふふふ、ただの遊園地と侮るなかれ。なんと最近オープンしたお化け屋敷がめちゃめちゃ怖いと噂なのよ!」

ダイヤ「なるほど……良いですわ」

善子「本当に!? やった!」

ダイヤ「ええ、実は私もここは前々から気になっていましたので」

善子「そうなの?」

ダイヤ「巨大観覧車からの景色が絶景だと。良い機会なので一緒に乗りましょう」

善子「私とダイヤで?」

ダイヤ「ええ」

善子「二人きりで?」

ダイヤ「無理にとは言いませんが」

善子「……私は構わないわ」



善子(こうやって、私は気づけばダイヤといる時間が増えていった)

善子(ダイヤと遊んでいると、まるで昔の自分に戻った気分だった)

善子(それと、今ではすっかりタバコも夜遊びもしなくなった)

善子(ダイヤに禁じられてるのもあるけど、すっかり変えられちゃったわ)

ダイヤ「そういえば善子さん」

善子「なに?」

ダイヤ「以前、皆とは連絡を取っていないと言っていましたが」

善子(今更どうしてその話を……)

善子「無理に聞かないんじゃなかったの?」

ダイヤ「ええ、まあ。でも今の善子さんなら平気かと思いまして」

ダイヤ「話して、いただけませんか?」

善子「……」

善子(別に、大層な話じゃない。ダイヤなら、きっと笑わないだろうし)

善子(前だったら絶対そんなこと思わなかっただろうけど、今は話しても良いんじゃって思う自分がいて)

善子(今が、潮時ってやつなのかもね)

善子「話すわ……」

ダイヤ「本当ですか? 聞いておいてなんですが、辛い話ならやはり無理にとは」

善子「良いのよ。そんなに大した理由じゃないし」

善子「ダイヤにはたくさんお世話になったから、つまらない隠し事してギクシャクしたくないし」

ダイヤ「善子さん……」

善子「本当に、本っ当にくだらない話なんだけど。私、東京に来て変わったなって思うの」

善子「ダイヤも知ってると思うけど、それはもちろん悪い方向にね」

善子「なんか私、東京とか都会での生活ってものに、勝手に憧れみたいなの抱いてたみたいで」

善子「ふふっ、千歌たちのこと笑えないわよね。どんだけ田舎者なのって感じ」

善子「それでいざ暮らしてみたら、なんか思ってたのと違うなって」

善子「何をしても、こう、心の底から楽しめないというか、輝けないって感じて」

善子「ここでは常に何かが足りない気がしてたの」

善子「それでいろいろ試したわ。挙げ句に夜遊びやギャンブルにも手を出して」

善子「でも全く駄目だった。それどころかご存知の通り一文無しになる始末」

善子「ダイヤ、私怖いのよ。変わってしまった自分が」

善子「私の中で、高校の、Aqoursの思い出はとっても輝いてるの」

善子「でも、もし今の自分が皆と会って、それで皆のことや過去のことすらつまらないと感じてしまったらと思うと」

善子「怖くて、皆に会ったり話したりすることができなかった。それで連絡もしてなかったの」

善子「……これで終わり」

ダイヤ「……ぷっ」

善子「え?」

ダイヤ「あ、あはははは」

善子(笑われた!?)

善子「ちょ、人が真剣に悩んでるのに笑うなんて酷いじゃない!」

ダイヤ「す、すみません。ですがあまりに馬鹿みたいなことで悩んでましたので」

善子「なっ、馬鹿とは何よ。私は本当に怖くて」

ダイヤ「ええ、ええ。そうですわね。でも、大丈夫ですわ」

ダイヤ「善子さんは変わってない。私がそう保証しますわ」

善子「無責任ね。一体何を根拠にそんなことが言えるわけ?」

ダイヤ「だって、ずっと見てきましたし」

ダイヤ「それに善子さんは私と居てもそのつまらない感じにはならないのでしょう?」

ダイヤ「なら他の人と会っても大丈夫ですわ」

善子「だって、ダイヤとはこっち来てすぐに会ってるから……例外でしょ」

ダイヤ「そんなことありませんわ。善子さんって意外と面倒な性分なんですね」

善子「なによー。そこまで言わなくたって良いじゃない」

ダイヤ「でも、私がなんて言っても納得出来ないんでしょう?」

善子「まあ、それはね」

ダイヤ「なら、解決策は一つしかありませんわ」

善子「な、なに!?」

ダイヤ「決まってますわ! 行きますわよ!」

善子「どこへ?」

ダイヤ「皆に会いにですわ!」

善子「ええ~っ!?」

ダイヤ「そうと決まれば善は急げですわ。さあ、支度をして!」

善子「いや、でもやっぱり怖い」

ダイヤ「大丈夫。私を、Aqoursを信じて」ギュ

善子「あ……」

ダイヤ「もし、本当に駄目だった時は」

善子「時は?」

ダイヤ「それはその時考えますわ」

善子「……ちょっと!」

善子(私はダイヤに強引に連れられて、Aqoursの皆と順々に会った)

善子(結果から言うと、ダイヤの言う通りだった)

善子(私の悩みはなんだったんだってくらい、懐かしい顔を見れて嬉しくて、久々の時間が楽しかった)

善子(だから言ったでしょう、と言いたげなダイヤの顔は少し腹が立ったけど)

善子(それ以上に感謝してるわ)

善子(私以上に私のことを知ってるダイヤのおかげで、またこうして皆と過ごすことができたから)

善子(本人には絶対に言ってあげないけど、ね)

おしまい
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2018年5月26日
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