またすぐ会える

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ダイヤ-アイキャッチ12
ダイヤ、果南、鞠莉の三人はそれぞれの夢を叶えるためにそれぞれの道へと旅立っていった。
それはとても素晴らしいこと。だけど素直に喜べない自分もいる。

分かっていたこと。覚悟していたこととはいえ、付き合ってすぐに離れ離れになるなんて辛いに決まっている。
これから始まる新しい高校生活に私の好きな人はいないのだ。
生徒会室に行っても会えないのだ。

そんな当たり前がどうしても悲しくて寂しかった。

『すぐにまた会えますから』

ダイヤはそう言っていたけど、すぐって言っても帰ってくるのはゴールデンウィーク。5月まで待たなければ会えない。
一か月なんてすぐなのかもしれないけど、今の私にとっては長すぎる時間だ。

でもダイヤも頑張っているんだ。
東京で初めての一人暮らしを頑張っているんだ。私だけ落ち込んではいられない。
頑張って前を向いて進んで行かないとダイヤに笑われてしまう。
だから頑張るのよ、堕天使ヨハネ!

pixiv: またすぐ会える by 桜の人

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と、いき込んでいたっていうのに……

「なんでもう帰ってきてるのよ」

「それは、まぁ……やっぱり会いたかったので」

その気持ちは分かる。すごく分かる。
でもだからって旅立ってから普通一週間で戻ってくるだろうか?
いくらなんでも早すぎるとしか言いようがない。でも――

「一番に私のところに来てくれてありがとう、ダイヤ」

それが一番の私の気持ちだった。
両親はおろかルビィにすら顔を出す前に私のところに来てくれるなんて嬉しいとしか言いようがない。

「それでこの後は家にでも行ってルビィに顔を出したりするの?」

「いいえ。その予定はありませんわ」

「え? 顔出したりしなくていいの?」

ダイヤのことだからそこら辺はしっかりしそうなのに。
思えばいくら私に会いたいからって位の一番に私のところに来るなんてなんかダイヤらしくないような気がする。

「実は、今日こちらに戻ってきていることは誰にも言ってないのです」

「えっ言ってないの!?」

「まだ一週間しか経っていませんから、流石に言いにくくて」

「あーそれもそうね」

とすると今回は日帰りということなのだろう。
せっかく帰って来たのだから一泊くらいしていけばいいのに。
そうすればダイヤと少しでも長くいれるのに。

「ですから本日泊めていただけませんか?」

「……は?」

「ですから本日泊めてほしいのです。家には帰れませんし」

「いくらなんでも急じゃない?」

「無理というのなら近くのビジネスホテルに泊まるということも可能ではありますが……」

「分かったわよ」

そんな寂しそうな顔されたら断れるわけないじゃない。
お母さんに早速事情を説明し、なんとかダイヤを泊める許可を貰う。
そのことをダイヤに報告してあげるとお礼も早々に

「デートをしましょう!」

といい出してきた。
なんというか私にとってのダイヤのイメージって自分の欲求に素直じゃないって感じだったんだけど……

「そんなことなかったのね」

「どうしました?」

「なんでもないわよ」

いきなり私に会いたいからって東京からやってきて、これまたいきなり家に泊めて欲しいなんて言う人が自分の欲求に素直じゃないわけないわよね。
現に今だって早速デートしてるわけだし。

「善子さんはどこか行きたいところありますか?」

「行きたいところねぇ……」

正直ダイヤとならどこだって楽しい。
隣にダイヤがいてくれるだけ幸せ。
だから行きたいところと言われても直ぐには出てきてくれない。

「特に思い浮かばないのでしたら全部私に任せてもらっても良いですか?」

「えぇ。それでお願いするわ」

それからはいろいろなお店を周った。
最初は雑貨屋から始まり、次に洋服を見てちょっとオシャレなカフェでお昼ご飯。
その後はスクールアイドルのグッズをみたり、ヨハネ御用達の堕天使ショップにだって行った。
まさに恋人を持つリア充の一日!

「本当に楽しかったわ、ダイヤ」

「私もですわ、善子さん」

「ヨハネ」

妙な気を利かせたお母さんのおかげでゆっくり二人で夕飯も食べられてるし本当に幸せ。
今なら普段不運に見舞われるのもこの日の為だったんだって思える。

「明日はどこへ行きましょうか」

「そうね明日は……そういえばダイヤは明日何時までこっちにいるの?」

「明日は遅くとも9時頃には帰ろうかと思っています」

「そう……」

せっかく会えたのにまた直ぐに会えなくなっちゃうなんて。
きっと次こそは本当に暫く会えない。
そう考えると明日に来ないで欲しい。

「そんな顔しないでください」

「……だって明日帰っちゃったら暫く会えないじゃない」

「そうですわね……でも遠くからでも話すことはできますわ」

「そうだけど、私はこの目でこの耳でダイヤを感じたいの!」

これがただの我儘だってことは分かってる。
けど止められない。
今日ダイヤに会ってしまったから。

「それだけ私のことを想ってくれて嬉しいですわ」

「当たり前じゃない。好きなんだから」

世界の誰よりもダイヤが好き
だからずっと一緒にいたい。
離れたくない。

「私も大好きですわ。だから明日はあなたの笑顔で私を見送ってください。最後に見たあなたの顔が笑顔じゃないなんて嫌ですから」

「……ダイヤってずるいわよね」

「そうですか?」

「そんなこと言われたら明日一日最高に楽しんで、笑顔で見送ってあげるしかないじゃない」

「ありがとうございます、善子さん。それで明日行きたいところとかありますか?」

「ヨハネよ。そして行きたいところなら今できたわ」

「それはどこですか?」

「それは」

「それは?」

「明日のお楽しみよ」






「まだ結構残っているものですね」

私がダイヤと行きたいと思った場所は家からそう離れていない公園。
そこでダイヤと桜が見たかった。

「でもどうして桜を見に?」

「うーん。ダイヤといろんなところに遊びに行くのも良かったんだけど、こうして一緒に桜を見ながらゆったり時間を過ごすのもありかなって」

「そうですわね……」

今この瞬間にも風に煽られた桜の花びらたちが散っていっている。
それは少し寂しいような気がすると同時に美しくも感じられる。

「ねぇダイヤ、歩きながら見てみない?」

「いいですわね」

今はこうして隣にいてくれるダイヤも後数時間もすれば東京に戻ってしまう。
そのことはもう受け入れた。
だからって寂しいと思わないわけじゃない。

「善子さん」

「なに?」

「手を握ってもいいですか?」

「そんなの聞かなくていいわよ」

だって私はダイヤの恋人なんだから。

「……なんだか少し照れますわね」

「ふふっそうね」

そんな恥ずかしさが今は心地良い。
時折吹く強い風が気持ちいい。



公園を一緒に歩いたりしているだけでも時間はどんどん過ぎちゃって、そろそろ夕飯を食べる時間へとなっていた。
これがダイヤと過ごす最後のイベント。

今日の夕飯はお財布にも優しいファミレス。
まだ子供な私達にはこれぐらいちょうどいい気がする。

食事をしながらあまり触れていなかった東京での生活についてとか大学について聞いたり、新しい学校での話をしたりして私達は時間を過ごした。

そして別れのときはやってくる。

「それじゃあ、次に会うのはゴールデンウィークですわね」

「ゴールデンウィークになったら直ぐに会いに来てよね」

「分かってますわ。それでは善子さん、行ってきま――」

す、とはまだ言わせたくなかった。
最後に一つ我儘を聞いて欲しいから。

「善子さん?」

「ねぇダイヤ、一つだけ私の我儘を聞いて」

「なんですか?」

「キスして」

これから暫く会えないんだからキスの一つや二つして欲しかった。
それさえあれば暫く頑張れる気がした。

「……周りに人だっているじゃないですか」

「つまり周りに人がいなければいいの?」

「……まだ付き合って一ヶ月も経っていませんわよ」

「そんなのどうでもいいじゃない。ダイヤは私としたくないの? キス」

「それは!」

「それは?」

「し、したくないと言ったら嘘になります」

「なら決まりじゃない」

電車の時間もあるからやるからには急がないと。
ダイヤの手を引いて駅の校舎から出て光の届かない影に入る。

「ここならいいでしょ?」

「そう、ですわね」

そういえばキスってどっちからすればいいのかしら?
誘ったのは私だから私から?
でも個人的にはダイヤからしてもらいたいというか……

「善子さん!」

「は、はい!?」

「目を閉じてください」

「あっうん」

本当にされちゃうんだ、キス。
どうしよう、いざされるとなると緊張するというか凄く恥ずかしい。
目を閉じてるからいつ来るのか分からな――

ちゅっ

「……これでよろしいですか?」

「う、うん。ありがとう」

「そ、それでは電車がそろそろ来るので、行ってきます善子さん」

「……行ってらっしゃい」

なんだろうこの締まらない感じ。
でも……

「キス、しちゃった」

唇に微かに残る感覚はこれが嘘じゃないと教えてくれている。

次に会えるのはゴールデンウィーク。

「どんな顔して会えばいいのよ、もぅ……」
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2018年5月26日
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