鞠莉「仮面を被って」

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鞠莉-アイキャッチ6
「それじゃ、また明日!チャオ~!」

練習を終えての帰り道。

ふと私は思う。

いつの頃からだったろう?

私、小原鞠莉が仮面を被り始めたのは。

pixiv: 鞠莉「仮面を被って」 by ヅラ○

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―――思い返せば十年以上前になる。

きっと仮面を被り始めたのはあの日。

果南とダイヤ…二人と出合ったあの日だ。

弱くて臆病な私を隠す仮面。

初めて同世代の子と出合った私には、そんな強くて勇敢な私になれる仮面が必要だった。

だから私は…マリーという仮面を被った。

……私はどうしたらいいのだろう?

マリーとしてこのまま二人と友達でいて良いのだろうか?

親友と言える果南とダイヤの二人にまで「私」を隠して接している、その事実が私を締め付けていた。

……私は…マリーは…。

……。

…今日は早く寝てしまおう。

きっと最近寝不足だったからネガティブな思考になっているのだろう。

寝て起きたら、きっと大丈夫だから。



―――次の日。

鞠莉「明日の予定?」

ダイヤ「何かあるのですか?果南さん」

放課後の教室で、私達三人は談笑していた。

果南「うん、明日は練習も休みだし三人で遊びに行こうかなって。最近は遊ぶ暇もなかったからね」

鞠莉「ナイスなアイデアね果南!マリーも大賛成!」

嬉しさと楽しさの反面、またふと嫌なことを思い出してしまう。

この二人が友達だと思っているのは、鞠莉?それともマリー?

ダイヤ「わたくしも賛成ですわ。でも、どこに行きますか?」

果南「そうだなぁ…ま、適当に決めて今日中に連絡しておくよ」

ダイヤ「大丈夫ですか…?」

果南「大丈夫大丈夫!ちゃんと忘れないようにしとくから!……多分」

ダイヤ「た、多分って…果南さん、本当に大丈夫ですか…?」

果南「大丈夫だって!本当に!……多分」

ダイヤ「はぁ…頼みましたよ?」

果南「ははは…」

二人はこんなに自然に話しているのに。

私は仮面を被らなければ二人と話すことすら出来ない。

ダイヤ「どうしました?鞠莉さん」

鞠莉「……え?」

急いでマリーの仮面を被る。

ダイヤ「いえ、なんだか難しそうな顔をしていらっしゃったので」

鞠莉「…なんでもないわ、最近寝不足だったからかしら?」

ダイヤ「寝不足ですか?あまりスクールアイドルとしてはよろしくないですわね…」

果南「何か忙しいなら手伝うからね?ちゃんと相談してよ?」

鞠莉「勿論!助けて欲しい時はちゃんと言うから大丈夫!」

本当に私は助けを求められるのだろうか?

二人はマリーじゃない、鞠莉を助けてくれるのだろうか?

果南「そっか…じゃあ、そろそろ部室行く?」

ダイヤ「そうですわね、もう千歌さん達は部室に行っているかもしれませんし」

果南「よし、行こうか。ほら、行くよ鞠莉?」

鞠莉「……」

果南「…?鞠莉?」

鞠莉「!…ぼーっとしてた。今行くわ」

果南「…ふむ」

その時私を訝しげに見る果南の視線に私は気がつかなかった。



―――夜。

果南からSNSで連絡があった。

「色々考えてみたんだけど、久しぶりに鞠莉の家にお邪魔できないかなー…なんて」

「実は天気予報が明日雨みたいで…違う日にずらすのはいいけど、いつになるのかわからないし」

「だからお願いできないかな?」

昔から三人で出かける日は雨になることが多かった。

明日もまさか雨だとは思っていなかったが。

「勿論オーケーよ!ダイヤにもそう伝えておいて!」

SNSでの会話は直接会って話すよりも気が楽だ。

でも、SNSでもマリーの仮面を被らないと会話が出来ないのは何故なのだろう。

本当は鞠莉が仮面で、マリーが本当の自分なのかもしれない。

……そうであれば良かったのに。

…とりあえず寝よう。

寝て起きたら、きっと大丈夫だから。



―――夕方。

ダイヤと果南が家に来てから数時間が経った。

今は私の部屋でゆっくりしている。

果南「いやー…やっぱ鞠莉の家は大きいねぇ…」

鞠莉「そんなことは…あるわよ?」

ダイヤ「はぁ…さすが鞠莉さんという感じの発言ですわね…」

鞠莉「で、今日は泊まっていくでしょ?」

果南「一応帰るつもりだったけど…大丈夫?」

ダイヤ「わたくし達、着替えなどは持って来ていないのですが…」

鞠莉「そこんところはホテルオハラにおまかせよ!」

果南「頼もしいね~」

ダイヤ「ありがとうございます」

果南「……で」

鞠莉「?」

チラッとダイヤを見た後、果南は話し始めた。

果南「そのー…鞠莉に聞きたいことがあるんだけどさ、大丈夫?」

鞠莉「いいけど…何?」

私がそう答えると、一呼吸置いて果南が言った。

果南「鞠莉さ、最近何かで悩んでない?」

鞠莉「!…いや、そんなことはないわよ?」

ダイヤ「わかりやすい嘘ですわね」

鞠莉「…嘘じゃないわよ」

果南「嘘だね」

鞠莉「嘘じゃないって…!」

ダイヤ「鞠莉さんはわかりやすいですからね。果南さんでなくともわかりますわ」

鞠莉「……」

果南「相談してねって…言ったでしょ?」

鞠莉「……」

ダイヤ「勿論果南さんだけではありませんわ。わたくしだって協力しますわよ?」

鞠莉「協力、か…」

力強いダイヤの言葉に心が揺れる。

言ってしまってもいいのか、と。

言ってしまったら、二人は幻滅して離れていってしまうかもしれない。

迷う私に果南がさらに言う。

果南「大丈夫。私達は鞠莉の友達なんだから!」

友達…。

その果南の一言で私は決心して話し始めた。

今までずっと私が仮面を被っていたということ。

私は二人が思っているほど強い人間ではないということ。

そんな嘘をついていた不誠実な私が友達でいいのか?ということ。

それら様々なことを、ゆっくりと一つ一つ丁寧に話した。

そして話し終えると同時に果南がこう言った。

果南「うーん…なんというか、鞠莉は考えすぎなんじゃない?」

鞠莉「考え…すぎ?」

果南「そのマリーっていうのが鞠莉の理想の姿だったんでしょ?」

鞠莉「うん…」

果南「ならそれでいいじゃん。何も悪くないよ」

鞠莉「え?」

果南の返答に対し困惑する私を目の前にして、ダイヤがため息を吐いてからこう言った。

ダイヤ「まったく、あなたは何を言っているのですか?」

鞠莉「…え?」

ダイヤ「鞠莉さんは鞠莉さんですわ。マリーでも鞠莉でもない、たった一人の鞠莉さんです」

さらに続ける。

ダイヤ「大体そんなものは善子さんの堕天使モードと同じですもの。鞠莉さんだって同じです」

鞠莉「でも、私は…」

迷う私に果南が近づいてくる。

果南「もう…いくよ?」

鞠莉「えっ…」

私は果南にハグされていた。

果南「鞠莉は鞠莉だよ。何度も言うけど…私は友達だからね?」

鞠莉「果南…」

ダイヤ「わたくしも忘れてもらっては困りますわよ?」

そう言ってダイヤもハグをしてきた。

鞠莉「二人とも…!」

二人は私を…鞠莉を受け入れてくれたのだった。



―――夜。

食事を終えお風呂を済ませて三人でベッドに入ると、私はある夢を見た。

……目の前には私、小原鞠莉がいた。

……いえ、違う…きっとあなたは…。

幼い頃からずっと私を支えてくれた…。

黙っている私に彼女は話しかけてきた。

「仮面はもういいのかしら?」

やっぱりあなたは…!

私はハッキリと目の前の彼女に伝えた。

鞠莉「うん…!私は私だって二人が言ってくれたから!」

すると、彼女はこちらを見て微笑みながらこう答えた。

「…強くなったわね。まだ小さかったあの頃とは大違いだわ」

鞠莉「……」

ふと、寂しそうな顔を目の前の彼女がした。

「じゃあもう出番は終わりかぁ…」

鞠莉「…あなたはどうなるの?」

「使わない仮面は必要ないから…まぁ、どうなるかは想像におまかせするわ」

鞠莉「……そっか」

「…いいのよ。あなたは何も悪くはないから」

鞠莉「……」

「…もう行くわね」

鞠莉「!待って!」

私は彼女にハグをした。

これがきっと…最後だと思うから。

……どれくらいの時間だったか…彼女は私から離れると、私に背を向けて歩き始めた。

鞠莉「!」

私には伝えなくてはいけない言葉がある…!

私は歩いていく彼女に向かって声をかける。

鞠莉「マリー!!!今まで……ありがとうございました!!!」

「…ふふっ…チャオ~!!!」

彼女がそう私に返した瞬間……私は夢から目覚めた。

でも、確かに彼女の…いえ、マリーの感触を私は覚えている。

私は…絶対に忘れない。

そして、隣で寝ている果南とダイヤ…。

二人のおかげで私は…一つ成長できた。

鞠莉「みんな、本当に…ありがとうね」

そう小さく呟きながらベッドから起き、窓を開けた。

降っていた雨は既に上がっていたらしい。

そして、部屋に流れ込んでくる朝日と潮風を浴びて私はこう思うのだった。

これからはもう仮面は必要ない。

ありのままの自分で…大丈夫だと。
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