善子「虫」

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花丸-アイキャッチ20


善子「ちょっと」

花丸「んー」

善子「んー、じゃないわよ。私といるんだから本読むのやめなさいよ」

花丸「今良いところだから……」

善子「いやいや、本は後でも読めるでしょ。あんたが図書委員の仕事手伝ってって言うから図書室来てやったのに」

善子「だいたい借りに来る人もいないし、私もう帰るわよ」

ギュッ

善子「……その手を離しなさいよ」

花丸「帰っちゃ駄目ずら」

善子「ええ……」

善子「じゃあせめて、二人でできることをしましょうよ」

花丸「うーんと、うーんと。そうだ、だったら一緒にご本読もう?」

善子「いーやー。本なんか読んだら脳みそ爆発しちゃう」

花丸「こっちに善子ちゃんの好きそうな魔導書が」

善子「嘘!? 読む読む、見せなさい」

花丸「もう……はい、これ」

善子「おおう。赤銅色に輝く厳かな装丁、微かに浮かび上がる複雑な紋章」

善子「これぞまさしく……って、これ魔導書じゃなく児童書じゃない!」

花丸「でも、魔法とか竜とか出てくるし、面白いよ?」

花丸「騙されたと思って読んでみて」

善子「もう……仕方ないわね」



pixiv: 善子「虫」 by あめのあいまに。

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花丸「善子ちゃーん?」

善子「……」

善子「ほうほう……」

善子「へぇ……」

花丸「善子ちゃんってば」

善子「うわっ……」

善子「……はぁ」

花丸「善子ちゃん、善子ちゃん」

善子「なに、こっちは忙しいんだけど」

花丸「そろそろ下校時刻だよ」

善子「うそ、もうそんな時間!?」

善子「まだ半分も読んでないわよ」

花丸「じゃあ、貸出手続きしよ」

善子「まさか今日最初にして最後の利用者が自分自身になるとはね……」

善子「って、今からだとバス間に合わないわ」

花丸「それなら、家に泊まってく?」

善子「良いの? 正直、そうしてもらえると助かるんだけど」

花丸「うん。まあバス逃したのオラのせいでもあるし」

善子「それじゃ遠慮なく。でも、ずら丸の家って何があるのかしら。ゲームはないわよね」

花丸「うーん、本」

善子「でしょうね……これみたいな本もある?」

花丸「あるよ。それに同じ作者さんの別の本も。時間泥棒と奪われた時間を取り戻す女の子のお話なんだけど」

善子「それも面白そうね」

花丸「じゃあ家に着いたら貸してあげる」

善子「そうね! あと、本は置いておいて夜更かしするわよ。あんたにはリトルデーモンとは何かを一から叩きこんでやるんだから」

花丸「それはちょっと……」



グゥー

善子「随分元気なお腹ね」

花丸「うぅ……恥ずかしい」

善子「何よ、ちゃんとご飯食べてなかったの?」

花丸「そんなことないと思うんだけど……食べ盛りなのかなあ」

善子「そんなに食べて、どうして太らないのか不思議ね」

花丸「いやいや、そうでもないよ。最近は昔の服がきつくなってるから」

善子「……どのへんが」

花丸「胸のあたりとか」

善子「嫌味か」ベシッ

花丸「ひゃん」

花丸「いきなり胸を叩かないでほしいずら」

善子「いや、そっちこそ変な声出すんじゃないわよ。ドキドキしちゃうでしょうが」

花丸「ええ……」

花丸「まあでも、良いことばかりじゃないよ。それに背も伸びないし」

花丸「善子ちゃんみたいにすらっとした美人の方が、マルは憧れるなあ」

善子「だから、嫌味か! 童顔低身長ロリ巨乳とか、もはや犯罪でしょ。この犯罪丸!」

花丸「うぅ、そこまで言わなくても」グー

花丸「そういえばお腹空いてたんだった」

善子「今日はのっぽパン持ってないわけ?」

花丸「生憎切らしてて……一生の不覚ずら」

善子「まあ、そもそも常備してる方がおかしい気もするけどね」

善子「ほら、食べなさい」

花丸「これは?」

善子「キットカットよ。私も小腹が空いた時や口寂しい時用にチョコ持ち歩いてるの」

花丸「いいの?」

善子「いいわよ、私は別にお腹空いてないし」

花丸「ありがとう、善子ちゃん!」ギュー

善子「ぎゃー、暑い暑い。チョコが溶けるから離れなさい!」

花丸「それじゃマルも、今度善子ちゃんにのっぽパンをお裾分けしてあげるね」

善子「別にいらないけど」

花丸「そんな……!」

善子「いや、そんな信じられないものを見るような目しないでよ。別に嫌いってわけでもないし」

花丸「マル、善子ちゃんと一緒にのっぽパンを食べるのが夢だったのに」

善子「なにその限定的な夢。そういうのって恋人とアイスとか分け合うんじゃないの」

花丸「アイスよりのっぽパン、恋人より善子ちゃんだよ」

善子「そ、そう? なんだか照れるわね。そこまで言うんなら、一緒に食べてあげても良いわよ」

花丸「わーい。善子ちゃん、大好き」

善子「もう。そういうことさらっと言って……。少しは恥じらいを持ちなさいよ」ボソボソ

花丸「あ、そうそう。のっぽパンは一本だけだよ。後は全部マルのだから」

善子「本当、恥じらいと慎みを持ちなさいよ」



花丸「よし子ちゃんは、天使みたいずら」

善子「ええ、そう? そうなの! よし子はね、じつは天使だったの!」

善子「ほら、この羽がそのしょうこ。……今は一つしかないけど」スッ

花丸「やっぱり! すごいなあ」

善子「ほら、とべないけれど、かぜみたいにはやく走れるんだから」タタタッ

花丸「ああ、まってよ。よし子ちゃーん」

花丸「あっ」ズベッ

善子「だ、だいじょうぶ?」

花丸「うっ、う……」

花丸「うわあああああぁん」

善子「な、なかないでよう」

花丸「あああああぁん」

善子「ねえ、なきやんでよ。ねえったら……うぅ」

善子「うっ、わあああああん」



善子「はぁ」

花丸「どうしたの?」

善子「別に……」

善子「昔のあんたは泣き虫だったなあって」

花丸「そうだっけ? 善子ちゃんと同じくらいだったと思うけど」

善子「いやいや、私よりずら丸の方が絶対に泣き虫だったから」

花丸「本当? 数えたの? どっちがどれくらい泣いてた?」

善子「……本当、逞しくなったわね」

花丸「それは、善子ちゃんとしょっちゅう一緒にいたらね」

善子「ちょっとー。それどういう意味よ」

花丸「さあ? そのままの意味ずら」

善子「もうっ、腹立つわね」

花丸「怒ってばかりだと体に悪いよ」

善子「誰のせいよ。誰の」

花丸「回り回って、善子ちゃんのせいずら」

善子「ああ言えばこう言うんだから」

花丸「善子ちゃんには敵わないけど」

善子「やった。ずら丸に勝った! って、なるかい!」

花丸「うわぁ、一人で漫才してるずら」

善子「ちょっと、そんな変な人を見る目で見ないでよ」

花丸「いやいや、大分変な人だったよ」スッ

善子「静かに距離を取らないで!」

善子「それに、変な人度で言えばあんたも負けてないから」

花丸「善子ちゃんには敵わないけど」

善子「天丼! 乗ってやんないからね」

花丸「うわあ、ノリ悪い……最悪だね」

善子「なんなの! 実は漫才師目指してるわけ?」

花丸「どうどう、落ち着いて善子ちゃん」

善子「はあ、もう良い……」

善子(でも、本当変なやつ。昔から私みたいなのに、付き合ってくれて)

善子(九年も、会わなかったのに。再会したらあれだけ喜んでくれて)

善子(他にも友達だっているだろうに、何を好んで私と一緒にいるんだろうか)

善子(私だってなんだかんだ言っていつもこいつと一緒にいるし、感謝してるんだけど)

善子「……」ジーッ

花丸「ん? オラの顔に何かついてる?」

善子「いーえ、別に」

善子(まあ、いっか)

善子(蓼食う虫も好き好きって言うしね)

おしまい
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2018年5月26日
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