【SS】海未「二人だけの時間」

シェアする

うみまき-アイキャッチ1
1: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/01(月) 20:32:11.45 ID:6IOqTo7a.net
うみまき
書きだめしてないのでゆっくり進行

元スレ: 【SS】海未「二人だけの時間」

スポンサーリンク
6: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/01(月) 20:44:26.70 ID:6IOqTo7a.net
「では、作曲しましょう」


「えぇ」


彼女の指が鍵盤をなで始め、夕陽に照らされるピアノから心地よい音が奏でられる


同じ時間、同じ場所、同じ言葉によって


私たち、二人だけの時間が始まる


あぁ、なんと綺麗な音色


演奏中は互いに話しかけないという暗黙の了解がありながらも


自らの声で演奏を妨げるような事はしたくないものです


聞き惚れていたせいか、いつの間にか夢は終わってしまい


『仕事』という現実に引き戻されてしまう


「……相変わらず、真姫の演奏は素晴らしいですね」


「海未の歌詞があってこそよ」


普段の彼女ならば『別に』とその後に続くそっけない言葉がつらづら並べられるのですが


音楽に対しての彼女は素直そのものであり


二人だけの時間にだけ顔を覗かせる、彼女の素顔である
8: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/01(月) 21:06:21.42 ID:6IOqTo7a.net
この二人だけの時間は、私にとってまさに至福のひと時


勉学、部活、スクールアイドル、稽古と度重なる日々の疲労や鬱憤を


彼女はたった数時間だけで私を癒してくれる


そんな二人だけの時間が愛おしくて、または尊くてたまらないのです


……まぁ、なぜそこまで大切に扱うのにはもう一つだけ理由がありまして


と、考えていると再び彼女は演奏に入ろうとしているところですね


何度聞いても聞き飽きることのない彼女の曲も愛しいのですが


私はその彼女自身にも目を奪われてしまいました
10: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/01(月) 21:17:28.11 ID:6IOqTo7a.net
その名に恥じぬ異国のお姫様のように整った顔立ち


現代のモデルですら持ち合わせてないという美麗なスタイル


医学を目指す者に備わった知性


……今更ながらこんな完璧超人とも言えるお方と共に踊ったり歌ったりしているのがなんだか気恥ずかしくなってきました


そして今までに挙げた全ての魅力を抑えてまで私が目を見張ったものとは


今にも壊れてしまいそうなガラス細工が如き指先


その指から奏でられる音楽に私は心底虜になって、いやならざるを得ませんでした


そしてその全てを有している完璧少女に私は


恋心を抱いてしまったのです………
15: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/01(月) 22:41:49.34 ID:f68CY52d.net
おかしいですよね。私も思います


女の子が女の子に恋をしてはいけない


そっちの知識が乏しい私ですら理解できます


なので私はこう考えるようにしました


恋してしまった相手が女の子だったので仕方無い、と


そう想い続け一ヶ月、未だに何もできていません


ですが私はこの状況に満足しているのです


作詞と作曲という堅い繋がりを持つ二人が


音楽室という絶対不可侵領域にて


安らかなひと時を過ごす………


もしも私が告白なんてしようものなら


この夢世界は粉々に砕けちってしまうでしょう


だというのに私は『無意識に』暗黙の了解を破り


演奏中である彼女の指にそっと手のひらを重ねた
16: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/01(月) 22:59:16.29 ID:f68CY52d.net
「ひゃっ!?」


瞬間、彼女からは戸惑いの顔と声


案の定演奏は止まってしまい、続けて私もはっと我に返る


私はなんてことを………


いくら想い人だとしても手は出さないことを信条としていたのに


そんな浅はかな考えは簡単に崩れ落ちてしまった


「……何よ。演奏の邪魔しないで」


「す、すみませんでした………」


彼女の不機嫌そうな声に、つい頭をペコペコと下げてしまう


まぁ私が全て悪いので当たり前ですが
17: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/01(月) 23:01:58.97 ID:f68CY52d.net
「はぁ……続けるわよ」


そう彼女が告げると、曲が中断した場所から一小節戻り


再び演奏が始められた


あれほど一人心の中で会話し続けてたというのにまだ終わっていなかったのですね


それにしてもどうして無意識に手を伸ばしてしまったのでしょうか?


それほど彼女の手が綺麗だったから?………否定はできません


ですが、合ってるとも言い難い


恐らく、私は変化が欲しかったのでしょう


何も変わらない、失いたくないこの二人だけの時間


それと同時に恋しているからこそ、何かを変えたいと思う気持ち


心の矛盾に気づく前に、また無意識に行動を起こしていました


気配を殺し、彼女の背後に忍び寄り


それはちょうど演奏が終わった時


気づいた頃には、私は後ろから彼女にきゅっと優しく


抱きついていました
18: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/01(月) 23:12:36.39 ID:f68CY52d.net
「……あのねぇ、曲が終われば何でもしていいってわけじゃないの」


「す、すみません!体が勝手に…!」


咄嗟に思いついた良くある漫画の主人公が使いそうな謝り方


……罪を認めてるようなものじゃないですか


「体が勝手にって……意味わかんない」


えぇ、私も全く同意です。何しろ無意識ですから


なんて言い訳が通用するとは到底思えないので、黙って俯く


すると今度は心配そうな顔つきになり


「どうしたの?今日は早めに切り上げて明日にする?」


「いえ、もう大丈夫ですから。続けましょう」


早めに切り上げるなんてもったいない


まだまだ堪能しきれてないというのに


「そう?無理しないでね?」


「っ………」


その普段は見せない優しさに私は………
27: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/04(木) 21:51:55.97 ID:01rjG8z+.net
「……ふぅ、今日はこれくらいかしら」


あぁ、惜しむ暇もなく終わってしまいました


できることなら永遠に……ずっと………


「もうこんな時間?ちょっと張り切りすぎたかも」


彼女の言葉に促され、ふと俯いてた顔を上げると


太陽はすっかり山間に顔を隠してしまい、辺りを暗くしていました


「そうですね。穂乃果たちもとっくに帰っているでしょう」


「下校時間までには出たいわね。行きましょ」


恐らくこの学校には数人の部活帰りの生徒と私たちのみ。更に言えば女子高生が一人で帰るには危なくなる時間帯


二人だけの時間が続かないのであれば、彼女の傍に居られるだけでも………


「ま、真姫っ」


支度をするため音楽室を出ようとする彼女に、意を決して話しかけ


「何?」


微かに髪を揺らしながら振り向く姿に少し言葉が詰まったものの、無理矢理喉から押し出しました


「い、一緒に、帰りませんか?」
28: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/04(木) 22:16:18.94 ID:01rjG8z+.net
「……唐突ね。しかも海未からそんなこと言われるとは思わなかったわ」


「や、ま、まぁこの時間ですから。それに真姫ほどの人ならいつ狙われてもおかしくありませんし」


我ながらなんと苦しい言い訳。しかも考え直して見ると恥ずかしい言葉をなんの躊躇もなく並べてるではありませんか


「それもそうねぇ……じゃあ海未と一緒に帰るわ」


彼女は考え込むようなふりして、意外とあっさり応じました


普段の彼女ならば照れ隠しに全力で拒否し、その後なぁなぁで仕方無く了承するというのが流れとしてあるのですが


そんな節は全く見せず、むしろ素直すぎて私が驚くほどです


「あ、ありがとうございますっ!」


なのでついつい浮かれてしまい、喜びが表に出てしまいました。はしたない


「もう、早くしないと置いてくわよ」


しかし逆にそのような照れ隠しがなかったのは


作曲後だからなのか、はたまた私に対して何らかの情が皆無だからなのか


どちらにしても寂しい感情が残っていたことには変わりありませんでした
29: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/04(木) 22:52:39.30 ID:01rjG8z+.net
「真姫の家まで送っていきますよ」


「え?私と海未の家ってそんなに近かった?」


もちろん近くはありません。校門から出た最初の曲がり角で、互いに背を向けて帰ってしまうほどでしょうか


だからといって距離的には遠いわけではありません


「ほら、夜道に襲われたらどうするんですか」


「例えば?」


「た、例えば……真姫を付け狙っているストーカーとか……」


「今どきいるわけ無いでしょそんなの」


言い訳を考え、そのうえで相手に納得させるのは案外難しいのですね


穂乃果の気持ちが少しわかったような気がします


「まだいますよ。えー……お、お化け…とか」


子供ですら騙せそうにない子供騙し


「お、お化け………うぅっ」


に、引っかかる彼女


お化けに怯え、ぶるると震える姿もまた可愛らしいです


「う、海未?怖いなら手を繋いであげてもいい、わよ」
30: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/04(木) 23:13:22.20 ID:01rjG8z+.net
「はい…?」


思わぬ提案に変な声をあげてしまう


「別にお化けが怖いわけじゃないのよ!ただ夜道だし、海未が転ばないように手を繋ぎたいか聞いてるだけよ!」


彼女はその素っ頓狂な声に気づかなかったのか、いつもの調子で捲し立てている


何というツンデレ。本人に言えば必ず否定してくるのでしょうが、誰がどう見てもツンデレのそれ


あぁ可愛らしくて仕方がありません


常に自分の本音は漏らさず、しかし隠しきれないほどの感情を抑えた結果出てくる照れ隠しの言葉や表情


いじらしくて微笑ましくて、時折見せる音楽には素直な心


純粋無垢な彼女には、いずれ惹かれる運命だったのです


「ふふっそう言う事にしておきましょう」


「ふんっ」


つれない態度をとりながらも、彼女は私の右手をぎゅっと握って離しません


やはりお化けに怯えてるのか、ぎこちない動きで繋いでくるその左手は


微かな手汗と人肌の生暖かさに包まれていて


それに浸りながら夜道をゆっくりと歩んで行きました
33: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/06(土) 21:25:32.09 ID:8ITP4dpZ.net
「はあぁ………」


少し汗ばんだ右手を見る度、ため息が一つ。また一つ


「なぜあの時は余裕を保てていたというのに、今になって……」


頬が緩み、胸の高鳴りも止まりません


私は本番に強いのでしょう。弓道の大会でも試合後は必ず気が抜けてしまいますから


だからといって恋にも影響するものでしょうか?


わかりません。わからないからこそ、胸にあるときめきを大事に丁寧に扱いたい


手のひらを握って、離して、握って、離して


拳と平手を繰り返す内にゆっくりと瞼が重くなっていき


布団から体を放り投げたまま眠ってしまいました


「すぅ………」
34: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/07(日) 23:04:50.52 ID:El+YRyV1.net
翌日の放課後、部室のドアに手を掛けると何やら騒がしい声が響いてきました


構わずドアを開くと


「まーきーちゃーんっ!」


「な、何よもう!追いかけないで!」


凛が顔を赤くし逃げる真姫に対して獲物を狙う猫のように追いかけていました


周りに目を向けるとかたや苦笑い、かたや期待の眼差し、普段と変わらない反応を示している


そんな誰もが見慣れた光景……なのにどうしてでしょう


何も変わってなどいない、日常の風景の一つ


なのに、私はだけは


「きゃあぁ!!」


「捕まえたーーー!」


胸がちくちく痛み、きゅっとなるような感覚に襲われました


これが…嫉妬というものなのでしょうか


私は彼女に嫉妬してしまうほど恋に溺れているようです


いやはや、恋というものは恐ろしい


そろそろ助けてあげませんとね


「凛、そのくらいにしておきなさい。真姫が迷惑してますよ」


この台詞も何気なく出した言葉だったのですが


「えー!?なんだか海未ちゃん真姫ちゃんにだけ優しすぎないかにゃー?」
37: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/08(月) 22:01:51.01 ID:2nZ3xo/p.net
「何を…!り、凛っ!!」


冗談混じりの凛の言葉に呆気なく引っかかってしまい


私の反応が予想外だったのか、それはそれは腹の立つ顔で言ったのです


「あれぇ~?海未ちゃん照れてるにゃ~!」


続けて楽しそうに体を上下に揺らす穂乃果も凛に続き、その場を盛り上げる


「何々!?どういうこと!?」


こ、この二人はいつも……!


そして止めに希が言い放ちました


「海未ちゃんって真姫ちゃんの事が好きなん?」
38: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/08(月) 22:14:52.59 ID:2nZ3xo/p.net
当然の如くその場の誰もが凍る


何故言ってしまったのですか、希………


その場が凍るという事態を意味するのは、誰もが口を紡いだまま一切喋らないということ。私も例外ではありません


つまりは否定を行わなかった。その言葉に対する肯定をしてしまったのです


ちらりと辺りを見渡すも皆下を向いたまま顔を暗くしたまま


状況に耐えきれなかったのか、自分のせいだと反省したのか


初めに口を開いたのは希だった


「な、なぁ真姫ちゃん?真姫ちゃんは海未ちゃんのこと好きなん?」


元に戻るどころか、思い切り地雷を踏抜く行為


明らかに希は混乱…を通り越して錯乱しています


ざんねん!わたしのはつこいはここでおわってしまった!


「海未?好きだけど?」
39: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/08(月) 22:23:21.19 ID:2nZ3xo/p.net
「えっ」


今度は先ほどの無音空間とは違う、また別の緊張が走った


これには言いだしっぺであり、ある程度の心構えはしていたであろう凛も固まっていた


ですがそんなことは至極どうでもよく、真姫の言葉が頭の中をぐるぐると掻き回す


好き?今真姫は好きと言ったのですか?


わ……私のことを?


更にぐるぐると思考が空回り、全身が炎のように熱くなってゆくのがわかる


ただその知恵熱と恥得熱を合わせたような熱気は数秒で冷めてしまった


「友だちとしてね」
40: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/10(水) 22:30:08.38 ID:cLqk0shm.net
「そ、そうなの真姫?」


なんとか取り繕うとしているのか、絵里が慌ただしく聞きなおす


悪い意味はなく、周りの空気を読めてない彼女が訂正した


「この中では一番信頼できるし……私からしたら親友って言っても過言じゃないわ。海未がどう思ってるか知らないけど」


珍しく真姫が他人を褒めると思った束の間、間髪入れずに私を地獄に叩き込む


知ってもらえるのなら知って欲しいものです


「……私も真姫のこと信頼してますよ」


しかし私は応じてしまいました。それが自分の心を苦しめるものだと知りながら


あぁ…と落胆がどこからか聞こえ、私も自身に向けてため息つこうとした刹那


「でも真姫ちゃん。誰も恋愛の事なんて言ってないのに、好きって言ったあとわざわざ友だちとしてって付け加えたのはなんでなん?」
41: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/10(水) 23:21:07.60 ID:cLqk0shm.net
「のっ希!?」


希はあっけらかんとしていたものの、言われた本人である彼女は誰でも見てわかるように動揺していた


「ほぅほぅ、図星みたいやね。よかったなぁ海未ちゃん」


本当に良かったのは最初の失態から逃れられた希の方ではないのでしょうか


「何故私に言うのですかっ!私は関係ありませんっ!」


「そんなわけないでしょ。あんたは見事この騒動の中心人物よ」


今更すぎる弱々しい抵抗は、当然周りからしたら何処吹く風。にこに軽くあしらわれる


今はただひたすら私と彼女に熱い視線を送ってくることにだけ熱中している


「た、ただの勘違いよ!凛とか穂乃果に比べたら信用の差に天と地くらいにあるってことを言いたかっただけ!」


「だったらそのまま言えばいいやん?やっぱり真姫ちゃんも海未ちゃんのことちょっとは意識してたんやない?」


そんな言い訳が通用するわけでもなく、逆に


「真姫ちゃん酷いにゃー!そんなこと言う真姫ちゃんにはこうだー!」


「穂乃果もやるー!えーいっ!」


「あああああ!!だからあなたたちは信用ならないのよー!!」


凛と穂乃果に返り討ちにあってしまう


変わらず希は嫌味ったらしい笑い方と笑顔を向けてきますし、他の人は合わせたかのように苦笑い


私はというとこの件とはまた別のダメージを受けていました。私は思うのです


「真姫ちゃんが嫌いでも凛は大好きにゃー!」


「真姫ちゃんが好きって言うまで離さないぞー!」


……私も二人みたいに気軽に抱きついたり好きと言えたら苦労しなくて済むのに、と
43: 更新速度上げるため書き方を変えます(茸)@\(^o^)/ 2015/06/13(土) 04:01:54.36 ID:bvp7/M9V.net
「真姫、話があります。少しよろしいでしょうか」


「わかってるわよ。作曲するんでしょ?」


はいはい知ってますと言わんばかりの顔。実際作曲する前はいつもこのような流れで音楽室へと向かおうとする


……のですが、今日は当てが外れましたね


「いいえ、違いますよ」


「? 作曲じゃないの?」


今は作曲よりも大事なことが……いえ決して作曲を蔑ろにしているわけではありませんけど


今回だけは私利私欲の為に動かさせてもらいます


「………お願いです。だ、抱きしめてもよろしいでしょうか?」


一拍置き、深呼吸をして出すような言葉ではありません


多分私の体は錆びた機械の様に固まっているでしょう。顔も引き攣っているのが嫌でもわかります


ですがそれは彼女も同じこと。聞こえた言葉に耳を疑っている様子


要はそれほど緊張しているのです。ただ抱きしめてほしいと言うだけだというのに


穂乃果や凛であれば言葉とともに既に抱きついていますね


私も彼女に抱きついたら驚いてくれるでしょうか。頬を染めてくれるでしょうか


心が揺らいで……くれるでしょうか
44: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/13(土) 04:13:49.81 ID:bvp7/M9V.net
「………何を?」


いや「誰を?」ならまだしも「何を?」はないでしょう


「真姫をですよ!!」


例え私が真姫以外の物や者を抱きしめたいとしても、わざわざ真姫に聞く必要あるのですか?


「そ、そう………」


彼女は考え込むような仕草をして、俯いてしまいました


「あの、返事は?」


私、無視されてませんよね。嫌われてませんよね


するとふっと顔を上げて、目を私から逸らしながら


「海未なら別にいい…けど……」


とだけ言って顔を赤らめ、後ろを向いてしまいました


……可愛いです
45: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/13(土) 04:33:30.33 ID:bvp7/M9V.net
何より私ならいいと、信頼されてるのですね


ことりよりまともではないと言われたときには少々落ち込みそうにはなったものの、信頼と言う形では一番先に名が挙がるのは私ということに


いえいえ、自意識過剰にも程があります。なにしろ相手がμ'sのメンバーですから………


彼女の親族には到底及ばないでしょうが、少なくとも知人の中では最も頼りになりたいものです


そうですね…誰にも言えないような悩みを打ち明けてもらえるような仲になれたら満足です


それこそ曲の悩みだけではなく恋の悩みとか………


「………まだ?」
46: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/13(土) 04:49:02.52 ID:bvp7/M9V.net
「あっすみませんっ!」


いったいどれくらいの時間思考を巡らせていたのでしょうか


「私だって恥ずかしいんだから、早くしなさいよ」


せっかく恥をしのんで待っているというのに……もう一度深呼吸を行い


「で、では………」


彼女の背中から手を伸ばし、お腹の前辺りで手を組む


確か、あすなろ抱きと言いましたか


前から反応を見ることができないのは残念ですが、体全体で彼女の体温を感じることができます


ってこれでは変態じゃないですかっ!


あぁでも……しかし……


「ん……」


彼女から感じる熱が段々と上がってきています


先にも言った通り、この上なく恥ずかしいのでしょう


はぁ………本当にかわいらしくてたまりません


もっともっと意識が求めるので体をぴったりとくっつけ、顔を肩に埋める


すると彼女はびくっと体を跳ねさせ、反射的に離れていってしまいました


「ストップストップ!もう終わりっ!」
48: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/15(月) 18:32:56.95 ID:gnR0r2P/.net
「あっ」


ぴったりくっついていた体が同極同士の磁石のように離れた


残念です………


「………なんで残念そうな顔してるのよ」


心の中で呟いたつもりでしたが顔に出ていたみたいです


「少し、物足りないと思ったので」


そう返しておけば彼女の照れた顔を見られますしね


「う……抱かれる側の身にもなってよ……」


……今しがた彼女が良からぬ発言をした気が


「ま、真姫?校内でその発言はどうかと思われます…………」


幸い周りに人はいませんでしたが、スクールアイドル。人前に出る者の言動は正しておかなければ


「は?海未何言って…る……っ!?」


最初は理解できず私に向かって困った顔をしていました


彼女はもう一度自分の記憶を見直し分ってきたのか、みるみる顔が朱色から本人の髪のような紅色に染まっていきます
49: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/15(月) 18:55:28.78 ID:gnR0r2P/.net
「な、な、なんてこと気づかせるのよ海未!!変態っ!!」


そして善意を仇で返すように喚きちらしました


「変態とは心外です!勘違いさせるような言い方をしたのは真姫ではありませんか!」


食い下がるも彼女は一歩も引く気がありません


「私はそういうつもりじゃなかったの!!どうしたらさっきの状況からそっちの意味になるのよ!!」


「うっ……す、すみません………」


冷静に考えると私に落ち度があったのは明白。変態という言葉に過剰に反応しすぎました


ああぁ……なぜこんなくだらない事で喧嘩を………


「わかればいいのよ。そ、それより感想は?」


「……感想ですか?」
50: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/15(月) 18:58:52.77 ID:gnR0r2P/.net
唐突な話の転換についていけない私


雰囲気を変えようと彼女が聞いたのでしょうが、頭が混乱していて思い当たる節がありません


「あれよあれ!さっきの………って…」


あれと言われてわかるのなら苦労しないのですが


それに加えて何やらごにょごにょと口ごもっており、尚更察しがつきません


「あれとは?」


「ほら…さっきの………ぎゅって………」


さっき……ぎゅって……あぁ


「抱きしめた感想ですね」


「言わないでよバカっ!」


……顔真っ赤にして罵倒されるいわれはない筈なのに


「良かったですよ。とても」
51: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/15(月) 19:14:39.85 ID:gnR0r2P/.net
ふふふ、本当は言葉では言い表せないほど良かったのですが


彼女を照れさせるにはこれくらいで充分でしょう


……やっぱり変態じゃないですかー!!


しかし事態は思ったように動きませんでした


「そ。時間もないし音楽室に行きましょ」


褒められることになれてないはずの彼女から想定外の一言


確かに時間はありませんし作曲の時間は待ち遠しいですが、あまりにも素っ気無さすぎます


私では穂乃果や凛のようにはいかないのですね………


「…そう、ですね。はぁ……」


気づかれない程度にふぅっと溜息をつき、振り返った瞬間


「お返しよっ!」
52: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/15(月) 21:56:16.42 ID:gnR0r2P/.net
「わひゃあぁ!!?」


不意を突かれた私の後ろからの衝撃に、はしたない声をあげてしまう


しかし私にとっての最大のハプニングはこんな些細なことではなく、背中に弾む二つの柔らかい………


「ま、真姫っ!やめてくださいっ!」


「そう言うと思って不意打ちしたのよ。どうせ私が頼んでも断るでしょ」


「そういうことではなく……!」


彼女の頼み事ならば何であろうとお受けするでしょう。けれども今は………だめです


「もしかして海未照れてる?もっとくっついちゃおうかしら」


い、いけません…!む、む、胸がっ


「はわっはわわわ………」


「やっぱり海未の体はがっしりしてるわね。抱き心地としてはあまり良くないかも」


「あ、でも他の人と違ってぎゅーっじゃなくてこう……きゅって抱きしめられるのはいいかも………」




「……海未?さっきから固まってるけどどうしたの?」





「……………っ!!!」


「ちょっ海未!どこ行くのよ!作曲するんじゃないの!?うみーっ!!」
53: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/15(月) 22:33:28.86 ID:gnR0r2P/.net
「はっ……はっ……」


気づけば私は外を走っていて、いつの間にか家の前に立っていました


「はぁっ……すぅっ………はあぁ…」


卑怯じゃないですか。あんな、あんな……


「うあぁ……うっく……」


いくら振り向かせようとしても空回り


逆に彼女に対する想いが募るばかり


「辛いですっ……苦しいですっ……真姫ぃ………」


………明日、告白しましょう


一方的で相手の気持ちがわからない不確かな恋に一生悩むのなら


いっそはっきりさせてしまいます


それが実らない結果になろうとも


「愛してます……真姫……」
61: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/17(水) 22:20:40.95 ID:uDfibf4c.net
「放課後に音楽室?」


たったそれだけの言葉に首を傾げる彼女


「でも今日も作曲するんでしょ?なら一緒に……」


「ではまた後ほど!」


私は苦言を呈される前に、逃げるようにその場を去った


「ちょっと海未!もう昨日から何なのよ……」


彼女の言い分は正しい


今まで作曲する場合は、ほぼ毎日共に音楽室に行っていました


例外として生徒会や弓道部で私が遅れる日などがありますが、わけもなく先に行って欲しいと頼むのは初めてのこと


それも告白のためなどと、口が裂けても言えません


一見下手を打てば彼女との縁はおさらばというとても危険で不利な博打


ですがもう決めたこと。このままでいることに辛さを覚えた私が下した決断


当って砕けろ………出来ることなら砕けたくはないものですが、かといって自分の気持ちに嘘はつきたくありません


不安で決心が揺らぐ中、もう一度心の中で復唱する


私は真姫が……好きです、と
62: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/18(木) 00:03:50.36 ID:v8Duo4PS.net
………いえ、さすがに短絡すぎるでしょうか


あなたの全てが愛しいくて、たまらないのです


………間違いなく変態と返されるでしょう


毎朝私のお味噌汁を料理してください


………気が早すぎますっ!


ああぁ……決心はしたというのに告白の仕方を考える予定をすっかり忘れてました……


いっそ無言のまま彼女を………


「海未ちゃん?もうお昼だよ?」


「何をおっしゃるのですかことり。今は授業中ですよ、話しかけてはいけません」


まだ放課後までにはたっぷり時間が残されています


言葉選びには充分気を付けなければ………


「……やっぱりダメみたい。お願い、穂乃果ちゃん」


「駄目?やる前から諦めてどうするのですか!思考の限りを尽くせばきっと…!」


「海未ちゃーーーーーん!!!お昼だよーーー!!」


「は…?わああぁあ!?」


教室中に悲鳴と落下音が響く


何が起こったのかわからず、気づくと私は椅子の上から転げ落ちていました


穂乃果が乗りかかっていながら
63: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/18(木) 00:31:48.94 ID:v8Duo4PS.net
「まったく!羞恥心の欠片もないのですかあなたは!」


「うぅ…ごめんなさぁい……」


人が考え事をしてるというのに飛びつき、あまつさえ共倒れとはどういう神経をしているのやら


「ごめんね海未ちゃん。ことりも悪いの」


説教の横から入ってきたのは、様子を眺めていただけであったはずのことりでした


「ことりが謝る必要はありません。全て穂乃果のせいです」


理不尽だと言わんばかりの顔は見て見ぬふりをし、ことりに向き直る


「ううん、ことりがお願いしたからことりが謝るべきだよ。それに……」


と言いづらそうに口ごもってしまう


すると私を上目で睨んでいた穂乃果が遮った


「今日の海未ちゃんずーっと変だったんだよ?ボーっとしてると思ったら急にちっちゃく唸ったり。ね、ことりちゃん」


私の気づかぬうちにそんなことを………


「話しかけても反応しなかったら仕方なかったの。ごめんなさいっ!」


「ご、ごめんなさい………」


とりあえず謝る体を作る穂乃果とは違い、誠意溢れるお辞儀をすることり


「元々は私が原因です。迷惑かけてしまい申し訳ありません」


なんだか気を遣ってしまい、こちらからも一礼


「………ふふっ」


教室が食事中の談義で盛り上がっている中、私たちは何をしているんでしょうかね


少しだけ笑みがこぼれてしまいます
67: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/20(土) 18:37:44.92 ID:cBMKWkQl.net
「で、はぐっ…なんで海未ちゃん…もぐっ……ボーっとしてたの?」


口いっぱいにものを詰め込みながら喋る穂乃果にはほとほと呆れます………


「悩み事?歌詞作りが進まない……とか」


対するように心底心配してくれていることり。どうしてこうも違うのでしょうか


それはさておき、この二人に話すべきかどうか………


「悩み事……と言えばそうなりますね」


少し勿体ぶったような言い方をすると、ものを飲み込んだ穂乃果、続いてことりが


「穂乃果たちでできることならなんでも言って!ね、ことりちゃん!」


「うん!友達だもん!」


「穂乃果……ことり……」


青春ドラマのような展開に思わず胸と目頭が熱くなってしないます


二人を親友にしてくださった神様に感謝ですね


「……ありがとうございます。ですが、私一人で解決してみせます」
68: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/20(土) 18:53:04.10 ID:cBMKWkQl.net
遂にこの時がやってきました


前もって言っておいたので急いではくれるでしょうけど、さすがにまだいませんよね


ゆっくり、落ち着きながら……頑張るのです。園田海未


分の悪い賭けなど承知の上、想いを伝えるだけでいい


どのような結果になったとしても、受け入れましょう


しかし、もしも……もしも私の心が砕けるようなことがあれば


その時は、あの二人に甘えさせてもらいましょう


ふふっこれから告白するというのに随分体が軽いです


もう何も怖くな………おや?あれは…?
69: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/20(土) 19:18:02.34 ID:cBMKWkQl.net
「……あなたは?」


「私は二年生の………です」


あそこに立っているのは真姫と………もう一人


戸を挟んでいたので聞きもらしてしまいましたが、どうやら二年生の方のようです


見覚えがありません。少なくとも同じクラスではないと言えます


「私は先輩のこと知りません」


久しく彼女の敬語を聞いていなかったせいか違和感と……少し胸に来るものがありますね


「でも、私は知っている。μ'sの西木野真姫さん。あなたの…ファンです」


恐らく講堂でのライブで知ったのでしょうか。誰のファンであろうと私も嬉しく思います


「そ、ありがとうございます」


そっけない態度を見せてるも心の中では喜んでいるでしょう。彼女はそういう娘ですから


ファンとの対話を盗み聞きするようなことはしたくないので席を外します。最悪告白は明日でも………





「西木野さんのことが好きですっ!!付き合ってくださいっ!!!」


……………はぃ?
70: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/20(土) 19:49:01.72 ID:cBMKWkQl.net
「……………はぃ?」


全く寸分もたがわないタイミングで同じ反応を示す彼女。顔だけでなく体全体も硬直しているようです


………そんな悠長に解説している場合ではありませんっ!


ど、どういうことでしょうか!?真姫に、こ…こ……告白っ…!?


「あ、あの!屋上の練習こっそり見たり、講堂でライブしているのずっと見てましたっ!」


「一番最初のライブは行けなかったんだけど、ライブの動画で見てファンになって……」


「μ'sに…西木野さんの曲にとっても勇気づけられましたっ!!」


「……………」


……私も、彼女も、ただ熱いプロポーズに耳を傾けるばかり


「いつの間にか、頑張ってる西木野さんのことばかり目で追うようになってて…曲を何度もかけて…それから………」


「とにかく西木野真姫さんが好きなんですっ!!お願いしますっ!!」


私と………同じ


最初はただ動揺を隠せず、密かな対抗心を燃やしていたものの


彼女を好きになった動機が自分と重なった瞬間、それは同情へと変わってしまいました


これでは断られても受け取られても私は…………


「………ごめんなさい」
74: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/25(木) 21:59:59.35 ID:PyidWJYN.net
………どうしてでしょうか。人の悲恋を見てしまったというのに


少なくとも相手に何らかの同情が生まれてくるものだというのに


私は安堵のため息をついている


「……園田さん、ですか?」


「えっ?」


驚かずにはいられなかった


音楽室内の出来事に介入していないはずの、決して挙げられるはずのない私の名前が聞こえたから


「昨日、見てしまったんです。西木野さんと園田さんが抱きしめ合ってたところ………」


自分の注意力のなさと、恋に惑わされてしまった弱さに、先ほどとは意味合いの違うため息がこぼれる


真姫からしたら呆れられてるでしょう。私のせいでこんなことになってしまったのだから


「西木野さんは……園田さんのことが……」


嗚咽と涙混じりの震え声


傍から聞いてるだけでも辛いというのに、対面している本人が私ならば、耐えきれる自信はないない


「………海未は関係ないわ」
75: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/25(木) 23:18:32.74 ID:PyidWJYN.net
「で、でもっ…!」


「普段のμ'sを知ってるならわかりますよね。穂乃果を始め、皆誰彼構わず抱きついてることは」


「は、はい…西木野さんも園田さんも?」


「まぁスキンシップの一つとでも考えて貰えればいいです。とにかく私と海未は先輩が思うような関係じゃありませんから」


「そっか……えへへ、良かった」


「良かったって…後輩にフラれてむかついたりとかしないんですか?」


「ううん、むしろ西木野さんのこともっと好きになりました」


「! い、意味わかんない!」


「最後に、私じゃダメな理由教えてくれますか?」


「あなただからダメじゃないんです。今はスクールアイドルで誰とも付き合う気はありませんから」


「そうだよね。そうじゃなくても西木野さんは大病院のお嬢様だもんね」


「っ……………」


「でもこれで自分の気持ちがすっきりできて良かったです。ありがとうございました」


「……例を言われる筋合いはないわ」


「ふふっさようなら、西木野さん」
76: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/25(木) 23:35:15.13 ID:PyidWJYN.net
これで良かったのかもしれません


「遅いじゃない海未。自分から呼び出しておいて」


元から叶わぬ恋だと理解していて、遠まわしに失恋しただけです


「……もしかしてさっきの見てた、わよね。はぁ………」


私と真姫は天地がひっくり返ろうとも相容れない存在


「ごめんなさい。建前とはいえあんな酷い事言って………」


私もあの人みたいにきれいさっぱり忘れてしまいましょう


「海未?聞いてるの?しっかりしてよ」


そしてまた、再び変わらぬ日常へと戻り、楽しむのです


「それで、結局なんの用だったの?」


「作曲、しましょう」


二人だけの時間を………


end
77: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/06/25(木) 23:38:53.54 ID:PyidWJYN.net
雑で終始グダグダになってしまいすみませんでした
最初から台本形式にしておけば良かったです
少ししたらうみまきの姉妹生活の続き書くんでそちらもよろしくお願いします
スポンサーリンク

シェアする

フォローする

『【SS】海未「二人だけの時間」』へのコメント

コメントの投稿には初回のみDisqusへのアカウント登録が必要です。Disqusの登録、利用方法を参考に登録をお願いします。
表示の不具合、カテゴリーに関する事等はSS!ラブライブ!Disqusチャンネルにてご報告下さい。