えみつん「東京ドームでライブをしたければ……」あんちゃん「野球で勝負!?」

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穂乃果-アイキャッチ59
1: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 19:34:44.78 ID:BSTrWopH
あんちゃん「μ's対Aqoursで……野球の試合をするってことですか!?」

 

えみつん「その通り!!」

みもりん「果たして、貴方たちが私たちのように、あの東京ドームという大舞台に立つ資格があるのかどうか?」

うっちー「お姉さんたちが、直々に審査してあげようと思って~♪」

 

ふりりん(やべえ、あのレジェンド、えみつんさんと三森さんと内田さんが直々に……)

あいきゃん(プレッシャーぱない……)

しゅか「って、意味がわかんないです!」

あんちゃん「てゆうかなんで野球なんですか!?」

 

えみつん「うーん、色々競技方法考えたんだけどねえ?」

うっちー「私たち、お互いどっちも9人だし♪」

みもりん「ほら、ドームっていったら野球でしょ?」

うっちー「9人でやるスポーツといえば野球!」

えみつん「そうだ野球だぞ野球!」

みもりん「野球だ野球ー!」

 

あんちゃん「安直すぎる!」

元スレ1: えみつん「東京ドームでライブをしたければ……」あんちゃん「野球で勝負!?」

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2: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 19:36:41.34 ID:BSTrWopH
ありしゃ「……よろしいでしょうか」

あんちゃん「あ、ありさちゃん……」

ありしゃ「本気……なんですか?」

 

えみつん「もちろん。本気も本気だよ」

みもりん「もし……貴方たちが、負けたら」

うっちー「東京ドームでライブするのも……考え直した方がいいんじゃないかな?」

 

あんちゃん「……!!」

 

みもりん「東京ドームでライブするっていうのは、それなりの覚悟と強さが必要だし」

うっちー「私たちに負けちゃうようなら、それってやっぱり、まだまだ未熟ってことだよね♪」

えみつん「そう……たとえ野球でも、私たちに負けてるようじゃ……」

えみつん「東京ドームに立つ、資格すらないってことだよ!」カッ

 

きんぐ「ま……マジかよぉ……」

あいにゃ「そんなぁ……ここまで来たのに……」
4: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 19:38:47.07 ID:BSTrWopH
あんちゃん「……わかりました」

あんちゃん「その勝負! 受けて立ちます!!」

ふりりん「えっ!?」

あいきゃん「ちょっと、本気!?」

あんちゃん「私たちは、まだまだ立ち止まってられないもの……!」

あんちゃん「だったら、たとえ相手が、あのμ'sだとしても……逃げちゃ駄目じゃん!!」

 

えみつん「………」ニッ

 

すわわ「ん。まあ、そうだよね」

りきゃこ「ね、なんか面白そうだし!」

きんぐ「てゆうか、りかこ、野球のルール知ってんの?」

 

みもりん「ふふふ。じゃあおっけーってことで」

うっちー「わ~、楽しみ~♪」

えみつん「回数は9回制で延長は無し。その他のルールは普通の野球と同じ」

えみつん「じゃあ、勝負は1ヶ月後! 楽しみにしてるよ!」

ガチャッ

バタンッ
5: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 19:40:23.46 ID:BSTrWopH
あんちゃん「………」

ふりりん「な、なんかとんでもないことに……」

あいにゃ「あ、あのμ'sと、野球で対決……!?」

ありしゃ「だけど、こうなったからには、腹くくるしかないって」

すわわ「うむ」

しゅか「まあでも、野球でしょ!? 体動かすのは得意だし!」

りきゃこ「あ、私、本場のメジャーの試合見たことある!」

きんぐ「すげえ不安だ……」

あいきゃん「でも、負けたら東京ドームでライブ、出来なくなっちゃうんでしょ……?」

あんちゃん「そうだよ……やるしかない」

あんちゃん「たとえ相手が、μ'sでも……!!」
6: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 19:42:14.76 ID:BSTrWopH
えみつん「………」

みもりん「ふっふっふ。うまくいったね」

うっちー「みんな、その気になってくれたみたいだし♪」

えみつん「……そうだね」

えみつん「よし。それじゃ、他のみんなにも連絡しよう!」

 

…………

……
8: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 19:44:39.84 ID:BSTrWopH
~試合当日 埼玉メットライフドーム~

 

ワアアアアッ!!

 

ひなひな『さあ、いよいよ始まります、μ's対Aqoursの野球対決!!』

ひなひな『この世紀の一戦を見届けようと、ここ会場のメットライフドームは超満員のラブライバーで埋め尽くされております!!』

あさみん『いやー、すごいお客さんだねー』

ひなひな『実況はわたくし、ひなひなこと、佐藤日向!!』

ひなひな『そして解説は、あさみんこと田野アサミさんでお送りいたします!!』

あさみん『あさみんとか田野さんとか、呼びたいように呼んでねー!』

ワーッ!

アサミーン!! ヒナヒナー!!

ひなひな『今回のこの野球対決、回数は9回制で延長は無し!』

ひなひな『そしてAqoursは、この試合、負ければ東京ドーム公演の権利剥奪という、厳しい条件が課せられております!!』
9: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 19:46:34.34 ID:BSTrWopH
ひなひな『さて解説のアサミさん……なんか言いにくいので姉様』

ひなひな『この試合、どのように予想されますか』

あさみん『そうねえ……地元・阪神の試合を見続け20年の私が考えるに……』

ひなひな『なんか変な設定加わってる』

あさみん『体力的には、平均年齢の若いAqoursが上回るけれど……』

あさみん『なんと言っても、μ'sには培ってきた経験がある。なかなかいい試合になるんじゃないでしょうか』

ひなひな『なるほど! 一体どんな試合になるのか、期待しましょう!!』
11: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 19:49:05.53 ID:BSTrWopH
ひなひな『それでは、両チームのスターティングメンバーの発表です!!』

 

ドンッ!

―― μ's ――

 

サーユメヲー カーナエールーノハーミンナノーユウキー

マケナイー ココロデー アシーターヘーカーケーテーイコー

 

ひなひな『まずは先攻、一塁側!! 声優アイドル界のレジェンド、μ's!!』

ひなひな『「それは僕たちの奇跡」の歌に乗せて、オーロラビジョンに、μ'sのスタメンが映し出されます!!』

オオオオオッ!!
12: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 19:51:16.07 ID:BSTrWopH
『1番 ライト 久保ユリカ 背番号6』

シカチャアアアンッ!!

チョットマッテテェェェ!!

ひなひな『注目の1番打者は、μ'sいちの体格(スタイル)の持ち主でパンチ力もある久保!!』

 

『2番 セカンド 徳井青空 背番号7』

ソラマルゥゥゥッ!!

ニッコニッコニィィィ!!

ひなひな『その器用さで運動音痴の風評を払拭出来るか!? 2番に入るのはμ'sの職人、徳井!!』

 

『3番 ショート 三森すずこ 背番号3』

ミモリイイイインッ!!

ラブアローシュートォォォ!!

ひなひな『中軸を打つのは、μ'sトップクラスの身体能力の持ち主、三森!!』

 

『4番 キャッチャー 新田恵海 背番号1』

エミツウウウウンッ!!

ファイトダヨォォォ!!

ひなひな『そして不動の四番打者!! 主砲はやはりこの人、μ'sのリーダー新田!!』
13: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 19:53:35.39 ID:BSTrWopH
『5番 ピッチャー 内田彩 背番号2』

ウッチィィィィ!!

チュンチュゥゥゥン!!

ひなひな『μ'sの先発投手は内田!! あのふわトロボイスからどのような投球を見せるのか!?』

 

『6番 センター 飯田里穂 背番号5』

リッピィィィィ!!

イエローダヨォォォ!!

ひなひな『μ's最年少で元気と体力は随一!! 広い外野を駆け回ります、飯田!!』

 

『7番 レフト Pile 背番号4』

パイチャアアアン!!

カキクケコォォォ!!

ひなひな『そのプレーはメイクのように変幻自在!! 堅い守備でレフトを守るはPile!!』

 

『8番 ファースト 南條愛乃 背番号9』

ナンジョルノォォォォ!!

エリーチカァァァァ!!

ひなひな『体力を考慮し8番に入りますが、経験値は他の追随を許さないベテラン、南條!!』

 

『9番 サード 楠田亜衣奈 背番号8』

クッスゥゥゥゥン!!

イタダキマシタァァァ!!

ひなひな『ラストバッターは、意外性のある打撃とガッツあふれる守備の持ち主、楠田!!』
15: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 19:55:09.20 ID:BSTrWopH
ひなひな『以上がμ'sのスターティングメンバーとなります!!』

ひなひな『いやあ、こうして並ぶと正にレジェンドといった趣きですね、姉様!!』

あさみん『本当に恐ろしいメンバーです。流石は声優アイドル界の頂点に立ったグループですね』

 

ウオオオオオッ!!

ミューズ!! ミューズ!!

ワアアアアアッ!!

 

ひなひな『レジェンドの復活に、一塁側μ'sの応援席、早くも大盛り上がりです!!』
16: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 19:56:43.10 ID:BSTrWopH
 

ドンッ!

―― Aqours ――

 

ホーンキヲー ブーツーケーアッテー

テーニーイレヨー ミーラーイヲー

 

ひなひな『続いては後攻、三塁側!! 躍進を続ける新世代、Aqours!!』

ひなひな『「未来の僕らは知ってるよ」の歌に乗せて、Aqoursのスタメン、発表です!!』

オオオオオッ!!
18: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 19:58:50.13 ID:BSTrWopH
『1番 ショート 斉藤朱夏 背番号2』

シュカシュウウウウッ!!

ヨーソロォォォッ!!

ひなひな『1番打者はメンバー最年少、抜群の身体能力の持ち主、斉藤!!』

 

『2番 セカンド 降幡愛 背番号5』

フリリィィィンッ!!

ガンバルビィィィッ!!

ひなひな『職人といえばこの人!! 野球でもその職人ぶりを魅せることが出来るか、降幡!!』

 

『3番 ピッチャー 伊波杏樹 背番号1』

アンチャアアアアン!!

チカッチィィィィ!!

ひなひな『そしてAqoursの先発は!! Aqoursの大黒柱、頼れるリーダー、キャプテン伊波!!』

 

『4番 サード 小宮有紗 背番号7』

アリシャアアアアッ!!

ダイヤッホォォォォ!!

ひなひな『4番に入るのは元戦隊ヒーロー!! Aqoursの中で最もバランスの良い小宮!!』
19: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:02:31.47 ID:BSTrWopH
『5番 ファースト 高槻かなこ 背番号4』

キンチャアアアアン!!

オハナーマルゥゥゥ!!

ひなひな『体格はAqoursピカイチ!! その恵まれた体躯を活かすことが出来るか、高槻!!』

 

『6番 キャッチャー 逢田梨香子 背番号3』

リキャコォォォォッ!!

サンドイッチィィィ!!

ひなひな『チームの要のキャッチャーに入るのは、人生経験豊富、最年長の逢田!!』

 

『7番 ライト 諏訪ななか 背番号8』

スワワァァァァッ!!

ダイブイイカンジィィィ!!

ひなひな『常にマイペース、冷静なプレイで魅せるスクフェサー諏訪!!』

 

『8番 レフト 小林愛香 背番号6』

アイキャァァァンッ!!

オハヨシコォォォ!!

ひなひな『パワーには欠けるものの、ダンスで培った運動能力には目を見張るものがあります、小林!!』

 

『9番 センター 鈴木愛奈 背番号9』

アイニャアアアアアッ!!

シャイニィィィィ!!

ひなひな『最も小柄ながら、元陸上部で足の速さには定評がある鈴木がラストバッターです!!』
20: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:03:59.00 ID:BSTrWopH
ひなひな『以上がAqoursのスターティングメンバーとなります!!』

ひなひな『姉様、Aqoursのスタメン、どんな印象ですか?』

あさみん『バランスは非常にとれていると思います。たくさんのライブをこなし、今やAqoursにも安定感がありますし』

あさみん『μ's相手でも、決してひけをとらないと思いますよ』

ひなひな『好ゲームを期待したいところですね!』

 

ウオオオオオッ!!

アークーア!! アークーア!!

ワアアアアアッ!!

 

ひなひな『一塁側に負けじと、三塁側のAqoursの応援席からも大きな歓声が飛んでいます!!』
21: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:05:25.68 ID:BSTrWopH
~一塁側 μ'sベンチ~

 

ジョルノ「久々の、μ'sとしての活動が……」

ぱいちゃん「まさか、野球で対決だなんてねー。どっちかというとサッカーが良かったなー」

シカコ「へん。野球だろうがなんだろうが、あの子たちをやっつけちゃえばいいんでしょ」

りっぴー「シカちゃん、やる気じゃーん! こわーい」

そらまる「ふっふっふ。たとえ野球でも、ウチらに勝とうなどと100万年早いわ!」

みもりん「そらが言うと、なんか死亡フラグっぽい」

ジョルノ「体動かすのはなー。ゲームで対決とかでよくない?」

くっすん「なんちゃん、やる気出して―!」

うっちー「じゃあえみつん、ここらで一発、ガツンと締めて♪」

えみつん「ええっ、私!?」

えみつん「よ、よーし……それじゃあみんな、輪になって!」
23: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:07:06.01 ID:BSTrWopH
えみつん「……こうして9人そろうのも、久しぶりだね」

みもりん「だね」

えみつん「久しぶりのステージだけど、みんな、大丈夫?」

うっちー「当然」

えみつん「……よし! だったら、私たちも全力でいこう!」

えみつん「今日、ここにいる全員に、μ'sがμ'sであることを見せてあげよう!」

えみつん「それじゃあいくよ!! ミュゥゥーーズ!!!」

9人「ミュージック……スタートォ!!!」

 

ワアアアアッ!!
24: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:08:38.71 ID:BSTrWopH
~三塁側 Aqoursベンチ~

 

あいきゃん「わああ……一塁側、すごい歓声……」

きんぐ「ビビってる場合じゃないよ。負けたら、東京ドームでライブやれなくなっちゃうんだから」

ありしゃ「なんとしても、勝ちにいかなきゃね」

しゅか「へへっ。スポーツなら、負けないもんねー」

すわわ「スクフェスだったら負けないんだけどな」

ふりりん「あの、えみつんさん達と試合……うわすげー緊張してきた」

りきゃこ「だけど、今日この日のために練習してきたんだし……きっといける、はず!」

あいにゃ「そうそう、元気出していきますわよー! よっしゃーいくぜー!」

あんちゃん「よーし、それじゃあ、輪になって! いつもの、やろう!」
25: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:09:52.99 ID:BSTrWopH
あんちゃん「それでは、いよいよ試合本番でございますけれども」

あんちゃん「いつも通り。困ったらお互いの目を見て」

あんちゃん「お互い助け合って。最高の試合をしていきましょう」

ありしゃ「あんちゃん、かたーい」

しゅか「もっと気合入れてもいいんじゃん?」

あんちゃん「もー、真剣なのにー!」

あんちゃん「……よーし、わかった。相手がμ'sでも!! 全力で勝ちに行くよ!!」

あんちゃん「Aqoursァァーー!!」

9人「サーン、シャイィーーン!!!」

 

ワアアアアッ!!
26: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:12:03.42 ID:BSTrWopH
ひなひな『さあ両チーム、円陣を組んで気合を入れた所で、いよいよ試合開始です!!』

ひなひな『まず守るAqoursが、グラウンド内に散っていき……』

ひなひな『マウンド上はキャプテンの伊波! これから投球練習に入ります!』

 

あんちゃん「……よーし」

あんちゃん「いくぞぉ、りこちゃん!!」

ザッ

ガバッ

ビシュッ!

 

バシィッ!

りきゃこ「ちょっとあんちゃん、投球練習なのに力入りすぎ……!」
27: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:13:25.65 ID:BSTrWopH
ひなひな『ピッチャー伊波、右のオーバースロー! 力強い豪快なフォームから速球を投げ込みました!』

あさみん『なかなかの球速ですね。空手の有段者らしい、力強い投げ方です』

あさみん『ただ、少々、力みすぎにも見えますが……』

 

りきゃこ「あんちゃん、飛ばしすぎじゃない?」

シュッ

あんちゃん「大丈夫だってりこちゃん、このくらい」

パシッ

あんちゃん「……ふぅー」

あんちゃん「うっしゃあ!! いくぞオラぁ!!」

 

ふりりん「今日のあんちゃん、オラつきモード入ってる……」

きんぐ「てか、気合入りすぎじゃない?」
28: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:14:34.70 ID:BSTrWopH
うっちー「へー。結構いい球、放るねー」

みもりん「なかなか速いし……だけど」

えみつん「うん。これは……」

そらまる「よぉーっし! 向こうの気合いに負けるなぁ、シカちゃん!」

ザッ…

シカコ「……わかってるよ、徳さん」

 

『1番、ライト、久保。ライト、久保。背番号6』
30: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:17:07.86 ID:BSTrWopH
【1回表】

 

\プレイボール/

 

ひなひな『さあ、先攻のμ's、一番打者の久保が右バッターボックスに入り、試合開始です!!』

ワアアアアッ!

 

シカコ「………」

りきゃこ(この人が久保さん……すごいスタイル。体力もありそう……)

 

あんちゃん(わぁぁぁぁ!! 大好きな花陽ちゃんの中の人、久保さんだぁぁ……///)

あんちゃん(すっごい綺麗なスタイル、めっちゃカワイイ……///)

ポーッ

あんちゃん(……はっ!! なに見とれてんの、杏樹!!)

あんちゃん(ダメだっての、これは真剣勝負……! たとえ久保さんでも、全力でぶつかっていかなきゃ……!!)
31: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:19:13.42 ID:BSTrWopH
りきゃこ(……あんちゃん、見とれてんなしー)

りきゃこ(いくよ? まずはインコースに攻める!)

スッ

 

あんちゃん(おっけー、りこちゃん)

あんちゃん(行くぞっ!)

ガバッ

シュッ!

 

バシッ!

\ストライーク!/

 

ひなひな『ピッチャー伊波、初球はインコースへのストレート! 幸先よくストライクです!』

あさみん『逢田捕手、強気なリードですね。いいと思いますよ』
33: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:20:52.65 ID:BSTrWopH
あんちゃん「よっしゃ! 見たかぁー!!」

 

シカコ「………」

シカコ「……チッ。うっせーな」ボソッ

 

あんちゃん「!?」ビクッ

あんちゃん(……え? 今、うっせーな、って……)

 

ジョルノ「あー、今日は“闇シカコ”だ。下手に触んない方がいいかも」

くっすん「シカちゃん、コワい……」
34: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:22:26.06 ID:BSTrWopH
りきゃこ(あんちゃん、ビビらないで!)

りきゃこ(臆したら負けだよ!)

スッ

 

あんちゃん(うん、りこちゃん、わかった……!)

あんちゃん(そうだ、気持ちで負けないっ! 全力でいかなきゃ!!)

 

シュッ

スパンッ

\ボール!/

 

シュッ 

キンッ

\ファール!/
35: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:26:11.29 ID:BSTrWopH
ひなひな『2球目はややアウトコースに外してボール、3球目も同じくアウトコース気味の速球をカットしてファール!』

ひなひな『ワンボールツーストライク、次の1球は……』

 

りきゃこ(最後は、もう一度胸元に、思いっきりストレート!)

スッ

 

あんちゃん「……よっし」

ガバッ

あんちゃん「うらぁっ!!」

シュビッ

 

りきゃこ(よし、コース通り! もらった――)

 

シカコ「甘い」ボソッ
36: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:27:49.74 ID:BSTrWopH
カキィン!

 

あんちゃん「わっ!?」

バシッ

 

ひなひな『弾き返した久保! ボールはピッチャー強襲!!』

ひなひな『咄嗟にグラブで弾いた、伊波!!』

ひなひな『しかしボールは転々とセンター前に転がる! 記録はヒットです!!』

オオオオッ!

 

ふりりん「あんちゃん!」

しゅか「大丈夫!?」

あんちゃん「だ……大丈夫。ちょっとびっくりしたけど」
37: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:30:54.52 ID:BSTrWopH
りきゃこ(くっ……内角の、打ちにくいコースと思ったけど……)

りきゃこ(狙われた……!?)

 

うっちー「強気なリードはいいんだけどねえ」

えみつん「うん。ちょっと組み立てが、単純すぎるかもね」

ジョルノ「シカコだったら、あのくらいは軽いかな」

りっぴー「いえー、シカちゃーん!!」

 

シカコ「……ふんっ」

 

あさみん『しっかり肘をたたんで、インコースの球を上手く打ち返しましたね』

あさみん『強気に内角を攻めたバッテリーですが、バッターの方が上手(うわて)だったかな』

ひなひな『これでノーアウト一塁! 早くも先制のランナーが出ました!』

ワアアアアッ
38: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:32:28.97 ID:BSTrWopH
『2番、セカンド、徳井。セカンド、徳井。背番号7』

 

そらまる「さあー、きたきたきたぁー!! ここで強打者、徳井青空登場!!」

そらまる「シカちゃん、歩いてホームに返すから、大人しくしといていいからねー!!」

ブンブンッ

 

シカコ「あーもう、やかましいわ!」

 

ひなひな『やる気マンマンでバットを振り回しながらバッターボックスに入るのは、2番の徳井!』

あさみん『定石通りなら、送る場面ですが……強硬策に出る可能性もありますね』
39: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:34:49.66 ID:BSTrWopH
りきゃこ(普通は、送る場面だけど……)

りきゃこ(聞くところによると、この人は“芸人”と呼ばれるほど、破天荒なことをしでかす人)

りきゃこ(強硬策で、打ちに来る可能性も……)

スッ

りきゃこ(なら、また内角で、詰まらせてゲッツー狙い……)

 

あんちゃん(わかった、りこちゃん)

あんちゃん(強気で、強気で……!)

 

そらまる「さあ、ばっちこーい! 軽くスタンドまでぶち込んでやるぞー!!」

クイックイッ
40: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:36:06.36 ID:BSTrWopH
あんちゃん(そっちがその気なら……)

あんちゃん「おらぁ!!」

ビュッ!

 

そらまる「――なんちゃって」

スッ

りきゃこ「!?」

コキンッ

 

ひなひな『ああー、バント! あんだけ騒いどいて、ごく普通のバント!!』

ひなひな『打球は三塁線を転がる!!』
41: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:37:22.12 ID:BSTrWopH
りきゃこ「ありさ!!」

 

ありしゃ「くっ!」

ダダッ!

パシッ

 

ひなひな『サード小宮、飛び出して打球を処理!』

 

シュビッ!

スパンッ!

\アウト!/

 

ひなひな『一塁は間に合いました! 送りバント成功、ワンナウト二塁!』

あさみん『強硬策を警戒して、内野が完全に前に出ていなかったので、サードの小宮選手の反応も遅れましたね』

あさみん『あわよくばセーフティも狙った、巧妙なプレーですよ』
42: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:38:49.06 ID:BSTrWopH
ありしゃ(そして、打球の威力を殺して、三塁線ギリギリに転がす絶妙なバント……)

ありしゃ(私としたことが……危なかった)

 

そらまる「おーし、オッケーイ!! ナイスバント、私!!」

シカコ「おう。ナイス、徳さん」

 

ジョルノ(そらが、破天荒、ねえ……)

ジョルノ(“芸人”と呼ばれることもあるけれど。実は、すげえ真面目でまともなヤツなんだよね。そらは)
43: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:40:23.77 ID:BSTrWopH
『3番、ショート、三森。ショート、三森。背番号3』

 

ワアアアアッ!

キャアアアアッ!

ミモリィィィンッ!!

 

ひなひな『さあチャンスで、打線は中軸に移ります!!』

ひなひな『3番を打つのは、μ'sの中でもトップクラスのフィジカルの持ち主、みもちゃ……いや、三森!!』

ひなひな『かつてディ○ニーランドのキャストとしてならし、今もトレーニングは欠かさないという鋼の体!!』

あさみん『彼女の体力と身体能力は折り紙つきです。野球にもそれを活かすとなると、脅威ですよ』

 

みもりん「ふっふっふ。さー、でっかいの打っちゃうよー」
44: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:41:40.07 ID:BSTrWopH
あんちゃん(三森さん……μ'sの中でも、屈指の巧打者)

あんちゃん(だけど……逃げちゃいけない。強気で、押し切らなきゃ)

 

りきゃこ(ここからのクリンナップは要注意……)

りきゃこ(でも、ここで簡単に1点を取られるようなら、到底μ'sに勝つなんて出来ない)

りきゃこ(ここは、なんとかゼロで抑える……!)

スッ

 

ひなひな『サイン決まって、三森選手に向けて第1球!』

 

ザッ

あんちゃん「うらぁっ!!」

シュビッ!
45: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:42:56.47 ID:BSTrWopH
バシッ!

\ボール!/

 

みもりん「おおっ、速っ」

りきゃこ(まず、高めの釣り球……流石に、手は出してこないか)

みもりん「………」

 

みもりん(球速は、120キロそこそこ……ってところかな)

みもりん(女子としては、かなり速い。流石、あく……えっと、なんだっけ)

みもりん(まあいいや。あくなんとかのリーダーとして、伊達に鍛えてる訳じゃないってことか)

みもりん(……だけど)

スッ
46: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:44:19.36 ID:BSTrWopH
あんちゃん「」ザッ

 

ひなひな『さあ伊波、三森選手に向けて第2球を……』

ひなひな『投げたっ!』

 

ビシュッ

 

みもりん(――そこ!!)

シュッ

 

カキィン!!
47: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:46:22.63 ID:BSTrWopH
あんちゃん「!!」

 

ひなひな『打ったぁぁー!! 大きい!!』

 

りきゃこ「あいきゃん、バァーック!!」

 

タタタッ

あいきゃん「嘘でしょ!? 打球、はや……!!」

あいきゃん「間に合わないってぇ!!」

ザンッ!

 

ひなひな『レフトの頭を越えた!! これは長打になる!!』

ひなひな『ランナーの久保は三塁も回った!! そして悠々、ホームイン!!』

ひなひな『ボールが返ってくる間に、打った三森は二塁へ!!』

ひなひな『鮮やかなタイムリーツーベース!! μ's、早くも先制ー!!』

ワアアアアアッ!!

 

【μ's 1―0 Aqours】
48: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:48:42.37 ID:BSTrWopH
あさみん『流石ですね。1番が出塁、2番が送って、3番が返す。お手本通りの、理想的な点の取り方です』

あさみん『そして、打った三森選手も、伊波選手の速球にしっかりタイミングを合わせて弾き返しましたね。お見事です』

 

りきゃこ(今のも、内角の厳しいコース……)

りきゃこ(決して、打ちやすいコースじゃないはずなのに……!)

 

あんちゃん「……!!」ハァハァ

 

みもりん(……だけど。速いといっても、力任せに放り投げてるだけ)

みもりん(言ってみれば、それは打ちごろの、ただの棒球)

 

うっちー(球質も軽そうだし。みもりんなら、あれくらい打ち返せるね)

うっちー(それに、次は……)
49: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:49:45.28 ID:BSTrWopH
ふりりん「あ、あんちゃん、偶然だよ偶然!」

きんぐ「気にすんなー!」

しゅか「切り替えて、次いこー!」

 

あんちゃん「う……うん……」

あんちゃん(だけど……次は……)

 

ザワッ…

 

『4番、キャッチャー、新田。キャッチャー、新田。背番号1』
50: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:51:53.40 ID:BSTrWopH
ワアアアアアッ!

エミツゥゥゥン!

タノムゾォォォ!

 

ひなひな『さあ場内が一段と大きな歓声に包まれました!!』

ひなひな『迎えるバッターは、μ'sの四番打者、新田!!』

あさみん『言うまでもなく、μ's最強の強打者です』

あさみん『ここで、しっかり抑えることが出来るかどうか。早くも、序盤の山場ですね』

 

えみつん「よーし……」

えみつん「行くよ。あんちゃん」
52: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:53:04.62 ID:BSTrWopH
ザッ

えみつん「………」

ズズ…

 

りきゃこ(う……バッターボックスに立っただけで感じる、このオーラ……)

りきゃこ(今まで……それなりに、生き馬の目を抜く芸能界で、生き抜いてきたけれど……)

りきゃこ(今まで会った、誰とも違う……! これが、伝説のグループの、リーダー……!?)

 

あんちゃん「………」フゥハァ

 

りきゃこ(あんちゃんも、打たれてるし……)

りきゃこ(ここは一旦タイムして、間を取らなきゃ)

りきゃこ「た、タイ……」

 

あんちゃん「!」

バッ!
53: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:55:03.03 ID:BSTrWopH
ひなひな『おっと、これは……? キャッチャーの逢田選手、立ち上がりかけましたが……』

ひなひな『マウンド上の伊波選手、手を挙げて、それを制止したように見えます!』

 

りきゃこ「あ、あんちゃん……?」

 

あんちゃん(ダメ……駄目だよ、りこちゃん……)

あんちゃん(まだ、1点取られただけ。ここは絶対、抑える。抑えてみせる)

あんちゃん(私が、全力で抑えなきゃ……Aqoursのみんなで、東京ドームに、行けなくなるもの……!)

あんちゃん(だから、ここは私が……!!)

 

えみつん「………」
54: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:56:42.31 ID:BSTrWopH
えみつん「……あんちゃんは。偉いね」

りきゃこ「……え?」

えみつん「リーダーとして、頑張ろうとしてる。自分が頑張んなきゃ駄目なんだ、って」

りきゃこ「は、はあ……」

えみつん(だけど……)

えみつん(“本当に大事なこと”を……忘れてる)

 

ジョルノ「青いねえ……若さ、だねぇ」

くっすん「うわ、なんちゃん、おばさんくさーい」

シカコ「仕方ないよ、だってよしのん、もうさんじゅうよn」

ジョルノ「わーやめろ!! 年の話はやめろぉ!!」

ぱいちゃん「青い? まあ確かに、あの子たちのチームカラーって青っぽいよね。サムライブルー?」

りっぴー「ぱいちゃん、どこから突っ込んだらいいのかわかんないよー!」
55: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 20:58:20.89 ID:BSTrWopH
えみつん(“大事なこと”に、気づかないままなら……)

ゴゴ…

えみつん(私たちには……勝てないよっ!)

ゴゴゴゴ…

 

あんちゃん「……っ!!」

ビリッ…

 

ひなひな『バッターボックスで構える新田選手……』

ひなひな『心なしか、放送席にも、その闘志が伝わってくるような……!』

あさみん『……流石は新田さん。並の選手では、この空気に呑まれてしまいますよ……!』
56: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 21:00:34.98 ID:BSTrWopH
あんちゃん(……逃げちゃ駄目)

あんちゃん(私は……全力で、立ち向かうんだ。相手が、新田さんでも……μ'sでも……!)

ザッ…

あんちゃん(私が、頑張んなきゃ……だって、私は……)

あんちゃん(リーダーなんだから……!!)

 

りきゃこ(あんちゃん……!)

 

あんちゃん「おらぁっ!!」

シュバッ!!

 

 

 

カッ

 
57: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/14(火) 21:03:05.89 ID:BSTrWopH
 

キィィィンッ!!

 

 

あんちゃん(――瞬間)

あんちゃん(時が、止まった気がした)

あんちゃん(その瞬間の、音だけで)

あんちゃん(私は――打球の行方を、確信してしまい)

あんちゃん(振り返り、打球を目で追うことも、出来なかった――)

 

 

ひなひな『大きいぃぃーー!! 打球は一直線に飛んでいく!!』

ひなひな『センターの鈴木、立ち止まり――見送った、見送ったぁーー!!』

 

ドカッ!

 

ひなひな『入ったぁぁぁーー!! バックスクリーン直撃の、特大ホームラン!!』

ひなひな『新田、四番打者としての期待に、見事に応えてみせました!!』

ひなひな『これがμ'sです!! これが新田恵海です!!!』

 

ワアアアアッ!!
78: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:05:57.21 ID:BLAsgJZk
ひなひな『打った新田選手、高々と右手を上げ、ダイヤモンドを1週しています!』

あさみん『ライナー性の当たりを、バックスクリーンまで運ぶとは……』

あさみん『流石は新田選手。阪神にも欲しい逸材ね』

 

みもりん「やったー、えみつーん!!」

そらまる「すげー、えみつん! 流石はリーダー!」

えみつん「わー、みんな、やったよー!」

ズルッ

えみつん「あうっ!?」

ベチャッ

 

ひなひな『おっと新田選手、なぜかホームベース直前で足を滑らせ、そのままコケながらホームイン!』

あさみん『ま、まあ、これも新田さんらしいといえば……』

 

えみつん「うう……こけちった……」

そらまる「もー何やってんだよえみつーん!」

ぱいちゃん「相変わらずおっちょこちょいなんだからー」

うっちー「ぱいちゃんは人のこと言えないでしょー」

/ワハハハ\

 

【μ's 3―0 Aqours】
79: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:10:01.29 ID:BLAsgJZk
ひなひな『さあ、盛り上がるμ'sのベンチとは対照的な、グラウンド上のAqours』

ひなひな『完璧に打たれた伊波、マウンド上で茫然自失です』

あさみん『序盤でいきなりの3点ビハインドは痛いねぇ……』

あさみん『しかもここまで、あんちゃんは速球をことごとく捉えられてるからね。切り替えていかないと、まずいですよ』

 

あんちゃん「………」ハァハァ

あんちゃん(抑えなきゃ……いけなかったのに……)

あんちゃん(リーダーの私が、ちゃんとしなきゃ駄目なのに……なのに……!)

 

りきゃこ「………」ハァ

りきゃこ「……タイム、お願いします」
80: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:11:30.15 ID:BLAsgJZk
りきゃこ「……あんちゃん」

あんちゃん「!」ハッ

あんちゃん「……りこちゃん」

りきゃこ「………」

あんちゃん「ご、ごめん。ごめんなさい。怒ってるよね」

あんちゃん「リーダーなのに、こんな不甲斐ないピッチングで、私……」

りきゃこ「……あんちゃん」

りきゃこ「もう、やめてもいいんだよ?」

あんちゃん「……!!」 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:1341adc37120578f18dba9451e6c8c3b)
81: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:15:16.36 ID:BLAsgJZk
あんちゃん「………」

あんちゃん「そ……そうだよね。こんな情けないリーダーなら……」

りきゃこ「違うし。まったく、おバカ」

あんちゃん「……え?」

りきゃこ「私が言いたいのは、肩肘ばって、無理しなくたっていいんだってこと!」

りきゃこ「まったく、バカじゃないの? これじゃまるで、肩に力入りすぎてオラついてた初期の伊波さんそのまんまじゃん」ハンッ

あんちゃん「ええー!! ちょっと、ひど!!」

しゅか「そうだぞ、伊波ー!!」

ふりりん「あんちゃん、力みすぎだって!」

きんぐ「もちっと、肩の力抜いたっていいんじゃない?」

あんちゃん「み……」

あんちゃん「みんな……」
82: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:16:43.53 ID:BLAsgJZk
きんぐ「昔のあんちゃんは、リーダーとして頑張ろうとしすぎて、妙にオラついてたしねー」

ふりりん「無理してるとウチらもつらいし。天邪鬼のあーしが言うのもなんだけど、素直になろーよ」

あんちゃん「で、でも……」フニャ

あんちゃん「リーダーの私が……ふにゃふにゃしてたら、みんなに迷惑が……」フニャフニャ

ありしゃ「……なに言ってるの」

ありしゃ「あんちゃんは、素のまんまの、素直なのが一番可愛いんだから」

あんちゃん「ありさちゃん……」

しゅか「そうそう! 媚び媚びモードのあんじゅの方が絶対いいって!!」

あんちゃん「な、なんだそれ!!/// チカそんなんじゃないし!!」

しゅか「ねー、みんなもそう思うっしょー!?」

 

あいにゃ「そうだぁーー!! あんちゃんはふにゃふにゃしてた方がいいぞぉー!!」

あいきゃん「私もあんちゃん好きぃーー!!」

すわわ「あとでハグしてあげるねー」

 

あんちゃん「………」

あんちゃん「みんな……」
83: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:20:39.65 ID:BLAsgJZk
ありしゃ「ひとりで抑えようと思わないで」

しゅか「むしろ打たせとけ! あとはウチらが後ろでなんとかする!!」

ふりりん「そうそう。あんちゃんだけにいい思いはさせないよー」

きんぐ「バックは任せとけ! ふりが顔面で止めるから!!」

ふりりん「っておい、振りか!? 振りなんか!?」

りきゃこ「……あんちゃん」クスッ

りきゃこ「ね。大丈夫。あんちゃんには、みんながついてる。ひとりじゃない」

りきゃこ「……これって、あんちゃんが……」

りきゃこ「1stライブの時。あの時、私に教えてくれたことなんだよ?」

あんちゃん「……!」

あんちゃん「りこちゃん……」
84: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:22:21.38 ID:BLAsgJZk
ひなひな『さあ、長いタイムが終わりまして……』

ひなひな『マウンド上に集まっていた内野陣、元のポジションに戻っていきます』

あさみん『果たして、ここから立ち直れるのか……次のバッターは……』

 

『5番、ピッチャー、内田。ピッチャー、内田。背番号2』

 

ワアアアアッ!

ウッチィィィ!

 

うっちー「ふふっ……」

うっちー「可愛い後輩たちを、あんまりいじめたくないんだけどなぁ?」
85: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:23:55.59 ID:BLAsgJZk
ひなひな『ピッチャーながら5番に据わる内田選手が、左のバッターボックスに入りました!』

あさみん『三森・新田両選手の打棒を見る限り、この内田選手も決して気が抜けない相手ですよ』

 

あんちゃん「」スゥゥーッ

あんちゃん「」ハァァーッ

あんちゃん「……よっし」

 

うっちー(……ん。まだ目は死んでないみたいだね)

うっちー(そうこなくっちゃ)

 

あんちゃん(そうだ……無理をしなくていい。全部抱え込まなくてもいい)

あんちゃん(私には……みんながいる)

あんちゃん(ごめんね。やっぱり、頼りないリーダーで)

あんちゃん(だけど、私は……Aqoursのみんなと一緒に、頑張りたい!)
86: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:27:38.40 ID:BLAsgJZk
あんちゃん(……千歌)

あんちゃん(千歌の特技は……ソフトボールだったよね)

あんちゃん(お願い。千歌も……力を、貸して!)

 

ザッ

 

ひなひな『ピッチャー伊波、振りかぶり……』

あさみん『――!? フォームが……!?』

 

あんちゃん(私は――私らしく)

あんちゃん(素直に――!)

 

シュピッ!

 

うっちー「――!?」

 

ひなひな『フォームがっ……違う!?』

あさみん『あれは――下手投げ(アンダースロー)!?』
87: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:30:14.88 ID:BLAsgJZk
パシィッ!

\ストライーク!/

 

うっちー(……!! 低めギリギリ……手が出なかった……)

うっちー(ううん、それよりも……!)

 

ぱいちゃん「投げ方が、変わった……!?」

くっすん「投げ方勝手に変えるなんてダメー! ルール違反だルール違反ー!」

ジョルノ「いや、投げ方変えちゃいけないとかルールに無いから。いや、しかしこれは……」

シカコ「さっきまではオーバースローだったのに、急にアンダースロー。全然違うじゃん……!」

 

ひなひな『なっ……なんと!? 先程までのオーバースローとは打って変わり……』

ひなひな『ピッチャー伊波、突如、アンダースローで投げ込みました!!』

あさみん『綺麗なフォーム……正に、サブマリン……!』

 

オオオオオッ!
88: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:31:06.35 ID:BLAsgJZk
あんちゃん「……よっし」

あんちゃん「ストライク、とれたぞー!」ニパー

 

しゅか「その調子だぞ伊波ー!」

ふりりん「イイ波のってけー!」

 

りきゃこ(そう。あんちゃん、それでいい……!)
89: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:33:08.87 ID:BLAsgJZk
りっぴー「うっちー、落ち着いて! ボールよく見てー!」

 

うっちー(スピードは、さっきよりも全然遅い……)

うっちー(タイミングを外さなければ、打ち返せるはず……)

 

ひなひな『サブマリンへと変貌した伊波、第2球を……』

ひなひな『投げたっ!』

 

シュピッ!

 

うっちー(外角ギリギリ……)

うっちー(そこっ!)

 

コキンッ!
90: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:36:19.43 ID:BLAsgJZk
ひなひな『バッター内田、打った! しかし打球はセカンド正面のゴロ!』

 

あんちゃん「あいあい!」

 

ふりりん「わっ、きた! 落ち着いて……」

パシッ

ふりりん「それっ!」

シュッ

 

きんぐ「おっけー!」

バシッ

\アウト!/

 

ワアアアアッ!

 

ひなひな『セカンド降幡、落ち着いて処理して一塁に送りアウト!』

ひなひな『伊波、5番打者をセカンドゴロに打ち取りました!!』

 

あんちゃん「やったぁ! ありがと、あいあい!」

 

うっちー(タイミングは合ってたはずなのに……芯を外された……!?)

うっちー(さっきまでの、力任せの速球ばっかりの投球とは、全然違う……!)
91: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:38:34.75 ID:BLAsgJZk
きんぐ「ふふふ……説明しよう!!」

きんぐ「さっきまでの『オラつきモード』あんちゃんは、力みすぎて、力任せの速球で抑えようとするオーバースローのピッチャー……」

きんぐ「しかし、今の『ぶりっこモード』あんちゃんは、アンダースローからふにゃふにゃの球を放る、技巧派ピッチャーへと変貌するのだ!!」

 

うっちー「……誰に言ってるの?」

 

あんちゃん「こらー、変な解説つけるなー!!///」

あんちゃん「それに『ぶりっこ』ってなんだー! 私そんなんじゃないもん!!///」

 

りきゃこ(……だけど、このアンダースローこそ、あんちゃんの本来の投球)

りきゃこ(あんちゃん自身は、こんな遅い球じゃμ'sを打ち取れないと思って、力任せの速球にこだわってたけどね……)
92: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:40:29.42 ID:BLAsgJZk
『6番、センター、飯田。センター、飯田。背番号5』

 

ワアアアアッ!

リッピィィィ!

 

うっちー「……気を付けて。ただの、遅い球じゃなさそうだよ」

りっぴー「おっけー、うっちー」

 

ひなひな『続くバッターは、μ's最年少の飯田!』

あさみん『最年少ながら、その芸歴の長さから冷静さも併せ持つ、なかなかクレバーなプレイヤーですよ』

 

りっぴー(投げ方を変えてから、明らかに投球が落ち着いてる……)

りっぴー(これが、本来の投球スタイル、ってことなのかな)
93: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:42:35.78 ID:BLAsgJZk
あんちゃん「……ふぅ」

 

ふりりん「あんちゃん、イイ波きてるぞー!」

きんぐ「気にしないで打たせてけー!」

しゅか「そうだ! ウチらにも見せ場作らせろー!」

ありしゃ「落ち着いてね!」

 

あいきゃん「外野に打たせたっていいよー!!」

あいにゃ「そうそう!! 全部捕ったるでぇー!!」

すわわ「……うむっ」

 

ひなひな『Aqours、内外野から、大きな声が飛び交います!』

あさみん『……ふふっ』
94: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:43:54.35 ID:BLAsgJZk
あんちゃん(みんな……ありがとう)

あんちゃん(そうだ……当たり前のことだったのに)

 

ザッ…

 

あんちゃん(ライブも、野球も……ひとりじゃ出来ない)

あんちゃん(私には……みんなが、いる)

あんちゃん(私は、ひとりじゃない……!)

 

スゥッ…

 

あんちゃん(私の後ろには……Aqoursのみんなが、いてくれる)

あんちゃん(みんなを、信じて――)

あんちゃん(放ればいいっ!!)

 

シュパッ!
95: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:45:46.70 ID:BLAsgJZk
りっぴー(低め――だけど、狙い通り!)

りっぴー(タイミング合わせて――)

 

カッ

コキンッ

 

りっぴー「――!?」

 

ひなひな『飯田、引っかけた! 打球は平凡なショートゴロ!』

 

あんちゃん「しゅか!!」

しゅか「オッケー!!」

パシッ

シュッ!

 

バシッ!

\アウト!/
97: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:48:30.98 ID:BLAsgJZk
ひなひな『ショートの斉藤、一塁に送って、スリーアウト!!』

ひなひな『ピッチャー伊波、特大のホームランを打たれはしましたが、その後は見事立ち直って後続を打ち取りました!!』

あさみん『速球で力押しのスタイルから、冷静に打たせて取るピッチングに変えてきましたね』

あさみん『3点は取られましたが、ここからいい流れを攻撃でも作ってほしいところです』

ワアアアアッ!

 

あんちゃん「やったー! チカやったぞー!」

あいきゃん「オッケーあんちゃん、ナイスピッチング!」

しゅか「ねえ見た? 斉藤さんの美技、見た?w」

あんちゃん「見たよー見た見た! サンキュー、しゅか!」

あいにゃ「やばっ、泣きそう」

ありしゃ「ちょっとー、まだ1回終わっただけ!」

あんちゃん「りこちゃんもリードありがとう!」

りきゃこ「もーくっつくなしー! さあこっから反撃、いくよ!」
98: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:49:58.51 ID:BLAsgJZk
りっぴー「みんなー、ごめーん!」

シカコ「りっぴー、ドンマイ!」

りっぴー(タイミングは合ってた。上手く捉えたと思ったんだけど)

りっぴー(ただの、遅めのストレートじゃ、ない……?)

 

えみつん「……ふふっ」

えみつん(あんちゃん、思い出したみたいだね。大事なこと)

ジョルノ「……いいのぉ? 調子づいちゃうかもよ」

えみつん「それなら、それで!」

みもりん「ねー。向こうも頑張ってくれないと、張り合いないし」

うっちー「ふふっ。それにねー、大丈夫だよ、南條さん」

うっちー「だってぇ……」

 

ザッ…

 

うっちー「いい流れなんて、作らせないもの♥」
99: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:51:11.64 ID:BLAsgJZk
ひなひな『さて守備が変わり、今度は守りますμ'sが、グラウンドに散ります』

ひなひな『守備に出るμ'sに対しても、大きな歓声が上がっています!』

ワアアアア!!

ミューズゥゥゥ!!

 

ひなひな『さて、マウンドに立ち、投球練習を始めようとしているのは、本日の先発、内田!』

あさみん『伝説のμ'sの、先発ピッチャー……一筋縄じゃいかないことは、明らかです』

あさみん『どんなピッチングを見せてくれるのか、楽しみですね』
100: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:53:07.73 ID:BLAsgJZk
うっちー「いくよー、えみつん!」

えみつん「いいよ、うっちー!」

シュッ

パシッ!

 

あんちゃん「! 内田さんって、左投げ……!? それに、あの投げ方……」

きんぐ「サイドスロー……だね」

すわわ「左のサイドスロー。先発としては、ちょっと珍しい……かな」

ありしゃ「そうなの?」

 

うっちー「えいっ!」

シュッ

パシッ

 

しゅか「んー。でも、スピードはあんまりないね」

あいきゃん「ねー。オラつきモードあんちゃんの方が、全然速いし」

あんちゃん「だからオラつきとかゆーな!!」
101: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:54:23.60 ID:BLAsgJZk
ふりりん「まあでも、油断はしない方がいいよ」

あいにゃ「なんたって、あのμ'sが送り込んでくる、先発ピッチャーなんだから……!」

しゅか「……ま! ほんとのとこ、どうなのか」

しゅか「すごいのか、すごくないのか」

ザッ…

しゅか「実際に打ってみれば、わかるっしょ!」

 

『1番、ショート、斉藤。ショート、斉藤。背番号2』
102: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:56:17.61 ID:BLAsgJZk
【1回裏】

 

ワアアアアッ!!

シュカシュゥゥゥッ!!

 

ひなひな『さあ1回の裏、反撃に移るAqoursの一番打者は、最年少の斉藤!!』

ひなひな『右投げ左打ち、俊足巧打の切り込み隊長が、左のバッターボックスに入ります!』

あさみん『ここはまず先頭打者が出塁して、μ'sと同じく、攻撃の形を作っていきたいですね』

 

しゅか「よぉーし!! いくぞぉー!!」
103: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:57:24.33 ID:BLAsgJZk
うっちー「あ、この間、うちっちーのうちわを見せてくれた子だ」

うっちー「うんうん、元気がいいねえ」

 

しゅか(……? 内田さん……)

しゅか(なんで、足を、あんなプレートの一塁側ギリギリに置いてるんだ……?)

 

うっちー「だけど、いつまでも……」

キッ

うっちー「笑ってられねぇぞ?」

 

しゅか「……!?」

ゾクッ
104: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 21:58:40.57 ID:BLAsgJZk
ガバアッ!

 

ひなひな『ピッチャー内田、斉藤に対して、第1球!』

あさみん(――!? あの投げ方は……!?)

 

シュパッ!

 

しゅか(来た!! 打たなきゃ、)

 

フッ

 

しゅか「!?」

 

ズバン!

\ストライーク!/
105: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/15(水) 22:00:33.97 ID:BLAsgJZk
えみつん「ナイスボール、うっちー!」

 

しゅか「え……え!?」

しゅか(何、今の球……!?)

しゅか(一瞬、消えて……そこから、まるで背中越しに現れるみたいに……!?)

 

ひなひな『第1球、好打者の斉藤、全く反応できず!』

ひなひな『バットはぴくりとも動きません! ストライクです!!』

オオオオオッ

あさみん『やっぱり……間違いない。左のサイドハンド、最大の武器……!』

あさみん『――“十字砲火(クロスファイヤー)”!!』

 

うっちー「ふふっ……せっかく、後輩のみんなのことを、いじれるようになったんだもの」

ニコッ…

うっちー「たぁ~~っぷり、楽しまなきゃね♥」
119: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/16(木) 19:52:44.29 ID:u0l/xu11
あんちゃん「……!?」

あいきゃん「な、なんか……今の、球……」

あいにゃ「普通の投げ方よりも……すごい、角度ついてなかった……!?」

あいにゃ「まるで、真横から球が飛んでくるみたいな……」

 

しゅか(ちょっと、冗談じゃないって……真横からボールが飛んできた……!?)

しゅか(しかも……)

 

うっちー「いくよー……」

ザッ!

うっちー「それっ!」

シュパッ!

 

しゅか「!!」

ズバン!

\ストライーク!/

 

しゅか(球が、速い……!?)
120: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/16(木) 19:54:15.74 ID:u0l/xu11
えみつん(……“サイドスローの5キロ増し”)

えみつん(オーバースローに比べ、横方向の角度が大きいサイドスローの球は、実際より体感速度で速く感じる)

えみつん(それに加えて、うっちー必殺の、クロスファイヤー……)

 

あんちゃん「しゅかー!!」

きんぐ「振ってけー!!」

 

しゅか(……! そうだ、振らなきゃ当たらない)

しゅか(別に、本当に速い訳じゃない。球の出処がわかりにくいだけ!)

 

うっちー「ふふ……」

ザッ…

うっちー「なら、これは?」

シュパッ!
121: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/16(木) 19:55:57.79 ID:u0l/xu11
しゅか(来た!!)

しゅか(振らなきゃっ……!)

 

ギュンッ!

 

しゅか「!?」

ブンッ

 

ズバン!

\ストライーク! バッターアウッ!/

 

ワアアアアッ!!

ひなひな『三振!! 先頭の斉藤を、三球三振に切って取りました、ピッチャー内田!!』
122: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/16(木) 19:58:21.33 ID:u0l/xu11
しゅか(今の、3球目……)

しゅか(ボールが、外に、逃げてった……!)

 

すわわ「……スライダー、だね」ボソッ

あいきゃん「へ?」

すわわ「それに……あの、角度の大きいサイドスロー投法」

すわわ「これ……超厄介、かも」

 

ひなひな『まずは先頭の斉藤を三振に仕留めました、μ'sの先発、内田選手』

ひなひな『ところで姉様、先ほど言っていた、“クロスファイヤー”とは?』

あさみん『ピッチャーが、自分の利き手と対角のコースに投げるストレートのことです』

あさみん『ホームベース上を横切るように通過し、左投手、とりわけサイドスローの投手にとっては最大の武器ともされる投法です』
123: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/16(木) 20:00:38.69 ID:u0l/xu11
あさみん『左投手が、左打者に投げた場合、打者からはボールは自分から逃げるような軌道でアウトコースになる』

あさみん『特に内田選手は、真横から投げるサイドスロー……さらにプレートの一塁側ギリギリに軸足を置いて投げているため、よりこの対角の角度が大きくなる』

あさみん『左打者の斉藤選手は、まるでボールが一瞬消えて、自分の背中越しに真横から飛んでくるような錯覚に囚われたでしょうね』

あさみん『そして、相手が右打者の場合は……』

 

『2番、セカンド、降幡。セカンド、降幡。背番号5』

 

しゅか「あーもう、ちょっとびっくりしちったよー! くっそー」

しゅか「頼むよ、あいあい」

ふりりん「お、おう……」

ふりりん(あのしゅかが、三球三振なんて……)
124: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/16(木) 20:01:56.83 ID:u0l/xu11
うっちー「ふーん、次は右バッターか」

うっちー「まっ、右の子にとっては……」

ザッ!

 

えみつん(この球は――)

えみつん(もっと厄介だよ)

 

シュパッ!

 

ふりりん「!?」

ふりりん(ボールが、こっちに向かってくる!?)

ふりりん「う、うわ、」

 

ズバッ!

\ストライーク!/
125: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/16(木) 20:04:23.48 ID:u0l/xu11
ふりりん(って、今の、ストライク!?)

ふりりん(私の体目掛けて、ボールが向かってきたのに……!?)

 

ひなひな『インコース厳しい所のボールに、バッター降幡、思わず体を仰け反らせます!』

あさみん『右打者は、今度は自分に向かってくるような軌道でインコースにボールが飛んできます』

あさみん『内角をえぐるようなコースで飛んでくるボールは、右打者にとっては自分の体に向かってくるような錯覚を与え、ただでさえ捌きにくい内角打ちがさらに窮屈になるんですね』

ひなひな『なるほど! よくわかんないですがとにかく打ちづらい投げ方の球ってことですね!』

あさみん『おい』
126: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/16(木) 20:06:42.70 ID:u0l/xu11
バシィ!

\ストライクツー!/

 

ふりりん(げげっ! もうツーストライク!?)

 

きんぐ「こらー、ふり、びびってんなー!」

あいきゃん「振らなきゃ当たんないよー!」

 

ふりりん(人の気も知らんで……打席に立ってから言ってみろっつーの!)

ふりりん(でも確かに、何もしなきゃアウトだし、イチかバチか……!)

 

ザッ

シュピッ!

 

ふりりん(きた! とりあえず振る!!)

 

ググッ!

 

ふりりん「え!?」

ブンッ

 

ズバン!

\ストライーク! バッターアウッ!/
127: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/16(木) 20:09:44.14 ID:u0l/xu11
ひなひな『内田、続く降幡も三球三振! 二者連続三振、早くもツーアウト!!』

ワアアアアッ!

 

ふりりん(最後の球、曲がった……!!)

ふりりん(錯覚じゃなく、マジでこっちの体に向かってきた……!!)

 

あさみん『そして、内田選手の決め球。切れ味鋭いスライダー』

あさみん『ただでさえ角度をつけた軌道で放たれるボールが、このスライダーによって、左打者からは外角に逃げて行き、右打者はさらに内角深くにえぐり込んでくる』

あさみん『かつての阪神の名セットアッパー、ジェフ・ウィリアムスを彷彿とさせますね』

あさみん『この、クロスファイヤーとスライダーの組み合わせを打ち崩すのは、容易じゃないですよ』
128: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/16(木) 20:11:12.47 ID:u0l/xu11
『3番、ピッチャー、伊波。ピッチャー、伊波。背番号1』

ワアアアアッ!

アンチャアアアアン!!

 

ふりりん「ご、ごめん、あんちゃん……」

ふりりん「でも……やっぱ、内田さん……半端ないって」

あんちゃん「……うん」

 

ひなひな『エースにして、自ら中軸も打つ伊波選手!』

ひなひな『自らのバットで、反撃の切欠を作ることが出来るでしょうか!?』

 

あんちゃん(私も右バッター……内田さんのクロスファイヤーは、内角にえぐり込んでくる)

あんちゃん(それに、あのエグいスライダー。スライダーで仕留められる前に、なんとか速球の方を打ち返さないと……)
129: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/16(木) 20:13:35.57 ID:u0l/xu11
うっちー「………」クスッ

ザッ

シュピッ!

 

あんちゃん(初球はきっとストレート! なんとか食らいついて……!)

 

ググッ!

 

あんちゃん「!?」

あんちゃん(初球から……スライダー!?)

 

コキンッ!
130: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/16(木) 20:15:18.77 ID:u0l/xu11
ひなひな『内田、初球スライダー! 伊波のスイングは中途半端、バットの根元に当たった!』

ひなひな『フラフラと上がり、小フライになる!』

 

えみつん「オーライ!」

パスッ!

 

ひなひな『キャッチャー新田、難なく捕球! スリーアウト!!』

ひなひな『ピッチャー内田、僅か7球!! あっさりと、Aqoursを三者凡退に切って取りました!!』

ワアアアアアッ!!

あさみん『攻撃で良い流れを作りたかったAqoursですが……完全に流れを断ち切られましたね』

あさみん『流石は――μ'sの、先発ピッチャー』

 

うっちー「……はいっ。ご馳走様♥」
131: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/16(木) 20:16:48.90 ID:u0l/xu11
えみつん「うっちー、ナイスピッチングだよ!」

ぱいちゃん「うっちー、スゴーイ! 素敵!」

うっちー「えー、それほどでもないっしょー」

りっぴー(いやいや、あのエグいくらい内角に攻めてく感じ……)

ジョルノ(流れに乗りかけた相手の気持ちを、あっさりへし折るピッチング。ドSだねぇ……怖い怖い)

 

あんちゃん「………」

あんちゃん(やっぱり――μ'sはスゴい)

あんちゃん(完璧な攻撃に――流れを相手に与えない、完璧なピッチング)

あんちゃん(これが、μ'sと――μ'sの、エース)
132: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/16(木) 20:17:27.18 ID:u0l/xu11
りきゃこ「ちょっと、あんちゃん……」

ありしゃ「また、弱気になってるんじゃ……」

あんちゃん「……ううん」

あんちゃん「なんだか、私たち……本当にすごい人たちと、一緒にプレーさせてもらってるんだな、って」

あいにゃ「当たり前よ! 相手はμ'sよ、μ's!!」

きんぐ「それに、感心してもいられないって」

あいきゃん「そうだよ! 負けたら、私たち……!」

あんちゃん「……」チラッ

 

うっちー「……」

うっちー「」クスッ

 

あんちゃん「……!」

あんちゃん「そうだね。私たちは、勝たなきゃいけないんだから」

あんちゃん「たとえ相手が、μ'sでも……!!」
147: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/17(金) 23:34:16.26 ID:Zzd6C7mO
【2回表】

 

ひなひな『さて2回表、攻撃の流れを切られたAqoursではありましたが……』

ひなひな『ピッチャーの伊波は、集中力を切らすことなく、独特の緩いピッチングで後続を打ち取っていきます』

 

『7番、レフト、Pile。レフト、Pile。背番号5』

 

コキンッ

ぱいちゃん「なにコレ、打ちづらーい!」

ぱいちゃん「もう、ゴロだなんて、ダサすぎるー」

 

『8番、ファースト、南條。ファースト、南條。背番号9』

 

スパン!

\ストライーク! バッターアウッ!/

ジョルノ「ふーん、なるほどねー」

りっぴー「なにドヤ顔で見送ってんのー!?」

シカコ「振れー! やる気出せー、引きこもりー!!」

ジョルノ「だって体動かしたくないしー」
148: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/17(金) 23:36:00.46 ID:Zzd6C7mO
『9番、サード、楠田。サード、楠田。背番号8』

 

コキンッ!

 

しゅか「オーライ!」

パスッ

\アウト!/

 

くっすん「あーもう、ホームラン狙ったのにー!」

ジョルノ「どんまい、くっすん。次があるさ次が」

くっすん「なんちゃんに言われたくないー」

 

あんちゃん「よっし……!」

りきゃこ「ナイスピッチング、あんちゃん!」

あいにゃ「三者凡退じゃん!! ワレ、感動しちゃったよ!!」

すわわ「いやまだ2回だし……」

ありしゃ(あんちゃんは立ち直ったし、りきゃこのリードも様になってきたかも)

ありしゃ(だけど、問題は……)
149: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/17(金) 23:37:38.64 ID:Zzd6C7mO
【2回裏】

 

あさみん『しかし、μ'sの先発、内田も、圧巻のピッチング』

あさみん『1回に引き続き、Aqoursに付け入る隙を与えません』

 

『4番、サード、小宮。サード、小宮。背番号7』

 

ズバン!

\ストライーク! バッターアウッ!/

りきゃこ「ありさー!! 振らなきゃ当たんないでしょー!?」

しゅか「やる気スイッチ入れろー!!」

ありしゃ「うーん、なんかお腹すいちゃって……」

 

『5番、ファースト、高槻。ファースト、高槻。背番号4』

 

ガキッ!

\アウト!/

きんぐ(わかってても、詰まらされる……!)

きんぐ(確かに、実際に打席で見ると、すごい厄介だ……)
150: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/17(金) 23:39:10.08 ID:Zzd6C7mO
『6番、キャッチャー、逢田。キャッチャー、逢田。背番号3』

 

ググッ…!

 

りきゃこ(曲がって体に向かってくる!?)

りきゃこ「こんなん無理だって無理だってぇ!」

ブンッ

\ストライーク! バッターアウッ!/

 

ありしゃ「……振っても当たんないじゃん」

りきゃこ「……うるせー」

 

ひなひな『三振、ショートゴロ、三振!!』

ひなひな『内田、この回も三者凡退!! 未だ一人のランナーも出さない完璧なピッチング!!』

オオオオオッ

 

うっちー「はぁー、気持ちいいー♥ ビールが飲みたいなぁ♪」
151: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/17(金) 23:41:19.19 ID:Zzd6C7mO
【3回表】

 

シカコ「ぐっ……!」

ガキッ!

 

ひなひな『3回先頭の久保、またも詰まらされた! 打球はセカンドゴロ!』

 

あんちゃん「あいあい!」

ふりりん「お、おっけー」

ツルッ!

ふりりん(!! や、やば、)

 

きんぐ「あいあい、落ち着いて!」

 

ふりりん「くっ!」

ガシッ

ふりりん「それっ!」

シュッ!

 

バシッ!

\アウト!/
152: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/17(金) 23:43:42.27 ID:Zzd6C7mO
ひなひな『セカンド降幡、一瞬ボールが手につきませんでしたが、なんとか一塁に送ってアウト!』

ひなひな『第1打席ではピッチャー強襲のヒットを放った久保ですが、この第2打席では打ち取られています!』

ひなひな『2回以降、ランナーを許さない伊波! その姿は、まさしく“内浦のサブマリン”といったところでしょうか!!』

ワアアアアッ

 

あんちゃん「うっし……!」

 

あさみん『……ですが、Aqoursは、決して気持ちを切らさずに、引き締めて臨んでほしいですね』

あさみん『もしどこかに、僅かでも“綻び”があれば……』

 

しゅか「あいあい、落ち着いてなー」

ふりりん「おう、ご、ごめん! えへへ、えへ!」

ふりりん(わかってたことだけど、やっぱりセカンドってたくさんボール飛んでくるな……)

ふりりん(ちゃんとしなきゃ……ちゃんと……)

 

そらまる「………」

 

あさみん『……百戦錬磨のμ'sは、決してその“綻び”を、見逃しませんよ』
153: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/17(金) 23:45:37.08 ID:Zzd6C7mO
シカコ「くっそ……思ったより打ちにくいわ」

みもりん「だけど……どう? あの、球」

シカコ「うん。たぶん、“予想通り”だと思う」

ジョルノ「やっぱりね。あとは、それをどう打ち崩すか……」

そらまる「……ふっふ。それじゃ、この徳井さんが」

そらまる「あの球の正体を改めて見極めつつ、突破口を作るとしますか!」

 

『2番、セカンド、徳井』
154: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/17(金) 23:52:20.68 ID:Zzd6C7mO
ひなひな『続いて2番の徳井が右バッターボックスに入ります!』

ひなひな『第1打席は意表を突くバントで送ってきましたが、ランナーなしのこの場面は果たして……?』

 

そらまる「ふっふっふ」

そらまる「さあ、そらまる先生のそらまる劇場第二幕、はっじまっるよー!」

スッ…

 

あんちゃん「……え!?」

 

ひなひな『なっ……なんと!? 徳井選手、ランナー無しのこの場面で、バントの構え!!』

ひなひな『セーフティを狙うにしても、投球前からバントの構えを見せるとは、一体……!?』

 

ジョルノ「……なるほどねぇ。そら、考えたな」

みもりん「ふふ……そらは、やっぱり曲者だね」
155: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/17(金) 23:54:59.32 ID:Zzd6C7mO
あさみん『バスター打法でしょうか。バントの構えは、球筋が見やすいので、伊波選手の球筋をしっかり見ようとしているとも考えられますが……』

ひなひな『ともかく、真意が読めません! μ'sの職人、徳井!!』

ザワザワ

 

しゅか「何……?」

ふりりん「ど、どゆこと……!?」

 

あんちゃん(ど、どうする、りこちゃん……?)

 

りきゃこ(第1打席みたいに、意表を突いて、何かを狙っているのか……)

りきゃこ(単純に、ボールをよく見ようとしているのか。それとも、ただのブラフで、こっちを混乱させようとしてるだけなのか)

りきゃこ(わからないけれど……今のあんちゃんの球を、非力なこの人がそんな簡単に打てるとは思えない)

りきゃこ(ここは内野前進。転がったボールを、しっかり仕留める!)

クイッ

 

スス…

 

ひなひな『内野は前進守備。セオリー通り、内野ゴロに仕留めようとの狙いでしょう』
156: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/17(金) 23:56:46.08 ID:Zzd6C7mO
りきゃこ(あんちゃん、大丈夫。“あの球”は、そう簡単には打たれない)

りきゃこ(打った所で、ゴロになるのが関の山)

 

あんちゃん(うん。りこちゃん、わかった……!)コクッ

 

ひなひな『サインの交換が終わり、ピッチャー伊波、徳井に向けて第1球!』

 

ザッ…

シュピッ!

 

そらまる「!」

スッ

スパン!

\ストライーク!/

 

ひなひな『バッターの徳井選手、バントの構えはそのままで、バットを引きました』

ひなひな『ボールはストライクです!』
157: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/18(土) 00:00:07.77 ID:5aFVBj5K
りきゃこ(打つ気があるのか、無いのか……)

りきゃこ(でも、ここから打ったとしても、ゴロに仕留められる……!)

りきゃこ(あんちゃん、アウトコース低めに、“例の球”!)

 

あんちゃん(おっけー、りこちゃん)

ザッ…

 

そらまる(……バントの構えなら、ヒッティングが大して上手くない私でも、球が見やすい)

そらまる(球筋を良く見て。たぶん、打ちにくいコースに来るはず)

 

シュピッ!

 

そらまる(来たら――)

そらまる(ここで!)

スッ!

 

あさみん『!!』

ひなひな『ヒッティングの構え!!』

 

そらまる(叩きつける!!)

そらまる「どりゃあ!!」

ガキィッ!!
158: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/18(土) 00:04:03.21 ID:5aFVBj5K
ひなひな『徳井、バスター!! アウトコース気味のボールを、強引に叩きつけるようなバッティング!!』

ひなひな『しかし、バウンドは高いものの、打球はセカンド正面へ!!』

 

あんちゃん「あいあい!」

 

ふりりん「おっけ、」

ふりりん(――!? ボールが跳ねて、)

 

ビシッ!

 

ふりりん「え!?」

 

ワアアアッ!

ひなひな『セカンド降幡、大きくバウンドした打球を、弾いてしまった!!』

ひなひな『捕れない!! ボールが転がる!!』
159: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/18(土) 00:06:36.14 ID:5aFVBj5K
\セーフ!/

 

ひなひな『その間に、打った徳井は一塁へ! 記録はセカンド、降幡のエラー!』

ひなひな『μ's、ワンナウト一塁です!!』

ワアアアアッ!

 

ふりりん(や……やっちまった……)

ふりりん「ご、ごめん、あんちゃん!!」

 

あんちゃん「大丈夫! ワンナウトだし、気にしないでー!」

きんぐ「おいふりー、やっちまったなー! ドンマイ!」

しゅか「今のはバウンド高かったし、切り替えてこ!」

 

あさみん『………』

あさみん『このプレー……偶然では、ないのかも』

ひなひな『え?』

あさみん『徳井選手は、狙って、この場面を作り出したのではないかということです』
160: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/18(土) 00:09:26.84 ID:5aFVBj5K
あさみん『推測ですが、伊波選手は、ゴロを打たせるような種類のボールを投げていると思われます』

あさみん『普通に打つだけでは凡打になってしまう。そこで徳井選手は、一計を案じた』

あさみん『まず、バントの構えを見せる。ここでバッテリーや内野陣の動揺を誘う。“何かあるのではないか”と、警戒心を抱かせる』

あさみん『実はここでのターゲットは、バッテリーよりも、直前の場面で危ういプレーを見せた、“ある内野手”だった』

ひなひな『……! あいちゃん……!』

あさみん『ターゲットに揺さぶりをかけつつ、バスターで強引に打球を転がす』

あさみん『バントの構えからのバスターなら、普通のバッティングよりもボールに当たる確率は高くなりますからね』

あさみん『ゴロでも、多少強めの打球が打てるならそれで良かった。そして、三遊間の方向に無理に引っ張る必要もなかった』

あさみん『なぜなら、二塁方向には、緊張してプレーの危うくなっている、“ターゲット”がいるのだから』

ひなひな『二塁の降幡選手の、エラーを誘発したということですか!?』
161: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/18(土) 00:13:20.42 ID:5aFVBj5K
あさみん『ヒットや四死球でなくても、塁に出れる方法はいくらでもあるということでしょう』

あさみん『狙ってやったのだとしたら……徳井選手、なかなかの曲者……』

あさみん『いえ……ある意味で、“職人”と言うべきでしょうか』

 

そらまる「ふー、上手くいって良かったわ」

そらまる「……ほんとなら、カッコよくヒットでも打ちたいところだけど」ボソッ

そらまる「すずとか、えみつんみたく、運動神経ある訳じゃないし。出来ることは、なんでもしないとね」

 

ふりりん「……!」

 

ひなひな『ともかく、ランナーが出ました!! 続くバッターは……』

 

『3番、ショート、三森』

ワアアアアッ!

 

みもりん「ナイス、そら。あたしも頑張んないとねー」
162: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/18(土) 00:14:42.22 ID:5aFVBj5K
ひなひな『さあここからはクリンナップ! 3番三森、4番新田と続きます!!』

ひなひな『まずは先程、先制のタイムリーツーベースを放った3番の三森!!』

ひなひな『再び、ランナーのいる場面で打席が回ってきましたが、果たして……』

 

みもりん「………」

スッ

 

あんちゃん「……!!?」

 

ひなひな『こっ……これはどういうことだ!?』

ひなひな『三森選手までもが、バントの構え!!』

ひなひな『中軸を打ち、先程の打席ではタイムリーを放ったばかりの三森選手が、バント!?』

 

りきゃこ(どっ……)

りきゃこ(どういうこと……!?)
163: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/18(土) 00:18:18.24 ID:5aFVBj5K
ひなひな『ねっ……姉様、これは一体どういうことでしょう!?』

あさみん『いや……これは読み切れませんね。普通なら、セオリー通り送りバントでランナーを二塁に進めると考えるところですが……』

ひなひな『次が四番の新田選手とはいえ、ワンナウトで、タイムリーも打っている好打者のみもちゃんが送りバントをしますか?』

あさみん『それだけ、次の新田選手に、全幅の信頼を置いているのか……』

あさみん『もしくは、先程の徳井選手のように、バントの構えで揺さぶりつつ、バスターでの出塁を狙っているのか』

ひなひな『おそらく、Aqoursの守備陣も困惑していることでしょう!』

 

みもりん「………」

 

りきゃこ(読めない……三森さんの狙いが……!)

りきゃこ(普通に送ってくる? 確かに次は、ホームランを打った新田さんだし)

りきゃこ(でも、3番の三森さんが、ワンナウトでアウト1つ犠牲にしてまで送る?)

りきゃこ(それなら、バスターで打ちに来る? それとも、全く別の思いもかけない奇襲?)

りきゃこ(ああ、もうわかんない……!)
164: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/18(土) 00:22:02.26 ID:5aFVBj5K
ありしゃ「りかこー、軽くパニクってないで! 落ち着いてー!」

 

りきゃこ(……! そうだ、惑わされちゃ駄目)

りきゃこ(どの道、ここはバントか、バスターエンドランくらいしか選択肢は無い)

りきゃこ(だったら、セオリー通り、守備は……)

サッ

 

ススッ…

 

ひなひな『内野は、浅めの前進守備!』

あさみん『セオリー通り、バントとバスター双方を警戒したシフトを敷いたけど……』

 

ジョルノ「ふーん。Aqoursのみんなは、若いけど、割とセオリー通りに動くんだね」

ジョルノ「思ったよりも無難というか、常識的というか……」

くっすん「またなんちゃん、おばさん臭いこと言ってる」

ジョルノ(だけど……)

ジョルノ(“普通”でいるだけで、てっぺんが獲れるかな?)
165: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/18(土) 00:22:50.08 ID:5aFVBj5K
あんちゃん(わかんないけれど……)

あんちゃん(私に、出来ることは……!)

ザッ

シュピッ!

 

みもりん(ボールは――低め)

みもりん(膝を落として――)

みもりん(――そこ!)

 

コツン!

 

ひなひな『三森、初球からバント! 三塁線に上手く転がした!!』

ひなひな『サード小宮、打球を拾って、一塁に投げる! アウト!!』

ひなひな『送りバント成功! 三森、初球から無難に送り、ツーアウト二塁です!!』

オオオオオッ
166: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/18(土) 00:25:08.02 ID:5aFVBj5K
りきゃこ(やっぱり……ごく普通の、送りバント……!?)

りきゃこ(でも、初球からきっちり決めてきた……)

 

あんちゃん(あの三森さんが、アウトをひとつ犠牲にしてまで、ランナーを進めた……!)

あんちゃん(次の新田さんで、確実に返すために……!?)

 

ひなひな『姉様、結局みもちゃ……三森選手は、無難に送ってきた訳ですが……』

あさみん『………』

あさみん『もしかしたら、今のプレー』

あさみん『“無難”どころか……こちらの予想以上の効果をもたらす、プレーだったのかもしれない』

ひなひな『はえ?』
167: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/18(土) 00:27:23.15 ID:5aFVBj5K
あさみん『ワンナウト一塁、この場面で、3番の三森さんが送りバントをした、その効果について考えてみましょう』

あさみん『今、私の中で思い浮かぶ三森さん側の狙いは、大きく分けて4つ』

ひなひな『4つ!? そんなに!?』

あさみん『①「スコアリングポジションにランナーを送る」これは、送りバントそのものの意義ですからいいでしょう』

あさみん『②「守備陣の動揺を誘う」ワンナウトで好打者の三森さんがバントの構えを取る。これだけで経験値の浅いAqours守備陣は大混乱です』

あさみん『まあ、私たち自身も、まんまと乗せられて混乱しちゃったけどね』

ひなひな『あっ……』

あさみん『バントの構えを見せるだけで、動揺させることが出来るなら安いものです。先程の降幡さんのようなエラーだって、誘うことが出来るかもしれません』
168: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/18(土) 00:29:02.33 ID:5aFVBj5K
あさみん『③「流れを引き寄せる」野球が試合の“流れ”に大きく左右されるスポーツであることは、周知の通りです』

あさみん『よく、バントが失敗しただけで攻撃の流れが切れたり……』

あさみん『逆に、バントをしっかり成功させるだけで、いい流れが出来ることは、特に高校野球ならよくあることでしょう』

ひなひな『確かに』

あさみん『たったワンプレーの成功や失敗が、試合そのものの流れを左右する。野球というスポーツは、特にこれが顕著です』

あさみん『ここで三森選手は、きっちり一発で、完璧な送りバントを決めた』

あさみん『いい流れを引き寄せると同時に、いざという時、きっちりプレーを成功させる技術をμ'sは持っている――』

あさみん『そんなイメージも、相手の心理に植え付けられたはずです』
169: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/18(土) 00:30:52.56 ID:5aFVBj5K
あさみん『そして、④「四番の新田選手に対するイメージの増幅」――』

ひなひな『はい? どういう意味ですか?』

あさみん『三森さん自身も、優秀なバッターです』

あさみん『その三森さんが、ワンナウトという場面にもかかわらず、次の新田選手の前に、送りバントでランナーを進めた』

あさみん『普通はここで、相手はどんな風に思う?』

ひなひな『そうですね。三森さんがバントでランナーを進めるほど、次の新田さんは確実にランナーを返せるすごいバッターなんだと――』

ひなひな『――あ』

あさみん『そう。アウトカウントをひとつ増やしてまで、好打者の三森選手がバントをしてまで――』

あさみん『それだけの、ランナーを返せる実力が、新田選手にはある。相手は意識せずとも、そう感じるはずです』

あさみん『勿論、新田さんがすごいバッターであることは、先程のホームランを見ても事実』

あさみん『しかし、そのただでさえ強大な強打者のイメージを、さらに増幅させて委縮させる』

あさみん『そんな狙いも、あったと見るべきではないでしょうか』
170: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/18(土) 00:34:26.24 ID:5aFVBj5K
ひなひな『まさか……ただの送りバントひとつに、そこまでの狙いがあったなんて……』

あさみん『3点リードしている状況ですからね。今後の試合のために、犠牲にしてもいいひとつのアウトだってあるってことですよ』

 

そらまる「」ニィッ

みもりん「」フッ

 

あさみん(考えてみれば、この徳井さんと三森さんのふたりは、μ's結成の以前から、ミルキィホームズとして共に活動していた……)

あさみん(正に、百戦錬磨。経験値の上では、Aqoursのはるか上をいくということね……)

 

 

※ちなみに、ひなひなとあさみんの放送は、μ'sとAqoursには聞こえていません
171: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/18(土) 00:40:42.08 ID:5aFVBj5K
みもりん(……実は、もうひとつ、私がバントしたのには目的があったんだよね)

みもりん(⑤「ピッチャーの球の正体を見極める」――)

 

えみつん「……で、すず。どうだった?」

みもりん「うん、バッチリ。バントでしっかり球を見れたし、バントした時の感触でもはっきり」

みもりん「……こっちの考えてる通りだね。“あの球”の正体は」

みもりん「えみつんなら、しっかり打ち返せるはずだよ」

えみつん「……うん。ありがと、すず」

 

ひなひな『そしてここで、迎えるバッターは――』

 

『4番、キャッチャー、新田』
172: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/18(土) 00:41:24.54 ID:5aFVBj5K
ワアアアアッ!!

 

ひなひな『さあ、ツーアウトランナー二塁という場面で、迎えるバッターは四番の新田!!』

ひなひな『第1打席ではバックスクリーンに飛び込む特大のホームラン!!』

ひなひな『新田VS伊波の第2ラウンド、軍配はどちらに上がるのか!?』

あさみん『すでに3点差――これ以上、1点もやれない場面です』

あさみん『ここが、この試合の行方を左右する、重要な場面になるかも――』

 

えみつん(……あんちゃん)

 

あんちゃん(新田さん……!!)
188: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/19(日) 22:04:47.95 ID:McoTHG0O
ひなひな『第1打席では、オーバースローからの速球をジャストミートされて、特大のホームランを打たれた伊波選手ですが――』

あさみん『アンダースローにしてからは、球速は劣るものの、コーナーを突く丁寧なピッチングで凡打の山を築いていますね』

あさみん『問題は、その球が新田選手にも通用するのかどうか――』

 

しゅか(頼むよ、あんじゅ……)

 

ありしゃ(これ以上、点差が離れると、ちょっと厳しい……)

 

ふりりん(ごめん、あんちゃん……)

ふりりん(私がエラーしちゃったせいで、ピンチに……)

 

あんちゃん「………」フゥハァ
189: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/19(日) 22:08:29.26 ID:McoTHG0O
ひなひな『ツーアウトでランナー二塁、一塁は空いておりますし……』

ひなひな『ここはあえて新田選手との勝負は避け、次の5番と勝負するという手もありますが?』

あさみん『当然そういった選択肢はありますね。しかし、Aqoursのバッテリーが、この場面で敬遠策をとるでしょうか?』

あさみん『彼女たちからしてみれば、先輩であるμ'sを乗り越えることも、この試合の目的のひとつでしょうし』

あさみん『ここまで、様々な困難を乗り越えてきた彼女たちが、ここで“逃げ”ともとれる一手は打たないように思えますね』

 

りきゃこ(あんちゃん、どうする?)

りきゃこ(あえて、歩かせることだって出来るんだよ?)

 

あんちゃん(ううん……私は、逃げない。逃げたくない)

あんちゃん(今までも、どんな困難だって、この9人で乗り越えてきたんだから……!)

 

りきゃこ(ま……そうだよね)

フッ

 

ひなひな『どうやら動きはありません! やはり勝負をするようです、バッテリー!』

オオオオオッ
190: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/19(日) 22:09:29.03 ID:McoTHG0O
えみつん「よろしくお願いします!」ペコッ

りきゃこ「お、お願いします……」

 

りきゃこ(とはいえ、どうしよう……このままだと、いかにあんちゃんの“あの球”とはいえ、打たれちゃうかも……)

りきゃこ(なんとかしなきゃ、なんとか……! 私に、出来ること……)

りきゃこ(なんとかして、新田さんの集中力をかき乱すには……)

りきゃこ(……!)ピコーン

 

りきゃこ「あ、あのぅ……新田、さん」ボソッ

えみつん「はい?」

りきゃこ「実は……聞いてほしいことがあるんです」

えみつん「聞いてほしいこと?」

りきゃこ「実は……」

りきゃこ「あんちゃんのお父さんが……重い病気にかかってるんです!」

えみつん「へ!?」
191: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/19(日) 22:10:39.75 ID:McoTHG0O
えみつん「だ、大丈夫なの?」

りきゃこ「お医者さんからは、かなり危ない状態だって……」

りきゃこ「今夜が、山だって言われてるんです……!」グスッ

えみつん「えええ!?」

 

あんちゃん(ほえ? りこちゃん……なにやってんだろ?)

 

ひなひな『な、なにやら……バッターボックスに入ろうとしている新田選手に、捕手の逢田選手が、話しかけているようですが……?』

あさみん『ま、まさか……逢田選手……』

あさみん『“ささやき戦術”……?』
192: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/19(日) 22:12:41.86 ID:McoTHG0O
ひなひな『ささやき戦術? 聞いたことあるような』

あさみん『往年の大打者にして名捕手である、ノムさんこと野村克也選手によって一躍有名になった戦術です』

あさみん『簡単に言えば、キャッチャーがバッターに対して、集中力をかき乱すようなことをささやくことです』

あさみん『野村選手は、相手のプライベートに関わるようなネタをささやいたことで有名ですが……』

あさみん『他にも、情に訴えるようなことや、ボールをぶつけるなどの脅しめいた文句、フォームがおかしいといった難癖……』

あさみん『などなど、相手の集中力を乱すために、相手に合わせて色々なことをささやいたそうですね』

ひなひな『うわ、卑怯くせー』

あさみん『……まあ、確かに卑怯ですが、これも戦術ですので』

あさみん『逢田さんが、ささやき戦術のことを知っていて、やっているかどうかはわかりませんが……』

ひなひな『うーん、ていうか……』

ひなひな『りかこちゃんの場合は、いらんことまで口にして自爆しそうな気が……』
193: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/19(日) 22:14:31.45 ID:McoTHG0O
えみつん「そ、そんな状況なのに、試合してていいの!?」

りきゃこ「あんちゃんは……それでも、頑張るって……パパのために、勝つんだって……」

りきゃこ「お医者さんも、言ってたんです。きっと、あんちゃんが活躍して、Aqoursが勝つ姿をTVで観たら……」

りきゃこ「お父さんの病気も、きっと治るだろう、って……!」

えみつん「えええええ!?」

 

しゅか「な、なにやってんだ? りかこの奴……」

 

ありしゃ「でも……どんなこと言ってるかは、なんとなく想像つくな……」

 

あいきゃん「逢田さんが卑怯すぎる……」

 

ひなひな『バッターの新田選手を動揺させようというのか、あれこれささやいているように見える逢田選手!』

ひなひな『しかしその様子に、心なしかチームメイトも若干引き気味です!』
194: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/19(日) 22:16:32.31 ID:McoTHG0O
\バッターラップ!/

 

えみつん「あ、はは、はい!」

ザッ

えみつん(でも、あんちゃんのお父さんの病気……気になるな……)ドキドキ

 

ひなひな『ようやくバッターボックスに入った新田選手……』

ひなひな『サイン決まって、ピッチャー伊波、第1球!』

 

シュパッ!

 

りきゃこ「新田さん……」ボソッ

りきゃこ「どうか、あんちゃんのお父さんのために……!」

 

えみつん「!!」

ブーン!

 

パスッ!

\ストライーク!/

 

ひなひな『新田選手、なんでもないゆるい球を空振り!! ボールとバットが大きく離れています!!』

あさみん『ああー……新田さんは、いい人だからねぇ……』
195: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/19(日) 22:18:43.64 ID:McoTHG0O
りっぴー「ちょっと、えみつーん!? 何やってんのー!?」

みもりん「ボールよく見て、ボールぅー!!」

 

えみつん「だ……だって……」

えみつん「聞いてよみんな!!」クルッ

えみつん「あんちゃんのお父さんが、危篤なんだって!!」

えみつん「この試合に勝たなきゃ、死んじゃうんだってー!!」グスッ

 

あんちゃん「は……え?」

あんちゃん「パパが? なんで?」ポカン

 

ジョルノ「嘘に決まってんだろ、そんなもーん!!」

シカコ「いい人すぎるだろ!! どんだけバカ正直なんだおーい!!」

くっすん「え、嘘なの?」

ぱいちゃん「ヤバっ、一瞬信じかけちゃったし」

シカコ「ここにもバカがいるし!!」
196: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/19(日) 22:20:46.71 ID:McoTHG0O
えみつん「へ? う、嘘……?」

えみつん(そういえば……試合前、あんちゃんが挨拶に来て……)

ホワンホワン

 

あんちゃん『えみつんさ……いえ、新田さん! 今日はよろしくお願いします!』

えみつん『こちらこそ! そんなにかしこまらなくってもいいよー』

あんちゃん『い、いえ、憧れのμ'sの皆さんと、試合をさせて頂く訳ですし……』

あんちゃん『それに今日は、パパとママ……あ、いや、家族も見に来てくれてるんです!』

あんちゃん『家族のためにも、恥ずかしくない試合が出来るよう、頑張ります!』
197: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/19(日) 22:21:59.61 ID:McoTHG0O
えみつん(確かあの時、あんちゃんは、『パパとママが見に来てる』って言ってた……)

えみつん(と、いうことは……)

ゴゴ…

えみつん「全部……嘘……」

えみつん「だったの……?」

ゴゴゴゴ…

 

りきゃこ「ええっ!? なんでばれたの!?」

ビクッ

 

きんぐ「本気で騙せると思ってたのか……」
198: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/19(日) 22:23:10.64 ID:McoTHG0O
えみつん「そういう嘘、つくのって……」

えみつん「あんまり……良くない、と思うよ……」

ゴゴゴゴ

 

あんちゃん(ええええ!? なんか新田さん、怒ってる!?)

あんちゃん(り、りこちゃ~~ん! なんか前より状況悪化してるじゃん!!)

 

りきゃこ(……あれ?)

りきゃこ(もしかして、まずっちゃった? 私……)

 

ひなひな『心なしか、バッターボックスに立つ新田選手の威圧感が増しております!』

あさみん『あ~あ……』
199: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/19(日) 22:24:37.18 ID:McoTHG0O
りきゃこ(だ、だけど……)

りきゃこ(冷静さを失わせたって意味では、作戦成功……かも?)

りきゃこ(うん、たぶんそうだ。そういうことにしとこう)

りきゃこ(あんちゃん、大丈夫! “あの球”でいこう!)

 

あんちゃん(わかった……どの道、逃げたくなんてない)

あんちゃん(私たちは、立ち向かうしかないんだから……!)

ザッ…

 

ひなひな『伊波、新田に対し、第2球!』

 

シュピッ!

 

えみつん「――」

えみつん「そこ!!」

 

キィン!!

 

りきゃこ「!!」

 

あんちゃん「!!」
200: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/19(日) 22:26:08.38 ID:McoTHG0O
ガシャン!!

 

ひなひな『新田打ちました、鋭い打球!!』

ひなひな『しかし、やや引っ張り気味の打球は、三塁側ファールグラウンドのフェンスを直撃しました!!』

あさみん『あんちゃんがアンダースローになってから、初めてまともにミートされましたね』

あさみん『それにしても、あの打球の速さ……タイミングが合っていたら、長打は免れません。恐ろしい……』

オオオオオッ

 

あんちゃん「……!!」

 

りきゃこ(打ち返された……!!)

 

えみつん「……ふぅー」

えみつん(タイミングが……ちょっと、早かったかな)

えみつん(でも……大丈夫。打ち返せる)
201: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/19(日) 22:29:14.73 ID:McoTHG0O
あいにゃ「ちょ、マジ?」

あいにゃ「あんちゃんの、“あの球”を、まともに打ち返すなんて……」

 

すわわ「なんて、パワー……」

 

ザワザワ…

 

ジョルノ「……そう。あの、一見ただの緩い球」

ジョルノ「あれは、ただの遅い直球じゃなかった」

みもりん「そう。直球じゃない。れっきとした、“変化球”……」

うっちー「おそらく、その正体は――」

うっちー「――“高速シンカー”」
202: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/19(日) 22:32:20.78 ID:McoTHG0O
うっちー「私もサイドスローだから、なんとなくわかる」

うっちー「特にアンダースローやサイドスローの投手にとっては、ポピュラーな変化球であるシンカー」

みもりん「だけどあの子のシンカーは、三振を狙ったものじゃない」

みもりん「直球とほぼ同じ球速で投げられ、変化量の少ない球」

シカコ「私や徳さんも、実際に打ってみて確かめたからね。変化量は、おそらくボール半個分くらいで、手元に沈む」

ジョルノ「実際は、普通の直球に混ぜるような形で投げられてるんだろうね」

ジョルノ「しかし、普通の直球と同じような感覚でこのシンカーを打つと、バットはボールが沈んだ分、ボールの半個分ほど上を叩いてしまう」

りっぴー「結果、普通に打ち返したつもりが、ゴロになってしまう……って訳だね」

くっすん「ふむふむ、なるほど! すごい!」

ぱいちゃん「……くっすん、わかったようなフリしてるけど、ほんとにわかってる?」

くっすん「……ぱいちゃんこそ」
203: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/19(日) 22:38:10.72 ID:McoTHG0O
あさみん『……おそらく、伊波選手の決め球は、ストレートに見せかけた、スプリット系のシンカーのような球なのでしょう』

ひなひな『うーん……姉様、私にもわかるように優しくお願いします』

あさみん『えー……要は、直球とほぼ同じスピードで、バッターの手元で僅かに沈むようなボールを投げてたってことですね』

あさみん『かつて、“史上最高のサブマリン”と呼ばれたアンダースローの大投手、山田久志選手も、この打者の手元で鋭く落ちる高速シンカーを武器にしていたといいます』

ひなひな『まあ、なんとなくわかりました。ちょっと落ちる分、普通の直球だと思って打つと、ゴロになっちゃう訳ですね』

あさみん『……ですが、この球にも、弱点があります』

 

みもりん「……多少、芯を外してでも、強引に球を飛ばせるだけのパワーがあれば……」
204: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/19(日) 22:41:05.36 ID:McoTHG0O
あんちゃん「くっ……」

ザッ

 

シュピッ!

 

えみつん(そこ!)

キィン!!

 

ガシャンッ!!

 

ひなひな『バッター新田、またも鋭いファール!!』

ひなひな『今度は一塁側、ファールグラウンドのフェンスに直撃!!』

 

えみつん(今度は、ちょっと遅れたか……)

えみつん(次こそは……)

 

みもりん「……そう。充分、弾き返せる」

うっちー「球質が軽いのが、あだになっちゃったね」
205: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/19(日) 22:42:47.49 ID:McoTHG0O
ひなひな『2連続の鋭いファールで粘る四番の新田!!』

ひなひな『ツーストライクですが、バッテリーの方が追いつめられている感があります!!』

ワアアアアッ

 

あんちゃん「ふぅ、はぁ……」

あんちゃん(どうしよう……どこに投げても、打ち返される気が……)

 

しゅか「あんじゅ、大丈夫だよ! 逃げなくていいっ!!」

ふりりん「次は……絶対、止めるから!!」

 

あいにゃ「あんちゃぁぁぁん!! 大丈夫、絶対大丈夫!!」

あいきゃん「外野に来ても、頑張って止めるからぁぁぁ!!」

 

あんちゃん「……!!」

あんちゃん「みんな……!」
206: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/19(日) 22:47:09.46 ID:McoTHG0O
りきゃこ(そうだよ……みんながついてる)

りきゃこ(いこう、あんちゃん)

 

あんちゃん(うん……りこちゃん)

あんちゃん(みんなを、信じて)

スッ

あんちゃん(自分を、信じて……!!)

 

ザッ…

 

あんちゃん(左足を踏み出して――右腕を、後ろから上へ、大きく引いて)

あんちゃん(重心を、右足から、左足へ――そして、腕を、大きくしならせて。前へ、前へ)

 

えみつん「!」ピクッ

えみつん(ボールが――まだ、来ない?)

 

あんちゃん(まだ。右手をもっと、前へ、前へ!)

あんちゃん(もっと前へ! ボールを握った指先が、りこちゃんの構えたミットに、届きそうになる――)

あんちゃん(今!!)

 

シュパッ!!
207: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/19(日) 22:49:52.77 ID:McoTHG0O
えみつん「!!」

えみつん(タイミングを――ズラした!?)

えみつん(だけど――!!)

 

カッ

キィィィン!!

 

あんちゃん「!!」

 

ひなひな『打ったぁぁぁ!! 大きい!!』

ひなひな『これは長打になりそうだ!! センターの頭を越える!!』

あさみん『――!? いや!?』
208: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/19(日) 22:53:49.11 ID:McoTHG0O
あいにゃ「うああああああっ!!!」

トテテテテテッ!

 

ひなひな『いや、センターの鈴木、猛然と打球に向かって走る!!』

ひなひな『は、速い!! 元陸上部の鈴木、ちっちゃいけど速い!!』

 

あいにゃ(あんちゃんも――内野のみんなも!! 必死で頑張ってる!!)

あいにゃ(だったら、外野の私だって……!!)

 

あいにゃ「やってやらああああああっ!!!」

バッ!!

 

ひなひな『飛びついたぁ!!』

 

ビシィッ!!

 

ひなひな『あっ……当てたぁぁーー!!!』

ひなひな『外野深くに抜けようかという当たりをグラブに当てた、鈴木!!』

ウオオオオッ!!
209: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/19(日) 22:57:35.14 ID:McoTHG0O
そらまる「うっそぉ!?」

ダダダッ

 

ジョルノ「まじぽん!?」

シカコ「あの当たりを当てる!? 普通!!」

 

すわわ「あいな!!」

ダダッ!

 

ひなひな『ああっと、ライトの諏訪もバックアップに駆け寄っていた!!』

ひなひな『こぼれたボールを拾って――』

 

すわわ(あいなが、必死で止めたボール)

すわわ(だったら、私だって――)

すわわ「このぉっ!!!」

ブンッ!!
210: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/19(日) 23:03:11.82 ID:McoTHG0O
ひなひな『内野に向かって投げたぁ!!』

ひなひな『中継はセカンド――い、いや!?』

 

あんちゃん「ナイス――」

あんちゃん「おすわ!!」

バシッ

 

ひなひな『伊波が、内野の深い位置に!?』

ひなひな『ランナーの徳井は、三塁も回っている!!』

 

あんちゃん『おらぁっ!!』

シュビッ!!

 

ひなひな『伊波、バックホォォーーム!!!』
211: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/19(日) 23:04:52.00 ID:McoTHG0O
そらまる「させるかああぁぁぁ!!!」

ズザザッ!!

バシィッ!!

ドカッ!!

 

ひなひな『バックホームと同時に、ランナー徳井、ホームに突っ込んだ!!』

ひなひな『判定はセーフか!? アウトか!?』

 

りきゃこ「……!!」ハァハァ

そらまる「……!!」ゼェゼェ
234: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:23:17.30 ID:9iIiO64z
\アウト!!/

 

ひなひな『アウトォォーー!! Aqours守備陣、ファインプレー!!』

ひなひな『一丸となった決死のプレーで、追加点は許しませんでした、Aqours!!』

ひなひな『3回表、ピンチを無得点で切り抜けました!!』

 

ワアアアアッ!!

 

ひなひな『四番の新田選手に弾き返され、外野深いところに抜けようかという当たりでしたが……』

あさみん『長打間違いなしと思われたあの打球を、走りこんだセンターの鈴木選手が決死のダイビングでグラブに当てた。まずはこれが大きかったですね』

あさみん『続いて、しっかりバックアップに来ていた諏訪選手。すぐにボールを拾って内野に投げ返します』

あさみん『そして、内野のセカンドベース付近の深いところまで来ていたピッチャーの伊波選手』

あさみん『オーバースローであれば球速がありますからね。肩を活かして、鋭いバックホーム』

あさみん『キャッチャーの逢田選手も、ボールをこぼさず走者の徳井選手をアウトに仕留めました』

あさみん『これ以上点差が開くと、試合の流れが完全にμ'sに傾いてしまいますからね。ナイスプレーです!』
235: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:24:35.80 ID:9iIiO64z
きゃん「あいな~!!」

きんぐ「あいなちゃん、すごいよー!! よくあのボール止めたね!」

あいにゃ「いやあ、捕ってやろうと思ったんだけど! ご、ごめんね、捕れなくって……」

りきゃこ「なに言ってんの! あいなのお蔭で、ピンチを切り抜けられたんだから。可愛さの極み」

あんちゃん「そうだよ! ありがとう、あいな!!」

すわわ「ハグしてあげる」

ギュッ

あいにゃ「え、ええ~/// そんな~、照れますわ~恥ずかしいですわ~///」

きんぐ「よっ! あいなちゃ~ん!」

しゅか「あいなちゃーん!!」
236: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:25:42.44 ID:9iIiO64z
そらまる「あー、やられたー! ごめーん、私がもっと足速かったら!」

みもりん「そらのせいじゃないよ。あれは守った方を褒めないと」

ぱいちゃん「ねー、びっくり。あれを止めるなんてね」

ぱいちゃん「……私も、守備じゃ負けてらんないなー」バスッ

くっすん「お、ぱいちゃんにも火が点いた?」

みもりん「………」

みもりん(色々、揺さぶりをかけたつもりだったけど……)

みもりん(折れない、か。いいね、楽しくなってきた)

 

えみつん「………」

えみつん(あの高速シンカーは、打ち返すことが出来た……でも、もうひと伸び、打球が飛ばなかったのは……)

えみつん(タイミングを……僅かに、狂わされた)
237: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:27:04.12 ID:9iIiO64z
うっちー「……いや、あの状況で、咄嗟にリリースのタイミングをズラしてくるなんてね」

えみつん「うっちーも、気づいた?」

うっちー「まあね。私も、ピッチャーだし」

えみつん「忘れかけてたよ。他の投げ方には無い、アンダースローの、大きな利点のひとつ」

えみつん「それは……投げ始めから球をリリースするまでの時間が、長いこと」

うっちー「………」

えみつん「球持ちがいい分、そこで緩急をつけやすいし、バッターはタイミングがとりづらい」

えみつん「プロの投手の、重心移動の始まりからリリースまでの時間の平均が、0.7~0.8秒台とされるのに対し……」

えみつん「アンダースローの投手は、1.0~1.1秒台とされてるらしいよ」

うっちー「へー。流石、野球については物知り」
238: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:29:14.97 ID:9iIiO64z
うっちー「だけど……その、僅か0.3秒の差が、バッターのタイミングを狂わせる」

えみつん「しかもあんちゃんは、最後の1球――」

えみつん「おそらく、さらに0.1秒ほど遅らせて、ボールをリリースした」

うっちー「その、0.1秒で、えみつんを僅かに詰まらせたってことだね……」

うっちー「……ふっふ」

えみつん「うっちー?」

うっちー「後輩ちゃんたちも、まだまだやるじゃん」

 

ザッ…

 

うっちー「私も……先輩として、負けられないなぁ」

 

みもりん「なんかうっちーも、楽しそうだね♪」

ジョルノ(なんかこえーよ……)
239: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:32:03.29 ID:9iIiO64z
【3回裏】

 

『7番、ライト、諏訪。ライト、諏訪。背番号8』

 

ひなひな『守備で良いプレーを見せたAqours、反撃の形を作りたい!』

ひなひな『3回裏の攻撃は、7番の諏訪からです!!』

ウオオオオッ

 

きんぐ「頼むよー、すわわー!」

ふりりん「出てくれー!!」

すわわ「……ん。行ってくるね」

しゅか「……ところであんじゅ、バックホームの時、オラつきモードに戻ってたでしょ?」ニヤニヤ

あんちゃん「だからオラつきってゆーな!///」

あんちゃん「仕方ないじゃん、あの時はすぐバックホームしないといけなかったんだから!」

りきゃこ「ねえ、私のささやき攻撃、結果的には良かったんじゃない? ね?」

あんちゃん「いや、りこちゃんは、もういらんこと言わないでほしいんですが……」

きゃん「りかこ卑怯すぎるしー」

りきゃこ「えー、作戦でしょ作戦!」

 

すわわ(あー、相変わらずうるさい……)
240: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:33:12.03 ID:9iIiO64z
\プレイ!!/

 

ひなひな『さて、諏訪が右バッターボックスに入りました』

ひなひな『1回、2回と完璧に抑えられているAqours。この3回は下位打線からの攻撃ですが……』

 

すわわ「………」

スッ

 

うっちー「!」ピクッ

 

ひなひな『おおっと、これは!? 諏訪選手、バントの構え!!』

ひなひな『当然ながらノーアウトでランナーなし! 先程の徳井選手と同じく、何か奇策を狙っているのか!?』

オオオオオッ
241: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:33:59.02 ID:9iIiO64z
あんちゃん「ば、バント……?」

あいにゃ「何か狙いが!?」

きゃん「うーん、どうなんだろ……おすわも、何考えてるかわかんないとこあるし……」

しゅか「……はっ! わかった!」

しゅか「おすわの狙いは! 相手のエラーだ!!」カッ!

ありしゃ「……はい」

しゅか「反応うすっ!」

 

うっちー「……」

ザッ

シュッ!

 

すわわ「――」

スッ

 

バシィ!

\ストライーク!/
242: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:35:42.66 ID:9iIiO64z
ひなひな『ピッチャー内田、初球は内角へのストレートでストライク』

ひなひな『バッター諏訪、バットを引いて見送っています』

あさみん『ですが、腰を落として、目線をバットの近くにまで持ってきています』

あさみん『ここは奇策ではなく、バントの構えで、しっかり球筋を見ようとのことなのでしょうか』

 

バシィ!

\ストライーク!/

 

パシッ!

\ボール!/

 

ひなひな『2球目、直球でストライク。3球目はスライダー、外れてボール』

ひなひな『バッター諏訪、相変わらずバントの構えから見送り。バットを振る様子がありません』

あさみん『……しかし、3球目のスライダーは、今までのAqoursの打者はボールになる球でも釣られて振ってしまっていました』

あさみん『ある意味、落ち着いて球のコースを見極められているともとれますよ』

 

すわわ「………」

 

うっちー(この子……)
243: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:36:51.73 ID:9iIiO64z
ひなひな『内田、4球目!』

 

ザッ

シュパッ!

 

すわわ「――」

スッ!

 

あんちゃん「!!」

しゅか「構えた!!」

 

キンッ!

ガシャンッ!

 

えみつん「!」

 

ひなひな『諏訪、バントの構えからヒッティング!!』

ひなひな『ボールはバットを掠めてバックネットへ! ファールです!!』

あさみん『今のは、ストレート……タイミングは合っていましたよ!』

オオオオオッ
244: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:37:53.86 ID:9iIiO64z
きんぐ「すわわ、当てた……!」

しゅか「うおー、いいぞすわわー!!」

あいにゃ「そのまま打っちゃってー!!」

 

すわわ「………」フゥ

 

うっちー「………」

ザッ

 

ひなひな『静かな闘志を燃やす内田、第5球!!』

 

シュッ!

 

ググッ…!

 

すわわ「――!!」

ブンッ!

 

バシィ!

\ストライーク! バッターアウッ!/
245: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:39:15.72 ID:9iIiO64z
ひなひな『最後はスライダーで三振!!』

ひなひな『ここは先輩・内田の貫録勝ちです!!』

ワアアアアッ!

 

うっちー(だけど……タイミング、合わせてきたね)

 

すわわ「……ふぅ」

あいにゃ「すわわー、惜しかったー!!」

きゃん「ファールの時は、おおっと思ったし!」

ありしゃ「やっぱり、ボールを見てたの?」

すわわ「ん。打てる球なのかどうか。バントの構えで、ちゃんと見ようと思って」

あんちゃん「……それで、どうだった?」

すわわ「……あの、スライダーなんだけど」

あんちゃん「う、うん……」ゴクリ

すわわ「無理。打てない」キッパリ

あんちゃん「」

ふりりん「って、無理なんかーい!!」

すわわ(……少なくとも、私には)
246: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:40:07.87 ID:9iIiO64z
すわわ「だけど……ストレート」

すわわ「あれなら……狙っていけば、打てなくはないかも」

りきゃこ「そっか、ストレートとスライダーを見極めて、ストレートに狙いを絞ればいいんだ!」

きゃん「なるほどー! なんか話聞いてたら、いけそうな気がしてきた!」

すわわ「だけど……」

 

『8番、レフト、小林。レフト、小林。背番号6』

 

きゃん「あ、私の番! 行かなきゃ!」

タタタ

 

すわわ「……あ」

すわわ(ま、いっか)
247: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:41:03.11 ID:9iIiO64z
ひなひな『続いては8番の小林が右バッターボックス!』

ひなひな『未だ一人のランナーも出していない内田! Aqours、まずは塁に出たいところ!』

 

きゃん(ストレートなら、私にも打てるかも……!? よーし、見ててねヨハネ!)

 

うっちー「………」

ザッ

シュッ!

 

ググッ…!

 

きゃん(!? 曲がっ……!?)

きゃん「ひえ!?」

ドテッ

 

バシィ!

\ストライーク!/
248: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:42:47.27 ID:9iIiO64z
ひなひな『内田、初球からスライダー! 思わずのけぞった小林、たまらず尻もちです!』

\ワハハハハ/

 

きゃん「ひ、ひえ……」

きゃん(……って。ストレートと、スライダーって……)

きゃん(どうやって、見分ければいいの……!?)

 

りきゃこ「ぷぷっ……かっこわる」

ありしゃ「あーあ……」

すわわ(そう……今のところ、直球と変化球の見極めが出来ない)

すわわ(何か、癖でもあるかと観察してたけど……それも見当たらない)

すわわ(ヤマを張って、ストレート1本に絞るしかないかな……それでも、十分打ちづらいけど)
249: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:44:01.72 ID:9iIiO64z
ザッ

シュッ!

 

きゃん(わ、もう来た!?)

 

ズバッ!

\ボール!/

 

ひなひな『2球目は直球、低め外れてボール!!』

 

きゃん(って、ストレートだって、こっちの体に向かってくるみたいだし、速いし……!)

きゃん(む……無理。絶対無理)

 

ありしゃ「あいきゃん、委縮しちゃってるかも……」

しゅか「こらー、びびんなー!!」

きんぐ「ぶつかってけー!!」
250: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:45:02.51 ID:9iIiO64z
きゃん(そ、そんなこと言ったってぇ……!)

 

ひなひな『ピッチャー内田、ワンエンドワンからの3球目!』

シュッ!

 

ググッ…!

 

きゃん(!? ま、また私の方に――!?)

きゃん(あ、あぶ、)

 

ドスッ!

 

きゃん「ぐぇ!?」
251: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:46:33.82 ID:9iIiO64z
\デッドボール/

 

きゃん「お……おふぅ……」

プルプル

 

うっちー「……ありゃ」

うっちー(当たっちゃったか……)

 

ひなひな『デッ……デッドボール!!』

ひなひな『なんと、曲がったスライダーが、右バッターボックスの小林の脇腹を直撃!!』

あさみん『かつて、阪神のジェフが絶好調の時、スライダーが空振りした右打者の体に当たったという逸話がありますが……』

あさみん『さながら、その逸話の再現ですね。恐ろしいキレと変化です、内田選手のスライダー』

ザワザワ…

ひなひな『しっ……しかし、Aqoursにとっては怪我の功名というか、初めてのランナーです!!』

 

しゅか「よっしゃーオッケー!!」

あんちゃん「ついてないけどオッケー!」

ふりりん「きゃん、ナイスデッドボール!」

きんぐ「痛くない、痛くない!」

 

きゃん「いや、痛いから……」プルプル
252: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:47:07.37 ID:9iIiO64z
ひなひな『とにもかくにも、ランナーが出ました! ワンナウト一塁!』

ひなひな『続くバッターは……!』

 

『9番、センター、鈴木。センター、鈴木。背番号9』

 

あいにゃ「よっしゃーいくぜー!!」

きんぐ「よーし、いけーあいなちゃん!」

ふりりん「ラッキーガール! 頑張れ―!」

りきゃこ「あいなー、頑張って―!!」

あいにゃ(とは言っても、ちょっと怖い……)ドキドキ
253: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:48:29.14 ID:9iIiO64z
ひなひな『ラストバッターの鈴木、左バッターボックスに入りました』

あさみん『そっか、あいなちゃんは左利きだったね』

ひなひな『姉様、ワンナウトでランナー一塁という場面ですが、送ってくるでしょうか?』

あさみん『3点差ですからね。ここは、攻めにいくか……』

 

ザッ…

 

ひなひな『バントの構えはとりません! どうやら勝負のようです!』

ひなひな『先程見せたファインプレーのいい流れを、打席でも発揮できるか、鈴木!!』

ワアアアアッ

 

あいにゃ(さっきのピンチを防いで、初めてのランナーが出て、いい流れが出来かけてる……!)

あいにゃ(私で、この流れを途切れさせる訳には……!)ドキドキ
254: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:49:41.13 ID:9iIiO64z
ひなひな『左対左の勝負! 内田、第1球!』

シュッ!

 

フッ

 

あいにゃ(き、消え……!?)

 

ズバン!

\ストライーク!/

 

ひなひな『初球ストライク! 鈴木、内田のクロスファイヤーに手が出ません!』

 

あいにゃ(しゅかが言ってた通り、左からだとボールの出所が見にくい……!)

あいにゃ(ど、どーしよ、こんなの打てるの、あたし……!?)
255: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:51:43.64 ID:9iIiO64z
ひなひな『内田、第2球!』

 

あいにゃ(え、もう!?)

あいにゃ(ふ、振らなきゃ……!)

あいにゃ「えーい!!」

 

ググッ…!

 

ブーン!

\ストライクツー!/

 

ひなひな『2球目、スライダーを空振り! あっという間に追い込まれた!』

あさみん『やはり左打者にとっても、内田選手のクロスファイヤーは非常に打ちづらいですね……』

 

あいにゃ(今のが、スライダー……!? まるで生き物みたいに、外に逃げてく……!)

あいにゃ(あ、当てられないよぉ……)
256: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:52:32.82 ID:9iIiO64z
ありしゃ「あいな、しっかりー!」

りきゃこ「頑張ってー! あいなー!!」

 

あいにゃ(……そうだ、諦めちゃ駄目! せっかくいい雰囲気で来てるんだから!)

あいにゃ(なんとかして当てなきゃ! 流れを止めないように、なんとか……!!)

あいにゃ(ボールよく見て! ボール!!)

 

シュッ! 

 

あいにゃ(き、来た!! って、やっぱり見えづらっ……!!)

あいにゃ(振らなきゃ振らなきゃ振らなきゃ!!)

 

あいにゃ「にゃあああああ!!」

 

ガキッ!!
257: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:54:04.09 ID:9iIiO64z
りきゃこ「!!」

あんちゃん「当たった!!」

 

ひなひな『無茶苦茶に振ったバットにボールが当たった!!』

ひなひな『しかし打球はボテボテ、ショート正面!!』

 

きゃん「ああああ……!」

ダダダッ

 

みもりん「おっけー」

パシッ

みもりん「そら!」

シュッ!

 

そらまる「任せろ!」

バシッ

 

ひなひな『セカンド徳井、二塁踏んでツーアウト!』
258: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:56:44.66 ID:9iIiO64z
そらまる「南條さん!」

シュッ

 

ジョルノ「あいよー」

 

ひなひな『一塁で棒立ちの南條選手に送り……』

ひなひな『……え!?』

 

あいにゃ「わあああああっ!!」

ダダダダッ

あいにゃ(繋がなきゃ、繋がなきゃ……!!)

あいにゃ(私が……!!)

 

パシッ

\アウト!/

 

あいにゃ「ああああっ!!」

ズザザザーーッ!

 

ジョルノ「……おおっ?」

 

ひなひな『6、4、3のダブルプレー!! スリーアウト!!』

オオオオオッ!!

ひなひな『し、しかし、打った鈴木、一塁に全力疾走して、そのまま転ぶようにヘッドスライディング……!?』

ひなひな『タイミング的には完全にアウトでしたが……』
259: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 21:59:12.67 ID:9iIiO64z
ひなひな『しかし見事なダブルプレーでしたね、姉様』

あさみん『二遊間の三森選手と徳井選手、お互いがしっかり役割を果たして、息の合ったプレーです。流石はミルキィホームズの盟友ですね』

ひなひな『一方の鈴木選手、なんとかバットに当てたものの、結果は最悪のダブルプレーでした』

ひなひな『いい流れが出来かけたところで、またも出鼻をくじかれたような形ですが……』

あさみん『……さて、どうでしょうか』

ひなひな『え?』

あさみん『今の、一見、無意味なヘッドスライディング』

あさみん『ですが――』

 

ジョルノ「あー……だいじょぶ?」

あいにゃ「………」

ジョルノ「はっは。ちょっとカッコ悪いヘッドスライディングだったね。……だけど」

ジョルノ「そういう、がむしゃらなの。嫌いじゃないよ」

スタスタ…

あいにゃ「………」 
260: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 22:01:12.31 ID:9iIiO64z
あいにゃ「………」

トボトボ…

 

あんちゃん「あいな!」

ふりりん「いやー、惜しかったよ」

りきゃこ「すごい派手に突っ込んでいったけど、怪我とか無い!?」

あいにゃ「うっ……ぐすっ……」

あいにゃ「ごむぇん、みんな……せっかく、ランナー出たのに……」

あいにゃ「ダブルプレーなんて……私、流れ、切っちゃって……」グスグス

きゃん「そんなことないって!」

りきゃこ「あいな、頑張ったじゃん!!」

きんぐ「あいなちゃん、泣かないでー!」

すわわ「あいな……」

ギュッ

あいにゃ「ぐす……ごめん」
261: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 22:03:10.23 ID:9iIiO64z
あんちゃん「………」

あんちゃん「……ね、りこちゃん」

りきゃこ「………」

あんちゃん「あいなが、あんなに泥だらけになって頑張ってるの、見て……」

あんちゃん「なんか、改めて思ったよ」

キッ!

あんちゃん「もっと、がむしゃらになって頑張ろう」

あんちゃん「カッコ悪くったって、何が何でもって気持ちでやろう!」

りきゃこ「……そうだね。あいなが、あそこまでやってるんだし」

キッ…!

りきゃこ「あいなが、泣くほど頑張ってるんだもの……!」

りきゃこ「やってやろうじゃん……私たちだって……!」
262: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 22:04:11.23 ID:9iIiO64z
あんちゃん「……なんか、りこちゃん最近、あいなのことになるとムキになるよね」

りきゃこ「は!? い、いや、そんなことないし!」

あんちゃん「ふふっ。よーし、行こう、りこちゃん!」

あんちゃん「これ以上、絶対、点はやらないよ!」

 

あさみん『――ですが。ああいう、何が何でもという気持ちのこもった、泥臭くてがむしゃらなプレーが』

あさみん『ナインの心を動かし、火を点け、流れを生むことだってある』

あさみん『――流れは、まだ消えていないかもしれませんよ』
263: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 22:05:46.57 ID:9iIiO64z
【4回表】

 

あさみん『4回表、ピッチャー伊波は気持ちのこもったピッチング』

あさみん『先頭の内田を、詰まらせてファーストゴロに打ち取り――』

 

きんぐ「おっけー、私が取る!」

\アウト!/

きんぐ(私だって、やれるところ見せないと……!)

 

あさみん『6番の飯田には、ファールで粘られ、四球で出塁を許すものの』

あさみん『続く7番Pileを、サードゴロで、二塁フォースアウト』

 

ありしゃ「任せて!」

シュッ!

\アウト!/

ありしゃ(あいにゃが、あそこまでがむしゃらになるなんてね……)
264: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 22:07:15.43 ID:9iIiO64z
あさみん『8番南條は、またも1球もバットを振ることなく、三球三振』

 

\ストライッ! バッターアウッ!/

ジョルノ「うーん、いい球だねー」

りきゃこ(……この人、本当にやる気あるの……?)

 

あさみん『Aqoursはこの回、μ'sをノーヒットで無得点に抑えました』

あさみん『そして――』
265: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/23(木) 22:10:40.62 ID:9iIiO64z
【4回裏】

 

あんちゃん「……試合も、中盤。私たちは、まだ、ノーヒット」

あんちゃん「だけど、回はあと6回も残ってる! 3点ぐらいすぐに返せるよ!!」

8人「おー!!」

 

あんちゃん「……よーし、この回は1番から! 頼んだぞー!!」

 

グイッ グイッ

しゅか「りょーかい! 頼まれた!」

しゅか「それじゃ、この斉藤さんが――」

 

『1番、ショート、斉藤』

 

しゅか「――ガツンと一発、かましてやりますか!」

ニッ

 

あさみん『――そして、迎えた、4回裏』

あさみん『ついに――Aqoursの反撃が、始まります』
292: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/28(火) 23:28:18.66 ID:/Ot1/zHO
ひなひな『さあ、4回の裏のAqoursは1番からの攻撃!』

ひなひな『気合を入れるかのように体を伸ばしていた斉藤が、左バッターボックスに入ります!』

ワアアアアッ

ひなひな『しかし、マウンド上に立ちふさがるμ'sのエース、内田は、未だノーヒットピッチング!!』

ひなひな『3回にデッドボールで初めてのランナーを出したものの、ここまでAqoursに1本のヒットも許しておりません!!』

あさみん『試合も中盤に差し掛かりますからね。そろそろAqoursは、反撃の糸口を見つけたいところですが……』

 

うっちー「………」

ゴゴ…

 

しゅか(内田さん……スク感やアニサマで会った時は、ちょっと毒もあるけど優しいお姉さんって感じだった)

しゅか(ガチだと、オーラやばい……これが、本気のμ's)

しゅか(だけど……あたしたちだって、負けてらんない!)
293: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/28(火) 23:29:12.11 ID:/Ot1/zHO
ひなひな『左対左! 内田、斉藤に対して第1球!!』

 

ザッ

シュッ!

 

しゅか「!」

 

フッ

 

ブンッ!

\ストライッ!/

 

しゅか(ぐ……やっぱ、一瞬消えるような感覚)

しゅか(見えづらっ……!)

 

ひなひな『斉藤、初球から懸命に振っていきましたが空振り!!』

ひなひな『やはり、内田のクロスファイヤーを打ち崩すことは出来ないのか!?』
294: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/28(火) 23:30:23.21 ID:/Ot1/zHO
あいにゃ「左からだと、ほんと球が見えづらいんだよね……」

きゃん「あああ……しゅかでも、やっぱり無理なの……?」

あんちゃん「しゅか……!」

 

しゅか「……ふー」

しゅか「すいません。タイム、お願いしまーす」

 

\タイム!/

 

ひなひな『斉藤、一旦タイムをかけ、バッターボックスを出ます』

ひなひな『軽く素振り……いかなしゅかちゃんと言えども、緊張しているのでしょうか』

 

ブンッ ブンッ

 

あさみん『……さて。どうでしょう』
295: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/28(火) 23:31:53.22 ID:/Ot1/zHO
きゃん「しゅか、萎縮しちゃってるのかな……」

きんぐ「いくらしゅかでも……」

あんちゃん「………」

あんちゃん「……ううん。違う」

りきゃこ「……え?」

あんちゃん「きっと、しゅかは……」

 

ブンッ

しゅか「………」

しゅか(うーん。どうにも左じゃ、あの球、打ちづらい)

しゅか(だったら……)

 

あんちゃん「どんな時だって――」

あんちゃん「絶対、前だけを向いてるはず」
296: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/28(火) 23:34:01.60 ID:/Ot1/zHO
しゅか「……よしっ」

ザッ

 

ひなひな『何か感触を確かめるように素振りを終えた斉藤、バッターボックに戻り――』

ひなひな『……え!?』

 

しゅか(だったら――)

しゅか(――右!!)

 

ひなひな『なっ……なんと!? 左打ちのはずの斉藤が――』

ひなひな『右バッターボックスに入りました!!』

オオオオオッ

 

うっちー「……!」
297: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/28(火) 23:35:06.93 ID:/Ot1/zHO
きゃん「右!? しゅか、スイッチヒッターだったの!?」

りきゃこ「だけど、左が打ちづらいからって右に変えるとか……」

ありしゃ「安直すぎるというか……ていうか、右でも打ちづらいことは変わりないのに」

すわわ「………」

 

えみつん(……ただのやけくそなのか、それとも何かあるのか)

えみつん(攻めてみようか、うっちー)

 

うっちー(おっけー、えみつん)

うっちー(どの道――後輩ちゃんたちには)

ザッ

うっちー(――打たせない!)

 

シュッ!
298: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/28(火) 23:36:26.37 ID:/Ot1/zHO
しゅか(おおっ! 今度は、私の体に向かってくる!)

しゅか(だけど――これなら、)

 

キンッ!!

 

ガシャッ!

 

えみつん「!!」

 

ひなひな『あっ……当てた!!』

ひなひな『打球はバックネット!! ファールです!!』

オオオオオッ!!

 

しゅか「――よっしゃ」

しゅか「右(こっち)なら――見える!!」
299: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/28(火) 23:38:07.39 ID:/Ot1/zHO
ふりりん「あ……当てた……!!」

きゃん「マジ……!? まぐれじゃなくて!?」

すわわ「……いや」

すわわ「まぐれじゃ、ない」

 

ひなひな『第1打席では手も足も出なかった内田選手の球を、右打ちにした途端に当ててみせました!』

ひなひな『これは偶然なのか、それとも……』

あさみん『いえ。まぐれや偶然ではないと思いますよ』

あさみん『左打ちでは、同じく左投げで一塁側真横から投げてくる内田選手の球筋は極めて見にくい』

あさみん『そこで、斉藤選手は、球筋をしっかり見るために右にスイッチしました』

ひなひな『ですが、右にしてもあの球はすごく打ちにくいんじゃ……』

あさみん『単に右打ちにしただけじゃない。斉藤選手の立ち位置をよく見てみてください』

あさみん『バッターボックスの、外側のラインギリギリ。さらに前足を引き、体を開いた、オープンスタンス気味の構えになっています』

ひなひな『あっ……!』
300: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/28(火) 23:39:16.87 ID:/Ot1/zHO
すわわ「右打ちにすることで、クロスファイヤーの球筋をしっかり見えるようにして」

すわわ「さらに体を、球が向かってくる方向に向けて大きく開くような構えにして、インコースを打ちやすくしてるんだよ」

あいにゃ「な、なるほど……!」

あんちゃん「それに、今打ったのはストレート!」

あんちゃん「さっきのおすわの、ストレートなら打ち返せるってアドバイス、しゅかは活かしてる!」

ありしゃ「しゅか、そこまでしっかり考えてプレーを……?」

あんちゃん「……んー。しゅかのことだから、そこまで考えてるわけじゃないのかも」

あんちゃん「だけど……」

 

あさみん『なんとか打ち返してやろうという気持ちが、意識せずとも、こうした形になって現れた』

あさみん『そして、右打ちであの球を見るのは初めてにも関わらず、初球からバットを合わせてくるとは――』

 

しゅか(……よーし)

しゅか(次は、絶対打つ!)

 

あさみん『しゅかちゃんのセンスも、計り知れない――!』
301: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/28(火) 23:40:36.88 ID:/Ot1/zHO
えみつん(なるほどね。インコースのストレートには、合わせてきた)

えみつん(だったら――)

 

うっちー(うん。だったら)

うっちー(この球なら――どう?)

ザッ…

シュッ!

 

しゅか(きた――!)

 

ググッ…!

 

しゅか(!! 曲がっ――)

しゅか(スライダー!!)

 

ググッ!

 

しゅか(タイミングが――)

しゅか(――だけど!! 絶対打つ!!)

しゅか(絶対――)

 

しゅか「うああっ!!」

 

ガキィッ!!
302: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/28(火) 23:42:45.79 ID:/Ot1/zHO
ひなひな『打った!! ボールは強くバウンド!!』

ひなひな『サード方向へ!! これは面白い打球!!』

ワアアアアッ

 

えみつん「くっすん!!」

 

くっすん「任せろ!!」

ダダッ!

 

ひなひな『サード楠田、突っ込む!!』

ひなひな『バッターの斉藤は一塁に走る! 間に合うか!?』

 

ダダダダッ!

しゅか(あいなだって必死にやってた!!)

しゅか(だったら、私だって……!!)

 

くっすん「なんちゃん!!」

シュッ!

 

しゅか「うおああああっ!!」

ズザザザザッ!
303: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/28(火) 23:43:56.31 ID:/Ot1/zHO
しゅか「……!!」

ガバッ

 

ひなひな『斉藤、一塁へ決死のヘッドスライディング!!』

ひなひな『判定は、セーフか、アウトか!?』

 

\セーフ!/

 

ワアアアアッ!!

ひなひな『セェェーーフ!! 記録は内野安打!!』

ひなひな『ノーヒットピッチングを続けていたμ'sのエース・内田、斉藤の執念の前に、ついに初ヒットを許しました!!』

 

しゅか「おっ……」

しゅか「しゃあああああっ!!」

 

ふりりん「うおおおおおっ!!」

きゃん「しゅかあああああ!!」

あんちゃん「やったああああああ!!」
304: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/28(火) 23:45:15.08 ID:/Ot1/zHO
うっちー「あーあ」

うっちー「打たれちゃった、か」

 

あいにゃ「しゅかー!! サイコーー!!」

きゃん「スイッチ出来たのぉー!?」

 

しゅか「へ? スイッチ?」

しゅか「あの、あんじゅが好きな、スプラトゥーンやるやつ?」

 

ふりりん「って、知らないんかーい!!」

きゃん「バカだ……」

りきゃこ「バカだ……」

あんちゃん「うん……バカだけど」

 

しゅか「……へへっ」

しゅか「やったぜっ!」グッ!

 

あんちゃん「やっぱ……すげーやつだ……!」
305: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/28(火) 23:46:36.62 ID:/Ot1/zHO
ひなひな『さあ初ヒットが出まして、ノーアウト一塁!』

ひなひな『続くバッターは――』

 

『2番、セカンド、降幡』

 

きんぐ「よっしゃー、あいあい!!」

きゃん「続いてけー!!」

 

ふりりん「よ、よーし……!」

 

ひなひな『第1打席は三球三振に仕留められた降幡!』

ひなひな『ここは、ノーアウトのランナーを活かしたいところですが……』

 

ふりりん(3点差あるけど……ここはまず、確実に1点が取りたい)

ふりりん(だったら、私に出来ることは……)

スッ

 

ひなひな『やはり、バントの構え!』

あさみん『確実に送って、まずは1点を取ろうということですね、Aqoursは』
306: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/28(火) 23:48:02.84 ID:/Ot1/zHO
しゅか(……あいあい)

しゅか(あれ、いくよ)

スッ

 

ふりりん「!」ピクッ

ふりりん(しゅか……仕掛ける気……?)

 

ひなひな『一塁ランナーの斉藤、やや大きめのリードをとります』

あさみん『斉藤選手、足もありますからね』

 

えみつん(うっちー……走ってくるかもよ)

 

うっちー(わかってるよ、えみつん)

クルッ

シュッ!

 

ひなひな『内田、一塁に牽制!』

 

ザザッ!

パシッ!

\セーフ!/
307: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/28(火) 23:49:41.81 ID:/Ot1/zHO
しゅか(左投げだし、結構牽制、速い……)

しゅか(でも……今ぐらいのリードなら、大丈夫!)

スス…

 

えみつん(強気だね……)

えみつん(よし。うっちー、1球、外していこう)

 

うっちー(おっけー、えみつん)

ザッ

シュッ!

 

しゅか(今!!)

ダダッ!!

 

ひなひな『走った!!』

ワアアッ!
308: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/28(火) 23:50:28.35 ID:/Ot1/zHO
ふりりん(走った!!)

ふりりん(私は……!!)

スッ!

ブンッ!

 

ひなひな『アウトコースに外れた球を、大きく空振り!!』

ひなひな『新田、構えて――』

 

ビュッ!!

 

しゅか(!! ボール、速っ!!)

しゅか(だけどっ……!!)

ズザザザザッ!

パシッ!

 

\セーフ!/
309: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/28(火) 23:53:12.47 ID:/Ot1/zHO
しゅか「うっし!」

 

ひなひな『セーフ!! 間一髪、盗塁成功!!』

ひなひな『キャッチャー新田から、二塁へ矢のような送球がありましたが、ここは斉藤の足が勝りました!!』

ひなひな『新田選手の肩の強さも相当でしたが、それを上回った斉藤、とんでもない瞬足!!』

オオオオオッ!!

あさみん『バッターの降幡選手も、バントの構えからバットを戻し、大きくスイングしてランナーのアシストをしましたね』

あさみん『あれで、新田選手の返球が一瞬遅れました』

ひなひな『ともあれ、これでノーアウト二塁! 得点のチャンスです!!』

 

きんぐ「よーし、しゅか!!」

きゃん「はやっ!! すごっ!!」

 

ふりりん(これでしゅかは二塁……私が、ここでちゃんと送れば三塁……!)

ふりりん(まず1点取るために、私がちゃんと送んなきゃ……! 私が……!)

ドキドキ
310: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/28(火) 23:59:26.94 ID:/Ot1/zHO
ひなひな『降幡、バントの構えは変わりません!』

あさみん『確実に1点をとるために、ランナーを三塁に送るということでしょう』

 

うっちー(……だけど、見たとこ、ガチガチ)

うっちー(これなら――)

シュッ!

 

バシッ!

ふりりん「っ!!」

\ボール!/

 

ふりりん(しゅか、右の方が打ちやすいとか言ってたけど……マジで……!?)

ふりりん(全然、打ちやすいと思えない……!)

 

しゅか「あいあい、ボールよく見てー!」
311: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/29(水) 00:01:03.66 ID:RMx7eged
うっちー(内角で、詰まらせて――)

うっちー(バントは、させない!)

シュッ!

 

ふりりん(きた! バントしなきゃ、バント……!)

ふりりん(バント!)

コキンッ!

 

ひなひな『ああ、打ち上げてしまった! これは最悪!』

ひなひな『ボールはファールグラウンドに上がる!』

ワアアアアッ

 

りきゃこ「あー最悪!!」

きんぐ「落ちろー!!」

 

えみつん「くっ……!」

ポトッ

 

ひなひな『新田、飛びつきましたがあと一歩で落としました! Aqoursとしては間一髪!』

ひなひな『しかしこれでツーストライク! もう失敗はできません!!』

 

あいにゃ「た、助かった……!」

ありしゃ「あいあい、落ち着いてー!」
312: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/29(水) 00:03:57.71 ID:RMx7eged
ふりりん(あ、あぶ、危なかった……!)

ふりりん(だけど……もう、失敗できない……! もう……!)

ドキドキ

ふりりん(………)

ふりりん(私……なに、やってんだろ……バントも、上手くできなくて……)

ふりりん(みんなの……足を、引っ張ってばっかり……)

ふりりん(μ'sの、同じポジションの徳井さんは……ちゃんとバント決めて、出塁して、ダブルプレーも決めて……)

ふりりん(運動神経ないとか言われながら、ちゃんと自分の役割を、しっかり果たしてた……)

ふりりん(それに比べて……エラーはする、バントもできない……私は……)

 

そらまる(あの子……?)

 

しゅか「………」
313: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/29(水) 00:06:16.25 ID:RMx7eged
しゅか「こらー、あいあい! 顔上げろ! 暗い顔すんなー!」

しゅか「あいあいだって、Aqoursの一員だろー!?」

 

ふりりん「え……?」

 

あんちゃん「そうだよ、あいあい! 自信持って!!」

あんちゃん「一緒に、練習したじゃん! 大丈夫!!」

 

ふりりん「しゅか……あんちゃん……」

 

えみつん「……ね、ふりりん」

ふりりん「え? は、はいっ!?」

えみつん「だいじょー(大丈夫)! 自信持って」ニコッ

ふりりん「……!」

ふりりん「えみつんさん……」

 

くっすん「えみつん、なんか励ましてない……?」

そらまる「まっ! いいんじゃない!」

みもりん「そうそう。えみつんらしいし、ね」

 

そらまる(……自信が無いのは、お互い様)

そらまる(だけど、自分のやれることを頑張るっていうのは、出来るはずじゃん?)
314: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/29(水) 00:07:17.71 ID:RMx7eged
ふりりん(そうだ……あーしだって、Aqoursの一員なんだ……!)

ふりりん(徳井さんだって、言ってたじゃん……!)

 

そらまる『すずとか、えみつんみたく、運動神経ある訳じゃないし。出来ることは、なんでもしないとね』

 

ふりりん(μ'sの職人、徳井さん――)

ふりりん(私も、Aqoursの一員として。出来ることをやる……!)

ザッ!

 

ひなひな『あいちゃん、腹をくくったか!? 再び、バントの構えで向かい合います!!』

 

うっちー(――望むところっ!)

シュパッ!
315: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/29(水) 00:10:48.90 ID:RMx7eged
ふりりん(そうだ。練習した――)

ふりりん(練習したもの!)

グッ

ふりりん(投手に正対するように前足を引いて、膝を曲げて腰を軽く落とす)

ふりりん(恐れずにボールの軌道に顔を入れるイメージで、ボールをしっかり見る)

ふりりん(ボールを当てる位置はバットの先、右手でボールを捕球するようなイメージで――)

ふりりん(――当てる!)

 

コツン!

 

ひなひな『降幡、当てた!! ボールは一塁線を転がる!!』

あさみん『上手い!!』
316: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/29(水) 00:12:45.23 ID:RMx7eged
えみつん「南條さん!!」

 

ジョルノ「あー、私かー! 走りたくないのにー」

タタタ

 

シュッ

パシッ!

\アウト!/

 

ひなひな『南條、一塁ベースカバーに入った徳井に送ってアウト!』

ひなひな『しかし、送りバント成功! ワンナウト三塁です!!』

オオオオオッ!

あさみん『一塁ライン際ギリギリ、ファーストに捕らせる、ここしかないという場所に転がす、絶妙なバントでした』

あさみん『追い込まれていましたが、降幡選手、ナイスプレーでしたよ!』

 

しゅか「ナイス、あいあいー!!」

 

きゃん「いいぞー、あいあい!!」

きんぐ「やればできるじゃーん!!」

 

ふりりん「や……やった……!」
317: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/29(水) 00:14:47.36 ID:RMx7eged
ひなひな『これでワンナウト三塁!! Aqours、これ以上ないほどの、得点のチャンスを迎えました!!』

ひなひな『そしてここで、迎えるバッターは――』

 

『3番、ピッチャー、伊波』

 

ワアアアアッ!!

アンチャアアアアン!!

 

ふりりん「あんちゃん――」

ふりりん「お願い!」

あんちゃん「――うん。任せて、あいあい!」

ザッ!
318: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/08/29(水) 00:15:39.23 ID:RMx7eged
うっちー(ワンナウト、三塁)

うっちー(そして、ここで――)

 

えみつん(あんちゃん――か)

 

あんちゃん(新田さん――内田さん)

グッ

あんちゃん(勝負です――!)
342: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/02(日) 22:18:08.10 ID:ebE77W9K
ひなひな『4回裏、ワンナウト三塁でついに得点のチャンスを迎えたAqours!!』

ひなひな『この場面で、バッターボックスに立つのはエースでキャプテンの3番伊波!!』

ひなひな『自らのバットで、反撃の口火となる1点を挙げることが出来るでしょうか!?』

ワアアアアッ!

 

ふりりん「あんちゃん、お願い……!!」

あいにゃ「いけええええ、あんちゃああああん!!」

きんぐ「ぶっぱなせええええ!!」

 

あんちゃん「」フゥーッ
343: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/02(日) 22:19:17.91 ID:ebE77W9K
ひなひな『いつになく、真剣な面持ちでバッターボックスに立つ伊波――』

ひなひな『やはり、得点のチャンスということで、重圧もあるのでしょうか』

あさみん『あまりプレッシャーに押し潰されずに、落ち着いて挑んで欲しいところですが――』

 

あんちゃん(しゅかが必死で塁に出て、あいあいが広げてくれたチャンス――)

あんちゃん(ここで、決めなきゃ――女じゃないっ!)

キッ

あんちゃん(――しゅかが、教えてくれた)

あんちゃん(右打席で、バッターボックスの外側ギリギリに立つ)

あんちゃん(そして、体を開いてオープンスタンス気味の体勢に)

あんちゃん(内角に飛び込んでくるボールを、しっかり見極める――!)

 

りきゃこ「あんちゃんも、しゅかと同じ、体を開いた構え――!」

すわわ「ボールをギリギリまで見て、内角を打ち返すつもりなんだ」

 

しゅか「頼むぜぇ、あんじゅ……」
344: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/02(日) 22:20:48.42 ID:ebE77W9K
えみつん(わかったよ。あんちゃん)

えみつん(それなら、こっちも……)

クイッ

 

ススッ…

 

ひなひな『おや――ここでμ's内野陣、やや前進』

ひなひな『通常の守備位置とバントシフトの中間あたりの位置まで、前に出ました』

ひなひな『これは打たれても、バックホームで刺そうという狙いでしょうか』

あさみん『流石ですね――μ's』

あさみん『これまでAqoursは内野安打1本だけで、外野まで飛んだ当たりは1本もありません』

あさみん『外野には飛ばさせない。スクイズもさせない』

あさみん『点差があろうが、1点もやらないという――自信と、決意の表れでしょうね』

あさみん『真っ向から、受けて立つつもりですよ――μ'sも』
345: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/02(日) 22:21:41.01 ID:ebE77W9K
うっちー(そう。1点だって――)

ザッ…

うっちー(やらせないっ!!)

シュビッ!

 

ズバッ!!

 

\ストライク!/

 

あんちゃん「……!!」

あんちゃん(内田さんも、新田さんも……真っ向勝負……!!)

 

ひなひな『クロスファイヤー、ズバッと決まった!!』

ひなひな『μ'sバッテリー、伊波に対して真っ向勝負です!!』

オオオオオッ!!
346: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/02(日) 22:22:51.87 ID:ebE77W9K
あんちゃん(気圧されないで。バットを短めに、しっかり持って――)

あんちゃん(ボールを、見る――!)

グッ

 

ひなひな『内田、第2球!』

 

シュッ!

 

ググッ…!

 

あんちゃん「!」

ピクッ

 

バシィ!

\ボール!/

 

ひなひな『2球目はスライダー! バットが動きかけましたが、よく止めた、伊波!』

あさみん『しっかり見えてますよ、あんちゃんは……!』
347: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/02(日) 22:23:31.78 ID:ebE77W9K
ザッ

シュッ!

 

バシッ!

\ボール!/

 

ひなひな『3球目、際どい! 直球は外れてボール!!』

ひなひな『慎重に球を選びます、伊波!』

 

あんちゃん「」フゥー

あんちゃん「」チラッ

 

しゅか「………」

 

あんちゃん(大丈夫、しゅか。私が、絶対返すから)

あんちゃん(絶対……!)

ギュッ
348: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/02(日) 22:24:12.72 ID:ebE77W9K
ふりりん「あんちゃん、頼むぅ……!」

きゃん「あんちゃん……!!」

あいにゃ「打ってぇ……!!」

 

あんちゃん(あのシフト、スクイズも当然警戒されてる)

あんちゃん(なんとしても、内野の頭を抜けるしかない)

あんちゃん(新田さん、内田さんは、強気に攻めてきてる)

あんちゃん(だったら私も、負けずに、内角の球を打ち返す……!)

 

ザッ…

 

ひなひな『ピッチャー、内田――』

ひなひな『4球目!!』

 

シュッ!!
349: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/02(日) 22:25:28.64 ID:ebE77W9K
あんちゃん(来た!!)

あんちゃん(ボール見て! 引きつけて――)

あんちゃん(そこ!!)

 

ガキィッ!!

 

うっちー「!!」

 

あさみん『!!』

ひなひな『打ったぁ!!』

 

えみつん「――サードぉ!!」

 

ひなひな『打球は緩く上がってサード方向!!』

ひなひな『前進守備のサードの頭上、越えるか? 越えるか!?』

 

くっすん「くっ!!」
350: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/02(日) 22:26:19.00 ID:ebE77W9K
りきゃにゃ「「越えろ!!」」

FKT「「「越えろ!!」」」

 

しゅか「越えろ!!」

 

あんちゃん(――越えろぉっ!!)

ダダダッ

 

くっすん「うああっ!!」

 

ポトッ!!

 

ひなひな『こっ、』

ひなひな『越えたぁぁぁぁっ!!!』

ワアアアアッ!!
351: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/02(日) 22:27:25.00 ID:ebE77W9K
りきゃにゃ「「やっ、」」

FKT「「「たああああああっ!!!」」」

 

ひなひな『サード前進守備の楠田の頭上を越えた!! ヒットです!!』

ひなひな『今、サードランナー斉藤、ホームイン!!』

 

しゅか「っしゃあああああっ!!」

 

ひなひな『伊波、タイムリーヒット!! Aqoursの執念!!』

ひなひな『ついに、μ'sから1点をもぎ取りました!!』

ワアアアアッ!!

 

【μ's 3―1 Aqours】
352: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/02(日) 22:29:07.95 ID:ebE77W9K
あいにゃ「うおぉーー!! あんちゃん!!」

きゃん「さいこおおおお!!」

 

あんちゃん「やった……!」

あんちゃん「やったぞおおーー!!」

 

ひなひな『サード楠田、必死でグラブを伸ばしましたが、あと少しというところで届きませんでした』

ひなひな『決していい当たりではありませんでしたが――』

あさみん『伊波選手は、バットを短く持ち、ボールを十分に引きつけて、しっかり肘を畳んで内角の直球を打ち返しました』

あさみん『それでも詰まらされ気味でしたし、相手の前進守備にも助けられましたが――』

あさみん『気持ちで、持っていった。そんなヒットに見えましたね』

ひなひな『ともあれ、1点返したAqours! ワンナウト一塁、ここからさらに反撃していきたいところ!』
353: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/02(日) 22:30:02.97 ID:ebE77W9K
えみつん「………」

えみつん「タイム、お願いします」

 

うっちー「………」

えみつん「……うっちー!」

うっちー「えみつん……みんなも」

くっすん「ごめん、うっちー! 私がもうちょっと腕長かったら」

うっちー「ううん、くっすんのせいじゃないよ」

うっちー「あの子たちも、なかなかやる……ってだけ」

えみつん「うっちー……」

えみつん「“まだ”、大丈夫?」

うっちー「………」 
354: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/02(日) 22:32:33.67 ID:ebE77W9K
うっちー「うん! 全然平気だよ!」ニコッ

ジョルノ「………」

そらまる「内田さん……」

みもりん「……うっちー」

みもりん「無理は、しないでね」

うっちー「うん! ありがとう、みもりん」

えみつん「……よし」

えみつん「1点は取られちゃったけど! この後は、しっかり抑えよう!」

 

シカコ「うっちー……」

 

りっぴー「まだまだ……大丈夫、だよね」

 

ぱいちゃん「………」

ぱいちゃん(うっちー、頑張ってる……)

ぱいちゃん(私は……)

バシッ…バシッ
355: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/02(日) 22:35:09.46 ID:ebE77W9K
ひなひな『さあ、初めてのタイムをとったμ's内野陣、元のポジションに戻っていきます』

ひなひな『なおも続くAqoursの攻撃! 続いてのバッターは――』

 

『4番、サード、小宮』

 

ワアアアアッ!

アリシャアアアッ!

 

ひなひな『ワンナウト一塁で4番の小宮を迎えます!!』

ひなひな『第1打席は三振でしたが、ここは4番らしく、伊波に続きたいところ!!』

 

きんぐ「さあいけ、ありさー!!」

りきゃこ「ありさー!! ……あ?」

 

シー…ン

 

ありしゃ「……あ、次、私か……」

ポケーッ
356: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/02(日) 22:35:55.84 ID:ebE77W9K
りきゃこ「ちょっと何のんびりしてんの!?」

きゃん「早くバッターボックス行かないと!」

ありしゃ「………」

ありしゃ「だって……」

グゥーッ

ありしゃ「食べるもの、なくて……お腹すいて、力が……」

りきゃこ「はあああっ!?」

あいにゃ「ありさ、元気出してー!!」

すわわ「………」

すわわ「……はぁ」
357: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/02(日) 22:38:16.83 ID:ebE77W9K
すわわ「……ありさ」

スッ

ありしゃ「!!」ピクッ!

ありしゃ「これ……!?」

すわわ「メットライフドーム名物、『ライオンズ焼き』」

すわわ「こんなこともあろうかと、1コ買っておいた」

 

きんぐ「……説明しよう! 『ライオンズ焼き』とは、メットライフドーム内で売っている、ライオンズのマスコット、『レオ』の顔の形をしたお菓子!」

きんぐ「小倉あんやクリームを、地元産の狭山茶を練りこんだ生地の中に包み込んで焼き上げたお菓子なのだ!」

ふりりん「……てゆうか、要するに今川焼だよね?」

 

ありしゃ「……ありがと」

モグモグ

すわわ「ん。おいし?」

ありしゃ「おいふぃい」

モグモグ 

あいにゃ(餌付けしてるみたいだ……)
358: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/02(日) 22:40:26.93 ID:ebE77W9K
あんちゃん(ありさちゃん、何やってるんだろ……?)

↑一塁ベース上

 

ひなひな『どうしたのでしょうか? 次打者の小宮、なかなか出てきませんが……』

ザワザワ

 

\バッターラップ!/

 

ありしゃ「……ん」

ゴックン

りきゃこ「ちょ、ちょっとありさ!」

しゅか「大丈夫なの!?」

ありしゃ「……大丈夫」

ザッ…

ありしゃ「……よしっ」

 

ひなひな『ようやくベンチから姿を現しました、小宮!!』

あさみん『どうやら、怪我などは無さそうですね』

ワアアアアッ

 

りきゃこ「大丈夫か……?」

あいにゃ「さあ……」

すわわ「………」
359: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/02(日) 22:42:49.09 ID:ebE77W9K
ひなひな『4番の小宮、今、右バッターボックスに入りました!!』

ひなひな『Aqoursの4番として、ここは伊波に続きたい!!』

 

うっちー「やっと出てきた……」

うっちー「……なんか、ちょっとボーッとした感じの子だけど」

 

ありしゃ「………」

 

えみつん(ありちゃん、か……)

えみつん(昔、舞台で共演した身からすると――)

えみつん(ポテンシャルは、とんでもない。油断は出来ないよ)
360: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/02(日) 22:43:55.05 ID:ebE77W9K
うっちー(わかってる。えみつん)

うっちー(最初から、全力で――!)

ザッ

 

ひなひな『小宮に対して、内田、第1球――!』

 

シュッ!!

 

ありしゃ「―――」

ヒュッ

 

えみつん「――!?」

 

カキィン!!
361: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/02(日) 22:45:03.09 ID:ebE77W9K
あさみん『!!』

ひなひな『うっ、』

 

あんちゃん(打った!? 大きい!?)

あんちゃん(いい当たり、内野の上――絶対外野、抜ける!!)

ダダッ!!

 

みもりん(させっ――)

グッ

みもりん(るかっ!!)

ダンッ!!

 

すわわ「!?」

あいにゃ「ジャンプして、」

 

バシッ!!
362: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/02(日) 22:47:28.94 ID:ebE77W9K
あんちゃん(嘘!?)

あんちゃん(あの当たりを真上にジャンプして、グラブに当てた!?)

あんちゃん(だけどボール、後ろに、落ち――)

 

みもりん「くっ!!」

 

ぱいちゃん「――やっと、」

ぱいちゃん「出番っ!!」

 

ズザザザッ!

パシッ!

 

\アウト!/

 

ひなひな『なぁっ!?』

ひなひな『レフトPile、滑り込んで、捕ったぁ!?』

ウオオオオッ!!

 

あんちゃん「嘘ぉ!?!?」

 

FKT「「「マジでぇぇぇぇっ!?!?」」」
363: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/02(日) 22:48:27.73 ID:ebE77W9K
ぱいちゃん「まだっ――」

ガバッ

ぱいちゃん「――これでぇっ!!」

シュバッ!!

 

あんちゃん「し、しまっ……!!」

キキッ

 

パシィッ!

\アウトォ!/

 

オオオオオッ

ワアアアアッ!!

 

ひなひな『アウトォ!! なんとダブルプレー!!』

ひなひな『飛び出していた伊波、戻れず!! Pile、一塁に矢のような送球でアウト!!』

ひなひな『とんでもないプレーが飛び出しました!!』

 

ぱいちゃん「――ま、」

バサッ…

ぱいちゃん「こんなもんかな」
364: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/02(日) 22:50:36.27 ID:ebE77W9K
ひなひな『一瞬でしたが、とんでもないファインプレーでした、μ's守備陣……!』

あさみん『ええ……思わず、言葉を失いました』

ひなひな『鋭いライナー性の打球を、ショート三森がジャンプして叩き落とし、滑り込んだレフトPileが捕球しアウト』

ひなひな『そのまま、体のバネを活かして跳ね起き、すぐさま一塁に送ってアウト、ダブルプレーでチェンジ』

あさみん『ただ、しかし……μ'sの三森選手、Pile選手の素晴らしいプレーは勿論ですが』

あさみん『その、前……』

ひなひな『え?』

あさみん『あの、小宮選手の打球は……』
365: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/02(日) 22:51:41.48 ID:ebE77W9K
きんぐ「ああ、惜しい~~……!!」

きゃん「なんで、あんな所にレフトが……」

りきゃこ「い、いや……それもそうだけど」

すわわ「それよりも……!」

 

あんちゃん「ありさちゃん、今……」

 

ありしゃ「あーもう、抜けたと思ったのになー。ごめん、みんな」

ありしゃ「……ん?」キョトン

 

あんちゃん「完璧に……とらえた……!?」
396: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:02:42.18 ID:O3uxgHpj
ザワザワ…

 

ひなひな『Aqoursの四番、小宮の鋭い打球! そしてそれを防いだμ's守備陣の超ファインプレーに、未だ球場はどよめきに包まれています!』

あさみん『μ'sの三森選手とPile選手のファインプレーに目を奪われがちですが――あの、小宮選手の打球』

ひなひな『確かに、あのプレーが無ければ間違いなく抜けていたという当たりでしたが――』

あさみん『初めてですよ』

あさみん『Aqoursは初めて、ピッチャー内田選手のボールを、完璧に打ち返した――!』

ひなひな『……!』

 

うっちー「………」
397: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:03:17.92 ID:O3uxgHpj
ありしゃ(うーん、やっぱりさっきのお菓子ひとつじゃ、まだ足りないかも……)

テクテク

あいにゃ「ありさー、惜しかったよー!!」

りきゃこ「でもすごいじゃん!」

ありしゃ「……へ? 何が?」

きんぐ「何が、って!」

りきゃこ「今、完璧に打ち返したじゃん! 相手の球!!」

ありしゃ「ああ、あれ……」

あんちゃん「ごめん、ありさちゃん! 私が飛び出してたせいで、ダブルプレーに……!」タタタ

あんちゃん「でも、すごいよ! なんで完璧に打てたの!?」

ありしゃ「なんで、って……言われても……うーん」
398: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:03:54.74 ID:O3uxgHpj
ありしゃ「ストレートに、狙いを定めて……それが来たから、思いっきり振っただけ」

ありしゃ「そんなに、すごいかな?」

ふりりん「いや、だって今まで、誰もまともに打ててなかったし……!」

ありしゃ「……それに。最初の打席で、見た時と比べて」

ありしゃ「なんか、そこまで速く感じなかった、っていうか……」

あいにゃ「ええ!?」

きゃん「いや、それはありさの運動神経がいいから、そう感じるだけじゃ……!」

すわわ「――いや。ちょっと待って」

あいにゃ「す、すわわ?」

すわわ「………」
399: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:05:11.30 ID:O3uxgHpj
すわわ「……これなんだけど」

スッ

きゃん「へ? 何これ?」

しゅか「なんか、訳のわからん数字やアルファベットがたくさん……」

すわわ「スコアブック、ってやつ。私、自分の打席以外でベンチにいる時、これに相手の投球メモしてたの」

きゃん「いつの間に……」

すわわ「……ここまで、内田さんの投じた球数は44球」

すわわ「初回こそ、7球で3人を仕留めたけど……回を追うごとに、少しづつ球数は増えてる」

すわわ「そして、心なしか……」

すわわ「最初の方の回に比べて……スライダーを投げる数が、減ってきてるような……」

しゅか「あー、えーっと……つまり、どうゆうこと?」
400: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:06:17.09 ID:O3uxgHpj
すわわ「……スライダーっていうのは、肘や肩、指に負担がかかりやすい変化球なんだ」

すわわ「だから、あまり無闇に多投は出来ない。特に、女子選手なら」

すわわ「……序盤から、フルスロットルで直球とスライダーを投げ込んできた内田さん」

すわわ「もしかして……球威が、少しずつ、落ちてきてるのかも……」

あんちゃん「あっ……!」

りきゃこ「そっか! ありさが直球を打ち返せたのも……!」

すわわ「うん。球威が落ちてきてるせいで、抜けた球が来ることもあるってこと」

すわわ「それに、腕にかかる負担で、スライダーも多投は出来なくなってくるはず」

あんちゃん「それなら、力の抜けた直球を逃さずに、打ち返していけば……!」

りきゃこ「勝機は、十分ある――ってことだね。ふふっ」

ありしゃ「えっ、なになに? 私、なんか役に立った?」ワクワク

すわわ「ありさは黙ってていいよ」

ありしゃ「(´・ω・`)」シュン
401: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:06:51.14 ID:O3uxgHpj
しゅか「よーし、光明が見えてきたぞ!」

あいにゃ「さっきは残念だったけど、ここから一気に逆転ですわよー!!」

きんぐ「よっしゃ、気合入れてくぜ!!」

あんちゃん「うん……! だけど……」

りきゃこ「……あんちゃん?」

あんちゃん(その前に……!)

チラッ
402: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:07:41.42 ID:O3uxgHpj
ぱいちゃん「Don't worry,don't worry! へこたれないでつまんない♪」

ぱいちゃん「Don't worry,don't worry! 迷わず Go go~♪」

みもりん「いえー。ナイス、ぱいちゃん」

ぱいちゃん「いえー、すーちゃん」

パシッ!

りっぴー「みもりんもぱいちゃんも、すごいすごい!」

そらまる「すず、すごいジャンプだったじゃん!」

みもりん「いやー、うっちーを助けようと思って、体が勝手に跳んでたというか……」

みもりん「でも、私よか、ぱいちゃんでしょー、すごいのは」

ぱいちゃん「私もおんなじ。なんとかして、ボールを捕ろうと思って、思い切って滑り込んだの」

りっぴー「それでほんとに捕れちゃうんだからすごいよー!」

ぱいちゃん「まあ、ぼちぼちってところかなー?」
403: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:08:38.93 ID:O3uxgHpj
ひなひな『……小宮選手の打棒の一方で、やはりμ'sの超ファインプレーは、流石というべきでしょうか』

あさみん『ええ……思わず、言葉を失いました』

あさみん『間違いなく外野まで飛ぼうかという当たりを、ショート三森選手がジャンプ一番、グラブを伸ばして打球を当てました。この瞬発力は、流石という他ありません』

あさみん『そして何よりも、レフトのPile選手――』

あさみん『打球がライナー性であることを見越して、打つと同時にダッシュ。三森選手がこぼしたボールを、滑り込んで捕球、アウト』

あさみん『一塁ランナー伊波選手が飛び出しているのを見逃さず、素早く起き上がって一塁に送球しアウト、ダブルプレー』

あさみん『元々、彼女はアグレッシブなダンスパフォーマンスが得意ではありますが、まさかこれ程とは――』
404: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:10:03.67 ID:O3uxgHpj
ひなひな『そこまで守備力のあるPile選手が、なぜレフトに?』

ひなひな『プロ野球とか見てると、レフトって外国人助っ人やベテランを置いてたりして、あんまり守備が大事ってイメージが無いですが……』

あさみん『アマチュア野球においては、レフトは意外と重要なポジションなんですよ』

あさみん『プロと比べ、アマチュア野球の選手は右打者が多い。そして打球も引っ張り気味になりがちなので、必然的に打球もレフト方向に飛びやすくなる』

あさみん『そのため、アマチュア野球では、レフトに守備力のある選手を置くことも多いんです』

あさみん『そう考えると、守備の優れたPile選手をレフトに、そしてフィジカル抜群の三森選手をショートに置いているのも、頷けます』

 

ジョルノ(まー、ぱいちゃんの凄さは、単にレフトの守備が上手いだけじゃないけどね)

ジョルノ(実は彼女は、投手以外、どんなポジションでも守ることが出来る。まるでメイクのように、変幻自在に――)

ジョルノ(ダイナミックな、守備のスペシャリスト――それが、歌手・Pileだよ)
405: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:10:59.67 ID:O3uxgHpj
うっちー「……みもりん、ぱいちゃん」

みもりん「うっちー……」

うっちー「ありがとね。助けられちゃった」

うっちー「だけど……1点取られちゃって、ごめん」

みもりん「何言ってんのさ! うっちー、大げさだなあ」

みもりん「1点ぐらい、また取り返せばいいし! それに仲間なんだから、助けるのは当然でしょ!」

ぱいちゃん「仲間……か。うん、そうだよね」

うっちー「ぱいちゃん、せっかくセットした髪、乱れちゃってるし、ユニフォームも泥だらけだよ?」

ぱいちゃん「ん? んーん、いいよ、このくらい」

シカコ(……え!? 人一倍、お洒落に気を遣ってるぱいちゃんが……)
406: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:11:57.90 ID:O3uxgHpj
ぱいちゃん「んなことよりさ。勝とーね」

くっすん「ぱいちゃん?」

ぱいちゃん「なんかさー。嬉しいんだよね、私。また9人で集まって、こうやって何か出来るのが」

うっちー「……!」

ぱいちゃん「私はもともと、ひとりでやってたからさ。こうして群れて何かするなんて、昔は考えもしなかったけれど」

ぱいちゃん「真姫ちゃんに出会えて……みんなと出会えて。私の人生は変わった」

ぱいちゃん「仲間っていいもんだなーって、思えたんだよね」

えみつん「ぱいちゃん……」

ぱいちゃん「ファイナルの後、しばらくまたひとりだったけれど。こうやって、野球って形でも、またみんなと一緒に何かやれるのが、嬉しいっていうか……」

ぱいちゃん「あー、なんか恥ずいこと言っちゃった! 忘れてー!」
407: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:12:59.21 ID:O3uxgHpj
ジョルノ「……ふふっ」

ジョルノ「もー、可愛いヤツだなー、ぱいちゃん」

シカコ「可愛いぞー!」

ぱいちゃん「あー、なんか馬鹿にしてるでしょ!」

りっぴー「してないってー!」

うっちー「………」クスッ

うっちー「そうだね。勝たなきゃね」

そらまる「当ったり前よ!」

くっすん「勝つぞー!!」

 

えみつん(……そうだよね。仲間だからこそ、頑張れる)

えみつん(勝たなきゃね――絶対!)
408: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:13:45.50 ID:O3uxgHpj
ひなひな『……さて、チェンジとなりましたが、Aqoursは1点返して3対1。試合はまだまだわかりません』

ひなひな『勢いに乗りたいところですが、Aqoursはまず、μ'sの攻撃を凌がなければなりません!』

 

あんちゃん(そうだ。反撃の光明は見えた。だけど――)

あんちゃん(次の回。μ'sはまた、上位に回ってくる)

あんちゃん(まずは、この攻撃を、凌がなきゃ――!)

 

ひなひな『さあ5回の表。追加点を奪いたいμ's、この回の攻撃は――』

 

『9番、サード、楠田』
409: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:15:17.85 ID:O3uxgHpj
【5回表】

 

ひなひな『5回の攻撃は、ラストバッターの楠田から始まります!』

ひなひな『ここはいい形で、上位打線に回していきたいところ!』

 

ワアアアアッ!

クッスウウウン!

 

くっすん「……よーし。いくぞー!」

くっすん(ぱいちゃん、いいこと言ってたしね)

くっすん(私だって、いいとこ見せなきゃ!)
410: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:16:09.56 ID:O3uxgHpj
ジョルノ「……あー、くっすん」

くっすん「え、なに? なんちゃん」

ジョルノ「くっすんは、あんまり深いこと考えない方がいいよ」

くっすん「……は!? なにそれ、あたしはどーせ打てないから適当にやれってこと!?」プンスカ

ジョルノ「いやいや、違う違う。あんまり気負わずにさ」

ジョルノ「来た球、ガツーンと思い切って打ってみ。ほら、ピコハンで叩くみたいに。得意でしょ?」

くっすん「……うーん。まあ、なんちゃんがそう言うなら……」

スタスタ

 

シカコ「ちょっと、よしのん、いいの?」

りっぴー「あんな適当なアドバイスで……」

ジョルノ「へへっ。まあ、見てなって」
411: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:16:56.36 ID:O3uxgHpj
ひなひな『さあ、楠田が右バッターボックスに入ります!』

ワアアアアッ!

 

あんちゃん(裏の攻撃につなげるためにも、ここはしっかり0点に抑えなきゃ……!)

 

りきゃこ(OK、あんちゃん。ここも、前の回と同じように、抑えよう)

 

あさみん『どうも前の回あたりから、伊波投手は、打者のタイミングを外しているように思いますね』

ひなひな『タイミング……というと?』

あさみん『アンダースローの利点のひとつは、球持ちが良いことです』

あさみん『伊波選手は、それを利用して、ボールをリリースするタイミングを少しずつズラしながら投げているように思います』

あさみん『そうすると、打者はバッティングのタイミングがさらに取りづらくなります。厄介ですよ』
412: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:17:47.99 ID:O3uxgHpj
くっすん(確かえみつん達は、このピッチャーの子は芯を外す球を投げるとか言ってた)

くっすん(あと、リリースのタイミングをズラしてるとか、なんとかかんとか……)

くっすん(えーと……どうゆうこと? どんな球を狙えばいいの?)

くっすん「……はっ!」

くっすん(駄目だ駄目だ。なんちゃんも言ってたし、ごちゃごちゃ考えないようにしないと)

くっすん(“無”や! 心を“無”にするんや! あ、なんか希っぽい)

 

ひなひな『伊波、第1球!』

 

シュピッ!

 

バスッ!

\ストライク!/

 

くっすん「………」

くっすん(心を“無”に、って……どうすればいいの……?)タラッ

 

シカコ「……ほんとに大丈夫?」

ジョルノ「あー……くっすん、余計なこと考えてるな」
413: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:18:34.01 ID:O3uxgHpj
ジョルノ「おーい、くっすーん!」

ジョルノ「……大丈夫っ!」

 

くっすん「! なんちゃん……」

くっすん(そうだ。なんちゃんは、てきとーそうに見えるけど――)

くっすん(いつだって、意味のあることを言ってきた。私に、たくさんのことを教えてくれた)

くっすん(じゃあ、信じるよ。ごちゃごちゃ考えず。来た球を――)

 

ひなひな『伊波、楠田に対して――』

ひなひな『第2球っ!』

 

シュッ!

 

くっすん(――打つ!)

 

カキンッ!
414: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:19:53.95 ID:O3uxgHpj
あんちゃん「!?」

 

りきゃこ(え!?)

 

ひなひな『楠田、伊波のボールを弾き返した!』

ひなひな『三遊間、抜ける! ヒットです!!』

ワアアアアッ!!

 

くっすん「……あれ?」

タタタッ

くっすん「なんか、打てちゃった」

くっすん(もしかして、私、天才……?)

 

ジョルノ「ふふ、やっぱりねー。くっすん、バカだから」

ぱいちゃん「……バカ?」

ジョルノ「あ、いや、勿論いい意味でね!」

シカコ(ほんとか……?)
415: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:20:56.21 ID:O3uxgHpj
えみつん「あー、なるほど」

みもりん「くっすんは、“そのタイプ”か」

ジョルノ「そう。いるんだよねー、何も考えなくても、来た球をそのまま反射神経でぶっ叩けるタイプが」

りっぴー「くっすんは、正にそのタイプ……!」

ジョルノ「タイミングをズラすとか、そんなの関係ない。来た球に反応して打ち返すだけだからね」

シカコ「だから、くっすんに、何も考えずに打てって……」

ジョルノ「ま、今のピッチャーのあの子の球は、くっすんにとっては打ちごろだったってことだよ」

ジョルノ「……まあ、ムラっ気があり過ぎて、確実性は無いけど」

うっちー「流石、意外性ナンバーワン……」

 

くっすん「わーい、なんか打てちゃったー! あたしって天才!?」
416: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:21:32.76 ID:O3uxgHpj
ひなひな『伊波、あっさりヒットを打たれ、先頭打者の出塁を許しました!』

あさみん『これは痛いですね……』

 

りきゃこ(リリースのタイミングはズラしたのに……)

りきゃこ(なんで、あんなにあっさり打ち返されたの……!?)

 

あんちゃん(マズい……上位打線に回す前に、ここは抑えなきゃいけなかったのに……!)

 

シカコ「……おーし。くっすんが出たし、続くとしますか」

 

『1番、ライト、久保』
417: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:33:48.28 ID:O3uxgHpj
ひなひな『さあ打順は1番に戻って久保!』

ひなひな『前の打席こそ凡退していますが、第1打席では先制点のきっかけとなるヒットを放っています!』

あさみん『ここは送ってくるか、それとも打ってくるか……』

 

りきゃこ(大丈夫、あんちゃん! さっきのはたまたま! ……たぶん)

りきゃこ(この人だって、さっきは打ち取れてるし。タイミング外しと、高速シンカーがあれば……!)

 

あんちゃん(うん。りこちゃん……!)

 

シカコ(タイミング外し、か……)

シカコ(その“弱点”も……把握済みだよ)
418: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:34:40.99 ID:O3uxgHpj
バスッ!

\ストライク!/

 

パスッ!

\ボール!/

 

キンッ!

\ファール!/

 

カキッ!

\ファール!/ 

 

ひなひな『くさい球はカットしつつ、粘ります、久保!』

あさみん『流石1番打者、スタイルも良くバランスのいい選手だけあって、バットコントロールが上手いですね……!』

 

りきゃこ(もう、しつこい……!)
419: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:35:29.96 ID:O3uxgHpj
シカコ「……ふー」

シカコ(ぱいちゃんの台詞で、思い出した。私も、昔は、ひとりでいいって思ってた。大体、友達なんていなかったし)

シカコ(だけど……そらに、よしのん。りっぴー。μ'sのみんな)

シカコ(みんなでバカやってるのが、楽しいなんて……)

シカコ(ひとりが、寂しいなんて。思うようになったのは、みんなのせいなんだからな)

シカコ(だから……!)

グッ
420: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:36:10.47 ID:O3uxgHpj
りきゃこ(……だけど、食らいつくのでいっぱいいっぱいって感じだし。タイミングは合ってない)

りきゃこ(また、リリースのタイミングをズラして、凡打に仕留める……!)

 

あんちゃん(おっけー、りこちゃん……!)

ザッ…

 

ひなひな『ピッチャー伊波、久保に対して、第5球!』

 

シュッ

 

あんちゃん(あっ……!?)

 

シカコ(――来た!!)

グッ

シカコ「らぁっ!!」

 

キンッ!!
421: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:37:17.67 ID:O3uxgHpj
ひなひな『打った!! 久保の打球はセンター前!!』

ひなひな『鮮やかに打ち返しました!! μ's、9番・1番と連続ヒット!! ノーアウト一・二塁!!』

ワアアアアッ!!

 

シカコ「っしゃっ!」

 

あんちゃん(……しまった……)

あんちゃん(今の球……リリースをズラそうとして、滑っちゃった……!)

 

うっちー「……そうなんだよねー。リリースポイントを故意にズラすなんて、実際はそう簡単に出来ることじゃない」

えみつん「それが出来てたあんちゃんは、十分スゴいんだけど……」

みもりん「プロじゃあるまいし、そう毎回上手く出来る訳ないよね」

りっぴー「待ってれば、失投だって十分あるってことか……」
422: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:38:22.89 ID:O3uxgHpj
『2番、セカンド、徳井』

 

そらまる「この場面で、私の役目って言ったら、勿論……!」

 

コキンッ!

 

ひなひな『バントの名手、徳井! ここはきっちり送ってきました!!』

ひなひな『ワンナウト二塁、三塁!! 先程とは一転、Aqours、大ピンチ!!』

 

あんちゃん「……!!」

 

ひなひな『さあ大変なことになって参りました!!』

あさみん『しかも、この後の打順は――』
423: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/09(日) 23:40:15.46 ID:O3uxgHpj
みもりん「よーし! 出番だね!」

えみつん「うん! ここで決めなきゃ」

うっちー「私も、そろそろヒット打ちたいなあ」

 

ひなひな『3番、三森!! 4番、新田!! そして5番、内田!!』

ひなひな『μ'sの誇るクリンナップ!! 2年生トリオの3人を迎えます!!』

ウオオオオッ!!

ワアアアアッ!!

 

きんぐ「よりによって……」

 

しゅか「ここで、かよ……」

 

あんちゃん「………っ」

ゴクッ

あんちゃん(正念場、か……!)
446: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/15(土) 22:47:57.67 ID:yk6cRtaZ
『3番、ショート、三森』

ワアアアアッ!!

ミモリイイインッ!!

 

ひなひな『ワンナウト二塁、三塁と、追加点の絶好のチャンスを迎えたμ's!!』

ひなひな『まず、大歓声と共に打席に入るのは、3番の三森!! 第1打席では先制のタイムリーツーベースを放っています!!』

 

みもりん「今度は、バントなんてやんないよ」

みもりん「がつーんと一発、打っちゃうからね!」

 

ひなひな『一方のAqoursにとっては勿論大ピンチ!! この場面で、3、4、5番と、μ'sの強力クリンナップを迎えなければなりません!!』

あさみん『1点を奪って、いよいよこれから反撃という所ですからね。ここを抑えなければ、また流れがμ'sに傾いてしまいますよ』

 

りきゃこ「………」

りきゃこ「すみません、タイム、お願いします」
447: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/15(土) 22:49:06.82 ID:yk6cRtaZ
りきゃこ「あんちゃん!」

あんちゃん「りこちゃん……みんなも」

あんちゃん「ご、ごめん……抑えなきゃ、ってわかってたつもりなんだけど」

あんちゃん「ちょっと、簡単に入りすぎちゃったみたい……」

りきゃこ「あんちゃんのせいじゃないよ。私が、もっと考えてリードしてれば……」

しゅか「……あー、もう! おいバッテリー、暗いぞー!!」

あんちゃん「へ?」

ふりりん「そうだよ! ピンチの時こそ、明るくいかなきゃ!」

きんぐ「むしろ、さ! チャンスじゃん!」

りきゃこ「チャンス?」

きんぐ「三森さんにも新田さんにも、前までの打席はいいようにやられちゃったけど」

きんぐ「ここで、挽回しなきゃ! リベンジのチャンスだよ!」

あんちゃん「……!」
449: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/15(土) 22:49:54.55 ID:yk6cRtaZ
ありしゃ「……あんちゃん、りかこ」

ありしゃ「ここは、借りを返す場面だよ」

あんちゃん「ありさちゃん……!」

りきゃこ「……そうか。そうだよね」

りきゃこ「私も、やられっぱなしなんてイヤだし」

りきゃこ「いくよ、あんちゃん。ビシっと抑えよ!」

あんちゃん「……よーし」

あんちゃん「わかった! 絶対抑える! 逃げてたまるもんか!!」

しゅか「よーし、そうこなくっちゃ!」

ふりりん「気持ちは強く、だね!」

きんぐ「そうそう、ぶりっこモードサブマリンでも、気持ちは強気で!」

あんちゃん「だからぶりっこってゆーな!///」

りきゃこ「よし! みんな、いこっ!!」

\オオー!/
450: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/15(土) 22:50:40.30 ID:yk6cRtaZ
あいにゃ(内野のみんな、気合入れてる……)

あいにゃ(よーし、私だって、さっきは新田さんの当たりをグラブに当てたんだ……! 次は捕っちゃる……!)

 

すわわ(だけど……)

すわわ(気持ちだけで、乗り切れるほど……μ'sのクリンナップは、甘くない)

 

きゃん「………」

きゃん(みんな、頑張ってる……)

きゃん(私、頑張れてるのかな……)

ギュッ…

きゃん(さっきの回の、Pileさん……すごかったな。私と同じポジションで……)

きゃん(私に、おんなじこと……できる……?)

きゃん(私……私は……)
451: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/15(土) 22:55:25.07 ID:yk6cRtaZ
ひなひな『さあ、Aqoursの内野陣、元の位置に戻りまして、試合再開です!!』

ひなひな『打席には3番の三森!! 第1打席では鮮やかなツーベース、第2打席では技ありのバントと、ここまで持ち味をいかんなく発揮している好打者!!』

ひなひな『ランナーを2人置いたこの第3打席では、どのようなバッティングを披露してくれるのでしょうか!?』

ワアアアアッ!

 

みもりん「……小細工は無しだよ」

みもりん「いざ、勝負――!」

 

ひなひな『サイン交換終わって、伊波、第1球――』

ひなひな『投げた!』

 

シュッ!

 

三森「!」

ピクッ

 

バシッ!

\ストライク!/
452: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/15(土) 22:56:54.37 ID:yk6cRtaZ
ひなひな『第1球は、アウトコース低めギリギリ、決まってストライク!』

あさみん『バッテリー、冷静ですね。きちんとコーナーに決めてきました』

オオオオッ

 

みもりん(……うん、いいコース)

みもりん(第1打席の時みたいに、力任せにいくんじゃなく、コーナーを丁寧に突くピッチングに変わってる)

みもりん(だけど……)

 

ひなひな『伊波、第2球!!』

 

シュッ!

 

みもりん(また、外――!)

グッ

 

キンッ!
453: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/15(土) 23:01:00.99 ID:yk6cRtaZ
あんちゃん「!」

 

\ファール!/

 

ひなひな『ファール! 2球目もアウトコース低めでしたが、バットに当てました、三森!!』

あさみん『しっかり足を踏み込んで、アウトコースの球に対応してきましたね』

あさみん『やはり、三森選手のバットコントロールはμ'sの中でも随一……!』

 

みもりん(打ち返せると思ったけど……今のは、沈む球……高速シンカーか)

みもりん(だけど、ここのコースじゃ、私は打ち取れないよ)

 

りきゃこ(アウトコース低めの、凡打になるコースなのに……! 足を踏み込んで、打ってきた)

りきゃこ(高速シンカーで芯を外してなかったら、ヒットにされてた……!)

 

ジョルノ「……みもに、同じコースを2球続けては、通じないよ」

ぱいちゃん「すーちゃんの反射神経と運動神経も、スゴいからねー」
454: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/15(土) 23:03:48.01 ID:yk6cRtaZ
ひなひな『3球目!!』

 

シュッ!

 

バシッ!

\ボール!/

 

みもりん「………」

 

ひなひな『今度はインコース! 見送ってボール!』

ひなひな『外から一転、胸元への厳しいボールでしたが、三森、微動だにせず!』

オオオオオッ

 

りきゃこ(全然、釣られない。選球眼もいい……)

りきゃこ(やっぱり、この人……手強い……!)
455: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/15(土) 23:05:53.89 ID:yk6cRtaZ
あんちゃん(……りこちゃん)

あんちゃん(だけど、三森さんでも、さっきの高速シンカーは、芯を外してた)

あんちゃん(だったらもう一度……!)

 

りきゃこ(……そうだね、あんちゃん)

りきゃこ(もう一度、高速シンカーで、打ち取る……!)

 

ひなひな『サイン交換終わり――』

ひなひな『第4球!』

 

シュッ!

 

みもりん(そう――思うよね。高速シンカーなら、打ち取れるって)

みもりん(だけど――!)

 

キィン!!

 

あんちゃん「!!」
456: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/15(土) 23:06:59.98 ID:yk6cRtaZ
ガシャンッ!!

 

ひなひな『――ファール!! 打球は三塁側、ファールグラウンドのフェンス直撃!!』

ひなひな『ヒヤッとする、鋭い打球でした!!』

オオオオオッ!

あさみん『しかし――おそらく今のは、伊波投手特有の、沈むボール』

あさみん『それを、芯に当てた――!』

 

みもりん「あー、惜しい!」

みもりん「でも……コツは掴めた!」

ニッ

 

りきゃこ「……!!」

りきゃこ(当てた……新田さんみたく、パワーで強引に打ち返したんじゃなく)

りきゃこ(しっかり、芯に……!)
457: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/15(土) 23:09:51.93 ID:yk6cRtaZ
ジョルノ「まあ、単純な話でね。ボールが沈むなら、その沈んだ軌道に、バットの軌道を合わせてやればいい」

ジョルノ「もっとも、言うは易し、行うは難し」

うっちー「ストレートの軌道に慣れてる普通の打者は、とっさにボール半個分ずらしたスイングなんて、簡単に対応できないけど」

そらまる「それがきっちり出来ちゃうのが、すずの凄いとこだね」

りっぴー「相変わらず、すごい動体視力と反射神経」

ぱいちゃん「うーん、すーちゃんステキー♥」

 

えみつん(そう。すず程のセンスがあれば、タイミングを外そうが、変化球で攻めようが、打席の中で修正できる)

えみつん(どうするの? あんちゃん……)

 

りきゃこ(だけど……打ち取れるとしたら、高速シンカーしか無い……)

りきゃこ(ここは、もう一度、厳しいコースに高速シンカーを……!)

スッ

 

あんちゃん「………」

フルフル

 

りきゃこ(え? あんちゃん……?)

 

ひなひな『おっと? 珍しく、伊波選手が捕手の逢田選手のサインに、首を振っています!』

ひなひな『打ち返されて、自信が無いのでしょうか……?』

ザワザワ
458: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/15(土) 23:11:53.43 ID:yk6cRtaZ
あんちゃん(違うよ……りこちゃん)

あんちゃん(その球は、決め球だけど……三森さんは、それを狙ってる)

あんちゃん(だったら……!)

 

りきゃこ(……!)

りきゃこ(わかった、あんちゃん)

りきゃこ(来て! 思いっきり!)

 

ザッ…

 

ひなひな『さあ、5球目!!』

 

シュパッ!

 

みもりん(来た! しっかり引き付けて、)

みもりん(ここで、沈――)

みもりん(―――)

みもりん(――まないっ!?)

みもりん(ストレート……!!)

 

ギンッ!!
459: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/15(土) 23:13:35.37 ID:yk6cRtaZ
ひなひな『三森、打った!! 大きい!!』

ひなひな『しかし、これは上がりすぎ! 三塁側、ファールグラウンドに高く上がっています!』

 

きゃん「私がっ……!」

タタタタッ!

 

ひなひな『レフト小林、追いかけますが、スタンドに入りそう――』

 

みもりん「くっ……!」

みもりん(だけど、スタンドに入って、ファール……)

 

りきゃこ「……!?」

バッ

りきゃこ「――あいきゃん!! 前見て!!」
460: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/15(土) 23:16:20.19 ID:yk6cRtaZ
あんちゃん「――!!」

 

ありしゃ「あいきゃん!?」

 

ひなひな『レフト小林、懸命に追いかける!! しかしその先にはファールグラウンドのフェンスが――』

あさみん『前、見えてないですよ! 危ない!!』

ひなひな『一方、高々と上がった打球はフェンス際! グラウンド内に落ちるか、落ちるか!?』

 

みもりん「……!!」

 

ぱいちゃん(あの子……)

 

きゃん(捕れる……!?)

きゃん(いや、捕る! 追いつく!!)

タタタタッ!
461: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/15(土) 23:20:42.04 ID:yk6cRtaZ
きゃん(確か、Pileさんって――最初は、歌手としてデビューしたって、聞いたことある)

きゃん(だけど、デビュー当時は、鳴かず飛ばずで。偶然受けたμ'sのオーディションに合格して、真姫ちゃんに出会って――)

きゃん(それが、転機になって。μ'sの一員として、大活躍して。今また新たに、歌手として歩み始めてる)

 

きゃん(なんだか、私に――似てるかも、って思ってた)

 

きゃん(私も、歌手として上手くいかない中で――ヨハネに出会えて、人生が変わった)

きゃん(これから、Pileさんみたいになれるかどうかは、わからない)

きゃん(だけど――)

キッ!

 

きゃん「いつか絶対――なってみせるから!」

きゃん「今は、力を貸して――」

きゃん「――ヨハネ!!」

 

ダダダダッ

バッ!!

 

あんちゃん「あいきゃん!!」

 

ガシャンッ!!

ガラガラガシャン!!
462: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/15(土) 23:22:38.10 ID:yk6cRtaZ
ワアアアアッ!!

ひなひな『こっ……小林、ボールを追って、カメラマン席に突っ込んだ!!』

ひなひな『同時に、打球もカメラマン席の中に落ちたようですが……!!』

あさみん『だ、大丈夫!?』

ザワザワ…

 

しゅか「あいきゃ~ん!!」

タタタタッ!

ありしゃ「ちょっと、大丈夫!?」

あんちゃん「あいきゃん!!」

 

ひなひな『斉藤、小宮、そして伊波が、たまらず駆け寄りましたが……!!』

あさみん『あいきゃんは……!?』

 

ゴソゴソ…
463: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/15(土) 23:24:44.89 ID:yk6cRtaZ
きゃん「うぅ……あ~、いたたたた!」

ガサゴソ

きゃん「あ、カメラの皆さん、すみません、すみません……」

しゅか「あいきゃん!」

ありしゃ「平気!? 何やってるのよ!!」

きゃん「ご、ごめぇん……なんか、無我夢中で……」

きゃん「……だけど」

スッ

 

きゃん「……捕ったよ。捕れたよ、私も」

きゃん「……Pileさんみたいに、カッコよくはないけれど」

きゃん「えへ……へ……」

 

ひなひな『なっ……なんと!!』

ひなひな『捕っている!! 捕っています!!』

ひなひな『Aqoursの小林、アウトを、文字通り掴みとりました!!』

ワアアアアッ!!
464: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/15(土) 23:25:14.31 ID:yk6cRtaZ
ふりりん「きゃん、マジか! マジか!!」

きんぐ「すごっ……やるじゃん」

 

すわわ「おお……」

あいにゃ「すげええええ!! あいきゃん!!」

バシバシ!

 

りきゃこ「あいきゃん……!!」
465: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/15(土) 23:27:43.62 ID:yk6cRtaZ
ひなひな『別角度からの映像を見てみましょう!』

あさみん『カメラマン席に、飛び込んだ瞬間――グラブの中に、ボールが収まってますね』

あさみん『転倒してからも、グラブからボールはこぼしていません』

あさみん『正真正銘のアウトです。超ファインプレーですよ!』

オオオオオッ!!

パチパチパチ!

 

みもりん「………あらら」

フッ

みもりん「……参ったなぁ」

 

ジョルノ「まじぽん……!?」

りっぴー「あれ、捕る? 普通……怪我するかもしれないのに……」

パチパチパチッ!

りっぴー「ぱいちゃん?」

ぱいちゃん「……根性あるじゃん」

ぱいちゃん「気に入ったよ!」

パチパチ
466: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/15(土) 23:29:48.56 ID:yk6cRtaZ
あんちゃん「あいきゃん……」

きゃん「えへっ。みんな、頑張ってるからさー」

きゃん「私も、役に立たなきゃって思って。役、立ったかな?」

あんちゃん「バカ、当たり前だよ……! ありがとう……あいきゃん」

ありしゃ「それより、怪我無い!?」

しゅか「とりあえず、一旦ベンチ行こ!」

 

ひなひな『Aqours、小林選手の救護のため、一旦ベンチに引くようです』

あさみん『怪我が無ければいいのですが……』

 

きゃん「あつつつ……」

プシュー

しゅか「擦りむいて、あざが出来てるけど、とりあえず大きな怪我は無さそうだね」

りきゃこ「ほんっとにもう、無茶するんだから!」

きゃん「えへへ、面目ない……」

きんぐ「あんなに派手に突っ込んだのに、怪我が無いって割と奇跡的じゃない?」

きゃん「なんかさ、私、ついてないこと多いけど……悪運も、強いみたい」

きゃん「……ヨハネが、守ってくれたのかな?」

ふりりん「……かもねっ。きっとそうだよ!」

きゃん「ふふ……」

きゃん(ありがとう……ヨハネ)
467: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/15(土) 23:32:32.50 ID:yk6cRtaZ
ひなひな『Aqours守備陣、元の位置に戻っていきます! どうやら小林、大丈夫のようです!』

ワアアアアッ

パチパチパチッ!

ひなひな『さあ、レフト小林のファインプレーで、思わぬ形で打者・三森はアウトとなりました』

ひなひな『ツーアウト、二塁三塁と変わります!』

ひなひな『そして、ここで迎えるバッターは――』

 

みもりん「いや、まさかね。あれを捕られるとは、思ってなかったよ」

えみつん「すず、どんまい」

みもりん「だけど――最後の、球」

みもりん「てっきり、高速シンカーで来るかと思ってたら、来たのは渾身のストレートだった」

みもりん「沈む球に照準を合わせてバットを振ったから、結果、ボールは沈まず、バットはボールの下を叩いて、打ち上げちゃった――」

みもりん「あそこで、渾身のストレートを投げ込んでくる度胸があるとはね」

えみつん「………」

みもりん「だけど……」

ポン

みもりん「えみつんなら……打ち崩せるよ」

えみつん「うん。任せて……!」

 

『4番、キャッチャー、新田』
468: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/09/15(土) 23:34:12.73 ID:yk6cRtaZ
ワアアアアッ!!

 

ひなひな『さあ、3番の三森はなんとか抑えたものの、μ'sの攻勢はまだまだ続きます!!』

ひなひな『続いては、μ's最強の強打者、四番のキャプテン、新田!!』

ひなひな『ツーアウトながら、依然としてAqoursのピンチであることには、変わりはありません!!』

あさみん『ここで打たれれば――おそらく、試合の流れは、決まってしまいます』

あさみん『逆に、ここを抑えれば――!』

 

あんちゃん(抑えたい……絶対に……!)

あんちゃん(負けたくない……!!)

 

りきゃこ(なんとしても……この人は、抑えないといけない)

りきゃこ(どうする? どうする……!?)

 

えみつん(――すずの分も。そして、ここまで頑張ってきた、うっちーのためにも――)

ザッ…!

えみつん(――打つ。絶対に……!!)
529: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/05(金) 00:06:26.78 ID:d1GJW2ge
ひなひな『さあ歓声と共に、四番の新田がバッターボックスに入ります!!』

 

えみつん「………」

ワアアアアッ!!

エミツゥゥゥン!!

 

ひなひな『新田VS伊波、三度目の対決!!』

ひなひな『第1打席は特大のホームラン、第2打席はAqours守備陣の連携で得点こそなりませんでしたが、記録上はヒットを放っている新田!!』

あさみん『センター鈴木選手のファインプレーが無ければ、第2打席も長打間違いなしという当たりでしたから』

あさみん『ここまでの対決は、新田選手に軍配が上がっていますね』

あさみん『ツーアウト二塁三塁のこの場面での対決で、伊波投手、雪辱なるか――』

 

あんちゃん「………」

アンチャアアアアン!!

ガンバレエエエエッ!!
530: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/05(金) 00:07:26.08 ID:d1GJW2ge
あんちゃん(絶対、抑えたい! だけど……)

あんちゃん(えみつんさんには、高速シンカーも、パワーで打ち返されてる)

あんちゃん(もちろん、ストレートだって通用しない……)

あんちゃん(何を……何を、投げたらいい……?)

 

りきゃこ(……だけど、活路があるとしたら、あんちゃんの決め球の高速シンカーで、芯を外すしかない)

りきゃこ(さらには、リリースポイントをズラして、タイミングも狂わせる。さっきもそれで、打たれたとはいえ、ホームランは防いだ)

りきゃこ(失投も怖いけど、もうそれしかない。だったら……!)

スッ

 

ひなひな『バッテリー、サインが決まったようです!』

あさみん『果たして、どう攻めるのか……』

 

あいきゃん「あんちゃん……!」

 

しゅか「頼むよ、あんじゅ……!」
531: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/05(金) 00:08:21.54 ID:d1GJW2ge
あんちゃん(……そうだよね。これしかない)

あんちゃん(これで……!!)

ザッ…

 

あんちゃん(ギリギリまで、ボールを持って――)

あんちゃん(今!!)

 

シュッ!

 

ひなひな『伊波、第1球!!』

 

りきゃこ(アウトコース低め、ギリギリの位置に、芯を外す高速シンカー……!!)

りきゃこ(コースもタイミングもばっちり! 絶対に、ヒットには出来ないコース!)

りきゃこ(これなら――)

 

えみつん「――!」

グッ!

ブンッ

 

カキン!!
532: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/05(金) 00:09:27.68 ID:d1GJW2ge
りきゃこ「!?」

 

あんちゃん「!!」

 

ひなひな『打ったぁぁーー!! 大きい!! 打球はライトスタンド方向!!』

ひなひな『ああー……っと、しかし、切れます! 観客席に飛び込む、特大のファール!!』

オオオオオッ

ひなひな『あわやホームランという当たり! 恐ろしい……!!』

あさみん『非常に厳しいコース……でしたが、三森選手と同様、しっかり足を踏み込んで、弾き返しました』

あさみん『新田選手……単に、パワーだけに頼っている訳じゃない』

あさみん『並外れたパワーに加えて、バッティングの技術も高いとなると……!』

 

りきゃこ(逃げ場が――)

タラッ…

 

あんちゃん(ない……!!)

ツツーッ…
533: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/05(金) 00:11:04.34 ID:d1GJW2ge
ひなひな『おそらく、冷や汗を流しているであろう伊波・逢田のバッテリー』

ひなひな『果たして、この最強打者に対し、どう挑むのでしょうか!?』

 

りきゃこ(最高の一球だった――はず)

りきゃこ(あのコース、あの球で、簡単に打ち返されるなんて……)

 

あんちゃん(あとちょっとずれてたら……ホームランだった)

あんちゃん(ヤバい……ヤバい……!!)

ドクンドクン

 

そらまる「いいぞー、えみつーん!!」

くっすん「次こそホームランだー!!」

うっちー「………」

グッ…

うっちー(えみつん……)

 

えみつん「……ふぅーっ」
534: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/05(金) 00:12:10.19 ID:d1GJW2ge
ありしゃ「落ち着いて、あんちゃん! 打たれた訳じゃない!」

しゅか「ここで逃げたってしょうがないよ! 向かってこ!」

 

あんちゃん(そ……そうだ。打たれた訳じゃないんだ)

あんちゃん(前の2打席は打たれたけど。今度は、抑える。抑えなきゃ……!)

ドクンドクン

 

りきゃこ(そ……そうだし。諦める訳にはいかないんだし)

りきゃこ(とにかく、打ちにくいコースに――!)

スッ

 

ひなひな『サイン決まって、第2球!!』

 

りきゃこ(今度は、内角高め(インハイ)ギリギリ。ここで……!!)
535: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/05(金) 00:12:50.71 ID:d1GJW2ge
ザッ…

 

あんちゃん(大丈夫。ここまでは打たれちゃったけど)

ドクンドクン

あんちゃん(逃げないって決めたんだもの。憧れのえみつんさんにだって、勝つって決めたんだもの……!)

ドクンドクン…!

あんちゃん(勝つって――)

 

シュパッ!

 

ザッ

ブンッ

 

カキィン!!
536: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/05(金) 00:13:30.72 ID:d1GJW2ge
あんちゃん「!!」

 

ひなひな『さあレフトに上がったぁぁーー!! 飛距離は十分!!』

オオオオオッ!!

 

りきゃこ「――っ!!」

 

ひなひな『がっ……これも……切れます! ファール、ファール!!』

ひなひな『ポール際、切れました! しかしこれも、あと僅かズレていればホームランという当たり!!』

オオオオオッ

 

みもりん「ああー、惜しい!!」

りっぴー「惜しいぃー!!」

 

あんちゃん「……!!」

ドクン…ドクン…!
537: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/05(金) 00:13:59.74 ID:d1GJW2ge
あいにゃ「な……な……!」ボーゼン

あいにゃ(ケタが……違いすぎる……!)

 

すわわ(並外れたパワーに加えて、三森さん張りのバッティング技術まで……)

すわわ(この人には、無いの……!? 弱点……!)

 

あいきゃん「あんちゃん……」

ギュッ
538: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/05(金) 00:14:44.18 ID:d1GJW2ge
ドクンドクン

あんちゃん(どこに……どこに、投げたらいいの……!?)

あんちゃん(どこに投げても……打たれそう……)

 

えみつん「………」

ズズズ…

 

あんちゃん(あんなに、優しかったえみつんさんが……)

あんちゃん(今は……すごく、大きく見える。押し潰されそう……!)

ブルッ…

あんちゃん(打たれたら駄目。打たれたら)

あんちゃん(わかってるけど……だけど……!)

 

ザッ…

 

りきゃこ(!? あんちゃん、まだサイン決まってな……!)
539: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/05(金) 00:15:32.85 ID:d1GJW2ge
シュッ!

 

えみつん「!」

 

りきゃこ「うわ!!」

バシッ!

 

ひなひな『うおっと!! 外にとんでもなく外れました、ボール!!』

ひなひな『あわや暴投かという球でしたが、なんとか捕りました、逢田!!』

ひなひな『もはや集中力も欠いているのでしょうか、マウンド上の伊波!!』

ザワザワ…

 

あんちゃん「……!」

ハァハァ

 

しゅか「あんじゅ、しっかりー!!」

しゅか「あんじゅー!! あんじゅ……」

 

りきゃこ「あんちゃん……」
540: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/05(金) 00:19:37.61 ID:d1GJW2ge
りきゃこ(あんちゃん……完全に、テンパっちゃってる)

りきゃこ(だけど……新田さんには、どんな球も、通用しない……!!)

りきゃこ(どうするの……!? どうしたら……!!)

 

えみつん「………」

えみつん「……ね、りかこちゃん」ボソッ

りきゃこ「……え?」

えみつん「……私も、キャッチャーだからさ。わかるんだ」

えみつん「あんちゃんは、きっと今、すごくつらいんだと思う」

えみつん「だけど――ピッチャーは、ひとりぼっちで戦ってる訳じゃない」

りきゃこ(ひとりじゃない……)

えみつん「キャッチャーの貴方だからこそ、出来ること……」

えみつん「きっと、あるはずだよ」

りきゃこ「――!!」ハッ
541: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/05(金) 00:20:41.50 ID:d1GJW2ge
りきゃこ(そうだ――何やってんの、私。何ビビってんの、私)

りきゃこ(結局、肝心な所は、あんちゃんに頼りっきりで。任せっきりで……!)

 

あんちゃん「………」

ハァ…ハァ…

 

りきゃこ(あんちゃんが、困ってるのに。怖がってるのに。怯えてるのに)

りきゃこ(それでも――逃げずに、立ち向かおうとしてるのに!!)

りきゃこ(メンバーが困ってる時に、助けなくて――何が仲間よ!)

りきゃこ(“あの時”だって――)

 

 

――ごめんなさい、ごめんなさい……

――大丈夫! もう1回やろう!

――大丈夫! 絶対、大丈夫!

 
542: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/05(金) 00:21:49.89 ID:d1GJW2ge
りきゃこ(“あの時”だって――Aqoursのみんなと――あんちゃんは、私を助けてくれた)

りきゃこ(だったら、今度は、私の番)

りきゃこ(あんちゃんが困ってるなら――私が、助ける)

キッ!

りきゃこ(逢田梨香子――)

りきゃこ(あんたは――あんちゃんの、恋女房(キャッチャー)でしょ!!)

 

あんちゃん「……?」

ハッ

あんちゃん(りこちゃん……?)

 

りきゃこ(あんちゃん……大丈夫)

りきゃこ(投げてきて……!)

スッ…!

 

あんちゃん「……!!」

あんちゃん(そのサイン……! で、でも、“その球”は……!)
543: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/05(金) 00:22:38.52 ID:d1GJW2ge
りきゃこ(大丈夫。私を信じて)

りきゃこ(私は、あんちゃんを信じてるから。だから、私のことも、信じてほしい)

りきゃこ(大丈夫。絶対、大丈夫……!)

 

あんちゃん(りこちゃん……)

クス…

あんちゃん(わかった。信じるよ――りこちゃん!)

 

ひなひな『バッテリー、サイン決まったようです!』

あさみん『あんちゃん……!』

ひなひな『伊波……運命の、第4球!!』

 

ザッ…

 

えみつん「……!」

ピクッ

 

シュパッ!

 

えみつん「――っ!?」
544: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/05(金) 00:23:48.95 ID:d1GJW2ge
ひなひな『なっ――』

 

フワッ…

 

シカコ「お、」

 

フワッ… 

 

くっすん「お、」

そらまる「遅ぉっ!?!?」

 

えみつん「――!!」

ガクンッ

ブンッ!

 

パスッ…

 

りきゃこ「……!」

グッ…!

 

\ストライッ! バッターアウッ!/
545: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/05(金) 00:25:25.28 ID:d1GJW2ge
シー…ン

 

ひなひな『……す、』

ひなひな『ストライク!! 空振り三振!!』

ひなひな『バッター新田、アウト――スリーアウト!!』

ワアアアアアッ!!

ひなひな『なっ……なんとなんと、伊波・逢田のバッテリーが、最後に選択した一球は――』

ひなひな『ストライクゾーンど真ん中に、ハエも止まろうかという、遅い球!!』

あさみん『完全に――意表を突かれました。まだこんな球種を、持っていたなんて』

あさみん『今まで、一球も投げてこなかった――チェンジアップ!!』

 

りきゃこ「や……」

 

あんちゃん「やった……!!」

 

しゅか「うわあああ、やったああああ!!」

あいにゃ「あんちゃああああん!!」

きゃん「りかこおおおお!!」
546: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/05(金) 00:28:38.81 ID:d1GJW2ge
ひなひな『しかし、この場面で、こんな遅い球をど真ん中に投げてくるなんて……!』

あさみん『アンダースローの伊波投手の直球も、決して速い球ではありません』

あさみん『直球とほぼ変わらない速さの高速シンカーも含め、その球速は100km前後といったところでしょうか』

あさみん『ところが、最後に伊波投手が放ったチェンジアップ。電光掲示板に表示されている、球速は――』

ひなひな『――!! ろ、60km!?』

あさみん『直球との球速差――実に、40km』

あさみん『いかに普段の球も決して速くないとはいえ、直球のスピードに慣れた状態で、いきなりこんな球を放られたら、タイミングを合わすことなんて出来る訳がありません』

あさみん『しかも、伊波投手は、直球を投げる時と全く同じフォームで、このチェンジアップを投げてみせた』

あさみん『結果、新田選手といえど、大幅にタイミングを狂わされ――空振りしてしまった』

ひなひな『こんな遅い球で、強打の新田選手を三振に仕留めるなんて――』

あさみん『野球の妙味、ね』

あさみん『三振を取れるのは、決して速い球だけではないってことですよ』
547: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/05(金) 00:30:23.96 ID:d1GJW2ge
ふりりん「すごいよあんちゃん! えみつんさんを三振に仕留めるなんて!!」

すわわ「それもまさか、チェンジアップなんて……完全に予想外」

きんぐ「なんで隠してたんだよー!」

あんちゃん「隠してた、っていうか……あれは練習で、りこちゃんと何球か試しただけの球で……」

りきゃこ「正直、こんなに威力の無い球じゃ使えないって、あんちゃんは言ってたんだけど」

りきゃこ「この状況で、上手くハマってくれたね!」

あんちゃん「うん……ありがと、りこちゃん。助けられちゃった!」

りきゃこ「ばっ……! 当然でしょ、そんなの!///」

 

あさみん『勿論これは、バッテリーにとっても、一か八かの賭けだったと思います』

あさみん『タイミングさえ合ってしまえば、遅い球は、新田選手のパワーでなら間違いなくホームランにされてしまう』

あさみん『だけど、バッテリーは、逃げなかった。1%でも、僅かでも可能性があるなら。その可能性を信じた』

あさみん『最後まで可能性を信じた、バッテリーの執念の勝利と言えるでしょう』

ひなひな『ともかく、伊波・逢田のバッテリー、新田に一矢報い――』

ひなひな『ワンナウト2・3塁、絶体絶命のピンチを、見事脱してみせました!!』

ワアアアアッ!!
548: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/05(金) 00:31:03.38 ID:d1GJW2ge
えみつん「………」

えみつん(このギリギリの局面で――まさか、一番遅い球なんて)

えみつん(完全に、裏をかかれちゃったなあ)

グッ…

えみつん(私に、悔しい――と、思わせるなんて)

えみつん(やるね――あんちゃん)

 

りっぴー「えみつーん、惜しかったよー!」

ジョルノ「まさか、あそこで、ど真ん中に緩い球なんてね」

みもりん「当たってればホームランだったけどねー」

うっちー「……えみつん」

えみつん「………」
549: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/05(金) 00:32:40.50 ID:d1GJW2ge
えみつん「うっちー……」

えみつん「ううん――彩」

えみつん「ごめん。ごめんね」

うっちー「………」

えみつん「頑張ってる彩を援護してあげるのが、四番の私の役目だったのに――」

みもりん「えみつん……」

うっちー「………」スッ

ポスッ

えみつん「……え?」

えみつん(グラブを、私の胸に当てて……)

うっちー「もー。えみつん、謝んなくっていいよー」

うっちー「謝ることなんてないんだから。みんな、頑張ってるんだし」

うっちー「それだけ、後輩ちゃんたちだって、なかなかやるってだけだよ」

うっちー「すごいじゃん、えみつんを三振にするなんて!」

えみつん「彩……」
550: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/05(金) 00:33:22.50 ID:d1GJW2ge
うっちー「だから、さ。なんだか、わくわくするし」

うっちー「私なら――まだ、大丈夫だよ」

スッ…

うっちー「さ。いこ、みんな!」

スタ…スタ…

 

みもりん「うっちー……」

えみつん「彩……」

 

えみつん(だけど……一歩一歩、確実に)

えみつん(彩の、限界は――近づきつつ、ありました)
551: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/05(金) 00:35:05.37 ID:d1GJW2ge
【5回裏】

 

ワアアアアッ!!

 

ひなひな『――さあ、5回の裏……Aqoursの攻撃が続いておりますが』

ひなひな『この回、守るμ'sは、大変なことになって参りました!!』

 

うっちー「………」

ハァハァ

 

ひなひな『4回まで、2安打1失点と好投を続けていたピッチャー、内田!!』

ひなひな『先程のチャンスとは一転、ピンチを迎えています!!』

あさみん『Aqoursにとってみれば――ピンチの後に、チャンスが巡ってきたと言えますね』

 

ザワザワ…!

 

ひなひな『なんと――ワンナウト、満塁!!』

ひなひな『ピッチャー内田、この試合始まって以来となる、大ピンチを迎えました!!』
552: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/05(金) 00:36:10.83 ID:d1GJW2ge
あさみん『おそらく……トイレにでも行って、しばらくテレビから目を離していた視聴者は』

あさみん『この回、一体何が起こったのか――大いに、混乱していることでしょうね』

 

ワアアアアッ!!

 

ひなひな『点差は、2点――果たして、守り切れるか』

ひなひな『μ'sのエース、内田――正念場です!!』

 

えみつん(彩……!)

 

うっちー「ふぅ……」

うっちー(まったく……参っちゃうなぁ)
568: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/08(月) 22:30:21.06 ID:Wjm1lAqQ
ひなひな『マウンド上、この試合始まって最大のピンチを迎えている内田ですが……』

ひなひな『ここで、この回のAqoursの攻撃を振り返ってみましょう』

ひなひな『まず、先頭バッターは5番の高槻。ここでAqoursベンチ、思い切った作戦に出てきます』

あさみん『バッターボックスに入った高槻が、見せたのは――』

あさみん『――バントの構え』

 

キンッ!

\ファール!/

 

ガキッ!

\ファール!/ 

 

きんぐ(ややオープンスタンス気味の体勢から、バントの構えで、しっかりボールの軌道を見て……)

きんぐ(そこからバスターで、コンパクトに振りぬく!)

きんぐ(確かに、バットがボールに当たる! さっきの、打ち合わせの通り……!)
569: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/08(月) 22:31:29.41 ID:Wjm1lAqQ
きんぐ「……バスター作戦?」

すわわ「うん。一旦バントの構えを取って、そこからバスターで当てにいくの」

あいにゃ「前の打席で、すわわがやってたやつだね」

すわわ「そ」

しゅか「よくわかんないんだけど、バスターで打てるようになるの?」

すわわ「ん。バスターって、単にバントに見せかけた奇襲に使うってだけでなく、打者の打撃改善の効果も高いんだよ」

すわわ「まず、メリットの一つ目。“両目でボールを捕えることが出来る”」

すわわ「半身での構えに比べて、両目が正面を向いているから、ボールが見えやすい」

ふりりん「あ! 確かに、バントした時、ボールがよく見えた……!」

すわわ「そして二つ目。“スイングの無駄が無くなる”」

すわわ「バットをテイクバックして、そこからスイングする。すると、トップからインパクトまでの時間が自然と短くなる」

すわわ「結果、スイングがコンパクトになって時間を減らせる分、ボールを見る時間が長くなる」

あんちゃん「ほぇー……!」

ありしゃ「ふーん、なるほどね」

しゅか(やば、何言ってるのか全然わかんない……)

すわわ「……ま、難しいこと言ってもあれだし」

すわわ「騙されたと思って、やってみたら?」
570: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/08(月) 22:32:29.20 ID:Wjm1lAqQ
きんぐ(……確かに、効果あるわ、これ)

きんぐ(あれだけ見にくい軌道だった内田さんのボールが、さっきよりもよく見える……!)

 

キンッ!

 

ひなひな『粘るも、最後はショートゴロに倒れた高槻ですが……』

あさみん『しかし高槻選手は、この打席だけで、内田投手に11球を投げさせました!』

あさみん『凡打になったとはいえ、しっかり役目は果たしたと思いますよ!』

 

うっちー「………」フゥハァ
571: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/08(月) 22:34:09.79 ID:Wjm1lAqQ
ひなひな『続く打者は、6番の逢田』

ひなひな『逢田選手も、高槻選手と同じく、バスター作戦で攻めます!』

 

キンッ!

\ファール!/

 

バシッ!

\ボール!/

 

りきゃこ(……確かに、前までの回と比べて、あんなに連発してたスライダーを投げる数が減ってる)

りきゃこ(それに、きんぐが粘ったお蔭か、直球も緩くなってきてる……!)

りきゃこ(これなら……!)

 

キンッ!!
572: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/08(月) 22:36:23.43 ID:Wjm1lAqQ
りきゃこ「嘘っ!?」

 

ひなひな『バスターで振りぬいた逢田のバットが、甘く入った内田の直球をミート』

ひなひな『これが、三遊間を抜けるヒットとなりました!』

あさみん『Aqoursが、内田投手の球をまともにミートしてヒットにしたのは、これが初めてですね』

ひなひな『クリーンヒット第1号は、意外な選手から飛び出しました!』

 

りきゃこ「……なんか、失礼なこと言われてる気がするー」

きんぐ「いえー、りかこー!」

ありしゃ「すごい! これも出来合いヒット?」

りきゃこ「おいそこ、ふざけんなしー!!」
573: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/08(月) 22:38:23.38 ID:Wjm1lAqQ
ひなひな『7番の諏訪も、勿論バスター作戦』

あさみん『Aqours、徹底してバスターで内田投手に揺さぶりをかけます』

 

キンッ!

\ファール!/

 

すわわ「………」

 

うっちー「………」フゥハァ

うっちー(なんとなく……この子が一番、やらしいなぁ)

 

バシッ!

\ボール! フォア!/

 

あさみん『選球眼の良い諏訪、バスターで球をカットし粘りつつ、四球を選びます』
574: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/08(月) 22:39:34.73 ID:Wjm1lAqQ
ドスッ!

 

きゃん「おごふ!?」

 

\デッドボール/

 

あさみん『そして8番の、小林選手に対し……』

あさみん『内田投手の初球が抜けて、デッドボールを与えてしまいました』

ひなひな『これで、小林は2打席連続のデッドボール……』

 

きゃん「な……なんで私ばっかり、こんな目に……」

プルプル

きんぐ「よっしゃー、きゃん、ナイス!」

ふりりん「痛くないぞー!」

きゃん「いや、だから痛いっての!」
575: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/08(月) 22:41:22.37 ID:Wjm1lAqQ
ひなひな『コントロールのいい内田選手が、初球デッドボールとは……』

あさみん『それだけ、疲労が溜まってきているとみるべきでしょう』

あさみん『スライダーは、肩や肘、指に負担の大きい変化球ですし……』

あさみん『事実、この回は、内田投手はスライダーをあまり投げてきていません』

ひなひな『ともかく、ワンナウト満塁となりました!! μ's、そしてピッチャー内田、最大のピンチ!!』

ひなひな『逆にAqoursにとっては、一打同点――』

ひなひな『いや、逆転も狙える大チャンスです!!』

ワアアアアッ!!

 

うっちー「……!」

ハァ…ハァ…

 

えみつん(彩……!)
576: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/08(月) 22:42:49.12 ID:Wjm1lAqQ
えみつん(ここは一旦、タイムをとって……)

 

うっちー「………」

スッ…

 

えみつん「……!」

えみつん(彩、グラブを上げて……)

えみつん(“来なくていい”、ってこと……?)

 

みもりん(うっちー……)

そらまる(内田さん……)

ジョルノ(まだ……やる気、なんだね)

 

うっちー(ごめんね、えみつん。ごめんね、みんな。心配かけちゃって)

うっちー(だけど、えみつんも……μ'sのみんなも)

うっちー(大事な先発のマウンドを、私に任せてくれた)

うっちー(だったら――)

キッ…!

うっちー(こんな所で、負けてらんない)

うっちー(私は――“μ's”の名前を、背負ってるんだ)

ズズ…

 

うっちー「……舐めんなよ」
577: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/08(月) 22:44:44.91 ID:Wjm1lAqQ
『9番、センター、鈴木』

 

きんぐ「頑張れー、あいなちゃーん!!」

ありしゃ「あいな、ボールよく見て!!」

あんちゃん「ここで決めちゃおー!!」

 

あいにゃ「よ、よーし……!」

あいにゃ(同点、いや逆転の絶好のチャンス……!)

あいにゃ(さっきはダブルプレーになっちゃったし、ここで挽回しなきゃ……!)

ドキドキ

 

\プレイ!/

 

スッ…!

 

ひなひな『やはり鈴木もバントの構え、バスター作戦!!』

ひなひな『左の鈴木は、右打者以上に、左サイドの内田の球の出処は見えにくいはずですが、果たして……?』
578: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/08(月) 22:45:45.76 ID:Wjm1lAqQ
シュッ!

 

あいにゃ「……!」

グッ

 

キンッ!

 

ひなひな『鈴木、直球をバットに当てた! ファール!!』

オオオオオッ

 

あいにゃ(やった、当てられた……!)

あいにゃ(確かに……スピードも、落ちてきてる気がする)

あいにゃ(バントの構えで、ストレートに狙いを絞っていけば、打てる……!)
579: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/08(月) 22:48:34.15 ID:Wjm1lAqQ
ひなひな『それにしても、バスターというのはそこまで有効な作戦なんですか?』

あさみん『バスターは何も、バントのふりをして相手の内野の意表を突くっていうだけの打法じゃないんですよ』

あさみん『半身で構えるバッティングより、投手と対峙して両目でしっかりボールが見れるバントの構えの方が、ボールとの距離感が測りやすくなります』

あさみん『すなわち、ボールが見えやすくなる。その上、スイングもコンパクトになり、結果、ミートがしやすくなるんです』

あさみん『実際に高校野球や、プロ野球においても、スランプの打者に対してバスターの練習をさせることは珍しくありません』

あさみん『特に内田投手に対しては、球の出処がわかりにくくて苦戦していましたからね。有効な戦術と言えるでしょう』

 

シカコ「ちっ、ひたすらバスターとか、せこい真似してくれちゃって……」

 

りっぴー「でも……これだって、れっきとした作戦だよ」

りっぴー(うっちー、頑張って……!)
580: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/08(月) 22:50:23.20 ID:Wjm1lAqQ
すわわ(それに、思った通り、ストレートが目に見えて多くなった)

すわわ(やっぱり……相当、腕に負担がかかってきてると見て間違いない)

すわわ(ストレートに狙いを絞って、しっかり打ち返していけば、いける……!)

 

あんちゃん「いいぞー!! あいな、当てられる!!」

しゅか「ここで決めてけー!!」

 

あいにゃ(よし……いける!)

 

うっちー「………」

フゥハァ

 

えみつん(彩……)

えみつん(ここは、1点取られるのは覚悟で。外角低めに、直球を……!)

スッ

 

うっちー「………」 

フルフル

 

えみつん(――え!? 彩……!?)
581: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/08(月) 22:52:32.80 ID:Wjm1lAqQ
うっちー(私は――逃げない。逃げたくない)

うっちー(それが――μ's、でしょ?)

 

えみつん(だけど、彩……!!)

 

うっちー(平気。だって――)

うっちー(えみつんが、受け止めてくれるから)

うっちー(μ'sのみんなが、いてくれるから――!)

ザッ…

 

シュッ!!

 

あいにゃ(きた!! ストレートに狙いを絞って、)

あいにゃ(ストレー……)

 

ギュワッ!!

 

あいにゃ「……!?!?」

ブンッ!

 

バシィッ!

\ストライク!/
582: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/08(月) 22:53:44.91 ID:Wjm1lAqQ
きんぐ「う……嘘」

あんちゃん「スライダー……!?」

 

すわわ(しかも……)

タラッ…

 

あいにゃ(め……滅茶苦茶、“キレ”てた……!!)

あいにゃ(なんで……!? もう、ボールの威力は落ちてきたはずじゃ……!?)

 

うっちー「………」

ズズ…
583: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/08(月) 22:55:33.94 ID:Wjm1lAqQ
くっすん「う……うっちー!?」

くっすん「まだまだ、投げられるってこと……!?」

 

みもりん「……いや」

みもりん(うっちー……あんた……)

 

うっちー「………」

 

ザッ…

 

うっちー(きっと……ことりなら)

うっちー(こんな場面でも……きっと、正面から、立ち向かうはず)

うっちー(ことりは、優しくておっとりした子だけど……芯は、強い子だから)

 

シュッ!!

 

うっちー(だから、私も……!!)

 

ギュンッ!!

 

あいにゃ「……!!」

ブンッ!

 

バシィッ!!

\ストライッ! バッターアウッ!!/
584: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/08(月) 22:58:52.38 ID:Wjm1lAqQ
オオオオオッ!!

ひなひな『ピッチャー内田、ここに来て2球連続のスライダー!!』

ひなひな『鈴木のバットにかすらせず!! 三振で、ツーアウト満塁と変わります!!』

あさみん『今の、スライダー……!! キレが、増した……!?』

 

えみつん(彩……!!)

 

うっちー「………」

ズキッ…

 

あいにゃ「そ、そんな……」

しゅか「くっそー、こうなったらあたしが……!」

 

ひなひな『しかしまだ気は抜けません!!』

ひなひな『次は先頭に戻り、先ほどの打席で、内田から初のヒットを放った斉藤!!』
585: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/08(月) 23:01:14.94 ID:Wjm1lAqQ
うっちー「……」

ボソ…ボソ…

うっちー「……小鳥の……翼がついに……大きくなって……」

うっちー「……旅立ちの、日だよ……♪」

 

ザッ…

シュッ!!

 

うっちー(ことりは……ひとりでも、巣立てるほどに)

うっちー(大きくなった。成長した)

うっちー(私は、そんなことりに……勇気づけられてきた)

 

バシッ!!

\ストライク!/

 

うっちー(ことりのことが、大好きで。ことりに、なりたくて)

うっちー(髪も伸ばして。色も、ことり色に染めて。お腹だって出した)

うっちー(ことり……)

ズキ…ズキ…!

 

ギュンッ!!

バシィッ!!

\ストライク!/ 

 

うっちー(私は……ことりみたいに、なれたのかなあ……?)

 

ズバッ!!

\ストライッ! バッターアウッ!!/
586: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/08(月) 23:03:33.90 ID:Wjm1lAqQ
ワアアアアッ!!

 

ひなひな『さっ……三振!! 二者連続三振!!』

ひなひな『しかも斉藤に対して、三球連続でスライダーを投じ……!!』

ひなひな『かすらせることもなく、三球三振にきってとりました!!』

あさみん『なんという……!!』

ひなひな『恐るべし、μ'sのエース!! 恐るべし、内田彩!!』

ひなひな『満塁のピンチを、無失点で切り抜けました!!』

 

うっちー「………」

ズキズキ…!

 

しゅか「そ……んな……」

しゅか「うっそでしょ……!?」
587: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/08(月) 23:04:45.91 ID:Wjm1lAqQ
あいにゃ「ご、ごめん……みんな……」

しゅか「せっかくのチャンスだったのに……」

しゅか「てか、内田さん、まだ全然元気じゃん!」

ふりりん「ここに来て、スライダー連発だなんて……」

きんぐ「しかも、すっごいキレてたし」

きゃん「まさか、疲れた風にしてたのは、演技……!?」

あんちゃん「……ううん」

チラッ…



うっちー「………」

フラッ…

えみつん「彩!!」

ガシッ!

うっちー「……もう、なに、えみつん……」

うっちー「大げさなんだからぁ……ちょっと、つまずいただけだよ」
588: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/08(月) 23:06:37.97 ID:Wjm1lAqQ
すわわ「やっぱり……疲れは、あるはず」

すわわ「この回、みんなで粘ったお陰で、内田さんの球数は80球を越えた」

すわわ「あれだけスライダーを投げて、疲れてないはずがない……」

あんちゃん「それでも……あれだけの、球が投げられるなんて」

あんちゃん(本当に……尊敬、します)

 

あさみん『絶対に、負けられない――という、気迫、でしょうね』

あさみん『先輩として、μ'sとしての。意地や、プライド。あるいは、そんな言葉では言い表せられない、何か』

あさみん『それが、鈴木選手や斉藤選手に対する、スライダーのキレを呼んだ』

あさみん『ですが、その代償は……』
589: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/08(月) 23:07:36.57 ID:Wjm1lAqQ
みもりん「うっちー……交代しよ」

みもりん「このままじゃ、うっちーの腕が……!」

うっちー「もー、みもりんったら大げさなんだから」

うっちー「まだ、大丈夫だって。最後のスライダー、見たでしょ?」

えみつん「だけど、彩……!!」

うっちー「………」

うっちー「えみつんだって……わかってるでしょ?」

うっちー「先発の、私が……」

うっちー「なるべく、いけるイニングまでいかないと……」

えみつん「……!!」

 

ひなひな『ともかく……この、5回の攻防』

ひなひな『μ's、Aqoursとも、大きなチャンスを迎えましたが、ともに得点はならず!!』

ひなひな『この攻防が、のちのイニングにどのような影響を与えていくのでしょうか!?』
590: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/08(月) 23:11:45.96 ID:Wjm1lAqQ
【6回表】

 

ワアアアアッ!!

ミューズゥゥゥ!!

 

ひなひな『さあ……6回の表』

ひなひな『この回の先頭打者は、先の回、気迫のピッチングでピンチを脱した内田!!』

あさみん『ここまでの疲労が、バッティングにも影響を与えなければいいですが……』

 

うっちー「………」

ハァハァ

 

ひなひな『しかし……ここから先の、μ'sの下位打線』

ひなひな『6番・飯田、7番・Pileと続いていきますが……』

ひなひな『ラストバッターの楠田を除いて、μ's下位打線、5番の内田以降、未だヒットは出ておりません!』
591: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/08(月) 23:13:04.54 ID:Wjm1lAqQ
りっぴー「………」

ぱいちゃん「………」

りっぴー「……ね、ぱいちゃん」

ぱいちゃん「何? りっぴー」

りっぴー「ここでの、私たちの役目って、なんだろね?」

ぱいちゃん「そりゃ、もちろん……」

ぱいちゃん「うっちーを、助けること」

りっぴー「……だよね」

ギュッ…

グッ…

りっぴー「……気合入れよっか。あたしたちも」

ぱいちゃん「当然、っしょ」
618: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 00:16:38.71 ID:ifVJi/I6
あさみん『さて、前の回で鬼気迫る投球を見せ、この回最初のバッターボックスに入った内田――』

あさみん『中軸ではありますが、ここまでヒットは無し』

あさみん『その上、冷静を装ってはいるものの、ピッチングでの疲労が尾を引いていることは、誰の目から見ても明らかでした』

あさみん『しかし――』

 

キンッ!

\ファール!/

 

ひなひな『またもファール!! 内田、フルカウントから粘ります!!』

ひなひな『伊波・逢田のバッテリー、前の回の反省からか、外角中心にコーナーを丁寧に突くピッチングですが――』

ひなひな『そこに、必死に喰らいついていく内田!!』

 

オオオオオッ!

 

うっちー「はぁ……はぁ」
619: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 00:17:59.31 ID:ifVJi/I6
ギンッ!

\ファール!/

 

うっちー「くっ……はぁっ」

フラッ

 

ひなひな『ファール!! これで8球目!!』

ひなひな『腕を必死に伸ばし、体勢を崩しかけながらも、必死で喰らいつく!!』

あさみん『これは、正に――執念』

 

うっちー「ふぅ……はぁ」

キッ

 

あんちゃん「……!」

ゾク…

 

りきゃこ(この人……なんで、ここまで……!)

りきゃこ(μ'sは、私たちと違って、負けても失うものは何も無いはずじゃないの……?)

 

りっぴー「………」

ぱいちゃん「うっちー……」
620: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 00:19:09.06 ID:ifVJi/I6
みもりん(そりゃ、ね……理由は、色々あるかもしれないけど)

みもりん(ここまで来たらさ――理屈じゃ、ないんだよね)

みもりん(“負けたくない”。どんな時だって)

みもりん(そこが、どんな場所だろうと――“ステージ”に立った以上は、決して折れない)

みもりん(ウチらも――μ'sも、常にそうやって、駆け抜けてきた)

みもりん(そうでしょ――?)

みもりん(……うっちー)

 

うっちー「はぁ……はぁ」

 

ひなひな『ピッチャー、9球目――!』

 

バシィ!

\ボール! フォア!!/
621: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 00:20:59.12 ID:ifVJi/I6
ワアアアアッ!!

 

ひなひな『フォアボール!! フルカウントからの9球目!!』

ひなひな『内田、粘りに粘って、四球を選びました!!』

あさみん『なんて執念……! この四球は、ヒットと同等以上の価値がありますよ!』

ひなひな『μ's、先頭打者出塁で、ノーアウト一塁!!』

 

うっちー「………」

スタ…スタ…

 

あんちゃん「……!!」

あんちゃん(また……この回も、先頭を塁に……!)
622: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 00:22:16.32 ID:ifVJi/I6
りっぴー「………」

ぱいちゃん「……りっぴー?」

りっぴー「……うっちーってさ。ああ見えて、すっごい面倒見いいんだよね」

りっぴー「ラジオ番組で一緒にやってる時も、見えない所で、色々フォローしてくれたりして……」

ぱいちゃん「……うん。わかる」

ぱいちゃん「私も、そんなうっちーのファンだし」

りっぴー「だったらさ……」

グイッ

ギュッ!

ぱいちゃん「!」

ぱいちゃん(りっぴー……バッティンググローブ、しっかり嵌めた)

 

りっぴー「ここで助けなきゃ――女がすたる、って」

 

『6番、センター、飯田』
623: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 00:23:17.08 ID:ifVJi/I6
ワアアアアッ!!

リッピィィィ!!

 

ひなひな『ノーアウトのランナーを出して、打席には、6番の飯田が入ります』

ひなひな『しかし、この後の下位打線。6番・飯田、7番・Pile、8番・南條……』

ひなひな『いずれもここまで、ヒットは出ておりませんが……』

あさみん『………』

 

りきゃこ(あんちゃん、大丈夫……ここから先の人たちには、まだ打たれてない)

りきゃこ(三森さんや新田さんみたいな、パワーにも欠ける。しっかり丁寧に攻めていけば、打ち取れる……!)

 

あさみん『さて……どうでしょうか』

あさみん『少なくとも……この、飯田選手が“6番”に入っている意味』

あさみん『それを考えれば――決して、油断は出来ません』

ひなひな『え……?』
624: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 00:27:50.34 ID:ifVJi/I6
\プレイ!/

 

りっぴー「………」

スッ…

 

ひなひな『飯田、バントの構え! ここは手堅く送ってくるか!』

 

りきゃこ(相手は、まだ2点のリードがある……無理して強硬策にいくより、確実に追加点を、ってことか……)

りきゃこ(だけど、油断せずに……バント失敗も狙って。外中心に……!)

 

あんちゃん(うん。慎重に……!)

ザッ…

シュッ!

 

りっぴー「!」

 

バシッ!

\ストライク!/
625: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 00:29:31.80 ID:ifVJi/I6
ひなひな『外いっぱい、ギリギリ決まってストライク!』

ひなひな『飯田、バットを引いて見送りましたが、際どい所に決まりました!』

 

りきゃこ(うん、いいコース)

りきゃこ(この調子で、簡単にバントはさせない……!)

 

りっぴー「………」

 

シカコ「りっぴー……もしかして」

ジョルノ「うん。狙ってるね」

くっすん「へ? 何を?」

ジョルノ「もしも、りっぴーのことを“安牌”とでも思ってるんなら……」

ジョルノ「……火傷するよ」
626: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 00:31:25.11 ID:ifVJi/I6
うっちー「………」

 

りっぴー(うっちー……)

チラッ

りっぴー(待ってて。必ず、進めるから)

グッ…

 

ひなひな『飯田、やはりバントの構え!』

ひなひな『無理はせず、確実にランナーを進めて1点を取ろうという狙い!』

 

りっぴー(バッテリーは、前の回で簡単にノーアウトから連打を浴びて、慎重になってる)

りっぴー(だけどそれは、裏を返せば配球が読みやすいってこと)

りっぴー(つまり、この場合なら、打ちにくいアウトコース一辺倒になりやすい)

りっぴー(確かに、打ちにくいコースだけれど……)

 

ひなひな『内野陣はバントを警戒して全身守備!』

ひなひな『伊波、第2球!』

 

あんちゃん「」ザッ

シュッ!

 

りっぴー(来るコースがわかっていて、そこに狙いを絞れば――!)
627: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 00:32:48.75 ID:ifVJi/I6
スッ…!

グッ!

 

りきゃこ(――!?)

りきゃこ(バットを引いて――足をホームベース寄りに踏み込んできた!?)

りきゃこ(まさか――)

 

うっちー「!」

ダダッ!

 

りっぴー「」カッ

キィン!!

 

ひなひな『――バスターエンドラン!?』

 

オオオオオッ!!
628: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 00:34:10.36 ID:ifVJi/I6
きんぐ「うっ――」

 

ふりりん「嘘ぉ!?」

 

ひなひな『一・二塁間!! 上手く流した打球は前進守備の内野を抜く!!』

ワアアアアッ!!

ひなひな『そして――』

 

うっちー「はぁっ、はぁ!!」

ダダダダッ!

 

ひなひな『ランナーの内田、懸命に走る!!』

ひなひな『なんと二塁も回ったぁ!! ライトからサードへ、ボールが帰ってくる!!』

 

ザザザザッ!

\セーフ!!/
629: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 00:35:14.13 ID:ifVJi/I6
ひなひな『セェェーーフ!! 疲労をものともしない、内田の爆走!!』

あさみん『確実に疲れはあるはずなのに……!』

ひなひな『鮮やかに決まりました、意表を突くバスターエンドラン!! ノーアウト一・三塁!!』

ワアアアアアッ!!

 

そらまる「よっしゃああああ!!」

ジョルノ「ナイス、りっぴー!」

みもりん「ナイスラン、うっちー!!」

 

りっぴー「やった……!」

 

うっちー「ぜっ、はぁ……!!」

うっちー(ナイス……りっぴー)
630: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 00:37:21.78 ID:ifVJi/I6
あんちゃん「……!!」

ハァハァ…

 

りきゃこ(やられた……!!)

ギリッ

りきゃこ(ここまで打ててない、下位打線だから。リードしてる分、確実に1点を取りに来るはずだから)

りきゃこ(そんな、先入観にとらわれて――完全に、バントをしてくると決めつけてた)

りきゃこ(冷静なつもりで――全然、冷静じゃなかった)

りきゃこ(配球だってそう。慎重と言えば聞こえはいいけど、その実、“逃げ”ともとれる外角一辺倒の単調な配球)

りきゃこ(それなら、狙い打たれたって不思議じゃない……!)

グッ…!

 

すわわ(バントと思い込んだバッテリーと私たちの裏をかいた、バスター……)

すわわ(さっきの、私たちの作戦の――意趣返し、って訳だね)

 

ありしゃ(ふーん……あれだけ、バントをしてくると見せかけて……)

ありしゃ(“役者”――ってことか)
631: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 00:40:16.01 ID:ifVJi/I6
ひなひな『それにしても、見事なバスターエンドランでしたが……飯田選手は、あらかじめこれを狙っていたのでしょうか』

あさみん『はい。そう見るべきでしょうね。バントで来るだろうというAqoursの思い込みを、逆に察して、利用した』

あさみん『しかし――ここで、真に注目すべきは、飯田選手が打球を飛ばした“方向”です』

ひなひな『方向――? 一・二塁間、ライト方向に流したことですか?』

あさみん『そうです。確かに、右打者の飯田選手が、アウトコース低めの球を打ち返すとなると、左に引っ張るより右に流した方がヒットにしやすいでしょう』

あさみん『しかし、単に打ちやすいという理由ではなく、飯田選手は、しっかりライト方向に打ち返すことを“狙って”いたのではないかと』

ひなひな『えーと、どういうことですか?』
632: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 00:42:14.37 ID:ifVJi/I6
あさみん『ランナーが一塁にいる状況で、一塁ランナーを進塁させる。それなら、どこに打球を飛ばすべきか?』

あさみん『それは言うまでもなく、右方向』

ひなひな『確かに、左に飛ぶと――ゴロなら、最悪の場合ダブルプレーになりますもんね』

あさみん『それが右方向なら、ゴロでもスタートが早ければ進塁できる確率は確実に上がる』

あさみん『だから、飯田選手は、是が非でも右方向に打球を転がさなければならなかった』

ひなひな『つまりそれが、右方向を狙ったという意味――?』

あさみん『たとえゴロになったとしても、ランナーは進塁させる。それなら、結果はバントと変わりませんからね』

あさみん『結果、上手く内野を抜けて最高の形になりましたが、これはそんな、飯田選手のクレバーな意識が生んだチャンスなんです』

 

ジョルノ(相手の思い込みの裏を突いた、バスターエンドラン)

ジョルノ(そして、ランナーの進塁を第一に考えた、右への流し打ち――)

ジョルノ(りっぴーは……ウチらの中で、最年少ではあるけれど)

ジョルノ(その実――子供の頃から、芸能界で揉まれてきた芸歴の長さゆえか――誰よりも、大人な意識を持ってる)

ジョルノ(常に、全体を見て、みんなのことを第一に考えてる……)

ジョルノ(すっごい、クレバーなプレイヤーなんだよね)
633: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 00:46:29.73 ID:ifVJi/I6
あさみん『そして、彼女が6番に座る意味というのも、ここにあります』

あさみん『6番打者というのは、決して下位打線と片付けられるものではありません』

あさみん『クリンナップがランナーを一掃していたら、自分が出塁して攻撃の起点となる』

あさみん『クリンナップがランナーを残しているなら、自分のバットで返す』

あさみん『つまり、状況に応じて求められる役割が変わる、言うなればオールラウンド・プレイヤーが最適な打順なんです』

あさみん『近年、そんな重要性が認識されるにつれ、6番打者のことを“第2の中軸”“影の4番”と呼ぶ人もいるくらいです』

ひなひな『つまり、状況に応じたプレーが出来る、という意味では……!』

あさみん『そう。正に、飯田選手は適任』

あさみん『決して、油断してはいけないバッターだったんです』

 

シカコ「いえー、りっぴー!!」

そらまる「まじえんじぇー!!」

 

りっぴー「………」

ニッ
634: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 00:48:10.50 ID:ifVJi/I6
ひなひな『さあ、ノーアウト一・三塁とチャンスが広がりました!!』

ひなひな『またも大きなチャンスを迎えたμ's!! またもピンチを迎えたAqours!!』

ひなひな『続くバッターは――』

 

『7番、レフト、Pile』

 

ワアアアアッ!

パイチャァァン!!

 

ひなひな『4回には超ファインプレーでAqoursの追加点を阻止したPile!!』

ひなひな『今度は自らのバットで、チームの追加店を奪うことが出来るか!?』

 

うっちー「はぁ、はぁ……」

 

ぱいちゃん「………」

ぱいちゃん(うっちー……ごめんね。無理させちゃって)

ぱいちゃん(もう少し、だけ……)

クルクルッ
635: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 00:49:23.72 ID:ifVJi/I6
うっちー「……!」

ピクッ

 

りっぴー「!」

りっぴー(あの、ぱいちゃんの、毛先をくるくるさせる仕草)

りっぴー(あれは……)

 

\プレイ!/

 

ひなひな『さあ打席に入ったPile!! このチャンス、どう活かすか!?』

 

りきゃこ(どう攻めて来る……!?)

りきゃこ(ヒッティング、エンドラン、四球狙い……スクイズもある……!)
636: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 00:50:06.67 ID:ifVJi/I6
ひなひな『伊波、Pileに対して第1球!!』

 

あんちゃん「くっ……!」

ザッ

 

ありしゃ「……!」

ありしゃ(ちょっと……!?)

ありしゃ(そんな、軽くテンパったままじゃ……!!)

 

シュッ!

 

ぱいちゃん(よし――)

ぱいちゃん(決める!)

スッ…!

 

りきゃこ「――!!」

 

ひなひな『初球スクイズゥゥーー!!!』
637: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 00:50:56.30 ID:ifVJi/I6
コキンッ!

 

ありしゃ(まずっ……!!)

ダダダッ!

パシッ

 

ひなひな『飛び出したサード小宮、捕球!!』

ひなひな『内田は本塁に突っ込む!!』

 

ダダダダッ!

 

ひなひな『小宮、バックホーム!!』

 

ズザザザッ!

バシッ!

 

\セェェーフ!!/
638: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 00:51:56.22 ID:ifVJi/I6
ひなひな『セェェーーフ!! μ's、1点追加!!』

ワアアアアッ!!

 

りきゃこ「ちっ……きんぐ!!」

シュッ!

 

きんぐ「おっけー!」

バシッ

\アウト!/

 

ひなひな『一塁送って、Pileはアウト――』

 

あんちゃん「――きんぐ!! サードぉ!!!」

 

きんぐ「へっ!?」

 

りっぴー「……!」

ダダダダッ!
639: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 00:54:04.98 ID:ifVJi/I6
ひなひな『なんと、この間に一塁ランナーの飯田、二塁も回った!!』

オオオオオッ!!

 

きんぐ「まずっ!」

シュッ!

 

ズザザザッ!

パシッ!

\セーフ!/

 

ひなひな『三塁に送られましたがセーフ!! 飯田、一瞬の隙を突いた好走塁!!』

ひなひな『正にあっという間の出来事!! μ's、ここで仕掛けてきました!!』

ひなひな『待望の1点を追加し、なおもワンナウト三塁!!』

ワアアアアッ!!

 

【μ's 4―1 Aqours】
640: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 00:55:40.62 ID:ifVJi/I6
うっちー「ぜぇ、はぁ……」

ぱいちゃん「うっちー……!」

タタタ

うっちー「えへ、やったね……ぱいちゃん」

ぱいちゃん「気づいてくれたんだ……!」

うっちー「当たり前だよぉ。ぱいちゃんの、毛先クルクルは……」

うっちー「……スクイズのサイン」

ぱいちゃん「ありがと。ごめんね、走らせちゃって」

うっちー「ううん。お礼を言うのは、私の方……」

うっちー「ありがとね。ぱいちゃんも、りっぴーも」

 

りっぴー「うっちー……」

りっぴー(ちょっとは……役に、立てたかな)

 

くっすん「やったああああ!!」

そらまる「ぱいちゃん、ナイス!!」

みもりん「うっちーも、すごいよ! よく走った!!」

うっちー「えへへ……なんの、これくらい……ぜっ、はぁ……」

えみつん「彩、ベンチで少しでも休んで……!」
641: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 00:58:43.74 ID:ifVJi/I6
ひなひな『姉様、ついにμ'sに、待望の追加点が入った訳ですが……』

ひなひな『しかし、あれだけ再三に渡りチャンスを作るも、無得点に抑えらえていたμ'sですが、ここに来てあっさり点が入りましたね』

あさみん『これも、野球の面白さですね』

あさみん『上位打線でなかなか取れなかった点が、こうした、下位打線の小技によって奪えることもある』

あさみん『ここでのμ'sの攻撃は見事ですよ。直前のエンドランで、まだAqoursに動揺が残っているのを見逃さず、Pile選手が初球スクイズ』

あさみん『何らかのサインが出ていたのでしょう。三塁ランナーの内田選手、そして一塁ランナーの飯田選手のスタートも完璧でした』

あさみん『そして飯田選手は、Aqours内野陣が本塁に気を取られている隙を逃さずに、三塁まで到達』

あさみん『決して、大味な打撃だけではない。スモールベースボールでも点が取れる、試合巧者ぶりを見せつけたと言っていいでしょう』

あさみん『ただ――この得点は、内田選手の執念が呼び込んだもの――とも、とれますが』
642: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 01:00:13.77 ID:ifVJi/I6
あんちゃん(油断してたつもりは、ない……はずだった)

あんちゃん(だけど……えみつんさんを抑えたことで、どこかに緩みがあったのかもしれない……)

あんちゃん(追加点は、取られちゃ駄目だ……って、わかってたのに……!)

ハァハァ…

 

しゅか「あんじゅ、1点は仕方ないって! 切り替えてこ!!」

 

あいにゃ「あんちゃぁぁん、どんまぁぁい!!」

あいにゃ「まだ6回だし! こっからこっから!!」

 

すわわ(そう、6回……でも裏を返せば、これからは終盤戦に入る)

すわわ(これ以上点差を離されると、キツい……!)

 

ありしゃ「………」
643: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 01:02:39.93 ID:ifVJi/I6
ひなひな『さあ、待望の追加点を奪ったμ's!! 点差は再び3点!!』

ひなひな『そしてなおも、ワンナウト三塁のチャンス!! ここで一気に、試合の流れを引き寄せられるか!?』

ワアアアアッ!!

ひなひな『そして、ここで迎えるバッターは――』

 

『8番、ファースト、南條』

 

ひなひな『未だノーヒット、2三振の南條がバッターボックスに向かいます!』

ひなひな『運動は苦手と公言し、膝に爆弾を抱えている南條選手でありますが――』

ひなひな『ここはベテランらしく、なんとかチャンスをものにしてほしいところ!!』

 

くっすん「なんちゃん、頑張ってー!!」

シカコ「そろそろ本気だせー!!」

 

ジョルノ「……はぁー」

ジョルノ「………」

ジョルノ(“ここ”……か?)
644: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 01:06:13.77 ID:ifVJi/I6
あんちゃん(南條さん……正直、ここまでは目立った活躍はしてない)

あんちゃん(えみつんさんたちみたいな、抜群の身体能力があるとも思えない……)

あんちゃん(だけど、油断しないようにしなきゃ。油断……)

ブツブツ

 

ありしゃ「………」

スタスタ

ありしゃ「――ちょっと、あんちゃん」

あんちゃん「え? ありさちゃん」

ありしゃ「はい、ボール」

スッ

ありしゃ「……それとさ」

ボソボソ…

 

りきゃこ(……? ありさ……?)

 

ひなひな『投球前、サードの小宮選手がマウンドの伊波投手のもとへ……?』

あさみん『先程のプレーで、まだ持っていたボールを手渡しに行ったようですね』

ひなひな『それから、なにやら二言三言、話しかけているようですが……』

ひなひな『何か、アドバイスか激励でしょうか?』
645: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 01:07:25.73 ID:ifVJi/I6
パチーン!!

 

ありしゃ「………」

あんちゃん「……っ!!」

 

シー…ン

 

ひなひな『え……!?』

あさみん『な……』

 

りきゃこ「――!?!?」

 

しゅか「ちょっ!?」

 

ふりりん(あ、ありさが……あんちゃんを……)

きんぐ(ひっぱたいた……!?)
646: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 01:08:46.13 ID:ifVJi/I6
ありしゃ「……いい加減にしなよ」

ありしゃ「テンパったまま不用意に投げて、あっさりスクイズ決められて……!!」

 

りきゃこ「ちょ……、」

りきゃこ「ちょっと、ありさ!!」

 

ありしゃ「りかこは黙ってて!!」

ありしゃ「ねえ……あんちゃん」

あんちゃん「………」

ありしゃ「それでも……リーダーなの……?」

あんちゃん「………っ!!」

 

ザワザワ…!

 

ジョルノ「……はいー……?」

 

えみつん「え……え!? ありちゃん……あんちゃん!?」

そらまる「な……何これ」

くっすん「仲間割れ……?」
647: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 01:13:20.30 ID:ifVJi/I6
しゅか「ちょちょちょ、どーしたっての!?」

ありしゃ「………」

あんちゃん「だ……大丈夫、だから」

しゅか「んなこと言ったって……!!」

 

りきゃこ「ありさ!! 今のスクイズはリードしてる私の責任だし!!」

りきゃこ「あんちゃんのせいじゃ……!!」

 

あんちゃん「りこちゃんも……大丈夫、だから!!」

あんちゃん「来なくて平気!!」

 

りきゃこ「あ、あんちゃん……?」

 

ありしゃ「………」

ありしゃ「……しっかり、お願いね」

クルッ

スタスタ…

 

ザワザワ…!

ひなひな『な、なんでしょうか、小宮選手が伊波選手にボールを手渡した後、何か言葉を交わしているように見えましたが……』

ひなひな『直後に、小宮選手が伊波選手をはたき……場内は、異様な雰囲気に包まれております』

あさみん『………』
648: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 01:14:46.20 ID:ifVJi/I6
ジョルノ「なんだっての……?」

ジョルノ(なんか……)

ジョルノ(違和感、が……?)

 

りっぴー(仲間割れ……かな。緊張の糸が、切れた……?)←三塁ランナー

ありしゃ「………」

りっぴー(だけど……悪いけどこれは、ウチらにとってみれば好都合)

りっぴー(チームの中の状態、それも精神的支柱のふたりの精神状態が乱れてる今なら、もっとかき回せる)

りっぴー(そのためには、まず私が、なんとしてでもホームに返る!)

りっぴー(なんちゃんは非力だし。ピッチャーの牽制に注意しつつ)

りっぴー(気持ち、リードを広めに……!)

スス…

 

 

 

パシッ
649: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 01:15:32.47 ID:ifVJi/I6
りっぴー「………」

りっぴー「……え?」

 

りっぴー(何? 今の、感触)

りっぴー(背中に、)

りっぴー(グラブを……?)

クルッ

 

ありしゃ「………」

ありしゃ「……審判さん。お願いします」

 

\ア…アウト!!/
650: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/17(水) 01:16:47.16 ID:ifVJi/I6
シー…ン

 

りっぴー「………」

りっぴー「……は……?」

 

ひなひな『あっ……アウト!? 突如として、三塁塁審がアウトを宣告!!』

ひなひな『一体、何が……!?』

ワアアアアッ!?

 

ありしゃ「……ふっ」

ニコッ

ありしゃ「ぶっぶー、ですわ」
663: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 21:24:17.05 ID:7Xw4axi8
きゃん「は……!?」

 

あいにゃ「え? え?」

 

しゅか「どゆこと!?」

 

くっすん「な、なんでアウトになったの!?」

えみつん「……!」

えみつん「まさか……!?」

 

りっぴー「……!?」

ありしゃ「ふふっ」

ありしゃ「ボールを、見失うのは――」

スッ

ありしゃ「ぶっぶー、ですわ」

りっぴー「!!」ハッ

りっぴー(グラブの中に、ボールが……!!)

りっぴー(やられた……!!)
664: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 21:25:29.21 ID:7Xw4axi8
あさみん『これは……小宮選手に、まんまとしてやられましたね』

あさみん『まさか、この局面で、“隠し球”とは……!!』

ひなひな『か、隠し玉!? 秘密兵器的な、そういうやつですか!?』

あさみん『いや、そういう意味の隠し玉ではなく……』

あさみん『野球における“隠し球”とは、一種のトリックプレーですね』

あさみん『簡単に説明すると、走者に気づかれないように野手がボールを隠し持ち……』

あさみん『走者が塁を離れた時、野手が隠し持ったボールで、走者をタッチアウトにすることです』

ひなひな『えーと、つまり……?』

あさみん『実際に、今のプレーを映像で見てみましょう』
665: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 21:27:54.29 ID:7Xw4axi8
あさみん『スクイズでμ'sに1点が入った直後、走者の飯田選手が三塁に進み、ボールが三塁手の小宮選手のもとに送られます』

あさみん『この時点で、ボールは小宮選手が持っています』

ひなひな『それはわかりますが……』

あさみん『その後、次打者の南條選手を迎える前に、小宮選手がマウンド上の伊波投手に近寄る』

ひなひな『ボールを、あんちゃんに渡すためですよね?』

あさみん『ところが、問題はここです。グラブの陰になって、見えにくいですが……』

あさみん『実はここで、小宮選手は、ボールを伊波投手に渡していません。グラブの中に、持ったままです』

ひなひな『ええっ!?』

あさみん『ここで、小宮選手は、伊波投手に何かを話している』

あさみん『これは、激励やアドバイスではなく、この隠し球の作戦を伊波投手に伝えたと見るべきでしょう』

あさみん『そして、その直後……』
666: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 21:29:13.99 ID:7Xw4axi8
パチーン!!

 

あさみん『小宮選手が、伊波選手をはたく』

あさみん『てっきり私たちは、ふたりが仲間割れでも起こしたのかと思いましたが』

ひなひな『まさか、これも……“演技”……!?』

あさみん『そう見て、間違いないでしょうね。ボールの行方から、気をそらすための』

あさみん『そして、小宮選手は三塁ベース付近に戻る。勿論、ボールは持ったまま』

あさみん『そして、三塁ランナーの飯田選手が、ベースから離れた瞬間――』

 

パシッ

 

あさみん『背中からタッチして、悠々アウト、という訳です』

ひなひな『な、なるほど……!!』
667: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 21:30:21.00 ID:7Xw4axi8
ありしゃ「はい、あんちゃん、ボール」

シュッ

 

あんちゃん「ありがと、ありさちゃん」

パシッ

あんちゃん「えへへ、ドキドキしたけど、上手くいったねー!」

 

りきゃこ「か、隠し球……! え、演技だったの……?」

ホッ

りきゃこ「……もー、びっくりさせんなしー!!」

りきゃこ「すっごい焦っちゃったじゃん!!」

 

ありしゃ「ふふっ。ほら、敵を騙すには、まず味方から、って言うでしょー?」

 

きんぐ「え、演技かよ……よ、良かったー」

ふりりん「もー、めちゃくちゃビビっちゃったよ!」

しゅか「なんかよくわかんないけど、喧嘩じゃないんだよね!?」

しゅか「あはは、良かった良かった!!」←ルールよくわかってないヤツ
668: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 21:31:36.25 ID:7Xw4axi8
りっぴー(まさか、隠し球なんて……)

りっぴー(今度は……こっちが、まんまと騙されちゃった)

りっぴー「……やるね」

ありしゃ「ふふっ」

ありしゃ「私、これでも、“声優”で――」

ありしゃ「――“女優”ですから」

 

ひなひな『しかし、迫真の演技でしたね……正直、びびりました』

あさみん『流石は小宮選手、といったところですね』

あさみん『女優としても、一線で活躍している、彼女ならではのトリックプレー』

あさみん『女優であるからこそ、この成功の難しい隠し球という裏技を、成功させることが出来たのかもしれませんね』

ひなひな『ともかく、Aqoursの頭脳プレーで、ツーアウト走者無しと変わります!!』

ワアアアアッ!!
669: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 21:33:01.50 ID:7Xw4axi8
りっぴー「………」

スタスタ…

うっちー「りっぴー……」

えみつん「うーん、残念だったね。まさか、隠し球なんて」

えみつん(舞台で共演した縁だけど。やっぱり、ありちゃんも、油断できない……)

りっぴー「……あー、もう!」

りっぴー「やっぱり、くやしー!!」

りっぴー(私だって、子役の頃から演技経験はたくさんあるんだから! 絶対リベンジしてやる……!)

メラッ

くっすん「おー、りっぴーが燃えてる」

シカコ「ちっ。ズルいことしてくれんじゃんか……」

 

ジョルノ「隠し球とはね……やられたわ」

ジョルノ「………」

ジョルノ(“ここ”……じゃ、なかったか)
670: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 21:34:55.91 ID:7Xw4axi8
ひなひな『さあ、ツーアウトランナー無しと変わりまして、』

ひなひな『改めて伊波、打席の8番・南條に向かいます!』

オオオオッ

 

あんちゃん(正直……演技とはいえ、ありさちゃんに、はたかれて)

あんちゃん(厳しいことを言われて……ドキっとしたけど)

あんちゃん(なんだか、かえって、引き締まった気がする)

 

ザッ…

シュッ!

 

あんちゃん(1点は、とられちゃったけど……!)

あんちゃん(切り替えて! 絶対、反撃できる!)

 

\ストライク!/

 

あんちゃん(この後の攻撃につなげられるような、ピッチングをしないと!)

 

\ストライク!/ 

 

あんちゃん(それが、リーダーで、ピッチャーの……)

あんちゃん(私の、役目!!)

 

\ストライク! バッターアウッ!!/
671: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 21:36:56.04 ID:7Xw4axi8
ひなひな『南條、三球三振!! スリーアウト、チェンジです!!』

ひなひな『Aqours、1点は取られたものの、なんとか後続は抑えました!!』

ワアアアアッ!!

ひなひな『しかし、打席の南條は、またも全くバットを振ることなく、見逃しの三振となりました』

ひなひな『やはり、到底野球が出来るような身体の状況ではないということなのでしょうか……?』

あさみん『………』

 

ジョルノ「………」

スタスタ

ジョルノ「あー、ごめーん。なんか際どいコースに投げてくるもんだからさー」アハハ

くっすん「なんちゃん……」

シカコ「………」イラッ

グイッ!

シカコ「ちょっと、よしのん!!」

りっぴー「し、シカちゃん!?」

ジョルノ「………」 
672: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 21:38:51.95 ID:7Xw4axi8
そらまる「ちょっと、やめなって!」

シカコ「徳さんは黙ってて!!」

シカコ「よしのん……マジで、やる気無い訳?」

ジョルノ「………」

シカコ「よしのんは、そんな奴じゃなかっただろ。適当そうに見えるけど……」

シカコ「声優に不慣れなあたしに、色々教えてくれたじゃんか……適当そうでも、いつだって本気だったろ」

ジョルノ「………」 

シカコ「なのになんなんだよ、今日は!! そりゃ膝も悪いだろうし、運動苦手なのも知ってる!!」

シカコ「だけど、うっちーとか、みんなが頑張ってるの見て、なんとも思わないの!?」

うっちー「………」

ジョルノ「………」  

くっすん「シカちゃん……!」

くっすん「――やめて!!」

ガバッ
673: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 21:40:34.99 ID:7Xw4axi8
シカコ「くっすん……」

くっすん「やめようよ、喧嘩とか……やだよ、そんなの」

くっすん「シカちゃんだって、知ってるじゃん。なんちゃんが、いつだって本気だったってこと」

くっすん「だから……」

シカコ「………」

スッ

ジョルノ「………」

ジョルノ「ごめんな……シカコ」

クルッ…

シカコ「………」 

りっぴー「なんちゃん……シカちゃん……」

 

えみつん「南條さん……」

ジョルノ「……うん。なんか、ごめん」

ジョルノ「空気悪くなっちゃって……」

えみつん「ううん。だけど……」

ジョルノ「………」 
674: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 21:42:50.41 ID:7Xw4axi8
しゅか「よっしゃ、スリーアウト!」

ふりりん「1点は取られちゃったけど、まだいける!」

あいにゃ「いやー、でもびっくりしちゃったよー。いきなり、ありさがあんちゃんをひっぱたくんだもん」

きゃん「マジ焦ったって!!」

あんちゃん「ご、ごめーん! みんなに説明する暇は無かったからさ!」

ありしゃ「だけど、ごめんね、あんちゃん。演技とはいえ、大事な顔を……」

あんちゃん「ううん、大丈夫! あれぐらいやらなきゃ、μ'sの人たちは騙せないって!」

あんちゃん(ほんとは、結構怖かったけど……)ドキドキ

ありしゃ「……あの時の台詞も、嘘だからね」

ありしゃ「私たちのリーダーは、あんちゃんしかいないから」

あんちゃん「!!///」

あんちゃん「あ、ありさちゃん……」

りきゃこ「あー、なんか顔、赤い」ニヤー

しゅか「おい伊波、照れてんなしー!」

あんちゃん「う、うっさい!!///」

 

あんちゃん(正直、6回まで投げて、私も疲れてきた……)

あんちゃん(だけど、こんな私を、みんなが信じてくれるなら)

あんちゃん(私……まだ、頑張れる!)
675: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 21:43:35.39 ID:7Xw4axi8
【6回裏】

 

ひなひな『さあ、再び点差を3点に広げたμ's。このまま、逃げ切ることが出来るか』

ひなひな『そしてこの回も、マウンドには内田が上がります!!』

オオオオオッ!

 

うっちー「………」

フゥ…ハァ…

 

みもりん「うっちー……」

 

えみつん(彩……)

 

りっぴー(……お願い、神様)

りっぴー(うっちーに、もう少しだけ、力を……!)

 

うっちー(先発の、私が……いけるところまで、いかないと)

うっちー(そうしないと……!)
676: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 21:45:21.33 ID:7Xw4axi8
あいにゃ「内田さん……!」

しゅか「まだ、投げるんだ……!」

あんちゃん「やっぱり……すごい」

あんちゃん「これが、エースの“覚悟”――」

すわわ「だけど、もう体力も腕も、限界に近づいてるはず」

すわわ「申し訳ないけど、逆に考えればチャンスだよ」

すわわ「相手ピッチャーの体力が回復していないこの状況で、上位打線に回る、この回が――!」

 

ひなひな『内田選手、前の回は執念で乗り切ったものの、攻撃の際の全力疾走もあり、疲労が心配ですが……』

ひなひな『姉様、μ'sは、他にピッチャーが出来る選手がいないんでしょうか?』

あさみん『どうでしょうか。なんらかの理由があって、先発の内田選手が、なるべく長いイニングを投げようとしているようにも見えますし……』

あさみん『ともかく、Aqours側としてみれば、この回が勝負ですね』

あさみん『ピッチャーに疲労が見えて、かつ上位打線に回る、この回で得点を奪うことが出来なければ――』

あさみん『それ以降の終盤戦、厳しいことになりそうです』

ひなひな『果たしてAqours、反撃なるか!? この回の先頭バッターは――』

 

『2番、セカンド、降幡』
677: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 21:48:07.51 ID:7Xw4axi8
きんぐ「ふり~~!!」

きゃん「絶対出ろー!!」

 

ひなひな『先頭バッターの降幡が打席に入ります!』

ひなひな『ここまで、第1打席は三振、第2打席は技有りのバント』

ひなひな『3点を追うAqoursとしては、この回、先頭打者が出塁して、反撃の狼煙としたいところ!!』

 

ふりりん(……正直、打つ方はあんまり自信無い。えみつんさんや三森さん、しゅかやあんちゃんみたいな身体能力も無い)

ふりりん(だけど……さっきの、ありさのプレー……)

ふりりん(ああいう戦い方だってあるんだ。勝つために、頭を働かせて、時には相手の裏をかくってことが)

ふりりん(だったら、私だって……!)

 

スッ…

 

ひなひな『やはり、バントの構え!』

ひなひな『Aqours、この回もバスター作戦で内田に挑むようです!!』
678: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 21:51:14.41 ID:7Xw4axi8
シカコ「ちっ。やっぱり、それか。うざいなー」

 

ぱいちゃん「バスターで、コツコツ当てていく……ってことだ」

 

えみつん(当然、そうくるとは思ってた……)

えみつん(ふりりんのパワーでバスターだと、長打になる可能性は低い。内野、やや前進で)

スッ…

 

ひなひな『ゴロで仕留めようということでしょうか』

ひなひな『μ's内野陣、やや浅めの守備位置』

 

ふりりん(……私の“作戦”を、成功させるためには……)

ふりりん(チャンスは、一度きり。絶対に、失敗は出来ない……!)

ふりりん(そして、狙う“場所”も、絶対に外せない……!)

ドキドキ…!

ふりりん(……大丈夫。落ち着け)

ふりりん(えみつんさんも言ってた。“だいじょー”って……!!)

 

ひなひな『内田、第1球!!』

 

シュッ!
679: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 21:52:11.45 ID:7Xw4axi8
スッ!

 

えみつん(バットを構えた……!)

 

ブンッ!

 

バシッ!

\ストライク!/

 

ひなひな『やはりバスター!! しかし、内田の直球に空振り!!』

ひなひな『内角、厳しい所を突くコースでした! まだまだ負けていません、内田!!』

オオオオッ!

 

ふりりん「くっ……!」

 

シカコ「へんっ。バスターにしたところで、全然当てられてないじゃん」

りっぴー(この子は……バッティングの技術は、大したことない、か……)
680: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 21:53:38.34 ID:7Xw4axi8
きんぐ「ふりー、しっかりボール見てー!!」

しゅか「落ち着け―!!」

 

ふりりん「ちっくしょ……!」

 

そらまる「へいへい、バスター怖くないぞー!!」

みもりん「うっちー、ズバッと決めちゃおう!!」

 

うっちー「………」

うっちー(わかってる。ここは確実にアウトに……!)

ザッ

 

シュッ!

 

ふりりん(! ちょっと、甘……)

ふりりん(――ここだ!!)

 

えみつん(バットを、戻――)

えみつん(―――)

えみつん(――さない!?)

 

コツンッ!
681: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 21:55:03.74 ID:7Xw4axi8
ひなひな『せっ、』

ひなひな『セーフティバント~~~!!』

ワアアアアッ!!

 

コロコロ…

 

みもりん「マジか!!」

 

くっすん「うっそ!?」

ダダッ!

 

えみつん「――くっすん、待って!!」

 

ひなひな『上手く勢いを殺した打球は、三塁線ギリギリを転がる!!』

ひなひな『ファールライン、切れるか!? 切れるか!?』

 

そらまる「切れろ切れろ!!」

くっすん「切れろ切れろ切れろ!!」

 

きんぐ「ああ~~、切れるなー!!」

あいにゃ「切れるな切れるな切れるなー!!」
682: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 21:56:10.12 ID:7Xw4axi8
コロ…コロ…

コロ…

 

えみつん「……!!」

 

コロ… 

コツン

 

くっすん「げっ」

 

ひなひな『三塁ベースに当たったぁ~~!! 記録はフェア!!』

ひなひな『降幡、意表を突くセーフティバントで出塁! ノーアウト一塁!!』

 

タタッ

ふりりん「や、やった……!!」

 

きんぐ「うおー、ふりぃ~~!!」

きゃん「ナイス、職人!! バント職人!!」

 

ワアアアアッ!!
683: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 21:57:17.74 ID:7Xw4axi8
ひなひな『前の回から、Aqoursは徹底してバスター攻撃をしてきましたから、てっきりバスターで打ってくるのかと思いきや……』

ひなひな『まさか、そのままバントをしてくるなんて……!』

あさみん『……そう! それこそ、正に降幡選手の狙いだったんです!』

あさみん『前の回でのバスター作戦、そしてここでも、1球目からバスターで振りにいったことで、μ's内野陣にバスターで打ってくるという意識を植え付けさせた』

ひなひな『ということは、1球目の空振りも、空振りの後の悔しがる素振りも、演技……!』

あさみん『しかし、本当の狙いはセーフティバント。転がした場所も見事でしたね』

あさみん『三塁線ギリギリ、打球の勢いを殺し、バントシフトを敷いていなかった三塁手と捕手の間に転がす、絶妙なバント……!』

あさみん『本来、バスターは、バントと見せかけてヒッティングをすることで、相手の裏をかくプレーですが』

あさみん『……降幡選手は、さらにその、裏の裏をかいた、ということですね』

 

ふりりん(あ~、上手くいって良かった……)

ホッ

ふりりん(カッコ良くヒットが打てなくったって、ホームランが打てなくったって)

ふりりん(やれることはあるんだ……! あーしだって……!)
684: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 21:58:19.05 ID:7Xw4axi8
えみつん(ごめん、彩……打球、ファールラインを切れるかと思ったんだけど……)

 

うっちー(いいよ、えみつん。それより、次は……)

 

『3番、ピッチャー、伊波』

 

ワアアアアッ!!

アンチャァァン!!

 

ひなひな『先頭打者が出塁して、続くバッターは3番の伊波!!』

ひなひな『前の打席では、詰まらされながらも待望の1点をもぎとるタイムリーを放っています!!』

ひなひな『ここまで、4失点ながらも力投を続けている伊波!! 自らのバットで、チャンスを広げられるか!?』

 

あんちゃん「よーし……!!」
685: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 21:59:02.12 ID:7Xw4axi8
あんちゃん「」

スッ…!

 

みもりん「……!」

 

そらまる(バントの構え……!)

 

ひなひな『伊波、バントの構えをとりました!!』

あさみん『しかし、これでμ's守備陣は守りにくくなりましたよ!』

あさみん『前の回のようにバスターで打ってくる可能性もあれば、降幡選手のようにバントで送ってくる可能性もある』

 

うっちー(バスターでも、バントでも、関係ない……)

フゥハァ

うっちー(全力で、打ち取るだけ……!!)

 

ザッ…

シュッ!
686: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 21:59:38.42 ID:7Xw4axi8
バシッ!

\ボール!/

 

ひなひな『1球目はバットを引き、見送ってボール!』

 

シュッ!

 

キンッ!

\ファール!/

 

ひなひな『2球目は振った! バットに当たってファール!!』

 

あんちゃん(やっぱり……)

あんちゃん(直球も、スライダーも……キレが、無くなってる……)

あんちゃん(さっきの、回が……限界、だったんだ……)
687: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 22:01:22.56 ID:7Xw4axi8
えみつん(もう、直球も、変化球も、力が……)

えみつん(彩……!)

 

うっちー「………」

ズキ…ズキ…!

うっちー(それでも、私は……)

うっちー(みんなの、ために……!)

 

あんちゃん(内田さん……)

あんちゃん(貴方からは、たくさんのことを学ばせてもらいました)

あんちゃん(チームの名前を背負う責任。ステージに立ち続ける覚悟)

あんちゃん(だからこそ……)

キッ!

あんちゃん(私も、手は抜きません)

あんちゃん(全力で、貴方に……!!)

 

うっちー(……いいよ。やってみなよ)

ザッ…

うっちー(……後輩ちゃんっ!)

ズキッ

シュッ!

 

 

ギィン!!
688: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 22:02:30.72 ID:7Xw4axi8
ひなひな『伊波、叩きつけた!!』

ひなひな『打球は、二遊間を――』

ひなひな『抜けたぁぁぁぁっ!!!』

 

ワアアアアッ!!

 

きゃん「抜けたぁっ!!」

しゅか「うっしゃあああああ!!」

 

ひなひな『叩きつけた打球は大きくバウンドしながらセンター前に抜けていきました!!』

ひなひな『伊波、2打席連続のヒット!! ノーアウト一・二塁!!』

 

うっちー「………」フゥハァ

ニッ…

 

あんちゃん(内田さん……)

あんちゃん(勝ちます。私たちは……!!)
689: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 22:04:25.37 ID:7Xw4axi8
ひなひな『さあ連続ヒットでまたもチャンスを作ったAqours!!』

ひなひな『ここで、迎えるバッターは――』

 

パクパク

ムシャムシャ…

 

りきゃこ「ちょっと、ありさ!!」

あいにゃ「何してんの? ていうか、何食べてんの!?」

ありしゃ「……ん……ライオンズ焼き、マネージャーに頼んで……」パクパク

ありしゃ「いくつか……買ってきてもらった」モグモグ

ありしゃ「ん」ゴックン

 

『4番、サード、小宮』

 

ありしゃ「……よしっ」

ペロッ

 

りきゃこ「あ、ありさ……?」

きゃん「大丈夫?」

 

ありしゃ「――大丈夫」

ザッ

ありしゃ「打つから。私」
690: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 22:05:14.85 ID:7Xw4axi8
ひなひな『さあ迎えるバッターは、四番の小宮です!』

ひなひな『先程は、まさかの隠し球成功で、μ'sの流れを断ち切った立役者!』

あさみん『まだノーヒットですが、前の打席では、あわや長打という当たりを放っていますからね』

あさみん『ここで、ピッチャーの内田選手をとらえることが出来れば……!』

 

ブンッ

 

ひなひな『打席に入る前に、素振りをする小宮――』

 

ブンッ!

 

えみつん(ありちゃん……ノーヒットとはいえ、手強い相手)

えみつん(ここを、抑えられれば……)

えみつん(……?)

 

ブンッ!!

 

えみつん「……!?」
691: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 22:06:14.60 ID:7Xw4axi8
ワアアアアッ!!

アリシャアアアアアッ!!

 

\プレイ!/

 

ありしゃ「………」

ザッ!

 

あいにゃ「ありさ……!!」

りきゃこ(頼むよ……)

りきゃこ(……四番!!)

 

えみつん(さっきの……バットが、風を切る音)

えみつん(あれは……!)

 

ひなひな『これは……! 小宮、バントの構えはとりません!』

ひなひな『普通に打っていこう、ということなのでしょうか……?』

あさみん『ええ。先ほどの素振りを見て、確信しました』

あさみん『彼女は、バスターなんか必要ない』
692: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 22:07:13.42 ID:7Xw4axi8
あさみん『バスターは、ボールが見やすくなると同時に――』

あさみん『スイングがコンパクトになって、スイングにかける時間を減らせる分、よりボールを長く見れる、という利点があります』

ひなひな『前の回で、姉様が説明してましたね』

あさみん『ところが、この小宮選手。スイングスピードが、非常に速い』

あさみん『振り出しからが、異様に速いんです。おそらくそれは、Aqoursの中でナンバーワン――』

あさみん『スイングスピードが速ければ、それだけ充分ボールを引きつけてからスイングを開始することが可能になる』

あさみん『だから、バスターをせずとも、投球からインパクトまでのカンマ数秒の時間を、最大限有効に使うことが出来る……!』

 

えみつん(ありちゃんに、甘い球は投げられない……!)

えみつん(彩。しっかり、コーナーに……!)
693: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 22:07:55.63 ID:7Xw4axi8
うっちー(大丈夫だよ。えみつん)

ザッ…

うっちー(たとえ――指が、ちぎれても)

ズキッ…

うっちー(ステージに、立った以上は――最後まで。全力で)

ズキッ

うっちー(私は、渾身のスライダーを、投げ込むだけ――!)

シュッ!

 

ズキィッ!

 

 

ありしゃ「―――」

ブンッ

 

 

カッ
694: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/19(金) 22:08:44.11 ID:7Xw4axi8
キィィィン!!

 

 

ひなひな『打ったぁぁぁーー!!!』

ひなひな『大きいぃぃーーー!!!』

 

あんちゃん「!!」

 

えみつん「!!」

 

うっちー「―――」
704: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/21(日) 22:17:32.25 ID:i4SAH6cL
ありしゃ(打球は――!?)

 

ひなひな『打球は伸びる!!』

ひなひな『センターの頭上を越えて――』

 

しゅか「入れ!!」

あいにゃ「入ってぇ!!」

 

ドカッ!!

 

ひなひな『フェンス直撃ぃぃーー!!』

ワアアアアッ!!

 

ありしゃ「ちっ!」

ダダダッ!
705: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/21(日) 22:19:12.18 ID:i4SAH6cL
りっぴー「このぉっ!!」

シュッ!

 

ひなひな『追いついたセンター飯田、ボールを投げる!!』

ひなひな『その間に二塁ランナー降幡、ホームイン!!』

ひなひな『そして一塁ランナー伊波も――』

 

あんちゃん「……!!」

ダダダダッ!

 

ひなひな『三塁を回ったぁぁ!!!』

ワアアアアッ!!

 

ザザザザッ!

\セーフ!!/

 

ひなひな『ボール間に合わなぁぁぁい!! ホームイン!!!』

ひなひな『四番・小宮のひと振り!! フェンス直撃、走者一掃のタイムリーツーベース!!』

ひなひな『Aqours、2点返して、1点差ぁぁぁ!!!』

ウオオオオッ!!

 

【μ's 4―3 Aqours】
706: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/21(日) 22:20:10.57 ID:i4SAH6cL
ありしゃ(くっ。ホームランに出来るかと思ったけど)

ありしゃ(あとひと伸び、足りなかったか……)

 

ふりりん「や、やった……!」

しゅか「やったあああ!!」

あんちゃん「これで1点差!!」

あいにゃ「うおおお!! ありさぁぁー!!」

 

ひなひな『あわやホームランかという大きな当たり!!』

ひなひな『四番の小宮、ここでしっかり役目を果たしました!!』

 

えみつん(彩……)

 

ひなひな『一方、ここまでマウンドを守ってきた内田、ついに打ち崩されました!!』

ひなひな『その胸中、いかばかりか!?』

 

うっちー「………」
707: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/21(日) 22:22:17.88 ID:i4SAH6cL
うっちー(なんで……かな)

うっちー(なんで……“あの頃”の、ことなんて……思い出しちゃうんだろ……)

 

――内田彩、って言います……あのぉ、よろしく……

 

うっちー(私たち……みんな、人見知りばっかりで)

うっちー(ジャケ裏の撮影で、初めてみんなで顔を合わせた時も……ぎこちなかったなぁ……)

うっちー(だけど……えみつんは……)

 

――内田さん、だよね? 新田です、よろしく!

――あのぉ……なんで、踊ってるの?

――だってだって、このPV、私たちも踊るんだよね!?

 

うっちー(最初っから……変な人、だったなぁ……)
708: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/21(日) 22:24:49.64 ID:i4SAH6cL
『5番、ファースト、高槻』

 

きんぐ「よっしゃ……!!」

きゃん「きんぐ、続いてー!!」

あんちゃん「きんぐ……! お願い!!」

あんちゃん「全力で……内田さんに、向かっていって……!!」

 

うっちー「………」

ハァ…ハァ…

 

ひなひな『なおもマウンドを守ろうとする、エース・内田……!!』

ひなひな『その体を支えているのは、もはや執念だけなのか、それとも……!!』

 

みもりん(うっちー……!)

 

えみつん(彩……!)
709: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/21(日) 22:26:20.54 ID:i4SAH6cL
 

――ここに来た80人が、絶対自慢できるようにしてあげるからね!!

 

うっちー(お客さんたちの前で、啖呵を切ったこともあったっけ)

うっちー(いつの間にか、私にとっても)

うっちー(ことりと過ごす時間が。みんなと過ごす時間が)

うっちー(特別なものになっていって……)

 

――うっちー、相変わらずすごいね。あれだけ踊りながら、キャラ声で歌えるなんて……

――みもりんこそ。さっすが、ダンス上手だし。負けたくないなぁ。

 

うっちー(みもりんは……)

うっちー(良きライバルで。戦友……って、感じだったな)

 

 

カキンッ!!

 

ひなひな『またとらえたぁぁーー!!!』

ひなひな『三遊間、破る!!』
710: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/21(日) 22:27:19.88 ID:i4SAH6cL
うっちー(いっぱい練習して。いっぱい歌って)

うっちー(いっぱい、お話したね)

うっちー(3人で。9人で)

 

 

ひなひな『小宮、帰ってくる!! バックホームは間に合わない!!』

ひなひな『ホームイィィン!!!』

ひなひな『高槻も続いた!! Aqours、また1点追加!!』

ワアアアアッ!!

 

 

うっちー(いつだったか――3人で、練習してた時)

うっちー(こんなこと、話してたの――覚えてる?)
711: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/21(日) 22:28:27.58 ID:i4SAH6cL
 

みもりん「ウチらさ……今はこうして、頑張ってるけど」

みもりん「5年後とか、10年後、どうなってるのかな?」

えみつん「そうだね……μ'sだって、ずっと今まで通りに活動していけるかは、わかんないし」

うっちー「だけど……だけどさ」

うっちー「なんか私、思うんだよね」

えみつん「……うっちー?」

 

 

ひなひな『この回、内田から4連打!!』

ひなひな『Aqours、ついに同点に追いつきましたぁぁーー!!!』

ウワアアアアッ!!

 

【μ's 4―4 Aqours】

 

 

うっちー「もし……μ'sとしての活動が、いつか終わっても」

うっちー「なんだかんだでさ。私たち」

うっちー「ずっと、仲間でいれる気がするよ」

 
712: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/21(日) 22:31:59.84 ID:i4SAH6cL
 

スパンッ…!

 

\ボール! フォア!!/

 

ひなひな『ストライクが入らない……!』

ひなひな『続く逢田に対し、1球もストライクが入らず、フォアボール……』

あさみん『もはや……もう……』

ザワザワ…!

 

うっちー「ぜぇっ、はぁ……!!」

プルプル…

うっちー(………)

うっちー(腕、が……)

 

ザッ…

 

うっちー「……!」

えみつん「………」

うっちー「……えみつん……」

うっちー「他の、みんなも……」
713: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/21(日) 22:34:57.51 ID:i4SAH6cL
えみつん「彩……」

ニコッ

えみつん「ありがとう。ここまで、投げてくれて……」

うっちー「……っ!!」

うっちー「………」

うっちー「…………」

うっちー「あは……ごめん」

うっちー「もう、腕が……いうこと、きかないの……」

ポロッ…

うっちー「……ごめん」

うっちー「ごめん……!」

 

くっすん「!」

そらまる(内田さんの……うつむいた、顔から……)

ジョルノ(涙の、雫が……落ちて……)
714: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/21(日) 22:35:53.23 ID:i4SAH6cL
みもりん「……うっちー」

えみつん「……彩」

ダキッ

えみつん「さっき、彩が、自分で言ってたじゃない」

えみつん「謝ることなんか、ないんだって」

えみつん「……ありがとう。μ'sのマウンドを、守ってくれて……」

うっちー「……!!」

みもりん「ありがとう、うっちー」

ギュッ…

 

ぱいちゃん(うっちー。ほんとに、ありがと……!)ウルッ

りっぴー(うっちーが頑張った分、ウチらが取り返すから)

シカコ(当ったり前だよ。チームなんだからさ)
715: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/21(日) 22:36:52.74 ID:i4SAH6cL
えみつん「彩……」

えみつん「交代しよ」

うっちー「………」

ジョルノ「お疲れ、うっちー」

そらまる「内田さんの投球、マジで凄かったっす!」

くっすん「ね。ちょっと休むといいよ!」

みもりん「うっちー。大丈夫!」

みもりん「私たち、いつだって、仲間なんだから!」

うっちー「……!」

えみつん「大丈夫。うっちーの、想いは……」

えみつん「μ'sの全員に、伝わってるよ」

うっちー「………」

うっちー「……うん……!」
716: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/21(日) 22:43:41.39 ID:i4SAH6cL
ウッチィィィィ!!

アリガトォォォ!!

パチパチパチッ

 

ひなひな『マウンド上に集まっていた、μ's守備陣ですが……』

あさみん『どうやら、ピッチャー交代のようですね』

ひなひな『ここまで6回途中4失点、力投を続けていた内田ですが、ついに交代となるようです!!』

ひなひな『同点に追いつかれはしたものの、気迫のこもった素晴らしいピッチングを続けた内田に、スタンドからは大きな拍手!!』

ひなひな『しかし、代わりのピッチャーは、誰が……?』

 

『――μ's、守備の変更をお知らせいたします』
717: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/21(日) 22:46:21.54 ID:i4SAH6cL
『ピッチャーの内田が、ライト』

『ライトの久保が、レフト』

『レフトのPileが、ショート』

『ショートの三森が、キャッチャー』

 

あんちゃん「……!!」

ふりりん「……え?」

しゅか「て、ことは……!!」

 

『――キャッチャーの新田が、ピッチャーに入ります』

 

えみつん「―――」

ザッ…!
718: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/21(日) 22:49:40.67 ID:i4SAH6cL
『1番、レフト、久保』

『3番、キャッチャー、三森』

『4番、ピッチャー、新田』

『5番、ライト、内田』

『7番、ショート、Pile』

『以上に変わります』

 

ウオオオオオッ!!

エミツゥゥゥンッ!!

 

ひなひな『こっ……』

ひなひな『ここでついに、ピッチャーに、チームリーダーの新田です!!!』

 

ワアアアアッ!!

 

ありしゃ「……!!」

ふりりん「えみつんさんが……」

あんちゃん「ピッチャー……!!」
719: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/21(日) 22:50:49.20 ID:i4SAH6cL
えみつん「………」

グッ…

えみつん(うっちーから、受け取ったボール……)

えみつん(……ボールだけじゃない)

えみつん(うっちーの、想いも……しっかり、受け取った!)

 

キッ!

 

えみつん「さぁ――」

えみつん「ファイト、だよ!!」
747: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:07:36.37 ID:r5ko124q
ひなひな『さあ大きく守備を変えてきました、μ's!!』

ひなひな『内田の後を継いで、満を持してマウンドに立つのは、チームリーダーの新田!!』

ひなひな『受けるキャッチャーは、なんとショートに入っていた三森!!』

ひなひな『新田・三森という新たなバッテリーが、Aqoursの前に立ちふさがります!!』

 

ワアアアアッ!!

エミツゥゥゥン!!

ミモリィィィン!!

 

ありしゃ「えみつんさんが、ピッチャー……!」

しゅか「マジかよ……!」
748: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:09:20.15 ID:r5ko124q
みもりん「……よしっ」

バシッ

みもりん「しまっていこー!」

 

うっちー(えみつん……)

うっちー(ごめん。私が、不甲斐ないばっかりに……)

シカコ(だけど……)

りっぴー(えみつんなら……大丈夫)

 

ぱいちゃん(頼むよ、えみつん……!)

くっすん(思いっきり、やってやれ!)

そらまる(えみつんが、出てきた以上……)

ジョルノ(……終わりだよ。もう)

 

えみつん「………」
749: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:12:17.49 ID:r5ko124q
ひなひな『さあ、新田が投球練習に入ります』

ひなひな『一体どんな球を投げ込むのか、固唾を飲んで見守るAqoursナイン』

 

あんちゃん「………」ゴクッ

ふりりん「一体、どんな球を……!?」

すわわ(キャッチャーだけあって、しゅかへの牽制を見ても、新田さんの肩の強さは相当なもの)

すわわ(て、ことは……)

 

えみつん「――」

ザッ…

シュッ!

 

バシッ!

 

ひなひな『右のオーバースローで投げ込みました、新田!』

あさみん『なかなかの球速ですね……!』

 

オオオオオッ
750: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:15:17.03 ID:r5ko124q
きゃん「速い……!」

あいにゃ「やっぱり新田さん、肩強い……!」

ありしゃ「うん……だけど」

しゅか「速さは――オラつきモードのあんじゅと、同じくらい?」

あんちゃん「だからオラつきってゆーなし……!///」

すわわ(確かに。120キロいくかいかないか……って、感じ?)

 

えみつん「」

シュッ!

 

バシッ!

みもりん「いいよー、えみつん!」

 

りきゃこ(確かに速い……だけど、これなら……!)

きんぐ(打ち返せなくは……ないかも。あんちゃんくらいの球速の球なら、マシンで打ち込みもしたし……!)
751: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:17:20.37 ID:r5ko124q
ひなひな『流石、強肩だけあって、なかなかの球速ですね、姉様!』

あさみん『120キロ前後、というところでしょうか。やはり女子選手としては、かなりの速さですね』

あさみん(だけど……なんだろう)

あさみん(なんだか……?)

 

えみつん「………」

パシッ

 

ひなひな『さあ投球練習も終わり、いよいよ試合再開です!』

ひなひな『Aqoursは一塁に逢田、二塁に高槻を置き、なおもノーアウト一・二塁!』

ひなひな『μ'sとしては、依然ピンチが続きます!』

ひなひな『ここで、迎えるバッターは――』

 

『7番、ライト、諏訪』
752: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:19:25.55 ID:r5ko124q
あいにゃ「よーし、すわわ、頑張れー!!」

しゅか「同点と言わず、逆転しちゃえー!!」

すわわ「……ん」

ザッ

 

ワアアアアッ!!

スワワァァァッ!!

 

ひなひな『打席には7番の諏訪!』

ひなひな『ここまでヒットこそありませんが、バスター作戦を考案、四球で出塁もしている、Aqoursきっての曲者です!』

ひなひな『Aqours、さらに追加点を奪って、一気に逆転となるか!?』

 

すわわ(あの球速なら、マシンで打ち込みの練習もしてるし、当てていける)

すわわ(だけど……)

 

あんちゃん(だけど……なんだろう)

あんちゃん(なんだか……胸騒ぎが……)
753: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:20:36.27 ID:r5ko124q
ひなひな『さあ、いよいよ、ピッチャー新田――』

ひなひな『諏訪に対して、第1球!』

 

みもりん(……えみつん)

スッ

みもりん(いいよ。思いっきり、来て……!)

 

えみつん(……わかったよ)

えみつん(すず――!)

 

ガバアッ!

 

あさみん『……!?』

ひなひな『!? 新田、ランナーがいるのに、』

あさみん(大きく腕を振りかぶった――!?)
754: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:21:54.55 ID:r5ko124q
グワッ!

 

すわわ「!?」

すわわ(上体を――こちらに背番号が見えるほど、)

すわわ(大きくひねった!?)

すわわ(これは――)

 

あさみん『これは――!!』

 

あんちゃん「――“トルネード投法”!?」

 

シュバッ!!

 

すわわ「――!!」

 

ズバァン!!
755: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:24:43.33 ID:r5ko124q
シー…ン

 

あんちゃん「………」

きゃん「………え?」

ふりりん「ちょっ……と、待っ……」

しゅか「……何?」

あいにゃ「今の……速さ……!?」

 

\ス…ストライッ!!/

 

ウ…

ウオオオオオッ!?

 

ひなひな『はっ……速い!!?』

ひなひな『投球練習よりもはるかに速い、新田の球!!』

あさみん『電光掲示板の、球速は……!?』

ひなひな『――!!』

ひなひな『ひゃっ……135キロ!!?』

ワアアアアッ!!

 

えみつん「………」
756: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:30:09.90 ID:r5ko124q
すわわ「……っ!!」

 

ひなひな『新田の速球に、諏訪、バットを動かすことすら出来ず!!』

あさみん『……女子プロ野球ですら、ピッチャーの速球の平均球速は110キロ前後と言われています』

あさみん『ですから、伊波選手がオーバースローで投げ込んだ120キロも、女子選手では充分剛速球と言えるんです』

ひなひな『ですが、今の新田選手の球速は……!!』

あさみん『……現在、日本人女子選手の最高球速は、京都フローラに所属する小西美加選手が計測した126キロ』

あさみん『そして世界最速は、アメリカのサラ・ハデク選手が計測した、137キロ……!!』

ひなひな『にっ……新田選手の球速は、日本人最速を越えて……世界最速クラスということですか!?』

あさみん『新田さん……まさか、これほどとは……!!』

 

りきゃこ「うっそでしょ……!?」

きんぐ「は……反則じゃん……あんなの……」
757: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:35:17.21 ID:r5ko124q
みもりん(いっつ~……)

ビリビリ

みもりん(えみつん、気合入ってるね……)

 

うっちー(……そう。えみつんが、マウンドに上がった以上)

うっちー(もう……点は、取れない)

 

ザッ!

 

ひなひな『新田、今度はセットポジションから!』

 

シュバッ!

 

ズバンッ!!

\ストライクツー!/

 

オオオオッ

ひなひな『せっ……セットポジションでも、速い!!』

 

えみつん「……ふぅ」
758: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:38:03.42 ID:r5ko124q
ひなひな『新田、剛速球であっという間に追い込みました!!』

ひなひな『しかし、新田選手の……第1球、あの、大きく振りかぶったピッチングフォームは……!』

あさみん『――はい。言わずと知れた日本人メジャーリーガーのパイオニア、野茂英雄投手の代名詞――』

あさみん『――“トルネード投法”』

ひなひな『私も、名前はよく知ってます!』

あさみん『振りかぶった投手が、打者に背中が見えるほど大きく体をひねり、そこから一気に球を放つ、独特の投法』

あさみん『体の回転やひねりから生み出される筋肉の反発作用により、球速や球威が大きく増す』

あさみん『しかし、強靭な下半身や体軸が無ければ習得できない、非常に難しい投法です』

あさみん『元々肩の強い新田選手ですが、この投法でさらに球速・球威を増しているのだとしたら……!!』

 

あんちゃん(手が……つけられない……!!)
759: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:39:00.22 ID:r5ko124q
すわわ(……マシンで、速球を打つ練習だってした)

すわわ(でも、120キロくらいが限界だと思って、マシンの球速もそこまでだった)

すわわ(こんな、“世界最速”レベルを想定した練習なんて、してない……!)

 

ザッ!

シュバッ!

 

ブンッ

ズバンッ!!

 

\ストライッ! バッターアウッ!/

 

ひなひな『さっ……三球三振!!』

ひなひな『最後はバットを振りましたが、諏訪、新田の剛速球の前にかすりもせず!!』

ワアアアアッ!!

あさみん『第1球は、威圧の意味も込めてでしょうか。ランナーを背負いながら、振りかぶっての全力投球』

あさみん『しかし、その後のセットポジションからでも、130キロ台の速球を連続で……!!』
760: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:41:45.19 ID:r5ko124q
すわわ「………」

あいにゃ「す、すわわ……」

しゅか「ど、ドンマイ!」

しゅか「速さに慣れれば、あの球だって……!」

ふりりん「そ、それに、バスター作戦だってあるし!」

すわわ「……いや」

 

すわわ(バスターで、どうにかなるとか……)

すわわ(そういう次元じゃない。あの、球は……)

 

『8番、レフト、小林』

 

きゃん「えっ!?」

ギクッ
761: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:45:19.87 ID:r5ko124q
しゅか「『え!?』じゃないだろ! 早くバッターボックス行けって!!」

きゃん「あ、うう、うん……」

あんちゃん「……あいきゃん」

あんちゃん「気をつけて」

きゃん「……!」ゾッ

 

ひなひな『さあワンナウトで、打席には8番の小林!!』

ひなひな『アウトを取られたとはいえ、まだ一塁・二塁! どうにかしてチャンスを活かしたい所ですが……』

 

きゃん(あ、あたし……ここまで、2打席連続、デッドボールで……)

きゃん(もし、この回も……あの、新田さんの球が、当たったりしたら……!)

サーッ…

きゃん(死ぬ。きっと、死ぬ……!!)
762: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:46:02.91 ID:r5ko124q
\プレイ!/

 

ザッ!

 

ひなひな『新田、セットポジションから、投げた!!』

 

シュバッ!

 

きゃん「ひ!?」

 

ズバッ!

\ストライク!/

 

きゃん(は、はや、はや……)

きゃん(練習の時のマシンや……あんちゃんや、内田さんの球は、なんだったの……!?)

 

ひなひな『新田の速球の前に、打席の小林、完全に逃げ腰です!!』

 

ありしゃ「あ~あ……完全に、ビビっちゃってる」

しゅか「こらー、小林ー!!」
763: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:46:30.48 ID:r5ko124q
バシィッ!

\ストライクツー!/

 

ひなひな『こちらも、あっという間に追い込まれた!』

 

きゃん(だ、だって……どうしろってゆうの……!?)

きゃん(非力な私が、こんな球……!)

 

えみつん「………」

 

ガバアッ!

 

ひなひな『新田、また振りかぶった!!』

 

グワッ

シュバッ!!
764: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:47:17.63 ID:r5ko124q
きゃん「やっ……!!」

 

ズバン!!

\ストライッ! バッターアウッ!/

 

オオオオオッ!!

ひなひな『ま、またもストレートで三振!!』

あさみん『しかも最後の、振りかぶっての1球は――』

ひなひな『――137キロ!!』

ひなひな『電光掲示板の球速表示は、137キロ!!』

ひなひな『なな、なんと新田、世界最高球速に並びました!!』

ワアアアアッ!!
765: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:48:30.00 ID:r5ko124q
りきゃこ「………」

きんぐ「………」ボーゼン

きんぐ(……あ、呆気に取られて、盗塁狙うどころじゃなかった……)

きんぐ(まあ、私、足遅いけど……)

 

みもりん「いつつ……いいよ、えみつーん!」

シュッ

 

えみつん「うん、すず!」

パシッ

 

ジョルノ(そして、えみつんの剛速球を取れる程のフィジカルの持ち主は、私たちの中で……みも、ただひとり)

ジョルノ(えみつん、みも。このバッテリーは、そうそう打ち崩せないよ)
766: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:50:13.60 ID:r5ko124q
『9番、センター、鈴木』

 

きゃん「ご、ごめん……」

きゃん「だけど、気をつけて……」

あいにゃ「う、うん」

ありしゃ「あいなー! しっかりボール見てー!」

しゅか「ストレートしか投げてないよ! どんなに速くったって、当てられる!!」

すわわ「………」

 

ひなひな『ノーアウト一・二塁が、ツーアウト一・二塁になりました!』

ひなひな『リリーフした新田から、未だバットにボールを当てることすら出来ないAqours!』

 

あいにゃ(怖がってちゃ駄目……怖がってちゃ……!)

ドキドキ
767: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:51:32.56 ID:r5ko124q
シュバッ!

 

バシィ!!

\ストライク!/

 

あいにゃ「………!!」

あいにゃ(打席に立って見ると、ますます速く見える……!!)

 

あさみん『先程までの内田投手の球速は、ごくごく平均的な110キロ前後でした』

あさみん『内田投手のスピードに慣れてしまっている今、Aqoursには、新田投手の球が一層速く見えていると思いますよ』
768: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:52:47.33 ID:r5ko124q
ありしゃ「あいなー!!」

しゅか「振らなきゃー!!」

 

あいにゃ(そ、そうだ。球しっかり見て、狙いを……)

 

シュバッ!

 

あいにゃ「――!?」

 

ブンッ

バシィッ!

\ストライクツー!/

 

ひなひな『ボール球に手を出してしまった鈴木!!』

ひなひな『またも追い込まれ、ツーストライク!!』
769: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:53:53.29 ID:r5ko124q
あいにゃ(……す、ストレートだけなのに)

あいにゃ(どこに、ボールが飛んでくるのか、わかんない……!!)

 

すわわ(……内田さんは、まるで精密機械みたいに、コントロールに優れてた)

すわわ(それに対し、新田さんは、球速・球威に優れる分、コントロールは良いとは言えない)

すわわ(だけど……)

 

あさみん『こうして、適度に荒れてて、球威で押してくるタイプのピッチャーは』

あさみん『狙い球が、絞りにくい分』

あさみん『実は一番、とらえにくい……!!』
770: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:54:35.97 ID:r5ko124q
うっちー「――えみつん!」

 

みもりん「……よーし」

みもりん「決めよ! えみつん!」

 

えみつん「うん。わかった……!」

ガバッ!

 

ひなひな『三たび、新田、振りかぶった!!』

 

グワアッ

シュバッ!!

 

あいにゃ「……!!」

ブンッ

 

ズバァン!!
771: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:56:12.70 ID:r5ko124q
\ストライッ! バッターアウッ!/

 

ひなひな『さ、最後の球も高めでしたが、つられて振ってしまった鈴木!!』

ひなひな『球速は……!?』

 

――138km/h

 

ひなひな『ひゃっ……138キロ!!!』

ひなひな『新田、世界最速を更新しました!!』

ひなひな『なんとここに、世界最速の女子ピッチャーが誕生です!!!』

ウオオオオッ!!

ワアアアアッ!!

 

えみつん「ふぅー……」

えみつん「……よしっ」
772: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:57:19.20 ID:r5ko124q
くっすん「えみつーん!!」

みもりん「カンペキ! 絶好調だね!」

りっぴー「さっすがえみつん! めっちゃ速いし!!」

そらまる「速すぎて見えなかったわ、マジで」

えみつん「いやいや、それは嘘!」

うっちー「……えみつん」

クスッ

うっちー「……ありがと」

えみつん「なんのなんの! まだまだこれからだよ!」

ニコッ

 

あさみん『ここまで、新田投手が投じた球は、全てストレート……!!』

あさみん『しかし、下位打線とはいえ、Aqoursは、かすることすら出来なかった』

あさみん『一体、この最強投手を前に、どう挑むのか……』

ひなひな『リリーフの新田、見事、三者連続三振に切って取り、Aqoursに逆転は許しませんでした!!』

ひなひな『スコアは4対4の同点のまま!! 試合は、終盤戦に入ります!!』
773: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/10/30(火) 00:59:04.32 ID:r5ko124q
あんちゃん「………」

きゃん「ど……どうすんのさ……」

きんぐ「せっかく、内田さんを攻略したのに……」

ふりりん「あんなに、すごい球……!」

あんちゃん「………」 

あんちゃん「だけど……負けてる訳じゃない」

あんちゃん「みんなで、頑張って……やっと、追いついたんだから……!!」

 

えみつん「………」チラッ

ニコッ

 

あんちゃん「……!」

キッ

あんちゃん「きっと、まだチャンスはあるはず」

あんちゃん「いや――無くったって、作るんだ」

グッ…

あんちゃん「絶対、最後まで……諦めない……!!」
795: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 20:13:13.09 ID:bunqP2Ir
【7回表】

 

あさみん『さて、7回のマウンドに立った、Aqoursの伊波投手』

あさみん『ここまで6イニングを投げ、流石に疲れが見えてきたものの――』

あさみん『直球、シンカー、そして5回に解禁したチェンジアップも織り交ぜ、緩急をつけたピッチングで、μ's打線を打ち取っていきます』

 

コキンッ!

 

しゅか「オーライ!」

パシッ

\アウト!/

 

ひなひな『この回先頭の楠田、詰まらされ、ショートフライでワンナウト!』

 

くっすん「あーん、ホームラン狙ったのに、なんでー!」

ジョルノ「だから、くっすんは考えて打っちゃ駄目なんだって……」
796: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 20:14:47.71 ID:bunqP2Ir
ひなひな『続く1番、久保――』

 

キンッ!

 

ふりりん「任せろ!」

パシッ

シュッ!

 

きんぐ「おっけー!」

パシッ!

\アウト!/

 

ひなひな『セカンドへのゴロを、降幡が落ち着いて処理し、ツーアウト!』

 

シカコ「ちっ……」

シカコ(球威は、大したことないけど……)

シカコ(変化球のバリエーションが増えて、ますます打ちづらくなってるな)
797: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 20:16:32.85 ID:bunqP2Ir
ブンッ!

バシッ!

\ストライッ! バッターアウッ!/

 

そらまる「くっ……!」

そらまる(この、直球とチェンジアップの急速差……!)

そらまる(なるほどね。えみつんでも、打ちあぐねる訳だわ)

 

ひなひな『徳井はチェンジアップで三振!!』

ひなひな『同点に追いついた後のマウンド、エース伊波、三者凡退に切って取りました!!』

あさみん『ピンチを迎えた5回と同じ打順から始まりましたが、ここは伊波・逢田のバッテリー、冷静でしたね』

ワアアアアッ!!

 

えみつん「うーむ、流石あんちゃん」

みもりん「冷静になって投げてくると、ほんと厄介だね……」

 

あんちゃん「よっし……!」

りきゃこ「あんちゃん、ナイスピッチング!」

あんちゃん(とにかく、ここから逆転するためには)

あんちゃん(この先、1点でも取られる訳にはいかない……!)
798: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 20:21:04.44 ID:bunqP2Ir
【7回裏】

 

あさみん『一方のμ's、リリーフした新田投手のピッチングも、負けていません』

あさみん『伊波投手とは対照的な、力で押さえ込む投球で、Aqours打線を封じ込めます』

 

グワッ

シュバッ!

 

ズバン!!

\ストライッ! バッターアウッ!/

 

しゅか「ぐ……く……!」

しゅか(何コレ、マジでめっちゃ速い……!)

 

ひなひな『先頭の斉藤、空振りの三振!!』

ひなひな『やはり、全て130キロ台のストレート!!』

 

きゃん「ああ……」

あいにゃ「しゅかでも、当てられないなんて……」
799: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 20:25:50.94 ID:bunqP2Ir
きゃん「ね、ねえ……ちょっと、思ったんだけど……」

あんちゃん「……え?」

きゃん「この試合って、9回までで、延長は無いんだよね?」

きゃん「それなら、あと2回、μ'sの攻撃を無失点で逃げ切れば、少なくとも負けることは……」

あんちゃん「……!」

きんぐ「……そうだね。正直、新田さんから、点が取れる気がしないし……」

あんちゃん「だ……駄目だよ、そんなの!」

あんちゃん「そんな後ろ向きな気持ちじゃ……! 勝たなきゃ、駄目だよ!!」

あんちゃん「μ'sを乗り越えなきゃ、駄目じゃんよ!!」

りきゃこ「あんちゃん……」

きゃん「う……そ、そうだよね。ごめん……」

きんぐ「だけど……」

あいにゃ「どうやって……新田さんから、点を……」

あんちゃん「………っ」
800: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 20:29:21.82 ID:bunqP2Ir
ズバン!!

\ストライッ! バッターアウッ!/

 

ひなひな『降幡も、新田の豪速球の前に手が出ず!!』

ひなひな『新田、前の回から数えて、これで5者連続の三振です!!』

ワアアアアッ!

 

ふりりん(うう……すごい、速い……)

ふりりん(流石は、憧れのえみつんさん……)

 

ひなひな『伊波の投球を“柔”とするなら、新田の投球は正に“剛”!!』

ひなひな『さながら、牛若丸と弁慶のような、対照的な力のぶつかり合いです!!』

 

あんちゃん「くっそー……!」

あんちゃん「とにかく、塁に出なきゃ。ボール球に釣られないように……!」

ザッ

 

すわわ「………」

あいにゃ「……すわわ?」

ありしゃ「どうしたの? さっきから、黙り込んじゃって」

すわわ「……ん。ちょっと、気になることがあって」

あいにゃ「気になること?」
801: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 20:30:25.96 ID:bunqP2Ir
すわわ「……新田さん。あんなに、すごいピッチャーなのに……」

すわわ「なんでμ'sは、新田さんを先発に立てなかったんだろ?」

ありしゃ「え?」

あいにゃ「そりゃ、内田さんだってすごいピッチャーだし……」

ありしゃ「今回は、内田さんを先発にして、新田さんにつなげるっていう風に、決めてあったんじゃないの?」

すわわ「ん……」

すわわ(だとしても……もうひとつ、気になることがある)

すわわ(内田さんは……なんだか、無理を押してまで、1イニングでも長く投げようとしていたように見えた……)

すわわ(なるべく、新田さんを、投げさせたくなかった……?)

すわわ(単なる、新田さんのスタミナの問題? それとも……)

すわわ(………)

すわわ(もしかして、そこに……新田さん攻略の、鍵が……?)
802: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 20:32:18.58 ID:bunqP2Ir
ズバッ!

\ボール! フォア!/

 

あんちゃん「やたっ!」

みもりん「えー、今の入ってなかったー?」

 

ひなひな『伊波、よく見た! フォアボール!!』

ひなひな『未だ新田の球威に押されてはおりますが、Aqours、新田から初めてのランナーが出ました!』

あさみん『新田投手は、コントロールはまちまちで、球にばらつきがあります』

あさみん『狙い球が絞りにくく、乗ってくると手がつけられませんが――』

あさみん『冷静に球を見ていけば、こうして出塁も狙っていけます』

 

しゅか「ナイス、あんじゅ!!」

りきゃこ「ありさ、続いて!! 頼むよー!!」

ありしゃ「……ん」
803: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 20:33:48.52 ID:bunqP2Ir
ブンッ!!

 

りきゃこ「あーもう、ボール球じゃん!! 振るなしー!!」

あいにゃ「これで三振、スリーアウト……」

 

あんちゃん「――ありさちゃん!! 走ってー!!」

 

ひなひな『キャッチャー三森、ボールを後ろにそらしています!!』

ワアアアアッ

 

みもりん「ばいやー……!!」

 

ありしゃ「――!!」

ダダダッ!

 

ひなひな『三森、投げられない! セーフ!!』

ひなひな『振り逃げです!! 小宮、三振ですが振り逃げで出塁!! ツーアウトながら一・二塁!!』

オオオオオッ!
804: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 20:34:41.64 ID:bunqP2Ir
ジョルノ(いかに、みもと言えど、えみつんの豪速球を取り続けるのは大変か……)

ジョルノ(まあ、それでも……)

 

みもりん「ごめん、えみつーん!」

シュッ

 

えみつん「どんまい! 大丈夫だよ、すず!」

パシッ!

えみつん(それでも……打たせなければ、いい)

 

あいにゃ「よっしゃー!! ありしゃ、ナイス!!」

きゃん「いけー、かなこ!!」

きんぐ「よし、なんとか……!」
805: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 20:36:24.90 ID:bunqP2Ir
グワッ!

シュバッ!!

 

きんぐ「……っ!!」

 

ズバンッ!!

\ストライッ! バッターアウッ!!/

 

ひなひな『ああー、やはり三振!! スリーアウト!!』

ひなひな『最後も全力のストレート!! 球速は前の回に続き、138キロを計測!!』

ワアアアアッ!!

 

きんぐ(駄目だ……)

きんぐ(こんなの……打てっこない……!)

 

きゃん「ああー……」

ふりりん「駄目か……」

 

ひなひな『チャンスを作るも、最後は新田の力の前にねじ伏せられてしまったAqours!!』

ひなひな『新田は、ここまで振り逃げも含め、早くも7奪三振!!』

ひなひな『ヒットはおろか、凡打すら許さず!! やはり、この新田から点を奪うことは出来ないのか!?』
806: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 20:37:19.31 ID:bunqP2Ir
きんぐ「………」

きゃん「………」

りきゃこ「……ほら、暗くなんないで! 顔上げてこ!」

あいにゃ「そ……そうよそうよ! まだ、負けてる訳じゃ……!」

あんちゃん「………」

あんちゃん(でも……確実に、言えることがある)

あんちゃん(私たちは……この先)

あんちゃん(もう、1点でも、取られる訳にいかない……!)

 

あさみん『……残るイニングは、あと2回』

あさみん『おそらく……次の、1点が』

あさみん『この試合を、決めることになるでしょう』
807: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 20:40:10.20 ID:bunqP2Ir
【8回表】

 

えみつん「……いよいよ残り、あと2回」

えみつん「この回は、クリンナップから! ここでしっかり、点を取って――」

えみつん「絶対、勝ちに行こう!!」

8人「おおー!!」

 

ひなひな『ベンチ前、円陣を組んで、気合を入れるμ'sナイン!!』

ひなひな『この終盤8回、μ'sは3番の三森からという好打順!!』

あさみん『μ'sとしては、ここでなんとしても1点を取っておきたい』

あさみん『μ'sも、Aqoursも、ここが勝負ですよ!』

 

あんちゃん「………」

あんちゃん(クリンナップに回る、この回が、勝負)

あんちゃん(この回を、抑えられれば……!)
808: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 20:41:13.51 ID:bunqP2Ir
キィンッ!

 

ひなひな『三森、打った!!』

ひなひな『が……もうひと伸び、ありません!』

ひなひな『レフトの小林、捕りました! この回先頭の三森でしたが、ここは詰まらされて、レフトフライに倒れました!』

 

みもりん「くっ……」

プルプル…

みもりん(思った以上に、手がしびれて……)

えみつん「……ごめん、すず。私の球を捕ってるせいだよね?」

みもりん「……なんのなんの。この打席は、ミスっちゃったけど」

みもりん「残り2イニング。しっかり、えみつんのボール、受け止めるからさ!」

えみつん「うん……!」

 

あんちゃん「うしっ……!」

あんちゃん(先頭の、三森さんは打ち取れた……!)

 

りきゃこ(だけど……怖いのは、この後。次は……)

 

『4番、ピッチャー、新田』
809: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 20:44:51.24 ID:bunqP2Ir
ワアアアアッ!

 

ひなひな『さあ、今やこの試合の中で最も注目を集める新田が、バッターボックスに入ります!!』

ひなひな『ピッチャーで四番!! 勝利を引き寄せる一打を放つことが出来るか!?』

 

そらまる「えみつん、いけー!!」

シカコ「ホームラン狙ってけー!!」

 

えみつん「よーし……!」

ザッ

 

りきゃこ(……あんちゃん。わかってるよね?)

りきゃこ(ここは、真正面からいく訳にはいかない……)

 

あんちゃん「………」
810: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 20:45:47.32 ID:bunqP2Ir
ギィンッ!

\ファール!/

 

ひなひな『新田、外のボールをカットしてファール!』

ひなひな『バッテリー、外中心に、慎重に攻めます! カウントはツースリー!』

 

みもりん(こりゃ、勝負……)

みもりん(避ける、かもね)

 

バシィ!

\ボール! フォア!/

 

ひなひな『最後も微妙なコース、外れました!』

ひなひな『やや勝負を避けたようにも見える、フォアボール! ワンナウト一塁です!』
811: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 20:51:08.48 ID:bunqP2Ir
りきゃこ「あんちゃん、おっけー!」

りきゃこ(外、外で攻めて、最後はフォアボールになっちゃったけど。今は、これでいい)

りきゃこ(あんちゃん的には、真正面から挑みたかったかもしれないけど……)

りきゃこ(流石のあんちゃんも、疲れでボールのキレが落ちてきてるし)

りきゃこ(無理に、勝負に出ることは……)

 

ふりりん「うん、まあ……」

しゅか「しょーがない……か」

 

あんちゃん(そう。逃げた訳じゃない。逃げた訳じゃないんだ)

あんちゃん(だけど、この状況で、長打やホームランを打たれることを考えたら……)

 

あさみん『終盤のこの状況で、無理に勝負に出るリスクを考えれば、致し方ありませんね』

あさみん『ですが……』

あさみん(この、ある意味“逃げ”とも取れる選択をしたことが……)

あさみん(のちのち、尾を引かなければいいんだけど……)
812: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 20:52:36.17 ID:bunqP2Ir
『5番、ライト、内田』

 

ひなひな『打席には、ピッチャーからライトに退いた内田』

ひなひな『打席の方で、失点の借りを返したいところ!』

ワアアアアッ!

ウッチィィィィ!

 

うっちー「………」

ザッ

 

うっちー(えみつんを、フォアボールにしたことを、“正解”と思ってるなら……)

うっちー(大間違いだよ)

うっちー(本当なら、この状況で出しちゃいけないランナーを、出しちゃったんだから)

うっちー(勝ち越しの、ランナーを……!)

スッ!
813: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 20:53:35.40 ID:bunqP2Ir
コキンッ!

 

ひなひな『内田、バントです! 上手く転がした!!』

ワアアアアッ!

 

しゅか「送ってくるか……!」

パシッ

しゅか「それっ!」

シュッ!

 

バシッ!

\アウト!/

 

ひなひな『一塁はアウト! しかし、送りバント成功!!』

ひなひな『内田、ワンナウトから送ってきました!! これでツーアウト二塁です!!』

あさみん『スコアリングポジションにランナーを置いて、是が非でも1点を取りたい、ということですね……!』

ワアアアアッ
814: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 20:56:17.85 ID:bunqP2Ir
りきゃこ「あんちゃん、大丈夫! ツーアウト!!」

 

ひなひな『しかし、まだまだ気は抜けません』

ひなひな『次の、バッターは……』

 

『6番、センター、飯田』

ワアアアアッ!

リッピィィィ!

 

ひなひな『先程は、追加点を呼び込む見事なエンドランを決めた、6番の飯田!!』

ひなひな『小技もあり、パンチ力もありのオールラウンダー!!』

あさみん『ある意味、この状況で最も迎えたくないタイプのバッターですね』

 

りっぴー「よーし……!」

りっぴー(さっきの、借り。返しちゃうんだから)
815: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 20:57:09.41 ID:bunqP2Ir
りきゃこ(ツーアウト、ランナー二塁。なんとかここで止めたい)

りきゃこ(さっきは、エンドランを決められたし。慎重に……)

 

あんちゃん(慎重に……)

シュッ!

 

パシッ!

\ボール!/

 

ひなひな『外のボール球、手を出しません、飯田!』

ひなひな『冷静に、球を見極めてますね』

 

ジョルノ「………」

ジョルノ(……りっぴー)
816: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 20:57:55.74 ID:bunqP2Ir
シカコ「頼むよ、りっぴー……」

うっちー「………」

うっちー(りっぴーのプレーは、決して派手じゃない)

うっちー(だけど――堅実で。したたかで――)

 

あんちゃん(慎重に、コーナーを狙って……!)

シュッ

あんちゃん(……あっ!?)

 

うっちー(甘い球は、決して逃さない――!)

 

りっぴー「!」

カキン!

 

りきゃこ「!!」
817: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 20:58:55.30 ID:bunqP2Ir
ひなひな『痛烈な当たりはセンター前!! 抜けた!!』

ワアアアアッ!

 

あんちゃん「……!!」

 

ひなひな『センター鈴木、ダッシュして捕る!』

ひなひな『すぐさま内野に返し――二塁ランナー新田、三塁で止まりました!!』

あさみん『やや当たりが強すぎましたね。しかし――』

ひなひな『ツーアウト、一塁・三塁!! μ's、さらにチャンスを広げます!!』

 

りっぴー「よしっ!」

 

くっすん「いえー、りっぴー!!」

シカコ「ナイスゥ!!」
818: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 21:00:46.59 ID:bunqP2Ir
ひなひな『今の、打たれた球……キャッチャーの構えとは、逆に入ってしまいました』

あさみん『明らかな失投です。慎重に攻めるのを意識しすぎて、かえって手元が狂ってしまったのか……』

あさみん『いかに、伊波投手がコントロールに優れたピッチャーであっても、機械ではありませんし、毎回狙ったコースに決められるとは限らない』

あさみん『ましてや、すでに7イニング以上を投げていて、疲れが出ているのは明らか』

あさみん『μ'sの仕事人・飯田は、そんな甘い球を、逃さなかった――』

 

あんちゃん(手元が狂った……!?)

フゥ…ハァ…

あんちゃん(疲れた、なんて……言い訳に、したくない……!)

あんちゃん(次こそ……!)

 

りきゃこ(やっぱり、あんちゃん……疲れが出て、コントロールも甘くなってきてる)

りきゃこ(なんとか、あとアウト4つだけ……!)
819: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 21:02:18.34 ID:bunqP2Ir
ひなひな『すでに球数は120球を超えている伊波!!』

ひなひな『空手、そして数々のライブで培ったスタミナで、ここまで粘投を続けていますが、流石に疲労の色は隠せません!!』

あさみん『回は、終盤8回。もしここで、1点がμ'sに入れば――』

あさみん『試合の情勢は、大きくμ'sに傾きます』

ひなひな『踏ん張れるか、伊波!! 続くバッターは――』

 

『7番、ショート、Pile』

ワアアアアッ!

 

ひなひな『6回途中から、キャッチャーに回った三森に代えて、ショートを守る守備職人、Pile!!』

あさみん『先程の打席では、勝ち越しとなる打点も挙げています。油断は出来ませんよ』

 

ぱいちゃん「はいはーい。いくよー」
820: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 21:03:05.17 ID:bunqP2Ir
きゃん「あんちゃん……お願い……!」

あいにゃ「抑えて……!」

すわわ(やれない……1点も……!)

 

あんちゃん「………」

フゥ…ハァ…

あんちゃん(腕が……重くなってきた……)

あんちゃん(ううん……駄目! 弱気になっちゃ……!)

ザッ

シュッ!

 

パシッ!

\ボール!/

 

ひなひな『Pile、外角見送ってボール!』

ひなひな『落ち着いて球を見ます!』
821: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 21:04:36.57 ID:bunqP2Ir
しゅか「あんじゅー! 踏ん張れー!」

ふりりん「あんちゃん、頑張って……!」

きんぐ「1点でも取られたら……ヤバいんだって……!」

ありしゃ(あんちゃん……!)

 

シュッ!

 

バシッ!

\ボール!/

 

ひなひな『際どいコース……!!』

ひなひな『しかし、これもボール!! ノーストライクツーボール!!』

オオオオッ

 

ぱいちゃん「ふぃー。危ない危ない」

 

あんちゃん「………!」

ハァハァ

 

りきゃこ「………」

りきゃこ「すみません。タイム、お願いします」
822: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 21:07:19.17 ID:bunqP2Ir
ひなひな『ノーツーとなった所で、タイムをとった捕手の逢田』

ひなひな『マウンド上、伊波に声をかけます』

 

りきゃこ「あんちゃん……」

りきゃこ「ここは、歩かせてもいい、ってつもりでいこう」

あんちゃん「え……?」

りきゃこ「満塁の方が、守りやすいし。次の打者は、南條さん」

りきゃこ「南條さんはパワーにも欠けるし、膝の怪我の影響で、満足にプレーが出来てない」

りきゃこ「正直、あんちゃんのコントロールも甘くなってる。ここで無理して、勝負をかけるより、次の南條さんで確実に切るの」

あんちゃん「う、うん……だけど……」

りきゃこ「正面からやりたいっていう、あんちゃんの気持ちもわかるよ」

りきゃこ「だけど、ここは確実にアウトを取ることを第一に考えなきゃ……!」

あんちゃん「……うん」

あんちゃん「わかった。勝つためだもの……!」
823: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 21:08:48.13 ID:bunqP2Ir
ひなひな『伊波に二言、三言、何かを伝えた逢田が、元のポジションに戻ります』

あさみん『……おそらく、ここは歩かせてもいい、ということではないでしょうか』

あさみん『投球も甘く入ってきていますし、無理にストライクを取りに行くよりも……』

あさみん『四球は覚悟で、外中心に。四球となれば、次の南條さんで勝負しよう、ということなのでしょう』

あさみん『確かに、ここまで全く当たりが無く、膝に爆弾を抱える南條さんの方が、打ち取れる確率は高い……』

あさみん(……だけど……)

 

ジョルノ「………」

シカコ「……っ」ムカムカ

シカコ「ちょっと、よしのん。次、打席でしょ」

シカコ「なに、のんびりしてんの?」

ジョルノ「ん? ああ、そうね……」

くっすん「………」

くっすん(なんちゃん……大丈夫なの……?)
824: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 21:09:41.31 ID:bunqP2Ir
パシッ!

\ボール! フォア!/

 

ひなひな『結局、外に外れてフォアボール!!』

ひなひな『やはり、半ば歩かせるような形で、Pileを出塁させました、伊波・逢田のバッテリー!!』

ワアアアアッ

 

ぱいちゃん「ちぇ。やっぱりか」

 

すわわ(これは、仕方ない)

すわわ(確実に、アウトを取るためには……)

 

りきゃこ(これでいい……! 1点でも、取られちゃいけないんだから)

りきゃこ(次で、確実に打ち取る……!)

 

あんちゃん「………」

フゥ…ハァ…
825: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 21:11:13.71 ID:bunqP2Ir
みもりん「やっぱり、歩かせた……か」

うっちー「………」

うっちー(アウトを確実に取るために。あえて歩かせて、次の打者と勝負する、という戦略)

うっちー(でも……Aqoursは、気づいていない)

うっちー(一見、理に叶っているように見えても。結局、ランナーを貯めていることに、変わりは無い)

うっちー(“逃げ”の姿勢が、知らず知らずの内に、傷口をじわじわ広げている、ということに……!)

 

ひなひな『これで、ツーアウトながら、満塁となりました!!』

ひなひな『回は8回!! 終盤のこの重要な局面で、迎えるバッターは――』

 

『8番、ファースト、南條』
826: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 21:11:51.55 ID:bunqP2Ir
ジョルノ「はいはーい。よっこいしょ、っと……」

シカコ「……よしのん!」

ジョルノ「……」チラッ

くっすん「なんちゃん……」

くっすん「……頑張って!」

ジョルノ「………」

プイッ

 

そらまる「南條さん……」

みもりん「………」
827: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/04(日) 21:12:51.64 ID:bunqP2Ir
ワアアアアッ!

ナンジョルノォォォォッ!!

 

ひなひな『大きな歓声を受け、8番の南條が、バッターボックスへと入ります!!』

ひなひな『満塁のこの場面、抑えきることが出来るか!? 伊波・逢田のバッテリー!!』

 

あんちゃん「………」

ハァ…ハァ…

あんちゃん(ここで……確実に、切る……!)

 

ジョルノ「さーて……」

ザッ…

ジョルノ(“ここ”……かな)
847: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/10(土) 00:06:13.02 ID:ijrkWfQ2
ひなひな『この試合、終盤に大きな山場を迎えました!! 8回表、μ'sの攻撃、ツーアウト満塁!!』

ひなひな『そしてこの場面で打席に立つのは、未だノーヒットの8番・南條!!』

ワアアアアッ!!

 

ジョルノ「………」

ジョルノ「……ふぅー」

 

ひなひな『南條は、ここまでの3打席、全て三振』

ひなひな『どころか、ただの一度も、バットを振ってすらいません!』

ひなひな『ここで、ベテランとしての意地を見せるのか!? 注目の打席です!!』

 

りっぴー「なんちゃん……!」

えみつん(南條さん……)
848: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/10(土) 00:08:06.94 ID:ijrkWfQ2
あんちゃん(南條さんは、ここまでノーヒット。バットを振ってすらいない)

あんちゃん(でも……μ'sの中で、一番のベテラン。絶対油断できない)

あんちゃん(――1点もやれない。ここで、確実に打ち取るために――)

あんちゃん(集中して。全力で――!)

ザッ…

シュッ!

 

ジョルノ「………」

 

バシッ!

\ストライク!/

 

ひなひな『低めいっぱい!! 絶妙な所に決まりました、ストライク!!』

ひなひな『伊波、集中しています。気を緩める様子はありません!』

ワアアアアッ!
849: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/10(土) 00:09:42.47 ID:ijrkWfQ2
ジョルノ「………」

 

ひなひな『そして、やはり南條のバットは動きません』

ひなひな『初球を見送って、ワンストライク。やはり、膝の故障は深刻なのでしょうか?』

あさみん『かつてのファイナルライブでも、南條さんは過度なダンスパフォーマンスを極力抑えた形でライブに参加していました』

あさみん『あれからすでに2年以上が経つとはいえ、南條さんの膝の故障は先天性のもの』

あさみん『本来ならば、野球のような、激しいスポーツが出来るようなコンディションではないはずです……』

 

ザワザワ…

ライバー「なんちゃーん、頑張れー!」

ライバー「振れ―、振ってくれー!!」

ライバー「ナンジョルノー!!」
850: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/10(土) 00:10:27.08 ID:ijrkWfQ2
そらまる「やっぱり南條さん、膝が……」

みもりん「それとも……本当に、戦意が無くなっちゃったのか……」

うっちー「………」

くっすん「なんちゃーん、頑張ってー!!」

シカコ「くっ……!」

ガタッ

シカコ「……振れって!! 振れよ、よしのん!!」

シカコ「南條はこんなもんじゃないってとこ、見せてよ!!」

 

ジョルノ「………」

 

りっぴー「シカちゃん……」
851: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/10(土) 00:13:09.85 ID:ijrkWfQ2
しゅか「よっしゃ、いいぞー、あんじゅー!!」

きんぐ「ここも、三振狙ってけー!!」

ふりりん(1点もやれない……頼む、ここで終わって……!)

ありしゃ(しっかり、丁寧にね。あんちゃん……!)

 

すわわ(ここを抑えれば、あと2回……まだ、反撃のチャンスはあるはず……!)

きゃん(だけど、南條さんは、きっと打てない)

あいにゃ(大丈夫……!!)

 

りきゃこ(よし。あんちゃん、落ち着いてる)

りきゃこ(1点もやれない。無失点で、終わらせる……!)

 

ハァ…ハァ…

あんちゃん(そう……1点もやれないんだ)

あんちゃん(ここは、絶対抑えて……)

 

ザッ…

 

あんちゃん(……反撃だ!!)

 

シュッ!
852: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/10(土) 00:14:46.05 ID:ijrkWfQ2
バシッ!

\ストライク!/

 

ひなひな『……振らない!! やはり振りません、南條!!』

ひなひな『これでツーストライク!! 南條、前の3打席と同様、ここでも勝負を避けるのか!!』

 

ライバー「……なにやってんだよー!! 振ってくれー!!」

ライバー「振れー!!」

ザワザワ…!

 

りっぴー「……!」

ぱいちゃん「なんか、お客さんの雰囲気が……」

 

ひなひな『徹底してバットを振ろうとしない南條に対し……』

ひなひな『場内、異様な雰囲気に包まれて参りました……!』

あさみん『南條さん……』
853: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/10(土) 00:17:33.13 ID:ijrkWfQ2
りきゃこ(……全く、バットを振る気配が無い)

りきゃこ(膝の調子以前に……やっぱり、この人は、最初からやる気なんて無かったんだ……!)

 

ライバー「振ってくれー、ナンジョルノー!!」

ライバー「勝負しろー!!」

ワーワー

 

えみつん「………」

えみつん(南條さん……)

 

くっすん「なんちゃん……」

ギュッ…

 

ジョルノ「……ふぅー……」

 

厄介「やる気ないなら帰れ―!!」

厄介「引っ込めー!!」

厄介「サボってんじゃねー!!」

 

ジョルノ「……!!」

 

ズ キ ン…
854: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/10(土) 00:19:57.82 ID:ijrkWfQ2
 

「またジョルノだけ出ないのかよ」

 

「膝痛いとか言って、どーせサボりだろ」

 

「紅白もサボりとか。結局、自分のソロやfripSideの方が大事なんだな」

 

「もうμ's、南條なしの8人でいいんじゃねえの?」

 

「絵里もμ's脱退でいいでしょ笑」

 
855: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/10(土) 00:21:29.26 ID:ijrkWfQ2
ジョルノ「………」

 

ワーワー

 

ジョルノ(……あの、最後の1年間。ろくに、μ'sのライブには出られなかった)

ジョルノ(散々叩かれまくったのだって知ってる。そりゃそうだ。大事な時期に、全然ライブに出られなかったんだから)

ジョルノ(私が叩かれるのはいいよ。それだけの迷惑をかけたんだから)

ジョルノ(だけど……)

ギュッ

ジョルノ(……絵里だけは)

ジョルノ(絵里だけは……馬鹿にさせない。馬鹿にさせたくない……!)

ジョルノ(私のせいで……絵里は、最後の1年間)

ジョルノ(アニサマも、Mステも、紅白も。晴れ舞台に、立たせてあげることが出来なかった)

ジョルノ(だから――もう)

グッ…

ジョルノ(絵里に、あんな思いは――させたくない!)
856: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/10(土) 00:23:24.60 ID:ijrkWfQ2
ひなひな『ここまでの3打席も、そしてこの打席も、全ての球を見送っている南條!!』

ひなひな『客席からは悲鳴にも似た声が上がっていますが、やはりこの打席も――』

あさみん『……!!』ハッ

あさみん(“全ての球を見送っている”……?)

あさみん(もし……南條さんが、ここまでの打席を、捨てていたのではなく……)

あさみん(ここまでの全ての打席を犠牲にして――あんちゃんの投げる球の、球筋とタイミングを、測っていたのだとしたら?)

あさみん(まさか、そんな……でも……!)

 

あんちゃん「はぁ……ふぅ」

ザッ…!

 

ひなひな『伊波、第3球!!』

あさみん『待って……!!』

 

シュッ!
857: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/10(土) 00:25:22.35 ID:ijrkWfQ2
りきゃこ(きた!! 低めいっぱい、最高のコース!)

りきゃこ(これで――)

 

ザッ!

 

りきゃこ(――!?)

りきゃこ(足を――踏み込んで、)

りきゃこ(まさか――!?)

 

グッ

 

ジョルノ(だから――今度こそ)

ジョルノ(一緒に行こう――)

 

ヒュッ

 

ジョルノ(――絵里!!)

 

 

 

カッ

 
858: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/10(土) 00:26:09.71 ID:ijrkWfQ2
 

キィィィ……ィィン!!

 

 

 

あんちゃん「!?」

 

りきゃこ「!!」

 

ひなひな『っ!?』

あさみん『!!』

 

くっすん「……!!」

 

ジョルノ「―――」
859: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/10(土) 00:27:30.74 ID:ijrkWfQ2
えみつん(それは――まるで、歌声のように)

えみつん(透き通った、綺麗な音色を響かせた)

えみつん(その音色と共に、大きく舞い上がった白球は)

えみつん(まるで虹のような、大きな放物線のアーチを描き――)

えみつん(そのまま、ゆっくりと)

えみつん(ドームの外野スタンドに、消えていった――)
860: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/10(土) 00:29:08.41 ID:ijrkWfQ2
シィィ…ン

 

ジョルノ「………」

ポイッ…

 

カランッ

 

ひなひな『は……は……は、』

ひなひな『入ったぁぁぁぁ!!! ホームラン!!!』

ひなひな『勝ち越しのっ……!!』

ひなひな『満塁!! ホームラァァァン!!!!』

 

ウオオオオオオッ!!!

ドワアアアアアアッ!!!

 

あんちゃん「………」

あんちゃん「…………っ!!」

 

ド  ク  ン

 
872: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:15:25.04 ID:g6e+FBAE
うっちー「……!!」

みもりん「や……や、」

そらまる「やったああああ!!!」

くっすん「ホームランだぁぁぁ!!! なんちゃん、すごーい!!」

シカコ「………」

シカコ「よしのん……!」

 

ぱいちゃん「嘘……嘘ぉ!? マジで!?」

りっぴー「やったね、なんちゃん……信じてたよ……!!」

えみつん「南條さん……!」

 

ジョルノ「………」

 

ウオオオオッ!!!

ナンジョルノォォォォッ!!!

 

ひなひな『なんと……なんと!! 3打数ノーヒットの南條、起死回生の満塁ホームラン!!!』

ひなひな『歓喜にわくμ'sナイン!! 塁上の新田、飯田、Pileが次々とホームに還り……』

ひなひな『大歓声の中、ゆっくりと、南條がダイヤモンドを回ります!!』
873: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:16:12.69 ID:g6e+FBAE
あんちゃん「………」

ガクッ…

 

ひなひな『そして……打たれた、伊波』

ひなひな『力が抜けたように……がっくりと、マウンド上に膝をつき』

ひなひな『Aqoursナインも、茫然自失の体で、誰ひとり、動くことが出来ません』

 

ありしゃ「……!!」

しゅか「……嘘でしょ?」

ふりりん「嘘だ……嘘だ……!」

きんぐ「なん……で……」

 

きゃん「そん……な……」

あいにゃ「ああ……あ……!」

すわわ「………」

 

りきゃこ(そんな……そんな……!!)

りきゃこ(私のせいだ……私の……!!)

 

あんちゃん「………」 
874: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:17:18.24 ID:g6e+FBAE
ジョルノ「………」

ザッザッ…

 

あさみん『南條さんは……決して、これまでの打席を、捨てていた訳ではなかった』

あさみん『それまでの全ての打席を犠牲にして、伊波投手の球筋、タイミング――それをずっと見て、目に焼き付けていたんです』

あさみん『そして――この、終盤、8回』

あさみん『最も、相手に与えられるダメージが大きい、チャンスが来るのをじっと待ち続けていた彼女は――』

あさみん『相手の心を、闘志をへし折る、最も効果的な“その時”を逃さず――Aqoursを、打ち砕いたんです』

ひなひな『………!!』

 

あんちゃん「………」
875: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:18:11.39 ID:g6e+FBAE
ひなひな『し、しかし……小柄で非力、体力にも欠けると思われていた南條選手が、まさかホームランなんて……』

あさみん『――“完璧なバッティング”の前には……筋力さえ、必要ない』

ひなひな『……え?』

あさみん『今の、南條さんのバッティング――完璧でした。テイクバック、スイング、インパクト、全く無駄がない――』

あさみん『こんなに綺麗なバッティングは、見たことがありません……正に、奇跡のようなバッティングだったんです』

ひなひな『奇跡の……』

あさみん『各筋肉と関節の連動が完全に噛み合ったスイング。そしてそこに、インパクトのタイミングが完璧に合わさった時――』

あさみん『そこには最早、筋力さえ必要ない。理論上は、パワーに頼らずとも、打球を飛ばすことが出来るんです』

あさみん『たった一度のチャンスを待ち続けた南條さんが見せた、たった一度の、完璧なバッティング――』

あさみん(でも……その、代償は……)
876: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:19:00.78 ID:g6e+FBAE
ワアアアアッ!!

ナンチャアアアアン!!

 

ジョルノ「………」

ザッザッ…

 

ひなひな『大歓声の中、ゆっくりとダイヤモンドを周り……』

ひなひな『今、三塁ベースを踏んで、μ'sの仲間たちが出迎えようと待ち構える、本塁へと向かいます!』

 

くっすん「なんちゃーん!!」

りっぴー「早く早くー!!」

シカコ「よしのん……」

 

ズキィッ!!

ジョルノ「うっ!?」

ガクッ

 

えみつん「!!」

くっすん「なんちゃん!?」

 

ひなひな『ああっ!? 南條、三塁ベースを回った所で……』

ひなひな『突如、膝をついてしまいました!!』

あさみん『やはり……!!』
877: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:19:43.92 ID:g6e+FBAE
くっすん「なんちゃん!?」

そらまる「やっぱり、膝が……!!」

りっぴー「待ってて、今……!!」

 

ジョルノ「――いい!!」

ハァハァ…

ジョルノ「いいよ……ひとりで……行ける……」

 

8人「……!」

ピタッ

 

ズキズキ…!

ジョルノ「ふぅ……はぁ」

ザッ…ザッ…

ジョルノ(ファイナルの時もなー……結局、みんなに支えてもらっちゃったし)

ジョルノ(だから……今度こそ)

 

ジョルノ「自分の……足で」

ジョルノ「歩きたいんだよね……」
878: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:20:37.09 ID:g6e+FBAE
ナンチャーン!!

ナンジョルノー!!

ガンバレー!!

 

ひなひな『足を引きずりながら、ゆっくりと、ホームに向かって歩く南條選手……』

ひなひな『スタンドからも、そんな南條選手を応援する声が上がっています!』

あさみん『やっぱり……南條さんの膝は、もう……』

 

くっすん「なんちゃん……」

みもりん「南條さん……」

うっちー「………」

うっちー「……えみつんは、知ってたの? 南條さんの、膝のこと」

えみつん「………」

えみつん「……うん。事前に、リーダーの私にだけは、って言われて……」

えみつん「他のみんなには、口止めしておいてくれって……」
879: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:21:38.33 ID:g6e+FBAE
えみつん「……南條さんの膝、本当ならとても、野球なんて激しいスポーツが出来る状態じゃなかった」

えみつん「お医者さんからも、止められてたみたい。だけど、南條さん自身が、どうしても出たいって言って……」

シカコ「………!」

えみつん「お医者さんとは、試合に出る条件として、ひとつの約束をした」

えみつん「フルスイングが出来るのは、たったの一度――」

りっぴー「たった、一度だけ……!?」

えみつん「南條さんは、そのたった一度だけのフルスイングに、全てを賭けてたの」

えみつん「そのフルスイングで、膝の症状が悪化することも、覚悟の上で……」

 

ジョルノ「はぁ……はぁ」

ザッ…ザッ…
880: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:22:43.80 ID:g6e+FBAE
シカコ「なんでだよ……」

シカコ「だったら……言ってくれれば、良かったのに。ウチら、みんなに……」

シカコ「仲間だろ? ウチら……」

ぱいちゃん「………」

りっぴー「心配……かけさせたく、なかったんじゃないかな?」

シカコ「え?」

りっぴー「なんちゃんって、ユルそうに見えて、ほんとに責任感強いから」

りっぴー「本当なら、野球なんてしちゃいけないのに、無理を押して出場してるっていうのを知られて……」

りっぴー「私たちに、心配かけさせたり、気を遣わせたりしたくなかったんじゃないかな?」

りっぴー「私たちが、μ'sとして、なんの気兼ねもなく、プレーできるように……」

 

ズキズキ…!

ジョルノ「ふぅ……はぁ」

ズルッ…ザッ…

 

くっすん「なんちゃん……」

シカコ「……だとしても……」

シカコ「やっぱり……バカ野郎、だよ……」
881: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:24:23.94 ID:g6e+FBAE
ジョルノ「はぁ……はぁ」

ザッ…

 

ひなひな『ようやく、ホームベースの目前までたどり着いた南條……』

ひなひな『後は、自分の足で、目の前のベースを踏むだけです!!』

 

ジョルノ「………」

くっすん「……なんちゃん?」

りっぴー「どうしたの?」

ジョルノ「……ああ、いや……」

ジョルノ「なんか……ごめん。結局、みんなに迷惑かけちゃったみたいで……」

えみつん「そんなこと……!」

ジョルノ「………」
882: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:25:05.70 ID:g6e+FBAE
ジョルノ「……ファイナルまでの1年間もさ。みんなには、ずっと迷惑かけちゃって……」

ジョルノ「ファイナルの時には。みんな、普通に迎えてくれたけれど」

ジョルノ「本当は……ずっと、怖かった。不安だった」

ジョルノ「私を、また……受け入れてくれるのかな、って……」

ジョルノ「同じ場所に立って、いいのかな、って……」

そらまる「南條さん……」

みもりん「………」
883: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:25:41.34 ID:g6e+FBAE
ジョルノ「だから……さ。えみつんから、この野球の話を聞いた時。誘ってもらった時」

ジョルノ「本当は、すっげー嬉しかった」

ぱいちゃん「………」

うっちー「………」

ジョルノ「みんなに散々迷惑かけた私が、調子いいこと言ってんなって、怒られると思うけど」

ジョルノ「だけど……」

ジョルノ「私は……ただ。μ'sとして。みんなと……絵里と、一緒に……」

ジョルノ「同じユニフォームを着て……もう一度だけ、一緒のステージに……立ちたかったんだ……」

えみつん「………」
884: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:26:51.44 ID:g6e+FBAE
シカコ「……ああー、もう!!」

シカコ「なにさっきからウジウジ言ってんの!? よしのんらしくもない!!」

ジョルノ「え……シカコ?」

シカコ「仲間なんだから! 同じ、μ'sなんだから!!」

シカコ「一緒に頑張るのなんて、当然でしょ!!」

ジョルノ「……!!」

うっちー「そうだよー。南條さんがいなきゃ、μ'sじゃないもん」

そらまる「まとめ役の南條さんがいてくれなきゃ困りますって!」

ぱいちゃん「てか、そんなこと心配してたの? 意外となんちゃん、可愛いー♪」

みもりん「ほら、なんじょさんって、意外と純情なとこあるから……」ププ

ジョルノ「え!?/// ちょ、おい!」
885: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:27:34.58 ID:g6e+FBAE
りっぴー「ほらほら、なんちゃん、こっち来て! ベース踏んで!」

えみつん「私たちは、この9人で、μ'sなんですから!」

くっすん「……なんちゃん!」

スッ…

くっすん「来て!」

ジョルノ「………」

クス…

 

トン…

 

くっすん「おかえり……なんちゃん」

ギュッ…

ジョルノ「……うん。ただいま」

 

【μ's 8―4 Aqours】
886: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:29:18.25 ID:g6e+FBAE
ひなひな『さて一方の、Aqoursナイン』

ひなひな『内野陣がマウンド上に集まっていますが、一様に表情は曇っています』

あさみん『無理もないでしょう。終盤、1点もやれないという状況の中、踏ん張っていた所で、一気に4点の差が付けられてしまった……』

ひなひな『もはやこれで、勝負の行方も決してしまったか……!?』

 

あんちゃん「………」

あんちゃん「……みんな……ごめん」

あんちゃん「私の、せいだ……私が、ちゃんと投げてれば……こんな……!」

ふりりん「……!」

しゅか「あんじゅ……!」
887: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:30:07.07 ID:g6e+FBAE
りきゃこ「あんちゃんのせいじゃない!! 私がもっとしっかりリードしてれば、こんなことにならなかった!!」

りきゃこ「油断しちゃいけないってわかってたはずなのに、心のどこかで南條さんは安牌って決めつけて、それで……!!」

あんちゃん「違うよ、りこちゃん、私が……!!」

りきゃこ「だからあんちゃんのせいじゃ……!!」

ありしゃ「――もういいから!!」
888: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:31:06.05 ID:g6e+FBAE
あんちゃん「……!!」ビクッ

ありしゃ「ここで揉めたって仕方ないでしょ。誰のせいでもない」

ありしゃ「強いて言うなら、私たち全員の責任」

ありしゃ「1点を恐れるあまり、目の前の相手に立ち向かわず……逃げの姿勢をとっていたことに、みんな気づいていなかった……」

りきゃこ「………」

しゅか「………」

ふりりん「………」

ありしゃ「とにかく、取られちゃったものはしょうがない」

ありしゃ「切り替えて、まずはアウトひとつ、取りにいこ」

あんちゃん「……うん……」

きんぐ(え……なに、この空気……)

 

きゃん(もう……駄目かも……)

あいにゃ「みんな……」グスッ

すわわ「………」
889: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:31:39.36 ID:g6e+FBAE
ひなひな『内野陣、元の守備位置に戻っていきます。どうやら伊波、続投のようですが……』

あさみん『………』

ひなひな『さて、ツーアウトランナーなしとなりましたが、まだμ'sの攻撃は続きます』

ひなひな『続くバッターは……』

 

『9番、サード、楠田』

 

ウオオオオッ!!

クッスウウウン!!

 

くっすん「………」

くっすん「……なんちゃん」

ジョルノ「んあ?」

くっすん「行ってくるね!」

ニコッ

ジョルノ「………」

クスッ

ジョルノ「うん。くっすんらしく。思いっきり、いってきなよ」
890: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:32:20.88 ID:g6e+FBAE
\プレイ!/

 

あんちゃん「………」

ハァハァ…

 

ひなひな『さあ、ランナーがいなくなった今、ここでアウトを取って攻撃の手を切りたいところ!』

ひなひな『伊波、踏ん張れるか!』

 

くっすん「………」

グッ…

くっすん(私……希が、デビュー作で)

くっすん(嬉しい時も、悲しい時も……ずっと、希と一緒だった)

くっすん(最初は、アフレコも下手くそで。収録に、夜中までかかったりして)

くっすん(それでもみんな、待っててくれてたっけ……)

くっすん(なんちゃんは、その頃から、たくさんアドバイスしてくれた)

くっすん(ラジオが上手くいかなくて悩んでた時も、親身になって相談に乗ってくれた)

くっすん(なんちゃんは、私に、たくさんのことを教えてくれた……)
891: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:32:55.88 ID:g6e+FBAE
くっすん(そういえば、なんちゃん……いつも、言ってたっけ)

 

――くっすんは、くっすんらしく。それで、いいんだよ。

 

くっすん(そうだ。私は、私らしく)

くっすん(なんちゃんが、元気づけてくれるなら)

 

あんちゃん「……っ!」

シュッ!

 

くっすん(何も――怖くない!!)

 

カッキィン!!
892: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:33:23.98 ID:g6e+FBAE
ひなひな『打ったぁぁ!! 打球はレフト線!!』

ワアアアアッ!!

 

あんちゃん「っ!!」

 

きゃん「くっ!!」

ダダッ!

 

ひなひな『レフト小林、懸命に追う!! しかし――』

ひなひな『抜けたぁ!! ボールは外野を転々と転がる!!』

 

くっすん「……!!」

ダダダッ
893: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:34:08.24 ID:g6e+FBAE
ひなひな『楠田、一塁を回り――』

 

ジョルノ「――くっすん!!」

ジョルノ「走れぇ!!」

 

ダダダダッ!

 

ひなひな『楠田、二塁も回ったぁ!!』

オオオオオッ!!

 

きゃん「ええーい!!」

シュッ!

 

ひなひな『ボールが帰ってくる!! 楠田、三塁に滑り込む!!』

 

\セーフ!/

 

ひなひな『セェェーーフ!! 楠田、スリーベース!!』

ワアアアアッ!!

 

くっすん「や、やった……!!」
894: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:34:43.54 ID:g6e+FBAE
ひなひな『初球を思い切って叩いた楠田、見事なスリーベースヒット!!』

ひなひな『しかし、今の球も、キャッチャーの構えとは逆に、内に入ってしまったように見えましたが……』

あさみん『あんちゃん……』

あさみん(もう……“切れた”……!?)

 

あんちゃん「……!!」

ハァハァ…!

あんちゃん(球が……思い通りに、放れない……!!)

あんちゃん(もう……訳、わかんない。どうしたらいいの? どうしたら……!!)

 

きんぐ「スリーベース……マジで……?」

しゅか「あんじゅー、気にすんなー!! あんじゅ……」

 

あいにゃ「まずいよ……まずいよぉ……!」オドオド

すわわ「………」
895: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:35:30.35 ID:g6e+FBAE
『1番、レフト、久保』

ウオオオオッ!!

 

ひなひな『またも得点のチャンスを迎え、打順は1番に戻って久保!!』

ひなひな『ダメ押しの一打となるか!?』

 

シカコ「……よしのん」

シカコ「ごめん」ボソッ

ジョルノ「え? なんだって?」

シカコ「……いや」

シカコ「よしのんは、のんびりゴロゴロしてていいよ」

シカコ「後は、任せとけ!」

ジョルノ「……おうっ」ニッ
896: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:36:20.10 ID:g6e+FBAE
\プレイ!/

 

シカコ(……ちぇっ。結局、いつもあーやって、なんだかんだ美味しいとこ持ってくんだ)

シカコ(だけど……ごめん、よしのん。少しだけ、疑っちゃって)

 

あんちゃん「くっ!」

シュッ!

 

バシッ!

\ボール!/

 

ひなひな『今度は外に大きく外れた!!』

あさみん『ランナー三塁ですから、パスボールもありますし、丁寧にいってほしいところですが……! もう……』
897: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:36:49.27 ID:g6e+FBAE
シカコ(だけど……そうだったよね。いつだって、本気だった)

シカコ(よしのんから、一番色々教えてもらったのは……私なんだ……!)

グッ

シカコ(そんなよしのんにだけ、カッコいい思いなんて――)

 

あんちゃん「っ!!」

シュッ!

 

シカコ「――させないっての!!」

 

カキィッ!!
898: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:37:37.27 ID:g6e+FBAE
ひなひな『これも抜けたぁぁー!! 一・二塁間!!』

ワアアアアッ!!

ひなひな『三塁ランナー楠田、ホームに還る!! また1点追加!!』

ひなひな『また打たれた伊波!! アウトひとつが取れません!!』

 

あんちゃん「………!!」

ゼッ…ハッ…!!

あんちゃん(なんで……!? どうして打たれるの……!?)

あんちゃん(どうしたらいいの? どうしたら……!!)

 

りきゃこ「……っ」

ギリ…

りきゃこ(あんちゃん……!)

 

すわわ(あんちゃん……もう……)

 

【μ's 9―4 Aqours】
899: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:38:33.42 ID:g6e+FBAE
あんちゃん(その後のことは……よく、覚えていません)

あんちゃん(りこちゃんや、内野のみんなが、集まってきて……)

あんちゃん(りこちゃんが、しきりに謝っていたことは、なんとなく覚えています)

あんちゃん(気づいた時には、私は、ファーストの守備についていて……)

あんちゃん(きんぐは、サードの守備につき)

あんちゃん(さっきまで私がいたマウンドには、ありさちゃんが立っていました)
900: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:39:08.31 ID:g6e+FBAE
ひなひな『Aqours、ようやくピッチャー交代となりました!』

ひなひな『マウンドに上がったのは、先程までサードを守っていた小宮!!』

ひなひな『右のオーバースロー! 身体能力が高いだけあって、投球練習を見た限りでは、そこそこの速さに見えましたが……』

あさみん(……だけど、ピッチャーとして、大きな武器を持ってはいない)

あさみん(そこそこの速球だけで、今のμ's打線を抑えるのは……)

 

ありしゃ(とにかく、落ち着いて。アウトひとつ……!)
901: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:40:30.90 ID:g6e+FBAE
そらまる「それ!!」

キンッ!

 

ひなひな『2番徳井、強い当たり! しかしショート斉藤、追いついた!!』

 

しゅか「なろっ……!!」

パシッ

しゅか「この!!」

シュッ!

しゅか「――あ!?」

 

あんちゃん「うわっ!?」

 

ひなひな『送球が高い!! ファーストに入った伊波、捕れず!!』

ワアアアアッ!?

 

そらまる「やたっ、ラッキー!」

 

しゅか「ご、ごめん……!!」

 

ひなひな『ショート斉藤の悪送球で、ランナーは一・二塁となります!!』

ひなひな『しかしまさか、身体能力抜群で、守備も堅いしゅかちゃんが……』

あさみん『………』
902: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:41:24.72 ID:g6e+FBAE
あさみん『……“1点でも取られちゃいけない”』

あさみん『新田さんの投球を目の当たりにして、Aqoursナインはそんな緊張感のまま、闘っていた』

あさみん『しかし、そんな危うい、ギリギリの線で保っていた緊張の糸が――南條さんの満塁ホームランで、完全に切れてしまった』

あさみん『あんちゃん、しゅかちゃんだけじゃない。おそらく、Aqoursの全員が――』

あさみん『もはや、どうしたらいいのかわからない。そんな精神状態に、陥ってしまっているはずです』

ひなひな『それじゃあ、もう……!!』

あさみん(Aqoursは――)

あさみん(――崩壊した)
903: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:42:52.84 ID:g6e+FBAE
あんちゃん(――ドームで、ライブをするために)

あんちゃん(憧れのμ'sに勝って、その先に進むために――)

 

みもりん「」

キィン!!

ひなひな『三森も打ったぁぁ!! ライトの頭を越える!!』

ひなひな『ランナーふたり、帰ってきたあああ!!!』

 

あんちゃん(そんな想いで。私たち9人、想いをひとつにして)

あんちゃん(頑張って、頑張って――)

 

えみつん「」

カキィン!!

ひなひな『四番の新田も続くぅぅ!! レフト線、破った!!』

 

ありしゃ「……っ!!」
904: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:43:28.19 ID:g6e+FBAE
あんちゃん(頑張って――きた、はずなのに)

あんちゃん(それなのに……)

 

うっちー「」

カァン!!

ひなひな『セカンド取れない!! 5番の内田にもヒットが飛び出した!!』

ひなひな『μ'sの猛攻!! もはやAqours、なすすべが無ぁぁい!!!』

ワアアアアッ!!

 

あんちゃん(それなのに……!!)

 

【μ's 13―4 Aqours】
906: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:45:12.50 ID:g6e+FBAE
ひなひな『終盤にきて、まさかの一方的な展開となってしまいました……』

ひなひな『伊波から代わった小宮も、μ'sの勢いを止めることが出来ません』

 

ありしゃ「………っ」

ハァ…ハァ…

 

ザワザワ…!

 

ひなひな『この状況で、Aqoursナイン……身も心も、疲弊しきっているのか』

ひなひな『誰も、声を上げることすら出来ません。もはや、勝負は決したか……』

あさみん『………』
907: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/11(日) 23:45:58.84 ID:g6e+FBAE
あさみん(確かに――もはや勝利は、絶望的)

あさみん(だけど――この、暗く澱みきった空気を)

あさみん(この空気を変えてくれる――そんな誰かが、いたら……!)

 

あいにゃ「……うっ。ぐすっ」

あいにゃ(……なに泣いてるのよ、あいな!! まだ試合は、終わってないのに!)

ゴシゴシ…

あいにゃ「ぐす……ひぐ……」

あいにゃ(負けたら……終わり。憧れのドームで、ライブも出来ない……)

ゴシゴシ…!

あいにゃ(やだ。負けたくない……負けたくない……!)
3: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:07:56.30 ID:QjHUmHj8
ひなひな『8回表、なおもμ'sの攻撃中。すでに打順は一巡し、打席には6番の飯田!』

ひなひな『ツーアウト一塁――アウトひとつが遠いAqours』

ひなひな『大差をつけられ、気力も萎えてしまったか――グラウンド内には、重苦しい空気が流れております』

 

りきゃこ(こんな状況になっちゃったら……もう、どうすればいいか……)

 

あんちゃん(ごめん……みんな。私のせいで……)

しゅか(駄目なのか……? ちくしょ……)

ふりりん(あたしたち……ドーム、行けなくなっちゃうんだ……)

きんぐ(あーあ……負けたわ、こりゃ)

 

きゃん(どうしようもないよ……もう……)

すわわ(ここまできたら……打つ手は……)

 

あいにゃ(………)

あいにゃ(みんな……)

元スレ2: えみつん「東京ドームでライブをしたければ……」あんちゃん「野球で勝負!?」 ★2

4: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:08:34.20 ID:QjHUmHj8
バシィ!

\ボール! フォア!/

 

ありしゃ「……!」

ありしゃ(ええ……今の、入ってなかった……!?)

 

ひなひな『際どいコースでしたが、飯田、落ち着いて見て、フォアボール!』

あさみん『もはや、運にも見放されてきましたね……』

 

ザワザワ…

ライバー「あー……もう、駄目かもな……」

ライバー「こんな一方的な試合、見たくねえよ……」

ライバー「もうコールドで終わりでいいんじゃねえの……?」
5: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:09:15.89 ID:QjHUmHj8
ひなひな『ツーアウト一塁・二塁! μ'sの攻撃は終わらない!』

ひなひな『終わらせることが出来ない、Aqours!!』

あさみん『恐るべきは、μ's打線の、波に乗った時の爆発力ですね』

あさみん『交代した小宮選手も、頑張っていますが……普通の速球だけでは、今のμ's打線を抑えることは……』

 

ありしゃ「はぁ、はぁ……!」

ありしゃ(アウト……ひとつ、だけなのに……!)

 

ひなひな『Aqoursナインからも……スタンドからも。もはや、諦めにも似た空気が流れてしまっています』

あさみん『………』
6: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:11:16.68 ID:QjHUmHj8
あさみん『……確かに、ここからAqoursが勝つとなると、それこそ奇跡でも起きない限り、無理でしょう』

あさみん『そして――奇跡というものは、そう易々と、起こるものではありません』

ひなひな『では、やはり……もう……』

あさみん『――ですが』

あさみん『奇跡とは、“起きる”ものではありません。“起こす”ものです』

ひなひな『“起こす”――』

あさみん『月並みですが――最後まで諦めない、強い意思。それが、奇跡を呼び起こす』

ひなひな『だけど、今のこの空気の中じゃ……』

あさみん『……そう。今のAqoursでは、奇跡は起こせない』

あさみん『せめて――この空気を変える、誰か』

あさみん『いや、たったひとつのプレーでもいい。何かの、きっかけさえあれば……』

 

あいにゃ「………!」

ゴシゴシッ
7: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:12:05.32 ID:QjHUmHj8
ひなひな『さて、打席に立つのは7番のPile!』

ひなひな『この回、大量点を奪っているμ's、さらなる追加点となるのか?』

 

ありしゃ「ふぅ……はぁ……!」

 

あんちゃん(ありさちゃん……!)

 

ふりりん(ありさ……頑張ってるけど……)

きんぐ(無理だよ……もう……)

 

きゃん(いつまで続くの……この回……)

すわわ(みんなの気力も……もう……)

 

あいにゃ「………っ」
8: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:13:13.76 ID:QjHUmHj8
ぱいちゃん「そこ!」

カキィン!!

 

ひなひな『打ったぁぁ!! これも大きい!!』

ひなひな『打球は右中間、深い所に伸びていく~~!!』

 

りきゃこ「……!!」

 

きんぐ「あーあ……」

しゅか「また……追加点……」

ふりりん「これで……何点目……?」

 

あんちゃん「――!」ハッ

あんちゃん「いや……!?」

 

あいにゃ「はぁ、はぁっ!!」

ダダダダッ!

 

ひなひな『いっ……いや!? センター鈴木、懸命に追っている!!』

ワアアアアッ!?
9: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:14:02.21 ID:QjHUmHj8
りきゃこ「あいな!?」

 

ありしゃ「いや……でも、あれは……無理……」

 

あいにゃ「……っ!!」

ダダダダッ!!

あいにゃ(やだよ……やだよ! こんな所で、終わっちゃうなんて!!)

あいにゃ(もう少しで……私たちの、夢が……届くところまで、来たのに!!)

 

ひなひな『懸命に追いますが、これは頭を越えそうだ!!』

ひなひな『しかし鈴木、スピードを緩めない!!』

 

あいにゃ(確かに、もう負けちゃいそうだけど……無理かも、しれないけど……!)

あいにゃ(でも、まだ……あきらめたく、ない……!!)

あいにゃ(だって……!!)

バッ!!

 

ひなひな『飛び込んだぁぁぁっ!!!』
10: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:15:00.83 ID:QjHUmHj8
あいにゃ(だって――Aqoursに入って、わかったんだもの)

あいにゃ(夢は――)

あいにゃ(自分の手で、掴み取るんだ――って)

 

パシッ!

 

ズザザザッ!!

ゴロゴロゴロッ!!

 

オオオオオッ!?

ひなひな『飛びついた鈴木!! ボールは!?』

ひなひな『フェアか、アウトか!?』

 

 

\アウトォ!!/
11: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:16:42.23 ID:QjHUmHj8
ワアアアアッ!!

ひなひな『なんとっ……アウトォ!! センター鈴木、超、超、ファインプレー!!!』

ひなひな『長打間違いなしと思われた打球!! 決死の思いで飛び込んだ鈴木のグラブの中に、しっかりボールは収まっていました!!』

 

ぱいちゃん「うっそ、マジで!?」

 

しゅか「嘘ぉ!?」

ふりりん「す、すごい……あいな……!」

 

ありしゃ「あいな……!」

フゥハァ

 

あさみん『3回にも、同じような場面はありました……! だけど今回は、恐れずに飛びついた結果、アウトになった……!!』

あさみん『これは……あいなちゃんの、諦めない気持ちが呼び込んだ、ファインプレーです!!』

あさみん(これで……風向きが、変われば……!)

 

あんちゃん「………!!」

ドクン…!
12: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:19:36.31 ID:QjHUmHj8
ひなひな『――おや?』

ひなひな『鈴木選手、様子が……?』

 

あいにゃ「ぐ……」

あいにゃ「痛っ……くぅっ……!」

 

ひなひな『足を押さえ、横たわったまま、起き上がれません!』

あさみん『まさか、飛び込んだ時に、どこか……!?』

 

すわわ「あいな!!」

タタタッ!

きゃん「大丈夫!?」
13: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:20:36.07 ID:QjHUmHj8
あいにゃ「すわわ……あいきゃん、も……」

きゃん「どっか痛めたの!?」

すわわ「……!! あいな、まさか……」

すわわ「前に、痛めた……右足首を……!?」

あいにゃ「……えへへ……」

あいにゃ「今度は……ちゃんと、捕れたよ……?」

すわわ「そんなことよりも……!!」

あいにゃ「つっ!! へへ……こちとら、必死よ……」

あいにゃ「だって……みんなと、東京ドーム……立ちたいもの……」

すわわ「……!!」

きゃん「あいな……」

 

ひなひな『担架です!! 鈴木選手の、足の具合が心配ですが……』

ひなひな『しかし8回の表、センター鈴木のファインプレーで、μ'sの長い長い攻撃がようやく終わりました!!』

ワアアアアッ!

パチパチパチッ
14: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:24:00.41 ID:QjHUmHj8
~Aqoursベンチ~

 

あんちゃん「………」

ふりりん「……あいなと、付き添いのおすわ、なかなか救護室から戻ってこないね……」

りきゃこ「前に一度、痛めた所と同じ、右の足首だし……」

きゃん「心配だね……」

 

ガチャッ

 

あいにゃ「ごめーん! みんなー、お待たせー♪」

あんちゃん「あいな!」

りきゃこ「大丈夫なの!?」
15: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:24:59.82 ID:QjHUmHj8
すわわ「幸い、骨には異常は無かったみたい」

りきゃこ「そう……!」ホッ

あいにゃ「テーピングぐるぐる巻きにして、しっかりサポーターもしてもらったから大丈夫! 余裕よ、余裕!!」

すわわ「……だけど、前に痛めたのと同じ所を痛めちゃってるから……」

すわわ「極力、無理は……」

あいにゃ「平気だって!! ほら、こんなによゆー……!」

ズキッ

あいにゃ「あつっ……!」

あんちゃん「あいな!!」

すわわ「あんまり、動かないようにしなきゃ……!」

 

きんぐ「………」

きんぐ「もう……無理じゃない?」
16: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:27:20.72 ID:QjHUmHj8
シ…ン

 

あいにゃ「……え?」

あんちゃん「今、なんて……」 

きんぐ「いや……そんな、無理してまで……必死にやる意味も、もう、無いっていうか……」

きんぐ「だって……」

 

きんぐ「まさか、まだ勝てるとでも思ってるの?」

 

すわわ「――!!」

ガタッ!

しゅか「ちょ!?」

ふりりん「おすわ、抑えて!!」

きんぐ「だって――現実見なよ!! 9点差だよ、9点差!!」

きんぐ「攻撃できるのはあと2回しか残ってない!! しかも相手のピッチャーは新田さん!!」

きんぐ「どうしようもないじゃん!!」

すわわ「………っ」

グッ…
17: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:28:38.93 ID:QjHUmHj8
きんぐ「そりゃ、私だって……ドームで、ライブ出来なくなるのは、悔しいよ……」

きんぐ「だけど……それに、あいなが、怪我しちゃったんなら」

きんぐ「もう、無理することもないじゃん……」

あいにゃ「………っ」

ありしゃ「……そう、だね……」

ありしゃ「もう、勝てる見込みが無いなら……ここで試合を終わらせるのも、ありかもしれない……」

きゃん「そう、だよね……高校野球なら、コールド負けの点差だし……」

りきゃこ「無理して、これ以上、怪我人が出るくらいなら……」

あいにゃ「だっ……大丈夫だって!! これくらい、なんでもないから!!」

あいにゃ「余裕よ、よゆー!! がははははっ、は、は……」

あいにゃ「………」

 

シ…ン

 

しゅか「……あんじゅは」

しゅか「あんじゅは……どうしたいの……?」

あんちゃん「え……!?」
18: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:30:30.14 ID:QjHUmHj8
あんちゃん(確かに、これ以上、怪我人が増えるかもしれないことを考えたら……無理しない方が、いいのかもしれない……)

あんちゃん(だけど……ここで、やめちゃったら……大切な何かを、失っちゃうような……)

あんちゃん(もう二度と、戻れないような……そんな、気もする……)

グッ…

あんちゃん(こんな……こんな時に、優柔不断で、はっきり言えないなんて……)

あんちゃん(私……やっぱり、駄目駄目な、リーダーだ……)

 

あいにゃ「私は――」

あいにゃ「まだ、続けるよ!」

あんちゃん「!」

すわわ「!」

りきゃこ「あいな……」
19: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:31:33.95 ID:QjHUmHj8
あいにゃ「ごめんね……こんな、大事な時に、また怪我なんか……」

あんちゃん「そんなこと……!」

あいにゃ「だけど、前に怪我して、ファンミに出れなかった時も……みんなに、迷惑かけたし……」

あいにゃ「何より……来ていたお客さんを、がっかりさせちゃって……」

りきゃこ「……!」

あいにゃ「今も……まだ、応援してくれるお客さんは、いてくれると思うし」

あいにゃ「だから……今度は、最後まで……続けたい」

あいにゃ「続けさせてください……!」ポロッ

あんちゃん「あいな……」
20: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:34:08.49 ID:QjHUmHj8
しゅか「あいな、泣かないで……」

ありしゃ「あいなが……そこまで、言うなら」

りきゃこ「うん……」

りきゃこ「ただし、ポジションは変更しよう。あいなは、一番負担の少なそうな、ファーストに」

りきゃこ「あんちゃんは、センターに回って。大丈夫?」

あんちゃん「あ……うん……」

りきゃこ「はい、そうと決まったら、また攻撃だよ!」

りきゃこ「急いで、準備しよ!」

ガタ…ガタ…

きんぐ「………」

きゃん「……大丈夫かな……」

 

ひなひな『Aqoursベンチ、ようやく動き始めました。どうやら、続行はするようですが……』

ひなひな『未だ、重い空気は、払拭しきれていないようですね……』

あさみん『………』

あさみん(駄目……なの? あのプレーでも、流れは……みんなの気持ちは、変えられなかった……?)

あさみん(いや。わずかでもいい。小さな灯火が、誰かの心に、ともってさえいれば……!)
21: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:36:16.03 ID:QjHUmHj8
あんちゃん「………」

あんちゃん「あいな……」

あいにゃ「………」

あいにゃ「……私はさ。ここまで、全然、攻撃とかで役に立ててないから……」

あいにゃ「だから、ちょっとでも、役に立ちたい、って思ったんだけど……」

あいにゃ「怪我しちゃって……かえって、迷惑だったのかな……」

あんちゃん「そんなこと、ない……! あいなは……!」

あいにゃ「……それに、ね」

あいにゃ「やっぱり、まだ……私、あきらめたくない……」

ポロッ…

あいにゃ「だって、私たち……まだ、途中だもの……!」

あんちゃん「……!!」

あいにゃ「まだ、何もかも、途中だから……まだまだ、前に、進みたいから……!」

あいにゃ「だから……」

あんちゃん「………」 

あいにゃ「」ゴシゴシ

あいにゃ「……ごめんねっ! いっつも、泣いてばっかりで」

あいにゃ「さあ、あと2回!! 張り切っていくぜー!」

ガタッ…

 

あんちゃん「………」  
22: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:37:11.38 ID:QjHUmHj8
 

あんちゃん(私たちは、まだ……途中……)

あんちゃん(私たちは……前に、進む……)

グッ…

あんちゃん(……あきらめない……)

あんちゃん(私に、まだ……できること……!)

 

キッ!

 
23: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:38:21.38 ID:QjHUmHj8
【8回裏】

 

ひなひな『8回裏、大量援護を受けてマウンドに上がるのは、もちろん新田!!』

ひなひな『残り2回、Aqoursを完全に封じ込むか!?』

ワアアアアッ!

 

みもりん「やれやれ、やっと再開か……」

シュッ

 

えみつん「………」

パシッ

 

ひなひな『なんとか反撃したいAqours、この回の攻撃は、6番の逢田から!』
24: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:39:04.40 ID:QjHUmHj8
えみつん「」

シュバッ!

 

ズバンッ!!

 

りきゃこ「ぐ……!」

りきゃこ(そうは言っても……どうやって、攻略したら……!?)

 

ひなひな『この回も冴え渡る、新田の豪速球!!』

ひなひな『相変わらず、球速は130キロ台を計測!! もはや向かうところ敵なし!!』

あさみん『ええ……おや?』

 

あんちゃん「………」

グッ
25: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:39:50.80 ID:QjHUmHj8
えみつん「」

シュバッ!

 

あんちゃん「!」

ブンッ!

 

ズバンッ!!

\ストライク!/

 

あさみん『……?』

ひなひな『これは……? 伊波選手、ひとり、ファールグラウンドに出て……』

ひなひな『素振り……? を、していますね。まだ打順は、かなり先だと思いますが……』

あさみん『………』

 

ありしゃ「……?」

きゃん「あんちゃん……?」
26: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:40:45.87 ID:QjHUmHj8
えみつん「」

シュバッ!

 

あんちゃん「!」

ブンッ!

 

ズバンッ!!

\ストライク! バッターアウッ!/

 

ひなひな『結局、逢田のバットもボールにかすらせず!!』

ひなひな『三振で、余裕のワンナウト!!』

ワアアアアッ!

ひなひな『しかし、伊波選手は、一体……?』

 

くっすん「……何やってんの?」

ぱいちゃん「さあ……」

 

えみつん「………」

パシッ
27: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:42:31.17 ID:QjHUmHj8
あさみん『新田投手は、続く7番・諏訪も、ボールにかすらせることなく三振』

 

ズバンッ!!

\ストライク!/

 

すわわ「くっ……!!」

すわわ(必ず、何か、糸口はあるはず……!)

すわわ(それを、見つけられれば……だけど……)

 

あさみん『8番・小林は、ビビって完全に腰が引けているところで……』

あさみん『かえって、新田さんのコントロールが乱れ、運良くフォアボールとなるものの』

 

ズバッ!

\ボール! フォア!/

 

きゃん(あー、生きてて良かった……)

 

あさみん『続く、9番、鈴木は……』
28: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:43:17.58 ID:QjHUmHj8
あいにゃ(なんとかして、出なきゃ……!! なんとかして……!!)

ドキドキ

 

えみつん「」

グワッ…!

 

ひなひな『新田、またランナーがいるのに、振りかぶった!!』

 

シュバッ!!

 

あいにゃ「……!!」

ブンッ!

 

ズバンッ!!

 

ひなひな『は、速い!! 球速は……!?』

 

――140km/h
44: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 23:40:06.46 ID:QjHUmHj8
ひなひな『ひゃっ……140キロが出ました!!』

ひなひな『新田、前人未到の140キロ!! これぞ最強、μ'sの守護神!!』

ウオオオオッ!!

ワアアアアッ!!

 

\ストライク! バッターアウッ!!/

 

あいにゃ「……っ」

ズキ…ズキ…

あいにゃ(駄目、だ……手も足も、出なかった……)

あいにゃ(やっぱり……これで、終わりなの? 私たち……)ジワッ

 

ふりりん「ああ……」

きんぐ「やっぱり……無理だよ……」
29: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:44:18.75 ID:QjHUmHj8
ひなひな『新田、フォアボールのランナーを出したものの、この回もAqoursの攻撃をシャットアウト!!』

ひなひな『ここまで奪った9つのアウトは、全て三振!!』

ひなひな『それどころか、全てストレートにもかかわらず、いまだバットに当てることすら許さず!!』

ひなひな『Aqoursに付け入る隙を与えないまま、いよいよ試合は9回、最終回を迎えます!!』

オオオオオッ!!

 

あんちゃん「………」

スタ…スタ…

 

ひなひな『おっと、ファールグラウンドに出ていた伊波選手も、一旦ベンチに下がりますが……』

ひなひな『ずっと素振りをしていた伊波選手。最終回に望みをつなごうという、気合の現れでしょうか』

あさみん『………』

あさみん(あんちゃん……まさか……?)
30: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:45:16.91 ID:QjHUmHj8
【9回表】

 

ひなひな『迎えた9回、この回の小宮も、苦しいピッチング!!』

ひなひな『先頭の8番・南條こそ、見逃し三振に仕留めますが――』

ひなひな『9番・楠田、1番・久保に連続安打!!』

ひなひな『さらには2番・徳井にも、フォアボールを与え、ワンナウト満塁!!』

 

ありしゃ「……!!」

ハァ…ハァ…!

 

りきゃこ(もう、単なる棒球になっちゃってる……!)

りきゃこ(これじゃ、もう……!)
31: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:46:04.39 ID:QjHUmHj8
ザワザワ…

ライバー「……もう、見てらんねえよ」

ライバー「こんな一方的な試合、見たい訳じゃないし……」

ライバー「メラド、帰りの電車混むし、もう行こーぜ」

 

ひなひな『スタンドからは、席を立つファンの姿も見えます』

ひなひな『すでにAqoursのファンの中にも、諦めの気持ちが広がってしまっているのか……』

 

ふりりん「……!」

あいにゃ「そんな……!」
32: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:48:26.00 ID:QjHUmHj8
ひなひな『しかし、運命はAqoursに容赦しません』

ひなひな『満塁のこの場面で、迎えるのは、ここまでAqoursを脅かし続けてきた、μ'sの強力クリンナップ!!』

ワアアアアッ!

 

ブンッ!

みもりん「……悪く思わないでよね」

えみつん「やるからには……最後まで、本気でね」

うっちー「後輩ちゃんたち……」

うっちー「ここまで、なのかな」

 

ありしゃ「……!!」

ゼェ…ハァ…!

 

しゅか「……マジで……?」

きんぐ「終わった……今度こそ、終わったわ」

ふりりん「なんで……こんな、ことに……」

あいにゃ(神様……!)

 

きゃん(また……たくさん、点、とられるのかな……)

すわわ「………」

 

りきゃこ(もう……)

りきゃこ(駄目……か……)
33: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:50:15.60 ID:QjHUmHj8
ひなひな『このピンチに――Aqours守備陣、声を上げる選手は誰もいません』

ひなひな『いっそ、このまま、終わってくれたら――』

ひなひな『そんな、悲壮感まで――感じさせます』

あさみん『………』

あさみん『――絶体絶命の、窮地に立たされ』

あさみん『夢も、希望も、完膚なきまでに打ち砕かれて』

ひなひな『………』

あさみん『だけど――それでも、まだ』

あさみん『小さな小さな、希望という輝きを信じて』

あさみん『立ち向かおうとする、気力のある人がいれば――!』

 

あんちゃん「………!」

ザッ…!
34: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/13(火) 00:51:14.09 ID:QjHUmHj8
ひなひな『……? おや?』

ひなひな『センターに入っていた伊波が……ひとり、マウンドの方に向かって……?』

 

あんちゃん「………」

ザッ…ザッ…

 

ザワザワ…

 

しゅか「……?」

ふりりん「あんちゃん……?」

 

あんちゃん「………」 

ザッ

ありしゃ「………」

フゥ…ハァ…

ありしゃ「あんちゃん……何を……」

あんちゃん「――ありさちゃん」

あんちゃん「ボール、貸して」

キッ!

 

あんちゃん「私が――投げる」
49: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/15(木) 01:36:06.75 ID:rZZS2aMi
ありしゃ「……!!」

ありしゃ「本気……?」

あんちゃん「………」

コクッ

 

りきゃこ「あんちゃん……!?」

 

あんちゃん「ごめん、ありさちゃん。私が不甲斐ないせいで、迷惑かけちゃって」

あんちゃん「でも……だからこそ」

あんちゃん「しっかり、私の手で……始末を、つけたいの」

ありしゃ「………」

ありしゃ「……ごめん。あんちゃん……」

スッ…

 

ひなひな『マウンド上の小宮、ボールを、伊波に手渡して……!?』

ひなひな『まさか……!?』

ザワザワ…!
50: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/15(木) 01:37:29.35 ID:rZZS2aMi
『――Aqours、守備の変更をお知らせいたします』

『ピッチャーの小宮が、センター』

『センターの伊波が、ピッチャー』

 

えみつん「!」ピクッ!

みもりん「また、あの子が……!?」

 

『3番、ピッチャー、伊波』

『4番、センター、小宮』

『以上に変わります』

 

オオオオオッ!?

ひなひな『なっ……なんと!? 8回途中、ノックアウトされた先発・伊波がっ……!!』

ひなひな『この、9回満塁のピンチに、再びマウンドに上がります!!』

 

あんちゃん「………」

ザッ!
51: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/15(木) 01:39:23.98 ID:rZZS2aMi
りっぴー「なんちゃんに、ノックアウトされた、あの子が……?」

ぱいちゃん「ま、大方、他にピッチャーがいないからなんだろうけど……」

ジョルノ「………」

 

きんぐ「………」

ふりりん「あんちゃん……」

しゅか「やれる、の……?」

あいにゃ「………」

あいにゃ「お願い……!」

 

ひなひな『先程の回で大量点を奪われ、疲労も溜まっているであろう伊波ですが……』

ひなひな『この場面で、μ'sのクリンナップを抑えきれる力は、残っているのでしょうか……?』

あさみん『……どうでしょうか。しかし、ボロボロの今のAqoursは、こうして少しでも気力のある選手に、すがるしかない……』

あさみん『そんな状況に、陥ってしまっているのも事実』

あさみん『ですが……』

 

うっちー「……えみつん。みもりん」

みもりん「うん」

えみつん「彩も……感じる?」

うっちー「そうだね。あの子……」

 

あんちゃん「………」

キッ…

 

うっちー「まだ――目は、死んでない」
52: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/15(木) 01:41:23.86 ID:rZZS2aMi
あんちゃん「」

シュッ!

 

パシッ!

りきゃこ(あんちゃん……)

りきゃこ(大丈夫、なの……?)

 

ひなひな『投球練習を見る限り、特に変化は見られません、伊波』

あさみん『………?』

あさみん(今の、投げ方……何かが……?)

 

あんちゃん「………」

パシッ

 

『3番、キャッチャー、三森』

ワアアアアッ!

 

ひなひな『さあ試合が再開されます!!』

ひなひな『打席に入るのは、ここまで4打数2安打、3打点を挙げている三森!!』

ひなひな『果たして、Aqoursの息の根を止める打席になるのでしょうか!?』

 

みもりん「――悪いけど、手は抜かないよ」

みもりん「それが、礼儀だからね」
53: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/15(木) 01:42:52.78 ID:rZZS2aMi
\プレイ!/

 

あんちゃん「………」

あんちゃん(あいなが――思い出させてくれた)

あんちゃん(そうだ。あきらめたら、全てが終わっちゃう)

あんちゃん(私たちが積み上げてきたものも。応援してきてくれた人たちの想いも。何もかも)

あんちゃん(千歌たちだって――)

あんちゃん(あきらめなかったから。奇跡を、起こせたんだ)

あんちゃん(私たちだって、信じなきゃ――)

キッ!

あんちゃん(千歌たちに――顔向け、出来ない)

 

みもりん(気合は――入ってる、みたいだね)

みもりん(いいね。まだ、折れない気持ち――好きだよ、そういうの)

 

りきゃこ(……あんちゃん)

りきゃこ(頑張って……!)
54: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/15(木) 01:43:57.67 ID:rZZS2aMi
あんちゃん(私……ほんと、ダメダメなリーダーで)

あんちゃん(みんなに、いっつも、助けられてばかりだった)

あんちゃん(だから、今度は――私の番)

 

ザッ…!

 

あさみん『――!!』

あさみん(アンダースローだけど。前よりも――)

あさみん(後ろに、振り上げた腕が――高い!?)

 

あんちゃん(みんなが、困ってるなら――助けて、あげたい)

あんちゃん(ダメダメな――私、だけど)

あんちゃん(今だけは――みんなを、)

あんちゃん(引っ張っていってみせる!!)

 

シュバッ!!

 

りきゃこ「――!!」
55: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/15(木) 01:44:42.38 ID:rZZS2aMi
ズバァン!!

 

みもりん「……!!」

 

シー…ン

 

\ス…ストライク!/

 

りっぴー「……え?」

くっすん「今の……」

 

しゅか「な……なんか……」

ふりりん「めっちゃ……速くなかった……?」

きんぐ「まるで、“オラつきモード”の時みたいに……」

 

りきゃこ(い……今の、球……!?)
56: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/15(木) 01:46:10.24 ID:rZZS2aMi
ひなひな『はっ……速い!? 今の一球、アンダースローにも関わらず……!?』

ひなひな『球速は!?』

 

――122km/h

 

ひなひな『――122キロ!? この球速はっ……!!』

あさみん『オーバースローで投げていた時の球速と、同じ……!?』

オオオオオッ!!

 

あんちゃん「………」

パシッ

 

みもりん(どうゆうこと……?)

 

うっちー「さっきまでの球速は、100キロいくかいかないか、ぐらいだった……」

うっちー「アンダースローなのに……なんで、あんなに速い球が投げられるの……!?」

えみつん「………!」
58: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/15(木) 01:47:18.18 ID:rZZS2aMi
りきゃこ(あんちゃん……一体……!?)

 

あんちゃん「」

ザッ…!

 

シュパッ!!

 

バシィッ!!

\ストライク!/

 

みもりん(また、速い球……しかも、外角低め、ギリギリのコースに……!)

みもりん(速いだけじゃない。繊細な、コントロールも……!)

 

ひなひな『低めギリギリ、決まってツーストライク!! これもやはり、122キロ!!』

ひなひな『三森、手が出ない!! 追い込まれました!!』

オオオオオッ!

あさみん『ただ単に、速いだけじゃない』

あさみん『オーバースローの時には無かった、外を丁寧に突くコントロールも、備わってる……!』
59: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/15(木) 01:48:52.35 ID:rZZS2aMi
シュパッ!

 

みもりん「くっ!!」

キンッ!

 

ひなひな『ファール!! なんとか食らいつく、三森!!』

 

みもりん(今のは、僅かに変化した。シンカー……!)

みもりん(まさか、今は、オーバースローの時の球速と……)

みもりん(アンダースローの時の制球力・変化球を、併せ持ってる状態、ってこと……!?)

グッ…

みもりん「……ふふっ」

みもりん(いいじゃん。この期に及んで、まだ進化出来るっていうの? わくわくする!)

みもりん(覚えておくよ。Aqoursと、貴方の名前……!)

 

うっちー「みもりん……」クスッ

えみつん「うん……楽しんでる。すずらしい」
60: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/15(木) 01:50:45.44 ID:rZZS2aMi
あんちゃん(いけっ……!!)

ザッ…!

 

ひなひな『伊波、大きく後ろに、腕を振り上げたぁ!!』

あさみん『――!!』ハッ

 

あんちゃん(――天高く!!)

シュバッ!

 

みもりん「!!」

ブンッ!

 

ズバァン!!

 

\ストライク! バッターアウッ!/

 

ワアアアアッ!!

ひなひな『三振~~~っ!!!』

ひなひな『三森、内角高めのストレートを、振らされましたぁー!!!』

 

あんちゃん「よしっ……!!」

 

りきゃこ「や、やった……! あんちゃん……!」
61: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/15(木) 01:52:58.32 ID:rZZS2aMi
みもりん「………っ!」

みもりん(今の、球……低い位置から、浮き上がってきた……!)

みもりん(あんな軌道の、速い球、見たことない……!)

フッ…

みもりん「……ばいやー」

みもりん「ふふっ。すごいじゃん」

 

ぱいちゃん「う、嘘……」

りっぴー「内角高めの直球なら、みもりん、第一打席でも楽々ヒットにしてるのに……」

ジョルノ「……軌道がね。違うんだよ」

ぱいちゃん「軌道?」

ジョルノ「アンダースロー特有の、低い位置でリリースされたボールが、まるで浮き上がるような下からの軌道で、高めに決まる」

ジョルノ「しかも、そのスピードはオーバースロー並ときた。いかに、みもでも……あの軌道の豪速球は、未知の球だよ」

りっぴー「未知の球……!」

ジョルノ(そして、あの速さの秘密は、)

ジョルノ(おそらく……)

 

あさみん『……フォームが……』

ひなひな『え?』

あさみん『フォームが……違う……!』
62: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/15(木) 01:59:20.87 ID:rZZS2aMi
ひなひな『フォームが違う……!? 見た感じは、前と同じアンダースローですよ?』

あさみん『一見、同じアンダースローに見えますが、実は前の回までとは、全く違うフォームです……!!』

あさみん『映像で確認してみましょう。前の回までの、伊波投手のフォームは、上体を立て、腕は肩から下で振り、リリースしています』

あさみん『典型的な、アンダースローのフォームです』

ひなひな『は、はい……』

あさみん『ところが、今回の伊波投手のフォーム。腕を、後ろに大きく引き――』

あさみん『そこから、身体全体で体重移動しながら、腕を振り、リリースする――ここです!』

ひなひな『……!! 上半身の向きと、腕の位置が、違う……!?』

あさみん『その通りです。上体を横に倒し――腕の振りは、一見、下からの軌道に見えますが――』

あさみん『その実、腕は肩よりも下の位置に、下がってはいない』

あさみん『サイドスロー――いや、オーバースローを、そのまま横に倒したようなフォームになっているんです』

ひなひな『アンダースローなのに、投げ方はオーバースロー……!!』

ひなひな『だから、上手投げと同じスピードの速球を……!! こんな投げ方があるなんて……!!』
63: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/15(木) 02:11:14.36 ID:rZZS2aMi
あさみん『――かつて、“史上最高のアンダースロー”と呼ばれた投手がいました』

あさみん『彼の名は――“杉浦忠”』

あさみん『今から半世紀も前。南海ホークスのエースとして活躍した、大投手です』

あさみん『1年目から27勝を挙げて新人王、2年目は38勝4敗、勝率.905という驚異的な成績を残し、日本シリーズ対巨人戦で4連投4連勝など、数々の伝説を残していますが――』

あさみん『特筆すべきは、彼はアンダースローのピッチャーにもかかわらず、ノビのある豪速球を武器にしていたことです』

ひなひな『豪速球を……?』

あさみん『当時の映像や写真等の資料が少ないものの……』

あさみん『彼もまた、オーバースローのフォームのまま、上体を横に倒した、サイドに近いフォームで投げていたようです』

ひなひな『では、伊波投手のフォームは、その伝説のアンダースロー投手の、再現……!?』
64: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/15(木) 02:14:03.45 ID:rZZS2aMi
あさみん『勿論、伊波投手が、伝説の杉浦投手のフォームを知っていて真似た、という訳ではないでしょう』

あさみん『しかし――どん底から再び這い上がり、また前へ、さらなる高みへ、進もうとする強い想い――』

あさみん『そんな想いが、この“オーバースロー”と“アンダースロー”の融合という形で、現れたのではないでしょうか』

あさみん『この激闘の中で――彼女は、進化を遂げたんです』

ひなひな『進化を――』

あさみん『力強い速球で、相手をねじふせようとする、“オラつきモード”でもない』

あさみん『繊細なコントロールと変化球で、相手をかわす、“ぶりっこモード”でもない』

あさみん『いわば、今のあんちゃんは。その、両者を融合させ』

あさみん『リーダーとして、自分の弱さも強さも受け入れ、周りを引っ張る力を身につけた――』

あさみん『名付けるなら――“真・リーダーモード”!!』

 

あんちゃん「………」

パシッ!

 

ひなひな『……姉様、なんかダサい』ボソッ

あさみん『何ぃ!?』
65: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/15(木) 02:16:39.69 ID:rZZS2aMi
えみつん「すず……」

みもりん「いやあ、やられちゃったあ。あはは」

みもりん「――気を付けて、えみつん」

みもりん「さっきまでとは――別人だよ」

えみつん「………」コクッ…

 

『4番、ピッチャー、新田』

 

ワアアアアッ!!

ひなひな『さあ、ツーアウト満塁と変わりまして、打席には四番の新田が入ります!!』

ひなひな『ここまでの伊波との対戦は、第1打席がホームラン、第2打席はヒットを放つものの好守備で得点はならず!!』

ひなひな『第3打席は三振、第4打席はフォアボールという内容!!』

ひなひな『μ'sの四番とAqoursのエースの対決、決着なるか!?』

 

えみつん「あんちゃん……」

 

あんちゃん「えみつんさん……」

あんちゃん「……勝負です!」
66: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/15(木) 02:19:22.97 ID:rZZS2aMi
りきゃこ(……あんちゃん)

りきゃこ(いいよ。ここまできたら、あんちゃんの思う通りに――)

りきゃこ(来て。思いっきり――!)

 

あんちゃん(ありがとう。りこちゃん)

あんちゃん(私が、まだ頑張れるのは)

 

ザッ…!

 

あんちゃん(受け止めてくれる、りこちゃんと――)

あんちゃん(守ってくれる、みんなの、お蔭だよ!!)

 

シュパッ!!

 

えみつん「――!」

ブンッ!!

 

ズバンッ!!

\ストライク!!/

 

ひなひな『内角ストレート、ズバっと決まった!!』

ひなひな『対する新田も、初球からフルスイング!!』

ひなひな『正に真っ向勝負!! 両者とも、譲る気配は全くありません!!』

ワアアアアアッ!!
67: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/15(木) 02:21:00.79 ID:rZZS2aMi
ひなひな『初球から内角に攻めてきました……!! バッテリー、強気ですね!!』

あさみん『それでも速球にノビがあるので、前ほど簡単には当てられません』

あさみん『この、球速とノビを生んでいるのは、フォームも勿論ですが、ひとえに伊波投手の関節の柔らかさも大きな一因ですね』

ひなひな『柔らかさが?』

あさみん『腕を大きく後ろに振り上げ、そこからリリースまでの体重移動に、無駄がありません』

あさみん『なおかつ、柔らかい手首のスナップと、オーバースローと同じ腕の振りによって、ボールに独特の回転とキレを与えている』

あさみん『かつての杉浦忠投手も、天性の体の柔らかさを持っていたそうです。それが無ければ、こんな無茶なフォームで速球を投げることは不可能でしょう』

あさみん『おそらく、伊波選手の、長年の空手の経験が活きているのでしょう』

あさみん『空手を代表とする打撃系格闘技は、ストレッチに多くの時間を割き、体の柔らかさには定評がありますからね』
68: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/15(木) 02:22:43.65 ID:rZZS2aMi
えみつん(あんちゃん……!)

えみつん(嬉しいよ。逃げずに、真っ向から、向かってきてくれて……!)

 

ザッ…!

 

シュバッ!

 

えみつん「なんの!!」

ギィンッ!!

 

ひなひな『外の球、負けじと打ち返したぁ!! 大きい!!』

ワアアアアッ!!

 

りきゃこ「――!!」

 

ひなひな『っと……切れた、切れた!! ファール!!』

ひなひな『外の厳しい球でしたが、またもフルスイングで打ち返していきました!!』

ひなひな『μ'sの四番として!! そう簡単にはやられないという、気迫を感じます!!』

オオオオオッ!!

 

えみつん「ふふっ……!」

 

フゥ…ハァ

あんちゃん「えみつんさん……流石です……!」
69: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/15(木) 02:25:15.54 ID:rZZS2aMi
シュパッ!!

 

ガギィッ!!

 

ひなひな『またもファール!! またもフルスイング、またも渾身のストレート!!』

ひなひな『両者、全く退きません!!』

オオオオオッ!!

 

あいにゃ「あんちゃん……!」

しゅか「頑張れ……!!」

 

うっちー「えみつん……」

みもりん「負けるな……!」

 

えみつん「………」

ニッ…

 

あんちゃん「………」

フゥ…ハァ…
70: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/15(木) 02:26:40.28 ID:rZZS2aMi
あんちゃん(えみつんさん……)

あんちゃん(貴方と、μ'sは――ずっとずっと、憧れでした)

あんちゃん(ただのファンとして、ライブを見に行った時。あの時の感動は、忘れません)

 

ザッ…!

 

あんちゃん(あの時は――届かない星だった)

あんちゃん(だけど――少しでも、近づきたいから)

あんちゃん(だから――私は、あきらめない)

 

グワッ

 

あんちゃん(この、9人の仲間で)

あんちゃん(何度でも、何度でも――)

あんちゃん(天へ。空へ――!!)

 

シュバッ!!

 

えみつん「――!!」

 

ブンッ!!

 

ズバァンッ!!
71: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/15(木) 02:27:12.30 ID:rZZS2aMi
うっちー「………っ」

みもりん「!!」

 

あいにゃ「――!!」

ありしゃ「………っ」

 

りきゃこ「………!!」

 

えみつん「………」

フッ…

 

\ストライーク!! バッターアウッ!!/
72: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/15(木) 02:28:08.32 ID:rZZS2aMi
ひなひな『ストラァァイク!! 空振り三振!!!』

ひなひな『内角高め、天に伸びるかのような、渾身のストレート!!』

ひなひな『Aqoursのエースがっ……!!』

ひなひな『μ'sの四番を、抑え込みましたぁぁぁ!!!』

 

ワアアアアアッ!!

ウオオオオオッ!!

 

あさみん『………!!』

あさみん(“輝き”は……希望は……!)

あさみん(まだ……消えてない……!)

 

あんちゃん「………」

ハァ…ハァ…

あんちゃん(Aqoursは……負けない……!!)
116: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 01:45:56.11 ID:M8LtYGU/
ひなひな『9回表、ワンナウト満塁のピンチを迎えたAqoursでしたが――』

ひなひな『ここで再び登板したエース・伊波が、3番・三森、4番・新田を連続三振に切って取る、素晴らしいピッチングを魅せました!!』

ひなひな『最後は、低い位置から天に伸びるかのような、浮き上がるストレート!!』

ひなひな『ピンチを脱し、9回裏、最後の攻撃に望みを託します!!』

ワアアアアッ!!

 

えみつん(あんちゃん……)

フッ…

えみつん(……流石だね)

えみつん(まだ、火は……消えてない、ってことか)

 

りきゃこ(やった……!)

りきゃこ(すごい、あんちゃん……!)

 

あんちゃん「はぁ……ぜぇ」フラッ…

ガクッ

 

ひなひな『伊波、膝をついた!! 大丈夫でしょうか!?』

ザワザワ…!
117: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 01:46:43.53 ID:M8LtYGU/
りきゃこ「あんちゃん!!」

ダダッ!

しゅか「大丈夫!?」

あんちゃん「あ、ご、ごめん……ちょっと、力、抜けちゃっただけ……」

 

ひなひな『逢田、斉藤が駆け寄り……なんとか、立ち上がりましたが……』

あさみん『………』

あさみん『……伊波投手の球数は、140球を超えています』

あさみん『体力も、もうほとんど残っていなかったのでしょう。気力、気迫だけで、その体を支えていた』

あさみん『その状態で、新たなフォームから、限界を越えた渾身の球を投げ――』

あさみん『結果、打ち取った瞬間に、力が抜けてしまったのでしょう』

ひなひな『正に、魂のピッチングだった訳ですね……』

あさみん(しかし、その結果……)
118: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 01:48:04.71 ID:M8LtYGU/
ふりりん「あんちゃん、すごいよ!」

ありしゃ「ありがと……あんちゃん」

あいにゃ「あんちゃん……うぅ……」

すわわ「もー、あいな、泣かないの」

あんちゃん「大丈夫……さ、行こ……」

あんちゃん「最後の……攻撃……」

ザッ…ザッ…

 

ひなひな『ナインと共に、ベンチへと戻っていく伊波に、スタンドからは拍手が起こっています!』

 

ワアアアアッ!!

ガンバッタゾォォォ!!

パチパチパチッ

 

あさみん(……今の、あんちゃんのピッチングで、μ's一色だったスタンドの空気が、僅かに傾いた)

あさみん(これが……大きな“うねり”の、きっかけになってくれれば……)

 

ひなひな『規定により、今試合は9回までで、延長はありません!!』

ひなひな『9回裏――Aqours、正真正銘、最後の攻撃を迎えます!!』
119: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 01:49:17.74 ID:M8LtYGU/
~ここまでのおさらい~

 

1542035129-レス119-画像

 

μ'sバッテリー:内田、新田 ― 新田、三森

Aqoursバッテリー:伊波、小宮、伊波 ― 逢田
120: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 01:50:41.10 ID:M8LtYGU/
【μ's】

1左 久保

2二 徳井

3捕 三森

4投 新田

5右 内田

6中 飯田

7遊 Pile

8一 南條

9三 楠田

 

【Aqours】

1遊 斉藤

2二 降幡

3投 伊波

4中 小宮

5三 高槻

6捕 逢田

7右 諏訪

8左 小林

9一 鈴木
122: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 01:51:43.56 ID:M8LtYGU/
【9回裏】

 

えみつん「………」

みもりん「……えみつん」

えみつん「ん?」

うっちー「……大丈夫?」

みもりん「その……さっきも、フルスイングしてたし……」

えみつん「………」 

ニコッ

えみつん「大丈夫大丈夫! ありがと、心配しないで!」

えみつん「それに、まだ……あんちゃんは、諦めてない」

えみつん「だったら、私も――ちょっとはさ、先輩らしく」

えみつん「最後まで、全力でやろう――って、思うんだ!」

シカコ「……!」

そらまる「えみつん……」

ジョルノ「………」
123: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 01:53:00.90 ID:M8LtYGU/
ジョルノ「えみつん。ま、一応、年長者として言うけど……お前が言うな、って感じだけどさ……」

ジョルノ「無茶はしても……無理は、しないでよ」

えみつん「………」

ニコッ

えみつん「ありがとうございます」

えみつん「でも、南條さんこそ、ですよ」

ジョルノ「………」

りっぴー「……よーし、それじゃあ最後の守備、行こっ!」

ぱいちゃん「うん、えみつんも大丈夫そうだし!」

くっすん「ビシッと勝つぞー!」

えみつん「おー!! 頑張ろ、みんな!」

 

うっちー「………」

みもりん(えみつん……)

 

ひなひな『さあ、最後の守備につくμ's!!』

ひなひな『勝利に向けて! ナインが、グラウンドに散っていきます!!』

ワアアアアッ!!

ミューズゥゥゥ!!
124: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 01:53:55.61 ID:M8LtYGU/
あんちゃん「………」

ハァ…フゥ

きんぐ「最後の……攻撃、か……」

きゃん「だけど……9点差……」

りきゃこ「……みんな、暗い顔しないで! 顔上げて!」

りきゃこ「せめて最後、少しでも反撃して、一糸報いて……!」

ふりりん「う……うん……」

あいにゃ「……ぐすっ……」

あんちゃん「………」 

あんちゃん「みんな……覚えてる?」

ありしゃ「……え?」

あんちゃん「この試合の、最初に……円陣組んで、言ったこと」
125: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 01:54:45.39 ID:M8LtYGU/
あんちゃん「……いつも通り。困ったらお互いの目を見て」

あんちゃん「お互い助け合って……最高の試合をしよう」

すわわ「………」

あいにゃ「最高の……」

あんちゃん「相手が、μ'sでも……全力で、勝ちに行く、って」

しゅか「……!」

あんちゃん「私たち……まだ、途中だから」

あんちゃん「まだ、こんな所で……立ち止まって、られないよ」

りきゃこ「あんちゃん……」

あんちゃん「だけど……やることは、いつもと同じなんじゃないかな」

ありしゃ「同じ?」

あんちゃん「だって、私たち。ずっと、この9人で」

あんちゃん「困った時は、お互いの目を見て。何があっても、助け合って、ここまで来たじゃん!」

ニコッ…

あんちゃん「だから、きっと……今日も……」

あんちゃん「この9人でなら、大丈夫だって……思うから……!」

8人「………」

あんちゃん「行こう。最後の、攻撃……!」
126: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 01:55:36.66 ID:M8LtYGU/
『9回の裏――Aqoursの攻撃は』

『1番、ショート、斉藤』

 

シュカシュゥゥゥッ!!

ガンバレェェェッ!!

 

しゅか「よーし……!!」

ザッ

しゅか(なんとか。なんとか、塁に……!)

 

ひなひな『さあ9回裏、Aqours最後の攻撃は、打順よく1番の斉藤から!!』

ひなひな『なんとか出塁して、μ'sに一糸報いたいところ!!』
127: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 01:56:21.09 ID:M8LtYGU/
えみつん「………」

ザッ…

 

ひなひな『しかしこの回も、Aqoursの前に立ちふさがるのは、μ'sの絶対的リーダー、新田!!』

ひなひな『球種はストレートだけにもかかわらず、ここまでAqoursに、1本のヒットも許しておりません!!』

ひなひな『Aqours、この最強投手を相手に、活路を開くことは出来るのか!?』

ワアアアアッ!!

エミツゥゥゥン!!

 

しゅか(あんじゅが、頑張ってるんだ。私だって……!!)

しゅか(とにかく、当てなきゃ。当てなきゃ……!!)
128: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 01:57:13.95 ID:M8LtYGU/
ザッ…!

 

ひなひな『新田、大きく振りかぶる!!』

 

グワッ…

シュバッ!!

 

しゅか「っ!!」

ブンッ!

 

ズバンッ!!

\ストライク!!/

 

ひなひな『初球空振り!! 球速は136キロを計測!!』

ひなひな『最終回に至っても、球威が衰える様子はありません、新田!!』

オオオオオッ!!

あさみん『……ただ速いだけの球ではありません。回転数が多い、いわゆる“ノビる球”です』

あさみん『バッターからは、まるでホップするかのような感覚に囚われていると思いますね』

ひなひな『正に、火の玉ストレート……おや?』

 

あんちゃん「………」
129: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 01:58:10.25 ID:M8LtYGU/
きゃん「え……あんちゃん?」

あいにゃ「しゅかの応援、しないの……?」

 

ひなひな『前の回に続き、この9回も――ひとりベンチを出て、バットを振ります、伊波』

ひなひな『打順的には、この後、回ってきますが……』

あさみん『………』

 

しゅか(くっそ。まっすぐだけなのに。まるで、浮き上がってくるみたいな……)

しゅか(よく見るんだ。しっかり……よく見て……!!)

 

ザッ

 

ひなひな『新田、第2球!!』

 

シュバッ!!

 

しゅか「ああああっ!!」

ガキィッ!!
130: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 01:59:54.06 ID:M8LtYGU/
えみつん「!」

 

ひなひな『ファ……ファール!!』

ひなひな『しかし、初めてバットに新田の球を当てました、斉藤!!』

オオオオオッ!!

 

あいにゃ「しゅかー!!」

ふりりん「がんばれー!!」

 

しゅか「ぐっ……!」

ビリビリ…

しゅか(なんて、重い球……!)

しゅか(だけど……当てられた。当てられるんだ……!)

しゅか(もう、後が無い。後が無いんだ。私が出なきゃ、私が……!!)

 

みもりん(……当ててきたね)

みもりん(だけど……)

 

えみつん「………」

ザッ!
131: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 02:01:00.00 ID:M8LtYGU/
シュバッ!!

 

しゅか「っ!!」

ブンッ!

 

ズバァンッ!!

\ストライッ!! バッターアウッ!!/

 

ひなひな『最後は138キロの直球!! 斉藤のバット、あえなく空(くう)を切りました!!』

ひなひな『新田、これで10連続三振!! 後が無いAqours、9回裏、ワンナウト!!』

アアアアァ…

 

しゅか「く……う、う……!!」

しゅか(もう、後が無いのに……もう、おしまいなのに……!!)

しゅか「ちっ……くしょおおおおっ!!!」

ガッ!

 

あいにゃ「しゅか……」ウルッ

きゃん「しゅかでも……無理、なんて……」

りきゃこ「……もう……」

 

あんちゃん「………」
132: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 02:02:02.49 ID:M8LtYGU/
『2番、セカンド、降幡』

 

フリリィィン!!

ガンバッテェェェ!!

 

しゅか「あいあい……!!」

あいにゃ「頑張れぇー!!」

 

ふりりん「………」

カタ…カタ…

ふりりん(もう、後が無い……ワンナウト……!)

ふりりん(あたしが出なきゃ、ツーアウト……なんとかしなきゃ、なんとか……!)

 

ひなひな『ワンナウト、ランナー無しで、2番の降幡! しかし……』

あさみん『表情が……硬いですね。追い詰められている、プレッシャーか……』
133: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 02:03:04.54 ID:M8LtYGU/
ザッ…

 

シュバッ!!

 

ふりりん「ひぅっ……!!」

 

ズバンッ!!

\ストライク!!/

 

ひなひな『あっさり初球決まって、ワンストライク!!』

あさみん『諦めずに、しっかりボールを見て欲しいところですが……!』

 

えみつん「………」

パシッ

 

ふりりん(えみつんさん……)

ふりりん(アニメで、共演した時……ライブに、行かせてもらった時……)

ふりりん(あんなに、優しかったのに。大好きなのに……)

ガタ…ガタ…

ふりりん(なんで……? 今は、怖い……!!)
134: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 02:04:06.45 ID:M8LtYGU/
あいにゃ「ああ……あいあい……」

すわわ「………」

ギリッ…

すわわ(本当に、もうおしまいなの……!?)

すわわ(何か無いの、何か……!? 攻略の、糸口……!!)

 

ザッ…

シュバッ!!

 

ふりりん「……っ!!」

ブンッ!

 

ズバンッ!!

\ストライク!!/

 

ひなひな『ああー、今度はとんでもないボール球を振ってしまった!!』

 

しゅか「あいあいー!! ちゃんと見ろー!!」
135: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 02:05:14.31 ID:M8LtYGU/
ふりりん「はぁっ、はぁ……!!」

ふりりん(駄目だ……当てられる、気がしない……!!)

 

えみつん「………」

パシッ

 

ふりりん(もう……終わり、なの……? 東京ドームに立つ、っていう夢を、叶えられずに……)

ふりりん(ルビィも……ドームに、立たせてあげられないまま……)

ギリ…

ふりりん(やだ……そんなの、やだ……!)

ふりりん(なんとかしなきゃ。なんとか……!)

 

ひなひな『ツーストライクと追い込んだ、3球目!!』

 

シュバッ!!

 

ふりりん「――!!」

スッ!

 

えみつん「!」

 

みもりん(バントの構え――!)

 

ガキッ!!
136: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 02:06:46.82 ID:M8LtYGU/
ひなひな『降幡、バントで当てにいった!!』

ひなひな『しかしこれは、ふらふらと、マウンド寄りに上がってしまった!!』

 

みもりん「――!」

ダッ!

 

パシッ!

\アウトォ!!/

 

ひなひな『咄嗟に飛び出した三森、捕りました!! アウトォ!!』

アアアアァァ…

あさみん『……?』

あさみん(……今の……)

 

すわわ「――?」

ピクッ

ありしゃ「すわわ……?」

すわわ(今の……キャッチャーフライになったけど……)

すわわ(位置的には、ちょっと微妙……ピッチャーが、向かっても良かった……)

すわわ(だけど……今)

すわわ(新田さんは……全く、動く気配が、無かったような……?)
137: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 02:08:04.64 ID:M8LtYGU/
ひなひな『降幡、決死のバントで当てにいき、新田の連続奪三振は阻止したものの……』

ひなひな『球威に押され、打球はフライとなり、あえなくアウトとなりました……』

 

ふりりん「うっ……ぐすっ」

ふりりん「ううっ……! ふえぇぇぇ……!!」

ポロポロ

ふりりん(駄目だ……役に、立てなかった……!)

ふりりん(もう……もう……!!)

 

しゅか「あいあい……」

あいにゃ「うっ……ううう……!」グスッ

きんぐ「やっぱり……もう、無理だ……」

りきゃこ「……っ!」ググッ…

ありしゃ「………」

 

ひなひな『9回裏、ツーアウト、ランナー無し!! 点差は9点!!』

ひなひな『Aqours……ついにっ……ついに、追い詰められました!!』
138: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 02:10:52.99 ID:M8LtYGU/
あんちゃん「………」

ザッ…

 

ひなひな『……っと。ここで、斉藤・降幡の打席中も、ずっとバットを振っていた伊波が……』

ひなひな『ベンチを横切り……バッターボックスに向かって……』

 

あんちゃん「………」 

あんちゃん「……わかった……上……」

ボソ…ボソ…

あんちゃん「たぶん……“ボール、2個分”……」

ブツ…ブツ…

りきゃこ「………!?」

しゅか「あ……あんじゅ……?」

ありしゃ「………」  
139: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 02:11:40.39 ID:M8LtYGU/
みもりん「えみつん、ナイスボール!!」

みもりん「あとひとり!!」

 

えみつん「………」

 

くっすん「えみつん、いいぞー!!」

そらまる「最後まで落ち着いてけー!!」

 

りっぴー「ラストも三振狙ってこー!!」

うっちー「えみつん……」

 

ワアアアアッ!!

ミューズッ!! ミューズッ!!

 

ひなひな『勝利を目前にし、盛り上がる一塁側、μ'sの応援席!!』

ひなひな『それとは対照的に――Aqoursの応援席。すっかり、静まり返り……』

あさみん『………』
140: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 02:16:24.11 ID:M8LtYGU/
ありしゃ「ツーアウト……」

あいにゃ「ランナー……なし……」

きんぐ「駄目だ……やっぱり……無理だったんだよ……」

りきゃこ「もう……叶わないの……?」

しゅか「ドームに、立つっていう夢も……その先も……!!」

すわわ「もう……」

ふりりん「ぐすっ……ふえぇぇ……!!」

きゃん「うっ……ひぐっ」

ポロポロ…

きゃん「ああ……もう……終わっちゃうよぉ……!」

あんちゃん「………」

あんちゃん「――終わんないよ」

 

ザッ

 

あんちゃん「――始まりだよ!」

 

『3番、ピッチャー、伊波』
141: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 02:17:49.73 ID:M8LtYGU/
ワアアアアッ!!

アンチャァァン!!

ガンバレェェェッ!!

 

ひなひな『さあ、ツーアウトランナー無しとなって――』

ひなひな『この場面で打席に入るのは、Aqoursのエースにしてリーダー、伊波!!』

 

えみつん「………」

 

ひなひな『ここまで幾度となく相まみえてきた、新田と伊波、リーダーとしての対決!!』

ひなひな『ここでまた、この両者の対決となるのは、運命的なものを感じずにはいられません!!』

ひなひな『果たして伊波、最後の打者となるのか!? はたまた、最後まで足掻くのか!?』

 

あんちゃん「………」

 

きゃん「………!」

りきゃこ「あんちゃん……」
142: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 02:18:48.96 ID:M8LtYGU/
えみつん(あんちゃん……)

えみつん(残酷な先輩だと、思うかもしれない)

 

ザッ…

 

えみつん(だけど――あんちゃんが、全力で向かってきて、くれるなら)

 

グワッ…!

 

えみつん(私も、先輩として。最後まで――)

えみつん(全力で――臨む!!)

 

シュバッ!!

 

あんちゃん「――!!」

ブンッ!!

 

ズバァンッ!!

\ストライク!!/
143: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 02:21:08.23 ID:M8LtYGU/
ひなひな『伊波、初球、空振り!! ワンストライク!!』

アアアアァ…

 

きゃん「ああああ……」

あいにゃ「あんちゃんでも……駄目、なの……?」

すわわ「………」

すわわ「……でも」

すわわ(今の……タイミング、合ってた……?)

 

あんちゃん「ふぅー……」

キッ…

あんちゃん(もっと……上……)

あんちゃん(ボール……2個分……もっと……?)

ブツブツ…
144: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 02:22:06.37 ID:M8LtYGU/
みもりん(タイミングは……合ってる)

みもりん(ちょっと、やな感じ……ここは、間を置かずに。早めにカウント、取りにいこう)

 

えみつん(おっけー、すず……!)

ザッ

グワッ…!

 

ひなひな『新田、体を大きくひねり、第2球!!』

 

シュバッ!!

 

あんちゃん「!!」

ブンッ!!

 

ズバンッ!!

\ストライク!!/
145: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 02:23:53.68 ID:M8LtYGU/
ひなひな『伊波、これも空振り!! ツーストライク!!』

ひなひな『いよいよ、後がありません!!』

あさみん(だけど……)

あさみん(タイミングは、合ってる……!)

 

あんちゃん「ふぅ……はぁ……!」

ブツ…ブツ…

あんちゃん(ボール2個半でも……駄目だった)

あんちゃん(だったら……)

グッ…

あんちゃん(――“3個分”)
146: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 02:25:12.01 ID:M8LtYGU/
ワアアアアッ!!

アットヒットリッ!! アットヒットリッ!!

 

ひなひな『μ's側応援席からは、盛大な“あとひとり”コールの大合唱!!』

ひなひな『ツーストライクと追い詰められた伊波!! 次が最後の一球となるのか!?』

 

しゅか「もう……」

りきゃこ「駄目なの……!?」

あいにゃ「あんちゃん……!!」

ギュッ

 

あんちゃん「………」

 

あさみん『……!!』ハッ

あさみん(さっきまで、ずっと素振りをしていた、あんちゃん)

あさみん(あれは、単なる素振りじゃなくて……)

あさみん(新田さんの投球に合わせて、バットを振って)

あさみん(ヒッティングの、タイミングを……合わせていたんだとしたら……!?)
147: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 02:26:02.63 ID:M8LtYGU/
あんちゃん(私は……千歌から。そして、現実の、Aqoursのみんなから)

あんちゃん(教えてもらった。“奇跡”は、勝手に起こるものじゃない)

あんちゃん(みんなで――起こす、ものなんだって)

 

ザッ!

グワッ…!

 

ひなひな『新田、運命の、第3球!!』

 

あんちゃん(私が――諦めたら。きっと千歌に、もう――向き合えない)

あんちゃん(だから――)

 

シュバッ!!
148: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/25(日) 02:27:11.54 ID:M8LtYGU/
あんちゃん(起こそう、奇跡を)

あんちゃん(足掻こう、精一杯――!)

 

グッ!

 

あんちゃん(全身全霊――)

 

ブンッ

 

あんちゃん(最後の、最後まで!!)

 

 

カキィッ!!

 
163: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/29(木) 01:55:22.05 ID:e0lZI6SX
えみつん「!」

 

みもりん「!!」

 

あさみん『!!』

ひなひな『弾き返した!! 新田の足許、抜ける!!』

オオオオオッ!

 

ぱいちゃん「くっ!!」

ダッ!

 

ひなひな『ショートPile、飛びついて――』

 

あんちゃん(抜けろっ……!!)

ダダダダッ

あんちゃん(抜けろ!!)
164: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/29(木) 01:56:09.95 ID:e0lZI6SX
ぱいちゃん「くあっ!!」

バッ!

ビシッ

 

ひなひな『Pile、弾いた!! 抜けたぁ!!』

ワアアッ!!

 

あんちゃん「――!!」

ダダッ!

 

ひなひな『伊波の執念の一打ぁー!!』

ひなひな『弾き返した打球! 好手Pileが懸命に飛びついてグラブを伸ばしたものの、あと一歩届きませんでした!!』

ひなひな『Aqours、剛腕・新田から、ついに初ヒット!! 最後の最後で、一糸報いました!! ツーアウト一塁!!』

オオオオオッ!!

 

しゅか「やったー!! あんじゅー!!」

あいにゃ「あんちゃん……!!」

 

あんちゃん「………」

ハァハァ

あんちゃん「……っ」

グッ!
165: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/29(木) 01:56:42.96 ID:e0lZI6SX
あさみん『――伊波選手は先程まで、味方の攻撃の際に、ひたすら素振りをしていました』

あさみん『ですが、ただがむしゃらにバットを振っていた訳ではありません』

あさみん『おそらく、マウンド上の新田投手が投げるのと同時に素振りをし、あらかじめタイミングを測っていたのではないでしょうか』

ひなひな『味方が攻撃している間も、ずっとバットを振っていたのは、そのため……!』

あさみん『結果、バットはボールをとらえることが出来た』

あさみん『当たりは決して良くなかったものの、前に弾き返す意識で、センターに抜けていきました』

あさみん『正に、気持ちで持って行った一打――あんちゃんの執念、とも言えるかもしれません……!』
166: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/29(木) 01:57:23.70 ID:e0lZI6SX
ぱいちゃん「あーん、捕れなかった……えみつん、ごめーん!」

シュッ!

 

えみつん「へーきへーき! 大丈夫だよ、ぱいちゃん!」

パシッ

 

くっすん「たまたまだぞ、たまたまー!」

そらまる「次でビシっと抑えりゃOKよ!」

 

みもりん(当ててきた……)

みもりん(前の回までは、バットに当てることすら出来なかった。だけど、この回……)

みもりん(最初の子は、ファールで当てた。次の子は、バントフライ。そして、微妙な打球だったけど――ヒット)

みもりん(少しずつ……えみつんの球が、見えてきた……?)
167: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/29(木) 01:58:40.08 ID:e0lZI6SX
りきゃこ「あんちゃん、塁に出た……!」

きゃん「だけど、今さらひとり、ランナーが出たところで……」

しゅか「ちょっと、なに弱気なこと言ってんの!」

あいにゃ「次は……!!」

 

ありしゃ「………」

ムシャムシャ…

モグモグ…

 

あいにゃ「って、ありさ! なんでまだ、お菓子食べて……!」

すわわ「――待って、あいな」

グッ

すわわ(……ありさなりに、緊張してるのかもしれない)ボソッ

あいにゃ(……え?)

 

ありしゃ「………」 

モグモグ… 

ゴクン

ありしゃ「……よし……」

ザッ

 

『4番、センター、小宮』
168: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/29(木) 02:01:58.77 ID:e0lZI6SX
ワアアアアッ!

ひなひな『さあ、続くバッターは四番の小宮!!』

ひなひな『Aqoursの中でも指折りの好打者!! 6回には、反撃の狼煙となる2点タイムリーツーベースを放っています!!』

ひなひな『9回裏、後が無いこの状況の中で、伊波に続くことが出来るか!?』

 

ありしゃ「………」

ザッザッ…

 

あいにゃ「ありさー、頑張ってー!!」

すわわ「だけど……」

すわわ(あんな、余裕の無さそうなありさの表情……初めて、見たかも……)

 

ありしゃ「……!」

フルフル…

ありしゃ(バットを持つ手が……震えてる……?)

ありしゃ(プレッシャー……怖い、の……? 私は……)
169: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/29(木) 02:03:00.85 ID:e0lZI6SX
\プレイ!/

 

ありしゃ「………っ」

ありしゃ(打たなきゃ……終わる……)

ありしゃ(ドームの夢も、何もかも……)

ドクンドクン…

 

えみつん「………」

 

ありしゃ(えみつん、さん……)

 

ザッ…

シュバッ!

 

ありしゃ「!!」

ブンッ!!

 

ズバンッ!!

\ストライク!!/
170: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/29(木) 02:03:53.23 ID:e0lZI6SX
ありしゃ「くっ……!!」

 

ひなひな『小宮、初球は空振り!! バットはボールの下を泳ぎました!!』

ひなひな『いかに小宮といえど、新田の剛球の前では通用しないのか!?』

 

あいにゃ「あああ……!」

りきゃこ「ありさ……」

きんぐ(やっぱり……)

グッ…

きんぐ(頑張ったところで……もう……)

 

ありしゃ「ふぅ、はぁ……」

チラッ…

 

えみつん「………」

パシッ

 

ありしゃ(えみつんさん……そして、μ's……)

ありしゃ(なんて、大きい……)
171: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/29(木) 02:05:33.74 ID:e0lZI6SX
ありしゃ(………)

ありしゃ(……あの日。μ'sのライブを、東京ドームで、目にした時)

ありしゃ(足が震えるほどの、衝撃だった)

ありしゃ(私たちが、あの人たちと同じように、この場所に立てるのか)

ありしゃ(あの人たちのように、大きくなれるのか――怖ささえ、感じた)

ありしゃ(今――あの時と、同じ気持ちになるなんて――)

グッ…

ありしゃ(やっぱり……無理だったの? 私たちには……)

 

あんちゃん「………」

 

えみつん「」

ザッ…

 

ひなひな『新田、小宮に対し、第2球!!』
172: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/29(木) 02:06:40.98 ID:e0lZI6SX
あんちゃん「っ!!」

ダッ!!

 

えみつん「!!」

 

みもりん(走った!?)

 

ひなひな『伊波、走ったぁ!!』

ウオオオオッ!?

 

ありしゃ「!!」

 

バシィッ!!

\ボール!!/

 

みもりん「このっ!!」

シュッ!
173: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/29(木) 02:07:37.06 ID:e0lZI6SX
あんちゃん「ぜっ、はっ!!」

ダダダダッ

あんちゃん「うああああっ!!」

ズザザザッ!!

 

バシィ!!

\セーフ!!/

 

ウオオオオッ!!

ひなひな『セェェーフ!! 盗塁成功!!』

ひなひな『外れた球、すかさず三森が二塁手の徳井に送りましたが、伊波の足が一瞬勝った!!』

ひなひな『伊波、決死の爆走で、二塁を陥れました!! これでツーアウト二塁!!』

あさみん『これはバッテリーも予想していなかったでしょう。一瞬の隙を突いた、あんちゃんの好判断です!!』
174: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/29(木) 02:09:02.87 ID:e0lZI6SX
みもりん(まさか、この状況で走ってくるなんて……)

 

えみつん(しかも……ピッチャーで、もう体力もほとんど無いはずの、あんちゃんが)

えみつん(まだ……信じてるんだね。Aqoursを……みんなを)

 

あんちゃん「ぜぇっ、はぁ……!!」

 

しゅか「うおー、あんじゅー!!」

ふりりん「あんちゃん……!」

きんぐ「……!!」

ググッ…

きんぐ(なんでよ……なんで、そんなになってまで……!)

きんぐ(まだ……勝てると、思ってるの……!?)

ギリ…

きんぐ(馬鹿じゃん……そんなの……!)

 

ありしゃ「………」

ありしゃ(あんちゃん……)
175: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/29(木) 02:09:50.83 ID:e0lZI6SX
あんちゃん「………」

ゼェハァ…

あんちゃん「――ありさちゃん!!」

 

ありしゃ「――!?」

 

あんちゃん「“みっつ”、だよっ!!」

バッ!

あんちゃん「……へへっ」

ニッ…

 

ひなひな『これは……? 二塁塁上、伊波が、小宮に向けて、ピースサイン……?』

あさみん『いえ――ピースではないですね。指を3本、立てています』

あさみん『これは……!』

 

ありしゃ「……!!」

 

すわわ「――そうか」

ハッ

すわわ「“ボール3個分、上”……!!」
176: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/29(木) 02:11:54.78 ID:e0lZI6SX
あいにゃ「ボール3個分?」

すわわ「うん。あんちゃん、打席に入る前、何かブツブツ言ってたでしょ?」

きゃん「“上”とか、“ボール2個分”とかってやつ?」

すわわ「あれは、バットの上――“ボール何個分か上の位置を打つイメージで振る”、って意味だったんだよ」

すわわ「そして、あんちゃんが打席の中で、見つけた本当のイメージの位置は――」

すわわ「バットより――“ボール3個分、上”」

 

あさみん『新田さんの直球が、いわゆる“ノビるストレート”であることは、前述の通りです』

あさみん『よく、“打者の手元で浮き上がる”“ホップする”と言いますが、実際はオーバースローで投げたボールが浮き上がることはありません』

ひなひな『そうなんですか? なら、どうして……』

あさみん『“ノビるストレート”は、通常の直球に比べて、強烈なバックスピンがかかっています』

あさみん『そうすると、ボールに揚力が働き、通常の直球よりも、投げられてからホームベースに届くまでの、落ちる幅が小さくなる』

あさみん『普通の直球の軌道に慣れている打者から見ると、バックスピンがかかった直球は、想定の軌道よりも上の位置を通るため……』

あさみん『まるで浮き上がっているように見え、バットはボールの下を振ってしまう、という訳です』
177: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/29(木) 02:13:29.66 ID:e0lZI6SX
すわわ「これを攻略するためには、バットをスイングする位置を、通常の直球よりも上でイメージして振ること――」

きゃん「そっか! それが、ボール3個分上、ってことなんだ!」

あいにゃ「おーい、ありさー!! ボール3個分、上振ってー!!」

 

あんちゃん(ありさちゃんは、私たちの中の誰よりも、スイングスピードが速い)

あんちゃん(だから、しっかり引きつけて。しっかりボール見て、狙いを定めて!)

あんちゃん(ありさちゃんなら――きっと、大丈夫!)

 

ありしゃ(あんちゃん……)

フッ
178: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/29(木) 02:14:07.72 ID:e0lZI6SX
みもりん(つかんできた――みたいだね)

みもりん(だけど――!)

 

えみつん「」

ザッ…

シュバッ!

 

ありしゃ「……!」

ピクッ

 

ズバン!

\ボール!!/

 

ひなひな『小宮、冷静に見極めて、ボール!!』

あさみん『小宮選手は、スイングスピードに自信がある分、ギリギリまで待ってボールを見極められるんです』

あさみん『伊波選手の一言で、落ち着きました。見えてますよ、小宮選手は……!!』
179: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/29(木) 02:15:13.13 ID:e0lZI6SX
ありしゃ(あんちゃんは――自分のことを、頼りないリーダーだ、ってよく言ってるけど)

ありしゃ(それでもね。やっぱり、私たちのリーダーは、あんちゃんだよ)

ありしゃ(だって――)

ありしゃ(こうして、他の誰かを、自然と勇気づけてくれるもの)

ありしゃ(そして――)

 

えみつん「………」

パシッ

 

ありしゃ(――えみつんさん)

ありしゃ(覚えてますか? 初めて、会った時のこと)
180: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/29(木) 02:15:59.21 ID:e0lZI6SX
ありしゃ(一緒の舞台に立って、楽屋で色々お話して)

ありしゃ(その時に、ラブライブっていう、私の知らない世界があることを知った)

ありしゃ(挑戦したくなった。未知のステージの中で、自分がどこまで行けるのか)

ありしゃ(貴方のお陰で――私は、こんなにも素晴らしい世界を、知ることが出来たんです)

グッ…

ありしゃ(だから――その、お礼に)

ありしゃ(貴方に―― 一糸、報いたい)

 

えみつん(ありちゃん……)

ニッ…
181: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/29(木) 02:16:43.96 ID:e0lZI6SX
ありしゃ(そうだ。ドームで、μ'sのライブを見た時も――そう)

ありしゃ(衝撃を受けて、怖さすら感じた。だけど――それだけじゃなかった)

ありしゃ(いつか、私たちも、こんな舞台に立ってみたい。諦めたくない。挑みたい!!)

ありしゃ(そうだった。挑戦する心――それこそが、私。それこそが――Aqours)

 

えみつん「」

ザッ…

 

シュバッ!!
182: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/29(木) 02:17:34.41 ID:e0lZI6SX
ありしゃ(それに――)

 

グッ

 

ありしゃ(私は――ダイヤなんだから)

ありしゃ(誰よりも、スクールアイドルを愛する女の子)

ありしゃ(そんな、私が。ダイヤが。諦めるのは――)

 

ブンッ

 

カッ!!

 

ありしゃ(――ぶっぶー、ですわ!!)
183: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/29(木) 02:18:58.46 ID:e0lZI6SX
キィンッ!!

 

みもりん「!!」

 

ひなひな『打っ、』

 

ガッ!!

 

ひなひな『ああっ、三塁ベースに当たった!!』

ひなひな『鋭い打球、ベースに当たり、高くバウンドする!!』

オオオオオッ!?

 

シカコ「なろっ!!」

ダダダッ!

パシッ!!

 

ひなひな『ああっと、素早くバックアップに飛び出していたレフトの久保!!』

ひなひな『転々と転がろうとするボールを止め、長打は阻止!!』

ひなひな『二塁ランナーの伊波は、三塁ストップ!!』

 

あんちゃん「……!!」

タタッ
184: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/29(木) 02:19:39.70 ID:e0lZI6SX
ひなひな『しかし小宮、新田の直球をとらえました!! 伊波に続き、ツーアウトからの連打!!』

あさみん『しっかり引きつけて、ボールをとらえ――非常に速い打球でしたね!』

あさみん『小宮選手らしさを発揮したバッティングと言えますよ!!』

ワアアアアッ!!

 

あんちゃん(やったね、ありさちゃん……!)

ハァ…フゥ

 

ありしゃ(えみつんさん……)

グッ…!

ありしゃ(貴方から教わった、この世界)

ありしゃ(私たちは、まだ――止まりたくない!)
185: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/11/29(木) 02:20:48.30 ID:e0lZI6SX
きんぐ「……!」

きんぐ(あんちゃんだけじゃなく……ありさまで……!)

きんぐ(本気……なの……!?)

 

しゅか「ありさー!! ナイスー!!」

あいにゃ「そうよ、まだまだ……!!」

りきゃこ「次は……!!」

 

ひなひな『崖っぷちから、執念の連打で、粘るAqours!!』

ひなひな『ツーアウト、ランナーは一・三塁!! 全ては、このバッターにかかっています!!』

ひなひな『続く、バッターは――』

 

『5番、サード、高槻』

 

ワアアアアッ!!

 

きんぐ「………!!」

ギュッ…!
211: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:13:12.75 ID:qgGBm4U9
ひなひな『9回裏、ツーアウトから3番・4番に連打が飛び出し、ランナーは一塁・三塁!!』

ひなひな『このチャンスに、5番の高槻が臨みます!!』

ワアアアアッ!

 

きんぐ「……!」

きんぐ(よりによって……)

きんぐ(ここで……私……)

 

みもりん「………」

みもりん「すみません、タイムで」

 

ひなひな『おっと、ここでキャッチャー三森、マウンドの新田のもとに向かいます』

あさみん『上手いですね。攻撃の流れが出来かけているので、一旦、間を取りましたね』
212: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:13:57.98 ID:qgGBm4U9
みもりん「……えみつん」

えみつん「すず……」

みもりん「3番と4番の子は、タイミングが合ってきてた」

みもりん「だけど、ここから先の打順は、今まで見たとこ、そこまでバッティングの技術は高くない」

みもりん「力みすぎずに。落ち着いて放れば、大丈夫」

えみつん「うん……」

えみつん「でも……すず。やっぱり私、最後まで、全力でいくよ」

みもりん「えみつん、だけど……!」

えみつん「それが――」

えみつん「先輩としての、礼儀だと思うから」

みもりん「………!」

みもりん「……わかった。ここまで、一緒にやってきたんだもん」

みもりん「えみつんに、任せるよ」

えみつん「……ありがと、すず」

 

ザッザッ…

みもりん(だけど……えみつん)

みもりん(これ以上……“全力”で、投げると……)
213: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:15:44.23 ID:qgGBm4U9
ふりりん「かなこー!!」

あいにゃ「頑張ってー!!」

 

ひなひな『さあ、バッテリー元のポジションに戻り、試合再開!!』

ひなひな『バッターボックスに立つ高槻、しかしチャンスとはいえ、後が無い状況に変わりはありません!!』

 

きんぐ「………」

ドキ…ドキ…

 

ひなひな『セットポジションから、新田、第1球!!』

 

シュバッ!!

 

きんぐ「………!!」

 

ズバンッ!!

\ストライク!!/
214: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:16:46.71 ID:qgGBm4U9
きんぐ「………!」

 

ひなひな『第1球、高槻、手が出ない!! ストライク!!』

ひなひな『バットを動かすことも出来ません!!』

 

きんぐ(やっぱり……速い……!!)

きんぐ(こんなの……当てられる訳……)

 

あいにゃ「きんちゃーん、頑張ってー!!」

しゅか「振れって……! 振らなきゃ、どっちみち……!!」

 

あんちゃん(きんぐ……!)
215: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:17:53.50 ID:qgGBm4U9
ひなひな『新田、第2球!!』

 

シュバッ!

 

きんぐ「……っ!!」

ブンッ!

 

ズバッ!!

\ストライク!!/

 

ひなひな『今度はボール球に手が出てしまった!! ツーストライク!!』

ひなひな『あっという間に追い込まれた!!』

アアアアー…
216: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:19:27.28 ID:qgGBm4U9
あんちゃん「きんぐー!! ストライクとボール、はっきりしてるよ!!」

あんちゃん「落ち着いて、よく見て―!!」

 

ありしゃ「ボール3つ分上だよ!! かなこー!!」

 

きんぐ「くっ……! はぁ、はぁ……!」

きんぐ(簡単に言うけどさ……! 私は、あんちゃんやありさみたく、運動神経良くないんだよ……!)

きんぐ(5番に入ってるのだって……単に、ちょっとみんなより、体格良い、ってだけで……)

きんぐ「………」

きんぐ(そうだよ……大体、一番最初にやった、合宿の時から……)

きんぐ(誰よりも体力無いわ、その上、足捻挫して、練習も出来なくなるわで……)

きんぐ(何やってんだろ……私……って……)

 

ふりりん「かなこ……」

きゃん「………」

 

あんちゃん「………」
217: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:20:39.60 ID:qgGBm4U9
あんちゃん「……きんぐー!!」

 

きんぐ「――!?」

ハッ

 

あんちゃん「」ニコッ

あんちゃん「大丈夫だよ! さっきだって、きんぐのタイムリーで同点になったんじゃん!!」

あんちゃん「諦めないで!! 絶対、絶対、大丈夫!!」

 

きんぐ「………!!」

きんぐ(……なんでよ……)

きんぐ(なんで、まだ……諦めてないの……?)

きんぐ(なんで……私を……信じて、くれるの……?)

きんぐ「ほんと……」

ボソッ

きんぐ「……馬鹿……」
218: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:22:18.89 ID:qgGBm4U9
えみつん「」

ザッ…

 

シュバッ!

 

きんぐ「………っ!!」

ピタッ…!

 

バシィ!!

 

あさみん『振っ……!?』

ひなひな『ハーフスイング!! バット、止まったか!?』

 

\…ボール!!/

 

ひなひな『……判定はボール!! 振っていません!!』

ひなひな『ギリギリのところで、振りかけたバットを止めていました、高槻!!』

あさみん『際どい……!!』

オオオオオッ…

 

ふりりん「あっ……ぶなっ……!!」

きゃん「し……心臓、止まる……!!」
219: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:23:04.71 ID:qgGBm4U9
きんぐ「………っ!!」

ハァ…ハァ…

ドクンドクン…

 

あんちゃん「………!」

グッ…

 

きんぐ「………」

チラッ…

きんぐ(あんちゃん……)

きんぐ(……わかってる。本当は、私だって、わかってる)

きんぐ(こんな所で、終われない、ってことくらい……)
220: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:24:36.32 ID:qgGBm4U9
ありしゃ「かなこー!!」

 

しゅか「頑張れぇー!!」

あいにゃ「きんちゃん、諦めないで!!」

 

きんぐ(みんな……)

きんぐ(……馬鹿ばっかり)

フッ…

きんぐ(……10代の頃は、ずっとひとりだったから)

きんぐ(最初の合宿の時……みんなの輪に入っていけるのか、怖かった)

きんぐ(だけど……こんな、体力無い情けない私を、みんな、笑って受け入れてくれて……)

きんぐ(気づいたんだ。本当は、誰かと比べられて、自分が未熟だって、周りにバレるのが嫌だっただけなんだ――って)

きんぐ(そんなこと、みんなの前では、隠す必要ないんだ、って……)
221: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:25:48.27 ID:qgGBm4U9
あんちゃん(きんぐ……!)

あんちゃん(私たちは……背が高いからって、それだけの理由で、きんぐを5番にした訳じゃない)

 

すわわ「どこか冷めた目線……と言ったら、聞こえは良くないけど」

すわわ「いつだって、一歩引いて、冷静に周りを見る目を持ってる。そう、花丸みたいに」

すわわ「その、かなこの冷静さが――チームを救う時が、きっと来る」

すわわ「だから……!」

あいにゃ「きんちゃん……!」

 

きんぐ(……そうだ……)

きんぐ(それに、私には、夢がある。やりたいことが)

きんぐ(東京ドームに立つこと。そして――)

グッ…

きんぐ(花丸を――センターに、すること)
222: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:26:31.45 ID:qgGBm4U9
きんぐ(私はデカいし、可愛い系じゃないし)

きんぐ(私が、花丸やってていいのかって――悩んだことだって、たくさんあった)

きんぐ(だけど、今は違う。マルちゃんのこと、誰にも渡したくないくらい、大好きだから)

きんぐ(だから――)

 

えみつん「はぁ……ふぅ」

ザッ!

 

ひなひな『新田、第4球!!』

 

シュバッ!!
223: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:27:02.39 ID:qgGBm4U9
きんぐ(あきらめて――)

グワッ!

 

あいにゃ「!?」

すわわ(バットを、真上に振り上げた――!?)

 

きんぐ(――たまるかっ!!)

ブンッ!

 

ガキィッ!!

 

ひなひな『だ、』

あさみん『大根切りぃ!?!?』

ワアアアアッ!?
224: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:28:11.43 ID:qgGBm4U9
えみつん「――!!」

ピタッ

 

みもりん(当てた……!!)

みもりん「ショートぉ!!」

 

ひなひな『真上から振り下ろしたバットに、半ば無理やり当てた打球は、転々と内野を跳ねる!!』

ひなひな『ピッチャーとサードの間、微妙な位置!!』

ひなひな『ピッチャー新田は――動けず!! ショートPile、飛び出す!!』

 

ぱいちゃん「任せて!!」

ダダッ!!

 

すわわ「――!?」

ピクッ

すわわ(ピッチャー、動かない……?)
225: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:29:08.79 ID:qgGBm4U9
ひなひな『その間、打った高槻、懸命に走るっ!!』

 

きんぐ「はぁ、はぁ!!」

ダダダダッ!!

きんぐ(私だって……私だってぇ!!)

 

ワアアアアッ!!

 

ぱいちゃん「――ファースト!!」

シュッ!

 

きんぐ「うああああああっ!!!」

ズザザザザッ!!

 

ひなひな『頭から滑り込んだぁぁぁっ!!!』

ひなひな『微妙なタイミング!! セーフか、アウトか!?』

 

きんぐ「……っ」
226: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:30:30.60 ID:qgGBm4U9
\セーフ!!/

 

ワアアアアアッ!!

 

ひなひな『セェェェーフ!!!』

ひなひな『高槻、渾身のヘッドスライディング!! 間一髪、間に合いましたぁぁぁ!!!』

 

ふりりん「やっ……!!」

あいにゃ「たああああっ!!」

しゅか「よく走った、きんぐ!!」

きゃん「かなこ……!!」

 

ありしゃ「よしっ……!」

 

あんちゃん「うっ……」

あんちゃん「しゃああああっ!!!」

 

ひなひな『その間に、三塁ランナーの伊波、ホームイン!!』

ひなひな『Aqours、高槻の執念のタイムリー内野安打で、ついに新田から1点をもぎ取りましたぁぁぁ!!!』

オオオオオオッ!!

 

【μ's 13―5 Aqours】
227: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:32:39.65 ID:qgGBm4U9
ひなひな『まさかの、強引に上から振り下ろす、大根切りのようなバッティングで……!』

あさみん『ですが――決して、高槻選手は、ヤケになった訳ではないと思います』

あさみん『あの場で、冷静に――出塁できる可能性の高い、最善手を選択した結果ではないでしょうか』

ひなひな『最善手……? あの、大根切りが?』

あさみん『ヒットを打つ、四死球を狙う。出塁する方法は数あれど』

あさみん『最も出塁できる可能性が高く、かつ、最も守備側が嫌がるのは――』

あさみん『――“ゴロを転がすこと”です』

ひなひな『ゴロを――?』
228: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:35:33.56 ID:qgGBm4U9
あさみん『内野を抜けて、ヒットになれば言うに及ばず』

あさみん『内野安打になるかもしれない。ヒットでなくても、ボールがイレギュラーしてエラーになるかもしれない』

あさみん『投げたボールが、悪送球になるかもしれない。ファーストが、ボールをこぼすかもしれない』

あさみん『内野にゴロを転がすということは、ヒットのみならず、エラー等の面で見ても、色々なアクシデントが最も生まれやすい』

あさみん『守備としてみれば、一番イヤな形なんですよ』

ひなひな『だから高槻選手は、内野にボールを叩きつけた……!?』

あさみん『横からのバッティングで――ボール3個分、上を見極め、新田投手の速球をミートして飛ばすことは、彼女にとっては難しかった』

あさみん『でも、縦方向からであれば、強引に当てて、ボールを転がすことは出来る』

あさみん『結果、内野安打になりましたが――』

あさみん『これは、咄嗟に、自分が出来る最善手を考え、挑んだ――高槻選手の、何が何でも出塁する、という意識が生んだ、ヒットだったんです』

 

きんぐ「………」
229: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:36:20.31 ID:qgGBm4U9
しゅか「やったー、あんじゅ!!」

ふりりん「えみつんさんから……ついに、点を……!!」

あんちゃん「うん! でも、最後まで諦めなかった、きんぐのお蔭だよ!」

きゃん「あれ……かなこ?」

すわわ「ヘッドスライディングしたまま、起き上がらないけど……」

あいにゃ「まさか、怪我とか……!?」

 

きんぐ「………」

きんぐ「……う……くっ」

ポロ…

きんぐ「負けたくない……負けたくない……!!」

ポロ…ポロ…

きんぐ「ぐ、ひっく……!! 私だって……私だってぇ!!」

 

きゃん「……!」

あいにゃ「きんちゃん……」
230: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:37:02.75 ID:qgGBm4U9
きんぐ「………っ」

ゴシゴシッ

きんぐ「……よおぉーーっし!!」

ガバッ!

きんぐ「どおだー、見たかー!! 私だってやる時はやるんだからなー!!」

きんぐ「ドーム、絶対立ってやる!! そんで次のセンターはマルちゃん!!」

 

ありしゃ「……ふふっ」

 

あんちゃん「きんぐ……!」

クスッ
231: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:39:22.28 ID:qgGBm4U9
ひなひな『さあ、待望の1点を挙げて、なおもランナーは一塁・二塁!!』

あさみん(完全に沈滞していたベンチに、徐々に活力が戻ってきた……!)

あさみん(そして……バラバラだったAqoursが、また少しずつ、ひとつになりつつある……!)

あさみん(このまま、流れが生まれれば……!)

 

ジョルノ(1点……取られたか)

ジョルノ「どんまい、えみつん!」

シュッ

 

えみつん「はい、南條さん」

パシッ

ぱいちゃん「ごめんね、えみつん……」

えみつん「もー、なんでぱいちゃんが謝るのー?」

えみつん「それに、今のは……さ。私の方こそごめんね。処理してもらっちゃって」

ぱいちゃん「えみつん……」

 

みもりん(あんまり、長引かせたくない……)

みもりん(次こそ……!)
232: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:40:14.86 ID:qgGBm4U9
あんちゃん「まだいける……まだいける!!」

しゅか「よーっし、次のバッター誰だー!?」

ふりりん「次は……」

 

りきゃこ「………っ」

 

『6番、キャッチャー、逢田』

 

りきゃこ「……!」

ピクッ

 

あいにゃ「って……りかこ?」

しゅか「ちょっと、次だよー! 大丈夫?」

 

りきゃこ「あ……うん」

りきゃこ「わ、わかってる。行かなきゃ……!」

ザッ…
233: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:41:12.69 ID:qgGBm4U9
ふりりん「りかこ、緊張してるの……?」

しゅか「平気? 固くなるなよー!」

 

りきゃこ「だっ……大丈夫だし!」

りきゃこ「逢田さん、ヒット打てるし!!」

りきゃこ「いっ……行ってくるね!」ヘラッ

ザッ

 

あいにゃ「りかこ……?」

あんちゃん「………」

あんちゃん(りこちゃん……?)
234: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:42:12.70 ID:qgGBm4U9
ひなひな『さあ、1点返すも、まだ点差は開いています!!』

ひなひな『流れに乗ることが出来るか!? バッターボックスに入るのは、6番の逢田!!』

ワアアアアッ

 

りきゃこ「………」

ドクンドクン…!

 

あさみん「……!」

あさみん(目に見えて、表情が硬い……)

あさみん(いや……それ以上の、何か……?)

 

ありしゃ「りかこー、落ち着いてねー!!」

 

りきゃこ「………」

ドクッドクッ

りきゃこ(ツーアウト……後が無い……)

りきゃこ(私が、出なきゃ……終わる……!)
235: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:43:07.97 ID:qgGBm4U9
みもりん(……物凄く、緊張してるみたいだし)

みもりん(ここで切るよ。えみつん……!)

 

えみつん「」コクッ

ザッ!

 

シュバッ!

 

りきゃこ「――っ!!」

 

ズバッ!!

\ストライク!!/
236: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:44:51.51 ID:qgGBm4U9
ひなひな『ストライク!! 真ん中の球でしたが、逢田、反応できず!!』

ひなひな『チャンスといえど、後が無い状況に変わりはありません!! ここで倒れれば、全てが終わります!!』

ワアアアアッ

 

りきゃこ「………!!」

ドクンドクン…!

りきゃこ(もう……失敗、出来ない)

りきゃこ(私が、失敗したら……終わる……!!)

りきゃこ(試合も……ライブも……Aqoursも……!!)

りきゃこ(もう、絶対……!!)

ドッドッドッドッ!!

 

すわわ「……!?」

あいにゃ「りかこ……!?」

 

りきゃこ「はぁ、はぁ……!!」

 

ド ク  ン  ッ
237: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:45:44.05 ID:qgGBm4U9
 

 

 

ポロンッ…

 

 

ピタッ

 

 

ザワ…ザワ…

ザワザワ…!

 

 

――ごめんなさい……ごめんなさい……

 

――ごめんなさい、ごめんなさい……!!

 

 

  👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:1341adc37120578f18dba9451e6c8c3b)
238: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/07(金) 23:46:36.91 ID:qgGBm4U9
りきゃこ「はぁっ、はぁっ、はぁっ!!」

ガクガク…!!

 

みもりん「――!?」

 

えみつん「……!」

ピクッ

 

ひなひな『……!?』

ひなひな『逢田選手の、様子が……!?』

ザワザワ…!

 

あんちゃん「り……」

あんちゃん「りこ、ちゃん……?」

 

あさみん『まさか……!!』

あさみん(“あの時”の……トラウマ、が……!?)
261: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 00:09:05.84 ID:1j9XBRJC
りきゃこ「はぁっ、はぁっ!! ……っ!! はぁっ!!」

ドッドッドッ…!!

りきゃこ(なっ……なんで……!!)

りきゃこ(なんで、今……!! “あの時”の、ことなんて……!!)

 

あんちゃん「……!!」

あんちゃん「りこちゃん……まさか……!!」

あいにゃ「“あの時”の……!」

すわわ「1stライブの時の……ピアノの、記憶が……!?」

 

ありしゃ「りかこー!!」

ありしゃ「ここは、あの時の横アリじゃないの!!」

ありしゃ「落ち着いてー!!」
262: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 00:10:16.22 ID:1j9XBRJC
みもりん(明らかに――様子が、おかしい)

みもりん(だけど――)

みもりん(挑んでくるなら、手は、抜かない。でしょ? えみつん)

 

えみつん(うん――すず)

えみつん(私に。私たちに、してあげられることは――)

ザッ…

えみつん(――それだけだから!)

シュバッ!

 

りきゃこ「……っ!!」

 

ズバン!!

\ストライク!!/

 

ひなひな『これも真ん中の球、見送ってストライク!!』

ひなひな『バットはぴくりとも動かず、あっという間に追い込まれた!!』

ひなひな『しかし――バッターの逢田は、顔面蒼白』

ひなひな『単なる緊張を通り越して、明らかに様子がおかしく見えますが……!?』

あさみん『………』
263: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 00:15:10.75 ID:1j9XBRJC
あさみん『……もう、後が無い。仲間たちが必死でつないできたけれど、自分が倒れれば、全てが終わる』

あさみん『絶対に、失敗できない。そのプレッシャーの中で――甦ってしまったのでしょう』

あさみん『1stライブの時の――失敗の、記憶。トラウマが』

ひなひな『……!! あの、ピアノ演奏……!!』

あさみん『あれから、1年半以上が経って――克服したと、思っていましたが……』

あさみん『心の奥深くに、未だ、潜んでいたのでしょう。気の毒に……』

 

ハァハァハァ…

りきゃこ(失敗できない。失敗したら、私のせいで、全部台無しになっちゃう。全てが終わっちゃう!!)

りきゃこ(失敗できない。失敗できない。失敗できない)

りきゃこ(怖い、怖い、怖い怖い怖い……!!)

ガタガタ…!

りきゃこ(……駄目。頭の中がぐちゃぐちゃで、どうしたらいいのか、わかんない……!)

りきゃこ(ただ……怖い! 怖い怖い……!!)

 

あんちゃん「……!!」

グッ…!
264: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 00:17:28.51 ID:1j9XBRJC
あんちゃん「……りこちゃーん!!!」

 

りきゃこ「!」

ハッ

 

あんちゃん「大丈夫だよ!! あの時だって、りこちゃん、最後まで弾けたじゃん!!」

あんちゃん「あの時までりこちゃんが、ピアノの練習、誰よりも必死で頑張ってたのだって知ってる!!」

あんちゃん「りこちゃんの力は、こんなもんじゃない!! りこちゃんは凄いんだよ!!」

すわわ「……そうだよ、りかこ!!」

あいにゃ「大丈夫!! もう1回やろう!!」

あいにゃ「大丈夫、絶対大丈夫!!」

 

りきゃこ「あんちゃん……」

りきゃこ「すわわ……あいな……」

 

ふりりん「ぐすっ……りかこー!!」

きゃん「ううっ……頑張って……!!」

しゅか「絶対、出来るぞー!!」

 

ありしゃ「りかこなら大丈夫!!」

きんぐ「自信持ってー!! あんだけ、頑張ってきたじゃん!!」

 

りきゃこ「……みんな……」
265: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 00:18:58.44 ID:1j9XBRJC
りきゃこ「た……タイム、お願いします」

\タイム!/

 

りきゃこ「はぁっ、ふぅっ……はぁっ」

りきゃこ(落ち着いて……落ち着け……)

りきゃこ(ここは、“あの時”の横アリじゃない……深呼吸……)

りきゃこ「すぅぅ……はぁぁ……」

りきゃこ「………っ」

ドキ…ドキ…

 

ひなひな『逢田、一旦打席を外れ、気を落ち着かせているのでしょうか』

あさみん『………』

 

りきゃこ(……まだ……頭の中、かき回されてる感じだし……)

りきゃこ(正直……怖い、けど……)

りきゃこ(……逃げられない。逃げちゃ、駄目)

りきゃこ(逃げたら、私……きっと、もう、Aqoursのステージに……戻れない……!)

グッ…
266: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 00:20:46.11 ID:1j9XBRJC
りきゃこ(ありがとう。あんちゃん、すわわ、あいな……)

りきゃこ(……みんな……)

りきゃこ(“あの時”と、同じ。また、助けられちゃった)

りきゃこ(ごめんね……いっつも。最年長のくせに、頼りにならなくて)

りきゃこ(みんなに、助けられてばかりで……)

りきゃこ(それに……)

りきゃこ(――梨子ちゃん)

 

ひなひな『逢田、再び打席に入ります! 大丈夫でしょうか?』

リキャコォォォ!!

ガンバレェェェッ!!

 

\プレイ!/

 

りきゃこ(“あの時”――失敗した後の、2回目の演奏)

りきゃこ(ほとんど、記憶が残ってなくて――私の中の梨子ちゃんが、弾いてくれたような気がする)

りきゃこ(それだけじゃない。Aqoursのみんな、あの時声援を送ってくれた、ファンのみんな――)

りきゃこ(たくさんの人に――私は、助けてもらった……)

りきゃこ(……だから)

キッ…!
267: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 00:21:55.70 ID:1j9XBRJC
りきゃこ(今度は――私自身の、力で――立ち直らなきゃ)

りきゃこ(私は――Aqoursのみんなに。ファンのみんなに。梨子ちゃんに――)

りきゃこ(たくさんのみんなに、助けられて、支えられて――今、ここにいるから)

 

えみつん「」

ザッ…

 

りきゃこ(いつまでも、助けられてるだけじゃ、駄目だから)

りきゃこ(だから、今度は私が、みんなを――引っ張ってあげたいから――!)

 

シュバッ!

 

りきゃこ「っ!!」

ピクッ

 

バシィ!!

\ボール!/
268: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 00:26:03.47 ID:1j9XBRJC
ひなひな『……ボール!! バット動きかけましたが、よく止めました、逢田!!』

オオオオオッ…

あさみん『この回、新田投手は、ストライクとボールがはっきりしてきています』

あさみん『速さに、釣られることなく。冷静に、見ていけば……!』

 

あんちゃん「りこちゃん……!」

あいにゃ「お願い……!!」ギュッ

 

りきゃこ「はぁ、はぁ……」

グッ…

りきゃこ(それに……私には、やり残したことがあるから。東京ドームで、やりたいことが)

りきゃこ(それは……)

りきゃこ(――9人で、もう一度。“想いよひとつになれ”を、歌うこと)

りきゃこ(必ず、やり遂げたい。今度こそ、9人で)

りきゃこ(私の中での、“1stライブ”は――まだ、終わっていないから)

りきゃこ(9人で、またあの歌を歌えた時。初めて、私の“1stライブ”は、終わると思うから)

りきゃこ(もう一度、9人で。みんなで。心を、想いを、ひとつにできるように――!!)
269: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 00:29:29.57 ID:1j9XBRJC
ひなひな『ツーストライクワンボール!!』

ひなひな『追い込んでいる新田、第4球!!』

 

えみつん「」

ザッ…

 

トントンッ

りきゃこ「……想いよ、ひとつになれ……」

りきゃこ「……この、ときを、待っていた……♪」

トントンッ 

 

みもりん「――?」

みもりん(何? 歌ってる……?)

 

あさみん『……!?』

あさみん(新田さんのピッチングに合わせるように、かかとで、リズムを刻んでいるような……?)

あさみん(まさか……!?)
270: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 00:30:55.78 ID:1j9XBRJC
えみつん「」

グワッ…

 

トントンッ

りきゃこ(ラ――ド#――シ――ソ#――レ――ド# シ ド#)

 

…シュバッ!!

 

りきゃこ(――グリッサンド!!)

シュッ

 

あさみん(――“シンクロ打法”!!)

 

カッ!!
271: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 00:34:02.19 ID:1j9XBRJC
キィィン!!

 

ひなひな『打ったぁぁぁぁ!!!』

ウオオオオオッ!?

 

えみつん「――!!」

 

ひなひな『セカンドの頭、越えたぁぁぁっ!!!』

ひなひな『ボールは右中間を転がる!! 長打になるぅぅぅ!!!』

ワアアアアアッ!!

 

あいにゃ「きゃあああああっ!!!」

しゅか「りかこぉぉぉっ!!!」

 

ひなひな『ランナー、一人目もホームイン!!』

ひなひな『そして、二人目もっ……!!』

ひなひな『ホームイィィン!!!』

ウオオオオオッ!!

ひなひな『打った逢田は二塁へ!!』

ひなひな『逢田、まさかまさかの2点タイムリーツーベースヒット!!』

ひなひな『Aqours、この回、3点目ぇぇぇっ!!!』

 

【μ's 13―7 Aqours】
272: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 00:35:18.74 ID:1j9XBRJC
ひなひな『自らのトラウマに打ち勝つ一打を放った逢田!!!』

ひなひな『想いは、ひとつになりましたぁぁぁっ!!!』

ワアアアアッ!!

 

りきゃこ「……!!」

ハァ…ハァ…

りきゃこ(やった……やった……!!)

ジワッ…

りきゃこ(良かった……諦めなくて……!)

グス…

 

あんちゃん「りこちゃん……!!」

あんちゃん「やっぱり、すごいよ!! りこちゃーん!!」

 

あさみん『今の、逢田選手の一打……』

あさみん『あれは、まさしく――“シンクロ打法”』
273: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 00:39:11.21 ID:1j9XBRJC
ひなひな『シンクロ打法?』

あさみん『はい。スポーツ医学者の手塚一志氏によって存在が提唱された、バッティング技術です』

あさみん『バッティングにおいては、“タイミング”が重要であることは、先の南條さんのホームランの際にお話ししました』

あさみん『シンクロ打法とは、投手の投球動作と打者の打撃動作を同調させることで、インパクトのタイミングを合わせる技術のことです』

ひなひな『……姉様、日向さんにもわかるようにお願いします』

あさみん『そうですね……簡単に言えば、じゃんけんのタイミングです』

ひなひな『じゃんけん?』

あさみん『じゃんけんをする時は、「じゃん」「けん」「ぽん」の掛け声に合わせて、手を出しますよね』

あさみん『「じゃん」「けん」のタイミングが合わなければ、お互い「ぽん」に合わせてじゃんけんをすることが出来ません』

あさみん『シンクロ打法とは、言ってみれば、この「じゃん」「けん」のタイミングを、投手と打者の動きに置き換えて、合わせることなんです』

ひなひな『あー、なんとなくわかってきたかも』
274: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 00:40:25.30 ID:1j9XBRJC
あさみん『具体的には、投手が投げる際、“足を上げてから、重心を落として、ボールをリリースするまで”のタイミング』

あさみん『この間のタイミングに、打者も合わせることが出来れば、インパクトのタイミングはドンピシャです』

あさみん『このタイミングを合わせるため、打者はバットを揺らしたり、足を上げたりと、体の一部を動かしますが』

あさみん『最もポピュラーなのは、投手が重心を落とした瞬間に、“かかとを踏み込む”動作ですね』

あさみん『これにより、投手の投球動作と打者の打撃動作が同調し、インパクトのタイミングを合わせることが出来るんです』

あさみん『有名な選手では、かの松井秀喜選手が、巨人時代にこのシンクロ打法を取り入れたのち、本塁打王を獲得しています』

ひなひな『大切なのは、タイミングを合わせること……!』
275: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 00:44:56.22 ID:1j9XBRJC
あさみん『先程の打席。逢田選手は、何かを口ずさみながら、リズムをとるように、かかとをトントンと踏んでいた』

あさみん『おそらく、何かのリズムが、新田投手の投球動作と同調することに、気づいたのでしょう』

あさみん『そして、バッティングのタイミングを合わせることで、長打を生んだ――』

ひなひな『正に、シンクロ打法……!!』

あさみん『逢田選手が、このシンクロ打法を知っていたかどうかは、定かではありません』

あさみん『しかし、トラウマを乗り越えて、諦めない彼女の想いが、この奇跡を生んだ……!』

 

りきゃこ(ありがとうね……梨子ちゃん)

りきゃこ(引っ張っていくって決めたそばから、なんだけど)

りきゃこ(梨子ちゃんの、ピアノに……また、導いてもらえた……!)

りきゃこ(そして――Aqoursのみんな。みんながいるから、頑張れる)

りきゃこ(ひとりじゃ、ない……!)

 

あさみん(そして――“奇跡”というものは)

あさみん(連鎖する――!)
276: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 00:47:30.92 ID:1j9XBRJC
ありしゃ「よし、これで3点!!」

きんぐ「まだまだいくぞー!!」

あんちゃん「ありさちゃん、きんぐ……!」

きんぐ「……あんちゃん」

きんぐ「あたしさ。奇跡って言葉、あんまり好きじゃないんだけど」

あんちゃん「え?」

きんぐ「だけどさ。夢を声に出せば、実現できる。口に出さなきゃ、実現できないって思うから」

きんぐ「だから、言うね」

ニッ

きんぐ「――勝つからね! 絶対!!」

あんちゃん「……!!」

あんちゃん「きんぐ……!」
277: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 00:50:02.04 ID:1j9XBRJC
しゅか「……よーし! まだまだ続いてくぞ!!」

ふりりん「次は……!!」

 

すわわ「………」

シャンシャン

 

『7番、ライト、諏訪』

 

ふりりん「って、おすわ! こんな時まで、スクフェス!?」

しゅか「んなこと、やってる場合じゃ……!!」

 

\FULL COMBO/

\ダイブイイカンジ!/

 

すわわ「ん。おっけー」

スッ

すわわ「……じゃ、行ってくるね」

スタスタ…
278: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 00:54:21.26 ID:1j9XBRJC
ふりりん「おすわ……大丈夫?」

しゅか「うーん、相変わらずマイペースというか、何考えてるかわからないというか……」

あんちゃん「……大丈夫だよ」

あんちゃん「ああ見えて……おすわは、熱いから」

あいにゃ「うん……」

あいにゃ「……ん?」

あいにゃ(すわわ、ベンチの上に、スマホ置きっぱなし……)

あいにゃ(画面に、さっきのスクフェスの結果画面が……)

あいにゃ「……え!? これって……!!」

ありしゃ「なになにー?」

きんぐ「これって……『みら僕』のMASTER譜面!?」

ありしゃ「それ、すごく難しいやつじゃなかった?」

きゃん「それを、フルコンボって……すご……」

きんぐ「あ、あのさー……まさか、だけど……」

きんぐ「すわわ……MASTERやって、“速さ”に、目を慣れさせた、とか……」

あんちゃん「……!」
279: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 00:56:11.78 ID:1j9XBRJC
ワアアアアッ!!

スワワァァァッ!!

 

ひなひな『さあ、3点返して、なおもAqoursの攻撃は続きます!!』

ひなひな『打席に立つのは、7番の諏訪!! Aqours側応援席も、にわかに盛り上がって参りました!!』

あさみん(あれほどμ's一色だった球場の雰囲気も、変わってきた……!)

あさみん(流れが、生まれてる……!)

 

りっぴー(あれだけ、崖っぷちの状態から、ここまで粘るなんて……)

りっぴー(やっぱり、この子たち……)

 

シカコ「えみつーん! こっからの打順はノーヒットだし!」

シカコ「落ち着いて、締めてこー!!」

 

うっちー「………」

うっちー(だけど……この、7番の子)

うっちー(私的には……この子が、一番、イヤらしい……)

 

すわわ「………」
280: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 00:58:21.28 ID:1j9XBRJC
みもりん(そう。ここからの7、8、9番は、ここまでノーヒット。パワーにも欠ける)

みもりん(この回の粘りを見てると、油断は出来ないけど……)

みもりん(しっかり、ストライクを取っていけば……えみつんの球を、まともに打ち返すことは、難しいはず!)

スッ…

 

えみつん「……ふぅ……」

ザッ…

 

すわわ「………」

すわわ(……ここまでで、気づいたことが2つある)

すわわ(まず、この回。8回までと比べて、ストライクとボールが、はっきりしてきた)

すわわ(もともと、コントロールにバラつきはあったけど……ボールは、見極めやすくなってきてる)

すわわ(そして――もうひとつ)

すわわ(それを、確かめるには――)

 

シュバッ!

 

すわわ「――」

スッ!

 

あさみん『!』

ひなひな『バントの構え――!』
281: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 00:59:54.96 ID:1j9XBRJC
くっすん「!!」

ダッ!

 

そらまる「!!」

ダダッ!

 

スッ…

 

ズバン!!

\ストライク!/

 

ひなひな『バントの構えから、バットを引きました!!』

ひなひな『結果、ボールはストライクゾーンに入り、ワンストライク!!』

オオオオッ…

あさみん『μ'sの先発、内田投手攻略の糸口となったバスター作戦を考案したのは、この諏訪選手でした』

あさみん『今回も、しっかりボールを見極めるつもりですよ……!』

 

すわわ「………」

 

きゃん「お、おすわ……?」

あいにゃ「………」

あいにゃ(すわわは……ぼーっとしてるように見えて、いつもちゃんと、しっかり考えてる)

あいにゃ(きっと、今回も……何か……!)
282: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 01:03:35.20 ID:1j9XBRJC
すわわ(……やっぱり……)

すわわ(今、バントの構えを見せた時。咄嗟に前に出てきたのは、サード、そしてセカンド)

すわわ(普通は、サードとファーストだけど……ファーストの南條さんは、膝を負傷してるから、代わりにセカンドが出てくるのは理解できる)

すわわ(だけど――)

すわわ(なぜか。ピッチャーの新田さんは、全く、動く気配が無かった……)

すわわ(あいあいが、バントでフライを上げた時も。きんぐが、ゴロを転がした時も)

すわわ(本来、動いていいはずのピッチャーが、全く動かなかった……)

すわわ(“動かない”のか――それとも)

スゥ…

すわわ(“動けない”のか……)

 

うっちー「……!」

 

ジョルノ「………」

ジョルノ(勘付かれた……か?)
283: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 01:06:22.01 ID:1j9XBRJC
みもりん(……なんか、ヤな雰囲気)

みもりん(とにかく――えみつんのためにも)

みもりん(早く終わらせなきゃ……!)

 

すわわ「………」

スッ…

 

ひなひな『諏訪、やはりバントの構え!!』

ひなひな『とにかく冷静に、ボールを見ていこうということでしょうか!?』

 

えみつん「ふぅー……」

ザッ…

 

シュッ!!

 

すわわ「――」

スッ

 

バシィ!!

\ボール!/
284: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 01:08:08.54 ID:1j9XBRJC
ひなひな『第2球目はボール! 諏訪、あくまでマイペースに、投球を見ます!!』

あさみん『……諏訪選手のここまでの成績は、フォアボールひとつに三振が3つ』

あさみん『記録だけで見れば、まるで当たっていないように見えます。しかし、その実……』

あさみん『第1打席では、それまでAqoursのバッターが手も足も出なかった内田投手の、スライダーと直球を冷静に見極め、バットに当てた』

あさみん『第2打席では、バスターで揺さぶりをかけつつ粘り、貴重な四球を選んだ』

あさみん『諏訪選手は、Aqoursの中で、実は最も選球眼が良く――そして、冷静な頭脳を持っている』

あさみん『きっと、仕掛けてくるはずですよ。この打席でも……!』

ひなひな『……!』
285: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 01:09:25.07 ID:1j9XBRJC
バシィ!!

\ボール!/

 

ひなひな『第3球目も見た! ボール!!』

ひなひな『あくまで冷静に、マイペースに! 新田の投球を見極めています!!』

オオオオッ…

 

あいにゃ「すわわ……」

しゅか「粘ってけ……!」

 

すわわ「……ふぅ……」

すわわ(冷静……マイペース……)

すわわ(みんな、私のこと、そう言うけど。別に私は、そんなんじゃない)
286: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 01:11:00.57 ID:1j9XBRJC
すわわ(本当は、人一倍臆病で)

すわわ(色々考えて、口に出そうとするけれど……その言葉を口にした後のこととか、また色々考えちゃって、結局何も言えなくて……)

すわわ(そう。ただ単に、怖がりなだけ。声優になろうって、色々オーディション受けたのも……)

すわわ(才能がなくて、自信が無い自分を変えようと……必死だったんだと思う)

すわわ(だけど……)

キッ…

すわわ(果南に出会って。Aqoursに出会って。たぶん、ちょっとずつ、変われてきた)

すわわ(臆病にならなくてもいい。出来ないことがあっても、出来るまで頑張ればいいんだって……)

すわわ(私は、果南と……Aqoursのみんなに、教えてもらったから……)

グッ…

すわわ(大切な――みんなとの、ステージ)

すわわ(終わらせたくない……!)
287: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 01:12:36.38 ID:1j9XBRJC
えみつん「………」

フゥ…ハァ

 

みもりん(えみつん、疲れが出てきてる……)

みもりん(勝負だからって――あんまり、力みすぎないで)

みもりん(しっかり、ストライクゾーンに投げてくれれば、大丈夫だから)

みもりん(えみつん――!)

 

えみつん「――」

ザッ…!

 

すわわ(果南――)

すわわ(本当は私も、果南みたいに――力が強くて、運動神経も良ければいいんだけれど)

すわわ(私には――こんな風に、粘って四球を狙うくらいしか出来ない)

すわわ(だけど――)

 

グワッ

シュバッ!!

 

えみつん(あっ……!?)
288: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/14(金) 01:14:59.00 ID:1j9XBRJC
すわわ(いつか――私も)

すわわ(貴方みたいな、強い人になりたい)

 

ギュオッ!!

 

あさみん『!!』

ひなひな『あぶな――!!』

 

ありしゃ(頭に――!!)

あんちゃん「避けっ、」

 

すわわ(大好きな、)

すわわ(果南みたいに――)

 

 

ガツンッッ!!

 

 

あいにゃ「すわわあああぁぁぁぁっ!!!!」
313: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/19(水) 01:29:57.59 ID:6aRQpRLj
りきゃこ「っ!!」

りきゃこ(思わず――息を呑んだ)

りきゃこ(新田さんの投げた球が――)

りきゃこ(すわわの、頭に直撃して)

りきゃこ(ヘルメットが、弾き飛んで)

りきゃこ(そのまま、すわわの体が、前のめりに倒れて――)

 

すわわ「――…」

バタンッ

 

りきゃこ「すわわ!!!」

 

あさみん『……!!』

ひなひな『に、新田の投げた球が、諏訪の頭に直撃!!』

ひなひな『倒れこんだ諏訪、大丈夫でしょうか!?』

ワアアアアッ!!

 

あいにゃ「すわわぁ!!!」

ズキッ!

あいにゃ「いっ!!」

きんぐ「ちょ、あいな! 足痛めてるんだから、飛び出したら……!!」

あいにゃ「でも、すわわが、すわわが!!」
314: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/19(水) 01:30:40.07 ID:6aRQpRLj
えみつん「しまっ……!!」

ダッ!

えみつん「っ!!」

ガクッ!

 

くっすん「えみつん!」

 

みもりん(まずっ……!! えみつん、力みすぎて、球がすっぽ抜けた……!!)

みもりん「だ、大丈夫!?」

 

あんちゃん「すわわぁぁぁぁ!!」

ダダダッ!

 

すわわ「………」

すわわ「……っ……」

ムクッ…

 

あんちゃん「ああぁーー……あ?」
315: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/19(水) 01:31:14.01 ID:6aRQpRLj
すわわ「……つぅ……」

あんちゃん「すわわ!!」

ありしゃ「大丈夫なの!?」

すわわ「……ぁぁ……あんちゃん……ありさ……」

すわわ「……ん……だいじょう、ぶ……」

フラッ

ありしゃ「って、大丈夫じゃないでしょ!」

あんちゃん「無理しないで! つかまって……!」

すわわ「……ん……ごめん……」

ありしゃ「とりあえず、一旦ベンチに……!」

 

えみつん「――ななかちゃん!」

 

すわわ「……!」

あんちゃん「えみつんさん……」

えみつん「――ごめん!! ごめんなさい!!」

バッ
316: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/19(水) 01:32:02.22 ID:6aRQpRLj
あんちゃん(えみつんさんは、すわわの目の前で――深々と、頭を下げた)

えみつん「ほんとにごめんなさい! 謝って済む問題じゃないけれど――」

えみつん「だけど――!」

すわわ「………」ハァハァ

すわわ「……頭を上げてください。新田さん」

すわわ「試合……勝負……なんですから。こういうこともあります」

すわわ「誰のせいでも、ないですし……全然、大丈夫です……」

ありしゃ「すわわ……」

すわわ「最後まで……」

すわわ「……やりましょう」

えみつん「……!!」

あんちゃん「……ほら、すわわ、つかまって……」

ザッ…ザッ…

 

ひなひな『諏訪、伊波と小宮に抱えられ、一旦ベンチに退きます!』

あさみん『大事に至らなければいいですが……』

ザワザワ…

 

えみつん「………」

みもりん(強い……子、だね)

みもりん(見た目に、よらず……)
317: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/19(水) 01:32:41.97 ID:6aRQpRLj
しゅか「はい、すわわ、冷たいタオル!」

ふりりん「頭に当てて! とりあえず、横になって!」

すわわ「……ん……ありがと……ちびーず」

あいにゃ「すわわぁ……!」オロオロ

すわわ「……あいな……大丈夫、だよ」

すわわ「……それよりも」

キッ…

すわわ「みんなに……伝えときたいことが、あるの」

きんぐ「……え?」

きゃん「伝えときたい……こと?」

すわわ「ずっと……考えてた。新田さんを、どうやって、攻略したらいいか……」

すわわ「それで……気づいたことが、2つ……ある」

あんちゃん「……!!」
318: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/19(水) 01:34:01.35 ID:6aRQpRLj
すわわ「まず……ひとつ目」

すわわ「9回に入って、新田さんは……ストライクの球とボールの球が、はっきり分かれてきた」

すわわ「前から、コントロールにばらつきはあったけど……疲れが出てきたのか……」

ありしゃ「……確かに。前までは、逆にばらつきがあったからこそ、球を絞りにくかったけど……」

すわわ「この回、ボールのコースは、ボールとして、はっきりしてる」

すわわ「スピードに惑わされずに……しっかり、球を見て、ストライクゾーンに甘く入ってきた球を叩けば……」

しゅか「そういうの、なんていうんだっけ? えーと、こーきゅー……」

ふりりん「……好球必打?」

しゅか「そう、それ!」

すわわ「……ん。その通り」

すわわ「そして、もうひとつ……」

スッ…

 

すわわ「新田さんは――」

すわわ「ベストコンディションじゃない」

 

あんちゃん「え……!?」
319: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/19(水) 01:35:32.78 ID:6aRQpRLj
きんぐ「新田さんが、ベストコンディションじゃない……!?」

しゅか「いやいや!! この回、球が甘くなってきたのは、流石に疲れが出てきただけでしょ!?」

きゃん「バッティングでも、ホームランや長打をかっとばしてて……何より、世界一の速さのストレートまで投げてくるのに……!!」

すわわ「いや……たぶん、間違いないと思う」

すわわ「おかしいと思ってた。あれだけ、圧巻のピッチングが出来るのに、なぜμ'sは新田さんを先発にしなかったのか」

すわわ「内田さんから新田さんへ繋ぐリレーを想定していたとしても、おかしいことがある」

すわわ「内田さんは……腕が限界に達して、打ち込まれても……」

すわわ「1イニングでも長く、投げようとしていたように見えた……」

すわわ「まるで……新田さんを、なるべく投げさせたくない、みたいに……」

ありしゃ「……!」
320: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/19(水) 01:36:31.34 ID:6aRQpRLj
すわわ「そして――新田さんの、フィールディング」

すわわ「あいあいが、ピッチャー寄りにバントフライを上げた時――飛び出してきたのは、キャッチャーの三森さんで、新田さんは動かなかった」

すわわ「かなこが、ゴロを転がした時も――ショートが出てきたけど、やっぱり新田さんは動かなかった」

すわわ「そして、この打席……バントの構えをした時に、動いたのは……セカンドと、サードで」

すわわ「新田さんは、動かなかった……」

ふりりん「確かに……そういう時は、普通ピッチャーも動くよね」

すわわ「結論。新田さんは、“動かなかった”んじゃない」

すわわ「体の、どこかに不調をきたしているために……」

すわわ「……“動けなかった”」

あんちゃん「――!!」ハッ
321: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/19(水) 01:37:59.65 ID:6aRQpRLj
ひなひな『さて、ベンチに退いた諏訪を待つ間、μ's内野陣、マウンド上に集まります』

 

えみつん「………」

ぱいちゃん「気にしないで……って言う方が、無理かもしれないけど。えみつんだし」

みもりん「そうだね。だけど、あの子の言ってた通り。これは試合、真剣勝負なんだし」

みもりん「次からは注意しつつも、切り替えていこう」

えみつん「うん……みんな、ごめん。ありがとう」

そらまる「だけど……さ。さっきえみつん、飛び出そうとして……転びかけたよね」

くっすん「……痛いの? えみつん……」

えみつん「………」 

ジョルノ「………」

ジョルノ「勘付かれた……かもね」

えみつん「……!」
322: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/19(水) 01:39:25.37 ID:6aRQpRLj
あんちゃん「そういえば……えみつんさん……」

あんちゃん「前に……腰を痛めたことが、あったって……」

ありしゃ「……!」

すわわ「そう。たぶん、それだと思う」

すわわ「完全に、完治はしていなかった。そして徐々に、その腰の故障の影響が、出てきているんだとしたら……」

きゃん「フィールディングが、出来なかったのも……!」

すわわ「本当は、ピッチングをするので精一杯だった。だから、周りの守備陣が、カバーしていた」

ふりりん「そんな……!」

すわわ「まず、キャッチャーというポジション自体が、腰に大きな負担を強いる」

すわわ「そして、ピッチャーとしてのトルネード投法も、体に大きなひねりを加える分、腰にかかる負担は大きいはず……」

すわわ「もしかしたら、もう……体が、悲鳴を上げてる中……新田さんは、投げてるのかもしれない」

あいにゃ「……!」

しゅか「嘘でしょ……」
323: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/19(水) 01:40:24.09 ID:6aRQpRLj
きゃん「なんで……」

きゃん「なんで、そこまでして……投げ続けてるの……?」

すわわ「………」

きんぐ「………」

きんぐ「……だけどさ。これって、チャンスじゃん」

あいにゃ「……え?」

きんぐ「新田さんの腰は、万全じゃない。だから球も甘くなってきてるし、きっと球威も落ちてくる」

きんぐ「だったら、まだ打ち崩せるチャンスはあるってことじゃん」

ふりりん「ちょ……!」

ふりりん「ちょっと待てよ!! ボロボロのえみつんさんに対して、チャンスとか、打ち崩すとか……!!」

きんぐ「……だって!!」

きんぐ「新田さんは……そこまでして!! 私たちに、全力で、向かってきてくれてるんだよ!!」

ふりりん「!!」

きんぐ「だったら……私たちだって、全力で挑むのが……!!」

きんぐ「礼儀って、もんでしょ!!」

あんちゃん「――!!」

ふりりん「かなこ……」
324: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/19(水) 01:41:30.66 ID:6aRQpRLj
ありしゃ「……そうだね」

ありしゃ「えみつんさんなら……いつも、全力だから」

ありしゃ「私たちが、たとえ手を抜いたところで……喜ばないと思う」

あんちゃん(………)

あんちゃん(えみつんさん……)

すわわ「……そう。かなこや、ありさの言う通り」

すわわ「これは……チャンスだから」

ムクッ…

きゃん「ちょっと、おすわ!?」

あいにゃ「大丈夫なの!? 動いて……!!」

すわわ「……ん。大丈夫。新田さんだって、頑張ってるんだし……」

すわわ「それに……私。運動苦手で、全然、役に立ててないけど……」

すわわ「……勝ちたい、から」

あいにゃ「!!」

あいにゃ「すわわ……」

すわわ「……じゃ」

ザッ…

すわわ「一塁……行って、くるね……」

ザッ…ザッ…
325: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/19(水) 01:42:33.82 ID:6aRQpRLj
ありしゃ「………」

ありしゃ「……私たちの中で、一番選球眼のいい、すわわなら」

ありしゃ「さっきの球も……本当は、避けられたんじゃないの?」

 

すわわ「………」

ピタッ

 

あんちゃん「!!」

あいにゃ「それって……!!」

ありしゃ「すわわ……出塁、するために……次に、つなぐために……」

ありしゃ「まさか……わざと……」

 

すわわ「………」 

すわわ「……別に。避けるのが、下手なだけだよ」

ザッ…ザッ…

 

しゅか「……無茶するなあ……」

あんちゃん「すわわ……!」

グッ
326: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/19(水) 01:43:28.59 ID:6aRQpRLj
ひなひな『今、諏訪がベンチから出て、一塁に向かいます!!』

あさみん『大事には至らなかったようですが……無茶は、しないでほしいですね』

ワアアアアアッ!!

パチパチパチッ!!

 

ぱいちゃん「出てきた……!」

ジョルノ「たぶん、避けられたのに。あの子もなかなか、根性あるね」

みもりん「……えみつん」

みもりん「腰のことは、たぶん相手にもバレた。えみつんの球威も、少しずつ、落ちてきてる」

みもりん「ここでもう一度、うっちーに代わってもらうことも……」

えみつん「………」

フゥ…ハァ

えみつん「ううん……彩は、私の代わりに、もうかなり無理しちゃったし……」

えみつん「これ以上投げたら……本当に、腕を壊しちゃう」

 

うっちー「………」

うっちー(えみつん……)
327: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/19(水) 01:44:31.36 ID:6aRQpRLj
えみつん「それに……あと、アウトひとつ」

えみつん「あんちゃんたちは……Aqoursのみんなは。あれだけ、劣勢に立たされても、諦めずに……全力で、向かってきてくれてる」

えみつん「だったら……私も、最後まで……全力で、臨みたい」

そらまる「えみつん……」

えみつん「でも……これは、私の、わがままだから」

えみつん「もし、みんなのうち、ひとりでも……駄目だって、思ったら」

えみつん「遠慮なく言って。そうしたら私、大人しく、マウンドを降りるから」

えみつん「だから……」

くっすん「――なに言ってんの!? えみつんが頑張りたいなら、応援するに決まってるじゃん!!」

えみつん「……え? くっすん……」

ぱいちゃん「そうだね。えみつんがいたからこそ、ここまで来れたんだし」

そらまる「最後は、リーダーにビシッと締めてもらわないと!」

ジョルノ「……全く。無理はすんなよー。おまいう、だけど」

みもりん「……えみつん。やっぱりえみつんは、ウチらのリーダーだから」

みもりん「みんな、えみつんのこと……最後まで、信じるし。支えるよ」

えみつん「……みんな……」
328: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/19(水) 01:45:53.52 ID:6aRQpRLj
えみつん「みんな……ありがとう……」

そらまる「さあ、そうと決まれば! アウトひとつくらい、ちゃちゃっと取っちゃえよー!!」

ぱいちゃん「内野に来たボールは任せて!」

ジョルノ「さっさと終わらせて休もうぜー、おい」

くっすん「あとちょっとだよ、えみつん!」

みもりん「……行こう。最後まで、思いっきり!」

えみつん「……!」

えみつん「――うん!!」

 

ひなひな『集まっていた内野陣も、元のポジションに戻りました!』

ひなひな『勝利は目前!! 切り替えて、最後のアウトを取りに行きます、μ's!!』

ワアアアアッ

あさみん(おそらく、新田さんは、腰の故障が癒えていない……)

あさみん(それでもここまで、耐えてきたのは……流石と言うほか無い……!)

 

シカコ(ここまで来たら……最後まで、ついてくに決まってるじゃん。えみつん)

 

りっぴー(全く――ほんとに、馬鹿がつくほど、真面目で、一本気なんだから)

 

うっちー(でも、だからこそ……貴方は、μ'sの、リーダーなんだよね)

うっちー(……えみつん)
329: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/19(水) 01:46:38.94 ID:6aRQpRLj
ひなひな『ともあれ、7番諏訪はデッドボールで出塁!! まだ繋ぎます、まだ終わりません、Aqours!!』

ひなひな『ツーアウト、一塁・二塁で、試合が再開されます!!』

ワアアアアッ!

ザワ…ザワ…!!

 

ライバー「おい……ツーアウトから3点返して、まだ一・二塁って……」

ライバー「すげえじゃん、Aqours……!」

ライバー「もしかすると……もしかするんじゃ……!?」

 

ひなひな『μ'sへの声援一色だった場内、Aqoursの信じられない粘りに、徐々にざわめきが大きくなって参りました……!!』

ひなひな『何やら、異様な雰囲気に……!!』

あさみん(来た……! “流れ”が、来た!!)

あさみん(スタンドのファンの空気も、変わってきてる……!)

あさみん(“これ”を味方につける、その度量が、今のAqoursに備わっていれば……あるいは……!)
330: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/19(水) 01:47:19.85 ID:6aRQpRLj
あんちゃん「……すわわが、望みをつないでくれた」

あんちゃん「何がなんでも出よう、つなごうっていう、すわわの強い意志が……Aqoursを、救ってくれた……!」

あいにゃ「すわわ……!」

 

すわわ「………」

ハァハァ

 

りきゃこ(そうだ――すわわだって、想いは、ひとつ。勝つために)

りきゃこ(すわわが繋いでくれた“流れ”は、まだ途切れてない! それに――)

 

ワアアアアッ!!

スワワワァァァッ!!

イイゾォォォォッ!!

アクアァァァァッ!!

ガンバレェェェッ!!
331: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/19(水) 01:49:44.06 ID:6aRQpRLj
きんぐ「な、なんか……スタンドの、雰囲気が……」

ふりりん「ウチらへの、応援が……大きく、なってるような……?」

しゅか「……みんな、見てくれてるんだよ! まだ、終われないじゃん!!」

きゃん「………」

きゃん(まだ……終われない……)

きゃん(だけど……次は……)

 

『8番、レフト、小林』

 

きゃん「……っ!」

ビクッ
332: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/19(水) 01:50:31.85 ID:6aRQpRLj
ひなひな『会場のボルテージは、徐々に徐々に、高まっているように見えます!』

ひなひな『土壇場でのAqoursの粘りが、ファンの心に再び火を灯したのか――Aqoursへの歓声は、大きくなる一方!!』

ひなひな『どこか、異様とも言える雰囲気になってきましたが……』

あさみん『………』

あさみん『……野球の有名な格言のひとつに、こんなものがあります』

あさみん『球場――とりわけ、甲子園には、“魔物が棲む”と』

ひなひな『あ、聞いたことあります!』

ひなひな『野球――特に、高校野球での、逆転劇や信じられないプレーを指した、一種の例えみたいなもんですよね?』

あさみん『ところがね。この言葉は、比喩でも誇張でも、なんでもない』

あさみん『“魔物”は――』

あさみん『――実在する』

ひなひな『え……!?』
333: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/19(水) 01:51:00.08 ID:6aRQpRLj
きんぐ「きゃん! ほら、次だよ! 早く!」

しゅか「ぜってー終われないぞ! 頼んだからね!!」

きゃん「う……うん……」

きゃん(みんな……本気で……)

ザッ…

きゃん(だけど……私、ここまで、全く打ててないし……)

きゃん(すわわみたいに、選球眼も良くない……力も無い……)

きゃん(そんな、私が……)

 

ドワワアアアッ!!

アイキャァァァン!!

 

きゃん「!?」

ビクッ!
334: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/19(水) 01:51:53.23 ID:6aRQpRLj
あさみん(そう。“魔物”――“悪魔”と、言い換えてもいい)

あさみん(味方につけることが出来れば、この上なく頼もしくもあるけれど)

あさみん(もし、その“悪魔”に、心が負けて)

あさみん(耐えられず――押し潰されてしまった、その時は――)

 

ワアアアアッ!!

アイキャァァァン!!

ガンバレェェェッ!!

ウテェェェェッ!!

 

きゃん(な……なんか……)

きゃん(歓声が……今までよりも、大きくて……雰囲気も……)

ガタ…ガタ…

きゃん「なんなの……これ……!?」

 

あさみん(今度こそ――)

あさみん(Aqoursは、負ける)
348: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:17:39.15 ID:mycPae/e
ひなひな『さあ、スタンドの声に後押しされて、打席に入るのは8番の小林!!』

ひなひな『しかし、心なしか硬い表情。観客の期待に応え、攻撃をつなぐことが出来るか!?』

ひなひな『はたまた、Aqoursの奇跡も、ここで途切れてしまうのか!?』

 

ワアアアアッ!!

キャアアァァァッ!!

 

きゃん「………っ」

ドクンドクン…!

 

あさみん(雰囲気に……呑まれてしまってる)

あさみん(“悪魔”に、魅入られてしまったら……もう……!)
349: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:18:48.95 ID:mycPae/e
ワアアアアッ!!

アイキャァァァン!!

 

きゃん(みんなが……応援してる……)

きゃん(それに……応えなきゃ……)

きゃん(みんなが、必死にここまでつないで……)

きゃん(私も……つながなきゃ……!)

ドクンドクン…!

 

えみつん「………」

ザッ…

 

ひなひな『さあ、再びマウンドに立ちます、守護神・新田』

ひなひな『先程、諏訪にデッドボールを与えてしまいましたが、ピッチングに影響は――』

 

グワッ

シュッ!!

 

きゃん「!!」

 

ズバンッ!!

\ストライク!/
350: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:19:28.14 ID:mycPae/e
ひなひな『っ……ストライク!!』

ひなひな『デッドボールの影響など微塵も感じさせない、力強い球!!』

オオオオオッ!!

 

きゃん「……っ!!」

きゃん(な、なんか……また、力強さを取り戻したような……!?)

きゃん(なんでよ……!! 腰を痛めてて、ベストコンディションじゃないんじゃなかったの……!?)

 

すわわ「………!」

すわわ(確実に、腰の負傷で、体は悲鳴を上げてるはず……!!)

すわわ(なのに、またこの局面で、渾身の一球を放れる強さ)

すわわ(やっぱり、この人は――)

 

あさみん(伝説のμ'sを束ねる、リーダー……)

あさみん(新田恵海――!!)
351: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:20:20.83 ID:mycPae/e
えみつん「………」

えみつん(……つらいなんて、言ってられない)

えみつん(みんなが、まだ私のことを、信じてくれてるなら――)

えみつん(私は、最後まで、全力で頑張るだけ)

えみつん(穂乃果も――きっと、そうする、はずだから)

 

オオオオオッ…!!

 

ライバー「……やっぱり、えみつん、すげーよ!!」

ライバー「ああ、やっぱりμ'sだな!!」

ライバー「Aqoursに負けんなー!!」

 

ワアアアアッ!!

ミューズ!! ミューズ!!

アクア!! アクア!!

 

ひなひな『新田のピッチングに、μ's側応援席も再びヒートアップ!!』

ひなひな『メットライフドームは、μ'sとAqours、双方への声援が渦巻き、大変な状況となって参りました!!』

 

ウオオオオオッ!!

ワアアアアアアッ!!
352: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:21:07.28 ID:mycPae/e
ひなひな『ところで、姉様……先程、“魔物”は実在する、とおっしゃっていましたが……』

ひなひな『あれは一体、どういう……』

あさみん『……日向も、感じてるんじゃない?』

あさみん『“魔物”の、正体――』

あさみん『それは――スタジアムを埋める、“観客”です』

ひなひな『観客……!?』

 

ウオオオオオッ!!

ビリビリッ…

 

きゃん「……!!」

きゃん(歓声が……一層、大きくなって……)

きゃん(まるで、空気が……震えてるみたい……!)
353: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:22:13.89 ID:mycPae/e
あさみん『……プロ・アマ問わず、スタンドからの大きな声援というのは、大きな味方であり、大きな脅威でもあります』

あさみん『特に、甲子園のような大舞台では、それが顕著です』

あさみん『観客は、スター選手がいたり、話題性のあるようなチームに肩入れして、応援したくなる』

あさみん『そして、名勝負やスーパープレーを期待し、「こんな風に盛り上がったらいいな」という願望のもと、声援を送る』

あさみん『その、絶大な声援に後押しされた選手は、時として本当に、観客の“期待通り”のプレー、試合運びを見せてしまうことすらあるんです』

ひなひな『そんな……観客の歓声が、試合まで変えてしまうなんて……』

あさみん『例はいくらでもありますよ。例えば、夏の甲子園を例にとってみても……』

あさみん『2007年の決勝、広陵高校を破った、佐賀北高校の逆転満塁ホームラン』

あさみん『2009年の決勝、優勝校・中京大中京を相手に見せた、日本文理高校の9回の驚異的な追い上げ』

あさみん『記憶に新しい所では、今年の夏の、吉田輝星投手擁する金足農業高校の快進撃もそうでしょう』

ひなひな『……!!』

あさみん『いずれも、甲子園の観客たちの声援が生み出した、一種異様な雰囲気が、試合の展開にすら大きな影響を及ぼした例でしょうね』
354: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:23:15.77 ID:mycPae/e
あさみん『これこそが――“魔物”の正体』

ひなひな『“魔物”の正体は、スタンドの観客たち……!!』

あさみん『勿論、スーパープレーや快進撃にしても、選手たちが培ってきた努力が実を結んだものであることは疑いありません』

あさみん『しかし、観客の大きな声援と期待が生み出す異様な空間が、選手たちの普段以上の力を引き出すことも、また事実』

あさみん『そして――裏を返せば、観客の歓声を受けていない“相手”のチームにとってみると、とてつもないプレッシャーになります』

ひなひな『言ってみれば、完全アウェーの空気の中でプレーしないといけない訳ですもんね』

あさみん『これが、“魔物”が大きな味方であると同時に、大きな脅威にもなりうる所以です』

あさみん『今――ここ、メットライフドームの中は、Aqoursの粘りに対し、逆転を期待するファンの熱気が高まっています』

あさみん『しかし、新田さんのピッチングで、μ'sへの声援も盛り返しつつある』

あさみん『果たして、観客の熱気は、どちらに傾くのか』

あさみん『そして――それを受け止め、味方につける度量が、今のAqoursにあるのか――』

 

きゃん「………っ」

ダラダラ…

 

あさみん(正念場だよ――きゃん)
355: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:23:55.43 ID:mycPae/e
しゅか「おーい、あいきゃん!!」

ありしゃ「一旦、打席外して!!」

 

ワアアアアアッ!!

ウオオオオオッ!!

ウテェェェェッ!!

 

きゃん「………」

ハァハァ…

 

きんぐ「駄目だ、周りの歓声にかき消されて、聞こえてない……!」

ふりりん「きゃん……!!」

 

きゃん(つながなきゃ……やらなきゃ……)

きゃん(打たなきゃ、とにかく……振らなきゃ……!!)

ドッドッドッ

 

えみつん「………」

ザッ

 

シュッ!!
356: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:24:54.29 ID:mycPae/e
きゃん「――っ!!」

ブンッ!!

 

ズバンッ!!

\ストライク!!/

 

ワアアアアアッ!!

 

ひなひな『小林、高め、振らされた!! ツーストライク!!』

ひなひな『追い込まれました、小林!! 大歓声が逆にプレッシャーとなっているのか!?』

ひなひな『粘ってきたAqoursの反撃も、ここで終わってしまうのか!?』

 

ふりりん「あああ……!!」

あんちゃん「あいきゃん……!!」
357: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:27:46.81 ID:mycPae/e
きゃん「――っは!! はぁっ!!」

ドッドッドッ

きゃん(駄目だ――打てる、気がしない!!)

きゃん(周りの――スタンドの、声で――体が、潰されそう――!)

ギュッ…

きゃん(助けて……誰か……!)

きゃん(助けて……)

 

きゃん(ヨハネ……!!)

 

 

 

……………

 

………

 

「何やってんのよ。愛香」

 

 
358: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:28:42.50 ID:mycPae/e
きゃん「――っ!?」

ハッ!!

 

ワアアアアアッ

 

すわわ「……?」

りきゃこ「あいきゃん……?」

 

きゃん(今――頭の中に――)

きゃん(……声が……?)

きゃん(今のは……)

 

 

「自信持ちなさい。リトルデーモン」

「あんたと、Aqoursの3年間は――無駄じゃない」

「あんたは――」

「いつも通りで、いいんだから」

 

 

きゃん「……ヨハネ……?」
359: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:29:43.29 ID:mycPae/e
ふりりん「な、なに……?」

しゅか「わかんない。こわ……」

あんちゃん「だけど……」

あんちゃん(あいきゃんの、表情が……変わった、ような……)

 

きゃん「………」

きゃん(もう――聞こえない)

きゃん(今のは――気のせい?)

きゃん(それとも――…)

 

ワアアアアアッ…

 

きゃん(なんだか……)

きゃん(視界が、広くなった、気がする)

きゃん(一塁に、すわわ。二塁に、りかこ。ふたりとも――私を、見てくれてる)

きゃん(ベンチには――)

きゃん(あんちゃん。かなこ、あいあい――Aqoursのみんな)

きゃん(そして――)
360: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:36:39.02 ID:mycPae/e
ワアアアアアッ!!

アイキャァァァン!!

ガンバレェェェッ!!

 

きゃん(そして――)

きゃん(応援してくれてる、ファンのみんな)

 

きゃん(……最初は、怖かった)

きゃん(受け入れてもらえるか、怖くて、怖くて)

きゃん(メルパルクホールで、初めてお客さんの前に、出た時は。びっくりして、泣いちゃったっけ……)

 

グッ…

 

きゃん(そうだ。もう、怖がる必要なんてない)

きゃん(私は。Aqoursと。ヨハネと、一緒に――)

きゃん(これから――もっと、大きいステージに、立つんだから!)

 

キッ!
361: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:38:37.44 ID:mycPae/e
えみつん「……!」

ピクッ

えみつん(表情が――変わった)

 

きんぐ「きゃん、ちゃんと球見て!! ボール球に手ぇ出さないで!!」

あんちゃん「ボール3個分、上を叩くつもりで!!」

しゅか「いいから、思い切って叩けー!!」

 

きゃん(みんなの声も――聞こえる)

きゃん(大丈夫。しっかり、ボールを見て)

グッ

きゃん(恐れるな――!)

 

えみつん「」

バッ!!

 

きゃん「ああああっ!!」

 

ガギンッ!
362: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:39:31.80 ID:mycPae/e
ワアアアアアッ!!

 

えみつん「!」

 

あんちゃん「あっ……」

あいにゃ「ああっ!!」

 

ひなひな『ああっ……打ち上げてしまったぁぁー!!』

ひなひな『ふらふらと、打球は三塁側ファールグラウンドに上がる!!』

 

アアアアアッ!!

キャアアアアアッ!!

 

きゃん「っ……!!」
363: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:40:46.75 ID:mycPae/e
みもりん(やたっ……!!)

みもりん「――くっすん!!」

 

くっすん「おっけー!!」

 

ひなひな『サード楠田が、ファールグラウンドでグラブを構えた!!』

ひなひな『Aqours、万事休すか!!』

あさみん(もう……ここまでか……)

 

りっぴー「はぁー……」

シカコ「やっと終わったか……」

うっちー(ここまで、ずいぶん粘ったけれど……)

 

ふりりん「あああああー!!」

しゅか「嘘でしょ!?」

きんぐ「もぉー駄目だぁー!!」

あんちゃん「……あきらめちゃ駄目っ!!」

あんちゃん「まだっ……!!」
364: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:42:47.36 ID:mycPae/e
きゃん(そうだよ……私だって……あきらめたくない……!!)

きゃん(みんなで、ここまで来たんだもの……!!)

きゃん(ここで終わりなんて嫌だ!! だから――)

きゃん「まだ、終わりじゃない……!!」

 

くっすん「オーライ!」

 

きゃん「終わりじゃない!!!」

 

ウオオオオオッ!!

ワアアアアアッ!!

キャアアアアアッ!!

 

くっすん(うっ……歓声、すご……)

 

キラッ

 

くっすん「!?」

ハッ

くっすん(天井の、ライトが――視界に、入って――)
365: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:46:06.76 ID:mycPae/e
バシッ

ポロッ…

 

みもりん「――!?」

 

くっすん「あっ……!?」

 

ポトッ

 

ひなひな『おっ……落としたぁぁぁぁっ!!!』

 

ワアアアアアッ!!

ウオオオオオオッ!!

 

ひなひな『なんだどうした!? 最後のアウトひとつが捕れない、μ's!!』

ひなひな『サード楠田、グラブに当てたものの、落としてしまいましたぁぁぁっ!!!』

 

きゃん「……あ……」

きゃん「う、嘘……!?」
366: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:47:37.86 ID:mycPae/e
ふりりん「お……おおお……!!」

あいにゃ「た、たす……」

しゅか「助かった……!!」

きんぐ「し、心臓、止める気か……!」

あんちゃん「そうだよ……!!」

グッ…

あんちゃん「まだ……大丈夫……!!」

 

ジョルノ「く、くっすん……!?」

ジョルノ(なんだかんだ言って、運動神経良くて、守備は割と安定してる、くっすんが……!?)

 

くっすん「な、なんで……」

くっすん「なんでー!? くっそー!!」

ガッ!

くっすん(歓声に気をとられたとか、ライトが目に入ったとか、言い訳にならない……!!)

くっすん(えみつんを、助けないといけないのに……ここで、終わりのはずだったのに……!!)

 

えみつん「くっすん……」
367: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:50:27.27 ID:mycPae/e
あさみん『一瞬、眩しそうな表情を浮かべましたから、天井の照明と重なって、ボールを見失ってしまったのか……』

あさみん『はたまた、三塁側、Aqoursの応援席からの悲鳴のような歓声に、気をとられたのか……』

あさみん(それでも――“流れ”がある時には、実際に起こる。こういう、信じられないプレーが)

あさみん(そしてそれは、Aqoursの流れが、まだ途切れていないということ……!)

ひなひな『とにかく、首の皮一枚つながりました、Aqours!!』

 

きゃん「………」

グッ…

きゃん(大丈夫……大丈夫……!!)

きゃん(今のは――きっと、ヨハネが、救ってくれた)

きゃん(それに――初めて、バットに当てられた!!)

きゃん(大丈夫……打てるんだ……!!)

 

ウオオオオオオッ!!

アイキャァァァンッ!!

ガンバレェェェェッ!!

 

ビリビリッ…

 

きゃん「……っ!!」

ゾクゾクッ
368: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:53:22.37 ID:mycPae/e
きゃん(もう、怖くない……!! わかった。ヨハネが、言ってた意味……!!)

きゃん(私は――いつも通り)

きゃん(この、歓声で、空気が震える――この感覚)

 

きゃん(そうだ。ライブと、一緒なんだ)

 

きゃん(スタジアムは、ステージ。選手は、キャスト)

きゃん(ブラスバンドや鳴り物の音楽に乗せて、私たちは、全力のパフォーマンスを魅せて)

きゃん(そして、地面を揺らすような、大歓声……!!)

 

ニッ…!

 

きゃん(そうだ。いつだって、この歓声に、助けられてきたんだ)

きゃん(この歓声と、Aqoursのみんながいれば――)

きゃん(どこへだって、行ける!!)

 

きゃん「さぁ――」

ギランッ!

きゃん「行くわよ!! リトルデーモンたち!!」

 

キャアアアアアッ!!

ウオオオオオオッ!!
369: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:54:27.23 ID:mycPae/e
ひなひな『小林の……表情が、変わった!? 笑っている……!?』

あさみん『……!!』

あさみん(打ち勝った……! 味方に、つけた……!!)

あさみん(“魔物”を……!!)

 

あんちゃん「あいきゃん……!!」

グッ

あんちゃん「大丈夫……!!」

 

きゃん「そう、大丈夫……!」

 

えみつん「ふぅ……はぁ」

ザッ…

 

シュバッ!!

 

きゃん(大丈夫!! 絶対、あきらめないから)

きゃん(見てて――ヨハネ!!)

 

ガキィッ!!
370: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:55:24.64 ID:mycPae/e
ウオオオオオッ!?

 

ひなひな『これも打ち上げたぁー!!』

ひなひな『しかし、打球はふらふらと上がる!!』

 

ふりりん「あああっ……!!」

ありしゃ「いや……待って!!」

 

みもりん(セカンド……!!)

みもりん(いや、センター……ライト……!?)

 

あさみん『これは面白い所に上がりましたよ!?』

ひなひな『セカンド後方に上がった打球!! 3人が追いかけます!!』

 

きゃん「……!!」

ダダダッ
371: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:56:38.61 ID:mycPae/e
そらまる「くっ、ちょっと前に出すぎてた……!?」

ダダダッ

 

りっぴー「捕る、私が……!!」

ダダダッ 

 

うっちー(えみつんを、助けなきゃ……!)

ダダダッ!

 

ジョルノ「……!!」

ジョルノ「声かけあって!! エラーあるぞ!!」

 

しゅか「ああー、捕るなぁー!!」

きんぐ「捕るな捕るな捕るなぁー!!」

ふりりん「落ちろぉー!!」

あんちゃん「……大丈夫……!!」

 

きゃん「……大丈夫!!」

ダダダダッ!
372: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 01:58:37.55 ID:mycPae/e
うっちー「!!」

りっぴー「あっ……!?」

そらまる「げ、」

 

ポトンッ

 

ひなひな『ああー、落ちたぁー!! ポテンヒット!!!』

 

ワアアアアアアッ!!

キャアアアアアッ!!

 

すわわ「や……、」

 

りきゃこ「やった!!」

ダダッ!

 

あんちゃん「やったあああああっ!!!」

しゅか「きゃあああああんっ!!!」

 

ひなひな『その間、二塁ランナーの逢田がホームイン!! 諏訪は三塁へ!!』

ひなひな『また1点挙げた!! またつないだ、Aqours!!』

ひなひな『なおも、ツーアウト一・三塁!!!』

ウオオオオオオッ!!

 

きゃん「やっ……」

きゃん「たぁぁぁぁぁっ!!!」

 

【μ's 13―8 Aqours】
373: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 02:00:23.96 ID:mycPae/e
あさみん『上がった位置が、良かったですね。セカンド、センター、ライトの三者の真ん中、難しい位置でした』

あさみん『外野が定位置、セカンドがゴロを警戒してやや前に出ていたのも功を奏しました。三者も、一瞬判断に迷ってしまいましたね』

ひなひな『しかし小林選手、先程のファールフライ落球、そしてこのポテンヒットと、実に運が良かったといいますか……』

あさみん『勿論、運もあったでしょう』

あさみん『しかしこれも、観客の声援に呑まれず、“魔物”を味方につけたからこそ、とも言えるかもしれません』

あさみん『もう、初めてのステージで、歓声に呑まれて泣いていたAqoursはいない』

 

きゃん(ありがとう……ヨハちゃん……!!)

きゃん(また、救われちゃったけど……)

きゃん(私が、ちょっとでも、勇気が持てたのは……ヨハちゃんと、Aqoursと……)

きゃん(応援してくれる人たちの、お蔭だよ……!)

ジワ…

 

ワアアアアアッ!!

アイキャァァァンッ!!

 

あさみん『3年間の月日は、“魔物”を味方につけるほどに――』

あさみん『彼女たちを、成長させたんです』
374: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 02:09:19.60 ID:mycPae/e
くっすん「えみつん……ごめん」

くっすん「あのファールフライ、私がちゃんと捕ってたら……」

そらまる「それ言ったら、ウチらもだよ」

そらまる「りっぴー、内田さんと、ちゃんと声掛けあってれば……」

えみつん「いいんだって!! 誰のせいでもないよ!」

えみつん「それに、わがまま言って投げさせてもらってるのは、私の方なんだから……」

みもりん「………」

みもりん「だけど……認めなきゃね」

みもりん「点差があるとか、あとアウトひとつとか、言ってられない」

スッ…

みもりん「Aqours――強敵だよ」

えみつん「……!」
375: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 02:10:32.87 ID:mycPae/e
あんちゃん「りこちゃーん、やったねー!!」

りきゃこ「あーん、あんちゃーん!! みんなのお蔭だよ!!」

パンッ

しゅか「こ……これ……」

ふりりん「ほんとに……勝てる、かも……?」

きんぐ「何言ってんの!! 絶対、勝つんだよ!!」

あいにゃ「………」

ドキドキ…

あいにゃ(みんな、波に乗ってる……あんなにバラバラだったのに、また、ひとつになれた……!)

あいにゃ(嬉しい、嬉しいよ……だからこそ……)

ギュッ

あいにゃ(勝ちたい。終わらせたくない)

あいにゃ(だけど……)

ズキ…ズキ…

 

『9番、ファースト、鈴木』
376: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 02:12:23.84 ID:mycPae/e
ひなひな『さあ、いよいよラストバッターの鈴木まで回ってきました!!』

ひなひな『この回、4点を挙げ、点差はじわじわと縮まっています!!』

ひなひな『しかし鈴木は、ここまで4打数ノーヒット』

ひなひな『Aqoursの打者の中で、唯一、出塁がありません!!』

あさみん『その上、鈴木選手は、8回の守備で足首を痛めています』

あさみん『バッティングにも、その影響が出てしまうとなれば……』

 

あいにゃ(……でも、やるしかない)

あいにゃ(痛いとか、言ってられない……!)

ドキドキ…!

あいにゃ「よ、よーし……!」

あいにゃ「よっしゃ、行くぜ、ワレ!!」

 

あんちゃん「………」

あんちゃん「あいな!」
377: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 02:13:55.74 ID:mycPae/e
あんちゃん「……あいながいてくれたから、私たち、ここまで頑張れたんだと思う」

あんちゃん「あいなが、あきらめないでいてくれたから。あいなの、言葉があったから」

あんちゃん「私も、Aqoursも、あきらめないで、ここまで粘れた」

あいにゃ「え……?」

りきゃこ「そうだよ! あの、1stの時も……今回も! あいなに励ましてもらって、私もすっごい心強かった!」

きんぐ「そーそー。あいなちゃんが頑張ってると、なんかこっちも頑張らなきゃ、って気になるし」

ありしゃ「なんか、あいなってそういうパワーみたいなのあるよねー」

あいにゃ「そ、そんな……ワシ、照れるわ……///」

あんちゃん「……あいなは、周りに勇気を与えてくれる、すごいパワーを持ってるんだから」

あんちゃん「だから……大丈夫!!」

あいにゃ「あんちゃん……!」
378: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 02:15:01.74 ID:mycPae/e
ひなひな『さあ、出てきました!! 鈴木がバッターボックスに向かいます!!』

ひなひな『スタジアム内は、Aqoursの快進撃に、観客の熱気もますますヒートアップ!!』

ひなひな『ランナーは一・三塁!! ノーヒットの鈴木、ここで執念を見せられるか!!』

ワアアアアアッ!!

アイニャァァァァッ!!

ガンバレェェェッ!!

 

あいにゃ(もー、あんちゃんったら、ほんとイケメンなんだから……///)

あいにゃ(思わず、ほっぺにチューしたくなっちゃう///)

あいにゃ(それに、りかこも、他のみんなも……)

あいにゃ(……信じてくれてる。こんな、あたしを)

あいにゃ(……そして……)

チラッ

 

すわわ「………」

ニコ

 

あいにゃ(……すわわ……)
379: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 02:15:47.07 ID:mycPae/e
あいにゃ(……みんな、ありがとう)

あいにゃ(私が、困ってる時、悩んでる時)

あいにゃ(いつだって、手を差し伸べてくれたのは――Aqoursのみんなだったよね)

あいにゃ(――大好きだよ。そんな、みんなのこと)

グッ…

あいにゃ(だから――)

 

えみつん「……ふぅー……」

ザッ!

 

シュバ!!
380: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/24(月) 02:16:45.50 ID:mycPae/e
あいにゃ「――!!」

 

グッ!

 

ズキィッ!!

 

あいにゃ「っ!!!」

ブンッ!!

 

ズバンッ!!

\ストライク!!/

 

あいにゃ「……っ……!!」

ズキズキ…!!

 

あいにゃ(痛みになんか……負けない……!)

あいにゃ(Aqoursは、絶対……終わらせないんだから……!!)

ギリ…!

あいにゃ(たとえ、私の体が、どうなっても……!!)
390: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 00:41:15.39 ID:XHu6Ablv
あいにゃ「ぐっ……!!」

フラッ…

 

ひなひな『第1球、新田の直球に対し、大きな空振りでワンストライク!!』

ひなひな『しかし鈴木、振ったのち、少しよろめいたような……?』

 

あいにゃ「はぁ、はぁ……」

ズキ…ズキ…

 

すわわ「あいな……!?」

 

りきゃこ「やっぱりあいな、足首が痛いんじゃ……!!」

しゅか「あいなー!!」

ありしゃ「痛いなら、無理しないで!!」

 

あいにゃ「はっ……がはははっ!!」

あいにゃ「ごめんごめん、勢い余ってちょっとよろけちゃっただけだから!!」

ズキ…ズキ…!

あいにゃ(ここで、無理しなきゃ……)

あいにゃ(全部、終わっちゃうもの……ドームの夢も、何もかも……!)
391: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 00:41:51.38 ID:XHu6Ablv
えみつん「―――」

ザッ…

 

あいにゃ(それに――)

あいにゃ(憧れの、μ'sの、えみつんさんだって。腰の不調を抱えたまま、全力で頑張ってる)

あいにゃ(だったら、私が、弱音を吐いてる場合じゃ……!)

 

えみつん「」

バッ!!

 

グッ

ズキィッ!!

あいにゃ「っ!!」

 

ブンッ…

 

ズバン!!

\ストライクツー!!/
392: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 00:43:34.29 ID:XHu6Ablv
アアアアアアッ!?

 

ひなひな『鈴木、どこか力無いスイングで空振り!!』

ひなひな『あっという間に追い込まれてしまいました!!』

 

あいにゃ「っ……あっ……!!」

ズキズキ…!

ガクッ

 

りきゃこ「あいな!!」

あんちゃん「やっぱり、あいな、足首が……!!」

 

ひなひな『鈴木、またもふらつき、膝を落とした!! やはり、先ほどの負傷の影響なのか!?』

あさみん『鈴木選手は左打ちです。スイングの瞬間、軸足である左足から、前に出した右足に、体重を乗せて踏み込まなければいけない』

あさみん『先ほど痛めたのは、右の足首ですから……体重を乗せるたび、激痛が走っていても不思議ではありません……!!』

ひなひな『………!!』
393: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 00:44:19.19 ID:XHu6Ablv
しゅか「見てらんないよ……!!」

りきゃこ「あいな……!!」

きんぐ「………」

きんぐ「でも……」

きんぐ「今の、あいなに……やめてくれ、なんて……言えない」

りきゃこ「え……!?」

きんぐ「だって……あいなは、絶対、あきらめたくないはずだもの……」

きんぐ「あきらめかけた、私と違って……ずっと、Aqoursは勝つって、信じてたはずだもの……!」

きんぐ「だから……」

あんちゃん「………!!」

 

あいにゃ「く……ふぅ……!」

ズキ…ズキ…

スック…

 

ひなひな『それでも、鈴木、立ち上がります!! 最後まで、あきらめません!!』

 

ワアアアアアアッ!!

アイニャァァァァッ!!

ガンバレェェェェッ!!
394: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 00:45:01.76 ID:XHu6Ablv
あいにゃ「………」

ハァ…ハァ…

あいにゃ(みんな……ありがとう)

あいにゃ(ほんとにね。みんなからは、救われることばっかり)

あいにゃ(昔の私は、自分のことで精一杯で……自分の殻に閉じこもって、どうにかしなきゃって必死で……)

あいにゃ(でも、そんな私に……Aqoursのみんなは、手を差し伸べてくれたよね)

あいにゃ(困ってる私を助けようとして、みんな、気にしてくれてたんだって、わかって――)

あいにゃ(今は、周りを見渡せば、みんながいるってわかるから。ひとりじゃない。孤独じゃない)

あいにゃ(そんな、みんなのこと――私、大好きなんだよ)

クス…
395: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 00:45:55.89 ID:XHu6Ablv
あいにゃ(……幕張ファンミの時だって、迷惑をかけちゃった)

あいにゃ(だけど、あの時も、みんなは私を支えてくれた)

あいにゃ(だから、今度は――私の番)

グッ…

あいにゃ(選球眼も良くない。力も無い)

あいにゃ(そんな、私に出来る――精一杯は――!!)

キッ…!

 

えみつん「―――」

ザッ…

 

あいにゃ「――すわわ!!」

 

すわわ「!?」

 

あいにゃ「走って!!」

スッ!
396: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 00:46:55.33 ID:XHu6Ablv
あさみん『あの構えは――!!』

ひなひな『バント!? スリーバントスクイズ!?』

 

ウオオオオオオッ!?

 

えみつん「――!!」

シュバッ!!

 

あいにゃ(お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん!!)

あいにゃ(私――頑張るから!!)

 

コツンッ!

 

あいにゃ(行くよ――)

あいにゃ(――みんな!!)

ダッ!!

 

あさみん『当てたっ!!』

ひなひな『走ったぁぁぁぁっ!!!』

 

ワアアアアアアッ!!
397: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 00:47:48.62 ID:XHu6Ablv
すわわ「……!!」

ダダダダッ!!

 

みもりん(まさか、この局面で――!!)

みもりん(痛めたあの足で、セーフティスクイズ!?)

みもりん(駄目だ、私じゃ間に合わない!!)

みもりん「――くっすん!!」

 

くっすん「わかってる!!」

ダダダッ!!

 

ひなひな『サード楠田、反応が速い!!』

ひなひな『本塁は間に合わないか!! ファーストで刺せるか!?』

ウオオオオオッ!!

 

くっすん(今度こそ――!! 私が、刺す!!)

くっすん(終わらせてやるんだ――!!)

パシッ!!

くっすん「――なんちゃん!!」

シュビッ!!
398: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 00:49:03.09 ID:XHu6Ablv
ダダダダッ!!

あいにゃ「……っ」

ズキズキッ!!

あいにゃ「っ!!」

 

りきゃこ「あいな!!」

あんちゃん「あいなぁぁぁぁっ!!!」

 

あいにゃ(運動神経も良くない、チビで力も無い私が、ちょっとでも、自慢できること――)

あいにゃ(それは、歌と――陸上で鍛えた、この足!!)

あいにゃ(そうゆう体に産んでくれて、ありがとう、お父さん、お母さん!!)

あいにゃ(絶対……立ち止まったり、しない……!!)

 

ズキズキ!!

ダダダダダッ!!

 

あいにゃ(私は、私たちは――みんなで、)

あいにゃ(前に、進むんだ――!!)

 

ズザザザザッ!!

パシィッ!!

 

ひなひな『滑り込んだぁぁーー!!!』
399: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 00:50:28.88 ID:XHu6Ablv
ひなひな『ファースト捕球のタイミングはほぼ同じ!!』

ひなひな『セーフか、アウトか!?』

 

\……/

\…セェェーフ!!/

 

ワアッッ!!

 

ひなひな『間に合ったぁぁぁぁっ!!! セーフ、セーフです!!』

ひなひな『間一髪、楠田の送球を、鈴木の執念の激走が上回りましたぁぁぁっ!!!』

ひなひな『三塁ランナー、諏訪がホームイン!! つないだ、またもつないだ、Aqours!!!』

ウオオオオオオッ!!

 

ふりりん「やっ、」

しゅか「たぁぁぁぁっ!!!」

りきゃこ「あいなぁぁぁっ!!」グスッ

 

【μ's 13―9 Aqours】
400: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 00:52:34.77 ID:XHu6Ablv
くっすん「……!!」

くっすん(間に合わなかった……!!)

くっすん(あと、ちょっとだったのに……!!)

ググッ…!

 

ひなひな『まさかの、意表を突いたセーフティスクイズ……!! μ's、完全に裏をかかれました……!!』

あさみん『ええ。ツーアウトで後が無いこの局面、しかも足を痛めている鈴木選手が、セーフティを仕掛けてくるなんて……!』

あさみん『しかし、その中でも、サードの楠田選手の反応は完璧でした』

あさみん『三塁線に転がされたボールに、真っ先に反応して飛び出し、すぐさま正確なスローイングで一塁に送球』

あさみん『先ほどのミスを挽回したい、という強い思いもあったのでしょう』

あさみん『バントシフトをとっていなかったとはいえ、楠田選手のプレーにミスはありません』

 

みもりん(そう……くっすんは、悪くない)

みもりん(予想外だったのは、あの子の想いの強さと、足……!!)
401: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 00:53:54.63 ID:XHu6Ablv
あさみん『鈴木選手は、Aqoursいちの俊足の持ち主です。それでも、足首を痛めていますし、本当にタイミングとしては紙一重でした』

あさみん『ですが、鈴木選手が左打ちだったことも、功を奏しましたね』

ひなひな『左打ち?』

あさみん『右打ちと違って、左打ちの選手は一塁側のバッターボックスに立ちますから、右打者よりも僅かに、一塁ベースまでの距離が短くなる』

あさみん『時間にして、ほんのコンマ何秒という差ですが――今回は、正にその僅かな差が、明暗を分けた』

あさみん『自分の左打ちという特性を活かして、足の痛みも構わず、迷うことなく飛び出した』

あさみん『その、鈴木選手の迷いの無さが、Aqoursの未来をつないだんです』

 

みもりん(ほんと……えみつん、うっちー、なんじょさん……)

みもりん(そして、あの子……みんな、無茶ばっかりするんだから)

 

えみつん「………」

ハァハァ…

えみつん(だけど……!)

 

あさみん(だけど、その代償は……!!)
402: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 00:55:02.96 ID:XHu6Ablv
あいにゃ「………」

あいにゃ「つ、う……!!」

ジョルノ「ちょ、ちょっと、大丈夫?」

 

ひなひな『ああー、鈴木、うずくまったまま立ち上がれない!!』

あさみん『やっぱり……!!』

あさみん(あんな無茶をしたら、足は……!!)

 

あんちゃん「あいな!!」

 

すわわ「あいなぁぁぁっ!!!」

 

ひなひな『こ、これは!?』

ひなひな『ホームインした諏訪、真っ先に、鈴木のもとに駆け寄りました!!』
403: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 00:56:17.01 ID:XHu6Ablv
すわわ「あいな!!」

ガバッ

ギュッ!!

あいにゃ「す、すわわ……?」

あいにゃ「もう、なにぃ、こんな所で……ハグ、なんて、恥ずかしいわぁ……」

すわわ「あんな無茶を……!!」

あいにゃ「………」

あいにゃ「……へっ。こちとら、必死よ……」

ハァハァ

あいにゃ「私が、つながなきゃ……みんな、終わっちゃうから」

あいにゃ「みんなのためなら、私――」

すわわ「……馬鹿っ!!!」

ギュウウッ

あいにゃ「へ? すわわ……?」
404: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 00:57:27.01 ID:XHu6Ablv
すわわ「だからって……自分は、どうなってもいいなんて……思わないで……!!」

すわわ「あいなが、足を怪我して……一緒に、ドームに立てなくなったりしたら、私……!!」

すわわ「……幕張の時、一緒に立てなくて、悲しかったのは、あいなだけじゃない」

すわわ「私たちだって……悲しかったんだから……!!」

あいにゃ「……!!」

ハッ

すわわ「………」グス

あいにゃ「すわわ……」

あいにゃ「泣いてる?」

すわわ「泣いてない」

あいにゃ「泣いてる?」 

すわわ「泣いてないったら」
405: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 00:59:00.18 ID:XHu6Ablv
あんちゃん「……そうだよー、あいな」

あいにゃ「あんちゃん……!」

あんちゃん「私たちは、9人でAqoursなんだから。ひとりも欠けちゃいけないんだから」

あんちゃん「だから、無理しないで……って、無理して投げた私とか……」

あんちゃん「デッドボールを避けなかった、おすわが言うのもなんだけど」チラッ

すわわ「………」プイッ

あんちゃん「だけど、ありがと……あいな。あいなが、また、私たちをつないでくれた」

あんちゃん「9人で、東京ドーム、立てるように! 一旦、ベンチに退こう」

あいにゃ「……うん」

あいにゃ「ごめん。……ありがとう」

 

ひなひな『激走を見せた鈴木、一旦ベンチに退くようです!!』

ひなひな『負傷をものともせず、執念で希望をつないだ鈴木に対し、スタンドからは大きな拍手!!』

ワアアアアアッ!!

パチパチパチッ!!
406: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 00:59:50.81 ID:XHu6Ablv
ひなひな『鈴木選手の足首の負傷のため、特例として、臨時代走が送られます』

ひなひな『臨時代走を務めるのは、6番の逢田!』

あさみん『本来の臨時代走では、打撃の終わった直後の選手が務めるため、本来なら諏訪選手ですが……』

あさみん『諏訪選手も、頭部にデッドボールを受けているため、今試合のみの特例として、その前の打順の逢田選手の代走が認められたようですね』

 

りきゃこ(あいなが、あれだけ頑張って、出塁したんだもの)

りきゃこ(あいなの分まで、絶対、ホームに還ってみせる……!)

 

ひなひな『一塁に逢田、二塁には小林を置いて、試合が再開されます!!』

ワアアアアアッ!!
407: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 01:01:02.02 ID:XHu6Ablv
ありしゃ「あいなも、出て……」

ふりりん「一巡……したよ……!」

きんぐ「9点差、あったのに……」

あんちゃん「あと、4点……!!」

 

ひなひな『9点差が……4点差になりました!!』

ひなひな『しかも、この回……9回、ツーアウト、ランナー無しという状態から……!!』

あさみん『やっぱり、あきらめなければ、こんなことだって起こりうるんです』

あさみん『……そして、ここまで来たら、私も見たくなってきましたよ』

あさみん『“奇跡”が、起きるのを……!!』

 

あんちゃん「次は――!!」

 

しゅか「………」

ニッ

 

『1番、ショート、斉藤』
408: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 01:02:35.57 ID:XHu6Ablv
ワアアアアアアッ!!

シュカシュゥゥゥゥッ!!

 

ひなひな『アナウンスと同時に、スタンドからは大歓声!!』

ひなひな『打者一巡し、先頭の1番・斉藤を迎えます!!』

 

あんちゃん「しゅか……!!」

 

しゅか「………」

しゅか「だいじょーぶだよ。あんじゅ」

しゅか「絶対、つなぐから。Aqoursを、終わらせたりなんか、しないから」

ニッ

しゅか「このさいとーさんに、任せとけ!」
409: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 01:03:27.10 ID:XHu6Ablv
シュカシュゥゥゥゥッ!!

ガンバレェェェェッ!!

ウテェェェェェッ!!

 

ひなひな『スイッチヒッターの斉藤、左バッターボックスに入ります!!』

 

しゅか「……うしっ」

 

みもりん(……この子か。うっちーの球を、最初にヒットにしたのも、この子……)

みもりん(粗削りだけど、センスは抜群。運動神経も、ピカイチ……)

 

うっちー(この子に回る前に、終わらせたかったけど……仕方ない)

うっちー(えみつん、頑張って……!!)

 

えみつん(そうだ……)

えみつん(みんなが、まだ……信じて、くれるなら)

えみつん(私は……!!)
410: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 01:04:35.81 ID:XHu6Ablv
グワッ…

 

シュバッ!!

 

しゅか「――!!」

ピクッ

 

ズバンッ!!

\ボール!!/

 

ひなひな『手が出かかりましたが、バット止めてボール!! 僅かに外れた球!!』

ひなひな『しかし、ここに来て……またも、球威が戻ってきたような……!?』

オオオオオオッ!!

 

しゅか「……!!」

しゅか(すごい……まだ、こんなスピードが……!)

しゅか(でも――)

キッ

しゅか(私だって。私たちだって――)

しゅか(負けられない! 負けられないから――!)
411: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 01:05:39.39 ID:XHu6Ablv
きゃん「しゅか……!!」

りきゃこ「頼むよ……!」

 

えみつん「―――」

ザッ

シュバ!!

 

しゅか「!」

ピクッ

 

バシィッ!!

\ボール!!/

 

ひなひな『……よく見ています、斉藤!! これでツーボール!!』

あさみん『先ほどは、打ち気にはやって、三球三振に倒れてしまいました』

あさみん『落ち着いていますよ、斉藤選手……!!』

 

あんちゃん「あの、すぐ打ちに行っちゃうしゅかが、あんなにボールをよく見るなんて……!?」

すわわ「それだけ……しゅかも、真剣だし、冷静だってことだよ」

ふりりん「そだね。なんだかんだ、しゅかは、空気が読める子だから……!」
412: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 01:06:43.78 ID:XHu6Ablv
シュッ!!

 

しゅか「くっ!!」

キンッ!!

 

ひなひな『ファール!!』

ひなひな『くさい球は、器用にファールでカットします、斉藤!!』

 

ワアアアアアッ!!

シュカァァァァッ!!

 

しゅか(……周りから、要領いいね、器用だね、って……よく、言われてきた)

しゅか(でも、ほんとは違う。どんなことでも、練習して、なんとか身につけてるだけ)

 

キンッ!

 

あんちゃん「しゅかぁぁぁぁっ!!!」

あいにゃ「頑張れぇぇぇぇっ!!!」
413: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 01:07:47.80 ID:XHu6Ablv
しゅか(だから。本当は全然すごくない、私にとって――曜ちゃんは、私のすべて)

しゅか(曜ちゃんがいなかったら、今の私は無い)

 

キンッ!

 

しゅか(私の、憧れの女の子で)

しゅか(でも、悩みながら頑張ってるところとか、私とおんなじだな、と思うところもあって)

しゅか(そんな、曜ちゃんと――)

しゅか(そして、Aqoursを。守りたい。手放したくない!!)

 

ギンッ!

 

ひなひな『またもファール!!』

あさみん『決して、緩い球ではないはずなのに……!!』

ひなひな『……恐るべき集中力!! 紙一重で、新田の速球に喰らいついていく斉藤!!』

ひなひな『これが、Aqoursの斉藤朱夏の、本領ということなのでしょうか!?』

オオオオオオッ…!!
414: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 01:08:48.82 ID:XHu6Ablv
しゅか「ふぅ、はぁ……!!」

 

えみつん「はぁ、はぁ……!!」

 

みもりん(なんて子……!? もう、7球も、ファールで粘ってる……!!)

みもりん(えみつん……!!)

 

しゅか(……声優としてのキャリアが、一番少ない私のことを、みんなはずっと助けてくれた)

しゅか(だから、私は。得意なダンスと――)

しゅか(今、この打席で、恩返ししたい――!!)

グッ…!

しゅか(そして、立つんだ。曜ちゃんに、見せてあげるんだ)

しゅか(東京ドームに広がる、青い海を――!!)

 

えみつん「っ!!」

シュバッ!!

 

ズバンッ!!

 

しゅか「……!!」

 

みもりん「……!!」
415: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 01:09:52.44 ID:XHu6Ablv
\ボール!! フォア!!/

 

ウオオオオオオッ!!

ワアアアアアアッ!!

 

ひなひな『外れたぁっ!!! フォアボール!!!』

ひなひな『なんと斉藤、新田の豪速球にファールで喰らいつき――』

ひなひな『実に8球粘って、フォアボールを選びましたぁ!!!』

 

しゅか「――うしっ!!」

しゅか(つないだよ――!! 希望!!)

 

ありしゃ「しゅか……!!」

あいにゃ「す、すごい……!!」

あんちゃん「しゅか――」

クスッ

あんちゃん「――しゅかは、自分でどう思ってるか、知らないけど」

あんちゃん「やっぱり――お前って、スゴい奴だよ!!」
416: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 01:10:56.71 ID:XHu6Ablv
あさみん『打ち気にはやる気持ちを抑えて、しっかりボールを見極めていました』

あさみん『斉藤選手の、長年のダンスの経験で磨き抜かれた、動体視力と反射神経のたまものだと思いますね』

あさみん『そして、冷静に、次につなげることを第一に考えた――』

あさみん『一見、お調子者に見えて――実は誰よりも空気を読み、冷静な、斉藤選手らしいプレーだったと思います』

 

えみつん「ふぅ……はぁ」

 

みもりん(えみつん……)

 

うっちー(……あの子の場合は、打ち気にはやってくれてた方が、打ち取りやすかった)

うっちー(最後の最後で、こんな冷静さを見せるなんて……!)

 

ジョルノ(……おいおい)

 

シカコ(マジか……この、状況……!!)
417: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/26(水) 01:12:03.31 ID:XHu6Ablv
ひなひな『――さぁ!! ついに!! 満塁になりましたぁ!!!』

ひなひな『点差は4点!! 一発出れば、一気に同点!!』

ひなひな『会場の熱気は、最高潮に達しています!!!』

 

ウオオオオオオッ!!!

ワアアアアアアッ!!!

アークーア!! アークーア!!

 

ひなひな『そして――この、局面』

ひなひな『打席に立つのは。Aqoursの、命運を、握るのは――!!』

 

『2番、セカンド、降幡』

 

ワアアアアアアッ!!

フリリィィィィン!!

 

ふりりん「………!!」

カタ…

ふりりん(ツーアウト……満塁……!!)

ふりりん(マジかよ……あーしに……)

ガタ…ガタ…!

ふりりん(Aqoursの、命運が……かかってる……!?)
432: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/28(金) 00:38:09.68 ID:EouE59/Y
ウオオオオオオッ!!

フリリィィィィン!!

ガンバレェェェッ!!

 

ふりりん「………っ」

フルフル…

 

ひなひな『大歓声を受けて、降幡が打席に入ります!!』

ひなひな『しかし、プレッシャーからか、いささか固い表情』

ひなひな『チームメイトの、そしてファンの期待に応えることが出来るか!? あいちゃん、正念場です!!』

 

きんぐ「あいあい……ガッチガチになってる」

ありしゃ「あいあいー!!」

あんちゃん「大丈夫だよ!! 肩の力、抜いてー!!」
433: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/28(金) 00:39:13.91 ID:EouE59/Y
ふりりん「………」

ドクンドクン…!

ふりりん(ツーアウト満塁……あーしが打てば……点が入って……)

ふりりん(ホームランなら、同点……? いやホームランとか無理……)

ふりりん(打つ? えみつんさんの球を? じゃあ待つ? フォアボール?)

ふりりん(いや、なに考えてんだあーし……! 頭ごちゃごちゃで……!)

ふりりん(落ち着け、落ち着け……!!)

 

えみつん「………」

フゥ…ハァ…

キッ!

 

ふりりん「!!」

ゾクッ

ふりりん(えみつんさん……体、ボロボロのはずなのに……疲れてるはずなのに……)

ふりりん(まだ……こんな、気迫が……!)

ブルッ…

ふりりん(怖い……怖い……!)
434: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/28(金) 00:40:15.47 ID:EouE59/Y
ザッ…!

 

ひなひな『新田、足を上げた!!』

 

ふりりん(来る……来る……!!)

ドクンドクン!

 

シュバッ!!

 

ふりりん「――!!」

 

ズバン!!

\ストライク!!/

 

ひなひな『ど真ん中を見送ってしまった!!』

ひなひな『降幡、手が出ない!! ワンストライク!!』

ワアアアアアッ!!
435: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/28(金) 00:41:20.92 ID:EouE59/Y
あいにゃ「あああ……!!」

きんぐ「今の、甘く入ったってやつじゃないの……!?」

あんちゃん(あいあい……!!)

 

みもりん(危ない……!! 真ん中に入ってきた……!)

みもりん(でも、初球でストライクが取れた。このまま……!)

 

ふりりん「……っ!!」

ドクンドクン…!

 

きゃん「あいあい!! 落ち着いて!!」

りきゃこ「深呼吸して!! 大丈夫だから!!」

しゅか「あいあい……」

グッ
436: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/28(金) 00:42:12.46 ID:EouE59/Y
ふりりん(そうだ……振らなきゃ……打たなきゃ……!!)

ふりりん(振れ、振れ……!)

ドクンドクン…

 

えみつん「」

ザッ…

 

ふりりん(振れ!!)

 

シュバッ!

 

ブンッ!!

 

バシィッ!!

\ストライクツー!!/

 

ひなひな『ああっと、今度は大きく外れたボール球に手が出てしまった!!』

ひなひな『空振り!! これでツーストライク!!』

アアアアアアッ!!
437: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/28(金) 00:43:47.53 ID:EouE59/Y
ふりりん「はぁ、はぁ……!!」

ふりりん(駄目だ……頭の中、真っ白だ……!!)

ふりりん(どうしよ……どうしたら……!!)

 

きんぐ「ふり……!!」

ありしゃ「プレッシャーで、テンパっちゃってる……!」

あんちゃん「あいあーい!! 落ち着いてー!!」

 

ふりりん「ふぅ、はぁ……」

ふりりん「………」

ふりりん(ああ……やっぱり、私……駄目だなぁ……)

ふりりん(こんな、大事な場面で……私を信じて、みんな、送り出してくれたのに……)

ふりりん(期待に……応えられない)

ジワ…

ふりりん(Aqoursの、他のみんなは……すごい人ばっかりで。私、ここにいていいのかって、いっつも悩んで……)

ふりりん(せめて、みんなを引き立てられればって思って、なんとか頑張ってきたけど……)

ふりりん(……引き立て役にすら、なれない)

ポロ…

ふりりん(私……結局、みんなの……お荷物、なんだ……)

 

しゅか「………!」
438: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/28(金) 00:44:37.71 ID:EouE59/Y
しゅか「――こらー、あいあい!!」

しゅか「顔上げろ!! びびってんなー!!」

しゅか「このセクシー家庭教師!!」

 

ふりりん「!」

ハッ

 

ジョルノ「……は? セクシー家庭教師?」

ジョルノ「なんで? セクシーなの?」

 

しゅか「………」

ニッ

 

ふりりん「………!」

ふりりん(しゅか……)
439: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/28(金) 00:46:40.07 ID:EouE59/Y
~とある生放送収録後、楽屋~

 

ふりりん「……もー、セクシー家庭教師ネタばっかやんなよー!」

ふりりん「ほんとしゅか、人のことディスってばっかいるよなー」

しゅか「えへへへ、ごめんってー。だってあいあいの家庭教師、ほんと面白くて好きなんだもーん」

ふりりん「………」

ふりりん「……ま、でもいいんだ。それで、みんなが面白がってくれるなら」

しゅか「へ?」

ふりりん「いやさ……あーしは、しゅかやみんなと違って、別にすごくもなんともないし……」

ふりりん「だったら、引き立て役っていうか……芸人ポジで、せめてみんなを盛り上げられたら、それでもいいかな、って……」

しゅか「………」

バシ!

ふりりん「あだ!? なんでいきなり、背中叩いて、」

しゅか「あいあいさあ」

しゅか「あたしは。あいあいがいないと、ヤだよ」

ふりりん「……え?」
440: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/28(金) 00:48:09.09 ID:EouE59/Y
しゅか「だって、あいあい、結構甘えさせてくれるしー」

ふりりん「おい」

しゅか「それにさ。あいあいには、あいあいにしか無い良さ、あると思うよ」

ふりりん「へ?」

しゅか「みんなを楽しくさせてくれるのも、なんだかんだ世話焼いてくれるのも」

しゅか「あいあいじゃなきゃ、できないってゆーかさ。今さら、あいあい抜きのAqoursなんて、考えられないし」

しゅか「あいあい、いいとこいっぱいあるんだからさ。自信持ちなって!」

ニッ

ふりりん「しゅか……」

しゅか「あ! 今、あたしのことイイ奴って、そう思ったっしょ?w」

ふりりん「う、うっせー!/// やっぱ馬鹿にしてるでしょー!!」

しゅか「だから、あいあいは、あいあいらしくでいいんだって!」

しゅか「セクシー家庭教師も、あいあいらしさだから!!w」

ふりりん「やめろー!!」
441: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/28(金) 00:49:29.09 ID:EouE59/Y
ワアアアアアッ!!

 

ふりりん(しゅか……)

ふりりん(私は……私らしく……)

 

しゅか(そうだよ。いけ、あいあい……!)

 

あんちゃん「見せてやれ……!」

ありしゃ「遠慮なんか、しなくていい」

きんぐ「あいあいの、すごいところ……!!」

 

あさみん(いつだって、遠慮がちに一歩引いて。周りを立たせようと、お笑い役になることも多くて)

あさみん(でも――3rdの時、一緒にAwaken the powerを歌った――私も、日向も、知っている)

あさみん(貴方には、目覚めの時を待つ、大きな力――パワーが、あるってことに――!)
442: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/28(金) 00:53:58.58 ID:EouE59/Y
ふりりん「ふぅー……」

ふりりん「はぁー……」

キッ…

 

ひなひな『さあ、大きく深呼吸した降幡!!』

ひなひな『再びバッターボックスで、新田に向かい合います!!』

ひなひな(頑張れ……あいちゃん……!)

 

ワアアアアアッ!!

フリリィィィン!!

ガンバレェェェェッ!!

 

ふりりん(大丈夫……)

ふりりん(落ち着いて。逃げちゃ駄目だ)

ふりりん(たとえ、相手が……あの、憧れの、えみつんさんでも……!)

 

えみつん「ふぅ……はぁ」

えみつん「………」

ニコ…

 

ふりりん「――!!」

ハッ
443: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/28(金) 00:56:36.27 ID:EouE59/Y
……………

………

 

えみつん「……そうなんだ。ふりりん、自分に自信が無いんだね」

ふりりん「……はい。なんか、気が引けることが多くて」

ふりりん「ルビィのことも……大好きだし、追いつきたい、って、頑張ってるんですが……」

ふりりん「なんだか……私が、ルビィの足を引っ張ってるんじゃないか、って……」

えみつん「………」

えみつん「そっか。ふりりん、私とおんなじだねっ!」

ニコッ

ふりりん「……え?」

えみつん「私も、自分に自信が無いもの」

えみつん「私だって、いっつも悩んでた。穂乃果の魅力や想い、表現できてるかなって」

えみつん「ちゃんとみんなに、伝えられてるかなって」

ふりりん「そんな、えみつんさんが、まさか……!!」
444: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/28(金) 00:58:51.96 ID:EouE59/Y
えみつん「私の周りで、色んなことが、どんどん加速していって」

えみつん「穂乃果の背中を追うだけで、精一杯だったなあ」

ふりりん「……!」

ふりりん(私と、同じ……!)

えみつん「でもね。ファイナルが終わって、雑誌の企画で、穂乃果に手紙を書いたことがあったんだけど」

えみつん「その時に――ようやくね。穂乃果と、隣で肩を並べて話せてるような、そんな感じになったんだ」

ふりりん「隣で――」

えみつん「だからね。ふりりんも、きっと、大丈夫」

えみつん「自分と、ルビィちゃんを信じて、頑張れば――」

えみつん「きっと、ルビィちゃんの隣に立てる時が、来るよ」

ニコッ

えみつん「だから、ふりりんも――ファイトだよっ!」

 

……………

………
445: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/28(金) 01:00:45.12 ID:EouE59/Y
…ワアアアアアッ

 

ふりりん「………」

ふりりん(そうだ――いつだったか)

ふりりん(悩んでる私に、えみつんさんは、言ってくれた……)

グッ

ふりりん(――大好きな、ルビィ)

ふりりん(今までは、憧れの貴方に、追いつこうって必死だった)

ふりりん(だけど――いつか。貴方の、隣に立って)

ふりりん(今度は、ルビィのこと、支えてみせるって――絶対、約束するから!!)

 

えみつん(いくよ――)

えみつん(――ふりりん!)

ザッ…!
446: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/28(金) 01:01:41.08 ID:EouE59/Y
ふりりん(今は、自分を信じて)

ふりりん(私らしく。私が、出来ることを――)

 

えみつん「」

グワッ

 

ふりりん(――やってみせる!!)

 

スッ…!

 

くっすん「!!」

ダッ!!

 

そらまる(バントの構え――!!)

ダダッ!!

 

えみつん「!」

シュバッ!!
447: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/28(金) 01:03:25.76 ID:EouE59/Y
ふりりん(サードとセカンド、飛び出してきて――ショートは二塁ベースカバー)

ふりりん(――ここで!!)

スッ!

 

ひなひな『あっ!?』

あさみん(バットを、戻した――!!)

 

みもりん(――バスター!?)

 

ふりりん(力まないで――流せば、いい!!)

ふりりん(狙いは――“一・二塁間”!!)

ふりりん「うああああっ!!」

 

キィィンッ!!
448: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/28(金) 01:03:59.43 ID:EouE59/Y
あんちゃん「打った!!」

 

しゅか(抜けろっ……!!)

ダダダッ

 

ふりりん(――抜けろ!!)

 

そらまる「しまっ……!!」

そらまる「くっ……ああっ!!」

 

ザンッ!

 

ひなひな『抜けたぁぁぁぁぁっ!!!』

 

ウオオオオオッ!!!

ワアアアアアッ!!!

 

ふりりん「……っ!!」

ポロッ…!
449: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/28(金) 01:07:32.93 ID:EouE59/Y
ひなひな『打球は一・二塁間を抜けていく!!!』

ひなひな『好スタートを切っていた満塁のランナー!! まずは小林が還ってくる!!』

ひなひな『そして逢田も、三塁を回った、回ったぁ!!!』

 

ウオオオオオオッ!!!

 

うっちー「くっ……!!」

シュッ!!

 

ひなひな『ライトからボールが返ってくるが――間に合わないぃぃぃっ!!!』

ひなひな『逢田も、ホームイィィィン!!! 二者生還!! 斉藤は三塁へ!!』

ひなひな『つないだ、つないだ!! Aqoursのライブはまだ終わらなぁぁぁい!!!』

ひなひな『降幡、満塁の場面で、2点タイムリーヒットを放ちましたぁぁぁっ!!!』

 

ワアアアアアアアッ!!!

キャアアアアアアッ!!!

 

【μ's 13―11 Aqours】
450: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/28(金) 01:09:18.23 ID:EouE59/Y
あいにゃ「おっしゃあああああっ!!!」

ありしゃ「やった……!!」

すわわ「やった!!」

あんちゃん「あいあぁぁぁい!!!」

 

ひなひな『μ's守備陣の、完全に裏をかいた、降幡の見事なバスターヒット……!!』

あさみん『……降幡選手は、あの一瞬で、μ's守備陣の“穴”を計算したんです!』

あさみん『諏訪選手の打席で、諏訪選手がバントの構えを見せた時、前に飛び出してきたのはサードとセカンドだった。そのことを、覚えていた』

あさみん『負傷しているファーストの南條さん、ピッチャーの新田さんは動けない。そしてショートのPile選手は、ベースカバーに向かう』

あさみん『そうすると、必然的に、最も内野の中で隙が出来るのは、“一・二塁間”ということになる』

ひなひな『あいちゃんは、そこを狙って……!?』
451: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/28(金) 01:11:14.07 ID:EouE59/Y
あさみん『まず、降幡選手が、バントの構えを見せる』

あさみん『直前に鈴木選手がバントヒットを決めていること、また降幡選手自身もこの試合、犠牲バントとバントヒットを決めていることが伏線となり――』

あさみん『守備陣は、今回も降幡選手がセーフティバントを狙っていると咄嗟に判断し、バントシフトをとる』

あさみん『しかしそのバントシフトは、ピッチャーとファーストが動けない、不完全なもの』

あさみん『そして、バスターで打ち返す。無理にボールを引っ張らず、上手く流すことで、“穴”となる一・二塁間を狙った――』

あさみん『バスターにしたことで、結果としてバットをボールに当てやすくしたのも、功を奏しました』

ひなひな『あの一瞬で、そこまでのことを――!!』
452: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/28(金) 01:12:46.69 ID:EouE59/Y
あさみん『自らの、バントの技術に自信を持っていた――いや、自信が持てたからこその、ファインプレーでしょう』

あさみん『自分に出来ることは何か。自分にしか出来ないことは何か』

あさみん『それを考え――あきらめずに、自分の力を信じた』

あさみん『それが――Aqoursの未来を、つないだんです!』

ひなひな『あいちゃん……!!』

あさみん(彼女の中の――“眠る力”は)

あさみん(東京ドームに、立つことが出来れば。きっと、さらに大きく、開花するはず――!)

 

ふりりん「う、ひぐっ……!」

ふりりん(やった……やったよ……!)

ふりりん(私……ちょっとでも、ルビィに……近づけたかな……)

 

きゃん「ふりぃぃー!! サイコー!!」

きんぐ「泣くなー!!」

 

しゅか「……へへっ」

しゅか「引き立て役なんかじゃ、ないんだよ。あいあい」
453: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/28(金) 01:14:21.65 ID:EouE59/Y
ジョルノ(私とえみつんが、動けないことが、あだになっちゃったか……)

ジョルノ(しかし……咄嗟に、動けない私と、そらの間を狙って、流してくるとはね)

 

えみつん(ふりりん……)

ハァハァ…

えみつん(……頑張ったね)

クスッ

えみつん(……だけど……)

キッ…!

 

うっちー(だけど……)

 

りっぴー(ここまで……やるなんてね)

 

シカコ(何度、突き落とされても……)

 

くっすん(そのたびに……這い上がってきて)

 

ぱいちゃん(私たちの背中を――追いかけてきた)

 

そらまる(そして――いよいよ)

 

みもりん「」キッ…

みもりん(クライマックス――か)
454: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/28(金) 01:15:39.55 ID:EouE59/Y
ひなひな『9点差がっ……2点差になりました!!!』

ひなひな『9回裏、ツーアウトランナーなし!! 誰もが勝負あったと思った、絶望的な状態からの、Aqoursの猛反撃!!』

ひなひな『そしてついに、ついに、μ'sの背中が、見えるところまでやって来たのです!!!』

 

ワアアアアアアアッ!!!

ウオオオオオオオッ!!!

 

りきゃこ「来た……ここまで……!!」

すわわ「ここまで……つながった……!!」

きんぐ「勝てる……!! 勝てるよ!!」

 

ひなひな『ランナーは、一塁・三塁!!』

ひなひな『全て還れば同点!! そして、一発が出れば、逆転サヨナラという場面です!!』

ひなひな『そして――この、クライマックスの舞台』

ひなひな『そこに、立つのは――!!』

 

あんちゃん「―――」

ザッ

 

『3番、ピッチャー、伊波』
455: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/28(金) 01:16:25.87 ID:EouE59/Y
 

 

 

えみつん「………」

えみつん「……あんちゃん」

フッ

えみつん「また――戻ってきて、くれたんだね」

 

 

あんちゃん「えみつんさん――」

あんちゃん「これが――正真、正銘」

 

あんちゃん「最後の、勝負です――!」

 

 

  👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:1341adc37120578f18dba9451e6c8c3b)
467: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 16:40:49.81 ID:hLUfuD2k
ワアアアアアアアッ!!!

キャアアアアアアッ!!!

アンチャアアアアアンッ!!!

 

ひなひな『9回裏、長きに渡る激闘のクライマックス!!』

ひなひな『この局面、全てを賭けて打席に立つのは、Aqoursのリーダー、伊波杏樹!!!』

ひなひな『Aqoursの全てを背負って立つのに、彼女ほど相応しい人物はいないでしょう!!!』

 

すわわ「あんちゃん……!!」

りきゃこ「お願い!! 頑張って!!」

あいにゃ「あんちゃんだったら、絶対打てるよ!!」

きんぐ「こうなったら、ホームラン狙ってけ!!」

きゃん「お願い……お願い……!!」

ありしゃ「――私たちの、想い。Aqoursの、未来」

ありしゃ「あんちゃんに、託すから」

 

あんちゃん「………」

あんちゃん「任せて。みんな」

クスッ

 

あんちゃん「打つよ。私!」

 

ザッ…!
468: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 16:42:38.87 ID:hLUfuD2k
ウオオオオオオオッ!!!

ワアアアアアアアッ!!!

 

ひなひな『さあ、大歓声に迎えられながら、伊波が最後の打席に向かいます!!』

ひなひな『思えば、この9回のAqoursの、奇跡的な追い上げは、この伊波のヒットから始まりました』

ひなひな『小宮が鋭いヒットで続き、高槻が執念の内野安打で1点を返す』

ひなひな『トラウマを克服した逢田の2点タイムリー。諏訪は頭に死球を受けるも出塁、魔物を味方につけた小林も、ヒットを生みました』

ひなひな『足を痛めながらも、決死で駆け抜けた鈴木のバントヒット。粘る斉藤が、四球で望みをつなぎ――』

ひなひな『そして満塁から、降幡のバスターで、ついに2点差まで詰め寄ったのです!』

あさみん『……運よく、拾った点もあるかもしれません』

あさみん『しかし。あきらめない、伊波選手や鈴木選手の想いが、再びAqoursをひとつにし、一丸となって立ち向かったからこそ――』

あさみん『この、奇跡的な反撃を生んだのでしょう』

ひなひな『さあ果たして、“奇跡”は実を結ぶのか!?』

ひなひな『はたまた、厳しい現実が、Aqoursの前に立ちふさがるのか!?』

ひなひな『全ては、この新田と伊波、最後の対決にかかっています!!』
469: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 16:44:02.46 ID:hLUfuD2k
えみつん「………」

えみつん(最後の……勝負、か……)

フゥ…

えみつん(こうして、みんなと、一緒にいられるのも……あと、少し)

クス…

えみつん(最後は……勝ちたいな)

えみつん(あんちゃん……貴方たちに)

 

みもりん「………」

みもりん「……すみません。タイム、お願いします」

 

ザッ…

みもりん「……えみつん」

えみつん「!」

えみつん「すず……」

 

ひなひな『おや……これは?』

ひなひな『マウンドの、新田のもとに……キャッチャーの三森、そして内野陣のみならず』

ひなひな『外野も含めた――全員が、集まります』

ザワザワ…!!

 

8人「………」

えみつん「……みんな……」
470: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 16:45:50.26 ID:hLUfuD2k
えみつん「………」

えみつん「ごめん……ね」

えみつん「わがまま言って、投げさせてもらってるのに……点、取られちゃって……」

えみつん「みんなの、想いを……μ'sの名前を、背負ってるのに……」

8人「………」

シカコ「……なに言ってんだよ、えみつん!」

えみつん「……え?」

ぱいちゃん「さっきも言ったじゃん。えみつんがいたから、ここまで来れたんだって!」

りっぴー「この試合だけじゃないよ。ファイナルまで、ずっとウチらのこと、引っ張ってくれた」

うっちー「最後のマウンドを、任せられるのは……えみつん以外、いないよ」

えみつん「……!!」

ジョルノ「無茶すんな……とは、言ったけど。いいよ、ここまで来たら、気の済むまでやりなって」

くっすん「そうだよ!! μ'sに勝つなんて100まんねん早いって、見せつけてやれー!!」

そらまる「リーダーの、μ'sのカッコいいとこ、見せてやろうって!」

みもりん「……えみつん」

ニコ…

みもりん「最後は、思いっきり。えみつんの、好きな球を投げなよ」

えみつん「………」 

えみつん「みんな……」
471: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 16:47:33.74 ID:hLUfuD2k
えみつん「ありがとう……みんな」

えみつん「………」

えみつん「もうすぐ……この試合も、終わりなんだね」

みもりん「うん……」

えみつん「……久しぶりに、9人でこうやって集まって、思いっきり頑張って……」

えみつん「それも、もうすぐ終わりだって、思うと……」

えみつん「ちょっとだけ……さびしいね」

うっちー「………」

うっちー「――それは違うよ、えみつん」

うっちー「私たちは――μ'sは、ずっと終わらない」

うっちー「離れてても……みんな、つながってるもの」

りっぴー「……さっすが、うっちー、いいこと言う!」

ぱいちゃん「でも……そうだよね。忘れられるはず、ない」

くっすん「離れてたって……ずっと、一緒!」

えみつん「うん……うん……!」

えみつん「………」 

えみつん「……ね、みんな」

えみつん「手、つながない?」
472: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 16:50:33.32 ID:hLUfuD2k
グッ…

 

りっぴー「昔は、ライブの前。みんなで、こうして、手をつないでたっけ」

 

くっすん「こうやって、ずぅっと一緒に、頑張ってたよね。私たち」

 

ぱいちゃん「嬉しかったことも、楽しかったことも……」

 

ジョルノ「つらかったことも。泣いちゃったことも」

 

シカコ「毎日が、ドキドキで。冒険みたいだったよね、いつも」

 

そらまる「最初は、こんなにたくさんの人たちに応援されるなんて、夢のまた夢だったけど」

 

みもりん「そんな、無謀な夢から始まって……」

 

うっちー「奇跡のように、すべてがつながって……」

 

えみつん「また、この9人で」

えみつん「ううん。穂乃果たちも入れた、18人で――」

えみつん「こうやって、一緒のステージに立てたのは――」

えみつん「夢みたい、だね」
473: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 16:53:26.88 ID:hLUfuD2k
 

9人「―――……」

 

 

ひなひな『マウンドを囲み、手をつないだμ's――』

ひなひな『9人が――天を、見上げました』

ひなひな『その――見上げた、視線の先には』

ひなひな『天井越しに。どこまでも澄んだ青空が、広がっているのかもしれません――』

 

 

うっちー「ずっと――こうしていたいけど」

ジョルノ「だけど、ね。限られた時間の中で、輝くのが――」

りっぴー「スクールアイドル、だからね」

みもりん「そだね。そろそろ、今日のライブも、終わりだし」

シカコ「決着――つけて、やろーぜ」

えみつん「よし……!」

えみつん「行こう。9人で!!」
474: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 16:55:36.72 ID:hLUfuD2k
ワアアアアアアアアッ!!!

 

ひなひな『さあ、μ's守備陣、元のポジションに戻り――』

ひなひな『マウンド上には、新田!! ピッチャーの変更はありません!!』

ひなひな『μ's、最後まで、リーダーにその命運を託します!!』

 

えみつん「………」

 

あんちゃん(えみつんさん……!)

 

ひなひな『そして、その新田に挑むのも、リーダーの伊波!!』

ひなひな『こちらも、Aqoursの9人の想いを背負って、最後の打席に臨みます!!』

ひなひな『最後に迎えるのが、やはりこのリーダー同士の対決とは――もはや、運命と呼んで差支えないでしょう!!』
475: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 16:58:01.65 ID:hLUfuD2k
\プレイ!!/

 

ウオオオオオオオオッ!!!

 

ひなひな『審判の手が上がりました!!』

ひなひな『果たして勝つのは、新田か、伊波か!?』

ひなひな『μ'sか、Aqoursか!?』

あさみん『――おそらく、決まります』

あさみん『この対決で、全てが――!』

 

うっちー「えみつん……!」

 

ジョルノ「……いけ!!」

 

みもりん(思いっきり――ぶちかませ!!)

 

えみつん「」

ザッ…!

 

グワッ!!

 

ひなひな『ランナーがいるのに、振りかぶったぁぁぁ!!!』

ワアアアアアッ!!!

 

シュバッ!!
476: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 16:59:53.26 ID:hLUfuD2k
あんちゃん「――!!」

ブンッ!!

 

ズバァン!!

\ストライク!!/

 

ウオオオオオオオッ!!!

 

ひなひな『新田、振りかぶっての、渾身のトルネードから、全力のストレート!!』

ひなひな『対する伊波も、初球からフルスイング!!』

ひなひな『正に、真っ向勝負です!!!』

ひなひな『そして、新田の球速は――』

ひなひな『――138キロを計測!!!』

オオオオオオッ!!!

あさみん『ここに来て、またしても、球威を取り戻した――!!』

ひなひな『新田も、μ'sとしてのプライド、想い、全てを賭けて臨みます!!!』
477: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 17:01:15.93 ID:hLUfuD2k
きゃん「ああ……あんちゃん、あんちゃん……!!」

りきゃこ「きっと大丈夫……あんちゃんなら……!!」

あいにゃ「だって、私たちの……リーダーだもの!!」

 

シュバ!!

 

バシィッ!!

\ボール!!/

 

ひなひな『これはよく見た!! ボール!!』

 

すわわ「そうだ、しっかり狙って……!!」

きんぐ「いいぞー、あんちゃん!!」

ありしゃ「絶対、いける!!」

 

キィンッ!!

\ファール!!/

 

しゅか「そうだー!! こうなったらどんどん打ってけー!!」

ふりりん「あんちゃぁぁぁん!!!」
478: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 17:03:05.85 ID:hLUfuD2k
みもりん(コースとかっ……駆け引きとか、もういいっ!!)

みもりん(えみつんの、全力の球を! 気持ちを乗せた球に、勝るものなんて無い――!!)

 

くっすん「そうだよ!! 全力の、えみつんは――!!」

ぱいちゃん「絶対、無敵だから!!」

そらまる「声優界最強、舐めんなよ!!」

ジョルノ「えみつん……!!」

 

バシィッ!!

\ボール!!/

 

シカコ「がむしゃらにぶつかってやれ!! それがμ'sだし!!」

りっぴー「えみつんなら、きっとやってくれる!!」

うっちー「頑張れぇぇぇぇっ!! えみつぅぅぅん!!!」

 

ガキィッ!!

\ファール!!/
479: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 17:04:49.28 ID:hLUfuD2k
ウオオオオオオオオッ!!!

ワアアアアアアアアッ!!!

ミューズ!!! ミューズ!!!

アークーア!!! アークーア!!!

 

ひなひな『全力でぶつかり合う、両者の姿に――』

ひなひな『スタンドからは、μ'sコールと、Aqoursコールの、大合唱!!!』

 

えみつん(――ふふっ)

えみつん(体も、痛くて。全身、クタクタの、はずなのに――)

えみつん(――なんだか)

 

あんちゃん(――はい。えみつんさん)

あんちゃん(なんだか――)

あんちゃん(すごく、楽しいです)

 

シュバッ!!

 

キィン!!

\ファール!!/

 

ひなひな『新田の渾身のストレートに、全力のバッティングで喰らいついていきます、伊波!!!』

ワアアアアアアアアッ!!! 
480: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 17:07:30.83 ID:hLUfuD2k
えみつん「はっ、はぁ……!!」

クスッ…

 

あんちゃん「はぁ、ぜぇ……!!」

ニコ…

 

あさみん『……!?』

あさみん(ふたりとも……笑ってる……?)

 

あんちゃん(楽しいのは――きっと)

あんちゃん(憧れの、えみつんさんと。憧れの、μ'sと)

あんちゃん(こうして、真正面から、力をぶつけあえるからなのかな、って――)

あんちゃん(私は――千歌と同じ。ただ、μ'sが大好きなだけの、普通の女の子で)

あんちゃん(μ'sは――ライブに行くたび、元気と、勇気をもらえる、憧れの存在で)

あんちゃん(ずっと、μ'sみたいになりたくて――)

あんちゃん(くじけそうになったことも、たくさんあったけど)

あんちゃん(9人で、必死に、頑張ってきて)

あんちゃん(そして今、こうして、全力でぶつかりあえるのが――すごく、嬉しい!!)
481: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 17:09:49.01 ID:hLUfuD2k
えみつん(それは、私たちも、同じ――)

えみつん(ファイナルが決まった時は、悲しくて)

えみつん(2代目のグループが出来るって聞いた時も、正直、複雑な想いもあった)

えみつん(だけど――あんちゃんたちに会って。実際に、ライブを観て。確信できた)

えみつん(この子たちなら――私たちの、想いを)

えみつん(ラブライブを――きっと、受け継いでいって、くれるって)

えみつん(最初は、あんなに頼りなかった、貴方たちと――)

えみつん(こうして、全力でぶつかり合えるようになれたことが――)

えみつん(また、私たちが、全力のステージに立てたことが)

えみつん(すごく――嬉しい!!)

 

シュバ!!

 

ズバン!!

\ボール!!/

 

オオオオオオオオッ!!!
482: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 17:10:34.68 ID:hLUfuD2k
りきゃこ「ツーストライク……」

ありしゃ「スリーボール……!」

 

みもりん(フルカウント……!!)

 

えみつん「………」

フゥ…ハァ…

 

あんちゃん「………」

ゼェ…ハァ…

 

ザワザワ…

ザワ…

 

シィィィ……ン

 

あさみん『……!!』

ひなひな『フルカウント……!』

ひなひな『大歓声から、一転……場内、水を打ったように、静まり返ります……!』
483: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 17:12:01.42 ID:hLUfuD2k
えみつん「ふぅ、はぁ……」

ニコッ…

 

あんちゃん「……!」

 

えみつん「あんちゃん――」

えみつん「次の、球」

えみつん「全力の、全力で――いくね」

 

あんちゃん「――はい!」

あんちゃん「望むところです。私も――」

あんちゃん「思いっきり――!!」

 

うっちー「えみつん……!」

 

しゅか「あんじゅ……!」
484: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 17:13:01.41 ID:hLUfuD2k
ザッ!!

 

えみつん(――ありがとう)

えみつん(あきらめないでいてくれて。全力で、ぶつかってきてくれて)

 

グワッ…!!

 

えみつん(貴方たちとの、ライブ――)

 

シュバッ!!

 

えみつん(――楽しかった!!)

 

 

あんちゃん「――!!」

 

ブンッ

 

 

カッッ

 
485: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 17:16:02.45 ID:hLUfuD2k
 

 

キンッ

 

 

あんちゃん(――Dear えみつんさん)

 

 

あんちゃん(私は――μ'sが)

あんちゃん(ラブライブが、大好きです)

 

 

あんちゃん(色んなステージで、まぶしいくらい輝いていたμ'sを見て)

あんちゃん(どうしたら、そうなれるのか)

あんちゃん(えみつんさんみたいなリーダーになれるのか)

あんちゃん(ずっと、考えてきました)

 

 
486: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 17:17:55.94 ID:hLUfuD2k
ワアアアアアアアッ!!!

 

ひなひな『打球が大きく上がったぁぁぁーー!!!』

ひなひな『右中間、伸びる、伸びる!!!』

 

 

あんちゃん(――やっと、わかりました)

あんちゃん(“私”で。“私たち”で、いいんですよね)

 

 

ドカッ!!

 

ひなひな『フェンス直撃ぃぃぃぃ!!!』

ひなひな『塁上のランナー、全力で走る!!!』
487: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 17:18:34.46 ID:hLUfuD2k
 

 

あんちゃん(大切な、仲間たちと一緒に)

あんちゃん(目の前の、景色を見て)

あんちゃん(まっすぐに、走り続ける)

 

 

ひなひな『三塁ランナー、ホームイン!!!』

ひなひな『一塁ランナーも、還ってくる!!!』

 

 

あんちゃん(それが、μ'sなんですよね)

あんちゃん(それが、輝くってことなんですよね)

 

 
488: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 17:19:34.08 ID:hLUfuD2k
ウオオオオオオオオッ!!!

 

ひなひな『ライト内田、ボールをとって――』

ひなひな『投げたぁぁぁっ!!!』

 

 

あんちゃん(だから、私たちは。私たちの、景色を見つけます)

あんちゃん(あなたの背中ではなく――)

あんちゃん(自分だけの景色を探して、走ります)

 

 

ひなひな『そして、打った伊波も、三塁を――』

ひなひな『回った、回ったぁぁぁっ!!!』

ひなひな『ピッチャー新田、ボールを中継して――』

ひなひな『バックホォォォォム!!!』
489: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 17:21:16.40 ID:hLUfuD2k
 

 

あんちゃん(みんなと――)

あんちゃん(大切な、仲間と、一緒に)

 

 

ズザザザザッ!!

バシィッ!!

ドカッ!!!

 

 

あんちゃん(――いつか)

あんちゃん(いつか――)

 

 
490: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 17:21:57.06 ID:hLUfuD2k
 

 

審判「アウトォ!!!」

 

審判「ゲーム――セット!!!」

 

 
498: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 17:37:57.01 ID:ovGLUFDZ
 

シィ……ン

 

あんちゃん「………!!」

みもりん「………!!」

 

えみつん「――!!」

 

あさみん(審判の――宣告の、のち)

あさみん(一瞬、広い球場内は、静寂に包まれた)

あさみん(そして――審判の言葉の、意味を理解した、Aqoursナインは)

あさみん(ひとり、またひとりと、その場に、膝を崩した――)
499: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 17:38:25.47 ID:ovGLUFDZ
あんちゃん「………」

 

しゅか「………」

ふりりん「………」

ガクッ…

 

ありしゃ「………」

すわわ「………」

きんぐ「………」

ガク…

 

りきゃこ「………」

あいにゃ「………」

きゃん「………」

ズルッ…
500: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 17:39:12.54 ID:ovGLUFDZ
ひなひな『ゲーム――セット!!!』

 

…ワァァァァァッ!!

 

ひなひな『新田の投じた、渾身の1球――』

ひなひな『伊波のフルスイングがとらえた打球は、あわやホームランかという大きな当たり』

ひなひな『スタートを切っていた、三塁ランナー斉藤、一塁ランナー降幡が、ホームイン――』

ひなひな『しかし――μ'sは最後まで、気を緩めることはありませんでした』

ひなひな『ライトの内田が、熱投で痛む肘をものともせず、内野に返球』

ひなひな『中継したピッチャーの新田が、全力のバックホーム』

ひなひな『そして、しっかりとボールを受けたキャッチャー三森が、本塁に突入してきた伊波の生還は許さず、がっちりとブロック』

ひなひな『μ'sの2年生組がつないだリレーが、Aqoursのサヨナラを阻止したのです――』

ひなひな『最終的な、スコアは――』

ひなひな『――13対13――!』
501: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 17:39:58.93 ID:ovGLUFDZ
あんちゃん「………」

ガク…

 

ひなひな『奇跡は――起こりませんでした』

あさみん『………』

あさみん『――しかし。9回ツーアウトランナーなしという、絶望的な状況から――』

あさみん『実に9点差を追いついた、Aqoursの執念と情熱は、本当に素晴らしかったです』

あさみん『一度はあきらめ、バラバラになったチームが――ちっぽけな希望を信じて、再びひとつになって、μ'sを最後まで追い詰めた』

あさみん『彼女たち、Aqoursでなければ、なしえなかったことだと思います』

あさみん『また、それを真正面から受け止め、最後まで戦い抜いたμ'sも、同じく素晴らしい――』

あさみん『伝説の、伝説たる強さ、大きさを、はっきりとAqoursに示しました』

あさみん『本当に――両チームとも、素晴らしいチームでした――!』
502: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 17:41:01.61 ID:ovGLUFDZ
あんちゃん「………」

あんちゃん(……勝てなかった)

あんちゃん(“奇跡”は……起こせなかった……)

 

えみつん「――あんちゃん」

 

あんちゃん「……!」

ハッ…

 

あんちゃん(私が、顔を上げると――)

あんちゃん(そこに、いたのは。三森さんと内田さんに、体を、支えられている――)

あんちゃん(えみつんさん、だった)

 

あんちゃん「えみつんさん……」

 

えみつん「……あんちゃん」

えみつん「いい試合だったね」

ニコッ
503: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 17:41:29.91 ID:ovGLUFDZ
あんちゃん「えみつんさん、その……体は……!!」

えみつん「大丈夫――と、言いたいところだけど」

うっちー「無茶しちゃったからね。とーぶん、ゆっくりしないとね」

みもりん「うっちーが、それ言う?」

あんちゃん「えみつんさん……」

あんちゃん「……ごめんなさい。こんな、私たちと試合してくれるために……こんな、無茶を……」

あんちゃん「なんて言ったらいいか、私……!」

えみつん「………」

えみつん「……謝らないで。あんちゃん」

えみつん「だって、私たち。すっごく、楽しかったもの!」

あんちゃん「……!!」

ハッ
504: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 17:42:06.16 ID:ovGLUFDZ
りっぴー「最後、あれだけ粘るなんてねー。びっくりしちゃった!」

そらまる「そうだぞー、ほめてつかわす!」

あんちゃん「……!」

あんちゃん「μ'sの、皆さん……」

えみつん「………」

えみつん「……私が。私たちが、Aqoursのみんなに、野球の試合を申し込んだ理由」

えみつん「それは、東京ドームに立つ前に――みんなに、大切なことを、知ってもらいたかったから」

 

しゅか「……!?」

ふりりん「大切な、こと……?」
505: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 17:43:14.86 ID:ovGLUFDZ
りっぴー「昔のウチらも、そうだったからさ」

シカコ「きっとこの先も、みんなの周りは、どんどん目まぐるしく変わっていく」

そらまる「同時に、色んな困難だって、降りかかってくる」

ぱいちゃん「大きな壁や、強敵に、ぶちあたることだってあるし――」

ジョルノ「たくさんの、いわれのない批判や、心無い言葉を浴びせられることだってある」

 

ありしゃ「………」

すわわ「………」

きんぐ「………」

 

くっすん「――そういう時! そんな、困難とかをぶっとばして、乗り越えられるように!」

みもりん「最後まで、あきらめない、強い気持ち」

うっちー「そして、仲間と、自分自身の力を信じて――本当の意味で、ひとつになる、チームワーク」

えみつん「そういうことを……改めて、みんなに、知って欲しかった」

 

りきゃこ「………」

あいにゃ「………」

きゃん「………」
506: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 17:44:31.64 ID:ovGLUFDZ
えみつん「……だけど。もうみんな、知っていたことばかりだったのかもしれないね」

ジョルノ「こっちも、全力で。手を抜かずに、やったけど」

みもりん「たとえ、絶望的な状況に立たされても――そこから、這い上がり、立ち向かっていく強さ」

うっちー「十分、見せてもらったよ」

 

あんちゃん「………」

あんちゃん「皆さん……」

 

うっちー「……まあ、もし私たちに勝てなかったら、東京ドーム取りやめにさせるっていうのは、本気だったけど」ニヤ

あんちゃん「え゛」

みもりん「ねー、ファイナル終わって2年も経つウチらに負けてるようじゃ、ドームなんてねぇ」ニマニマ

えみつん「私たちが勝ったら、思い切ってドームで歌っちゃおうかとか言ってたしねー」プークスクス

あんちゃん「おお……」

 

ふりりん(やっぱ……この人たち……)

しゅか(ただもんじゃない……)

 

シカコ「ひひひ。ウチらに負けてたら、ドームライブ絶対阻止しようと思ってたもんねぇー」ギラッ…

りっぴー「ねー! どんな手を使っても……」ギラッ

そらまる「くっくっく……!!」ギラッ!

 

きゃん「………」

きんぐ(こえー……)
507: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 17:45:04.98 ID:ovGLUFDZ
えみつん「……ま、それはさておき」

コホン

えみつん「そんな感じでね。みんなに、野球対決を申し込んだんだけど」

えみつん「実際、試合してたら、ほんっっとうに楽しくなっちゃって!」

みもりん「Aqoursのみんなも、なかなかやるじゃん!ってなってきてねー」

うっちー「私たちも、全力でプレーできたの。負けたくない!って、本気で思えたしね」

ジョルノ「……ありがとね。私たち9人に、またこうして、本気で挑めるステージをくれて」

あんちゃん「………」

あんちゃん「皆さん……」
508: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 17:46:32.14 ID:ovGLUFDZ
くっすん「ま、結局、私たちには勝てなかった訳だけれど」ドヤッ

ぱいちゃん「負けもしなかった訳だしね」

えみつん「だから、ね。あんちゃん――Aqoursの、みんな」

えみつん「東京ドーム――思いっきり、楽しんできて!」

 

あんちゃん「……!!」

 

ジョルノ「この試合、一丸になって戦ったみんななら、大丈夫」

えみつん「東京ドーム、丸さを楽しんでね!!」

そらまる「そうそう、とにかく丸いから!!」

うっちー「お客さん、一面のキラキラで、すっごく綺麗なんだよ~♪」

えみつん「とにかく、すごいからね!!」

 

あんちゃん「あ……」

あんちゃん「ありがとうございます!!」

バッ!

 

きゃん「やっ……!!」

しゅか「たあああああああっ!!」

ダダダダッ!
509: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 17:47:41.17 ID:ovGLUFDZ
きゃん「あんちゃん、やった、やったよおおおお!!!」

あいにゃ「東京ドームだあああああ!! わああああん!!!」

きんぐ「きゃん、あいなちゃん、泣くな泣くなー!!」

ふりりん「あんちゃん、流石!! よくぞ打った!!」

しゅか「だけど、最後の本塁狙ったのは暴走気味だったんじゃないのー!?w」

あんちゃん「そ、そんなことないし!!」

りきゃこ「私たち……立てるんだ……!!」

すわわ「東京ドーム……!!」

ありしゃ「あの日、μ'sが、立ってた場所へ!」

あんちゃん「よぉぉーっし!!」

あんちゃん「行くぞ!! 東京ドォォォォム!!!」

 

ワアアアアアアッ!!

 

ひなひな『伊波のもとに集まり、喜びを爆発させるAqoursの9人!!』

ひなひな『μ'sの、想いを受け継いで――』

ひなひな『ついに、東京ドームの舞台に立ちます!!』

あさみん『この試合を通じて。改めて、諦めずに立ち向かう想いと、仲間との絆を強めた、9人なら――』

あさみん『きっと、大丈夫でしょう。さらに大きく、羽ばたいてくれるはずです――!』
510: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 17:48:28.31 ID:ovGLUFDZ
うっちー「……ふふっ」

ぱいちゃん「でも、なーんかね。ちょっとだけ、思っちゃうんだよねー」

りっぴー「ウチらが、勝ってたら――また、9人でドームに立てたかも、って」

シカコ「まーね。でもそれは、言いっこなし」

ジョルノ「あの時の、あの瞬間は、私たちだけのものだし」

みもりん「それを、大切にしたいって気持ちも――確かだしね」

くっすん「仕方ない。今回は、後輩たちに譲ってあげよう!」ドヤッ

そらまる「ウチらの後を継いで、ドームに立つからには、中途半端なライブじゃ承知しないんだからなー」

うっちー「私たちの思いも、受け継ぎつつ――」

えみつん「きっと、あんちゃんたちは――あんちゃんたちだけの景色を、ドームで、見つけてくれるよ!」

 

ワアアアアアアッ!!

パチパチパチッ!!

 

ひなひな『9回の激闘を戦い抜き、素晴らしい試合を見せてくれた、μ'sとAqours、両チームのナインに――』

ひなひな『スタンドからは、万雷の拍手が鳴り響いています!!』
511: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 17:49:07.07 ID:ovGLUFDZ
審判「それでは――」

審判「両チーム、整列!!」

 

ひなひな『両チームのナインが、改めて向かい合い、整列いたしました!!』

ひなひな『――素晴らしいピッチングがありました。バッティングがありました。守備がありました』

ひなひな『勝利を願う執念がありました。絶対に負けないという、あきらめない想いがありました』

ひなひな『この試合で、両チームが見せてくれた、すべてのプレーが――』

ひなひな『心を揺さぶってやまない、名場面だったといえることでしょう!!』

 

ワアアアアアアッ!!

パチパチパチッ!!

 

ひなひな『スコアは――13対13!!』

ひなひな『μ'sと、Aqours。どちらも、勝利者と呼ぶに、ふさわしい』

ひなひな『――見事な、引き分けでした!!』
512: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 17:50:00.59 ID:ovGLUFDZ
審判「――礼!!」

 

 

μ's「本日は!!!」

 

Aqours「本当に!!!」

 

18人「ありがとうございましたぁぁぁぁっ!!!」

 

 

ワアアアアアアッ…

パチパチパチパチ…
513: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 17:51:00.03 ID:ovGLUFDZ
 

1542035129-レス513画像

 

μ'sバッテリー:内田、新田 ― 新田、三森

Aqoursバッテリー:伊波、小宮、伊波 ― 逢田

本塁打:新田(1回)、南條(8回)

 
514: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 17:53:46.41 ID:ovGLUFDZ
 

 

あんちゃん(月日は、流れ――)

あんちゃん(私たち、Aqoursは)

あんちゃん(東京ドーム公演、本番を迎えました)

 

 
515: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 17:54:25.00 ID:ovGLUFDZ
~2018.11.18 東京ドーム~

 

あんちゃん(2日間に及んだ東京ドーム公演も、ここまでは大成功!)

あんちゃん(私たちは、2日目ラストの、お知らせ発表に臨んでいました)

 

ありしゃ「行きますわよぉ……」ドヤァ

ありしゃ「生徒会長パワー!! はぁ!!!」

 

シーン

 

ありしゃ「……鳴りませんわ」

キーンコーンカーンコーン

 

\ワハハハ/

 

8人「wwwwwwwww」
516: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 17:55:24.66 ID:ovGLUFDZ
\ドン!!/

『Aqours World LoveLive! ASIA TOUR 2019開催決定!!』

 

\ドドン!!/

『Aqours 5th LIVE開催決定!!』

 

あんちゃん「そしてそして~!!」

あんちゃん「なんと、私たち……!!」

 

\ドドーン!!/

『NHK紅白歌合戦 出演決定!!!』

 

ワアアアアアアッ!!!

 

あいにゃ「やったね~!!」

きゃん「紅白だよ、紅白!!」

あんちゃん「嬉しい~~!!」

 

 

 

???『ちょぉっと、待ったぁぁぁぁぁっ!!!』
517: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 17:56:10.49 ID:ovGLUFDZ
しゅか「……へっ!?」

きんぐ「え、なに、今の」

ふりりん「ま、マジで聞いてない、聞いてない……」

りきゃこ「……あ!! ちょ、ちょっと、モニター見て!!」

 

ザザッ…

 

えみつん『その、紅白出演!!』

えみつん『ちょっと、待たれよ!!』

 

あんちゃん「え、」

9人「えみつんさん!?!?」

 

ウオオオオオオッ!!!

ワアアアアアアッ!!!

エミツゥゥゥンッ!!!
518: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 17:56:57.06 ID:ovGLUFDZ
みもりん『えー、ひとまずは、Aqours……ダッタッケ?……の、みなさん』

うっちー『紅白出演決定、おめでとうございます♪』

 

ふりりん「な……な……!」

すわわ「他のμ'sの、皆さんまで……!?」

 

くっすん『……だが!! 私たちは、思ったのです!!』エッヘン

ぱいちゃん『紅白といえば、選ばれたアーティストのみが立つことを許される、憧れの舞台!』

そらまる『果たして、Aqoursのみんなが私たちみたいに、あの紅白という大舞台に立つ資格があるのかどうか?』

 

りきゃこ「ま……」

しゅか「まさか……!?」

 

えみつん『……という訳で!! 改めて、紅白出場資格を賭けて!!』

えみつん『野球で、勝負だぁぁぁっ!!!』

 

Aqours「ええええええ!?!?」
519: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 17:57:43.25 ID:ovGLUFDZ
ジョルノ『……ま、ぶっちゃけて言うと、この間の試合で勝てなかったのが悔しい人が、結構多いみたいで……私は別に……』

シカコ『何言ってんの、よしのん!! やるからには勝つよ、絶対!!』

りっぴー『まあ、そんな感じなのでぇ。Aqoursのみんな、改めて、よろしくね♪』

 

ワアアアアアアッ!!!

ウオオオオオオッ!!!

 

あいにゃ「え……ちょ……」

きんぐ「ま、マジで……!?」

 

 

???「――その話!!」

???「ちょっと、待ったぁぁぁっ!!!」
520: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 17:58:33.46 ID:ovGLUFDZ
デンデンデンデン

デンデンデンデン

\サイコーダトイワレタイヨ/

\シンケンダヨWe gotta go!/

 

ひなひな「紅白出場権を賭けた、野球対決なら――!!」

あさみん「今回は、私たちも――参戦させてもらうわ!!」

 

あんちゃん「なぁっ!? アサミさん!?」

ふりりん「ひなひなも!?」

 

ウオオオオオオッ!!!

アサミィィィンッ!!!

ヒナヒナァァァッ!!!
521: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 17:59:33.33 ID:ovGLUFDZ
あさみん「いやあ、みんな、この間の試合、ほんとすごかった!!」

あさみん「なんかみんなの試合を見てる内に、野球好きの心に火が点いちゃってね!!」

ひなひな「という訳なので。私も、紅白って一度出てみたいし」

ひなひな「みんな、姉様のわがままに、付き合って欲しいなー、なんて」

 

きゃん「いやいやいや!! Saint Snowって、2人しかいないじゃん!!」

しゅか「どうやって試合するつもりなの!?」

 

ひなひな「まあ私は、九九組のみんなに声かければ、なんとか……」

あさみん「私も、知り合いの阪神の選手に頼んで、助っ人を……」

 

きんぐ「いやいやいや、駄目だろそれ!!」
522: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 18:01:35.88 ID:ovGLUFDZ
???「――そういうことなら!!」

???「私たちも、試合を申し込みます!!!」

カッ!!

 

りきゃこ「こ、今度は何ー!?」

すわわ「あそこ、関係者席に、ライトが当たって……!!」

 

あぐぽん「私たちも、μ'sとAqoursの皆さんの、ライブや試合を見て、感動しました!!」

ともりる「憧れの先輩方にぃ、追いつけるようにー!!」

あかりん「私たちも、野球で挑みたいです!!」

 

きゃん「げっ!? 虹ヶ咲まで!?」

きんぐ「あーもう、めちゃくちゃだよー!!」

しゅか「どうするの、あんじゅ!?」

あんちゃん「……!!」
523: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 18:02:12.98 ID:ovGLUFDZ
あんちゃん「……決まってるよ」

あんちゃん「私たちは、もう、負けない。迷わない」

あんちゃん「たとえ、この先、どんな困難が待ち受けてても――どんな、強敵が挑んできても――」

あんちゃん「この9人なら、絶対大丈夫!!」

あんちゃん「みんなを信じて――」

あんちゃん「私たちだけの景色を、もっと、もっと、見つけに行くんだから!!」

 

しゅか「……あーあ」クスッ

ありしゃ「……まあ、でも」

りきゃこ「そうこなくっちゃ、ね!」

 

えみつん『……ふふっ』

えみつん『うん! あんちゃん、いい返事だねっ!!』
524: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 18:02:49.55 ID:ovGLUFDZ
 

 

えみつん『――それでは!!』

えみつん『紅白歌合戦で、ライブをしたければ……!!』

 

あんちゃん「野球で――勝負!!」

 

 

 

~おしまい~
525: 名無しで叶える物語(プーアル茶) 2018/12/31(月) 18:03:57.28 ID:ovGLUFDZ
東京ドーム公演の前に完結させたいと思っていましたが、ここまで長くなってしまったのは予想外でした
しかし、なんとか紅白前に完結させることが出来て良かったです
読んで頂いた方、どうもありがとうございました

いつか、スクールアイドル合同の野球大会や大運動会が見てみたいですね

そして、紅白の舞台に挑むAqoursを応援しています
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