小林「異世界召喚?」

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善子-アイキャッチ17
1: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/12(月) 21:52:43.10 ID:aGsJ69ZC
小林「あれ、ここどこ?」

小林「森の中?なんで?」

小林「おっかしいなー、散歩してたはずなのに」

小林「東京にこんなとこあったっけ」

小林「スマホで位置確認しよっと」

小林「……でない」

小林「もしかして、迷子?」

小林「ヨハちゃんと同じで不幸な目にあってるんだ!」

小林「いやー、困っちゃうなー」

元スレ: 小林「異世界召喚?」

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4: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/12(月) 21:59:45.91 ID:aGsJ69ZC
ガサガサ

小林「ん?何?」

揺れた草むらの方へと小林が視線を向けると、見慣れない生き物が姿を見せる。

粗末な木の板と錆び付いた剣を握った、醜悪な小鬼。

小林を見つけると、ギィギィ、と汚らしい声を上げる。

小林「うわー、なにあれ」

小林「あんな生き物いたかなー」

小林「あ、分かった!これ映画のロケだ!」

小林「おーい!こんにちはー!」
5: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/12(月) 22:08:06.41 ID:aGsJ69ZC
無論、これは映画の撮影などではない。

無警戒に手を振っている小林は小鬼……この世界では『ゴブリン』と評されるモンスターの格好の餌でしかないのだ。

ゴブリン「ギギィ!」

小林「え、なに?」

ボロボロの剣を振り上げて小走りに駆けてくるゴブリンを見て、流石の小林も少しだけ焦りを覚える。

恐怖に駆られ駆け出した小林を、ゴブリンは夢中になって追いかける。

小林は知らないが、ゴブリンと呼ばれる生き物にはメスがおらず、他種族のメスを苗床にして繁殖させるのだ。

つまり、今は小林が思っているよりも遥かに危険な状態なのである。
6: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/12(月) 22:18:55.94 ID:aGsJ69ZC
小林「うわっ!?」

必死に走っていたせいで足元の小石に躓き、小林は地面へと倒れ込んだ。

普段であれば『リトルデーモンだから仕方ないよねー』と喜ぶところではあるが、命の危険を感じている今では喜ぶことができない。

小林「ひっ!」

慌てて起き上がろうとするが、目の前にはもうゴブリンが迫っており、間に合わないことが明白である。

小林「ま、まって!やめっ!」

振りかぶらた剣から身を守るように、右手を前へと突き出す。

本来であればそれは無意味な行為。

だが、今回は結果が違った。

突き出した右手からは、漆黒の剣が飛び出し、ゴブリンの胸を貫いていた。
8: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/12(月) 22:27:43.16 ID:aGsJ69ZC
ゴブリン「ギィ……」

苦しそうな悲鳴と共に血肉を飛び散らせ、ゴブリンは肉塊へと変わる。

小林「嘘……なにこれ……」

無意識に作り出した『剣』。それが目の前の化け物を殺した。

小林「私がやったの?」

醜い生き物とはいえ、人型の生き物である。

常人であれば、罪悪感に晒されることであるだろう。

ましてや小林は争いの無い世界にいたこともあり、生き物を自分で殺したという現実が重くのし掛かるはずである。

小林「凄い、なにこの剣!ヨハちゃんみたい!やっと私も本物のリトルデーモンになれたのね!」

しかし小林は常人ではなく、ただのアホであった。
9: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/12(月) 22:34:26.80 ID:aGsJ69ZC
小林「それにしても、本当にここ何処なんだろう」

小林「ヨハちゃんがいればいろいろ教えてくれるのになー」

善子『呼んだわね、小林』

小林「ヨハちゃん!ヨハちゃんも一緒に迷子になってたんだね!」

善子『迷子じゃないわよ』

善子『私たちは異世界召喚されたのよ』

小林「異世界召喚?」

善子『ええ。ここは私たちのいた世界じゃない』

善子『異世界よ』
11: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/12(月) 22:45:58.85 ID:aGsJ69ZC
小林「へー、そうなんだ」

善子『それより、私たちはこれからこの世界で生きていかなくちゃいけないわ』

善子『まずは街に行くわよ』

小林「どっちに行けばいいの?」

善子『北よ。それより、ゴブリンの耳を切り落として持っていきなさい』

小林「なんで?」

善子『こういうのは定番なのよ』

善子『討伐した証拠をギルドに持って行ってお金を貰うの』

小林「うん、分かった!」
16: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/12(月) 22:54:05.36 ID:aGsJ69ZC
~ギルド~

小林「こ、こんにちは~」

小林(怖い人がいっぱいいる……)

善子『カウンターに行くのよ、小林』

小林「うん」

小林「あのー、すいません」

受付嬢「はい、どうしました?」

小林「えーと、ギルドに登録したいんですけど」

受付嬢「分かりました。こちらに必要事項を記入してください」

小林「はーい」

小林「えーと……名前は『小林愛香』で、職業は『リトルデーモン』っと」

受付嬢「…………」

小林「好きな物は『ヨハちゃん』でー」

受付嬢「そんな項目はありませんので結構です」
17: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/12(月) 23:01:15.23 ID:aGsJ69ZC
小林「結構簡単になれたねー」

小林「ヨハちゃんはギルドに登録しなくて良かったの?」

善子『私はいいわよ。小林が活躍してるのを見てるわ』

小林「ヨハちゃんに見られてるんなら頑張らないとね!」

小林「今日はもう宿に泊まっちゃおうか」

小林「あそこでいいよね?」

善子『何処でもいいわよ』

小林「すいませーん、泊まりたいんですけど」

店主「はいよ。一泊でいいかい?」

小林「はい。部屋は同じでお願いします」

店主「は?」
20: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/12(月) 23:08:02.87 ID:aGsJ69ZC
店主「連れの人がいるのか?」

小林「いるよー」

店主「どこに?」

小林「え、ここに」

店主「???」

小林「???」

店主「あー……」

店主「分かった。一部屋な。うん」

店主「ほれ、鍵だ」

小林「はーい」

店主「その、なんだ、辛いことばっかりかもしれないけど頑張ってくれよ」

小林「?ありがとうございます?」
23: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/12(月) 23:21:31.89 ID:aGsJ69ZC
小林「なんかおかしな人だったねー」

善子『そうね。まあ別にいいじゃない』

善子『それよりも、明日からのことを考えないと』

小林「何しよう?」

善子『そうね、まずはギルドで依頼をこなしつつ、情報を集めましょう』

小林「はーい」

小林「そうだ、ベッド一つしかないけど大丈夫?」

善子『いつも通りじゃない。寝相で蹴飛ばさないでよ』

小林「いやいや寝相はいい方だって」

善子『はいはい、分かってるわよ』

小林「ヨハちゃーん、大好きだよー」

善子『知ってるわ』
26: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/12(月) 23:40:48.59 ID:aGsJ69ZC
~数日後~

小林「ヨハちゃん!今日はこの依頼受けよっか!」

善子『そうね。小林は強いからちょっと難しめのやつでも大丈夫よ』

善子『立派なリトルデーモンになれたみたいね』

小林「うんうん、ヨハちゃんのお陰だよ」

小林「なんだっけ、なんとかズリーとかいうモンスターも倒せたもんね」

善子『グリズリーよ。Dランクのモンスターね』

善子『あれを簡単に倒せるってことは、割と強いってことよ』

小林「へー、そうなんだ」
28: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/12(月) 23:51:05.34 ID:aGsJ69ZC
~湿地~

小林「ヨハちゃん!行くよ!」

善子『ええ、リトルデーモンの力、見せてあげなさい!』

小林がの視線の先にいるのは、人型をした緑色の蜥蜴、いや、竜と言い換えた方がいいのだろうか。

緑色の鱗に覆われた皮膚を持ち、三俣の槍を侵入者である小林へと構えているその生き物は、リザードマンと呼ばれている。

一匹一匹はDランクと評されているが、群れとなれば危険度は一気に跳ね上がる。

ましてや、ここはリザードマンの巣。数は軽くみても50はくだらないだろう。
30: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/13(火) 00:08:00.43 ID:+zCQ7Iv7
だが、その数を見ても小林に恐れはない。

なぜなら、どれだけリザードマンがいたところで脅威ではないと分かっているからだ。

小林「闇へと還りなさい、【煉獄の焔】!」

翳した右手から闇の焔が迸り、巣全体を包み込んだ。

それは一言で言うなら『虐殺』だろう。

闇に飲み込まれたリザードマンは一瞬のうちに灼け爛れ、その命を削り取られる。

水の中へと逃げ込んでも結果は変わらない。水の中でも燃え盛る煉獄の業火は、一匹残らず全てのリザードマンを燃やし尽くした。

小林「よーし、今日も依頼達成できたね!」

善子『流石小林ね。これならギルドのランクもすぐに上がりそうよ』
38: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/13(火) 22:55:33.76 ID:+zCQ7Iv7
この世界のモンスターは危険度によってランク分けされている。

下はFから上はSSランクまで。

一般人から見ればFランクでも脅威であり、Dランクモンスターをこれだけ一方的に虐殺できる小林の強さは相当なものだろう。

善子『何か来るわよ、小林!』

小林「ほえ?」

小林が間の抜けた声を出すと、突如地面を抉り取るような轟音が響く。

巻き上げられた砂塵の先にいたのは、巨大な体躯にビッシリと黒い鱗を生やした巨大な生き物。

本物のドラゴンであった。
39: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/13(火) 23:01:54.53 ID:+zCQ7Iv7
小林「ドラゴン!ヨハちゃん、本物のドラゴンだよ!」

漫画やアニメの中でしか見たことがない伝説の生き物が目の前におり、小林は興奮を隠すことができない。

ましてや、善子もドラゴンが好きだった記憶があり、小林の頭の中には危機感よりもドラゴンを間近で見れたという喜びが優っていた。

善子『そんなこと言ってる場合じゃないわよ!逃げなさい!』

小林「なんで?」

小林はこの世界に疎く、モンスターの強さにイマイチピンと来ていない。

ドラゴンだから強い、という意識はあるが、今までの戦いのせいでモンスターを脅威と感じることがないのだ。

善子『ドラゴンだから強いに決まってるでしょ!』

小林「大丈夫だって。【堕天使の息吹】!」
40: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/13(火) 23:11:18.65 ID:+zCQ7Iv7
禍々しく黒ずんだ冷気が大気を走り、あらゆる物を凍り付くしていく。

小林は今回もこれで勝てると勝利を確信しており、目の前のドラゴンがSランクに分類されるものだとは知らなかったのだ。

ドラゴン「ゴァァァァァァァァッッッ!」

空気を切り裂くような咆哮と共に、口から炎のブレスが吐き出され、凍り付いた大地が灼熱へと包まれる。

小林の冷気はそのブレスと相殺され、後には無傷のままのドラゴンがその場にいた。

小林「え、嘘」

善子『逃げるのよ、小林。まだあいつと戦う時じゃないわ』
41: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/13(火) 23:18:25.17 ID:+zCQ7Iv7
小林「いやいやいや!なんで!?リトルデーモンパワーが効いてない!?」

善子『いいから早く逃げなさい!』

小林「ていうかなんでドラゴンがここにいるの!?普通そういう強いのは最後の方でしょ!?」

善子『ここはゲームじゃないのよ。いい加減目を覚ましなさい』

小林「助けてヨハちゃん!」

善子『小林ならなんとかできるわ』

小林「本当!?」

善子『……うん。本当よ。多分』

小林「じゃあこいつを退治……きゃっ!?」
42: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/13(火) 23:25:18.13 ID:+zCQ7Iv7
振り向こうとした一瞬の隙に、巨大な手で振り払われ小林は地面を転がる。

常人であれば体が潰されるはずではあるが、小林はかすり傷で済んでいた。

小林「いったぁ……」

ドズン、と重量感のある音が目の前でし、そちらへと目を向けると、大きな口を開けてゆっくりと小林へと近付いてくるドラゴンの姿があった。

小林「え、いや、まって、私美味しくないよ!?お腹壊しちゃうよ!?」

だが、ドラゴンにそんな言葉が通じるはずもなく、鋭利な歯を見せながら、その口を小林へと近づける。

小林「ひぃぃぃっ!」

思わず小林が目を覆うと、ズチャリと大きな音を立て、ドラゴンの体が真っ二つへと引き裂かれた。
43: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/13(火) 23:28:05.45 ID:+zCQ7Iv7
「大丈夫?」

小林「ありがとうござい……え!?」

「え、あいきゃん!?」

小林「しゅかー!」

朱夏「えー、びっくり。まさかここであいきゃんに会うなんて」

小林「私もびっくりだよ。しゅかもこっちに来てたんだね」

朱夏「うん、まあね」

小林「曜ちゃんは一緒に来てないの?」

朱夏「……うん。曜ちゃんは家でお留守番だから」

小林「そっかー、それなら仕方ないね」
45: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/13(火) 23:33:07.44 ID:+zCQ7Iv7
小林「そうだ、助けてくれてありがとう!」

小林「朱夏って強いんだね」

朱夏「うーん、そうなのかな?」

朱夏「よくわかんないんだよねー、こういうゲームみたいなの」

小林「朱夏は今何してるの?」

朱夏「なんか、ギルドってのに入ってるよ」

小林「おおー、同じだね」

小林「私もヨハちゃんに勧められてギルドに入ったの」

善子『小林。しゅかも同じ境遇みたいだし、情報交換するわよ」

善子『ご飯に誘いなさい』

小林「ねえねえ、ヨハちゃんがご飯一緒に食べようって」

朱夏「いいよー」
53: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/14(水) 23:21:20.61 ID:15l6wRnr
小林「しゅかはいつこっちに来たの?」

朱夏「数日前だよー」

朱夏「あんじゅと出かけてたらいきなり知らない街にいたの」

朱夏「もー、びっくりしちゃったよー」

小林「あんちゃんもこっちに来てるの?」

朱夏「分かんない」

朱夏「多分来てるんじゃない?あいきゃんもいるし」

小林「確かに……これならみんな来てるって考えた方が自然よね」
54: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/14(水) 23:26:06.16 ID:15l6wRnr
小林「しゅかは今一人なの?」

朱夏「そうだよー」

朱夏「仲間になりたいって人はいたけど、断っちゃった」

小林「そうなんだ」

朱夏「これからどうしようねー」

小林「うーん、ヨハちゃんはどう思う?」

善子『そうね。まずはこの世界の情報を集めるべきよ』

善子『今何処の国にいるのか、危険はないか、そういったことを調べるの』

善子『それと、こっちに来ているAqoursのみんなを集めましょう』

小林「だってさ、しゅか」

朱夏「……ごめん、ちゃんと聞いてなかったから、あいきゃんから説明してもらってもいい?」

小林「もー、ちゃんとヨハちゃんの話も聞いてあげないとだめだよ!」

小林「情報収集しながら他のみんなを探すの!」
55: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/14(水) 23:29:33.93 ID:15l6wRnr
朱夏「おおー、いいね!」

朱夏「あいきゃん天才じゃんー!」

小林「思い付いたのはヨハちゃんだよ?」

朱夏「あー、そうだった」

朱夏「じゃあ明日からだねー、今日は疲れたから宿に行って寝よう」

小林「そうだね。しゅかとお泊りなんていういつ以来だろう」

朱夏「うーん、あんまりないよねー」

朱夏「最近はあんまり家で飲んだりもしなかったし」

小林「ヨハちゃんがお酒飲めないからね」
56: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/14(水) 23:33:33.13 ID:15l6wRnr
朱夏「おおー、ベッドが二つある」

朱夏「これなら一部屋で良さそうだね」

小林「私はヨハちゃんと寝るから二つで大丈夫だもんね」

朱夏「……明日は何処に行くの?」

小林「えーと、ギルドに行って、いろいろ聞けって」

小林「ヨハちゃんが」

朱夏「あー、なるほど」

朱夏「よーし、じゃあおやすみー」

小林「おやすみー」
57: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/14(水) 23:44:01.21 ID:15l6wRnr
~翌日・ギルド~

受付嬢「ここの地域について知りたい?」

朱夏「そうなんですー、私たち遠くから来たから全然ここのあたりのこと知らなくって」

受付嬢「そうですか。ではこちらへお掛けください」

朱夏「はーい」

受付嬢「ここは大陸の西部に位置する国です」

受付嬢「北部と違って年中争いもしていませんし、国同士の戦争あまりありません」

小林「え、年中戦ってるところがあるの?」

受付嬢「北部には魔界の境界もありますし、魔族との争いが絶えませんよ」

小林「魔界?魔族?」

善子『心が躍る単語ね』
58: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/14(水) 23:48:07.11 ID:15l6wRnr
朱夏「いろいろ教えてくれてありがとうねー」

受付嬢「いえいえ」

朱夏「そうだ、最近ギルドに入った人で、物凄く強いって噂の人はいない?」

受付嬢「そうですね……記憶にはいません」

小林「いきなりどうしたの?」

朱夏「もし誰かがギルドに入ってたら、そういう情報が出てくるのかなって思って」

朱夏「やっぱり自分で探すしかないかー」

小林「そうね。三人で頑張りましょう」

受付嬢「あの、私を数に入れないでいただけますか?」

小林「え、入ってないけど?」

受付嬢「???」

小林「???」

朱夏「よし、あいきゃん行くよ!ありがとうございました!」
59: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/14(水) 23:51:15.10 ID:15l6wRnr
小林「もー、急にどうしたのよ」

朱夏「いや、うん。まあ急ごうかなって」

小林「ま、いいけど」

朱夏「この街にいても意味なさそうだし、みんなを探しにいこうか」

小林「そうね。どっちの方に行く?」

朱夏「うーん、南の方にしよう」

朱夏「北は危ないって行ってたし」

小林「了解。じゃあいろいろ準備しましょう」

朱夏「そうだね。長い旅になりそうだもんね」

小林「ちょっと楽しみかも」

朱夏「凄いわかるー」
62: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/15(木) 23:24:56.18 ID:x39L6dyf
街を出発した二人は、西を目指して進んでいた。

道の整備は進んでいるものの、魔物による被害が完全に抑えられているわけではないため、二人は何度も戦闘することとなった。

朱夏「結構多いねー、魔物」

背後から襲いかかる魔物に一瞥もせず、軽く手を振った風圧で魔物を葬っている。

さっきから襲いかかってくるのはワイルドウルフと呼ばれるCランクモンスターだ。

群で動く習性があり、油断をすれば上位の冒険者であっても命を落とすことがある。

小林「うーん、しゅかなんとかできない?」

朱夏「この辺更地にしていいならできるよー」

小林「よーし、やっちゃおやっちゃお」

善子『やめさせない小林!』
63: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/15(木) 23:32:12.25 ID:x39L6dyf
小林「ヨハちゃんがダメだってさ」

朱夏「そりゃそうだよねー」

小林「よーし、じゃあここは私がリトルデーモンの力を見せるぞー」

小林「【堕天・荊姫】!」

二人を囲むワイルドウルフの群れが、突如静寂に静まり返る。

影から飛び出した無数の棘がワイルドウルフ達を貫き、辺りからは濃厚な血の匂いを漂わせる。

その光景は誰が見ても恐怖を抱かずにはいられないものであるが、小林は特に気にした様子も無かった。
64: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/15(木) 23:34:56.22 ID:x39L6dyf
朱夏「あいきゃんの技ってなんかやばくない?」

小林「え、そうかな?普通だよ、ここ異世界だし」

朱夏「いやいやいや、どう見てもやばいでしょ」

朱夏「だってなんかこう、めっちゃ悪っぽくない?」

小林「リトルデーモンだから当然よ、ね、ヨハちゃん」

朱夏「それならしょうがないねー」

小林「今日はここで野宿する?」

朱夏「ここで野宿って絶対臭いじゃんやだもー」

小林「そっかー。じゃあもうすこし行こう」
65: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/15(木) 23:40:07.07 ID:x39L6dyf
朱夏「あれ村じゃない!?」

小林「本当だ!」

小林「今日は野宿しなくて良さそうだね!」

朱夏「……あれ、でもなんかおかしくない?」

小林「どうしたの?」

朱夏「なんかみんな集まってるし」

小林「とりあえず行ってみようかー」
66: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/15(木) 23:46:24.38 ID:x39L6dyf
二人が村の中へ入っていくと、村の中心に村人が集まっていた。

朱夏「あのー、どうしたんですか?」

村人「ああ、村の近くでオークの群れが出たみたいでな」

村人「何人も被害にあっているし、みんなも不安がって眠れないんだ」

小林「よーし、朱夏、行くよ!」

朱夏「いや、まだ早いって。最後まで話を聞こう」

村人「実はあんた達の前にも一人若い女性が来てな」

村人「『私に任せてください』って退治に向かったんだよ」

善子『それは心配ね』

小林「そうだね。殺されちゃうかもだもんね」

善子『いえ、オークは女を殺したりしないわ。だいたい死ぬまで苗床にされるわよ。エロ同人みたいに』

小林「ええっ!朱夏!大変だよ!オークに負けるとえっちなことされるんだって!」

朱夏「大きな声で言わないで」
68: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/15(木) 23:52:46.13 ID:x39L6dyf
教えてくれた村人と別れ、二人はオークの発見された場所へと走り出した。

村人の中でも被害にあっているのは女性が多く、その全てがオークの巣へと攫われている。

小林「ねえねえ、しゅか」

朱夏「んー?」

小林「私たちも負けたらえっちなことされちゃうのかな」

朱夏「……されたいの?」

小林「そんなことないよ!私の初めてはヨハちゃんにあげるんだから!」

朱夏「そっか。うん、頑張ってね」

善子『お喋りしてるんじゃないわよ、小林』

善子『そろそろ近いわよ』
70: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/15(木) 23:57:48.35 ID:x39L6dyf
オークの住処らしき洞窟はすぐに見つかった。

なぜなら、そこにはオークの死体が散乱していたからだ。

氷漬けにされたものや、バラバラに切り刻まれたもの、丸焦げになったものまである。

小林「おおー、これ前に行った人がやったのかな?」

小林「凄いねー」

呑気に辺りを見回す小林とは正反対に、朱夏の視線は洞窟の中へと向けられていた。

洞窟の中から漂う強者の気配。肌に突き刺すようなその気配を、朱夏は感じ取っていたのだ。

朱夏「あいきゃん、気をつけて」

朱夏「何か来る」
71: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/16(金) 00:04:30.65 ID:A7dBQFDm
どずん、どずん、と重量感のある音が聞こえる。

洞窟の中から姿を見せたのは、巨大なオーク……いや、この世界ではオークキングと呼ばれる災害級モンスター……Sランクの魔物である。

ギルドが情報を掴めばすぐに冒険者を掻き集め、総出で倒しにかからなくてはならないほど危険であり、過去にオークキングのせいで国が滅びたこともあるのだ。

オークキング「ギ……グ……」

小林「おおー、おっきい!」

小林「ねーねー!この子もリトルデーモンにしちゃう?」

善子『落ち着きなさい、小林』

朱夏「あいきゃん、援護お願い」

朱夏「私が突っ込むから」
72: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/16(金) 00:09:25.59 ID:A7dBQFDm
朱夏の手には、いつの間にか巨大な剣が握られていた。

常人であればまず持ち上げることさえできない重量のそれを、朱夏は軽々と持ち上げ、オークキングに向けて構えている。

小林「しゅかー!頑張れー!」

「……しゅか?」

その時、オークキングから、いや、オークキングの背後から声がした。

それと同時にオークキングは大きな音を立てて地面へと崩れ落ち、絶命した。

オークキングは逃げていただけであり、洞窟を出る前に致命傷を受けていたのだ。
73: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/16(金) 00:14:58.36 ID:A7dBQFDm
巻き上がった砂埃が無くなると、1人の女性がそこには立っていた。

杏樹「あー!やっぱりしゅかだー!」

朱夏「おー、なんだあんじゅじゃーん、良かったー」

朱夏に駆け寄ると、杏樹は思い切り朱夏へと抱き着いた。

頬擦りをしているその光景を見ると、さっきまでオーク達を虐殺していた人間だとは誰も想像すらできないだろう。

小林「あんちゃんもこっち来てたんだー」

杏樹「うん。朱夏とデートしてたらいつのまにかはぐれてて」

杏樹「見つかって良かったー」
74: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/16(金) 00:20:40.73 ID:A7dBQFDm
朱夏「オークを倒したのはあんじゅなの?」

杏樹「そうだよー。女の子を攫ってるって聞いてさ」

杏樹「もしかして朱夏が攫われたのかもって思って急いで皆殺しにしたの」

杏樹「捕まった人たちもみんな無事だよ」

朱夏「そうなんだー、いやー、流石あんじゅだねー」

朱夏「それじゃあ村に戻ってみんなを安心させてあげよう」

小林「今夜はベッドで寝られそうだね」

朱夏「そうだねー、久しぶりにぐっすり寝たいよね」
91: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/21(水) 22:31:05.35 ID:ZOW4cWqs
朱夏「いやいや、道に迷うってありえなくない?」

朱夏「来た道戻るだけじゃん?」

杏樹「暗いからしょうがないよ」

杏樹「ほら、あいきゃんも元気出して」

小林「なんで私が悪いことになってんの!?」

善子『可哀想ね、小林』

小林「うう~ヨハちゃん~」

朱夏「これ以上歩き回っても変なところ行っちゃうかもだし、ここで野宿する?」

杏樹「そうしよっかー」
92: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/21(水) 22:35:39.58 ID:ZOW4cWqs
朱夏「じゃあ私道具の用意するから、二人で燃えそうなもの探して来てくれる?」

杏樹「いいよー。行こう、あいきゃん」

小林「了解ー」

小林「燃えるものって木でいいのよね?」

善子『木を燃やしたら火事になるわよ』

小林「分かってるわよ!枝のこと!」

小林「ヨハちゃんはすぐにそうやってからかうんだから!」

杏樹「…………」

朱夏「あんじゅ、もしあれなら」

杏樹「んー?大丈夫だよ、しゅか」

朱夏「……ありがとう」
93: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/21(水) 22:45:05.79 ID:ZOW4cWqs
ガサガサ

小林「あ!これ燃えそう!」

小林「これも!こっちも!」

善子『そりゃ枝なんだから全部燃えるわよ』

小林「そうだった!」

小林「それにしても、あんちゃんも見つけられて良かったー」

杏樹「私も二人に会えて嬉しいよ」ニコニコ

杏樹「あいきゃんは、しゅかと初めてあったの?」

小林「そうそう。最初はしゅかに助けられたんだよねー」

小林「その後は一緒の部屋に泊まってー、一緒に旅しよってことになったの」

杏樹「へぇ……そうだったんだ」

杏樹「ねぇ、あいきゃん」

小林「ん?なーに?」

振り向いた小林の頬を掠め、銀色の輝きが木へと突き刺さる。

杏樹「死んで?」ニコッ
95: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/21(水) 22:52:53.58 ID:ZOW4cWqs
小林「え……?え?ええっ!?」

小林「あ、あの、あん、じゅ、さん?」

杏樹「どうしたの?」

小林「いや、今、なんか、な、ナイフみたいなのが飛んで来た気が」

小林「そんなことしたら……危ないよ?」

杏樹「別にいいんだよ」

杏樹「『私』のしゅかにちょっかいかける女狐は全員始末しないといけないんだから」ニコニコ

小林「ひっ!?」
98: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/21(水) 23:03:42.64 ID:ZOW4cWqs
善子『逃げるのよ小林!』

小林「う、うん!」

杏樹「逃すわけないでしょ?」

杏樹「『怨嗟の呪縛』」

突如として小林の耳に鳴り響く悲鳴。

小林へと助けを求める声が鼓膜にこびりつき、振り払おうとしても直接脳へと伝わるソレが少しずつ小林を闇へと誘い、体の自由を奪いとっていく。

小林「な、なんで?」

杏樹「ん?」

小林「なんで、こんなこと……」

杏樹「あいきゃんはさー、この世界に来た時どう思った?」
100: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/21(水) 23:20:42.29 ID:ZOW4cWqs
小林「どう思ったって……」

杏樹「この世界でしかできないこと、考えなかった?」

小林「この世界でしか、できないこと?」

杏樹「そう。魔法を使ったり、モンスターを倒したり」

杏樹「あいきゃんはいっぱい堕天使気分味わったよね」

杏樹「そういうこと、したかったんでしょ?」

小林「それは、そうだけど……」

杏樹「それとおなじで、私もしたいことがあったの」

小林「あんちゃんの、したいこと?」

小林「……一体、何?」

小林の頭によぎるのは、世界征服や、大量虐殺等の行為だ。
今の彼女たちにはその力がある。
いきなり手に入れた力に溺れ、存分に奮いたいという欲求に飲まれてもおかしくなどないだろう。

杏樹「それはねー」

小林「……っ」ゴクッ

杏樹「しゅかと結婚することだよ」

小林「は?」
101: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/21(水) 23:33:08.41 ID:ZOW4cWqs
杏樹「向こうの世界だとダメだけど、こっちの世界ならしゅかと結婚できるからね」

杏樹「それに、しゅかに近く女狐を葬ってもバレないし」

杏樹「こっちの世界も結構いいよね」

善子『……あれが、あんちゃんの本性だったのね』

小林「違う!そんなことない!」

小林「だってあんちゃんは、みんなを引っ張ってくれる、カッコいい人で……」



杏樹『ねぇあいきゃん、じもあいってなに?』

杏樹『ふーん、仲がいいんだね、二人とも』イライラ

杏樹『へー、今度二人で遊びにいくんだ。二人だけで。羨ましいなー』ニコニコ



小林「いや、やっぱり最初からあんな感じだった気がする」

善子『小林……』

小林「あんちゃん、おかしい人だったんだ」
102: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/21(水) 23:37:23.24 ID:ZOW4cWqs
杏樹「お話はおしまい」

杏樹「今度はちゃーんと死体にしてあげるね」

小林「ま、待って!」

小林「しゅかに手なんて出してないから!私はヨハちゃん一筋でしゅかのことなんてなんとも思ってないから!」

杏樹「ふーん、しゅかに魅力が無いって言いたいんだ。殺すしか無いね」

善子『めんどくさいわね、この人』

小林「何言っても無理だよこれー!」

小林「いやー!ナイフやだー!助けてー!殺されるー!」

小林「ひっ!?ま、まっーー」

杏樹「さようなら、あいきゃん」

ヒュッ

しゅか「あんじゅー、まだー?」

杏樹「しゅかー!待たせてごめんねー!すぐいくよー!」
103: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/21(水) 23:43:08.69 ID:ZOW4cWqs
颯爽と朱夏の元へと杏樹は駆け出し、その姿があっという間に見えなくなった。

いつのまにか術の効果は消えており、小林はどさりと大木へともたれ掛かり、大きく息を吐き出した。

小林「ねぇ、これ、付いてって大丈夫なのかな?」

善子『そうね……しゅかの前では猫かぶってるし、逆にしゅかの近くにいた方が安全なんじゃ無いの?』

小林「そうだといいんだけど」

善子『なんにしろ、もう三人集まったのよ』

善子『他のメンバーがこれば、また考え方も変わるかもしれないし』

小林「そうだよね、励ましてくれてありがとうヨハちゃん!」

小林「頑張ってみる!」
111: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/23(金) 21:26:42.64 ID:EsoEst0W
村人「ありがとう、君たちのおかげで助かったよ!」

村人「攫われたみんなも帰ってきたし、なんとお礼を言えばいいのか」

杏樹「このくらい当然のことですよ」

杏樹「無事ではないですけど、生きてて良かった」

村人「何かお礼をしたいのだが……あまり村にも余裕が無くて」

杏樹「気持ちだけ受け取っておきます」

善子『小林、他のメンバーの情報が無いか聞いておきなさい』

小林「あの!聞きたいことがあるんですけど」

村人「ん?なんだ?」

小林「最近急に強い人が出てきたって話聞いたことありませんか?」

村人「強い人……そういえば前に村に来た商人が闘技場に強い新人が現れたって言ってたな」

朱夏「それってもしかして」

小林「うん。もしかするとAqoursの誰かかも」

村人「闘技場はブンカの街にある。ここから南の方に行けば多分三日で着くんじゃねーかな」

小林「ありがとうございます!」
112: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/23(金) 21:33:56.26 ID:EsoEst0W
三人は村人の話を参考にし、ブンカの街へと向かった。

途中小林が杏樹に八つ裂きにされそうになること以外、特に問題が起こることもなかった。

朱夏「やっとついたー」

杏樹「しゅか大丈夫?何処か入って休む?」

朱夏「うーん、先に情報収集しちゃおうよ」

朱夏「暗くなるのも嫌だしさー」

杏樹「そうだねー」

小林「ヨハちゃん、情報ってどこで集めるの?」

善子『こういう時は酒場に行くのが定番ね』

小林「流石ヨハちゃん!二人とも、酒場に行こう!」

杏樹「おー!」

朱夏「え?ギルド行った方が良くな……まあいいか」
113: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/23(金) 21:43:02.98 ID:EsoEst0W
カランカラン

小林「こんにちはー!」

「あ?」

「チッ」

三人が入った店には街のゴロツキのような連中が集まっていた。

この街は闘技場があり、腕っ節に自信がある者が集まってくる。

そうであれば、荒くれ者が多くなるのも当然であり、そんな街の酒場は当然殺伐としていて当然である。

朱夏「いやいやこれ絶対歓迎されてないってー」

杏樹「しゅかは何飲む?お酒?」

朱夏「今はそんな場合じゃないでしょ!」
115: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/23(金) 21:53:59.81 ID:EsoEst0W
「おい、ここはてめーらみてーな乳臭いガキが来る場所じゃねーんだよ」

小林「え?ここって年齢制限あるの?」

善子『バカにされてるのよ、小林」

小林「そうだったの!?」

「なんであいつ一人で喋ってるんだ……?」

「しっ!目を合わせんな!」

小林「でもこれだと情報を聞き出せないよ」

善子『任せなさい。こういう時の対処法もあるの』

小林「なになに!?」

善子『まずはその男を殴り飛ばしなさい』

小林「うん!」

「てめー、一体なんのつもごふっ!?」

小林の容赦ない右ストレートが男の頬に突き刺さると、その勢いのまま他人の飲み食いしていたテーブルを巻き込んで壁まで吹き飛ばされていった。

朱夏「……いやいや、何してんの?」
116: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/23(金) 22:02:47.75 ID:EsoEst0W
杏樹「ねーねー、朱夏はオレンジジュースでいい?」

朱夏「あー、うん……」

小林「この後は?」

善子『私の後に続きなさい』

小林「うん!」

善子『脆弱な人間風情が堕天使小林様に舐めた口を聞くんじゃない!』

小林「脆弱な人間風情が堕天使小林様に舐めた口を聞くんじゃない!」

善子『死にたくなければ洗いざらい情報を吐くのよ!』

小林「死にたくなければ洗いざらい情報を吐くのよ!」

杏樹「美味しい?お酒でもいいんだよ?」

朱夏「いやあの、あれいいの……?」

杏樹「んー、いいんじゃない?あいきゃんには善子ちゃんが付いてるからね」

朱夏「んーー、う、うん……?」
117: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/23(金) 22:10:33.45 ID:EsoEst0W
「お、おい!大丈夫か!」

「誰か姉さん呼んでこい!」

善子『小林、そこの怯えてるやつを捕まえなさい』

小林「うん!」ヒョイ

「ひっ!?や、やめてくれー!」

善子『後は聞きたいことを聞くだけよ』

小林「聞きたいことがあるんだけど」

「は、はい!なんでございましょうか!?」

小林「最近この街に強い人が現れたって聞いたんだけど」

小林「誰か知ってる?」

「!し、知りません!私は知りません!」

善子『小林、こいつ何か知ってるわよ』

小林「嘘つくのはだめだよー」

「お、俺は何も話せねぇ!文化人の誇りにかけて!」

小林「だめだって、ヨハちゃん」

善子『そいつを投げ飛ばして次のやつを捕まえるのよ』

小林「そーれ!」

「ひぃぃぃぃぃぁっ!?」

杏樹「おつまみも食べようか」

杏樹「何食べる?ハンバーグは多分ないよねー」

朱夏「もしかして私がおかしいのかな……?」
120: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/23(金) 22:21:37.45 ID:EsoEst0W
小林が一人、また一人と多少の手加減をしつつも投げ飛ばしていき、酒場には砕けた机や椅子の破片が散らばっていった。

大の大人が上げる悲鳴、派手な破砕音、そして呑気な小林の声。それははたから見れば狂気としか思えないだろう。

そして最後の一人を小林が投げ飛ばし、場は静寂に包まれた。

小林「ヨハちゃん、だめだったね」

善子『そうね。じゃあ次の酒場に行きましょう』

小林「あんちゃーん、しゅかー、次いこー」

杏樹「二件目だって。しゅか、酔ってない?」

朱夏「なんかもう、酔って逃げ出したい気分だよ」

杏樹「一緒に逃避行しよっか」

朱夏「いやしないけど」

「お前らが酒場でおいたしてるって奴らか」
121: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/23(金) 22:30:33.69 ID:EsoEst0W
「姉御!来てくれたんですか!」

「待ってました!」

「おう、当たり前だろ。暴れてるやつなんて私がちょちょいのちょいってやってやるぜ」

死屍累々と転がった荒くれ者たちが喜びの声をあげる。

姉御と呼ばれる人間の声は扉の入り口から聞こえ、そのまま中へと入ってくる。

降幡「うちの可愛い舎弟に手を出してんのはどいつらだ……ん?」

小林「え?ふりりん?」

降幡「げっ、あいきゃん!」

降幡「あんちゃんとしゅかもいるし!」

朱夏「お、あいあいだ」

杏樹「おおー、偶然だねー」
123: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/23(金) 22:41:30.13 ID:EsoEst0W
杏樹「これで情報収集する必要はなくなったね」

杏樹「あいあい、こっちに来て座ってよ」

降幡「は、はぁ?なんでそんなことしなくちゃいけないんだよ」

杏樹「え?」

降幡「お、お前あれだかんな、私、超つえーかんな」

降幡「いつまでもやられっぱなしだと思うなよ」

朱夏「いやそれフラグだからやめたほうがいいって」

小林「よくわかんないけど、ヨハちゃん、力を貸して!」

朱夏「あいきゃんも戦おうとしないで!」

朱夏「家を破壊したらだめだって」
124: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/23(金) 22:49:23.02 ID:EsoEst0W
降幡「よーし、それなら明日闘技場で決着を付けてやるよ」

降幡「正々堂々、勝負だかんな!」

小林「受けて立つわ!」

善子『即答するのね、小林』

降幡「お前らが負けたら私の舎弟になるんだぞ!」

杏樹「じゃああいあいが負けたら奴隷ね」

降幡「いや、ちょ、言い方ってもんがあるだろ」

降幡「ふ、ふん!勝てばいいだけだかんな!」

降幡「勝ってあんちゃんの前でしゅかといちゃいちゃしてやーーひっ!?」

杏樹「……楽に死ねると思わないでね」

降幡「お、覚えてろよ!逃げるんじゃねーぞ!」

ズダダダダ

降幡『おい!今すぐ人数集めろ!罠作るぞ!』

降幡『は?正々堂々?勝てばいいだけよ!』
127: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/23(金) 22:52:44.00 ID:EsoEst0W
朱夏「聞こえてるんだよねー……」

小林「これで4人……約束の星に集ったわね」

杏樹「明日は戦いだし、何処かに泊まって休もうか」

朱夏「そうだねー」

朱夏「それにしても、あいあい、一体どうしたんだろう」

小林「機嫌が悪いとか?」

朱夏「いやいやそれはない」

小林「うーん、まあいいんじゃない?」

小林「明日ボコボコにしたら仲間になるんだし」

朱夏「まあそうだよねー」
128: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/23(金) 23:04:47.28 ID:EsoEst0W
~宿~

小林「二部屋でいいの?」

杏樹「うん。私と朱夏で一部屋。あいきゃんと善子ちゃんで一部屋」

杏樹「これでばっちりだよね」

小林「そうね!完璧よ!」

朱夏「…………」

杏樹「しゅかもそれでいいよね?」

朱夏「私は……」

朱夏「……っ」

朱夏「杏樹と一緒が……いい」

杏樹「!!!!」
129: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/23(金) 23:07:29.97 ID:EsoEst0W
杏樹「しゅかー!」

杏樹「うんうん!今日は一緒に寝ようね!」

朱夏「いや、それはいいけど……」

小林「それじゃあ決まりね」

朱夏「じ、じゃあまたね、あいきゃん」

小林「また明日!行こう、ヨハちゃん!」
130: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/23(金) 23:13:37.80 ID:EsoEst0W
杏樹「しゅかってスタイルいいよね」

杏樹「ちゃんと食べてる?」

朱夏「元からこんなんだって」

朱夏「あー、でもお菓子とか止めたからかも」

杏樹「この前食べてたじゃん」

朱夏「嘘ついちゃった」

朱夏「私の人生はお菓子と一緒にあったからなー」

朱夏「あとコーラ」

杏樹「こっちの世界にはなさそうだよね」

朱夏「そうだよね」
131: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/23(金) 23:20:14.38 ID:EsoEst0W
朱夏「……ねぇ、杏樹は」

杏樹「んー?どうしたの?」

朱夏「ううん、なんでもない」

朱夏「みんなに会えるといいね」

杏樹「そうだね」

杏樹「そっちの布団行ってもいい?」

朱夏「だめ」

杏樹「えー」

杏樹「でもあいきゃんと善子ちゃんは一緒に寝てるらしいよ?」

朱夏「いや、それはそれだから」
136: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/24(土) 22:40:09.91 ID:9Ct3iBG1
~数週間前~

ワァァァァァァァァァァァァァァ!!!

降幡「え、なんだここ」

降幡「ドームじゃないよな……?」

『なんと!突然乱入者が現れました!』

降幡「は?何言ってんだ?」

降幡「っとあぶね……こんだけ人多いんだったな」コホン

降幡「すいませんー!ここどこですかー?」

降幡「道に迷っちゃったみたいなんですけどー」

『そんなやる気満々の挑戦者を迎えるのは!この猛獣だー!』

『今まで血祭りにあげた人数は99人!キリの悪い数字を今日でおさらばしてしまおう!』

『Aランクモンスター!ヘルハウンドー!』
137: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/24(土) 22:48:38.69 ID:9Ct3iBG1
渇いた金属音を立てて、門扉が開く。

中から現れたのは5mはあると思われる巨大な漆黒の犬、ヘルハウンドだ。

降幡「ちょ、ちょっとまてって!」

降幡「これなんの番組だ?ドッキリか?ドッキリだよな!?」

降幡「いや、ちょ、まじでふざけんなって!おい!」

降幡「こっちくんな!おい!」

降幡「ひっ!?」

降幡「や、やめろ!おい!私は食べてもおいしくねーぞ!腹壊すかんな!」

降幡「来んなって言ってんだろ!!」

苦し紛れに振った手から放たれた真空の刃が今にも飛び掛かろうとしていたヘルハウンドへと命中し、その巨体を真っ二つへと引き裂いた。

その場にいる誰もが声を失った。それも当然だろう、観客はふりりんが化け物に食い殺される未来を見ていたし、そうなって当たり前の状況であったからだ。

それゆえに、脳の処理が今の現状を理解することに時間が掛かったてしまった。
138: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/24(土) 22:54:56.57 ID:9Ct3iBG1
『しょ、勝者!謎の乱入者ー!』

会場のアナウンスが勝利を告げると、鼓膜が破れそうなくらいの歓声が闘技場に響き渡る。

無敗を貫いたヘルハウンドが軽々とやられてしまったその事実が、観客達を魅了したのだ。

降幡「お、おう、なんかよくわかんないけどありがとな」

ふりりんが群衆へと手を振ると、さらに歓声は大きくなる。

この日からふりりんはブンカの街の人気者となった。

この街では力が全てであり、荒くれ者達もふりりんの前ではおとなしく、また面倒見のいい性格に当てられてか、街全体が落ち着きを取り戻していった。

「姉御ー!一緒に飲みませんかー!」

降幡「ばかお前、今日は可愛い子と一杯やるんだよ」

「流石ですね姉さん!夜の方もですか?」

降幡「んなことしねーよ。ま、味見はしてーかもな」
139: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/24(土) 23:08:01.26 ID:9Ct3iBG1
降幡「まさかあの三人が来るとは思わなかったな」

降幡「負けたら奴隷とか言ってたし、やっぱりあいつらやべーよ」

降幡「よくよく考えたらやべーやつしかいなかったもんなあそこ」

降幡「せめてあいにゃがいてくれりゃぁ……」

降幡「はぁ。泣き言言っても始まんねーし勝つ作戦考えねーとな」

降幡「見てろよ絶対吠え面かかしてやるかんな」
140: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/24(土) 23:12:37.88 ID:9Ct3iBG1
~次の日~

小林「ここが闘技場かー」

朱夏「結構大きいなー」

朱夏「え、てか、あいあいここで試合セッティングできるってやばくない?」

杏樹「いろいろ情報持ってそうだよね」

小林「よーし、全部聞き出すわよー!」

「あの~」

小林「ん?」

ふりりん「もしかしてAqoursの皆さんですか?」

朱夏「…………」

杏樹「…………」

小林「ええ!そうよ!」

ふりりん「本当ですか!?私大ファンなんです!」
141: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/24(土) 23:17:04.11 ID:9Ct3iBG1
朱夏「何やってるの、あいあい」

ふりりん「え、あいあい?誰のことですか?」

ふりりん「私はただの通りすがりのファンですよー」

朱夏「……マスクとサングラスなんてこの世界にないでしょ」

杏樹「何しにきたんだろうね」

小林「それで、どうかしたの?」

ふりりん「ええ!そりゃもう、今からの戦いを頑張ってもらうためにお土産を用意しましてね!」

ふりりん「どうぞみなさんで食べてください!」

小林「おにぎり!美味しそう!」パクッ

朱夏「いや、あいきゃんそれ絶対やばいって」

小林「ん~おいし~!」

ふりりん「へへへ、じゃああっしはこれで」

小林「しゅかとあんちゃんはいらないのー?」

杏樹「あいきゃん、全部食べていいよ」ニコッ

小林「ありがとうー!」
143: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/24(土) 23:22:48.58 ID:9Ct3iBG1
~闘技場内~

『さあ!本日のメインバトル!』

『我らが英雄、姉御vs挑戦者だー!』

ワァァァァァァァァァァァァァァ!!!!

小林「お、っ、っ、」ビクビクッ

小林「お、おなか、いたい」

朱夏「ほらもー、ゆっぱり入ってたじゃんへんなのー」

小林「助けて……ヨハちゃん……」

善子『無理よ』

降幡「おいおい、一人戦う前からへばってるんじゃないか?」

降幡「怪しい人から貰ったもの食べたらだめだろ?」

朱夏「自白してるし」

杏樹「なんでもいいから早くやろうか」

杏樹「私一人で十分だよ」

降幡「いいだろう。じゃあ3数えたら始めな」
145: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/24(土) 23:27:10.28 ID:9Ct3iBG1
降幡「さーん!」

降幡「にー……全員やれー!」

無論、ふりりんは3秒待つ気など初めからなかった。

合図と同時に会場の至る所から魔法が放たれ、次々に杏樹へと命中する。

降幡「今までの恨み返してやったかんな!」

降幡「後はトドメを私が……」

朱夏「ドン引きするぐらい卑怯なんだけどこれ」

降幡「うるせぇ!勝てばいいんだよ!」

朱夏「いやー、もうどうなっても知らないからね」

降幡「え?」
146: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/24(土) 23:34:02.54 ID:9Ct3iBG1
巻き上げられた砂埃が治ると、そこには杏樹の姿があった。

当然のように、無傷で。

降幡「……嘘だろ?」

降幡「い、いや、あれだし、私もあれくらいなら無傷だし」

降幡「お前、知ってるからな、あんちゃんは魔法使う方なんだろ!」

降幡「小林がペラペラ喋ってたから知ってるんだかんな!」

降幡「だったら、近接戦闘してやるよ!」

腰に刺さった日本の刀を抜き、二刀流の構えで杏樹へと駆け寄るふりりん。

一撃目は右からの振り下ろし。駆け出しから振り下ろしまでの一連の動作は雷のようさ速さであり、常人が見切ることは不可能である。

降幡「……え?」

だが、その渾身の一撃は見事に受け止められていた。

人差し指と中指……たった二本の指にすっぽりと収まり、その先に進むことも引くこともできなくなっている。
147: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/24(土) 23:43:35.24 ID:9Ct3iBG1
降幡「ふざ……けんなよぉ!」

二撃目は左下からの切り上げ。下からの攻撃は対処が難しく、慣れていないものであればわけもわからずに一刀の下に切り捨てられるだろう。

だが、その太刀が杏樹へと届くことはなかった。

それよりも先に、杏樹の拳がふりりんの顔面を容赦なく殴り飛ばしたのだ。

降幡「っ、ちょ、ま、まてって、顔面は、だめだろ!」

ピンボールのように弾かれ、地面を転がったふりりんは顔を抑えながら立ち上がる。

自分が杏樹殺そうとしたことを棚に上げており、朱夏から冷たい目で見られているが、それを気にした様子は一切ない。

降幡「こうなったら最終手段しかねーな」
148: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/24(土) 23:49:47.50 ID:9Ct3iBG1
ふりりんの向かった先にいたのは、お腹を抑えて蹲る小林だ。

降幡「おい!動くとあいきゃんを……こ、殺すぞ!」

小林の喉元に剣を当て、ふりりんはそう叫ぶ。

それは自身が助かる一番の方法であり、また勝つチャンスでもあった。

仲間を見殺しにすることはずなんてない。それが、ふりりんの知っている伊波杏樹であった。

しかし、それは現実世界にいた頃の話であり、異世界に来た後については、何も知らなかったのだ。


杏樹「いいよ」

降幡「え?」

近付いてくる杏樹に対し、ふりりんは狼狽してしまう。

降幡「お、おい!冗談じゃないぞ!まじで殺すかんな!」

降幡「いや、ほんと待って!まじ待って!お願いだから!」

杏樹としては、ここで降幡に罪を被ってもらいながらあいきゃんを抹殺してしまいたいところであるため、止まる理由がない。
150: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/24(土) 23:57:43.64 ID:9Ct3iBG1
杏樹「やらないの?じゃあ二人とも……さようならしよっか」

杏樹の上に灯る小さな炎。しかし、小さいのも最初の一瞬だけであった。

杏樹が力を込めると、何十、何百倍にもソレは膨れ上がり、やがて直径が闘技場をすっぽり覆うようなレベルにまで成長する。

我に返った観客が、悲鳴を上げながら出口へと駆け出す。

それが放たれれば、この闘技場……いや、街全てが滅ぶのは見に見えていた。

降幡「じょ、冗談だろ……ですよね?」

降幡「いや、ほら、仲間、じゃん?あいきゃんも、さ、ほら、いるし?」

降幡「おい!おいおいおい!冗談じゃ済まないって!まじで!本当に!いや!ちょ!」

降幡「負け!私の負けだから!お願い!やめて!死ぬから!」

杏樹「『灯火のーー」

朱夏「あんじゅー、危ないからそれしまいなよー」

杏樹「そうだねー、しゅかが怪我したら危ないもんね!」
152: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/25(日) 00:03:26.17 ID:+9q9el+g
巨大な炎の魔法は一瞬で消え去り、空には青空が戻った。

小林「もう……無理……ヨハちゃん……今まで……ありがとう……」

善子『いくのね、小林』

朱夏「我慢して!すぐにトイレ連れてくから!」

朱夏「あんじゅ!トイレいこ!」

杏樹「うん。ほら、行くよ」

降幡「……待って、腰抜けて立てない」

杏樹「そっか」

降幡「いや、まっ!引きずるな!服汚れるから!ちょっと!」ズルズル

小林「ごめんね、朱夏」

朱夏「お願いだから漏らさないで!もう本当お願いだから!」

こうして、パーティーに新しく奴隷が加わった。
159: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/26(月) 21:35:28.53 ID:xsOIaka0
あいあいを『仲間?』に入れた一行は、街の食堂へと来ていた。

小林「あいあいに会えて良かったよー」

降幡「私はよくねーよ」

朱夏「あいあいめっちゃ機嫌悪いじゃんどうしたの?」

降幡「は?そんくらい分かるだろ」

杏樹「しゅかにそんな口聞くなんて、生首だけになりたいのかな?」

降幡「い、いやー、冗談ですよやだなぁ!」

降幡「みんなにまた会えて感激してただけですってば!」

朱夏「変わり身はやっ」

善子『あいあいも大変ね』

小林「そう?楽しそうじゃない?」
160: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/26(月) 21:39:43.08 ID:xsOIaka0
朱夏「あいあいはこっちに来てから長いの?」

降幡「数週間前ですかね、ええ」

降幡「いやー、いろいろありましたよー」

朱夏「その喋り方やめて」

降幡「……そうだな、自分でもあれだと思うわ」

降幡「それで、三人はなんでここに来たんだよ」

小林「強い人がいるって聞いてきたんだよ」

小林「今ね、Aqoursのみんなを探してるの」

小林「ね、ヨハちゃん!」

善子『ええ、そうね』
161: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/26(月) 21:44:14.55 ID:xsOIaka0
降幡「集めてどうすんだよ」

小林「え?」

降幡「ここは異世界なんだぞ」

降幡「こっちに馴染んで生活してる奴らもいるだろ」

降幡「わざわざ集めて何の意味があんだよ」

小林「みんなを集めて、元の世界に帰るんだよ!」

朱夏「え?」

杏樹「ん?」

降幡「そんな方法があんのかよ」

小林「分かんない!でもアニメとかってそういう展開になるんでしょ?」

小林「ヨハちゃんがそう言ってたから間違いない!」

降幡「おい!こいつ魔法で混乱してるだろ!早く治してやれよ!」

朱夏「……」

杏樹「……」

降幡「おい……」
162: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/26(月) 21:49:21.28 ID:xsOIaka0
降幡「まあいいや」

降幡「みんなを探すのは分かったけど、他に何が聞きたいんだよ」

朱夏「この世界についてとか?」

朱夏「いまいちよく分からないんだよねー」

降幡「私もあんまり分かんないって」

降幡「ただ、魔族と人間がずっと戦争してるらしいけど」

朱夏「魔族?」

降幡「ああ。人間みたいな姿した化け物だよ」

降幡「凶暴で残虐みたいな噂を聞いてる。北のほうでずっと戦争してるとか」

朱夏「ふーん」

杏樹「最近変わったこととかは?」

降幡「なんか魔王が復活したとかしてないとか」

降幡「全部噂だけどよ」
163: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/26(月) 21:55:13.13 ID:xsOIaka0
朱夏「そうなんだ、気をつけないとね」

小林「ふふ、魔王なんてこのリトルデーモンの私にかかれば簡単に倒せるわ」

善子『その調子よ、小林』

小林「ヨハちゃんありがとー!」

杏樹「それは置いといてさ、あいあいは他のメンバーのこと知らない?」

降幡「……知らない」

杏樹「なんで嘘付くの?」

降幡「っ……あいつには、会いたくねぇ」

降幡「こっちの世界であいつにあったら……何されるか分かんねぇ」

朱夏「あいあいがそんなに怯えるって……誰だろう」

杏樹「言わないとここで命が終わるけどね」

降幡「……分かった、言うよ」
164: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/26(月) 21:58:28.03 ID:xsOIaka0
降幡「この前、戦争が起きたんだよ」

朱夏「魔族との?」

降幡「いや、人間同士でだ」

朱夏「別に戦争くらい普通じゃないの?」

降幡「……そこは、昔からずっと同盟を結んで、仲良くしていた国同士なんだ」

小林「なんて国なの?」

降幡「シェフ帝国。そこが、一方的に戦争を仕掛けたらしい」

降幡「そんなことするのは、あいつしかいないだろ」
166: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/26(月) 22:01:00.07 ID:xsOIaka0
~戦場~

兵士「我が軍、敵先鋒を蹴散らしました!」

兵士「これより追撃を行います!」

将軍「よーし、ゆけい!逆らう者は皆殺しにしろ!」

ワァァァァァァァァァァァァァァ!!!

将軍「どうですか、陛下」

将軍「戦を見られた感想は」

将軍「我らが軍の圧勝ですぞ」

???「優勝w」
169: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/26(月) 22:06:03.64 ID:xsOIaka0
小林「流石にそんなことしないと思うけど」

小林「あんちゃんとしゅかも、そう思うよね?」

杏樹「するんじゃない?」

朱夏「あー、わかるー。なんか『侵略w』みたいな感じでやってそう」

善子『会って確かめればわかることよ』

小林「あれー?」

小林「まあいっか」

杏樹「向かうところは決まったね」

降幡「マジでいくのか?」

杏樹「うん。梨子ちゃんも見ておきたいしね」

降幡「はぁ……分かったよ」

降幡「今から行くと途中野宿でし、今日は休んで明日の早朝に出よう」

小林「はーい」
170: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/26(月) 22:09:37.06 ID:xsOIaka0
~宿~

杏樹「部屋割りは私と朱夏。あいあいとあいきゃんと善子ちゃん」

善子『ヨハネよ!』

降幡「なんかおかしくね?」

杏樹「朱夏はそれでいいよね?」

朱夏「私は杏樹となら……いいよ」

杏樹「しゅか~!も~!可愛い~!」ギュー

降幡「ったく、こっちまで来ていちゃつくんじゃねーよ」

降幡「ベッド2つだから、あいきゃんが床で寝ろよ」

小林「私はヨハちゃんと一緒に寝るよ!」

降幡「はいはい、そうかよ」
171: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/26(月) 22:13:14.24 ID:xsOIaka0
~ふりりん、小林、善子部屋~

降幡「……なんかおかしいよな」

降幡「しゅかとあんちゃんが仲良かったのは知ってるけど、しゅかって一緒に寝たいって言うようなキャラだったか?」

降幡「見た感じ、向こうの世界と同じようにあんちゃんの一方通行だったし」

降幡「何かあんのかな」

降幡「って、考えても仕方ねーか」

降幡「明日もはえーしさっさと寝る……」

小林「……ヨハちゃん、寒くない?」

降幡「……ん?」
172: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/26(月) 22:26:32.31 ID:xsOIaka0
善子『大丈夫よ。小林が温めてくれるからね』

小林「私もヨハちゃんがいるからあったかいよ」

善子『相変わらずいい匂いね、小林は』

小林「ヨハちゃんにそんなこと言われたら照れちゃうよ」

善子『でも困ったわね。こんなに近いと小林のことを魅了しちゃうわ』

小林「もう魅了されちゃってるよ」

小林「……ねぇ」

善子『なに?』

小林「久しぶりに、したい、な」

善子『ふふ、いいわよ』

降幡「は?」
174: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/26(月) 22:36:30.69 ID:xsOIaka0
降幡「おい、ばかふざけんなよ」

小林「ヨハちゃん……脱いで?」

善子『小林もね』

小林「うん……」シュル

降幡「ま、まてよ、何脱いでんだって」

小林「んっ……ヨハちゃん……柔らかい」

善子『小林は……本当、細いわね』

小林「いや?」

善子『ううん、好きよ』

降幡「や、やめろよ……嘘だろ……」
176: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/26(月) 22:46:43.68 ID:xsOIaka0
小林「んっ、ヨハちゃん、」

降幡「おい、しゅか、お前これ知ってたんだろ」

降幡「くっそふさげんなって、おい、おい」

小林「ヨハちゃん……こっち、触って?」

善子『小林、濡れてるじゃない』

小林「ヨハちゃんだから、だよ」

降幡「や、やめろ、たのむ、やめてくれ」

降幡「ぁ、ききたくない!こんなのききたくねーよ!」

降幡「ぁ、ぁぁっ、ひっ、いっ、!」

ーーー
ーー
178: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2018/11/26(月) 23:04:46.32 ID:xsOIaka0
杏樹「んー!よく寝たー!」

朱夏「あんじゅー、こっちの布団に入ってこないでってばー」

杏樹「いいじゃーん、しゅかー!」

朱夏「いや、よくないよ」

降幡「ぅぅ……」

杏樹「あいあいどうしたの?」

朱夏「あー……」

降幡「頼む……明日から一人部屋にしてくれ……」

小林「なになにどうしたのー?」

降幡「なんでもねーよ……」
189: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/28(水) 22:16:26.14 ID:3HEyGfkC
ブンカの街を出た一行は、Aqoursメンバーがいると推測される戦場へと向かうこととなった。

街を離れる際にふりりんを慕う者達が多く駆けつけたせいで騒ぎになったことを除けば、順調に旅は進んでいき、シェフ帝国に攻められている国へと辿り着いた。

小林「おおー、人がいっぱい!」

降幡「もう城付近まで来てやがったか」

朱夏「うーん、どうしようね」

杏樹「お昼にしよっか」

小林「さんさーい!」

降幡「いやいや、今にも開戦しそうな雰囲気だぞ!?」

朱夏「でもどっちに味方すればいいかも分かんないしね」

降幡「まあそうだけどよ……」

善子『ここでライブをしたら面白そうね』

小林「いいね!ライブしよう!」

杏樹「ライブならあいきゃんはいらないね」

小林「え?」

降幡「まあここにCYaRon!全員いるしな」

小林「しまった!?」

小林「もういいもん、ヨハちゃんとデュエットするもん」
191: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/28(水) 22:27:27.19 ID:3HEyGfkC
「我らはもう後に引けぬ!ここで奴らを倒すぞ!」

ウォォォォォォォォォ!!!

将軍「陛下、敵軍の士気が高く我が軍が押し返されています」

梨香子「ふーん?w」

将軍「ここも戦場になるかもしれません、おさがりください」

梨香子「は?なんで逢田さんが下がらなくちゃいけないんだしw」

梨香子「ぶっ殺してくるわw」

梨香子が姿を現した時、敵兵の視線全てが集まった。

憎き敵国の王。その首を獲ればこの戦争は終わり、さらには散っていった仲間たちの無念を晴らすことができる。

そう考えれば、梨香子の行動は危険以外の何物でもないはずだった。

梨香子「逢田さん舐めんなよw」

凄まじい轟音と共に前方にいた兵士が宙を舞った。

ひしゃげた鎧と共に落下の感覚を味わいながら、悲惨な悲鳴をあげて後方の軍列へと落ちていく。
193: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/28(水) 22:38:30.35 ID:3HEyGfkC
「ひっ!?」

同じ軍の同僚が悲鳴をあげながら落下し、一瞬にしてただの肉塊となる姿は軍全体の士気を下げるには十分であった。

ガチガチガチと震えた体は鎧を鳴らし、だが理性を失った彼らは命令があるまでは逃げることができない。

「えーいw」

そんな彼らはただの格好の的であった。適当な掛け声で何百人という命が軽々と吹き飛び、地面に真っ赤な花を咲かせていく。

「退却ーー!退却しろー!!」

勝ち目のない戦と判断した敵国の指揮官はすぐに軍隊を反転させ、城の中へと逃げ込んでいく。

後ろから追撃される危険性はあるものの、何もしなければ全滅するのは分かりきったことであり、これは正しい判断なのだろう。

「うっさいw」

指揮官の頭から上が吹き飛んだことで、軍全体はパニックとなり、我先にと城門に押し寄せた自国の兵達がお互いを押し退けあい、転んだ者は踏みつけられて命を落とす始末である。
194: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/28(水) 22:50:08.38 ID:3HEyGfkC
「城門を閉めろー!」

「早くしろ!重石になるものを持ってこい!」

梨香子「逃げんなしw」

多大な犠牲を払いながら自国の城へと戻る兵士達。城門が閉まると同時に、安堵の息が至る所から漏れ出す。

「くそが!なんだあの化け物は!」

「はぁ、はぁ、だがこの城の中なら安全だろう」

将軍「敵軍は城の中へと逃げ込みました。このまま城攻めをしますか?」

将軍「おそらく、かなりの被害が予想されますが」

梨香子「被害とかw」

梨香子「それどーんw」

巨大な爆発と共に、城門が跡形もなく吹き飛んだ。

城壁を構成していた煉瓦が大量に城下町へと降り注ぎ、街全体から悲鳴の声が上がる。

梨香子「早くいけw」

将軍「ぜ、全軍突撃ー!」
195: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/28(水) 22:54:28.37 ID:3HEyGfkC
杏樹「梨子ちゃん凄いねー」

朱夏「あんじゅもあれくらいできるでしょ?」

杏樹「まあねー」

降幡「それで、どうすんだよ」

降幡「このまま会いに行っても絶対何かあるぞ」

杏樹「別にいいんじゃない?」

杏樹「しゅかに何かしようとしたら……ね」

朱夏「ん?なに?」

杏樹「なんでもないよー」ギュー

朱夏「もー!引っ付かないでってば!」

小林「もう戦争も終わりそうだし、行ってもいいかな?」

善子『そうね。気をつけるのよ』

小林「うん!」
196: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/28(水) 23:00:42.41 ID:3HEyGfkC
~玉座~

梨香子「優勝w」

王「お、お願いします!どうか、どうか国民だけは……!」

梨香子「逢田さんに指図すんなしw」ゲシッ

王「うっ!」

将軍「陛下!」

梨香子「どしたのいきなりw」

将軍「陛下に会いたいという者達が……」

梨香子「は?w」

杏樹「梨子ちゃん久しぶりー」

梨香子「うわまじかw」
197: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/28(水) 23:06:36.14 ID:3HEyGfkC
小林「やっと見つけたわよ!」

梨香子「いきなり何の用なのw」

小林「みんなでこの世界から脱出するの!」

小林「ね、ヨハちゃん!」

善子『……ええ、そうね』

梨香子「いやだしw」

小林「え?」

梨香子「楽しいんだからこの世界でいいじゃんw」

降幡「……弱い者虐めすることが楽しいのかよ」

梨香子「は?喧嘩売ってんの?w」

降幡「だったらどうすんだよ」

梨香子「消すわw」

朱夏「いやいや、喧嘩しないでって」

朱夏「りきゃこもさー、ちょっとやりすぎだよ」

梨香子「は?w」
198: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/28(水) 23:10:19.96 ID:3HEyGfkC
梨香子「気分悪いから寝るわw」

小林「あ!」

杏樹「行っちゃったね」

朱夏「そろそろいい時間だしねー」

杏樹「私たちも寝よっか」

朱夏「寝る場所あるかな」

杏樹「お城なんだからいっぱいあるよ!」

杏樹「部屋割りはーー」

朱夏「今日はみんな一緒でいいんじゃない?」

朱夏「何かいやな予感がするし」

杏樹「いいよー!じゃあ大きい部屋探そっか!」
199: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/28(水) 23:21:36.94 ID:3HEyGfkC
~夜~

ドォォォォォォォォォォォォォン!!!

それは大きな破壊音であった。

喧騒と悲鳴が混じり合い、至る所で鉄のぶつかる音が響き合う。

侵略されたばかりの国でそれが起こるのは、略奪が始まった時だけだろう。

だが、今回に限って言えば略奪は起こっておらず、またそんな指令も出されてはいなかった。

梨香子「どうしたしw」

将軍「ま、魔族です!魔族が現れました!」

梨香子「はぁ?w」

小林「遂に……来たのね」

梨香子「魔族ってなんだよw」

降幡「ちっ!すぐに助けに行くぞ!」

梨香子「えー、面倒じゃんw」
200: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/28(水) 23:27:28.44 ID:3HEyGfkC
杏樹「こっちにも来たみたいだね」

朱夏「そうだね。捕まえて事情を聞こうか」

乾いた音を立てながら足音が玉座へと近づいてくる。

例え魔族がどんな者であれ、負けることはないと全員が確信している。

小林「え?」

降幡「……なんでここにいるんだよ」

姿を現した思わぬ人物に、全員が驚きの声を上げる。

杏樹「そうだね。どういうことなのか説明してくれるのかな」

杏樹「あいにゃ」

愛奈「…………」
201: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/28(水) 23:33:35.18 ID:3HEyGfkC
梨香子「あいにゃじゃんw」

梨香子「なにやってんのこんなところでw」

小林「そうよ!今大変なんだから!」

小林「魔族が来たんだって!早く逃げないと!」

梨香子「は?逃げる必要なんてないでしょw」

愛奈「…………」

梨香子「てかどうして黙ってんの?w」

梨香子「こっち来て話そうよw」

愛奈「…………」

愛奈へと歩み出そうとした梨香子の足は、愛奈の手によって止められた。

愛奈の手に持たれていたのは、巨大な禍々しい大剣であり、その切っ先は確実に梨香子へと向けられていたのだ。

愛奈「そういうヘラヘラしたところ、大嫌いだった」
209: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/29(木) 22:55:35.98 ID:lOaGm4JS
梨香子「あ、あいなちゃん……?w」

巨大な大剣を振りかぶり、困惑する梨香子へと思い切り振り下ろされた。

降幡「ボサッとすんな!」

鋼と鋼が激突する音を響かせ、愛奈の斬撃が二本の剣で受け止められた。

しかし、力の強さのせいか、徐々にふりりんの足が後ろへと下がる。

降幡「おい、どういうつもりだよ!」

愛奈「…………」

小林「ど、どうしようヨハちゃん」

善子『戦うしかないでしょう』

小林「分かった!」

小林「【堕天奥義・封殺宣教師】」
210: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/29(木) 23:04:46.75 ID:lOaGm4JS
じゃらららと金属を擦り付けた音と幾多もの鎖が飛び出し、愛奈の体を拘束する。

すぐに振りほどこうとした愛奈は、自身を囲む無数の黒い剣に、その攻撃が束縛だけでないことに気づく。

小林「……死になさい」

降幡「殺してどうすんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

小林「あっ」

隙間のない雨のように降り注ぐ無数の剣が、愛奈へと襲いかかる。

それは処刑現場と言い換えていいような状態ではあるが、焦った声を上げる降幡と小林とは違い、愛奈は冷静であった。

愛奈「『光よ手繰れ』」

愛奈の右手から何筋もの光が飛び出し、自身へと向かう剣を弾き飛ばしていく。

精密にコントロールされているのか、一切の撃ち漏らしもなく、愛奈は無傷で攻撃を凌ぎ切った。
211: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/29(木) 23:15:17.38 ID:lOaGm4JS
梨香子「よっわw」

小林「た、たまたまよ!」

小林「こうなったらもっと凄い技を使うんだから!」

降幡「やめろって!しゅか!なんとかしてくれ!」

朱夏「えー、無理だって」

朱夏「もういいんじゃないかな、好きにやらせれば」

梨香子「ボコボコにするw」

降幡「こっちはダメか……」

降幡「おい!あいにゃ!なんでこんなことすんだよ!」

降幡「魔族なんて味方するなよ!あいつらは人間をいたぶって楽しむ化け物なんだぞ!」

愛奈「……化け物はどっち?」

降幡「え?」

愛奈「人間の方が……化け物でしょ」

降幡「どういう、意味だよ」
212: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/29(木) 23:24:47.57 ID:lOaGm4JS
杏樹「そろそろ寝たいから、一回捕まえよう」

杏樹「話はそれから聞くよ」

朱夏「そうしよっか」

梨香子「死刑w」

愛奈「…………」

愛奈は何も言わずに、剣を鞘に収めた。それが降伏を意味することではないだろうということは雰囲気から分かるが、何故わざわざ剣をしまったのかを推測することはできない。

小林「降参したみたいだよ!」

しかし小林はアホだから分からなかった。

善子『あれは降参する人の雰囲気じゃないわ、小林』

小林「え、そうなの?」

善子「ええ、あれは多分……」
213: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/29(木) 23:30:41.89 ID:lOaGm4JS
愛奈「もうこの世界に関わらないで」

愛奈「何処かの村で、おとなしくしていて」

愛奈「そうすれば、命だけは助かるから」

朱夏「なんで?」

愛奈「……人間を滅ぼすから」

愛奈「私たちが」

杏樹「ふーん」

愛奈「次会った時は、見逃さないから」

そう言い放ち、愛奈は月明かりの下を颯爽と走り去っていく。

杏樹と朱夏の身体能力であれば追いかけて捕まえることもできたが、杏樹は愛奈を捕まえることにさして興味が無く、朱夏はその発想がなかった。
214: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/29(木) 23:34:34.79 ID:lOaGm4JS
次の日、街は復旧で大忙しだった。

他国に攻め入られた日の夜に魔族に攻められる等、どれも経験したことのないような悲惨な目に遭ったのだし、それは当然のことだろう。

降幡「そんで、どうすんだよ」

小林「そんなの決まってるじゃない!」

小林「魔界に行って、あいにゃを助けるのよ!」

朱夏「魔界ってなに?」

杏樹「きっと魔族の住んでいるところって意味だよ」

朱夏「へー、そうなんだ」

朱夏「じゃあ北に行く?」

降幡「そうだなー」
215: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/29(木) 23:38:11.21 ID:lOaGm4JS
降幡「そんで、お前はどうすんだよ」

梨香子「は?なに偉そうな口聞いてんの?w」

杏樹「梨子ちゃんも行くよ」

朱夏「そうだね」

梨香子「私、王様だしw」

朱夏「いなくなった方がいい王様でしょー」

梨香子「はぁ?w」

降幡「結局どうすんだよ」

梨香子「あいにゃに文句言いたいから行くわw」

小林「よーし、そうと決まれば、北へレッツゴー!」

善子『頑張るのよ、小林』
216: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/29(木) 23:45:44.77 ID:lOaGm4JS
~とある街道~

「馬鹿な……こんな馬鹿なことが……!」

とある街道では、今まさに争いが起きていた。

襲われているのは商人であり、荷馬車には大量の荷物が乗っている。

そして、襲っているのは盗賊団だ。

もちろん、商人は盗賊に襲われることを考慮して、冒険者に依頼し、警備を頼んでいた。

しかも、今回はAランクパーティーという世界に10組もいない程の凄腕の冒険者を雇ったのだ。

だから安心していたし、盗賊団に襲われた時も慌てることはなかった。

しかし、現実は残酷で会った。

盗賊団の頭が、破格の力を持っていたのだ。

あっという間に冒険者は皆殺しにされ、戦えない御者達が馬車から引きずり降ろされている。
217: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/11/29(木) 23:52:11.42 ID:lOaGm4JS
下卑た笑い声と泣き叫ぶ声が混じり合い、地獄の光景を生み出している。

「っ、頼む!金目のものは全て渡す!だからやめさせてくれ!」

商人はこれ以上の被害を出さないよう、盗賊団の頭へと頭を下げる。

プライドなどと言っている場合ではない。ここでの選択ミスは、命に関わるのだから。

しかし頭は答えない。ただニヤニヤと、馬車の乗組員が酷い目に合う姿を見ているだけだ。

「な、なぁ、金が欲しいならやる!だから、たのーー」

その先の言葉を、男が言うことはできなかった。

目に終えない速さで振り払われた拳が男を吹き飛ばし、近くの木へと叩きつけたのだ。

???「あー、うるさくて何言ってるかわかんない」

???「ここは動物園かなー?」
242: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/03(月) 22:58:12.57 ID:lWbv0SVV
~北へ進行中~

降幡「なんかおかしくね?」

杏樹「何が?」

降幡「ずっと思ってたんだけどよ、全然疲れなくない?」

小林「ダンスで鍛えてるから歩いても疲れないよ!」

善子『そういう問題じゃないわ、小林』

善子『4時間歩きっぱなし。しかも途中で何度も戦闘をしてるのよ』

小林「なるほどね!流石ヨハちゃん!」

朱夏「んー、でもそんなもんじゃないの?」

朱夏「私たちなんだか強いみたいだし」

降幡「考えもわかんねーか」
243: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/03(月) 23:01:46.70 ID:lWbv0SVV
梨香子「ていうか暇すぎw」

梨香子「なんか面白いことしてよw」

降幡「だってよ、あいきゃん」

小林「私!?」

梨香子「あいあいがやりなよw」

降幡「え?」

梨香子「早くやってw」

降幡「いや、いきなり無茶振りすんなし」

降幡「まあいいや、物真似してやるよ」

梨香子「わくわくw」

降幡「…………ん」コホン

降幡「そういうヘラヘラしたところ、大嫌いだった」キリッ
244: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/03(月) 23:06:52.27 ID:lWbv0SVV
朱夏「それパクリじゃんw」

梨香子「は?w」

梨香子「キレそうw」

降幡「うっせ!無茶振りばっかりさせんじゃねーよ!」

小林「今の何のネタなの?」

善子『あいにゃが言ってた台詞よ』

小林「あー!あの時の!」

小林「あいにゃはなんで逃げたんだろうね」

善子『それを確かめようとしてるのよ』

小林「そうなんだ!ヨハちゃんは物知りだね!」

善子『人の話はちゃんと聞きなさい』
245: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/03(月) 23:15:16.14 ID:lWbv0SVV
更に三時間程歩き、太陽が完全に落ちたぐらいで一向は野宿の準備をした。

焚き木の準備などを手分けして行い、途中事故に見せかけて杏樹が小林を崖から突き落とそうとしたが、善子のお陰でなんとか難を逃れた。

ご飯を食べた一向は火を囲み、見張りの順番を決めることにした。

杏樹「見張りは二人一組にしよう」

朱夏「そうだねー、一人だと暇だもん」

杏樹「私としゅか、あいあいと梨子ちゃん、あいきゃんと善子ちゃんでいいよね」

降幡「いや、ちょっとまてよ」

杏樹「あいきゃんとやる?」

降幡「…………」

杏樹「決まりだね」

杏樹「あいきゃん、最初の見張りお願いしてもいい?」

小林「いいよー」

小林「ヨハちゃんもいいよね?」

善子『問題ないわ』

小林「いいって!」

杏樹「じゃあ二番目は私としゅかで」

朱夏「はーい」
246: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/03(月) 23:19:19.89 ID:lWbv0SVV
パチパチパチパチ

小林「二人きりだね、ヨハちゃん」

善子『ええ、そうね』

善子『……ねぇ』

小林「なーに?」

善子『小林は、元の世界に戻りたい?』

小林「うーん、戻りたいかなー?」

善子『どうして?』

小林「家族とか、ファンのみんなが心配してると思うし」

小林「あ、でも、ヨハちゃんがいるなら何処でもいいよ」

善子『……本当?』

小林「うん。だって、ヨハちゃんは私の一番大切な人だもん」

善子『……ありがとう、小林』
248: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/03(月) 23:24:39.60 ID:lWbv0SVV
善子『…………!』

小林「?どうしたの、ヨハちゃん?」

善子『何か来るわ』

小林「何が?」

善子『耳を澄ましなさい、小林』

小林「うーん……馬?5頭?」

善子『そうね。みんなを起こしなさい』

善子『敵が来たわよ』

小林「うん!すぐに起こすね!」

降幡「敵か?」

小林「あ!あいあい!なんで起きてるの?」

降幡「いや、馬の音が聞こえて起きたんだよ」

小林「へー、凄いね」

降幡(本当はお前の一人言が聞こえてきてて眠れなかったんだよばかやろう!)
250: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/03(月) 23:37:24.26 ID:lWbv0SVV
「おうおう、こんなところに誰がいるのかと思えば可愛いお嬢ちゃんじゃねーか」

「へっへっ、最近運がいいな。またキングに土産ができたぜ」

野盗達は二人を見つけると、愉快そうに声を上げた。

その頭の中では捕まえたら何をしようかと皮算用を始めており、自分たちが負けるなどとは一切考えていなかった。

降幡「おい、痛い目みねーうちに消えろ」

「だってよひひひw」

「どんな目に合わせてくれんだー?」

善子『見せてあげなさい、小林』

小林「うん!」

降幡「!おい、やめっ!」

小林「【煉獄に咲くは血塗られた薔薇】《ブラッド・アイン・ローズ》」
252: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/03(月) 23:46:21.67 ID:lWbv0SVV
突如として地面から現れた蔓が一人の野盗の左手を貫き、そのまま肩まで貫通した。

しかし、それは一本だけではない。

野盗の足元から鎖のように無数の蔓が次々と現れ、槍のように襲い掛かっていく。


「いぎゃぁぁぁぁぁっっっ!!」

「いでぇっ!目がぁっ!!やめでくれぇぇぇっ!」

蔓は一本一本が頑丈であり、野盗の骨を砕き、その血を養分として紅い薔薇を咲かせていった。

後に残ったのは、蔓に縫いとめられながら絶命した野盗達と、綺麗に咲き誇るたくさんの薔薇だ。

小林「ヨハちゃん、綺麗に咲いたよ」

小林「ヨハちゃんにぴったりだね」

善子『ありがとう、小林』

小林「はい、ヨハちゃんに一本あげる」

善子『私はいいわ』

小林「そっか。はい、あいあい」

降幡「いらねーよ!」
253: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/03(月) 23:52:02.03 ID:lWbv0SVV
杏樹「なにしてんの?」

降幡「ああ、あんちゃん。実は……ってお前がなにしてんだよ!」

杏樹「しゅかをお姫様抱っこしてる」

朱夏「くー……」スヤスヤ

杏樹「しゅかー、かわいいよー」スリスリ

降幡「……まあいいや。敵だよ」

降幡「それと、多分まだ仲間がいる」

杏樹「そっか。じゃあ叩き潰しに行こう」

降幡「そうだな。他の人が被害にあうといけねーし」

降幡「今から行くか?」

杏樹「しゅかを起こしたくないから明日」

降幡「まじでブレねーな……」

杏樹「どうせ梨子ちゃんも起きてこないし」

降幡「それもそうか」
254: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/04(火) 00:04:17.42 ID:hMhu0/tI
~北の砦~

???「愛奈さん、お帰りなさい」

愛奈「……ええ」

???「どうでした?」

愛奈「別に」

???「昔の仲間と会ったんですよね?」

???「能力とか、分かりましたか?」

愛奈「……」

???「私たちの目的、忘れていませんよね」

愛奈「分かってるわ」

愛奈「人間を、滅ぼす」

???「……そうですね」

愛奈「じゃあ、そろそろ行くから」

???「お気をつけてー」

???「…………」

???「もう少しだけ待っててね、しゅか」

???「もうすぐ迎えに行くから」
262: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/04(火) 22:28:57.33 ID:hMhu0/tI
降幡「あれが盗賊の隠れ家か」

杏樹「洞窟の中に住んでるなんて、ファンタジーみたいだね」

朱夏「そういう世界だしねー」

杏樹「ボスも……中にいるみたいだね」

降幡「作戦はどうする?」

杏樹「殲滅で」

降幡「っておい!?」

善子『こういうのも燃えるわね、小林』

小林「うん!テンション上がってくるよね!」

小林「みんな始まろうぜー!」

降幡「騒ぐなぼけ!」
263: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/04(火) 22:34:51.15 ID:hMhu0/tI
小林の叫び声で敵に気付かれたかと思ったが、その心配はなかった。

作戦会議が面倒だった人物が、さくっと見張りを葬ってしまったからである。

梨香子「弱すぎw」

降幡「勝手に行くなよ!」

梨香子「は?何命令してんの?w」

小林「よーし!行くわよヨハちゃん!」

善子『気を付けなさいよ』

降幡「勝手に行くな!」

朱夏「わー、犬だ!可愛い~」ナデナデ

杏樹「しゅかの方が可愛いよ~」ナデナデ

朱夏「いやいや、今犬の話だから」

降幡「犬と遊んでんじゃねーよ!」
265: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/04(火) 22:48:26.13 ID:hMhu0/tI
勝手に入っていった小林の後を追い、みんなが好き勝手に洞窟へと足を進めていった。

この洞窟は対侵入者用の備えもしてあり、過去には討伐に来た騎士団を返り討ちにした例もある。

そのため、盗賊達にも余裕があったのだ。また今回も勝つだろうと。

小林「おお、生きてたんだ」

だが、そう考えていたものは考えを改める間も無く死んでいった。

壁を貫通して来た無数の槍に、抵抗できなかったのだ。

「ぁ、ぁぁ、だ、だずげで、ぐれ、」

左手を抉り取られ、傷口から黒ずんだ血を流しつつ命乞いをする盗賊を見つけ、小林は立ち止まった。

辺りからは運悪く死にきれなかった盗賊達の悲痛な声が怨嗟のように湧き出ている。

小林「ヨハちゃん、どうした方がいい?」

善子『後で何かされるといけないから、殺した方がいいわね』

小林「うん!流石ヨハちゃん!」

それが、盗賊が最後に耳にした言葉であった。
266: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/04(火) 22:57:23.72 ID:hMhu0/tI
他の盗賊達も軒並み同じ目にあっていた。

元より戦力差を考えればこうなることは分かることだろうが、それを盗賊達に言うのは可哀想なことであろう。

朱夏「はいよーっと」

朱夏の振り下ろした大剣を受け止めようとした盗賊が、真っ二つに引き裂かれる。

隠れて梨香子を襲おうとした盗賊が、隠れていた家具ごとぺしゃんこに潰される。

杏樹の視界に入った盗賊が、一瞬のうちに消し炭になる。

これは戦いなどではなく、一方的な虐殺であった。

降幡「お、おい……」

朱夏「どうしたのあいあい?」

降幡「いや、お前ら……なんで殺せるんだ?」

降幡「悪いやつらとはいえ、人間だろ?」

朱夏「人を人と思わなければ大丈夫だよ」

降幡「しゅ、朱夏……?」

朱夏「よーし、もっと先へ行くぞー!」

降幡「……悪夢だ」
267: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/04(火) 23:02:21.44 ID:hMhu0/tI
高槻「酒ねーぞ!早くもってこい!」

「へい!ただいま!」

高槻「あー、こっちの世界まじ最高だわー」

高槻「やりたい放題できるしよー」

「流石あっしらのキング!よくわかんねーけどついていきやす!」

高槻「うっせーよ、つか酒はまだか」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!」

高槻「なに騒いでんだボケ!」

高槻「おい、様子見てこい」

「へい!」

高槻「使えねーやつらばっかじゃん」

高槻「あーあ、なんかおもしれーことねーかな」

高槻「いっそのこと街でも侵略するか」

どぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!

高槻「……あ?」

杏樹「面白そうな話してるね」

高槻「げっ」
268: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/04(火) 23:14:09.17 ID:hMhu0/tI
梨香子「きんちゃんじゃんw」

小林「ええ!?なに盗賊のキングやってるの!?」

善子『全く上手くないわよ、小林』

杏樹「おとなしく降伏するなら、命だけは助けてあげるよ」

降幡「もうどっちが悪なのかわかんねーよ……」

高槻「はぁ?降伏ぅ?」

高槻「誰が降伏するってぇ?」

高槻「こっちはチートみたいな力もらってんだよ」

杏樹「こっちも貰ってるよ。全員ね」

高槻「それがなんだって言うんだよ」

高槻が立て掛けられていた巨大な斧を掴み取る。

それは柄も含めれば全長2mもあるだろうか、自身よりも大きいそれを高槻は軽々と振るって見せた。

高槻「お前ら全員ここでころしーー」

高槻が言葉を終える前に、斧は一瞬のうちに灰となった。
269: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/04(火) 23:17:41.34 ID:hMhu0/tI
高槻「……え?」

杏樹「だってさ、みんな」

杏樹「全員で袋叩きにしよっか」

高槻「いや、あの……」

梨香子「袋w」

小林「そっか。多分、洗脳されてるんだ」

小林「脳を貫けば治るかな?」

善子『死ぬだけよ、小林』

小林「そっかー」

高槻「……!」

杏樹「言い残すことはある?」

高槻「……ずら?」

高槻「うーん、オラ、バカだから何言ってるか分からないずら~」
271: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/04(火) 23:22:29.16 ID:hMhu0/tI
降幡「そんなので誤魔化されるか!」

降幡「早く謝っちまえよ!」

高槻「わ、悪気はなかったずらぁ」

高槻「ただちょーっと魔が差しただけずら」

杏樹「そっか。じゃあ仕方ないね」

高槻「う、うん!あんちゃんが優しい人で良かったず……あ、あれ、な、何するつもり……ずら?」

杏樹「力関係ハッキリさせておいた方がいいでしょ」

高槻「え、え……?」

杏樹「今までで一番怖かったこと、見せてあげる」

高槻「や、やめっ!」

杏樹「『悪夢再演』」
272: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/04(火) 23:25:50.35 ID:hMhu0/tI


高槻「あれ、ここは……?」

高槻「確かあんちゃんに手を向けられてたはず……」

降幡「どうかしたか?」

高槻「あいあい?どうしてここにいるの?」

降幡「どうしてって、今日はあいきゃんの家に遊びに来たんだろ?」

高槻「あれ、そうだったっけ」

降幡「まだ寝ぼけてんのか?」

高槻「かもしれない」

高槻「昨日飲み過ぎちゃったかなー」
273: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/04(火) 23:30:38.57 ID:hMhu0/tI
小林「二人ともお待たせ~」

小林「ご飯もうすぐできるから食器の準備だけしちゃうね」

高槻「あー、ありがと」

カチャンカチャン

高槻「ん?」

高槻「なんで4箇所に並べてんの?」

小林「え?あってるでしょ?」

降幡「3人……だろ?」

小林「ううん、4人だよ」

小林「私と、あいあいと、かなこと、ヨハちゃん」
275: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/04(火) 23:32:54.98 ID:hMhu0/tI
高槻「ヨハ……ちゃん?」

高槻「いるわけないだろ仕事のしすぎだってw」

降幡「あいきゃんも酒入ってんのか?」

降幡「酔っ払い2人の世話とかやめてくれよ」

小林「……?」

小林「何言ってるの?」

小林「ヨハちゃんはここにいるよ?」

高槻「っ!?」ゾクッ
277: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/04(火) 23:36:17.14 ID:hMhu0/tI
小林「このご飯もね、ヨハちゃんに作るの手伝ってもらってるの」

小林「今は火加減見てもらってるんだ」

小林「ヨハちゃんはね、結構甘えん坊なんだよ」

小林「それに優しいの」

小林「なんだかんだ言って、いつも一緒のベッドで寝てくれるもん」

高槻「……」ガタガタガタ

降幡「……」ガタガタガタ

小林「……あれ、なんで黙ってるの?」

小林「2人も、ヨハちゃんの手料理食べられて嬉しいよね?」

高槻「……は、はい」ガタガタガタ

降幡「う、嬉しい……です……はは……」ガタガタガタ

小林「うんうん、そうだよね」

小林「ちゃーんと、4人でご飯食べようね」

278: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/04(火) 23:41:24.36 ID:hMhu0/tI
高槻「ぁぁぁぁぁぁぁっっっっやめてくれぇぇぇぇぇっっっっ!!!」

高槻「たすげっっっ、たずげでっっっぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

梨香子「やばw何見てんのw」

降幡「……もしかして、あれなのか」ゾクッ

小林「怖い体験を見させられるんだって」

小林「怖いね、ヨハちゃん」

善子『そうね。私たちも、あんちゃんを怒らせないように気を付けないと』

朱夏「あんじゅー、何見せてんのこれー」

杏樹「わかんなーい!しゅかには天国見せてあげよっかー?」

朱夏「いや怖いからいいって」

降幡「……これで6人揃ったし、まあいいか」

小林「何言ってるの?7人だよ?」

降幡「そ、そうだったな!7人だよな!あはは、はは……」

降幡「頼む……まともなやつ……早く来てくれ……」
296: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/05(水) 23:05:59.28 ID:w6dFNv0t
高槻を仲間に入れた一向は、近くの街に行くことにした。

降幡「おおー、結構大きな街だな」

朱夏「そうだねー。ちゃんとしたもの食べたいし今日はここに泊まろうよ」

高槻「賛成ずら~!美味しいもの、いっぱい食べたいずら~」

小林「なんで変な喋り方してんの?」

善子『心の病気よ。あまり触れない方がいいわ』

小林「そうなんだ……ごめん、辛いことがあっても頑張ってね」

高槻(お前に言われたくねーよ!)

降幡「まだ時間あるし、情報でも集めないか?」

杏樹「そうだね。じゃあ手分けしていこう」
304: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/05(水) 23:13:06.67 ID:w6dFNv0t
朱夏「おいしー!」

杏樹「次は何が食べたい?」

朱夏「ハンバーグ!」

杏樹「よーし、待っててね!」

カンカンカン

杏樹「できたよー!」

杏樹「しゅかの大好きなチーズインハンバーグ!」

朱夏「おおー!あんじゅ最高ー!」

杏樹「あーん」

朱夏「それはいいって恥ずかしいしー」

杏樹「飲み物は何飲むー?」

杏樹「お酒はー?」

朱夏「まだお昼だよなに飲もうとしてるのー」
314: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/05(水) 23:19:52.02 ID:w6dFNv0t
高槻「あー、なんでこんなことしなくちゃいけないんだろ」

高槻「適当に遊んで時間潰すかー」

降幡「おい、サボろうとしてんじゃねーよ」

高槻「げっ」

降幡「どうせ他の連中はまともに情報集めしないだろうし、私らがやるぞ」

高槻「はー?面倒なんですけどー?」

降幡「何にも持ってかねーとあんちゃんに怒られるだろうなー」

高槻「!?」

降幡「じゃあ頑張れよ」

高槻「ちょ、待てよ!私も行く!」
320: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/05(水) 23:25:40.81 ID:w6dFNv0t
「お、おい!ここは領主様の家だぞ!」

梨香子「いいじゃんw入れてよw」

「ダメに決まってるだろ!」

「誰かこいつを……うわっ!?」

梨香子「お邪魔しまーすw」

「で、であえー!」

梨香子「うっさいw」

「し、侵入者!?」

梨香子「ちょっとw一番いいベッドの部屋教えてw」

「え?」

梨香子「眠いから寝に来たw」
326: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/05(水) 23:31:49.13 ID:w6dFNv0t
小林「こんにちはー」

「いらっしゃーい」

小林「ミルクくださーい」

「はいはーい」

小林「……あれ」

善子『どうしたの、小林』

小林「何聞くんだっけ?」

善子『……魔族のこととか、この辺りの情勢よ』

小林「なるほどね!」

(なんで一人言してるんだろうこの人)

小林「すいませーん」

「は、はい!?」

小林「魔族についての噂とか聞いてたりしませんか?」
330: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/05(水) 23:36:12.68 ID:w6dFNv0t
「魔族……うーん、それだと魔王の話、とか?」

小林「魔王がどうしたんですか?」

「最近、魔族の動きが活発でしょ?」

「どうやら、全部魔王が復活しそうなのが原因らしいの」

小林「ほえー、怖いですねー」

「そうなのよー。旅してるんだったら、あなたも気をつけてね」

小林「はーい」

小林「そうだ、それと最近変わったことってないですか?」

「変わったこと……うーん、そういえば近くの国の名前が変わったとか聞いたような」

小林「なんて名前なんです?」

「確か……すわわーるど……だったかな?」

小林「へー、変な名前ですねー」

善子『小林……』
331: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/05(水) 23:40:57.25 ID:w6dFNv0t
降幡「まあ分かってたけど……誰も情報集めてねーよな」

梨香子「そういうあいあいはどうなのw」

降幡「かなこといろいろ行ったけど、空振りだよ」

杏樹「あいきゃんは?」

小林「私はいろいろ聞けたよ!」

降幡「本当か!?」

小林「うん。なんか、魔王が復活するから魔族が活発なんだって!」

善子『小林、もう少し分かりやすく説明したほうがいいわ』

小林「うん!つまり、私たちの旅の目的が分かったんだよ!」

降幡「……?旅の目的?」

小林「そう!魔王を倒して元の世界に帰るの!」

朱夏「魔王……を倒すと戻れるの?」

小林「戻れるよ!ね、ヨハちゃん!」

善子『ええ、セオリー通りならそうね』
336: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/05(水) 23:44:57.92 ID:w6dFNv0t
高槻「別に戻りたくねーし」

杏樹「それは一回置いといて、他には何かある?」

小林「うーん、ないかなー」

善子『あるわよ、小林』

小林「え、なんだっけ?」

善子『新しい国よ』

小林「えー?名前が変わっただけだし関係ないよ」

降幡「名前?なんの話ししてるんだ?」

小林「だから、国の名前が変わったんだってば」

朱夏「何て変わったの?」

小林「えーと確か……すわわーるど、だったかな」

降幡「……すわわーるど……っておい!」

杏樹「もう1人見つかったね」
340: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/05(水) 23:49:36.07 ID:w6dFNv0t
「ご当主様、本日の夕食ができました」

「うむ」

「あの、本日は私がお背中を……」

「ちょっと!今日は私の番よ!」

「ふんふん」

「新しく雇い入れるメイドのリストです。ご確認ください」

「ん」

「お気に召した者はいましたか?」

すわわ「うむ」
355: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/08(土) 00:45:52.18 ID:ahAI/yEK
梨香子が領主の家を襲撃したことにより街を追われることになった一向は、すわわーるどへと向かうことにした。

到着すると、凄まじい歓声が上がっているのに気付く。

その声は黄色い声が多く、危険なことが起きているわけではないと簡単に推測ができ、小林達はその声の方へ向かうことにした。

小林「うわー、凄い人だね」

善子『そうね。スリには気をつけなさい、小林』

小林「はーい」

降幡「あいきゃん、財布盗られてんぞ」

小林「え!?嘘!?」

降幡「取り替えしたから落ち着け。気を付けろ」

小林「ありがとう、あいあい!」

善子『なにやってんのよ小林!』

小林「ごめんね、ヨハちゃん……」
358: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/08(土) 01:08:39.29 ID:ahAI/yEK
朱夏「なんの集まりなんだろうねー」

杏樹「みんなお城の方向いてるね」

降幡「……ん、あれは」

ふりりんが見つけたのは、観客の視線の先にいた一人の美少女だ。

顔の作りが可愛い系によっているためか、身長よりも若干小柄に見える体型。

眉毛を隠すぐらいで綺麗に切り揃えられた艶やかな黒髪は、端を綺麗に伸ばしてあり、彼女の密かな遊び心が伝わってくる。

今の彼女はAZALEAの衣装に身を包んでおり、一目見た者には、純白で、清楚なイメージを運ぶ。

また、幼さを残す表情がそれを際立たせており、見ているだけで心が安らいでいくだろう。

無論、彼女の魅力を語るのに顔だけで終わることはない。

腕に注目すれば、その細さからいかに彼女が華奢であるかが分かるだろう。

胸についても特に大きくは無く、どちらかといえば小さい方であるが、それがまたよい。

余談ではあるが、彼女が現実の世界で発売した『7ct』という写真集では全120種の内、谷間を作っているのはない。

それが彼女のあどけなさをより一層深めている。

庇護欲を刺激するあどけなさ、しかし、太腿に注目した時は例外だ。

雪のように真っ白で、むっちりとした程よい肉付きの太腿。

その触り心地は絹のように柔らかであることが容易に想像できるだろう。

それが体全体とのギャップを生み出し、一部の者が邪な思念に駆られることもある。
361: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/08(土) 01:15:36.06 ID:ahAI/yEK
ワーワーキャーキャー!!!!

杏樹「やっぱりおすわだったねー」

朱夏「なんであんなところにいるんだろう」

梨香子「王様なんでしょw」

高槻「どうでもいいからさっさと宿行きてーな」

降幡「これじゃあ近付けないし、現状探った方がいいんじゃねーのか?」

小林「ヨハちゃんはどう思う?」

善子『そうね。このままだと話しかけられないし、あいあいの言うことに賛成よ』

善子『情報を集めてから考えましょう』

小林「うん!」

杏樹「それじゃあ自由行動で、夜にあそこの宿に集まろう」

小林「はーい!」
362: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/08(土) 01:20:24.43 ID:ahAI/yEK
小林「ヨハちゃんとデートだー!」

善子『今はそんな場合じゃないでしょ』

小林「でも!二人きりなんだよ!」

小林「手を繋ぎたいな~」

善子『……全く、仕方ないわね、小林は』

小林「えへへ~」

善子『それで、何処向かってるの?』

小林「分かんない!」

小林「ヨハちゃんと一緒ならどこでもいいかなって」

善子『はぁ……馬鹿ね、小林は』

善子『だから、代わりに私が考えてあげるわ』

小林「ありがとう、ヨハちゃん!」

スッ

小林「ん?」
363: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/08(土) 01:26:28.94 ID:ahAI/yEK
善子『どうしたの?』

小林「いや、なんか今誰かいたような……」

小林「誰なんだろ、こっちを見てた気がする」

善子『気を付けなさいよ、小林』

小林「うん!」

ソロソロ

小林「こっちの方だよねー」チラッ

小林「誰もいない……」

小林「うーん、気のせいだったのかなー」

善子『……!小林!うしーー』

小林「へ?……むぐっ!?」

小林「んっ……っ、ぐっ、っっ、」

小林「…………」パタン

「…………」
364: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/08(土) 01:30:38.20 ID:ahAI/yEK
~数時間後~

小林「ん……あれ」

小林「ここ何処……?すっごい豪華な部屋みたいだけど……」

小林「……あ!夢か!」

善子『夢じゃないわよ』

小林「え?」

善子『誘拐されたのよ、小林は』

小林「ええっ!?」

小林「ど、どどどどどうしよう!」

小林「えっちなことされちゃう!」

善子『問題はそこじゃないわよ、小林』

善子『犯人の目的が何なのか、そこをきちんと見極めないと』

小林「うーん、なんなんだろう、お金かな」

ガチャ

小林「ん?誰?」

すわわ「うむ」
365: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/08(土) 01:32:41.80 ID:ahAI/yEK
小林「おすわだー!」

小林「あれ、でもなんでここにいるの?」

小林「もしかして、ここのベッドに寝かせてくれたのはおすわなの?」

すわわ「うむ」

小林「ありがとう!」

善子『……小林、すぐにすわわから距離を取りなさい』

小林「え?なんで?」

善子『そいつが犯人よ』

善子『小林を誘拐した……ね』

小林「えーー!?」
366: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/08(土) 01:35:10.42 ID:ahAI/yEK
小林「ね、ねぇ、おすわが私を誘拐したの?」

すわわ「うむ」

小林「理由がある……んだよね?」

すわわ「ん」

小林「それはどういう……な、なんで近づいてくるの?」

すわわ「ふんふん」

小林「あ、あの……」

小林「もしかして……」

小林「……えっちなこと、されちゃう?」

すわわ「うむ」
369: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/08(土) 01:41:57.56 ID:ahAI/yEK
小林「ヨハちゃん!逃げるよ!」

咄嗟にベッドから飛び降り、窓へと走ろうとした小林の両足に激痛が走ったかと思うと、まるで感覚がなくなったかのように、足が機能を停止した。

小林「え?」

勢いのまま足が動かなくなった小林は当然のように地面を転がっていく。

起き上がろうと、足を必死に動かそうとするが、大地に縫いとめられたかのように動いてはくれないのだ。

小林「なんで……」

すわわは床に転んだままの小林を持ち上げ、お姫様抱っこでベッドへと運んでいく。

ベッドに仰向けにされた小林の上に、すわわは馬乗りとなり、少しずつ小林の服を剥ぎ取っていく。
371: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/08(土) 01:46:31.96 ID:ahAI/yEK
小林「ま、待って!」

すわわ「ん」

小林「だ、だめ、私にはヨハちゃんっていう心に決めた人がいるのに」

すわわ「ふんふん」

小林「お願い、やめて」

すわわ「ん」

小林「いやー!!誰か助けてー!!犯されるーー!!」

すわわ「おい!うるさいよ!レイプしてんだよこっちは!」

小林「やっぱりレイプされんだーー!?」

小林「いやーー!!」
372: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/08(土) 01:51:58.55 ID:ahAI/yEK
バリィィィィィィィィィン!!

小林「な、なに!?」

降幡「おい!大丈夫か!」

小林「あいあい!?なんでここに!?」

降幡「あいきゃんが捕まったって聞いたから助けに来たんだよ」

すわわ「ふむ」

高槻「私を巻き込まないでくれるかな?」

降幡「うるせぇ、他にいなかったんだから仕方ねーだろ」

小林「なんでここが分かったの?」

降幡「ゴロツキと仲良くなるのは得意なんだよ」

降幡「そこであいきゃんが捕まったって情報を聞いたんだ」

小林「あいあい……!」
373: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/08(土) 01:56:26.75 ID:ahAI/yEK
降幡「気を付けろよ、どんな力を持ってるのかわかんねーからよ」

高槻「分かってるよ」

高槻「ユニットで散々偉そうにしてくれた恨みここで何百倍にもして返してやろうかな」

すわわ「ふんふん」

善子『小林、足の調子はどう?』

小林「まだ治らなくて動けない……」

善子『そう。じゃあ祈るしかないわね、あの二人が勝つのを』

降幡「随分余裕そうだな……二人を相手に勝てると思ってるのか?」

すわわ「うむ」
385: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/09(日) 23:12:21.07 ID:4seCrksr
高槻「やってみろやぁぁぁぁぁぁっっっ!」

叫び声と共に高槻が巨斧を振り下ろす。

それを受けようとするすわわの手にはいつのまにか刀が握られていたが、このまま攻撃を受け止めれば刀ごと粉砕されてしまうだろう。

しかし、斧がその刀を破壊することにはならなかった。

振り下ろされた斧へと斜めにぶつけ、刃の上を走らせるように受け流し、斧の勢いをそのまま右側へと逸らす。

降幡「あめぇっ!」

高槻の攻撃を受け体勢を崩したすわわへと、ふりりんが追撃をかける。

右腕の剣を下から切り上げるが、それをすわわは後ろへと飛んで躱し、すぐさま地面を蹴り上げふりりんへと鋭い突きを繰り出す。

降幡「っ!」

ふりりんは胸元で剣を交差させ、その交点の上側で刀を受け止め、右斜めへと力を逸らした。
387: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/09(日) 23:22:18.91 ID:4seCrksr
降幡「いまだっ!」

高槻「もらったぁ!」

刀を受け止められ、すわわの動きが止まったのを見逃さず、高槻が斧を横薙ぎし、すわわの体を捉えようとする。

避ける暇も無く、斧はすわわの体へと直撃ーーすることはなく、その前に高槻の手から斧が離れてしまった。

高槻「え?」

すっぽ抜けた斧は窓を突き破り、城の外へと落ちていく。

高槻は信じられずに己の手を見つめ、そして体の違和感に気付く。

降幡「おい!なにやってんだよ!」

高槻「っ、そいつから離れろ!」

降幡「何言って……っ!?」

ふりりんの両腕に激痛が走る。すわわに動いた様子はなく、自分の勘違いかと思ったが、すぐに体に異変が訪れた。

降幡「……くそっ」

ふりりんの意思とは真逆に、腕がだらんと下がり、持っていた剣を地面へと落としとしまう。

そこにあるはずの腕。目には見えているはずなのに、その感覚を体が検知していないのだ。
388: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/09(日) 23:29:53.78 ID:4seCrksr
小林「あいあい!かなこ!」

首元へと刀を突きつけられたふりりんは抵抗することができず、また、高槻もその間合いに入っているため動くことができない。

降幡「……ここまでか」

高槻「最悪だ……」

すわわ「……」

小林「お、おすわ!二人を殺さないで!お願い!」

すわわ「うむ」

小林「おすわは体が目的なんでしょ!?」

すわわ「うむ」

小林「だったら、体を差し出せば許してくれるよね!?」

すわわ「うむ」

小林「良かった……二人とも助かったよ」

降幡「助かってねーよばかやろう!」

高槻「絶対ヤバいことされるに決まってんだろ!」

すわわ「えっへん」

降幡「褒めてねぇ!」
390: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/09(日) 23:48:19.94 ID:4seCrksr
すわわ「……ん」

小林「どうし……」

善子『小林!伏せなさい!』

小林「なんっーー」

巨大な破砕音を立て壁の破片を飛び散らせながら、高速で突き出された槍をすわわが刀で弾き飛ばす。

???「へぇ、今の防げるんですね」

すわわ「うむ」

???「じゃあ、これはどうですか?」

謎の女性の影がぐにゃりと歪み、その中から数十本の槍が飛び出し、すわわへと襲いかかる。

すわわは一歩も動くことなく、その場で全ての槍を弾き落とした。

???「なるほど……結構やるんですね」

すわわ「ん」

小林「……誰?」

???「名乗るほどの者じゃありませんよ」

???「ただの……通りすがりの朱夏の恋人です」

小林「そうなの?」

善子『違うでしょ。妄想で話してるだけよ』

小林「あー、なんだヤバい人かー」

???「……ここで殺してあげようか?」
391: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/09(日) 23:53:00.88 ID:4seCrksr
???「と思ったけど、時間切れみたいだから退散しようかな」

???「あの女に見つかりたくないですし」

すわわ「ん」

???「良かったですね、命が助かって」

すわわ「ふんふん」

???「それではさようなら」

すわわ「うむ」

降幡「うむじゃないだろ!追いかけろよ!」

すわわ「ふむ」

高槻「通訳呼べよ!」

謎の女性が崩れた壁から出て行くとすぐに、朱夏と杏樹がやってきた。
392: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/10(月) 00:01:18.52 ID:7xQfHwdk
朱夏「大丈夫……そうだね」

小林「しゅかー!助けに来てくれたの!?」

朱夏「うん。凄い音がしたからね」

朱夏「というかなんでベッドで寝てるの?」

小林「体がうごかないだよ。抱っこしてー」

杏樹「いいよ」

小林「い、いたたたたっ!アイアンクローはやめてぇー!」

朱夏「あんじゅそれ持ち方違うってー」

杏樹「えへへ、間違えちゃったよしゅか~」

小林「ぅぅ……痛かった」

杏樹「……あんまり調子にのらないでね、あいきゃん」ボソッ

小林「ひっ!?」

小林「ぅぅぅヨハちゃぁん!」

善子『治るまでおとなしくしてなさい』

小林「うん……」
393: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/10(月) 00:06:42.20 ID:7xQfHwdk
しばらくすると三人の手足は元通りに動くようになり、全員で話し合いをすることになった。

今の現状と、小林達の旅の目的。すわわはそれに相槌を打ちながら聞いていた。

朱夏「というわけで、今あいにゃを追って旅をしてるの」

朱夏「おすわも来てくれない?」

すわわ「ん」

降幡「多分無理だぞ」

降幡「こいつ、この国で女の子をつまみ食いしまくってたらしい」

降幡「わざわざ私たちと一緒に来るわけないだろ」

すわわ「うむ」

朱夏「そっかー、じゃあしょうがないねー」

善子『良くない流れよ、小林』

小林「うーん……あ、そうだ!」

小林「すわわはあいにゃのこともレイプしたいんだよね?」

すわわ「うむ」

小林「じゃああいにゃを捕まえに一緒に旅しようよ!」

すわわ「うむ」

小林「よし決定!」

降幡「まじかよ……」
394: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/10(月) 00:10:39.14 ID:7xQfHwdk
バンッ!

梨香子「おいw」

小林「ん?りきゃこどうしたの?」

梨香子「なんか斧降ってきてあたったんだけどw」

高槻「それ私のじゃん」

梨香子「痛かったんだけどw」

高槻「だったらなんだってんだよ」

梨香子「ころすw」

高槻「は?」

降幡「仲間同士でやんなって!」

すわわ「うむ」

朱夏「次はどこ向かうの?」

杏樹「ここから北に行くんだよ」

杏樹「魔族と戦争してる砦があるから、そこに行こう」

朱夏「はーい」
395: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/10(月) 00:14:13.12 ID:7xQfHwdk
~とある村~

「……ありがたやありがたや」

「ありがとうございます、ありがとうございます」

「神様が来てくださってから、本当にいいことばかりだねぇ」

「そうじゃそうじゃ」

「今日はご馳走じゃ」

「こちらお供え物です。いっぱい食べてください」

小宮「……zzz」
403: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/11(火) 00:37:08.09 ID:52jJIaf/
魔族との戦争の最善である北の砦を目指し、小林達は進んでいった。

北に進んで行くにつれて魔物は強くなるが、みんなにとっては脅威ではなかった。

道中、杏樹の魔法が小林に直撃しそうになったり、すわわが小林に夜這いをしかけたりしたが、他には特に問題もなく一行はとある村へと辿り着いた。

杏樹「こんにちはー」

「いらっしゃい。旅人さんかえ?」

杏樹「はい。この村には宿はありませんか?」

「宿はないのぉ」

杏樹「そうですか……」

「良ければ儂の家に泊まるといい。部屋だけはたくさんあるから、好きに使ってくれて構わんぞ」

杏樹「ありがとうございます!」
404: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/11(火) 00:42:18.33 ID:52jJIaf/
杏樹「しゅかー!向こうに温泉があるんだって!」

杏樹「行こう!」

朱夏「温泉ー!いいねー、私温泉大好きだよー」

杏樹「私とどっちが好きー?」

朱夏「んー……あんじゅー、かな?」

杏樹「しゅか~!私も大好きー!」ギュー

朱夏「ちょ!恥ずかしいからやめて!」

降幡「時間ずらした方が良さそうだな」

小林「ん?あいあい何処行くの?」

降幡「散歩だよ。ちょっと歩いてくるわ」

小林「気をつけてねー」

降幡「……いや、やっぱあいきゃんも来いよ」

小林「えー」

降幡「いいから来い」

小林「はーい。行くよ、ヨハちゃん」

善子『ええ』

降幡(善子ちゃんは置いていってくれ)
405: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/11(火) 00:47:45.09 ID:52jJIaf/
「ありがたやありがたや」

降幡「何やってんだ?」

小林「ヨハちゃんを拝んでるリトルデーモンかな?」

降幡「それはない」

降幡「……ん?おい、みろあれ!」

小林「おお!大根持ってる!」

善子『今は大根なんてどうでもいいのよ、小林』

降幡「ちげーよ!その先だ!」

小林「……え!?あ、ありしゃ!?」

小宮「zzz」

小林「こんなところにいたんだー」

降幡「とりあえず全員連れてこい!」
406: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/11(火) 00:53:22.78 ID:52jJIaf/
村長の家へと戻った小林は全員に事情を話し、小宮のいる広場へと来てもらった。

そこには椅子にもたれ掛かり眠っているありしゃの姿があった。

朱夏「おおー、これで一応全員見つかったね」

すわわ「うむ」

杏樹「起きないけどどうしようね」

高槻「ほっときゃいいだろ」

降幡「……ん?」

小林「どうしたの?」

降幡「いや、りきゃこどうしたのかなって」

小林「え?何が?」

降幡「なんかやけにおとなしくねーか?」

小林「そう?」

梨香子「…………」
407: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/11(火) 00:57:12.93 ID:52jJIaf/
降幡「おい、どうしたんだよ」

梨香子「!」ビクッ

梨香子「な、なんでもないしw」

降幡「そうか?ならいいけどよ」

梨香子「てか早くこの村でよw」

降幡「今日一日泊まるんだよ」

梨香子「別にいいじゃんw」

降幡「よくねーよ」

梨香子「先戻るわw」

降幡「は?おい!」

降幡「なんだあいつは」

朱夏「どっちにしろ明日でいいでしょ」

降幡「まあそうだな」

こうして小林達は小宮を放置して、村長の家へと戻って行った。
408: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/11(火) 01:03:20.21 ID:52jJIaf/
小林「一人一部屋なんて、なんか贅沢だねー」

善子『部屋数だけはあるみたいね。私たちは二人だけど』

小林「えへへ、ヨハちゃんと一緒ならなんだっていいよ」

善子『私もよ、小林』

小林「両想いだね」

善子『当たり前よ。だって、小林は私のリトルデーモンなんだもの』

小林「……恋人、じゃないんだ」

善子『……恋人に、決まってるでしょ』

小林「ヨハちゃん……!」

小林「大好きー!」

善子『一緒に寝てあげるから、今日はぐっすり寝なさい』

小林「うん!」

降幡(なんであいきゃんの部屋の隣になってんだよ)
409: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/11(火) 01:06:28.09 ID:52jJIaf/
~深夜~

ユサユサ

「あいきゃん、起きて」

小林「……んー?」

小林「……誰?」

朱夏「……こんはんは、なのかな」

小林「しゅか?」

小林「もう朝?」

小林「にしては外暗いし……うーん?」

小林「まあいいや。どうしたの?」

朱夏「…………っ」

小林「しゅか?」

朱夏「……抱いて」

小林「え?」

朱夏「あいきゃんに、抱いて欲しい」
410: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/11(火) 01:13:05.01 ID:52jJIaf/
小林「え……え!?」

小林「しゅ、しゅか、何言って……」

朱夏「……私は、本気だよ」

小林に馬乗りになったまま、ゆっくりと小林へと体重をかけていく。

潤んだ瞳に吸い込まれそうになりながらも、小林は必死に説得を試みた。

小林「ま、待って!私にはヨハちゃんがいるの!」

朱夏「知ってる。でも、それでも、諦められないの」

朱夏「一夜だけの過ちでもいい。私の初めて……あいきゃんにあげたい」

小林「だ、だめ!隣あいあいだから!」

小林「起こしちゃうよ!」

朱夏「降幡さんは、起きても何も言わないから大丈夫」

朱夏「だから……さ?」
411: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/11(火) 01:19:45.56 ID:52jJIaf/
小林「お願い、落ち着いて!」

小林「だいたい、しゅかにはあんちゃんがいるでしょ!」

朱夏「あんちゃんとは、そんな関係じゃないよ」

朱夏「ただ、一方的に好かれてるだけ」

朱夏「私が本当に好きなのは……」

ギシリとベッドが軋む音と共に、目の前の朱夏の瞳が少しずつ大きくなる。

小林は金縛りにあったかのように動くことができない。

そして、その唇がそっとーー

善子『何やってるのよ小林!』

小林「!」

善子の声に小林は反射的に朱夏を押し飛ばしていた。

朱夏「な、何するの、あいきゃん」
412: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/11(火) 01:25:27.78 ID:52jJIaf/
小林「あ、ごめ……」

善子『こいつは朱夏じゃないわよ、小林』

小林「え?」

善子『見た目も匂いも本物そっくりだけど、いろいろ詰めが甘いわね』

小林「どういうこと?」

善子『こいつは朱夏の姿をした偽物』

善子『本物は今頃普通に寝てるんじゃないの』

小林「……確かに。しゅかはああ見えてあんちゃんのことそこそこ好きだし」

小林「偽物……なんだね?」

「…………」
421: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/12(水) 23:19:46.70 ID:O5m9E4AZ
小林「あ!逃げた!」

善子『追いなさい、小林!』

扉から逃げ出した偽物を追いかけ、小林はすぐに廊下へと出る。

降幡「おい、どうした!?」

騒ぎを聞きつけて、ふりりんが最初に扉から出てくる。

騒ぎのせいからか、両手には剣を携えており、周囲を見渡しながら小林の方へとやってくる。

小林「敵がいたの!私の部屋に!」

降幡「そいつは何処に行った?」

小林「わかんない。だよね、ヨハちゃん」

善子『ええ。出たときには、もう姿も気配もなかったわ』

朱夏「もー……みんなこんな時間に何騒いでんの」

杏樹「朱夏はもう少し寝てても大丈夫だよ」

朱夏「いや、てかなんであんじゅがわしのベッドで寝てたのさ」

杏樹「間違えちゃった、てへへ」
422: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/12(水) 23:24:00.29 ID:O5m9E4AZ
朱夏「それで、何があったの?」

小林「しゅかに『抱いて』って迫られたの!」

杏樹「灰になりたいならそう言ってくれればいいのに」

小林「ええっ!?なんでっ!?」

善子『説明が悪すぎるわよ、小林』

降幡「あれ、さっき敵って言ってたよな」

杏樹「しゅかは私とずっと一緒に寝てたよ」

朱夏「次からは鍵掛けるね」

小林「しゅかの姿をした敵だったの!」

降幡「……他の人間に化けれるってことか?」

小林「多分、そうだと思う」

小林「ね、ヨハちゃん!」

善子『ええ、そうね』
423: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/12(水) 23:31:44.87 ID:O5m9E4AZ
高槻「うるせーなー」

すわわ「うむ」

降幡「やっと起きてきたか」

降幡「まあ梨香子はどうせ寝てるだろ」

遅れて部屋から出てきた高槻とすわわに、敵が出たことについて報告をすると、あまり興味がなさそうな反応を示す。

高槻「別に敵の一人や二人いいだろ」

すわわ「うむ」

高槻「寝るわ。どうせもう出てこねーよ」

小林「そうだね。ヨハちゃん、私たちもーー」

小林?「あれ、みんな何騒いでるの?」

降幡「……ん?」
424: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/12(水) 23:36:43.58 ID:O5m9E4AZ
朱夏「あいきゃんが二人?」

小林「ええ!?」

小林?「な、なんで二人いるの!?」

小林「まさかドッペルゲンガー!?」

小林?「私死んじゃうの!?」

降幡「うるせぇ!」

善子『なるほど、そう来るのね』

小林「ヨハちゃん!どうなってるの!?」

小林?「敵が私に化けちゃったの!?なんで!?」

朱夏「全然見分け付かない」

杏樹「両方ともやっちゃえばいいんじゃないかな?」

朱夏「それだと本物のあいきゃんも死んじゃうじゃん!」

杏樹「そうだった~」

すわわ「うむ」
425: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/12(水) 23:40:47.71 ID:O5m9E4AZ
降幡「しかし困ったな……どうすりゃいいんだ」

朱夏「あいきゃんしか知らないことを聞いてみるとか?」

降幡「好きな人は?」

小林「ヨハちゃん!」

小林?「ヨハちゃん!」

朱夏「分かんないねー」

小林「ヨハちゃん!ヨハちゃんは私が本物だって分かるよね!」

善子『当たり前よ』

小林「ほら!」

杏樹「こっちのあいきゃんはうるさいから向こうの方連れてこう」

朱夏「そういう問題じゃないでしょ」

高槻「もうじゃんけんでいいじゃん」

すわわ「うむ」
426: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/12(水) 23:44:12.63 ID:O5m9E4AZ
杏樹「はぁ。じゃあいいよこうしよう」

杏樹「今から善子ちゃんとえっちして。みんなで見るから」

小林「え……///」

小林?「!?」

小林「み、みんなの前でなんて……ヨハちゃんにそんな恥ずかしいこと……」

善子『……私はいいわよ』

小林「え?」

善子『小林の無実が証明されるなら、恥ずかしい姿を見られても平気』

善子『でも、責任はちゃんと取ってもらうからね』

小林「……うん。ありがとう、ヨハちゃん」

小林?「…………」
427: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/12(水) 23:50:56.56 ID:O5m9E4AZ
脱兎の如く逃げ出した小林?をふりりんが追いかけたが、逃げ足が速く追いつくことができずに見失ってしまった。

ふりりんが戻ってくる頃にはみんなが部屋に戻っており、寝ようとすると壁から嬌声が漏れ聞こえてくるため、眠れない夜を過ごした。

次の日、小林達は小宮の祀られている小屋へとやってきた。

朱夏「おんぶする?」

梨香子「もういいじゃんw置いてけばw」

杏樹「梨子ちゃんは一緒だと嫌なの?」

梨香子「嫌だしw」

降幡「怖いんだろ」

梨香子「は?怖くねーしw」

梨香子「こんなやつけちょんけちょんにできるわ」

小宮「……ふーん」

梨香子「!?」
428: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/12(水) 23:57:42.41 ID:O5m9E4AZ
梨香子「い、いつから起きて……」

小宮「さっきからですけど」

小宮「なんでも誰かさんが私をけちょんけちょんにするとか」

梨香子「っ」ビクッ

小宮「反抗するなんて、躾が足りませんでしたね」

小宮「ベッド、行きましょうか」

すわわ「うむ」

梨香子「い、いやっ!助け、!」

体を掴まれ抵抗も虚しく梨香子は昨日寝ていたベッドへと連れて行かれる。

ふりりんが必死に説得すること一時間、ようやく梨香子は解放され、全員で北の砦を目指すことになったのだ。
429: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/13(木) 00:02:28.22 ID:q0VBlSUs
小宮「それだ、これから何処に向かうんです?」

小林「北のなんとかってところだよ」

善子『砦よ』

小林「それ!砦!」

小林「それで、魔界に行ってあいにゃを仲間にするんだよね!」

小宮「分かりました。頑張りましょう」グラッ

降幡「お、おい!大丈夫か!」

小宮「ありがとうございます……降幡さん……」

小宮「……zzz」

降幡「なんでこうなるんだよ」

小林「ありしゃも変な人だね、ヨハちゃん」

善子『ええ、気を付けなさいよ、小林』
435: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/14(金) 00:00:56.59 ID:kCuL8Nnm
~魔王城~

???「愛奈さん、彼女たちもうすぐ国境の砦に着きますよ」

???「いいんですか?」

愛奈「……この城まで来たら、倒すわ」

???「それなら別にいいですけど……国境が破られれば、一気に人間が入ってきますよ」

愛奈「……」

???「確か、愛奈さんがお世話になった村は、国境付近でしたよね?」

愛奈「何が言いたいの?」

???「ただ教えてあげただけですよ」

???「どうするかは愛奈さん次第です」
436: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/14(金) 00:07:32.98 ID:kCuL8Nnm
村を出た小林達は、魔族との戦争の最前線となる北の砦へと向かった。

道中、小林が酷い目にあいそうになるがいつものことであり、誰も気にすることはなかった。

小林「ここが北の砦?」

朱夏「多分。結構大きいんだね」

降幡「なあ、今更なんだが、ここって入れるのか?」

降幡「重要拠点なんだろ?」

杏樹「大丈夫。ギルドメンバーならある程度の信頼はされるはずだから」

朱夏「おー、なってて良かった」

小林「あそこの門番の人に言えばいいのかな?」

小林「こんにちはー!」

善子『これで冥界への扉が開かれるわね』
437: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/14(金) 00:13:30.05 ID:kCuL8Nnm
特段問題もなく、小林達は砦の中へと案内された。

重要拠点であるはずなのにこんなことでいいのかと思う一方で、楽であるならばそれに越したことはないという感情もあり、誰からも文句が出ることはなかった。

「こんにちは。こんなところまで来て、どうしました?」

小林「えーと、なんだっけ」

善子『あいにゃを追ってきたのよ、小林』

小林「そうだった!あの、あいにゃのこと知りませんか?」

小林「歌が上手くて~」

杏樹「実は、私たちの友達が魔族に攫われてしまったんです」

小林「え?」

「そうだったんですか!?」

杏樹「はい。人間の目撃情報はありませんか?」

杏樹「女性なんですけど」

「いえ、ありませんね」

杏樹「そうですか……」
438: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/14(金) 00:18:49.69 ID:kCuL8Nnm
杏樹「今は静かですけど、いつもは戦いになってるんですか?」

「いや、そうでもない。魔族が攻めてこなければ、我々は手を出さないからな」

杏樹「そうなんですか?」

「ああ。昔、不可侵条約が結ばれていたことがあってな」

「その時から、先に手を出さないようにしているんだ」

杏樹「なるほど」

「……最近、魔王が復活したみたいなんだ」

杏樹「魔王が?」

「ああ。そいつのせいで、魔族が俺たちを攻めて来ているらしい」

小林「つまり、魔王が滅べばいいってことね!」

「まあ、そうなるな」

小林「ヨハちゃん!頑張るよ!」

善子『ええ、魔王を倒すのよ、小林』
439: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/14(金) 00:24:50.70 ID:kCuL8Nnm
小林達は情報をくれた兵士にお礼を述べると、戦場を超えて魔族の住む国、魔界へと足を進めた。

魔界では生息する魔物も強く、時には龍種と戦いながらも森の中を進んでいった。

降幡「もうすっかり野宿にも慣れたな」

朱夏「そうだねー。結構経ったもんね」

降幡「……なあ」

降幡「これは聞いていいか、よく分からないんだけどよ」

降幡「みんなは、元の世界に帰りたいか?」
440: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/14(金) 00:30:26.50 ID:kCuL8Nnm
高槻「別に戻る必要なんてないだろ」

高槻「こっちの世界なら好き勝手できるんだし」

高槻「ああでも料理はぜってーあっちのが美味しいか」

高槻「それじゃあ戻った方がいいかもな」

すわわ「うむ」

降幡「そうか。朱夏は、どうだ?」

朱夏「んー、私は帰りたいかな」

朱夏「ママやとらまるとも会いたいし」

杏樹「私はしゅかと会いたいよ」

朱夏「いや、そういうのいらないから」

杏樹「理由はそれくらい?」

朱夏「他は……」

朱夏「……ちゃんと、ママに紹介したい……かな」ボソッ

杏樹「ん?」

朱夏「なんでもないってば、はい、次あいきゃん」
441: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/14(金) 00:33:55.48 ID:kCuL8Nnm
小林「私はヨハちゃんがいればどこでもいいよ」

善子『小林……』

降幡「まあお前はそうだろうな」

降幡「りきゃこはどうだ?」

梨香子「は?wなんで言わなくちゃいけないの?w」

梨香子「てかあいあいはどうなのw」

降幡「私は帰りてーよ。人が直ぐに死ぬ世界なんて、嫌だ」

梨香子「ふーんw」

降幡「この世界にいたいって意見が出なかったのは良かったかもな」

小林「なんで?」

降幡「揉めるのが嫌だからだよ」
442: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/14(金) 00:40:24.24 ID:kCuL8Nnm
その後、他愛もない話を続け、順番に見張りをすることになった。

ペアはいつも通り小林と善子のペアであり、特に誰からも否定意見が出ることはなかった。

小林「あいにゃ、どこに行ったんだろうね」

善子『おそらく魔王城でしょうね』

小林「そこに魔王がいるの?」

善子『ええ、そうね』

小林「そっか。また力を貸してね、ヨハちゃん」

善子『ええ、当たり前よ』

朱夏「楽しそうだね、あいきゃん」

小林「え?しゅか、どうしたの?」

小林「交代には早いよ?」

朱夏「なんだか寝付けなくてさ」

朱夏「眠くなるまでここにいさせてよ」

小林「いいけど……ヨハちゃんも大丈夫?」

善子『ええ、もちろんよ』
443: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/14(金) 00:44:40.74 ID:kCuL8Nnm
朱夏「あいにゃ、どうしたんだろうね」

小林「うーん、前に何かいろいろ言ってたよね」

小林「覚えてる?」

朱夏「戦いから手を引けって言ってた気がする」

小林「うーん、難しいよね」

朱夏「なんでそんなこと言ったんだろう」

小林「寝ぼけてるんだよ。ほら、時差ボケみたいな」

小林「一発殴って目を覚ましてもらおう!」

善子『その通りよ、小林』

小林「やったー!ヨハちゃんに褒められた!」

朱夏「いやいや、褒める要素ないから」
444: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/14(金) 00:50:18.79 ID:kCuL8Nnm
朱夏「……ん?」

善子『…………』

小林「どうしたの、しゅか?」

朱夏「いや、誰かがゆっくり近付いてくるなって」

善子『そうね。私も感じるわよ』

朱夏「この気配は……もしかして」

小林「ん……?あ!あいにゃだ!」

愛奈「…………」

朱夏「一体どうしたの、こんな夜遅くに」

小林「何しに来たのー?」

愛奈「……二人に、見せたいものがあるの」

朱夏「見せたいものってなに?」

愛奈「付いてきてくれたら分かる」

小林「じゃあ付いてこう!」

朱夏「いやいやなんで即答してんの」

小林「いかないの?」

朱夏「行くけど……ま、いっか」
459: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/18(火) 00:23:37.63 ID:yIxxgZ8l
もしここにふりりんがいれば罠を警戒したのであろうが、二人は特に警戒することなく愛奈の後をついていった。

三十分程歩いた頃だろうか、森の中をひたすら進んでいくと、集落が見えてきた。

小林「村だよ、ヨハちゃん!」

善子『言わなくても分かるわよ、小林』

小林「何か美味しい食べ物あるかな?」

小林「ヨハちゃんは何が食べたい?」

善子『久しぶりにチョコレートが食べたいかも』

朱夏「そんな話ししてる場合じゃないから」

小林「どうしたの?」

朱夏「ここは魔族の村でしょ?」

朱夏「みんな襲い掛かってくるんじゃない?」

愛奈「そんなことしない」

愛奈「魔族のみんなは、とてもいい人ばっかりよ」
460: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/18(火) 00:32:11.22 ID:yIxxgZ8l
朱夏「そんなこと言われてもなー」

愛奈「……それを分かって欲しいから、二人を連れてきたの」

小林「この村に?」

愛奈「うん」

愛奈についていく形で、二人は一軒の民家へと辿り着いた。

年季が入っているのか、見た目はお世辞にも綺麗だとは言えず、ところどころ変色した箇所が見つかる。

だが、家自体の雰囲気とは正反対に、中からは元気な声が溢れていた。

愛奈「ただ今、みんな」

「にゃーねーちゃんだー!」

「おかえりなさい!」

「お土産はなにー?」

家の扉を開けると、子供たちが我先にと愛奈の側に駆け寄ってくる。

「……あれ、この人たちは?」

「ひっ!に、人間……!」
461: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/18(火) 00:36:05.42 ID:yIxxgZ8l
愛奈「大丈夫。悪い人たちじゃないから」

善子『小林、こういう時は場を和ませる何かをするのよ!』

小林「ギランっ!リトルデーモンがこの禁じられた世界に舞い降りてきたわよ」

善子『微妙ね』

小林「ヨハちゃんが辛口だー……」

「一人で誰かと会話してる!」

「やっぱり人間って怖い!」

愛奈「みんな、落ち着いて」

愛奈「私はこの二人と話があるから、部屋に戻って」

「「「「はーい」」」」
462: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/18(火) 00:42:57.91 ID:yIxxgZ8l
朱夏「この子達は?」

愛奈「孤児よ」

愛奈「人間に、親を殺されたの」

小林「戦争してるんなら仕方ないんじゃないのかな?」

小林「兵士になったら死んじゃう可能性だってあるんだし」

善子『そういう問題じゃないわよ、小林』

小林「どういうこと?」

愛奈「……人間が、村を襲ったの」

愛奈「村に火を付けられて、略奪が始まった」

愛奈「抵抗した人は全員殺された」

愛奈「女性は酷い目にあわされた」

愛奈「だから……だから……私は……!」
463: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/18(火) 00:47:46.06 ID:yIxxgZ8l
朱夏「それで、人間を恨んでるんだ」

愛奈「そう。人間は、この世界にいてはいけない」

愛奈「だからお願い。もう何もしないで」

小林「無理だよ!だって、もうすぐ元の世界に帰れるんだもん!」

愛奈「元の世界に……?」

小林「うん!魔王を倒すとね、元の世界に帰れるってヨハちゃんが言ってたもん!」

小林「だからさ、あいにゃも一緒に帰ろう?」

愛奈「……無理よ」

小林「なんで?あいにゃも帰りたいでしょ?」

愛奈「人間を滅ぼすまでは帰れない」

愛奈「この村のみんなのためにも」

小林「あいにゃ……」
464: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/18(火) 00:52:03.99 ID:yIxxgZ8l
善子『説得は無理そうね』

善子『帰るわよ、小林』

小林「うん。じゃあ帰ろうか、しゅか」

朱夏「え、待って、ここそういう流れじゃなくない?」

小林「ん?」

朱夏「あれ、話終わったっけ?」

愛奈「待って。もうこの戦いに参加しないって誓って」

朱夏「それは無理だよ。もうここまで来たんだから」

愛奈「……私は、みんなと戦いたくない」

愛奈「お願い。引き返して。魔王城には、絶対来ないで」
465: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/18(火) 00:55:17.30 ID:yIxxgZ8l
愛奈のお願いを聞きながら、二人は村を出た。

元の見張りの位置に行くと、ふりりんと高槻が見張りをしているのに気付く。

小林「あれ、あいあいとかなこだ」

降幡「あ、てめ!見張りサボってどこ行ってやがった!」

小林「なんか魔族の村に行ったよー」

降幡「はぁ!?」

小林「じゃあ後よろしくねー」

小林「いこ、ヨハちゃん」

善子『そうね』

降幡「あ、おい!待ちやがれ!」

降幡「ったくよー」
466: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/18(火) 01:02:24.02 ID:yIxxgZ8l
小林「んー、今日も疲れたー!」

小林「ヨハちゃん、一緒に寝よ」

善子『当たり前よ』

善子『といっても、一人につきテント1つだから一緒に寝る以外の選択肢はないわ』

小林「そうだね!ヨハちゃんかしこーーっ!?」

テントの前、扉を開けようとすると、急に中から手が飛び出し、小林の首を絞め上げた。

小林「がっ、っ、ぃ、」

杏樹「おかえり、あいきゃん」

杏樹「こんな時間まで、何処で、なにしてたのかな?」

小林「っ、ぁ、っ、っ、」

杏樹「しゅかと一緒に、なにしてたの?」

杏樹「何処に行ってたの?」

杏樹「私のしゅかと一緒にさ」

小林「っ……ぅ……!」

杏樹「さようなら、あいきゃーー」ピクッ

杏樹「ん?しゅかが呼んでる?」パッ

小林「っ、げほっ、げほっ!」ドサッ

杏樹「しゅか~!今いくよ~!」

小林「はぁ……はぁ……」

小林「……え、何だったの、今の」
467: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/18(火) 01:09:33.11 ID:yIxxgZ8l
それ以降、特に変なことがおきることもなく日が明けた。

朝、昼は森の中を進み、夜は野宿をする。

魔王城までの道のりは通常であれば厳しいものであるのだが、全員が危機感を持つような事態にはならなかった。

小林「ここが魔王城かー」

小林「ねーねー!写真撮ろう!」

善子『スマホがないわよ、小林』

小林「えー!」

降幡「うるせーよ!やっとここまで来たんだ、静かにしとけ」

降幡「あいにゃのことも気掛かりだし、気を引き締めていくぞ」

杏樹「そうだね。しゅかは私の側から離れないように」

朱夏「引っ付かないでいいから」

杏樹「一生隣にいてね」

朱夏「だから今じゃないでしょ」

すわわ「うむ」

小宮「zzz」

高槻「あー、だりー」

梨香子「優勝w」

降幡「まじで大丈夫なのか……」
472: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/19(水) 00:41:02.27 ID:9Yu6ezgS
敵に遭遇することなく、小林達は城の中へと入っていく。

それは通常であれば不自然なことであろうが、大体の者が何も考えておらず、特にそれが話題となることはない。

小林「あれ、分かれ道だ」

降幡「どっちに進む?」

朱夏「二手に分かれて両方行けばいいんじゃない?」

杏樹「うん、そうしよう」

すわわ「うむ」

高槻「メンバーはどうすんだよ」

杏樹「しゅかと一緒だったら別にいいよ」

杏樹「梨子ちゃんと……あいきゃんかな」

梨香子「おけw」

小林「はーい」

小林「ヨハちゃん!頑張ろう!」

善子『そうね』

小林「どっちに行った方がいいのかな?」

善子『こういう時は右に行くのよ』

小林「右ね!流石ヨハちゃん!」
473: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/19(水) 00:47:31.21 ID:9Yu6ezgS
小林達は二手に分かれ、魔王城を進むことにした。

高槻「おい」

降幡「ん?」

高槻「このメンバーで大丈夫なのか」

降幡「別に大丈夫だろ」

高槻「半分くらい意思疎通できるか怪しいのにか?」

すわわ「ふんふん」

小宮「zzz」

降幡「……なんとかなるだろ」

降幡「お、なんか見えて来た」

高槻「あそこにいるのは……」



愛奈「…………」
474: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/19(水) 00:52:39.92 ID:9Yu6ezgS
四人が辿り着いたのは、大きく開けた空間であった。

その真ん中には愛奈が立っており、その向こう側に先へ進む扉が置かれている。

愛奈「結局、来ちゃったんだ」

降幡「あいにゃ、あいきゃんから話は聞いた」

降幡「辛いことがあったってのは分かった」

降幡「でも、こんなことしても意味ないだろ?」

降幡「みんなで一緒に帰ろうぜ」

愛奈「……できないよ」

愛奈「人間を滅ぼした後じゃないと、みんなが安心して暮らせない」

愛奈「なるべく、殺さないようにするから」

降幡「くそっ!やるしかねぇのか!」
475: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/19(水) 00:58:09.32 ID:9Yu6ezgS
ポンポン

降幡「ん?なんだ?」

すわわ「ん」

剣を構えたふりりんが、肩を叩かれて振り返ると、扉を指差しているすわわの姿が目に入った。

降幡「行けっていうのか?」

すわわ「うむ」

高槻「私も一緒に?」

すわわ「うむ」

小宮「ここは私たちが相手をします」

すわわ「ありさは寝てていいよ」

小宮「zzz」

降幡「……分かった」

高槻「じゃあ任せるわ」
476: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/19(水) 01:08:10.49 ID:9Yu6ezgS
愛奈「『光は鞭となり敵を排除する』」

愛奈の言葉に連動するように、数本の光の鞭が四人を目掛けて振るわれる。

常人の目では追うこともできないであろうそれは、誰にも当たることなく両断された。

すわわ「うむ」

降幡「この隙に行くぞ!」

高槻「分かってるよ」

愛奈「させない!」

さらに現れた数本の鞭が鋭い音を立ててふりりんへと迫るが、それも届くことはなかった。

キン、と渇いた金属音が鳴るのと同時に、鞭は切断されて霧散してしまう。

愛奈「……っ」

降幡「後は任せたぞ!」

ふりりんと高槻が先へと進み、三年生組だけがこの場に残った。
477: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/19(水) 01:17:45.88 ID:9Yu6ezgS


小林「凄いよヨハちゃん!お城の中にこんな広いところがあるんだ!」

善子『油断したらダメよ、小林』

杏樹「おかしい」

朱夏「何が?」

杏樹「敵の本拠地なのに、今まで何とも遭遇してない」

小林「そっちの方が楽だしいいんじゃない?」

梨香子「楽勝w」

善子『そういうことじゃないのよ、小林』

善子『罠か……もしくは、誰か強い人が待ち構えてるのかもしれないわ』

小林「そうなの!?」

杏樹「……出てきなよ」

小林「え?」

杏樹「そこにいるのは分かってるんだから」
478: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/19(水) 01:23:58.33 ID:9Yu6ezgS
???「あーあ、気付かれちゃった」

???「やっぱり女狐は鼻が利くんですね」

朱夏「え……?」

杏樹「……」

???「久し振りだね、しゅか」

???「会えるのを凄く楽しみにしてたよ」

朱夏「由佳?なんでここに?」

由佳「そんなの、朱夏がいるからに決まってるでしょ?」

朱夏「いや、決まってはないかな」

由佳「照れなくてもいいよ」

由佳「この世界で、二人でずっと生きて行こう」

由佳「大丈夫。邪魔なやつらはみんな……殺してあげるから!」

杏樹「ちっ!」
480: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/19(水) 01:37:33.15 ID:9Yu6ezgS
突如として現れた巨大な魔槍が、杏樹を目掛けて物凄い速度で投擲される。

即座に反応した杏樹は障壁を展開し、槍を受け止めた。

由佳「へぇ、反応できるんだ……と!」

飛び退いた由佳の足元から氷の槍が無数に伸び出る。

もしもその場にいれば串刺しになっていたであろうが、由佳はそれを笑いながら軽く躱してみせた。

杏樹「しゅかに付き纏うストーカーはここで抹殺してあげる」

由佳「ストーカーはそっちじゃないですか?」

由佳「しゅかに近付いていたのは私だけですから」

小林「しゅかは人気なんだねー」

善子『呑気なこと言ってる場合じゃないわよ、小林』

善子『ここはあんちゃんに任せて、先に進んだ方がいいわ』

小林「うん!」

由佳「……ああ、何処かで見たと思ったら、地元愛の」

小林「え?」

由佳「貴女も、ここで死んでくださいね」
481: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/19(水) 01:44:55.55 ID:9Yu6ezgS
じゃらららと冷たい金属音が鳴り、小林の足が地面へと繋ぎとめられる。

小林「『だ、堕天ーー』」

由佳「残念、遅すぎます」

突如出現した無数の黒槍が、風を切りながら小林へと迫る。

小林「っ、!」

善子『小林!逃げなさーー』

小林は逃げることも出来ず、ただ呆然とその光景を眺めていた。

魔法も間に合わず、回避をすることもできない絶対絶命の状態に、思わず目を瞑ってしまう。

しかし、覚悟していたはずの衝撃は小林へと襲い掛かってこなかった。
482: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/19(水) 01:52:49.60 ID:9Yu6ezgS
小林「あれ……?」

小林が目を開けると、そこには見慣れた背中……杏樹の背中があった。

杏樹の展開した魔法障壁が、あいきゃんを無数の黒槍から守ったのだ。

小林「あ、ありがとう、あんちゃ……」

しかし、小林の言葉はそこで止まってしまう。

ぼたぼたと真っ赤な血が杏樹の腕を伝い、地面を濡らしていく。

杏樹の障壁は確かに由佳の攻撃を防いだのだが、突然のことに展開が遅れ、最初の一本目が杏樹の左腕を貫いたのだ。

その軌道は小林へと向いており、もしも杏樹が庇わなければ、小林の命は無かったかもしれない。

小林「な、なんで……?」

小林「あんちゃんは、私を殺そうとしてた、よね?」

小林「なのに、なんで守ってくれるの?」
483: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/19(水) 01:57:26.89 ID:9Yu6ezgS
杏樹「……別に、あの女の思い通りになるのが許せないだけ」

杏樹「それに……あいきゃんが死んだら、しゅかが悲しむでしょ」

小林「あんちゃん……」

杏樹「先に行って、こいつは私が殺すから」

由佳「あはは、物騒ですね」

由佳「左手がそんな状態なのに、できるんですか?」

杏樹「ちょうどいいハンデでしょ」

由佳「その強気な発言、いつまでできますかね?」

善子『小林、先に行くわよ』

小林「で、でも」

善子『ここにいても、あんちゃんの足を引っ張るだけよ』

小林「……うん」

小林「りきゃこ、行くよ」

梨香子「はいはいw」
485: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/19(水) 02:02:40.23 ID:9Yu6ezgS


魔王「よくぞここまで辿り着いたな」

魔王「だが、貴様らはここで終わりだ!」

降幡「いや、誰だよこいつ!」

高槻「知らねーよ、魔王だろ」

降幡「こういう時って知ってる奴が出てくるんじゃねーのかよ!」

高槻「知るかよ、ゲームじゃあるまいし」

魔王「もう少しで儀式は完成する」

魔王「邪魔はさせんぞ!」

高槻「うっせーな、何が儀式だ」

降幡「あっちの連中はまだ来ないのか」

高槻「みたいだな……いや」

小林「あいあい!かなこ!」
486: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/19(水) 02:06:56.79 ID:9Yu6ezgS
降幡「あいきゃん!」

高槻「おせーよ」

小林「お待たせ!」

小林「あれが魔王なんだね」

善子『ええ、そうよ』

小林「よーし、五人で力を合わせて倒そう!」

高槻「三人しかいねーだろぼけ」

小林「え?」

小林「あれ?りきゃこは!?」

降幡「知るか!」

善子『遊んでる暇はないわよ』

善子『敵は強いわ。気をつけるのよ、小林』

小林「うん!」

降幡「よし、やるぞ!」

高槻「やってやんよ、面倒だけど」
499: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/21(金) 23:40:37.22 ID:gxjJbC41


愛奈「邪魔、するんだね」

すわわ「うむ」

愛奈「なんで?私が間違ってるっていうの?」

すわわ「うむ」

愛奈「魔族のみんなを救うために人間を滅亡させることが、そんなにいけないことなの?」

すわわ「うむ」

愛奈「……分かった」

愛奈「すわわにも、ちょっとだけ痛い目にあってもらう」

愛奈「本気で、行くからね」

すわわ「うむ」
500: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/21(金) 23:53:34.73 ID:gxjJbC41
愛奈「『光の矢は高速に飛び敵を貫く』」

矢を象った光の粒子が愛奈の後方から放たれる。

すわわは刀を携えた右腕を鞭のようにしならせ、矢継ぎ早に矢を切り落とし、愛奈へと向かって駆ける。

すわわの狙いは近接戦への移行であり、その狙いに気付いた愛奈は矢の本数を増やすがすわわの歩みを止めることはできない。

愛奈「っ……『光を集めて剣と為せ』」

愛奈が剣を構えたのを見て、すわわは片手で持っていた刀を両手で握り、正面に構えたまま足の速度を速めた。

上段の構えからの強力な振り下ろしと同時の踏み込み。その衝撃により愛奈を中心に床が蜘蛛の巣状に割れるが、それを愛奈はしっかりと受け止めていた。

愛奈「やぁっ!」

剣を弾き返され、体勢を崩したすわわへと斜め方向からの袈裟斬りを放つ。

当たれば致命傷となるであろう剣が、すわわに届くことはなかった。
501: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/22(土) 00:00:14.84 ID:W1egmEFp
愛奈「っ!?」

唐突に愛奈の右腕に走る激痛。それと同時に右腕の感覚が全て無くなり、刀が勝手に手から離れてしまったのだ。

愛奈「な、なんで……」

すわわ「ん」

それはすわわが何かをしたことが明白であり、一度距離を取ろうと思考したその一瞬の隙に、すわわが愛奈との距離を詰める。

愛奈「っ!」

咄嗟に左足に力を込め地面を蹴ろうとしたが、また激痛が走るのと同時に力が抜け、そのまま尻餅を付いてしまう。

愛奈「……これが、すわわの力なんだね」

すわわ「うむ」

愛奈「右手と左足……全く感覚がない」

愛奈「やっぱり、強いね」

すわわ「うむ」
502: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/22(土) 00:15:00.77 ID:W1egmEFp
すわわは不可視の刃を振り下ろし、相手の神経を斬ることができる。

射程範囲は刀をめいいっぱい伸ばした程ではあり、本当に斬るのではなく、実際には刃を通した先に痛みを与えるだけである。

しかし、その痛みのせいで脳が実際に切られたと認識してしまい、その先の感覚が全て失われてしまうのだ。

また、脳から切られた部分への信号も出なくなるため、自分の意思で動かすことができない。

愛奈「降参……しなさいって?」

すわわ「うむ」

愛奈「……それは、できない」

愛奈「こんなに強いなら、ここで倒しておかないといけないから」

すわわ「んあっ」

意識から外れていた、愛奈の左足による足払いにすわわが体勢を崩す。

すわわから見ればそれはありえないことであるが、愛奈はその隙に立ち上がると、すわわと逆方向へ走っていったのだ。
503: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/22(土) 00:24:50.03 ID:W1egmEFp
愛奈「ごめん……もう、手加減してる余裕、ない」

愛奈「『それは牢獄、嘘偽りを全て暴き、裁く者』」

すわわ「ん」

空中に、地面に、壁に、この空間のあらゆる場所に、大小さまざな鏡が出現した。

それは一見すればただ鏡を出しただけのことであり、特に情勢に影響はないように見えるが、すわわはこの技がどれだけ強大であるかを一瞬のうちに判断した。

小宮「まずいですね」

すわわ「うむ」

小宮「加勢しますけど、いいですよね?」

すわわ「うむ」

愛奈「有紗……」
504: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/22(土) 00:37:30.02 ID:W1egmEFp
小宮「酷い顔ですね」

愛奈「っ、それが、どうしたの」

小宮「愛奈は笑ってた方がいいと思っただけですよ」

愛奈「……笑い方なんて、忘れた」

梨香子?「じゃあ思い出させてあげるw」

愛奈「え、りきゃーー」

ずがん、と巨大な音と共に愛奈が吹き飛ばされ、地面を転がっていく。

完全な無防備を狙われた愛奈は受け身もとることができず、それを好機と梨香子ーーに変身した小宮が一気に距離を詰めた。

梨香子?「逢田さんぱーんちw」

起き上がろうとしている愛奈へと襲いかかる無慈悲な右ストレート。しかし、その手は愛奈に受け止められ、そのまま体を捻るように力を込められる。

梨香子?「え?w」

空中で一回転し、地面に転がった小宮へと右足が振り下ろされ、間一髪で首を振って躱す。

次の一手の前にすわわが駆けつけ、愛奈は大きく距離を取った。
505: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/22(土) 00:50:04.33 ID:W1egmEFp
小宮「不意打ち作戦は失敗ですね」

小宮は他人に変身し、その能力を真似ることができる。

梨香子へと変身し愛奈の隙を作ったところに攻撃を叩き込み、一気に決める作戦であったが、愛奈の立て直しが予想よりも早く、上手く決まらなかった。

愛奈「そうやって、騙すんだよね、人間って」

小宮「これは勝負ですから」

愛奈「……そっか。じゃあ、争いのない世界を作ってあげないと」

愛奈「『集いて弾けろ、裁きの光』」

部屋の中央に出現した巨大な光が、全ての方向へと弾け飛んだ。

小さなレーザー光線のように襲いかかるそれらを、すわわは全て刀で弾き飛ばす。

しかし、それはただそれだけの攻撃ではない。

光は部屋中に出現した鏡から鏡へと乱反射を繰り返し、無数の光線となって全方位からすわわ、小宮へと襲いかかる。
506: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/22(土) 01:00:37.14 ID:W1egmEFp
何十、何百、何千、何万、無数の光が襲い掛かるのはほんの一瞬であり、時間にすれば一秒にも満たないであろう。

小宮「……だい、じょうぶ、ですか?」

すわわ「うむ」

いつもと変わらぬ口調、変わらぬ抑揚の返事。

しかし、刀を支えに立ち上がり、着物を血で濡らしている姿を見ればそれが強がりであることがわかるだろう。

小宮もまた、耐えることはできたものの、いくつかの光に肉を抉られ、全身から血を流している。

愛奈「降参して。さもないと……死ぬよ」

それは二人が聞いたことがないほど、冷たい声であった。

愛奈という少女は本来争いもできないほど優しい人であることを二人は知っていた。だからこそ、彼女が普通の状態でないと分かるのだ。

小宮「まだいけますね?」

すわわ「うむ」
507: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/22(土) 01:07:16.11 ID:W1egmEFp
愛奈「なにをしても無駄。私には勝てない」

愛奈?「えー?そんなことないわよぉ?」

愛奈「え?」

愛奈?「ふふ、ロック、オーン!」

愛奈「……私に化けたところで、何も変わらない」

愛奈?「すわわ……あのね……私、すわわと……したいな」

すわわ「うむ」

愛奈「っ……ふざけないで!」

愛奈「『集いて弾けろ、裁きの光』」

愛奈?「『集いて弾けろ、裁きの光』」

愛奈「え……?」
508: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/22(土) 01:18:00.33 ID:W1egmEFp
光と光がぶつかり合い、お互いに打ち消しあう。

それは愛奈の必殺技が、完全に防がれたことを意味する。

しかし、少なからずの動揺はあるものの、他の技は健在であり、愛奈に悲観の様子はない。

愛奈「それを防いだところで、勝てない」

愛奈?「……戦いたくない」

愛奈「……え?」

愛奈?「本当は、戦いたくなんてない」

愛奈?「みんなを傷付けるなんて、嫌」

愛奈?「でも、私がやらないと、あの子達を救えない」

愛奈?「私は、どうしたら、いいの?」

それはまるで愛奈自身の心を写したような姿であった。そして、それを一番感じるのは愛奈であり、それを振り切るために光の剣を構え、小宮へと迫る。
509: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/22(土) 01:23:46.38 ID:W1egmEFp
愛奈「やぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

しかし、その剣は小宮の剣により受け止められた。感情に任せた直情的な攻撃は軌道が読みやすく、簡単に受け止められるのだ。

愛奈?「どうしたらいいのか、分かんない」

愛奈?「魔族のみんなを助けるために、戦わないと」

愛奈?「でも、それでみんなを傷付けるのは、正しいことなの?」

愛奈「やめて……やめてよ!」

それは女優である小宮だからこそできることであった。

内面を理解し、それを全て「愛奈」という人物の心として演じる。

心に蓋をして選択肢から逃げた愛奈に、もう一度、その問いを突き付けたのだ。

愛奈は何がしたいのか、と。
510: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/22(土) 01:29:20.60 ID:W1egmEFp
愛奈「私は……私ッ!」

キン、と金属音が響き、愛奈の手から光の剣が弾け飛び、霧散する。

愛奈はその場から動くことをせず、また、反抗する様子もない。

ただ呆然ともう一人の自分と……そして、目の前で刀を構えているすわわへと視線を向ける。

それを見る愛奈の瞳に宿っていたのは、諦めと、そして救いであった。

死して幕を閉じれば、もう迷う必要はないからと、全てを受け入れるように目を閉じる。

しかし、覚悟したはずの痛みは何も襲ってこなかった。

代わりに、自分を抱きしめる温かい感触に、愛奈は気付く。

愛奈「すわ……わ?」

すわわ「うむ」

愛奈「慰めて、くれてるの?」

すわわ「うむ」

愛奈「っ……!」
511: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/22(土) 01:34:43.98 ID:W1egmEFp
愛奈「どうしたら、いいの」

愛奈「私は、どうしたら、いいの?」

愛奈「分からないよ、決められないよ」

愛奈「だって、みんな大切で、みんなに幸せになって欲しいんだもん!」

愛奈「それなのに、片方なんて、そんな、の、」

小宮「……馬鹿」

愛奈「っ……」

小宮「そういう時こそ、頼るのが仲間でしょう」

愛奈「ぅっ、っ、ぁ、」

小宮「一緒に考えてあげるから、全部吐き出しなさい」

小宮「大丈夫、ちゃんと受け止めてあげますから」

大切な人達に抱きしめられながら、愛奈は泣き噦り、心の本音を吐露した。
527: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/25(火) 00:25:31.29 ID:7P7e1GR2


朱夏「やめてよ二人とも!」

朱夏「戦う必要なんてないじゃん!」

由佳「ううん、これは必要なの」

由佳「私の思い描く世界に……そこの女は邪魔だから」

杏樹「そこだけは気が合うね」

杏樹「私も、邪魔者は葬りたいと思ってたんだ」

由佳「申し訳ないですけど、命乞いは聞きませんよ」

杏樹「するのはどっちだろうね」
528: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/25(火) 00:45:21.43 ID:7P7e1GR2
話は終わりだと言わんばかりに、杏樹は両手を前に出し、前羽の構えを取る。

これは相手の攻撃に備える防御の構えであるが、左手の負傷、杏樹の魔法のことを考えればこれが最善であるだろう。

杏樹「『火球(ファイアーボール)』!」

巨大な火の玉が由佳を目掛けて真っ直ぐに放たれるが、由佳はたいした反応を見せることもなく槍で払ってみせた。

由佳「こんな魔法しか使えないんですか……っ!?」

由佳の言葉が驚きに彩られる。それも当然だろう、火の玉を払いのけたと思えば、その先に杏樹が迫っていたのだから。

杏樹「しっ!」

由佳が辛うじて体勢を逸らすことで、胸を抉り抜こうとした杏樹の四本貫手は肩を掠めるだけですんだが、肩の肉が抉られ、傷口から血が飛び散った。

由佳「小賢しい真似を!」

杏樹を突き放すために、右手で掴んでいた槍を薙ぎ払おうとした由佳は、がちゃりという金属音に気付く。
529: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/25(火) 01:00:22.83 ID:7P7e1GR2
由佳「ちっ!」

杏樹の魔法により鎖に絡め取られた槍を捨て、すぐさま距離を取ろうとする由佳だが、杏樹を振り切る事ができない。

目を潰すよう放たれた貫手を躱しながら、次の一手を考える。

由佳「鬱陶しいッ!」

由佳の右足の蹴り上げを左足で抑えて止めた杏樹は、好機とばかりに右手を振るう。

狙うは由佳の瞳。目潰しを狙った貫手では躱されてしまうことがほとんどであるため、杏樹は手刀による擦りを狙った。

由佳「調子にのるなっ!」

杏樹「甘い」

なんとか手刀を回避した由佳は反撃のために左手に槍を出現させ、正面への杏樹へと繰り出す。

しかし、杏樹は穂先へと手を添え力を込める事で、その軌道を自分から逸らしてしまう。
530: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/25(火) 01:12:50.00 ID:7P7e1GR2
強力な力を身に付けたとしても、使いこなせなければ意味がない。

それを見せつけるかのように杏樹は由佳の攻撃を全て受け流していく。

杏樹「りゃぁっ!」

由佳「がっ!?」

そして、できた隙を見逃さず、その体へと右足を鋭く蹴り上げ、由佳の体は空中へと舞った。

杏樹「これが経験の差」

杏樹「分かったら、おとなしく死んで」

杏樹の振りかぶった右手に真っ赤な焔が宿る。

その狙う先は当然無防備に空を舞う由佳であり、杏樹は思い切り地面を蹴り上げ、由佳の後を追った。

杏樹「さようなら」

由佳「……ええ、さようなら」
531: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/25(火) 01:26:25.45 ID:7P7e1GR2
杏樹「がぁっ!?」

突如身体中を走る電撃に、杏樹の体が強張り、空中に貼り付けにされる。

気付けば、杏樹を取り囲むように出現した槍から、強力な電撃が発せられていたのだ。

由佳「あはは、待ち構えてたのになんの仕掛けもしてないと思いましたか?」

由佳「ちゃーんと罠を仕掛けておいたんですよ」

杏樹「ちっ!」

由佳「残念、私の方が早いです」

防御魔法を展開しようとした杏樹だが、電撃のせいで反応が遅れてしまった。

その一瞬の差に、由佳が禍々しいほどの黒炎を纏わせた黒槍を身動きの取れない杏樹へと叩き込む。
532: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/25(火) 01:35:59.40 ID:7P7e1GR2
杏樹に防御する手段は無く、由佳の攻撃を食らい、その衝撃で奥の壁へと叩き付けられ、巨大な破砕音を立てる。

由佳は追い討ちをせず、ただその光景を眺めていた。

なぜなら、追い討ちの必要がないと分かっていたからだ。

煙が無くなると、そこには杏樹が壁に背を預けるように座っていた。

いや、それは座るというよりも、もたれ掛かるという方が合っているのだろうか、杏樹の体には力が入っておらず、両腕がだらりと下げられている。

そして何より、杏樹の体の真ん中には、槍で貫かれたせいか、大きな風穴が開いていた。

由佳「……ふふ」

由佳「さようなら、杏樹さん」
542: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/27(木) 22:31:19.70 ID:P/9+BmTG
朱夏「あんじゅ……?」

朱夏「嘘でしょ、ねぇ」

朱夏「あんじゅ!」

駆け寄った朱夏が杏樹へと呼び掛けるが、反応は帰って来ない。

ただただ赤い血溜まりだけが、ゆっくりと地面を濡らしながら広がっていく。

由佳「やっと殺せたよ、その女」

由佳「やっと二人きりになれたね」

朱夏「……い」

由佳「どうしたの?ほら、こっちに来てよ」

朱夏「……さない」

由佳「え?」

朱夏「絶対に許さないよ、ゆか」

由佳「……しゅか?」
543: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/27(木) 22:41:01.87 ID:P/9+BmTG
立ち上がった朱夏の右手には、いつの間にか大剣が握られていた。

本来であれば両手持ちであり、持ち上げるのにも苦労するはずであろうその剣を、朱夏はやすやすと持ち上げ、由佳へと剣先を向ける。

由佳「待って、どうして?」

由佳「そいつがいなくなって、しゅかも嬉しいでしょ?」

由佳「付き纏われて迷惑してたの、知ってるんだよ」

朱夏「嬉しくなんかない」

朱夏「あんじゅは、私の大切な人」

朱夏「例えゆかでも、あんじゅを傷付ける奴は許さない!」

突如として悪寒に襲われた由佳は、迷わずに地面を蹴り後ろへと下がる。

その由佳の眼前には、横薙ぎにされた大剣が見えた。
544: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/27(木) 22:56:23.00 ID:P/9+BmTG
由佳「速い……!」

慌てて体勢を立て直そうと由佳が槍を構えると同時に、朱夏が大剣を振り下ろす。

槍を交互させ穂先で受け止めようとするが、その重量と勢いを受け止めることができず、由佳は即座に右へと回避行動をとる。

その回避行動を見た朱夏は即座に左手を振りかぶる。

由佳はその左拳による強打を受け止め、体勢を崩して取り押さえようと一瞬のうちに考えるが、朱夏の左拳を右手で受け止めきることができず、その勢いのまま床を転がることになった。

由佳「……そうだったね、しゅかは力が強かったもんね」

朱夏「…………」

朱夏の強さは、圧倒的な力と速さ、ただそれだけである。

だからこそ由佳は朱夏の動きを止める方法を考えるが、その速さ故に罠に掛けることが難しい。
545: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/27(木) 23:08:46.26 ID:P/9+BmTG
由佳「いいよ、やろうか、久しぶりに……本気の喧嘩」

このままでは殺されると考えた由佳は、自分の甘い感情を切り捨てる。

そこには本気でやっても朱夏は死なないであろう、という一種の信頼もあり、全力を持って戦闘に応じるつもりだ。

由佳「ふッ!」

弾丸のように直線上を駆け、朱夏へと槍を繰り出す。

その突撃に合わせ、朱夏は振りかぶった大剣をそのまま振り下ろした。

由佳「そこッ!」

乾いた金属音が鳴り響き、朱夏の手足へと鎖が絡み付き拘束をしようとするが、朱夏は特に気にした様子もなく、鎖ごと腕を振り下ろす。

由佳「なっ!?」

大剣はそのまま由佳を両断……したかに見えた。

しかし大剣はただ地面を砕いただけであり、由佳の姿はそこにはない。

由佳は踏み込みの瞬間に合わせ左に高速で飛んでおり、大剣を躱したのだ。

そして、その隙を見逃さず、朱夏の肩を目掛け槍を振るう。
546: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/27(木) 23:17:39.86 ID:P/9+BmTG
だが、それも朱夏には通じない。

朱夏は右手で槍の先端を掴むと、そのままボールを投げるように肩を回し、槍ごと由佳を地面へと叩き付けた。

由佳がまずいと思った時には遅く、その無防備となったお腹を思い切り蹴りあげられる。

由佳は腹が千切れそうな痛みに意識を飛ばさないようにしながら、朱夏から視線を外さない。

この無防備な姿を晒せば、杏樹同様追撃をすると由佳は考え、その通りに朱夏は動く。

地面を蹴り上げ、大剣を振り上げながら空を舞う。

その無防備となった朱夏へと、電撃が襲い掛かる。

朱夏「……っ!」

だが、朱夏は止まらない。

電撃に拘束されることもなく、真っ直ぐに由佳へと向かってくる。

その姿を、由佳は悲しい瞳で見つめていた。

由佳「……使いたく、無かったんだけどな」
547: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/27(木) 23:31:37.70 ID:P/9+BmTG
由佳「『絶槍の処女』」

朱夏「!?」

巨大な鋼鉄の球体が、朱夏を中心とするように部屋の中央に出現する。

その壁には伝説から粗悪品であろう、全種類の槍が埋め込まれていた。

由佳「ごめんね、朱夏」

由佳「多分、死ぬと思う」

由佳「その時は、ちゃんと私も後を追うから」

球体が少しずつ小さく縮んでいき、それに合わせるように様々な槍から魔法が飛び交う。

雷、炎、風、氷、水、土、闇、光、伝説として記された力が朱夏目掛けて振るわれながら、大量の槍が迫る。

無論、空中にいる朱夏にはそれを避ける術などない。

無数の魔法を内部で起こしながら球体は縮んで行き、そして、人の大きさになるところで停止した。
548: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/27(木) 23:41:52.29 ID:P/9+BmTG
由佳「殺し、ちゃったかな」

由佳「……あれ、なんで、私、こんな」

ばきり、と何かを砕く音が由佳の言葉を遮る。

それは球体から発せられた音だ。

球体の一部が割れ、そこから赤い雫が垂れている。

本来であればこの球体が割れることはないはずであり、それは即ち、何か異常自体が起こっているというこであろう。

由佳「……うそ」

その球体から出てきたのは、全身を血塗れにした朱夏であった。

全身に傷を作りながらも、致命傷は追っていない。

由佳「っ!」

由佳が反応するよりも先に、朱夏の拳が、由佳の顔面を捉えた。
549: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/27(木) 23:53:00.79 ID:P/9+BmTG
二発目、三発目、四発目、防御が間に合わず何度も拳を貰い、最後に胸を打たれ、由佳は壁に激突しそのまま座り込んでしまう。

胸を抉る衝撃に肺から空気が吐き出され、身体中が痙攣を起こす。

由佳「あ、はは……強いね、しゅか」

朱夏「何か、言い残すことはある?」

由佳「……ないよ。しゅかが生きてて、良かった」

朱夏「自分で殺そうとしたのに?」

由佳「……うん。なんでだろうね、絶対に使わないって思ってたのに」

由佳「こっちの世界に来て、私もおかしくなっちゃったのかな」

朱夏「ゆか……」

由佳「ああ……ごめんね。いいよ、殺しても。抵抗はしないからさ」

朱夏「……そんなことしないよ。ゆかは、私の大切な親友だもん」

由佳「……親友、かぁ」
550: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/28(金) 00:01:35.15 ID:Jo1yIlhc
朱夏「杏樹、大丈夫?」

朱夏は由佳から離れると、杏樹の所へと急ぐ。

朱夏「っ……誰か、治してくれそうな人のところに連れて行かないと」

何も答えない杏樹を腕に抱きかかえ、朱夏は通路を進もうとする。

朱夏は回復魔法を使うことができず、そのため杏樹を回復させるには他の誰かの力が必要になる。

小林はよくわからない魔法をたくさん使っており、もしかすると回復もできるんじゃないかと、先の道へ行くことを朱夏は選択したのだ。

由佳「ねぇ」

朱夏「何?」

由佳「止め、刺さなくていいの?」

朱夏「必要ないでしょ」

由佳「……そうだね。さっきから、体が全然動かないもん」

朱夏「……じゃあ、先に行くから」

由佳「待って」

由佳「もし、さ」

由佳「私がその人に殺されてたら、朱夏は怒ってくれた?」

朱夏「……怒らないよ」

由佳「……そっか。やっぱり、その人の方が大切ーー」

朱夏「だって、杏樹はゆかを殺したりしないから」

朱夏「そうしたら私が悲しむって、知ってるんだよ、杏樹は」

由佳「……あはは、そう、なんだ」

由佳「……負けた、なぁ」
551: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/28(金) 00:08:54.80 ID:Jo1yIlhc
朱夏「あんじゅ、大丈夫だよ」

朱夏「もうすぐあいきゃんが治してくれるからさ」

朱夏「だからもう少しだけ頑張って」

朱夏「大丈夫……大丈夫だから」

杏樹「……しゅ、か」

朱夏「あんじゅ!」

杏樹「ごめ、ん……しゅか、きず、つい、て、」

朱夏「そんなのどうでもいい」

朱夏「それより、自分に回復魔法は使えないの?」

杏樹「……まりょく、たりない」

朱夏「どうやったらその魔力は回復するの?」

朱夏「私にできることはある?」

杏樹「…………」ボソッ

朱夏「……っ」

朱夏「……緊急事態だから、だよ」

朱夏「これで治らなかったら、怒るからね」

朱夏「……あんじゅ」
557: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/28(金) 22:26:39.85 ID:Jo1yIlhc


梨香子「あれwここ何処w」

梨香子「あいきゃんいなくなってるしw」

梨香子「てか床光ってるんだけどwキモw」

梨香子「なんか蝋燭とか立ててあるしw」

梨香子「面白そうw」

梨香子「倒しちゃったw」

梨香子「やっばw掃除しないとw」

梨香子「魔法陣まで消えちゃったw」

梨香子「wwwwwwww」
558: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/28(金) 22:31:15.89 ID:Jo1yIlhc


魔王「どうした小娘共!」

魔王「その程度では我には勝てんぞ!」

降幡「ちっ……普通に強いじゃねーか」

小林「小娘だって!まだ全然若く見えるのかな?」

高槻「アホか馬鹿にされてんだよ!」

小林「え、そうなの!?」

小林「もう許さないよ!」

善子『それでけ元気があればまだ大丈夫ね』

小林「うん!ヨハちゃんがいるからね!」

善子『上等よ。もう一踏ん張り、頑張りなさい』
559: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/28(金) 22:39:52.51 ID:Jo1yIlhc
魔王とはその名の通り、魔族の王。魔族の中で一番強い者がなる。

遠距離ではありとあらゆる魔法を使いこなし、近距離では無双の剣を奮う。

遠近共に弱点など無く、三人は攻めあぐねていた。

高槻「どうすんだよ、このままじゃジリ貧だぞ」

降幡「全員で攻撃するしかないだろ」

降幡「こっちにあるのは数の有利だかんな」

降幡「あいきゃん!突っ込むから援護頼む!」

小林「分かった!」

小林「見ててね、ヨハちゃん!」

善子『ええ、かっこいいところ見せなさいよ、小林』

小林「もちろんだよ!」

高槻「あいつに背中預けるのこえーんだけど」

降幡「うるせぇ!いいから行くぞッ!」
560: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/28(金) 22:59:27.33 ID:Jo1yIlhc
魔王「くらえ!《業火の炎》!」

小林「いけ!【煉獄の焔】!」

魔王が赤い炎を出現させるの同時に、それを相殺するように、小林が闇の焔を放つ。

二人の接近を阻もうとした赤い炎は、闇の焔に侵食され、消えて無くなってしまう。

魔王「ふん、ならばこれならどうだ!」

魔王「【悪魔召喚】!」

魔王が魔法陣を描くと、その中心から黒い羽を生やした数体の悪魔が湧いてくる。

小林「【堕天使の息吹】!」

その悪魔たちへと迫るのは、禍々しい冷気だ。

それに触れた悪魔たちは体が徐々に凍っていき、恐怖の表情を浮かべながら氷の中へと閉じ込められ、体の芯から動けなくなる。

高槻「……なあ、本当はあいつが魔王なんじゃねーのか」

降幡「軽口叩いてる暇があるなら……攻撃しろよ!」
561: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/28(金) 23:15:20.77 ID:Jo1yIlhc
降幡が両手に持った剣を、腕を交差するように両側から剣で斬りつける。

左右同時の攻撃であり、それを防ぐのは難しいだろう。

しかし、その攻撃には重大な欠点があり、それは正面の防御が無防備になることだ。

それを魔王が見逃すはずもなく、降幡の攻撃に合わせるように剣を振り下ろす。

高槻「させるかよっ!」

魔王「ちぃっ!」

当然その弱点が狙われることは二人も分かっており、高槻がそれを補うように斧で魔王の攻撃を受け止める。

その隙を見逃さず、降幡の刃が魔王の腹を切り裂いた。

降幡「浅いかっ……!」

魔王「ふんっ!」

凄まじい衝撃と共に、降幡と高槻が弾き飛ばされ、小林の元へと転がる。

これが三人が魔王を攻めあぐねている理由であった。
562: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/28(金) 23:25:20.78 ID:Jo1yIlhc
魔王「遊びは終わりだ!これで終わりにしてやる!」

降幡「やべぇ!何か来るぞ!」

魔王の力の高みを感じ、降幡が声を上げる。

魔王の周りには幾多もの魔法陣が描かれ、そのどれもが眩い輝きを放っている。

魔王「己の無力を呪いながら息絶えるが良い!」

魔王「《消滅のーーぬぉっ!?」

魔王が魔法を放つ瞬間、天井が崩れ、魔王へと降り注ぎ、魔法陣を全て掻き消してしまう。

咄嗟に体制を立て直そうとした魔王であったが、上から落ちてきた人に頭を踏まれ、地面に転がった。

梨香子「やっばw床壊しちゃったw」
563: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/28(金) 23:37:50.31 ID:Jo1yIlhc
梨香子が破壊しまくっていたのは玉座の上の部屋であり、面白がっているうちに床まで壊してしまったのだ。

梨香子「なんか踏んだw誰こいつw」

降幡「おい!あぶねーぞ!離れろ!」

魔王「くそがぁっ!」

怒りに任せて振り払った剣に当たり、梨香子が吹き飛ばされる。

梨香子「いったwなにすんのw」

魔王の剣を受けた梨香子は、どくどくと血を流しながら立ち上がる。

しかし、それは魔王の渾身の一撃を受けたとは思えない程度の傷であった。

本来であれば体が真っ二つになっていてもいいはずの威力であり、魔王が思わず目を見張る。
564: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/28(金) 23:51:10.18 ID:Jo1yIlhc
善子『小林!今がチャンスよ!』

小林「うん!【堕天・鳳凰双翼】!」

高槻「ふりりん!」

降幡「分かってるッ!」

黒い翼を羽ばたかせ、漆黒に彩られた鳥が魔王へと襲いかかる。

それに追随するように、降幡と高槻が己の武器を構え、魔王へと迫る。

魔王「舐めるなぁ!」

黒き鳳凰の直撃を受け体勢を崩した魔王が、持っている剣を突き出す。

高槻はそれを避けることなく、剣を握る右腕に向け、大きな斧を振り下ろした。

魔王「がっ、ぁぁぁぁぁっっっ!!」
565: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/29(土) 00:03:57.42 ID:VQpwyKd0
高槻の脇腹が抉り取られるのと引き換えに、魔王の右腕が血飛沫を上げて吹き飛ぶ。

降幡「さっさとくたばれッ!」

魔王「【切り裂きの風】!」

残された左手で放たれた風の刃の雨。

降幡はそれから逃げることなく、切り刻まれながらも前へと出る。

この場で勝負を決めるために、そして高槻の覚悟に応えるために躊躇なくした選択は、魔王の動揺を誘うには十分であった。

降幡「もらったっ!」

自身の速さを剣に乗せ、さらに大きく遠心力を込めた一撃は、容易に魔王の左腕を斬り落とした。

魔王「ぐっ、おおおっっ!」

梨香子「仕返しwどーんw」

完全に無防備になった魔王へ、追い討ちのように巨大な衝撃が走り、地面を転がる。
566: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/29(土) 00:08:42.96 ID:VQpwyKd0
魔王「おのれ……貴様ら……」

小宮「おや、もう終わりのようですね」

すわわ「うむ」

愛奈「やっぱり、みんな強いんだね」

魔王「っ……新手、だと」

杏樹「しゅか、ありがとね。大好きだよー」

朱夏「あーもー、もたれ掛からないで。まだ痛いんだから」

降幡「全員勢揃い、ってわけだな」

魔王「ばかな……この私が……人間ごときに……」

高槻「何が人間ごときだっての」

高槻「そんなに強くもねーくせに威張りやがって」
567: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/12/29(土) 00:18:32.61 ID:VQpwyKd0
魔王「……奥の手にとっておいた魔法陣も発動せんか」

魔王「人間に敗北する日が来るとは、思わなかったぞ」

小林「やった!遂に私たち勝ったんだよ!ヨハちゃん!」

善子『ええ、よく頑張ったわね、小林』

朱夏「これでやっと帰れるんだね」

高槻「そうだな。おら、とっとと元の世界に帰る方法言えよ」

降幡「確か倒したら帰れるんだよな……倒すってなんだ?」

高槻「やっちまわないとダメか?」

すわわ「うむ」

魔王「……く、くはは」

魔王「舐めてくれるなよ、人間」

降幡「なんだって?」

魔王「見よ!私の最後の魔法を!」

降幡「てめぇっ!何する気だ!」

高槻「取り押さえるぞ!」

小林「ヨハちゃん!あいつまだ何かするみたいだよ!」

善子『大丈夫よ、小林』

小林「そうなの?」

善子『ええ、だって』




善子『ここまで計画通りだから』
579: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/30(日) 23:55:10.34 ID:p8uQYuiu
強く光を放つ魔王へと、善子は歩みを進める。

それに気付いた小林の制止を聞かず、善子はだんだんと大きくなる光の中へと入っていった。

小林「ヨハちゃん!」

降幡「やめとけ!」

追い掛けようとした小林は近くにいた降幡と高槻に取り押さえられる、ただその光が収束するのを見ているだけだった。

光が治まると、そこには一人の少女が立っており、全員が思わず息を飲んだ。

それは紛れも無い津島善子……いや、漆黒の羽根を纏うその姿は、堕天使ヨハネと形容した方がいいのだろうか。

本来であれば有り得ないはずの現象に、誰も言葉を発することができなかった。

たった一人を除いては。
580: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/31(月) 00:03:10.98 ID:fXUU8Ule
小林「ヨハちゃん、大丈夫!?なんともない!?」

小林「もー、びっくりしたんだから」

小林「あれ、翼が生えてる!」

小林「凄い……本物だ」

小林「これがヨハちゃんの本当の姿なんだね!」

善子「小林……」

小林「ん?どうしたの?」

小林にそう聞かれた善子は、口を噤んだ。

少しの逡巡の後、善子はゆっくりと小林へ体を近付ける。

善子「……会いたかった」

そう言うと、善子はほんの少しだけ強く、小林を抱きしめた。
581: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/31(月) 00:10:33.16 ID:fXUU8Ule
小林「ヨハちゃんとはいつも会ってるよね?」

善子「うっさい、ばか。さっさと抱きしめなさいよ」

小林「甘えん坊なヨハちゃんも大好きだよ~」

善子「……ん」

その温もりを心の底から味わうように、善子は小林の胸へと顔を埋め、目を閉じる。

目の前で繰り広げられる光景に脳が追い付かず、黙ったままのメンバーであったが、杏樹が一番先に我に返った。

杏樹「イチャついてるところ悪いんだけどさ、これはどういう状況なの?」

杏樹「なんで善子ちゃんがここにいるの?」
582: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/31(月) 00:24:29.60 ID:fXUU8Ule
善子「……そうだった、説明しないとね」

善子「それと、何度も言ってるけど、私はヨハネよ」

善子「堕天使ヨハネ。それがこの世界での呼び名よ」

朱夏「この世界ってどういうこと?」

善子「元々、私はこの世界の住人なのよ」

善子「こっちの世界で死んで、みんなが元いた世界に行ったの」

愛奈「私たちの世界って……雑誌とか、アニメ?」

善子「そうね。それも経験したわ」

善子「でも、最初に自我を自覚したのは、小林の部屋だった」

善子「その時の私は小林とお喋りをしてたわ」

善子「それからずっと、小林と一緒だった」
583: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/31(月) 00:29:38.75 ID:fXUU8Ule
善子「でも、それとは別にもう一つの人生も送ってた」

善子「Aqoursのみんなに出会って、ラブライブで優勝した」

善子「ちょっとだけ奇妙な感覚だった」

善子「でも、不思議と嫌じゃなかった」

善子「だって、小林がいつも側にいてくれたから」

杏樹「もしかして、私たちがこっちの世界に来たのって」

善子「私の仕業よ」

杏樹「……そう。理由は?」

善子「理由なんて決まってるでしょ」

善子「小林と……こうして触れ合うためよ」
584: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/31(月) 00:32:32.64 ID:fXUU8Ule
小林「うーん、つまりどういうこと?」

善子「私が小林のことを好きってこと」

小林「私もヨハちゃんのこと大好きだよ!」

善子「知ってるわ」

降幡「理由は分かったし、なんとなくいろいろ理解できた」

降幡「それで、どうやったら元の世界に帰れるんだ?」

善子「帰る?」

善子「そんな必要ないでしょ?」

善子「みんなこっちの世界で暮らせばいいじゃない」
585: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/31(月) 00:41:40.56 ID:fXUU8Ule
降幡「いや、そういうわけにもいかねーだろ」

善子「どうして?」

善子「こっちの世界、楽しかったでしょ?」

善子「チートの力で、好き放題できるんだから」

杏樹「この力は善子ちゃんがくれたの?」

善子「違うわよ。世界を移動すると、特殊な力を得られるの」

善子「もちろん、帰ったら無くなるけどね」

朱夏「別に無くなるのはいいんだけどさ」

善子「なんでそんなに帰りたいの?」

善子「せっかく罪悪感を減らしてあげたのに」

高槻「どういうことだよ」

善子「不思議に思わなかった?人を殺してもあんまり罪の意識がなかったでしょ?」

善子「みんなに楽しんでもらうために、わざわざしてあげたのよ」
587: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/31(月) 00:49:02.33 ID:fXUU8Ule
杏樹「逆に、どうして善子ちゃんは戻りたくないの?」

善子「ヨハネ。どうしてって、あっちの世界に戻ったらまた霊体みたい状態になるからよ」

善子「小林と触れ合えないなんて、そんなの嫌」

善子「だから、みんなでこっちで暮らすわよ」

善子「なんなら、一人に一つ国をあげてもいいわ」

善子「望む物は、なんでも手に入る」

善子「ここはまさしく楽園よ」

愛奈「それは、この世界の人たちを力付くで支配するってこと?」

善子「ええ、そうよ」

善子「良かったじゃない、人間を憎んでたんでしょ?」

愛奈「っ……!」
588: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/31(月) 01:01:05.30 ID:fXUU8Ule
杏樹「そういうのはいいから、帰る方法を教えてよ」

杏樹「私たちだけでも帰るからさ」

善子「無理よ。帰るなら、全員で帰るしか方法がないの」

善子「それはつまり、私と小林が離れ離れになるってことよ」

杏樹「あんまりしつこいと、力付くで聞き出すことになるよ」

善子「そんなボロボロの体で何言ってるんだか」

杏樹「…………」

善子「全員いい感じに消耗してるし、本当に上手くいったわ」

高槻「……まさか、お前」

善子「ええ。あいにゃが敵になるように仕組んだのも、由佳さんを召喚したのも私よ」

善子「8人が万全の状態なら、万が一があり得るからね」
589: 名無しで叶える物語(玉音放送) 2018/12/31(月) 01:06:01.25 ID:fXUU8Ule
善子「それで、どうするの?」

善子「一度痛い目見ておく?」

杏樹「……あんまり調子に乗るなよ」

善子「ふふ、怖いわね」

善子「他の全員もやる気出し」

小林「ま、待ってよ、みんな!」

小林「なに戦おうとしてるの!?ヨハちゃんは良い子でーー」

善子「大丈夫だから、ここで大人しく待ってなさい、小林」

そう言うと、善子は小林の側を離れ、他のメンバーの近くへとやってくる。

善子「ねぇ、あんちゃん」

杏樹「なに?」

善子「8人じゃ、奇跡は起こせないわよ」
597: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/01(火) 22:58:46.35 ID:/ZbQaSgO
杏樹「『火矢の雨』!」

善子「【堕天使の息吹】」

善子の言葉を開幕の合図とし、杏樹が魔法を発動させる。

空中に出現した炎の矢は間断なく善子へと降り注ぐが、全て禍々しい冷気により掻き消されてしまう。

降幡「あの技……あいきゃんが使ってたやつじゃねーか」

善子「小林は私のリトルデーモンなんだから、私の力を使えてもおかしくないでしょ」

善子「まあ……小林が使ってないものもあるけどね」

善子「【闇の弾丸】」

杏樹「っ!」

前へと突き出された善子の右手から質量を持った闇が高速で打ち出され、杏樹が反応するよりも早く杏樹の胸を打ち抜き、そのまま地面へと崩れ落ちる。
598: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/01(火) 23:10:14.66 ID:/ZbQaSgO
朱夏「よくもあんじゅを!」

一瞬のうちに距離を詰めた朱夏が巨大な大剣を振り下ろすが、善子はそれを左手で軽々と受け止める。

力尽くで押し切ろうにも、どれだけ力を込めようが善子の左手はビクとも動かず、その隙に善子は朱夏の頭を鷲掴みにし、地面へと叩きつけた。

善子「地元愛で、よく小林と絡んでたわよね」

善子「あの時、凄くもやもやしてたのよ」

善子「私の小林が取られるんじゃないかって、胸が凄く騒いでた」

善子「だから、優しくできないわよ」

すわわ「うむ」

すわわが善子の背後から首元へと日本刀を一閃するが、それを善子は人差し指だけで受け止める。
599: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/01(火) 23:23:08.44 ID:/ZbQaSgO
すわわ「ん」

善子の体は堕天使という身であるため、他の生物よりも体の硬さは段違いである。

しかし、すわわの能力で生み出された刀も伝説級の物であり、本来であれば指ごと首を斬り落とせる一撃であったのだが、善子は闇の力を通わせることで体の防御力を向上させたのだ。

善子「すわわも、よくも小林のことをレイプしようとしてくれたわね」

善子「【煉獄に咲くは血塗られた薔薇】《ブラッド・アイン・ローズ》」

地面から生えた蔓が槍のようにすわわへと襲いかかり、すわわが刀で迎撃を行う。

すわわ「んぁっ」

数の多さに距離を取ろうとしたすわわの足を細い荊が何本も貫き、地面へと縫い止められ、足を動かすことができなくなる。

真っ白な太腿から赤く滴る血が地面を濡らし、血を吸った薔薇は赤い薔薇を咲かせる。
600: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/01(火) 23:30:51.60 ID:/ZbQaSgO
小宮「一つ、貸しですわよ」

体の硬直したすわわへと迫る蔓を、小宮が鉄扇で斬り払う。

小宮「こうなってしまった以上、善子ーー」

小宮の言葉が、途中で止まった。

いや、止められたと言った方が正しいのだろうか、向かい合っていたはずの善子が、いつのまにか小宮の首を掴み持ち上げていたのだ。

善子「そういえば、ありしゃも小林にちょっかい掛けようとしてたわよね」

善子「朱夏に化けて忍び込むなんて……悪戯好きにも程があるわ」

そのまま右手を振り払い、小宮は投げつけられ壁に激突する。

すわわ「うむ」

善子「当たらないわよ」

自身の間合いへと入った善子に対し、反応がしにくい下からの切り上げを放つが、あっさりと躱され、お腹へと食い込んだ右拳にその場で崩れ落ちる。
601: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/01(火) 23:41:26.94 ID:/ZbQaSgO
降幡「嘘だろ……こんな、あっさり」

愛奈「っ……よくもみんなを!」

愛奈「『光よ手繰れ』!」

愛奈の手からの伸びた光の鞭が善子へと迫るが、善子はそれを笑いながら見ていた。

善子「押し潰しなさい、【重圧の闇】」

愛奈「ぐっ!?」

放たれた光ごと、周囲一帯を質量を持った闇が多い、愛奈の体が地面へと叩きつけられる。

自身へと掛かる重力が何十倍にもなった圧迫感に指先一つ動かずことができず、愛奈の視界は閉ざされ、ただ圧力のみが愛奈を襲う。
602: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/01(火) 23:47:52.70 ID:/ZbQaSgO
梨香子「調子に乗るなwどーんw」

愛奈の飲み込まれた闇へと視線が行く善子を巨大な衝撃波が襲う。

梨香子「逢田さんぱーんちw」

ばちん、と乾いた音を立て、梨香子の拳が受け止められる。

善子は衝撃波を受けても無傷であり、梨香子の拳を受け止めることは造作もなかった。

梨香子「放せw」

善子「りきゃこも、いつも小林がお世話になってるわね」

善子「ボール、投げ付けられたらどうなるんだろうね」

善子の手から放たれた闇の球体が梨香子に命中し、弾かれた梨香子は地面を転がりそのまま動かなくなる。
603: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/01(火) 23:53:09.96 ID:/ZbQaSgO
善子「さて……と」

部屋の一部を覆っていた闇が消えると、横たわり動かなくなった愛奈が姿を現わす。

善子「それで、貴女達はどうするの?」

降幡「どうするって……」

降幡は答えられなかった。

自分より強いメンバーが挑み簡単に返り討ちにされているのだから、自分が勝てないと言うことは戦う前から分かっていたからだ。

もしもこの場で戦えば、最悪死ぬ可能性もあり、それならば元の世界に帰れなくてもいいんじゃないかという考えが胸をよぎってしまったのだ。

高槻「お前をぶっ殺すに決まってんだろ!」

そのせいもあり、高槻が走り出した瞬間、降幡は止まったままであった。
604: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/02(水) 00:01:31.57 ID:4WBmLsbf
高槻「『超倍加』!」

高槻の持つ巨斧が5倍ほどの大きさへと膨らむ。

真っ二つにする勢いで振り下ろしたそれは、当然のように善子に受け止められた。

高槻「知ってんだよ!」

高槻は受け止められた斧を手放すと、小さな手斧を出現させ、善子へと投げ付ける。

それを指一本で弾いてみせた善子へと、新たに出現させた斧で切り掛かるが、それも善子の体に傷を付けることはできなかった。

善子「力の差が分からないっていうのは、悲しいことね」

高槻「うるせぇ!やってみなくちゃわかんねーだろ……う……が……ちく、しょう、」

どさり、と善子に胸を殴られた高槻がその場に崩れ落ちる。
605: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/02(水) 00:07:27.61 ID:4WBmLsbf
善子「残るは、あいあいだけね」

降幡「っ……」

それは、強者のみに許される余裕。

降幡は気付いてしまった、自分が『敵』とすら認識されていないことに。

善子からすれば、降幡を葬るのは造作も無いことであり、やろうと思えば降幡が思考する前にできるだろう。

降幡「やるしかねぇ、だろ」

本当は今にも逃げ出してしまいたいのだが、仲間を見捨てて逃げるという選択肢を降幡は選べない。

恐怖に立ち向かいながらも、降幡は刀が胸の前で交差するように二刀流を構える。

善子「……ふふ」

降幡「何がおかしいんだよ」

善子「震えてるから、可愛いなって思ったの」

降幡「っ……!」
606: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/02(水) 00:12:57.14 ID:4WBmLsbf
カチカチカチ、と刀同士が小刻みにぶつかる音が聞こえる。

それは体が震えているせいであり、降幡はそれを振り払うかのように前へと出た。

降幡「でやぁぁぁぁっ!」

踏み込みの直前、左に重心を傾けてからの右跳び。

善子のお腹を掠めるように放たれた斬撃は、パキンという音と共に掻き消された。

お腹に強い衝撃を受け、そのまま地面へと放り出される。

手に持った剣は、両方とも刀身を失っていた。
607: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/02(水) 00:19:30.04 ID:4WBmLsbf
善子「私の勝ちね」

善子「ふふ、良かった。これで小林とずっと一緒にいられる」

善子「ねぇ、小林、何かしたいことある?」

善子「今の私ならなんでも叶えてあげられるわよ」

小林「……ヨハちゃん、こんなの、おかしいよ」

善子「……え?」

善子「何言ってるのよ、小林」

善子「あんちゃん達は、私と小林の仲を引き裂こうとしたのよ?」

善子「だから返り討ちにしただけ。何もおかしくないでしょ?」

小林「そうだけど……でも、その、なんていうか」
608: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/02(水) 00:25:29.82 ID:4WBmLsbf
小林「ほら、やっぱりさ、みんなで仲良くしてる方がいいと思うの」

小林「だからさ、みんなが納得するように……」

善子「……言ったわよね、小林」

善子「私さえいればいいって」

小林「う、うん。ヨハちゃんは私の大切な人だから」

善子「じゃあ、他の人のことなんてどうでもいいでしょ」

善子「まさか、元の世界に帰りたいなんて思ってたりしないわよね、小林」

小林「思ってないけど、みんなどうしてるのかとか、後は、いろいろどうなってるのかとか、気になったり……」

善子「…………」

小林「あの……ヨハちゃん」

小林「怒ったのならごめんね」

小林「私の一番はヨハちゃんだから、こっちの世界で一緒に暮らそう?」

善子「……分かったわ」

小林「良かった……じゃあ、まずはみんなをーー」

善子「あんちゃんを、殺すわよ」

小林「え……?」
609: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/02(水) 00:31:27.04 ID:4WBmLsbf
小林「ま、待って!なんで!?」

善子「小林は元の世界に未練があるんでしょ?」

善子「大丈夫、小林は私のリトルデーモンなんだから、ちゃんと理解してあげてる」

善子「あんちゃんを殺せば、向こうに戻ってもAqoursは再開できないでしょ?」

小林「っ!」

善子「小林の未練、消してあげるわ」

小林「だ、だめだよ!殺しちゃ!」

善子「なんで庇うのよ、小林」

善子「あんちゃんは小林を殺そうとしてたのよ?」

小林「でも、最後は助けてくれたし……」

善子「あれは相手のせいよ」

小林「で、でも……」

善子「いいから、おとなしくしてなさい、小林」

善子「私とあんちゃん、どっちが大切なの?」

小林「…………っ」
610: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/02(水) 00:39:06.08 ID:4WBmLsbf
かつん、かつん、と乾いた音を立てながら、善子は杏樹に向かって足を進める。

その近づいてくる足音は、嫌という程明確に降幡の耳に入ってきた。

降幡は善子と杏樹のちょうど中間におり、善子は必ず降幡の横を通過する。

そして、通過してしまえば、杏樹は殺されてしまうということを、降幡は先程の会話から理解してしまっていた。

善子から放たれる明確な殺意が、今度こそ自分に降りかかるかもしれない。

そんな考えに支配された体は、立ち上がれという脳の命令を無視するのだ。

自分が立ち塞がったところで無意味という気持ちと、杏樹を守りたいという気持ち。

その二つが、降幡の脳内を駆け巡っていた。

例え勝てなくても、隙を見つけて杏樹を連れて逃げることができるかもしれない。

それなら、やるしかないと。

善子「もし立ち上がれば、殺すわよ」
611: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/02(水) 00:43:52.73 ID:4WBmLsbf
冷や水を浴びせられたかのように、高まっていた鼓動が急速に静かになっていく。

喉元に鋭利な刃物を突きつけられた感覚。

力の差は歴然であり、そもそも隙を見つけて逃げるということすら不可能なのだ。

つまり、降幡がここで立ち上がるのは、完全な犬死に。

杏樹が一人死ぬか、そこに降幡が加わるか、その違いでしかない。

降幡「ちく、しょう……」

降幡は自分を呪った。こんなにも弱い自分を。

こんな時でも、自分の身を考えてしまう自分の弱さを。
612: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/02(水) 01:01:08.80 ID:4WBmLsbf
降幡「私は、誰も、守れないのかよ」

みんなと旅をしていても、これといった活躍が出来ない。

みんなは自分より遥かに強い力を持っており、最終決戦でも、本当は自分はいらないんじゃないかと思っていた。

降幡「ちき、しょ、う」

力は無くとも、自分の信念だけは曲げないでいようと思った。

仲間のことを思い、助けて合う。

だが、死の危険に直面した今、それすらもやり遂げられないことに気付いた。

目の奥から少しずつ湧き出る涙。

悔しさと情け無さに支配された降幡は、ただただ冷たい床の感触を感じていた。

降幡「なんで……私は……こんなに……情け……ないんだよ……」

『情けなくなんかないよ』

降幡「え……?」

その声を降幡は聞いたことがあった。

元の世界にいた頃、一番身近にいたと言ってもいい、聞き間違えるはずのない声。

『あいちゃんは、本当は怖がりさんなのは知ってるよ』

『でも、今はこうして……大切なみんなのために、勇気を出そうとしてる』

『勇気が足りないなら、背中くらい、押させて欲しいな』

『善子ちゃんに負けないくらい、側にいるんだもん』

『だから、もう少しだけ』






ルビィ『がんばルビィ、だよ』
625: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/03(木) 23:05:49.80 ID:s/8Yt/Q6
花丸『そんなところで寝てないで、さっさと起きるずら』

高槻「……うるせぇ。ぶっ殺すぞ」

花丸『そんなこと言って、本当はマルのことが好きなのバレバレずら』

高槻「ちっ……」

花丸『……だから、早く立ち上がるずら』

花丸『マルも、きんちゃんのことがだーい好き、なんだから』
626: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/03(木) 23:09:36.53 ID:s/8Yt/Q6
果南『これはこっぴどくやられたねぇ』

すわわ「うむ」

果南『やれやれ、素直じゃないんだから』

果南『でもまあ、だから私たちは似てるのかもしれないね』

すわわ「うむ」

果南『いつまでも倒れてないで、もう一度立ち上がるよ』

果南『力が出ない?仕方ないなぁ』

果南『じゃあ、ハグしよ?』
627: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/03(木) 23:11:44.22 ID:s/8Yt/Q6
ダイヤ『大丈夫、なんて聞くだけ野暮という物ですね』

小宮「……情けないところ、見られてしまいましたね」

ダイヤ『何処が情けないのですか?』

ダイヤ『私の目には、仲間を助けるカッコいい姿しか写っていませんけど』

ダイヤ『ほら、シャキッとしてください』

ダイヤ『こんなところで負けるなんて、ぶっぶーですわ』
628: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/03(木) 23:16:10.30 ID:s/8Yt/Q6
鞠莉『チャオ!マリーも応援に来たわよ』

愛奈「……夢?」

鞠莉『残念ながら夢じゃないわ。ここでみんなが負ければ、永遠に元の世界に帰れなくなる』

鞠莉『辛かったわよね。あいにゃは心の優しい人なんだから、戦うのだって、本当は嫌なんだよね』

鞠莉『でも、もう少し頑張ってほしい』

鞠莉『私も、もう一度会いたいから』

鞠莉『大丈夫、ちゃんと隣にいるよ』

鞠莉『この手、握っててあげる』
629: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/03(木) 23:20:39.00 ID:s/8Yt/Q6
梨子『みんなは凄いな、こういう時、すっと言葉が出てきて』

梨子『私は口下手だから、気持ちを伝えることしかできないの』

梨子『私は、梨香子ちゃんのことが大好きだよ』

梨香子「…………」

梨子『本当は怖がりなところも、私にそっくりで』

梨子『なんて、こんなこと言ったら怒らせちゃうかな』

梨子『文句があるなら、元の世界にちゃんと戻ってきてから聞かせてね』
630: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/03(木) 23:25:35.98 ID:s/8Yt/Q6
曜『元気、じゃないよね』

朱夏「曜、ちゃん?」

曜『うん、そうだよ。まだ頑張れそう?』

朱夏「……無理、だよ」

曜『無理なんかじゃないよ』

曜『だって、朱夏ちゃんは本当はなんでもできる力を持ってるんだもん』

曜『自信が無いなら、私が保証してあげる』

曜『だからもう一度、頑張ろう』

曜『ほら』

曜『全速前進、ヨーソロー!』
631: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/03(木) 23:36:39.36 ID:s/8Yt/Q6
千歌『私ね、不思議だったんだ』

千歌『Aqoursは9人。だけど、側でいつも見守って、一緒に歌ってくれる人がいるような、そんな気がしてた』

千歌『その人は、何の取り柄もない、ただの普通怪獣な私を、最初から最後まで、ずっと見守って、側にいてくれた』

千歌『ねぇ、杏樹ちゃん』

千歌『私はね、ちゃんと自分の輝きを見つけたよ』

千歌『何もかも一歩一歩、私たちの過ごした時間の全てが輝きだったんだ』

千歌『その輝きの中には、杏樹ちゃんも入ってるんだよ』

杏樹「…………」

千歌『大丈夫、最後まで私は杏樹ちゃんと一緒にいるから』

千歌『だから、一緒に輝こう!』
632: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/03(木) 23:40:56.73 ID:s/8Yt/Q6
善子「なんでよ」

善子「なんで……なんで、邪魔するのよ!」

善子「もう少しで、私と小林は結ばれるのに」

善子「それなのに……なんでみんな邪魔するのよ!」

小林「みんな、ヨハちゃんにこれ以上悪い子になってほしくないんだよ」

善子「え……?」

小林「ヨハちゃんの気持ち、私は嬉しいよ」

小林「でも、やっぱり、そのためにみんなを傷付けるなんて間違ってる」

善子「な、何言ってるのよ、小林」

善子「小林は私の味方でしょう?」

善子「早くこっちに来てよ……一緒にみんなを倒し……」

小林「……ごめん、ヨハちゃん」
633: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/03(木) 23:44:53.77 ID:s/8Yt/Q6
善子「……嘘」

善子「嘘でしょ……嘘に決まってる……」

善子「だって、小林が、私のこと、見捨てるわけ……」

小林「…………」

善子「…………っ」ギリッ

善子「もう、いいわ」

善子「みんな、嫌いよ」

善子「小林も、Aqoursのみんなも、みんな、みんな!」

小林「ヨハちゃん、お願い、話を聞いて」

善子「うるさい、裏切り者!」

善子「あんたなんか……あんたなんか、死んじゃえばいいのよ!」
634: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/03(木) 23:56:51.92 ID:s/8Yt/Q6
善子「【煉獄の焔】!」

闇の焔が地面を走り、空気を侵食しながら小林へと迫る。

降幡「させるかよっ!《流星》!」

降幡が振るった刃から出た光の斬撃が、雨のように降り注ぎ、闇の焔を掻き消していく。

相殺されると思っていなかった善子は、思わず息を飲んでしまう。

降幡「いくぞっ!」

善子「来られるものなら……来てみなさい!」

善子「【堕天・闇宝珠】」

愛奈「『光は闇を照らすもの。皆を守る盾となれ』」
635: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/04(金) 00:03:01.05 ID:MW+f9oBf
巨大な重力を纏った闇が頭上に出現すれば、それを受け止める光の盾が現れる。

壁ごと飲み込むその闇は、光を飲み込むことはできず、消滅した。

降幡「でりゃぁっ!」

善子「っ……舐めるな!」

正面から突撃をする降幡に、善子が禍々しく光る剣を振り下ろす。

それはもはや加減のない一撃であり、当たれば即死するものだ。

しかし、その金属と金属のぶつかる音がし、その刃は弾かれた。

高槻「はっ!こんな軽い攻撃で調子に乗ってんじゃねーぞ!」

善子「っ……!」

降幡「もらった!」

高槻が剣を防いだことによってできた隙を見逃さず、降幡は善子の右手を掠めるように剣を振るう。

咄嗟に魔力で覆った右手であったが、それを感じさせないほど鮮やかに、真っ赤な鮮血が空を舞った。
636: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/04(金) 00:08:18.05 ID:MW+f9oBf
善子「なっ!?」

それは善子からすればあり得ないことであった。

自身の防御力を貫く物があるなど、この世界ではあってはならないことなのだから。

小宮「戦闘中に気を抜くのは感心しませんわね」

善子「っ!」

振るわれた鉄扇を、自身を覆うように展開した翼で防御する。

小宮「今です!」

すわわ「うむ」

きん、と乾いた音。日本刀により放たれた一閃は、漆黒の翼を中程から刈り取り、善子の防御に穴が出来上がる。

小宮「そこっ!」

その隙に鉄扇を叩き込み、善子は強い衝撃を受けて地面を転がった。
637: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/04(金) 00:13:57.00 ID:MW+f9oBf
善子「はぁ……はぁ……」

梨香子「聞こえたよ、みんなの声が」

梨香子「善子ちゃんを止めて欲しいって」

善子「くっ!」

咄嗟に手を前に出し、障壁を作ると同時に巨大な衝撃が、障壁を襲う。

バキバキバキ、と透明な空間にヒビが入り、善子の障壁は粉々に砕け散った。

善子「距離を……!」

朱夏「ごめん、取らせないよ」

一瞬で距離を詰めた朱夏は、善子の持っていた剣を跳ね飛ばし、善子の腕を掴んで空中へと投げ飛ばした。
638: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/04(金) 00:22:02.18 ID:MW+f9oBf
善子「もう少し、だったのに」

善子「なんで、こんな!」

杏樹「やり方を間違えた」

杏樹「ただそれだけだよ」

善子「っ、うるさい!私は間違ってない!私は……私は!」

善子「【堕天使の弾丸雨】!」

杏樹「『烈火閃光】」

善子の周囲に展開された闇の弾丸が、無数の星となって杏樹へと降り注ぐ。

杏樹はそれに対し眉を動かすことすらしない。

杏樹の周囲で燃え上がる炎から打ち出された無数の光が、全ての闇を蹴散らし、善子へと襲いかかる。
639: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/04(金) 00:30:37.85 ID:MW+f9oBf
善子「っ、ぐっ、ぁぁぁっっ!!」

空中で翼を焼かれた善子は、飛ぶことができず、そのまま地面へと落下をする。

その善子の目に写ったのは、自分のことを真っ直ぐに見つめる小林の姿。

善子「……いいわ、来なさい、小林!」

二人の周囲を取り巻く空気が歪み、震え上がる。

何者も干渉できない二人だけの世界。その一瞬の、心が触れ合ったような感覚に、二人の意識が研ぎ澄まされた。

小林・善子「「【堕天使の杭】!!」」

頭上から出現した巨大な杭が、空中でぶつかり合う。

お互いの想いをぶつけるように重なり合ったそれは、やがて均衡状態を抜け出した。

善子「……やれば、できるじゃない」

漆黒の杭はもう片方を打ち破り、その勢いのまま轟音と共に善子の体を地面へと突き立てた。
640: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/04(金) 00:37:41.16 ID:MW+f9oBf
小林「ヨハちゃん!ヨハちゃん!しっかりして!」

善子が目を覚ますと、必死に善子の名を呼び続ける小林の姿が見に入った。

善子「……そう、負けたのね、私は」

小林「ヨハちゃん……ごめんね」

善子「なんで小林が謝るのよ」

小林「だって、私、ヨハちゃんのこと……」

善子「……気にしてないって言えば嘘になるわ」

善子「でも、小林の選択は正解だった」

善子「力に溺れて、何にも見えてなかった」

善子「全く……最低ね、私は」

小林「そんなことないよ」

小林「だって、ヨハちゃんは私と一緒にいたいから、こうしてみんなと戦ったんだよね」

小林「本当はダメなんだと思うけど、私は嬉しかったよ」

善子「……全く、バカなんだから、小林は」
641: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/04(金) 00:40:53.83 ID:MW+f9oBf
善子「もう少し話していたいけど、あんまり待ってはくれなそうね」

杏樹「…………」

善子「小林、悪いけど、そこの短剣取ってくれる?」

小林「別にいいけど、何に使うの?」

善子「いいから。……ん、ありがとう」

その短剣を見て、善子はにっこりと微笑んだ。

それは何かを諦めたような、儚い笑顔。

ぐちゃり。

響き渡る誰かの悲鳴。

小林が止める間もなく、善子はその短剣を自分の胸へと突き刺した。
642: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/04(金) 00:45:30.63 ID:MW+f9oBf
小林「ヨハちゃん!?なんで!?どうして!?」

小林「あんちゃん!回復魔法!お願い!」

善子「……無駄よ。心臓を潰したわ」

善子「これでもう、私は助からない」

小林「なんで、こんなこと」

善子「元の世界に戻る方法は、私が死ぬこと」

善子「それを知ったら、小林は止めるでしょ?」

小林「だから、言わなかったの?」

善子「ええ、そうよ」

小林「っ……いやだ」

小林「いやだよ、こんな、お別れなんて」
643: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/04(金) 00:48:46.60 ID:MW+f9oBf
善子「……何泣いてるのよ、小林」

善子「私がいなくなったら、慰めてくれる人なんていないわよ」

小林「いやだよ……そんなこと、言わないでよ」

小林「私、ダメなんだよ。ヨハちゃんがいないと、なんにも、できないんだよ」

小林「バカだから、一人じゃなんにも、できない」

小林「お願い……一人に、しないで」

善子「……小林は、一人じゃないでしょ」

善子「大切な仲間が、いるじゃない」

小林「っ、でも!ヨハちゃんが……ヨハちゃんが、いてくれないと……!」

善子「……全く、小林は仕方ないんだから」
644: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/04(金) 00:54:28.73 ID:MW+f9oBf
善子「ねぇ、最後に、お願いを聞いてくれる?」

小林「何……?」

善子「……キス、しなさいよ」

小林「キス……」

善子「せっかく小林に会えたんだもの、ファーストキス、私に差し出しなさい」

善子「私のファーストキスも、あげるから」

小林「……うん」

善子「……全く、酷い顔ね」

善子「こういう時くらい、笑ってしなさいよ」

小林「っ……ぅ、うん、」

泣きながら唇を触れ合わせる小林とは対照的に、善子は穏やかに笑い、その感触を味わった。

それがもう、二度と感じることのできないものだと知っていたから。
645: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/04(金) 01:01:00.97 ID:MW+f9oBf
小林「っ!?ヨハちゃん!?ヨハちゃん!!」

小さな光が、徐々に大きくなって善子を包み込んで行く。

善子「お別れ、ね」

小林「いやだ、いやだ!」

小林「魂でも、なんでもあげるから、」

小林「側に……いてよ……ヨハちゃん……!」

善子「……大丈夫」

善子「小林が私のことを大切に想ってくれてる間は、私はずっと小林の側にいるから」

小林「……っ、ほん、とう?」

善子「……ええ、本当よ」

善子「だから……泣かないで、頑張りなさい」

善子「今まで、ありがとうね」

善子「……大好きよ、小林」

光は善子を、小林を、そして世界中を包み込んだ。
646: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/04(金) 01:04:31.87 ID:MW+f9oBf


小林「よーし、お仕事終わったー!」

小林「急いで帰らないと!」

元の世界に戻ると、小林達は来た時と同じ場所にいた。

どうやら時間は経っておらず、あの時の記憶を持ったまま帰ってきたらしい。

小林「ん?あそこにいるのは……りきゃことあいにゃ?」

小林「おーい!二人ともー!」

愛奈「あいきゃん!今帰りなの?」

梨香子「なんかきたw」
647: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/04(金) 01:08:44.26 ID:MW+f9oBf
小林「そうだけど、二人はどうしたの?」

梨香子「買い物w」

愛奈「りきゃこが新しい服買いたいって言うから付いてきたの」

小林「あいにゃは買わなくていいの?」

梨香子「私のあげるからいいよw」

小林「ほえー、それでいいんだ」

愛奈「うん……貰えるの、嬉しいから」

梨香子「一番高いのあげるからw」

愛奈「あんまり気を使わなくていいんだよ?」

愛奈「それとも、あっちで言ったこと……気にしてる?」

梨香子「してないしw」

梨香子「次向こう見に行くぞw」

愛奈「うん。またね、あいきゃん」

小林「またねー」
648: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/04(金) 01:12:36.79 ID:MW+f9oBf


小林「仲直りしてて良かったー」

小林「って次のところ向かわないと……ん?」

杏樹「なんで私と朱夏のデート場所に女狐がいるのかな?」

由佳「朱夏が予定入ってるなんて言うから様子を見に来たらクソ女に誑かされてたなんて笑えないですね」

朱夏「……あ、あのさ、二人とも、一旦落ち着こう?」

杏樹「朱夏はどっちとデートしたいの?」

由佳「もちろん私だよね?」

朱夏「いや、なんていうか……あ!あいきゃん!おーい!」

小林「え?」
649: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/04(金) 01:16:57.77 ID:MW+f9oBf
杏樹「まさかあいきゃんもしゅかを狙いに?」

由佳「もう一人抹殺対象が増えましたね」

小林「うぇっ!?わ、私は違うって!」

杏樹「もういい。今日こそしゅかのファーストキスを貰うから」

朱夏「いや、私初めてじゃないし」

杏樹「え?どこの誰!?」

杏樹「見つけ出して絶対抹殺しないと!」

朱夏「……うるさい。自殺でもしてろ、ばか」ボソッ

杏樹「え?何か言った?」

朱夏「なんでもない!もういいから、三人で出かけるよ!」

朱夏「喧嘩は禁止だからね!」

杏樹「はーい」

由佳「しゅかが言うなら」

小林「しゅかも大変だねー」
650: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/04(金) 01:19:47.73 ID:MW+f9oBf


小林「うわ、凄い人だかり!」

小林「急いでるのに何してるんだろう」

小林「ん?」

「握手して下さい!」

「私も!」

「きゃー!触っちゃった!」

すわわ「うむ」

有紗「zzz」

小林「あれ、すわわとありしゃだ」
651: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/04(金) 01:22:01.36 ID:MW+f9oBf
すわわ「うむ」

有紗「zzz」

小林「うーん、遊んでたらみんなに見つかった感じ?」

すわわ「うむ」

小林「大変だねー、二人とも」

「あ!あいきゃんだ!」

「握手して下さい!」

小林「え……どうしよう、時間……」

有紗「ここは私たちに任せて、行きなさい」

すわわ「有紗は寝てていいよ」

有紗「zzz」

小林「えーと……ごめん!お願い!」

すわわ「うむ」
652: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/04(金) 01:25:57.58 ID:MW+f9oBf


小林「急げー!」

降幡「あれ、あいきゃんじゃん」

高槻「何してんだよ」

小林「二人こそ何してるの?」

降幡「買い物に来てるんだよ」

降幡「大好きな子のために本読むとか言い出した奴がいてよ」

高槻「はぁ~?そんなこと言ってませんけど~?」

小林「いいじゃん、読者!」
653: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/04(金) 01:28:06.40 ID:MW+f9oBf
高槻「それより、あいきゃんはなんで急いでんだよ」

小林「え、あ、そうだった!」

小林「早く家に帰らないといけないの!」

降幡「何かあるのか?」

小林「そうじゃないけど……さよなら!」

高槻「あ、おい……全く、なんだってんだ」

降幡「まあ、でもあれだろ」

高槻「うん、多分あれだろうな」
654: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/04(金) 01:34:53.16 ID:MW+f9oBf


小林「はぁ、はぁ、あと、少し、」

旅をして、分かったことがある。

世界中にはいろんな人がいて、みんなが支え合って生きてるってこと。

小林「到着……っと!」

誰かを大切に想う気持ちは、何処に行っても変わらない。

想いが通じていれば、なんだってできる、勇気に変わるんだ。

小林「ただいまー!」

ううん、勇気だけじゃない。

想いを重ねれば、奇跡だって、なんだって、起こせるんだから。

小林「待たせてごめんね」

「全く、そんなに慌てなくても大丈夫なのに」




善子「おかえりなさい、小林」

~fin~
655: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2019/01/04(金) 01:35:49.56 ID:MW+f9oBf
終わり
長いこと読んでくれてありがとう
おやすみ
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『小林「異世界召喚?」』へのコメント

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2018年5月26日
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