ことり「不器用な女の子の不思議な質屋さん」2人の隠している女の子

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りんぱな-アイキャッチ10
2: シティごりら 2019/04/03(水) 22:13:53 ID:LpQthmw.
ーー

女子生徒「じゃあいくよ」

グラウンドにスタートを知らせるピストルから「パァン」という乾いた音が響く。その音が鳴ると同時に数人の女の子が勢いよく走り出す。

スタートから数十メートル進んだ時はまだほぼ横並びであったが徐々にショートカットの女の子が周りを抜き去り始めた。

そのまま先頭に立つとどんどん加速していき一番でゴールした。

凛「ハア、ハア」

花陽「凛ちゃん!すごいよ!」

1人の女の子が1番にゴールした凛に水を持って駆け寄る。

※ 前作記事へのリンクです(管理人)

ことり「不器用な女の子の不思議な質屋さん」

元スレ: ことり「不器用な女の子の不思議な質屋さん」2人の隠している女の子

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3: シティごりら 2019/04/03(水) 22:15:05 ID:LpQthmw.
花陽「今の自己ベストの記録だよ!これなら次の大会の4×100mリレーの選手にきっと選ばれるよ!」

凛「ほんとに!よーしもっと頑張るにゃ!」

花陽「ちょ、ちょっと休憩しなきゃだめだよ」

凛「そんなの必要ないにゃ!凛はまだまだ元気にゃー!」

そう言って凛は元気そうにその場で大きくジャンプをしたりする。

陸上部部長「またそんな動き回って。星空はもう少し休憩の時はしっかり休むようにしなきゃ駄目だぞ」

花陽「そうだよ凛ちゃん。部長さんも言ってるんだから」

凛「えー!まだまだできるのに」
4: シティごりら 2019/04/03(水) 22:16:03 ID:LpQthmw.
凛ちゃんはそう言って不機嫌そうに口を尖らせてブーブー言おうとした。けど部長さんになだめられてやっとおとなしく休憩した。

凛「わかったにゃ。しゃあちょっとトイレにいってきます」

凛たゃんはそう言うとゆっくり歩いてトイレのある校舎の方へ行った。

陸上部部長「全く星空は‥。もう少し自分の体を大切にしてほしいな」

花陽「あはは‥、言っておきます」

陸上部部長「小泉はいつもマネージャーとして働いているのに星空の世話まで任せてしまって悪いね」

花陽「いいんです。私にはこれぐらいしか力になれないんで」

陸上部部長「‥‥。まあ小泉も無理はしないようにね」

そう言うと部長さんは他の部員の人の様子を見に行った。
5: シティごりら 2019/04/03(水) 22:17:01 ID:LpQthmw.
凛ちゃんの力にならなくちゃ。私と凛ちゃんの夢を今度こそ叶えるの。

ーー



凛「ふぅ、頑張らなきゃ」

今度こそ凛とかよちんの夢を叶えるんだ。前は凛のせいでかよちんに悲しい思いをさせちゃったから‥。

誰にも見つからないように水で冷やしたおかげで少し痛みが和らいだ足をタオルで拭くとみんなのいるグラウンドの方へ戻った。

凛「凛が頑張らないとダメなんだ」

そう、心に決めた決意をもう一度確かめた。
6: シティごりら 2019/04/03(水) 22:18:24 ID:LpQthmw.
ーー


ことり「真姫ちゃ~んこれはどこに戻せばいいの?」

真姫「それはそこの棚の上から2番目よ」

ことり「よいしょっと」

真姫ちゃんの不思議な質屋の活動のパートナーとして放課後に一緒に活動し始めて数日が経った。

始めは少し嫌な顔をしていた真姫ちゃんも理事長であるお母さんの命令に諦めたのか素直に私に色々教えてくれ始めた。

ことり「それにしても色々あるんだね。これって全部不思議な力を持った道具なの?」

真姫「いや全部ってわけじゃないけどほとんどがそういう道具ね。中には危険な物とかもあるわよ」

パソコンをいじりながら真姫ちゃんは返事をする。
7: シティごりら 2019/04/03(水) 22:19:38 ID:LpQthmw.
今日は私との出会いで色々あったせいで前に出来なかった商品の整理や分類を一緒に行っていた。

私は棚や床にあった道具の整理を、真姫ちゃんは不思議な聴診器で買い取った思い出や感情といったもをパソコンでまとめていた。

ことり「き、危険な物って何があるの?」

真姫「えっと、まあ、あそこにあるワイングラスとかがそうよ」

ことり「あれが?」

真姫「ええ、あのワイングラスの力は『飲ませる相手に自分の意思を飲み物と一緒に飲ませる』っていうものよ」

ことり「それってどういうこと?」
8: シティごりら 2019/04/03(水) 22:20:26 ID:LpQthmw.

真姫「相手を自分の意思で好きなように操れるってことよ」

ことり「えっ」

私はあまりの驚きに言葉を失った。だってそのワイングラスは見た目はほんとにただの綺麗なワイングラスだから。

真姫「でもそんな道具を持ってくる人は滅多にいないし売る時も注意するわよ」

真姫「そんな道具を好き放題使われて悪用されたら私の方も困るしね」

ことり「確かに人を操る道具なんて悪用されちゃったら大変なことになっちゃうよね」

真姫「まあそういうのもあるって注意しておけば大丈夫よ。さっきも言った通りそんな危険な道具はほぼないから。ほとんどはちょっとした力を持つ物だから」
9: シティごりら 2019/04/03(水) 22:21:26 ID:LpQthmw.

真姫「さっきことりが棚に戻した扇子は『扇ぐことで使っている人の雑念とかを飛ばしてしまう力』を持っているわ」

真姫「もし何か悩みがあって考えがまとまらない時とか集中したい時とかに使うといいかもね」

ことり「へぇ~。こういうものだったら使っても大丈夫そうだね」

雑念を飛ばしてくれる扇子か。自分の中にある忘れてた思いとか大事な考えを気づかせてくれる感じかな?

真姫「あっ、そうだ。ことりにちょっと持ってきてほしいものがあるのよ」

ことり「持ってきてほしいもの?」

真姫「ええ、ことりが今まで使っている愛着がある何か小物があったらそれを1つ持ってきてほしいの」
10: シティごりら 2019/04/03(水) 22:23:05 ID:LpQthmw.

ことり「いいけど真姫ちゃんどうして?」

真姫「この活動を私と一緒にやっていく中でさっき話した危険な道具とか道具を悪用している人と出会うこともあるわ。そういった危険から身を守るための物を身につけておいてほしいの」

真姫「その身を守る物をちょっと知り合いのそういうことに詳しい人に頼んで力を入れてもらうんだけど、思い入れや愛着があるものだと力を込めることがやりやすいらしいのよ」

ことり「へぇ~。そんなこと出来る人がいるんだね」

真姫「その人が言うにはスピリチュアルパワーとか言うらしいんだけどね」

真姫「だからできたらそういったものを1つ持ってきて」

真姫ちゃんの思いがけない提案が嬉しかった。やっぱり真姫ちゃんは人のことを思う優しいところは変わってないんだなと思った。
11: シティごりら 2019/04/03(水) 22:24:17 ID:LpQthmw.

ことり「わかった明日持ってくるね♪」

真姫「ええお願い。‥なんでそんなニヤニヤしてるのよ」

ことり「べつに~。ただ真姫ちゃん、私のこと心配してくれてるんだな~って思って」

真姫「べ、別にそんなんじゃないわよ!ただ一緒に活動するのにこっちまで何かあったら困るからよ!」

またわかりやすく顔を赤くして反応する。そんな真姫ちゃんはやっぱり可愛くてこっちもまたニヤニヤしてしまう。

ことり「じゃあそういうことにしておくよ♪」

真姫「むう」

なんだか納得してない様子だったがそんな真姫ちゃんを見ながら部屋の道具の整理を続ける。
12: シティごりら 2019/04/03(水) 22:25:06 ID:LpQthmw.

真姫ちゃんも再びパソコンをカタカタといじり始めた。時折難しい顔をしながらパソコンとにらめっこをしている。そのまま私たちはしばらく作業を進めていた。

ことり「あっ、そうだ!私行きたいところがあるんだった!」

私はふと今日行きたかった場所があったのを思い出した。

ことり「真姫ちゃん私ちょっと今日はもう行くね!」

私はカバンを持つとお目当ての場所に走り出す。後ろから真姫ちゃんが何か言っているような気がしたけど気にせず部屋を出た。

真姫「‥‥まだ仕事終わってないんだけど。‥‥まあいっか」
13: シティごりら 2019/04/03(水) 22:26:04 ID:LpQthmw.

ーー



アルパカ小屋


ことり「ほええ~♪うふふ~♪」

ことり「アルパカさんモフモフ~♪えへへ♪」

行きたかったアルパカ小屋に着くとアルパカさんと私はじゃれあった。

この時間はみんな他の生徒は下校したり部活に参加したりでアルパカ小屋にはほとんど人が来ないのでアルパカさんと遊び放題だった。

ことり「しあわせ~♪」

アルパカ「メエエ~」

とっても幸せで至福の時間を1人で堪能していたら後ろから急に声をかけられた。
14: シティごりら 2019/04/03(水) 22:27:03 ID:LpQthmw.

???「何をしているんですか?」

ことり「ぴいっ!」

私はアルパカさんに抱きつきながら後ろを勢いよく振り向いた。

ことり「あ、あなたはえっと、前に真姫ちゃんのことを教えてくれた1年生の‥‥、誰だっけ?」

凛「凛は星空凛です!先輩は名前なんて言うんですかー?」

その子は太陽みたいな明るい笑顔で元気良く自分の名前を言った。
15: シティごりら 2019/04/03(水) 22:27:49 ID:LpQthmw.

ことり「私は南ことりだよ♪よろしくね凛ちゃん」

凛「ことり先輩って言うんですね!よろしくおねがいします!先輩はここで何をしてるんですかー?」

ことり「私はここでアルパカさんと遊んでるの~♪かわいいよね~」

そう言いながらアルパカさんを抱きしめる。

アルパカ「メェ~~」

ことり「凛ちゃんは今何してるの?」

凛「凛は陸上部に入ってて今は練習中なんです」

ことり「そうなんだ~。あれ?今はどうしてここにいるの?」

凛「あっ、ちょっと休憩でトイレに行っててそれで‥」

ことり「そうだったんだ。練習がんばってね♪」
16: シティごりら 2019/04/03(水) 22:28:49 ID:LpQthmw.

凛「はい!頑張るにゃー!」

ことり「凛ちゃんかわいい♪」

私がそう凛ちゃんにエールを送るとすぐに嬉しそうな表情を見せた後に照れた顔をする。ほんとに気持ちがすぐに顔に出ちゃう子なんだなと思った。

ことり「あっそうだ。私と真姫ちゃんで放課後の音楽室で質屋さんをやってるの」

ことり「普通の質屋さんじゃなくて不思議な道具を扱ったり思い出や感情っていったものも取り扱ってるからもし何かあったらぜひ来てね♪」

凛「思い出や感情‥。何か噂で聞いたことがある気がするにゃー」

ことり「そう。たぶんその噂で合ってると思うよ」
17: シティごりら 2019/04/03(水) 22:29:43 ID:LpQthmw.

凛「なんかすごいにゃー」

凛ちゃんは目をキラキラと目の前に大好きなヒーローが来た子供のように輝かせている。

凛「!!」

凛「あの、そこでもし、あればなんですけど‥」

ことり「どうしたの?」

凛「えっと、痛みの感覚を取る道具とかってあったり‥。やっぱりなんでもないにゃー!」

凛ちゃんはそのまま走ってグラウンドの方へ行ってしまった。私はポカンとした顔でそれを見ていた。

ことり「なんだったんだろう?‥まあいっか」
18: シティごりら 2019/04/03(水) 22:30:42 ID:LpQthmw.

ーー


花陽「あっ!凛ちゃんもう練習始まっちゃうよ」

探していた凛ちゃんがみつかって私はホッと息を撫で下ろした。

凛「うんわかったにゃ」

凛(とりあえず今度の大会が終わるまではこのことを我慢しないとまた前の時みたいになっちゃうよね‥)

凛「よしいっくにゃー!」

凛ちゃんはそのまま部長さんや他の部員さん達がいるところへ走って行った。

花陽「!」

花陽(今、走り方がおかしかったような?気のせいかな)

私はきっと気のせいだと思いマネージャーとしてみんなのお手伝いをするために私も凛ちゃんの後を急いで追った。
19: シティごりら 2019/04/03(水) 22:31:44 ID:LpQthmw.

ーー



その日の夜、南家


ことり「う~~ん、どれにしようかな?」

私は真姫ちゃんに持って来るように言われた物を探していたがなかなかそれをどれにするかが決まらずにいた。

ことり「どうしよう。多分あの感じだとけっこう大切にしてたりした物の方がいいよね」

ことり「でもあんまり大きすぎると多分ずっと身につけておくのはそれはそれで大変だよね」

ことり「う~ん」

私は部屋で一人で頭を抱えた。今まで作ったアクセサリーとか小物も大切だと思うけど特別これが一番思い入れがあるってわけでもないし‥。

でもぬいぐるみとかは大きすぎるし‥。一番愛着あるのは‥‥。

私はちらっとベッドにあるお気に入りの枕を見た。流石にこれをいつも持ち歩くのわね‥‥。
20: シティごりら 2019/04/03(水) 22:34:11 ID:LpQthmw.

ことり「はあ、どうしよう。穂乃果ちゃんと海未ちゃんならこういう時何選ぶかな?」

海未ちゃんはいつも部活で使ってる弓とかなんか色々難しいことが書いてあるノートとか持ってきそう。穂乃果ちゃんは‥‥、パンとか?

でも2人とも私が前にプレゼントした物とかを選んでくれたら嬉しいよね。

プレゼント‥‥。

ことり「あっ!」

私は慌てて机の引き出しを開けて「あれ」を探し始めた。

きっと2人から貰った「あれ」なら私達の色々な思い出を一緒に見てきたからきっと‥。

ことり「あった‥。ふふっ♪」
21: シティごりら 2019/04/03(水) 22:34:48 ID:LpQthmw.

ーー



翌日、放課後の音楽室


ことり「真姫ちゃん!持ってきたよ!」

真姫「そ、そう。すごい元気ね」

真姫ちゃんはちょっと私の勢いに引いているみたいだった。

真姫「それじゃあ持ってきたものを見せて」

ことり「うん」

私はカバンから小さな10センチぐらいのぬいぐるみを出して真姫ちゃんに手渡した。

真姫「これは‥、なに?」

真姫ちゃんに渡したぬいぐるみは私が小学生の時に穂乃果ちゃんと海未ちゃんが私の誕生日に2人で作ってくれた鳥の雛のぬいぐるみだった。
22: シティごりら 2019/04/03(水) 22:35:40 ID:LpQthmw.

頭に私と同じリボンをつけた可愛らしい鳥さんであり、顔が特徴的で(・8・)というなんだか憎めない顔をしていた。

私はこれを小学生と中学生の時にすごい気に入っていていつもランドセルやカバンにつけて学校に行っていたし遊ぶ時も付けて行った。

高校に入ってからは使っているカバンに付けられなくなってしまったのと少し汚れがついてしまったりほつれができちゃったので大切にしたいと思って机に保存していたんだった。

ことり「穂乃果ちゃんと海未ちゃんに貰ったとても大切な物だよ♪これなら私だけの思いじゃなくて2人の思いもたくさん入ってると思うから」

真姫「そうなのね。ところでこの顔は‥」

(・8・)

ことり「可愛いでしょ♪私がモデルのことりさんだよ♪」
23: シティごりら 2019/04/03(水) 22:36:33 ID:LpQthmw.

真姫「そ、そう」

(・8・)

真姫(まあ本人が可愛いって言ってるから可愛いのよね‥)

なんか真姫ちゃんが微妙そうな顔をしてるけど大丈夫かな?

ことり「真姫ちゃ~ん?」

真姫「え、ああ、大丈夫よ。とりあえずしばらく預かるわね。力を入れてもらったら返すわ」

ことり「うん、お願いね♪」

真姫「ええ。昨日色々やって私が終わらせたから特に今日は何もすることないわ。お客さんが来るまでゆっくりしてていいわよ」

真姫「私はちょっとさっきのことも依頼しなきゃいけないから少し出るわね。お客さんきたら適当に相手しといて」

ことり「わかりました!」
24: シティごりら 2019/04/03(水) 22:37:17 ID:LpQthmw.

真姫ちゃんが部屋を出て行くと私はイスに座りながらしばらくボーッとしながら考えごとをしていた。

こうやってこの部屋を私1人に一時的にだけど任せてくれるってことはなんだかんだ私のことを信頼してくれているのかな?

ちょっとだけでも昔の真姫ちゃんに戻ってきていればいいな。

そしたら真姫ちゃんのやりたいことや夢もきっと見つかるよね。

そんな事を1人で考えていたら不意に部屋のドアが開いた。

凛「すいませーん!」

ことり「は、はい!あっ、凛ちゃんどうしたの?」

その突然のお客さんは全く予測していない人物だった。昨日話した感じではここに来るような感じは全然なかったから。
25: シティごりら 2019/04/03(水) 22:38:21 ID:LpQthmw.

凛「え、えーと、別に用があるってわけではないんですけど、ちょっと話を聞いてみたいな~って思って」

ことり「そっか。じゃあちょっとだけ簡単に説明するね。こっちきて座って♪」

凛「はい」

私は凛ちゃんに自分が分かる範囲でこの質屋さんのことを一通り、取り引きのことや商品のことを説明した。

けど凛ちゃんは時々別の場所を見たり部屋の周囲を見回していたりであまり話した内容には関心がない様子に感じられた。

もっと何か別の目的があるような‥。

ことり「それであとは思い出や感情の取り扱いについてなんだけど‥」

さっきまでちらほら他のところを見ていた凛ちゃんがこちらにさっきまでとは違う視線を向けて初めて興味を示した気がした。
26: シティごりら 2019/04/03(水) 22:39:59 ID:LpQthmw.

ことり「真姫ちゃんがいつもそこはやっているから私じゃちょっと細かくは分からないんだよね。それに今その真姫ちゃんが少し出かけちゃっていつ戻るかわからないんだ」

凛「そうなんですか‥。あの思い出や感情を買い取ったりできるって言ってましたけど「感覚」って抜き取ったりできるか分かりますか?」

ことり「感覚?どうなんだろう。私が知ってるのは思い出や感情はできるってことだけだから真姫ちゃんに聞いてみないとわからないや」

凛ちゃんは聞きたいことが聞けなかったから残念そうな顔をしていた。

ことり「ごめんね。真姫ちゃんが戻ってくるまでここで待つ?」

凛「えっと、どうしようかな‥」

ことり「そういえば今日部活はどうしたの?」

凛「あっ、今日はえっと、休みなんだにゃ」
27: シティごりら 2019/04/03(水) 22:40:33 ID:LpQthmw.

ことり(さっきここに来る前にグラウンドで陸上部が練習してたような‥?)

凛「やっぱり凛今日は帰ります!それじゃさようなら!」

ことり「あっ、凛ちゃん!」

凛ちゃんは自分の荷物を持つと何か隠したいことがあるのか逃げるように慌てて部屋を出て行った。

ことり「何かあるのかな?ん、凛ちゃん生徒手帳忘れちゃってるよ」

ことり「真姫ちゃんに明日渡しといてもらおうっと」

そしてまた凛ちゃんが来る前のような静けさが部屋に代わりに訪れた。

凛ちゃんが部屋を出て行ってから5分もしないうちに真姫ちゃんが戻ってきた。
28: シティごりら 2019/04/03(水) 22:41:11 ID:LpQthmw.

真姫「戻ったわよ。お客さん誰か来たかしら?」

ことり「あっおかえり。1年生で真姫ちゃんと同じクラスの星空凛ちゃんが来たよ」

ことり「これ凛ちゃんの忘れ物だから明日クラスで渡しといてほしいな」

そう言って私は真姫ちゃんに凛ちゃんが忘れていった生徒手帳を手渡した。

真姫「わかったわ。それで星空さんの用件はなんだったの?」

ことり「え~と、真姫ちゃんの持ってるあの聴診器で思い出や感情は取り出したりできるって言ってたでしょ」

真姫「そうね」

ことり「それで「感覚」は取り出したり出来るのかって聞かれたんだ」

ことり「それって可能なの?」

真姫「‥一応できるわ。ただ‥基本的にやらないようにはしてるの」

真姫ちゃんは少し思わせぶりな表情をしながらイスに座った。
29: シティごりら 2019/04/03(水) 22:43:05 ID:LpQthmw.

ことり「どうして?」

真姫「この際この聴診器について細かく説明するわね」

真姫「前にも言ったと思うけどこの道具はあくまでそういった『思い出や感情、感覚とかを移動させること』しか出来ないの」

真姫「だから取り出したりする際には必ずどちらかの人には最終的に取り出したものを残すことになる」

真姫「これがまずこの道具のルール」

真姫「次に対象とするものの話よ。まず思い出や感情を取るときはその対象となる思い出や感情を全て取るの。でも思い出は1つじゃないし感情の方も楽しいってだけでも程度が無限にあるでしょ。だから少し抜き取ったところで問題はない」

ことり「確かに友達と遊んだ思い出ってだけでもたくさんあるし楽しさっていってもちょっと楽しいとかすごい楽しいとか振り幅はあるもんね」
30: シティごりら 2019/04/03(水) 22:47:42 ID:LpQthmw.

真姫「思い出や感情はどんどん新しく生み出されるし生まれるから無くなったところで問題ないわ」

真姫「それに抜き取る時にお互いにちゃんと対象とするものを思い出すってことで指定しているからそれ以上は取れない」

真姫「けど感覚は違う。視覚だったら見える、聴覚だったら聞こえるって感じで細かく対象を絞ることができないから感覚全てを取ることになってしまうの」

ことり「それに感覚は新しく生まれることも
ないもんね」

真姫「そうよ。まぁあと味覚とかで甘さだけとかお互いにわかりやすくイメージできれば細かく取ることも可能だけど基本的には難しいからできないわ」

真姫「そしてあともう一つ、この道具は移動させることしかできない。つまり取った感覚を受け取る人がいるってこと」

ことり「それってもしかして感覚を2人分持つってこと?」
31: シティごりら 2019/04/03(水) 22:48:46 ID:LpQthmw.

真姫「まあ細かくは違うけどだいたいそういうことね。仮に体をケガして痛いからってこれで痛覚を取ってしまうと受け取る側は2人分の痛みを感じることになるわ」

ことり「うわぁそれは確かにやりたくはないね」

真姫「そういうこと。仮にそういう痛みとかを全て受け入れるって人がいたらやってもいいけど今まで出会ったことはないわね」

ことり「そっかあ、教えてくれてありがとう。あれ?ってことは今まで買い取った思い出は全部真姫ちゃんの中にあるの?」

真姫「そうよ。まあ結構な量の思い出は私の中にあるわね」

ことり「それって大丈夫なの?」

真姫「大丈夫よ、一応思い出の種類とかは全部パソコンで管理してるから自分のものと混ざったりすることはないから心配しないで」

ことり「‥そっか、よかった」
32: シティごりら 2019/04/03(水) 22:49:20 ID:LpQthmw.

本当に真姫ちゃんの言う通り思い出が混ざりあったりとかはしないのかな?それのせいで自分を見失ってしまったり‥。

真姫「そういうことだから星空さんには明日私が説明しておくわ」

ことり「うん、おねがい。あと凛ちゃんのことで一つあるの」

真姫「??」


ーー



翌日の一年生の教室


真姫「星空さんちょっといいかしら?」

凛「うん大丈夫だよ??」

真姫「昨日放課後に音楽室に来た時、生徒手帳を忘れてたわよ」

凛「ほんとに!西木野さんありがとにゃ♪ずっと見つからなくて家で探してたんだ」
33: シティごりら 2019/04/03(水) 22:50:20 ID:LpQthmw.

真姫「そう、落としたのが私たちがいるとこで良かったわね。あと昨日ことりに感覚が取り引き出来るか聞いたみたいだけど‥」

花陽「凛ちゃんと西木野さんどうしたの?」

凛「!!」

凛「あっ、かよちん。えっと」

真姫「別に昨日星空さんが私たちのところで生徒手帳を忘れていったから今日届けてあげただけよ」

花陽「凛ちゃん昨日は体調が悪いから部活休んで帰ったんじゃなかったの?」

凛「え、ええと‥」

凛ちゃんは視線を不自然にあちらこちらに移しながら言葉に詰まっていた。そんな凛ちゃんに私はもう一度聞いた。

花陽「凛ちゃんどうして体調悪いなんて言ったの?用事があったなら普通に言ってくれれば良かったのに‥」

真姫「‥‥」

凛「それは‥」
34: シティごりら 2019/04/03(水) 22:50:57 ID:LpQthmw.

花陽「最近の凛ちゃん練習もところどころ抜けたりしてるしどうしたの?だってもう少しで大会もあるのにこのままじゃ‥」

凛「うぅ、わかってるにゃ!大丈夫ちょっと練習は集中出来なかったから気分転換で抜けてただけだから!」

凛「ごめんね。次からはちゃんと言うから。西木野さんも生徒手帳ありがとう!」

真姫「じゃあ私は戻るわ。はいこれ返すわね」

西木野さんはずっと手に持っていた生徒手帳を凛ちゃんに手渡すと自分の席に戻っていった。

凛「かよちんももう授業始まっちゃうから早く戻るにゃー」

凛ちゃんが何かを隠していることは明白だったけど無理矢理にでもそれを隠し通そうとしているところをさらに追求することはできなかった。

花陽「うん、わかったよ」




真姫(ことりの言うとおりなんかありそうね)
35: シティごりら 2019/04/03(水) 22:51:36 ID:LpQthmw.

ーー



次の休み時間


凛はあたりを警戒しながら誰にもみつからないようにと周りをキョロキョロ見回しながら音楽室に向かっていた。

真姫「こっちよ」

凛「あっ、うん」

真姫「とりあえずさっきは出来なかった話を今するわね」

真姫「感覚を取引できるかってことだけどできるかできないかで言えば出来るわ」

凛「ほんとに!そしたらやって」

真姫「ただ私はその取引はやりたくないからやらないわ」

凛「!!」

凛「どうして!出来るならやってくれないと凛困るよ!」
36: シティごりら 2019/04/03(水) 22:52:14 ID:LpQthmw.

この星空さんの慌てようから察せるにことりが言っていた「凛ちゃんは周りに何かを隠しているかもしれない」っていうのはほぼほぼ正解の様子だった。

真姫「逆に聞くけどあなたは何を取り引きしようとしてるの?」

凛「それは‥」

真姫「あら?自分の希望だけを押し通そうとするのは不公平じゃない?」

凛「‥‥。わかったにゃ。取り引きをしてほしいのは凛の右足の痛覚を抜き取ってほしいの」

真姫「ふーん、どうして?」

凛「今凛は右足をケガしてるの。病院で診てもらったけど疲労骨折でしばらく安静にしなさいって言われたにゃ」

凛「でも今度、陸上の大会がすぐにあってそれに凛は出るの。でも足が痛くて多分このままじゃいい結果を出せないにゃ」

凛「だから大会出ていい結果を出すのにこの足の痛みを抜き取ってほしいの!」
37: シティごりら 2019/04/03(水) 22:53:10 ID:LpQthmw.

真姫「‥‥呆れたわ、あなたは馬鹿なの?」

凛「ば、バカってひどいにゃ!」

真姫「どう考えても馬鹿でしょ。感覚を抜き取ったところでケガが治るわけじゃないのよ。そんな状態で大会に出たところでいい結果も出ないしケガも悪化するだけよ!」

真姫「それにあなたはまだ1年生なのよ!今無理する必要なんてないでしょ」

凛「それでもやってほしいの!今度じゃなきゃダメなの!」

真姫「話にならないわよ。もし今回それで出場したところであなたのそのケガが悪化してもう走れなくなったりするのよ。そうなったら自分の好きなことがもう出来なくなるってことは凄くつらいことなのをわかってるの?」

真姫「それにそうなった時、あなただけじゃなく周りにも迷惑をかけることになるのよ」

凛「そんなの関係ないよ!凛は約束を守らなきゃいけないの!」
38: シティごりら 2019/04/03(水) 22:54:19 ID:LpQthmw.

真姫「そこまでしなきゃいけない約束ってなによ?そんなの約束じゃなくてただあなたを厳しく縛りつけているものじゃない」

凛「凛とかよちんの約束を悪く言わないで!もういいよ!西木野さんにはもう頼まないから!自分でなんとかする!」

星空さんはそう私に強く言い捨てると教室の方へ走って行った。

真姫「‥‥ふう」

真姫「かよちんっておそらく小泉さんよね」

スマホで時間をみてまだ少し授業まで余裕があるのを確認した私はことりに電話をかけた。

真姫「あっ、ことり?ちょっと放課後やってほしいことがあるの」
39: シティごりら 2019/04/03(水) 22:55:41 ID:LpQthmw.

ーー



放課後、グラウンド


凛「ハア、ハァ」

部長「どうした星空?今日は調子悪いのか?」

凛「そうですかー?凛はいつもとおんなじにゃ!」

部長「それならいいんだけど。大会も近いしあんまり無理するなよ」

凛「‥大丈夫にゃー」

右足のケガをを誰にも気づかれないようにやる練習はとても辛かった。大会の近いこのタイミングで変に休んだりしたら心配されるし、フォームの乱れにも注意しなきゃいけなかった。

凛「!!」

凛「か~よちん、委員会の仕事は終わったの?」

花陽「うん、ごめんね遅れちゃって」

凛「ううんまだ始まったばかりだから大丈夫だにゃ」
40: シティごりら 2019/04/03(水) 22:56:59 ID:LpQthmw.

花陽「‥‥ねえ凛ちゃん」

凛「どうしたのかよちん?」

花陽「今度の大会に出て勝ちたい?」

凛「当たり前にゃ!かよちんもそうでしょ?」

花陽「‥うん、そうだよ」

凛「中学の時叶えられなかったのを今度こそ叶えるにゃ!」

凛「よぉーし、テンション上がるにゃー!」

凛はそのまま練習に再び戻っていった。

花陽「そうだよね。凛ちゃんは私のヒーローだから‥」




花陽「凛ちゃん後はお願いね‥」
41: シティごりら 2019/04/03(水) 22:57:45 ID:LpQthmw.

ーー



真姫「ことりありがとうね」

ことり「ううん、花陽ちゃんが素直に話聞いてくれたし教えてくれたから苦労しなかったよ♪」

ことり「それにこれもあったしね」

私はあの不思議な扇子を丁寧に元の棚に戻した。
42: シティごりら 2019/04/03(水) 22:59:34 ID:LpQthmw.

ーー

少し前


ことり「あっ小泉さんだよね?」

花陽「はい、小泉花陽です。先輩は前に西木野さんのためにクラスに来てましたよね?」

ことり「うん♪南ことりです♪花陽ちゃんって呼ぶね。わたしのことはことりでいいよ」

花陽「わかりました。それでことり先輩聞きたいことっていうのは‥?」

ことり「単刀直入に聞くね。花陽ちゃんが凛ちゃんとした「約束」っていうのを知りたいの」

花陽「!!」

花陽「そ、それをどうして知っているんですか?」

花陽ちゃんがびっくりして可愛らしい目を大きく見開く。
43: シティごりら 2019/04/03(水) 23:00:46 ID:LpQthmw.

ことり「私は今真姫ちゃんのお手伝いをしてて噂で聞いたことあるかもしれないけど質屋さんを音楽室で放課後にやってるの」

ことり「そこにこの間凛ちゃんが来たんだ。多分それには気づいてるよね?」

花陽「はい、この前休み時間に凛ちゃんと西木野さんが話していてそれで何か用事でもあったのかなって思いました」

ことり「凛ちゃんの用件はね、ケガをしている足の痛覚を抜き取ってほしいってお願いだったの」

花陽「えっ、それほんとですか?」

この花陽ちゃんの感じはおそらく‥

ことり「凛ちゃんのケガのことは花陽ちゃんや部活の人は知ってるの?」

花陽「いえ多分誰も知らないと思います。部活も普通に出て練習してますし‥」
44: シティごりら 2019/04/03(水) 23:02:48 ID:LpQthmw.

ことり「そっか‥、それで凛ちゃんのケガは結構大変らしくて恐らく全力で走ることはもちろん歩くだけでも痛むんじゃないかって」

ことり「そんな状態で大会に出たいからって理由で足の痛みを感じなくさせなくするほどの約束って何かな?」

ことり「私達からしたらそんな自分の身体を壊すような真似はさせられないし見過ごせない。もしするとしてもそこまでする理由に納得できなきゃダメって結論になったの」

ことり「だから花陽ちゃんと凛ちゃんのその約束を教えてほしいんだ」

花陽ちゃんは俯いて何か考えているみたいだった。たぶん色々思うことはたくさんあると思う。

花陽「約束っていうのはたぶん中学生の時にしたやつのことを言ってるんだと思います」

花陽「私はあまり運動が得意じゃないんです。けど凛ちゃんは昔から運動神経が良くて私は凛ちゃんと一緒に何かをやりたいと思って陸上部に2人で入ったんです」

花陽「けど私はやっぱり駄目で練習にもついていけなくなっちゃって2年の後半でマネージャーに転向したんです」

花陽「その時、凛ちゃんにマネージャーに転向した私の代わりに大会で絶対に活躍してねって私が凛ちゃんにお願いしたんです」

花陽「でも凛ちゃんはオーバーワークと成長期っていうのもあってケガをして思うように結果が出せなかったんです。中学の最後の大会も予選で落ちちゃって‥」
45: シティごりら 2019/04/03(水) 23:03:25 ID:LpQthmw.

花陽「私は過ぎちゃったことだしケガしたのも仕方ないことなので気にしなかったんですけど凛ちゃんは自分のせいだと思ったみたいで」

ことり「自分のオーバーワークでケガしたから余計に責任を感じ過ぎちゃったのかな?」

花陽「多分そうかもしれないです。それで高校に入ったら絶対に最初の大会でいい結果を出してみせるって、絶対にかよちんのお願いを凛が叶えるって言ってくれました」

花陽「けど私のお願いのせいでまた凛ちゃんがケガをしてしまっているなんて‥」

ことり「‥花陽ちゃんは凛ちゃんにどうしてほしいの?」

花陽「‥‥わからないです」

ポツリと一言だけ呟いた。

花陽「凛ちゃんの大会に出たいって気持ちもわかります。でもケガをして苦しんでまでやって欲しくないんです」

花陽「私は凛ちゃんに引っ張ってもらってばっかで凛ちゃんを止める勇気もないですし自分から傷つこうとする凛ちゃんを後押しする勇気もないんです‥」

俯く花陽ちゃんの表情は困惑に満ちていた。
46: シティごりら 2019/04/03(水) 23:04:08 ID:LpQthmw.

ことり「仮にね、足の痛みを抜き取ったとしても痛みを感じないだけで身体の状態はそのまま。ケガが治るわけじゃないの」

ことり「凛ちゃんの場合だと足のケガが今よりも悪化する可能性があるってこと」

花陽「そんなの私は‥、凛ちゃん‥」

自分が過去に課してしまったもののせいで大切な親友が苦しむ道へ進もうとしていることに対して自分はどうすればいいのかわからないみたいだった。

そんなの当たり前だと思う。凛ちゃんはあくまで花陽ちゃんが諦めざるを得なかった思いを叶えるためにこの道へ進もうとしているのだから。

それは誰かが安易に決めていいものではなくて2人が自分の気持ちを知って確かめ合って決めることなのだと思う。

でも花陽ちゃんは突然色々なことを知らせれて決断を突きつけられたことで何を考えればいいのかわからなくなってるような状態だった。

ことり「ねえ花陽ちゃんちょっとこの扇子で扇いで気持ちを落ち着かせようよ」

私は花陽ちゃんに真姫ちゃんから預かったあの不思議な力を持つ扇子を渡して扇ぐようにさり気なく促した。
47: シティごりら 2019/04/03(水) 23:06:00 ID:LpQthmw.

花陽「‥はい。ありがとうございます」

花陽ちゃんは私から扇子を受け取るとおそるおそるといった感じでゆっくり自分を扇いだ。

あの扇子の力で花陽ちゃんの中にある本当の気持ちや考えに気づいてほしいと思いながら私はその様子を見ていた。

花陽「‥‥ふぅ」

ことり「落ち着いたかな?」

花陽「‥なんかなんとなくですけど花陽がどうすればいいかわかった気がします。ことり先輩のおかげです」

そう言って私に扇子を返した花陽ちゃんの顔はさっきまでのどうすればいいかわからないって顔から覚悟を決めたような顔だった。

ことり「そっか良かった‥。じゃあ花陽ちゃんの答えを聞かせて」

花陽「花陽は凛ちゃんとの約束を叶えたいと思うんです」

花陽「だから‥」
48: シティごりら 2019/04/03(水) 23:07:29 ID:LpQthmw.

ーー



ことり「ねえ真姫ちゃん。これでほんとにいいのかな?」

真姫「いいんじゃないかしら」

真姫「あの2人が本当にやりたいことを私たちはその背中を押すだけなんだから」

真姫「さあ明日の準備をしちゃいましょう。たぶんなんかしらはありそうだしね」

ことり「うん」

ことり(今は真姫ちゃんとあの2人を信じよう)
49: シティごりら 2019/04/03(水) 23:09:01 ID:LpQthmw.

ーー


翌日、放課後の音楽室


真姫「いらっしゃい。何回も呼び出して悪いわね」

凛「凛になんの用なの?」

真姫「そんな嫌そうな顔しないで。あなたが前に依頼してくれたことをやってあげようと思って呼んだんだから」

凛「!!」

凛「どうして急にやってくれるの?前はあんなに凛に反対してたのに」

真姫「まぁ考えが変わったのよ。やってあげるんだからいいでしょ」

凛「‥う~んやってくれならいいっか。じゃあおねがいにゃ」

真姫「じゃあそこに座って」

2人は互いに向かいあって座った。
50: シティごりら 2019/04/03(水) 23:10:28 ID:LpQthmw.

真姫「じゃああなたが前に言った足の痛覚を取るってことでいいのね?」

凛「うんそれでおねがいにゃ」

真姫「じゃあその方法をこれから説明するわね。‥‥」

感覚を不思議な聴診器で抜き取る説明を大まかにした。怪我が治るわけではなく抜き取った人がその痛みを受け止めることになることももう一度説明をする。

流石にこの説明を聞いている時に星空さんは真剣な表情をしていた。

真姫「以上で大まかな説明は終わりよ。これからすぐに始めるわね。‥って言いたいところだけどちょっと遅れてるから少し待って」

凛「何が遅れてるのにゃ?」

その時部屋のドアが開いて真姫が待っていた2人が入ってきた。
51: シティごりら 2019/04/03(水) 23:11:12 ID:LpQthmw.

ことり「真姫ちゃんおまたせ」

真姫「ちょうど説明が終わったところよ。あなたもよく来たわね、小泉さん」

花陽「うん」

凛「なんでかよちんがここにいるの!」

凛は驚いて勢いよく立ち上がった。その拍子に座っていた椅子ガシャンと音を立てて倒れる。

真姫「私が小泉さんが必要だから呼んだのよ」

凛「ど、どういうことなの?」

真姫「さっき言ったでしょ。痛みを抜き取るってことは誰かしらがその痛みを引き受けなきゃいけない」

真姫「私にはあなたにそこまでする義理がないから最初は断ったの。だから‥」

花陽「私が凛ちゃんの足の痛みを引き受けることで西木野さんにやってもらうことにしたんだ」
52: シティごりら 2019/04/03(水) 23:12:30 ID:LpQthmw.

凛「かよちんなんで凛に何も言わないで勝手にそんなこときめたの!」

真姫「あなたも1人でケガを隠して私にこんなこと頼んだんだからお互い様じゃないかしら」

凛「それは‥」

花陽「凛ちゃんどうして最初にケガのこと私に言ってくれなかったの?」

凛「そんなの言えるわけないにゃ!また凛のせいでかよちんとの約束が守れなくなっちゃうんだよ」

ことり「‥やっぱり凛ちゃんは中学の時のこと気にしてたんだね」

花陽「だから私も決めたんだよ。凛ちゃんには私の夢を代わりに叶えて欲しいの」

花陽「そのために凛ちゃんはこんなに頑張ったんだから」
53: シティごりら 2019/04/03(水) 23:14:22 ID:LpQthmw.

花陽ちゃんは優しさを匂わせる声で凛ちゃんに語りかける。

花陽「花陽は凛ちゃんのためなら喜んで痛みを肩代わりするよ」

凛「かよちん‥」

凛「それでもかよちんにこの痛みを肩代わりさせるのは‥」

凛ちゃんはさっきまであった気持ちが揺れ動いてしまっているようだった。

真姫「あら今さら迷うの?さっきまで痛みを抜き取る気満々だったじゃない」

真姫「それに仮に私やことりに痛みを移すことには何とも思ってなかったようなのに小泉さんに対しては躊躇うのね」

真姫ちゃんの言葉に対して凛ちゃんは俯いて口籠る。
54: シティごりら 2019/04/03(水) 23:15:14 ID:LpQthmw.

少しの間なんともいえない沈黙が部屋の空気に漂う。

ことり「ねえ、凛ちゃんはほんとに花陽ちゃんとの約束が一番大事なの?もう一度よく考えてみて」

凛「‥‥、一番は‥」

凛「そんなの‥」



かよちんは凛が助けてあげなきゃ、そう昔から思っていた。

凛とかよちんはお母さん同士が知り合いだったから気づいた時には、物心ついた時には隣にいた気がする。

活発だった凛とまるで正反対の性格でとても静かで控えめな性格だった。

何かを決める時はいつも凛が決めた後に凛と一緒のものを選んでいたのを覚えている。

いつからだっけ、凛がかよちんのことを凛が手助けしなきゃ何も出来ないと勝手に思い始めたのは。

凛「かよちんはすごいね‥」

凛「こんなに辛い決断を1人でするなんてすごいよ。凛じゃきっと言い訳して逃げちゃうと思う」
55: シティごりら 2019/04/03(水) 23:16:03 ID:LpQthmw.

花陽「きゅ、急にどうしたの?」

凛「凛ね、かよちんのこと凛が引っ張ってあげなきゃダメだと思ってたの」

凛「だって昔からかよちんはいつも自分のことを後回しにしてるみたいで自分のしたいこととか好きなことをあまり言ってくれなかったから」

花陽「‥そうかもしれない」

凛「そんなかよちんだから凛はかよちんが色々と自分の好きなこととかやりたいことを自分から話してくれるのがいつもすごい嬉しかったんだ」

凛「好きなアイドルの話しをしてる時なんかすごくイキイキしてたよね」

花陽は顔を恥ずかしそうに少し赤らめた。

ことり(なんか海未ちゃんみたいに恥ずかしがってかわいい)

真姫(ことりなんか変なこと考えてるわね)
56: シティごりら 2019/04/03(水) 23:17:08 ID:LpQthmw.

凛「中学の時にかよちんが凛に一緒に部活をやりたいって言ってくれたのが凄く嬉しかったんだ」

花陽「‥だって私は今まで凛ちゃんの後ろをただついてるだけだったから凛ちゃんと一緒に何かをしたいなって、やりとげたいなって思って‥」

真姫「本当に貴方達仲がいいのね」

ことり「真姫ちゃん羨ましいの?」

真姫「な!そんなわけないじゃない!イミワカンナイ!」

凛と花陽はそんな掛け合いをしている2人の様子を見てクスクスと笑い合った。

凛「それでね、かよちんがマネージャーに転向したことはすごく悲しくかったけど凛にこれから活躍する姿を見せてほしいって言われたから頑張ろうって思ったの」

花陽「‥でも私がそんなこと言ったからそれが重しになって凛ちゃんがケガを隠してしまうぐらい追い込んじゃたよね」

花陽「凛ちゃん、ほんとうにごめんね」

凛「かよちん‥」
57: シティごりら 2019/04/03(水) 23:18:32 ID:LpQthmw.

花陽「だから花陽が凛ちゃんの代わりに痛みを引き受けるから凛ちゃんは私達の約束を叶えて」

かよちんはそうやっていつもみたいに微笑みながら凛の手を握ってきた。

その暖かい手は少し震えているようだった。

ことり「凛ちゃん、約束はとても大事なことだと思うよ。でも約束よりも大事なこともあるんじゃないかな?」

ことり「凛ちゃんが今1番守るべきものは?」

凛「‥‥凛の1番」

真姫「‥1番とかは置いといて貴方はまだ自分で好きなことを続けられるかどうか選択出来るチャンスがあるからまだ幸せよ」

凛「どういうこと?」

真姫「私はその機会すらなかったのよ」

ことり「真姫ちゃん‥」
58: シティごりら 2019/04/03(水) 23:19:30 ID:LpQthmw.

真姫「私ね、小さな時にお母さんからピアノを教えてもらってそれ以来ピアノが好きでよくコンクールに出たりしてたの」

真姫「でも中学生の時に大きな事故に遭ってケガ自体は治ったんだけどまだ少し後遺症が残ってて左手の細かい指の動きが出来ないのよ」

真姫「だからピアノを弾くのに必要な指の繊細な動きがダメになったから私はもう昔みたいにピアノを弾けないのよ」

ことり「やっぱり真姫ちゃんはピアノを弾かなかったんじゃなくて弾けなかったんだね」

真姫「あら気づいてたの?」

ことり「うん、薄々だけどね」
59: シティごりら 2019/04/03(水) 23:20:46 ID:LpQthmw.

真姫ちゃんは会った時や今まで一緒にいる中でピアノに触れている時はあったけど決して弾こうとはしていなかった。

あんなにピアノが好きだった真姫ちゃんが一度もピアノを弾かなければ誰だって何かあるのかと思うだろう。

それにピアノに触れてる時、あんな表情をしていたらね。

真姫「まあそういうことよ。星空さんのケガは安静にしてればまたいつもみたいに走れるようになるわ」

真姫「貴方はこんなケガのせいでこんなことになってるって思うかもしれないけど私からしたら選択できるだけ羨ましいんだから」

花陽「西木野さんそうだったんだ‥」

凛「そっか‥」

ただ冷たいだけだと思ってた西木野さんにも色々あったんだ。

今だから思う、凛はただただ難しいことを考えないで楽な方へ逃げてただけなんだって。
60: シティごりら 2019/04/03(水) 23:24:45 ID:LpQthmw.

ーー


真姫「じゃそろそろどうするか決めてもらいましょうか」

すごく長く感じた数分の沈黙を破って真姫ちゃんが口を開く。

ことり「そうだね」

花陽「凛ちゃんどうするの?」

凛「うん」

もう決まっていた。ことり先輩や西木野さんそしてかよちんの気持ちや考えと触れ合うことで気づいたもの。

凛「凛は‥、痛みを抜くことを止めるよ。ケガは自力で治す。だから大会は今回は出ない」

凛は大きく息を吸ってゆっくりと話した。その話し方はまるでみんなに伝えるというよりは自分に言い聞かせるかのようにでもあった。

花陽「どうして凛ちゃん?」

凛「最初はやっぱり絶対どんなことをしても大会に出てかよちんとの約束を叶えるつもりだったよ」
61: シティごりら 2019/04/03(水) 23:25:26 ID:LpQthmw.

凛「けどことり先輩や西木野さん‥、ううん、真姫ちゃんと話して聞いて分かったの」

もう一度ゆっくりとお腹に力を入れて息を吸う。

凛「かよちんを凛の代わりに悲しませて約束を果たしても凛は思いっきり心から喜べないよ」

凛「だから今すぐじゃなくてもいいの。もし叶えられなくてもいいの」

凛「凛はかよちんと一緒に笑いながらこれからやっていきたい」

これが凛の答えだった。どちらかが傷ついて犠牲になってまで叶えるものよりも叶えられなくても2人が大切にし合えるものを。

とても長い間近くに一緒にいたからこそお互いがお互いのためにという気持ちが徐々にいきすぎてしまった結果気づかなくなってしまったんだ。

そんなことをしても相手は笑顔になんかならないということに。
62: シティごりら 2019/04/03(水) 23:26:16 ID:LpQthmw.

花陽「うん、はなよも、‥そう思うよ」

花陽ちゃんは涙を今日1番流しながら凛ちゃんの手を優しく両手で包み込む。

そしてそのまま2人は抱き合いながら泣いていた。

真姫「‥やっと気づいたのね。遅いわよ」

目の下を少し濡らしながら花陽ちゃんに負けず劣らずの優しい笑顔で真姫ちゃんは2人を見ていた。

真姫ちゃんも結構心配性だよね♪

花陽「ことり先輩、真姫ちゃん、今日は色々ありがとうございました」

花陽「2人に出会えて本当に良かったです!」

ことり「そっかことりも2人の力になれてよかったよ♪」

真姫「そうね私も同じ気持ちよ。星空さんも小泉さんもまた何かあったら力になるわ」
63: シティごりら 2019/04/03(水) 23:27:15 ID:LpQthmw.

凛「なんで!」

凛ちゃんはほっぺをプクーと膨らます。

真姫「ナ、ナニヨ」

凛「なんで凛たちのこと名前で呼んでくれないの!」

真姫「べ、別に名字でもいいでしょ。そんな変わらないんだし」

凛「変わるよ!名字だとなんかよそよそしくて嫌だもん!名前で呼んで!」

真姫「で、でも‥」

花陽「真姫ちゃん私のことも名前で呼んでほしいな‥」

ことり「まーきちゃん、せっかく凛ちゃんと花陽ちゃんが真姫ちゃんとこんなに仲良くなろうとしてるのにそれでいいのかなぁ?」

ちょっと意地悪に真姫ちゃんに言う。そんなことを言われた真姫ちゃんは私を少し睨みつける。
64: シティごりら 2019/04/03(水) 23:27:49 ID:LpQthmw.

真姫「もうわかったわよ!り、凛!は、花陽!これでいいんでしょ」

顔を赤らめながらヤケっぽく2人の名前を呼んだ。

凛「真姫ちゃん、真姫ちゃん、真姫ちゃーん」

真姫「ウルサイ!!」

凛ちゃんが真姫ちゃんの名前を呼びながら猫みたいに頬ずりをする。

花陽「うん、真姫ちゃんこれからもよろしくね♪」

真姫「え、ええ、よろしくね」

ことり「うぅ、真姫ちゃんに友達が出来るなんてことり嬉しいです」

凛「それってもしかして凛とかよちんが真姫ちゃんの高校初めて友達かにゃ?」

真姫「そうよ。あんまり言いたくないけど‥」
65: シティごりら 2019/04/03(水) 23:36:27 ID:LpQthmw.

凛「そっか、えへへ」

花陽「??」

ことり「凛ちゃんそんなににやけてどうしたの?」

凛「最初はあんなに冷たくて仲良く出来なさそうだなって思ってた真姫ちゃんと友達になれたのがなんか嬉しくて」

花陽「私も怖かったけど本当はこんなに優しいなんて知らなかったから真姫ちゃんと友達になれて嬉しいよ」

ことり「確かに私も最初は色々言われちゃったし」

凛「怖い雰囲気出してたにゃ~」

真姫「雰囲気は仕方ないでしょ。昔から言われるんだから治しようがないのよ」

真姫「友達も一応高校で初めてってだけで昔はいたわよ」

ことり「ことりとかね」

真姫「‥‥ええ、そうね」

少し変な間が気になったけどまあいいっか。
66: シティごりら 2019/04/03(水) 23:37:05 ID:LpQthmw.

真姫「でも‥、これからはそんな怖い雰囲気出ないように頑張るわよ」

ことり「そうだね。真姫ちゃんはやっぱり笑ってる顔が1番かわいいよ」

花陽「私もそう思うよ」

凛「凛もそっちの真姫ちゃんの方がいいにゃ」

真姫「そ、そうかしら。努力はしてみるわ」

そう言いながら真姫ちゃんは少しぎこちなく笑顔を作ってみせた。

凛「そうだ!忘れてた陸上部に少しの間休むって伝えなきゃ!」

凛「やっぱりケガで大会出れないって言ったら怒られるかな?」

花陽「大丈夫だよ凛ちゃん。私も一緒に行ってちゃんと説明するから部長も分かってくれるよ」

真姫「ついでに診断書でも後で貰って見せつければいいわ」
67: シティごりら 2019/04/03(水) 23:38:12 ID:LpQthmw.

凛「そうだよね。かよちん一緒についてきてもらっていい?」

花陽「うん、一緒に行こう」

花陽「真姫ちゃんもことり先輩もほんとに今日はありがとうございました」

丁寧に頭を下げてお礼を言う花陽ちゃんに続いて凛ちゃんも頭を下げてお礼を言った。

真姫ちゃんは照れ臭そうに別にいいわよと言うと部屋を出て行く2人を見送った。

凛「じゃあまた明日ね真姫ちゃん!」

真姫「ええ、また明日」

凛「行こっ、かよちん」

2人が出て行った部屋は静かになった。
68: シティごりら 2019/04/03(水) 23:39:25 ID:LpQthmw.




ことり「友達が帰っちゃって寂しい?」

真姫「何言ってんのよ。どうせまた明日も会えるんだからそんなことないわ」

ことり「‥もし凛ちゃんが花陽ちゃんに痛みを移そうとしたらそれをやってたの?」

真姫「それはないわよ。あの2人ならきっとしっかり気持ちをお互いに話せばその方法には至らないってなんとなく感じたの」

ことり「そっか。‥‥ねえ、たまには私達も一緒に帰らない?」

真姫「急にどうしたの?」

ことり「う~ん、2人を見てたらちょっとそう思ってね」

真姫「いいわよ。部屋閉めるから少し待ってて」

ことり「うんわかった」
69: シティごりら 2019/04/03(水) 23:40:02 ID:LpQthmw.

ことり(少しは真姫ちゃんの力になれたかな)

真姫「ことり」

ことり「なに真姫ちゃん?」

真姫「えっと、その、ことりがいてくれて‥‥。やっぱり何でもないわ。帰りましょ」

ことり「??」

真姫「なにしてるの帰るわよ」

ことり「うん♪」

真姫(はぁ、ありがとうも言えないなんてほんと自分の性格が嫌になるわね)

ことり(相変わらず素直じゃないんだから。いつかちゃんと言ってくれるの待ってるよ♪)

真姫ちゃんと2人で並んで帰る帰り道はなんだかいつもよりも優しい感じがした。



おわり
70: シティごりら 2019/04/03(水) 23:41:14 ID:LpQthmw.

ここまで読んでくださってありがとうございました。また時間があれば続きを書きたいと思っています。
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『ことり「不器用な女の子の不思議な質屋さん」2人の隠している女の子』へのコメント

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2018年5月26日
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