善子「ダイヤがお見合い!?」

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善子-アイキャッチ28
1: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/07(日) 18:25:34.81 ID:+tSKFXLA
ルビィ「善子ちゃんあんまり大きな声出さないでっ」

善子「っ……ご、ごめん」

花丸「こう聞くとあれだけど……本当なの?」

ルビィ「うん……お母さんとお姉ちゃんが話してるのを聞いちゃったんだ」

ルビィ「お姉ちゃんに縁談が来てるって」

善子「でもダイヤは東京の大学に行くんでしょ? 縁談なんて無駄なんじゃないの?」

ルビィ「お姉ちゃんもそういってたけど」

ルビィ「今のうちに顔合わせをさせておきたいって、お母さんが……」

ルビィ「東京の大学に行くからこそ、今なんだって」

善子「………」

花丸「大学なら、女子大だったとしても男の人と接する機会は増えていく」

花丸「だから先に引き合わせておいて、ほかに靡かないようにって算段」

花丸「ダイヤさんが尽くしてくれる人だって理解しているからこそ、ずらね」

善子「それにダイヤはなんて? まさか、するとか言ったの?」

ルビィ「会うだけは会うって言ってた」

ルビィ「断るつもりですが。ってお母さんには念押ししてたけど……どうだろう」

善子「……場所は? 時間は?」

花丸「善子ちゃん……まさか」

善子「見に行くわよ。ソレ」

ルビィ「えぇっ!?」

善子「親から来た縁談なら親は頼りにならない。私達でぶち壊しにしてやるのよ!」

元スレ: 善子「ダイヤがお見合い!?」

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3: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/07(日) 18:33:38.97 ID:+tSKFXLA
花丸「ぶち壊し……それは止めた方が」

花丸「ダイヤさんは断る予定なんだよね?」

ルビィ「う、うん」

花丸「そっか。なら、善子ちゃんが妨害しなくても良いんじゃないかな?」

善子「ダイヤが断る保証は?」

善子「相手が何もしないって保証は?」

善子「断られたからって脅してくる保証は?」

花丸「………」

善子「ダイヤが断ったら、次はルビィに縁談。そうなるって可能性は?」

ルビィ「それはっ」

善子「お姉ちゃんが止めてくれる?」

善子「でしょうね」

善子「そしてそれが理由で……付き合わなくちゃいけなくなるかもしれない」

ルビィ「ぁ……」

花丸「善子ちゃん!」バシッ

善子「っ」

花丸「謝って……」

ルビィ「花丸ちゃん」

花丸「今すぐルビィちゃんに――」

ルビィ「花丸ちゃん!」ギュッ

花丸「ルビィちゃん……」

ルビィ「大丈夫。ルビィは、大丈夫だから……喧嘩はしないで」

善子「……」

善子「……ごめん、少し、おかしくなってた」
4: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/07(日) 18:42:54.38 ID:+tSKFXLA
花丸「マルも……ごめん」ガタッ

善子「良いわよ。言い過ぎたのは事実だから」

善子「………」

ルビィ「……本当に、邪魔しに行くつもりなの?」

善子「それはやる」

善子「ずら丸がなんて言おうと、ルビィがなんて言おうと」

善子「そんなこと、絶対に止めてやるわ」

善子「相手が鞠莉だとでもいうなら、どうせ冗談みたいなことになるだろうし」

善子「あぁ、心配して損したってなるけど」

善子「違うんでしょ?」

ルビィ「それはわかんない」

善子「そっ……まぁいいわ。時間と場所くらいは分かるのよね?」

ルビィ「お姉ちゃんの予定を調べれば大丈夫」

花丸「ダイヤさんはマメだから、鞄とか制服に手書きのスケジュール帳用意してるからね」

善子「いや、あれは……」

ルビィ「あはは……それはスマホとか携帯に慣れてないだけだよ」
5: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/07(日) 18:49:34.52 ID:+tSKFXLA
善子「私はとりあえず、変装に使える道具を探しておく」

ルビィ「ルビィは会場と時間を調べておく」

花丸「………」

善子「あんたは?」

花丸「マル?」

花丸「マルもそれに参加しないといけないずらか?」

善子「しないなら、口封じする必要があるんだけど」グッグッ

花丸「はぁ……」

花丸「マルはこっそりダイヤさんや千歌ちゃんたちに話を聞いてみるずら」

善子「そんなことして、バレるんじゃないわよ?」

善子「千歌たちはともかく、三年組の察しの良さは危険よ」

花丸「大丈夫。そこは何とかするずら」
7: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/07(日) 19:08:13.72 ID:+tSKFXLA
―津島家―
・夜


スッスッ
   タタッ

善子(……変装にマスクとかサングラスが有効なのは)

善子(作り物の世界ってわけね)

善子(むしろ、服装や髪形をありふれたものにする事)

善子(できる限り自信を持って挙動不審にならないこと……)

ヴィーッ
    ヴィーッ

善子「ルビィから……」

善子「時間は来週、場所は……料亭?」

善子(なるほど、ちょっといいお店ってわけね)

善子(……アルバイトする?)

善子(いや、来週じゃ明日面接して通って明後日だとしても)

善子(多分、そんなド新人をお見合いの場に使ったりしない)

善子(貸し切りとかやりそうだし……その線はなしね)
11: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/07(日) 19:14:35.27 ID:+tSKFXLA
ヴィーッ
    ヴィーッ

善子「今度はずら丸? しかもLINEじゃなくて電話だし」

善子「もしもし?」

花丸『もしもし? 善子ちゃんずらか?』

善子「私以外に誰が出るのよ、この番号」

善子「それで?」

花丸『一先ず、放課後に果南ちゃんや千歌ちゃん、梨子ちゃんには話を聞いたずら』

善子「行動力あるわね……あんた」

花丸『うん、一応やるって言いはしたから』

花丸『……でも、確認させてほしいんだ』

善子「なに?」

花丸『これは本来、マル達が関わるべきことじゃない』

花丸『やろうとしていることは、やってはいけない悪いこと』

花丸『私たちの行いは、ダイヤさん自身を困らせることかもしれない』

花丸『それでも、やる?』
14: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/07(日) 19:19:11.42 ID:+tSKFXLA
善子「………」

花丸『善子ちゃんの答えはもう聞いてる』

花丸『でも、確認』

花丸『善子ちゃん、本当は――』

善子「言ったでしょ、花丸」

花丸『…………』

善子「何と言われようと、止めるって」

善子「ダイヤが断ること前提だって時点で」

善子「これはダイヤ自信が望んでないことだっていうのは確実でしょ?」

善子「でも、親から持ってきた縁談」

善子「地元の名家の長女としての責務」

善子「私には理解しきれないことだけど」

善子「断り切れない状況にはいくらでも追い込めると思う」

善子「だから、止めるわ」

善子「何としてでも」
16: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/07(日) 19:30:25.25 ID:+tSKFXLA
花丸『……分かった』

花丸『でも、起こしたことの責任は、取らないとダメだよ』

花丸『そして、それは善子ちゃんには背負いきれないことになるかもしれない』

花丸『それでも、やる?』

善子「………なによ」

善子「わざわざ電話してきた理由はそれ?」

善子「この話をしたときに言いなさいよ」

花丸『………』

花丸『ルビィちゃんに聞かれると、何か言われそうだったから』

善子「ま、言われるでしょうね」

善子「大方、お姉ちゃんはお見合いなんて望んでないから大丈夫。とか」

善子「……花丸」

花丸『うん』

善子「それでも、私はやるわ」
17: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/07(日) 19:45:43.12 ID:+tSKFXLA
花丸『……わかった』

花丸『なら、改めてマルも協力するずら』

善子「ありがと」

花丸『……お礼なんて、要らないよ』

花丸『まず、梨子ちゃんと千歌ちゃんは特になにも聞いてなかったずら』

花丸『お見合いって興味ある? って聞いたけど、結婚はしやすくなるよね~とか』

花丸『相手探しを頑張らなくて良いのは助かるとか。普通だった』

善子「そう……その感じだと曜も知らなそうね」

花丸『それで、果南ちゃんなんだけど』

花丸『鞠莉ちゃんではないことが確定した。かな』

花丸『あと、ダイヤさんからも話を聞いたって』

善子「ほんと!?」

花丸『ダイヤさん、朝から不安定だったみたいで、どうしたのか聞いたら教えてくれたみたい』
18: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/07(日) 20:14:28.30 ID:+tSKFXLA
花丸『さすがのダイヤさんでも、悩んでたみたいずら』

善子「そりゃね」

花丸『断るつもりではあるけれど……』

花丸『断ったときに悪いことにならないか心配してるみたい』

善子「ネックなのはそこよね」

善子「だからこそ、第三者で壊すのよ」

花丸『……そうずらね』

花丸『その時に、鞠莉ちゃんが私とならどう? とか冗談で言ってたらしいずら』

善子「だから白だって」

花丸『うん』

花丸『というか、さすがに女の子を縁談に持ってくることはないと思う』

花丸『ダイヤさんあるいは鞠莉ちゃんが男の子でした。ってならない限りはね』

善子「それはないわね」
21: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/07(日) 20:41:41.62 ID:+tSKFXLA
ピッ

善子(ふぅ……)

善子(とりあえず、ダイヤさんが望んでないことは確実になった)

善子(これで、絶対にあきらめるわけにはいかなくなった)

善子(ダイヤさんには迷惑をかけるかもしれない)

善子(でも)

善子(望んでない縁談なんて、やめさせるべきでしょ)

善子(そこで親がアテにならないなら)

善子(……私が)グッ

善子「花丸はいろいろ言ってたけど」

善子「人を殺すとか、誹謗中傷で人生終わらせるとかするわけじゃないし」

善子「……いや」

善子「黒澤家からは、嫌われるかな」

善子「廃校になって学校が変わることになったらルビィとは……別の学校になったりするかも」

善子「………」

善子「それ、でも」

善子「それでもやるのよ、私は」
22: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/07(日) 21:05:25.77 ID:+tSKFXLA
―翌日:浦の星女学院―


善子「はい、これ」

ルビィ「……えぇ」

善子「なによその微妙な反応」

ルビィ「だって……流石に無理じゃないかな?」

花丸「ルビィちゃんの言う通りずら」

花丸「さすがに潜入まではできないずら」

善子「潜入って……ただ隠れてみておくだけよ?」

花丸「店の前で?」

善子「中で」

ルビィ「それじゃ潜入だよぉ」

善子「中でダイヤが襲われたらどうすんの?」

善子「食事した後、お前がデザートだ。とか!」バンッ

花丸「いやいやいや!」

花丸「ないないないない!」

花丸「それはないっ」

ルビィ「それはさすがに、お母さんの見る目が……」
24: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/07(日) 21:13:27.19 ID:+tSKFXLA
善子「それはそうだけど」

善子「うまく隠してるかもしれないじゃない」

花丸「……気持ち悪い」

ルビィ「そんなの、やだなぁ」

善子「…………」

善子(花丸は逆に襲われるし、ルビィは近づくことすらできずに戦力外)

善子「まぁ、冗談よ」

善子「でも、何があるか分からないのは本当」

善子「私だけでも潜入するわ」

花丸「本気?」

花丸「外で待機しておいて、悲鳴でも聞こえてからの方が……」

善子「それこそ本気?」

善子「それじゃ手遅れだし」

グィッ

花丸「!」

ガタッ
   ガタタッ――ガタンッ

ドンッー

花丸「っ」グッ

善子「……もし、こうやって襲われて、口をふさがれたら?」
25: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/07(日) 21:36:42.02 ID:+tSKFXLA
善子「だから、私は中に行く」

スッ

花丸「っは」

ルビィ「花丸ちゃん大丈夫?」

花丸「う、うん……」

花丸「善子ちゃん、意外と力があるんだね」

善子「通信空手よ」

花丸「今のは空手ではないよね?」

善子「うそうそ」

善子「Aqoursとして少し運動してるから鍛えてるのよ」

善子「体力づくりの一環として、ね」

善子(まぁ、それも嘘だけど)
26: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/07(日) 22:03:09.05 ID:+tSKFXLA
善子「どうすんの?」

善子「ついてくる? こない?」

ルビィ「……ルビィは、行く」

花丸「ルビィちゃんっ」

ルビィ「男の人は、怖い」

ルビィ「でも、逃げ続けるわけにはいかないと思う」

ルビィ「昨日、善子ちゃんに言われて、思ったんだ」

ルビィ「善子ちゃんが言ってたことは間違ってない」

ルビィ「ルビィが逃げ続けていたら全部お姉ちゃんに行くことになっちゃう」

ルビィ「お見合いの邪魔をするのは……ダメだって言われるかもしれないけど」

グッ

ルビィ「やっぱり、心配だから」

花丸「……そっか」

花丸「なら、マルは外で待ってるずら」

花丸「少数精鋭。それに、外で何か動きがないとも限らない」

花丸「逃げ道を確保しておくよ」
28: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/08(月) 06:34:03.50 ID:FjzquQS1
善子「念のため……ね」

善子「それで行きましょ」

花丸「中に入る方法はもう考えてあるずらか?」

善子「この料亭、中庭があるみたいなのよ」

善子「で、この中庭なんだけど」

善子「どうやら、南西側の壁から入れるっぽいのよ」

善子「今日の帰りに、監視カメラの有無をチェックする」

善子「カメラがなければそこから潜入する予定よ」

ルビィ「不法侵入になっちゃわないかな?」

善子「バレなきゃいいのよ」

善子「万が一バレたとしても、お兄ちゃんのお見合いがあって~」

善子「とか、適当に言い訳すれば可愛い妹よ」

ルビィ「お姉ちゃんじゃなくてお兄ちゃん?」

花丸「ダイヤさんの知り合いに思われるわけにはいかないからね」

花丸「ただ、リスクはあるしそれも悪いことだよ」

花丸「二人とも、無理だけはしないようにね」

花丸「全部バレたらダイヤさんに凄い迷惑をかけることになるから」

花丸「きっと、庇ってくれちゃうから」

花丸「いいね?」

善子「分かってる」

ルビィ「う……うん、わかった」
29: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/08(月) 07:59:29.76 ID:7YZkMtkz
―昼休み―


スタスタスタ…

善子(ずら丸は心配しすぎなのよ)

善子(確かに、悪いことは悪いこと……だけど)

善子(ダイヤに迷惑かけることだけど……)

善子(………)

スタスタスタ…
      ドンッ

鞠莉「oh!」ドサッ

善子「いつつ……ご、ごめんなさい」

善子「余所見……って、鞠莉?」

鞠莉「イエス、鞠莉ちゃんでーす」

鞠莉「ぶつけたりしなかった?」

善子「私は平気」

善子「そっちこそ尻餅ついて平気?」

鞠莉「……触診する?」ニコッ

善子「しない」

鞠莉「もうっ、ノリが悪いんだから」

善子「触ったら変な声出すんでしょ?」

善子「嫌よ」
30: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/08(月) 08:33:13.63 ID:xzmlrry1
鞠莉「ダイヤのこと?」

善子「っ」

善子「なんの話?」

鞠莉「私にぶつかるくらいにご執心なことよ」

鞠莉「ダイヤのことでしょ?」ニコニコ

善子(……なに考えてるのか分からない顔)

善子(ずら丸がしくじった?)

善子(いや、ダイヤから聞いた昨日の今日)

善子(不注意な理由にするのは当然かしら)

善子「いや、廃校になったあとどうなるのかって……」

善子(ここはあえて、攻める)

善子「ダイヤに何かあったの?」
31: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/08(月) 08:55:07.53 ID:xzmlrry1
鞠莉「あら……ルビィから聞いてないの?」

善子「え?」

鞠莉「ダイヤ、ルビィにどう話せばいいか悩んでたのよ」

鞠莉「一応、アドバイスしたんだけど……まだ話せてないのかしら?」

善子「………」

善子(嘘? 本当?)

鞠莉「頑張ったのに……」

善子(いや、考えたらダメだ!)

善子「まさか……」

善子「大学受験失敗しそうとか言わないわよね?」

善子(……この問いかけは長考させること自体が目的)

善子(なにもなければ聞き返す)

善子(選択肢があれば考える……)

善子(私のダイヤに関しての情報を言わせようったってそうはいかない)

善子(……邪魔はさせない)
32: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/08(月) 09:07:52.03 ID:IDaFYRIu
鞠莉「oh……それはショッキングな話ね」ニコッ

鞠莉「違うわ」

善子「じゃぁなんなのよ」

善子「気になる言い方しといて教えないとか止めてよ?」

善子「次は一人で階段踏み外せって言うなら別だけど」

鞠莉「それは困るわね」

鞠莉「ん~」

鞠莉「他言無用でお願いできる?」

鞠莉「トップシークレット」シーッ

善子「わ、分かった」
33: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/08(月) 09:15:05.36 ID:IDaFYRIu
チョイチョイ
     スッ

鞠莉「実はね」ボソッ

鞠莉「ダイヤには許婿がいるらしいわ」

善子「……は?」

善子「はぁぁあああっ!?」

善子「許婿? え?」

善子(聞いた話と違う……許婿ならお見合いとかどうとかじゃない)

善子(え……なんで……?)

鞠莉「黒澤家の長女として、そういうことはついて回るわ」

鞠莉「当然」

鞠莉「許婿とまではいかなくても、縁談くらいは私にもある」

鞠莉「名家って言うのは、そういうものよ」
34: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/08(月) 12:28:50.33 ID:3jlcW64S
善子「……なにそれ」

善子「なによそれ!」ガシッ

鞠莉「痛っ」

善子「あんたはそれでいいとか思ってんの!?」ガクンッガクンッ

鞠莉「いたっ痛いっ」

善子「それを知っててそんなニヤついてたの!?」

善子「ダイヤがそれをーー」

グググッ

鞠莉「痛いっ!」

善子「ぁ……」

パッ

善子「ご、ごめん……ごめんなさい」

善子「私……」

鞠莉「っ……良いとは、思ってないわ」

鞠莉「でも、これは私達が決められることじゃない」

鞠莉「もちろん、思いは伝える」

鞠莉「でも、でもね善子」

鞠莉「それでも、ダイヤが頷けばそれが全てなの」ギュッ

善子「!」

鞠莉「茶化すように言ってごめんなさい」

鞠莉「許婿は嘘……でも、縁談があるのは本当」

鞠莉「……善子、悪いことは言わないわ」

鞠莉「危ないことはしないで」
35: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/08(月) 12:48:29.21 ID:3jlcW64S
善子(……ずら丸)

善子(花丸が、チクったのね)

善子(鞠莉が知ってるわけがない)

善子(鞠莉が勘づく筈がない)

善子(……裏切り者)

善子(でもあくまで、知らないフリ)

善子「なに言ってるのよ」

善子「危ないことなんてしないし考えもしないわよ」

鞠莉「リアリィ?」

善子「当たり前でしょ」ニコッ

善子「想いを伝えるくらいはするけど」

善子「それくらいなら、別に良いでしょ?」

鞠莉「ええ」

善子「縁談ね……縁談か」

善子「ルビィにもあったりしてね」

善子(さて、花丸にはどう伝わるか……)

鞠莉「oh……それはまたダイヤが悩みそうね!」

善子(……邪魔しないで)
42: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/08(月) 18:52:16.52 ID:hRmZXo1r
ー放課後ー

ルビィ「善子ちゃん、花丸ちゃん。帰ろー?」

花丸「あぅ」ガシッ

善子「悪いけど、ずら丸は借りるわ」

グィッ

花丸「わわっ」

ルビィ「善子ちゃん……?」

ルビィ「あの話ならルビィもーー」

バンッ

ルビィ「ひっ」ビクッ

善子「借りるって、言ってるでしょ」

ルビィ「善子ちゃん……なんか怖いよ?」

花丸「大丈夫だよ」ニコッ

花丸「大丈夫……また明日ね」

ルビィ「………」

ルビィ「う、うん……」グッ

タタタッ

ルビィ「………」

ルビィ「っ」フルフル

タタタタッ
43: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/08(月) 19:05:18.25 ID:hRmZXo1r
花丸「ずいぶん乱暴ずらね」

花丸「……目立つよ?」

善子「そのヘラヘラした顔……鞠莉みたい」

善子「一発殴りたいから、ついてきなさい」クルッ

花丸「そう言われてついていくのは物好きだけずらよ」

ガタンッ

花丸「マルは付いていくけどね」ニコッ

花丸「………」

花丸「……慎重にって言ったのに」ボソッ
52: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/08(月) 23:05:15.32 ID:FjzquQS1
善子「アンタ、鞠莉に話したわね?」

善子「昼休み、鞠莉に言われたのよ……色々」

善子「探るつもりが探ろうとしてきた」

善子「私達がどこまで情報を掴んでるのか……」

善子「まるで分かっているかのような聞き方だった」

花丸「……うん」

花丸「善子ちゃんの思っている通りずら」

花丸「鞠莉ちゃんには密告したよ」

花丸「だって、善子ちゃんは潜入してダイヤさんを見守る気なんてさらさらない」

花丸「そのまま会場をぶち壊しにする予定ずら」

善子「………」

花丸「それを、見逃すわけにはいかない」

善子「自分じゃ止められないから、ほかの人も使おうって考えたわけ?」

花丸「それはあわよくば。だよ」

花丸「鞠莉ちゃんの言葉一つで止まってくれるなら」

花丸「善子ちゃんを止めるのは簡単だからね」

花丸「マルが鞠莉ちゃんに情報を流したのは、鞠莉ちゃんも止めたいと思ってくれているから」

花丸「当日の潜入と脱出。その成功率を上げるためずら」

花丸「そして、その場で善子ちゃんを押し留めるための人員になってもらうため」

花丸「さすがに、相手が危害を加えるようなら止めさせないけど、それ以外なら善子ちゃんの勝手は許さない」
55: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/09(火) 06:21:44.62 ID:nGnjlBtj
善子「……余計なこと、してくれたわね」

花丸「善子ちゃんが自分で自分のことを考えようとしてくれないからずら」

花丸「マルはダイヤさんの縁談が破談になればいいだけとは思ってない」

花丸「そこで善子ちゃんがいなくなっていいとは思ってない」

花丸「ダイヤさんの立場が悪くなっていいとは思ってない」

花丸「黒澤家によって、縁談を妨害するような友人から二人が隔離されるなんてことは起きて欲しくない」

花丸「……たとえ、マルの傲慢であってもそれは譲れない」

花丸「いいよ」

花丸「邪魔をするな、余計なことするな」

花丸「そう言ってマルのことを殴っていいよ」

花丸「それでもマルは、止めるけど」

善子「………」

グッ

善子「あんたを加えなければよかった」

善子「……でもまぁ、潜入をやりやすくしてくれたことだけは感謝しとく」

善子「ダイヤさんは断ること前提だって話だから、祈ることにするわ」

スタスタスタ……
        ガンッ

ガラッ……スタスタスタ

花丸「………」

花丸「……堕天使なんかにはさせないよ」

花丸「そう、させるくらいなら……」ニコッ
57: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/09(火) 09:11:32.68 ID:+ko4jGcH
―津島家―
・夜


善子(中庭を囲う壁付近に監視カメラはなかった)

善子(もちろん、擬態させてたりする可能性はあるけど)

善子(素人目で見て監視カメラは無し)

善子(多少不審な動きをして見たけど)

善子(誰かが様子を見に来るような事もなかった)

善子(この事から見て、防犯は正面玄関と裏口にしかない)

善子(中庭は壁に囲まれてるから)

善子(そんなの必要ないって考えてるのかしら)

善子(まぁ銀行とか金持ちの豪邸じゃあるまいし)

善子(厳重警備なわけないわよね)

善子(……ずら丸は潜入と脱出に鞠莉の助力が得られるって言ってたけど)

善子(どうするのかしら)

善子(店が貸し切りになってるのは電話で確認済み

善子(流石に小原でも貸し切りを解除して割り込むのは難しい)

善子(……あんまり、アテにはしないでおいた方がいいわね)
58: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/09(火) 12:29:02.48 ID:+S5rBvGf
善子(ダイヤ……縁談断るのよね?)

善子(相手がいい人だからって)

善子(考えたりとか……)

善子(………)フルフル

善子(付き合ってるわけでもないのに、なに言ってんだか)

善子(……いつかは誰かのものになる)

善子(名家の長女……当たり前のこと)

善子(なんで、ダイヤなのよ)

善子(もう一人、いるのに)

善子(2年……たった2年なのに)

善子「なんで!」

ヒュンッ
   ガシャンッ

善子「はぁっはぁ……はぁ……」

善子「っ」ギュッ

善子「断るから大丈夫…大丈夫…」
59: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/09(火) 12:50:05.89 ID:+S5rBvGf
―浦の星女学院―
・昼休み


鞠莉「じゃっじゃじゃーん!」

バサッ

善子「………」

花丸「………」

ルビィ「………」

鞠莉「あ、あら?」

鞠莉「みんなドールなの? 何か反応は?」チラッチラッ

花丸「反応はって言われても、マルはそれがなんなのか分からないずら」

鞠莉「えっ」

善子「正装よ」

ルビィ「せいそう?」

善子「そ。見合いがある料亭の仕事着」

善子「そうでしょ?」

鞠莉「イッグザクトゥリィ!」

善子(うざ……)

鞠莉「イエッス! そう、そうよ!」

鞠莉「頑張って手にいれたの!」

ルビィ「スゴいっ」パチパチ

鞠莉「うんうん」ニッコリ

鞠莉「当日はこれを使ってあくまで」

鞠莉「あ く ま で !」ジッ

善子「……」

鞠莉「合法的に見守ります。良いわね?」

善子「はいはい」

鞠莉「ハイは一回!」

善子「分かったってば」
61: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/09(火) 18:52:12.45 ID:nIpjL3Zx
善子「よくそんなの手に入れられたわね」

鞠莉「ふふんっ」ドヤッ

鞠莉「交渉を頑張ったの」

鞠莉「可愛い後輩に不法侵入なんてさせられないから」

鞠莉「それに、阻止するなんて理由を除けば」

鞠莉「可愛いものじゃない」ニコッ

鞠莉「オーナーさんも渋々だけど許可をくれたわ」

善子(握らせたわね、お金)

善子(もしくは小原の力を使ったか……)

善子(………)

善子「でもどうせ、制限があるんでしょ?」

鞠莉「ん~?」

善子「惚けたって無駄よ」
62: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/09(火) 19:05:52.33 ID:nIpjL3Zx
善子「土地の有力者を完全に裏切るわけにはいかない」

善子「でも、小原の願いを蹴っても損害は計り知れない」

善子「だから、きっとこう言うはず」

善子「"あくまでも従業員でお願いします"って」

鞠莉「ふぅん……」ニコニコ

ルビィ「それだとダメなの?」

花丸「ダメじゃないよ」

花丸「ただ、少し予定と違うだけ」

花丸「でも安全だから」

鞠莉「善子は余計なリスクを負いたいの?」

善子「………」

善子(……予定は狂うけど)

善子「良いわ。それで行きましょ」
64: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/09(火) 19:56:06.61 ID:nGnjlBtj
鞠莉「決まりね!」

善子「制服は何着ある?」

善子「合法的にいくなら、花丸が外にいる理由もないんだけど……」

鞠莉「3着。あと1着って思ったんだけど、予備がこれ以上ないからって」

鞠莉「さすがに、使用中のを誰かから借りるわけにもいかないし」

鞠莉「専用のものだから数日で用意も難しいし」

鞠莉「3人で行ってきなさい」

ルビィ「えっ、でもっ」

鞠莉「話は通してあるからノープロブレムよ。ルビィ」

鞠莉「花丸もそれでいいでしょ?」

花丸「マルは待って――」

鞠莉「図書室の本、あげるの止めようかしら」チラッ

花丸「っ」

花丸「……それは狡い」

鞠莉「ふふっ決まりね?」ニコッ

花丸「分かった。分かったずら」

花丸「マルも行く」
65: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/09(火) 20:21:23.63 ID:nGnjlBtj
鞠莉「今渡す?」

ルビィ「ルビィはお姉ちゃんに見つかると困るから、当日が良いかな」

善子「ルビィに合わせるわ。ずら丸もそれでいいでしょ?」

花丸「うん」

花丸「鞠莉ちゃん、お願いして良いずらか?」

鞠莉「オッケー、任せておいて」

鞠莉「この命に代えても守ってあげるわ!」ドヤッ

善子「そこまでしなくてもいいわよ」

善子「そっちがダメでも、私の作戦があるから」

ルビィ「Aはダメだ、Bで行く! みたいな感じ?」ビシゥ

善子「そうね。そんな感じよ」

善子「でも、鞠莉の作戦がバレたら警戒される」

善子「しくじらないで」

鞠莉「大丈夫大丈夫。まっかせなさい」ニコッ

善子(……ヘラヘラヘラヘラ)

善子(………)フルフル

善子「ええ、任せるわ」
66: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/09(火) 20:32:24.27 ID:nGnjlBtj
ルビィ「そういえば、花丸ちゃん図書室の本貰うの?」

花丸「ん?」

花丸「うん、廃校になった際に全部は持っていけないだろうからって」

鞠莉「処分するのも勿体ないし」

鞠莉「1年間図書室の係頑張ってくれたでしょ?」

鞠莉「欲しければプレゼントするって言ったの」

鞠莉「本もきっと、その方が幸せだろうし」

ルビィ「良いなぁ」

ルビィ「アイドルのご本とか、ルビィも貰っていい?」

鞠莉「良いわよ、ジャンジャン持って行って!」

鞠莉「善子もいる? 黒魔術の本とか――」

善子「要らない」

善子「めぼしい奴は家にあるわ」

鞠莉「そう? 痕から欲しいって言っても上げないわよ?」

善子「要らないって言ってるでしょ」

鞠莉「……そう」

ルビィ「善子ちゃん、何かあったの?」

ルビィ「ルビィに――」

花丸「ダイヤさんの縁談を阻止することで頭いっぱいなだけだよ」

花丸「だから、気にしないで」ニコッ
67: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/09(火) 21:05:38.81 ID:nGnjlBtj
ルビィ「う、うん……」

鞠莉「ダイヤのこと、本当に好きね」

善子「………」

花丸「ダイヤさんが望んでないってことも重要ずら」

花丸「ダイヤさんのことは好きだし、大切だから」

花丸「そういうことは、させたくない」

花丸「鞠莉ちゃんだって同じだよね?」

鞠莉「ええ」

鞠莉「でも……」

鞠莉「ううん、そうね」

鞠莉「ダイヤも喜ぶ……かもね」

鞠莉「危ないことしないでとか、怒られるかもしれないけど」

鞠莉「内心では喜びそう」

善子「ダイヤが喜ぶかどうかじゃないでしょ」

善子「どこの何かも分からないような奴なんかに、ダイヤは渡さない」

善子「親が決めた縁談なんて、ぶち壊すわ」ギリッ

鞠莉「………」

鞠莉「ほどほどにね?」
70: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/10(水) 06:00:24.36 ID:fsQN/tPG
善子「分かってるわよ」

善子「相手が変なことさえしなければ何もないわ」

善子「ダイヤは断るつもりなんでしょ?」

善子「それで無理強いするとか、迫るとか」

善子「そういうことさえなければ大丈夫」

鞠莉「さすがにそれはないと思うけど」

鞠莉「でも、男の人にとってダイヤは魅力的だわ」

鞠莉「厳しいところはあるし、ちょっと面倒くさいところもあるけど」

鞠莉「だからこそ一途だし、尽くしてくれるし、応えてくれる」

鞠莉「そういうのが嫌と言う人もいるだろうけれど」

鞠莉「ダイヤって心を許した相手には厳しく優しい可愛いところもあるのよ」フフッ

ルビィ「お姉ちゃんが聞いたら急に何言ってるのって、顔真っ赤にしてそう」

花丸「想像できるずら」

花丸「それで、何か別の関係ない注意する」

花丸「煽てたって練習は厳しくしますわ。とか」

花丸「鞠ちゃんの言う通りだと思う」

花丸「仲良くなればなるほど、素が見える」

花丸「逆に言えば、容姿だけしか見てない人には付き合いきれない気難しさがある」

花丸「お見合い程度で見ることが出来るものじゃないずら」
71: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/10(水) 06:12:38.89 ID:fsQN/tPG
善子「どうかしらね」

善子「そういうのを屈服させたいとか考えるクズがいるかもしれない」

善子「体しか見ないで、中身なんてどうでもいいとか思ってるやつもいるかもしれない」

善子「エロいことができればいいなんて虫以下の頭しかないやつだっている」

善子「ダイヤの本当の良さなんて全く見ないで、考えないで」

善子「ダイヤの本当の笑顔が見られる幸せなんて考えもしないで」

善子「笑えなくなるようなことをするかもしれない」

善子「男なんて、そんなことばっかの汚らわしいやつなのよ」

鞠莉「o……oh」

鞠莉「辛辣ね、善子」

鞠莉「男の人苦手だったっけ……?」

善子「別に」

鞠莉「なにかあった?」

善子「ない」

善子「ただ、そう思うだけ」

善子「勝手な想像よ。悪い?」
72: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/10(水) 07:22:00.48 ID:fsQN/tPG
鞠莉「悪いわ」

善子「………」

鞠莉「勝手な想像をするだけならまだいい」

鞠莉「それもできるなら、やめて欲しいけど」

鞠莉「でも、憶測だけでそこまで言うのは見逃せないわ」

善子「……縁談を見てから決めるわ」

善子「そんなやつじゃないって希望的観測だけで傍観して」

善子「いざって時に動けないような大馬鹿者になるくらいなら、私はクズで良い」

善子「あんたにはアンタの考えがあるだろうから強制はしない」

善子「この考えが認められないなら、協力もしなくていい」

善子「私は私のやり方でやらせてもらうから」

スタスタスタ……ガチャッ
      タンッタンッタンッ……

鞠莉「善子……」

鞠莉「花丸。どうして止めないの?」

花丸「マルにも、マルの考えがあるからずら」

ルビィ「でもっ」

花丸「大丈夫。マルもついてるから、善子ちゃんに最低なことまではさせないよ」

花丸「……大丈夫」ニコッ
73: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/10(水) 08:33:10.46 ID:VSlkbLb3
善子(甘いのよ……どいつもこいつも)

善子(ここは女子高で、男女間の恋愛なんて微塵も経験してない)

善子(もちろん、まったく男と関わらなかったなんてことはないだろうけど)

善子(それでもダイヤが純潔なのは変わらない)

善子(男がそれを見逃すわけがない)

善子(顔に出さなくても舌舐めずりしてるに決まってる)

善子(そんなやつらに、温情なんて……)

ダイヤ「あら、善子さん」

善子「!」ビクッ

善子「だっダダイヤ!」

ダイヤ「なんですの? そのお帰りなさいと言いたくなるような言い方は」クスクス

ジッ

ダイヤ「ま さ か」

ダイヤ「私に隠れて浮気……してますの?」

善子「はっ……はぁっぁ!?」

善子「なに言ってんのよ! するわけないじゃない!」

善子「ダイヤと付き合えてたら勉強だってバイトだって頑張るし」

善子「もちろん家事だってちゃんと手伝うし」

ダイヤ「よ、善子さん?」

善子「休みの日は二人でどこか出掛けたり」

善子「たまには家でゆっくりとかしてこんな日も良いって笑ったりして」

善子「頑張ってる私のささえになってくれて尽くしてくれてるのに浮気なんてそんな――」

ダイヤ「わ、分かりました!」

ダイヤ「分かりましたから……///」

ダイヤ「その……落ち着いてください」

善子「あっ」

ヒソヒソ
    ザワザワ

ダイヤ「あらぬ誤解をされてしまいます///」フイッ
74: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/10(水) 09:05:59.76 ID:DtKddaCZ
善子「ご、ごめん///」

善子「でも、ダイヤが浮気なんて言うからいけないのよ」

善子「するわけないでしょ」

善子「されるわけないでしょ」

善子(仮にそんなやついたら、私が……)

ダイヤ「すみません、つい」ニコッ

善子「っ」

善子「そ、それとも何?」チラッ

善子「浮気だなんだ茶化すってことは……さ」

善子「私と付き合いたいとか思ってるの?」ドキドキ

ダイヤ「いえ……そんなことは……」

ダイヤ「本当にただの冗談ですわ」

ダイヤ「わたくしも善子さんも女性ですから」

ダイヤ「恋愛なんて考えられませんわ」

善子「………」

ダイヤ「もちろん、そういう方もいますし、否定はしませんが」

ダイヤ「少なくともわたくしは、そのようなことは考えられません」
76: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/10(水) 12:20:26.11 ID:oOOKWiG6
善子「っ」ズキズキ

グッ

善子「相変わらず真面目なんだから」

善子「まるで私がホントに振られたみたいじゃない」

善子「なんか傷付くんだけど」

ダイヤ「すみません、つい……」

ダイヤ「聞き耳立てている方もいますし」チラッ

ダイヤ「釘を刺しておこうかと思いまして」

善子「なるほどね」

善子「モテる生徒会長は辛いのね」

ダイヤ「別にそういうわけではありませんが……」

ダイヤ「家の事もありますから、恋愛は中々難しいんです」
77: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/10(水) 12:25:17.43 ID:oOOKWiG6
善子「……そう」

善子(疲れたため息、悩む表情)

善子(十中八九、縁談のことよね)

善子(……縁談)

善子(黒澤家として……)

善子(……私のものにならないなら)

善子(誰かのものになっちゃうくらいなら)

善子(いっそ……)

ダイヤ「でも、今しばらくは恋愛よりも学業、そしてaqours」

ダイヤ「現を抜かす気はありませんわ」ニコッ

善子(これを、永遠にしてしまいたくなる)
79: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/10(水) 12:50:14.60 ID:oOOKWiG6
―料亭―
・お見合い当日


善子(あっという間だった)

善子(気づけば当日で、店の前)

善子(ルビィとずら丸そして……)

善子(結局、鞠莉が現地に集合した)

善子「別に来なくてよかったのに」

鞠莉「そういうところよ」

鞠莉「そういう部分を我慢させるために来たの」ガサッ

鞠莉「……善子の考え方はやっぱり間違ってる」

鞠莉「でも、犯罪がある以上否定は出来ないから」

鞠莉「せめて、貴女は我慢して」

善子(……仕事着)

善子(合法的で安全な作戦)

善子「……」チラッ

ルビィ「……」ギュッ

善子(そんな祈られても困るけど)

善子(あそこまで言って、協力してくるのなら)

善子「……借りるわ」

善子「ただ、何かあったら容赦はしない」

鞠莉「ええ……それが条件でしょ?」

善子(何もなければ良い)

善子(何もなければ、私も鞠莉も杞憂で終わるんだから)
80: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/10(水) 12:56:29.81 ID:oOOKWiG6
善子「あんた、相手の顔とか分からないの?」

ルビィ「うん……見せて貰えなくて」

ルビィ「お姉ちゃんに直接聞くとバレそうで……」

ルビィ「役に立てなくてごめんね」

善子「……ほ」フルフル

善子(ほんと、役立たず)

善子「情報を得たのはあんたでしょ」

善子(あんたに変われば良いのに)

善子「それがなかったら今頃、なにも知らなかったかもしれない」

善子(ダイヤの苦労も知らなそうな顔して)

善子「それで十分よ」

善子(役立たず)

ルビィ「う、うん……」

花丸「………」
86: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/10(水) 18:25:08.98 ID:08np5mri
花丸「……二人に聞きたいことがあるずら」

ルビィ「聞きたいこと?」

善子「なに?」

花丸「もしも、ダイヤさんが交際するって言ったらどうする?」

花丸「親がどうとか」チラッ

花丸「ルビィちゃんがどうとか」

花丸「意思を歪める要因は無くて」

花丸「ただ本当に、相手を気に入って……付き合うことになったら」

花丸「善子ちゃんはそれでも邪魔する?」

善子「……今はそういうことに現を抜かすことはしないって言ってたわ」

善子「そういうのも、無しで?」

花丸「うん」
87: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/10(水) 19:03:54.00 ID:08np5mri
ルビィ「ルビィは……」

ルビィ「ルビィはお姉ちゃんが好きになった人でも嫌だなって思っちゃうかもしれない」

ルビィ「邪魔はしないし、良かったねって言うけど」

ルビィ「でも多分、少しは嫌な気持ちになると思う」

ルビィ「……悪いよね」

善子「別に普通なんじゃないの?」

ルビィ「え?」

善子「ダイヤの一番が自分からそいつに移って」

善子「今まで見せてくれてた笑顔がそいつに向けられるようになって」

善子「二人だけの秘密が三人の秘密になって」

善子「自分の知らない秘密ができて……」

善子「……自分の居場所を奪われるのは誰だって嫌でしょ」
93: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/10(水) 19:17:02.19 ID:08np5mri
善子「私だったら、嫌ね」

善子(全力でぶち壊しにする)

善子(良いやつなんかじゃないって……)

善子(話をでっち上げてでもぶち壊すわ)

善子(ダイヤを渡すなんて、あり得ない)

善子「だから……」

花丸「でも、ダイヤさんの幸せだよ?」

花丸「善子ちゃんは、ダイヤさんに幸せになって欲しくないの?」

善子「決まってるでしょ」

善子「幸せになって欲しい」

善子(でもそれが、自分以外の誰かによるものなら)

善子(そんな、吐き気を催すことなら)

善子(………)

善子「査定は、厳しくいくわよ」
99: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/10(水) 20:02:08.55 ID:08np5mri
花丸「そっか」ニコッ

花丸「善子ちゃんの査定は厳しそうずらね」

ルビィ「その前にお姉ちゃんが気に入る人いるかなぁ……」

ルビィ「お姉ちゃん結構厳しいから……」

花丸「確かに自分に厳しく他人に厳しくだもんね」

花丸「黒澤家に関わるなら尚更」

花丸「ダイヤさんが男の人だったら」

花丸「もう少し……普通だったのかな」

善子「さぁ?」

善子「ダイヤはダイヤなんじゃないの?」

善子「厳しさの度合いに違いはあるだろうけど」

善子「厳しいのは変わらないんじゃない?」

花丸「それはそうだけど――あっ」

善子(お店の人のお見えになりました。という合図で黙る)

善子(ダイヤと、どこかの男)

善子(消して許すことの出来ないお見合いが、始まった)
101: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/10(水) 21:07:08.87 ID:fsQN/tPG
善子(ダイヤたちが連れて行かれた客間が見える別の客間)

善子(そこを待機室として借り、バレないように覗く)

善子(ダイヤの親と、ダイヤ)

善子(相手の親と……)

善子「うわ……何あの優男」

花丸「どっちの意味?」

善子「悪い意味に決まってるでしょ」

善子「……なんていうか、亭主関白っぽい」

ルビィ「そうかなぁ?」

ルビィ「優しそうに見えるけど」

善子「そういうやつに限って、お前は従ってればいいとか言い出すのよ」

善子「特に、ダイヤは厳しいから」

善子「逆上したりすんのよ」
102: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/10(水) 21:34:35.78 ID:fsQN/tPG
ルビィ「お姉ちゃん、凄い綺麗な格好してる」

ルビィ「あんな着物あるなんて知らなかった」

花丸「お母さんのじゃないかな」

花丸「こういうのって、代々引き継がれてたりするものだと思うし」

ルビィ「……そっか」

ルビィ「ルビィは、着ても似合わなそう」

花丸「………」

花丸「そんなことはないと思うよ」

花丸「きっと、似合うずら」

ルビィ「そう、かな」

善子「アンタら、無駄話するだけなら帰れば?」

ルビィ「ご、ごめん」

善子「………」ジッ

善子(気弱そうに見える、男)

善子(へこへこへこへこして)

善子(ダイヤが全然楽しそうじゃないことにも、気付いてなさそう)

善子(なんであんな奴が……)

善子(家柄だけの奴が、ダイヤに近づくんじゃないわよ)
103: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/10(水) 21:57:55.94 ID:fsQN/tPG
善子(義こちのない、雰囲気)

善子(勝手に盛り上がる、親)

善子(子供を売るバザーのような醜悪さを感じる)

善子(ダイヤは、アンタの世間話の道具じゃない……っ)ギリッ

善子(ゴミステーションの前にでも立ってればいい)

善子(こんな男の前に、ダイヤを連れ出さないで)

善子「……ダイヤも、帰ればいいのに」

花丸「ダイヤさんがそんなことできる人だと思う?」

善子「分かってるわよ、そんなこと」

善子(そんなことしない人だってことくらい)

善子(できない人だってことくらい……)

善子(親の子供品評会がしばらく続いた後)

善子(まるでドラマのように、後はお若い二人で。と、消えていく)
104: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/10(水) 22:18:30.36 ID:fsQN/tPG
ダイヤ「お若い二人で。と言われても困りますわね」

「そ、そうですね」

善子(ダイヤ、困ってる)

善子(その一方でアンタは何なのよ)

善子(男ならあんたから話を振りなさいよ)

善子(ほらやっぱり、アンタは相応しくない)

善子(今すぐ消えて)

「黒澤さんは……とてもしっかりした方だって」

ダイヤ「自分で言うのもあれですが、そうですわね」

ダイヤ「厳しすぎるのでは。と、言われることもありますわ」

ダイヤ「……苦手ですか?」

「い、いえいえいえ!」

「そんなことありません!」

「むしろ、私は少々ずぼらなところもありまして……」

「恥ずかしい話ですが」

「たまに車のカギも閉め忘れたりしてしまうこともありまして」

善子(なんなのよ、そのくだらない話)イライラ

善子(話し方も、イラつく)

善子(帰れ、帰れ……帰れっ)
106: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/11(木) 06:02:08.32 ID:aucGrEXt
ガタガタガタ……

  ギギギッ

善子「………」

花丸「……善子ちゃん、善子ちゃん」

善子「何よ」

花丸「イライラしてるのは分かるけど、落ち着いて」

花丸「バレちゃうよ」

善子「……ちっ」イライラ

善子「見なさいよあの顔」

善子「見てない振りしながらダイヤの体をちらちらちらちら……」

善子「鼻の下も伸ばして……気色悪い」

善子「ダイヤもいやらしい目で見られてるの分かってるでしょ、アレ」
107: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/11(木) 06:19:14.71 ID:aucGrEXt
ルビィ「お姉ちゃん、ずっと困った笑顔になってる」

善子「そりゃそうでしょ、話題を振ってもすぐ途切れるし、向こうからは全然振ってこない」

善子「話題に対する向こうの話はつまらない」

善子「帰りたいって思ってるんじゃないの?」

ルビィ「ううん、帰りたいまでは思ってないと思う」

ルビィ「男の人も一生懸命だって分かってるから」

ルビィ「受けるつもりはないって言いだすタイミングを考えてると思う」

花丸「そうだね……ダイヤさんもちゃんとわかってる」

花丸「いやらしい目で見られてることも、一生懸命なことも」

花丸「だから、少しだけ付き合ってくれてるんだと思う」

花丸「ダイヤさんだもん。無情でもきっぱり断るはずずら」

花丸「それをしないのは、あの人が頑張ってるから――」

グイィ

花丸「!」
108: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/11(木) 06:27:17.13 ID:aucGrEXt
善子「あんた……何言ってんの?」

善子「あいつならダイヤを任せられるとか思ってるわけ?」

ルビィ「よ、善子ちゃんっ」ギュッ

ヒュッ

  ガンッ

ルビィ「痛っ」

善子「ダイヤが認めるとか思ってるわけ?」

善子「ふざけんじゃないわよ……」

花丸「あはは……ふざけてないずら」

善子「っ」ギリッ

グッ

花丸「いいよ、殴っても」ニコッ
110: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/11(木) 06:36:11.79 ID:aucGrEXt
ルビィ「やめて善子ちゃんっ」

ルビィ「お願いっ、お願いだからっ」

善子「………」イライラ

チラッ

ダイヤ「――――」

ギリッ

   グッ

善子「……はぁ」

善子「あんまりふざけたこと言わないで」

善子「今、あんまり機嫌よくないのよ」

善子「あんたも、邪魔しないで」ギロッ

ルビィ「っ!」

ルビィ「うぅ……」
111: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/11(木) 07:09:38.36 ID:aucGrEXt
花丸「ごめんねルビィちゃん」

花丸「つい、余計なこと言っちゃった」

ルビィ「ううん……言ってる通りだと、思う」

善子「………」

ルビィ「えっと、えっとね……断るつもりなのは変わってないけど」ビクビク

ルビィ「相手も無理にだったのか、自分の意志で来てるのか見極めたいんじゃないかなって」

ルビィ「多分、一生懸命なのは自分の意志だろうし、だからっ、お姉ちゃんは……」チラッ

ルビィ「み、認めるとかどうとかじゃなくて……考えてるんだと思う」

善子「……あんなやつ、さっさと断ればいいのに」

善子「希望も何も踏み躙っていいじゃない」

花丸「……分かってるくせに」

善子「うるさい」
112: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/11(木) 08:02:31.36 ID:dQ8P1Scd
ダイヤ「……すみません」

「どうかされたんですか?」

ダイヤ「わたくしはまだ、学業に専念したいと考えています」

ダイヤ「一生懸命であることは分かります」

ダイヤ「不得手なりに真摯に向き合おうとしてくださっているのもよく分かります」

ダイヤ「ですから、それを是非……」

ダイヤ「愛してくださるであろう女性に向けてあげてください」

「そんな……」

ダイヤ「その優しさとひた向きさがあれば」

ダイヤ「きっと、わたくしよりも良い女性に出逢えますから」

「く、黒澤さんより良い女性なんて……」

「一回……一回だけチャンスを頂けませんか!」

ダイヤ「チャンス……?」
113: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/11(木) 08:20:58.01 ID:qZgJPwet
「黒澤さんの学業に専念したいというお考えは理解しています」

「それをやめて欲しいなどとは口が裂けても言いません」

「……それでも、私は貴女が良いと思ってここにいる」

「一度で良い……一度だけ、デートをしていただけませんか?」

「来週の土曜日……朝10時に沼津駅でお待ちしています」

「それでも振り向かせることが出来なければ、素直に身を引きます」

「もちろん、来てくれなくても構いません」

「そのときは、自分には力不足だったのだと諦めます」

ダイヤ「………」

「お願いします」
114: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/11(木) 08:37:57.35 ID:qZgJPwet
善子「……言うだけ言って返事聞かずに帰ったわよ、あいつ」

花丸「そこも含めて、願ってるんだろうね」

花丸「思いを押し付けてるようなものだけど……」

ルビィ「でも、お姉ちゃんにあれはダメだよ」

ルビィ「ううん、良いのかな?」

善子「ダイヤが無視して行かないなんてできるわけない」

花丸「そうだね」

花丸「それに、来るかも分からずに待ち続けるのって辛いと思う」

花丸「……だから、行くと思う」

ルビィ「うん」

善子「ズル賢い奴ね……」

善子(行かなければ良いのに)
116: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/11(木) 08:53:51.11 ID:qZgJPwet
花丸「でも、なにもなくて良かったね」

花丸「終わることもなかったけど」

花丸「………」

花丸「……大丈夫だよ、善子ちゃん」ニコッ

善子「なにがよ」

花丸「ダイヤさんはあの人を選ばない」

花丸「大丈夫」

善子「当たり前でしょ」

善子(そうじゃなかったら……)

善子「あんたたちどうするの?」

ルビィ「え? あ、まさか」

ルビィ「もしかして次も付いていくの?」

善子「当たり前でしょ」

善子「ホテル連れ込まれるかもしれないじゃない」

花丸「それは大丈夫じゃないかなぁ……」

花丸「いずれにしてもマルは用事があるから無理ずら」
117: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/11(木) 09:02:39.87 ID:qZgJPwet
善子「あっそ」

善子「ルビィは?」

ルビィ「ルビィは……行こうかな」

ルビィ「善子ちゃん、カップルドリンクとか許せなそうだから」

善子「そんなの頼んだらぶっ飛ばすわよ」

善子「付き合ってるわけじゃないんだから」

善子「……許さない」

ルビィ「あはは……」チラッ

花丸「マルは用事があるから」

花丸「鞠莉ちゃん連れていくと良いんじゃないかな」

花丸「相手は車あるみたいだし」

花丸「万が一ドライブデートでも着いていけるよ」

善子「一理あるわね……」

善子(鞠莉は邪魔してきそうだけど)

善子(ずら丸か鞠莉ってだけの話)

善子(大差はない)

善子「それじゃ、取り敢えず声はかけておきましょ」

ルビィ「そうだね、それが良いよっ」
121: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/11(木) 12:33:55.70 ID:CGBf9/Lx
鞠莉「オーケー!」

鞠莉「そういうことなら協力するわ」

ルビィ「ありがとう鞠莉ちゃん」ギュッ

鞠莉「良いのよルビィ」ギューッ

ハグハグ…

善子「当日、ルビィはダイヤよりも先に家を出なさい」

ルビィ「お姉ちゃんの後じゃなくて?」

善子「先に出ておいた方が怪しくないわ」

善子「あんた、準備に時間かかるし」

善子「ダイヤに疑われると面倒だから」

善子「私と遊ぶことにしてさっさと出てきなさい」

ルビィ「うん……それなら善子ちゃんの家にいけば良い?」

善子「それで良いわ」
122: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/11(木) 12:39:07.98 ID:CGBf9/Lx
善子(まぁ先にって言っても)

善子(ダイヤも一緒に家を出てきそうだけど)

善子(心配だからとか)

善子(途中までは一緒だから。とか)

善子(ほんと妹ってだけで……)

善子「ルビィ」

ルビィ「なっ、なに?」ビクッ

善子「そんな怯えなくてもなにもしないわよ」

善子「それより、あんたが家を出るときにダイヤも出てくるかもしれない」

善子「その時は逃げずに一緒に行きなさい」

ルビィ「良いの? 先じゃないよ?」

善子「あんた、慌てるとボロ出すでしょ」

善子「向こうから来るならそれで良いわ」
123: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/11(木) 12:49:54.34 ID:CGBf9/Lx
善子「良い?」

善子「できる限り先に家を出なさい」

善子「ダイヤが出てくるなら一緒に来なさい」

善子「怪しまれないように出来るわね?」

ルビィ「う、うんっ頑張る」

鞠莉「……ふふっ」

鞠莉「善子、ダイヤのことに関してなら」

鞠莉「あの男の人よりストレートなんじゃない?」

善子「うるさい」

善子「鞠莉はできる限り派手なのは止めなさいよ」

善子「せめて帽子は被って来て」

鞠莉「パーカーフード?」

善子「は?」イラッ

鞠莉「oh! ジョーク! イッツジョーク!」

鞠莉「任せて!」ニコッ

善子(これならずら丸の方がマシね……)
124: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/11(木) 18:20:53.32 ID:CGBf9/Lx
善子「次は外」

善子「どこに行くか分からないし」

善子「どさくさに紛れて何をするか解ったものじゃない」

善子「油断するんじゃないわよ?」

善子「特に鞠莉」ジロッ

鞠莉「私?」

善子「今日みたいな甘い考えだけは止めて」

善子「そんな考えで私の邪魔をして」

善子「もし何かあったら」

善子「私はあんたを絶対に許さない」

鞠莉「……ええ」

鞠莉「肝に命じておくわ」

善子「どうだか」

善子「来週のこともあるし私は一足先に帰るわ」

ルビィ「うん、気を付けてね」フリフリ
125: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/11(木) 18:32:00.01 ID:CGBf9/Lx
鞠莉「………」チラッ

ルビィ「……」

鞠莉「……ねぇ、ルビィ」

ルビィ「なぁに?」

鞠莉「どうして善子と一緒に居られるの?」

鞠莉「怖くない?」

ルビィ「………」

ルビィ「善子ちゃんね? 本当は優しいんだよ」

ルビィ「お姉ちゃんが関わってる時も、すっごく真剣で厳しいけど……優しい」

ルビィ「……」

ルビィ「今みたいに怖いのは、ルビィは初めて見た」

ルビィ「花丸ちゃんに掴み掛かったりして」

ルビィ「止めてって言っても止めてくれなくて……」

鞠莉「そこまで……」

ルビィ「もしかしたらね?」

ルビィ「お姉ちゃんが誰かの恋人になっちゃうことが」

ルビィ「善子ちゃんは嫌なんじゃないかなって思う」
126: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/11(木) 18:43:08.99 ID:CGBf9/Lx
鞠莉「ん~」

鞠莉「善子がダイヤの前だと余裕なくなるのは知ってたわ」

鞠莉「……でも、ダイヤは」

ルビィ「お姉ちゃんがどうかしたの?」

鞠莉「ううん、なんでもない」

鞠莉「ダイヤがいなければ善子は普通に戻るのかしら」

鞠莉「……」

鞠莉「もしそうなら、もう少しの辛抱ね」ニコッ

ルビィ「東京の大学行っちゃうもんね……」

ルビィ「善子ちゃん、大丈夫かなぁ」

鞠莉「……最悪、ルビィが代わりになるしかないわね」クスッ

ルビィ「えぇぇっ!」

ルビィ「無理だよぉっ!」

鞠莉「案外うまくいくかもしれないわ」

鞠莉「ふふふっ」ニコニコ
134: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/12(金) 07:11:02.14 ID:HiQGJxX/
―浦の星女学院―
・翌日


ルビィ「え? 言わないの?」

善子「私たちが言わなくても、ダイヤが用事があるって切り出すと思う」

善子「そうすれば、確実に千歌辺りがそれなら休みにしよう。って言いだすはず」

善子「土曜日は基本的に練習してるから、偶にならって休みにして貰える」

善子「私達まで用事があるなんて言えば怪しまれるから、話の流れに任せましょ」

花丸「それで行くずらか?」

善子「最悪、1年生らしく子供みたいに休みたい連呼してれば鞠莉や果南を味方にできるでしょ」

ルビィ「鞠莉さんはもともと味方で」

ルビィ「曜ちゃんは千歌ちゃんの味方だよね」
135: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/12(金) 07:22:07.50 ID:HiQGJxX/
花丸「そうなると、梨子ちゃんと果南ちゃんがネック」

花丸「果南ちゃんを味方にできれば勝ったも同然ずらね」

善子「果南は鞠莉が懐柔するだろうけど」

善子「私たちが喚くのは、鞠莉が役に立たなかったときだけよ」

ルビィ「や、役立たずは言いすぎじゃないかな……」
善子「事実でしょ」

善子「で、多分これは梨子……かしらね」

善子「みんなは? とか意見聞いてくるだろうから」

善子「偶になら……とか休みに同意しておけばいいわ」

ルビィ「用事があるっていうのだけはだめだね」

善子「そういうこと」
136: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/12(金) 07:23:09.80 ID:HiQGJxX/
善子(とはいえ……果南は察してくれるでしょうね)

善子(鞠莉とつながってるわけだし、ずら丸に話してるわけだから)

善子(……2年生組は役に立たない)

善子(ダイヤに縁談があったことすら気付いていないかもしれない)

善子(まぁ、邪魔さえしてこなければいい)

善子(チーム練習とか、作曲)

善子(梨子なんかはそれで誘ってくるのが厄介なのよね)

花丸「いっそ、みんなを巻き込んじゃうのは?」

善子「は?」

花丸「千歌ちゃんや曜ちゃんは喜んで乗ってくるずら」

花丸「カモフラージュに使えるんじゃないかな」

善子「その二人はリスクが高すぎる」

善子「ノリが良いのは同意するけど、はっきり言って邪魔よ」

善子(ただでさえ、鞠莉がいるのに)

善子(これ以上厄介な足手纏い増やすなんてお断りよ)
137: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/12(金) 07:29:22.97 ID:HiQGJxX/
ルビィ「大人数になると、バレやすくなりそう……だね」

善子「でしょうね」

善子「周りの目も引くだろうし、邪魔でしかないわ」

花丸「梨子ちゃんが聞いたら怒りそうずらね」クスッ

ルビィ「笑い事じゃないよぉっ」

ルビィ「善子ちゃん、もうちょっと優しく言おう? ねっ?」

善子「邪魔なのは事実でしょ」

善子「特に、半端に常識的な奴らなんて相手するのも面倒くさいわ」

花丸「誰のことを言いたいのか、何となくわかる」

ルビィ「えぇ……駄目だよぉっ」

善子「邪魔なものは邪魔、それだけよ」

ルビィ「う~っ」
138: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/12(金) 08:00:58.15 ID:EcvYNdCm
ーーーーー
ーーー
ーー

ルビィ「花丸ちゃんは、今の善子ちゃんの方が好き?」

花丸「どうしたの? 急に」

ルビィ「なんか、嬉しそうというか楽しそうだから」

花丸「……あぁ」

ルビィ「怒鳴られたり、捕まれたり、殴られそうになったりして」

ルビィ「なのに笑ってて、挑発するみたいなことしてて……」

ルビィ「善子ちゃんだって手を出すことはあるって」

ルビィ「花丸ちゃんも、知ってるのに」

花丸「別にマルは怒鳴られても良いし、殴られても良いよ」ニコッ

ルビィ「っ……そういうの、良くないよ」
139: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/12(金) 08:04:50.34 ID:EcvYNdCm
花丸「どうして?」

ルビィ「え?」

花丸「どうして良くないの?」

花丸「善子ちゃんは怒鳴りたい、殴りたい」

花丸「そうすることで鬱憤を晴らしたい」

花丸「それをマルは受けてあげたい」

花丸「ただ、それだけだよ?」

ルビィ「い、痛いよ……痛いし、怖い」

ルビィ「善子ちゃんも花丸ちゃんも痛いよっ」

ルビィ「そんなことしちゃダメだって、止めてあげるべきだよ」
140: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/12(金) 08:11:21.48 ID:EcvYNdCm
花丸「止めて、どうするの?」

花丸「万が一に止まってくれたとして、我慢してくれたとして」

花丸「溜まりに溜まったそれが爆発しない保証はできる?」

花丸「爆発しちゃったときの責任はとれる?」

花丸「今でも善子ちゃんが縁談の相手を殺しちゃいそうだって解ってるずらか?」

ルビィ「それは……」

ルビィ「……でもっ」

花丸「それすらも止める?」

花丸「マルは殴られたり、怒鳴られたりするだけで済むけど」

花丸「そこまで来たらルビィちゃん、殺されるよ?」
141: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/12(金) 08:22:13.11 ID:EcvYNdCm
ルビィ「………」グッ

花丸「良いよね、正しい人は」

花丸「万人向けの不出来な正義を盲信して」

花丸「これがこうだから、それがそうだからって」

花丸「無理矢理押し込もうとする」

花丸「知ってる?」

ルビィ「な、何を?」

花丸「そんなの全部、その場しのぎなんだよ」

花丸「自分の目の前ではやるな、他所では知らない」

花丸「そこで溜め込んだ怒りがどこでどうなるかなんて知ったことじゃない」

花丸「……偽善者」ニコッ
143: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/12(金) 08:32:26.36 ID:EcvYNdCm
ルビィ「花丸ちゃん……?」

花丸「殺されるよって聞いてどう思った?」

花丸「自分には無理だって思ったよね?」

花丸「自分は嫌だって、思ったよね?」

花丸「そういうところずら」

花丸「偽善者は良く言うよね」

花丸「自分のしたことには責任を取れって」

花丸「でも、誰かの小さな暴力を大きくさせた責任は」

花丸「誰もとろうとしない」ガタッ

ルビィ「っ」ビクッ

花丸「自分達の中途半端な正義で固められた憎悪だなんて、考えようともしない」
144: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/12(金) 08:43:23.33 ID:EcvYNdCm
花丸「良いよ、止めたら良い」

花丸「それがどれだけ大きくなるか考えもせず」

花丸「危ないことを止めたんだって誇ってなよ」

花丸「その人の起こした大きな爆発を見て」

花丸「あの時止めて置いて良かった。って安堵してなよ」

花丸「大きな被害の責任を取って死刑になれと罵倒しなよ」

花丸「自分が産んだ子供の将来を望むように」

花丸「自分が産んだ犯罪者の将来を望みなよ」

ルビィ「違っ……ルビィは……」

花丸「大丈夫、正しいずら」

花丸「ルビィちゃんはなにも間違ってない」

花丸「正しく偽善者であるだけ」ニコッ

花丸「暴力を振るいそうな犯罪者の善子ちゃん」

花丸「それを受けようとする気の狂ったマル」

花丸「それが、おかしいだけだから」
145: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/12(金) 09:01:35.19 ID:EcvYNdCm
ルビィ「違うっ」

ルビィ「ルビィは、ルビィはただね……」ポロポロ

ルビィ「痛いの嫌だから…怖いから……」

ルビィ「だからーー」

花丸「うん、解ってるよ」

花丸「大丈夫」

花丸「ルビィちゃんが堪えられないのは解ってる」

花丸「だから、ルビィちゃんに矛先が向いたときは止めるし」

花丸「自分に向くようにする」

花丸「マルは殴られて良いから、怒鳴られて良いから」

花丸「それが最終的に、善子ちゃんと一緒にいられる未来に繋がってるって信じてるから」

花丸「だから……ね?」

ルビィ「花丸ちゃーー」

花丸「中途半端な気持ちで邪魔しないでよ」ニコッ
146: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/12(金) 09:13:48.66 ID:EcvYNdCm
ルビィ「なんで……」グスッ

ルビィ「なんでっ!」

花丸「……マルは善子ちゃんと一緒に居たいから」

花丸「マルは善子ちゃんと一緒にいるためなら痛くても辛くても苦しくても平気」

花丸「善子ちゃんの幸せのためならなんだって出来る」

花丸「ルビィちゃん言ったよね」

花丸「今の善子ちゃんの方が好き? って」

花丸「好きだよ」

花丸「どんな善子ちゃんでも善子ちゃんは善子ちゃんだし」

花丸「ダイヤさんの為に一生懸命なところは格好良くて、可愛くて」

花丸「何かあるたびにちょっぴり荒れちゃう一心不乱なところがドキドキさせられる」

花丸「犯罪者にしたくないマルが邪魔で」

花丸「怒鳴って、胸ぐらを掴んで殴ろうとして」

花丸「殴り飛ばせない優しさが愛しい」

花丸「……黒澤妹って特権が羨ましいよ」

花丸「その分恨まれてるから、マルがされない暴力をルビィちゃんは受けられるんだから」

花丸「勿体無いよね」

ルビィ「ひっ……」ゾクッ
149: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/12(金) 12:21:28.11 ID:EcvYNdCm
ルビィ「じゃ、じゃぁ……」ドキドキ

グッ

ルビィ「っ」

ルビィ「も、もしかして……」

ルビィ「花丸ちゃんは、善子ちゃんみたいに」

ルビィ「善子ちゃんの気を引くお姉ちゃんが憎いの?」

花丸「え? なんで?」

ルビィ「え……?」

ルビィ「だ、だって善子ちゃんが好きなんだよね?」

ルビィ「そんな……色々できるくらい」

花丸「うん」

ルビィ「だったら、善子ちゃんに好きになって欲しいって思わないの?」

ルビィ「その気持ち? が、向けられてるお姉ちゃんが嫌いじゃないの?」

花丸「嫌いじゃないよ?」ニコッ

ルビィ「え? な、なんで?」

ルビィ「おかしい……よ、ね?」
150: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/12(金) 12:30:11.27 ID:EcvYNdCm
花丸「だって、ダイヤさんを好きな善子ちゃんだからこそ」

花丸「マルはその情熱的で過激で、熱烈で」

花丸「地獄に落ちることも厭わない憎悪と、怒り」

花丸「そしてなにより、それに勝る想う気持ちを見られる、感じられる」

花丸「それは、マルと両想いでは見ることさえできない善子ちゃんの姿」

花丸「ダイヤさんはそんな魅力を引き出してくれた恩人」

花丸「だから、好き」

花丸「だから、善子ちゃんのために縁談の邪魔をする」

花丸「その協力をする」

花丸「マルはね? むしろ、善子ちゃんのダイヤさんを横取りする人が嫌い」

花丸「ダメだよ……取っちゃダメ」

花丸「そんなこと許されないよ……」ギリッ

ルビィ「っ!」

花丸「善子ちゃんのダイヤさんを守るためなら」

花丸「マルは人だって、殺せるよ」
153: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/12(金) 12:50:45.25 ID:EcvYNdCm
ルビィ「なんでそんなこと平気で言えるの……?」

ルビィ「おかしいよ」

ルビィ「花丸ちゃん、おかしいよ!」

花丸「だから、なに?」

ルビィ「な、なにって……」

花丸「おかしかったらなに?」

花丸「ダメ? 許されない? 犯罪者?」

花丸「正しいけど、正しいことが正しいわけじゃないよ」ニコッ

花丸「少し冷静になった方が良いずら」

ルビィ「冷静……?」

ルビィ「冷静になるのは……」ズキズキ

花丸「ルビィちゃんだよ?」

ルビィ「え……」

花丸「泣いたり、怒ったり」

花丸「汗も凄いよ? 大丈夫?」
154: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/12(金) 12:58:28.17 ID:EcvYNdCm
ルビィ「うぅ」フルフル

ルビィ「わからない……」

ルビィ「花丸ちゃん達のことぜんぜんっ」

ルビィ「分からなくなっちゃった……」

花丸「分かることなんて無理だよ」

花丸「だってルビィちゃんは正しくて、マルは間違ってるんだから」

花丸「正義が出来るのは、悪を裁くことだけ」

花丸「悪の理解は、正義のすることじゃない」

ルビィ「あ、悪だって言うなら……止めようよっ」

ルビィ「もう、止めてよっ」

花丸「それは出来ないずら」

花丸「だって、マルの幸せはここにあるんだから」

ルビィ「………」

花丸「ルビィちゃんにとっての悪こそが、マルの正義なんだから」

花丸「……後戻りなんて、出来ないよ」ニコッ
157: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/12(金) 18:57:59.06 ID:EcvYNdCm
ーーーーー
ーーー
ーー

トボトボ…

ルビィ(おかしいよ……こんなのおかしいよ)

ルビィ(花丸ちゃんは自分がおかしいってわかってた)

ルビィ(間違ってるって、狂ってるって自分で言ってた)

ルビィ(それなのに……)

ルビィ(人を好きになるって、こんなことになっちゃうことなの?)

ルビィ(お姉ちゃんも……ルビィも誰かを好きになったら、狂っちゃうのかな……)

ルビィ(やだ……)

ルビィ「そんなの……」グスッ

ダイヤ「ルビィ?」

ルビィ「!」ビクッ

グシグシ

ダイヤ「貴女泣いてーー」

ルビィ「ないよ!」

ルビィ「泣いて……ないよ」ジワッ

ルビィ「泣いてなんか」ポロポロ

ダイヤ「……」ギュッ

ルビィ「ぁ」

ダイヤ「……ええ、そうですわね」

ダイヤ「わたくしの目には、泣いている顔なんて写っていませんわ」

ルビィ「うぅ……うわぁぁぁぁん……!」ギュッ

ダイヤ「………」ナデナデ
158: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/12(金) 21:24:58.20 ID:EcvYNdCm
ダイヤ「………」

ルビィ「………」グスグス

ダイヤ「………」

ルビィ「……友達の、話なんだけどね」

ダイヤ「ええ」

ルビィ「好きな人が、いるって話になったんだ」

ダイヤ「好きな人……?」

ダイヤ「え……」

ルビィ「その子がね? 好きな人の為ならなんでもできるって」

ルビィ「悪いことも、なんでも」

ルビィ「犯罪だってできるって……言ってたの」

ダイヤ「それは…」

ルビィ「好きな人が出来ると、そうなっちゃうのかな……」

ルビィ「変わっちゃうのかな……?」
159: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/12(金) 21:29:52.33 ID:EcvYNdCm
ダイヤ(友達の話と言いつつ)

ダイヤ(自分の話かと思ったけれど……邪推だったわね)

ダイヤ(善子さん? それとも花丸さん?)

ダイヤ(ルビィがここまで悩むなんて……Aqoursの誰か)

ダイヤ(あのみんなが、犯罪だなんて)

ダイヤ(………)

ダイヤ(あぁ、花丸さんですわね)

ダイヤ(きっと文学的な言い回しをしたのね)

ダイヤ「大丈夫ですわ」

ダイヤ「犯罪を犯すなんて、言葉のーー」

ルビィ「違う!」

ダイヤ「っ!?」ビクッ

ルビィ「あれは本気だった!」

ルビィ「本気で言ってたの!」ダンッ
160: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/12(金) 21:41:40.72 ID:EcvYNdCm
ダイヤ「ル、ルビィ?」

ルビィ「痛いことも苦しいことも平気だって言ってた!」

ルビィ「好きな人の為なら人を殺せるよって言ってた!」

ダイヤ「ルビィ……」

ルビィ「おかしいってわかってた」

ルビィ「間違ってるって! 悪いことだってわかってた!」

ルビィ「狂ってるってわかってた!」

ルビィ「なのに!」

ダイヤ「ルビィ!」

ルビィ「……!」

ダイヤ「落ち着いて、ね?」

ダイヤ「大丈夫、お姉ちゃんがいるから」

ルビィ「……で」フルフル

ダイヤ「え?」

ルビィ「なんで」

ルビィ「なんでなんでなんで!」

ルビィ「なんでルビィがそんな目で見られなくちゃいけないの!?」
161: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/12(金) 21:52:42.88 ID:EcvYNdCm
ルビィ「おかしいのはみんななのに!」

ルビィ「自分でおかしいって言ってたのに!」

ルビィ「なんで、ルビィが心配されてるの?」

ルビィ「なんで?」

ルビィ「ルビィがおかしいの?」

ルビィ「あはは……」ポロポロ

ルビィ「ルビィがおかしいのかな」

ルビィ「ルビィが、おかしいんだ」

ルビィ「だって、そう言ってた」

ダイヤ(精神が不安定過ぎる……!)

ダイヤ(どうして? なぜ……)

ダイヤ(落ち着いて。という言葉がスイッチだなどと誰が解るものですか!)

ダイヤ「ルビィは……」グッ

ダイヤ(言葉をかけるのが怖い)

ダイヤ(次も選択を間違えたら……)

ダイヤ(……でも、ルビィの発言を認めたら後戻りはできなくなる)

ダイヤ「……ごめんなさい、ルビィ」

ダイヤ「詳しい話を聞いていないから、わたくしにはどちらとも言いがたいですわ」

ダイヤ(最低の先伸ばし……ですが、虎穴に入る他に退路はない)
162: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/12(金) 22:08:59.61 ID:EcvYNdCm
ルビィ「ううん、大丈夫」

ルビィ「大丈夫、もう平気……」

ダイヤ「何が……」

ダイヤ(何が、大丈夫だと……?)

ルビィ「言ってたこと、解ったんだ」

ルビィ「溜め込んじゃいけない」

ルビィ「溜め込んだら溜め込んだだけ大きくなって爆発しちゃう」

ルビィ「犯罪者になっちゃう……」

ルビィ「言ってた通りだった」

ダイヤ「………」

ルビィ「大きな声出したら、なんだかスーってなっちゃった」

ルビィ「ありがとう、お姉ちゃん」ニコッ

ダイヤ「え……あの……」

ダイヤ(何が大丈夫? 何が平気?)

ダイヤ(ルビィのなにかが壊れてしまった気がするのに……)

ダイヤ(かけてあげられる言葉が……見つからない……)
164: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/12(金) 22:22:57.46 ID:EcvYNdCm
ダイヤ(放課後にでも花丸さんに話を聞きましょう)

ダイヤ(なにを悠長な……とは思いますが)

ダイヤ(何がスイッチかわからない今)

ダイヤ(無闇に刺激したくない……)

ダイヤ(ルビィとなにか話したか)

ダイヤ(ルビィとなにか無かったか)

ダイヤ(……あの様子)

ダイヤ(率直に詰め寄った方が良さそうですわね)

ダイヤ(はぐらかされても困る)

ダイヤ(……好きな人)

ダイヤ(花丸さんの好きな人とは、誰なのかしら)

ダイヤ(犯罪……人殺し……)

ダイヤ(恋は人を狂わせるとは言いますが)

ダイヤ(流石に、そこまでなんて言うのは普通じゃありませんわ)
165: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/12(金) 22:32:08.43 ID:EcvYNdCm
ーーーーー
ーーー
ーー


ダイヤ「というわけですわ、花丸さん」

ダイヤ「ルビィに何をしたんですの?」

花丸「ルビィちゃんがそんなことになるようなことは、してないずら」

花丸「ただ、マルはマルの気持ちを話しただけ」

花丸「人を好きになるってどういうことか」

花丸「マルにとっての恋とは、どう言うものか」

ダイヤ「……人を殺せると?」

花丸「愛憎劇は王道ずらよ?」

ダイヤ「小説などーー」

花丸「うん」

花丸「所詮フィクションずら」

花丸「人間の理想で作り上げられた、リアルの模造品」

花丸「だからこそ、見れるし読める」

花丸「本当の愛憎劇を経験した人はきっと言うよ」

花丸「バカじゃないのか? こんな程度でなに騒いでるんだって」

ダイヤ「………」

花丸「ダイヤさんなら、解るはずずら」

ダイヤ「何を、ですか?」

花丸「現実はもっと、意地汚くて醜悪だって」ニコッ
166: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/12(金) 22:41:24.87 ID:EcvYNdCm
ダイヤ「……!」ゾクッ

ジリッ

ダイヤ「貴女……」

ダイヤ(あぁ……これですか……)

ダイヤ(ルビィが触れてしまったモノは)

ダイヤ(狂っている……狂っているのに自信に満ちている)

ダイヤ(あたかも己が誤りであるかのような不安感)

ダイヤ(その原因は)チラッ

ダイヤ(花丸さんの表情に見える……残酷なほどに澄みきった悪意)

ダイヤ(ルビィが泣くのも当然)

ダイヤ(ルビィの中で何かが崩壊してしまうのも)

ダイヤ(落ち着いてという言葉がキーワードだったのも……)

ダイヤ(なんてこと)

ダイヤ(恐ろしいのは、自分が原因であることを自覚してなお微塵も揺るがない姿)

ダイヤ(……むしろ愚かだと、自分自身を責めたくなる)
168: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/12(金) 23:08:28.15 ID:HiQGJxX/
花丸「もちろん、ルビィちゃんにそこまでの話はしてないよ」

花丸「ただ、心が叫びたがっている人を無理に止めるのは良くないこと」

花丸「止めるだけ止めて、最後まで面倒を見てあげないのは偽善者でしかない」

花丸「その偽善は、大きな犯罪につながるんだよ。って、教えてあげただけ」

ダイヤ「教えてあげただけ……?」

ダイヤ「ルビィが、ルビィがそれでどれだけ悩んだか……」

花丸「マルはルビィちゃんは間違ってないよ? って教えてあげたずら」

ダイヤ「間違っていない……ええ、そうでしょう」

ダイヤ「貴女は狂っていますわ」

ダイヤ「でも、その自信に満ちた表情で」

ダイヤ「わたくしよりも、ルビィよりも真っ直ぐな平静さを示されたら……」

花丸「自分が間違ってると、思うずらね」

花丸「でも、大丈夫」

ダイヤ「何が大丈夫なんですか……っ」グッ

花丸「ルビィちゃんも発散することを覚えただけ」

花丸「ルビィちゃんみたいに、ニコニコしてる人の方が」

花丸「ためこんだ人間らしさの暴走は恐ろしい」

花丸「少し叫んだくらいで、泣いたくらいで、慌ててどうするずら」
169: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/12(金) 23:17:26.76 ID:HiQGJxX/
ダイヤ「ぐっ……」ギリッ

花丸「ダイヤさんも、我慢しなくていいずらよ?」ニコッ

ダイヤ「は……?」

花丸「噛みしめた奥歯の痛み、作った握り拳」

花丸「固く閉ざしたそれをこじ開けるより、正しい使い方をしたほうが良いずら」

ダイヤ「なにを、言ってますの?」

花丸「マルが憎いんだよね?」

花丸「ルビィちゃんの純粋さを穢して、人間らしくしたマルが」

花丸「だったら、殴ればいい」

花丸「罵倒して、怒りをぶつけて、土下座を要求したらいい」

花丸「マルは受けてもいいよ?」ニコッ

ダイヤ「っ」ビクッ

ダイヤ(なんて、恐ろしい)

ダイヤ(花丸さん……貴女と言う人は……)
170: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/12(金) 23:31:53.61 ID:HiQGJxX/
ダイヤ(認めたくない)

ダイヤ(けれど、花丸さんが言っていることも強ち間違いではない)

ダイヤ(辛さを吐き出さないと、壊れてしまう)

ダイヤ(その弱音を、愚痴を)

ダイヤ(無意識にとはいえ、周囲の人間が吐き出せないようにしてしまうことがあるのもまた事実)

ダイヤ(それがやがて、取り返しのつかないような結果を引き起こすことだって……)

ダイヤ(花丸さんは全部分かっていながら、ルビィを追い詰めたのでしょう)

ダイヤ(いえ、追い詰めるという結果を知りながら、この話をしたのでしょう)

ダイヤ(……残酷だわ。あまりにも)

ダイヤ(でも、花丸さんはそのことに微塵の罪悪感も感じていない)

ダイヤ(かといって、誇っているわけでもない)

ダイヤ(ただただ、それが自分のなしたことであるという責任だけを掲げて見せている)

ダイヤ(文句があるならどうぞこちらへ。言葉も拳も受け入れます。と)

ダイヤ「ルビィは……ルビィはもう、戻りませんか?」

花丸「人間、堪えるだけじゃダメなんだって大事なことを忘れさせるなんて、ダイヤさんは酷いお姉ちゃんずらね」

ダイヤ「……挑発には、乗りませんわ」
171: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/12(金) 23:43:51.27 ID:HiQGJxX/
花丸「そんなつもりはないずら」

花丸「ただ……ルビィちゃんみたいに関係ない人に怒鳴るのはダメずらよ?」

ダイヤ「………」

花丸「マルに怒鳴って、殴って」

花丸「それで済ませれば何も変わりなく、終わる」

花丸「でも下手に我慢すると……ね?」

ダイヤ(分かるよね? と、花丸さんの笑みが問いかけてくる)

ダイヤ(泣いて、狂ったように怒鳴って)

ダイヤ(落ち着いたかと思えば、笑って……)

ダイヤ(それはなんて、恐ろしいものだろうか……)

ダイヤ(ルビィ……)

ダイヤ「ルビィは、わたくしが取り戻しますわ」

花丸「取り戻すも何も、それが――」

ダイヤ「お黙りなさい」

ダイヤ「何と言おうと、あのようなルビィのままにはしておけません」

花丸「……そっか」

花丸「間に合うと、良いずらね」

ダイヤ「東京に行くまでまだ猶予はあります……何とかしますわ」

花丸「………うん」ニコッ
172: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/12(金) 23:53:08.53 ID:HiQGJxX/
ーーーーー
ーーー

ー黒澤邸ー



ダイヤ「……どうしたものでしょう」

ダイヤ(花丸さんと別れた後、向かった生徒玄関口)

ダイヤ(下駄箱から靴を取り出した瞬間、落ちてきた便せん)

ダイヤ(可愛らしい見た目と、小さくきれいな字)

ダイヤ(そもそも女生徒のみのこの学院で、この贈り物……)

ダイヤ「……見ないわけにはいきませんわね」

ダイヤ(ルビィのこともあるのに)

ダイヤ(そう、煩わしさを抱いてしまいそうになるのは……花丸さんの思い通り?)

ダイヤ「っ」フルフル

カサッ
   カサカサッ

ダイヤ(わたくし宛……ですが、差出人の名前は無し)

ダイヤ「……お伝えしたいことがあります。ですか」
173: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/13(土) 00:05:57.75 ID:qFZ1K1Ex
ダイヤ(入れ物に相応しく、入れられていた手紙もまた可愛らしいもので)

ダイヤ(当然のことながら、とても丁寧な字)

ダイヤ(書かれていたのはとても簡潔)

ダイヤ(土曜日に、浦の星女学院最寄りのバス停で待っています……と)

ダイヤ(人が確実にいない日を狙っての土曜日なのでしょうが)

ダイヤ(あいにくとその日は……)

ダイヤ「………」フルフル

ダイヤ「夕方にはデートも終わるはずですから」

ダイヤ「せめて、そのあとにすぐ向かいましょう」

ダイヤ「相手がわかれば都合が悪いことも伝えられるのに……」

ダイヤ(女の子同士の恋愛……)

ダイヤ(……まさか、善子さんから?)

ダイヤ(いえ、まさかそんなはずはない)

ダイヤ(わたくしにその気がないことは伝えていますし、あの話だってただの冗談だったんですから)

ダイヤ「どうしてこうも、立て続けに問題が積み重なっていくのでしょうか」

ダイヤ(縁談、ルビィのこと、ラブレターのこと)

ダイヤ(ストレスの発散……)

ダイヤ(やっぱり、花丸さんの言葉は決して間違ってはいない)

ダイヤ(ルビィのそれを認められないのは……エゴ。なのかしら)
178: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/13(土) 09:29:10.72 ID:qFZ1K1Ex
―浦の星女学院―
・翌朝


善子「ルビィ、ダイヤに何かあったりした?」

ルビィ「う~ん……なんか悩んでるような感じだったよ」

ルビィ「困っているというか、なんというか」

ルビィ「聞いてないから詳しくは分からないけど」

善子「そう……デートの件は?」

ルビィ「なんにも」

善子「デートのことで悩んでるとかじゃないわよね?」

ルビィ「さぁ?」

善子「………」

善子「……あんた」

ルビィ「なぁに?」ニコッ

善子「いや、なんでもない」

ルビィ「えー気になるなぁ」

善子「何でもないわよ」

善子「なんか笑ってるから、何かあったのかと思っただけ」

善子「ダイヤのデートがなくなったとか、東京行かなくなったとか」

ルビィ「それで喜ぶのは善子ちゃんたちだけだよ」
179: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/13(土) 09:45:18.80 ID:qFZ1K1Ex
ルビィ「善子ちゃんはさ、お姉ちゃんが東京に行くのは平気なの?」

善子「………」

ルビィ「お姉ちゃんが恋人作るのはダメだって」

ルビィ「お見合いとかもダメだって」

ルビィ「凄く、頑張ってるけど」

ルビィ「東京に行ったら、善子ちゃんの目には見えないところでどうにもなっちゃうよね」

善子「……分かってるわよ。そんなこと」

ルビィ「どうしようもないから、諦めるの?」

ルビィ「もしかして、自分の目の届かない場所に行くからもういいやって――」

バンッ
      エ?ナニ?
    ケンカ?

善子「そんなわけ、ないでしょ」

ルビィ「……教室だよ?」

善子「………」

ルビィ「ルビィね、昨日ずーっと考えたんだ」

ルビィ「善子ちゃんはどこまで本気なんだろう」

ルビィ「善子ちゃんの好きって気持ちは向けられているものよりもずっと、ずーっと大きいのかなぁって」

ルビィ「ルビィたちの今までの関係なんて、ゴミみたいに思えるくらいに大切なのかなって」
180: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/13(土) 09:59:25.47 ID:qFZ1K1Ex
ルビィ「でもきっと、善子ちゃんにとってはゴミですらないんだよね」

ルビィ「だって、ゴミは目に入るもん」

ルビィ「ゴミのせいで泣いちゃうことだってあるもん」

ルビィ「……それよりもずっと小さくて、どうでもいい」

ルビィ「踏み躙っても気にも留めない雑草のようなものだよね」

善子「なんなのよ、急に」

ルビィ「考えてみたら、いろいろ言いたいことはあったんだなぁって」

ルビィ「でも、どうにかなっちゃうのが怖くて、言えなくて」

ルビィ「それなのにどんどん変わっていっちゃうから……痛くて」

ルビィ「……疲れちゃった」

ルビィ「善子ちゃんと花丸ちゃん。二人と一緒に居られるのが好きだった」

ルビィ「二人のことは好きだった、大切なお友達だった」

ルビィ「ううん、そう思ってた。二人もそうなんだろうなって、勝手に思ってた」

ルビィ「でも、ルビィは部外者なんだよね?」

善子「何言ってんの?」

ルビィ「黒澤ダイヤの妹。ただそれだけなんだよね」

ルビィ「……ねぇ、善子ちゃん」

ルビィ「お姉ちゃんがいなくなれば、ルビィはルビィになれる?」

ルビィ「また、今まで見たいな三人に戻ることってできる?」
181: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/13(土) 10:21:59.77 ID:qFZ1K1Ex
善子「急に意味わからないこと言われても困るんだけど……」

善子「あんたはあんたよ」

善子「私は別に、あんたがダイヤの妹だから付き合ってるわけじゃない」

善子「……というか」

善子「私とダイヤが会ったのは、あんたと仲良くなってからでしょ」

善子「ダイヤはダイヤ、あんたはあんた」

善子「ダイヤがいてもいなくてもそれが変わることはないし」

善子「あんたをダイヤの代わりにするなんてこともあり得ない」

善子「でも、アンタが言ってることは間違ってない」

善子「わたしはあんたよりも、ダイヤが好き」

善子「だから、どちらかしか選べないなら、ダイヤを選ぶ」

善子「……東京に行くわよ。私」

ルビィ「え?」

善子「ダイヤを追いかけて東京に行く」

善子「梨子が東京からこっちにこれたなら、逆もできるはず」

善子「せっかく廃校になるんだから、それをうまく使って私は東京に行く」

善子「親にもあんたにも、ダメとは言わせない」

善子「私は、諦めたくなんかないのよ」

善子「ダイヤを、誰にも渡したくないのよ……」
183: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/13(土) 11:30:18.47 ID:zZgwhqDs
ルビィ「……そっか」

ルビィ「ねぇ、善子ちゃん」

善子「なに?」

ルビィ「善子ちゃんはお姉ちゃんがどうなってても好き?」

善子「なにそれ、どういう意味よ」

ルビィ「よくある話だよ」

ルビィ「事故で足が無くなっちゃうとか」

ルビィ「病気で話せなくなったり、目が見えなくなったり」

ルビィ「障害者になった瞬間、隣からいなくなっちゃうような人」

ルビィ「……黒澤家は、ルビィが知ってるよりも大変で」

ルビィ「障害者を養うより大変かもしれない」

ルビィ「善子ちゃんはそれでも諦めないのかなって」
184: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/13(土) 11:41:03.91 ID:zZgwhqDs
善子「……諦めない」

善子「諦めるしかないことを諦めてない私が」

善子「親の反対を押し切ってでも東京についていこうとしてる私が」

善子「その程度で諦めると思う?」

ルビィ「……そうだね」

ルビィ「そうだよね」ニコッ

ルビィ「善子ちゃんの好きは……」

ルビィ「それなら」ボソッ

ガラッ

花丸「おはよう、善子ちゃん、ルビィちゃん」

善子「ん」

ルビィ「おはよー」ニコッ

ルビィ「今日は遅かったね」

花丸「図書室に寄ってたずら」

花丸「貰う本の選別しておこうかなって思って」
185: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/13(土) 11:51:42.51 ID:zZgwhqDs
善子「あぁ……例の」

善子「なんなら放課後にでも手伝うわよ?」

花丸「えっ?」

善子「なによ……」イラッ

花丸「よ、善子ちゃんがおかしい……!」

ルビィ「……えへへ」ニコニコ

善子「あんたに文句言われたくないだけよ!」

善子「ダイヤのことで手を借りてると言えば借りてるし」

善子「自分は手伝うのに善子ちゃんは手伝ってくれないんだ。とか」

善子「善子ちゃんのせいで終わらないとか」

善子「難癖つけられたくないだけよ」

善子「それに、ダイヤの方もしばらく動きはなさそうだし」

善子「どうするのよ」

善子「要る? 要らない?」

花丸「うーん」

花丸「要るずら」ニコッ

ルビィ「うんうん」

ルビィ「これだよ……えへへっ」
186: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/13(土) 12:24:34.62 ID:zZgwhqDs
ーーーーー
ーーー
ーー

ルビィ(善子ちゃん達は図書室)

ルビィ(ルビィは邪魔にならないように……)

ルビィ(善子ちゃん、お姉ちゃんが関わらなければ優しいんだよね)

ルビィ(普通、だったんだよね)

ルビィ(鞠莉ちゃんが言ってたことも冗談じゃ無いかもしれない)

ルビィ(お姉ちゃんがここにいてくれれば)

ルビィ(善子ちゃんもここにいてくれる)

ルビィ(黒澤家のしがらみがなくなれば、お姉ちゃんは自由になる)

ルビィ(そうしたら)

ルビィ(もしかしたら元に戻るかもしれない)

ルビィ(そのためなら)

ルビィ(取り戻す為なら……ルビィは)

ルビィ「……」チラッ

ルビィ(放課後は、生徒会室だったよね?)

コンコン
    ガラッ

ルビィ「しつ……あっ、居た」

ダイヤ「ルビィ?」

ルビィ「お姉ちゃん、ちょっと……良いかな?」

ルビィ「お話がしたいから、ちょっと来て」
187: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/13(土) 12:56:29.54 ID:zZgwhqDs
タンッタンッタン…
  タッタッタッ…

ダイヤ「………」

ルビィ「………」

ダイヤ「……ルビィ」

ダイヤ「ルビィ、いい加減良いのでは?」

ダイヤ「屋上は締まってーー」

ガチャガチャ
    カチッ

ダイヤ「なっ」

ルビィ「廃校しちゃうから記念にって言ったら借りれたよ?」ニコッ

ダイヤ「貴女……」

ルビィ「大事な話があるから」

ルビィ「屋上なら、誰にも聞かれないでしょ?」

ダイヤ「家でも良いのに」

ルビィ「家じゃ、ダメだよ」

ルビィ「……大事な話だから邪魔されたくない」
191: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/13(土) 18:23:54.94 ID:1rdo3HqP
ルビィ「大事なことだから、率直に言うね?」

ルビィ「お姉ちゃん、東京にいくの止めて欲しいんだ」

ダイヤ「花丸さんのことですか?」

ダイヤ「花丸さんが、そうしなければ何かすると?」

ルビィ「ううん、花丸ちゃんはなにも言ってないよ」

ルビィ「ルビィが自分で考えて」

ルビィ「お姉ちゃんが東京にいかなければ良いんだって思った」

ダイヤ「わたくしの所在で何がどうなると?」

ルビィ「うん」ニコッ

ルビィ「みんなの関係が壊れるんだ」

ダイヤ「え?」

ダイヤ「……壊れる? みんなが?」

ダイヤ「わたくしが居るか居ないかで?」

ダイヤ「何をバカなことを……あり得ませんわ」
192: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/13(土) 18:29:49.72 ID:1rdo3HqP
ルビィ「お姉ちゃんは何も分かってない」

ルビィ「なんにも知らない」

ルビィ「お姉ちゃんのことが好きな人がいること」

ルビィ「その人は凄く凄く好きで、お姉ちゃんの為ならなんでもできるってこと」

ルビィ「友達だろうと家族だろうと切り捨てられるってこと」

ルビィ「……お姉ちゃん、黒澤を止めてよ」

ルビィ「ルビィが頑張るから」

ルビィ「全部全部、お姉ちゃんと同じくらい」

ルビィ「ううん、お姉ちゃんよりもできるように頑張るから」

ルビィ「だからもう、女の子がダメなんて言わないでよ」

ルビィ「東京に行くなんて、言わないでよ」

ルビィ「じゃないと……ルビィ達がバラバラになっちゃうよ!」
193: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/13(土) 18:36:33.04 ID:1rdo3HqP
ルビィ「……お願い」

ダイヤ「………」

ダイヤ「嘘や冗談というわけでは、ありませんわね」

ダイヤ「貴女の目は本気、声も本気」

ダイヤ「わたくしを好いてくれている人がいることも……真実」

ダイヤ「ルビィが何をどこまで知っているのか」

ダイヤ「それはわかりません」

ダイヤ「ですが」

ダイヤ「わたくしが東京に行くのはわたくしの望み、わたくしの意志」

ダイヤ「黒澤を背負うのもわたくしの意志」

ダイヤ「易々と、身を引くわけにはいきません!」

ダイヤ「貴女たちに問題が起きていることは承知しています」

ダイヤ「花丸さんとも、お話ししました」

ルビィ「!」

ダイヤ「……大丈夫です。わたくしがなんとか致しますわ」
194: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/13(土) 18:54:24.26 ID:1rdo3HqP
ルビィ「……ダメだよ」

ルビィ「それじゃもう、ダメなんだよお姉ちゃん」

ルビィ「お姉ちゃんは正しいと思う」

ルビィ「決めたことをしっかり守っていくのはルビィも好き」

ルビィ「格好よくて……憧れだった」

ルビィ「でも、でもね?」

ルビィ「それじゃもう、ダメなんだよ」

ルビィ「花丸ちゃんも、善子ちゃんも」

ルビィ「正論だけではどうにもできない」

ダイヤ「……解ってるわ」

ダイヤ「言ったでしょう? 花丸さんとお話をしたって」

ダイヤ「花丸さんの闇は深い」

ダイヤ「それでも、なんとかできるはず」
ダイヤ「まだ間に合うはず」

ダイヤ「わたくしは……そう信じています」

ダイヤ「貴女の気持ちと考えは解りますが」

ダイヤ「どうか、任せて頂戴」

ダイヤ「貴女の姉である黒澤ダイヤを、信じて頂戴」
195: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/13(土) 19:02:52.62 ID:1rdo3HqP
ルビィ「………」

ルビィ「……解った」

ルビィ「お姉ちゃんがそこまで言うなら、ルビィも覚悟を決めるよ」ニコッ

ダイヤ「ルビィ…」

グッ

ダイヤ「ありがとう」ニコッ

ルビィ「ううん、気にしないで」

ルビィ「きっとお姉ちゃんならそう言うだろうなって覚悟はしてた」

ルビィ「それでも、ルビィの本気のお願いなら受け入れてくれると思ってた」

ルビィ「でも、ルビィの負けだね」

ダイヤ「ふふっ、そんなことありませんわ」

ダイヤ「十分、強さを感じましたから」

ダイヤ「さぁ、戻りましょう」

ダイヤ「屋上は少し、冷えますわ」
196: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/13(土) 19:09:42.29 ID:1rdo3HqP
ガチャガチャ
    カチャンッ

ダイヤ「ちゃんと締まってますの?」

ルビィ「うん、大丈夫」

ダイヤ「まったく、驚きましたわ」

ダイヤ「まさか屋上の鍵を借りてきているなんて……」

スタスタ

ダイヤ「廃校を利用したとはいえ、貸して貰えるなんて」

ルビィ「えへへ……」

タンッタンッタ……

ルビィ「………」

ルビィ「お姉ちゃん」

ダイヤ「なに?」

ルビィ「ごめんね?」

ダイヤ「ぇーー」

ドンッ

ダイヤ「ル……ビィ……?」

ルビィ「これがルビィの……覚悟だよ」
201: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/13(土) 20:57:31.60 ID:qFZ1K1Ex
ーーーーー
ーーー
ーー

図書準備室


花丸「ここずら」

善子「ここって……」チラッ

善子「図書準備室?」

善子「こんなところあったのね」

ガチャッ……
     ガラッ

花丸「名前だけだよ」

花丸「普段は全く使ってないずら」

花丸「古くなっちゃった本とか」

花丸「ちょっとした小道具とかが置いてあるんだ」

善子「小道具?」

善子「………」キョロキョロ

善子「これ?」ガタガタッ

ガタンッ
     ボフッ

善子「っ! げほけほっ……」パタパタ

善子「けほっけほっ……なにこれ、ほこりっぽい……」
203: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/13(土) 21:33:15.54 ID:qFZ1K1Ex
花丸「言ったずらよ。あんまり使ってないって」

花丸「多少掃除はしてあるけど、小道具にまでは手が回ってなかったずら」

花丸「なにせ、図書室のボランティアはマルだけだからね」

花丸「実質、ここはマルの私室みたいな感じなんだ」

善子「汚すぎるでしょ……押し入れでももう少し綺麗だわ」

善子「で? なんなのこの小道具」

花丸「あぁ……それは音読会で使ったパペットずら」

花丸「ほかには紙芝居とか、演劇の衣装なんかもあるらしいよ」

善子「演劇……? なんでまた」

花丸「昔は、ちゃんと図書委員があってね」

花丸「公民館や、幼稚園とか」

花丸「ちょっとした地域ボランティア活動でやってたんだって」

花丸「この部屋も、その時代に使われたた場所」

花丸「……今はもう、ただの物置だけど」

善子「…………」

善子「へぇ、知らなかった」

花丸「Aqoursがなければ、善子ちゃんとルビィちゃんと一緒にこれをやってたかもしれない」

善子「ないない」

善子「私、そういうの興味ないから」
204: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/13(土) 22:11:37.46 ID:qFZ1K1Ex
花丸「残念」ニコッ

善子「……全然そう見えないんだけど」

パサッ
   パサッ

善子「ここって裏口もあるのね」

花丸「ふふっ、善子ちゃん興味深々ずらね」

善子「良いじゃない別に」

善子「本をまとめるだけじゃ、暇なのよ」

花丸「暇ではないと思うけど……」

花丸「その裏口は、昔の図書委員の人が使ってたんだって」

花丸「確か……忍法タイムトラベル」

善子「せめて日本語にしなさいよ、忍法」

花丸「あはは……適当だったんだよ」

花丸「タイムトラベルって言いながら、実際は遅刻しかけた生徒が校門を避けて学校に入る裏口ってだけ」

花丸「遅刻するはずだったのに、遅刻しない未来を作りだす」

花丸「だから、タイムトラベル」

花丸「先輩は面白いよね」

善子「面白いというか、曜とか、鞠莉みたいね」

善子「その場の勢いで生きてる感じがするわ」
206: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/13(土) 22:26:52.02 ID:qFZ1K1Ex
花丸「アルバムあるけど、見てみる?」

花丸「善子ちゃんがあぁ。って納得するような人の写真が載ってるよ?」

善子「……やめとく」

花丸「そっか」

花丸「……あ、その本は持っていきたいからこっちにおいて」

善子「はいはい」

善子「こっちは?」

花丸「うーん……それも」

善子「……」チラッ

善子「これは?」

花丸「それは……いいや」

花丸「でも、面白いから善子ちゃん呼んでもいいずらよ?」

善子「読書とか無理」

善子「どんな話なの?」パラパラパラ

花丸「えぇ……ネタバレだけ聞くずら?」

花丸「読まないのに?」

善子「読まないから聞くのよ」
207: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/13(土) 22:42:48.57 ID:qFZ1K1Ex
花丸「簡潔に言うと、推理小説ずら」

花丸「ある村で殺人事件があってね、探偵が来る」

花丸「その探偵が事件の謎を解き、犯人を追い詰めて捕まえる」

花丸「という物語」

善子「普通の推理小説じゃない」

花丸「これの面白いところは、偶然を利用したトリックを使ってるというところ」

花丸「偶然を用いることで、真犯人が実行犯では本来ありえないような現象を引き起こし」

花丸「探偵の推理を湾曲させ、別の人を犯人にしちゃうんだ」

善子「何それ、狡くない?」

花丸「そう、狡い」

花丸「小説では、いくつものトリックを用いられているけれど」

花丸「偶然を……しかも、描写の裏に隠しているのは斬新だった」

花丸「はっきり言って邪道で、作品の評価はボロボロだったけど」

花丸「最後の一瞬まで真犯人を突き止めさせなかった物語は面白かった」

善子「でも結局捕まるんでしょ?」

花丸「うん」

花丸「最後に犯人はこう言うずら」

花丸「お前の立派な推理で、人が一人死んだんだ。おめでとう、人殺し。って」

善子「え……?」

花丸「言葉の通り、最初の冤罪でつるし上げられた人は」

花丸「村ゆえの冷酷さに……自殺しちゃったんだ」

花丸「推理小説において正義である探偵、それを一つの悪として描いた作品」

花丸「だから、マルは少し気に入ってる」
208: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/13(土) 23:55:00.58 ID:qFZ1K1Ex
善子「そんなの気にいるとか……ずら丸」

善子「あんたも少し、ひねくれてるんじゃない?」

花丸「あははっ」

花丸「そうずらね」

花丸「そうかもしれない……でも、善子ちゃんもでしょ?」

花丸「ダイヤさんのためなら、なんだってできるんだから」

善子「………」

善子「否定は、しないわ」

花丸「頑張ろうね」

善子「?」

花丸「ダイヤさんのこと」

花丸「もう少しで、縁談は完全に終わるでしょ?」

善子「親は諦めないわよ、どうせ」

善子「ダイヤが大学に行ったことなんて関係なしに縁談を持ち込もうとする」

花丸「でも、関係ない」

善子「ええ」

善子「ダイヤは誰にも渡さないわ……」

善子(そう、誰にも)
209: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/14(日) 11:10:29.98 ID:ZXl/zdZA
ーーーーー
ーーー
ーー

ルビィ「これがルビィの……覚悟だよ」

ダイヤ「どうして……」 

ダイヤ(地に足のついていない、浮遊感)

ダイヤ(無意識に伸びた手はなにも掴めない)

ダイヤ(ルビィの悲しそうな顔が見えた)

ダイヤ(お姉ちゃんがいけないんだよ。と語る瞳が見えた)

ダイヤ(わたくしのなにがいけなかったのか)

ダイヤ(ルビィを取り戻したい、花丸さんを救いたい)

ダイヤ(黒澤を背負うこと、東京に行くこと)

ダイヤ(わたくしのそれらはルビィにとって……不都合だと?)

ダイヤ(わたくしを壊してでも、黒澤を背負わなければならない理由があると?)

ダイヤ(なぜ……)

ダイヤ(なぜ……どうして……)

ガンッ

ダイヤ「っ!」

ダイヤ(だめ……死……)ギュッ

  ……ボフッ

ルビィ「ぁっ」

ダイヤ「……?」

果南「あっぶないなぁ」

果南「だから言ったでしょ、歩きスマホは危ないよって」
211: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/14(日) 11:52:20.85 ID:ZXl/zdZA
ダイヤ「か、果南さん……?」

ダイヤ「どうして、こんなところに?」

果南「いやー生徒会室行ったら荷物はあるのにダイヤがいなくてさ」

果南「ちょっと待っても戻ってこないからトイ――」

ダイヤ「そういうことは言わなくていいですわ」

ダイヤ「とにかく……ありがとう、助かりましたわ」

果南「ん」

果南「……で、何があったの?」チラッ

果南「ルビィちゃん、ダイヤが自分で落ちたわけじゃないでしょ?」

果南「まさか」

ダイヤ「あ、足を滑らせてしまったんです」

ダイヤ「屋上のカギを絞められたか気になって振り返ったときに、ずるっと」

ルビィ「………」

果南「へぇ……」ジロッ

果南「いくら私でもさ……そういう嘘を見逃す気にはならないよ」

果南「おかしいでしょ、目の前でダイヤが堕ちて、助かって」

果南「まったく心配もしてないなんてさ」

果南「理由を教えてよ、ね? ルビィちゃん」
212: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/14(日) 12:01:44.07 ID:ZXl/zdZA
ダイヤ「ま、待ってください」

ダイヤ「わたくしは――」

ルビィ「良いよ、嘘なんかつかないで」

ルビィ「そうだよ。ルビィがお姉ちゃんを突き飛ばしました」

果南「やけに、堂々としてるね」

果南「ねぇ、それでダイヤが大怪我するって分からないわけじゃないよね?」

果南「最悪死んじゃうことになるって分からないわけじゃないよね?」

果南「それでさ……突き飛ばしたわけじゃ、ないよね?」

ルビィ「知ってるよ」

ルビィ「全部知ってて、全部分かってて、それでもお姉ちゃんを突き飛ばした」

ルビィ「邪魔だったから」

果南「邪魔? 邪魔って、ルビィ―ー」

ルビィ「何も知らない部外者が!」

果南「!」

ルビィ「ルビィたちの邪魔をしないで!」

果南「な……え……」

果南「ダイヤ? ねぇ、あれ……ルビィちゃん?」

ダイヤ「ええ、正真正銘わたくしの妹ですわ……」フイッ
213: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/14(日) 12:11:05.20 ID:ZXl/zdZA
ルビィ「ルビィはちゃんとお願いしたんだよ?」

ルビィ「東京に行くの止めてって、黒澤を背負うのはやめてって」

ルビィ「ルビィが代わりに頑張るから、ちゃんと背負って見せるから、努力するからって」

ルビィ「なのに、お姉ちゃんは嫌だって言った」

ルビィ「自分で決めたことだから、為すべきことだからって」

ルビィ「ルビィたちのことも、何とかしてみせるから信じてって」

果南「それの何がいけなかったの?」

果南「ダイヤを殺すようなことをする理由なんてないでしょ?」

ルビィ「正しいからだよ」

ルビィ「正しくて、まっすぐで、綺麗だったからだよ」

ルビィ「正しいからこそ、間違ってる」

ルビィ「正しいだけじゃ、どうしようもないことだってある」

果南「意味わかんないんだけど……あのさ」

果南「それがどうしてダイヤを傷つける理由になるのかって、聞いてんの!」

ダンッ

ダイヤ「か、果南さっ」ビクッ

果南「私は今、怒ってるんだよ」

ルビィ「……怒ってる?」

ルビィ「きっと、それが正しいんだよね」

果南「!」

ルビィ「でも、今のルビィにとってそれは間違いだよ。果南ちゃん」

ルビィ「言わなかったかな……部外者だって」ニコッ
214: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/14(日) 12:21:22.36 ID:ZXl/zdZA
ルビィ「何も知らないで、ただそれが普通じゃないからとか、間違ってるからとか」

ルビィ「その程度の理由で批判して、怒鳴ってくるのは、迷惑だよ」

ルビィ「……ルビィとお姉ちゃんが喧嘩してて、ルビィがお姉ちゃんを殴っていたとする」

ルビィ「果南ちゃんはどうする?」

ルビィ「今の感じだと、ルビィを責めるよね」

ルビィ「やめろ、おかしい、間違ってる」

ルビィ「うん、果南ちゃんは正しいね」

ルビィ「だって、暴力は悪いことなんだもん」

ルビィ「でも、お姉ちゃんがルビィの大切な何かを壊しちゃったかもしれない それを捨てちゃっているかもしれないよ」

ルビィ「そのせいでルビィが怒って、殴ってるのかもしれないよ」

ルビィ「ねぇ、果南ちゃん」

ルビィ「怒ってるっていうけど」

ルビィ「ルビィとお姉ちゃんに何があって、どうしてこんなことになってるのか、知ってるの?」

果南「そんなこと、聞いてないんだから知ってるわけがない」

ルビィ「じゃぁ、部外者だね」
215: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/14(日) 12:27:51.88 ID:ZXl/zdZA
果南「な……」

ルビィ「果南ちゃん」

タンッ
    タンッ
         タンッ
 タッ……
     キュッ

ルビィ「……関係ないなら、黙ってて」

ルビィ「知りもしない善悪で、無意味な偽善を振り撒かないで」

果南「くっ」

ガシッ

ルビィ「……いいよ。殴っても」

ルビィ「それが果南ちゃんの正しさなら」

ルビィ「でも、良いのかな?」

果南「なにが……!」イラッ

ルビィ「それは果南ちゃんの正しさの中で、間違ってることのはずだよ」

ルビィ「……ルビィにとっては正しいことだけど」

果南「っ……くっ」ギリッ

ヒュッ

ダイヤ「やめて!」

果南「!」

ルビィ「…………」

ダイヤ「お願いだから……やめてください……」ポロポロ

ダイヤ「わたくしのせいで争う二人なんて見たくない!」

ダイヤ「ルビィを傷つける果南さんも、果南さんを傷つけるルビィも……見たくありません!」

ダイヤ「お願い、お願いします……果南さん……」
216: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/14(日) 12:42:15.43 ID:ZXl/zdZA
果南「………っ」

パッ

ルビィ「………」

ルビィ「……果南ちゃんも、お姉ちゃんも正しいよ」

ルビィ「でも、その正しさじゃもう駄目なんだ」

ルビィ「お姉ちゃん」

ダイヤ「なに……」

ルビィ「もう少し考えて欲しいな」

ルビィ「ルビィに全部譲るか、お姉ちゃんが続けるか」

ルビィ「……でも、忘れないで」

ルビィ「ルビィの覚悟は、お姉ちゃんを階段から突き落とせるって」

ルビィ「じゃぁね」ニコッ

タンッタンッタンッ
        タタッ
  タンッタンタッ……

果南「なにあれ……あれが、ルビィちゃんなの?」

ダイヤ「ええ」

ダイヤ「そのはず……なんです」グシグシ

果南「……ダイヤ」

ダイヤ「今回は本当に助かりましたわ」

ダイヤ「ですが、ごめんなさい」

果南「え?」

ダイヤ「しばらく、わたくし達には関わらないでください」

ダイヤ「わたくしを殺す覚悟のあるルビィが、果南さん達を殺せないわけがありません」

ダイヤ「ですから、ごめんなさい。この一件からは手を引いてください」
219: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/14(日) 14:45:55.88 ID:ZXl/zdZA
―――――
―――
――
・淡島


果南「……っていうことが、あってさ」

果南「関わらないでとは言われたんだけど」

果南「無理だよ……」

鞠莉「さすがに、果南も引いたのね」

果南「あんなにルビィを怖いと思ったのは初めてだった」

果南「ううん、あんなことが平気でできるとは思わなかった」

鞠莉「私もそんなルビィは初めて聞いたわ」

鞠莉「…………」

果南「やっぱり、鞠莉も分からない?」

鞠莉「残念だけど、分からないわ」

鞠莉「ダイヤは事情を知ってそうだけど」

鞠莉「きっと、聞いても答えてくれないわよねぇ」

果南「うん……何にもしてあげられないのかな?」

果南「ルビィちゃんが言ってたように、部外者の私たちが何をしても」

果南「それはただの偽善でしかなくて、無意味で」

果南「今回みたいにただ、かき回しちゃうだけなのかな……?」
220: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/14(日) 15:30:36.47 ID:ZXl/zdZA
鞠莉「果南らしくないんじゃない?」

果南「え?」

鞠莉「いつものストロングな果南はどこ行っちゃったの?」

果南「……私だって、悩むことはあるよ」

果南「私だって、強いわけじゃない」

果南「鞠莉はあのルビィを見てないからそう簡単に言えるんだよ」フィッ

鞠莉「ええ、そう」

鞠莉「私はそのルビィを見たわけじゃない」

鞠莉「その場にいたわけじゃないから何も分からない」

鞠莉「だから、勝手なことを言うことが出来る」

鞠莉「果南がルビィにしたように……ね」

鞠莉「少しは、ルビィの気持ちが分かった?」

果南「え……?」

鞠莉「ふふっ」

鞠莉「果南にとって、私はその件の部外者」

鞠莉「何かできると思っていないから、突き放す」

鞠莉「自分の力になって貰えると思っていたら、助けてって……言うもの」

果南「ちがっ」

鞠莉「少なくとも、ルビィはそうだったのよ」
221: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/14(日) 16:12:23.85 ID:ZXl/zdZA
鞠莉「だから、無理をしないほうが良い」

鞠莉「それこそ、状況を掴めるまではね」ニコッ

果南「そんな悠長なこと言ってて平気なの?」

鞠莉「ルビィがそうなっちゃった理由は分からないけど」

鞠莉「きっと、原因はダイヤの縁談よ」

果南「ダイヤの……? そんなことで……」

鞠莉「そんなこと……ね」

果南(鞠莉は笑う)

果南(ルビィちゃんのことで臆病になっているのか)

果南(どうにも、不気味に感じてしまう嫌な笑み)

鞠莉「実は、今週末にダイヤがデートするの」

果南「デート!?」

鞠莉「それが終われば、丸く収まる」

鞠莉「その日で、すべてが終わるわ」

鞠莉「だから、しばらく様子を見ましょ」

果南「……本当に、それで終わるの?」

果南「そう言い切れる自信はどこから来てるの?」
222: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/14(日) 16:36:14.87 ID:ZXl/zdZA
鞠莉「今回の一件は、ダイヤのことを好きな気持ちが暴走してしまったもの」

鞠莉「縁談という足が、踏んではいけない虎の尾を踏んでしまった」

鞠莉「幸い、ダイヤは断るつもりだって話は聞いてるでしょ?」

鞠莉「ダイヤが断れば晴れて、東京のカレッジへゴー」ニコッ

果南「でも、ルビィちゃんはそれだけじゃなかった」

果南「さっき話したでしょ?」

果南「ルビィちゃんは黒澤家の――」

鞠莉「今は、いろんなものが絡みすぎているのよ」

鞠莉「少しでも問題をシンプルにしたい」

鞠莉「じゃないと、絡まったひもを余計に固くしてしまうだけ」

鞠莉「そして、力だけでは引きちぎれてしまう」

果南「…………」

鞠莉「大丈夫、ルビィたちには私がついてるわ」

鞠莉「果南は……待ってて」

果南「待っててって……そんな」

果南「私じゃ何にもできないってこと?」

果南「何の役にも立てないってこと?」
223: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/14(日) 16:57:14.08 ID:ZXl/zdZA
鞠莉「……違うわ。果南」

鞠莉「果南には客観的な立場にいて欲しい」

鞠莉「正しい側でいて欲しい」

鞠莉「果南だけでも、そっち側でいて欲しい」

果南「鞠莉……?」

鞠莉「千歌達も巻き込むわけにはいかないからね」

鞠莉「せめて、関わっちゃった中でも変わらないでいて欲しいの」

鞠莉「今週末までだから。ね?」

果南「………」

果南「……わかった」

果南「分かったよ」

果南「でも、無理はしないで」

果南「今のルビィちゃんは普通じゃない」

果南「……お願い」ギュッ

鞠莉「ええ……ノープロブレムよ。果南」

鞠莉「……大丈夫」ニコッ
224: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/14(日) 18:03:45.53 ID:ZXl/zdZA
―――――
―――
――
。翌日


千歌「えーっ!?」

ダイヤ「すみません、私用が立て込んでおりまして」

曜「土曜日じゃなくて、それまで全休なんて……何かあったんですか?」

千歌「そうだよダイヤさん!」

千歌「何か力になれるようなことがあるなら言ってよ!」

梨子「千歌ちゃん、ダメだよ」

千歌「でも~っ」

ダイヤ「本当に申し訳ありません」

ダイヤ「家庭の事情ですので、千歌さん達には……」

鞠莉「そういうことなら、お休みにしましょ」

千歌「そんなぁ」

善子「それでも全休なんて、ちょっと穏やかじゃないんじゃない?」

善子「土曜日の予定。そんな厄介なわけ?」

ダイヤ「いえ、土曜日のこととはまた別件です」

ダイヤ「とにかく、ごめんなさい」

花丸「ふぅん……」チラッ

ルビィ「………」

花丸「なるほどね」ボソッ
225: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/14(日) 19:45:45.83 ID:ZXl/zdZA
果南「仕方がないね」

果南「それじゃ、しばらく休みにしよっか」

果南「各自個人練習はともかく」

果南「基礎体力のための運動や、柔軟は欠かさずやるようにね」

千歌「はーい」

曜「何があったんだろう?」

果南「こーら」

ポンッ

曜「わわっ」

果南「無用な詮索はしないの」

曜「か、果南ちゃんっ」

果南「家の事情っていえば、私にもあるんだけど……」

果南「手伝って貰っちゃおうかな~?」ニコニコ

曜「げっ」

曜「あんなの手伝いじゃないっ、筋トレだよ! 筋トレ!」

果南「なにをぅ!」グリグリ

曜「わーっ! 助けてー!」

曜「助けて千歌ちゃーん!」

千歌「……南無」

曜「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」
226: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/14(日) 20:17:58.08 ID:ZXl/zdZA
善子「なにを馬鹿やってんだか……」

善子「……ったく」チラッ

善子「あんた、何か知ってるの?」

花丸「マルは知らないよ」

花丸「ルビィちゃんなら、知ってそうだけど」

花丸「でも今は、余計な詮索は控えたほうが良いんじゃないかな」

善子「アンタには言われたくないわね」

花丸「やだなぁ……マルはそんなアグレッシブじゃないずらよ」

花丸「善子ちゃんが、連れまわさなければね」ニコッ

善子「……気に食わないわね。その顔」

花丸「そっか」

善子(ダイヤが、苦しんでる)

善子(誰がやったの……誰のせいで……)

善子(縁談のことじゃないとしたら、やっぱり……ずら丸の言う通りルビィが何か知ってる?)

善子(昨日は何も言わなかったのに?)

善子(もしかして、昨日何かやった?)

善子「ルビィ……」ギリッ
227: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/14(日) 21:22:13.09 ID:ZXl/zdZA
―――――
―――
――

ドンッ

善子「………」

ルビィ「………」

善子「……驚かないのね。あんた」

ルビィ「お姉ちゃんがみんなの前であんなことしたとき」

ルビィ「善子ちゃんが怒鳴りに来るんじゃないかなーって、覚悟はしてたよ」クスッ

ルビィ「思ってた通り」

善子「何笑ってんのよルビィ……」

善子「ずいぶん余裕じゃない」

ルビィ「怒鳴られること、叩かれること」

ルビィ「そうされる理由があって、そうされることが分かっていたら」

ルビィ「ルビィが驚く理由はないよ」ニコッ

善子「ならやっぱり、アンタが何かしたのね?」

グイッ
    ダンッ!!

ルビィ「カハッ……けほっけほっ」

善子「私が容赦しないっていうのは、あんた、知ってるはずじゃなかった?」

ルビィ「それでも、ルビィにはやるべきことがあったんだよ」

ルビィ「善子ちゃんがルビィにこうするように」

ルビィ「ルビィにはお姉ちゃんを苦しめなくちゃいけない理由があったんだ」

ドンッ

善子「ぐっ」

ルビィ「ルビィにだって、大切なものがあるんだよ。善子ちゃん」

ルビィ「たとえ、善子ちゃんと殴り合うことになってでも守りたいものがあるんだ」
228: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/14(日) 21:33:01.98 ID:ZXl/zdZA
善子「あんた……」

ルビィ「良いよ、善子ちゃん」

ルビィ「ルビィはもう、覚悟は出来てるよ」ニコッ

善子「ダイヤに何をしたのよ」

善子「どうして、ダイヤの目があんなにも……」

ルビィ「昨日ね、階段から突き飛ばしたんだ」

善子「は?」

ルビィ「殺しちゃう可能性もあったから」

善子「待って」

ルビィ「多少、階段を下りてからにしたんだけどね?」

善子「待ちなさい」

ルビィ「もちろん、そうなったらそうなったで覚悟は――」

善子「黒澤ルビィ!」

ルビィ「わっ」

ルビィ「急に大声出されると、さすがにびっくりするよ」

善子「あんた一体何言ってんのよ」

善子「突き飛ばしたって何?」

善子「殺すことになるかもしれなかったって、あんた。本気で言ってんの?」

善子「アンタの大事な姉じゃなかったの……?」
229: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/14(日) 22:28:45.76 ID:ZXl/zdZA
ルビィ「大事だよ」

ルビィ「……でもね?」

ルビィ「左と右に分かれてしまったら、どちらかしか選ぶことはできないんだよ」

ルビィ「現実はゲームじゃない」

ルビィ「片方のアイテムを取ったら、戻ってもう一つなんてことは出来ない」

ルビィ「……だから、お姉ちゃんを突き飛ばした」

ルビィ「善子ちゃん言ったよね?」

善子「私が?」

善子「私があんたにそんなこと言った覚えなんかないけど」

ルビィ「ううん、昨日の話だよ」

ルビィ「たとえお姉ちゃんがどうなっていても好きでいてくれるって話」

ルビィ「あれを聞いて、あぁ……大丈夫だ。そう思った」

ルビィ「お姉ちゃんが壊れていても、善子ちゃんは好きなままだ」

ルビィ「お姉ちゃんを見ていてくれる、好きでいてくれる、大切にしてくれる」

ルビィ「それなら、お姉ちゃんを壊してしまおう」

ルビィ「黒澤を背負わなくていいように、縁談なんて持ち込まれないように、東京になんて行かなくて済むように」

ルビィ「怪我をさせちゃおうって、考えたんだ」

善子「何言ってんの……?」

善子「頭、おかしいんじゃないの?」

善子「それで、そんなことで……」

善子「そんなことで、ダイヤを!」

グイッ

ルビィ「……うん、そんなことだよ。善子ちゃんにとってはね」

ルビィ「でも、ルビィにとってはとっても大切なことだよ」

ルビィ「善子ちゃんは、知らないみたいだけどね」クスッ
230: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/14(日) 22:55:09.07 ID:ZXl/zdZA
善子「そんなことして、なにがあるのよ」

善子「なにが守れるって言うのよ」

ルビィ「ルビィ達のこと……かな?」

善子「ふざけないでよ……」

善子「あんたのせいで滅茶苦茶よ!」

ルビィ「……あはは」

ルビィ「………」

ルビィ「まぁいいや」

ルビィ「善子ちゃんはお姉ちゃんが重要なんでしょ?」

ルビィ「お姉ちゃんが縁談も、黒澤も、東京も」

ルビィ「全部なくなれば善子ちゃんのものになるはずだよ」

ルビィ「なにも出来なくなったお姉ちゃんを縁談には出せない」

ルビィ「なにも出来なくなったお姉ちゃんは黒澤を背負うことはできない」

ルビィ「なにも出来なくなったお姉ちゃんは東京になんて行かない」

ルビィ「そんな自分を好きでいてくれる人を、断れない」

ルビィ「……簡単に言えば」

ルビィ「善子ちゃんがお姉ちゃんを手に入れられるようにするためだよ」

ルビィ「つまり善子ちゃんのためだね」ニコッ
232: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/15(月) 05:56:16.88 ID:ui/t3MC4
善子「私のため……?」

善子「何言ってんの……ふざけんじゃないわよ」

善子「ふざけるのは、やめて……」

ルビィ「だって、善子ちゃんはお姉ちゃんが欲しいんだよね?」

ルビィ「誰にも渡したくないんだよね?」

ルビィ「そのためなら、誰かを傷つけることもできるし」

ルビィ「誰かを殺すことだってできるんだよね?」

ルビィ「お姉ちゃんが行くところなら、どこへだってついていくんだよね?」

ルビィ「ルビィはね? それだと困るんだ」

ルビィ「どこへだっていかれる事、人を殺されちゃうこと、お姉ちゃんが誰の物にもならないようにされること」

ルビィ「全部、困るんだ」

ルビィ「……だって、ルビィはみんなで一緒に居たい」

ルビィ「善子ちゃんと、花丸ちゃんと」

ルビィ「……一緒に居たいよ」

ルビィ「だから」

ルビィ「だからね?」

ルビィ「お姉ちゃんを壊して、善子ちゃんのものにできるようにしたらいいと思ったんだ」

ルビィ「そうしたら善子ちゃんはお姉ちゃんを手に入れられる」

ルビィ「もう、誰も傷つけない、誰にも迷惑をかけない」

ルビィ「お姉ちゃんがどこにもいかないから、善子ちゃんもここにいてくれる」

ルビィ「お姉ちゃんが死ななければ、ルビィのお姉ちゃんもそのままいてくれる」

ルビィ「ね? いい考えでしょ?」
233: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/15(月) 06:05:07.75 ID:ui/t3MC4
善子「死ぬかもしれないやり方が良い考えなわけないでしょ!」

ドンッ
   ゴンッ
ガタッ
    ガタタッ
        ガタンッ

ルビィ「いたた……」

善子「いい加減にしなさいよ……あんた」

善子「階段から蹴落としてあげたほうが良い?」

善子「ダイヤがどれだけ怖かったか、あんたに裏切られてどれだけ嫌な思いをしたか……」

善子「ダイヤを見て何も思わなかったわけ!?」

善子「あんな……あんなに、傷ついた目をしてた……」

ルビィ「……何言ってるのか、ぜーんぜん、わかんないよ」

ガタッ
    パッパッ

ルビィ「あ、血が出てる」

ルビィ「えっとね……何言ってるの? 善子ちゃん」

善子「は?」

ルビィ「どっちが先に裏切ったの?」

ルビィ「どっちが先に怖い思いをさせられたか、どれか傷ついたか……」

ルビィ「ふざけないでよ」

ガンッ

善子「!」

ルビィ「ふざけたこと言わないでよッ!」

ガンッ!!
     ガタンッ!!

ルビィ「はぁっ……はぁ……ふぅ」

ルビィ「こうしないといけなくなったのは善子ちゃんのせいなんだよ?」
234: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/15(月) 06:15:17.85 ID:ui/t3MC4
ルビィ「全部善子ちゃんが悪いんだよ」

ルビィ「お姉ちゃんが好き? 分かるよ」

ルビィ「お姉ちゃんを自分のものにしたい? 分かるよ」

ルビィ「お姉ちゃんをだれにも渡したくない? 分かるよ」

ルビィ「でも、お姉ちゃんが受け入れてくれないだろうから」

ルビィ「自分の物にはしないけど、誰の物にもしないよ」

ルビィ「そのためならなんだって犠牲にするよ」

ルビィ「……え? なにそれ」

タッ
   タッ

タンッ……

ルビィ「ねぇ、善子ちゃん」

グィッ

善子「っ」

ルビィ「そんなの良いわけないよ。分かるわけないよ」

ルビィ「お姉ちゃんだけじゃない、たくさんのものが粉々に壊れちゃうよね?」

ルビィ「善子ちゃんは良いかもしれないけど、ルビィはダメだよ」

ルビィ「……あ、でもルビィのしてることは善子ちゃんにはダメなんだよね? えへへっ」

パッ

ルビィ「言われた通りだ……やっぱりすごいや」

ルビィ「……でも、ルビィは善子ちゃんの為に頑張ってるんだって分かってほしいな」

ルビィ「お姉ちゃんを手に入れることが出来ない善子ちゃんの為に、手に入れられるお姉ちゃんにしてあげるんだ」

ルビィ「……ね?」ニコッ
235: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/15(月) 06:25:56.04 ID:ui/t3MC4
善子(……不気味だった)

善子(本当にルビィなのかと不安になるくらいに、意味不明だった)

善子(訳の分からないことを話している間も)

善子(ダイヤを苦しめる話をしている間も)

善子(ほとんどの場面で笑顔のままだったのが、異常で)

善子(でも、そのルビィは私が異常だという)

善子(ダイヤのためなら何でもで切るという、私が)

善子(……なにそれ)

善子(一緒にしないでよ)

善子「……私のため?」

善子(馬鹿にしないでよ)

善子「私のこの気持ちは!」

善子「あんたの異常さなんかと同じじゃない!」

ルビィ「………」

ルビィ「……そうかもしれないね」

ルビィ「でも、それではお姉ちゃんを手に入れることはできない」

ルビィ「ずっと、お姉ちゃんの為に無意味な努力をする?」

ルビィ「それとも、ルビィが壊したお姉ちゃんを自分のものにする?」

ルビィ「デートが終わってから答えをもらう予定なんだ」

ルビィ「善子ちゃんも、考えておいてね」

善子(それは、堕天使なんて中途半端なんかではない)

善子(悪魔のような、笑みだった)
236: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/15(月) 07:30:57.66 ID:ui/t3MC4
―――――
―――
――

善子(一生手に入れられないダイヤか)

善子(手に入れることはできるけど、壊れたダイヤか)

善子(そんなの……)

フラフラ
   ガクッ

善子「!」ダンッ

善子「っ……あぶな……」

善子(膝から崩れ落ちるところだった……)チラッ

善子「……運が悪ければ階段から落ちてたわね」

善子(まぁ、その方が悩まなくて済むのかもしれないけど)

善子(なんて)

善子(私は、ダイヤが好き、ダイヤが欲しい)

善子(でも、ダイヤは女の子との恋愛はしないと断言していた)

善子(それが普通だし、黒澤家のこともあってか断固たる意志だったそれは)

善子(私がいくら言っても無駄なのは明らかだった)

善子(つまり、手に入れることは不可能)

善子(ルビィが言うように、無駄なのは事実)

善子(でも……)

トンッ

善子「?」

ダイヤ「っ……ぁ、ご、ごめんなさい」

善子「ダイヤ?」

ダイヤ「善子さん、だったんですのね」
238: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/15(月) 07:49:38.39 ID:zmSodFb0
善子「こんなところで踞ってどうしたのよ」

ダイヤ「いえ、その……」フィッ

ダイヤ「体調が優れなくて」

善子「優れないって……そんなレベルじゃなくない?」

善子(顔は青いし、震えてるし……)

善子(階段から……)

善子(あ……まさか)

善子「立てる? 保健室まで連れていくわよ」

ダイヤ「いえ、そんな迷惑は」

善子「いいから、ほら」スッ

善子「そんな状態のダイヤを放っておけるほど」

善子「私はできてないのよ」

ダイヤ「………」

ダイヤ「……すみません」ギュッ

ダイヤ「ありがとう」ニコッ

善子「……っ」
239: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/15(月) 08:06:19.78 ID:zmSodFb0
善子(ダイヤは階段を怖がってた)

善子(いや、多分……私が強く踏み込んだあの音にビビったのね)

善子(ルビィに突き飛ばされたから)

善子(……)

善子(強くても、弱くてもダイヤはダイヤ)

善子(壊れていても、いなくても)

善子(黒澤ダイヤであることに変わりはない)

善子(私が好きじゃなくなる理由はない)

善子(でも、でもそれで……ダイヤは幸せになれる?)

善子(幸せにする意志はある)

善子(なにがあっても幸せにする覚悟がある)

善子(でも、壊れたダイヤは幸せよりも罪悪感が先にくるんじゃないか)

善子(そんな……不安がある)

善子「……家庭の事情、だっけ?」

ダイヤ「は、はい?」

善子「それが、そんなに辛いわけ?」

善子「Aqoursの活動を全休するほど」

善子「体調を崩すほど」

善子「ダイヤの負担になってるの?」
240: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/15(月) 08:40:14.35 ID:zmSodFb0
ダイヤ「それは……」

善子「私は部外者だから関わらせたくない?」

善子「じゃぁ、妹のルビィなら関われる?」

ダイヤ「!」ビクッ

善子「……何があったのか知らないけどさ」

善子「あんまり、そういうダイヤ見たくないのよ」

善子(今なら、聞けるかもしれない)

善子(ダイヤが、幸せになれるのか)

善子(……傷ついたダイヤが)

善子(寄り添う光で輝けるのか)

善子「……そんなことで幸せになれるの?」

善子「縁談の話。聞いたわ」

善子「大変だっていうのも……その顔を見てれば解る」

善子「でも、そういう苦労を助け合うのが夫婦でしょ?」

善子「そういうときに、ダイヤは救ってくれる人がいることを幸せに思うより」

善子「今みたいに巻き込むことへの恐れを抱くわけ?」

善子「巻き込んじゃった罪悪感が勝るわけ?」

ダイヤ「……嬉しい、ですわ」

ダイヤ「そこまで想ってくれている人がいること」

ダイヤ「力になってくださる方がいること」

ダイヤ「罪悪感は拭えませんが、きっと……」

ダイヤ「幸せなんだと実感すると思います」
241: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/15(月) 08:52:19.84 ID:zmSodFb0
善子(……そっか)

善子「だったら相談しなさいよ」

善子「何かあったんでしょ?」

善子(ダメじゃない……そんなこと言ったら)

ダイヤ「……縁談のことを聞いているのなら」

ダイヤ「今は話せることはありませんわ」ニコッ

ダイヤ「ですが、善子さんのお気持ちはとてもありがたいわ」

ダイヤ「決して一人ではないと安心できる」

ダイヤ「………」

ダイヤ「……ありがとう。縁談が落ち着いたら」

ダイヤ「ぜひ、よろしくお願いいたします」

善子「ええ、任せて」

善子「でも、あんまり無理すんじゃないわよ?」

ダイヤ「承知しています」

善子(壊さない理由が……無くなっちゃうじゃない)
242: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/15(月) 09:10:10.03 ID:zmSodFb0
―――――
―――
――

国木田家


花丸「そしたら、日曜日にお願いして良いずら?」

花丸「えへへ、よろしくずら~」ニコッ

花丸(これで、図書室の本が持ってこれる)

花丸(お祖父ちゃんはあれだけど)

花丸(トラックに乗せるくらいは問題ないし)

花丸(家まで来たら、あとはマルだけの図書室に持っていくだけ)

花丸(……さすがに土曜日は無理だったけど)

花丸(……)

花丸「……ふぅ」トサッ

花丸「土曜日と言えば、デートもあるんだよね」

花丸「……どうなるかなぁ」

花丸(善子ちゃんは元々だったけど)

花丸(ちょっとつついただけでルビィちゃんも簡単に壊れた)

花丸(まさか、あそこまでダイヤさんを追い詰めるとは思わなかったけど)

花丸(善子ちゃんには、良い刺激になったかな?)クスッ

花丸「デート、デート、デートかぁ」

花丸「……大丈夫、ダイヤさんは絶対善子ちゃんのものになる」

花丸「マルはそのためなら……ルビィちゃんも、鞠莉ちゃんもお見合い相手も」

花丸「なんだって、利用するよ」

花丸「……ふふっ」

花丸「あと、少し」
243: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/15(月) 12:23:15.57 ID:1pO9XCtA
花丸(でも、ダイヤさんは弱ってるずら)

花丸(そこにあの男の人が付け入る可能性は否定できない)

花丸(あの様子なら、ルビィちゃんも善子ちゃんに加担するだろうから)

花丸(最悪、死体が一つ出来る)

花丸(そうなると……ちょっと面倒かな)

花丸(その為の鞠莉ちゃんだけど)

花丸(鞠莉ちゃんは掴みにくい)

花丸(果南ちゃんも片足踏み込んできてるし……)

カタンッ

花丸「……運かな?」

花丸(……でも、あの男の人はつけ込めるような性格ではなさそうだったし)

花丸(分は、悪くない)

花丸「……んーっ」グーッ

花丸「ふぅ」

花丸「なにも、無いと良いね」
245: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/15(月) 12:44:01.85 ID:1pO9XCtA
―――――
―――
――
・デート当日


善子「なにあんた、来たのね」

ルビィ「えへへ」

ルビィ「気になるから、善子ちゃんもお姉ちゃんも」

ルビィ「でも安心してよ、邪魔はしないから」ニコッ

善子「……あっそ」

善子「あんたも本気なのね」

ルビィ「ルビィは本気だよ」

ルビィ「……善子ちゃんは? 三日前は悩んでたよね?」

ルビィ「それでお姉ちゃんは幸せになれるのかって」

善子「……意地が悪いわね、ルビィ」

善子「私は絶対にダイヤを見捨てない」

善子「あんたはそれを知ってた」

善子「なのに、わざわざ考えておいて。なんて言うじゃない」

善子「ダイヤは与えられることへの罪悪感を感じる」

善子「つまり、壊れたダイヤは簡単には幸せに出来ない」

ルビィ「………」

善子「それを考えた上で答えるかどうか」

善子「ルビィ、私を試したわね?」
246: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/15(月) 12:54:03.60 ID:1pO9XCtA
ルビィ「花丸ちゃんならともかく、ルビィはそこまで考えてないよ」ニコッ

ルビィ「ルビィはそんなに頭良くないもん」

ルビィ「ただ、口先だけなのはダメだよって思ってはいた」

ルビィ「善子ちゃんはなんだかんだ優しいから」

ルビィ「壊れたお姉ちゃんを見て、罪悪感を感じるんじゃないか」

ルビィ「それに耐えかねて消えてしまうんじゃないか」

ルビィ「幸せはどこにもなくて」

ルビィ「ただただ悲しいだけじゃないのかな……って」

ルビィ「……でも、善子ちゃんは本気なんだね?」

ルビィ「そんなことにはならない」

ルビィ「例え壊れていても、お姉ちゃんはお姉ちゃん」

ルビィ「自分のものにできた幸せに浸れるんだね?」ニコニコ

善子「……その顔やめて」

善子「気持ち悪いのよ、今のルビィの笑顔は」

ルビィ「うーん……頑張ルビィ」ニコッ
247: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/15(月) 17:47:34.16 ID:1pO9XCtA
鞠莉「ハァーイ!」

鞠莉「グッモーニン、エブリワン!」

善子「……」

ルビィ「………」

鞠莉「oh……どげんしたと?」

善子「煩いのよ、いちいち」

善子「今日は尾行、隠密……わかってんの?」

鞠莉「イェァ!」

善子「は?」イラッ

鞠莉「ジョーク! イッツジョーク!」

鞠莉「あんまりにも暗いものだからつい」ニコッ

鞠莉「いつも通りね」

善子「ダイヤに色々ある中でデートする……」

善子「ダイヤが弱ってることに気づかないかもしれないけど」

善子「気付いたら好機と見て攻めていくかもしれない」

善子「そうじゃなくても、ダイヤのことを思えば明るくなんていられないわよ」
248: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/15(月) 19:24:55.91 ID:ui/t3MC4
鞠莉「あら……善子はダイヤ事情を知ってるの?」

善子「知らないわよ」

善子「全休連絡の日、保健室まで連れて行ったんだけど」

善子「何も教えてくれなかったわ」

善子「色々大変だから、話すのも難しいって」

善子「でも、この見合いの一件が落ち着いたらお願いしますって、言われたわ」

鞠莉「そう……やっぱり話しにくいことなのね」チラッ

鞠莉「ねぇルビィ」

ルビィ「なに?」

鞠莉「ルビィは何か聞いてないの?」

鞠莉「ルビィなら一番近くにいるわけだし」

鞠莉「ダイヤが話せない、ダイヤの事情も話せるんじゃない?」

ルビィ「お姉ちゃんからは何も聞いてないんだよね?」

ルビィ「だったら、ルビィから勝手に言えないよ」

鞠莉「……ルビィ」

ルビィ「ルビィだって、ただ黙ってたわけじゃないよ?」

ルビィ「でも、お姉ちゃんはね? 自分で選んだことだからって、自分の意志ですることだからって言って」

ルビィ「信じて任せて欲しいって言ったんだ」

ルビィ「だから、ルビィが勝手に関係者を増やすわけにはいかない」

ルビィ「ルビィは、信じてるからね」ニコッ
249: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/15(月) 19:38:04.93 ID:ui/t3MC4
鞠莉「っ……」ゾクッ

鞠莉「そ、そう……そう、なのね……」

善子「どうしたの?」

鞠莉「なんでも、ないわ」

鞠莉「そろそろ出発しない?」

鞠莉「1時間前でしょ? ダイヤならそろそろ来てるわ」

善子「確かに」

ルビィ「お姉ちゃんならそのくらいの時間には行ってるよね、多分」

善子「あんたが家を出るときはどうだったのよ」

善子「準備はしてた?」

ルビィ「お姉ちゃんは部屋にいたから、どうだろ」

ルビィ「でも、寝てるわけじゃなかったよ」

善子「それはそうでしょ……ハァ」

善子「まぁいいわ」

善子「鞠莉、車出して貰っていい?」

鞠莉「オーケー!」

善子「くれぐれも、安全運転で頼むわよ」

鞠莉「んっふっふっふっふ~」ニコニコ
250: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/15(月) 20:01:30.23 ID:ui/t3MC4
―――――
―――
――

善子「二度と運転するなっ!」

ルビィ「うっぷ……」

鞠莉「あははっ、ソーリーソーリー」

鞠莉「空いてから、つい」

鞠莉「許してちょーだい」

ルビィ「鞠莉ちゃん、車に戻って吐いてきて良い?」

鞠莉「ノーっ! レンタカーなの! ストーップ!」

善子「レンタカーで事故起こしそうな運転止めなさいよ」

鞠莉「……ソーリー」

ルビィ「あ、お姉ちゃん来たよ」

善子「切り替え早いわね、あんた」

ルビィ「なんか、大人っぽい服装だね」

鞠莉「相手は大学生なんでしょ?」

鞠莉「それに見合うようにしっかりと服を選んだって感じね」

ルビィ「…………」

善子「……なによ、やる気じゃない」

善子(ちゃんとした服なんか着て、一時間近く前から待ち合わせ場所に来て)

善子(まるで、断る前提っていうのが嘘だったみたいに……気合入ってるじゃない)
251: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/15(月) 20:21:28.29 ID:ui/t3MC4
「―――」

ダイヤ「―――? ―――」

「――――」

善子「……またナンパされてるんだけど」

善子「そろそろ私が行っていい?」

ルビィ「ダメだよ」

善子「3回目よ? 3回目!」

善子「30分で3回!」

善子「何を話してるのかまでは分からないけど」

善子「毎回毎回申し訳なさそうに断って……」

鞠莉「でも少し、嬉しそうじゃない?」

善子「……………」イライラ

善子(言われなくても分かってる)

善子(ナンパされるくらいには、魅力的にみられていること)

善子(弱った心に、自信が持てるようになるそんな要素はきっと、心地良いんだと思う)

善子(でも、だったら……それなら……)

善子「……あ」

「―――!」タッタッタッ

ダイヤ「―――」ニコッ

善子「……笑った」

鞠莉「…………」

鞠莉「移動するみたいよ」

善子「……追いかけましょ」
252: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/15(月) 20:40:11.97 ID:ui/t3MC4
鞠莉「まずは映画……ねぇ」

善子「定番で攻めてきたわね……」

善子「まぁ、地元の人間と地元でデートするっていうなら」

善子「そりゃ、映画館は外せないわよね」

ルビィ「この感じだと、映画館の後は食事して」

ルビィ「マリンパークか深海水族館に行くのかな」

鞠莉「ん~そうねぇ」

鞠莉「ルビィの予想通りかも……で、どうする?」

善子「どうするってなに?」

善子「行くに決まってるでしょ」

善子「映画館だろうが水族館だろうが……というか、よくあるシチュエーションじゃない」

善子「暗い映画館、重なる手、近づく距離……」

善子「絶対に阻止するわ」

ルビィ「あの人にそんな度胸はないと思うけどなぁ……」

善子「わかんないでしょ!」

ルビィ「えーっ」

ルビィ「まぁ、良いけど……善子ちゃんと鞠莉ちゃんが両端じゃないと嫌だからね?」

ルビィ「男の人が隣になったら、ルビィはお姉ちゃんにバレる自信がある」ドヤッ

鞠莉「自信を持つところじゃないわよ~?」

ルビィ「えへへ~」
253: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/15(月) 21:12:03.19 ID:ui/t3MC4
善子(不気味なほどに、今まで通りを演じるルビィ)

善子(どこか警戒している、鞠莉)

善子(きっと、鞠莉はルビィがしたことを知ってる)

善子(知っててあえて追及してない)

善子(蛇……いや、蜂がいると分かっている藪を突くほど、鞠莉は馬鹿じゃない)

善子(そんな私達が数席後ろにいるって、ダイヤは知らないのよね)ジッ

善子(……恋愛映画は楽しい?)

善子(隣の視線が前ではなく自分に向いていることに気付いてる?)

善子(……ねぇダイヤ)

善子(あんたを突き飛ばしたルビィが平然としてるのをどう思ってる?)

善子(縁談相手の運転する、あんたには似合わない軽自動車の中で)

善子(ダイヤは何を考えてるの?)

善子(知りたい)

善子(ダイヤのことを知りたい……でもそれ以上にダイヤのことが、欲しい)

善子(ナンパをされてるアンタを見て思った)

善子(それで喜んでるアンタを見て、思ったわ)

善子(やっぱり、ダイヤは壊してしまうべきだって)

善子(ほかの誰もが敬遠するほどに、粉々に)

善子(けれどちゃんと、幸せになれる程度に)

善子(……あんたを、壊す必要がある)
255: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/15(月) 21:47:00.72 ID:ui/t3MC4
ルビィ「……ここ?」

善子「そうみたいだけど」チラッ

鞠莉「んー?」

ルビィ「えへへっ、まーりちゃん」ニコッ

鞠莉「oh……魂胆が透けて見える……」

善子(雑音でしかない無駄な時間を過ごした後、向かったレストラン)

善子(軽自動車二台が行くべきではなさそうなちょっとお高いそのお店は)

善子(私たちのお小遣いをごっそりと持っていきそうで)

鞠莉「おーけー、おーけー、先輩に任せなさーい」

善子(私たちの集りを、鞠莉は受け入れてくれた)

善子(正直、うざったい先輩ではあるけど)

善子(一応、優しいから……嫌いではない)

善子(だからやっぱり、私の中ではずら丸と似たようなものなんだと思う)

鞠莉「でも、あまり高いのはノーよ?」

ルビィ「……一番安いのでも十分高いよ」

善子「ほんと。この程度って言えるのが羨ましいわね」

鞠莉「ふふんっ」

鞠莉「どう? 私と縁談でもしてみる?」

善子「あ、それはいいや」

ルビィ「中にはいろ~」

鞠莉「ちょっとーっ!」

鞠莉「それは酷いわよ!」
256: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/15(月) 22:11:39.55 ID:ui/t3MC4
ダイヤ「ふふっ、そうですのね」

「あ、ああ、それでね――」

善子「………」

ルビィ「……」

鞠莉「意外と、盛り上がってるじゃない」

善子「盛り上がってはないわよ、ダイヤは心から笑ってない」

鞠莉「辛辣ねぇ」

ルビィ「映画の後なのに、映画の話だけじゃないのは良いんじゃないかな」

ルビィ「きっと、何を話そうかとか、たくさん考えてきたんだと思う」

ルビィ「照れ笑いになってるけど、嬉しそうにしてる」

ルビィ「……分かるよ。ルビィは」

鞠莉「男の人なのに?」

ルビィ「それはそれ、これはこれだよ」

善子「へぇ……」

善子「ま、私には関係ないわよ」チラッ

善子「ダイヤが楽しそうでも、あの二人がくっつくことはない」

善子「断るって話だったんだから、それはない」

鞠莉「……心変わり、してたりして」

ピキッ

ルビィ「わわっ、よ、善子ちゃんっ」

ルビィ「食器は割っちゃだめだよー? 割るなら鞠莉ちゃんの額だけにしておこうね」

鞠莉「そ、それはジョーク? ジョーク……よね?」

ルビィ「えへへ」

鞠莉「あ、あはは……ははっ」ゾクッ
258: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/16(火) 06:14:39.38 ID:QGw0HLcF
―――――
―――
――

善子「なんで深海水族館?」

善子「この時間なら、まだマリンパークも行けるでしょうに」

鞠莉「ダイヤがお願いしたんじゃない?」

鞠莉「マリンパークだと、たまに曜がうちっちーになってるし、バイトしてるからね」

ルビィ「確かに」

ルビィ「お見合いのこととか秘密にしてるから」

ルビィ「見られるのは困るもんね」

善子「特に曜になんか見つかったら面倒なことになりそうだし」

善子「できる限り見つからないように行動したいわよね」

善子(でも、深海水族館って薄暗いから嫌なのよね……)

善子(どさくさに紛れて手を繋ぎそう)

善子(映画館でできなかったみたいだし)

善子(大丈夫……だとは、思うけど)

善子「………」

ルビィ「どうかしたの? 善子ちゃん」

善子「なんでもない」

ルビィ「鞠莉ちゃんが心変わりしたかも。なんて言ってたのが気になってるの?」

善子「……あんた、ほんと怖いわ」

ルビィ「ルビィは怖くないよ」ニコッ

善子「変態が変態じゃないっていうレベルの言い訳ね、それ」

ルビィ「えーっ」
259: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/16(火) 06:20:50.04 ID:QGw0HLcF
鞠莉「子供のころ以来だわ、ここ」

善子「まだ子供でしょ」

鞠莉「もう大学生よ」

善子「まだ高校生でしょ」

鞠莉「…………」

鞠莉「……ねぇ、善子って私のこと――」

善子「しっ!」

鞠莉「移動するわよ」

鞠莉「……嫌いでしょ」ボソッ

ルビィ「お姉ちゃんに関わってるときはルビィも花丸ちゃんも似たようなものだよ」

ルビィ「気にしないほうが良いと思う」

鞠莉「そう?」

ルビィ「うん」

ルビィ「それに、鞠莉ちゃんの声って大きいし目立つし、特徴的だから」

ルビィ「静かにしてたほうが良いとはルビィも思ってるよ」

鞠莉「……ルビィ、変ったわね」

ルビィ「えへへっそうかな?」

ルビィ「ルビィも大人っぽくなった?」

鞠莉「ある意味では、ね」
260: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/16(火) 06:31:38.13 ID:QGw0HLcF
善子(周りにもデートしてるっぽい感じの人がいる)

善子(……どういう趣味してんだか)

善子(いや、アクセントと言うか、奇をてらうなら無しじゃない?)

善子(ダイヤ……距離、近いわね)

善子(気づいてる?)

善子(すぐ隣に男がいること)

善子(私たちが見守ってること)

善子(歩くたびに動く綺麗な手を、隣にいる男がチラチラ見てること)

善子(……ダイヤ、手を握るのはやめて)

善子(その手を汚すのはやめて)

善子(そんなことされたら、私は……その手を切り落とさなくちゃいけなくなる)

善子(……ぁ)

ダイヤ「見て、このお魚。自力で発光するんですって」

「深海なんて光が届かないのに、凄いですよね」

「自力で光ることが出来るような進化をするなんて」

トンッ

「あっ」

ダイヤ「?」

「ご、ごめん……くっつきすぎたね」

ダイヤ「……ふふっ、気にしないで」ニコッ

善子(なんで……そんな嬉しそうに笑ってるのよ)

善子(ねぇ、ダイヤ……どうして?)
262: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/16(火) 07:20:10.43 ID:QGw0HLcF
善子(断るんじゃなかったの?)

善子(恋愛になんてうつつを抜かしていられないんじゃなかったの?)

善子(なのに、なのに……なのになのになのに……っ!)ギリッ

善子「なんでそんなに、笑ってるのよ」

善子「おかしいじゃない、狡いじゃない」

善子「そんなに近づいて、そんなに幸せそうに……」グッ

ガシッ

善子「っ!」

ルビィ「……落ち着いて」

善子「ルビィ……あんたは落ち着いてられるの?」

善子「ダイヤが男なんかにあんなに……」

ルビィ「お姉ちゃんが嫌がってないなら、仕方がないよ」

ルビィ「最後にどうなるのかは分からないけど……でも」

ルビィ「……ううん、結果次第だね」

ルビィ「もちろん、途中でキスしようだとか、抱きしめようだとか」

ルビィ「そういうことがあったら、その時はね」ニコッ

鞠莉「そ、その時はって……ルビィ?」

ルビィ「ん~?」ニコニコ

ルビィ「その時はその時だよ」
263: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/16(火) 07:33:55.96 ID:QGw0HLcF
――――
―――
――

ダイヤ「……今日はありがとうございました」

「いえ……その、私も楽しかったです」

「あ、いや、そうじゃないですね」

「えっと、楽しんでいただけたようで……」

ダイヤ「ふふっ」

「っ」

ダイヤ「落ち着いてください」

ダイヤ「私は十分、楽しかったんです。短い時間ではありましたが、温かみを感じる時間でした」

ダイヤ「大丈夫、自信を持ってください」ニコッ

「……」グッ

「黒澤さん!」

ダイヤ「……はい」

「その、まだ……二日しか知り合っていませんし」

「まだ、お互いのことは全然わかりません」

「ですが、でも……だからこそ」

「もう少し、知り合いたいと思っています」

「これからも、時々……会うことは出来ませんか?」

ダイヤ「………」

ダイヤ「……わたくしから促しておいて、申し訳ございません」

ダイヤ「今は、そういうことを考えられなくて」

「………」

ダイヤ「貴方は良い人ですわ。優しくて、一途で、一生懸命で」

ダイヤ「だからこそ、わたくしのような人間には勿体ない」

ダイヤ「……申し訳ありません」
264: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/16(火) 07:58:29.82 ID:C2Xfw8Qm
鞠莉「ダイヤ……」チラッ

ルビィ「よかったね、善子ちゃん」

善子「良くはないわよ……全然」

善子「まだ食い下がる感じがする」

ルビィ「大丈夫だよ」

ルビィ(お姉ちゃんが気に入ったのは事実)

ルビィ(でもだからこそ、お姉ちゃんは断る)

ルビィ(だって、ルビィのことがあるもんね)

ルビィ(……えへへ、優しいお姉ちゃん)

ルビィ「ほら、お姉ちゃんがごめんなさいしてる」

鞠莉「嬉しそうねぇ」

鞠莉「お姉ちゃんの恋が終わったのに」

鞠莉「普通、祝福するものじゃない?」

鞠莉「本当は嫌いなの?」

ルビィ「お姉ちゃんのことは好きだよ」

ルビィ「でも、だからってお姉ちゃんと男の人が一緒になるのは喜べないよ」

鞠莉「男の人が苦手だから?」

ルビィ「……壊れちゃうからだよ」
265: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/16(火) 08:14:49.19 ID:sXoyMVjm
ルビィ「壊れちゃいけないものが」

ルビィ「壊したらだめなものが」

ルビィ「……壊れちゃうからだよ」

鞠莉「それって、なに?」

ルビィ「秘密」ニコッ

善子「……この後ダイヤは用事あるって」

ルビィ「えっ? そうなんだ」

善子「送っていくとか言ってるんだけど」

鞠莉「追いかける? って言いたいけど、私もそろそろお暇させて貰うわね~」

善子「は?」

鞠莉「ソーリー!」

鞠莉「ちょっと用事が、ね?」

鞠莉「交際はお断りしたし、もう良いでしょ?」
266: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/16(火) 08:27:07.88 ID:sXoyMVjm
ルビィ「……もしかして、お姉ちゃん?」

鞠莉「ノンノン」

鞠莉「違うわよ、個人的な用事」

鞠莉「どうする? ここからならすぐそこにバス来るけど」

鞠莉「送っていく?」

ルビィ「……」チラッ

善子「用事あるんでしょ? バスがあるし良いわ」

善子「色々助かったわ、ありがと」

善子「お昼もご馳走になったし、感謝してるわ」

ルビィ「ありがとね、鞠莉ちゃん」

鞠莉「ええ」ニコッ

鞠莉「グッバイ」

鞠莉「……帰り道、ちゃんと気を付けてね」
267: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/16(火) 08:44:50.20 ID:sXoyMVjm
ルビィ「本当に追いかけなくて良いの?」

善子「鞠莉の車が無い以上無理でしょ」

善子「それに、ダイヤは断った」

善子「それならもう、大丈夫よ」

ルビィ「……そっか」

ルビィ「それにしても、鞠莉ちゃんは知ってるはずなのにあんまり聞いてこなかったね」

善子「なにあんた、鞠莉が様子見してるって気づいてたの?」

ルビィ「わかるよ~」

ルビィ「ルビィのことは果南ちゃんが知ってるからね」

ルビィ「話してるに決まってるもん」

ルビィ「警戒してるのに聞き出そうとしてきて」

ルビィ「知ってるのになぁ……って思ってた」

善子「あんた、性格悪くなったわね……」

ルビィ「え~? 変わってないよ?」

善子「それはそれでどうなのよ」

善子「むしろ、そっちの方が怖いわよ」

ルビィ「えへへ」ニコッ
268: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/16(火) 08:51:03.39 ID:sXoyMVjm
ルビィ「それじゃ、ここで解散しよっか」

善子「ん? 途中までは一緒でしょ?」

ルビィ「ルビィはもう少しゆっくりしていくよ」

ルビィ「ちょっと、疲れちゃったから」

善子「……そう」

善子「あんたは大丈夫だとは思うけど」

善子「帰りに気を付けなさいよ?」

ルビィ「それなら、一緒にいてくれても良いんじゃないかな」

善子「あんたねぇ……」

ルビィ「えへへ、うそうそ」

ルビィ「ちょっと寄り道したいんだ」

ルビィ「だから解散……心配してくれてありがとね」

善子「別に心配なんか……」

ルビィ「大丈夫だよ」

ルビィ「大丈夫、お姉ちゃんは男の人となんて付き合わないよ」

善子「……ええ、そうじゃなきゃ困るわ」
269: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/16(火) 08:58:50.30 ID:sXoyMVjm
ルビィ「……」

善子「……もし」

ルビィ「ん?」

善子「もし、あそこでダイヤがこれからも続けようとしてたら」

善子「あんたはどうしてた?」

ルビィ「……どうだろ」

ルビィ「あんまり考えてなかったよ」

ルビィ「断ってくれるって信頼があったからね」

ルビィ「でももし断らなければ」

ルビィ「男の人の車に乗り込んで」

ルビィ「……嘘つき」

善子「っ」ビクッ

ルビィ「とか、やってたかな」ニコッ

善子「そ、そう……」

善子(ダイヤ含めて後ろから刺し殺しかねないわね、ルビィは)

善子(……でも)

善子(大丈夫……断ってくれたんだから)

ルビィ「あ、バス来ちゃうよ」

善子「え、あ……」

ルビィ「また、明後日? かな」

ルビィ「ばいばい」

善子「ん、また月曜日」タタタッ
270: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/16(火) 09:04:56.15 ID:sXoyMVjm
―津島家・夜―


善子「っはぁ……」ボスッ

善子「良かった……ほんと」

善子(結局手を繋ぐこともなかったし)

善子(ダイヤは綺麗なまま)

善子(あとは、うまく相談に乗って頼って貰って)

善子(そこで距離を詰めて、気持ちを伝えて……)

善子「それで駄目なら……壊そう」ギュッ

善子(私のものになってくれないなら)

善子(私のものになってくれるように)

善子(でも、出来るなら……普通に付き合いたい)

善子(だって、良い顔してた)

善子(男に向けたものだったけど)

善子(でも、あれを隣で向けられたいと心から思った)

善子「だから、お願い」

善子(私に、あんたを壊させないで)
271: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/16(火) 09:13:09.67 ID:sXoyMVjm
ヴィー  
   ヴィー

善子「ん……電話?」

善子「誰よこんな時間に……」チラッ

善子「……ルビィ?」

ピッ

善子「もしもし、あんた何か――」

ルビィ『善子ちゃん!』

善子「っ……」

ルビィ『お姉ちゃんが……』

善子「は? 何? ダイヤがなんなのよ」

ルビィ『お姉ちゃんが帰ってこないの!』

善子「……え?」

ルビィ『善子ちゃんじゃないの? 善子ちゃんが……』

善子「ま、待って……ごめん、意味解んないわよ」

善子「ダイヤが……え?」

ルビィ『お姉ちゃんが、いなくなっちゃったの!』

善子(あまりにも突然で、信じられなくて)

善子(受け入れるわけにはいかなくて)

善子(ルビィの言ってることが、理解できなかった)
273: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/16(火) 12:23:05.34 ID:sXoyMVjm
善子「意味解らない……」

善子「なに言ってんのよ……は?」

善子「っ……」

善子「いつもの場所!」

ルビィ『わ、わかった!』

ルビィ『花丸ちゃんにも連絡しておく!』ブツッ

善子「ダイヤ……!」

ガタンッ
    ガタッ
  ドンッ

ガチャッ

善子母「ちょっと! こんな時間に何――」

善子「邪魔!」

善子母「痛っ……こら!」

善子母「待ちなさい! 今何時だと思ってるの!」

ガチャッ
   タッタッタッタ…

善子母「なんなの一体……」

善子母「追いかけ――」

プルルルルッ
   プルルルルッ

善子母「次から次へと、なんなの?」

善子母「……国木田さん?」
274: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/16(火) 12:42:37.51 ID:sXoyMVjm
―――――
―――
――

ルビィ「善子ちゃん!」

善子「ルビィ……花丸も先に来てたのね」

花丸「うん、電話が来てすぐに来たから……でも、善子ちゃんほどじゃない」ジッ

花丸「パジャマで出てくるなんて、焦りすぎずら」

善子「形振り構ってられないでしょ……」

善子「ルビィ、状況を詳しく教えて」

ルビィ「えっと、お母さんから聞いた話だけど」

ルビィ「お姉ちゃんが帰ってくる予定だったのは、19時」

ルビィ「今は22時」

ルビィ「20時の時点で何かあったんじゃないかって」

ルビィ「警察に連絡はしてたんだ」

ルビィ「でも、たった一時間だからってことで」

ルビィ「連絡を忘れているだけでは? 少し落ち着きましょうって」

善子「……はぁ!?」

善子「そいつなに考えてんのよ!」

花丸「善子ちゃん黙って、話が進まないよ」

善子「っ」

ルビィ「で、警察が役に立たないから21時までお姉ちゃんに電話したりしながら待ってたんだけど」

ルビィ「そこから30分経っても音信不通」

ルビィ「だから、もしかしたらって……」

善子「私に電話してきたわけね」

ルビィ「うん」

ルビィ「一応、21時の時点で鞠莉ちゃんたちにもお母さんが電話済み」

花丸「でも、そこにはいない」

花丸「……確かに、行方不明ずら」

善子「最初からそう言ってるでしょ!」
275: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/16(火) 12:51:15.54 ID:sXoyMVjm
花丸「善子ちゃん、まずは落ち着くずら」

善子「落ち着いてられるわけ――」

スッ...
    パンッ

善子「っ……」

花丸「慌ててもどうにもなら無い」

花丸「そんなことも解らないずらか?」

ルビィ「花丸ちゃん……」

花丸「二人は鞠莉ちゃんと尾行してたはず」

花丸「最後に見たのはどこ?」

ルビィ「えっと……海が見えるあの旧展望台のベンチのところ」

ルビィ「でもそのあと、お姉ちゃんは用事があるからって」

善子「……縁談相手に送ってもらってたわ」

善子「私達が見たのはそこまで」

花丸「追いかけなかったの?」

善子「鞠莉が用事があるって帰ったのよ」

善子「だから……」

花丸「そう、つまり縁談相手」

花丸「まずはその人に話を聞くずら」
276: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/16(火) 12:58:09.16 ID:sXoyMVjm
ルビィ「それならお母さんに聞いてみる!」

善子「……でも平気なの?」

善子「あいつが犯人だったら……」

花丸「それはそうだけど」

花丸「ダイヤさんを探すなら使えるカードは使うずら」

花丸「大丈夫、マルがどこにいくかはお祖父ちゃんたちに連絡しておく」

花丸「例え途切れても、マル達を見つけてくれるずら」

キキィー...

花丸「……?」チラッ

花丸「あ、あの信号のところの車!」

善子「え?」

善子「あ……ルビィ!」

ルビィ「へ?」

善子「あの車……間違いない」

善子「あの男のやつよ!」ダッ

ルビィ「えぇっ!?」

花丸「連絡が来て探しに出てるのか、なんなのか……」

花丸「会えばわかるずらよ」ダッ

ルビィ「っ……ルビィも行く!」
277: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/16(火) 14:52:48.99 ID:sXoyMVjm
ガンッ

「っ!?」ビクッ

花丸「善子ちゃんストップ!」

ガチャッ

「え、ちょっ」

花丸「開いてるずら」

花丸「こんばんは」ニコッ

「な、なんなんだ一体……」

「君たちは誰なんだ」

善子「誰? 黒澤ダイヤの知り合いって言えばわかるでしょ?」

「!」

グイッ

善子「ちょっと出てきなさい!」

「ま、待ってくれ!」

「危ない! 」

「停めるから、停めるから待ってくれ!」

ルビィ「善子ちゃん、一旦下がろ」

ルビィ「動いたら危ないよ」

善子「……」

善子「逃げたら殺すわよ」ジロッ

「わ、分かってる……逃げないから安心してくれ」

善子「さっさとしなさい」バンッ
278: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/16(火) 18:31:51.96 ID:sXoyMVjm
「……君達が黒澤さんの知り合いなら、詰め寄って来たのも察しがつくよ」

「黒澤さんがまだ帰宅していない件だろう?」

善子「なにその言い方、白々しい」

善子「あんたがダイヤを誘拐したんでしょ!」グィッ

「っ」

善子「返して……返しなさいよ!」

善子「ダイヤはあんたみたいなやつが一緒にいて良い存在じゃない!」

「待ってくれ!」

「私じゃない、私は彼女を誘拐なんてしていない!」

ルビィ「……フラれたから、とかじゃないんですか?」

「そ、そんなことしない……」

「確かに彼女にはフラれたよ」

「でも、そんなことは絶対にしない、していない」

善子「……ダイヤにフラれた後、あんた車でどこかに連れていってたわよね?」

「なっ……」

善子「どこに連れていったのよ」

「み、見てたのか?」

善子「どこに連れていったのかって聞いてるのよ!」
279: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/16(火) 18:45:28.78 ID:sXoyMVjm
花丸「善子ちゃん、感情的になってても話は進まないずらよ」

善子「うるさい!」

善子「あんたは居なかったからそんなこと言えるのよ!」

ドンッ

花丸「っ」ドサッ

善子「私は――」

花丸「だとしても!」

善子「!」

花丸「……だとしても、頭に上った血が答えを出してくれるわけじゃない」

花丸「冷静になるずら、善子ちゃん」

花丸「怒鳴っても、ダイヤさんは帰ってこないよ」

善子「………」

善子「くっ……」ジャリッ

ガンッ
   ガンッ
      ガンッ!

善子「はぁ……はっ……はぁ……」フルフル

ガンッ

善子「……どこに連れていったのか、教えて」

「う、浦の星女学院手前のバス停だよ」

「そこで降ろして欲しいって言われたんだ」

花丸「証拠は? 目撃者はいるずらか?」

「いや、時間も時間だったから……ない」

ルビィ「………」

「でも信じてくれ! 私はなにもやってない!」

善子「とかいって、車で逃げてたんじゃないの?」

「違う……これから黒澤さんを降ろした場所に行くんだ」

「警察にも伝えてある」
280: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/16(火) 18:56:37.06 ID:sXoyMVjm
花丸「この時間であの場所だと捜索は明日になる」

花丸「……それを狙った、とか」

花丸「色々言いたいことはあるけど、わかった」

花丸「今はそれを信じておくずら」

善子「花丸!」

花丸「いずれにしても、明日になれば何かが分かる」

花丸「それに、今からマル達に出来ることは何もないよ」

善子「なに言って――」

キキィー……バタンッ

善子母「善子!」

善子「なっ……」

花丸「どうせ連絡行くと思ってた」ハァ

善子「花丸……!」ジロッ

善子「私もいること伝えたわね!?」

花丸「それはそうだよ」

花丸「誰がいるのか確実につたえないと二次被害まっしぐらずらよ」
281: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/16(火) 19:04:41.54 ID:sXoyMVjm
善子「このっ――」

グィッ

善子「!」

善子母「いい加減にしなさい!」

善子「放して! ダイヤが……だって!」

善子母「話は聞いてるわ……残念だけど貴女達に出来ることはないのよ」

善子「っ……こいつが!」

善子「こいつがダイヤを誘拐したのよ!」

善子「私いたんだから……見てたんだからっ!」ジタバタ

善子「私がっ……私は……」ポロポロ...

善子「私……が……」

善子「私……っ」

ガクンッ

善子母「!」

善子「うぅ……」

善子「いたのに……!」

善子「ちゃんと、ちゃんと追いかけてれば……」

善子「追いかけてればダイヤは……」

善子「ぁぁぁぁあああぁぁぁああっ!!」ダンッ
282: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/16(火) 19:14:56.56 ID:sXoyMVjm
―――――
―――
―国木田家・翌朝―


花丸「……」

花丸(結局あの後、糸が切れた人形のようになってしまった善子ちゃんとマル達は)

花丸(善子ちゃんのお母さんにそれぞれの家に送り届けられた)

花丸(お見合いの男の人は言ってた通りに向かったらしく)

花丸(善子ちゃんの騒ぎもあってか)

花丸(自分から任意聴取を申し出て警察署にいると言う話)

花丸(マルが思っていた通り、ダイヤさんの捜索はつい一時間ほど前から始まっているみたいだけど)

花丸(めぼしい手がかりはまだ見つかってない)

花丸「善子ちゃん、大丈夫かな……」

花丸(マル達子供はとりあえず普段通りに。と言われたけれど)

花丸(何者かによる誘拐が濃厚で)

花丸(当然ながら1人や子供だけの外出は厳禁となってる)

花丸(……まぁ、マルはこれからお祖父ちゃんと一緒に学校の本を取りに行くけど)

花丸(お祖父ちゃんの予定もあるし、早い方がいいからね。仕方がない)
283: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/16(火) 20:17:58.03 ID:QGw0HLcF
花丸(たくさんの本。という話を聞いてか)

花丸(檀家の男の人も加えて、学校へと向かうことになった)

花丸(重い荷物と言うのは建前で)

花丸(お祖父ちゃんだけでは不安だっていうのは、容易に分かった)

花丸(あの黒澤家の長女が行方不明になった……という話は)

花丸(瞬く間に広がったという)

花丸(いや、広めた。というのが正しいかもしれない)

花丸(そうすることで地域全体の協力を得られる)

花丸(少なくとも、黒澤家の言葉を無碍にはできないし)

花丸(ここで恩を売っておけば、今後救われることだろうから)

花丸(そのせいか)

花丸(自分で誘拐して自分で助けるなんてマッチポンプをやっているのではないか)

花丸(そんな噂が聞こえてきているのは、気のせいじゃないと思う)

花丸(本当、黒澤家は大きい)

花丸(いろんな意味で大きすぎて、ルビィちゃんには背負いきれない)

花丸(善子ちゃんには得難い)

花丸(…………)
284: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/16(火) 20:45:52.59 ID:QGw0HLcF
花丸(朝から多くの人が出歩いている異様な景色を横目に、浦女へと辿り着く)

花丸(理事長である鞠莉ちゃんの連絡を受けて待機してくれていた警備員さんに駐車場の方の入り口を開けて貰う)

花丸(……流石に、学校にはいないずらね)

花丸(入り口は締まってて中には入れないから)

花丸(当然と言えば当然だけど……)チラッ

「よじ登れば入れますよね」

花丸「ダイヤさんはそんなことしないずらよ」

「それはそうかもしれませんが……」

花丸「それに、正門や駐車場の入り口はカメラがあるから」

花丸(少しわかりにくい位置にあるカメラを指さして、檀家のおじさんに伝える)

花丸(女子高というのもあって)

花丸(こんな辺鄙な位置にありながら、そういった防犯面の意識は高い)

花丸(残念ながら、抜けている部分もあるけど)

花丸「だから多分、あれの中身は見てると思う」

花丸「あれを見ても、ダイヤさんの姿はなかったんじゃないかな……」

花丸「防犯カメラの映像は夜でも見れるし……」

「……すみません」

花丸「ううん。それより、早く本をもって帰るずら」

花丸「あんまり長居してると、変に怪しまれそうで……嫌だから」

「そうですね」
285: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/16(火) 21:04:38.73 ID:QGw0HLcF
「おぉっ」ガクッ

花丸「わわっ」ギュッ

「……お、重いですね」

花丸「えへへっ、いくらでもって言われて沢山詰めちゃったずら」

「だからってひと箱に詰めなくてもよかったんじゃないですか?」

花丸「今更言われても困るずら」

花丸「詰める前のマルに、言ってきて欲しいずら」ニコッ

「そんな無茶なこと言わないでくださいよ」

花丸「ふふふっ」

花丸(ダイヤさんがいなくなって、不謹慎と言われるかもしれないけれど)

花丸(冗談を言って、笑う)

花丸(もしも過去に戻れるのなら、戻りたい)

花丸(でも、現実はそんなに優しくない)

花丸「……人生は振り返れるが、後戻りすることは出来ない」

花丸「まったくもって、もどかしいものずら」

花丸「………」

花丸「さ、戻ろっ」
286: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/16(火) 21:12:42.78 ID:QGw0HLcF
―――――
―――
――


花丸(ひと箱の大きな段ボールを積んで、車を走らせる)

花丸(さっさと帰ろう。そう思っていたマルだったけれど)

ルビィ「嘘だ!!」

花丸(男の人がダイヤさんを降ろしたと言っていた場所のすぐ近く)

花丸(上がった大きな悲鳴を聞いては、無視をするわけにはいかなかった)

花丸「おじさん、停めて!」

キキィ……
     ガチャッ
バタンッ

花丸「ルビィちゃん!」

ルビィ「ぁ……」

ルビィ「は、花丸ちゃん……これ……」

花丸「ルビィちゃん?」

花丸「……それ、なに?」

花丸(今にも崩れそうなルビィちゃんの手の中には)

花丸(薄汚れた何かがぽつんっと、置かれていた)

ルビィ「…………っ」

花丸「え?」

ルビィ「お姉ちゃんの、靴……」

ルビィ「お姉ちゃんの、左側の靴」

花丸「………」

ルビィ「茂みの中に落ちてたって」

ルビィ「どうしよう……どうしよう、花丸ちゃん」
288: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/16(火) 21:29:57.20 ID:QGw0HLcF
花丸(……駄目だったね、ルビィちゃん)

花丸(ルビィちゃんの殺す覚悟は、殺される覚悟じゃなかった)

花丸(ルビィちゃんの失う覚悟は、奪われる覚悟ではなかった)

花丸(だから、たった少しの違いでそんなにも……)

花丸「………」フルフル

花丸(いや、今はそうじゃないずら)

花丸「ルビィちゃん、しっかりして」

花丸「本当にダイヤさんの靴ずらか? 間違いないずらか?」

ルビィ「ルビィが、お姉ちゃんの靴を間違えると思う?」

ルビィ「……間違いないんだ。間違いなく、お姉ちゃんのなんだ」

ルビィ「でも、でも……」

ルビィ「でもね、ルビィは……!」

ルビィ「ルビィは……そうじゃないって、信じたいよ」

花丸「……そうずらね」ギュッ

花丸「そうじゃないって、信じよう」

花丸(見つかった左の靴)

花丸(なら、ダイヤさん自身は?)

花丸(ぽつりぽつりと、そんな言葉が聞こえてくる)

花丸(一体、何から逃げようとしたのか……そんな言葉が聞こえてくる)
289: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/16(火) 22:00:15.13 ID:QGw0HLcF
花丸「靴以外には何もなかったんですか?」

「靴が落ちていた辺りを重点的に探しているが」

「残念ながら、それ以外には何も」

花丸「……じゃぁ、逃げ切れたのかもしれないずらね」

ルビィ「……なら、どうして帰ってこないの?」

ルビィ「ううん、分かってる」

ルビィ「逃げ切れなかったんだ」

ルビィ「靴が脱げるくらいに頑張ったのに……逃げ切れなかったんだ!」

花丸「ルビィちゃん、落ち着――」

パシンッ

ルビィ「落ち着いてなんていられないよ!」

ルビィ「お姉ちゃんがいなくなったんだよ?」

ルビィ「こんな、かたっぽの靴だけ残して」

ルビィ「それで落ち着いてられるわけないよ!」

ルビィ「なんで、なんで花丸ちゃんはそんなに落ち着いていられるの!?」

ルビィ「おかしいよ!」

花丸「…………」

ルビィ「ぁ……」

ルビィ「……ご、ごめん」

花丸「ううん、気にしなくていいよ」

花丸(初めからずっと、自分でおかしいって言い続けてきてるのに……今更ずら)
290: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/16(火) 22:13:56.93 ID:QGw0HLcF
花丸(でも……忠告はしたはずなんだ)

花丸(中途半端な気持ちで、入ってきちゃだめだよ。って)

花丸(……仕方がないずらね)

花丸「ルビィちゃんは覚悟してたはずだよね?」

花丸「ダイヤさんを失うこと」

花丸「なのに、どうしてそんな取り乱してるの?」

花丸「……結局、ルビィちゃんはその程度だったんだね」

花丸「善子ちゃんにせよ、男の人にせよ」

花丸「いつか、誰かがこんなことをするって想像は出来たはずだよね?」

ルビィ「……っ」

花丸「それをしなかった、それから目を背けてた」

花丸「ルビィちゃんは中途半端だったんだ」

ルビィ「そんなことない……」

ルビィ「……そんなこと、ないっ」

ルビィ「覚悟はしてた、出来てた」

ルビィ「ただ……突然すぎただけ」

花丸(それは言い訳だよ)

花丸(それは、覚悟ができていなかった人の、言い訳だよ)

花丸「なら、覚悟はしておいたほうが良い」
291: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/16(火) 22:40:31.49 ID:QGw0HLcF
花丸「片方の靴しかない、ほかにダイヤさんのものは見当たらない」

花丸「ルビィちゃんが言ってたように、ダイヤさんはもう……」

ルビィ「っ」

花丸「だから、覚悟をしておいたほうが良い」

花丸「認めないなんて、目を背けないほうが良い」

花丸「……壊れるよ」

ルビィ「え?」

花丸「中途半端な覚悟は、ルビィちゃんを壊しちゃうよ」

花丸「二度と、戻れなくなっちゃうよ」

ルビィ「………」

花丸「どうする?」

花丸「今のルビィちゃんなら、元に戻れる」

花丸「ダイヤさんのことを悲しむことのできるルビィちゃんに戻れる」

花丸「でもきっと、それは辛いよ」

花丸「いちどでも、その背中を押してしまったのだから」

花丸「その中途半端な挫折は、永遠に……ルビィちゃんの足を引き摺らせてしまう」
292: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/16(火) 23:36:06.90 ID:QGw0HLcF
ルビィ「……分かってるよ」

ルビィ「大丈夫、ルビィはちゃんと分ってるよ……」

ルビィ「この前、背中を押したときに覚悟はしたんだ」チラッ

ルビィ「………」グッ

花丸(それでいいなら、マルは止めないよ)

花丸(でも、覚悟はしておいてね)

花丸(現実は、優しくないんだよ)

花丸(追い詰められた人にほど、非情にできているものなんだよ)

花丸「ルビィちゃんは、靴の件を聞かれるよね」

花丸「……マルはこのことは黙っておく」

花丸「特に、善子ちゃんに知られたら大変なことになりかねないからね」

ルビィ「うん」

花丸(……でも、動き出した歯車は止まらない)

花丸(明日には広まっちゃうかな)

花丸(警察は、男の人を捕まえるかな)

花丸(どうなるんだろう)

花丸「見つかると良いね」

ルビィ「そうだね」

花丸(何が。とは言わないでおく)

花丸(そうすれば、ルビィちゃんは笑顔でこたえられるから……)

花丸(けれど)

花丸(そんなルビィちゃんの気丈さをあざ笑うかのように)

花丸(その日の夕方、捜査を受け入れた縁談相手の男の人の車から、血の付いたダイヤさんの髪留めが見つかった)
295: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/17(水) 05:56:11.61 ID:SI/G5PXP
―津島家―
・一週間後


コンコン
   コンコン

善子母「……善子、部屋からでもいいから出てきて」

善子母「………」

善子母「善子……」

善子母「………」

善子母「ごはん、置いておくから」

善子母「せめてちゃんと食べて、お願い」

スタスタスタ...

善子「………」

善子「………」ギュッ

善子「ダイヤ……」

善子(一週間前、男の車からダイヤの髪留めが見つかった)

善子(ただ落ちてただけじゃない)

善子(血がついてたいたと、聞いた)

善子(DNA鑑定の結果は出ていないけれど)

善子(それがダイヤのもので間違いないことは)

善子(発見されたものと同じものを用意されて、みんなで確認した)

善子(確認、してしまった)

善子(ダイヤの血が流れたことを……認識してしまった)
296: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/17(水) 06:13:39.03 ID:SI/G5PXP
善子(男は自分じゃない、自分ではないと、否定をしているけれど)

善子(そんな証拠が出てしまった以上、言い逃れをすることは出来ず)

善子(任意同行ではなく、勾留が決まった)

善子(あれから毎日、事情聴取はされているらしいけど、一向に否定するばかりで何も進んではない)

善子(家宅捜索をしても何かが見つかることはなかったようで)

善子(ダイヤを暴行した凶器、あるいは拘束した道具)

善子(何の証拠もみつかってはいないため、捜査は難航しているらしい)

善子「どこ……どこにいるのよ……」

善子「ねぇ、ダイヤ……」

善子(髪留めが見つかったことで生存は絶望視され、人探しは痛い探しとなって)

善子(一般の人たちが探すことはなくなり)

善子(街中の警戒は薄まって、海で警察が多く見られるという)

善子「……そんなところにいないわよ」

善子「そんなところに、いるわけがない」

善子「だって、だって……ダイヤは」

善子「ダイヤは……」ギュッ
297: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/17(水) 06:20:56.70 ID:SI/G5PXP
ヴィーッ
       ヴィーッ

善子「……」チラッ

ピッ

善子「花丸……」

花丸『まだ、電話に出てくれるずらね』

花丸『出てくれなかったらどうしようかと思った』

善子「……どうなの?」

花丸『相変わらずずら。もうニュースになってるけど、あれ以降の情報は一切なし』

花丸『男の人は否定し続けてる』

善子「……ねぇ」

善子「あいつは、あの男は……死刑にできる?」

花丸『無理、だろうね』

花丸『逮捕されるし有罪になるにはなると思う』

花丸『でも、初犯だって聞いたし、物証は一つだけしかないから重いものにはできないと思うずら』

善子「………」

花丸『善子ちゃん、学校に来てよ』

花丸『みんな、待ってるよ』

善子「行ってどうするのよ……何があるのよ」

善子「みんな待ってる? でも、ダイヤはそこにいないじゃない」

善子「ダイヤが待ってるのは、どっか、誰も知らない誰も見つけられないような場所じゃない……!」
298: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/17(水) 06:30:47.92 ID:SI/G5PXP
善子「それに、私は多分……鞠莉に会ったら鞠莉を殺すわ」

善子「鞠莉が悪いわけじゃないのは分かってる」

善子「でもあの時、最後まで付き合ってくれていれば追いかけることが出来た」

善子「諦めることはなかったし、ダイヤがこんなことになることもなかった」

善子「……分かってる、理不尽だってことくらい」

善子「でも、許せないのよ」

善子「鞠莉も、自分自身も……」

花丸『……ダイヤさんがいなくなって、少しは冷静に考えられるようになったずらね』

花丸『それが理不尽だって分かってるなら大丈夫』

花丸『許せていないからだって理解してるなら大丈夫』

花丸『……だから』

コンコンッ

善子「………」

花丸「出てきて、善子ちゃん」

花丸「鍵を開けて、一緒に行こう?」

花丸「大丈夫、出てきたことを後悔させない」

花丸「善子ちゃんのこれからの責任は、マルが持つ」

花丸「善子ちゃんのことは、マルが絶対に守る」

花丸「善子ちゃんのことを、マルが絶対に幸せにする」

花丸「……だから、出てきて」
299: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/17(水) 07:20:05.85 ID:SI/G5PXP
善子「………」

善子「ねぇ、あんたはさ」

善子「あの男が犯人だって、思ってる?」

花丸「警察がそういうなら、そうかもしれない」

花丸「ダイヤさんの私物は左足の靴と、髪留めの二つしか見つかってない」

花丸「その中でも、男の人が絶対に関わっている。とされるのは髪留めだけ」

花丸「でも、血がついていて、ダイヤさんのもので間違いない。だから、あの人が犯人なんじゃないか。とは思う」

花丸「けど、逆に考えればその唯一無二絶対の証拠がなければなにもない」

花丸「……だから、髪留めについてた血のDNAを気にしてる」

花丸「善子ちゃんはどう思うの? それが偽装だって思うの?」

善子「偽装だとは思ってないわよ」

善子「そもそもそんなことが出来るような奴なんていないんだから」

善子「でも、花丸が言ったように髪留めを無視さえすれば誰が犯人なのか……分からない」
300: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/17(水) 07:31:02.19 ID:SI/G5PXP
善子「これは私の自己満足」

善子「ダイヤがどこかにいることを願ってのバカみたいなこと」

善子「でも……何もせず受け入れるなんてやっぱり、嫌なのよ」

花丸「……男の人の代わりに誰を疑うの?」

花丸「町の人? 県外の人? あげたらきりがないよ?」

善子「……警察が疑って、でも、物証によって疑われなくなった人」

善子「私が調べるのは、私たちのことよ」

ガチャッ

善子「付き合って、花丸」

花丸「……いいよ」

花丸「疑いを持てるのは、善子ちゃんが許せないから」

花丸「疑うだけの理由があるからなんだよね?」

花丸「だったら、そうしよう」

花丸「どんなことにだって、付き合ってあげるずら」

花丸「善子ちゃんがそれを望むのなら、付き合うよ」ニコッ

善子「……あんたのその顔、嫌いだったけど」

善子「今となっては、悪くないわね」

善子「行きましょ、ずら丸」

花丸「ずら丸……」

善子「なによ」

花丸「えへへ、何でもないずら」ニコッ
303: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/17(水) 08:05:17.04 ID:MIjOuxmd
―――――
―――
―浦女部室―

千歌「そんなの絶対おかしいよ!」バンッ

梨子「千歌ちゃん……」

善子「………」

千歌「警察から事情聴取されたり、その時間何してたのか聞かれたり」

千歌「ダイヤさんがいなくなって悲しいのは千歌達なのに……」

千歌「なのに、なのに今度は善子ちゃんが疑うの!?」

千歌「なんで? なんでAqoursの中で疑わなくちゃいけないの!?」

千歌「ねぇ――」

善子「………」

善子「……言いたいのはそれだけ?」

千歌「なっ」

曜「善子ちゃん!」ガタッ

善子「あまり感情に訴えないで、犯人に見えるわ」

ガタンッ
  ガタッ
     グイッ

果南「……謝りな」

善子「………」

果南「千歌に謝れって言ってるの」

果南「善子!」グッ

千歌「止めて!」
304: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/17(水) 08:16:50.77 ID:MIjOuxmd
千歌「やめて、止めてよ!」

千歌「嫌だよこんなの!」

梨子「千歌ちゃんの言う通りだよ!」

梨子「Aqours内で疑いあって、言い争って」

梨子「そんなことダイヤさんが望むわけない!」

花丸「でも、ここで完全に潔白を証明しておいた方がいいんじゃないかな」

曜「花丸ちゃんまで……」

花丸「感情云々は抜きにしても、ダイヤさんが自分のことでマル達が疑われてるのはよく思わないはず」

花丸「だからこそ、ここでみんなの無実を証明しておいた方がいいずら」

鞠莉「……一理はあるわね」

鞠莉「仲間内であること、掘り起こすこと」

鞠莉「この二点を除けば」

鞠莉「潔白の証明をしておくべきという話は納得できる」
305: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/17(水) 08:30:19.28 ID:MIjOuxmd
ルビィ「……ルビィも良いよ」

ルビィ「実は、ルビィも気になってたんだ」

ルビィ「お姉ちゃんが見つかる可能性があるなら、やろう」

果南「……」

パッ

果南「わかった、わかったよ」

果南「ルビィちゃんも賛成だって言うなら、私もとことんまで付き合ってあげる」

千歌「果南ちゃん……?」

鞠莉「待って果南!」

鞠莉「それは私が」

果南「……ごめん、鞠莉」

果南「もう悠長に構えてはいられなくなった」

果南「……目を背けるわけにはいかなくなった」

果南「階段でルビィちゃんがダイヤを突き飛ばしたのを見たのは、私なんだから!」
306: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/17(水) 08:36:40.96 ID:MIjOuxmd
曜「えっ」

梨子「嘘……」

千歌「嘘だよね? 何かの間違いだよね!?」

ルビィ「本当だよ」

ルビィ「ルビィはお姉ちゃんを突き飛ばした」

ルビィ「最悪死んじゃうこと、大怪我することが解ってて突き飛ばした」

曜「な、なに言ってるの……?」

曜「や、やめよ? さすがに冗談にならないって!」

善子「まだ冗談かなにかだと思ってるわけ?」

善子「おめでたい脳みそね、曜」

曜「っ」

善子「部外者三人……」

善子「そうね、話の邪魔するだけなら出てってくれない?」

善子「一応Aqoursだからって呼んだけど、邪魔だわ」
308: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/17(水) 08:55:21.95 ID:MIjOuxmd
千歌「……それは、できないよ」

善子「なんで? 邪魔なんだけど」

千歌「こんなこと見逃せない」

千歌「本当はさせたくない」

千歌「でも、千歌達関係なくやるなら……千歌は見届けないとダメなんだ」

千歌「Aqoursのみんなを集めたのは、千歌だから」グッ

曜「……だったら私も残る。千歌ちゃんの味方だもん」

梨子「そ、それなら私も!」

善子「……ハァ」

善子「それじゃせめて黙ってなさい」

善子「有意義な意見は……まぁ、聞いてあげる」

花丸「上から目線ずらね」

善子「うるさいわよずら丸」

善子「……ルビィ、続けて」
309: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/17(水) 09:06:05.72 ID:MIjOuxmd
ルビィ「ルビィにとって、お姉ちゃんは邪魔だったんだ」

ルビィ「黒澤って重荷を背負うから、お姉ちゃんというだけで頑張るから」

ルビィ「そのせいで、ルビィ達の関係を壊しちゃうのに」

果南「……正しいからこそ間違ってるとか言ってたのは?」

ルビィ「そのままだよ」

ルビィ「お姉ちゃんだから妹よりも頑張る」

ルビィ「長女だから家に尽くす」

ルビィ「その正しさが、ルビィにとっては間違いだったんだ」

鞠莉「それで、邪魔だから殺す?」

ルビィ「やりすぎだって言いたいのかな?」

鞠莉「……ええ」

ルビィ「もちろん、殺すことが目的じゃなかったよ」

ルビィ「ルビィはあくまで」

ルビィ「家名を背負わずにすむくらいに、東京にいかなくなるくらいに」

ルビィ「壊しちゃおうと思ってただけ」

果南「やりすぎだよ」

果南「もしそれが成功したとして」

果南「ダイヤはどうなるのか、考えてたの?」

ルビィ「それは大丈夫だよ……ね? 善子ちゃん」
310: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/17(水) 09:13:08.65 ID:MIjOuxmd
梨子「そこでなんで善子ちゃんなの?」

ルビィ「善子ちゃんはお姉ちゃんが好きだからだよ」

ルビィ「どれだけ壊れてても好きだって言ってた」

ルビィ「なにがあっても好きだって」

ルビィ「でも、お姉ちゃんは今のままじゃ絶対に善子ちゃんを受け入れない」

果南「だから、ダイヤから全部奪って受け入れるように仕向けようとしたってわけ?」

ルビィ「うん。失敗しちゃったけどね」

果南「ふざけてる……ふざけすぎてる」

鞠莉「……で、失敗したから殺したの?」

善子「………」

鞠莉「自分のものにならないなら殺してしまおう」

鞠莉「狂ってる人が考えそうじゃない?」

鞠莉「ねぇ……? 善子」
312: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/17(水) 10:58:05.96 ID:MIjOuxmd
善子「そうね、考えなかった。といえば嘘になるわ」

善子「……狂ってることは言い逃れできないし」

鞠莉「随分冷静じゃない……」

善子「冷静? 私が?」

善子「そんなわけないでしょ……いまにでも爆発しそうなほどにイラついてるわよ」

善子「……考えてすぐ、ダイヤを手にかけなかった自分自身にね」

善子「誰かにやられるくらいなら、私がやりたかった……」ギリッ

善子「……とにかく」

善子「私は殺意と動機を否定はしない」

善子「でも、私はやってないわ」

善子「あんたこそどうなのよ、鞠莉」

善子「かなり怪しいタイミングで抜け出したわよね?」

善子「ダイヤの言ってた用事って鞠莉と会うことだったんじゃないの?」

善子「生徒会長と理事長」

善子「呼び出す理由はいくらでも作れるじゃない」
315: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/17(水) 12:24:08.46 ID:MIjOuxmd
果南「鞠莉は違う」

果南「鞠莉はそんなこと――」

善子「あんたもよ、果南」

善子「黒澤と松浦」

善子「旧綱元と海での仕事を生業とするあんた達では過去に色々あったんじゃないの?」

果南「なっ」

善子「鞠莉は淡島と内浦……」

善子「名家の口利きで潰された計画があるんじゃない?」

鞠莉「………」

花丸「動機や殺意は考えれば考えるほどに増えていく」

花丸「それを探りあってても意味がないずら」

花丸「アリバイがあるかどうか」

花丸「それを話した方がいいんじゃないかな?」

善子「そうね……」
316: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/17(水) 12:40:58.92 ID:MIjOuxmd
梨子「アリバイって言っても時間は全く解らないよね?」

梨子「ダイヤさんがいつ、なにがあったのか」

花丸「警察からの事情聴取を参考にするずら」

花丸「そうずらね……みんなこう言われなかった?」

花丸「17時頃から19時頃までどこで何をしてたかって」

花丸「これは多分、ダイヤさんを確実に確認できた最後の時間から」

花丸「ダイヤさんに何かがあったであろう時間を持ってきてるんだと思う」

ルビィ「二時間の理由はなんなんだろう?」

花丸「恐らくだけど、男の人の車の出入りじゃないかな」

花丸「あの人を信じれば、その間に向こうにたどり着ける人」

花丸「そして、そこから戻れる人が候補に上がる」

花丸「二時間と言っても、18時に沼津駅にいたら」

花丸「向こうに行くバスがないから歩き、自転車、タクシーになるよね?」

花丸「移動は可能……でも、19時過ぎに戻りきれない別のお店にいたり」

花丸「他の誰かに目撃されていれば、一応のアリバイは成立する」

花丸「そうやって絞っていくんだと思う」

花丸「特に、淡島なんかは連絡船が無くなると難しいよね」

花丸「……まぁ、果南ちゃん達には手段があるけど」
317: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/17(水) 12:52:20.39 ID:MIjOuxmd
果南「………」

花丸「じゃぁ、まずは言い出したマルからずらね」

花丸「マルは沼津の料理教室を開いてるおばさんの家にいたずら」

花丸「土曜日の午前中はまれに保育園などでの読書会があってね」

花丸「そこにもおばさんがいるから、たまに料理を教わってるずら」

花丸「目撃証言はないけど、おばさんがその時間は一緒にいたことを証言してくれた」

花丸「時計を見てたから間違いないって」

花丸「因みに、読書会会場からおばさんの車で移動したことはそこの防犯カメラで確認済み」

花丸「……このくらいかな」

花丸「残念ながらそこまで信憑性はないね」
318: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/17(水) 12:56:33.23 ID:MIjOuxmd
ルビィ「……知り合いでも、ルビィよりはあるよ」

ルビィ「ルビィは善子ちゃんと別れた後……たしかバスがあったから17時20分かな」

ルビィ「そこで別れてホームセンターに行ったんだ」

ルビィ「そこで……えっと」

果南「何?」

果南「何かやましいことでも?」

ルビィ「……トンカチを買いました」

千歌「えっ」

ルビィ「家の勉強机を叩くためだよ?」

ルビィ「傾いてたし、ちょっとストレス発散になるかなぁって」

曜「なにそれ……黒じゃん……」

ルビィ「あはは……」
320: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/17(水) 14:55:49.92 ID:MIjOuxmd
ルビィ「それで、その後しばらく外にいたけど」

ルビィ「お店とかに入ってたわけじゃないから……アリバイはない」

ルビィ「バス停で待ってただけだけど」

ルビィ「証明してくれるような人もものもない」

ルビィ「手元にあるのはトンカチとレシートかな」

善子「限りなくクロいわね、あんた」

鞠莉「そうね……でも証明できないのは私達もよ」

果南「……そうだね」

果南「私と鞠莉は淡島で会ってたんだよ」

果南「モービルで迎えに行ったけど、人や船にはあってない」

鞠莉「家に行ったわけでもないから、カメラにも映ってないわ」

曜「何してたんですか?」

鞠莉「それは……」

鞠莉「ちょっと、今後の話をね」

善子「隠すと余計に怪しいわよ」

果南「……だろうね」

果南「正直に話そう、鞠莉」
325: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/17(水) 21:38:01.92 ID:MIjOuxmd
果南「私がルビィについて知ってるのはさっき話した通りなんだけどね」

果南「それについて、鞠莉と話してたんだ」

果南「ダイヤの縁談があったでしょ?」

千歌「千歌達は知らなかったけどね」

鞠莉「あまり知られたくなさそうだったから……ソーリー」

果南「話を進めるよ?」

果南「縁談の一件が終われば少しは落ち着くかもしれない」

果南「そう考えてたから、鞠莉に任せてたんだよ」

果南「それで終わった後にどんな様子だったのか話して」

果南「今後どう接していくべきか考えようってなってた」

果南「それが私達の予定であり、その日にしてたこと」

鞠莉「残念ながら、ルビィは余計に狂ってるとさえ感じたわ」

ルビィ「……だから犯人だって?」

果南「その可能性はあるよね……悪いけどさ」
326: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/17(水) 21:46:01.54 ID:MIjOuxmd
ルビィ「………」

果南「………」

千歌「あ、え、えっと!」バンッ

千歌「千歌達は――」

花丸「話は聞いてるよ」

花丸「千歌ちゃんと梨子ちゃんは十千万でお手伝いしてたんだよね?」

梨子「うっ」

花丸「カメラもそうだけど宿泊客からも証言は多くあって」

花丸「特に梨子ちゃんはその時間、麻雀してたって話ずら」

善子「……手伝い?」

梨子「違うの! 人が足りないからって!」

梨子「私、ルールも知らなかったのに……」

花丸「並び替えしなかったから気付かずに四暗刻を流したもんね」

梨子「仕方ないでしょ……もういいじゃないっ」
327: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/17(水) 21:55:47.93 ID:/yxHBKHa
曜「えーっと、私はうちっちーの中の人やってたよ」

曜「まぁ、バイトだね」

曜「証言と証拠はたくさんあるよ!」

曜「……誇っていいのかは、わからないけど」

善子「誇らなくても安心していいんじゃないの?」

善子「警察も認めたアリバイなら対象外でいいとは思うし」

ルビィ「そうすると……」カキカキ

ルビィ「梨子ちゃん、千歌ちゃん、曜ちゃんはシロ」

ルビィ「花丸ちゃんもシロだね」

ルビィ「……あ、善子ちゃんは?」

善子「私は家にいたわよ」

善子「お母さんがいたけど証拠になるのはマンション入り口の防犯カメラね」

善子「時間は……はっきり覚えてないけど18時頃だったわ」

ルビィ「うーん……」

善子「クロでいいわよ、はっきりしないし」

善子「クロは私とルビィ、鞠莉と果南ね」

鞠莉「庇いたくはないけど、善子のその時間が事実なら」

鞠莉「善子もシロじゃないかしら」

花丸「そうずら」

花丸「無駄に選択肢を増やしても仕方がないよ」サッサッ
329: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/17(水) 22:11:17.21 ID:/yxHBKHa
果南「私と鞠莉は互いが違うと解ってるから」

果南「そうなるとルビィちゃんになるんだけど……」

ルビィ「当然、ルビィもやってない」

花丸「確か、ルビィちゃんが買ったトンカチにはルミノール反応だっけ?」

花丸「血はついてなかったって話だよね?」

ルビィ「うん」

鞠莉「ブラフで用意した……という線は?」

善子「それを言うなら、あんた達だって共謀の可能性がある」

善子「二人がかりなら時間もかからないし余裕よね」

スッ

梨子「一つ、良いかな?」

果南「何?」

梨子「本当に男の人じゃないとして」

梨子「私達とも関係のない第三者ということはないのかな?」

花丸「その可能性もあるずらね」

千歌「そうだよ! きっと誰か別の人だよ!」

千歌「もう止めよ? ね? 止めよう!」
330: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/17(水) 22:23:41.85 ID:/yxHBKHa
曜「千歌ちゃん……」

千歌「アリバイを疑うのは警察だけでいいじゃん……」

千歌「もうやだよ……もう止めようよ」

鞠莉「正直、ここで話し合ってても埒が明かないとは思うわ」

鞠莉「大前提としてダイヤの髪留めを無かったことにする」

鞠莉「その時点で若干の無理があると思わない?」

ルビィ「ここだけの話、男の人は否定してるけどお母さん達はあの人が犯人だって話をしてる」

善子「ダイヤが見つかってないのに?」

ルビィ「否定し続けてるのは逃げ切るためだ」

ルビィ「そういうのが信じられちゃう状況なんだよ」

花丸「やっぱり、髪留めが大きいずらか……」

ルビィ「うん」

善子「………」

善子「じゃぁ聞くけど」

善子「あんた達はダイヤを諦められるわけ?」

善子「見つからないまま、いつか犬が骨を探り当てることを願ってるわけ?」

善子「正直に言うわ」

善子「私は犯人が知りたいんじゃない、ダイヤを見つけたいのよ」

善子「そのためなら誰のことでも疑う」

善子「Aqoursも、お母さんも、町も、警察も!」バンッ
331: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/17(水) 23:17:35.72 ID:SI/G5PXP
果南「やり方とか、色々気に入らないことはある」

果南「でも、善子のその気持ちが分からないわけじゃない」

果南「言い方は悪いけど」

果南「生死に関わらず、ダイヤを見つけてあげたいって思う」

果南「殺した奴だけが、ダイヤの眠ってる場所を知ってるなんて……そんなの許せない」

鞠莉「そうね……遺体だったとしても」

鞠莉「手厚く、しっかりと弔ってあげたい」

ルビィ「うん……生きてても死んでても」

ルビィ「知らない誰かが持っていて良いものじゃない」

ルビィ「邪魔ではあったけど、ルビィにとって大切なお姉ちゃんだから」

千歌「それは、千歌も分かるよっ」

千歌「ダイヤさんは千歌の憧れでもあった」

千歌「厳しいけど、優しくて」

千歌「頑張ったときに褒めてくれて、頑張りすぎると心配してくれて」

千歌「本当のお姉ちゃんではなかったけど、お姉ちゃんみたいで、好きだった」
332: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/17(水) 23:30:45.97 ID:SI/G5PXP
曜「私も好きだったよ」

曜「ダイヤさん、最初は堅物~って感じだったけど」

曜「実際はそんなことなくて、馴染み易くて」

曜「でも、不思議とダイヤ”さん”って呼んじゃう」

曜「……そんな、憧れの人だった」

梨子「生徒会長としてしっかりした一面と、ほんの少しズレた冗談を言うところや御茶目なところ」

梨子「そのギャップが可愛らしくて、可愛いと言われると照れくさそうにする」

梨子「その大人びた中にある愛らしさが、魅力的でした」

花丸「ちょっとしたことにもまじめに取り組んでくれて、困っているところにはすかさず手を差し伸べてくれて」

花丸「手を貸してくれたのに、自分の手柄を誇らしく言わずに誉めてくれて、認めてくれて」

花丸「頑張りましたね。って言う、柔らかい笑顔が可愛くて」

花丸「それなのに、時折見せる凛々しさが格好良くて」

花丸「ふとした時に、目で追いたくなる」

花丸「素敵で、魅力的で……マルは好きだったよ」
335: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/17(水) 23:54:53.62 ID:SI/G5PXP
善子「………」

果南「どうする?」

善子「どうするって、なにがよ」

果南「まだ、疑いたい?」

善子「……だった。だったって」

善子「まるで過去のことのように語ってるアンタらのことなんて、信じられないわよ」

花丸「思い出だからだよ。善子ちゃん」

花丸「それ以外の他意はないずら」

善子「……どうだかね」

善子「中には本当に過去のことで切り捨ててるやつがいるかもしれない」

梨子「善子ちゃん!」

善子「私は可能性の話をしているだけよ」

善子「二年生には確実なアリバイがあってよかったわね、梨子」

梨子「っ」

善子「ここで探りあってても意味はないしダイヤは見つからないってのは分かったわ」

善子「ずら丸、私は探しに行くけどついてくる?」

花丸「うん、善子ちゃんとならどこにでも」

善子「そ……じゃぁ行きましょ」ガタッ

果南「善子!」

善子「………」

果南「私たちはダイヤを殺してない……信じられないだろうけど、それだけは言っておく」
337: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/18(木) 00:08:25.04 ID:dibbinMT
ルビィ「ルビィはお姉ちゃんのこともあってお母さんが厳しいから手伝えない」

ルビィ「でもね? 善子ちゃん」

ルビィ「曜ちゃんと果南ちゃんは海に出てくれてる」

ルビィ「千歌ちゃんと梨子ちゃんは十千万で話を聞いてくれてる」

ルビィ「鞠莉ちゃんは学校のみんなや先生に話を聞いてくれてる」

ルビィ「花丸ちゃんはそんなみんなの情報をまとめたり、考えてくれてる」

ルビィ「善子ちゃんが家に引きこもってる間、みんなは頑張ってたことを忘れないで」

善子「……言うじゃない、ルビィ」

ルビィ「文句があるなら聞くよ」

ルビィ「殴りたいなら、受け止めるよ」

善子「いや、アンタが言ってるのは間違ってない」

善子「そうね」

善子「まぁ、ダイヤの件で頑張ってくれた……ってことくらいは」

善子「認めておいてあげるわよ」

ルビィ「花丸ちゃん、善子ちゃんをお願いね?」

花丸「うん、任せて」

善子「勝手に任せてんじゃないわよ」

善子「さっさと行くわよ、ずら丸」
339: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/18(木) 06:07:58.92 ID:dibbinMT
ーーーーー
ーーー
ーー

スタスタスタ
    タッタッタ...


善子「……ねぇずら丸」

善子「あんたはどう思う? Aqoursメンバーに犯人はいないと思う?」

花丸「どうかな……怪しいか怪しくないかで言えば」

花丸「怪しいって言える人はいるずら」

花丸「鞠莉ちゃんは、車で見つかった髪留めを無視するのは難しいって言ってたけど」

花丸「マルは、難しいからこそ一度考えから外したり、考え方を変えるとか」

花丸「そういった発想の転換が必要なんじゃないかなって、思う」

善子「それはまぁ……私も一理あるわ」

善子「でも、それでどうにかなるとは思えない」

善子「果南、鞠莉、ルビィ」

善子「アリバイのない3人の中で、一番可能性があるのはルビィ」

善子「階段で突き飛ばした前科、邪魔だと言っていた過去」

善子「それに、トンカチまで買ってた」

善子「私たちの中の誰かが犯人である。という前提なら、犯人は間違いなくルビィだと思う」
340: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/18(木) 06:19:46.04 ID:dibbinMT
花丸「それはどうかな」

善子「え?」

花丸「よく考えてみるずら」

花丸「アリバイがある人の中には、アリバイを絶対証明できてない人もいる」

タッ...
    クルッ

善子「……どういうこと?」

花丸「それだから、あれだから、こうだろう」

花丸「そういう先入観を持っていたらダメなんだよ」

花丸「よく考えて」

花丸「証言されたアリバイの中で、本当にその人である。という証明ができていない部分がある」

善子「……本当にその人じゃない部分?」

善子「………」

花丸「……着ぐるみずら」

善子「!」

花丸「その時間、その中はこの人だ。その先入観があれば、たとえ誰か代理を用意していても、それは渡辺曜になる」

善子「そういうこと……!」

花丸「うん、だから言われたことを鵜呑みにしないほうが良い」

花丸「常に、もしかしたら。という考えを持つのが、解決への糸口になるずら」

善子「一理ある」

善子「あんたを助手にしておいて良かったわ」

善子「そういう疑ってかかる捻くれた考え方するのは、今はずら丸くらいだし」

花丸「褒めてるようで、褒めてないよね?」
341: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/18(木) 06:35:54.93 ID:dibbinMT
善子「……とはいえ、髪留めや落ちてた靴にそれは適用できないわよね」

善子「別の誰かの同じもの。とかになる?」

花丸「そう言えないこともないけれど」

花丸「もしもそうだとしたら、別の事件が発覚するよね」

善子「血がついてたのは事実だから、そりゃね」

善子「……あのさ」

花丸「?」

善子「果南はモービルで迎えに行った。って言ってたわよね?」

花丸「そうずらね」

善子「でもその時に人に会わなかったし、船もなかった」

善子「けど、釣りしてる人はいたんじゃない?」

善子「果南が見ていないだけで、見ている人はいた。その可能性はあるんじゃない?」

花丸「果南ちゃんと鞠莉ちゃんのアリバイを証明するの?」

善子「気に入らないからって、私情を挟んでたら解決しないわ」

善子「気になるやつだからこそ、余計な先入観や偏見だったりに考えを囚われないように排除しておきたい」

善子「排除できなければ、出来ないでそういうことって考えられる」

花丸「……戻ってきたずらね。善子ちゃん」

善子「戻るも何も、私は私よ」

花丸「うんっ」ニコッ
343: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/18(木) 07:31:04.89 ID:dibbinMT
……ピッ

花丸「どうだった?」

善子「どこに迎えに行ったか教えてくれたわよ」

善子「疑われてるのに嫌そうな反応ではあったけど」

善子「好きなだけ調べたらいいよって、キレられたわ」

花丸「日頃の行いずらね」ニコッ

善子「うるさいわよ、アンタ」

善子「果南はみとしーの近くの海水浴場のところに迎えに行ったって」

善子「鞠莉はレンタカーだったから」

善子「それを返してから。ってことで、その場所になったみたい」

花丸「なるほど」

善子「……目撃者がいるかどうか」

善子「いると、楽なんだけど」

花丸「ちなみに、目撃証言はそこまで証拠にならないらしいずらよ」

花丸「聞いた話、三日後には75%の記憶が消えるらしい」

善子「あんたさ」

花丸「ん?」

善子「そういう、意地悪な横やり止めてくれない?」

花丸「ずらっ」ニコッ
344: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/18(木) 08:01:15.93 ID:r2V4ePeo
―――――
―――
――

善子「先週の土曜日なんですけど」

善子「こんなかんじの人、見かけませんでした?」

「ん~どれどれ?」

「おぉ~……」

善子「………」

「ん~もっと見せてくれ」

「……他の写真は無いのかね?」

善子「………」

善子「……ハァ」

善子「見たの? 見てないの!?」バンッ

「ひっ」

「み、みみみてない!」

「すまん!」ペコッ

善子「ったく……」

花丸「善子ちゃん、どうどう」

花丸「落ち着いて」

善子「なんなのよあいつら!」

善子「思い出す気ないでしょ!」

花丸「……スタイル強調するウェットスーツ着てる果南ちゃんの画像でしょ?」

花丸「仕方がないずら」

花丸「そもそもそんな写真、どこで?」

善子「千歌がくれたのよ」
345: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/18(木) 08:19:14.70 ID:r2V4ePeo
「ちょっと待ってくれ」

善子「何よ!?」

「まぁまぁ、そんな怒らないで」

「先週の土曜日って言えば第二土曜だろう?」

「その日ならもしかしたら、向こうの通りにある魚屋のじいちゃんが居たかもよ」

花丸「何かあったずら?」

「第二土曜はよくあの辺りで釣りしてるのを見るからね」

「確か定休日だったかな……趣味の時間にしてるんだろう」

花丸「……なるほど」

花丸「ありがとずら~」

花丸「善子ちゃん、行ってみよう」

善子「ええ」
347: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/18(木) 08:53:46.34 ID:r2V4ePeo
「あぁ、この子なら見たよ」

善子「本当?」

「あぁ、間違いないねぇ」

「大きな声でまり~! って呼んでたから気になってね」

「ついつい目を向けてしまってね」

「金色の髪の女の子に手を振って呼んでたよ」

「よく覚えてる」

善子「……そう」

花丸「警察からその事について話は聞かれたずらか?」

「警察? 警察なら黒澤さんの娘さんについては聞かれたけどねぇ」

「何か関係があるのかい?」

花丸「……同じ部活の仲間でアリバイがなくて疑われそうだったずら」

花丸「出来たら、警察にその事を話してほしいずら」

「そうか……そういうことなら任せなさい」
348: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/18(木) 09:07:56.33 ID:mZI90Tvg
善子「アリバイ成立……」

善子「ってことでいいのかしら?」

花丸「教えてない鞠莉ちゃんのことも知ってたし」

花丸「間違いないと思っていいんじゃないかな?」

善子「つまり、二人はシロ?」

花丸「17時半頃にみとしー近くにいて」

花丸「淡島に向かうのを見られてたとなると」

花丸「流石にまた戻ってきて」

花丸「ダイヤさんに会って、戻る。というのは無理じゃないかな?」

善子「……そうよね」

花丸「後はルビィちゃんのアリバイかな?」

善子「ええ、でも立証は難しいだろうから」

善子「近いし、まずはみとしーで曜のアリバイを成立させましょ」

善子「あんたのせいで、疑わしくなっちゃったのよ」

花丸「ごめんね」

善子「いいわよ別に……間違ってはないから」
351: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/18(木) 12:42:01.96 ID:QIHkHX0Y
「いやいやいや」

「ちゃんと渡辺さんだったよ」

善子「中身見たの?」

「中身って……」

「まぁそうだね、私は着ぐるみじゃなかったけど」

「一緒に着替えたし、休憩も一緒だったから間違いないよ」

「何? 例の事件、渡辺さんを疑ってんの?」

善子「一応の確認よ」

「渡辺さんはそんなことしない!」

「警察も来たけど、なんなの!?」

「確認確認ってさ、疑ってるからするんでしょ!?」

善子「否定はしないわ」

善子「それより、あんまり喚くと怪しいわよ?」

「なっ」

善子「バレそうで焦ってるように感じるから」
353: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/18(木) 13:02:02.96 ID:hZ4zdi5H
「ふざけないでよ!」

「渡辺さんも私も違う!」

「バイトしてたから証明できる!」

「だいたい、誰だって疑われたらこうなるよ!」

善子「……でしょうね」

善子「言っておくけど、疑われたのは私達もだから」

善子「自分達だけが被害者だとか思わないで」

「あんたみたいなのが渡辺さんの友達なんて信じられない」

善子「……そうね」

善子「信じられないものが、現実だってことでしょ」

善子「だからアリバイがあるのは、信じてあげるわよ」

「っ……出てけ!」
356: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/18(木) 15:21:18.83 ID:Dw9Ryu6f
花丸「喧嘩売りすぎじゃない?」

花丸「後が面倒だよ?」

善子「良いのよ……別に」

善子「ダイヤを見つけたところで結果は見えてる」

善子「言い換えれば、先を見据えてんのよ」クスッ

善子「あんたも嫌ならいなくなって良いのよ?」

花丸「こんなのは先を見据えてるとは言わない」

花丸「自棄になってるって言うずら」

花丸「それに……マルは別にどんな善子ちゃんでも良いって思ってる」

善子「は……?」

善子「あんたなに言ってんの?」

花丸「……分からないかな」

花丸「善子ちゃんのダイヤさんへの気持ちと一緒」ニコッ
357: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/18(木) 15:32:13.69 ID:Dw9Ryu6f
善子「え?」

花丸「善子ちゃんがどんなダイヤさんでも好きであれるように」

花丸「マルもどんな善子ちゃんだって愛せる」

花丸「本当だよ?」

善子「………」

花丸「………」ニコニコ

善子「……嘘っぽい」

花丸「ずらぁっ!?」

花丸「嘘じゃないよ!」

善子「あんた、全体的に嘘っぽいのよ」

花丸「そんなぁ……」

花丸「マルは――」

「あら? 花丸ちゃん?」

花丸「?」

花丸「あ、料理教室のおばさん!」
358: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/18(木) 15:44:05.30 ID:Dw9Ryu6f
「……そちらはお友達?」

善子「……津島善子です」

「よろしくね……善子ちゃん」

「それにしても大変ねぇ、黒澤さんの娘さん」

「私のところにも花丸ちゃんのことを聞きに来てねぇ……」

「そんなことする子じゃない!って追い返してやったわ」

花丸「うん、ありがとう」

善子「ちょうどいいわ」

善子「その話を詳しく聞きたいの」

善子「少し――」

パンッ

「それならウチに来なさいな」ニコニコ

「そんなお話だけじゃあれでしょう?」

「一緒にお料理しましょう、ね?」

善子「は? いや、私は」

グイッ

善子「ちょっ」

「良いから良いから」ニコニコ

善子「やっ、わっ……は、放せーっ!」

……ズルズル
359: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/18(木) 16:01:42.82 ID:Dw9Ryu6f
―――――
―――
――

チッチッチ…
    ボッ
  ジュー……
      コンコン

善子「……なんで料理しなきゃいけないのよ」

花丸「あーるぴーじぇーゲームの定番?」

善子「RPG!」

善子「それと、現実であってゲームじゃないわよ、ここは」

花丸「それはそうだけど、イベントだし」

善子「イベントいうなっ」

善子「ったく……なんなのよ……」

花丸「きっとおばさんなりの気遣いずら」

花丸「少しでも気を紛らわせようとしてくれてるんじゃないかな?」

善子「ただの善意の押し付けじゃない……」

花丸「嫌なら帰る?」

花丸「マルのアリバイ、疑われたくないし?」ニコッ

善子「絶対に帰らない」イラッ
360: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/18(木) 17:04:47.77 ID:dibbinMT
「お友達の為に話を聞いて回るなんて、友達想いねぇ」

善子「別にそんな理由じゃないわ」

善子「警察と一緒」

善子「怪しいと思うから、調べてるのよ」

「あらあら」

「でも本当は、怪しいと思わなくなるように、でしょう?」

善子「はぁっ!?」カシャンッ

花丸「ぁっ」

善子「そんなわけないじゃない!」

「みんなのことを疑いたくないから、信じたいから……」

「裏を返せば、ねぇ?」ニコニコ

花丸「うんうん」ニコニコ

善子「っざけんじゃないわよ!」

善子「そんなわけないでしょ……」

善子「私にはダイヤだけで良かったのよ!」

善子「ダイヤさえいてくれればそれでよかったのよ!」

善子「それなのに――」

ポンッ

「……落ち着いて」
361: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/18(木) 17:53:09.25 ID:dibbinMT
「善子ちゃん、黒澤さんの娘さんが大好きだったのねぇ」

「善子ちゃんが本当に言ってるって、強く感じるわ」

「その相手が大変な目に遭って、許せないっていうのも……強く、感じる」

善子「知ったようなこと――」

「ええ、そうね」

「でもその相手を想うのなら、相手の為に……相手の分も……」

「善子ちゃんは正しくいてあげなきゃね」

善子「っ……」

花丸「でも、それが簡単にできたら苦労はしない」

花丸「少しずつでいいずら」

花丸「ゆっくりでいいずら」

花丸「無理をさせたって、おぼつかない足では躓いて怪我をするだけだから」

花丸「背中を押す人は、押される人の顔を知らない」

「花丸ちゃん……」

花丸「だよね?」ニコッ

「そう、ね……ゆっくりで、いいのよ」
363: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/18(木) 18:32:33.72 ID:dibbinMT
「花丸ちゃんのことだったわね……」

「花丸ちゃんとは、その日の読書会の時に会ったわ」

「今日もおうちに寄っていく。という話をして……」

花丸「えっと、そのあとからで大丈夫ずら」

「あら、そう?」

「家に戻った後は……普通に料理をしていたわね」

「たしか……17時頃かしら」

「お肉が安くなっていたから、ハンバーグを作ったの」

「料理して、他愛もない話をしてね……気づいたら19時過ぎだったわ」

「それで花丸ちゃん、慌てて帰っていったの」

「でもその大慌てのせいで、また一時間後くらいに戻ってきたのよねぇ」

「花丸ちゃんったらね。携帯、忘れて行っちゃったのよ」

花丸「えへへっ」

花丸「ついついお話に夢中になっちゃった」
366: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/18(木) 19:10:59.61 ID:dibbinMT
善子「その19時過ぎって、具体的には?」

「ええと……確か、19時半少し過ぎね。35分まではいっていなかったと思うわ」

善子「間違いない?」

「ええ、そこの時計で確認したから大丈夫よ」

善子「ふぅん……そう」

善子「となると、約21時に戻ってきたってことになる」

善子「この場所からダイヤがいなくなった場所までは……」スッ

善子「行こうと思えば行けるわね。まぁ、時間的な問題もあって無理だけど」

善子「全力で行ってダイヤを殺して戻れば、可能性はあるけれど」

「あの場所まででしょう? タクシーでも使わないと無理よ」

「加えて、見つからない場所に娘さんを隠すとなったら。ね」

善子「……警察もアリバイとして認めたなら」

善子「向こうが持ってる情報を合わせても犯行は無理だってことになる」

「だから言ってるでしょう?」

「花丸ちゃんは、そんなことはしないって」ニコッ

善子「……そうかしら」

善子「私の友達に無害そうな奴はいたけど、人を殺す覚悟してたわ」

善子「分からないものよ、人間なんて」
367: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/18(木) 19:26:33.62 ID:dibbinMT
―――――
―――
――

スタスタスタ
     スタスタスタ

花丸「これで、あとはルビィちゃんずらか?」

善子「そうね」

花丸「ルビィちゃんのアリバイは証明できると思う?」

善子「さぁ?」

善子「話を聞く限りじゃ、難しいんじゃない?」

善子「まぁ、もしもルビィが殺していたら」

善子「あの慌てっぷりは相当な女優魂だわ」

善子「いつから計画して、練習してたんだか……考えるだけで、恐ろしいわね」

花丸「そうだね」

花丸「……本当に、あの人が殺したのかもしれないね」

花丸「マル達は、意味もなく疑いあってるだけなのかもしれない」

善子「意味ならあるわよ」

花丸「?」

善子「疑いが晴れれば、私に殺されなくて済む」
369: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/18(木) 20:03:55.79 ID:dibbinMT
花丸「……そっか」クスッ

善子「なに、笑ってるのよ」

花丸「ううん、ただね」

花丸「ただ……善子ちゃんは不器用なんだなぁって」

善子「はぁ?」

花丸「殺されなくて済む。なんて、相手の立場じゃなきゃ出てこないよね?」ニコッ

善子「言葉の綾よ」

善子「アンタみたいに、考えて発言してるわけじゃない」

善子「揚げ足取りはやめて、殺すわよ」

花丸「マルはダイヤさんを殺してないのに……」

善子「なんか気に入らないから」

花丸「えぇ……」

善子「冗談よ」

善子「アンタはうざいけど、嫌いじゃない」

善子「ダイヤを殺した犯人じゃないなら、殺したりしないわよ」

花丸「そっか、ならよかった」ニコッ

花丸「マルは、殺してないもん」

善子「ま、アリバイは成立したしね」
371: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/18(木) 20:13:59.14 ID:dibbinMT
花丸「……そういえば、ダイヤさんが殺されたとされる日から一週間だよね」

花丸「そろそろ、危ないかな」

善子「危ない? 何が?」

善子「ダイヤの生存――」

花丸「ううん、そうじゃなくて」

花丸「善子ちゃんがもし、ダイヤさんを殺した犯人として勾留されたらどうする?」

善子「もちろん、否定するわ」

花丸「でも、周りはみんな疑ってくる」

花丸「愛した相手を、お前が殺したと繰り返す」

善子「…………」

花丸「自分がその愛する人の姿を最期に見たのなら、その自責の念は……どれほどだろう?」

花丸「辛いだろう、苦しいだろう、悲しいだろう」

花丸「きっと、夢にまで見るほどの……苦痛だろう」

花丸「心が優しければ優しいほどその痛みは比例する」

花丸「だから、きっと……」フイッ

善子「ずら丸?」
372: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/18(木) 20:39:05.87 ID:dibbinMT
花丸「……ううん、なんでもない」

花丸「見つかると良いね、ダイヤさん」

善子「そうね……」

善子「できる限り早く、見つけてあげたいわ」

花丸「……そうだ」

花丸「善子ちゃん」

花丸「些細なことでも、ヒントになることがある」

花丸「ちょっとした出来事でも、自分の疑問にひっかけてみると」

花丸「案外、解けることがあるかもしれないよ」

善子「なるほど……分かった」

善子「考えてみるわ」

花丸「うん」

花丸「何があっても、めげたりしたらダメずらよ」ニコッ

善子「……?」

善子(ずら丸はきっと、分かってた)

善子(だからきっと、そんなことを言ったのだ)

善子(男は自責と悪意に耐え切れずに命を絶つ)

善子(それはつまり、ダイヤの居場所は二度とわからなくなってしまうということだと)

善子(だから、心が折れることはないようにと――念を押してきたのだと)

善子(私がそれを理解することが出来たのは)

善子(翌朝、容疑者自殺のニュースが流れてきたのを見てからだった)
379: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/18(木) 22:38:36.85 ID:dibbinMT
―――――
―――

―浦の星女学院:翌日放課後―


果南「………」

千歌「………」

鞠莉「………」

曜「……どう、なっちゃうのかな」

善子「どうなっちゃうって、何が?」

曜「ダイヤさんのこと」

曜「まだ見つかってないのに、男の人自殺しちゃったって……」

梨子「殺したから自殺したっていう話と」

梨子「殺していないから自殺したっていう話」

梨子「今朝のことなのに、凄く……」

花丸「仕方がないことずら」

花丸「死人に口はないけれど、意味はある」

花丸「……いずれにしても、これは大きいずら」
380: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/18(木) 22:53:28.53 ID:dibbinMT
ルビィ「お姉ちゃんのことは探してるけど、でももう……完全に遺体を探してるだけ」

ルビィ「警察の中には、バラバラにされてもう捨てられちゃったんじゃないか。なんていう話も出てるって……」

花丸「そんなこと言われたずらか?」

ルビィ「ううん……ルビィはお母さんたちの話を聞いちゃっただけ」

善子「でも、そう考えられてるってことでしょ?」

善子「そもそも、20時に通報した段階で取り合わなかったクズを処刑すべきだわ」

千歌「く、クズって……」

果南「善子のアリバイ探りは?」

千歌「果南ちゃんっ」

果南「男の人がシロなら、誰かがクロ。もちろん、私達以外の可能性もあるけどさ」

果南「まず私達はどうだったの?」

善子「ルビィ以外はシロ……って感じだったわ」

善子「良かったわね果南、鞠莉」

善子「二人を見てた人がいたからアリバイは成立したわ」

鞠莉「そうなの……? 成立、させてくれたのね」

善子「させたくてさせたわけじゃないわ。勘違いしないで」
381: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/18(木) 23:07:20.26 ID:dibbinMT
ルビィ「……あの、あのね」

ルビィ「本当は、言うべきじゃないと思うんだけど」

ルビィ「犯人は男の人だって、警察も、お母さんたちも考えているみたい」

ルビィ「……昨日、言ってたんだって」

ルビィ「私が悪いんです、私が……私が全部悪いんです。申し訳ありませんでした。って」

梨子「それって……」

花丸「心が限界だったんだろうね」

花丸「きっと、ダイヤさんを殺したことを聞いても、何を聞いても、それしか言わなかったんじゃないかな」

善子「……死ぬなら死ぬで、ダイヤの居場所を吐きなさいよ!」ガンッ

ガタッ
   ガタンッ

善子「なんで」

善子「なんで何も言わずに死んでんのよ!」ダンッ

善子「ふざけないで……ふざけないでよ!」

善子「白黒はっきりさせてから……死になさいよっ!」ギリッ

曜「善子ちゃん……」

鞠莉「ねぇ、どうするの?」

鞠莉「私たちの間で疑いあっても……もはやどうにもならないわ」

善子「なに? じゃぁ受け入れろっていうわけ!?」

善子「ダイヤが殺された、遺体も何もありません、でもこの世にはいませんって!?」

善子「あんたは、それで納得できるって言うの!?」

スッ...パンッ

善子「っ」

鞠莉「そんなわけないじゃない!」
382: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/18(木) 23:16:01.25 ID:dibbinMT
鞠莉「私だって否定したいわよ!」

鞠莉「私だって、ダイヤを見つけてあげたいって思ってるわよ!」

鞠莉「でも、どこにもいないのよ!」

鞠莉「一番の容疑者は自殺して、何があったのかさえ見当もつかない……」

鞠莉「絶対に信じたくない、バラバラにされちゃったっていう話を信じるしかない状況にまで来てるのよ!」

グィッ

善子「っ」

果南「鞠莉っ、やめな!」

鞠莉「自分だけが悲しいみたいなこといい加減やめて! 子供みたいに当たり散らして……」

鞠莉「そんなことで解決することなんてなにもないでしょ!」

千歌「鞠莉ちゃんまで……」

鞠莉「はぁ……はぁ……」フルフル

鞠莉「ソーリー……ベリーホット……」ガタンッ

鞠莉「善子の気持ちも、分かるわ」

鞠莉「でも、もう……」

善子「…………」

花丸「……今日は解散しよう」

花丸「その方が、良いと思うずら」
384: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/19(金) 05:48:25.22 ID:RIdKgN+F
梨子「そうだね、花丸ちゃん」

梨子「今日は、もう帰ろう?」

梨子「Aqoursの練習も……ダイヤさんがいないんじゃ……あれだし」

千歌「……Aqoursのことも、考えないとだね」

果南「っ」

果南「終わりにするの? 千歌」

千歌「ダイヤさんがいてこその、9人のAqoursだった」

千歌「もちろん、卒業して三年生がいなくなってもAqoursから人はいなくなっちゃうよ」

千歌「でもそれは仕方がないことで、当然のことで」

千歌「本当にいなくなっちゃうわけじゃなくて……」グッ

千歌「本当ならここにいたはずなのに」

千歌「きっと、千歌達はその気持ちを忘れられなくて、すべてが悲しくなっちゃう気がするんだ」

鞠莉「……そうね」

ルビィ「…………」

善子「一緒にいるから何があるってわけでもないし」

善子「それも致し方ないんじゃないの?」

ガタッ

善子「……私は帰るわ」

花丸「待って善子ちゃん、マルも一緒に行く」
385: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/19(金) 06:05:34.45 ID:RIdKgN+F
タッタッタッタ
     タッタッタッタ

善子「……もう付いて来なくていいのよ?」

善子「アリバイ探しなんて、なんか、あとルビィだけだし」

善子「きっと、証明できない」

花丸「善子ちゃん、諦めるの?」

善子「諦めたくて諦めるわけじゃない」

善子「でも、もう……」

善子「分かってるわよ、鞠莉に言われなくたって」

タッタッ.....
     キュッ

花丸「………」

花丸「そっか」

花丸「それが、善子ちゃんの決めたことなら仕方がないね」

花丸「善子ちゃん、また明日ね」ニコッ

花丸「絶対、絶対だよ?」

善子「……」

善子「そんな心配しなくても、死にはしないわよ」
386: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/19(金) 06:15:26.84 ID:RIdKgN+F
―――――
―――
――


善子「…………」

善子(……死ぬつもりはない。ね)

善子(生きててもどうしようもないけど、死んでもどうしようもないのよね)

善子(いや、死ねばダイヤに会えるかしら)

善子(ねぇ、枕元に立ってくれたりとかしないの?)

善子(こっくりさんでもやる?)

善子(必要ならウィジャ盤だって用意するわよ?)

善子「……なんて」

    タッタッタッ
        タッタッタッ
  ドンッ!

善子「っ!」ドサッ

善子「いった……あんたねぇ!」

「ご、ごめんなさい……先を急いでて」

善子「だったら前見て走りなさいよ!」

「うん、ごめんね? 怪我はない?」

善子「大丈夫よ……触らないで」
387: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/19(金) 06:25:53.92 ID:RIdKgN+F
「本当にごめんね!」

「――あっ、たっくん~!」

タッタッタッタッ

「あっ、間違えた……すみません」

プップ~
       ゴッメーン
オマエマタカ...
          ゴメンッテバ

善子「なんなのよ、あいつ」

善子「デート相手間違えてどうすんだか……」

善子「はぁ……」

善子「呑気ね、周りは」

善子(ダイヤがいなくなったことなんて、あまり関係がない)

善子(だから、時間が経てば我関せずにいつも通りになっていく)

善子(ダイヤなんて、初めからいなかったかのようになっていく)

善子(Aqoursファンだってそれは例外じゃなくて)

善子(また別の誰かに夢中になって、忘れるのよ)

善子「……みんな死ねばいいのに」
388: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/19(金) 07:17:31.99 ID:RIdKgN+F
善子(なんで、ダイヤが死ななくちゃいけなかったの?)

善子(なんで、ダイヤが殺されなくちゃいけなかったの?)

善子(あのバカな女で良いじゃない)

善子(金持ちじゃなくちゃダメだったって言うなら)

善子(鞠莉がいるじゃない)

善子(なんで、どうして……)

善子「ダイヤ……」

善子「会いたい、見たい、触れたい、触れて欲しい」

善子「もしも、もう一度会うことが出来たら」

善子「もう二度と、手放したりしないから……だから」

善子「あと一度だけ……会いたい」

善子「あんたはどこにいるのよッ!」

善子「っ……」

善子「どこに、いるのよ……」
390: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/19(金) 07:31:51.35 ID:RIdKgN+F
善子(ずら丸はめげるななんて言っていたけれど)

善子(こんなの、堪えられない)

善子(どこにもいない、見つからない)

善子(知ってるであろう容疑者は)

善子(否定をし続けて、自殺した)

善子(手がかりは、なくなったのよ……)

善子(……ずら丸)

善子(あんたはヒントをくれたけど、答えはくれない)

善子(あんたに出せない答えが、私に出せるとは思えない)

善子(……悔しいけど、アンタは私よりも解決する力がある)

善子(っ……)

ガンッ

善子(……そういえば、ちょっとしたことでも解決のヒントになるかもって、言ってたわね)

善子「……なにがよ」

善子「そんなもの、どこにもないじゃない」
392: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/19(金) 08:43:17.33 ID:6z7Wr4sU
>>391訂正

善子(あんたはきっと、解ってたのよね)

善子(容疑者の男が死ぬことも)

善子(この事件に関する情報だけでは解決出来ないことも)

善子(じゃなきゃ昨日、あんなこと言わないわよね)

善子(そんなあんたが最後に言ったのは)

善子(ちょっとしたことでも解決の助けになるってこと)

善子(めげないでってふざけた励まし)

善子「……解ってて言うことじゃない」ギリッ

善子(やっぱり私はあんたが気に入らない)

善子(私が諦めるって言ったときの残念そうな顔)

善子(去り際の心配そうな顔)

善子(なによあれ……)

善子「あぁ、思い出したらイラついてきた!」ガンッ

善子「……」ヒリヒリ

善子「良いわよ、分かったわよ!」

善子「ずら丸……あんたの煽りに乗ってあげる」

善子「諦めるのはそれが終わってからにするわ」
393: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/19(金) 08:53:08.53 ID:6z7Wr4sU
―――――
―――
――

善子「ちょっとしたことやどうでもいいこと」

善子「……その前に」

善子「そう、先入観に囚われたらダメなのよ」

善子「ずら丸も言ってたじゃない」

善子「先入観によって誤認することもある」

善子「ちょっとしたことでも……」

善子(例えば、デート相手を間違えるあの女)

善子(どう考えてもバカだけど)

善子(実は可愛く思われたくて天然演じてる頭脳派かもしれない)

善子「……なんて」

善子(……確かに、確証のない決めつけは早計ね)

善子(常に肯定と否定で意見を対立させる)

善子(そうすることで、なにか気づくことができるかもしれない)

善子「……やるわよ、ヨハネ」

善子「私とあんたでずら丸のイラつく顔に答えを叩きつけて」

善子「ダイヤを見つけるのよ!」バサッ
394: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/19(金) 09:15:32.91 ID:6z7Wr4sU
善子「まず、大前提として何がある?」

善子「男の車で見つかった血塗れの髪留めがダイヤのものであること」カキカキ

善子「これはほぼ確定してる」

善子「そしてそれこそが、男が犯人であると言う決め手」

  カキカキ…
      サッサッ

善子「なら、まずはそれを無かったことにする」

善子「それに答えを出さなきゃ先に進まない」

善子「でも、そう……」

善子「式無しに答えを書いていても」

善子「頭の中では式が組み立てられている」

善子「つまり、答えを出すには式がいる」

善子「答えから式を求めてはいけない」

善子「今はまず、今ある問題から……式を作り出せばいい」

善子「間違っていても」

善子「それは間違っているという正解なんだから」
396: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/19(金) 12:25:03.80 ID:6z7Wr4sU
善子「ならここにある問題は?」

善子「一つ、血濡れの髪留め」

善子「二つ、男の車」

善子「そしていつ、仕組まれたのか」

カキカキ
   トンッ……トンッ…

善子「まず髪留め」

善子「これはダイヤを殺してからでしか入手は不可能」

善子「ただの髪留めならともかく、血濡れならそれ以外にはない」

善子(病院関係者とか例外はあるけど)

善子(問題を広げても意味はない)

善子(まずは例外を省いて純粋な式で試す)

善子「ダイヤを殺してからの場合」

善子「髪留めを仕込むことが出来るのはダイヤが消えて以降になる」

善子「……なら車に仕込めた人は?」
397: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/19(金) 12:29:54.73 ID:6z7Wr4sU
善子「一つ、ダイヤ本人のダイイングメッセージ」

善子「二つ、車所有者である男の身内」

善子「そして……」

トンッ…
   トンッ…

トンッ……
      タンッ

善子「……私達ね」

善子「ダイヤが消えて以降である場合」

善子「その連絡を受けて集合し」

善子「交差点で信号待ちしていた男に会ったから」

善子「そこで髪留めを仕込むことが出来たんじゃない?」
399: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/19(金) 12:35:59.68 ID:6z7Wr4sU
善子「ただし、ここで問題が生じる」

カキカキ

善子「私達三人の内、私は言わずもがなやっていない」

善子「ずら丸も犯行が行われた時刻にはアリバイがあった」

善子「つまり、3人の中に犯人がいるならルビィになるわ」

善子「でも……」

トンッ…
    トンッ…

善子「それはあまりにも怪しすぎる」

善子「警察が疑ってないはずがない」

善子「捜査だって絶対に行われてるはず」

善子「……いや、だからこそ血濡れの髪留めを仕込む必要があったとしたら?」

サッサッ
   カキカキ

善子「そうすることで、目を欺こうとしていたら?」
402: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/19(金) 12:48:21.50 ID:6z7Wr4sU
善子「……分かったわよ、ずら丸」

善子「ここで逆転の発想ね」

善子「黒過ぎる黒は、逆に白である」

善子「なぜなら、殺したことを疑ってと言わんばかりの状況」

善子「それでありながら、自分ではないという否定」

善子「意味がわからない……愉快犯?」

善子「違う……あのルビィなら自分だと名乗りあげる」

善子「……そして、発想の転換をするなら」

善子「ずら丸……あんたが怪しくなってくる」

善子「明らかに計画的なスケジュール」

善子「犯行が行われたとされる時間後の慌てていたという話」

善子「切り替えれば当然、怪しい」

善子「もっとも、あんたはデートの一週間前から用事があるって言ってたから」

善子「計画的なのは必然よね」

善子「読書会だっけ?そういうのは半月以上前から予定に組み込まれてるだろうし」

カキカキ

善子「でも、一応あんたを候補の一つとして次にいかせて貰うわ」
403: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/19(金) 12:55:29.02 ID:6z7Wr4sU
善子「逃げた先にあったとされる靴」

善子「普通なら、逃げてそこまで行ったけど捕まった」

善子「そう考える……」

善子「え……それ以外にある?」

善子「いや……言ってたじゃない」

善子「先入観を持たないことが大事だって」

善子「そう、そうね」

善子「靴があるのは逃げたから」

善子「まずその先入観を捨てるわ」

善子「逃げたのではなく、逃げたと思わせるために置いたとしたら?」

善子「車の中の髪留めみたいに、勘違いさせるための手段」

善子「その可能性が、あるんじゃないの?」
407: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/19(金) 17:33:00.96 ID:6z7Wr4sU
善子「……どうしてそんなことする必要があったの?」

善子「逃げるような相手だと思わせるため?」

善子「つまり……何かしてくることを疑う必要のない相手……」

善子「それなら、ルビィは絶対にあり得ないんじゃない?」

善子(階段で突き飛ばしてくるようなやつを警戒しないわけがない)

善子(そうじゃないとしても)

善子(あのルビィを甘く見れるわけがない……)

善子(だから、きっとルビィじゃない)

善子「ということは……ダイヤの用事の相手は」

善子(ずら丸? それとも、親?)

善子(あるいは、学校の先生とか?)

善子(いや……時間的にないわ)
408: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/19(金) 18:39:31.09 ID:6z7Wr4sU
善子「車に髪留めを仕込むことが出来て」

善子「ダイヤに怪しまれない奴」

善子「……いやいや」

善子「待って、おかしい……」

善子「それだとずら丸になる」

善子(問題を削りすぎた?)

善子(だって、ずら丸は私に協力してくれたし)

善子(ここにたどり着くまでのヒントだってくれた……)

善子(逆転の発想?)

善子(木を隠すなら森の中……?)

善子(怪しまれないための協力?)

善子「……」

善子「いや、だって……ずら丸にはアリバイがある……」

善子「でも……」

善子「っ!」バンッ

善子(……何をバカなことを)フルフル

善子「助けられてるからって情をうつすな!」

善子「あいつは……あいつが、ダイヤを殺したかもしれないんだから」

善子(証拠は少ない、勢いまかせにも程がある)

善子(でも、ずら丸がもし計画的にやっているなら)

善子(私の中途半端な疑いに対して)

善子(バレていない安堵から)

善子(ボロを出してくれるかもしれない)

善子(……望みは薄いけど、成す術がないならやるしかない)

善子(闇雲でも、がむしゃらでも……ダイヤに届く可能性があるなら)

善子(それでもし、ずら丸がダイヤを殺していたら……)

善子(その時は……報いを受けてもらうわ)
409: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/19(金) 18:52:20.01 ID:6z7Wr4sU
―――――
―――
―Aqours部室:放課後―


花丸「昨日の今日で、どうしたの?」

花丸「みんなは?」

善子「呼んでないわよ、あんただけ」

花丸「マルだけ……?」

花丸「はっ!」

花丸「ま、まさか告白ずらか……!?」

善子「……調子いいわね、あんた」

善子「アリバイが成立して安心してるってわけ?」

花丸「え?」

善子「昨日、ずっと考えてたわ」

善子「あんたに言われた先入観の罠、逆転の発想」

善子「それでもしかしたら別のなにかが見えてくるんじゃないかって」

花丸「……それで、見えたずらか?」

善子「ええ」

善子「……あんたよ。あんたがダイヤを殺したって可能性が見えたわ!」

花丸「……そっか」

善子「………」

花丸「どうしてか教えてほしいずら」ニコッ

善子(その、底の見えない余裕の笑顔)

善子(その不気味さが……怪しいのよ。ずら丸)
410: 名無しで叶える物語(茸) 2019/04/19(金) 19:04:33.19 ID:6z7Wr4sU
善子「一番ネックだった車にあったダイヤの髪留め」

善子「あんたなら仕込むことができるでしょ?」

花丸「……正確には、マル、ルビィちゃん、善子ちゃんの3人ずらね」

善子「っ」

花丸「あの日、マル達は犯行推定時刻よりもあとにあの人と会った」

花丸「その時に最初にドアを開けたのはマルだった」

花丸「そうずら……疑う理由にはなる」ニコッ

花丸「でも、それだけだと不十分じゃないかな?」

花丸「善子ちゃん本人は除くとして」

花丸「ルビィちゃんにも可能性はあるはずだよね?」

善子「……ええ、そうよ」

花丸「だとしたらルビィちゃんではない確実な証拠や」

花丸「マルである確実な証拠を提示して欲しいずら」

花丸「そんな不正確な疑いは、流石に困るずら」
413: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/19(金) 20:47:28.30 ID:RIdKgN+F
花丸「それで、善子ちゃん」

花丸「まさかそれだけじゃないよね?」

善子「……片方だけの靴」

善子「あれは、ダイヤが相手から逃げたと誤認させるための物って線はない?」

善子「逃げたと考えさせることで、相手が親しい間柄ではないと思い込ませるのよ」

花丸「……えぇ」

善子「なによ……言いたいことがあるなら言いなさいよ」

花丸「まず一つ、殺されかけたらだれが相手でも逃げるずら」

善子「ぐっ」

花丸「二つ、ダイヤさんはマルを相手に警戒しないわけがない」

花丸「善子ちゃんに話してないかな?」

花丸「マルはルビィちゃんについてダイヤさんと話したずら」

花丸「ルビィちゃんをおかしくしたのは花丸さんでしょう? って」

善子「そんな話――」

花丸「知らなかったなら、仕方がないずらね」

花丸「でも、知らないならそれはマルが勝手に言ってるだけかもしれない」

花丸「だから、別の考え方をするずら」
416: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/19(金) 21:07:12.36 ID:RIdKgN+F
花丸「善子ちゃんはダイヤさんと話したりしなかった?」

善子「……したわよ」

善子「ルビィに突き落とされかけたことは話してくれなかったけど」

善子「縁談が落ち着いたら。と、言われたわ」

花丸「そっか、ならいい感じだね」

善子「良い感じ?」

花丸「ルビィちゃんがおかしくなったのは、縁談の話が来てから」

花丸「そして、ダイヤさんはそんなルビィちゃんに突き落とされかけてしまった」

花丸「ダイヤさんが抱えていた悩みで、かつ、縁談が落ち着いた後なら話せるということは」

花丸「十中八九、ダイヤさんが抱えていた悩みはルビィちゃんのことだよね?」

花丸「ということは、デートの後の予定はルビィちゃんと……だったんじゃないかな?」

善子「なっ……」

花丸「そこで話す予定があった」

花丸「そこで解決する予定だった」

花丸「でも、結果は……」

善子「ダイヤが、殺された?」

花丸「確か、ルビィちゃんにはアリバイがなかったよね?」ニコッ
417: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/19(金) 21:23:47.61 ID:RIdKgN+F
善子「い、一理……ある」

花丸「……よくよく考えれば、こうやって答えは出てくるものずら」

花丸「どうする?」

善子「え?」

花丸「ルビィちゃんが犯人で良い?」

花丸「マルのはあくまで仮説だよ」

花丸「もしかしたら善子ちゃんが見逃してる何かがあるかもしれない」

花丸「そのせいで決定的な証拠が得られなくて」

花丸「ルビィちゃんを疑うことになっちゃってるかもしれない」

善子「……またそうやって、アンタは迷わせようとしてくる」ギリッ

善子「なんなのよ、なんなのあんた!」

花丸「………」

善子「本当は犯人が分かってるんじゃないの!?」

善子「私が気付いてないことにも気づいてて」

善子「それに気づくかどうか楽しんでるんじゃないの!?」

花丸「……どうだろう」

花丸「善子ちゃんはどう思う?」

善子「どう思うって、あんたのことでしょ!」バンッ
418: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/19(金) 21:42:33.57 ID:RIdKgN+F
花丸「ねぇ、善子ちゃん」

花丸「善子ちゃんはどんなダイヤさんでも愛せるんだよね?」

花丸「なら、屍姦もいける?」

善子「し……かん?」

花丸「死体も愛せる人ってい――」

グイッ
    ズダンッ
 カタッ
    コロコロ....  

花丸「っは……ぁ……」

ガタガタッ
     ガタッガタンッ

花丸「げほっけほっかはっ……はっ……げほっけほっ」

花丸「い、痛い……流石に、机に叩きつけられるのは、痛いずら……」サスサス

善子「何言ってんのよアンタ」

花丸「マルはただ、そういうのも平気なのか聞いただけだよ?」

善子「言っていいことと悪いことがあるでしょ!」

花丸「だって、もしもバラバラの遺体だったらどうする?」

花丸「ダイヤさんだと分からないような……肉片、砕けた骨、陥没した――」

善子「やめて!」

花丸「………」

善子「……なんなのよ、あんた」
420: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/19(金) 22:08:09.31 ID:RIdKgN+F
善子「困ってる私がそんなに面白いの!?」

善子「ダイヤを奪われた私が、どんな風になるか……」

善子「どう遊べるか……楽しんでるの?」

善子「なんなの、なんなのよ……」

花丸「面白いとか、楽しむとかじゃなくて」

花丸「ただ、幸せなだけだよ」

花丸「言ったずら」

花丸「マルは、善子ちゃんが好きだよって」

善子「なら、それなら……もうやめて」

善子「分かってるなら教えて……ダイヤはどこにいるの?」

善子「犯人は誰なの?」

花丸「………」

花丸「……そうずらね」

花丸「ねぇ善子ちゃん」

花丸「ダイヤさんのデートのところにいたのは、誰だった?」

善子「……は?」

花丸「誰だった?」
421: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/19(金) 22:27:00.01 ID:RIdKgN+F
善子「男、ダイヤ」

善子「私と、ルビィと、鞠莉」

善子「赤の他人を除けばそれだけだけど……それが?」

花丸「じゃぁ、大事な質問をするから」

花丸「良く思い出して、ちゃんと考えて、答えるずら」ニコッ

善子「大事な質問?」

花丸「うん」

花丸「善子ちゃんが見逃してる、大事な質問だよ」

善子「………」

花丸「善子ちゃんたちは、あの日、ダイヤさんの行方不明の話を聞いて集まった」

花丸「話の途中、ダイヤさんのデート相手の男の人を見つけて、声をかけた」

花丸「その男の人に気付いたのは、誰だったずら?」

善子「誰って……何言ってんのよ」

善子「あんたでしょ」

善子「あんたが信号待ちしてる車を見つけて――」

花丸「うんうん」ニコニコ

善子「……え?」

花丸「うん?」

善子「…………」

善子「……あんた、どこであの車が男のだって知ったの?」
422: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/19(金) 22:53:48.08 ID:RIdKgN+F
花丸「1、実はこっそりついてきてた」

花丸「2、鞠莉ちゃんやルビィちゃんとつながっていて情報を送ってもらっていた」

花丸「3、男の人がダイヤさんを送り届けた先で、見ていた」

善子「な……」

善子「あんた……アリバイがあるんじゃなかったの?」

善子「朝は読書会でいなかった……それは、確実」

善子「ルビィと鞠莉が情報を流してるような様子はなかった……」

善子「つまり、アンタはダイヤの用事の相手だった」

花丸「……」ニコッ

善子「でも、待って」

善子「アンタのアリバイは?」

善子「犯行時刻に一緒にいたってあのおばさんは言ってたわ」

善子「共犯だって、言うわけ?」

花丸「まさか」

花丸「あのおばさんは嘘をついてない」

花丸「ただ、嘘をつかれただけ」

花丸「その嘘はおばさんにとって真実で、曖昧でも成り立つ嘘」

花丸「……時計だよ。時計を弄るずら」

花丸「おばさんは携帯でもテレビでもなく、あの時計で時間を確認してる」

花丸「聞いてみるといいんじゃないかな」

花丸「……きっと、携帯はうまく扱えないの。って、ちょっと照れくさそうに教えてくれるよ」

花丸「それでも、二時間も三時間も誤魔化せない」

善子「だからあんたはわざと忘れ物をしてすぐに戻ってきた」

善子「時計を戻すために」

花丸「頑張ったんだよ? 運も必要だったから失敗する可能性もあったし」
423: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/19(金) 23:05:41.89 ID:RIdKgN+F
善子「……ダイヤは」

善子「ダイヤはどこなの!?」グィッ

善子「答えて!」

花丸「……覚えてる?」

花丸「図書準備室の、裏口」

花丸「鞠莉ちゃんがくれると言った、本」

善子「……あんた、まさか」

花丸「そう。ダイヤさんを裏口から連れ込んだんだ」

花丸「あそこなら人目にはつかない、カメラにも映らない」

花丸「靴が反対側から見つかればみんなの意識はそっち側に向いてくれる」

善子「なら今はそこに――」

花丸「いないよ」

善子「は?」

花丸「……連れ帰ったよ」

花丸「そのための、鞠莉ちゃんから貰う大量の本だったずら」

花丸「大きな段ボールでも、沢山詰め過ぎたって言えば笑ってくれる」

花丸「マルは一応本好きだからね。誰も疑いもしない」

花丸「……会わせてあげる」

花丸「本当は、善子ちゃんが最後まで突き止めてからって思ってたけど」

花丸「その様子だと……自殺しちゃいそうだから」
424: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/19(金) 23:22:56.36 ID:RIdKgN+F
―――――
―――
――


善子「……蔵?」

花丸「元々は物置になってたけど」

花丸「学校の本をもらえるから置く場所が欲しいって言ったらくれたんだ」

花丸「できたら一人でゆっくり、静かに」

花丸「そう言ったのが、良かったのかな」

ガチャガチャッ
       ガチャンッ

キィィィィ....

花丸「……そういえば、一つ。良いこと教えてあげる」

善子「遺言?」

善子「殺す前に聞いてあげるわ」カチカチッ

花丸「カッターで殺すなら、首を思いっきり切ってね」ニコッ

善子「良いから、良いことって何?」

花丸「血に塗れた髪留めがあるからと言って、ダイヤさんが死んでいるとは限らない」

花丸「マルはずっと、言っておいたはずだよ」

花丸「マルはダイヤさんを殺していない」

花丸「絶対に、殺さないって」

善子「は……?」

花丸「どうぞ、マルの……ううん、善子ちゃんのための場所だよ」
426: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/19(金) 23:40:30.46 ID:RIdKgN+F
善子(薄暗くて、埃っぽい)

善子(外から見ても広い蔵の中)

善子(その奥の方に、それはいた)

ジャラッ……
     ジャラッ

ダイヤ「……お帰り、なさい」

善子(目隠しをされ、首輪をつけられ、手を縛られ)

善子(ただ、逃げるための足だけが自由なダイヤが)

ダイヤ「あの……」

ジャラ……

花丸「……逃げなかったんだね」

ダイヤ「………」

ダイヤ「もう、苦しいのは嫌です」

ダイヤ「動けば締まるこの首輪」

ダイヤ「せめて、戻れば緩むものにして頂けませんか?」

ダイヤ「怖くて、お手洗いにもいきたくない」

善子(なに、これ)

善子(なんなの……これ……)

善子「どういうことよこれ!」

ダイヤ「っ……その、声は……善子さん、ですか?」
427: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/19(金) 23:49:39.09 ID:RIdKgN+F
花丸「善子ちゃんのダイヤさんずら」

花丸「ルビィちゃんのように体を物理的に壊したりせず」

花丸「ありのままのダイヤさんを、善子ちゃんにプレゼントしたかったんだ」ニコッ

花丸「頑張ったんだよ?」

花丸「最初はね? 鞠莉ちゃんから本をもらえるという話だけしかなくて」

花丸「段ボールに隠して持ち帰るだけの、ただの誘拐の予定だった」

花丸「でもね。運よく、縁談の話が来てくれた」

花丸「しかも、フられたのが諦められずにデートまでするって」

花丸「チャンスだと思った。利用するしかないって思ったずら」

花丸「ダイヤさんが殺されたことにして、全部の容疑をその人に押し付ける」

花丸「お墓にまで真相を持って行ってくれる可能性は五分五分だったけどね」

花丸「……優しい人で、良かった」ニコッ

ダイヤ「墓……場……?」

ダイヤ「墓場とはどういうことですか? 花丸さん! あの人に何を!」

花丸「何って、何もしてないよ」

花丸「アレはただ、自殺しただけだよ。ダイヤさんを殺した罪を背負ってね」
428: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/19(金) 23:58:55.15 ID:RIdKgN+F
ダイヤ「なんてこと……なんてことを!」

ジャラッ
   カチカチッ
       ガチンッ

ダイヤ「ぐっ」

花丸「あまり動くと首輪が締まるから、落ち着いたほうが良いずら」

花丸「じゃないとまた、失神しておもらししちゃうよ?」

カチカチッ

花丸「次締まったら、善子ちゃんの目の前で失神して貰うからね?」

ダイヤ「くっ……」

ダイヤ「善子さん……善子さんっ!」

善子「っ」

ダイヤ「お願いします……わたくしを、わたくしを助けてください!」

花丸「マルの目の前でそういう話をされると困るなぁ」

花丸「もちろん、善子ちゃんが逃がすっていうならマルは止めないけどね」クスッ

ダイヤ「お願いします、善子さん」

ダイヤ「善子さんしか……わたくしを自由には出来ないのです」
430: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/20(土) 00:07:16.23 ID:R0XIzF5O
ダイヤ「花丸さんは狂っている……」

ダイヤ「でも、貴女の言葉なら何でも聞くと……ずっと」

ダイヤ「今だって、貴女が言うなら逃がしてくれると言う……」

ダイヤ「お願いです、善子さん」

善子「ダイヤ……」

グッ
   ギリッ
        コツッ....
ジャラッ

ダイヤ「善子さん……」

善子(ダイヤを繋ぐ首輪)

善子(その鎖を持ち上げると、その音に、ダイヤの疲れ切った喜びの声が漏れた)

善子(解放して貰える。そう思ったのね)

花丸「……良いの?」

花丸「ダイヤさんはここから出ればまた黒澤ダイヤに戻ってしまう」

花丸「親はきっと、二度と被害に遭わないようにと箱入り娘のように扱うことだろうね」

花丸「善子ちゃんは会うことが出来るかな?」

花丸「ダイヤさんが許可しても、親は許可してくれるかな?」

花丸「ロミオとジュリエットのように……分かたれてしまうかもしれない」

ダイヤ「善子さんっ、話を聞いてはダメ!」
432: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/20(土) 00:21:43.81 ID:R0XIzF5O
>>431訂正


善子「………」チラッ

花丸「うん、聞かなくてもいい」

花丸「でもこれだけは言っておくずら」

花丸「ここなら、ダイヤさんは善子ちゃんのものだよ。なんでもできる、何でもさせられる」

花丸「願って止まなかった……自分のものになる」ニコッ

善子「………」

ダイヤ「だめっ、善子さん……そんな話を信じては――」

善子「……ずっと」

善子「私はずっと見てたのよ。ダイヤ」

ダイヤ「………お願いっ」

善子「でも、あんたは……女の子は絶対にないって否定したわよね」

善子「わざわざ私の目の前で、強く」

ジャラッ
     グィッ

ダイヤ「ぎっ」

善子「……逃がしてなんて、やらないわよ」

ダイヤ「あ゛……ぅ……」

善子「ダイヤは、私の物なのよ」

善子「ほかの誰かにくれてやるものか、ほかの誰かに触れさせてやるものか」

善子「私だけでいいのよ、ダイヤは……私だけを見てればいいのよ!」
433: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/20(土) 00:29:00.13 ID:R0XIzF5O
花丸(うん、うんっ)

花丸(いい笑顔)

花丸(狂気に満ちて、喜びに満ちた顔)

花丸(マルは……どんな善子ちゃんでも好きだよ)

花丸(たとえ、それが自分に向けられるものではないのだとしても)

花丸(自分のものにならないのだとしても)

花丸「……じゃぁ、好きなだけ。ここにいていいよ」

花丸「マルは善子ちゃんの邪魔はしない」

花丸「……蔵のカギ、机の上に置いておくね」

善子「花丸」

花丸「なぁに?」

善子「アンタがいてくれて、良かったわ」

花丸「えへへっ」

花丸(一時でも喜びを、幸せを)

花丸(自分が与えられているのならば……それだけで十分)

花丸(それが、マルの愛だよ)

花丸「良かった」ニコッ
434: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2019/04/20(土) 00:33:15.45 ID:R0XIzF5O
変に長引いたけど付き合ってくれてありがとずら
これで、マルのお話はおしまい。
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『善子「ダイヤがお見合い!?」』へのコメント

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2018年5月26日
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