海未「ことり、貝合わせって知っていますか?」

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海未-アイキャッチ13
1: 名無しで叶える物語(芋)@\(^o^)/ 2014/09/21(日) 09:07:36.77 ID:SGZ4vbti.net
キーンコーン カーンコーン

理事長の祝辞が終わり、見計らっていたかのように入学式の終わりを告げるベルがなった。

ぴかぴかの制服に身を纏い、ぎこちない行進で退場して行く新入生達を拍手で見送る。そのなかにはもちろん雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんの姿もあり、緊張しているのが見て取れてとても可愛い。

新入生達に二年前の自分を重ね合わせ、心の中でエールを送る。
『頑張って、その先できっと素敵なことが待っているから』
この子達はこれから自分次第でどんな未来でも切り開いていけるんだ。
未来への一抹の不安と確かな期待、それらを一身に背負った背中。
無限の可能性を掌握する1年生達を羨ましく思う。

元スレ: 海未「ことり、貝合わせって知っていますか?」

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2: 名無しで叶える物語(芋)@\(^o^)/ 2014/09/21(日) 09:08:11.89 ID:SGZ4vbti.net
既に過ぎ去ってしまった輝かしい日々と、かけがえのない時間を共に過ごした先輩達のことを思い返す。
人一倍充実した高校生活を送っているはずだ。けれど、後悔がないと言えば嘘になる。
もしもあの時留学していたら私は今どんな人間になっていたんだろう。こんな風に未来への焦燥に押し潰されそうな弱い自分とは違ったのかも知れない。
異国の土地に揉まれて、今よりも強かで立派な人間になれていたのでしょうか。
日本での生活を、幼馴染み達と一緒に居ることを、望んだのは他のでもない自分自身。なぜなら……。

隣で式の進行表とにらめっこしている海未ちゃんを見つめる。
胸の奥がきゅっと締めつけられる感覚で我に返った。
いつの間にか頬を伝っていた涙を欠伸で誤魔化す。

今日から私達は、三年生になったんだ。
3: 名無しで叶える物語(芋)@\(^o^)/ 2014/09/21(日) 09:09:25.17 ID:SGZ4vbti.net
~~

先輩達が卒業し、μ'sとしての活動は終わりました。
この2年間毎日のように追われていた衣装の製作から解放されたわけだけれど、私は未だに放課後の教室でひとり、自由になったこの時間を一体何に費やせばいいのか解らずに持て余しています。
誰もいない空っぽの教室の静寂は少し前までの騒がしかった日々と相対的で、μ'sのみんなで過ごしたキラキラとした時間を一層懐かしくさせる。

新しい教室の窓から見る景色は色あせていて、まるで今の私の心を反映しているようだった。
卒業してしまった三人には去年の今頃この景色がどんな色に見えたんだろう。
これから絵里ちゃん達が居ない学校生活にも少しずつ慣れていくのかな。
4: 名無しで叶える物語(芋)@\(^o^)/ 2014/09/21(日) 09:10:09.11 ID:NdGbcA5/.net
来年の今頃は海未ちゃんと穂乃果ちゃんともお別れしなくちゃいけないなんて信じられない。
世界中の時計を壊して時間を止め、永遠に高校生でいたいなんて馬鹿なことも考えてしまう。

「嫌だなぁ」

呟いて机に突っ伏す。
寂しい。寂しい。寂しい。

「ことり?」

涙が滲みそうになった時、大好きな声が背後から聞こえた。
5: 名無しで叶える物語(芋)@\(^o^)/ 2014/09/21(日) 09:10:51.24 ID:lsXjpZ2P.net
慌ててカーディガンで顔を拭い振り返ると、弓道着姿の海未ちゃんが心配そうにこちらへやって来る。
泣きそうになってたのバレちゃったかな。
変な子だと思われたくない。

「どうしました?ひとりですか?」

「うん。宿題終わらせて帰ろうかなぁって」

「もう終わったよ」と、おちゃらけた調子で宿題のページを開いて海未ちゃんに見せる。

「そうでしたか。私もそろそろ終わるので、一緒に帰りませんか?」

うん!と即答したら、にっこりと優しく微笑んで頭を撫でてくれた。
それだけのことで落ち込んでいた気分が少し和らぐんだから、単純だなぁと自分に苦笑しつつ帰りの支度に取り掛かった。
6: 名無しで叶える物語(芋)@\(^o^)/ 2014/09/21(日) 09:12:03.63 ID:TAYxV8r2.net
~~

帰り道でいきなり海未ちゃんに頭を下げられた。

「すみませんでした。ことりが辛い思いをしているのに、気づいてあげられなくて」

いつものように振る舞ったつもりでも、放課後の涙はやはり隠しきれていなかった。
責任感の強い海未ちゃんらしい言葉。

「そんな……ことりが勝手に寂しくなってただけで…」

「いいえ、それならば私が寂しい思いをさせてしまったのです」
7: 名無しで叶える物語(芋)@\(^o^)/ 2014/09/21(日) 09:13:04.49 ID:LKBiQSm2.net
「海未ちゃんが悪いわけじゃないよ……絵里ちゃん達が卒業して寂しいのは海未ちゃんだって同じでしょう?それにね…」

なにより私自身が、何に対して懸念しているのかもやもやしていて正確な正体がよくわかっていなかった。
先輩達の卒業が寂しいだけなのか、進路への不安なのか、恋煩いなのか、はたまた気づいていないだけで他に要因があるのだろうか。
何が不満で、何を悲観しているんだろう。
頭の中がごちゃごちゃしていて海未ちゃんに上手く説明できない。

私が俯いて黙りこくっていると、海未ちゃんが自分の太ももをポンッと叩いた。軽やかな音につられて顔をあげる。

「海を見に行きましょうか」

爽やかな笑顔で突拍子のないことを言い出した海未ちゃん。
まるで穂乃果ちゃんみたい。
慰め下手なところは相変わらずのようで、その言葉に小学生の頃に膝のことを打ち明けた時の面影を感じて懐かしくなった。
8: 名無しで叶える物語(芋)@\(^o^)/ 2014/09/21(日) 09:13:58.51 ID:PxxXZtfJ.net
~~

ことりを誘って、μ'sの解散を告げた海へと再びやってきた。
波のように心がざわつくのは思い出のせいばかりではなくて、隣に貴女がいるからです。
物憂げな表情さえも愛おしい。

「少し風が冷たいですね」

そう言って彼女の手をとる。
身長が同じせいかことりと手を繋なぐのは自然で心地が良い。
若干の下心を悟られまいと、冷めた手を温めるように熱を込めて握った。
9: 名無しで叶える物語(芋)@\(^o^)/ 2014/09/21(日) 09:14:36.24 ID:ezKJrqjR.net
そのまま砂浜に腰を掛けてほとんど言葉も交わさぬまま、互いに海をみつめる。
やはりことりは何かを思い煩っているようだ。ことりには気づいていなかったと言ったものの、私はずっとことりのことを意識しているのに気がつかない訳がなかった。
ここ最近元気がないようだったので力になりたいと思いつつも、どう切り出したら良いのか解らず見守るだけに留まっていたのだ。

幼馴染みとして出来る限り力になりたい。片想いをしている身としては、ことりの心を独占している不安の種が妬ましかった。よもや恋煩いでもしているのではあるまいか。
そうだとしたら辛いけれど、せめて私に頼って欲しい。ことりにとって頼れる存在で在りたい。
そう思い、海に誘って手をとるぐらいなら友達として出過ぎた真似ではないだろう。
繋いだ手に意識を集中させて、ことりが口を開くのをじっと待つ。
11: 名無しで叶える物語(芋)@\(^o^)/ 2014/09/21(日) 09:15:27.80 ID:zwFdelbv.net
しばらくして、海へと沈んでいく夕陽に後押しされるようにゆっくりと話始めたことり。
それを私は相槌を打つでもなくただ黙って聞いていた。
そろそろ夕陽が沈み終わる。
ことりの声色は泣き出しそうになっていた。

「パパとママ、μ'sのみんな、クラスのみんな、大切で大好きな人達に心配かけないようにしっかりしなくちゃって思っているのに…」

「今もこうやって海未ちゃんに迷惑かけちゃってる……だったらことりは…」

ひとりで居たほうがいいんじゃないのかな。と、消え入りそうな声で呟いてから、ことりはついに顔を伏せた。
不謹慎なことに私は、そんなか弱いことりが愛おしくて堪らなかった。この子の側に居たい、こんなに弱々しくて可愛姿を、他の誰かに見せないで欲しいと思っていた。
そんなこと考えているなんて、口が裂けても言えないけれど。
12: 名無しで叶える物語(芋)@\(^o^)/ 2014/09/21(日) 09:16:43.88 ID:zo4BEOl/.net
海未「ことり、貝合わせって知っていますか?」

ことり「貝合わせ……?」

海未「カルタの原型みたいなもので二枚貝に和歌の上の句と下の句書いて合わせる遊びです」

海未「二枚貝ってお互いにピタリと合うのは絶対に一組しかないんですよ」

ことり「一組…」

海未「はい。でも一組は必ずあるんです。私は人と人もそうじゃないかって思うんです」

ことり「人も?」

海未「ことりにも居るんです。世界のどこかでことりを…ことりだけを待っている人が。ただ一人の人が……必ず」

海未「ひとりで居なければいけない人なんて何処にもいません。ことりはことりらしくゆっくり、できることを頑張ればいいんです。いつかただ一人の人に出会う、その日まで」
13: 名無しで叶える物語(芋)@\(^o^)/ 2014/09/21(日) 09:18:06.88 ID:MpkmpPuN.net
海未「それまで私……私がことりを守りますから」

いつか観た百合アニメの台詞をパクって、せめてもの想いをことりに告げた。







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