【SS】かよちんVSマーボーどうふ

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花陽-アイキャッチ11
1: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 20:05:08.11 ID:sOORnpyW.net
花陽 (それにしても、このマーボーどうふ)

小泉花陽は、悩ましげに俯き、沈思した。

花陽 (めっちゃ辛い)

小泉花陽は、嫋やかに項垂れ、黙考した。

花陽 (めっちゃ辛い)

元スレ: 【SS】かよちんVSマーボーどうふ

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2: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 20:05:47.77 ID:sOORnpyW.net
穂乃果「花陽ちゃん、どうしたの?」

花陽 「な、なんでもないよ」

穂乃果「でも、さっきから何だか辛そうだよ。
    体調が悪いなら、教えてほしいな」

花陽 「ううん、大丈夫だよ。
    私、まだやれるよ」

穂乃果「ほんとに?」

花陽 「ほんとだよ。
    穂乃果ちゃん、必ずやりとげようね」

話は、少し前に遡る。
4: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 20:06:17.04 ID:sOORnpyW.net
―――十分ほど前、近所の道路。ジョギングをする二人―――

穂乃果「ハアハア」
   (花陽ちゃん、やりとげようね、最後まで)

花陽 「ヒイヒイ」
   (そうだね、穂乃果ちゃん。
    必ずやりとげようね、私たちのダイエット)

穂乃果「フウフウ」
   (それはさておき、ジョギングにも疲れちゃったね。
    少しあそこのごはん屋さんで休憩しない?)」
5: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 20:06:55.75 ID:sOORnpyW.net
花陽 「ハアハア」
   (だめだよ、穂乃果ちゃん。
    私たちがやりとげるべきは、ダイエット。
    ジョギングは、そのための手段なんだよ。
    だから、ジョギングをさぼったら、ダイエットもできないんだよ。
    ましてや、海未ちゃんのメニューに反する間食をとるなんて、よくないよ)

穂乃果「ヒイヒイ」
   (とても合理的な考えかただね、花陽ちゃん。
    でも、目的をきちんと設定しないと、合理的な思考は空回りするだけだよ)

花陽 「フウフウ」
   (でも目的ははっきりしているよ。
    ダイエットでしょ)
8: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 20:09:07.00 ID:sOORnpyW.net
穂乃果「じゃあダイエットって、どういうことなのかな?」

花陽 「うーん……ごはんの量を減らして、体重を減らすことじゃないかな?」

穂乃果「それはちょっと違うよ、花陽ちゃん。
    英語におけるdietの語義は、食事療法。
    さらに一般的には、食事そのものという意味もあるの。
    だから、ダイエットのためにごはんを食べることは、何も矛盾してないんだよ」

花陽 「穂乃果ちゃん、どうして自分の欲求のためには、そこまでかしこくなれるの?」

穂乃果「好きこそものの上手なれ、だよ。花陽ちゃん。
    さらに言えば、dietの語源は、ギリシア語のdiaitaなの。
    これは古くはヘロドトスやソフォクレスの文献にも見られる語であり、生活様式(mode of life)という意味をもっているの」

花陽 「なるほど。ダイエットって、つきつめれば生活様式のことなのか。
    でも、生活様式って何なのかな?」

穂乃果「要するに、生きざまのことだよ。
    花陽ちゃん、人間の生きざまって何だと思う?」

花陽 「そうですね……しいて言うなら、ごはん、ですかね」

穂乃果「ということは、人間の生きざまを示すためには、何をすればいいのかな」

花陽 「ごはんを食べればいいと思うな」

穂乃果「すると、ダイエットのためには、何をすればいいのかな。
    ジョギングすることによって、ほんとうにダイエットは達成されるのかな」

花陽 「いや、そうではないね」

穂乃果「じゃあ、ダイエットのためには、何をすればいいのかな」

花陽 「ごはん屋さんに寄って、ごはんを食べればいいんだよ」

穂乃果「Q. E. D.」

花陽 「Q. E. D.」
9: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 20:10:36.46 ID:sOORnpyW.net
かくして二人は定食屋に入った。
穂乃果はコロッケ定食、花陽は麻婆豆腐定食を注文した。

穂乃果「花陽ちゃん、マーボーどうふ好きだったっけ?」

花陽 「このまえ、にこちゃんが作ったのを食べさせてもらったの。
    それがもう、すっごくおいしくて。
    だから今日も、マーボーどうふがいいなって思ったんだ」

このときの彼女は、まだ気づいていなかった。
何ごとにも家庭的な矢澤にこが作ってくれたのは、ちびっこにも優しい甘口の麻婆豆腐だったのだ。
そう、小泉花陽は、本格派四川風麻婆豆腐の辛さを、未だ体験してはいなかったのだ。
その味を知った今、彼女が考えていることは、たったひとつ……
11: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 20:11:25.41 ID:sOORnpyW.net
―――ふたたび現在―――

花陽 (めっちゃ辛い)

小泉花陽は、うららかな春の野の花のように心優しい少女である。
心優しい人は、友人に辛い思いをさせたくないと考えるものである。

花陽 (めっちゃ辛い。
    でもこのことは、穂乃果ちゃんには言わずにおこう)

のみならず彼女は、おだやかな秋の野の兎のように大人しい少女である。
大人しい人は、極力お店の人を煩わせたくないと考えるものである。

花陽 (めっちゃ辛い。
    でもこのことは、お店の人には言わずにおこう)

それゆえ彼女は、麻婆豆腐の辛さを打ち明けることを頑に拒んだ。

花陽 (めっちゃ辛い。
    でもこの辛さは、私ひとりで飲み込もう)
12: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 20:12:39.55 ID:sOORnpyW.net
しかし、そんなふうに一人で抱え込もうとするのは、ほんとうに正しいことなのだろうか。

穂乃果(花陽ちゃん、辛そうだな。
    ほんとに大丈夫なのかな)

高坂穂乃果も、さわやかな夏の日の光のように心優しい少女である。
心優しい人は、友人に辛い思いをさせたくないと考えるものである。
では、その友人が辛さを一人で抱え込もうとしているのだとしたら、どうすればよいのだろう?
辛さを分けてほしいと言っても、心優しい彼女は、分けてくれないかもしれない。
それなら、自分にできることは……

穂乃果(バカに徹することだ。
    バカのふりをしつつ、押し付けがましくない仕方でマーボーどうふを分けてもらえばいいんだ)
13: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 20:13:35.43 ID:sOORnpyW.net
高坂穂乃果は、コロッケを食べるのを中断し、明るい声でこう言った。

穂乃果「花陽ちゃーん!
    そのマーボーどうふ、私にも分けてほしいなあ!
    そのかわり、私のコロッケ、半分あげるから!
    穂乃果のお願いだよーん!」

小泉花陽は、辛さのあまり目に涙を滲ませ、あくまで穏やかな声でこう言った。

花陽 「ううん、あげない」

穂乃果「どうして?」

花陽 「このマーボーどうふは、とってもおいしいから。
    私は欲張りな悪い子だから、とってもおいしいマーボーどうふをひとりじめしたいの。
    だから……ごめんね」
14: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 20:14:20.60 ID:sOORnpyW.net
穂乃果「えー? 
    まあそう言わずに、一口だけでいいから、ちょーだいよー」

花陽 「だーめ」
   (穂乃果ちゃん……辛いのは私ひとりだけで十分だよ)
 
穂乃果「けちー!」
   (花陽ちゃん……もうひとりじゃないよ)

花陽 「あーおいしい。
    あんまりおいしくて、涙がでそう」
   (涙は、マーボーどうふと一緒に、孤独なheavenで流すよ)

穂乃果「泣くほどおいしいなら、半分こしよ?」
   (泣きたいときもあるよ、一緒にいればいいよ。
    マーボーどうふは半分こして、涙は二人ぶん流せばいいよ)
16: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 20:15:11.56 ID:sOORnpyW.net
―――そのころ、神社の境内―――

ことり「二人とも、最近がんばってダイエットしてるね」

海未 「本当にそうでしょうか」

絵里 「大丈夫よ。
    だって今も、こんなに長い間ジョギングしてるじゃない」

海未 「ちゃんとメニュー通りに走ってくれていればいいのですが……
    さぼって、どこかで一服しているかもしれません」

希  「公園とか、喫茶店とか?」

海未 「いや、定食屋さんとか」

凛  「あはは、まさかいくらなんでも、そんなわけないよ」

真姫 「ふふふ、そうよ。
    ジョギングの最中に定食食べるなんて、なかなかできることじゃないわよ」
17: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 20:16:43.60 ID:sOORnpyW.net
―――そのころ、定食屋―――

花陽 「すみません、お水のおかわりいただけますか」

すでに水は五杯目である。
しかし何と恐ろしいことであろうか。飲んでも飲んでも辛いままである。

花陽 (焼け石に水)

甘口の麻婆豆腐に慣れた彼女の味覚には、本格四川風中華料理の世界は、まだ早すぎた。

花陽 (大人の階段を三段ほど飛ばして登っちゃった。
    ひとまずレトルトの中辛くらいから舌を慣らしていくべきだったんだ。
    ごめんなさい。花陽は悪い子です)

お米が箸休めになるかもしれないとも思ったが、そんなことはなかった。

花陽 (焼け石に水……マーボーどうふに米)
18: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 20:17:42.74 ID:sOORnpyW.net
そのとき、ふと彼女の目に、つけあわせの葱が目に入った。

花陽 (これだ!
    こんなときは細く刻んだ葱が清涼感をもたらしてくれるはず)

彼女は最後の頼みの綱とばかりに、葱を口に入れた。
しかし、嗚呼、かよちんを襲う運命はあまりに辛辣であった。

花陽 (この葱、生で辛い上に辣油で味がついてる)

辛辣……、そう、辛辣であった。

花陽 (めっちゃ辛い)
19: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 20:18:40.11 ID:sOORnpyW.net
万策尽きたかよちんは絶句し、天を仰いだ。

花陽 「擧頭望杏仁豆腐」
   (書き下し文:頭を擧げて杏仁豆腐を望み)
   (訳:めっちゃ辛い)

穂乃果「!?」

かよちんは目を瞬かせたあと、悲しげに俯いた。

花陽 「低頭思芒果布丁」
   (書き下し文:頭を低れてマンゴープリンを思う)
   (訳:めっちゃ辛い)

穂乃果「!??」
20: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 20:20:30.41 ID:sOORnpyW.net
しかし、定食を残すという選択肢は、彼女にはなかった。

花陽 (せっかくいただいたものを、残すわけにはいかない。
    悪いのはマーボーでもなければ、とうふでもない。
    悪いのは、あくまで背伸びしすぎた私のほうなんだ。

辛さのあまり涙で滲んだ目には、もう前に座っている友の表情も分からない。

花陽 (穂乃果ちゃん)

目がうるんだ。

花陽 (うそついて、ごめんね)
21: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 20:21:25.83 ID:sOORnpyW.net
雫がひとつ、ついに落ちそうになったとき、声が聞こえた。

穂乃果「謝る必要なんか、ぜんぜんないよ、花陽ちゃん」

花陽 「穂乃果ちゃん?」

穂乃果「花陽ちゃんもマーボーどうふも、何も悪くないよ」

花陽 「でも、私……」

穂乃果「私はバカだから、花陽ちゃんがうそをついてるのかどうか分からないよ。
    でも、かりにうそをついていたのだとしても、それでも花陽ちゃんは、何も悪くないよ」

花陽 「どうして?」

穂乃果「私はバカだから、ほとんど何も知らないけど……
    でも、花陽ちゃんが優しい人だってことは知ってるから」
22: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 20:21:49.42 ID:sOORnpyW.net
花陽 「穂乃果ちゃん……」

穂乃果「だから、そんな優しい花陽ちゃんに、私のわがままを聞き入れてほしいなあ」

花陽 「何かな?」

穂乃果「マーボーどうふ、半分こしよ」

花陽 「……ありがとう」
23: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 20:25:14.44 ID:sOORnpyW.net
半分に分けた麻婆豆腐に箸をつけながら、二人は顔を見合わせた。
花陽の目を嬉しそうに見つめて、穂乃果が笑った。

穂乃果「めっちゃ辛い」

少しまぶしそうに目を細めて、花陽も笑った。

花陽 「めっちゃ辛い」

マーボーどうふは、はんぶんこ。
こぼす涙は、二人ぶん。

穂乃果 「ごちそうさまでした」

花陽  「ごちそうさまでした」
24: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 20:27:25.46 ID:sOORnpyW.net
―――そのころ、神社の境内―――

にこ 「あら海未、どこに行くの?」

海未 「ちょっと見てきます」

にこ 「二人のことが心配なの?」

海未 「ええ。
    二人がひたむきな頑張り屋なのは、もちろん私も分かってます。
    だから二人ならきっと、ダイエットをやりとげることができると信じてます。
    ただちょっとあの二人は、本末転倒というか、目的を見誤りやすい傾向があって……」
25: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 20:30:50.83 ID:sOORnpyW.net
―――そのころ、定食屋―――

花陽 「辛いけど、半分こしたら、おいしくいただけたよ。
    穂乃果ちゃん、ありがとう」

穂乃果「私が食べたいから、分けてもらっただけだよ。
    花陽ちゃん、ありがとう」

花陽 「えへへ、そっか。
    ついにマーボーどうふ、完食だね」

穂乃果「やりとげたね、最後まで」

花陽 「確かにやりとげたけど……
    どうして私たち、定食屋さんに入ったんだっけ。
    何か別のことをやりとげようとしていたような……」

穂乃果「えーと……何だっけ?
    あ、それはさておき、辛いもの食べたら、何だか甘いものが食べたくなってきたね。
    何かデザート注文する?
    ほらほら、杏仁豆腐もマンゴープリンもあるよ!」

花陽 「わー、さすが穂乃果ちゃん、名案だね!」

穂乃果「もー、からーくーてもー、なかーなーいでー」

花陽 「ひーとーりぼっちはー」

穂乃果・花陽「そつーぎょーしーよー」

海未 「……」

穂乃果・花陽「Ohhh!」

海未 「Love & Peace」



おわり
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