穂乃果「声がきこえる…?」

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穂乃果-アイキャッチ15
1: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2014/10/30(木) 23:18:31.49 ID:Mahl8nyg.net
「鳥からあげ定食おまちぃ」


コトン



穂乃果「…ごくり」


のどが鳴る。ヒトとしてのあらがえぬ本能によるものだ。
高坂穂乃果は手を合わせる。すべてに感謝の気持ちをあらわす。いただきます。

元スレ: 穂乃果「声がきこえる…?」

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2: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2014/10/30(木) 23:20:21.54 ID:Mahl8nyg.net
フワッ

穂乃果「…くうぅっ!」


香ばしい香りが鼻腔をくすぐる。揚げたてのからあげが主張しているのだ。
カリカリの衣。それに甘辛いタレを惜しげもなく絡めてある。しかもひとつひとつが大きい。


穂乃果(女子高校生らしく、ないよね…)クス


今は部活も終わり、μ'sのみんなで定食屋へ来ていた。他のみんなはもうとっくにそれぞれ注文したメニューが来ており、食べ始めている。
この最後に届けられたからあげ定食を頼んだのは、リーダーただ一人であった。
4: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2014/10/30(木) 23:24:08.74 ID:Mahl8nyg.net
ぐぅ。


穂乃果「!///」ドキ!


今の音、誰かに聞かれただろうか?周りを見渡す。ほっ。誰も気づいていないようだ。


穂乃果(…しょーがないじゃん!)


誰に向けての言い訳なのか、自分でもわかっていないが。
この日、高坂穂乃果は昼食をとっていなかった。財布を忘れ、購買でパンを買うこともできなかったのだ。


穂乃果(でも… だからこそっ)


幼いころからの友人たちから、金を借りることもできた。弁当をもらうこともできた。しかし、それをしなかったのは。
今日ここに来ることを知っていたから。『これ』を注文することを決めていたから。
7: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2014/10/30(木) 23:26:40.52 ID:Mahl8nyg.net
ここは、高坂穂乃果いきつけの店だった。もちろん、ここで頼むのはいつもからあげ定食。
だから彼女は知っている。


あのボリューミーなからあげの味を。
噛んだときの衣の食感を。
口にタップリの肉汁がこれでもかと溢れ広がる快感を。


『これ』がどれほど彼女を喜ばせるのかを… 知っている。



しかし。
8: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2014/10/30(木) 23:29:45.89 ID:Mahl8nyg.net
穂乃果「…どう、しよう」


高坂穂乃果は未だ箸に手をつけていない。その理由は。




穂乃果(どれから、食べようかな)


空腹という最高の調味料をスタンバイさせているにもかかわらず、彼女がいただきますの後から微動だにしない理由はこれである。


このからあげ定食には様々なつけあわせがついてくるのだ。
王道のライス。定食に欠かせないミソ汁。ちいさな器に盛られた漬物。
そして、千切りのキャベツに少量のナポリタン。さらにはキャベツと同じくらいの量の豚のしょうが焼き。
喰い盛りの野球少年だって大満足で帰っていくような豪快さのメニューである。
10: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2014/10/30(木) 23:31:47.70 ID:Mahl8nyg.net
穂乃果(ここまで楽しみにしてたんだから!ひとくちめは慎重に選びたいよ…!)


悩む。腹は減っているのに。
悩む。据え膳が目の前にあるのに。
悩む。こんなにも主張しているのに―――――





『…べて』


穂乃果「えっ?」
11: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2014/10/30(木) 23:34:31.22 ID:Mahl8nyg.net
『たべて はやく』



穂乃果「だ、だれ?」キョロ


μ'sではない。


『今が一番おいしいんだ さあ、はやく 揚げたてだよ』



穂乃果「…からあげ、さん?」
13: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2014/10/30(木) 23:38:37.17 ID:Mahl8nyg.net
からあげ『そうさ はやくぼくをたべてくれ 一番おいしいときにたべてほしいんだ』


穂乃果「確かにきこえる… からあげさんの声! よぉし、決めたよ! 高坂穂乃果、あらためまして… いただきますっ!」



箸をとった。左手に持つは白米が総立つ茶碗。右手が箸を構える。これが日本人。これぞ日本式。
その、2本の箸で。その、日本の箸で。


穂乃果「最初は…コレだぁーっ!」







彼女は、漬物をつまんだ。


おわり
26: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2014/11/02(日) 01:01:48.26 ID:R91dZJ43.net
「ゴボ天うどん2丁おまちぃ」



ゴト ゴトッ



海未「…!」


起こってしまった。恐れていた事態だ。園田海未は危惧していた。こうなってしまうことを。
しかも…想定していた以上に、厄介な状況だ。



ことり「……」チラ

海未「く…」
27: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2014/11/02(日) 01:12:43.91 ID:R91dZJ43.net
海未(よりによって… あなたも同じものを頼んでいたなんて…!)



園田海未が注文したメニューは、ごぼう天うどん。
福岡を中心とした地域でよく食べられている、文字通りごぼうの天ぷらが乗ったうどんである。
そして。


海未(ことりっ)キッ

ことり(考えていること、わかるよ 海未ちゃん)


そう。南ことりも、同じくごぼう天うどんを注文していた。
これが想定外。園田海未にとっても。きっと、南ことりにとっても。
そして。



海未(穂乃果…)チラ
28: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2014/11/02(日) 01:22:12.13 ID:R91dZJ43.net
穂乃果「くうぅ~ まだかな、まだかなぁっ あとごはん来てないのは穂乃果だけだよっ」ジュルリ


これが、恐れていた事態。
最愛の幼馴染、高坂穂乃果を除いた全員の注文した品が届けられてしまったのだ。
この状況は。



海未(つらいでしょう… 9人が全員食べている中、空腹に耐えながら注文を待ち続けるのは だから、私は)


園田海未は、知っていた。彼女が昼からずっとおなかを空かせていたことを。
園田海未は、知っていた。彼女が誰よりもこの時を…この店で食事をするのを心待ちにしていたことを。
だから。





海未(待ちます あなたの注文したものが届くまで 私はっ)


口には出さない。気を遣わせたいわけではない。
静かに、密かに、決意する。





海未(耐えてみせます! 箸に手をつけるときは一緒ですよ、穂乃果!)グッ
30: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2014/11/02(日) 01:34:09.54 ID:R91dZJ43.net
しかし今の園田海未にとって、『それ』は簡単なものではない。
なぜなら。


海未(うぅ、こんなにおなかが空いているのは久しぶりです お弁当… 食べておくべきでした…)


園田海未も、昼食をとっていなかったのだ。それもまた。彼女のため。
一度いらないと遠慮されたが、もしも穂乃果が空腹の限界を迎えてしまったらと思うと、残しておかずにはいられなかったのだ。
そのもしもの時、救ってあげられるように。


海未(ふふ あの子はおなかが空くとうるさいですからね)
31: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2014/11/02(日) 01:45:39.26 ID:R91dZJ43.net
くうぅ。きゅるる。


海未「くっ///」


腹の虫が、主人に向かってだだをこねる。なぜ喰らわない。早く喰らえ。喰らってしまえ。
あなたの目の前には…


海未(…これを頼んだのも、失敗でしたね)


できたてのうどん。ここの店はうどん屋というわけではないのに、とてもコシのある歯ごたえ充分のうどん麺を出してくる。
上には揚げたてであろうごぼうの天ぷら。かなり大きめだ。香ばしい香りが空腹の彼女の食欲をこれでもかと掻き立てる。
だが。このメニューは。
32: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2014/11/02(日) 01:53:17.64 ID:R91dZJ43.net
海未(まだですかはやく来てください! 麺が…のびちゃいます)


そう。うどんはのびる。定食が冷めていくのとは比べ物にならない速度でベストコンディションが終わってしまうのだ。
それに加えて。



海未(ああ… 天ぷらの衣に、どんどんダシが染み込んで…)


天ぷらは、どんどんスープを吸っていく。こうしてひたひたになった天ぷらのほうが好きな者もいるが。
この、園田海未は。



ダシが染み込みきってしまう前の。あの状態が一番好きなのだ。

サクサク感、失わず。しかし油のくどさを少し落としてくれる程度にはスープが絡んだ、あの状態。
33: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2014/11/02(日) 02:02:23.59 ID:R91dZJ43.net
海未(絶対… 早いほうがおいしいんです 早いほうが良いんです! ごぼう天うどんを食べるのはっ…)プルプル



空腹が駆り立てる。彼女の食欲を。
麺が、衣が駆り立てる。彼女の焦りを。
それに。


海未(もちろん、わかっています こんなこと穂乃果は望んでない)


わかっている。あの優しい幼馴染は、別に自分だけ待たされていようがそれに対して不満を言うことはないだろう。
むしろ、園田海未がこうして苦しみながら自分のために欲と戦っていることを知れば、悲しみすらするだろう。
それでも。彼女は耐える。ひとつは、もちろん穂乃果のため。いただきますを独りでさせないため。そして、もうひとつ。


海未(負けられません… ことりには!)グゥゥ

ことり「……」
34: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2014/11/02(日) 02:06:55.26 ID:R91dZJ43.net
南ことりも動かない。園田海未は確信している。彼女も同じことを考えていると。
そう。これは。お互いの。


海未(試されている 穂乃果への愛が… 絶対に、あなたより先に折れませんよ!ことり!)


意地とプライドを勝手に賭けあった、水面下での愛の我慢比べ。
同じメニューを選んでしまった以上、同じ人を選んでしまった以上、負けを認めるわけにはいかない。




………………

…………

……
35: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2014/11/02(日) 02:19:54.69 ID:R91dZJ43.net
海未「~~~!」プルプル ポロポロ




もう、何時間経ったろう?そう思ってしまうほどに、彼女は極限だった。実際には、10分も経っていないが。




海未「あ… あぁ」ポロポロ


このままでは。麺はのびきってしまう。あの、力強い歯ごたえが…

このままでは。衣はダシで浸ってしまう。あの、しゃくっと響くここちよい音が…




ごめんなさい。本当はおいしく食べたいのに。
ごめんなさい。本当はおいしく食べてあげたいのに。
36: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2014/11/02(日) 02:27:20.26 ID:R91dZJ43.net
『…べて』


海未「え…?」ハッ



『はやく、たべて? ぼくは海未ちゃんに、おいしくたべてもらいたいなぁ』


海未「おうどん、さん…?」



うどん?『みてよ つるつるしこしこでしょ 今ならまだ、間に合うよ』


海未「で、でも… 私は」ポロポロ



うどん?『いいんだよ もう我慢しなくていいの えらいよ よくがんばったね…』


海未「ああ、うああっ きこえます… 昔からずっときいていたような、安心できる、やさしい声がきこえます…」ポロポロポロ
37: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2014/11/02(日) 02:35:14.95 ID:R91dZJ43.net
ぱきん。
今日の割りばしは、とてもきれいに割れてくれた。



海未「穂乃果、ごめんなさい… 私…!   いただきますうっ!」ズルルー

海未「…!」モグ モグ


海未「おいしい… おいしいですぅ…  うあああああん」ポロポロポロ









『イインダヨ… ウミチャン… ヨクガンバッタヨ…』



にこ「…さっきからなにやってんの?あんた」

ことり「えへ♪」


穂乃果「わ!きたっ」パァー




「鳥からあげ定食おまちぃ」


おわり
38: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2014/11/02(日) 02:36:14.28 ID:R91dZJ43.net
hahaha なんだこれ

穂乃果ちゃんはカワイイ!
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