【SS】穂乃果「雨の降らない世界」

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穂乃果-アイキャッチ5
1: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 20:15:53.96 ID:1paX4uBs.net
雪穂 「お姉ちゃん、この漫画のつづき、ある?」

穂乃果「あ、それすごく面白いでしょ。
    お母さんが貸してくれたんだ。
    はいこれ、次の巻」

雪穂 「わーい、ありがとう!
    ああ、麗しきオスカルさま、アンドレさま……」

穂乃果「ああ、雅なるマリー・アントワネットさま……」

雪穂 「ねえお姉ちゃん、どうして昔のフランスの人は、
    カクメイとやらを起こしたの?」

穂乃果「私、そのへんの難しいこと、よくわかんない。
    でもきっと、ステキな世界をつくろうとしたんだよ」

雪穂 「ステキな世界って、どんな世界?」

穂乃果「雨の降らない世界」

元スレ: 【SS】穂乃果「雨の降らない世界」

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4: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 20:21:12.71 ID:1paX4uBs.net
雪穂 「それはフランスの人じゃなくて、お姉ちゃんの個人的な希望でしょ!
    でもどうして、雨の降らない世界がいいの?」

穂乃果「だって、雨はいつも私の邪魔をするんだよ。
    雨のせいで遠足が中止になったこともある。
    雨のせいで友達の家に行けなかったこともある」

雪穂 「小さいころのお姉ちゃん、てるてる坊主をつくりながら、
    あたりかまわず、訊いてまわってたよね。
    『どうして雨なんか降るの?』って」

穂乃果「そのとおり。
    でも、納得のいく理由を聞けたことは、今の今まで、いちどもないよ。
    ねえ雪穂、神さまは、雨の降らない世界だってつくれたんじゃないの?」
5: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 20:22:11.63 ID:1paX4uBs.net
雪穂 「ちょっとお姉ちゃん、大それたこと言いすぎ」

穂乃果「神さまがつくってくれないなら、私がこの地上にもたらしてやる!
    パンを、自由を、そして、雨の降らない世界を!」

雪穂 「『ベルばら』の読みすぎだよ!
    ちょっとお姉ちゃん、頭冷やしなよ!
    ねーお母さん、お姉ちゃんがまたヘンなこと言ってるよ」

母  「パンがないなら、和菓子を食べればいいじゃない」

穂乃果「ああ、このおそるべき絶対和菓子制!
    アンコはもう飽きたってば!
    オスカルさま、アンドレさま、マリー・アントワネットさま。
    穂乃果はこの世界を変えてみせます。やるったらやります!」

……でも、まずは何をやればいいんだ?
それがわかるのは、次の日のことだった。
6: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 20:25:09.25 ID:1paX4uBs.net
【次の日、音ノ木坂学院】

私、高坂穂乃果。高校二年生。
新学期早々、学校に行ったら廃校の掲示。
そのせいで、教室の中はドヨンした空気だよ。
建物の中だというのに、私の嫌いな雨の中みたいな空気。
息ぐるしいので廊下に出たら、うららかなプランタン(注1)の日和。
なんかもう感きわまっちゃって、私は歌い踊りながら外へと駆けだしたの。
そしたら、海未ちゃんがピュープル・ブイー(注2)みたいにカンカンになって私をつかまえにきたよ!

注1:春。
注2:ゆでだこ。
7: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 20:26:59.23 ID:1paX4uBs.net
海未 「こら、穂乃果!
    春になって浮かれたくなるのは分かりますが、車にひかれたらどうするんですか!
    そもそもまだ帰る時間じゃないんだから、学外に出ちゃだめです!」

穂乃果「だって海未ちゃん、私、なんかこう、すごいものを感じたんだよ」

海未 「何を感じたんですか」

穂乃果「よくわかんないけど、胸の奥で、何かが芽生えたのを感じたんだ」

海未 「穂乃果、それじゃ伝わりません。
    芽生えた気持ちに、名前をつけてみてください」

穂乃果「えーと……うーん……
    しいて言うなら、そこに生えてるポプラの木みたいな」

海未 「どういうことですか?」

穂乃果「まだ私の心の中にあるのは、小さな木の芽だけどね。
    でも、きっとすごくステキな木になるはずだよ。
    だから私は、そのポプラの木の芽に、可能性を感じたんだ!
    そしたらもう、踊りながら前に進むしかないじゃない!
    わあああい!」
8: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 20:27:32.96 ID:1paX4uBs.net
海未 「こら、また踊りだそうとして……落ち着きなさい!
    ことり!
    そこで見てないで、ちょっとこのアホノカを止めるのを手伝ってください!」

ことり「穂乃果ちゃん、元気な穂乃果ちゃんのことは大好きだけど、
    道路にとびだしたらだめだよ。
    道を歩くときは、車に気をつけること。
    これが今日の教訓だよ」

穂乃果「はーい」

海未 「小学生ですか、あなたは」

穂乃果(二人に両腕をつかまれて引きずられながら歌いだす)
   「だってー可能性かんじたんだー、
    そうだーすすーめー」
9: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 20:29:01.10 ID:1paX4uBs.net
【その後の体育の時間、テニスコート】

穂乃果「おおお、ひらめいた!」

ことり「穂乃果ちゃん、急にどうしたの?」

穂乃果「うふふ。今日の私は、じつに冴えてるよ。
    私、けさ学校に来るときに、UTX学院のスクールアイドルの映像を見たの。
    街のひとはみんな、大画面に釘付けになってたよ。
    だから私たちも、スクールアイドルを結成すればいいんだよ!
    そうすれば音ノ木坂も有名になって、廃校なんてなくなるよ」

海未 「穂乃果、どうしていつも思いつきだけで行動しようとするのですか。
    今日のあなたは、ちょっとヒートアップしすぎです。
    ちょっとクールダウンしてください。
    廃校の問題は、私たち生徒がどうこうできる問題じゃないと思いますよ。
    ていうか早くテニスボール、こっちに打ってきてください」
11: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 20:30:38.66 ID:1paX4uBs.net
穂乃果「クールダウンするヒマなんかないよ!
    だって、可能性感じたら、前に進むしかないじゃない。
    前に進んだら、私たちでも廃校を阻止できる。
    この世界は、変わらない世界じゃないんだよ。
    そう、胸にポプラの木の芽を抱いた私たちなら、世界を変えられるのだ!
    えいやあ!」
   (サーブする)

海未 (打ち返しながら)
   「革命家みたいなこと言うんですね」

穂乃果(打ち返しながら)
   「カクメイ?
    同じ数字の手札を四枚いっぺんに出すことだね。
    もー海未ちゃんたら、どうして急にトランプの話をはじめるの。
    このまえことりちゃんと私にケチョンケチョンにされたことが、そんなに悔しいの?」

海未 (打ち返すのに失敗する)
   「あああ、思いださせないでください!
    そう、なぜかババ抜きで負けること、七三、二十一連敗。
    なぜ負けたか分からず悶々とすること、七四、二十八夜。
    そこで園田は考えた、大富豪なら、アホな穂乃果に勝てるはず……
    いや、そうじゃなくて、革命っていうのは……」

ことり(点数をカウントしながら)
   「世のなかのしくみを、ひっくりかえすことだよ。
    大貧民が、急に大富豪になったりするみたいにね」
12: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 20:32:17.16 ID:1paX4uBs.net
穂乃果「あ、私、そっちのカクメイも知ってるよ!
    きのう雪穂といっしょに『ベルサイユのばら』読んだから。
    でもどうして革命家さんは、世のなかをひっくりかえしたくなるの?」

ことり「今よりもっとステキな世界が作れると考えるからじゃないかな」

穂乃果「うーん、それは何となく分かるんだけど。
    具体的には、何をするわけ?」

ことり「今の世界にある障壁を、なくそうとするんじゃないかな」

穂乃果「ショウヘキ?」

海未 「私たちが自由に生きるのを邪魔する、壁みたいなものです」

穂乃果「第三身分の自由を妨げるバスティーユ牢獄みたいなものだね!」

ことり「うん、まあそうだね。
    穂乃果ちゃん、『ベルばら』のおかげで、ずいぶんフランス革命に詳しくなったんだね」
13: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 20:34:26.65 ID:1paX4uBs.net
穂乃果「なるほど、わかった!
    今の私にとってのバスティーユは、
    みんなとの高校生活を邪魔する廃校計画などという、
    けしくりからぬものだよ。
    そんな壁は、私が壊してやる! 倒してやる!
    今日から私は、スクールアイドル革命家だあ!
    ねえ、ことりちゃんと海未ちゃんも、いっしょにバスティーユ襲撃しない?」

それを聞くと、ことりちゃんと海未ちゃんがクスリと笑って、顔を見合わせた。

ことり「穂乃果ちゃん、革命家に向いてるね」

海未 「アジるのが上手いのですね、穂乃果」

穂乃果「鯵?」

ことり(海未ちゃん、どうしてその手の言葉に詳しいの)

穂乃果「まあ、何はともあれ、これで私たちは革命の同志だね。
    これから何があろうと、私たちはこの革命を成就してみせる!
    そう、これぞまさしく、テニスコートの誓い……」

先生 「こら、高坂、園田、南!
    革命とか襲撃とか、物騒なことを言うヒマがあったら、テニスしろ、テニス!」
14: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 20:34:51.87 ID:1paX4uBs.net
革命の同志は、これで三人になったよ。
私は、自分の胸に手を当てた。
胸の中のポプラの木の芽は、さっきより大きくなった気がする。
15: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 20:36:33.99 ID:1paX4uBs.net
【その日の放課後】

ことり「さて、穂乃果ちゃん、海未ちゃん。
    バスティーユ襲撃……じゃなかった、ライブに必要なものを、さっそく準備しないとね。
    まずは何が要ると思う?」

穂乃果「大砲、サーベル、鉄仮面」

海未 「火炎瓶、ゲバ棒、タオル覆面」

ことり「穂乃果ちゃんと海未ちゃんが想像してる革命には、
    150年くらい隔たりがあるみたいだね。
    でもふたりとも、ふざけてるという点では、同じだね。
    ことりのおやつになりたいの?」

穂乃果「ひいい、ことりちゃん、ごめんなさい!」

海未 「すみません、許してください!
    何でもやりますから!」

ことり「よろしい。
    今の私たちに必要なのは、曲と歌詞と衣装だよ。
    衣装のデザインは私がやって、作詞は海未ちゃんがやるとして……」

海未 「え、ちょ」

ことり「あれ、海未ちゃん、何でもしてくれるんだよね。
    中学生のころから、詩を書くの好きだったよね。
    それともやっぱり、まかまかマカロンになりたいのかな?」

海未 「や、やります!」
16: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 20:37:40.19 ID:1paX4uBs.net
ことり「でも、私たち、誰も作曲できないよね。
    どうしようか?」

穂乃果「私、さがしてくるよ!」

そう言って私は、教室を飛び出して、いろんな人に訊いてまわった。
でも、作曲ができる人は、なかなか見つからない。
途方にくれていると、音楽室からきれいなピアノの音が聞こえた。
気になって中をのぞくと、弾き語りをしている女の子がいたんだ。
17: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 20:39:03.76 ID:1paX4uBs.net
ときどき雨が降るけど
水がなくちゃたいへん
かわいちゃだめだよ
みんなの夢の木よ育て

あんまりステキなので、私はドアを開けて、拍手をしながら彼女のところに駆け寄った。

穂乃果「トレビアーン!」

真姫 「うええ?」
18: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 20:40:28.24 ID:1paX4uBs.net
穂乃果「カンドーしたよ!
    あなた、とってもピアノが上手なんだね!
    それに、ベルサイユ宮殿のお妃さまみたいに可愛い!
    ぜひあなた、うちの革命的秘密結社……じゃなかった、スクールアイドルに入ってみない?」

真姫 「ちょっと待ってよ!
    いきなり入ってきて、何なのよ。
    そもそもあなた、誰ですか」

穂乃果「私、高坂穂乃果!
    胸に、夢の木の芽を抱いた革命家だよ」

真姫 「半端なく意味わかんないですよ」

穂乃果「うふふ。意味わかんないなら、聞きたまえ、マドモアゼル。
    今あなたが歌っていた夢の木が、私の胸にも芽生えているんだよ。
    そこで私は、ビビっときたんだ。
    あなたとなら、一緒にスクールアイドルができる。
    あなたになら、私たちが歌う曲を作ってもらえる。
    ねえあなた、こんなにピアノが上手なら、作曲もできるんじゃない?」
19: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 20:42:06.29 ID:1paX4uBs.net
真姫 「まあ、できないことはないですけど」

穂乃果「おお、やった!
    じゃあ話は決まりだね、さっそく……」

真姫 「待ってください! まだやるなんて言ってないでしょ!
    そもそも、このご時世に革命家って、どういうことですか。
    何をするつもりなんですか」

穂乃果「バスティーユを襲撃して、壁をぶちこわすんだよ。
    あなたもぜひ、いっしょに……
    そうだ、あなたのお名前は何ていうの?」

真姫 「西木野真姫。
    言っとくけど私は、参加する気なんかさらさらありませんから。
    ちなみに革命して、どんな世界をつくるつもりなんですか?」

穂乃果「さしあたり壊すべき壁は、廃校計画だよ。
    そしてゆくゆくは、このうえなくステキな世界をつくるつもり」

真姫 「高坂先輩、そういうことを夢想する人のこと、ほんとは何ていうか知ってますか。
    革命家じゃなくて、楽天家っていうんですよ」
20: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 20:43:29.20 ID:1paX4uBs.net
穂乃果「私は、楽天カードマンじゃないよ?
    まあ、なってみたくないと言えばウソになるけど」

真姫 「目にカードを貼りつけたアヴァンギャルドなムッシューのことじゃありません。
    楽天家です」

穂乃果「ラクテンカ?
    そのひとは、どこにカードを貼りつけてるの?」

真姫 「何かを貼るという発想から、いったん離れましょうか」

穂乃果「それなら、どんなひとなの?」
    
真姫 「そうですね、一言でいうと、
    可能なかぎり最もステキな世界を実現できると考えてる人のことです」
21: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 20:49:28.24 ID:1paX4uBs.net
穂乃果「可能なかぎり最もステキな世界?
    真姫ちゃん、まどろっこしい言い方をするんだね。
    単に、最もステキな世界って言えばいいじゃない」

真姫 「どんなにステキな世界でも、
    それが不可能な世界だったら、実現できないでしょ」

穂乃果「どういうこと?」

真姫 「先輩がどんなドデカイ可能性を感じたのか、私には分かりません。
    でも、世界を変えることが可能だとしても、その可能性には、限界があるんです。
    楽天家にも、その限界は守ってもらわないといけないんです。
    たとえば、先輩が考えるステキな世界って、どんな世界ですか」

穂乃果「今の学校みたいにドヨンとしてない世界。
    明るくて、朗らかで、陽気で……
    ひとことでいうと、雨の降らない世界だよ!」

真姫 「そんな世界は、ありえません。
    どんなにステキな世界を実現しても、そこにはときどき雨が降るんです」
22: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 20:51:41.84 ID:1paX4uBs.net
穂乃果「えー、なんでなんで?」

真姫 「先輩、私の歌、聴いてくれたんですよね。
    それならわかるでしょ。
    ときどき雨が降らないと、夢の木の芽も育たないんですよ。
    先輩は、雨が降るのを止められなくても、スクールアイドル革命家でいられんですか。
    もしそうじゃないなら、そんな革命ごっこは、ただのお遊びです」

穂乃果「遊びじゃないよ! 私たちは本気で……」

真姫 「あら、そうですか。それは失礼。
    まあいずれにせよ、私はアイドルなんかに興味ないですから。
    そういうわけで、お引きとりください。アデュー」

そう言って私をつまみ出すと、真姫ちゃんはまたピアノを弾きはじめた。
雨の降らない世界なんてない? 真姫ちゃんは何を言ってるのかな。
24: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 20:55:24.26 ID:1paX4uBs.net
何はともあれ、こうして革命的秘密結社(名称未定)の活動が始まった。
それにくわえて、私はこの日の夕方から、走りこみを始めた。
心の中が熱にうかされたように熱くて、走りださずにはいられなかったんだ。
そう、同志諸君。青春とは革命の熱気に満ちているのだ。
25: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 21:08:10.99 ID:1paX4uBs.net
【その夜、穂乃果の部屋】

穂乃果「ねえ雪穂、雨の降らない世界って、あると思う?」

雪穂 「知らん」

穂乃果「むー、中学生になってから、ちょっと雪穂は反抗期っぽいな。
    お姉ちゃんの話を聞かないやつは、こうだ!」

雪穂 「ちょっとお姉ちゃん、くすぐらないでよ!
    今オスカルさまとアンドレさまがいいとこなんだから!」

穂乃果「あら、それはごめんあそばせ。
    でも雪穂おー、困ってるお姉ちゃんを助けておくれよおー」
26: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 21:10:13.74 ID:1paX4uBs.net
雪穂 「ええい、じゃれつくな!
    だいいち、雨の降らない世界があろうとなかろうと、
    お姉ちゃんのすることに何か違いがあるわけ?」

穂乃果「うーん、じゃあ私は、何をするの?」

雪穂 「アイドルするんでしょ」

穂乃果「どんなふうに?」

雪穂 「私の知ったこっちゃないよ。
    何でも私に訊かないで、少しは自分で考えなよ。
    そうだお姉ちゃん、『ベルばら』、友達に貸していいかな?
    私が学校で話して聞かせたら、ぜひ読みたいって」

穂乃果「うん、いいよ。
    ちなみに、どんな子?」

雪穂 「絢瀬亜里沙ちゃん。
    ときどきポンコツになるけど、普段はすごくかしこくてかわいい子だよ」

穂乃果「へえ、偶然だね。
    うちの高校にも、絢瀬って名字の、かしこくてかわいい生徒会長がいるんだよ」

雪穂 「姉妹なんじゃない?」

穂乃果「えー、まさか。
    だって、ポンコツとはほど遠い、鬼のような人だって噂されてるもん」
27: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 21:12:28.63 ID:1paX4uBs.net
【数日後の昼休み、音楽室】

穂乃果「ボンジュール、真姫ちゃん!
    今日もマドモアゼル・真姫ちゃんのピアノ、聴きにきたよ!」

真姫 「しつこいですね。
    あれから毎日来るなんて。
    でもどれだけ頼まれても、引きうけませんから」

穂乃果「初めて会ったとき、真姫ちゃん、言ってたよね。
    雨の降らない世界なんて実現できないって。
    あれから私、この言葉の意味を、ずっと考えてたんだよ」

真姫 「そうですか。
    それで今日は、私に言いたいことがあるというわけですね」

穂乃果「雨の降らない世界が実現できないかどうかは、
    ためしてみなきゃ分からない。
    それに、どっちにしても、私のやることは変わらないよ」

真姫 「何をするんですか」

穂乃果「たとえば、土砂降りの雨の日に、雨やどりしてるとするよね。
    そしたら私は『雨やめー!』って叫ぶよ」
28: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 21:13:48.60 ID:1paX4uBs.net
真姫 「たぶん、そんなことしても雨はやまないですよ。
    そしたら先輩は、どうするんですか?」

穂乃果「もういちど、同じことを叫ぶよ」

真姫 「それでも、やまなかったら?」

穂乃果「なんどでも、同じことを叫ぶよ」

真姫 「そういうことするの、すごくつらいと思いますよ」

穂乃果「そうだね。腕立て伏せと同じくらい、つらいかもね」
    
真姫 「つらくても、泣きながら叫びつづけるんですか?」

穂乃果「いや、雨がやまなくても、笑いながら叫ぶよ」

真姫 「どうして?」

穂乃果「アイドルは、ステージの上では、ずっと笑顔でいるものだからだよ」
29: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 21:15:30.18 ID:1paX4uBs.net
それを聞いたあと、真姫ちゃんは、しばらく何か考えている様子だった。
それから、私の目を見ながら、真姫ちゃんは言った。

真姫 「ねえ高坂先輩。
    私は、雨が降るのには理由があると思うし、
    雨の降らない世界なんてないと思う。
    だから先輩みたいな楽天家の革命的思想には、同意しかねます」

穂乃果「そんなあー、ひどいよ真姫ちゃん!」

真姫 「先輩、人の話は最後まで聞くものですよ。
    同意しないけど、協力しないとは言ってないでしょ。
    先輩みたいなアホな楽天家、嫌いじゃないから。
    もう歌詞、できてるんですよね。見せてください」
31: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 21:16:32.48 ID:1paX4uBs.net
穂乃果「ありがとう!
    さすが優雅にして賢明なるベルサイユの王妃です!
    真姫ちゃんだけに……」

真姫 「待ってください。
    だいたい見当つくから、言わなくていいです」

穂乃果「まきー・アントワネット……」

真姫 「だから言うなっていったでしょ!
    なんで『やっちまった』みたいな顔してるんですか!
    しょーもないダジャレのネタにされた私のほうがもっと恥ずかしいわよ!」
32: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 21:17:42.24 ID:1paX4uBs.net
【さらに数日後の朝、高坂家】

雪穂 「お姉ちゃんに、何やら怪しげなCDが届いてるよ」

穂乃果「お、これはもしかするともしかするのか?
    差し出し人は誰? 西木野真姫さんじゃない?」

雪穂 「いや、まきー・アントワネットって書いてある」

穂乃果「真姫ちゃん、意外とノリがいいんだなあ」

雪穂 「葉っぱがはさんであるね。
    えーと、これ、何の葉っぱ?」

穂乃果「ポプラの葉っぱだ!
    あれ、でもどうしてかな。
    私、真姫ちゃんに、ポプラの話してないのに」
34: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 21:22:09.62 ID:1paX4uBs.net
【その後、通学路】

穂乃果「ねえねえ、ことりちゃん、海未ちゃん!
    ついに西木野さんからCDが届いたよ!」

ことり「やったね、穂乃果ちゃん!
    今日、みんなでお礼言いにいこうね」

穂乃果「でも不思議なんだよ。
    私、自分の胸に生えてるポプラのこと一度も話してないのに、
    真姫ちゃんはポプラの葉っぱをくれたの」

ことり「ふふふ。
    きっと西木野さんの胸の中にも、ポプラが生えてるんだね。
    何といってもポプラは、みんなの夢の木だもんね」

穂乃果「どういうこと?」

海未 「昔のフランスの人は、
    革命をおこすたびに、ポプラの木を植えて踊っていたんですよ」

穂乃果「どうして?」

海未 「その木を、みんなの夢の象徴にしてたんです」

穂乃果「どんな夢を見ていたの?」

海未 「自由になる夢」
35: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 21:25:46.37 ID:1paX4uBs.net
【その後、学校】

ことり「さて、すばらしい曲もできたことだし、あとはしっかり練習するだけだね。
    ……といいたいところだけど、ライブのこと、ちゃんと学院のみんなに周知しないと。
    穂乃果ちゃん、海未ちゃん、こういうときスクールアイドル革命家は、何をすればいいと思う?」

穂乃果「ビラ配り!」

海未 「ビラ配り!」

ことり「またふざけてるの……といいたいところだけど、まともな意見だね。
    ビラ配りは、いつの時代も革命を支えてきた偉大な文化だからね」

そこでさっそく、その日の放課後からビラ配りを始めることにした。
手はじめに、校内のあちこちにビラをぺたぺた貼った。
そのあと、曲のお礼もかねて、音楽室にいる真姫ちゃんのところにビラを渡しに行ったよ。
36: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 21:30:43.31 ID:1paX4uBs.net
海未 「あなたが西木野さんですね。
    トレビアーンな曲をありがとうございます」

ことり「メルシィ、マドモアゼル・まきちゃん」

穂乃果「作曲してくれてありがとう、真姫ちゃん!
    はいこれ、ファーストライブのビラ。
    ぜひ見にいらしてください、まきー・アントワネットさま。
    ちなみにグループ名は、μ’sに決まったよ!」

真姫 「作曲?
    知らないわ。人違いじゃないですか」

穂乃果「さすがにその言い逃れは苦しいんじゃないかな。
    別人のフリがしたいなら、鉄仮面くらい被ってもらわないと」

真姫 「ちなみに場所は……あら、講堂ですか。
    よく生徒会長が許してくれましたね」

穂乃果「うふふ。じつは、鬼の会長の居ぬ間に、
    こっそり仏の副会長から許可をもらったんだよ」
37: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 21:32:55.20 ID:1paX4uBs.net
真姫 「雨天決行ですか?」

穂乃果「おかしなことを言うんだね、マドモアゼル。
    建物の中なんだから、雨が降るわけないじゃない」

真姫 「雨が降るのは、外だけとはかぎらないんですよ」

ことり「ほかには、どこに降るの?」

海未 「西木野さん、詩人ですね」

真姫 「園田先輩ほどじゃないですよ」

穂乃果「もー、ふたりとも、何を言ってるの?」

海未 「巷に雨のふるごとく」

真姫 「わが心にも涙ふる」
38: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 21:41:44.41 ID:1paX4uBs.net
おフランスな空気が漂う音楽室の沈黙を破ったのは、ドアのノックの音だった。

真姫 「どうぞ」

花陽 「西木野さん、同じクラスの小泉花陽です。
    さっき廊下で、嬉しそうにμ’sのポスター見てたよね。
    そのとき生徒手帳落としたみたいだから、届けにきたよ……
    ピャア! モノホンのμ’sがいるう!
    ライブがんばってください、応援してます!」

真姫 「……」

穂乃果「あー、真姫ちゃん、アイドルに興味ないとか言っといて、
    ホントは気になってしかたないんじゃない!
    うふふ。カッコつけるのはやめて、素直になりなよー!」
40: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 21:51:39.86 ID:1paX4uBs.net
花陽 「あの、私、何かやらかしちゃったんでしょうか?」

穂乃果「そんなことないよ!
    花陽ちゃんと言ったね。
    応援してくれて、ありがとう。
    でもキミも、すごく輝いてるよ。
    のどかな田園に咲く一輪の花のようだよ。
    ぜひ、うちの革命的秘密結社μ’sに……」

花陽 「革命?
    どんな世界をつくるんですか?」

穂乃果「雨の降らない世界」

それを聞くと、花陽ちゃんの顔がみるみるうちに青ざめた。

花陽 「き、危険思想だ! ダレカタスケテエ!」
41: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 21:52:53.10 ID:1paX4uBs.net
穂乃果「突然どうしたの、花陽ちゃん?
    私、そんなに危ないこと言ってるかな?」

花陽 「先輩、雨の降る理由をご存知ないのですか?」

穂乃果「花陽ちゃん、知ってるの?
    そんな理由があるんなら、ぜひ教えてよ!」

花陽 「かんたんなことです。
    雨が降らなければ、稲が育たない。
    稲が育たなければ、お米が食べられない。
    お米が食べられないと、みんな困る。
    それゆえに、雨は必要なのです」

穂乃果「ごはんがないなら、パンを食べればいいじゃない」

花陽 「あわわわわ……
    中道右派(ごはんとパンどっちも食べるけど、どっちかというとごはんが好き派)の私には、
    そんな急進的左派(とにかくパン食べろ派)の考えは理解できません……お米も食べろおお……」

そう言うと、花陽ちゃんは「TPP反対」と呟きながらガタガタと震えだした。
42: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 21:54:46.89 ID:1paX4uBs.net
真姫 「えーと……生徒手帳、届けてくれてありがとう、小泉さん。
    それからあなた、ちょっと落ち着きなさい。
    雨が降らなかったら、小麦も育たないでしょ。
    このアホの先輩に、そう言い返してやんなさいよ」

穂乃果「ホントにそうかな?
    雨が降らなければ、ごはんもパンも食べられないのかな?」

真姫 「何が言いたいのよ」

穂乃果「たしかに『水がなくちゃたいへーん』だよ。
    でも、それなら神さまは、ピンポイントで田んぼと小麦畑のわきに、
    永遠に水が湧き出る魔法の泉とかをつくればよかったわけだよ。
    それをせずに、あたりかまわず雨を空からぶちまけるなんて、
    神さまにしては、ちょっと仕事が雑すぎない?」

花陽 「なるほど」

真姫 「ペテン師の高坂先輩に言いくるめられちゃだめよ。
    イカサマっていうのは、こんなふうに広まっていくのよ」

穂乃果「神さまが泉をつくってくれないなら、
    私たちが代わりに井戸でも温泉でも掘ってやろう。
    これがμ’sの活動の趣旨だよ。
    さあ、われらの理想郷を実現するため、ぜひ二人も革命の同志に……」

真姫 「ふん、知らない」

花陽 「先輩たちの自由な姿は、とってもステキです。
    でも私には、無理ですよ。
    だから、客席から応援するだけにさせてください」
43: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 21:56:42.92 ID:1paX4uBs.net
【その夜、穂乃果の部屋】

雪穂 「お姉ちゃん、私、体重ふえちゃった!
    これはもう、コルセットつけるしかないよ!」

穂乃果「落ち着いて、雪穂。
    雪穂も何だかんだいって『ベルばら』に影響されすぎ。
    ところで、コルセットつけたら体重減るの?」

雪穂 「減るわけないでしょ。
    でも、寄せて上げれば、何か奇跡が起こる気がするんだよ」

穂乃果「もー雪穂ったら、中学生のくせに、おませさんだなあ。
    私たちは、体重とか体型とか気にせず、パンをもぐもぐ食べて大きくなるべきなんだよ。
    体をコルセットで締めつけたりせずに、ウサギさんのように自由に生きるべきなんだよ」

雪穂 「ウサギさんなら、好きに駆けまわっているうちに、
    いつか柵にぶつかっちゃうよ。
    そしたらどうするのさ」

穂乃果「柵が倒れるまで、にこにこ笑いながら体当たりするんだよ」

雪穂 「雨が降っても?」

穂乃果「雨が降っても」
44: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 21:57:41.80 ID:1paX4uBs.net
雪穂 「お姉ちゃんらしいね。
    ところでこの前『ベルばら』貸したら、亜里沙もすっかりハマっちゃって。
    最近では、ロシア語のかわりに、よくフランス語を話すんだよ。
    『お姉ちゃんから教えてもらったおかげで、ペラペラになったよ!』って言って」

穂乃果「ええ? すごくかしこいんだね!
    亜里沙ちゃんは、どんなフランス語をしゃべるの?」

雪穂 「ショコラ、クロワッサン、カフェオレ。
    とりあえず、この三単語だけ」

穂乃果「あれ? ペラペラじゃないし、それほどかしこい感じもしない……
    まあでも、亜里沙ちゃんのせいじゃないよね。
    入れ知恵してるお姉さんが、あんまりかしこくないんだね」
45: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 22:01:06.63 ID:1paX4uBs.net
【翌月、講堂】

けっきょく、メンバーが増えないまま、講堂でのライブの日を迎えた。
でも、毎日練習してきたし、詞も曲も衣装もすばらしいものができた。
だからきっと、三人でも成功させられるはず。
でもこの期におよんで、海未ちゃんときたら……

ことり「もー海未ちゃん、恥ずかしがらないでよ。
    どうしてスカートの下にはいた半ズボンを脱いでくれないの?」

海未 「だって、ステージの上で足を出すなんて……」

穂乃果「海未ちゃん、もう観念しなよ。
    半ズボン脱いで、鏡の前に立ってごらんよ。
    一番似合ってるんじゃない? この衣装」

ことり「そうだよ。とってもステキだよ、海未ちゃん。
    それに、三人いっしょなら、はずかしくないでしょ。
    そもそもフランス革命の担い手は、サン・キュロット。
    『半ズボンをはかない人』なんだよ」

穂乃果「え? パンツ一丁だったの?」

ことり「いや、長ズボンをはいてたんだよ」

海未 「え? 長ズボンはいていいんですか?」

ことり「海未ちゃん、まだ言うの?
    ことりの、ちょこちょこチョコレートになりたいの?」

海未 (半ズボンを脱ぎながら)
   「いいえ、私は足まるだしのサン・キュロットです!
    ……ふふふ、二人とも、ありがとうございます」
47: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 22:05:43.78 ID:1paX4uBs.net
そしてついに、ステージの幕が上がる。

穂乃果「いよいよだね」

海未 「大勢の人の前で、うまく踊れるでしょうか」

ことり「大丈夫だよ。いっぱい練習してきたし、
    みんな応援してくれるから……」

でも、幕が上がった先の客席には、誰もいない。
49: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 22:06:38.82 ID:1paX4uBs.net
なるほど、真姫ちゃんが「雨天決行ですか?」と訊いた理由が、やっとわかった。
屋内でも、雨が降ることはあるのだ。
どこに?
私の心に。
でも私は、何があろうと、このライブを中止になんかしない。

巷に雨のふるごとく
わが心にも、涙……

穂乃果「降らせてたまるかあ!」

海未 「穂乃果?」

涙を引っこめて前を向くと、扉が開いた。
入ってきたのは、花陽ちゃん。

穂乃果「ライブ、やろう。
    一人でもお客さんがいるんだから」

ことり「そうだね」
50: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 22:07:27.88 ID:1paX4uBs.net
そのあと、ぽつりぽつりとお客さんが入ってきた。
花陽ちゃんのお友達らしい、ショートカットの可愛い女の子。
椅子のうしろにも、誰か隠れていたみたい。
そして、扉の隙間からは、こそこそと真姫ちゃんが顔を覗かせていた。
51: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 22:09:04.50 ID:1paX4uBs.net
ライブをどうにか終えたあと、私は舞台裏で、ことりちゃんと海未ちゃんと顔を見合わせた。

海未 「なかなか思うようには、いかないものですね」

ことり「穂乃果ちゃん、大丈夫。
    次はもっとうまくいくから、だから……」

私は、にっこり笑って言った。

穂乃果「うん。もちろん、続けるよ。」
    スクールアイドル革命団μ’sの第一次バスティーユ襲撃は、
    残念ながら、成功とは言えないけどね。
    バスティーユが陥落しないのなら、
    第二次、第三次と、何度でも襲撃を繰り返せばいいんだよ」

海未 「穂乃果……」

穂乃果「体当たりを繰り返していれば、壁はいつか倒せるものだからね」
52: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 22:10:47.77 ID:1paX4uBs.net
何回失敗しても、私は体当たりをやめるつもりはない。
転んでも、泥まみれになっても、やめるつもりはない。
それに、涙を零すつもりもない。
だって私は、いつも笑顔で歌って踊れる、スクールアイドル革命家なのだから。
53: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 22:16:52.24 ID:1paX4uBs.net
もちろん、ファーストライブは、まったくの失敗というわけでもなかった。
ライブを見ていた三人の一年生の目つきが変わったのを、私は見逃さなかったよ。
それから数日後、花陽ちゃんを筆頭にして、三人がμ’sに入ってくれた。
革命の同志は、これで六人になったよ。
私は、自分の胸に手を当てた。
胸の中のポプラの木の芽は、けっこう大きくなった気がする。


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※つづきます。
61: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 23:51:55.30 ID:1paX4uBs.net
※ 再開します。
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【さらに翌月、アイドル研究部の部室の前】

穂乃果「梅雨だよ、嫌な季節だよ」

凛  「テンション下がるにゃー」

海未 「屋内での練習場所を確保しないといけませんね。
    せめて部室があればいいんですが」

ことり「アイドル研究部に話をつけるように、希先輩に言われたんだけどね。
    何度行っても、部室にはカギがかかってるし、ノックしても返事がないんだよ。
    ほら今も、開かないでしょ」

真姫 「居留守つかわれてるんじゃないですか?」

花陽 「でも、どうしてそんなことするのかな?」
62: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 23:54:26.81 ID:1paX4uBs.net
穂乃果「うーん、さっぱりわからない。
    八方ふさがり、もう手づまりだね。
    かくなる上は、方法はひとつ」

ことり「何かいい考えがあるの?」

穂乃果「ふふふ。今日の私も、じつに冴えてるよ。
    ドアをあける手段がないなら、ドアをあけずに問題を解決すればいいんだよ。
    発想のギャクテンというやつだね」

海未 「何をわけのわからないことを言ってるんですか」

穂乃果「ドアをあけなくちゃいけないのは、部室がほしいから。
    部室がほしいのは、屋上で練習できないから。
    屋上で練習できないのは、雨が降ってるから。
    ということは、雨が降らないようにすれば、ドアをあける必要もなくなるのだ!」

凛  「なるほどにゃー。
    かしこいこと言ってる気がするけど、たぶん気のせいだね。
    それで、どうするんですか?」

穂乃果「ふふふ、凛ちゃん、窓の外に向かってこう叫べばいいんだよ。
    雨やめー!」

凛  「あ、それ楽しそう! 凛もやります!
    雨やめー!」

真姫 「あきれた。私帰る」

花陽 「真姫ちゃん、ちょっと待ってよおー!」
63: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 23:55:25.88 ID:1paX4uBs.net
そう言って、花陽ちゃんが真姫ちゃんにしがみついた。
そして凛ちゃんと私が「雨やめ」と叫ぶこと、およそ108回。
109回目を叫ぼうとしたところで、なんと部室のドアが開いたよ!
けっきょく雨はやまなかったけど、結果オーライだね。

にこ 「あーもう、うっさいわね!
    ひとの部室の前で、何やってんのよ!」
64: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 23:58:09.05 ID:1paX4uBs.net
穂乃果「あ、やっぱり居留守つかってたんですね。
    あれ? 先輩、ファーストライブのとき、こっそり見に来てませんでした?」

にこ 「知らん! 帰れ、帰れ!
    そもそもあんたたち、何をギャーギャー騒いでたの?」

穂乃果「雨が降るのを、止めようとしてたんです」

にこ 「どうして?」

穂乃果「部室のドアがあかないから、いっそ雨の降らない世界にしてしまおうと思ったんです」

それを聞くと、先輩がにやりと笑った。

にこ 「あんたは底抜けのアホね。
    雨の神さまのこと、もうちょっと敬いなさいよ。
    でもあんたみたいな向こう見ずは、嫌いじゃないわ。
    中に入って、お茶でも飲んでいきなさい」
65: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 23:58:53.10 ID:1paX4uBs.net
こうしてμ’sは、アイドル研究部と一緒になった。
革命の同志は、これで七人になったよ。
私は、自分の胸に手を当てた。
胸の中のポプラの木の芽は、さらに大きくなった気がする。
66: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:01:04.40 ID:MtWJlaW9.net
【数日後、部室】

穂乃果「えーと、エヘン。同志諸君。
    本日は、スクールアイドル革命的秘密結社μ’sによる、
    第二次バスティーユ襲撃の計画について話し合います」

にこ 「このアホノカは、何を言おうとしてるの?」

海未 「簡単にいうと、
    二度目のライブはどうしようか、と言いたいんだと思います」

ことり「オープンキャンパスでやるのはどうかな?」

穂乃果「えーと、エヘン。
    しかしながら、それには生徒会の許可が必要であります。
    そして生徒会は、鬼の生徒会長による恐怖の専制政治が行われている、
    おそるべき、あんちゃん・レシーブであります」

ことり「アンシャン・レジーム」

穂乃果「それであります」
67: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:05:32.03 ID:MtWJlaW9.net
ことり「それだと、何か不都合があるの?」

穂乃果「同志、南くん。
    新進気鋭の革命の闘士であるわれわれが、
    そんな旧態依然の支配階級のもとに行ったら、どうなりますか。
    ソロバンのように賢く、氷のように美しい生徒会長に捕まって、
    ロシア式の秘密裁判にかけられ、奥歯をガタガタ言わせられ、
    あげくのはてには、ジャガイモを三つだけ与えられてシベリアに送られるに相違ありませぬ」

にこ 「このアホノカは、要するに何が言いたいわけ?」

海未 「簡単にいうと、
    会長が怖いから生徒会室に行きたくないよ、と言いたいんだと思います」
68: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:06:23.61 ID:1paX4uBs.net
にこ 「なにびびってんのよ!
    それに、心配には及ばないわ。
    絵里は、あんたが思うほどかしこいやつじゃないから」

穂乃果「え、遠目で見るぶんには、あんなにかしこそうなのに……」

にこ 「まー会えばわかるわ。
    私が一緒についてってあげるから、行きましょ」

こうして、にこ先輩と私は、生徒会室に交渉に行くことになった。
団体交渉、略して団交というやつだね!
69: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:08:15.37 ID:MtWJlaW9.net
【生徒会室】

にこ 「たのもー、たのもー」

にこ先輩がドカドカドカとドアをたたくと、仏の副会長の希先輩が顔を出した。

希  「あ、にこっち、穂乃果ちゃん。
    今日は何の用?」

穂乃果「オープンキャンパスの日の企画のことでご相談があるんです。
    できれば、会長にはナイショで、希先輩だけにコッソリご相談したいなあ……」

希  「うーん、残念ながら、そういう大きい話は、会長を通す必要があるんよ」

にこ 「絵里、そこにいるんでしょ? 会わせてよ」

希  「せやけど、今のエリチとは、ちょっと話しづらいかも」

にこ 「どういうこと?」

希  「えーと……まあいいや、入れば分かるわ。どうぞ」
70: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:10:55.16 ID:MtWJlaW9.net
そう言って希先輩は、私たちを生徒会室に入れてくれた。
すると中では、髪をほどいて薔薇を手にした絵里先輩が、窓にもたれて物憂げに外を眺めていた。
流れるような金髪、端正な顔立ち、すらりとした長身。
男装なんかしたら、きっと似合うにちがいない。
薔薇の花びらに口づけするその姿は、まさに……

穂乃果「オスカルさま!」

絵里 「ボンジュール、マドモアゼル・ほのか」
71: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:13:47.84 ID:MtWJlaW9.net
にこ 「ちょっと待ちなさいよ、このポンコツ!
    あんた、今日の昼に一緒にお弁当食べたときは普通だったじゃない。
    何なのよ、そのエセフランス語は!」

絵里 「……」

希  「ごめんな、にこっち、穂乃果ちゃん。
    エリチは、妹の亜里沙ちゃんによって『ベルばら』を読まされたために、
    ロシア人のクォーターのくせに、すっかりフランスかぶれになってしもてん。
    せやから今のエリチは、おフランス語しかしゃべられへんのよ」

穂乃果「すみません。その漫画の出どころは、もとをたどれば我が家です」
72: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:15:55.16 ID:MtWJlaW9.net
にこ 「それにしたって、せめて日本語しゃべってよ。
    これじゃ話もできないじゃない。
    おいこら、そんな哀れむような目で私を見るな!」

絵里 「……」

希  「『誇り高きフランス人は、美しきフランス語しか口にしないのだよ、マドモアゼル・にこにー』
    と言うとるね。目で」

にこ 「絵里、あんたフランス語しゃべれるの?」

希  「ほんの少しならね。
    ほら、エリチ、あなたの名前は?」

絵里 「エリー」

にこ 「語尾をのばしてフランス語っぽくしようとしてんじゃないわよ!」

希  「好きな食べものは?」

絵里 「ショコラ」

希  「今日の朝ごはんは?」

絵里 「クロワッサン、カフェオレ」

希  「エリチが知ってるフランス語は、これだけだよ。
    あとはかんたんな挨拶くらいしかできひん」

穂乃果「かしこくない……」
73: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:17:17.11 ID:MtWJlaW9.net
にこ 「もーいいわよ。そんなら言いたいことだけ言わせてもらうわ。
    私たち、オープンキャンパスでライブやるから。
    場所と機材を貸してくれない?」

絵里 「ノン」

穂乃果「どうしてダメなんですか?
    個人的な事情でもあるんですか?」

絵里 「……」

穂乃果「訊かれたくないことになると、だんまりを決めこむんですね。
    あーわかった! 
    先輩、自分の本音を隠したいから、フランス語しかしゃべれないフリをしてるんだ!」

絵里 「……」

にこ 「図星みたいね。
    まあいいわよ。
    筋のとおった反論ができないなら、こっちのもんじゃない。
    くやしかったら、『学校の許可? 認められないわぁ』くらいフランス語で言ってみなさいよ」

絵里 「ショコラ・クロワッサン・カフェオレ
   (訳:学校の許可? 認められないわぁ)」

穂乃果「なるほど。『学校の許可? もち認めるわぁ』と言いたいのですね。
    ありがとうございます、では私たちはこれで……」
74: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:18:30.11 ID:MtWJlaW9.net
すると絵里先輩が、希先輩に目くばせした。

希  「ん、何? ペンと紙がほしい?
    もーしょーがないなあ、エリチは」

にこ 「希、あんた何で理解できるのよ……」

そして絵里先輩は、紙にさらさらと文字を書いて、私たちに見せた。

絵里 (次のテストで赤点をとる人がいたら、ライブは認められないわぁ。
    これは私の独断じゃないわよ。
    理事長と話しあって決めたことだもーん。アカンベー)

希  「おお、そうやったんか。まあマトモな要求やん。
    これくらいなら、μ’sの皆には簡単なことだよね……
    あれ、穂乃果ちゃん、にこっち、何で青ざめてるの?」
75: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:27:24.81 ID:MtWJlaW9.net
【数日後、部室】

それから数日のあいだ、にこ先輩と凛ちゃんと私は、部室にカンヅメになって勉強したよ!
凛ちゃんが苦手なのは英語、そしてにこ先輩と私が苦手なのは……

にこ 「もうだめだ、どうして数学なんてものがこの世にあるんだ」

穂乃果「ねえにこ先輩。
    雨の降らない世界を実現するための革命と並行して、
    数学のない世界を実現するための革命を起こしませんか?
    部活の掛け持ちをする人がいるくらいですから、
    革命の掛け持ちだってできますよね!」

にこ 「アホノカにしてはすばらしい提案ね。賛同するわ。
    あれ、でもこの場合は、何を倒せばいいのかな?」

真姫 「くだらないこと言ってんじゃないわよ!
    何でもかんでも革命起こせばいいってもんじゃないのよ。
    その発想は、マラソン大会の前に『地球に隕石落ちねーかな』と考える小学生と同じよ!」
76: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:29:05.03 ID:MtWJlaW9.net
凛  「真姫ちゃーん、ここわかんないから、教えてよー」

穂乃果「あ、凛ちゃんばっかりずるい!
    真姫ちゃん、私たちを見捨てないで!」

にこ 「そうよ真姫、どうか慈悲をかけてよ!」

真姫 「さすがに先輩たちの勉強までは教えられないですよ。
    それに希先輩の用意した教材があるんだから、大丈夫でしょ」

穂乃果「希先輩、仏かと思ったら、意外と厳しいんだよ。
    こんなの解けるわけないよ」

真姫 「そういえば今日は、ほかの皆はいないんですか?」

にこ 「希と海未は、フランス語の辞書を持って、絵里に話をつけに行ったわ。
    あのポンコツから本音を引き出すためにね」

穂乃果「ことりちゃんと花陽ちゃんは、衣装づくり」

真姫 「あ、それじゃ私も衣装づくり手伝いに行こうっと」

三馬鹿「やだよ真姫ちゃん、おいてかないで!」

真姫 「三人で助けあったらいいでしょ。
    三人寄れば文殊の知恵と……
    ごめんなさい、言えないですね。この三人の場合は」

三馬鹿「謝らないでよ!
    よけいみじめになるじゃない!」
77: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:30:23.00 ID:MtWJlaW9.net
それからしばらくは、真姫ちゃんの監視のもとで、私たちは静かに勉強した。
でもたまには休憩も必要だよね。
そこで息抜きがてら、μ’sの誇る三賢人であるにこ先輩と凛ちゃんと私は、知的な対話をくりひろげたよ。
78: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:33:06.47 ID:MtWJlaW9.net
穂乃果「私、わかったよ。
    私が実現すべきステキな世界は、雨と数学のない世界だよ」

凛  「数学のない世界は、どうすればつくれるの?」

穂乃果「数学の神さまにかけあえばいいんだよ。
    『1たす1がいつも2なんて、無味乾燥な世界じゃありませんか。
    たまには3とか4にもなる、そういう愉快な世界にしませんか。えへへ』って言って」

にこ 「なるほど。そしたら数学の採点ができなくなるから、
    数学という恐怖の学問は、この世からなくなるというわけね。
    そうと決まれば、勉強なんかしてる場合じゃないわ。
    さっそく数学の神さまに手紙を書かないと」

凛  「宛先の住所は?」

穂乃果「エックスって書いておけば、たぶん数学の好きな人たちが解いてくれるよ。
    あの人たちは、その手の作業がアホみたいに好きなんだから」

凛  「なーるほど、穂乃果ちゃんはやっぱりかしこいにゃー」
79: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:35:43.01 ID:MtWJlaW9.net
すると、冷ややかな目で三賢人の対話を見守っていた真姫ちゃんが、激おこモードになって机をドンとたたいたよ!

真姫 「いらんことするヒマがあったら、勉強しなさい!
    革命家諸君、きみたちの革命的闘争には限界があるのだ!
    どんなにがんばっても、1たす1が2にならない世界は実現できないのだ!
    どんなにがんばっても、雨の降らない世界が実現できないのと同じように!」

穂乃果「どーして?」

真姫 「数学の神さまにも、1たす1が2であるということは変えられないのよ」

穂乃果「じゃあ雨の神さまは?
    雨の神さまは、雨の降らない世界をつくることはできないの?」

真姫 「できないわよ。ずっと前にも、そう言ったでしょ。
    雨がふらなきゃ、夢の木は育たないのよ。
    雨がふらなきゃ、稲が育たないのと同じようにね」
80: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:37:30.71 ID:MtWJlaW9.net
穂乃果「うーん、花陽ちゃんもそう言ってたけど……
    やっぱり、雨を降らさなくてもいい気がするんだよ。
    泉の水でも、ジョウロの水でもいいじゃない」

真姫 「ただ水をあげればいいってもんじゃないんです。
    どんなふうに水をあげるかも、大事なことなんです」

穂乃果「雨みたいにションボリとした感じであげればいいの?
    どうしてわざわざそんなことする必要があるの?
    ずっと、明るくて朗らかなままでいいじゃない。
    外の世界も、私の心の中の世界も」

真姫 「穂乃果先輩が、ずっとそうしていられるなら、
    それでいいんですけどね」

そう言うと真姫ちゃんは、また凛ちゃんに英語を教えはじめた。
82: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:39:02.13 ID:MtWJlaW9.net
凛  「あーあ、どうして凛たちは日本人なのに、英語なんか勉強しなきゃいけないのかな。
    ねえ真姫ちゃん、英語のない世界はつくれないのかな?」

真姫 「不可能ではないわね。
    いくつもある言葉の中で英語が広まったのは、ただの偶然だからね」

凛  「じゃあ凛は、英語のない世界を実現するためにカクメイを起こすよ!
    でも、そのためには何をすればいいのかにゃ?」

にこ 「そりゃ決まってるじゃない、あんた」

穂乃果「英語圏の国々をケチョンケチョンにすれば……」

すると真姫ちゃんが、ついに激おこぷんぷん丸モードになって、にこ先輩と私にチョップをくらわせたよ!

真姫 「凛に物騒なことを吹き込むな、この危険思想家どもめ!」
83: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:41:18.16 ID:MtWJlaW9.net
【さらに数日後】

みんなの厳しくも優しいサポートのおかげで、μ’sの三賢人は、どうにか赤点を回避できたよ。
このことをオスカルさま(注:絢瀬会長)に報告しようと思っていたところに、海未ちゃんと希先輩がやってきた。

希  「穂乃果ちゃん、よくがんばったね」

穂乃果「先輩の教材のおかげです、ありがとうございます!」

海未 「これから生徒会室に行くつもりなのですね。
    それなら、メンバー全員で行きませんか?」
84: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:49:20.95 ID:MtWJlaW9.net
穂乃果「どうして?」

海未 「希先輩と私は、ようやく絵里先輩の本音をギリギリまで引き出すことに成功しました」

穂乃果「すごいね! ふたりとも、フランス語しゃべれるの?」

海未 「いや、語尾をのばして、ときどき鼻にかかった発音をしていれば、
    とりあえずフランス語っぽくなるんです」

穂乃果「けっきょく日本語でしゃべったんだね……
    ていうか今の海未ちゃんは、フランス人にチョップされても文句は言えないよ」

希  「ゴチャゴチャしたエリチの理屈は省いて、結論だけ言うね。
    穂乃果ちゃん、けっきょくエリチは、μ’sに入りたいのよ。
    ただそれだけのことなのに、妙な義務感に押しつぶされてるせいで、
    エリチはその本音を言えずにいるのよ。
    だから穂乃果ちゃんが、μ’sの皆を引き連れて、誘いに行ってくれへんかな」

穂乃果「どうして私なんですか?
    希先輩と海未ちゃんのほうが適任じゃないですか?」

希  「最後に手を差し伸べるのは、勇敢な楽天家にしかできないのよ。
    穂乃果ちゃん、今までのメンバーも、そんなふうに集めてきたでしょ」
85: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:50:41.81 ID:MtWJlaW9.net
そんなわけで、私は、みんなといっしょに生徒会室に行った。

絵里 「ボンジュール、マドモアゼル」

穂乃果「絵里先輩、私たちみんな、赤点をとらずにすみました」

絵里 「トレビアーン
   (訳:ハラショー)」

穂乃果「だから、オープンキャンパスでのライブ、許可してくださいますか?」

絵里 「ウィ」

穂乃果「それから、お願いがあるんです」

絵里 「?」

穂乃果「絵里先輩も、いっしょにライブに出てください。
    絵里先輩、μ’sに入ってください、お願いします!」
86: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:52:28.36 ID:MtWJlaW9.net
それを聞くと、誇り高きエセフランス人の絵里先輩は、当惑しながら、手にもった薔薇を何度も口元に近づけた。
どんな言葉を口にすればいいのか、迷っているみたいだ。
しばらくしてから、意を決した様子で、フランス語では言えない本音をようやく口にしてくれた。

絵里 「ありがとう、みんな。
    こちらこそ、お願いします」

穂乃果「やったー!
    そうだ、これで希先輩にも、心おきなくμ’sに入ってもらえますね!」

希  「そうやね。みんな、ありがとう!」

絵里 「ハラショー
   (訳:ハラショー)」
87: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:52:58.70 ID:MtWJlaW9.net
こうして革命の同志は、ついに9人になったよ。
私は、自分の胸に手を当てた。
胸の中のポプラの木の芽は、すごく大きくなった気がする。
88: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:54:29.49 ID:MtWJlaW9.net
なんだ、真姫ちゃんの言うことも、あんがい当てにならないな。
私は、心の中のポプラを、まだいちども雨にさらしていない。
巷に降るのが雨ならば、心に降るのは涙だろう。
要するに私は、ポプラの木が心に芽生えたあの日から、まだ一度も泣いていないのだ。
でもポプラは、こんなに大きく育ったじゃないか。
だから私は、これからも泣かずに、朗らかに振る舞っていよう。
講堂でのライブのときだって、ちゃんと涙を我慢できたんだ。
これからだって、きっとできるさ。
96: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 13:21:52.45 ID:MtWJlaW9.net
※ 再開します。
-------------

【オープンキャンパスの数日後、部室】

絵里 「同志の諸君、吉報だ。
    オープンキャンパスの評判がトレビアーンだったから、
    廃校の件は、いったん保留になったわ。
    μ'sのライブも、かなり反響があったみたい。
    ありがとう。みんなのおかげよ」

穂乃果「やったよ、みんな!
    この調子でがんばれば、次はもっといいライブができる。
    そしたら廃校だって、きっと阻止できるよ!」

海未 「春に、穂乃果が一人で外に飛び出したときは何事かと思いましたけど、
    ついにここまで漕ぎつけたんですね」
97: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 13:23:32.01 ID:MtWJlaW9.net
穂乃果「ふふふ。この調子で私は、さらに前に進むよ。
    あのとき、私は一人で体当たりを始めたんだけど、
    いまは八人の友達がついていてくれる。
    だから私は、一人でいたときよりも、もっと力を出さないと」

ことり「どういうこと?」

穂乃果「みんなが支えていてくれるんだから、
    私は、一人でいたときより、もっとがんばれるはずだからね」

真姫 「穂乃果、その理屈はちょっとおかしいわよ。
    一人で体当たりしても、九人で体当たりしても、一人が出せる力は変わんないのよ」

穂乃果「でも周りに人がいれば、
    心強くなって、一人のときより力が出せるんじゃないかな?」

真姫 「まあ、そうかもしれないけど。
    それにしたって、限界というものがあるでしょ。
    限界をわきまえないと、カゼをひくわよ」
98: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 13:26:43.68 ID:MtWJlaW9.net
穂乃果「大丈夫だよ!
    私はバカだから、カゼひかないよ!」

真姫 「あなたは勘違いしてるわ。
    むしろ、バカだからカゼをひくのよ」

穂乃果「そうなの?」

真姫 「そうよ。
    たとえば、ある種のバカは、
    『余の辞書に不可能という文字はない』とか言って、
    自分の限界が分からずに進みつづけて、
    寒くなってカゼをひいちゃうのよ。
    どこかの皇帝さんのようにね」

ことり「ねえ穂乃果ちゃん、わたしも真姫ちゃんの言うことは正しいと思うよ。
    穂乃果ちゃん、ちょっと休んだほうがいいよ」

海未 「そうですよ、穂乃果。
    猪突猛進できるのは穂乃果の長所でもありますけど、たまには休まないと。
    あなたずっと走りっぱなしじゃないですか」
99: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 13:28:28.49 ID:MtWJlaW9.net
穂乃果「みんな、おかしなことを言うんだなあ。
    私はべつに、辛いなんて思ってないよ?
    むしろ、楽しくて仕方ないんだよ。
    だって、ウサギさんみたいに自由に走りまわれるんだから。
    もっともっと、私は自由になれる気がするんだよ。
    晴れた青空の下で、のびのびとね」

真姫 「……」

穂乃果「だから、さっそく三度目のライブの準備を始めよう。
    次のライブは、文化祭でやるのがいいかな?」
100: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 13:30:27.28 ID:MtWJlaW9.net
こうして私たちは、三度目のライブに向けて準備を始めた。
私は、真姫ちゃんとことりちゃんと海未ちゃんの助言に従わずに走りつづけた。
今の私は、走るのをやめる理由を、もう自分で見つけることができない。
涙が零れたら、走るのをやめる理由になるかもしれない。
でも涙はちっとも出てこない。
一度目のライブの日に無理やり引っこめた涙がどこに行ったのか、もう私には分からない。
101: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 13:34:32.98 ID:MtWJlaW9.net
【文化祭の一ヶ月前、部室】

にこ 「穂乃果、あんたは知らないかもしれないけど、
    体育館のステージの使用権は、くじ引きで決める伝統なのよ。
    あんた、くじ運は強いほう?」

穂乃果「いやー、私は、ティッシュしか当てたことないよ。
    ここはやはり、部長であるにこちゃんが引くべきじゃないかな?」

にこ 「私はダメよ。数学の神さまに色々と無礼なことを言ってしまったから。
    まあ、それを言ったら、あんたも同じ穴のムジナなんだけど」

穂乃果「え? 数学の神さまは、くじ引きの神さまを兼ねてるの?」

にこ 「よく分かんないけど、似たようなもんじゃないの?
    どうなの、希?」

希  「『神はサイコロをふらない』と言った人はいるけど……
    神さまがくじ引きのガラガラを回すかどうかは定かではないね」
102: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 13:37:18.21 ID:MtWJlaW9.net
穂乃果「ところで希ちゃん、さっきから何か言いたそうだけど、どうしたの?」

希  「ついさっき生徒会でステージの利用希望者を集計したんやけど、
    10の枠に対して、8組しかおらんかったわ。
    だからくじ引きは、なしになったよ」

にこ 「それを早く言いなさいよ!」

穂乃果「ああ、数学の神さま!
    『いつでも8は10より少ない』というのは、すばらしいことですね!」
103: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 13:38:47.78 ID:MtWJlaW9.net
【文化祭の一週間前、部室】

会場も確保できた。曲も衣装も振り付けも完成した。
みんなのおかげで、ライブの準備はトントン拍子で進んでいるよ。
ただ、気がかりが一つ。
最近、ちっとも雨がやまないのだ。
やっぱりそうだ。雨はいつも私の邪魔をする。
104: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 13:41:23.45 ID:MtWJlaW9.net
穂乃果「今日も雨だね」

絵里 「予報では、文化祭まではずっと雨みたいね。
    まあ仕方ないわ。屋内で練習するしかないわね」

穂乃果「うーん、屋上に出て、青空の下で練習したいなあ。
    どうにも気もちがすっきりしないし、何だか不安ばっかり湧いてくるんだよ。
    もっとできることはないのかな?
    そうだ! 振り付けを改良するとか……」

真姫 「本番が近いんだから、もう新しいことを始めないほうがいいんじゃない?
    穂乃果、あなた最近、ちょっと焦ってる感じがするわよ。
    あんまり根をつめすぎて体調をくずしたら、元も子もないでしょ」

穂乃果「えへへ、やだなあ、マドモアゼル・真姫ちゃん。
    私はべつに、焦ってなんかいないよ」
105: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 13:43:57.18 ID:MtWJlaW9.net
【同日、練習の後】

ほんとは、真姫ちゃんの言うとおりだ。
私は、焦っている。
それというのも、みんな雨のせいだよ。
このまま万全を尽くせないまま当日を迎えるのは、いやだ。
春からずっと習慣にしてきた夕方の走りこみも、この天気では思うようにいかない。
でも私は、いてもたってもいられず、こっそり雨の中を走りに出かけた。
106: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 13:49:36.64 ID:MtWJlaW9.net
神社の境内まで走ったところで、傘をさした人影が見えた。

真姫 「ねえ、ナポレオンくん。
    そんなことしてると、カゼひくわよ」

穂乃果「真姫ちゃん、どうしてここに?」

真姫 「あなたの様子が最近おかしいから、気になってたのよ。
    一人でこっそり無茶するつもりじゃないかと思って、見に来たの。
    でもまさか、そんな薄っぺらい服装で走ってくるとは思わなかった」

そう言うと、真姫ちゃんは私にタオルを投げつけた。
それから真姫ちゃんは、私に分厚いコートを着せて、大きな傘を持たせた。
向かい合った二つの傘の上に、雨がしとしとと降りつづけた。
107: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 13:51:18.17 ID:MtWJlaW9.net
穂乃果「大丈夫だよ、私は雨なんかには負けないよ」

真姫 「勝つとか負けるとか、そういう問題じゃないのよ。
    雨が降ったら雨ガッパを着る。さもなければ傘をさす。
    向こう見ずの楽天家にも、それくらいの常識は身につけてもらわないと。
    さ、濡れたままでいたらカゼひいちゃうから、早く家に帰りましょ」

穂乃果「だって、雨に邪魔されるのは、嫌なんだよ!
    ねえ真姫ちゃん、私はずっと壁に体当たりしてきたんだよ。
    そして、私がもっと力をだせば、次の襲撃で、壁を倒せる気がする。
    雨が降ってるからといって、この体当たりをやめるわけにはいかないんだよ」
108: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 13:56:11.87 ID:MtWJlaW9.net
真姫ちゃんは、私の手をぐいぐいと引っぱって、私を家まで送っていこうとした。

真姫 「穂乃果、あなたのそういう性格は嫌いじゃないけど、
    さすがにもう見てられないわ。
    いつから無茶してたのか知らないけど、そろそろ頭を冷やす頃合いなのよ。
    ちょっとクールダウンしなさいよ」

穂乃果「えへへ、同じこと、春にも言われたんだよ。雪穂と海未ちゃんから」

真姫 「あきれた。そもそもの最初から無茶してたのね」

穂乃果「でも、いま休むわけにはいかないんだよ。
    せめて文化祭が終わるまでは、笑顔でがんばらせてよ」

真姫 「雨が降っても?」

穂乃果「雨が降っても」

真姫 「ねえ穂乃果、あなた、雨が降る理由が分からないって、まえに言ってたわね。
    分からないなら教えてあげましょうか。
    雨が降るのは……」

穂乃果「ねえ、真姫ちゃん」

真姫 「何よ」

穂乃果「なんか、寒くない?」

真姫 「……バカ」
109: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 13:56:40.15 ID:MtWJlaW9.net
そのあとすぐ、私は真姫ちゃんのお家の病院に連れて行かれた。
診断はもちろん、風邪。
110: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 13:59:08.57 ID:MtWJlaW9.net
【次の日、穂乃果の部屋】

熱が下がらないので、今日は学校を休んだ。
文化祭の当日までには治ると思うけど、結局みんなに迷惑かけることになっちゃったな。
モーローとした頭でそんなことを考えながらウトウトしていると、いつのまにか夕方になっていた。
今日も雨は、土砂降りだ。
111: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 14:00:52.56 ID:MtWJlaW9.net
雪穂 「お姉ちゃん、ことりさんと海未さんがお見舞いに来たよ」

穂乃果「どうぞ」

ことり「穂乃果ちゃん、大丈夫?」

海未 「ライブのことは心配ないですよ。
    穂乃果がしっかりみんなを引っ張ってくれたおかげで、あとは仕上げだけですから」

穂乃果「うう、ありがとう、革命の同志、南くんと園田くん……
    それと、ごめんなさい」

ことり「謝る必要なんかないよ。
    この機会に、しっかり休んでね。
    むしろ今まで、がんばりすぎてたんだよ」

海未 「そうですよ。
    だれもあなたのことを責めたりしませんよ。
    むしろみんな、あなたのことを心配して、来てくれたんですよ。
    大勢で押しかけるのもよくないと思って、下で待ってもらってますけどね」
112: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 14:15:04.31 ID:MtWJlaW9.net
そう言って海未ちゃんが窓を開けると、下にみんなが集まっていた。
私は窓から身を乗りだして、かすれた声をあげた。

穂乃果「みんな、ありがとう!」

みんな、こんなアホな楽天的革命家を、ずっと支えてくれていたんだね。
いっしょに、ポプラの木を育ててくれたんだね。
このことは、今までも頭では分かっているつもりだった。
でも風邪をひいた今、この当たり前の事実が、身にしみる。
同志の小泉くん、星空くん、矢澤くん、東條くん、絢瀬くん……

海未 「真姫は来てませんけどね。
    真姫の照れ屋な性格は、変わりませんね」

ことり「でも真姫ちゃんから、CDを預かってきたよ。
    カゼをひいた人のための音楽が入ってるみたい。
    はい、これ」

そう言ってことりちゃんは、CDの入った封筒を渡してくれた。
春にもらった封筒と同じように、ポプラの葉が添えてある。
宛先は、アホノカ。
差出人は……まきー・アントワネット。

穂乃果「真姫ちゃん、やっぱり意外とノリがいいんだね」
113: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 14:15:50.45 ID:MtWJlaW9.net
そのあとみんなは、山のような量の桃の缶詰を渡して、帰っていった。
さっそく一つ開けて食べながら、CDを聞くことにした。
何の曲が入っているのかな?
前奏を聞いた瞬間に、すぐにわかったよ。
はじめて音楽室で会った日に真姫ちゃんが弾いていた、私の大好きな、あの曲。
114: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 14:16:48.76 ID:MtWJlaW9.net
ときどき雨が降るけど
水がなくちゃたいへん
かわいちゃだめだよ
みんなの夢の木よ育て
115: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 14:19:11.54 ID:MtWJlaW9.net
CDの音声と会話できるわけもないのだけど、私は思わず呟いた。

穂乃果「ねえ真姫ちゃん、そうはおっしゃいますけどね。
    雨に降られたせいで、私はカゼをひいてノックダウンしちゃったよ。
    頭はガンガンするし、喉はヒリヒリするし、そりゃもうひどい気分だよ。
    どうして雨なんか降るのかな?」

私の問いかけを聞き入れながらも、音楽は進む。
曲が終わったあと、しばらくぼんやりしていると、不意にCDから声が聞こえた。
どうやらこのCDには、つづきがあるみたいだ。

CD音声:
    えーと、エヘン。
    革命の同志、高坂くん。
    何とこのCDには、オマケがついているのだよ。
    気づかなくてもいいけど、もし気づいてくれたのなら、聞いてほしい。
    オマケ・メッセージの内容は、きのう言いそびれたこと。
    この世界に雨が降る理由を、今から教えてあげる。

穂乃果「同志、西木野くん!」
116: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 14:22:13.62 ID:MtWJlaW9.net
CD音声:
    あー、この喋りかた、なんかやりづらいから、やめるわね。
    まあでも、あなたのことを「同志」って思ってるのはホントよ。うふふ。
    えーと、次は、どんな喋りかたにしようかな……よし決めた。
    ボンジュール、マドモアゼル・ほのか。
    この世界に雨が降る理由を、まきー・アントワネットが教えてあげマース。

穂乃果「ノリノリだね? 
    まきー・アントワネット、ちょっと録音を楽しんでるでしょ!
    ていうか焦らさずに、はやく教えてよ!」

CD音声:
    ショコラ・クロワッサン・カフェオレー。

穂乃果「いやいやいや、適当なフランス語を並べられても分かんないよ!
    それ、絵里ちゃんにしか通じないから!」

CD音声:
    訳します。

穂乃果「なるほど、訳つきなんだね」
117: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 14:23:27.34 ID:MtWJlaW9.net
CD音声:
    雨が降るのは、雨の神さまが、あなたの代わりに、涙を零してくれているからなのよ。
118: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 14:24:58.42 ID:MtWJlaW9.net
穂乃果「……」

CD音声:
    はじめて会ったときに、私、あなたのことを、楽天家だって言ったわね。
    あれは別に、あなたのことをバカにしたわけじゃないのよ。
    むしろ私、楽天家でいられるあなたのこと、尊敬してるのよ。
    だって、楽天家でいることは、とても辛いことだから。
    それは、あなたを見てたら分かる。
    だって楽天家は、可能なかぎり最もステキな世界が実現するまで、壁に体当たりしないといけないんだものね。

穂乃果「やだなあ真姫ちゃん、私はべつに、辛い思いなんかしてないよ」

CD音声:
     辛くないフリをして、泥まみれで、涙も零さないままで。
119: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 14:27:56.23 ID:MtWJlaW9.net
穂乃果「……」

CD音声:
    まえに、あなた言ってたわね。
    「雨がやまなくても、笑いながら叫ぶよ」って。
    でもほんとは、逆なのよ。
    あなたが笑いながら叫んでるから、雨がやまないのよ。
    あなたが泣くのを我慢してるから、雨の神さまが、代わりに泣いてくれてるのよ。
120: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 14:29:17.58 ID:MtWJlaW9.net
穂乃果「じゃあ、どうすればいいの?」

CD音声:
    どうしても涙が出ないなら、泣くのは雨の神さまに任せておいていいわよ。
    でもそれなら、せめて雨が降ってるあいだは、傘をさして、おとなしくしてなさいよ。
    おとなしくせずに雨の中を暴れまわるから、
    風邪で無理やりノックダウンさせられて、水枕でクールダウンさせられることになるのよ。
121: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 14:29:57.99 ID:MtWJlaW9.net
穂乃果「それで雨がやんだら、どうなるの?」
    
CD音声:
    雨がやむころには、夢の木がステキな感じに育ってるわよ。
    あなたはまだ気づいてないようだけど、
    夢の木っていうのは、ときどき涙の雨をかけてあげないと、ステキにならないのよ。
122: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 14:30:24.87 ID:MtWJlaW9.net
穂乃果「ほんとに?」

CD音声:
    ほんとよ。
    だから雨の神さまは、雨の降る世界をつくったのよ。
    夢の木が、ステキな感じに育つようにね。

穂乃果「……真姫ちゃん、ありがとう」
123: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 14:32:06.57 ID:MtWJlaW9.net
CD音声:
    さて、こんなもんかな。
    あ、まだ録音時間が余ってるから、もうちょっとしゃべるわね。
    ええと、何を話そうかなあ……
    そうだ! 最後にドクター・マッキーが、
    今回の風邪の特効薬を教えてあげるざます。オホホ。
    それは……

穂乃果「新キャラ出てくるの、唐突すぎるよ!
    ていうか真姫ちゃん、ザマス口調でオホホと笑う人なんて、最近あんまりいないからね?
    まあそれはともかく、特効薬というのは何?」

CD音声:桃の缶詰よ。
     さっき、みんなで買ってきたの。
     あなたのことを大好きな人たちが用意してくれるものが、風邪の何よりの特効薬なの……ざます。

穂乃果「なれないザマス口調はやめたほうがいいよ、真姫ちゃん。
    でも、ありがとね。
    桃缶たべて風邪治すから、みんなと待っててね」
124: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 14:32:50.55 ID:MtWJlaW9.net
私の言葉を聞いて安心したかのように、CDが止まった。
そのあと私は、桃の缶詰をたべながら、ぽろぽろ涙をこぼした。
125: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 14:45:18.53 ID:MtWJlaW9.net
【ニ日後、学校の体育館】

まる二日寝こんだら、私の風邪はすっきり全快した。
もう文化祭まであまり日はないけど、みんなのおかげで、何とか当日を迎えられそうだ。
今日は、体育館のステージで予行演習をする予定。
ふと体育館の脇から外に出ると、真姫ちゃんが雨やどりしながら校庭のポプラの木を眺めていた。
126: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 14:46:02.18 ID:MtWJlaW9.net
穂乃果「ドクター・マッキー!」

真姫 「オホホ。何ざます」

穂乃果「ありがとう!」

真姫 「それはもう何度も聞いたわよ」

穂乃果「それにしても、今日も雨、やまないね」

真姫 「こればっかりは、どうしようもないわよ。
    泣くのを我慢してる人は、世界中にいるからね。
    雨の神さまも、てんてこ舞いなのよ」
128: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 14:47:34.62 ID:MtWJlaW9.net
穂乃果「雨やめー!」

真姫 「……」

穂乃果「……」

真姫 「やまないわね」

穂乃果「まあ、しかたないね。
    でも、二日前よりは、小降りになった気がしない?」

真姫 「そうかもね。なぜかしら?」

穂乃果「誰かが、自分で自分の涙を引き受けたんだよ」

真姫 「誰かさんがね」

穂乃果「うふふ。そうだよ。誰かさんがね」
129: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 14:49:07.47 ID:MtWJlaW9.net
私は、自分の胸に手を当てた。
胸の中のポプラの木の芽は、まえよりずっと、ステキになった気がする。
校庭で、雨に濡れながらまっすぐに立っている、あのポプラの木みたいに。
130: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 14:53:50.78 ID:MtWJlaW9.net
【その夜、穂乃果の部屋】

雪穂 「うーん、『ベルばら』は、何度読んでもトレビアーンだよ。
    ああ、アンドレさま、オスカルさま、マリー・アントワネットさま……
    ねえお姉ちゃん、昔のフランスの人は、どんな世界をめざして革命したんだっけ?」

穂乃果「ステキな世界だよ」

雪穂 「それって、どんな世界?」

穂乃果「可能なかぎり最もステキで、ときどき雨の降る世界」

雪穂 「あれ? このまえと言ってること違わない?
    まえは、雨の降らない世界がステキだって言ってなかった?」

穂乃果「うん。でも、あの言葉は訂正するよ。
    ときどき雨の降る世界だからこそ、ステキなんだよ」
131: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 14:56:34.37 ID:MtWJlaW9.net
もちろん、雨の降る世界を受けいれたからといって、私がスクールアイドル革命家をやめたわけではないよ。
スクールアイドル革命家は「可能なかぎり最もステキで、ときどき雨の降る世界」をめざして、今日も壁に体当たりを繰り返しているのだ。
そう、同志諸君。青春とは、やっぱり革命の熱気に満ちているのだ。
私たちは、革命家で、楽天家で、泣き虫なのだ。
132: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 15:01:48.49 ID:MtWJlaW9.net
【数週間後、部室】

にこ 「ねえ穂乃果、数学の神さまに出した手紙、宛先不明で返送されてきたんだけど。
    『数学のない世界をつくってください』っていう私たちの革命的メッセージは、届かないのかなあ」

穂乃果「大丈夫だよ、にこちゃん。
    気をとりなおして、なんどでも投函してみよう。
    だって、壁は!」

凛  「Hi Hi HI !」

にこ 「壊せるものさ!」

凛  「Hi Hi Hi !」

穂乃果「倒せるものさ!」

そんなふうに熱唱しながら手紙を書く三賢人のところに、真姫ちゃんが怒鳴りこみにきたよ!

真姫 「自分からもっとチカラを出してよ!
    数学の神さまに不純なお願いをするヒマがあったら、
    ちゃんと自分で勉強してよ!」
133: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 15:05:46.68 ID:MtWJlaW9.net
穂乃果「わああ、激おこ真姫ちゃんだ!」

真姫 「そもそも、宛先の住所に変数を書いて、どうやって届けてもらうつもりなのよ。
    誰が何を代入するわけ?」

にこ 「そりゃまー、数学の神さまと懇意な方が、数学の神さまの住所を……」

真姫 「ふたりとも、もう現実逃避はやめなさい。
    数学のない世界なんてありえないのよ。
    せめて、無邪気な凛に悪知恵を吹き込むのはやめて!
    ねえちょっと、エリーからも何か言ってやってよ」

絵里 「プリン・ア・ラ・モード
    (訳:ナウいプリン)」

凛  「がいこくじん!」

真姫 「ほら、絢瀬オスカルさまも、エセフランス語でこのように仰っているわ。
    『真面目に勉強したら、あとで皆でプリンアラモードを食べに行きましょう』とね」

穂乃果「ほんと? 私、プリンアラモード大好き!」

にこ 「いろんなのが載ってて、楽しいわよね。
    穂乃果は何が載ってるのが好きなの?」

穂乃果「ペシュ・アン・コンサーヴ!
    (訳:桃の缶詰!)」
134: 名無しで叶える物語(ドイツ)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 15:06:30.01 ID:MtWJlaW9.net
※ おわりです。
  読んでくれた方、ありがとうございました。
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