【SS】海未「不撓不屈のヴァーレ・リーベ」

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海未-アイキャッチ14
1: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 12:49:37.40 ID:vgm3AcHS.net
ラブライブ!×Steins;Gate
途中まで書き溜めてて、書き溜め分まではシュタゲメインで進めていきます。
いつまでかかるかわかりませんが、ゆっくりとお付き合いください。

元スレ: 【SS】海未「不撓不屈のヴァーレ・リーベ」

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2: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 12:50:21.12 ID:vgm3AcHS.net
―――――世界線変動率0.456914% 
Steins;Gate Side


岡部「……それでは、これからルカ子、お前の母親にDメールを送る。これが受信されれば、お前は……男に戻る」

ルカ「はい。……でも、今日の出来事は、絶対に忘れません。世界線が変わっても、僕の性別が変わっても、です」

岡部「すまない……すまないっ……!」

紅莉栖「岡部、Dメールを送る準備はできたわ。……タイミングは任せたわよ」

携帯『292983129831』……肉肉野菜肉野菜。

このメールを送ればルカ子は男に戻り、まゆりの死も(一日だけではあるが)回避される。

また一つ、元の世界線へと帰ることができるのだ。

ため息を一つ吐き、覚悟を決める。

岡部「助手よ……決行だ」

紅莉栖が無言で頷き、電話レンジが起動する。

岡部(俺はまた一つ、罪を背負ったのか……それでも、まゆりを助けるためなら、俺は……!!)

岡部(罪の一つや二つ、いくらでも背負ってやる……っ!!)
3: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 12:50:42.47 ID:vgm3AcHS.net
紅莉栖「放電始まった、急いで岡部!!」

ルカ「岡部さん。僕なら大丈夫です。だから……まゆりちゃんを……!」

俺は、こんなにも辛い選択をラボメンに強いているというのに、一体何が大丈夫だというのだ……

まゆり。

何度やり直そうと。

何度心が折れようと。

この運命の牢獄から、必ず救い出してみせる!!

携帯の送信ボタンに指を添え―――――

岡部「ぐぅっ!?」

世界が、再構築される。
4: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 12:51:35.10 ID:vgm3AcHS.net
―――――世界線変動率0.252521%


世界再構築の余波を受け、立ちくらみに襲われていた頭が、ゆっくりと鮮明になる。

岡部「……くっ」

目の前にいたのは、

ルカ「大丈夫ですか、岡部さん!?」

岡部「どぅおわぁ!?」

寝起きにルカ子の顔のドアップとは、し、心臓に悪いぞっ!

ルカ「あ、まだ横になってなくちゃダメです!いきなり倒れたんだから、何があるかわかりませんよ!」

……倒れた?俺が?

岡部「す、すまんルカ子よ……俺は、一体どうなったんだ?」

ルカ「え?どうなったって……デートの後に稽古を付けてもらって、突然岡部さ、あ、いや、凶真さんが倒れたんです」

ルカ「それで、こうやって介抱していたんです」

顔を赤らめるルカ子。

そうか、顔が近いのも無理ない話だ。

なにせこの状況、俺はルカ子に膝枕をしてもらっているんから。

……ん?デートの後?
5: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 12:51:56.45 ID:vgm3AcHS.net
モヤのかかった思考が鮮明になるにつれて、違和感を覚える。

俺は前の世界線でルカ子とデートをし、稽古をつけ、世界線を変えるためにDメールを送った。

つまり、目の前にいるルカ子は、端正な顔立ちをしていて、そこらへんの女性よりも女性らしい。

だが男だ。

……男に戻ったということは、今日のデートの記憶は全て世界再構築の際に消えるはずだが、今の話では記憶が残っている。

もしや……

岡部「お前……男に戻っていない、のか?」

しまったダイレクトな質問だったか、と後悔した時には遅かった。

ルカ子は泣きそうな顔で、無理やり笑顔を作っている。

ルカ「……どうして、そんなことを言うんですか……?僕と一緒にいて、楽しくなかったんなら、そう言ってください……」

いやいや待て待て!なぜそうなる!?

しかし、今はルカ子をなだめる前にたくさん確認することがあるのだが……

岡部「……すまん、そういう意味ではない。どうやら倒れた時に、少し記憶が曖昧になってしまってな。……お前が男になる夢を見た」

平気な顔をして嘘を吐く。

ルカ「そ、そうなんですか……?すこし、びっくりしました……」

岡部「変なことを言ってしまったな。ところでもう時間も遅い。今日の稽古はここまでだ。日々、鍛錬を忘れるなよ」

一気に言葉をまくし立てて、柳林神社から逃げるように出て行く。
6: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 12:52:25.47 ID:vgm3AcHS.net
ルカ「おか、凶真さん!」

階段のところで、ルカ子に呼び止められた。

ルカ「あの、今日は本当に、ありがとうございました!」

俺は手を振り応える。

ラボへと向かうため、夜の秋葉原を歩きながら、考えをまとめる。

ルカ子が男に戻っていない、ということは、世界線が変わっていないのか?

しかし俺の魔眼『リーディングシュタイナー』が発動したことから、世界が再構築されたのは間違いない。

それでもルカ子は女のままだった。

ルカ子の性別が変わっていないということは、あのDメールではルカ子の母親の気持ちを動かすことができなかったということ。

だが、結果が変わらなければ世界線は変わらない、というのはダルのABグラチャンの件で立証済みだ。

俺が観測している結果が変わらず、世界線だけが変わった……ということは。

岡部「まさか……」

思わず口についてしまう。

Dメールの送り先を間違えてしまったのか!?
7: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 12:52:52.70 ID:vgm3AcHS.net
―――――同世界線 17年前

ピリリリリリ ピリリリリリ

??母「あらあらはいはい、どちら様でしょか?」

ポケベルに表示された差出人は知らない人。

文面は……

??母「ええと、『にくにくやさいにくやさい』……?」

??母「なんでしょうか、これは……あら貴方、ちょうどいいところに」

??母「今晩は焼肉でも食べに行きませんか?この子が大きく育つように、お肉も食べなきゃダメですよね」

そういって、まだ目立たないお腹を愛おしそうにさする。

胎児にヒーリングミュージックを聴かせるのは胎教にいい、と聞いたことがある。

その時に、胎児の状態から名前をつけて呼んであげるのもまた、効果的である……はず。

そう信じて、生まれてくる子の名前はもう決めている。

慈愛に満ちた声で、子供の名前を囁く……
8: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 12:53:17.87 ID:vgm3AcHS.net
岡部「ダァルっ!ダルはいるかっ!?」

橋田「おかえリア充。さっさと爆発するかもげろ」

岡部「もげろって……どこがもげるんだ……」

岡部「ってそんなことよりもだ!さっきのDメールを取り消す、準備を急げ!」

紅莉栖「ちょっと待て、岡部!いきなりどうした?Dメールを取り消すとかなんとか……」

橋田「そうだおそうだお、今μ'sのライブ映像みるので忙しいんだから、あとにしてくんね?」

岡部「それ、いつも見てないか?」

橋田「いつ見たってスノハレは超☆感動するんだお!何度見ても泣けるお!!」

岡部「そんなことはなんだっていい!ついさっき、ルカ子のDメールを取り消す内容のDメールを送った。世界線は変わったが、ルカ子が女のままだ。おそらく、Dメールの送り先を間違えたんだ」

橋田「は?オカリンにドジっ子属性とか、マジでイラネ」

紅莉栖「はいはい中二乙」

岡部「いやいやいやいや、今のはネタでも中二病でもないだろ!」

橋田「あぁ~凛ちゃんかわええんじゃ~」

紅莉栖「凛ちゃんも可愛いけど、私はこっちの真姫ちゃん?も可愛いわね」

岡部「お前ら……ラボの創設者であるこの俺を無視するとはいい度胸だな……!」
9: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 12:53:40.92 ID:vgm3AcHS.net
紅莉栖「あ、今の子可愛い。ね、さっきの子の名前なんていうの?」

橋田「海未ちゃんだお!海未ちゃんマジ美少女だけど、でも実は……」

岡部「いいから、Dメールの準備をだな……!」

紅莉栖「岡部、うっさい。……で、橋田。実は、なんなの?」

橋田「実は海未ちゃんはね……」

キラリ、とメガネが光る。

その間はなんだと突っ込みたいが、きっとまたスルーされるのがオチだろう。

仕方ないから、ダルの言葉に耳を傾けてやる。
10: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 12:54:03.30 ID:vgm3AcHS.net
―――――ラブライブ!side

私は園田海未と申します。

園田流道場の跡取りとして、生を受けて17年間精進していました。

剣道に弓道、華道に日舞……よくもまぁ、こんなにもかけ持ちできたものだと、自分でも感心してしまいます。

ですが、高校2年になってからは、わずかではありますが疎かになりつつあります。

それはなぜかと言いますと……

穂乃果「おっはよー!海未ちゃん、ことりちゃん!」

この能天気で破天荒でやんちゃな幼馴染、高坂穂乃果と、

海未「穂乃果、また寝坊ですか!?一体何度言ったら、何度モーニングコールしたらちゃんとした時間に起きられるのですか!?」

ことり「まぁまぁ海未ちゃん、朝からそんなに怒ると、おデコにシワができちゃうよー?」

このふわふわちゅんちゅんした幼馴染、南ことりの二人のせいです。

海未「ことりは穂乃果のことを甘やかしすぎです!」
11: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 12:54:25.00 ID:vgm3AcHS.net
穂乃果「まぁまぁ海未ちゃーん、今日からまたダンスレッスンだよ!朝からそんなに体力使ってたら、放課後までもたなくなっちゃうよ?」

海未「私は穂乃果と違って日々鍛錬していますから。この程度で疲れたりはしません」

ことり「次のライブも近いもんね。頑張らなくちゃ!」

穂乃果「うん、廃校になって絶対にさせない!ファイトだよっ!!」

私たちの通う高校、音ノ木坂学院が廃校の危機にさらされているのです。

廃校阻止のため、来年度の入学希望者獲得のため、今年の春から穂乃果が始めたスクールアイドル、μ's。

最初は穂乃果とことり、私の3人だけでしたが、徐々にメンバーが増え、今では9人います。

その練習のために、園田流の鍛錬が疎かになっている、というわけです。

ですが、今気にするのはそこではなく……
13: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 13:01:22.70 ID:vgm3AcHS.net
―――――

??母「元気に生まれてきてくださいね、海未……」




橋田「男の娘なんだお!!」





海未「ファイトもいいですが、私は女の子ではありません!幼い頃であればいざ知らず、この歳になってまで『ちゃん』づけはやめてください!」

―――――
14: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 13:02:20.15 ID:vgm3AcHS.net
―――――

中性的な顔立ちで、昔から厳しかった母の教えにより一人称が『私』に固定されてしまったので、どうしても女性と間違えられてしまいます。

全く、私だって一人の男性だというのに、この二人からは昔から変わらず……いえ、μ'sのメンバー全員から『仲良しメンバーの一人』としか見られていません。

……少しだけですが、私の恋心が傷つくんですよ?

アイドルは恋愛禁止!というにこ の教えもあり、私は恋心をずっとしまっています。

永遠の友達と言うのも、美しいものではありますが……しかし、私は……

穂乃果「ほら海未ちゃん、ことりちゃん、行くよっ!」

ことり「ああ、待ってよ穂乃果ちゃん~」

私は。

できることなら、あの子に伝えたい。


この想いを。
15: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 13:03:09.42 ID:vgm3AcHS.net
―――――Steins;Gate Side


紅莉栖「なん……だと……?」

橋田「驚くのも無理はないお。パッと見ではガチ美少女にしか見えないけど、でもちゃーんとついてるんだお!マジ萌ゆる!!」

岡部「」

紅莉栖以上に、俺の衝撃のほうが大きかったはずだ。

ダルの口癖のように言っていた言葉を思い出す。

橋田『ほのうみは正義!!女の子同士ってマジヤベーっしょ!!』

橋田『あ、でもことほのも捨てがたい……そうだ!ことほのうみが大正義なんだお!!やっぱ僕って天才!今すぐスレ建てるお!!』

橋田『はっ、ほのえりの可能性……うぐああああああ!!どうすれば、僕は一体どうすればいいんだああああああ!!!』

ある程度のたうち回った後に『ほのまき……もうだめぽ、μ'sは天国だお……』などと意味不明な言葉と鼻血を垂れ流しながら寝たことを思い出した。
16: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 13:04:16.87 ID:vgm3AcHS.net
この言葉によれば、『ほのうみ』の二人は女性であるはずだが、たった今、『海未ちゃんは男の娘』と言った。

であるならば、以前の世界線では女性だったが、この世界線では男性になった、ということになる。

つまり……俺がさっき、男性を産んでもらうような内容でDメールを間違って送った相手は、「海未ちゃん」の母親になる。

なんだ、案外早く相手が見つかったではないか。

あとはこの「海未ちゃん」に接触し、母親が昔持っていたポケベルの番号を聞き出し、取り消す旨のDメールを送れば、万事OKだ。

我ながら灰色の脳ミソとは恐ろしいものだな!フゥーハハハ!!

……とは言え、どうやって接触すればいい?

仮にうまいこと接触できたとしても、相手は華の女子高生……いや、今は男子高校生か?を相手に、いきなり『お前の母親が昔使っていたポケベルの番号を教えろ』というのか?

不審者甚だしい!!

こういうことをやるのはダルがお似合いだが、ヤツではポリボックスを通り越してブタ箱まっしぐらだろう。

かと言って俺もマッドサイエンティストという素性がバレてしまっては元も子もない。

はぁ……これも『運命石の選択』だというのか……?
17: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 13:05:03.78 ID:vgm3AcHS.net
書き溜めここまで。
オチは決めてますが、ゆっくりと思いつくままに書いていきます。
18: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 13:26:16.59 ID:vgm3AcHS.net
―――――ラブライブ!side
放課後、屋上


海未「はい、そこまで!」

いつもの練習風景とは、少し違うところ。

次回のライブが近いからでしょうか、メンバーの気迫がいつもに増して凄まじいことになっています。

ですが、それが裏目に出ている人もいます。

海未「真姫、動きのキレはいいのですが、笑顔が足りません!」

真姫「わ、わかってるわよ!」

海未「凛は少し動きが大きいです!もっと周りを見てください!」

凛「がってんにゃー!」

海未「逆に希は周りを気にしすぎで、動きが小さくなってます!」

希「大きく動くと、ウチのわがままボディが言うこと聞かないんよ♪」

と、胸を寄せます。

うっ……さすがわがままボディを自称するだけはあります。

その天然の谷間に思わず視線が寄せられてしまいます……が!

海未「そ、そんなことしたって無駄ですっ!ちゃんと周りと合わせてくださいっ!」
20: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 13:37:42.06 ID:vgm3AcHS.net
穂乃果「はい、お疲れ様、海未ちゃん!」

そういって私の分のスポーツドリンクを持ってきてくれる穂乃果。

ありがとうございます、と受け取り、一口含みます。

ことり「みんな気合い入ってるね~。私も負けられないなぁ」

海未「気合いが入るのはいいのですが、力んでしまっている人がいますからね」

海未「……特に穂乃果は、センターだからでしょうか、動きが大きすぎます。観客からすると、雑な動きに見えるので注意してください」

穂乃果「うぅ……一番前にいると、後ろのメンバーが見えなくて……」

海未「もっと周囲に注意を払うようにしてください」

ことり「センターなんだし、あのくらいでちょうどいいと思うんだけどな~」

海未「……ことり。穂乃果は一人でアイドルをやっているわけではありません。私たちは、9人でμ'sです」

海未「それに私たちは誰がセンターということはなく、『みんながセンター』……そう話し合ったではないですか」

ことり「うん、そうだけど……」

少しだけシュンとすることりを見て、しまった言い過ぎましたか、と自責の念を抱きます。

海未「……まぁ、アイドルとしての心がけは間違っていないんですが」

先ほどとはうって変わり、クスクスと楽しげに笑うことり。

なにか、変なことでも言ったでしょうか……?
21: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 13:46:36.88 ID:vgm3AcHS.net
ことり「あ、ごめんね?海未ちゃんがアイドルの心がけについて意見するって、なんだか意外で……」

ごめんね、とは言ってもクスクスと笑うのを止めてくれません。

海未「わ、私だってμ'sの一員ですから!アイドルとしての自覚くらいは……」

ことり「今朝、『女の子扱いしないでくださ~い』って言ってた人が言っても、あまり説得力に欠けるなぁ♪」

海未「あれは……その、登校途中でしたし……」

ことり「海未ちゃんはもっと、『男の娘』としての自信を持ってもいいんんじゃないかな?」

ことり「だって……こ~んなに可愛いんだもん♪」

そう言って、ぎゅーっと抱きついてくることり。

男の娘……

私としては違和感の塊のような言葉ですが、どうやらμ'sとしては『そういうアクセントも大事!』だそうです。

全く理解できませんが、それで少しでも人気が出て、廃校が阻止できるのであれば……

というか、

海未「こ、ことり!いきなり抱きつかないでください!は、破廉恥ですっ!!」

穂乃果もことりも、時には凛も。

私が男性だって忘れて接してきている時があります。

その度に……

私は男として見られていないんだと、凹んでしまう時があります。
22: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 13:57:27.48 ID:vgm3AcHS.net
練習後は1年生、2年生、3年生で分かれて帰るのがほとんどです。

今日もその多分に漏れず、凛、花陽、真姫の3人と、絵里、希、にこの3人と。

穂乃果「それじゃみんな、また明日ねー!」

ことり「ばいばーい!」

穂乃果、ことり、私の3人で帰宅します。

途中で買い食いしていこうとする穂乃果に『太りますよ』と脅しをかけたり、

布地の専門店に飾ってあるフリルに釘付けになっていることりを引っペがしたり、

野良犬を追いかける穂乃果を追いかけたり、

野鳥にやたら好かれることりを守ったり……

いわゆる、『いつも通りの帰り道』というヤツです。

ですが一つ、気になることがあります……

海未「穂乃果、ことり……気づかれないように、後ろを見てください」

穂乃果「ほえ?なんでー?」

海未「……勘違いならいいんですが、誰かに付けられているような気がします」
23: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 14:09:38.53 ID:vgm3AcHS.net
ことり「もしかして、海未ちゃんのファンじゃないかな?」

……はぁ。そうかもしれません。

私の、見ようによっては女性に見えなくもない容姿のせいで、男性から何度か告白を受けたことがあります。

そしてμ'sとして活動するようになってから、その頻度が以前の倍くらいになりました。

それだけμ'sが、引いてはオトノキが有名になったということでしょうし、喜ばしいのですが、私自身に被害が及ぶと、あまり手放しでは喜べません。

穂乃果「……うん、いるね。めっちゃ怪しい人が!」

海未「穂乃果!声が大きいです……」

ことり「あの白衣の、髪の毛ボサボサの人?どうする?なんかされる前に、きっぱりと……」

海未「いえ。こういう不埒な手合いは初めてではありません。……実力行使で排除しましょう」

園田流の武術を行使するまでもなく、発言通り『実力』で排除します。

穂乃果「だ、ダメだよ海未ちゃん!アイドルが暴力沙汰なんて聞いたことないよ!!」

海未「ですが穂乃果、もし狙いが私ではなく穂乃果やことりだった場合、私はどのように責任を負えば……!」

海未「それに、穂乃果のお父様、お母様から『穂乃果は危なっかしいから、何かあったら守ってくださいね』と言われています!」

ことり「……っ」

海未「ここで穂乃果とことりを守れなければ、私という『男』が廃れてしまいますっ!!」
24: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 14:15:03.90 ID:vgm3AcHS.net
ことり「……秋葉原は、ことりの庭みたいなものですよ?巻くための道くらい、ちょちょいのチョイです」

海未「あくまで逃げるというのですか……」

穂乃果「うん。ここはことりちゃんの判断が正しいよ」

二人から真剣な眼差しを受け、

海未「……はぁ」

ため息一つ。握り締めた拳を解きます。

海未「万が一、危険が及びそうになったら、私は迷わず実力行使に出ます。それまでは……逃げましょうか」

海未「ことり、道案内をお願いします」

ことり「ありがとう、海未ちゃん!こっちだよ」

私たちは3人で駆け出します。

2人に危害が及ばないことを願いながら。
25: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 14:26:47.77 ID:vgm3AcHS.net
―――――

海未「はぁ、はぁ……撒けました、か?」

ことり「ふぅ、ふぅ、……うん、この道なら、多分大丈夫、じゃないかな」

穂乃果「ちょっと見てくるねっ!」

曲がり角までサササと動き、チラリと様子を伺い……

満面の笑みと全身で、『○』のマークを描きました。

ことり「よかった~……もしもここまでついてこられたら、もう走れなかったも~ん」

海未「その時は、私がことりを背負ってでも走りますよ」

ことり「え……っと、それはちょっと、恥ずかしい……かも?」

海未「あ……」

ことりが赤面しています。

幼馴染とはいえ、自分と同い年の男に背負われるなんて、普通に考えて恥ずかしいはず……ですよね。

いつも女の子扱いされているので、たまに感覚がおかしくなってしまいます。

海未「も、申し訳ありません、そういうつもりじゃ……」

穂乃果「えー!?ことりちゃんばっかりずーるーいー!穂乃果もオンブしてよー!」

海未「穂乃果はそれだけ走れるんだから、大丈夫でしょうね」
28: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 14:53:17.86 ID:vgm3AcHS.net
ことり「で、でも……嬉し……」

穂乃果「あーあー穂乃果も足が棒のようだなーもう歩けないなー」

海未「率先して様子見に行くために走れた人の言うことじゃありません!」

穂乃果「だって!疲れるもんは疲れるんだもん!!」

海未「それならそれっぽくしてみてください!」

穂乃果「えーと……こ、腰がおばあちゃんのようだー?」

海未「それは本当に疲れている人なんですか!?」

穂乃果「いいじゃん、ことりちゃんばっかじゃなくてたまには穂乃果も甘やかしてよー!!」

海未「穂乃果は昔っから甘やかしてきました!もう十分でしょう!?」

穂乃果「たーりーなーいーよー!!」

海未「はぁ……ことりからも、なんかいってやってください」

ことり「私は……二人が仲良くて、羨ましいなって。そう思うよ」

僅かに寂しそうな表情を浮かべることり。

もしかして、疎外感でも与えてしまったのでしょうか……?

参りました。こういう表情のことりには、私は滅法弱いのです。
33: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 22:53:37.36 ID:vgm3AcHS.net
ことり「穂乃果ちゃん、海未ちゃんを困らせたら『メッ』だよっ」

穂乃果「うぅ……ことりちゃんまで敵に回ったぁ」

ことり「もちろん!ことりは、いつだって海未ちゃんの味方だもん」

穂乃果「そんなぁ!私の味方もしてよぉ!!」

そんな泣き顔の穂乃果を見てクスクスと笑い、楽しそうに会話に混ざることり。

それでも、どこか表情が堅いといいますか、寂しそうな……

ことり「私はね、穂乃果ちゃんと海未ちゃんのやり取りを見てるのが楽しいの」

そのあとにボソッと続けますが……よく聞き取れません。

海未「……ことり?」

ことり「ふたりともごめん、今日は帰るね」

言うが早いか、駆け出してしまいます。

……不審者は撒きましたが、しかしなぜでしょうか。

なんだか、胸がざわめきます。

かと言って穂乃果を放って置くわけにもいかず……

海未「穂乃果、ことりを追いますよ!」
34: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 23:03:14.74 ID:vgm3AcHS.net
穂乃果「……ううん、追いかけないよ」

海未「ほ、穂乃果!?」

この状況なのに、何を言っているんでしょうかこの子は!?

穂乃果「ことりちゃんは多分、追いかけて欲しいんだよ、海未ちゃんに」

穂乃果「だから、追いかけて。今すぐ」

海未「ですが、穂乃果のことを……」

穂乃果「いいのいいの!今日はこのまままっすぐ帰るからさ」

穂乃果「海未ちゃんは、ことりちゃんを追いかけるべきだよ!ファイトだよっ!!」

ファイトって、一体何をすれば……

反論する余地もなく背中を押されてしまいます。

振り向きざまに言葉を投げかけます。

海未「……穂乃果は、」

まで言って、先ほどのことりと同じように少し寂しそうな笑顔を浮かべている穂乃果に対し、何を言うべきかがわからなくなりました。

何か、言うことはあったはず。

何か、『言うべきこと』はあったはず。

穂乃果「いーのいーの!早く行ってよっ!」
35: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 23:13:54.40 ID:vgm3AcHS.net
再度背中を押され、腹をくくります。

もしかしたら、穂乃果は私の気持ちを知っているのかもしれません。

知らなくても、感づいている可能性もあります。

その上で、ことりのことを追いかけるよう勧めているとしたら……

……っ

この場で言う言葉は、今はなくなってしまいました。

軽く唇を噛み締め、走り出します。


走り出すと同時に、聞こえないかもしれない、聞こえなくてもいい。

そんな気持ちで、ポツリとこぼします。


海未「ありがとう、ございます」
37: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/08(土) 23:55:19.43 ID:vgm3AcHS.net
誤爆した。。。



薄暗くなった秋葉原の街を、ことりを追って走ります。

先ほど走ったばかりなので息も切れ切れですが、あの背中が見えるまで、走り続けます。

振り返るまでもなく、今日はやたらと走る一日だと、体中で実感します。

どちらも、ことりが走らせているようなものですね……追いついたら、説教が必要でしょうか。

幾許か走っていると、見慣れたことりの後ろ姿が見えました。

どうやら既に疲れているのか、視界に捉えたときは歩いていました。

海未「ことりっ!!」

呼び止めるだけのつもりが、不意に大きな声が出てしまいます……

ビクリとして、ことりは私の方に振り返ります。

ですが、ビックリしたのは私の方です。

ことり「……海未、ちゃん……?」

振り返ったことりの頬には、涙が伝った跡があります。

反応的に、私の大事な幼馴染を泣かせたのは誰だと、拳を握り締めます。ですが……

もしかして、その拳を振るう相手は自分かもしれないと思うと、固く握り締めたくはなくなりました。
38: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:11:26.87 ID:Bh1l2JsZ.net
海未「ようやく追いつきましたよ……ことり」

ことり「……どうして?穂乃果ちゃんは?」

海未「その穂乃果に後押しされてきました。ことりを一人で帰すつもりかと、どやされていまいまして」

ことり「一人で帰すもなにも、一人で帰りたかったから―――――」

海未「私でよければ、話を聞きますよ……その、涙の理由を」

ことりはハッとして頬を袖口でぬぐいますが、もう私は見てしまいました。

ふぅ、と息を一つ吐き。

海未「……もしかして、私では力になれませんか……?」

ことり「そ、そんなことない!」

海未「では、話してもらえますか?私でよければ、ことりの力になりたいのです」

ことり「……えへへ、海未ちゃんにはやっぱり隠し事とか、できないね」

ことり「ここじゃなんだし、ちょっと場所変えよっか?」

笑顔を浮かべますが……いつものふわふわした笑顔とは違い、大分引きつった、無理やり作ったような笑顔。

その笑顔に……私の心が痛みます。

私の無言を肯定と受け取ったのか、

ことり「ね、ついてきて」
39: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:31:28.49 ID:Bh1l2JsZ.net
辿り着いたのは昌平橋。

ことりは欄干に寄りかかりますが……言葉がなかなか紡がれません。

かと言って急かすわけにもいかず、二人で沈黙の時間が続きます。

海未「……」

ことり「……はぁ」

どうやら話す気になったのでしょうか?

こちらを向き直し、今までないほど真摯な瞳に、ドキリとさせられます。

ことり「ねぇ……海未ちゃん。私が泣いてた理由、だっけ?」

海未「はい。ことりが泣いていたのはなぜなのか……差し支えなければ、教えていただけないでしょうか?」

ことり「それは……うん、いいんだけど。えっと……」

モジモジと、言い淀んでしまいます。

海未「ええと……ことり?」

ことり「あの、言う前にね?一つ……教えてもらっていいかな?」

海未「え? ええ。私に分かることでしたら」

すー、はー、と深呼吸し。

また、寂しそうな顔。
41: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 00:48:01.58 ID:Bh1l2JsZ.net
ことり「海未ちゃんには、好きな人はいる?」

はい、います。と即答できれば、きっと苦労しないのでしょうが……

海未「こと……そ、それは、一体どういう……?」

YesかNoで答えられる質問に対して、質問で返してしまった。

ことり「もしいるなら、教えられないけど、もしいないなら、教えてあげようかと思ったの」

ことり「でもね?わかっちゃうんだ。……わかっちゃったんだ」

ことり「きっと海未ちゃんは、穂乃果ちゃんが好きなんだろうな、って」

海未「……こ、ことり……」

欄干から離れ、私の方へと歩いてきます。

しっかりとした、強い意志を持った歩み。

ことり「本当なら教えてあげないんだけど、これはスペシャルサービスです」

正面に立ったことりに、袖を引かれ……


頬に触れる程度の、軽い口づけ。
42: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 01:00:16.32 ID:Bh1l2JsZ.net
そそくさと離れ、赤面することり。

ことり「……これが、泣いてた理由です。えへへ」

また明日学校でね、とだけ言い残し、ことりは走り去っていきます。

呆然と、唖然と立ち尽くす私は呆けたまま、その後ろ姿を見守ることしかできませんでした。



イマイチ腑に落ちるような解答ではありませんでしたが、ことりが泣いていた理由は、なんとなく分かりました。

『好きな人が、自分以外の別な人と仲良くしてるのが気に食わなかった』

おそらく、こんなところでしょうか。

……ことりにとっての『好きな人』が私だと言うのが、更に腑に落ちません。


ことり『でもね?わかっちゃうんだ。……わかっちゃったんだ』

鋭い、なんてもんじゃありません。

ことり『きっと海未ちゃんは、穂乃果ちゃんが好きなんだろうな、って』

図星でした。

はい、そのとおりです。



私、園田海未は……高坂穂乃果が、好きなんです。
45: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 15:23:20.77 ID:BvRFNVmK.net
―――――Steins;Gate Side

ダルのリサーチによると、『海未ちゃん』はどうやら音ノ木坂学院の2年生。

地元ではちょっとした名家である園田家の跡取り息子。

男性とは思えぬ艶のある黒髪をなびかせ、端正な顔立ちは老若男女からあこがれの的。

しかし本人曰く、『中性的な顔立ちがコンプレックス』だという。

まるで、世界線を変える前のルカ子のようではないか。

岡部「……」

つまりそれだけ、周囲から浮いてしまうわけだ。

故に、こうして音ノ木坂学院の正門から離れたところからでも容易に視認することができる。

隙を見つけて接触しようと尾行しているが、如何せん一人になるタイミングがない。

ちょっと寄り道の多い帰り道だが、ついていけばいつかは一人になるはずだ。

岡部「……」

明るい髪をした娘(穂乃果、といったか?)が俺の方をチラリと伺う。

尾行していることに感づかれたか?

携帯で電話している風のさりげなさを装ったが、その演技をした時には既に彼女たちは走り出していた。
46: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 15:29:59.16 ID:BvRFNVmK.net
岡部「……クソッ」

感づかれたどころか、怪しまれてしまったか。

走って追いかけるも、すぐに見失ってしまった。

とは言えここは秋葉原。

俺の庭とも言える場所だ。

どこへ逃げたか、概ねの想像はできる。

小走りに走っていた足を休め、とりあえず歩き出す。

―――――

適当な茂みに身を隠し、彼女らが来るのを待つ。

ここじゃなければ、候補はあと2つあるが……

いっそタイムリープして、バレないように尾行を再開したほうがいいのか?

ことごとく、うまくいかないな……

悪態を吐こうとしたその時、

海未「はぁ、はぁ……撒けました、か?」

彼女らが姿をみせる。
47: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 15:50:41.71 ID:BvRFNVmK.net
どうやらこの場所でビンゴだったようだ。

息を潜め、彼女らの会話に耳を傾ける。

――ここまでついてこられたら……

――そういうつもりじゃ……

――あーあー穂乃果も……

なんというか、本当に他愛のない会話が続いている。

てっきり、俺の悪口や悪態などが罵詈雑言の嵐かと思っていたが、どうやら杞憂だったようだ。

海未と穂乃果の話のやり取りが続く。

その間、脳ミソが蕩けそうな声の持ち主(ことり、と呼ばれていた)は、困ったような表情で二人を見つめている。

――私はね、穂乃果ちゃんと海未ちゃんのやり取りを見てるのが楽しいの……私じゃダメだもんね……

――ことり?……

ことりと呼ばれた少女が目に涙を浮かべ、走り去っていく。

穂乃果に後押しされ、海未も走り出す。

……なんだか、一瞬にして修羅場に変わってしまったのだろうか?

見てはいけない場面に居合わせてしまったようで、居心地が悪い……
49: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 16:12:12.24 ID:BvRFNVmK.net
走り去った二人を追い、綺麗な橋までたどり着く。

何事かを話あっているようだが、周りに身を隠すところがないために遠目から見ることしかできない。

……まぁ、あの状況で話を盗み聞きするようなことは、ひどくプライバシーの侵害のような気がする。

きっと何か、重要な話でもしているのだろう……

おそらく、メンバーの今後を左右するような―――――

と、その時。

ことりが海未の袖を引き、頬にキスをした。

―――――なんだこれは!?とてつもなく見てはならないような場面に遭遇してしまったぞ!?

呆然と立っている海未に何かしら告げ、三度走り出すことり。

その目にはまた涙が浮かんでいたような気がしたが、その理由を聞き出す義理も道理もない。

今は、予期せぬ状態で海未が一人残されたことを幸運に思うべきだろう。

白衣のポケットに両手を突っ込み、可能な限りの冷静さを装い、海未に接近する。

……お前たちの込み入った事情の一部始終を見てしまい、申し訳ない……

スゥ、と深く息を吸い込み。

岡部「―――――園田 海未、だな」
51: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 16:24:32.11 ID:BvRFNVmK.net
―――――ラブライブ!side

??「―――――園田 海未、だな」

放心していた私の名前を呼ぶ声。

ことりにキスされた頬を押さえる手を離し、

海未「……あの、どちら様でしょう……?」

??「俺は岡部 倫太郎。……お前に、頼みがあってここに来た」

岡部……さん?

というかこの白衣は、もしやさっきの不審者では!?

海未「頼みごとをするときには尾行しろ、と教わったのですか?」

ゆっくりと立ち位置を変え、岡部さんとの間合いを空けます。

岡部「やはり気づかれていたか。不審な行動をとってしまい、申し訳ない……謝罪しよう」

……もしや、悪い人ではないのでしょうか……?

万が一に備え、間合いを詰められないようには気を張ります。

海未「それで、頼みというのは……?」
52: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 16:34:39.76 ID:BvRFNVmK.net
岡部「そうだな……単刀直入に言えば怪しさ満点だからな。その頼みに至る過程は、少し長い話になる。時間は大丈夫か?」

チラリと時計を確認します。

現在は午後5時25分。

……まぁ、話を聞くだけなら構いません。無茶なことであれば、頼みを断ればいいだけです。

海未「はい、多少であれば時間に余裕があります」

岡部「恩に着る」

深々と頭を下げて、感謝の気持ちが届けられますが……

なんなんでしょう、この人は?

やましい気持ちがなければ、尾行などせずにそのまま尋ねれば良かったものを……

海未「その頼みというのは、私一人にのみ聞かせるものなのですか?」

岡部「そうだな。お前一人でなければ、不都合があるんだ……理由は追々話す」

岡部「荒唐無稽な話になるが、笑い飛ばさず、最後まで聞いてくれないか?」

コクリ、と頷きます。

岡部「……さて、どこから話をしたもんか……」

逡巡している様はほとんど一瞬で、言葉を選びながら話を始めました。
54: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 16:49:43.45 ID:BvRFNVmK.net
―――――さて、どこから話をしたもんか。

俺は都内の大学の1回生……とは世を忍ぶ仮の姿。

その本質は、『未来ガジェット研究所』の創設者である鳳凰院 凶真……と、いう設定だ。

いわゆる中二病というやつだな。……引くな、ここはいっそ笑ってくれていいところだ。

その未来ガジェット研究所では、未来的なガジェットを日夜研究していのだが、偶発的にとんでもない代物ができてしまった。

それは、過去にメールを送ることができる装置。これを、我らは『電話レンジ』と、過去に送れるメールを『Dメール』と名付けた。

途中でこの電話レンジに改良を加え、記憶のみを過去に飛ばす……タイムリープマシンへと改良した。

そのDメールを用いて、幾度か、幾度も……過去を改変した。

最初は簡単な内容だった。携帯を機種変するな、やらロト6の3等の当選番号やら……

しかし、途中で秋葉原が普通の電気街になってしまったり、男が女になってしまったりと、取り返しのつかない改変をしてしまった。

そして、SERNという機関から、電話レンジ……タイムリープマシンを奪われそうになった。

その機関の連中がやってきたときに―――――俺の幼馴染の女の子が、殺された。
55: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 17:00:26.43 ID:BvRFNVmK.net
俺はタイムリープマシンが奪われる前に、その日の夕方までタイムリープした。

幼馴染を殺させないよう、逃げた。

逃げて、逃げて、逃げて、逃げ回った。

だが、何をやっても殺される。

何もしなくても死んでしまう。

殺されないよう、死なないよう、何度も同じ日を繰り返した。

何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も!!

……幼馴染は、この世界では『その日』に死ぬ運命だった。

とあるきっかけで、『Dメールを取り消すDメール』を送った。

すると、幼馴染の死ぬ運命の日が一日だけ、伸びた。

別に送ったDメールを取り消した。

また、一日伸びた。

このまま、悪戯に世界を変える前の世界まで戻ろうとしたのだが……

一つ、過ちを犯してしまった。
56: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/09(日) 17:11:57.98 ID:BvRFNVmK.net
以前の世界では男だったが、女の子になりたいという理由で、母親のポケベルに女の子を産むような、そんなDメールを送った。

しかしこのDメールも取り消さなければ、幼馴染は救えない。

また……また殺されてしまう。

……取り消すためのDメールを送った。

内容は、野菜よりも肉を食べるように、と。

そして、世界はこの形になった。

しかし、その元男は……男に戻らず、女の子のままだった。

確かめる術はないが、おそらく……取り消しのDメールの送り先を、間違えてしまった。

……自らの愚かさを、これほどまで呪ったことはない。

全く関係ない人間を巻き込んでしまったんだからな。

だから、巻き込んでしまった人物の母親が、昔使っていたポケベルの番号を聞き出し、取り消す内容のDメールを送る。

これで全ては元通りで、俺はまたDメールを取り消すための時間旅行をする。

ここまで言えば、概ね察してもらえるか?



―――――園田 海未。巻き込んでしまって、申し訳なかった。
61: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/10(月) 00:06:29.80 ID:ov56cz97.net
深々と頭を下げる岡部さんは、まだ顔を上げません。

一通り説明が終わった……のでしょうか。

一気にまくし立てられてしまいました。

ええと、要約しますと……

海未「岡部さんは、幼馴染の女の子を救うために、Dメール、ですか?それを取り消してまわっている、と」

そうだ、と顔を上げずに答えます。

海未「あの……いくつか、質問があります。顔を上げてください」

岡部「答えられる範囲なら、答えよう」

それでは、と頭の中の疑問を精査します。

まずは外堀から埋めていかなければなりませんね。

海未「……まず第一に、それらは全て本当のことですか?」

岡部「信じられないのも無理はないだろうが、全て真実だ」

海未「私の記憶では秋葉原が、いわゆる『普通の電気街』になったことはありません」

岡部「普通の電気街になったのは、別の世界線の話だ」

……?また疑問が増えました。
62: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/10(月) 00:19:45.26 ID:ov56cz97.net
海未「ええと、世界線というのはなんでしょうか?」

岡部「多世界解釈、というのを聞いたことないか」

海未「いえ、聞いたことありませんが……」

岡部「あの時ああしていれば、この時こうしていれば……そこで世界は分岐し、その数だけ無数に世界線は生まれ、無数に派生し、無数に存在する」

岡部「簡単に言えば、パラレルワールドだ」

海未「つまり……過去にメールを送り、選択をやり直すことで、今現在とは違う……パラレルワールドに行ける、ということですか」

岡部「仔細な部分まで突っ込むと違うが、概ねそんなところだ」

海未「わかったような、わからないような……」

こんな荒唐無稽な話を理解できるほど、私の頭は柔軟じゃないようです。

海未「とにかく、第二の質問です」

海未「岡部さんは、そのパラレルワールドの記憶というのを引き継いでいるようですが、私たちにはそんな記憶はありません」

岡部「俺は、リーディングシュタイナーという魔眼が宿っている。俺の記憶はパラレルワールドへの変遷……世界再構築の影響を受けないらしい」

海未「つまり……他のパラレルワールド、世界線の記憶を引き継いでいるのは岡部さんだけだ、と?」

岡部「奇しくも、そうなってしまう。俺は無数の世界線を観測できる唯一の存在、孤独の観測者だ……」

海未「……私やほかの方々の記憶はどうなるのですか?」
63: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/10(月) 00:27:16.62 ID:ov56cz97.net
岡部「世界再構築により、その世界線にそった記憶が構築される」

海未「つまり、岡部さんの主観では、岡部さん以外の全員と記憶の齟齬が産まれる、と?」

岡部「その通りだ」

……それは、あまりにも辛いことのような……

いえ、今はそれどころじゃないですね。

そろそろ、核心を突く質問の出番でしょうか。

海未「では第三に……岡部さんの『頼み』の内容である、私の母が昔使っていたポケベルの番号ですが……」

海未「それを岡部さんに渡して、Dメールを送ったとします」

海未「その後、世界は再構築されますが……私や穂乃果、ことりの記憶はどうなるのですか?」

岡部「それは先ほどの質問と同じだな……再構築され、その世界線に沿った記憶が構築される」

海未「つまりそれは……私と穂乃果、ことりが過ごして来たこの17年間が……なかったことにされてしまうのですか?」

岡部「確信はないが、おそらくそれはないだろう。お前たちはどの世界線であっても、何度も会えるはずだ」

違います。

そういうことじゃないんです。

この人は……致命的な勘違いをしています。
64: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/10(月) 00:35:20.50 ID:ov56cz97.net
海未「会えたとしても……それでも!」

海未「ことりが私のことを好意的に思ってくれていることも!」

海未「私が穂乃果のことを想っていることも!!」

海未「全部……全部、『なかったこと』になってしまうんですか……!?」

岡部「それは違う!!」

岡部「男だろうが、女だろうが、そんなことはどうだっていい!!」

岡部「お前は……今、男であるお前は、相手が女だから穂乃果に惚れたのか!?」

岡部「ことりは、男だからお前に惚れたのか!?」

岡部「それは違う!想いはどんな世界線だろうと、それをも飛び越えて想いを伝えるはずだ!」

海未「例えそうだとしても!私が女になったら、穂乃果になんて言えばいいんですかっ!?」

海未「女なのに、女の子が好きだなんて、きっと気持ち悪がられます……嫌われてしまいます……」

海未「それならいっそ、穂乃果のことなんて好きにならなければよかったのに!!」

海未「それならいっそ……最初から、女の子に生まれたかった……」
66: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/11(火) 22:23:16.72 ID:ETXF+zVm.net
あの後。

悔しさのあまり涙が堪えられなくなり、思わずあの場から逃げ出してしまいました。

どこをどう走ったのかわかりませんが、気がつけば家の近くまできていました。


パラレルワールドでは、私は女だった?

私が女に戻れば、一人の女性の命が救える?

パラレルワールドでの事象は、私という主観に与える影響はない?

だから……『別な世界の私』には、この想いを捨てろと?


はぁ。

ありえません。

SF映画やトンデモ設定のアニメならいざ知らず、ここは現実です。

誰かの妄想に付き合って、私まで真剣に考える必要はありませんね。

ですが、と一瞬だけ、なにか思い出しそうな……

以前にもこんなことがあったような、そんな既視感を覚えます。

……いえ、余計なことばかり考えていたので、きっとその影響でしょう。
68: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/11(火) 22:42:42.77 ID:ETXF+zVm.net
つまらない考えを放棄し、ようやく見えてきた家の門を潜ろうとした時―――

穂乃果「うーみちゃん!」

……一番会いたくなくて、一番会いたい人が、そこにいました。

海未「ほ、穂乃果?……どうしたのですか?」

思考を放棄したつもりなのに、どうしても思い出してしまいます。

海未『私が穂乃果のことを想っていることも!!』

声に出してしまったことで、一層想いが強くなってしまった相手。

……胸がキリキリと痛み、同時に頬が紅潮していくのが、自分でも分かってしまいます。

穂乃果「どうしたー、じゃないよ!聞きたいのは穂乃果のほうなんだよ?」

穂乃果「……で、どうだった?ことりちゃんとは?」

!!

穂乃果は、ことりの想いに気づいていたんでしょうか?

だからあの時に、背中を押した……?

海未「いえ、あの……なんのこと、でしょう?」

自分のことながら、嘘をつくのが下手です。
69: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/11(火) 22:52:36.86 ID:ETXF+zVm.net
穂乃果「ぶー!シラ切ろうったって、穂乃果にはちゃーんとわかるんだもーん!」

穂乃果「ことりちゃんはね、きっと海未ちゃんのことが好き」

穂乃果「それで、海未ちゃんもきっと、ことりちゃんのことが好きなんじゃないかなーって思っててね?」

穂乃果「最近はμ'sの練習とかで忙しかったから、海未ちゃんとことりちゃんが二人きりになる時間なかったでしょ」

穂乃果「あの時、『なるほど、二人きりにさせるチャンスだ!』って思って、ことりちゃんのチャンスメイクしたんだけど……あれ?なにもなかったの?」

楽しそうに……心の底から『友達を応援している』ような、そんな表情をしています。

それを見て、私の心は更に……

痛い。

海未「……どうしても、言わなきゃダメですか……?」

穂乃果「うん。教えて」

たった今まで見せていた表情とはうって変わり、その眼差しは真剣そのものでした。

なのに私は……

海未「―――申し訳ありませんが、ことりを見つけられませんでした」

また、嘘を重ねてしまいました。
70: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/11(火) 23:02:17.30 ID:ETXF+zVm.net
穂乃果「えー!?そうなのー!? そんなに離れてないから、てっきり追いついたのかなーって思ってたのにぃ」

ぶー、と唇を尖らせて抗議してきます。

海未「ことりが私を好きだとか、私がことりを好きだとか、穂乃果はいつも突拍子もなさすぎます」

穂乃果「えー?海未ちゃんはことりちゃんのこと、好きじゃないの?」

海未「幼馴染として、友人としてことりのことは好きです。ですが穂乃果の言う『好き』というのは、恋愛としてのそれでしょう?」

痛い。

海未「私には……私たちには、まだそういうのは早いと思います」

好きな人相手に、幾度も嘘を吐いて、嘘を重ねて、その嘘を更に嘘で上塗りして。

海未「それに私は、今の3人の関係を壊したくはありませんから」

自分の心にまで、嘘吐いて。

海未「だから、この話はこれでおしまいです」

胸が張り裂けそうな程、泣き出しそうな程、痛い……

穂乃果「……それじゃあ、どうしてそんなに泣いてたの?」
71: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/11(火) 23:09:51.81 ID:ETXF+zVm.net
見られてしまいましたか……

海未「あ、あれは……」

穂乃果「ううん、多分だけど、今も泣いてるよね」

穂乃果「ねぇ、話して?穂乃果でよければ、海未ちゃんの力になるよ」

一歩だけ近づき、手をとってくれます。

……どうして。

いつもは鈍感で、気づいて欲しい時には全く気がつかないのに。

どうしてこうも、この子は変なところばかり鋭いのでしょう。

海未「……っ、く……」

穂乃果「ことりちゃんには、追いつけた?」

痛い。

穂乃果「ことりちゃんから、どんなこと言ってもらった?」

……痛い。

穂乃果「海未ちゃんの、本当の気持ちを教えて?」

塗り固めた嘘を一枚、また一枚と優しくはがされているようで……
72: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/11(火) 23:16:18.58 ID:ETXF+zVm.net
海未「……ことりには、追いつけました」

穂乃果「うん」

うつむいたまま、頷き返してくれます。

追求はしてきません。

きっと、初めから嘘だとバレていたのでしょうか……

海未「ことりからは……告白、みたいなことをされました」

穂乃果「うん」

海未「私は……私の気持ちは……っ!」

穂乃果「ストップ」

……え?

海未「あ、あの……ほの、」

穂乃果「ストップ。そこまでで、いいよ」

顔をあげた穂乃果の顔は、

涙が頬を伝い、うっすらと引いたアイラインとチークを崩していました。
73: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/11(火) 23:36:48.86 ID:ETXF+zVm.net
穂乃果「そこから先はダメ」

握った手を強く握り締め、いっそ痛いほどに……

海未「ほ、穂乃果っ!聞いてください!」

穂乃果「ダメったらダメだよ!!」

びっくりする程の大声、びっくりしてしまう涙声……

穂乃果「海未ちゃんはことりちゃんが好き」

穂乃果「そうじゃないと、応援しようって決めた私の気持ちは、どうなっちゃうの?」

穂乃果「ことりちゃんは穂乃果と違って女の子っぽくて可愛いし、髪も綺麗だし、お菓子だって美味しく作れるし」

穂乃果「海未ちゃんはカッコイイってよりも可愛いけど、でもきっとことりちゃんとがお似合いなんだよ」

穂乃果「だから、二人を応援するの。そう決めた!!」

涙声で、ところどころに嗚咽を交えて、涙を拭おうともせずに、子供みたいにボロボロと泣きながら、穂乃果の思いの丈をぶつけてくれます。

海未「ほの、私が一番好きな相手は―――」

穂乃果。貴女だけです。

その一言を言い切る前に、

穂乃果「やめて!!」
74: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/11(火) 23:37:45.37 ID:ETXF+zVm.net
握っていた手を乱暴に振りほどき、涙でグシャグシャになった顔を私に向けて……

穂乃果「海未ちゃんのことが好きだった頃の穂乃果を、思い出させないでよぉっ……」

海未「穂乃果ぁ!」

振り返り走り出す穂乃果の手をつかめなかった私の手は空を切り、

その拳を自分の胸へとぶつけました。

痛い。

ですがきっと、こんな痛みよりも穂乃果の痛みのほうが大きいはずです。

……私は、穂乃果に好かれていた……?

それにも気づかず、片思いだとばかり思い込んでいた……?

なんて、なんて愚かなんですか……私は……!!

こみ上げる嗚咽を噛み殺すのに、歯を食いしばり、拳を胸に当て、その場にうずくまることしかできませんでした。
81: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/15(土) 15:16:58.05 ID:AcCp6W8R.net
―――――Steins;Gate Side

泣きながら走り去る海未を引き止める術は持っておらず、途方に暮れなずむ。

くそっ……失敗した。

どこから失敗した?

何が失敗の原因だ?

俺は……俺はどうすれば、園田海未を説得できる?

ここに居てもラチが開かない。

一先ずラボへと戻り、タイムリープするしかないのか。

それでまた、海未を説得し、今度こそポケベルの番号を聞き出してやる。

ラボに向けて足を運び出した時。

紅莉栖「よっ、不審者」

岡部「……なんだ、紅莉栖か」

紅莉栖「なんだとはなんだ。焼きそばの湯切りに失敗して、麺を全部流し台にぶちまけたような顔をしてるから、少し心配してやったのに」

このセリフ……いつか聞いたな。

岡部「むしろ、必死で貯めたスタンプカードをいざ使おうとしたら、有効期限が切れていた時のような顔、と言ってくれ」
83: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/15(土) 15:26:41.13 ID:AcCp6W8R.net
ふふっ、と紅莉栖の口角があがる。

紅莉栖「冗談で返せるだけの余裕はあるようね」

余裕……あるのだろうか。

尤も、『何度でもやり直せる』という特殊な状況にいるからこそ、緊張感がなくなってきたのだろうか……

岡部「紅莉栖よ。相談に乗ってくれないだろうか」

紅莉栖「ん?秘密道具をだせーとか、そういったのじゃなきゃ多分OKよ」

岡部「俺はのび太君か。……相談の内容というのはだな」

どうせタイムリープした後は、この相談も『なかったこと』になる。

だから、別に何かを隠す必要はない。

俺が今、直面している問題を全て、包み隠さず全部話した。

何度もやり直しているうちに、ちょっとした手違いでこの世界線に来てしまったこと。

この世界線を正しい姿にするためには、ルカ子以外にもう一人の性別を変える必要があること。

その相手が、ダルや助手が今ハマっているオトノキのスクールアイドル「μ's」のメンバーであること。

接触するために、ストーキングちっくなことや、盗み聞きといった、不審者紛いなことをしていたこと。

……そしてたった今、失敗したこと。
84: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/15(土) 15:42:43.13 ID:AcCp6W8R.net
紅莉栖「まさか、この岡部ごときが、あの海未ちゃんと会話したなんて……橋田が聞いたら、きっと怒り狂うわね」

岡部「岡部ごとき、とは聞き捨てならんが……何か、いい方法はないだろうか?」

紅莉栖「私に相談してきたのは、岡部にしてはまぁ、いい判断ね」

さっきからこと俺を呼ぶ毎に蔑む表現が入っているが、しかしそれをイチイチ反応していてはならん。

オトナな対応で、華麗に聞き出すのだ。

紅莉栖「まず間違いなく、今後、岡部は海未ちゃんとは会えないわね……タイムリープ、しない限りは」

予想通りというか、むしろタイムリープを前提で、『次』どうするか、と相談していたつもりだった、と指摘してしまっては、きっとヘソを曲げるだろう。

うむ、と無難に頷く。

紅莉栖「それでなんだけど、私が海未ちゃんと接触するっていうのはどうかしら?」

岡部「……お前、ただ会いたいから、とかそんなんではないだろうな」

紅莉栖「正直、あの美少女が本当に男なのかを確かめたい、そのためには直接あってみたい、という気持ちがあるのは事実ね」

紅莉栖「でも全ては漆原さん……あれ、漆原くん?のためでしょ」

だまり、コクリと頷くだけにする

紅莉栖「不審者丸出しな岡部よりも、私が接近したほうが海未ちゃんも安心できるはず」

岡部「しかし、なんと言って説得するのだ?」
85: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/15(土) 16:53:37.48 ID:AcCp6W8R.net
紅莉栖「そうね……母親の昔のポケベル番号を自然に入手できるような流れ……」

岡部「それに、俺は誰かを騙したくはない。誰かの想いを踏みにじってまで世界線を弄るような真似は……俺には、できない」

紅莉栖「そうだとしても、事実を話して失敗したんだろーが」

くっ……グウの音もでない。

紅莉栖「だから真実を伝えたとしても、海未ちゃんにとっていらない情報は伏せておけばいい」

紅莉栖「それなら海未ちゃんを騙したことには入らないから、これでいい?」

岡部「いや。それではダメだ。どうせ隠す情報と言うのが『女に戻る』とか、それに近い内容だろう……それでは、騙しているのと何も変わらない」

岡部「全てを話し、その上で納得させ、同意の上で世界線の改変を行う」

自分で言ってから、余程無茶なことを言っているな、と呆れてしまう。

紅莉「ねぇ、岡部……綺麗事を言ってられるような状況なの?」

岡部「綺麗事と言われようと、不可能だと言われようと……これは、俺が受けるべき報いだ」

岡部「だから海未に対して、どこまでも真摯な対応をしなければならないんだ」

岡部「これが、俺のできる唯一のことだから……」

紅莉栖「……はぁ、真面目というか、融通が効かないというか」
88: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/16(日) 11:46:43.02 ID:fGU4rXHw.net
紅莉栖「そういう無理難題を解いていくのは嫌いじゃないけど……」

はぁ、とため息を吐き、うんざりした顔で俺の顔を睨みつける。

紅莉栖「はっきり言って、不可能よ」

岡部「……し、しかし!それでも俺は……」

紅莉栖「根性論でなんとかするつもり?何遍も繰り返して?何遍も同じ結果を見て?」

紅莉栖「……そのうち、気が狂うわよ」

岡部「既に何度も繰り返している。気が狂うのならば……既に狂っている」

地獄の8月13日を思い出し……その延長にいるのだと思い知らされる。

岡部「何度繰り返そうが、気が狂おうが、俺にはやるべきことなんだ」

紅莉栖「同じことを繰り返すのは愚者のすることよ」

岡部「そうだとしても、俺にはこれしかないんだ……だから、知恵を貸してくれないか」

紅莉栖「……わかったわよ。岡部の気が済むまで、何回でも繰り返したらいいじゃない」

岡部「な、何か得策でもあるのか!?」

紅莉栖「気が早いっ!これから考えるのよ!!」
89: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/16(日) 11:54:40.28 ID:fGU4rXHw.net
ラボへ向かいながら、紅莉栖と共に方法を考える。

が、どうしても

全て話す→今回と同じ失敗
一部隠す→俺が許さない

となってしまい、口論になってしまう……

紅莉栖「アンタねぇ、ちょっとくらい妥協しなさいよ!!」

岡部「だからそんなことできるわけがない!!」

紅莉栖「こう言っちゃなんだけど、全部『なかったこと』になるんだから、アンタは気にしなくていいのよ!!」

岡部「その記憶は俺が全て覚えている!そして贖罪を……」

紅莉栖「あーもう!長いこと中二病患ってて、素でも中二病なわけ!?バッカみたい!!」

岡部「真摯な態度と言え!!あと馬鹿とはなんだ馬鹿とは!!」

紅莉栖「バカだからバカつってんでしょ!!」

岡部「飛び級で大学卒業したからっていい気になるんじゃない!!助手の分際でっ!!」

紅莉栖「何度も言うが、私はアンタの助手になったつもりはないからな!?」

岡部「まぁそう照れるでないクリスティーナよ!」

紅莉栖「ティーナってつけんな!バカ岡部!!」
90: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/16(日) 12:05:22.89 ID:fGU4rXHw.net
岡部「というか、お前が無駄に噛み付くから全く話が進まんではないか!」

紅莉栖「はぁー……アンタに付き合ってると、時間がどれだけあっても足りないわ」

紅莉栖「もう一度だけ聞くけど……少しくらい、妥協点は見つけられないの?」

岡部「くどい。俺は一切手を抜くつもりはない」

紅莉栖「それなら、もう打つ手は無しね。あとは根性論で頑張れ」

岡部「随分と投げやりではないか!?」

紅莉栖「無理だっつってんの!!」

岡部「やってみなくてはわからないだろう!?」

紅莉栖「それが根性論だって……はぁ、何度目よ、この件」

岡部「……それもそうだな」

ゴホン、わざとわしい咳払いを一つ、冷静になって考える。
92: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/16(日) 12:16:37.90 ID:fGU4rXHw.net
ホワイトボードに書き出し、前提条件の整理をする。

1.元の世界線に戻るために、園田海未を元の『女性』に戻す

2.1のためには母親のポケベル番号を聞き出す

3.2のためには園田海未に、女に戻るということを含めて全てを話す必要がある

4.3をクリアするためには、園田海未を説得する必要がある

ここだ。さっきから躓いている『説得』の部分。

どうやって説得するかを考えていたが……

紅莉栖「待って」

人がせっかく熟考しているのに、待ったが入った。

紅莉栖「ねぇ、どうして『説得』なの?」

岡部「今の男から女に戻ったら、幼馴染が好きだという気持ちを伝えられないからだ、と言っていたな」

紅莉栖「マジで!?……って違う、そうじゃなくて」

紅莉栖「伝え方次第では、説得する必要もないんじゃない?」

岡部「……すまん、つまりどういうことだ?」

紅莉栖「だから、アンタの伝え方が悪かったんじゃない?」
93: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/16(日) 12:24:27.86 ID:fGU4rXHw.net
は?という顔をしてしまう。

この女、なに言ってるんだ……?

紅莉栖「何ってんだこいつ、みたいな顔しないでよ……」

ホワイトボードの3.の部分に赤で○を付ける。

紅莉栖「この『3』なんだけど、全てを話すって書いてあるじゃない?」

紅莉栖「いつかアンタが言ってたこと。『想いは世界線を超える』……だっけ。それが事実だったとすれば」

紅莉栖「海未ちゃんは女性に戻ったとしても、女性だった時から好きな人は変わらず、ずっと好きだった……そういうことでしょ?」

紅莉栖「『全てなかったことになるんじゃない、全て元通りになる』……そんな感じで話せば、納得してもらえるんじゃないかしら」

あ。

俺は『想いは世界線を超える』までしか伝えていなかった……

何が『全て話す』だ!

全てが聞いて呆れる!!

岡部「助手よ!!お前はやはり天才だったのだな!!」

紅莉栖「い、今更褒めたって……てゆーか助手って呼ぶな!」

岡部「気にするな『蘇りし者(ザ・ゾンビ)』よ!」
94: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/16(日) 12:44:55.54 ID:fGU4rXHw.net
早速タイムリープしようとヘッドギアを装着したが……

紅莉栖「岡部」

岡部「ん?どうした?」

紅莉栖「想いは世界線を超える……それがもし真実だとしたら、これがどれだけ大変なことかわかる?」

岡部「今日のお前は説明不足だ。どういうことなんだ」

紅莉栖「アンタは昨日、漆原さんとデートをした。つまり漆原さんは元の世界線でも……」

岡部「……想いは超えたとしても、その想いが届くとは、届けられるとは限らない」

岡部「だから俺は、ルカ子の想いに応えることはできなくても……見て見ぬふりはしない」

紅莉栖「それは、きっと今回の海未ちゃんにも言えるのよ?想っていても届けることができない、その苦痛を強いるの?」

岡部「……さっき答えが出ただろう。『元通りになる』、それだけなんだ」

紅莉栖「っ……オーケー。覚悟は出来た?」

岡部「覚悟なら、とうの昔にできている」

紅莉栖「行ってこい、岡部。全部を元通りにするために!」

岡部「ああ!」

放電が始まり―――――視界が揺れ、

―――――――――――俺は、過去へと行く。
100: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/16(日) 18:54:32.29 ID:fGU4rXHw.net
―――――ラブライブ!Side

放課後の練習が終わり、穂乃果とことり、私の3人で帰っている最中のことです。

海未「穂乃果、ことり……気づかれないように、後ろを見てください」

穂乃果「ほえ?なんでー?」

海未「……勘違いならいいんですが、誰かに尾けられているような気がします」

ことり「もしかして、海未ちゃんのファンじゃないかな?」

……そう、でしょうか?

なぜだかわかりませんが、そうではないような気がします。

なんでしょうか、この感覚……

気付かれないようにと言ったはずなのに、穂乃果がバレバレな仕草で後ろを見ます。

穂乃果「……うん、いるね。めっちゃ怪しい人が!」

海未「穂乃果!声が大きいです……」

ことり「あの白衣の、髪の毛ボサボサの人?どうする?なんかされる前に、きっぱりと……」

どうしましょう。実力行使もいいのですが、なんだか……違う気がします。

いえ、何がどう違うのかわからないのですが。……何かが。
102: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/16(日) 20:32:57.09 ID:fGU4rXHw.net
ことり「……海未ちゃん?どうしたの?」

少し呆けていたのか、ことりに声をかけられてハッとしました。

海未「あ、いえ……なんか奇妙な感覚に襲われまして」

穂乃果「奇妙な感覚?」

海未「既視感……でいいんでしょうか?前にも一度、こんなことがあったような……」

見たことがある?聞いたことがある?体験したことがる?

……よく、わかりません。

穂乃果「そりゃ、海未ちゃんは可愛いもん!ストーキングの1回や2回くらいあってもおかしくないよ!」

海未「だから、私は男ですので可愛いとか言われましても……」

ことり「とりあえず、撒いちゃおうか?」

穂乃果「うん、そうだね!さっさと逃げるに越したことはないよ!」

あ、と穂乃果が素っ頓狂な声を小さくあげます。

穂乃果「シンガリは穂乃果に任せて、海未ちゃんはことりちゃんと逃げて!」

海未「なに意味わからないこと言ってるんですか!ほら、穂乃果も一緒に走りますよ!」

ことり「二人とも、こっち!」
103: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/16(日) 20:55:07.29 ID:fGU4rXHw.net
―――――

ことり「ふぅ、ふぅ、……うん、この道なら、多分大丈夫、じゃないかな」

穂乃果「ちょっと見てくるねっ!」

言うが早いか、曲がり角までサササと小走り、チラリと様子を伺ったかと思うと、満面の笑みと全身で、『○』のマークを描きました。

ことり「よかった~……もしもここまでついてこられたら、もう走れなかったも~ん」

海未「あの、ことり……つかぬことを聞きますが、先ほどの道を、私たちは最近通りましたか?」

ことり「えっと……そういえばこの前、メイド喫茶でバイトしてるのがバレた時があったでしょ?あの時に逃げた道も一部通ったけど……」

ことり「もしかして、また既視感?」

海未「……はい」

走っている最中に、最近通ったような……そんな気がしました。ですが、

海未「ですが、ことりの後を追っている時に通った道だったんですね。それなら覚えていても不思議ではありません」

穂乃果「あ、穂乃果はさっぱり覚えてないよー!」

海未「わざわざ自慢するもんじゃありません!」

ことり「まぁ、穂乃果ちゃんらしいといえば、らしいよね♪」
104: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/16(日) 21:03:50.73 ID:fGU4rXHw.net
海未「いつも言いますが、ことりは穂乃果のことを甘やかしすぎです!」

穂乃果『いいじゃん、ことりちゃんばっかじゃなくてたまには穂乃果も甘やかしてよー!!』

ビクリ、とします。

変な感覚や既視感ではなく……以前、自分が聞いたこと?

ことり『私は……二人が仲良くて、羨ましいなって。そう思うよ』

以前、聞いたことがある。

なんでしょう、これは……この記憶は。

穂乃果『海未ちゃんは、ことりちゃんを追いかけるべきだよ!ファイトだよっ!!』

違う。そうじゃなかった。

追いかけるんじゃなかった……?

穂乃果「……ゃん?うーみーちゃん!?」

気がつけば、穂乃果の顔がすぐ近くにありました。

海未「ひゃあ!?な、なんですか!?近いですよ!!」

ひゃあ、とは……我ながら情けない声が上がりました。

穂乃果「だって海未ちゃん、ずーっとぼーっとしてるんだもん!」
105: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/16(日) 21:24:33.79 ID:fGU4rXHw.net
海未「呆けていたからといって、そんなに顔を近づける必要はないじゃないですか!」

ことり「海未ちゃん、いきなり固まるから……ちょっと心配したんだよー?」

穂乃果「そうだよ!いきなり動かなくなる海未ちゃんが悪いの!」

海未「そ、それは……そうですが……」

強烈な既視感は……いえ、過去の記憶は、今はもう引きました。

なんだったんでしょうか、今のは……

穂乃果「でもホント、どうしたの?体調悪いとか?」

海未「いえ、普段通りのはずですが……」

穂乃果「あ、そうだ!ことりちゃん、保健委員でしょ?海未ちゃん家まで一緒に帰ってあげてよ!」

ことり「え?穂乃果ちゃん家のほうが近いんじゃ……」

穂乃果「実はさー、お母さんから買い物頼まれてたの、忘れちゃってて……えへへ」

海未「……穂乃果」

穂乃果「ことりちゃん、海未ちゃんのこと頼んだよ!ファイトだよっ!!」

言い終わる前に走り出していく穂乃果の背中を、ことりと私はただ見つめることしかできませんでした。
106: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/16(日) 21:32:46.33 ID:fGU4rXHw.net
ことり「え……っと。あはは、行っちゃったね」

突然「頼んだよ!」などと言われ、ことりが困惑しています。

海未「ええ、行ってしまいましたね……」

なんというつまらない相槌でしょうか。心底呆れます。

ことり「穂乃果ちゃんじゃないけど、本当に体調悪くないの?」

海未「ええ、本当です。ですが、先ほどはその……」

ことり「デジャヴ?」

海未「ええ、強烈な既視感……というか、あれは私が以前経験したこと……?」

ことり「本かテレビか、何かの聞きかじりだけどね?」

ことり「デジャヴ、既視感って、頭が疲れてる時によく見るんだって」

ことり「だから、海未ちゃんは体調悪くないつもりでも、もしかしたら本当は疲れてるのかもしれないよ」

丁寧に説明してくれますが、私は日頃の鍛錬以外に変わったことなどなにもしていないのですが……

思い当たる節がありません。

海未「そう、なのでしょうか……?」

ことり「はい、そうなのです!」
110: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/16(日) 23:15:49.67 ID:fGU4rXHw.net
私のモノマネでしょうか?

プッ、と吹き出してしまいます。

海未「それ、誰の真似ですか……ふふっ」

ことり「海未ちゃんのモノマネだったんだけど、似てなかったかな?」

海未「……ええ。びっくりするほど似てませんよ……ふふふっ」

ことり「くすくす……海未ちゃん、ようやく笑ってくれたね」

海未「え?……あ」

そういえば、帰り道からずっと既視感に悩まされて、笑えていませんでした……

ことり「笑えないというのは、心に余裕がない証拠です」

人差し指をピンと立てて、得意げに話ます。

またテレビか本かの聞きかじりでしょうか?

ことり「海未ちゃんはいつも、家のこととμ'sの練習、それに作詞もあるし、メンバーの中では一番忙しいと思うの」

海未「私よりも、医学部へ向けた専門的な勉強や、作曲のある真姫のほうが忙しいような気がしますが……」

ことり「んー……そういえば、そんな気もするような……?」

ことり「それじゃ、2番目に忙しいと思うの」
111: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/16(日) 23:16:20.87 ID:fGU4rXHw.net
かなり強引ではありますが、私が忙しいということにしたいようです。

海未「……はい、そうですね。確かに、忙しくないと言えば嘘になります」

ことり「やっぱりそうだぁ!」

言わせておいて、鬼の首を取ったかのような喜びようを見せてくれます。

ことり「海未ちゃんにはお休み……というか、心のゆとりが必要だと思うの」

ことり「誰かひとり、本気で甘えられるような。本気で寄りかかれるような……そんな人が」

ザァッ、と木々がざわめきます。

風の中心にいるのは私たち二人。

……ことりは髪が乱れるのも気にせず、言葉を続けます。

ことり「そこでね?海未ちゃんに一つ……教えてもらっていいかな?」

海未「え?ええ、私にわかることでしたら」

すー、はー、と深呼吸をして。

先ほどとはうって変わり、至って真面目な表情……その中に、うっすらと憂いを帯びた、泣き出しそうなことりの顔。

ことり『海未ちゃんには、好きな人はいる?』
112: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/16(日) 23:17:17.10 ID:fGU4rXHw.net
!!!

既視感と、今ことりが言った言葉が重なります。

一気に押し寄せる、既視感……過去の記憶。

ことり『きっと海未ちゃんは、穂乃果ちゃんが好きなんだろうな、って』

ここではない場所での会話。

今とは違う時間。

ことり『……これが、泣いてた理由です。えへへ』

私には、今の私にはない、頬の感触。

海未「……それは、一体どういう意味、でしょうか……?」

一歩、いえ半歩くらいでしょうか。

正面に立ったことりが、少しだけ私のほうに近づきます。

ことり「私じゃ、海未ちゃんの心の拠り所にはなれないかな……?」

先ほどの話と総合すると……ことりは……

ことり「ううん、やっぱり、はっきり言うね」

泣き出しそうな顔は、その瞳からは……

一粒の涙が伝っていました。

ことり「私は、海未ちゃんが好き」
113: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/16(日) 23:17:56.44 ID:fGU4rXHw.net
既視感の中にはなかったセリフ。

ですが、気づいていた気持ち。

ことり「でもね、私じゃダメなんだよ……海未ちゃんを支えるのは、心の拠り所になれるのは……穂乃果ちゃんだよ」

ことり「二人の間に、私はいない……」

涙の粒は二粒になり、三粒になり……

その頬に、涙の道筋が見えるほどに。

海未「そんなことありません!」

ことりの肩をつかみ、目を見て声を荒げてしまいます。

私は……ことりの想いに答えもせず、何を言い出すのでしょう。

心の中は冷静ですが、一度言葉が出ると、次から次へと……

海未「私たちは三人です、いつまでも三人一緒にいます!」

海未「この際だから言ってしまいますが!」

言ってしまうんですか、などと心の中で小さく突っ込みます。

海未「確かに私は、穂乃果が好きです!」

海未「ですが、きっと穂乃果にとって、私はそういう対象ではありません!」
114: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/16(日) 23:18:31.72 ID:fGU4rXHw.net
海未「なので私は、この気持ちを……」

ことり「違うよっ!!」

今までの付き合いの中で、聞いたことないほど大きな、ことりの声。

肩に置いた手の、手首のあたりをつかみます。

その掴んだ手は……ことりの華奢な体からは想像がつかないほど、強く握られていました。

ことり「穂乃果ちゃんは、海未ちゃんが好きだよ!絶対、絶対に好き!!」

ことり「でも穂乃果ちゃんは優しいから、きっと自分の気持ちを押し殺して、私のことを応援してくれてるの!今だってそう!」

……そんな、そんなこと、あるわけが……

海未「私は、穂乃果にきつく当たっていますよ!?」

ことり「全部穂乃果ちゃんを思ってのことでしょ!」

ことり「それに、わかっちゃうんだよ……穂乃果ちゃんとも、海未ちゃんとも、長い付き合いだよ……?」

ポロポロと溢れる涙を拭おうともせず、手首を掴んだ手に力が入っていくのがわかります。

ことり「両想いのクセに、想いを伝え合ってない二人を見てるのは……辛いよ……」
115: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/16(日) 23:19:02.97 ID:fGU4rXHw.net
ことりは、私の知る限りで、一番優しい人です。

それでいて、一番……自分に負担を強いてしまう人です。

だからこそ……私が、ことりの負担の一端でも担うことができれば、どれほどいいか……

……そうですね。それが答えで、ことりの想いに応えるべきことです。

海未「……ことり。よく聞いてください」

うつむいたまま涙をこぼし続けています……無理もありません。

海未「私では、ことりの……その、恋人、になるには、不相応です」

なにせ私は今、ことりをフっているのですから。

海未「私なんかよりも、もっといい人が世の中にはたくさんいます」

私のような未熟者には、あまりにももったいない相手です。

手首を掴む手が緩んで行きます。

海未「ですが。これから先も貴女の友人として……いえ、ことりさえよければ『親友』として……」

ですので、私は……

海未「ことりの抱えている負担を、私にも担がせてもらえませんか?」

大事な親友を真正面から、思いっきり抱きしめました。
116: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/16(日) 23:19:37.05 ID:fGU4rXHw.net
ことり「それ……辛いって言ったことの、なんの解決にもなってないよ?」

私の腕の中で、ことりがクスクスと小さく笑います。

海未「そうかもしれません。私のわがままです」

ですが、と。言葉を続けます。

海未「ことりが辛い時は、私が話を聞きます」

海未「ことりの負担が大きい時は、私が手伝います」

海未「ことりが泣きたい時は、またこうやって……私の胸くらい、いくらでも貸します」

ことり「……それ、もし海未ちゃんに彼女ができたら、浮気って疑われちゃうよ?」

海未「……その時は、なんとか説得してみせましょう」

ことり「くすくす……ホント、頼りがいあるなぁ……」

ことり「ますます好きになっちゃうよ……」
117: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/16(日) 23:20:26.49 ID:fGU4rXHw.net
抱きしめたまま、数分が経過しました。

ゆっくりとことりから離れ、キチンと向き合います。

海未「ことり……これからも、私の親友でいてくれますか?」

先ほどまでことりを抱きしめていた右手を差し出します。

ことり「それって、私にはチャンスがなくなった、ってことだよね?」

ムスッとした表情を作ることりの言葉に、ぐっ、と回答に詰まってしまいます。

ことり「……でも、海未ちゃんみたいな親友がいてくれたら、私も嬉しいよ」

ことり「これからもずっと、ずーっと、よろしくね!海未ちゃん!」

差し出した右手を取ってもらい、握手します……が。

その右手を引かれ……


頬に触れる程度の、軽い口づけ。
118: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/16(日) 23:21:01.46 ID:fGU4rXHw.net
ことり「えへへ、私を泣かせた罰ですよーだ」

悪戯が成功した子供のような、屈託のない笑顔に一瞬だけ、見蕩れてしまいました。

海未「こ、ことりっ!」

ことり「恥ずかしいからもうだめー!また明日ねー!」

……行ってしまいました。

それと、言ってしまいました。

穂乃果が好きです、と。

できれば、ことりには伝えないつもりでしたが……

その場の流れとは言え、過ぎてしまったことです。

それに、上手く和解できました。

……なんでしょうか。

今回は、という枕詞を置きたくなるような、この気持ちは……

???「園田 海未さん、よね?」

その違和感の正体に気づく前に、知らない人から話かけられました。
124: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/18(火) 21:14:34.46 ID:rQhrUQK8.net
―――――Steins;Gate Side

私は食い入るように画面を見つめる。

ラボにいるあいだ、橋田がずっとこのグループの曲を流すもんだから、ついつい聞いちゃって、思わずハマっちゃって……

今ではライブ映像なんか見ちゃって。

紅莉栖「はぁ、真姫ちゃん……」

どうしてこんなに可愛いのかしら?

私は真姫ちゃん推しだけど、メンバー全員可愛い。

紅莉栖「まきちゃん……」

全部橋田のせいだ。

これじゃなんのために日本に滞在してるかわからないじゃない!

橋田「お、牧瀬氏患者化オメ」

紅莉栖「なにそれ?患者?」

橋田「真姫ちゃんを思うあまり『まきちゃん』と言っちゃうのが口癖になって、最終的には『まきちゃん』以外喋れなくなっちゃう病気だお」

紅莉栖「それなら私は大丈夫じゃない」

橋田「いいや、違うねッ!この2分くらいのあいだに『まきちゃん』って3回は言ってるお!こりゃ感染初期状態に違いないお!!」
127: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/18(火) 21:22:48.70 ID:rQhrUQK8.net
なんなのこいつ!?私の一挙手一投足を監視してるわけ!?

……でも、まぁ。

紅莉栖「まぁ、それでもいいか」

橋田「うひょー!まきくりktkr!!!」

紅莉栖「橋田うっさい!輝夜のセリフ聞こえないでしょーが!!」

橋田「あ、セリフだけなら『るてし』のセリフも好きな件について」

紅莉栖「るてしって、のんたんセンターよね?PV化してくれないかしら」

橋田「はーん!僕の女神さまあああ!!」

紅莉栖「あら、橋田ってのんたん推し?」

橋田「いんや、甘えと言われようがなんだろうが、箱推し。だからこの前のクリスマス大作戦には、誰にも投票できなかったんだお!!キリッ!」

紅莉栖「なんつーか、橋田らしいといえばらしいわね」

箱推し?って何かしら。

グーグル先生に教えてもらおうとブラウザを立ち上げたところ……

岡部「助手っ!助手はいるかっ!!」

ラボのドアをぶち壊さん勢いで、変なのが帰ってきた。
128: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/18(火) 21:32:45.90 ID:rQhrUQK8.net
紅莉栖「だから助手って呼ぶな」

橋田「あ、オカリンおかえりん」

岡部「助手よ、ちょっと来てくれ!今すぐにだ!!」

紅莉栖「え、ちょっと……」

ラボに入るやいなや、いきなり袖口を掴んで来る。

袖口じゃなくて、手を握ってこいよ、ヘタレ岡部……

紅莉栖「おい岡部!少しくらい説明しなさいよ!」

岡部「屋上で話す!ここでは……いろいろマズイ」

屋上に上がり、私の方を見る。

……なによ、アンタに真面目な顔は似合わないってば。

岡部「……頼みがある」

勢いよく、頭を下げた。

腰を90度に曲げ、手は体の真横。

これは、日本式土下座の一歩手前レベルの物の頼み方って聞いたことがあるわね。

@ちゃんねるで。
129: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/18(火) 21:43:01.10 ID:rQhrUQK8.net
紅莉栖「え……ちょっと、さっきからいきなりすぎるんだが!?」

岡部「俺では成し得なかったことなんだ!紅莉栖、お前ならきっとできる!だから……だから、頼むっ!!」

もしかして、茶化しちゃマズイようなこと……?

ていうか、結構シリアスな場面なの?

紅莉栖「その依頼の内容が分からなければ、OKともNGとも答えられないわね」

岡部「……すまん、気が動転していた。順を追って説明するが、質問があったら順次聞いてくれ」

紅莉栖「気が動転って……大丈夫?ドクベでも持ってこようか?」

岡部「いや、いい。全て話終わってから、それからでいい」

あの岡部がドクペの差し入れを断った!?

そんなに急を要することってこワケ……?

岡部「しかし、この世界線ではどこから話したらいいものか……」

……この世界線?

紅莉栖「岡部、もしかしてアンタ……Dメールを使ったな!?」

岡部「ま、待て!順序建てて話すから、ちょっと待て!!」

コホンと咳払いし、言葉を選びながら語り出す―――――
130: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/18(火) 21:53:47.06 ID:rQhrUQK8.net
―――そうだな、話が長くなっては頼みづらいからなある程度端折って話そう。

この世界線にもあるように、電話レンジとタイムリープマシンを他の世界線でも作った。

悪戯にDメールを送りまくった先の世界線では……

まゆりが死ぬ運命に囚われていた。

(……は?まゆりが?なんで!?どうして!?)

……それは、俺にもわからない。ただ、『そういう運命だった』としか……

ある人物の言葉を借りると『アトラクターフィールドの収束』というらしい。

話を戻すが、その運命を変えるために、Dメールを取り消すDメールを送った。

内容は……

(話したくなかったら、無理に話さなくても……)

いや、話そう。

鈴羽だ。

鈴羽を追いかけろ、というDメールを、鈴羽を追いかけるな、というDメールで取り消した。

そしたら1日だけ、まゆりの死の運命が伸びた。
131: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/18(火) 22:00:38.87 ID:rQhrUQK8.net
次に取り消したのは、フェイリスのDメールだ。

父親に誘拐されたというDメールを送り飛行機に乗せないようにし、そのDメールは嘘だった、というDメールで取り消した。

そしてルカ子だ。

母親に野菜を食べて女の子を産むように仕向けたDメールを送った。

それを取り消すために、肉を食べるようなDメールを送ったが……

その、呆れるなよ?怒るなよ?いいな?

……送り先を、間違ってしまった。

(はぁ!?バッカじゃないの!?)

だから!怒るなと言ったろうが!

というか、これからが本題なんだ。

その間違った送り先が……助手が最近ハマっているμ'sのメンバーのひとり……

園田 海未という人物だ。
132: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/18(火) 22:17:22.44 ID:rQhrUQK8.net
……開いた口が塞がならないというか、青天の霹靂というか……

岡部「それで、頼みなんだが、」

紅莉栖「オーケイ、概ね想像できたわ……頭痛がするけどね」

間違って男に産むようなDメールを海未ちゃんに送ったって?

本当に、救いようのないバカね!

だってつまりそれって……

海未ちゃんは男の娘じゃなくて、本物の女の子だった、ってことよね。

紅莉栖「間違って送ったDメールを取り消すから、海未ちゃんの母親が昔使ってたポケベルの番号を聞き出せ……でしょ?」

岡部「……うむ。その通りだ」

紅莉栖「でもそれって、かなり無理があるわよね」

だって、会うだけでも難しいのに、それで母親のポケベル番号だなんて……どうやって聞き出すのよ?

紅莉栖「悪いけど、解決策がちっとも見えないわね」

岡部「それについては、既に相談している……お前と、な」

私と?いつ?

……まさか、岡部のヤツ!?
134: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/18(火) 22:27:37.55 ID:rQhrUQK8.net
岡部「俺は既に、この世界線でタイムリープしている」

……はぁ。こいつは……!!

紅莉栖「どの世界線だろうが、私はきっと同じことを言うぞ!?あれは理論上可能なだけで、危険が伴うことは説明しているはずよね!?」

紅莉栖「容易にタイムリープするな!」

岡部「……お前の理論は完璧だった。それを、俺は身をもって実証した」

岡部「それに、既に何度タイムリープしたか……数えるのが億劫になるほどの回数、タイムリープしているんだ」

……そんな。

タイムリープするということは、同じ時間を繰り返すということ。

全く同じ事象が起きる世界を何度も繰り返すのは……きっと、想像を絶する辛さだと思う。

それを岡部は、何度も乗り越えたというの……?

岡部「……解決策について、説明してもいいだろか」

そんな、何回も繰り返して導き出した解決策が、もし通用しなかったら……

岡部はきっと、壊れるんじゃないの?
135: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/18(火) 22:34:02.24 ID:rQhrUQK8.net
紅莉栖「その前に教えて。もしその解決策で解決できなかったら……岡部は?岡部はどうするの?」

岡部「そうなったらまたタイムリープし、また紅莉栖と相談し、また試す」

岡部「ノーリスクでトライ・アンド・エラーができるんだ。楽なもんじゃないか」

死んだ魚のような目で、渇いた笑い声……

ああ、だめだ。

きっと岡部の心は既に擦り切れる寸前なんだ。

しかもこの世界線でタイムリープしなくてはならない理由が、自分の不手際だったなんて……

そしてそれを阻止できるのが、私だけ……

紅莉栖「……わかった。その解決策で、なんとか解決してみせる」

『なんとか解決してみせる』

なんて無責任な言葉かしら。

理詰めで考える私が、根性論を持ち出すなんて……Coolじゃないわね。

解決できなかった時、なんて岡部に報告すればいいの?

その時の岡部を見て、私はどうするの?

またタイムリープしようとする岡部を引き止める権利が……私にはあるの?
136: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/18(火) 22:42:31.16 ID:rQhrUQK8.net
―――――やはり、お前に相談して正解だったようだな。

それでは、いつかお前と話をした解決策について、説明しよう。

前提条件として、次の4つが挙げられる。

1つ、元の世界線に戻るために、園田海未を元の『女性』に戻す。

2つ、そのためには園田海未の母親が昔使用していたポケベル番号を聞き出す。

3つ、聞き出す理由として、園田海未には女に戻るということを含めて全てを話す必要がある。

4つ、全て話をした上で、園田海未を説得する必要がある。

……さて、賢い助手であれば既に違和感に気づいているだろうが、『説得』について、説明する。

園田海未は、高坂穂乃果に惚れているらしい。

(……あー、うん、やっぱり)

なんだその反応は。知っていたかのような……まぁいい。

説得する理由としては、園田海未が女性に戻ったとき、高坂穂乃果に対する気持ちはそのままで女性になる。

ぶっちゃけてしまうと、レズだな。

柔らかく言えば、百合だ。
137: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/18(火) 22:49:38.37 ID:rQhrUQK8.net
当然、世間の視線は冷ややかなものだろう。

故に元の世界線に戻ると、園田海未は自分の想いを押し殺すことになる。

しかし、そうではないのだ。

この幾度かの世界線漂流を経て、気がついたことがある。

『想いは世界線を超える』

つまり、俺が間違ってDメールを送ってしまうよりも前から、園田海未は高坂穂乃果に惚れていた。

だからこの世界線での出来事は『全てなかったこと』になるのではない。

『全て元通り』になるんだ。

……これが、俺とお前で導いた結論、解決策だ。

以上の内容を園田海未に伝え、Dメールを送る許可をもらい……

俺は世界線を超える。

今度は間違えずにルカ子の母親にメールを届け、まゆりを救い出す道に戻る……

ちょっと大きな寄り道になってしまったが、な。
138: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/18(火) 23:01:40.27 ID:rQhrUQK8.net
紅莉栖「……別な時間軸とはいえ、さすが私ね」

思わず自画自賛してしまう。

それにほのうみ、って言うのも想像できなくないし、むしろ……

いえ、これ以上はやめましょう。妄想が捗って仕方ないわね。

紅莉栖「説得する方法はそれでいいとしても、接触する方法はあるの?」

岡部「当然だ。なにせ俺は、園田海未の説得に失敗し続けているのだからな」

……しまった。地雷だったか。

紅莉栖「ごめん……」

岡部「いや、気にすることはない」

岡部「説得の方法任せたが、説得する場所について説明する」

秋葉原……このラボから、そう遠くない場所を岡部は告げる。

岡部「夕方6時頃に、高坂穂乃果、園田海未、南ことりの3人を誘導する」

紅莉栖「誘導?」

岡部「……正確には、俺が尾行し、撒くために逃げ込んだ場所、と言ったほうが正しいが」

紅莉栖「スクールアイドルのストーキング容疑でタイーホ待ったなし!」
139: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/18(火) 23:10:15.89 ID:rQhrUQK8.net
岡部「だが、そうするしか方法はあるまい」

……ちょっと笑わせてやろうと思ったのに。

紅莉栖「わかった。でも3人いるときにその話をしてもいいの?」

岡部「それはマズイだろうな。試したことはないが、しかし多人数に聞かせたところでいい結果が出るような問題だとは思えん」

紅莉栖「それじゃ、一人になるまで待つってことね」

岡部「南ことりと園田海未の二人になり、そのあとに園田海未が一人になる……狙い目はそこだ」

紅莉栖「ということは、さっきの場所で待機して、その後で海未ちゃんを尾行すればいいのね?」

岡部「そうだ。しかしそこからが、本当の問題……説明と説得だ」

紅莉栖「大丈夫!私と岡部で考えて、考えて考えて考え抜いた結果でしょ?」

紅莉栖「もっと自信を持て、岡部!なんとかすると言い切った私を信じて!」

半分は自分に言い聞かせているような言葉。

……そうだ、私ならできるはずだ。自信を持て、牧瀬紅莉栖!

岡部「……ああ、そうだな。期待しているぞ、紅莉栖」
140: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/18(火) 23:21:22.19 ID:rQhrUQK8.net
岡部に指定された場所、時間で待つこと数分。

本当に穂乃果ちゃん、海未ちゃん、ことりちゃんの3人が来た。

紅莉栖(うわああああああああ画面の中でしかみたことのない3人が!!目の前にいる!!!わああああああああああ!!!!)

それも、すっごい仲良さそうにしてる!!

アイドルグループって、実はメンバー同士が不仲って聞いたことあるけど全然そんなことないわね!!

ただの日常会話だけでも、なんだかお嬢様達の集いって感じ!もう百合の迷路!!

近頃ファンになった私でさえこんなことになるんだから、橋田がいたら大変なことになっていたかもしれないわね……

――既視感?

――さっぱり覚えてないよー

――な、なんですか、近いですよ

うーん、もっと会話を聞きたいのに、遠いせいで断片的にしか聞こえないわね。

もっと、もっと近づけないの!?

――ことりちゃん、保健委員でしょ?海未ちゃん家まで一緒に帰ってあげてよ

――海未ちゃんのこと頼んだよ、ファイトだよ

……ん?なんだこれ?

岡部から聞いてたのと、少し展開が違うような……?
141: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/18(火) 23:27:17.85 ID:rQhrUQK8.net
だって岡部からは、ことりちゃんと海未ちゃんがどこかいくから、それを尾行するんじゃないの?

もしかして、岡部の覚え違い?

んー……どういうことかしら。

なんて考えていると、一陣の風が吹き、ことりちゃんの綺麗な髪を巻き上げる。

それを気にも止めず、なにか喋ってるけど……

その時、風に乗って言葉が届いた。

――海未ちゃんには、好きな人いる?

……これって、もしかしてことりちゃんから海未ちゃんへの告白のシーン!?

ことうみ!ことうみなの!?

あれ、岡部からはほのうみだって聞いてたけど……

これを覚え違えるわけないわよね。

ちょっとこれ、なによこれ。

ことりちゃん、泣き出しそうな顔してるじゃない。

――私は、海未ちゃんが好き。
142: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/18(火) 23:34:00.73 ID:rQhrUQK8.net
えんだああああああああああああ!!!!いやああああああああ!!!!

って叫びたいところだけど、多分違うわよね。

だってこの空気、すっごいシリアスだもの。

――確かに私は、穂乃果が好きです

――穂乃果にとって、私はそういう対象ではありません

……ちょっと、海未ちゃん。

海未ちゃんは穂乃果ちゃんが好きだから、ことりちゃんをフっちゃうの?

ことほのうみっていう3人の関係はどうなっちゃうの!?

――両想いのくせに、想いを伝え合ってない二人を見てるのは、辛いよ……

あぁ……ことりちゃんってすっごいいい娘じゃない。

こんなにいい娘フっちゃうなんて、海未ちゃんも罪な女……じゃなくて、男よね。

って、抱きしめた!?

ええええ!?なんで!?

今の今まで穂乃果ちゃんが好きって言ってたのに、一瞬で心変わり!?
143: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/18(火) 23:44:07.88 ID:rQhrUQK8.net
はぁー……なんだかすごい場面に遭遇しちゃったわね。

しばらくして離れたけど、すぐに海未ちゃんから握手を求めてる。

……さっきまでハグしてたのに、どういうこと?

その差し出した右手をことりちゃんが取り、

キスした。

……マジですか。ことりちゃんって、案外大胆なのね……

でも海未ちゃんはほっぺたに手を当ててるから、多分キスされたのはほっぺね。

私のアングルからでは、マウストゥーマウスにしか見えないのよ。

その後すぐことりちゃんが走ってどこか行っちゃった。

あ、これが岡部の言ってた海未ちゃんが一人になるタイミングね。

さっきまでのニヤけた顔をなんとか真顔にし、ふぅ、と呼吸を整える。

話をする内容、説得する言葉、全部覚えてる、よし。

緊張するな、相手はアイドルとはいえ、ただの高校生だ……

わざとらしく足音を鳴らし、海未ちゃんに振り返ってもらう。

紅莉栖「園田 海未さん、よね?」
157: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/22(土) 21:01:50.92 ID:/IDmbZU0.net
真正面から海未ちゃんを見据え、やっぱり美人だ、と再認識する。

美人だけど、男……かぁ。

ううん、今は余計なことを考えている場合じゃない。

紅莉栖「いきなり声掛けてしまってすみません。私は牧瀬 紅莉栖と言います」

訝しげな視線を受けるけど、まあ仕方ないわよね。

紅莉栖「貴女に大事な話があるので、こうして尾行みたいな真似していました。まずは非礼をお詫びします」

海未「いえ、それはいいのですが……紅莉栖さん、でしたか。私の名前を知っていましたが、それはどこで?」

紅莉栖「……えっと、」

μ'sのファンです!サインください握手してください写真撮らせてください……

などという言葉が出そうになるけど、全部喉元で押し殺す。

今日はファンとして海未ちゃんに会いに来たわけではなく、世界線を戻すという大義名分があることを忘れたか、私!

ん、と軽く咳払いして、

紅莉栖「さっき言った『大事な話』に関わることです。それは追々話をしていきます」
158: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/22(土) 21:02:22.48 ID:/IDmbZU0.net
海未「貴女の話を聞く理由が、私にはあるのでしょうか?」

紅莉栖「きっと海未さんにはない。けれど……」

これを聞いて無視できるほど、海未ちゃんは冷徹な人ではないはず。

もし私の読み違いだったとしたら……その時はどうやって岡部に謝ろうかしら。

紅莉栖「私の大切な友達の命がかかっている」

海未「!!!」

驚いた表情をしたかと思うと、いきなり頭を抱える……

紅莉栖「ちょっと、海未さん?どうかした?」

海未「……いえ、なんでもありません。ただ、以前こう言った話を聞いたような気がして……」

紅莉栖「……え?」

岡部「やはりお前は、一部は覚えているようだな」
159: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/22(土) 21:02:52.79 ID:/IDmbZU0.net
岡部!?アンタは別な場所で待機してるはずでしょ!?

それが言葉に出る前に、岡部に遮られてしまう。

岡部「『この時間軸』でははじめまして、だな……園田海未」

岡部「俺は岡部倫太郎。何度もお前と会っているが、覚えているだろうか」

紅莉栖「バカ岡部!覚えてるわけないだろうが!!」

海未「……紅莉栖さん、どうやら私は岡部さんとお会いしたことがありそうです」

紅莉栖「ど、どうして、そう思うのかしら……?」

海未「友人……いえ、幼馴染でしたか?その方の命を救うために、私とお話をしたことがあったような」

岡部「ふむ。大事なところが抜け落ちているな……まぁ、リーディングシュタイナーを持たぬお前が一部でも記憶が残っているだけ、僥倖か」

紅莉栖「ちょ、ちょっと待て岡部!!海未ちゃんは、アンタがタイムリープ前するの記憶を引き継いでいるって言いたいのか!?」

岡部「一部だけだがな」

紅莉栖「どうしてそんなことが起きた!?私には一切引き継いだ記憶がないぞ!!」

岡部「……誰しも、僅かながらリーディングシュタイナーを持っているんだ……俺はたまたまその能力が顕著に出ただけ、それだけなんだ……」



岡部「だからこそ、俺は『この世界線』を何度もやり直した。何度も何度も……こうやって、園田海未が思い出してくれる程の回数をな」
160: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/22(土) 21:03:59.02 ID:/IDmbZU0.net
……そんな話、聞いていない。

せいぜいで数回程度だろうと思っていたけど、きっと想像を絶する回数のやり直しをしているのね……

岡部「度重なるタイムリープの結果、こうやって『今回の』園田海未は既視感という形で、以前の時間軸を覚えている」

岡部「だからこそ、今回がチャンス……というか、今回を逃すと危ういかもしれん」

聞き捨てならない言葉ね。

紅莉栖「……危ういって、どういうこと?」

岡部「これ以上繰り返すと、園田海未は『以前の記憶』と『今の記憶』が混同してしまい―――――」

海未「日常生活も怪しい、そう言いたいのですか?」

岡部「……察しが良くて助かる」
161: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/22(土) 21:04:37.59 ID:/IDmbZU0.net
紅莉栖「それじゃ、岡部は……もう、やり直しの機会が……」

岡部「そもそも、やり直せるという状況がおかしいのだ。これくらいでちょうどいい」

岡部「さて、園田海未よ。『どこまで覚えている?』」

何が、『ノーリスクでトライ・アンド・エラーができる』だ。

……岡部の精神がどうしようもないくらい、磨り減ってるじゃんか……

海未「岡部さんはこの世界線とは違う世界線、パラレルワールドの人であることや、その世界線を行き来する際に記憶を引き継げる、唯一の人間であること……」

……泣き出しそうな顔。

その表情を見て、私たちが告げようとしていることが、彼―――――彼女にとって、どれだけ辛辣な事実か。

きっと、想像してもそれは遠く及ばないような、そんな気がして。

私自身の無力さに、ただうつむき……海未ちゃんの言葉に耳を傾けるしかできない。

海未「―――――私は、男ではなかったこと……」
162: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/22(土) 21:05:13.75 ID:/IDmbZU0.net
……この先は何も言わないけど、きっと穂乃果ちゃんへの想いや、戻ったらそれを押し殺さなくてはならない辛さを思い出している……の、かしら。

岡部「……今まで何度も、お前には辛い思いをさせてしまった。すまない」

今まで見たことのないほど真摯な姿勢……手を体の横において、腰から90度曲げての謝罪。

海未ちゃんほどではなくても、きっと岡部も……罪の意識や、別な時間軸の後悔の念に苛まれているのかしら。

海未「―――――」

声にならない嗚咽を漏らし続けている……

きっと、過去……というか別な時間軸の悔しさ、辛さを一度に思い出して……その感情が、彼女の中で爆発している。

私はこの短時間で何度目かの無力さを思い知り……何も伝えることができなくなってしまった。
163: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/22(土) 21:05:42.06 ID:/IDmbZU0.net
―――――ラブライブ!Side

岡部さんの謝罪する姿勢はまさに真摯な姿勢でありましたが、それをきっかけに、記憶が洪水を起こしたかのように次々と思い出して……

頭が割れそうな程きしみ、痛みます。


――「いーのいーの!早く行ってよっ!」

何か言うべきことがあったはずです。


――「海未ちゃんには、好きな人はいる?」

キチンと答えるべき回答を持っていたはずです。


――「それならいっそ、穂乃果のことなんて好きにならなければよかったのに!!」

癇癪を起こした子供のような言葉ではなく、もっと別な言葉を言えたはずです。


――「海未ちゃんのことが好きだった頃の穂乃果を、思い出させないでよぉっ……」

私は……

……私は。
164: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/22(土) 23:47:46.55 ID:/IDmbZU0.net
紅莉栖「……ゃん、海未ちゃん!大丈夫!?」

記憶の洪水から引き上げられ、久しぶりに呼吸をすることができたような、そんな気がします。

海未「ゲホッ、ガホッ……かは、はぁ、はぁ……」

紅莉栖「お、岡部!私、飲み物買ってくるから、海未ちゃんを……」

岡部「いや、ここから先は紅莉栖が聞いてやってくれ。俺が買いに行ってくる」

紅莉栖「え、な、なんでよぉ!?」

海未「……わ、私は……っ!!」

『私は』の後……何を、言おうとしましたっけ?

紅莉栖「海未ちゃん、大丈夫よ、落ち着いて」

涙やら鼻水やらで、すっかり汚くなってしまっている私の両手を、迷いなく包み込んでくれる……紅莉栖さんの両手。

紅莉栖「何を思い出したのか、どんな想いをしたのかは……わからないけれど」

その両の手は柔らかく、優しい体温でした。

紅莉栖「海未ちゃんが経験してきたこと、体験してきたこと。それはきっと、辛いことだったんでしょう」

紅莉栖「きっと、私じゃ想像できないくらい、辛いこと……」

海未「紅莉栖、さん……」

荒かった呼吸も落ち着きを取り戻し、思考も明瞭になってきました。
165: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/22(土) 23:48:08.39 ID:/IDmbZU0.net
海未「ありがとう、ございます。随分とマシになりました……」

紅莉栖「そう、よかった……」

ふぅ、と一息吐き、なにか……腹を括ったような。

紅莉栖「また辛いことを思い出させるようだけど……貴方の決断が必要なのは、覚えている?」

決断……思いましました。

私が、『女の子に戻る』という決断を強いられていたこと。

海未「……私は、」

そのあとに言いたかった言葉。

海未「私は、女の子に戻りたくありません……!!」

紅莉栖「やっぱりそうよね」

え……?

岡部さんのようにもう少し食い下がってくるかと思っていたのですが……

紅莉栖さんは、やけにあっさりしていました。

紅莉栖「でも、海未ちゃんには女の子に戻ってもらいたい。その理由もさっき言ったわよね?」

……なんだ、食い下がるじゃないですか。
166: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/22(土) 23:48:50.03 ID:/IDmbZU0.net
海未「はい……岡部さんの幼馴染、紅莉栖さんのお友達の命に関わる、と……」

紅莉栖「そうよ。……それで、海未ちゃんに確認したいんだけど、いい?」

海未「……はい。なんでしょうか?」

紅莉栖「ありがとう。それじゃ、質問その1。……海未ちゃんは、穂乃果ちゃんのことをどう思っている?」

海未「好きです。それは当然、女性としてです」

ですので、と続けます。

……何度目なんでしょうか、この問答は……

海未「私が女性に戻ると穂乃果にこの想いを伝えられません……」

紅莉栖「そう。わかった。それじゃあ質問その2ね」

……不自然な程、あっさりしています。

もしかして、何かしらの解答?などを用意していて、それに向けた問答でしょうか……

紅莉栖「海未ちゃんは、ことりちゃんのことをどう思っている?」

海未「好きです……これは穂乃果と違い、親友として好きです」

紅莉栖「ということは、ことりちゃんから告白されても付き合えない、ということね?」

海未「…………はい」
167: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/22(土) 23:50:10.93 ID:/IDmbZU0.net
もしかして、先ほどのことりとのやりとりを見られていたのでしょうか……

紅莉栖「それじゃあ、質問その3。これが最後ね」

端正な顔立ちの紅莉栖さんが、一層真剣な表情になります。

問答だったとすると、ここで仕掛けて来るはず。

紅莉栖「『想いは世界線を超える』……岡部が散々言ってた言葉だけど、聞き覚えはある?」

海未「……はい。だからこそ質問1で回答したように、女性に戻ったら穂乃果に想いを伝えることができないという……」

紅莉栖「それを言ってしまったら、質問2もそうよね?」

……え?

紅莉栖「質問2に隠した質問に対する海未ちゃんの答え。ことりちゃんは貴方が好きだけど、貴方はそれに応えることができない、って言ったわよね」

紅莉栖「女性が女性へ想いを伝えることができないのであれば」

紅莉栖「貴方が女の子に戻ることで、ことりちゃんも想いを伝えることができなくなってしまうの」
168: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/22(土) 23:50:57.70 ID:/IDmbZU0.net
―――――そんな。

盲点、でした。

いえ、多分違います。

自分の身の可愛さのあまり、見て見ぬふりを、気づいて気づかぬふりをしていました。

紅莉栖「目からウロコでも出た?」

海未「……いえ、私の心の弱さに驚いていました」

紅莉栖「そんなことはないと思うけれど……それで、私からいいこと、教えてあげる」

紅莉栖「『想いは世界線を超える』。貴方が穂乃果ちゃんを好きになるのは、例え貴方が女性だろうと、今のような男性だろうと、それは変わらない」

紅莉栖「……穂乃果ちゃんが貴方を好きになるのは、貴方が『園田海未』だからであって、女性とか、男性とか。そんなことは関係ない」

紅莉栖「貴方が女性に戻っても、そう大きくは変わらない……全て元通りになるのよ」
170: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/22(土) 23:52:08.50 ID:/IDmbZU0.net
もと、どおり……?

海未「で、ですが!」

……言葉が、思うように紡げません。

岡部「それならば」

紅莉栖「あ、岡部……」

いつの間にか、岡部さんが戻ってきていました。

岡部「園田海未よ。この世界線でお前が高坂穂乃果に告白したとして……それは果たして上手くいくのか?」

岡部「仮にこの世界線で上手くいくのであれば、きっとお前が女に戻っても、それは上手くいくのだろう」

岡部「逆にこの世界線でも上手くいかないのであれば……」

そこで言葉を切ります。

……想いが世界線を超えるのであれば、そういうこと……ですよね。

海未「……はい。分かっています」

それでも、私は伝えたい。

穂乃果と一緒にいたい。

これまでもそうだったように、この先もずっと一緒だと。

これは私だけの思い込みなんでしょうか……
171: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/22(土) 23:53:06.25 ID:/IDmbZU0.net
岡部「その想い……ぶつけてみるか?」

岡部「お前がこの世界線でタイムリープし、今日の放課後からやり直す」

海未「―――――はい?」

岡部「そしてお前がタイミングを見極め……高坂穂乃果に、決めてこい」

決めるって、その……告白を、ですか?

そんなことを言われてしまうと、途端に……頬が熱くなってしまいます……

紅莉栖「岡部ぇ!あんた、海未ちゃんにタイムリープさせるつもり!?私は認めないわ!!」

岡部「タイムリープマシンが安定して使用できることは、俺が何度も実証済みだ……安心して使ってくれ」

紅莉栖「それはたまたまアンタだったからってだけで、万人に安全かどうかなんて、誰も保証できない!」

海未「岡部さん。タイムリープの代償は、なんでしょうか?」

紅莉栖「ちょ、海未ちゃん!?やめて、決して安全じゃないのよ!?」

海未「分かっています……ですが、怖がっていては何も変わりません」

紅莉栖「だからって、そんな……」

岡部「紅莉栖。海未の意思を尊重してやれ」

岡部「ただし、使用するためには条件がある」

海未「……概ね想像はできます。母が昔使用していたポケベルの番号、でしょう?」

岡部「相変わらず、理解が早くて助かる。同意してくれるか?」

海未「……」
172: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/22(土) 23:53:49.14 ID:/IDmbZU0.net
考えます。

私は、女に戻っていいのか。

女に戻っても、穂乃果への想いを貫くことはできるのか。

戻ることによるメリット、デメリット。

そんなものありません。

だって、『元通りになる、なにも変わらない』のですから。

……いえ、強いて言えば、メリットがありますね。

海未「私が女の子に戻れば、岡部さんの幼馴染は……」

岡部「確実ではないが、助かる道は広がる」
173: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/22(土) 23:54:44.82 ID:/IDmbZU0.net
……私の、お腹の中からの幼馴染。

穂乃果。

もし、穂乃果が死ぬとわかったら。

それを阻止する手段があるとしたら。

きっと私は、なりふり構わず、ありとあらゆる手段を講じると思います。

今の岡部さんのように、タイムリープでやり直すことができれば。

私もタイムリープして、何度も何度でも、やり直していると思います。

海未「……ふぅ」

そして、助けるための障害があれば、私であれば実力で排除します。

ですが岡部さんは、こうして私に全てを話し、会話だけで『私』という障害を排除しようとしました。

……どうやら岡部さんは、見事に会話による説得に成功したようです。

岡部「覚悟は、できたか?」

海未「はい。……私の告白が上手くいくよう、祈っていてください」

岡部「恩に着る。ところで俺の祈りは、時間をも超越するのか?」

海未「祈りの強さ次第じゃないでしょうか」

そういって、笑い合います。
184: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/24(月) 00:06:33.14 ID:nrhZwCld.net
岡部さんと紅莉栖さんの所属する研究所へ向かっている最中のことです。

私は海未ちゃんのタイムリープを認めた覚えはないぞ、とむくれている紅莉栖さんを説得している岡部さんが私の方を向き、

岡部「忘れるところだった……これ、飲むか?」

渡されたのは、先ほど買いに走っていただいた飲み物です。

……です、が。

海未「あの、これは?」

岡部「む、なんだドクペを知らんのか?」

海未「はぁ」

聞いたことがあるような、ないような。

海未「ちなみにそれ……炭酸ですか?」

岡部「知的飲料だ!」

紅莉栖「バカでごめんね?炭酸なんだけど、海未ちゃんって炭酸が飲めないのよね?」

海未「ええ、そうなんですが……なぜご存知なんでしょう?」

μ'sのプロフィール欄には書いたような気がしますが……
185: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/24(月) 00:07:16.27 ID:nrhZwCld.net
紅莉栖「え?ええっと、」

岡部「こいつはμ'sのファンなんだ。だからプロフィールくらい見ていても、なんらおかしくはない」

海未「そうだったんですか!?」

紅莉栖「ちょっ、バカ岡部!隠してたんだからバラすな、バカ!」

海未「ということは、私の名前を知っていたのも……?」

紅莉栖「……ええ、ええそうよ!μ'sのファンですめっちゃ応援してますサインください握手してください写真撮らせてくださいぃ!」

……まさか、面と向かってファンと言われるとは。

これって、結構嬉しいですね。

海未「はい、わかりました。……全部終わったら、その時に」

岡部「あ……しまった」

紅莉栖「どうした?」

岡部「……ダルに連絡していなかったな」

ダル、さん?

研究所のメンバーでしょうか?

……名前から察するに、海外の方でしょうか?
186: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/24(月) 00:07:51.84 ID:nrhZwCld.net
紅莉栖「あー、そういうことか……帰らせておく?」

岡部「そのほうがいいだろうな。ややこしくなる」

紅莉栖「ややこしくなるというか、面倒事になるというか」

??

一体、なんのことでしょう?

紅莉栖「ああ、海未ちゃんは気にしなくていいのよ」

岡部「俺だ。ダルよ、今どこにいる?」

どうやらダルさんへ連絡していただいているみたいです。

岡部「まだラボだと?……これよりラボにて極秘の緊急会議が開かれる。お前は席を外しておけ。……わざわざ、『こちら側』へ首を突っ込む必

要は……設定じゃないぞ!本当の事だ、てゆーか帰れお前!いいな、絶対に帰れ……切りやがった!?あいつ、電話切りやがったぞ!?」

紅莉栖「橋田はなんて?」

岡部「よくわからんが、画面の中の嫁がどうとか言っていたな……くそっ、面倒だ」

???

そのダルさんという方は結婚されていて、奥さんがいらっしゃる……けど、画面の中?

橋田、というのは苗字でしょう。

橋田ダル……ええと、ハーフの方?
187: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/24(月) 00:08:30.89 ID:nrhZwCld.net
海未「あの、何をおっしゃっているかさっぱり……」

紅莉栖「うんうん大丈夫大丈夫!海未ちゃんは聞く必要も理解する必要もないし、できれば聞かないでほしいなー……」

アイツは強烈だから、と小さく付け加えて。渇いた笑いをします。

????

岡部「あと少しで我がラボへ着くが……おそらくラボにダルという男がいる。そいつのことは極力無視していいからな」

海未「はぁ……」

事情がさっぱり汲み取れていないので、生返事しかできません。

紅莉栖「簡単に言うとね?そいつはμ'sのファンなのよ」

なんと!今日だけで、私たちを応援してくれる方々2名に会えるとは!

海未「嬉しいのですが、……その反面、少し照れてしまいますね」

紅莉栖「言葉足らずだったわね。そいつは『強烈な』ファンなの。……あとはなんとなく、わかるかしら?」

……私たちμ'sがライブをする際、たまに見かける『ズゴイ』方々がいますが……

そう言った感じの方でしょうか。

海未「ええと、はい。……見慣れてはいます、お話することはありませんでしたけど……」

紅莉栖「そう、それじゃ……覚悟しておいてね?その、いろいろと……」

海未「……はい」
189: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/24(月) 00:08:58.67 ID:nrhZwCld.net
岡部「電気がついているな……」

看板に『ブラウン管工房』と書かれた建物の2階を見上げて、岡部さんがつぶやきました。

もしかしてここが例の研究所でしょうか?

しかし、それにしては設備が……その。

庶民的といいますか。

紅莉栖「橋田とは限らないわよ、まゆりかも?」

岡部「さっきの電話からすると、ほぼダルで確定だな」

薄暗い階段を登り……

岡部「フゥーハハハ!!今戻ったぞ!!」

紅莉栖「もっと普通に入れんのか、お前は」

海未「ええと、おじゃまします……」

内装を見た限り、あまり研究所という感じはしません。

小奇麗にまとまっている、といった感じです。

紅莉栖「遠慮せずに、あがって頂戴」

??「オカクリ、おかえりん」
190: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/24(月) 00:09:52.32 ID:nrhZwCld.net
岡部「変なまとめ方をするでない。それにダルは牧瀬氏呼びだから、オカマキと略すのではないか?」

こちらの、ええと……ふくよかな方が橋田ダルさんのようです。

橋田「オカマキとか呼ぶと、『マキ』がマッキーっぽくなるからムリだお」

橋田「万に一つでもそんなことになったら、僕はオカリンが!泣くまで!殴るのをやめないっ!」

そのあとに私の方をチラリと見て、

橋田「それと、お客さん?……って、おや?んー?んん??」

紅莉栖「こら橋田、あんまりジロジロ見たら失礼だろーが」

橋田「いやー、なんかμ'sの海未ちゃんに似てるけど、こんな薄汚いラボに天使が舞い降りるわけないもんなぁ」

て、天使ですか!?

一体、私のことがどのように見えているのでしょう……

岡部「薄汚いとは、聞き捨てならんぞダル!!それと、お前の言う天使本人だ」

橋田「は?」

海未「あの、初めまして。園田海未と申します……」

橋田「は?いや、え?」

紅莉栖「橋田、あんたも名乗れ」
191: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/24(月) 00:11:16.24 ID:nrhZwCld.net
橋田「ああ、橋田 至っす、はい。で牧瀬氏、こちらのお客様は……」

紅莉栖「岡部も言ってた通り、μ'sの園田海未ちゃんよ」

橋田「―――――あ、わかった!ドッキリだこれ!きっとカメラを持ったまゆ氏あたりが……」

海未「いえ、私は紛れもなくμ'sの園田です」

橋田「」

硬直してしまう橋田さん。

いたる、の後ろ二文字を取って、少しいじって、ダル。

……日本の方だったのですね。

橋田「オカリィィィン!!前々からギャルゲの主人公的素質があるやつだと思ってたけど、アイドルに手を出すのは反則っしょ!紳士協定に反するっしょ!ちょっと歯ぁ食いしばれ!」

橋田「それに、海未ちゃんが来るってのになんで僕をラボから追い出そうとしたのさ!?」

岡部「何を紛らわしいことを言っている!!そいつがここへ来たのは、ただタイムリープするためだけだ!」

橋田「なーんだ、特に怪しいこととかラボメンへの勧誘とか……」

橋田「ってタイムリープぅ!?」

傍から見ていれば楽しい方ですが、如何せん言葉のところどころにわからない単語があります。

研究員をされているということは、やはり頭も切れる方なのですね。
192: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/24(月) 00:12:09.28 ID:nrhZwCld.net
岡部「ああ。とあることを成すために、な」

私に対し、にやりと微笑んでくれます。

海未「ええ、私の人生の大一番の舞台となります」

それに答え、私も笑顔で返答します。

橋田「おおおおおお!ガチだ!!モノホンの海未ちゃんだああああ!!!」

橋田「握手してくださいサインくださいツーショット撮ってもいいですか!!」

紅莉栖「落ち着け橋田。そのネタはもう私がやったぞ」

あ、あはは……笑おうにも、笑顔が引きつってしまいました。

ゴホン、と咳払いを一つ。

岡部「さて、お前ら。遊びはそんなもんでいいか?」

……いよいよ、過去へ行けるわけですね。

過去とは言っても、今日の放課後ですが……時間を超越するということには、変わりありません。

岡部「これより、タイムリープマシンの準備作業に取り掛かる。海未は少し待っていてくれ。……今日の『過去』で誰に何を話すか、決めておくんだな」

岡部「助手、ダル!準備に取り掛かれ!」

紅莉栖「助手言うなっつーの」

橋田「海未ちゃんのためならいくらでも働けます!」
193: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/24(月) 00:12:46.93 ID:nrhZwCld.net
……移動先で、誰に、何を話すか……

ざっくりと、穂乃果に告白する、という程度しか決めていませんでしたが、本気で考える必要がありますね。

ええと、放課後は穂乃果、ことりと寄り道しながら帰って、岡部さんから逃げて、

おや。私の記憶ではこの後に2パターンあるようです。

これが岡部さんの言っていた弊害というものでしょうか?

今回は私の体調が優れなかったと穂乃果が判断したため、穂乃果は逃げるように帰りました。

ですが他のパターンでは、泣きそうなことりが走り去っていった後、穂乃果と二人になる機会がありました。

とは言え、泣いていることりを、私は放っておけるのでしょうか……

―――――はぁ。考えるまでもありません。

無理です。

ならば、ことりを追いかける前に、穂乃果とは約束しておきましょう。

その後に会いましょう、と。

……一切嘘を吐かず、穂乃果に辛い想いをさせず……

あれ?もしかしてこれって結構大変なことじゃないんですか!?
194: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/24(月) 00:14:01.95 ID:nrhZwCld.net
などと思考を巡らせていると、

岡部「海未。もうじき準備が完了する」

……ある程度しか、考えがまとまりませんでした。

海未「わかりました……よろしくお願いします」

岡部「それで、例の件だが……」

海未「覚えています。向こうに移動次第すぐに母と連絡を取り、なんとか言いくるめます」

岡部「感謝する。それで、すべての事が済んだ後なんだが……」

海未「あ、そうですね……再会する必要がありますね」

岡部さんと再会しなければ、過去にメールを送ることができません。

岡部「それで、だ。22時にこのラボ付近でどうだろうか」

22時……多分、穂乃果との『話し合い』も決着が付く頃でしょう。

海未「わかりました。その時間でお願いします」
196: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/24(月) 01:00:18.94 ID:nrhZwCld.net
岡部「それと、合言葉でも決めておくか」

海未「……合言葉、ですか?」

岡部「ああ。この言葉を言えばきっと、お前がタイムリープしてきたんだとわかるはずだ」

……そういうことですか。

私がタイムリープすると、過去の岡部さんは私がタイムリープしてきたという事実は知らないんですよね。

なかったことに、なってしまう……

いえ、全ては『元に戻る』でしたね

海未「―――――了解しました。それで、言葉は何にしましょうか?」

岡部「エル・プサイ・コングルゥ……と、言いたいところだが、ここは別な言葉を考えてある」

その言葉は聞きなれない言葉でした。

言葉の意味と、どこの言葉か、それを教えていただき、

海未「……それは、私にはあまりにも重い言葉では……」
197: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/24(月) 01:00:44.77 ID:nrhZwCld.net
岡部「いや、ちょうどいいくらいだろう。なにせ、神が定義した時間の流れを超越して想いを告白しようとしているくらいだからな!」

……神が定義した、とは少し言い過ぎな気がしないでもないですが。

紅莉栖「岡部、海未ちゃん……準備は万全よ。いつでもいけるわ」

岡部「でかしたぞクリスティーナ!」

紅莉栖「ティーナ付けんな!」

岡部「海未、これをつけろ」

これは……ヘッドホン?

岡部「大雑把に言えば……それで記憶を吸い出し、過去に送り、上書き保存する」

?????

岡部「まぁ、原理など知らなくても使うことはできるだろう」

すぅ、と大きく息を吸い込み、高らかに宣言します。
198: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/24(月) 01:01:51.99 ID:nrhZwCld.net
岡部「時は満ちたり!」

岡部「想いは世界線を越え、時空を越え、太陽へと手を伸ばせ!」

岡部「イカロスは地に落ちたが……お前はどうなる、園田海未?」

岡部「その答えは、過ぎ去りし過去にある……!!」

ヘッドホンを装着し、岡部さんが目で合図を送ります。

岡部「お前は今、翼を授かった。空ではなく、時空を飛ぶための翼をな」

岡部「婉曲し、湾曲し、歪み撓み屈曲したこの世界線を!あるべき姿へ戻すための旅を!」

岡部「今、始めようではないか!」

岡部「さあ、飛べ――――――――!!!!」

海未「……くっ!?」

今まで経験したことないような規模のめまい。

海未「あ、」

これが、時間跳躍……タイムリープ、なんですか……

海未「あああああああ!!!」

願わくば、私のこの想いが……穂乃果へと届きますように。
210: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/26(水) 21:10:53.84 ID:p22lvmMO.net
―――――ラブライブ!Side

ふわふわと。

まるで自分が、風に揺れる蝶になったような。

あるいは、その蝶にぶら下がっているような。

ふわり、ふわり。

ゆっくりと地面に降り立ちます。

……次第に、視界と思考がくっきりとしてきて。

目の前には穂乃果とことり。

いつからか耳に当てていた携帯電話で時刻を確認すると、16時32分。

練習が終わり、三人で帰宅している最中のようです。

穂乃果「ねぇことりちゃん、あのクレープ屋さんって、行ったことあったっけ?」

ことり「んー、覚えてないなぁ。よし、食べて確認しよう!」

穂乃果「そうだ!食べてみれば、食べたことあるかどうか、思い出すよ!きっと!」

……これはいつもの帰り道の光景。
211: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/26(水) 21:11:20.74 ID:p22lvmMO.net
ですが、一言一句たりとも同じことを言う程、『いつも通り』なわけが、ありません。

穂乃果「海未ちゃんも食べようよー。それで別々な味にして、食べ比べしようよー」

海未「……そんなことしていると、太りますよ?」

戻ってきたのですね。

私の主観でいう『今日』の、放課後に。

忘れる前に、母にメールをしておきます。

『私が産まれる前に使っていたポケベルの番号って、覚えていますか?

帰宅したら、是非おしえてもらえないでしょうか』

理由は……思いつきません。

かと言って本当のことをいうわけにもいかず……

尤も悪用しようがないので、なんとか説き伏せることにしましょう。
212: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/26(水) 21:11:52.38 ID:p22lvmMO.net
少し歩き、背後に気配を感じました。

そういえば、岡部さんの尾行に気がついたのはこの場所でしたね。

海未「穂乃果、ことり……気づかれないように、後ろを見てください」

覚えている限り、全く同じ言動をするように心がけます。

穂乃果「ほえ?なんでー?」

海未「……勘違いならいいんですが、誰かに尾けられているような気がします」

ことり「もしかして、海未ちゃんのファンじゃないかな?」

正確には私のではなく、私達のファンですが。

いえ、もっと正確には『私達のファンの仲間』ですか。……ややこしくなりました。

穂乃果「……うん、いるね。めっちゃ怪しい人が!」

相変わらず隠すような素振りすら見せない動きで背後を確認する穂乃果。

ことり「あの白衣の、髪の毛ボサボサの人?どうする?なんかされる前に、きっぱりと……」
214: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/26(水) 21:12:17.33 ID:p22lvmMO.net
ええと、ここから私は何か言いましたっけ……?

海未「……何かあってからでは厄介です、撒きましょう」

多少言葉を抜かしてしまった気がしますが。

とにかく、あの場所まで行くことができれば問題ないでしょう。

海未「ことり、撒くための道はありますか?」

ことり「秋葉原は、ことりの庭みたいなものですよ?逃げ道くらい、ちょちょいのチョイです」

覚えている通り、頼もしい回答です。
215: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/26(水) 21:12:44.56 ID:p22lvmMO.net
―――――

海未「はぁ、はぁ……撒けました、か?」

ことり「ふぅ、ふぅ、……うん、この道なら、多分大丈夫、じゃないかな」

穂乃果「ちょっと見てくるねっ!」

満面の笑みと全身で、『○』のマークを描くところまで全く同じです。

改めて、『時間を戻した』のだと実感しました。

ことり「よかった~……もしもここまでついてこられたら、もう走れなかったも~ん」

実際には、既にこのあたりには紅莉栖さんが潜伏しているはずです。

確かこの会話あたりで既視感を感じていました。

それを言ったら体調不良を穂乃果に心配されて、ことりと一緒に帰るように促されて……

これでは、穂乃果に約束を取り付けることができません。

なので、ことりを追うように穂乃果に背中を押してもらわないとなりませんね。

海未「その時は、私がことりを背負ってでも走りますよ」

ことり「え……っと、それはちょっと、恥ずかしい……かも?」

海未「そんなに恥ずかしがることはないじゃないですか。ことりとは、もう何年の付き合いになると思ってるんですか?」
216: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/26(水) 21:13:25.00 ID:p22lvmMO.net
しまった。

知っている、という余裕からか、余計な言葉まで飛び出てしまいます。

穂乃果「ことりちゃんもだけど、穂乃果とも長い付き合いだよねー」

フォローが入りますが、このままでは以前と違う会話の流れになってしまいます……

しかし無理に軌道修正するわけにもいかず、

海未「穂乃果とは産まれる前から幼馴染やってますから、長くて当然です」

ついつい、普段通りの受け答えをしてしまいます。

穂乃果「たはは、そりゃそうだよね……」

海未「いざとなればことりだけじゃなくて、穂乃果も一緒に背負って走りますよ」

海未「長い短いにかかわらず、二人とも私の大切な幼馴染です」

どちらか一方だけを助けるなんて、私にはできません、と続けようとして……

私はこれから、どちらか一方を選ぼうとしているのです。

そのために戻ってきたのですから。

……私は、これ以上言葉を紡げませんでした。

穂乃果「面と向かってそう言われると照れちゃうよー」

ことり「あはは、ありがと、海未ちゃん」
217: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/26(水) 21:14:18.27 ID:p22lvmMO.net
ことりの笑顔を見て、胸が痛みます……

でもね?と、ことりが言葉を続けて。

ことり「……でも、やっぱり羨ましいよ」

時間は埋められないもの、という言葉が小さく聞こえました。

僅かながら、寂しそうな顔。

海未「……ことり?」

ことり「ごめんね、今日は先に帰るよ」

穂乃果「え、ことりちゃん!?」

言うが早いか、駆け出していきました。

この光景は……見たことがあります。

私がことりを追おうとして、穂乃果と一緒に追いかけようとして、穂乃果から後押ししてもらって……

この先の展開が読めているというのは便利なようで、卑怯なような……

海未「穂乃果、ことりを追いますよ!」

穂乃果「……ううん、穂乃果は追いかけない」

よかった、覚えている通りの展開です。
218: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/26(水) 21:15:16.95 ID:p22lvmMO.net
海未「穂乃果、どうかしましたか?」

穂乃果「たぶんね、ことりちゃんは追いかけて欲しいんだよ……海未ちゃんに」

穂乃果「だから、お願い。海未ちゃんはここにいて」

……え。

海未「ほの、か……?どうしたのですか!?」

なにが起こっているのですか……?

穂乃果「……だってっ……」

以前と言っていることが、違います……

……いえ。

『以前と』言っていることが違うだけで。

結局は、『穂乃果』の言葉には違いありません。

予定と違うからと言って、動揺しすぎました……

ふぅ、とため息一つ。

海未「穂乃果。聞いてください」

海未「さっき、ことりは泣いているように見えました」

海未「幼馴染として、親友として。それを見て見ぬふりはできません」
219: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/26(水) 21:16:29.30 ID:p22lvmMO.net
海未「穂乃果が追いかけないのであれば構いません……私一人でも追いかけます」

穂乃果「でも、そしたら……!!」

海未「その後で、穂乃果。……お話がありますので、会っていただけますか?」

スカートの端をギュッと握り締め、何かに耐えるように下唇を噛んでいます。

……理由を説明できず、申し訳ありません。

海未「ことりとの話が一段落したら連絡します」

穂乃果「……うん。約束、だからね……」

海未「ありがとうございます、穂乃果……」

ポンポン、と軽く頭を撫で。

ことりの背中を追いかけます。

穂乃果「海未ちゃんっ!」

走り出した矢先に止めないでください!と恨み言のひとつも漏らす前に。

穂乃果「連絡、待ってるから!」

……そんなことで呼び止めるのですか。

海未「私が約束を破ったこと、ありますか?……お茶でも飲んで、待っていてください」

何か言おうとする穂乃果に背を向け、再び走り出します。
226: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/27(木) 20:44:16.11 ID:W3nwXeAS.net
薄暗くなった秋葉原の街を、ことりを追って走ります。

あの時はどこを走りましたっけ……?

無我夢中だったのであまり覚えていません。

とにかく走り、ことりの姿を探します。

アテも記憶も曖昧なまま走り続けていると。

―――――走り疲れたのか、歩いていることりを見つけました。

海未「ことりっ!」

ことり「……海未、ちゃん……?」

呼び止める声は大きく、ことりを驚かせてしまいました。

振り向いたことりの頬には、涙が伝った跡。

海未「ようやく追いつきました……なかなかどうして、足が早くなりましたね」

ことり「……どうして?」

なぜ追いかけてきたのか、と聞きたげなことりの言葉を遮り。

海未「どうして?それは私が聞きたいくらいです」

海未「……どうして、泣いているのですか?」

ハッとして頬を袖口でぬぐいますが、既に私に見られています。
227: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/27(木) 20:44:44.32 ID:W3nwXeAS.net
海未「私はことりの力になりたい。……力不足でしょうか?」

ことり「ううん、そんなことないよ。とっても頼もしいもん」

海未「……場所を変えましょうか。そこで、お話を聞かせてください」

そういえば、場所を変える提案はことりからでしたか。

全部が全部覚えているわけではないので、慎重に行動しなければなりませんね。

ことり「……穂乃果ちゃんは?」

海未「穂乃果には、ことりを追いかけるから先に帰っておくように言ってあります」

ことり「――――そっか」

ポツリと小さくこぼしたその言葉に、一体どれほどの感情が込められているのでしょう。

これからの展開を知っているだけに……逆に、想像を絶するものではないでしょうか。

海未「それと私からも話が……『相談』があります」

これは、前回まではなかった流れです。

ことり「……それは、私でも力になれること?」

私の、記憶を引き継いだ私のオリジナルの選択。

海未「私の知る限り、ことり程頼りになる方はいません」

……過去の私の叱責の念を、なかったことにしないために。
228: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/27(木) 20:45:41.79 ID:W3nwXeAS.net
―――――

ことりと一緒にやってきたのは、昌平橋。

μ'sのメンバーと集まる時や帰り道等、私たちと縁が深い場所です。

欄干にもたれることりと、灯篭に寄りかかる私。

なんとなく、どちらとも切り出すことができず……

海未「……」

ことり「……」

なんだか妙な沈黙が流れています。

私から話かけたような記憶はありません。

ここは待ちの一手、忍耐力が問われる時です。

海未「……」

ことり「……はぁ」

ため息一つ。
229: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/27(木) 20:46:14.58 ID:W3nwXeAS.net
私のほうに向き直し、凛とした表情。

垂れ目につり眉。

とても愛らしく思えます。

それでも、私は……

ことり「私が泣いてた理由、だっけ?」

……口を開いてくれました。

海未「……はい。差し支えなければ、ですが」

ことり「あはは、困っちゃったな。差し支えまくりだよ」

海未「それは困りました。力になれそうにありません」

ことり「それも困っちゃうね。私も相談に乗ってあげれないや」

海未「これは困ります。話が進みません」

くすくす、と控えめに笑い合います。

少しだけですが、ことりに笑顔が戻ってきました。

やはりこの子には凛としてる表情より、憂鬱な表情より。

笑顔が一番似合っています。
230: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/27(木) 20:46:38.68 ID:W3nwXeAS.net
どうやら緊張が少しは解れた様子。

ことり「あの、言う前にね?一つ……教えてもらっていいかな?」

海未「……はい。なんでもお答えしましょう」

すー、はー、と深呼吸し。

今度は……泣きそうな顔。

ことり『海未ちゃんには、好きな人はいる?』

過去の記憶と、寸分違わず同じ言葉。

もう……私に、迷いはありません。

海未「はい、います」

ことりの言葉に被せない程度に、即答。

目は口ほどに物を言う、とはよく言ったものだと関心します。

やっぱり、そっかぁ……そんな言葉が聞こえてきそうな視線を受け。

海未「……相手は、穂乃果です」
231: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/27(木) 20:47:16.78 ID:W3nwXeAS.net
……言って、しまいました。

私の選択、相談。

ことりに指摘される前に打ち明け、告白したいがどうしよう、と。

それが私の選んだ『相談』という選択。

ことりのお腹の前で組んだ指が、忙しなく動きます。

ことり「……そう、だよね。うん、知ってたよ」

ことり「でも意外だなぁ。海未ちゃんからそんなに、……はっきりと言われるなんて」

海未「なにせ、穂乃果に告白するかどうかをことりに相談したかったのですから……腹は括っていました」

我ながら、ことりの気持ちを知っていて……酷なことをする。

それでも、私の考える最善策でした。

心の底から申し訳ないことをしたと、ことりに謝りたい。

ことり「……私ね、海未ちゃんが好きなの」
232: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/27(木) 20:47:47.17 ID:W3nwXeAS.net
……ギリッ。

音を立てて、心が痛みます。

ことり「泣いてたのはね、海未ちゃんが穂乃果ちゃんと楽しそうにお話してて……」

ことり「ああ、あの二人の間には、私の居場所はないんだ」

ことり「そう思ったら、もうダメで……涙出ちゃって……」

海未「……っ」

知っていて。

わかっていて。

それでもなお、どうしようもなく痛む胸。

海未「ごめん、なさい……ことりっ……」

私は一体何に謝っているのでしょう。

想いを知っていて、その上で酷なことを告げたこと?

想いに応えられないこと?
233: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/27(木) 20:48:15.14 ID:W3nwXeAS.net
海未「ごめ……っなさ……っ」

私が一体なぜ泣いているのでしょう。

想いに応えられないから?

想いを利用するしかなかった自分が不甲斐ないから?

ことり「……どうして、海未ちゃんが泣いてるの?」

きっと、謝る理由も、泣いてる理由も、一つではない。

ことり「私なら大丈夫……じゃ、ないけど。でも大丈夫だから」

大丈夫?

そんなわけないじゃないですか……

大丈夫なら、なぜことりは泣いているのですかっ……!

海未「大丈夫なわけないじゃないですかっ!」

慎重に、と心がけたはずなのに。

感情が抑えられなくなってしまいました。

みっともなく涙声で、声が裏返りながら……
234: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/27(木) 20:50:58.92 ID:W3nwXeAS.net
海未「ことりは今っ、とても酷いことを言われたんですよ!」

海未「私は今っ、とても酷いことを言ったんですよ!」

海未「貴女は私を許せるはずがないし、まして大丈夫であるはずなんて……」

ことり「だったら!」

今までに聞いたことのない、ことりの大声。

涙混じりで、顔をぐしゃぐしゃにして。

ことり「だったらどうしろって言うの!?」

ことり「涙脆くて、優柔不断で、愛情と友情を天秤に掛けるような、弱い私だよ!」

ことり「きっとダメだってわかってても、結局愛情に傾いて!」

ことり「ダメってわかったら泣いちゃってる、弱い私なんだよ!?」

ことり「こんな私が……海未ちゃんの近くに居ていいなんて……」

―――――馬鹿です。

この子は、ことりは、本当に……

海未「貴女は馬鹿ですかっ!?」

海未「涙脆いのは感受性が豊かな証で、優しさのあまりに優柔不断と取られる場合もあります!」

海未「友情と愛情の天秤でしたら、私だってその秤にかけてます!」

海未「その程度で弱いなんて、言わないでください!」
235: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/27(木) 20:54:15.09 ID:W3nwXeAS.net
……それなら、私のほうが余程弱い。

岡部さんから『今日のやり直し』を提案されて、なにも不安に思うことなくやり直している。

過去の自分を恥じ、邁進するならいざ知らず。

過去の自分を恥じるあまり『なかったこと』にすることを選択した私は……きっと、誰よりも弱い。

海未「……私からみたら、ことりのほうが余程強いです」

海未「誰かに優しくできるというのは、きっと誰でもできますよ」

海未「ですが、誰にでも優しくできるというのは、きっとことりにしかできません」

正面を向いて相対していたことりの目からとめどなく溢れていた涙を、指先でそっと拭います。

ことりには、涙よりも笑顔が似合うのですから。

海未「それ故に誰かが避けそうな、誰かが持つべき重荷も、ことりが背負ったりすることもあります」

海未「それが間違ったことだとは思いません。ですが……」

いつかも言った言葉。

しかし、何度でも捧げたい言葉。

海未「私にもことりが抱えている負担を、担がせてもらえませんか?」
236: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/27(木) 21:05:32.10 ID:W3nwXeAS.net
ことり「……どうして?」

涙は止まっているようでした。

ことりの愛らしい頬に手を添え、

海未「だってことりは、私にとって掛け替えのない、けれどもどうしようもないくらいお馬鹿さんな」

海未「―――――親友ですよ?」

頭を引き寄せるようにし、抱きしめました。

海未「困っているなら助ける、当然じゃないですか」

ひっく、と、耳元で声が聞こえました。

ことりの体が小刻みに震えています。

海未「こんなことで悩んでいたなんて……ことりもつくづく、馬鹿ですよ……」

整えられた綺麗な髪を撫で、もう一言だけ、付け加えます。
238: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/27(木) 21:07:32.62 ID:W3nwXeAS.net
海未「ことりさえよければ……ずっと、親友でいてください」


ぎゅうっと、強く。

強い力で、抱きしめ返されて。

ことり「……海未ちゃんの、バカっ」

バカ、バカ、バカァッ……何度か言われた後。

ことり「……っ、うぁ、ぁぁ……」

嗚咽を漏らし、涙を流していることりを見て。

なぜでしょうか。

私も涙が止まらないのです。
239: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/27(木) 21:08:25.41 ID:W3nwXeAS.net
―――――

しばらく泣きあって、またことりと向き合い、話出します。

海未「……その、みっともないところを見せてしまって、申し訳ありませんでした」

ことり「ううん、私も……取り乱しちゃった。ごめんね」

ことり「でもね?こうやってケンカみたいにするのって、変な言い方だけど、ちょっと憧れてたんだ」

海未「憧れるもんでしょうか……?」

ことり「だって海未ちゃんと穂乃果ちゃんって、いっつもケンカしてるでしょ?」

海未「あれは……!どちらからと言うと、私が一方的に叱っているだけのような……」

ことり「くすくす……やっぱり、海未ちゃんには穂乃果ちゃんがいいね」

ことり「……私じゃなかったよ」

海未「あの、それなんですが……」

ことり「うん?」

海未「ことりは先ほど、私と穂乃果の間に居場所がどうの、と言っていましたが……」

海未「それは大きな勘違いだと思います」

ことり「……え?」
240: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/27(木) 21:11:34.36 ID:W3nwXeAS.net
海未「私が穂乃果を叱る。穂乃果がことりに泣きつく。ことりが私に言い過ぎるなとなだめる」

海未「ほら、ことりがいないと……私と穂乃果は、上手くいかないのです」

海未「私たちは昔から、これからもずっと三人一緒なんですよ」

ことり「―――――あ」

……今更気がついたのですか。

海未「だから、あの……さっき、答えてもらえなかったことです」

すー、はー、と深呼吸します。

さっきは簡単に言えたのに、改めると……妙に気恥ずかしいです……

海未「これからもずっと、私の親友でいてくれますか?」

親愛の証として、右手を差し出します。

ことり「もちろんです!こんなことりですけれど、ずーっと!親友でいてね!」

差し出した右手を掴まれ、引っ張られた時に思い出しました。

ああ、これも迂闊な行動の一つでしたね……

いえ、もしかしたら。

私は期待していたのでしょうか?

ことりからのキスを。

私の頬に、ことりの唇が軽く触れました。
241: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/27(木) 21:14:31.83 ID:W3nwXeAS.net
ことり「えへへ、これは親愛のキスであって、決して愛情表現じゃないから、勘違いしないでね」

ことり「だから決して、浮気じゃありません!」

いや、キスってそんなに軽いものでいいんでしょうか。

などと訝しげな視線に気づいたのか……

ことり「ファーストキスだからね?……ほっぺただけど」

海未「いえ、そこを疑問に思っていたわけじゃありませんよ」

海未「……って、初めてだったんですか!?」

そんな大事な……と言おうとして。

ことり「いいの!」

顔を真っ赤にして怒られました。

ことり「それより……穂乃果ちゃんの告白するんでしょ?」

ことり「私にはわかるんだ……きっと穂乃果ちゃんは海未ちゃんのことが好きだよ」

海未「……確信とか、あるんですか?」

そんなことを聞いてしまうなんて、我ながら情けないとは思いますが……

ことり「本人から直接聞いたわけじゃないけどね」

ことり「二人と付き合い長いし、そういうのってわかっちゃうんだよ?」
242: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/27(木) 21:18:31.59 ID:W3nwXeAS.net
……そんなものでしょうか?

ことり「それで、どうなったか……絶対に教えてね?」

海未「あ、はは……ダメだった場合は言えないかもしれません……」

ことり「いいもーん、その時は穂乃果ちゃんから聞くもーん」

海未「こ、ことり!?」

くすくす、と笑い。

ことり「……冗談だよっ!」

ことり「さーさー!善は急げ!」

後ろから両肩を掴まれ、グイグイと前に押し出されます。

海未「分かりました!行きますから押さないでください!」

ことり「……海未ちゃん、頑張ってきてね」

海未「ええ。行ってきますね!」

見送ってくれることりの目には……

涙は、なく。

吹っ切れたような、晴れ晴れとした表情で送り出してもらえました。

……ありがとうございます、ことり。

独りごちて、ことりの姿が見えなくなるまで走ります。
245: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/28(金) 22:46:24.94 ID:lPBExI8Y.net
……さて。

ことりの姿も見えなくなったところで。

海未「どこにいますか?岡部倫太郎さん、牧瀬紅莉栖さん」

やり直す前に聞いた話によれば。

岡部さんか紅莉栖さんのどちらかが、私を尾行しているはずです。

岡部「……驚いたな。俺たちに気がついていたとは」

紅莉栖「驚くところはそこよりも、私たちの名前を知っているってところじゃなの?」

二名のうちどちらかだけだと思っていましたが、まさか二人共尾行していたとは……

まぁ、私の手間も省けますね。

岡部「いや、海未を中心にして、同じ時間軸を何度もやり直しているんだ……多少のリーディングシュタイナーが発動していても、不思議ではない」

海未「それについてですが……」

恐縮しながら、説明を始めます。

海未「お二人共ご存知とは思いますが、園田海未と申します。音ノ木坂学院スクールアイドル、μ'sのメンバーであり……」

海未「数時間後の未来からやってきた、時間遡行者……です」
247: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/28(金) 22:55:58.60 ID:lPBExI8Y.net
岡部「……どういうk」

紅莉栖「ちょっと岡部、アンタどういうことよ!?」

聞くやいなや、紅莉栖さんがいきなり岡部さんに掴みかかります。

紅莉栖「なんで海未ちゃんがタイムリープしてる!?そしてなぜそれを私に知らせない!?」

岡部「ちょっ、まてぇ助手……俺にもさっぱり……」

紅莉栖「アンタが知らないわけないでしょ!タイムリープの経験者なんてアンタだけなのよ!?」

海未「紅莉栖さん、それについては私から説明します」

キョトンとした表情をし、岡部さんの胸ぐらから手を離します。

岡部「げほ、げほ……げほ。それについては、俺も詳しく聞かせてくれ」

海未「……少し長くなるかもしれません。適当に腰を落ち着けるところはありますか?」

紅莉栖「ちょっと、岡部!本当に信じるの……?」

岡部「信じるもなにも、一度もあったことがなく、隠れていた俺とお前の名前をピタリと当てたんだ」

岡部「『タイムリープしたから知ってました』という説明が一番しっくりくる」

紅莉栖「……まぁ、岡部がそこまで言うなら……信じてあげるけどさ……」

岡部「それでは、我がラボまで案内しよう……ついてこい」
248: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/28(金) 23:14:20.15 ID:lPBExI8Y.net
見覚えのある道をしばらく歩き、岡部さんのラボ……未来ガジェット研究所へと案内されました。

ここへ来るのは二度目ですが、ここから出たことは一度もないと思うと、なんだか不思議な気持ちになります。

岡部「上がってきてくれ……とは言っても、このラボの内部構造は既に知っているだろうが……」

海未「いえ、ここへ来たのは二度目ですので、あまり詳しくは」

橋田「オカリンと牧瀬氏、おかえりん。冷蔵庫にドクペがキンキンに冷えてるお」

紅莉栖「あら、気が利くじゃない」

橋田「と、お客さん?」

海未「おじゃまします、橋田さん」

橋田「……オカリン?この薄汚いラボに舞い降りた天使はどちら様?」

岡部「あー、この客人はだな……」

海未「はじめまして。音ノ木坂スクールアイドルμ'sのメンバー、園田海未と申します」

紅莉栖「あらかじめ言っとくけど、私は穂乃果ちゃんとことりちゃんも遠目で見てるからな!どうだっ!!」

できる限りにこやかに……とは思うものの、『スゴイ方』への耐性がないせいか、少し引きつってしまいました。

その自己紹介を聞いた橋田さんは……
249: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/28(金) 23:30:32.55 ID:lPBExI8Y.net
橋田「」

すっかりと硬直していました。

橋田「なぁオカリン、久しぶりにキレちまったよ……屋上行こうぜ……」

岡部「くだらんことを言っている場合か、アホめ!」

岡部「……俺の観測していないところで、タイムリープが行われた。海未はその時間遡行者だ」

橋田「は?何言ってんの?妄想乙」

橋田「だってタイムリープマシンはパッと見だけで使えるようなもんじゃないっしょ。その設定には無理があるお、オカリン」

岡部「ぐっ……言わせておけば……まぁいい」

岡部「海未、説明してくれ。……タイムリープするに至った経緯等を、特に詳しくな」

分かりました―――――

息を吸い込み、思い出しながら話を始めます。
250: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/28(金) 23:56:37.02 ID:lPBExI8Y.net
―――――

こういうふうに話すのは初めてなので、どこから話をしたらいいのか……

私の知る限りの、私の時間軸を説明しましょうか。

今日の放課後のことでした。

ことり、穂乃果と帰っている時に視線を感じて、逃げ出しました。

逃げこんだ先で、強烈な既視感に襲われることがしばしばありました。

穂乃果は家の用事と言って先に帰り、私とことりで少し話をしていて……

……。

しばらくしてことり別れた後に、紅莉栖さんから接触がありました。

……お二人にとって大事な友人の命がかかっていると。

その話を聞いている最中に岡部さんがやってきて、岡部さんがこの時間軸を繰り返していることを聞いた時でした。

おそらく『やり直す』以前の記憶でしょう。
251: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/28(金) 23:58:15.94 ID:lPBExI8Y.net
それは私にとって、記憶の洪水として……頭の中に溢れてきました。

思い出した記憶の中で、私は岡部さん、紅莉栖さんと既に会っていたのです。

私がパラレルワールドでは女だったと告げられたことも、戻る決断を強いられていたことも、思い出しました。

……とある事情から、戻りたくはありませんでした。

しかし、紅莉栖さんから……ある種の真実を教えてもらいました。

私が誰かに好意を抱いていること、抱かれていること。

それは私が男だろうが、女だろうが、そんなことは関係ないと。

……想いは世界線を超えるのだと、そう教えてもらいました。

岡部さんから、想いをぶつけてみるか、と持ちかけられたのはその時でした。

しばし考え……タイムリープすること、過去改変し、女の子に戻ることを決めました。
252: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/11/28(金) 23:59:40.77 ID:lPBExI8Y.net
私の想いを伝えたい。その一心で。

そしてこの場所、未来ガジェット研究所に連れてきてもらいました。

タイムリープする前に、岡部さんとは合言葉を決めました。

その言葉を言えば私がタイムリープきた証明になる、と。

どうやら合言葉を言う必要なかったみたいですが……

決めた言葉は。

―――――ヴァーレ・リーベ。

ドイツ語で、『真実の愛』という意味のようです。

教えていただいてからタイムリープし、今の時間軸へと来ました。

この時間軸での出来事は、説明するまでもありませんよね?

私の話は以上です。

あの、信じていただけたでしょうか?
260: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/02(火) 21:10:56.27 ID:/pyQ5f74.net
再開します。
―――――

語り終えましたが、3人とも硬直したままです。

もしかして、何か間違えたでしょうか……?

岡部「……なるほどな」

ようやく口を開いたのは、岡部さん。

岡部「お前は、自分の想いを伝える。それだけの理由で、安全の保証が一切ないタイムリープマシンを使用したわけか……」

岡部「くくく……ふははは……フゥーハハハ!!!」

海未「お、岡部さん!?」

岡部「狂っている!!」

岡部「もしも!もしもお前が無事にタイムリープできなければ『お前』という主観は不在になるんだ!」

岡部「死ぬんじゃない、この世界のどこにも存在しなくなるんだ!!」

岡部「だと言うのに……」

岡部「ヴァーレ・リーベ?『真実の愛』?」

岡部「くだらん、実にくだらんッ!」

岡部「そんな物のために、死ぬことよりも理解できない現象に陥るというリスクを背負いながらもタイムリープしているんだ!!」

岡部「これが狂っていないというのであれば、それは世界のほうが狂っている!!」
261: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/02(火) 21:20:57.61 ID:/pyQ5f74.net
フゥーハハハ!!と高笑い。

……残念ですが、一部訂正しなければなりません。

海未「……岡部さん。タイムリープの安全性は、何遍も繰り返している岡部さん自身が証明している、と言い切っていただきました」

岡部「――そうなのか?」

海未「それと、愛のためにタイムリープするという点については、岡部さんから概ね同意していただけてます」

岡部「……そう、なのか?」

海未「想いは世界線を越え、時空を越え、太陽へと手を伸ばせ」

海未「婉曲し、湾曲し、歪み撓み屈曲したこの世界線を。あるべき姿へ戻すための旅を今、始めようではないか」

海未「タイムリープ直前に、そうやって激励してくれたのも、岡部さんです」

岡部「……ああ、多分俺だろうな……」

海未「だからこそ私はこうやってここにいます」

私達μ'sの太陽……穂乃果。

彼女へと想いを伝えるため。

海未「……太陽へと、手を伸ばすために」
262: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/02(火) 21:31:57.27 ID:/pyQ5f74.net
紅莉栖「……海未ちゃん、本当にタイムリープしてきたのね?」

海未「はい。……それと、これから穂乃果と約束がありますので……」

岡部「それが、この時間までタイムリープしてきた理由というわけだな?」

海未「……はい」

岡部「ならば行け。全てを出し切ってこい」

紅莉栖「海未ちゃんなら、きっと大丈夫よ!保証はないけど、一途な想いのために時間を超えるなんて、そうそうできるもんじゃないもの!」

橋田「今度のPVはほのうみ全開だって信じてるお!」

それは……橋田さんなりの応援なのでしょうか?

くすくす……思わず、笑みが漏れてしまいます。

海未「ありがとうございます」

こうやって、いつもとは違う応援をしていただくというのも、気持ちの良いものです。

ラボを出る直前のこと。

岡部さんから呼び止められました。

岡部「……届くといいな。太陽」

ぶっきらぼうながらも、岡部さんからの応援でしょうか。

海未「……届かなかったとしても、伝えようとした行為は誰にも咎められません」
264: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/02(火) 21:57:02.74 ID:/pyQ5f74.net
ラボのドアをくぐり、携帯を取り出します。

電話帳から検索……高坂穂乃果。

はぁ……これから穂乃果を呼び出し、ついに想いを告げます。

思い出した記憶の中の一節に、こんな言葉がありました。

――海未ちゃんのことが好きだった頃の穂乃果を、思い出させないでよ――

私は全く気が付きませんでしたが、昔……穂乃果は私に好意を抱いてくれていた時期があったようです。

しかしことり付き合うべきだと、持ち前の『思い立ったらすぐ行動!』という習性が仇となり……

穂乃果は自分の想いを封じ込めるという結果になりました。

私は……穂乃果になんと伝えればいいのでしょうか?

好きです、とかじゃダメですよね……

どうやって……

などと逡巡していると、手元の携帯が鳴動します。

相手は……

海未「穂乃果!?」

ちょっと、まだ考えがまとまっていないのに……
265: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/02(火) 22:30:16.74 ID:/pyQ5f74.net
と思うのと、私の体は全く別な反応を示しました。

海未「もっ!もしもし!?」

あああ!!声が裏返ってしまいました!

というか、なぜ出てしまったのでしょうか!?

穂乃果『……海未ちゃん、今、少しだけ大丈夫?』

いつもの調子とは少し違う穂乃果の声色に、冷静さを取り戻します。

海未「はい。ことりとの『話し合い』も終わったので、これから穂乃果に連絡しようと思っていたところです」

穂乃果『そうだったの?』

海未「ですので、ちょっと手間が省けましたね」

穂乃果『それじゃあ、約束。……どこかで会えるかな?』

来てしまいました。

逃げるわけには行かない、この時が。
266: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/02(火) 22:30:41.80 ID:/pyQ5f74.net
海未「そうですね。私から連絡すると言っていたのに、申し訳ありませんでした」

海未「待ち合わせ場所は……公園などで、いかがですか?」

穂乃果『うん、いいよ。海未ちゃんはどのくらいで着く?』

海未「ここからですと、10分少々でしょうか」

穂乃果『穂乃果は5分くらいで着くから、先に待ってるねー』

いつも通りを装っているのが丸分かりです。

いつもなら、私が10分で到着するのであれば、同じように到着するように穂乃果は行動するはずです。

できることなら、私こそはいつも通りにしたのですが……

海未「はい。私も急ぎ向かいます。それでは」

……私は普段、穂乃果とどのように接していたのでしょうか?

わからなくなってしまい、早々に電話を切り上げてしまいました。

『約束』を取り付けた公園に到着するまでの数分。

それまでに……考えが、まとまるでしょうか?
267: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/02(火) 23:15:18.19 ID:/pyQ5f74.net
……公園の茂みから中を確認します。

ベンチにポツリと座る穂乃果。

普段であれば足をプラプラさせたり、鼻歌混じりに携帯でも弄っているものですが……

じっと地面の一点を見つめています。

おそらく、その焦点は合っていないのでしょうが……

私はと言うと、考えがさっぱりまとまりませんでした。

どうしよう、何を言おう、何を話そう―――

そんなことが頭の中をぐるぐるぐるぐる。

今更になって、ことりからキスされた頬が熱くなるのを感じ、

……頑張らないと。

親友の、ことりの気持ちを裏切らないために。

想い人の、穂乃果の気持ちを確かめるために。

海未「お待たせしました……穂乃果」

穂乃果の視線が、私の方を向きます。

さて……私の気持ちに嘘をつかないために。

この手に、太陽を掴むために。

穂乃果と向き合い、『私』と言う主観において、最後の話し合いを始めます。
274: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/04(木) 22:04:28.49 ID:0WNveuTT.net
穂乃果「……海未ちゃん」

こちらを向いた穂乃果が、半ば条件反射のように私の名前を呼びます。

そのまま穂乃果のほうへ歩き、

海未「隣、座ってもいいですか?」

穂乃果「うん」

座る位置を向かって右へと直し、私が穂乃果の右側に腰掛けられる程度の距離を空けてくれます。

肘と肘がぶつかりそうな距離。

穂乃果が悪戯した際に、小突くには最適な距離。

いつの頃からか、私と穂乃果が隣同士に座るときは、こんな距離感が染み付いていました。

それは今日も例外ではなく、少し肘を張れば穂乃果にすぐ届く距離。

ほんのりと左側面に穂乃果の体温を感じます。

海未「…………」

穂乃果「…………」

……相変わらず考えはまとまりません。

それでも一言目を繰り出さなくては、言葉は紡げません。
276: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/04(木) 22:05:50.97 ID:0WNveuTT.net
意を決し、とにかく穂乃果へと話しかけます。

海未「……あの、」

穂乃果「……えっとね、」

―――言葉が重なってしまい、思わず言葉が引っ込みます。

一瞬だけ目が合い、更に話を、

海未「穂乃果から、」

穂乃果「海未ちゃんの、」

……くすっ。

まさか二度も立て続けとは思いませんでした。

二人で僅かに笑い合います。

穂乃果「……雪穂とはね?」

海未「はい」

どうやら、穂乃果のほうから話をしてくれるようです。

穂乃果「雪穂とは、『本当に気まずい時は、先に本音を言おうとしたほうが勝ち』っていう約束事があるの」

海未「早い者勝ち、というやつですか。穂乃果達姉妹らしいですね」

穂乃果と雪穂のケンカしている様が、用意に想像できます。

穂乃果「だから、今日は穂乃果の負けっ!……海未ちゃんから先に話を聞かせて?」
277: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/04(木) 22:06:29.73 ID:0WNveuTT.net
なんと……!

私がほんのわずかだけ先に言葉を発したから、私に先に話せと!

いつの間に、こんな狡猾な手法を覚えたのでしょうか……

海未「穂乃果は、いつもずるいです……」

なのに、なぜでしょうか。

心のどこかで、安心している私がいます。

穂乃果「えへへ……」

天真爛漫な笑顔をみせる穂乃果。

その笑顔は人を惹きつけ、周囲を照らす太陽のようです。

太陽の光を浴びて輝ける私は、言うならば月でしょうか。

その中間に立つことりは、さながら地球のような……

……。

ああ、そうか。

この笑顔だから、安心できるんですね。

この距離だから、安心できるんですね。

二度目の意を決し、言葉を紡ぎます。
278: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/04(木) 22:07:28.83 ID:0WNveuTT.net
海未「……あの後、ことりとはちょっとしたお話をしました」

穂乃果「……それ、どんなことだったか教えてもらってもいい?」

海未「はい。……端的に言ってしまいますと、私からことりへの相談と、……ことりから私への告白です」

穂乃果「告白……」

一瞬、穂乃果の顔が蒼白になります……

穂乃果「海未ちゃんは、なんて応えたの? あと、相談の内容って……」

海未「相談が本題ですから、今言ってしまっては面白くありませんよ?」

海未「告白については……」

チラリと左を見ると、スカートの裾を忙しなくいじっています。

……無駄に溜めても仕方ありませんね。

海未「私には、どうしようもなく好きな人がいます」

海未「その人のことを想うと、どうしようもなく身が焦がれるような……」

海未「恋焦がれる、とはこのことでしょうか」

海未「ともかく、私には想い人がいるので、ことりの想いには添えられないと……」

『その人』を目の前にして、よくもまぁいけしゃあしゃあと言葉が出るものだと、自ら感心してしまいます。

海未「なので―――――お断りしました」
279: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/04(木) 22:08:07.89 ID:0WNveuTT.net
ギュッ。

スカートに皺が残る程強く掴んだ穂乃果の手に、柔らかく私の左手を添えました。

女の子がそんなに力んでしまっては、手に皺ができてしまいますよ?

海未「だからことりとは付き合えませんが……今後も親友でいてくださいと、お願いしました」

頬に残る、ことりの感触。

この感触は友好の証だと、そうことりは言っていました。

その頬を押さえ、

海未「さて、本題に入りましょうか。……私の相談です」

いきなり告白するわけには行きません。

そんなことしてしまっては、私の心臓が止まってしまいます。

すぅ、ふー、と。

軽く目を閉じて、浅く長い呼吸。

どこでも簡単にできる、精神統一の方法の一つ。

―――――ここからが正念場。

どのようにして話をしていきましょうか。
280: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/04(木) 22:08:40.51 ID:0WNveuTT.net
海未「先程も申し上げた通り、私には想い人がいます」

海未「その人は、ことりもよく知る人です」

海未「なので、私が告白した時……上手くいくかどうか、ことりの意見を聞きたかったのです」

海未「ことりからは、絶対に大丈夫だと太鼓判を押されました」

ことりとの会話を思い出し……

自嘲気味に笑いが……いえ、笑えてきます。

自分の愚昧さと、不甲斐なさと、心無さに。

海未「そこで、穂乃果にも聞いてみたかったのです……私の告白が上手くいくか、どうか」

スカートの裾を強く握ったまま俯いてた穂乃果の顔が、少しだけ上がりました。

穂乃果「……相手は、誰?」

……そりゃ気になりますよね。やっぱり。

海未「……名前は伏せておきますが、一言で言えば天真爛漫、悩みなんてなさそうな能天気……」

言ってから気がつきました。

ここまで穂乃果の事を言ってしまっては、実質的な告白ではないか?と。

ですが……
281: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/04(木) 22:09:37.51 ID:0WNveuTT.net
海未「昔からの幼馴染で、ほとんどいつも一緒にいました」

海未「……というよりも、その子のわがままに振り回され、思いつきの行動に踊らされ、突拍子のない言動に突っ込みを入れる役割でした」

海未「思い返してみれば、私とその子の性格は正反対ですね」

海未「思いつきで行動するその子と、思慮深く重箱の隅を啄いて石橋を叩いて渡る私」

海未「明るく誰にでも笑いかけることのできるその子と、仲良くなった方としかあまり話せない私」

海未「本当、真逆だというのに……」

言葉が、思い出が止まりません。

困り顔で話をしていると、くすくす、と穂乃果が笑い声を上げました。

穂乃果「その人の事、本当に好きなの?」

海未「ええ、とても好きですよ」

海未「小学校の時には、妹とケンカしたなどと言っては私の家まで家出してきたり、」

海未「中学校を卒業する時、『思い出を残そう!』と言って教室の黒板の隅っこに、一緒に名前を掘ったり、」

海未「最近では、私が男だということを忘れていたのか、スクールアイドルに誘ったり……」

海未「―――――本当。振り回されてばかりでした」

もうこれ以上、言葉を尽くす必要はありません。

重ねていた左手を、少しだけ強く握ります。
282: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/04(木) 22:10:28.44 ID:0WNveuTT.net
海未「私は、穂乃果が好きです。」







一息。







海未「ですので、是非とも私とは付き合わないでください。」
287: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/04(木) 23:08:28.12 ID:0WNveuTT.net
……ああ。

言ってしまいました。

私の混沌としたこの心境を。

私は穂乃果のことが好きです。

きっと物心着く前から、好きでした。

ですが、付き合えません。

自分のことながら、ひどく矛盾しているように思えますが……

私は今の三人の距離を壊したくありません。

ことり、穂乃果、そして私。

この関係を、三人の距離を崩してまで穂乃果と付き合いたいかと言われると……

正直に答えると、否定です。

ことりが言った言葉、『友情と愛情の天秤』。

私も秤にかけた、愛情と友情。

その結果、私の天秤は……見事に釣り合っていました。

寸分の違いもなく水平。

これが、穂乃果と付き合えない理由です。
288: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/04(木) 23:09:16.37 ID:0WNveuTT.net
穂乃果「―――――え?」

驚くのも無理はありません。

かなり無茶な、どう反応していいのかよくわからない話をしているのですから。

穂乃果「海未ちゃんが好きな相手って―――――穂乃果だったの!?」

海未「そこですかっ!?」

鈍感とかいうレベルではありません!

自分に無頓着です!!

穂乃果「たはは、冗談だよ」

穂乃果「……でもまさか、海未ちゃんが私と同じだったなんて、少し意外だったなー」

海未「……え?」

同じって、何が同じなのでしょう……?

重ねていた左手の指を、穂乃果の右手が絡め取ります。

私の視線の意味を汲み取ってくれたのか、視線を上に向け、話を聞かせてくれます。
289: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/04(木) 23:09:55.72 ID:0WNveuTT.net
―――――

私もね、海未ちゃんが好き。大好き。だけど付き合いたくない。

ことりちゃんのことも好き。女の子同士だけど、それでも男の子の海未ちゃんと同じくらいに好き。だけど付き合いたくない。

だって、どっちかを選ぶ権利なんてないし、選んでもらったとしても……

……残っちゃったもう一人と仲良しに戻れなかったら、辛いもん。

それだったら、いっそどっちとも付き合わない。

どっちかから告白されたら、きっちり断ろう。

でもそれじゃ、誰もが辛い想いをするんだよね。

だったらさ、海未ちゃんとことりちゃんが付き合ってくれればいいんだよ。

穂乃果の大好きな二人が付き合ってくれれば、穂乃果も嬉しい!二人も幸せ!!

こんなにも簡単な回答にたどり着くのに、何年もかかっちゃったよ。

だって穂乃果、馬鹿だから……

この回答にたどり着いてから、穂乃果の切り替えは早かったと思うよ。

海未ちゃんとことりちゃんを二人きりにしたり、ことりちゃんが海未ちゃんに気があるようなことを吹き込んだり……

それで今日の放課後ね、ことりちゃんと海未ちゃんが二人きりになれるチャンス到来!と思ったんだけど。
290: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/04(木) 23:10:40.37 ID:0WNveuTT.net
……本当に海未ちゃんがことりちゃんと付き合っちゃったら。

ことりちゃんが海未ちゃんと付き合っちゃったら。

…………。

どうして?

穂乃果、決めたんだよ?二人を応援しよう、くっついてもらおう!って。

なのに、本当にそうなりそうになったら、怖くて、嫌で、居てもたってもいられなくて……

ことりちゃんを追いかけて欲しいのに。

海未ちゃんに追いついて欲しいのに。

……海未ちゃんを引き止めちゃった。

自分でも、なんでそんなことしたのかわからないの。

どうなって欲しいのか、どうしたいのかわからない……

今じゃ自分の気持ちも……なにもっ、わからないよぉ……

―――――助けて、海未ちゃん……
291: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/04(木) 23:11:31.27 ID:0WNveuTT.net
海未「大丈夫です、穂乃果」

握った左手を軸に、穂乃果の正面へと回り込み、優しく抱きしめます。

……穂乃果がベンチに座ったままなので、結構大変な姿勢ですが。

私の頼りない胸板に押し付けた穂乃果の顔はきっと、人様には見せられないほど泣き崩れている。

小刻みに震える肩と押し殺しきれていない嗚咽が、それを物語っています。

海未「穂乃果の気持ちの答えは、きっと私と同じです」

好きだけど、付き合えない。

この考えに至る過程が同じであれば、ここから至る結論も同じです。

海未「その気持ちの答えは、三人の距離を壊したくない……です」

私とことりがもし付き合ったら。

きっと穂乃果は私たちに遠慮してしまい、二人きりにしようとしてくれます。

そうすると、今まで通り三人でいる時間が短くなり……

その時の穂乃果の気持ちを思うと、決して嬉しいなどとは思えません。

穂乃果にしてはよく考えたほうだとは思いますが、僅かながら浅はかでしたね……

繋がれた左手の力が強くなります。

海未「……穂乃果の気持ち、この回答で納得できましたか?」
292: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/04(木) 23:11:59.14 ID:0WNveuTT.net
穂乃果「……っくぅ、うん……」

強く。

海未「私達三人なら、これからもずっと一緒です」

まだ強く。

穂乃果「……うん!!」

更に強く。

海未「全く……泣き虫は随分昔に卒業したと思いましたが、まだ残っているのですか?」

もっと強く。

穂乃果「……うっ、ん……!!!」

強く強く、右手を握り締めます。

海未「……大好きですよ、穂乃果……」

痛いほど握られていた右手が解放されたかと思うと、

穂乃果「……っ、うわぁぁぁぁぁぁぁあああああ……!!!!」

今度は、痛いほどに抱きしめられました。

頭を撫で、大丈夫ですよと、何度も囁く。

穂乃果が落ち着くまで、何度も、何度も、繰り返し……
293: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/04(木) 23:12:27.53 ID:0WNveuTT.net
―――――

……どのくらい時間が経ったのでしょうか。

鳴き声も嗚咽もなくなり、ただ抱きしめ合っているだけになっていると思います。

そう思うと、途端に恥ずかしくなって……

海未「あの、穂乃果、そろそろ……」

穂乃果「あ、うん。ごめんね……大声で泣いちゃって……」

ゆっくりと離れていく、穂乃果の体。

……途端に、肌寒さが増したような気がします。

ふと自分の胸元を見てみると、

海未「うわぁっ!?」

鼻水やら涙やら以外にも、穂乃果のお化粧ですか!?

ワイシャツが酷いことになっています……

穂乃果「わーっ!ごめんね海未ちゃん、ここまでするつもりはなかったんだけど……」

海未「あ、当たり前ですっ!」

穂乃果「はいっ、ハンカチ!」

海未「ありがとうございます、ってお化粧が伸びましたー!?」
294: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/04(木) 23:13:11.06 ID:0WNveuTT.net
穂乃果「そりゃそうだよ、こうやってポンポンってやらないとチークは落ちないんだから……」

そういって私のワイシャツを丁寧に叩いてくれますが……

海未「……あの、穂乃果?」

穂乃果「ん?なーに?」

海未「……ご自宅に帰る前に、一度鏡を見ることをおすすめします」

穂乃果「……あー、やっぱり……すごいことになってる?」

海未「いやぁ、なんといいますか……」

とても言葉では形容し難いお化粧になっています。

穂乃果「まぁ、バレないようにこっそりと帰るよ」

穂乃果「……あのね、海未ちゃん?」

海未「はい、なんですか?」

穂乃果「……ありがとう。なんか、いろいろと」

くす、と微笑みが漏れてしまいます。

海未「いろいろって……それじゃ、あまりわかりませんよ」

穂乃果「いろいろは、いろいろだよ」

穂乃果「穂乃果の気持ちを教えてくれて、幼馴染でいてくれて、穂乃果を好きになってくれて……」

穂乃果「うん、やっぱり、いろいろとありがとう!」
295: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/04(木) 23:13:46.94 ID:0WNveuTT.net
海未「はい、どういたしまして。……私からも、ありがとうございます」

穂乃果「ん?どうして海未ちゃんが?」

海未「いろいろ、ですよ。……私と同じ気持ちでいてくれて、幼馴染でいてくれて、私を好きになってくれて……」

海未「くすくす……いろいろ、ありがとうございます」

穂乃果「うん!どういたしまして!」

そう言って、満面の笑みを見せてくれる穂乃果。

ああ、やっぱり私は穂乃果が好きで、でもやっぱり付き合えなくて。

ことりも交えた三人が、一番好きで。

……これで、私の目的は全て達成できました。

海未「……さて、穂乃果。夜も更けてきましたし、そろそろ帰りましょうか」

穂乃果「あ、待って!」

はい、なんですか、と振り返ると、眼前には穂乃果の顔が。

―――――唇と唇が触れ合う、いわゆるフレンチ・キス。

一瞬だけの感触。

穂乃果「……えへへ、初めてのちゅーが、海未ちゃんでよかった……」

その表情は今まで見た穂乃果の表情のどの顔よりも、とても綺麗で。

穂乃果「それじゃ、まったね~!」

……あまりに衝撃的な出来事に、頭の中が真っ白になりました。
308: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/09(火) 20:55:02.88 ID:wmhZN+3d.net
―――――Steins;Gate Side

遅い。

遅すぎる。

壁に掛かっている時計を見ると、時刻は22時になる直前。

さっき見たときから、3分しか経っていなかった。

岡部「告白するだけだというのに、どれだけ時間がかかっているんだっ!!」

紅莉栖「そりゃ告白だもん、失敗しない限り、結構時間かかるもんでしょ」

岡部「偉そうに言うな、告白したこともされたこともないメリケン処女め」

紅莉栖「なっ……こ、告白くらいあるわよ!!」

橋田「された方?した方?」

紅莉栖「もちろん、される側に決まってるじゃないの!」

岡部「それで、フったわけだ」

紅莉栖「ま、まぁね」

橋田「ひょー!牧瀬氏マジクール!」
309: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/09(火) 21:14:02.73 ID:wmhZN+3d.net
紅莉栖「だって、私に釣り合わないようなヤツだったし?」

岡部「相手の年齢は?」

紅莉栖「と、当時の私の二つ上よ!」

当時の二つ上も今の二つ上も変わらんだろう……などというツッコミは野暮だろうか。

……これ以上追求してしまうと、なんだか助手がかわいそうなヤツに思えてくるのでやめといた。

岡部「……遅いな、海未は……」

便りがないのは、それはそれで良い知らせなのだろうが。

しかし今は、海未の持ってくる予定の、昔のポケベルの番号待ちなのだ。

場所がわからなくなったとき等の万が一に備えて、俺の連絡先を教えようとしたところ、

橋田「紳士協定違反ダメ!絶対!!」

とダルに妨害されてしまったため、こうやって連絡をとることができずにモヤモヤしている有様である。

橋田「はぁ……このラボにまた天使が舞い降りるということを考えただけで……あああああ!!胸と股間が熱くなるお!!」

岡部「下ネタだけはやめとけよ、ダル」
310: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/09(火) 21:27:29.05 ID:wmhZN+3d.net
紅莉栖「でも、本当に遅いわね……こんな時はMスタのPVでも見て待ってるべきかしら」

橋田「禿同。でも、どうせならぼらららから見るべきじゃね?」

紅莉栖「それもいいわね。ところで、まきちゃんは初期の頃からビジュアルはほとんど変わってないのね」

橋田「他のメンバーは結構イメチェンっつーか、雰囲気変わったよなー」

紅莉栖「かよちんとか、ぼらららの頃から比べると随分と垢抜けたわよね」

橋田「のぞみんの髪が女神クラスまで伸びた点にも注目すべきだお」

紅莉栖「エリチカのポニテが伸びたところと関係してるって説があったら、私はのぞえり推しになるわ!」

橋田「まぁ、箱推しの僕には関係ないことだお」

……。

こいつらは、本当に緊張感ないな……

これから世界線を変えるというのに。

頼むから早くきてくれ、海未……。
311: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/09(火) 21:36:09.38 ID:wmhZN+3d.net
コンコン、と控えめなノックの音がラボに響く。

来たか?

海未「あの……遅くなりました」

岡部「ああ、お前か。待ちくたびれt」

橋田「天使降臨キタコレェェェェェェェ!!」

紅莉栖「あ、海未ちゃんいらっしゃい!」

岡部「とりあえずお前ら二人は黙っててくれ……話をこれ以上ややこしくしたくないんだ」

海未「すみません、お待たせしてしまいましたか」

岡部「ああ、待ちくたびれたが……首尾はどうだった?」

この世界線を、時間軸をやり直した目的……穂乃果への告白。

果たして上手くいったのだろうか……

海未「はい。上手くいきましたよ。……穂乃果も、私と同じ気持ちを抱いてくれていたようです」

岡部「そうか。ということは……」
312: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/09(火) 21:56:30.00 ID:wmhZN+3d.net
橋田「やっぱほのうみが大正義なんですね!?」

紅莉栖「おい、箱推しはどうした」

海未「いえ、その……お付き合いとか、そう言ったことにはなりませんでした」

橋田「……」

紅莉栖「……」

だるくり「は?」

岡部「……ふむ?」

同じ気持ち、と言っていたが、付き合わない?

両想いだというのにか?

……しかしこれは、

岡部「助手、ダル。これは、『彼女ら』の問題だ。……あまり突っ込んだことを聞いてはならん」

海未「岡部さん……感謝します。この気持ちを説明するには、少し時間がかかってしまいそうだったので」

岡部「過程はどうあれ、結果として首尾は上々だったわけだ。その過程に突っ込むのは野暮だろう」
313: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/09(火) 22:02:30.29 ID:wmhZN+3d.net
海未「それで、例の番号ですが……」

岡部「ああ、そうだったな」

我ながら白々しい、とは思わない。

事実、先ほどの衝撃発言で、少々驚いていたのだ。

海未「……この番号です」

……どことなく見覚えのある番号。

それもそのはず、一度は自分で入力した番号だ。

岡部「……すまない。恩に着る」

海未「いえ、約束でしたから」

岡部「それでは……Dメールを送るが、問題ないな?」

橋田「大丈夫だ、問題ないっ」キリッ

……。

バカは放っておくとして。

今回のDメールを送るとどうなるか、再度海未に教えておく必要がある。
314: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/09(火) 22:12:43.04 ID:wmhZN+3d.net
岡部「この番号に、『*2*281311223134524040322512502137493』……やさいくうとげんきなこをうめる、とメールを打つ」

岡部「おそらくだが、このメールで、海未。お前の母親は……女の子を出産することになる」

岡部「つまり、お前は別な世界線では、女の子としてこの世に生を受ける」

岡部「この意味がわかるな?」

海未「私が女の子として産まれる以上、同性である穂乃果への想いを遂げることはできない……そういうことでしたね」

岡部「その通りだ」

岡部「何度でも言うが、『想いは世界線を超える』。これが真実である以上、別世界線のお前は同性であるジレンマに苦しむことになるだろう」

海未「いえ、それはありません」

岡部「……と、言うと?」

海未「想いが世界線を超えるのであれば、私の今の気持ちが、そのまま別世界線の私と同じ気持ちになるはずです」

海未「であれば、そのジレンマは解消しています」

……どういうことかはわからないが、どうやらこの世界線で、この時間軸で。

海未のジレンマを解消するための答えが出たようだ。

岡部「……お前の心の中はきっと、俺が想像しているよりも深いものだろうな」
316: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/09(火) 22:36:17.98 ID:wmhZN+3d.net
岡部「それならば、これ以上の説明は無意味だろうな」

海未「はい。……始めましょうか」

助手とダルに目を配り、準備に取り掛かってもらう。

岡部「すまんが二人共、準備を頼む」

ダル「アイアイサー!」

紅莉栖「だから助手って……はぁ」

なんだかんだ文句をたれたとしても、結局は働いてくれる。

我がラボにはなくてはならない二人だ。

岡部「……さて、海未よ。支障なければ、教えてはもらえないか?ジレンマを解消した答えを」

海未「過程に突っ込むのは野暮ではないのですか?」

岡部「……支障あり、ということか」

尤も、無理やり聞き出したかったわけではなかった。

海未「全部は流石に言えませんが、端的に言ってしまいますと……」

海未「私が計る天秤は、どちらにも傾かずに水平でした、ってことです」
317: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/09(火) 22:48:05.44 ID:wmhZN+3d.net
……なんだそれは。

岡部「……ふっ、なるほどな……」

理解したフリをすることしかできなかった。

岡部「お前を取り巻く環境に、撓まず屈しないその様は、まさに傾かざる天秤ということか」

海未「……?はぁ。そんな感じ……でしょうか?」

反応から察するに、当たらずも遠からず、といった感じなのだろうか?

大分適当に言ったのだが……

しかし図らずも、Dメールを送信するときの言葉が思い浮かんだのでよしとしておこう。

橋田「オカリン、Dメールの準備おっけーだお!」

紅莉栖「タイマーのセットもばっちりよ」

岡部「ご苦労であった」

立ち上がり、くるりと海未を振り返る。

岡部「準備は出来た」

岡部「……送信ボタンは、お前が押すべきだ」

海未「―――――はい」
320: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/09(火) 23:22:04.33 ID:wmhZN+3d.net
すぅ、と息を吸い込む。

岡部「時は満ちた!」

岡部「不意の事故により、歪んだ世界線を戻すための儀式……」

岡部「歴史改変を始める!!」

助手へと目配せし、電話レンジ(仮)の電源を入れる。

程なくして始まる、放電現象。

岡部「海未よ。世界改変後はきっと会うことはないだろう」

岡部「どんな困難な状況であっても、決して折れることなくお前はお前の愛を貫いた」

岡部「この世界線で築いた事実は、俺が観測した」

岡部「……不撓不屈の精神を、な」

紅莉栖「……岡部、海未ちゃん!急いで!」

岡部「園田海未!お前の手で!この世界を変えろ―――――!!」

海未「……ありがとうございます、岡部さん、紅莉栖さん、橋田さん!」

送信ボタンに添えられていた親指がゆっくりと沈み……

岡部「……っぐ!!」

さあ、行ってこい、海未の想い。

世界線が変わっても、きっとその想いは超えられるはずだ!!

――――――視界が暗転し、世界改変の波に飲まれる……
321: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/09(火) 23:32:07.37 ID:wmhZN+3d.net
―――――世界線変動率0.456914%

ラブライブ!Side


妙な夢を見ました。

というか、本当に夢でしょうか。

確かめる術はありませんが……

私が男で、穂乃果に恋していて、ことりに告白されて……

希あたりに夢占いなどを頼んだら、きっと愉快な回答が返ってきそうな夢でした。

海未「……はぁ」

布団から這い出て、寝癖を軽く整えます。

鏡の前に立ち、

海未(……私、ちゃんと女の子ですよね?)

夢と現実が区別できないなど、お恥ずかしい話ですが……

確認します。

その、いろいろと。
322: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/09(火) 23:42:19.32 ID:wmhZN+3d.net
確認し終わり、朝の鍛錬のための身支度を始めます。

ふと視線を下に……慎ましい胸元におろし。

海未(もっと膨らんでいれば、あんな夢もみなくなるでしょうか……?)

希ほどとは言いませんが、せめてことりや花陽くらいのサイズがあれば……

はぁ。所詮はつまらない思考です。


―――――


鍛錬後に射場に一礼し、今度はμ'sの朝練のための身支度をします。

海未母「海未さん、おはようございます」

海未「おはようございます、お母様」

海未母「朝食ができています。召し上がっていきますか?」

海未「もちろん、頂いていきます」
323: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/09(火) 23:48:37.49 ID:wmhZN+3d.net
海未母「そういえば……昨晩、懐かしいものが出てきましてね」

海未「?なんでしょう?」

食事中に母がお喋りとは、この家では珍しいことです。

昔から、食事の時にはテレビを付けるなど以ての外、必要最低限程度の話しかしませんでした。

それだけ厳しかった母が、わざわざ食事中に……?

海未母「これなんですけど、海未さんはご存知ないですよね?」

母から渡されたそれは、古めかしい横長の……

海未「ポケベル、ですか?」

海未母「あら、ご存知でした?」

海未「いえ、実物を見るのはきっと初めてです」

それに、表面も大きく「POCKET BELL」と記載されていますし……

海未「確かに、珍しいものが出てきましたね」

海未母「それにはですね、海未さんがまだ私のお腹の中にいた頃……不思議なメッセージが届いたのですよ」

海未母「二日連続で、2通もきましたね」
324: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/09(火) 23:54:56.71 ID:wmhZN+3d.net
海未「不思議なメッセージ……ですか?」

海未母「はい。一通目は肉肉、などと書いてありました」

海未母「ちょうど夕食の献立に迷っていた時だったので、迷わず焼肉にしたことを覚えています」

焼肉という単語と、目の前に広がる純和食。

……ああ、今晩は焼肉が食べたくなりました。

海未母「二通目が来たのは、ちょうど24時間後くらいでしたか」

海未母「今度は野菜を食べると元気な子を産める、と言った内容でした」

海未母「くすくす……送り主は誰だったか分からずじまいでした」

海未母「メッセージを返信しても、宛先不明で返ってくるんですもの」

海未「あの、それだけ聞くと少し不気味な気がしますが……」

送り主不明、返信しても宛先不明って、ちょっとしたホラーですよね……
325: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/10(水) 00:04:36.91 ID:462ijM7k.net
海未母「あの当時は、今ほどメールによる詐欺や悪戯は少なかったのですよ」

海未母「だから、少し面白くなりまして……そのことは、なぜだか今でも覚えているのです」

海未「お母様、今のご時世でそんな怪しいメールが来たら、返信なさらないでください」

怪しさ爆発のメールに『どちら様ですか?』とメールを打つ母の姿が想像でき、今のうちに釘を刺しておきます。

海未母「今そんなメールがきたら、面白おかしく海未さんに報告しますよ」

そう言って微笑む母を諌める手段を、どうやら私は持っていないみたいです。

海未「御馳走様でした。……変なメールが来たら、開封する前に削除することをおすすめしますよ、お母様」

海未母「お粗末様でした。そしたら、海未さんが帰宅するまで待っておきます」

海未「あまり迂闊なことはなさらないでくださいね?……いってきます」

再三に渡り釘を刺しておきますが、携帯電話の扱いには若干疎い母のことです。

今晩にでも母の携帯に、迷惑メールのフィルタ設定でもしておいたほうが良さそうです。


家の玄関を出て、すぐに声をかけられました。

穂乃果「おっはよー、海未ちゃん!」

……私よりも早く穂乃果がいるなんて。

海未「おはようございます、穂乃果。ちょっと傘をとってきますね」
326: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/10(水) 00:13:11.56 ID:462ijM7k.net
穂乃果「ちょっと海未ちゃん!それひどくない!?」

海未「だって、穂乃果が私よりも早くに用意できているなんて、きっと雨か雪が降るに違いありません」

ことり「槍でも降るんじゃないかな」

そう言ってクスクスと微笑むことり。

……ことりも、なんだってこんなにも早いのでしょうか?

海未「おはようございます。ことりも早いですね」

ことり「おはよう、海未ちゃん。なんか早起きしちゃってね~」

穂乃果「穂乃果だって、たまには早起きできるもん!」

海未「それなら、1週間に5回は早起きしてください。そしたら、傘の心配もありませんから」

穂乃果「それって平日毎日じゃん!?」

ことり「あはは、穂乃果ちゃんにそれは無理じゃないかなぁ」

海未「ほら、ことりもこう言っていますし」

穂乃果「うわぁ!ことりちゃんも敵に回った!?」

ことり「もちろん!ことりは、いつだって海未ちゃんの味方だもん」
327: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/10(水) 00:20:13.62 ID:462ijM7k.net
海未「穂乃果もこっち側に来れば、ことりに味方してもらえますよ?」

穂乃果「うぅ~!海未ちゃんの意地悪っ!」

海未「まぁ、こんな話をしていては、朝練の時間が短くなりますよ?」

ことり「そうだね、行こっか!」

穂乃果「うー、なんか釈然としない……」

朝練のために学校へ向かっている最中のこと。

前方から、白衣に両手を突っ込み、髪の毛ボサボサの……

人を外見で判断してはいけないとは思いますが、いわゆる「不審者」然とした方が歩いてきました。

普段であれば別に何も気にしないはずですが……

あったことがあるような、ないような……?

そんなことを考えながら、すれ違いざまに。

??「……ヴァーレ・リーベ」

ポツリ、と。

……。

ええと、私に話しかけたような感じではなかったので、独り言でしょうか?
328: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/10(水) 00:25:06.52 ID:462ijM7k.net
しかし聞き覚えのある単語……どこで聞いたのでしょうか。

ことり「あ、凛ちゃん、花陽ちゃーん!」

その思考は、凛と花陽を呼ぶことりの声でかき消されました。

そろそろ学校も近くなってきましたね。

さて、今日の朝練のメニューは、と考えてると。

穂乃果「うーみちゃん?」

海未「はっ、ひゃい!?」

突然声をかけられました。

それも、非常に顔が近く……

唇に思い出す、初めての感覚。

……知らないはずなのに、知っている感覚。

一種の既視感、でしょうか?

穂乃果「どうしたの?なんかさっきからぼーっとしちゃってるけど」

海未「い、いえ。朝練のメニューを考えていまして」
329: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/10(水) 00:31:40.23 ID:462ijM7k.net
穂乃果「いつも通りでいいんじゃないなー?」

小首をかしげますが、一応突っ込みを入れておきます。

海未「……一応、毎日違うメニューでやっているんですが」

穂乃果「あ、あれ?そうだっけ?」

あはは……と誤魔化すように笑いますが、今回は見逃してあげましょう。

穂乃果「それよりも、急がないとことりちゃんに置いていかれちゃうよ!急ごっ!」

手を掴まれ、ぐいぐいと引っ張られます。

こういったことは、よくあります。

ですが、今日に限っては変に既視感に襲われてしまいます。

このように手を引かれる光景も、既視感として現れています。

詳細には……今朝の夢の続きのようなので、あまり言いたくはありませんが。

しかし私の意思とは無関係に、不意に私の口から、こぼれてしまいます。

海未「……好きですよ、穂乃果」

言ってから口を抑えるも、振り返る穂乃果のびっくりした顔が、既に聞かれてしまったことを雄弁に物語っています。
330: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/10(水) 00:43:06.29 ID:462ijM7k.net
穂乃果の表情が、驚きから笑顔に変わり。

穂乃果「……うん、穂乃果も海未ちゃんのこと、大好きだよっ!」

その答えを聞いて、少し寂しい気持ちになります。

きっと私の「好き」と、穂乃果の「好き」は、違うもの。

ですが、私は穂乃果とも、ことりともそう言った関係になることを望んでいません。

いつの頃から、私が勝手に立てた誓い。

だって、この三人の距離を壊したくはありませんから。

引かれる手を握り返し、心の中で穂乃果と、少し離れたことりに語りかけます。

……ずっとずっと、三人一緒ですよ?




海未「不撓不屈のヴァーレ・リーベ」 終わり
332: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/10(水) 00:49:11.29 ID:462ijM7k.net
ダラダラと長々書き続けてすみませんでした。遅筆直したい。
最後まで読んでくれた方に、感謝と御礼を。

また、ここがわかりづらい!とか、ここをもっと詳しく!とか。
感想でも指摘でもしてもらえると、今後SS書くのに役立てると思うので、なんでも言ってくれると助かります。

シュタゲサイドでちょっとだけ後日談的なの書こうかなーって思ってます。
思ってるだけで書くかは……うん。

余談ですが、僕はまきちゃん推しで今のイベントも現時点で8万ptちょっと行ってます。
3枚頑張ります。
338: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/12(金) 22:03:51.39 ID:GwHCnboO.net
―――――Steins;Gate Side

『曖昧模糊のエビフライ・エフェクト』


紅莉栖「……」シャンシャン イミワカンナイ!

橋田「……」シャンシャン

岡部「……」

紅莉栖「……」シャンシャン

橋田「……」シャンシャン ダレカタスケテー

岡部「……」

岡部「なぁ、お前ら。それ、楽しいのか?」

紅莉栖「……」シャンシャン

橋田「やればわかるお」シャンシャン マイチレッ

紅莉栖「ふー、1582コンボー!」

橋田「お、牧瀬氏やるじゃん!」

紅莉栖「橋田は?」

橋田「1617コンボ」
339: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/12(金) 22:09:51.62 ID:GwHCnboO.net
紅莉栖「はぁ!?それって、今回のイベントで最大コンボじゃない!」

橋田「まぁ、判定積んでパフェサつければヨユーっしょ」

紅莉栖「……ていうか、まだ孤独モノズユメトビっていう3連続に当たってないんだけど」

橋田「ピュアばっかりで僕の頭の仲がぴゅあぴゅあになっちゃうお」

紅莉栖「私はスマイルばっかりね……それ僕CPMスタと来た暁には、コンボCも諦めるわね」

橋田「ロンリネスこなさすぎてマジベイベー」

紅莉栖「ところで、今のイベptいくつくらい?」

橋田「んと、106,638ptだお」

紅莉栖「……3枚狙ってるわね」

橋田「2枚で良かったんだけど、イベ楽しすぎてついつい走り過ぎちゃってるお……」

橋田「そういう牧瀬氏は?」

紅莉栖「……聞いても引かない?」

橋田「時と場合に寄るんじゃね?」
340: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/12(金) 22:13:38.31 ID:GwHCnboO.net
紅莉栖「……ええっとね」

橋田「はよ!はよ!」

紅莉栖「……20万とちょっと」

橋田「……」ドンビキー

紅莉栖「だから!引くなと言ってるでしょ!」

橋田「まぁ、牧瀬氏は患者だしな、しょうがないお」

紅莉栖「だから患者じゃないって何度も言ってるのに!」

橋田「まきちゃん?」

紅莉栖「まきちゃん!」

紅莉栖「……ハッ!」

橋田「はい、お薬増やしておきますねー」

紅莉栖「い、今のは卑怯よ!反則よ!」

橋田「今度カウンセリングも受けましょうねー」

紅莉栖「だから!そんなんじゃないって!!」
341: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/12(金) 22:20:25.82 ID:GwHCnboO.net
橋田「それよりまきちゃん、じゃなかった牧瀬氏」

紅莉栖「アンタのほうが余程患者化してるじゃない」

橋田「ネタをネタと(ry ってVIPで言われる質じゃね?」

紅莉栖「もう!それはいいから!……なんなのよ!」

橋田「いやね、きっと牧瀬氏は今のままで放置してても3枚いけるだろうけどさ」

橋田「今回の3枚ボーダーってどのくらいかなーって聞きたくて」

紅莉栖「そうねぇ、今の推移から行ったら12万~13万ってところでしょうけど、最終日の追い上げがわからないから……15万?」

橋田「流石にそれはオーバーランじゃね?」

紅莉栖「そう言ってタカ括ってるヤツらが皆、カラっと揚がるのよ」

橋田「エビフライにはなりたくないお!!」

紅莉栖「ボーダー予想、ボーダーの予定、○○ptはオーバーラン……」

紅莉栖「そう思う現象こそ、『エビフライ・エフェクト』なのよ」

橋田「オカリンの厨二が移ってね?」
342: 名無しで叶える物語(WiMAX)@\(^o^)/ 2014/12/12(金) 22:22:29.71 ID:GwHCnboO.net
酔った勢いで何書いてるんだろ、俺
明日とかにでも、ちゃんとした後日談書きます
お目汚しごめんね
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『【SS】海未「不撓不屈のヴァーレ・リーベ」』へのコメント

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