ことり「悪魔の囁き」

シェアする

ことり-アイキャッチ18
1: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(たこやき)@\(^o^)/ 2015/10/19(月) 07:27:56.68 ID:nvjKyldQ.net
ラブライブ!よりことほの短編です。
ラブライブ!SSは初めてなので至らぬ部分あるかもしれませんが、どうか生温かく見守ってください

※地の文あり、ことり視点です
※書き終わっていますので、まとめて投下します

以上、よろしければそのままお進みください

元スレ: ことり「悪魔の囁き」

スポンサーリンク
3: 1(たこやき)@\(^o^)/ 2015/10/19(月) 07:30:26.69 ID:nvjKyldQ.net
 友達と初めてキスしたいと思った。

 それも、小さな頃から一緒に育ってきた、同性の幼なじみに。いつもの屋上、練習の後。拭いきれてない汗が蓮の葉に滴る甘露のように、ぽたり、ぽたりと、夕陽の逆光線の向こうでたたえる笑顔を伝って一筋溢れた。

「どうしたの? ことりちゃん」

 そう言って穂乃果ちゃんは眩しさの向こう側から私に問いかける。くしゃみが出そうなくらいの眩しさに、思わず目が眩んで。それは夕陽の逆光線のせいだったのか、それとも穂乃果ちゃんの笑顔にくらっときたからなのか、私にもよくわからない――ただ、思った。

どろりどろどろ、心の中で蠢いた。

「私、穂乃果ちゃんと、キスしたい」
4: 1(たこやき)@\(^o^)/ 2015/10/19(月) 07:31:59.32 ID:nvjKyldQ.net
 μ’sは9人の女神の事を言う。

 最初は照れくさかったこの名前も、次第にいろんな人の声で呼ばれたり、叫んだりしてもらえるようになるうちに、女神とは言わないけれど、μ’sは私たちなんだ、そう思えるようになった。

 もちろん、その9人の中に私、南ことりもいる。

 たった今も、毎日の屋上での練習が終わって。みんながめいめい、散り散りに散らばりながら、完全下校のチャイムが鳴るまでおしゃべりをしていた。
 絵里ちゃんや海未ちゃん、それに真姫ちゃんは練習スケジュール、内容、今日のまとめに雑談を交えて。
 にこちゃんに凛ちゃんかよちゃん、そして希ちゃんは、今日の晩ご飯と、美味しいご飯の炊き方と、近頃出回り始めた新米について。
 そして私は――隣で汗を拭いている穂乃果ちゃんの言葉に、曖昧な笑顔で相槌を打っていた。

 どろりどろどろ。心の中で、悪魔が蠢く、逢魔が時。

「私、穂乃果ちゃんと、キスしたい」
5: 1(たこやき)@\(^o^)/ 2015/10/19(月) 07:34:24.09 ID:nvjKyldQ.net
 帰り道はふたりだった。

 海未ちゃんは真姫ちゃんや絵里ちゃんとずいぶん盛り上がっていたらしく、珍しく晩ご飯を食べに行くと言って別れた。
 隣の穂乃果ちゃんと言えば、今日あった事、昨日読んだ漫画、海未ちゃんのこと、それから私のこと。
全く、全然、いつも通りの帰り道。ただ、屋上にいた時よりも水平線に近づいた夕陽を背に浴びて、長く伸びた影は、私たちの真似をして寄り添うように揺れる。

 もしも光のさす方が、もう少しだけ私の左肩の方へ近かったら……きっと私の影が穂乃果ちゃんを飲み込んでしまっていただろう――そんな、どうでもいい事を話の合間に思ったりもした。
 そのくらい。そのくらいには私は今すぐ欲望に身を任せて大切な幼なじみをキズモノにしてしまおう。そんな悪魔の囁きに抗っていた。

「ね、ね、ことりちゃん。ことりちゃん?」

「……んっ? なに穂乃果ちゃん」

「あーっ、ことりちゃん穂乃果の話聞いてなかったでしょ? 今からことりちゃんのお家行きたいなーって言ってたのにー」

 穂乃果ちゃんは「んもう」と頬を膨らませたりして私に抗議した。

「ごめん、ごめんね。でも、どうして急に?」

 私が問い返すと、なんでも、明日はお休みだし、たまにはことりちゃんとふたりでお泊まりしたいと思ったそうだ。私には断る理由がない。だって穂乃果ちゃんが、自分から、私とふたりきりで過ごしたいだなんて――そう言うんだから。

 ああ、今動いた。悪魔が蠢いた。

「うんっ、良いよ。穂乃果ちゃん」

「やったぁ。ありがとうことりちゃん」
6: 1(たこやき)@\(^o^)/ 2015/10/19(月) 07:37:12.02 ID:nvjKyldQ.net
 屈託のないありがとうの笑顔が胸に刺さった。きっと穂乃果ちゃんには何も仄暗い欲がない。だから、眩しい。
 私の浅ましさだけが、その強烈な陰影の中に取り残されて痛々しくて。
 だけど私の心は、家へ向かうその一足の度に、ぐにゃりぐにゃりと粘土みたいに泥まみれに汚れていく。

 今日はお母さんも帰ってこない。明日はお休み。穂乃果ちゃんとふたり。穂乃果ちゃんと、私。

 どろりどろどろ、心の中の悪魔は、もう何も囁いてはこなかった。

 そいつはもう、私の声をしていたから。

「ねえ、穂乃果ちゃん。内緒でキスしよう?」

 ぬいぐるみと羽毛布団を敷きつめたシングルベッドの上で、まだ眠れないからと横になって話していた私たちの会話は、そこで途切れた。
 午後零時過ぎ、枕元のスタンドだけが橙に灯る私の部屋。すぐ隣の穂乃果ちゃんからは、私と同じシャンプーの匂いがする。
 それまで私たちは確かラブソングの話をしていて、次の新曲の作詞をすることになっている穂乃果ちゃんは、何書いたら良いのかなぁと頭を抱えていた。
 私は曖昧に笑って見せたり、相槌を打ったりしながら、いつ、いつ、引き金を引いて、貪ってしまおうか。何て思っていたのだ。
 興味本位のふりをして、アドバイスのふりをして、大切な幼なじみを貪ってしまおうかだけを、浅ましく、ぐるぐると想い続けていたのだった。
7: 1(たこやき)@\(^o^)/ 2015/10/19(月) 07:39:44.75 ID:nvjKyldQ.net
「こ、ことりちゃん⁉︎ どうしたの急に、穂乃果たち、女の子同士だよ?」

「んー。でもことりは、穂乃果ちゃんになら初めてをあげても良いかなって、そう思ったの」

「そ、そんな……それは光栄だけど。大切にしなきゃいけないよ、ふぁ、ファーストキスだもん!」

「ことりの、ファーストキスは、穂乃果ちゃんが良いなっ。ダメ?」

「そんな……」と謙遜する穂乃果ちゃんに、尻尾を振ってねだる私。ああ、浅ましい。大切な幼なじみが大切にしたがっているたった一回の初めてを、私は貪り尽くそうと言うのだから。

「穂乃果ちゃん……おねがい……」

「んん……わかった。いいよ、ことりちゃん。穂乃果もことりちゃんになら初めてをあげちゃってもいい気がするし。やっぱり少し、どんなものか興味あるもん」

「穂乃果ちゃん……うれしい」

「ただことりちゃん、海未ちゃんや、みんなには絶対に秘密だよ? 絶対、誰にも内緒」

 海未ちゃん、という言葉に少しだけ胸は痛んだ。けど、秘密、という言葉に、もうそれもすぐに分からなくなってしまって、私は目の前の穂乃果ちゃんが薫り立つ甘い果実のように見えて、のぼせてしまっていた。
 それに、幼なじみの親友と内緒でキスして、私たちはこれから共犯者になる。
そんな雰囲気にすっかり酔ってしまっていた。
9: 1(たこやき)@\(^o^)/ 2015/10/19(月) 07:42:03.48 ID:nvjKyldQ.net
「ねぇ、お布団、頭までかぶってもいい? 薄暗いけど、恥ずかしいの……」

 そう言って穂乃果ちゃんは私を冬用の羽毛布団の中へと誘った。柔らかくて、ふかふかで、何も見えない。
 目の前にいるであろう穂乃果ちゃんさえもが少し胸を高鳴らせたような呼吸で頼りなく伝わるだけだ。

 ふたりぼっちのこの暗やみは、誰も入っては来れない。
 ここには、私と、穂乃果ちゃんのふたりだけ。
 ここにある命は、ふたつだけ。

「それじゃあ、穂乃果ちゃん……いくよ?」

「うん……ことりちゃん。きて」

 私たちはひそひそとそう言うと、穂乃果ちゃんの呼吸の方へと唇を寄せる。
顔を寄せるほどに、ふたりぼっちの頼りない暗やみに怯えるように次第に抱きしめあって。そして――

 ふたりはすこしだけ、ひとつになった。

「……っ、ぶはっ! やっぱり、ずっとお布団かぶってると息苦しいね」

 一度だけ重なった唇は、とても甘くて目眩のするほど愛おしく思えた。私は悪魔の囁きとか、そんな欲望まで吹き飛ばしてしまうくらい、穂乃果ちゃんの純粋に塗りつぶされていた。
 私は自分のさっきまでの欲にまみれた浅ましさに内心項垂れる気持ちもあったが、それでも、
穂乃果ちゃんの甘い純粋の残り香が、今でも鼻の奥で薫るようで、ふわふわと気持ちが良かった。
新鮮な空気を求めて這い出した布団の外で、少し冷える真夜中の空気に頬の熱を撫でられたのもあるかもしれない。

「今日は、もう寝る? 明日は何しよっか」

 私が切り出すと、暗順応で表情がつかめるようになったのか、穂乃果ちゃんはうーんと悩み顏をした後、いたずらな笑顔を浮かべたのがわかった。
10: 1(たこやき)@\(^o^)/ 2015/10/19(月) 07:44:09.12 ID:nvjKyldQ.net
「あのさ……ことりちゃん。今日の私たちは、全部秘密で、全部内緒なんだよね? そしたら……」

 穂乃果ちゃんはそう言うと、今まで見たことのない、艶のある笑顔で、さっき私と触れあった唇を舌で舐める。
 今まで私は、私だけが欲にまみれて浅ましく泥の中をもがいていたのかとそう思っていたのだけれど、どうやら違うみたい。
 私は穂乃果ちゃんに火を灯してしまった、それも触れたら溶け合ってしまうほどに熱を持った、純粋な情欲に。
 穂乃果ちゃんはいたずらっぽく笑うその表情のまま、私ににじり寄る。小さなシングルベッドにはどこにも逃げ場所がなくて、私はすぐに、身も心も囚われてしまう。

 けれど、それでもいいと、そう思えた。

 さっきの、あの穂乃果ちゃんの顔を見たその瞬間に背筋に電流が走った。背骨を掴まれたような気さえした。もう何をされてもいいと、心を奪われてしまっていた。

「穂乃果ね、ことりちゃんにあげたいものと、ことりちゃんから欲しいものがあるんだ」

「えっ……それって、なに……?」

「んーとね、どっちか片っぽ分かれば、すぐに分かるよ。今はまだ、穂乃果だけの秘密。だけど」

「だけど?」

「きっとすぐにふたりの秘密になるから、答え合わせはその時しよ?」

 そう言って、穂乃果ちゃんは私のパジャマに指をかける。
その隙に私はお布団をまた頭まですっぽりかぶせて、キスをひとつ、これからやって来る長い夜に。ふたりぼっちの道標に。


 それから先は、私たちだけの秘密です。
11: 1(たこやき)@\(^o^)/ 2015/10/19(月) 07:47:09.12 ID:nvjKyldQ.net
以上でございます
頭から布団被って隠れてキスする、ってのをやりたかっただけでございます

ことりちゃんは猛禽類ですが、猛禽類だろうがなんだろが笑顔で狩るくらい、穂乃果ちゃんには
無邪気天然系エロスにあふれていて素敵な女の子だと思うのです
スポンサーリンク

シェアする

フォローする

『ことり「悪魔の囁き」』へのコメント

コメントの投稿には初回のみDisqusへのアカウント登録が必要です。Disqusの登録、利用方法を参考に登録をお願いします。
表示の不具合、カテゴリーに関する事等はSS!ラブライブ!Disqusチャンネルにてご報告下さい。